説明

デジタルキーボックス

【課題】コンパクトなデジタルキーボックスを提供する。
【解決手段】複数の保管庫を開錠するために使用されるデジタルキーを集中管理するものであって、個人認証手段72を有するデジタルキーボックス60において、(a)複数の使用者により共通に使用されるデジタルキー61がICタグ62を備え、ICタグ62が使用者の使用者識別情報と、複数の保管庫のうち使用者が開錠許可を有している保管庫を特定する扉特定データとを記憶しており、(b)デジタルキーボックス60が、装着されたデジタルキーの着脱をロック手段で制限しており、制御装置72が特定の使用者を認証した場合に、その特定の使用者の使用者識別情報または扉特定データの少なくとも一方のデータをデジタルキー61の一つに書き込み、データを書き込んだデジタルキー61の着脱制限をロック手段に解除させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の扉を開錠するために、使用者により使用されるデジタルキーを集中して保管管理するためのものであって、該デジタルキーが装着され、個人認証手段を有するデジタルキーボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、オフィスにおいては、保管庫毎に開閉可能な鍵を、デジタルキーボックスに収納し、使用者がIDカード等のID認証により、デジタルキーボックスの扉を開閉して、利用したい保管庫用の鍵を借り出して利用している。デジタルキーボックスは、IDカードにより、使用者をID認証し、その人がその保管庫にアクセスする権利を有している場合にのみ、扉を開いている。
しかし、多数の保管庫内の書類を順次調べようとすると、たくさんの鍵を持って移動しなければならず、作業性が悪かった。その問題を解決するために、同じ1つの鍵を用いて、複数の保管庫を開閉できるシステムが望まれていた。
【0003】
同じ1つの鍵を用いて、複数の保管庫を開閉できるシステムとしては、マスターキーが知られている。マスターキーは、全ての保管庫の開閉が可能であるが、鍵を紛失した場合等の非常時用のものであり、マスターキーを日常的に使用しては、保管庫に各別に異なる錠前を取り付けて管理している意味がなくなってしまう。また、保管庫毎にアクセスする権利を人毎に設定することはできない。
一方、交換容易なシリンダー錠前を用い、保管庫毎にシリンダー錠前を交換することにより、一つの鍵で開閉できる保管庫を設定可能とするものが市販されている。これによれば、同じ1つの鍵で開閉可能な保管庫を任意に設定し変更することができる。
【0004】
一方、ICタグと鍵とを組み合わせた技術として、特許文献1に記載されるものがある。特許文献1には、接触式ICタグを鍵の把持部に内蔵して、把持部の一部に露出した鍵側データ端子と接触する扉側データ端子により、接触式ICタグのデータを読み出し、そのデータがID登録されていない場合に、ソレノイドにより、鍵の回転を阻止することが開示されている。
鍵は通常の鍵であり、特定の錠前のみ開閉可能な形状となっている。効果としては、鍵の形状が同じ合鍵を作られたとしても、接触式ICタグが内蔵されていなければ、鍵を解除することができないことが記載されている。また、段落(0027)には、ICタグのみの認証により、電気錠を開錠することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−252327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来市販されている交換容易なシリンダー錠前には、次のような問題があった。
(1)一人の人が利用するシステムならば良いが、通常の会社のオフィスのように、各々異なる権能を有する複数の人が同じ保管庫を利用するシステムにおいては、異なる人に、各々個別に利用可能な保管庫用の鍵を所持させることが、困難であった。すなわち例えば、A,B,Cという人が各々異なる保管庫グループにアクセスする権利を有している場合に、各々の人に、その人がアクセス可能な保管庫を開閉できる鍵を所持させることはできなかった。
【0007】
(2)また、特許文献1に記載のシステムには、次のような問題があった。
すなわち、接触式ICタグが確認のためにのみ使用されており、実際に鍵を開閉するのは従来通りの、鍵の挿入部の形状が錠前に合致することが条件であるため、オフィスで、複数の保管庫内の書類を調べようとすると、たくさんの鍵を持って、保管庫間を移動する必要がある。たくさんの鍵を持って移動することも不便である上、その都度所定の鍵を探さなければならず、きわめて非能率的であった。
また、ICタグの認識により、電気錠を開錠するのは、単純にカードに埋め込まれたICタグを読み取って、電気錠を開錠するのと何ら差異がなく、鍵とICタグを組み合わせる意味がない。言い換えれば、電気錠を必要とするため、コストアップとなる問題がある。
また、特許文献1の技術では、接触式ICタグが鍵の把持部に露出しているので、読取装置を錠前の外に配置せざるをえないため、機材の衝突やいたずら等により損傷する恐れがある。
【0008】
(3)また、近年、個人情報保護法の施行に伴い、オフィスにおけるセキュリティ管理がより厳重になっている。今まで、個人で管理していた鍵についても、オフィスの外に持ち出すことを禁止することが多くなっている。すなわち、オフィスを出るときには、個人で管理している鍵も、鍵管理ボックスに収納することを義務付けるケースが多くなっている。
(4)一方、個人に対して1個ずつの個人用鍵を振り分けた場合、オフィスで鍵を使用する人数分だけの数の鍵を収納する鍵管理ボックスを必要とした。一人の人が鍵を使用する時間は、一日のうち、短い時間であるのが通常である。そのため、使用時間の少ない鍵でも、全て収納しなければならず、鍵管理ボックスが無駄なスペースを占有する問題があった。
【0009】
(5)尚、保管庫には、ICタグを備えるICカードが鍵として使用するものがある。保管庫は、認証装置にかざされたICカードのICタグから情報を読み取り、その情報に基づいて認証に成功した場合に、開閉を許可する。また、オフィスの配線工事などでは、不特定多数の業者が出入りするため、各業者に付与したICカードに1又は2以上の入室権限を記憶させ、部屋毎に設けた認証装置にICカードをかざして権限認証に成功した場合にのみ、入室を許可することが行われている。これらのICカードは、セキュリティ管理を厳重にするために、オフィス家具を使用しないときや、使用者が社外へ出るときに、キーボックスに収納される。このICカードも、ICカードを使用する人数分の数を準備すると、キーボックスの大型を招き、好ましくない。
【0010】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、コンパクトなデジタルキーボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係るデジタルキーボックスは以下の構成を有する。
(1)複数の扉を開錠するために複数の使用者により共通に使用される共通デジタルキーを集中して保管管理するためのものであって、該共通デジタルキーが装着され、個人認証手段を有するデジタルキーボックスにおいて、前記共通デジタルキーがICタグを備えるデジタルキーであり、前記ICタグが使用者を識別するための使用者識別情報と、前記複数の扉のうち前記使用者が開錠許可を有している2以上の扉を特定する扉特定データとを記憶すること、前記デジタルキーボックスが、前記個人認証手段が特定の使用者を認識したときに、任意の前記共通デジタルキーの前記ICタグに、該当する使用者の前記使用者識別情報、または該当する使用者の前記扉特定データの少なくとも一方のデータを書き込むデータ書き込み手段と、前記共通デジタルキーの着脱を制限するロック手段と、前記データ書き込み手段が前記ICタグにデータを書き込んだ共通デジタルキーの着脱制限を前記ロック手段に解除させるロック解除手段を有する。
【0012】
(2)複数の扉を開錠するために使用者により使用されるデジタルキーを集中して保管管理するためのものであって、該デジタルキーが装着され、個人認証手段を有するデジタルキーボックスにおいて、前記デジタルキーが、ICタグを備え、前記ICタグが使用者を識別するための使用者識別情報と、前記複数の扉のうち前記使用者が開錠許可を有している2以上の扉を特定する扉特定データとを記憶するものであり、個人に1個ずつ割り当てられる個人デジタルキーと、ICタグを備え、前記ICタグが使用者を識別するための使用者識別情報と、前記複数の扉のうち前記使用者が開錠許可を有している2以上の扉を特定する扉特定データとを記憶するものであり、複数の使用者により共通に使用される共通デジタルキーと、を含み、前記デジタルキーボックスが、前記個人認証手段が特定の使用者を認識したときに、任意の前記共通デジタルキーの前記ICタグに、該当する使用者の前記使用者識別情報、または該当する使用者の前記扉特定データの少なくとも一方のデータを書き込むデータ書き込み手段と、前記デジタルキーの着脱を制限するロック手段と、前記個人認証手段により認識に成功した特定の使用者が個人デジタルキーを付与された者であるときには、前記特定の使用者の使用者識別情報を持つ前記個人デジタルキーの着脱制限を前記ロック手段に解除させ、前記個人認証手段により認証に成功した特定の使用者が個人デジタルキーを付与された者でないときには、前記データ書き込み手段が前記データを書き込んだ前記共通デジタルキーの着脱制限を前記ロック手段に解除させるロック解除手段を有する。
