説明

デジタル無線機

【課題】送信特性の安定性を保つためには、出力レベルを規定値に保たなければならないが、電力増幅器の出力レベルは経年変化、温度変化などで頻繁に変動する。このため、緩やかに適正な電力レベルに合せるように、大きな時定数での制御が必要とされる。しかし、TDMA方式等のように、送信と送信停止を短時間で繰り返すバースト送信を行う場合には、送信時間を短くする必要があるため、送信出力を適正レベルに合せるのは非常に困難であった。また、ピークファクタが大きいと、ピーク値を平均化し適正な電力レベルに合せるまでの間は、送信出力レベルが所定の範囲内を越えてしまうこともあった。
【解決手段】レベル検波した帰還信号データを送信中のみ取り込んで平均値を求め、その平均値が規定値となるように帰還側のレベルを変化させる。また、ベースバンド信号出力レベル最大の状態が続いている時は、事前に求めた固定値によって帰還側のレベルを変化させることにより、通信方式、変調方式によらずに出力レベルを規定値に保ち送信特性の劣化を防いだものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デジタル信号処理を用いて、出力レベルを所定の範囲内に保つための制御を行う負帰還方式のデジタル無線機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】線形デジタル変調方式、例えば、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)やπ/4シフトQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)等を利用した無線システムにおいては、電力増幅器の非線形歪みを補償することが必須技術であり、各種の非線形歪み補償方式(リニアライザ)が用いられている。中でもカーテシアンループの負帰還方式のリニアライザは広く利用されている。
【0003】従来のデジタル無線機を図2によって説明する。図2は出力レベルを一定に保つ機能を持ったカーテシアンの負帰還方式のリニアライザを使ったデジタル無線機の送信部の構成を示すブロック図である。
【0004】18はデジタル信号源、19はマッピング部、20-1と20-2はフィルタ部、1はデジタル信号源18及びマッピング部19並びにフィルタ部20-1と20-2で構成されたベースバンド信号発生器、2-1と2-2は加算器、3-1と3-2はループフィルタ(LPF)、4は直交変調器、5は第1のバンドパスフィルタ(BPF)、6は第1のミキサ、7は第2のバンドパスフィルタ(BPF)、8は電力増幅器(PA)、9はアンテナ、10は方向性結合器、11は基準信号発生器、12は第1のPLL(Phase Locked Loop)周波数シンセサイザ、13は第2のPLL周波数シンセサイザ、14は可変アッテネータ(可変ATT)、15は第2のミキサ、16は直交復調器、17は位相制御器、25はレベル検波部、26はレベル制御部である。
【0005】デジタル信号源18の出力はマッピング部19に接続され、マッピング部19の同相成分出力はフィルタ部20-1に接続され、同様に、マッピング部19の直交成分出力はフィルタ部20-2に接続される。フィルタ部20-1の出力は加算器2-1の加算(+)入力側端子に接続され、加算器2-1の出力はLPF3-1に接続され、LPF3-1の出力は直交変調器4に接続される。同様に、フィルタ部20-2の出力は加算器2-2の加算(+)入力側端子に接続され、加算器2-2の出力はLPF3-2に接続され、LPF3-2の出力は直交変調器4に接続される。直交変調器4の出力は第1のBPF5に接続され、第1のBPF5の出力は第1のミキサ6に接続される。第1のミキサ6の出力は第2のBPF7に接続され、第2のBPF7の出力はPA8に接続される。PA8の出力は方向性結合器10に接続され、方向性結合器10の出力はアンテナ9と可変ATT14とレベル検波部25に接続される。レベル検波部25の出力はレベル制御部26に接続され、レベル制御部26の出力は可変ATT14の制御端子に接続される。可変ATT14の出力は第2のミキサ15に接続され、第2のミキサ15の出力は直交復調器16に接続される。直交復調器16の同相成分出力は加算器2-1の減算(-)入力側端子に接続され、同様に、直交復調器16の直交成分出力は加算器2-2の減算(-)入力側端子に接続される。基準信号発生器11の出力は第1のPLL周波数シンセサイザ12と第2のPLL周波数シンセサイザ13とに接続され、第2のPLL周波数シンセサイザ13の出力は第2のミキサ15に接続される。第1のPLL周波数シンセサイザ12の出力は直交変調器4と位相制御器17に接続され、位相制御器17の出力は直交復調器16に接続される。