【0013】
ここで、「扉」とは、保管物を収納する保管庫や机などの引き出しや片開き又は両開きの扉、部屋の出入口に設けられた出入口扉、入退装置に設けられた開閉式のバーなどが含まれる。
また、「共通」の意味には、複数人が1個の共通デジタルキーを使用する意味での主観的な共通と、1個の共通デジタルキーを複数の保管庫に使用できる意味での客体的な共通とが考えられる。本明細書では、主観的な共通に着目して、個人的に1個ずつ割り当てられるデジタルキーを「個人デジタルキー」、複数の使用者により共通に使用されるデジタルキーを「共通デジタルキー」という。
【0014】
(3)(1)又は(2)に記載の発明において、複数の前記共通デジタルキーを、第1条件に従う第1グループと、第2条件に従う第2グループとにグループ分けするグループ作成手段を有する。
(4)(3)に記載の発明において、前記グループ作成手段は、前記使用者の属性、前記使用者が前記共通デジタルキーを使用する頻度、前記共通デジタルキーを使用する時間帯の少なくとも一つに基づいて、前記第1及び前記第2グループを作成することを特徴とする。
【0015】
(5)(1)乃至(4)の何れか1つに記載するデジタルキーボックスにおいて、前記扉特定データを用いて前記扉を開錠可能な有効時間を示す有効時間データを前記ICタグに書き込む有効時間データ書込手段を有することを特徴とする。
(6)(5)に記載するデジタルキーボックスにおいて、前記有効時間データ書込手段は、使用者の属性、保管物の種類、扉の設置場所の少なくとも一つに応じて前記有効時間を変更して前記ICタグに書き込むものであることを特徴とする。
【0016】
(7)(1)乃至(6)の何れか一つに記載の発明において、前記使用者識別情報が、前記個人認証手段と、前記扉の開閉権限を認証して前記扉の開閉を許可する手段とに共通して使用される生体情報である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のデジタルキーボックスは、複数の扉を開錠するために複数の使用者により共通に使用される共通デジタルキーを集中して保管管理するためのものであって、該共通デジタルキーが装着され、個人認証手段を有するデジタルキーボックスにおいて、共通デジタルキーがICタグを備えるデジタルキーであり、ICタグが使用者を識別するための使用者識別情報と、複数の扉のうち使用者が開錠許可を有している2以上の扉を特定する扉特定データとを記憶すること、デジタルキーボックスが、個人認証手段が特定の使用者を認識したときに、任意の共通デジタルキーのICタグに、該当する使用者の使用者識別情報、または該当する使用者の扉特定データの少なくとも一方のデータを書き込むデータ書き込み手段と、共通デジタルキーの着脱を制限するロック手段と、データ書き込み手段がICタグにデータを書き込んだ共通デジタルキーの着脱制限をロック手段に解除させるロック解除手段を有する。このようなデジタルキーボックスは、使用者に対して、その人専用のデジタルキーをその場で作成することができるため、全ての使用者の数の半分、また1/3程度の数のデジタルキーをデジタルキーボックスで管理すれば済み、デジタルキーボックスをコンパクトにすることができる。
【0018】
また、本発明のデジタルキーボックスは、複数の扉を開錠するために使用者により使用されるデジタルキーを集中して保管管理するためのものであって、該デジタルキーが装着され、個人認証手段を有するデジタルキーボックスにおいて、デジタルキーが、ICタグを備え、ICタグが使用者を識別するための使用者識別情報と、複数の扉のうち使用者が開錠許可を有している2以上の扉を特定する扉特定データとを記憶するものであり、個人に1個ずつ割り当てられる個人デジタルキーと、ICタグを備え、ICタグが使用者を識別するための使用者識別情報と、複数の扉のうち使用者が開錠許可を有している2以上の扉を特定する扉特定データとを記憶するものであり、複数の使用者により共通に使用される共通デジタルキーと、を含み、デジタルキーボックスが、個人認証手段が特定の使用者を認識したときに、任意の共通デジタルキーのICタグに、該当する使用者の使用者識別情報、または該当する使用者の扉特定データの少なくとも一方のデータを書き込むデータ書き込み手段と、デジタルキーの着脱を制限するロック手段と、個人認証手段により認識に成功した特定の使用者が個人デジタルキーを付与された者であるときには、特定の使用者の使用者識別情報を持つ個人デジタルキーの着脱制限をロック手段に解除させ、個人認証手段により認証に成功した特定の使用者が個人デジタルキーを付与された者でないときには、データ書き込み手段がデータを書き込んだ共通デジタルキーの着脱制限をロック手段に解除させるロック解除手段を有する。このようなデジタルキーボックスは、電子キーの使用頻度が低いものでも共通デジタルキーを用いて扉を開錠することができる。また、複数の使用者が共通デジタルキーを共用するので、デジタルキーボックスは、使用者一人一人に付与した個人デジタルキーを管理する場合と比べて、管理する電子キーの数を減らすことができる。よって、本発明のデジタルキーボックスによれば、デジタルキーボックスをコンパクトにすることができる。
【0019】
また、本発明のデジタルキーボックスは、複数の共通デジタルキーを、第1条件に従う第1グループと、第2条件に従う第2グループとにグループ分けするグループ作成手段を有するので、第1グループに属する共通デジタルキーと、第2グループに属する共通デジタルキーとを異なる条件(例えば、使用者の属性、使用者が共通デジタルキーを使用する頻度、共通デジタルキーを使用する時間帯)で使用者に使用させることができる。
【0020】
本発明のデジタルキーボックスは、扉特定データを用いて扉を開錠可能な有効時間を示す有効時間データをICタグに書き込む有効時間データ書込手段を有する。そのため、デジタルキーボックスから取り出されたデジタルキーは、有効時間を経過すると扉を開閉できず、デジタルキーとしての機能を失う。よって、本発明のデジタルキーボックスによれば、デジタルキーが不正使用される危険を低減できる。
本発明のデジタルキーボックスは、有効時間データ書込手段が、使用者の属性、保管物の種類、扉の設置場所に応じて有効時間を変更してICタグに書き込むものである。このような本発明のデジタルキーボックスは、使用者や保管物、扉の設置場所に適した有効時間をICタグに記憶させるので、有効時間を一律に設定する場合と比べて第三者がデジタルキーを不正使用する機会が減り、セキュリティを向上させることができる。
【0021】
本発明のデジタルキーボックスは、使用者識別情報が、個人認証手段と、扉の開閉権限を認証して扉の開閉を許可する手段とに共通して使用される生体情報である。そのため、個人認証手段に生態情報を読み取る生体情報読み取り手段を設ければ、扉側に生体情報読み取り手段を設ける必要がなくなり、扉を備える保管庫や入退室管理システムなどのコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明に係るデジタルキーボックスの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
<デジタルキーボックスの全体構成>
図1にデジタルキーボックス30の構成図を示す。
デジタルキーボックス30は、複数の保管庫の扉を開錠するために使用される電子キー1を集中して保管管理するためのものである。デジタルキーボックス30は、開閉扉31が付設され、通常、開閉扉31は閉じられている。デジタルキーボックス30の開閉扉31の内側には、10個の電子キー1(図6参照)を保持するキー孔ユニット38(38Aから38Jまで)が付設されている。デジタルキーボックスの開閉扉31の右側の表面には、ICカード読取部32、テンキー操作部33、液晶表示部34が付設されている。キー孔ユニット38は、電子キー1が装着されるキー孔35、LED43、ネームプレート37を有している。キー孔35には、キー抜け阻止手段であるロック手段41(図2参照)により、通常電子キー1を抜くことができない状態となっている。
【0024】
次に、デジタルキーボックスのコントローラについて説明する。図2に制御の構成をブロック図で示す。コントローラ44は、CPU45、ROM46、履歴記憶部49を備えている。ROM46は、制御プログラム50、電子キーID記憶部47、アクセス権記憶部48、有効時間データ設定部51を備えている。
コントローラ44には、各キー孔ユニット38に対応して付設されている電子キー1をロックして抜けないようにするロック手段41A〜41J、電子キー1が装着されたときに、電子キー1に内蔵されたICタグ13に記憶されているデータを読み取るためのICタグデータ読取手段42A〜42J、有効時間データを電子キー1に書き込むためのデータ書き込み手段40A〜40J、使用者を識別するための個人ID番号や使用者が開錠許可を有している保管庫の扉を特定する扉特定データなどのデータを電子キー1に書き込むデータ書き込み手段39A〜39J、LED43A〜43Jが接続されている。また、コントローラ44には、液晶表示部34、テンキー操作部33、ICカード読取部32が接続されている。
【0025】
<電子キーの構成>
図6は、電子キー1を示す図である。
電子キー1は、ICタグ13を備える。ICタグは、データやプログラムを読み書き可能なメモリや、データを加工・演算するCPUなどを備える。ICタグ13には、第1端子11と第2端子12が接続している。ICタグ13は、絶縁カバー4で覆われている。第2端子12は、デジタルキーボックス30のキー孔35や保管庫の錠前に差し込み可能な形状で、ケース4から外部へ突き出すように設けられている。第2端子12は、ロック手段41(図2)が係合する凹部2dを備える。第1端子11は、板状をなし、第2端子12に対して直交するように配置され、ケース4の外部において第2端子12の両側に露出している。電子キー1には、LED9が視認可能に設けられている。
【0026】
図7は、電子キー1の回路構成を示す図である。
電子キー1は、第1及び第2端子11,12の間にICタグ13が配置されている。LED9は、ICタグ13と並列に設けられ、第1及び第2端子11,12に流れる電流を利用して点灯する。よって、電子キー1は、第1及び第2端子11,12がリーダライタに正常に接触して、ICタグ13がデータを正常に読み取られたり、ICタグ13にデータが正常に書き込まれる場合に、LED9が第1及び第2端子11,12に点灯する。そのため、ユーザは、LED9の点灯するか否かにより、ICタグ13にデータが正常に読み書きされたかを確認できる。
【0027】
<デジタルキーボックスの使用形態>
次に、実施例のデジタルキーボックス30の使用形態について説明する。
上記構成を有するデジタルキーボックス30の使用形態としては、2つの方式が考えられる。それらの方法は、ROM46に記憶させる制御プログラム50により変更される。2つの方式である、個人デジタルキー方式、及び共通デジタルキー方式について、順次説明する。
<個人デジタルキー方式>
電子キー1を個人に1個ずつ割り当てて管理する方式である。図1に示すデジタルキーボックス30では、10人分の電子キー1を管理できる。電子キー1には、固有の識別番号(電子キーID)が記憶されている。本実施例では、接触式ICタグ13の固有の識別番号を電子キーIDに利用している。市販されている接触式ICタグは、各々が固有の識別番号を有しており、同じものはなく、また書き換えも困難なので便利である。電子キーIDは、使用者を識別するための使用者識別情報として使用される。
【0028】
図3に、個人デジタルキー方式の場合の制御プログラム50をフローチャートで示す。
使用者は、デジタルキーボックス30の所に行き、所持しているICカードをICカード読取部32に読み取らせる(S11;YES)。そして、テンキー操作部33により、暗証番号を入力する(S12)。コントローラ44の電子キーID記憶部47は、ICカード読取部32が読み取ったICカードと対応する暗証番号を記憶しており、入力された暗証番号を照合する(S13)。そして、正しい暗証番号が入力されたときのみ(S13;YES)、有効時間データ設定部51が設定した有効時間データを有効時間データ書込手段40により電子キー1に書き込んだ後、開閉扉31を開放する。本実施例では、テンキー操作部33を用いているが、静脈認証装置、指紋認証装置等により個人認証を行っても良い。個人認証を行うのは、他人のICカードを使用して不正行為が行われるのを防止するためである。
【0029】
ここで、有効時間データ設定部51は、使用者の属性、保管物の種類、保管庫の設置場所の少なくとも一つに基づいて有効時間データを設定する。
例えば、有効時間データ設定部51は、使用者を平社員クラス、課長クラス、部長クラス、役員クラスに分けて記憶しており、例えば平社員クラスの有効時間を5分、課長クラスの有効時間を10分、部長クラスの有効時間を15分、役員クラスの有効時間を20分に設定するなど、階層に応じて有効時間の長さを設定する。
また例えば、有効時間データ設定部51は、保管庫を開いて書類内容を確認する時間を鑑みて、書類ファイルを収納する保管庫に対する有効時間を、CD−ROMやUSBメモリを収納する保管庫に対する有効時間より長く設定する。
また例えば、有効時間データ設定部51は、例えば地下2階地上10階建てのビルにおいてデジタルキーボックス30が地下2階にある場合に、地上10階の保管庫に対する有効時間を地上2階の保管庫に対する有効時間より長く設定する。
【0030】
コントローラ44は、開閉扉31を開放すると同時に、個人認証した個人用の電子キー1が装着されているキー孔ユニット38のロック手段41を解除する(S14)。ロック手段41は、電子キー1の凹部2dを利用して、図示しないロック部材をソレノイドで駆動させて係合・解除を行っている。また、解除したキー孔ユニット38のLED43を点灯する(S14)。使用者は、これにより、自分専用の電子キー1を抜き取ることができる。コントローラ44は、ICタグデータ読取手段42が電子キー1を検出しなくなったときに、電子キー1がキー孔35から抜き取られたと判断して(S15;YES)、認証した個人、取り出された電子キー1、取り出された時間を履歴記憶部49に記憶した後(S16)、S19へ進む。
本デジタルキーボックス30では、電子キー1を直接、キー孔35に装着させているので、キー孔ユニット38に付設されたICタグデータ読取手段42により、装着された電子キー1のICタグデータを読み取るため、電子キー1が正規の鍵であるか否かを確実に管理することができる。
【0031】
電子キー1に対応する特定の個人が有する扉特定データについては、個人デジタルキー方式の場合には、予め電子キー1に記憶されている。ここで、特定の個人がアクセス可能な保管庫が増減した場合には、デジタルキーボックス30が電子キー1を収納する間に電子キー1の扉特定データを書き換える。電子キー1は、セキュリティを確保するために、基本的に使用時を除いてデジタルキーボックス30へ返却される。そのため、電子キー1は、使用者が開錠できる保管庫の変更に速やかに対応して最新の扉特定データを記憶し、特定の個人が開錠できる保管庫を使用できない不具合を回避できる。
【0032】
そして、従来の電子キーは、個人が使用できる保管庫を1個だけ記憶し、その保管庫の専用鍵として使用されていたため、保管庫は、開錠できる使用者の電子キーIDをメモリに記憶し、電子キーから読み取った電子キーIDがメモリに登録されている場合に開錠していた。そして、保管庫は、開錠できる使用者に変更があった場合には、メモリに登録されている電子キーIDを書き換えていた。この書き換えは、保管庫別に手入力すると手間がかかり、入力漏れを生じる危険がある。一方、保管庫をネットワークを介してサーバに接続すれば、入力の手間や入力漏れの危険を低減できるが、システムが高価になる。これに対して、保管庫は、ICタグ13に扉特定データを記憶した電子キー1に自分の管理する識別番号があることを確認したときに開錠するシステムを採用すれば、開錠できる人の電子キーIDを記憶したり、ネットワークを構築する必要がなく、開錠権限の変更に適切に対応できるシステムを安価に構築できる。
【0033】
また、デジタルキーボックス30は、電子キー1が取り出される場合に、例えば、電子キー1をデジタルキーボックス30から取り出してから5分間保管庫Aを開錠できることを示す有効時間データを電子キー1のICタグ13に記憶させる。使用者は、デジタルキーボックス30の設置場所から所望の保管物(書類ファイル、CD−ROM、USB、パソコン等)が収納されている保管庫Aへ行き、電子キー1を保管庫に設けた鍵ユニットの錠前に差し込む。
【0034】
保管庫Aの錠前には、電子キー1のICタグ13に設けられた第1及び第2端子11,12に接触してICタグ13からデータを読み取るICタグデータ読み取り手段が設けられている。鍵ユニットは、ICタグデータ読み取り手段により保管庫Aに対応する有効時間データを電子キー1のICタグ13から読み出す。鍵ユニットは、有効時間データが示す有効時間内に電子キー1が保管庫Aの錠前に差し込まれた場合は、保管庫Aの開閉を許可する。一方、鍵ユニットは、有効時間データが示す有効時間内に電子キー1が保管庫Aの錠前に差し込まれなかった場合には、保管庫Aの開閉を許可しない。このように、電子キー1は、有効時間が経過すると保管庫Aの鍵としての機能を失う。
【0035】
そのため、使用者が保管庫Aを開閉した後に電子キー1をデジタルキーボックス30に返却しないまま、有効時間が経過した場合には、正当権限を有する使用者であっても当該電子キー1を用いて保管庫Aを開閉できなくなる。この場合、使用者は、デジタルキーボックス30へ行って電子キー1を一旦返却し、再度電子キー1を取り出す手続をして電子キー1に有効時間データを書き込んでもらえば、電子キー1を用いて保管庫を開閉できるようになる。
【0036】
保管庫を開錠した場合、電子キー1のICタグ13には、保管庫側のコントローラにより、保管庫の識別番号、開錠した日時、及び閉錠した日時が書き込まれる。また、保管庫は、電子キー1が差し込まれる錠前の近くにCCDカメラ等の撮像手段を配置し、保管庫を開錠した者の顔を撮像手段で撮像する。保管庫側のコントローラは、撮像手段が撮像した画像データを使用履歴の一つとして電子キー1のICタグ13に書き込む。電子キー1により、複数の保管庫の開錠を行った場合には、全ての使用履歴データが、電子キー1のICタグ13に記憶される。