【0006】図2において、デジタル信号源18より出力された信号をマッピング部19に与える。マッピング部19は、無線機によって指定された変調方式(例えば、QPSK変調方式)に従って入力信号をマッピングする。マッピングされた信号は、マッピング部19より同相成分信号Iと直交成分信号Qとして出力され、同相成分信号Iはフィルタ部20-1を通り不要な成分を除去され、また、直交成分信号Qはフィルタ部20-2を通り不要な成分を除去される。これにより、ベースバンド信号の同相成分信号Iと直交成分信号Qとが、ベースバンド信号発生器1からそれぞれ出力される。
【0007】ベースバンド信号発生器1から出力された同相成分Iは、加算器2-1で帰還側の同相信号iと加算されて出力され、直交成分Qは加算器2-2で帰還側の直交成分信号qと加算されて出力される。加算器2-1の出力はLPF3-1に与えられ、LPF3-1によって帯域制限され直交変調器4に与えられる。同様に、加算器2-2の出力はLPF3-2に与えられ、LPF3-2によって帯域制限され直交変調器4に与えられる。
【0008】基準信号発生器11は基準周波数信号を発生し、第1のPLL周波数シンセサイザ12と第2のPLL周波数シンセサイザ13とに基準周波数信号を与える。第1のPLL周波数シンセサイザ12は、入力した基準周波数信号をもとに第1の局部発振信号(LO1)を発生し、直交変調器4と位相制御器17とに与える。また、第2のPLL周波数シンセサイザ13は、入力した基準周波数信号をもとに第2の局部発振信号(LO2)を発生し、第1のミキサ6と第2のミキサ15とに与える。位相制御器17は入力した第1の局部発振信号の位相を制御して、移相した信号を直交復調器16に与える。
【0009】直交変調器4は、入力したベースバンド信号の同相成分I′と直交成分Q′を、第1のPLL周波数シンセサイザから与えられた第1の局部発振信号によって、IF(中間)周波数帯に変調して被変調波信号を第1のBPF5に与える。第1のBPF5は、入力した被変調波から不要周波数成分を除去し第1のミキサ6に与える。次に、第1のミキサ6は入力した信号を第2のPLL周波数シンセサイザ13から与えられた第2の局部発振信号によって所望の周波数に変換して第2のBPF7に与える。第2のBPF7は、入力した被変調波から不要なスプリアス成分を除去しPA8に与える。更にPA8において、入力した信号を規定された所定の出力レベルまで信号を増幅し、方向性結合器10を介してアンテナ9から出力する。
【0010】この無線機の送信部はカーテシアンループによる負帰還リニアライザの構成をとっている。方向性結合器10は、PA8の出力信号の一部を分波し、可変ATT14とレベル検波部25とに与える。可変ATT14を通った信号は第2のミキサ15に与えられる。第2のミキサ15は、第2の局部発振信号によって可変ATT14から入力した信号の周波数をIF周波数まで周波数変換し、直交復調器16に与える。直交復調器16は、位相制御器17から与えられる周波数信号により、入力したIF周波数信号を直交復調して出力し、ベースバンド信号の同相成分iを加算器2-1の減算(-)入力側に与え、直交成分qを加算器2-2の減算(-)入力側に与える。
【0011】上記のように、加算器2-1と2-2では、入力信号IとQとが帰還信号iとqとによりそれぞれ減算され負帰還がかけられる。このような動作により非線形歪み補償された変調信号が得られる。ところが、無線機の性能の1つに出力レベルの安定化があるが、一般には、例えば図2で示したPA8の出力レベルを一定に保つことで安定化される。しかし、フィードバック方式の場合、PA8の出力レベルを一定に保つためには、帰還側での調整が必要となる。その技術を図3によって説明する。