電子キー1をデジタルキーボックス30に返却したとき(抜き取り確認ができなかったとき)に(S15:NO)、ICタグデータ読取手段42は、電子キー1の電子キーIDを読み取り、個人認証した特定の個人に対応する正しい電子キー1が返却されたことを確認し(S17;YES)、返却時間を履歴記憶部49に記憶する(S18)。次に、コントローラ44のICタグデータ読取手段42により電子キー1のICタグ13から読み取った使用履歴が、個人用電子キー1の使用履歴として履歴記憶部49に記憶される(S19)。
【0037】
これにより、履歴記憶部49は、各電子キー1についてデジタルキーボックス30から取り出された日時、返却された日時、保管庫での使用履歴を全て記憶する。
後で、保管庫内の書類の紛失等のトラブルが発生したときに、電子キー1のICタグ13やコントローラ44の履歴記憶部49に記憶されている使用履歴をチェックすることにより、責任の所在を追及することができる。また、全ての履歴を管理していることを使用者に知らせることにより、使用者がデジタルキーボックス30から電子キー1を取り出した後、すばやく保管庫の利用を行うことが期待できるため、電子キー1が机の上に長時間置きっぱなしになるような事態を回避することができる。
その後、開閉扉31を閉じることを液晶表示部34に表示して指示する(S20)。開閉扉31が閉じられたことを確認して(S21;YES)、S11へ戻る。
【0038】
上記個人デジタルキー方式のデジタルキーボックス30によれば、オフィスに配置された複数の保管庫を開錠するために、使用者により使用される電子キー1を集中して保管管理するためのものであって、該電子キー1が装着され、個人認証手段であるテンキー操作部33・電子キーID記憶部47を有するデジタルキーボックス30において、(a)電子キー1がICタグを備え、ICタグ13の電子キーIDと、複数の保管庫のうち使用者が開錠許可を有している2以上の保管庫を特定する扉特定データとを記憶すること、(b)デジタルキーボックス30が、電子キー1のICタグ13からデータを読み取るデータ読み取り手段42A,42B…と、電子キー1の着脱を制限するロック手段41A,41B…と、コントローラ44が特定の使用者を認識したときに(S13;YES)、該当する使用者の個人識別情報を持つ電子キー1の着脱制限をロック手段41に解除させるロック解除手段(S14)とを有するので、使用者が開錠を許可されている収納ボックスを順次調べるときに、1つの電子キー1を所持するだけで済むため、便利である。また、個人で管理している電子キー1に関しても、デジタルキーボックス30で管理できるため、個人がオフィスから電子キー1を持ち出すことを禁止することができる。
【0039】
また、本実施例のデジタルキーボックス30は、ICタグ13が、保管庫を使用した使用履歴を記憶すること、ICタグデータ読取手段42がその使用履歴を読み取ることを行うので(S19)、使用者が電子キー1をデジタルキーボックス30に返却したときに、デジタルキーボックス30は、その電子キー1の使用履歴を把握できるため、使用者が何時に電子キー1を持ち出し、どの収納ボックスを何時から何時まで使用したか、という使用履歴を把握でき、電子キー1の管理を十分に行うことができる。
【0040】
本実施例のデジタルキーボックス30は、扉特定データを用いて保管庫を開錠可能な有効時間を示す有効時間データを電子キー1のICタグ13に書き込む有効時間データ書込手段40を有する。そのため、デジタルキーボックス30から取り出された電子キー1は、有効時間データによって特定される有効時間を経過すると保管庫の錠前に差し込んでも保管庫を開錠できず、鍵としての機能を失う。よって、本実施例のデジタルキーボックス30によれば、電子キー1が不正使用される危険を低減できる。
【0041】
本実施例のデジタルキーボックス30は、有効時間データ書込手段40が、使用者の属性、保管物の種類、保管庫の設置場所の少なくとも一つに応じて有効時間を変更してICタグ13に書き込むものである。このようなデジタルキーボックス30は、使用者や保管物、保管庫の設置場所に適した有効時間をICタグ13に記憶させるので、有効時間を一律に設定する場合と比べて第三者がデジタルキーを不正使用する機会が減り、セキュリティを向上させることができる。しかも、有効時間が経過して電子キー1が鍵としての機能を失ったとしても、電子キー1が第三者に盗まれると、デジタルキーボックス30に残っている使用履歴から責任を追及されるので、使用者は早く電子キー1を返却する意識が働く点でも、セキュリティを向上させることができる。
【0042】
<共通デジタルキー方式>
共通の意味には、複数人が1個の電子キー1を使用する意味での主観的な共通と、1個の電子キー1を複数の保管庫に使用できる意味での客体的な共通とが考えられる。本明細書では、主観的な共通に着目して、個人的に1個ずつ割り当てられる電子キー1を「個人デジタルキー」、複数の使用者により共通に使用される電子キー1を「共通デジタルキー」という。よって、共通デジタルキー方式は、電子キー1を個人に1個ずつ割り当てずに、共通デジタルキーとして管理する方式である。基本的構成等は、個人デジタルキー方式と同じなので、相違する点のみ詳細に説明する。
図1に示すデジタルキーボックス30では、10個の電子キー1を管理できる。
【0043】
図4に、共通デジタルキー方式の場合の制御プログラム50をフローチャートで示す。
使用者は、デジタルキーボックス30の所に行き、所持しているICカードをICカード読取部32に読み取らせる(S30;YES)。そして、テンキー操作部33により、暗証番号を入力する(S31)。コントローラ44の電子キーID記憶部47は、ICカード読取部32が読み取ったICカードと対応する暗証番号を記憶しており、入力された暗証番号を照合する(S32)。そして、正しい暗証番号が入力されたときのみ(S32;YES)、開閉扉31を開放する。本実施例では、テンキー操作部33を用いているが、静脈認証装置、指紋認証装置等により個人認証を行っても良い。個人認証を行うのは、他人のICカードを使用して不正行為が行われるのを防止するためである。
【0044】
S33の後、2つのルートに分かれて制御される。コントローラ44が、使用者が現在電子キー1を借りていないと判断した場合には(S33;NO)、S34へ進む。一方、コントローラ44が、使用者が現在電子キー1を借りていると判断した場合には(S33;YES)、S42へ進む。
先に、使用者が現在電子キー1を借りていない場合(S33;NO)について説明する。
この場合には、液晶表示部34に、使用者が必要とする保管庫の番号を入力させる(S34)。この場合に、液晶表示部34の特性を生かして、図示表示等行い、使用者が容易に保管庫の番号を特定できるようにすると良い。
使用者が保管庫の番号を入力すると(S34)、番号入力が完了したか否か、液晶表示部34に表示を行い確認する(S35)。使用者は、複数の保管庫を開錠したい場合には、全ての保管庫の番号を入力する(S34,S35)。
【0045】
コントローラ44は、入力された保管庫の番号を、保管庫を開錠して保管物にアクセスできるアクセス権を使用者毎に記憶するアクセス権記憶部48に照合し、個人認証に成功した使用者が入力した番号の保管庫全てにアクセス可能であるならば、データ書き込み手段39により入力された保管庫の番号を扉特定データとして、デジタルキーボックス30に現在収納されている任意の電子キー1のICタグ13に書き込む(S36)。同時に、ICタグ13に、有効時間データ設定部51が設定した有効時間データと、使用者を識別するための個人のID番号(使用者識別情報の一例)を書き込む(S36)。これにより、共通の電子キー1が、当該使用者専用の鍵となる。もし、当該使用者がアクセス権を有しない保管庫の番号が入力されているときは、その旨、液晶表示部34に表示する。
次に、コントローラ44は、開閉扉31を開放すると同時に、データを書き込んだ任意の電子キー1が装着されているキー孔ユニット38のロック手段41を解除する(S37)。ロック手段41は、電子キー1の凹部2dを利用して、図示しないロック部材をソレノイドで駆動させて係合・解除を行っている。また、解除したキー孔ユニット38のLED43を点灯する(S37)。使用者は、LED38の点灯により、専用鍵となった電子キー1を簡単に抜き取ることができる。コントローラ44は、ICタグデータ読取手段42が電子キー1を検出しなくなったときに、電子キー1がキー孔35から抜き取られたと判断して(S38;YES)、認証した個人、取り出された電子キー1、取り出された時間を履歴記憶部49に記憶する(S39)。その後、開閉扉31を閉じることを液晶表示部34に表示して指示する(S40)。開閉扉31が閉じられたことを確認して(S41;YES)、S30へ戻る。
【0046】
本デジタルキーボックス30では、電子キー1を直接、キー孔35に装着させているので、キー孔ユニット38に付設されたICタグデータ読取手段42により、装着された電子キー1のICタグデータを読み取って、電子キー1が正規の鍵であるか否かを確実に管理することができる。
保管庫を開錠した場合、ICタグ13には、保管庫側のコントローラにより、保管庫の識別番号、開錠した日時、及び閉錠した日時が書き込まれる。電子キー1により、複数の保管庫の開錠を行った場合には、全ての使用履歴データが、電子キー1のICタグ13に記憶される。
【0047】
次に、使用者が現在電子キー1を借りている場合(S33;YES)について説明する。この場合には、コントローラ44は、開閉扉31を開放すると同時に、電子キー1が装着されていないキー孔ユニット38のロック手段41を解除状態とする(S42)。
使用者は、電子キー1が装着されていない任意のキー孔35に、電子キー1を返却する(S43)。電子キー1がデジタルキーボックス30に返却されたときに、ICタグデータ読取手段42は、電子キー1の電子キーIDを読み取り、個人認証した特定の個人が借りていた電子キー1が返却されたことを確認し(S44;YES)、返却時間を履歴記憶部49に記憶する(S45)。次に、コントローラ44のICタグデータ読取手段42が電子キー1から読み取った使用履歴データが、履歴記憶部49に、個人用電子キー1の使用履歴として記憶される(S46)。
【0048】
これにより、履歴記憶部49は、各電子キー1について、デジタルキーボックス30から取り出された日時、返却された日時、保管庫での使用履歴を全て記憶する。
後で、保管庫内の書類の紛失等のトラブルが発生したときに、使用履歴をチェックすることにより、責任の所在を追及することができる。また、全ての履歴を管理していることを使用者に知らせることにより、使用者がデジタルキーボックス30から電子キー1を取り出した後、すばやく保管庫の利用を行うことが期待できるため、電子キー1が机の上に長時間置きっぱなしになるような事態を回避することができる。
その後、開閉扉31を閉じることを液晶表示部34に表示して指示する(S40)。開閉扉31が閉じられたことを確認して(S41;YES)、S30へ戻る。
【0049】
上記共通デジタルキー方式のデジタルキーボックス30によれば、オフィスに配置された複数の保管庫を開錠するために、複数の使用者により共通に使用される共通デジタルキーである電子キー1を集中して保管管理するためのものであって、電子キー1が装着され、個人認証手段であるテンキー操作部33・電子キーID記憶部47を有するデジタルキーボックス30において、(a)電子キー1がICタグ13を備え、ICタグ13が使用者を識別する個人のID番号と、複数の保管庫のうち使用者が開錠許可を有している2以上の保管庫を特定する扉特定データとを記憶すること、(b)デジタルキーボックス30が、個人認証手段が特定の使用者を認識したときに、任意の電子キー1のICタグ13に、特定の使用者のID番号と、使用者が開錠許可を有している保管庫を特定する扉特定データの少なくとも一方のデータを書き込むデータ書き込み手段(S36)と、電子キー1の着脱を制限するロック手段41A,41Bと、データ書き込み手段がICタグ13にデータを書き込んだ電子キー1の着脱制限をロック手段41に解除させるロック解除手段(S37)を有する。このようなデジタルキーボックス30は、使用者に対して、その人専用の鍵をその場で作成することができるため、全ての使用者の数の半分、また1/3程度の数の鍵をデジタルキーボックスで管理すれば済み、デジタルキーボックスをコンパクトにすることができる。
【0050】
尚、デジタルキーボックス30は、共通デジタル方式を採用しても、保管庫の使用履歴を電子キー1から読み取って記憶したり、有効時間データを電子キー1に書き込むことにより、個人デジタル方式と同様の作用効果を奏する。
【0051】
ところで、デジタルキーボックス30は、全ての電子キー1を貸し出してしまうと、複数の人が共通して使用する電子キー1に使用者の保管庫データとID番号を書き込んで当該使用者専用の鍵を発行できなくなる。この場合、その使用者は、保管庫を開錠して書類ファイルやCD−ROM、USBメモリなどの保管物を取り出すことができず不便である。そうかと言って、全ての電子キー1を個人用としたのでは、管理する電子キー1の数が増えてコストアップし、また使用頻度の低い者にまで電子キー1を1個与えるのは無駄である。そこで、デジタルキーボックス30は、キー孔ユニット38A〜38Jで管理する電子キー1をグループ化し、グループ毎に電子キー1を使用する条件を変えている。
【0052】
図5は、共通して使用される電子キー1(共通デジタルキー)をグループ化するときのプログラムを示すフローチャートである。このプログラムは、コントローラ44のROM46に記憶されている。
コントローラ44は、例えば、使用者がコントローラ44に共通デジタルキーのグループ化指令を入力した場合、或いは、直近に共通デジタルキーのグループ化をしてから一定期間(例えば1年)が経過して共通デジタルキーのグループ化指令を入力した場合に、共通デジタルキーをグループ化するための条件を設定する(S51:YES、S52)。条件設定は、共通デジタルキーのグループ化指令を入力する度にコントローラ44の管理者に入力させても良いし、直近の共通デジタルキーのグループ化で使用した条件を更新して使用しても良い。
【0053】
そして、設定された条件が、使用者の属性に関するものかを判断する。使用者の属性である場合には、共通デジタルキーとしての電子キー1を使用可能な使用者の属性(例えば、平社員クラス、課長クラス、部長クラス)をコントローラ44のメモリから読み出して取得する(S53:YES、S54)。そして、属性別に人数をカウントして、各グループに振り分ける共通デジタルキーの本数を決定する。例えば、共通デジタルキーとしての電子キー1を使用可能な使用者の数が30人である場合に、平社員クラスが20人、課長クラスが7人、部長クラスが3人であるとする。部長クラスは、電子キー1の使用頻度が高いと考えられるので、部長クラスのグループには部長クラスに属する人数に相当する3本の電子キー1を割り当てる。課長クラスは、部長クラスより電子キー1を使用する頻度が低いものの、平社員より使用頻度が高いと考えられる。そこで、平社員クラスの使用者が電子キー1を共有する割合より高い割合で、課長クラスのグループに電子キー1を割り当てる。例えば、課長クラスのグループには、3本の電子キー1を割り当て、平社員クラスのグループには、4本の電子キー1を割り当てる(S55)。
【0054】
そして、各グループに割り当てた電子キー1を管理するキー孔ボックス38を決定し、共通デジタルキーをグループ化する。例えば、部長クラスのグループの電子キー1は、キー孔ボックス38A〜38Cに管理させる。また、課長クラスのグループの電子キー1は、キー孔ユニット38D〜38Fに管理させる。更に、平社員クラスのグループの電子キー1は、38G〜38Jに管理させる(S56)。その後、処理を終了する。
【0055】
これにより、部長クラスの使用者は、デジタルキーボックス30へ来ればいつでも電子キー1を取り出すことができ、個人用の電子キー1と同様にして電子キー1を使用できる。また、課長クラスの使用者は、電子キー1を1個ずつ割り当てられないものの、平社員よりデジタルキーボックス30から電子キーを取り出しやすい。よって、使用者の属性によって共通デジタルキーをグループ化することにより、デジタルキーボックス30の電子キー1を全て平社員に貸し出して部長クラスや課長クラスの使用者が電子キー1を使用できない不具合を低減できる。
【0056】
設定条件が共通デジタルキーの使用頻度に関するものである場合には、履歴記憶部49から使用者の使用履歴を読み出し、使用頻度別に使用者をグループ化する。そして、使用頻度が多い使用者のグループには、そのグループに属する使用者がいつでも電子キー1を使用できるように、使用頻度が高い使用者の分だけ電子キー1を割り当てる。また、使用頻度が少ないグループには、残りの電子キー1を割り当てる。例えば、使用頻度が多い使用者のグループには、6本の電子キー1を割り当て、使用頻度が少ない使用者のグループには、残り4本の電子キー1を割り当てる(S57:YES、S58、S59)。そして、使用者属性の場合と同様にして、電子キー1をグループ化して処理を終了する(S56)。
【0057】
このように使用頻度によって共通の電子キー1をグループ化することにより、使用頻度が高い使用者が電子キー1を使用できない不具合を低減できる。
【0058】
設定条件が共通デジタルキーの使用時間帯に関するものである場合には、履歴記憶部49から使用者の使用履歴を読み出し、使用時間帯別に使用者をカウントして使用時間をグループ化する。そして、使用者の多い使用時間帯のグループには、割り当てる電子キー1の数を多くして、使用者の少ない使用時間帯のグループには、割り当てる電子キー1の数を少なくする。例えば、9時〜12時の使用時間帯のグループには、7本の電子キー1を割り当て、11時から14時の使用時間帯のグループには、3本の電子キー1を割り当てる。更に、13時〜16時の時間帯のグループは、9時〜12時の時間帯と重ならないため、7本の電子キー1を割り当てることにする(S60:YES、S61、S62)。そして、使用者属性の場合と同様にして、電子キー1をグループ化して処理を終了する(S56)。
【0059】
このように使用時間帯によって共通の電子キー1をグループ化することにより、時間帯別に決められた本数ずつ電子キー1をデジタルキーボックス30に残すことができる。
【0060】
このように共通の電子キー1をグループ化したデジタルキーボックス30は、ICカード読取部32が使用者のICカードから読み取った情報に基づいて、その使用者がどのグループの電子キー1を使用できる者かを判断する。例えば、使用者が課長クラスの者であれば、キー孔ユニット38D〜38Fの電子キー1を使用できると判断する。この場合、デジタルキーボックス30は、例えばキー孔ユニット38Dの電子キー1に当該使用者のIDコードと扉特定データを書き込み、ロック手段41Dを解除してLED43Dを点灯する。よって、使用者は、自分専用の鍵にされた電子キー1をキー孔ユニット38から持ち出して保管庫を開錠できる。