【0012】図3はフィードバック方式のリニアライザの原理構成図である。31は信号入力端子、32は加算器、33はフォワード部、34は歪み入力端子、35は歪み加算器、36は信号入力端子、37はフィードバック部である。入力端子31から関数x(t)の信号が与えられて加算器32の加算(+)入力側に入力し、加算器32の出力はフォワード部33で増幅され、歪み加算器35に入力する。また、この図3ではフォワード部33で発生する関数D(t)の歪み成分を、歪み入力端子34から歪み加算器35に与えている。次に、歪み加算器35の出力は、信号出力端子36から関数y(t)の信号を出力すると共に、フィードバック部37に与えられる。フィードバック37の出力は、加算器32の減算(-)入力側に入力する。
【0013】さて、この図3において、フォワード部33のゲイン(フォワードゲイン)をA、フィードバック部37のゲイン(フィードバックゲイン)をβ、ループ利得をA・βとおくと、A・β≫ 1の条件下での関数y(t)で表される信号出力は、式(1)のように表すことができる。
【数1】


【0014】つまり、出力レベルはフィードバックゲインβのみで決まり、フィードバックゲインβを動かせば出力が変化することがわかる。そこで、常に適正な電力レベルに調整するために、図2においては、レベル検波部25に方向性結合器10によって、PA8の分波出力を与え、レベル検出部25で出力レベルを検出し、出力レベル情報をレベル制御部26に与える。レベル制御部26は、入力した出力レベル情報に応じて可変ATT制御信号を可変ATT14に与えて可変ATT14の減衰量を変化させ、方向性結合器10によってアンテナ9から出力する信号のレベルを一定となるように制御している。
【0015】この時、経年変化や温度変化等時間の長い変動に追従させ、出力信号を適正レベルにするため、緩やかに適正な電力レベルに合わせるように、例えば可変ATT制御信号に時定数(例えば数sec)を持たせる等、レベル制御部26で可変量を制御する。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】前述の従来技術には、出力レベルの制御を行うために、経年変化や温度変化等時間の長い変動に追従させるため、その変動要因の性質から、緩やかに適正な電力レベルに合せるように、時定数(例えば数sec)の大きい制御が必要とされる。しかし、TDMA方式等のように、送信と送信停止を短時間で繰り返すバースト送信を行う場合には、送信時間を短く(例えば数msec)する必要があるため、送信出力を適正レベルに合せるのは非常に困難であるという欠点があった。また、無線通信を行う場合、基地局(制御局)と移動局(端末局)とで同期をとらせるため、ベースバンド信号出力レベルを最大(マッピング移動距離最大)にして送信することがある。この時、送信出力レベル(ベースバンド信号出力レベル)のピーク値と平均値の差(ピークファクタ)が大きいと、ピーク値を平均化し適正な電力レベルに合せるまでの間は、送信出力レベルが所定の範囲内を越えてしまうこともあるという欠点があった。特に、16QAMのように振幅の異なるマッピング点の組合せで、さらに対角にあるマッピング点への変位が可能な線形デジタル変調方式の場合には、ピークファクタが大きく、また送信出力レベルが大きくなる確率が高くなる。本発明の目的は、上記のような欠点を除去し、通信方式、変調方式によらず、バースト送信を行う場合にも出力レベルを規定値に保つことが可能な無線機を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の無線機の送信部では、レベル検波出力をデジタル信号へ変換して取り込んだ検波データの、例えば平均値を取り、その平均値をもとに出力レベルが規定値となるよう可変アッテネータを制御することで、出力レベルを適正な電力レベルに保ち送信特性の劣化を防いだものである。この時、ベースバンド信号発生器内のマッピング部より得られるマッピング値の変位した移動距離により、ベースバンド信号出力レベル最大の状態が続いていると判断した場合には、事前に調整した、ピーク値出力時に適正電力レベルへ合わせるための可変アッテネータ制御量によって、可変アッテネータを制御するように切換える。また、出力信号源から得られる送信開始と停止の信号により、送信中のみ検波データを取り込み、平均値を求めることにより、バースト送信等の通信方式でも出力レベルを規定値に保ち、送信特性の劣化を防いだものである。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の一実施例を図1によって説明する。図1は本発明を用いたデジタル無線機の送信部の構成を示すブロック図である。従来技術で説明した図2の構成要素と同一の機能の構成要素には同一の番号を付した。その他、18′はデジタル信号源、19′はマッピング部、21はコントロール制御部、22は出力レベル制御部、1′はデジタル信号源18′,マッピング部19′,フィルタ部20-1と20-2,コントロール制御部21,出力レベル制御部22とで構成されたベースバンド信号発生器、23はD/A変換器、24はA/D変換器である。