【0061】
その使用者が電子キー1を返却する場合には、デジタルキーボックス30は、ICカード読取部32が使用者のICカードから読み取った情報に基づいて、その使用者がどのグループの電子キー1を使用できる者かを判断する。そして、使用者が属するグループのキー孔ユニット38のうち電子キー1が錠前35に差し込まれていないキー孔ユニット38のロック手段41を開錠してLED43を点灯させる。例えば、先の課長クラスの使用者が、電子キー1を返却するときにキー孔ユニット38Dに電子キー1が差し込まれていない場合には、コントローラ44はロック手段41Dのロックを開錠してLED43Dを点灯させる。使用者は、LED43Dが点灯する錠前35Dに電子キー1を差し込んで返却する。尚、電子キー1の返却場所は、同一グループ内のキー孔ユニット38であれば、貸出場所と一致していなくても良い。よって、各グループの電子キー1は、各グループの電子キー1を管理するキー孔ユニット38の何れかに返却され、各グループに割り当てた電子キー1の数がずれない。
【0062】
従って、第1実施形態のデジタルキーボックス30は、、複数の電子キー1を、第1条件に従う第1グループと、第2条件に従う第2グループとにグループ分けするグループ作成手段(S53〜S62)を有するので、第1グループに属する電子キー1と、第2グループに属する電子キー1とを異なる条件(例えば、使用者の属性、使用者が共通デジタルキーを使用する頻度、共通デジタルキーを使用する時間帯)で使用者に使用させることができる。この結果、電子キー1の使用頻度が高い使用者や電子キー1の使用数が多い時間帯に電子キー1がデジタルキーボックス30に残っていないという共通デジタルキー方式特有の問題を解決できる。
【0063】
<併用方式>
併用方式は、一つのデジタルキーボックス30で、個人デジタルキー方式と共通デジタルキー方式とを併用して複数本の電子キー1を管理する方式である。個人デジタルキーと共通デジタルキーの基本的構成等は、上記個人デジタルキー及び共通デジタルキーと同じなので、相違する点のみ詳細に説明する。
併用方式では、例えば図1に示すデジタルキーボックス30において、キー孔ユニット38A〜38Gに個人デジタルキーとなる電子キー1を収容し、キー孔ユニット38H〜38Jに共通デジタルキーとなる電子キー1を収容する。
【0064】
個人デジタルキーとなる電子キー1を収容するキー孔ユニット38A〜38Gは、ICタグ13のデータを読み取るデータ読取手段42と、ICカード読取部32が特定の使用者を認識したときに、特定の使用者の扉特定データを持つ個人デジタルキーのロック手段41を解除する第1ロック解除手段を有する。
【0065】
一方、共通デジタルキーとなる電子キー1を収容するキー孔ユニット38H〜38Jは、個人認証手段であるICカード読取部32が特定の使用者を認識したときに、任意の共通デジタルキーのICタグ13に、特定の使用者のID番号、または使用者の扉特定データの少なくとも一方のデータを書き込むデータ書き込み手段39と、電子キー1をロックするロック手段41A,41B…と、任意の共通デジタルキーのロック手段41A,41B…を解除する第2ロック解除手段を有する。
【0066】
このようなデジタルキーボックス30は、例えば、保管庫を開閉する頻度が少ない者(平社員)には、個人デジタルキーとなる電子キー1を与えずに、キー孔ユニット38H〜38Jに収納されている電子キー1を使用させる。保管庫の開閉頻度が少ない者は、電子キー1の使用頻度が少ないからである。一方、デジタルキーボックス30は、例えば、保管庫を開閉する頻度が多い者(部長)には、個人デジタルキーとなる電子キー1を付与して、デジタルキーボックス30で管理する。
【0067】
デジタルキーボックス30は、ICカード読取部32が読み取ったID番号が、個人に1個電子キー1を与えられた者のID番号である場合には、個人デジタルキー方式に対応する制御プログラム50を実行する。これにより、デジタルキーボックス30は、ID番号に対応する使用者の電子キー1を収容するキー孔ユニット38についてロック手段41のロックを解除する。このとき、デジタルキーボックス30は、ロックを解除した電子キー1に有効時間データ書込手段40により有効時間データを書き込む。
【0068】
一方、デジタルキーボックス30は、ICカード読取部32が読み取ったID番号が、個人に1個電子キー1を与えられた者のID番号でない場合には、共通デジタルキー方式に対応する制御プログラムを実行する。これにより、デジタルキーボックス30は、キー孔ユニット38H〜38Jの何れかに収容する電子キー1に当該使用者が開錠権限を有する保管庫の扉特定データと、有効時間データと、個人のID番号を書き込み、電子キー1を当該使用者専用の鍵とする。そして、デジタルキーボックス30は、データを書き込んだ電子キー1を収容するキー孔ユニット38のロック手段41についてロックを解除し、専用鍵となった電子キー1を取り出し可能にする。
【0069】
このような併用方式では、保管庫を開閉する頻度が多い者は、自分の個人デジタルキーをデジタルキーボックス30に収納してあるので、デジタルキーボックス30へ行けば自分の電子キー1を取り出して保管庫を開錠し、保管物を使用できる。これに対して、保管庫を開閉頻度が少ない者は、共通の電子キー1を使用して保管庫を開錠し、保管物を使用することができる。
【0070】
よって、本実施例のデジタルキーボックス30によれば、電子キー1の使用頻度が低いものに対しては、共通の電子キー1にID番号と扉特定データを書き込んで専用鍵を作成し、貸し出すことができる。また、複数の使用者が共通の電子キー1を共用するので、デジタルキーボックス30は、使用者一人一人に付与した個人デジタルキーを管理する場合と比べて、管理する電子キー1の数を減らすことができる。
【0071】
<選択方式>
選択方式は、1つのデジタルキーボックス30について、個人デジタルキー方式と共通デジタルキー方式と併用方式とを使用者が選択する方式である。個人デジタルキーと共通デジタルキーの基本的構成等は、上記個人デジタルキー及び共通デジタルキーと同じなので、相違する点のみ詳細に説明する。
選択方式では、例えば図1に示すデジタルキーボックス30のICカード読取部32において個人IDを読み取り、その個人IDがデジタルキーボックス30の管理者である場合のみ、テンキー操作部33を用いて個人デジタルキー方式と共通デジタルキー方式と併用方式とを選択可能にする。方式選択が終了すると、デジタルキーボックス30は、選択された方式に従ってキー孔ユニット38に収納された電子キー1を管理する。このようなデジタルキーボックス30は、電子キー1の管理方式を任意に選択できるので、使い勝手が良い。
【0072】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。図8は、デジタルキーボックス60の外観斜視図である。
第2実施形態のデジタルキーボックス60は、非接触式ICタグ62を搭載したICカード61(デジタルキーの一例)を複数保管可能である点が、電子キー1を複数保管するデジタルキーボックス30と相違する。よって、ここでは、第1実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点は、図面に同一符号を付し、説明を適宜省略する。
【0073】
図8に示すデジタルキーボックス60は、認証ボックス70とカード収納ボックス80とを一体にしたものである。認証ボックス70は、液晶表示部34の下に、指紋読み取り部71が設けられている。認証ボックス70は、デジタルキーボックス60の動作を制御するための制御装置72(個人認証手段、データ書き込み手段、ロック解除手段、グループ作成手段、有効時間データ書込手段の一例)を内蔵している。
【0074】
一方、カード収納ボックス80は、箱状の筐体81に開閉扉82が回動可能に保持されている。筐体81には、図示しない電子錠(開閉許可手段の一例)が取り付けられている。図示しない電子錠は、開閉扉82の係合部83に係合して開閉扉82の開閉を制限する。筐体81の中空部84には、2個のカード収納ユニット85A,85Bが固定して取り付けられている。各カード収納ユニット85A,85Bは、収納装置90A〜90E,90F〜90Jを備える。
【0075】
図9は、カード収納ユニット85Aを正面側から見た外観斜視図である。図10は、カード収納ユニット85Aを背面側から見た外観斜視図である。図11は、図9のA−A断面図である。図12は、図10のB−B断面図である。尚、カード収納ユニット85Bは、カード収納ユニット85Aと同一構成であるので、説明を省略する。
カード収納ユニット85Aは、収納装置90A〜90Eがカバープレート86に保持されている。カード収納ユニット85Aは、カバープレート86の係止爪86aを筐体81(図8参照)に係止させることにより、筐体81に取り出し不能に取り付けられる。
【0076】
図9に示すように、カバープレート86には、収納装置90A〜90Eを位置決めして挿入口95を露呈させるように、開口部87A〜87Eが形成されている。図9及び図10に示すように、収納装置90は、樹脂製の第1及び第2ケース部材92,93を重ねたケース91にリードライタ部98を重ね、それらを固定ねじ106で固定することにより、外観が構成されている。
【0077】
図12に示すように、ケース91は、第1及び第2ケース部材92,93の間に収納部99が形成されている。第1及び第2ケース部材92,93は、一端が折り返されて表面パネル部92a,93aを有する。その表面パネル部92a,93aの間に、ICカード61を収納部99へ挿入させるための挿入口95が形成されている。
【0078】
図9及び図11に示すように、第1及び第2ケース部材92,93は、表面パネル部92a,93aの中央に凹部92b,93bを形成し、収納部99に収納したICカード61を取り出しやすくしている。図9に示すように、挿入口95の上側には、LED94が設けられ、ICカード61の取出位置又は返却位置を使用者に知らせるようになっている。
【0079】
図12に示すように、ケース91は、挿入口95の奥側に、遮蔽部材102が移動可能に配置されている。第1ケース部材92には、ソレノイド100がプランジャ101を下向きにして固定されている。プランジャ101には、遮蔽部材102が連結ピン103を介して連結されている。よって、ソレノイド100の非駆動時には、プランジャ101がソレノイド100から突出して、挿入口95を遮蔽する遮蔽位置に遮蔽部材102を配置する。一方、ソレノイド100の駆動時には、プランジャ101がソレノイド100に吸引され、挿入口95を開放する開放位置に遮蔽部材102を配置する。尚、第2実施形態では、ICカード61の着脱を制限するロック手段105は、ソレノイド100、プランジャ101、遮蔽部材102、連結ピン103により構成されている。
【0080】
図10及び図11に示すように、収納装置90A〜90Eは、表面パネル92a,93aを互いに接着されて一体化され、カバープレート86に取り付けられている。カバープレート86には、金属製の支持部材89が収納装置90A〜90Eの下側にそれぞれ固設され、絶縁部材88を介して収納装置90A〜90Eを支持している。そのため、収納装置90A〜90Eは、自重によって傾かない。
【0081】
リードライタ部98とロック手段105のソレノイド100とLED94は、図8に示す認証ボックス70の制御装置72に接続されている。制御装置72には、デジタルキーボックス60を開閉する権限を有する使用者の指紋が予め登録されている。制御装置72は、使用者を識別するための使用者ID、デジタルキーボックス60を開閉する権限、及び、ICカードや保管庫の使用履歴を、登録された指紋に関連付けて記憶している。また、制御装置72は、ICカード61を個人デジタルキー又は共通デジタルキーとして使用するためのフローチャートを格納している。
【0082】
<動作説明>
デジタルキーボックス60は、非接触式ICタグ62を搭載するICカード61を保管することを除き、第1実施形態のデジタルキーボックス30と同様に動作する。以下、デジタルキーボックス60の動作を簡単に説明する。
デジタルキーボックス60は、待機中、制御装置72が収納装置90A〜90Jのソレノイド100に通電しないため、ロック手段105が遮蔽部材102を遮蔽位置に配置して、ICカード61を取り出せないようにしている。
【0083】
使用者が指紋読み取り部71に指を擦って指紋を読み取らせると、デジタルキーボックス60の制御装置72は、ICカード61の有無を確認する。そして、ICカード61がデジタルキーボックス60に1枚もない場合には、液晶表示部34にその旨を表示する。一方、ICカード61がデジタルキーボックス60に有る場合には、指紋読み取り部71が読み取った指紋を、制御装置72に登録された指紋と照合する。指紋読み取り部71が読み取った指紋が、登録された指紋と一致しない場合には、制御装置72は、図示しない電子錠を駆動させず、カード収納ボックス80の開閉をさせない。
【0084】
一方、指紋読み取り部71が読み取った指紋が、登録された指紋と一致する場合には、当該使用者の個人用ICカード61が収納装置90A〜90Jに収納されているか判断する。個人用ICカード61が、例えば収納装置90Jに収納されている場合には、収納装置90Jのソレノイド100に通電して遮蔽部材102を遮蔽位置から開放位置へ移動させると共に、収納装置90JのLED94を点灯させる。使用者が、収納装置90JからICカード61を取り出したら、制御装置72は、読み取った指紋とICカード61が持ち出された日時とを記憶する。
【0085】
これに対して、個人用ICカード61が収納装置90A〜90Jに収納されていない場合には、ICカード61を1枚選んで非接触式ICタグ62に読み取った指紋を書き込む。ここでは、収納装置90Aに収納されているICカード61に指紋を書き込んだものとする。そして、制御装置72は、収納装置90Aのソレノイド100に通電して遮蔽部材102に挿入口95を開放させる。また、制御装置72は、収納装置90AのLED94を点灯させ、抜き出し可能なICカード61の位置を使用者に知らせる。使用者がICカード61を挿入口95から抜き取ると、制御装置72は、個人用ICカード61と同様にして、ICカード61の利用履歴を記憶する。そして、制御装置72は、開閉扉82が閉じられたことを検出すると、ソレノイド100への通電を停止し、遮蔽部材102に挿入口95を遮蔽させる。
【0086】
ICカード61を使用して保管庫から保管物を取り出す又は返却する場合には、使用者は、ICカード61を保管庫の認証装置にかざす。すると、保管庫は、ICカード61に記憶された指紋を読み取って、保管庫側の制御装置に登録された指紋と照合し、ICカード61から読み取った指紋が登録された指紋と一致する場合に限り、保管庫の開閉を許可する。
【0087】
ICカード61をデジタルキーボックス60に返却する場合には、使用者は、指紋読み取り部71に指紋を読み取らせて開閉扉82を開く。制御装置72は、例えば、ICカード61が収納されていない収納装置90CのLED94を点滅させ、返却位置を使用者に知らせる。また、制御装置72は、収納装置90Cのソレノイド100に通電して、遮蔽部材102に挿入口95を開放させる。使用者が収納装置90Cの収納部99にICカード61を収納し、開閉扉82を閉じると、制御装置72は、ICカード61の非接触式ICタグ62から指紋を読み取り、指紋読み取り部71で読み取った指紋と一致するか判断する。
【0088】
ICカード61の非接触式ICタグ62から読み取った指紋が、指紋読み取り部71が読み取った指紋と一致する場合には、制御装置72は、指紋読み取り部71が読み取った指紋とICカード61の返却日時を記憶する。
一方、ICカード61の非接触式ICタグ62から読み取った指紋が、指紋読み取り部71が読み取った指紋と一致しない場合には、警報を発し、管理者に異常を通知する。
【0089】
<作用効果>
従って、第2実施形態のデジタルキーボックス60は、第1実施形態のデジタルキーボックス30において保管対象物を電子キー1からICカード61に変えたものなので、第1実施形態のデジタルキーボックス30と同様の作用効果を奏する。
【0090】
簡単に説明すると、デジタルキーボックス60は、複数人が共通して使用するICカード61に特定の使用者の指紋(使用者特定情報)を書き込むことにより、当該使用者専用のICカード61を作成する。そして、指紋を書き込んだICカード61のソレノイド100に通電して遮蔽部材102を開放位置に配置し、ICカード61を取り出し可能にする。よって、デジタルキーボックス60は、使用者の数の分だけICカード61を管理する必要がなく、デジタルキーボックス60をコンパクトにできる。
【0091】
また、デジタルキーボックス60は、複数人が共通して使用するICカード61(共通デジタルキー)に加え、予め特定の使用者の指紋をICカード61に書き込んだ個人用のICカード61(個人デジタルキー)を管理する場合には、指紋認証で特定された使用者が個人用ICカード61を有する者である場合には、個人用ICカード61のソレノイド100に通電して個人用ICカード61を取り出し可能とする一方、指紋認証で特定された使用者が個人用ICカード61を有する者でない場合には、共通ICカード61に読み取った指紋を書き込んで、データを書き込んだICカード61に対応するソレノイド100に通電することにより、ICカード61を取り出し可能にする。よって、デジタルキーボックス60は、使用者に個別に付与した個人用のICカード61を管理する場合と比べ、ICカード61の管理枚数を減らし、デジタルキーボックス60をコンパクトにすることができる。
【0092】
尚、デジタルキーボックス60は、条件(使用者の属性、使用者がICカード61を使用する頻度、ICカード61を使用する時間帯など)によって共通ICカード61をグループ分けするようにすれば、異なる条件で共通ICカード61を貸し出すことができ、共通ICカード61の不足を回避できる。
また、ICカード61に有効時間を書き込めば、有効時間経過後にICカード61が鍵としての機能を失うため、ICカード61が不正使用される危険を回避できる。
【0093】
また、デジタルキーボックス60は、指紋認証により権限認証に成功した場合に、例えば、特定の収納装置90Aのロック手段105を解除して、収納装置90AからのみICカード61を持ち出すことを許可するので、無断でICカード61が持ち出されることがない。よって、デジタルキーボックス60を用いて複数のICカード61を保管することにより、ICカード61を厳重に管理することができる。
【0094】
第2実施形態のデジタルキーボックス60は、認証部70と保管庫の認証に共通して使用される生体情報をICカード61に書き込む。そのため、認証部79に指紋を読み取る指紋読み取り手段71を設ければ、保管庫側に指紋読み取り手段を設ける必要がなくなり、保管庫のコストダウンを図ることができる。
【0095】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
(1)上記第1実施形態のデジタルキーボックス30では、開閉扉31を取り付けているが、開閉扉31を取り付けなくても、ロック手段41により、電子キー1の取り出しを管理することができる。
(2)共通デジタルキー方式に関する上記第1実施形態によれば、使用者が使用したい保管庫の番号を入力しているが(S34)、個人認証を行っているので(S32)、コントローラ44が、個人認証した使用者が開錠できる保管庫をアクセス権記憶部48に問い合わせ、使用者がアクセス権を有する保管庫の識別番号を全て扉特定データとして電子キー1のICタグ13に書き込んでも良い(S36)。それにより、使用者が個別の保管庫番号を入力する手間を省くことができる。
(3)上記第1実施形態では、電子キー1が接触式ICタグ13を備えるが、接触式ICタグ13に代えて非接触式ICタグを使用してもよい。そして、非接触式ICタグにデータを読み書きするリーダライタ装置を、デジタルキーボックス30のキー孔35に設けてもよい。
(4)上記第1実施形態において、ICカードに個人のID番号や指紋情報などの個人識別情報を記憶させ、それに基づいて個人認証しても良い。そして、ICカードから読み取った個人識別情報を電子キー1に記憶させ、保管庫側の権限認証に用いても良い。
(5)上記第2実施形態では、デジタルキーボックス60と保管庫が指紋に基づいて権限認証したが、指紋以外のID情報や、静脈、顔など個人を識別できるものであれば、それらの情報に基づいて権限認証をデジタルキーボックス60や保管庫に行わせても良い。
(6)上記第2実施形態では、非接触式ICタグ62を搭載するICカード61を用いたが、ICカードは、接触式ICタグを備えるものであっても良い。
(7)上記第2実施形態では、デジタルキーボックス60がICカード61を保管するが、デジタルキーになり得る電子キーや携帯端末などをデジタルキーボックス60に保管するようにしても良い。
(8)上記実施形態では、保管庫の開錠に使用される電子キー1とICカード61を管理するデジタルキーボックス30,60を説明した。これに対して、デジタルキーボックス30,60は、保管庫や机の引き出しや、部屋の出入り口に設けられた出入口扉、入退室管理システムにおける入退室制限用のバーの開閉に使用される電子キー1やICカード61を管理するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1実施形態に係るデジタルキーボックスの正面図である。
【図2】デジタルキーボックスの制御構成を示すブロック図である。
【図3】電子キーを個人デジタルキーとして使用するときの制御方法を示すフローチャートである。
【図4】電子キーを共通デジタルキーとして使用するときの制御方法を示すフローチャートである。
【図5】共通デジタルキーをグループ化するときの制御方法を示すフローチャートである。
【図6】電子キーを示す平面図である。
【図7】電子キーの電気回路構成を示す回路図である。
【図8】第2実施形態に係るデジタルキーボックスの外観斜視図である。
【図9】カード収納ユニットを正面側から見た外観斜視図である。
【図10】カード収納ユニットを背面側から見た外観斜視図である。
【図11】図9のA−A断面図である。
【図12】図10のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 電子キー(デジタルキー、個人デジタルキー、共通デジタルキーの一例)
30,60 デジタルキーボックス
40 有効時間データ書込手段
41A,41B,105 ロック手段
61 ICカード(デジタルキー、個人デジタルキー、共通デジタルキーの一例)
62 非接触式ICタグ
72 制御装置(個人認証手段、データ書き込み手段、ロック解除手段、グループ作成手段、有効時間データ書込手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の扉を開錠するために複数の使用者により共通に使用される共通デジタルキーを集中して保管管理するためのものであって、該共通デジタルキーが装着され、個人認証手段を有するデジタルキーボックスにおいて、
前記共通デジタルキーがICタグを備えるデジタルキーであり、前記ICタグが使用者を識別するための使用者識別情報と、前記複数の扉のうち前記使用者が開錠許可を有している2以上の扉を特定する扉特定データとを記憶すること、
前記デジタルキーボックスが、
前記個人認証手段が特定の使用者を認識したときに、任意の前記共通デジタルキーの前記ICタグに、該当する使用者の前記使用者識別情報、または該当する使用者の前記扉特定データの少なくとも一方のデータを書き込むデータ書き込み手段と、
前記共通デジタルキーの着脱を制限するロック手段と、
前記データ書き込み手段が前記ICタグにデータを書き込んだ共通デジタルキーの着脱制限を前記ロック手段に解除させるロック解除手段を有すること、
を特徴とするデジタルキーボックス。
【請求項2】
複数の扉を開錠するために使用者により使用されるデジタルキーを集中して保管管理するためのものであって、該デジタルキーが装着され、個人認証手段を有するデジタルキーボックスにおいて、
前記デジタルキーが、
ICタグを備え、前記ICタグが使用者を識別するための使用者識別情報と、前記複数の扉のうち前記使用者が開錠許可を有している2以上の扉を特定する扉特定データとを記憶するものであり、個人に1個ずつ割り当てられる個人デジタルキーと、
ICタグを備え、前記ICタグが使用者を識別するための使用者識別情報と、前記複数の扉のうち前記使用者が開錠許可を有している2以上の扉を特定する扉特定データとを記憶するものであり、複数の使用者により共通に使用される共通デジタルキーと、を含み、
前記デジタルキーボックスが、
前記個人認証手段が特定の使用者を認識したときに、任意の前記共通デジタルキーの前記ICタグに、該当する使用者の前記使用者識別情報、または該当する使用者の前記扉特定データの少なくとも一方のデータを書き込むデータ書き込み手段と、
前記デジタルキーの着脱を制限するロック手段と、
前記個人認証手段により認識に成功した特定の使用者が個人デジタルキーを付与された者であるときには、前記特定の使用者の使用者識別情報を持つ前記個人デジタルキーの着脱制限を前記ロック手段に解除させ、前記個人認証手段により認証に成功した特定の使用者が個人デジタルキーを付与された者でないときには、前記データ書き込み手段が前記データを書き込んだ前記共通デジタルキーの着脱制限を前記ロック手段に解除させるロック解除手段を有すること、
を特徴とするデジタルキーボックス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するデジタルキーボックスにおいて、
複数の前記共通デジタルキーを、第1条件に従う第1グループと、第2条件に従う第2グループとにグループ分けするグループ作成手段を有する
ことを特徴とするデジタルキーボックス。
【請求項4】
請求項3に記載するデジタルキーボックスにおいて、
前記グループ作成手段は、前記使用者の属性、前記使用者が前記共通デジタルキーを使用する頻度、前記共通デジタルキーを使用する時間帯の少なくとも一つに基づいて、前記第1及び前記第2グループを作成する
ことを特徴とするデジタルキーボックス。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載するデジタルキーボックスにおいて、
前記扉特定データを用いて前記扉を開錠可能な有効時間を示す有効時間データを前記ICタグに書き込む有効時間データ書込手段を有する
ことを特徴とするデジタルキーボックス。
【請求項6】
請求項5に記載するデジタルキーボックスにおいて、
前記有効時間データ書込手段は、使用者の属性、保管物の種類、扉の設置場所の少なくとも一つに応じて前記有効時間を変更して前記ICタグに書き込むものである
ことを特徴とするデジタルキーボックス。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載するデジタルキーボックスにおいて、
前記使用者識別情報が、前記個人認証手段と、前記扉の開閉権限を認証して前記扉の開閉を許可する手段とに共通して使用される生体情報である
ことを特徴とするデジタルキーボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−95913(P2010−95913A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267897(P2008−267897)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(391020322)東海理研株式会社 (42)
【Fターム(参考)】