【0019】図1の接続は、図2で説明した接続とほぼ同じである。ただし、デジタル信号源18とマッピング部19の代わりにデジタル信号源18′とマッピング部19とが入っている。また、レベル制御部26の出力は可変ATT14ではなくA/D変換器24に接続される。更に、A/D変換器24の出力は出力レベル制御部22に接続され、出力レベル制御部22の出力はD/A変換器23に接続され、D/A変換器23の出力が可変ATT14に接続される。また、マッピング部19′から新規にマッピングの移動距離情報の出力がコントロール制御部21に接続される。コントロール制御部21の送信オン/オフ信号出力がデジタル信号源18′に接続され、更に、コントロール制御部21の平均値算出オン/オフ信号出力が出力レベル制御部22に接続され、同様に、コントロール制御部21のデータ出力変更信号出力が出力レベル制御部22に接続される。
【0020】図1において、ベースバンド信号発生器1′からは、図2で説明した動作と同じ動作で、ベースバンド信号の同相成分信号Iと直交成分信号Qとが出力される。また、ベースバンド信号発生器1′から出力されるベースバンド信号の同相成分信号Iと直交成分信号Qとが加算器2-1と2-2にそれぞれ与えられ、アンテナ9から出力されるまでの動作と、方向性結合器10によって分波された信号が加算器2-1と加算器2-2に帰還するまでの動作は、図2で説明した動作と同じなので説明を省略する。
【0021】しかし、図1においては、ベースバンド信号発生器1′からベースバンド信号を出力するか否かの制御は、コントロール制御部21がオンオフ信号(オン/オフのコントロール信号)を送ることによって行い、同時に出力レベル制御部22にもそのコントロール信号を与える。このオン/オフのコントロール信号によって、出力レベル制御部22は、A/D変換器24から与えられるデジタルデータを取込み、平均値を算出する処理動作を行うか、またはその処理動作を停止するかの切換えを行う。
【0022】さて図1において、方向性結合器10によって、出力信号の電力の一部を帰還し、可変ATT14で帰還した電力レベルを適正な値に変換する場合、方向性結合器10で帰還した出力信号をレベル検波部25に与え、レベル検波部25で入力信号をレベル検波してA/D変換器24に与える。A/D変換器24は、レベル検波された信号をデジタルデータに変換して出力レベル制御部22に与える。出力制御部22は、ベースバンド信号が出力されている場合には、A/D変換器24から入力するデジタルデータを取込む処理動作を行い、取込んだデータの平均値を算出し、平均値に応じて、PA8の出力レベルが規定値になるようにD/A変換器23を介して可変ATT14に制御信号を与え、送信出力が規定レベルとなるように帰還信号の電力レベルを制御する。
【0023】この出力レベル制御部22での平均値の算出動作のオン/オフは、コントロール制御部21から与えられる平均値算出オン/オフ信号によって制御される。送信中のみA/D変換器24から与えられるデジタルデータを取込むように制御され、取込まれたデジタルデータの平均値を算出する。即ち、マッピング部19′で得られたマッピング移動距離の情報がコントロール制御部21に与えられ、コントロール制御部21はマッピング値の移動距離の判定を行なう。例えば、マッピング値の移動距離が予め定められた所定の値以上の場合には、平均値算出オフ信号を出力レベル制御部22に与える。平均値算出オフ信号が入力する出力レベル制御部22では、A/D変換器24から与えられるデータの取込み動作と平均値算出動作を止める。
【0024】コントロール制御部21では、平均値算出オフ信号を出力すると同時に、出力レベル制御部22に対して、固定データを出力させるためのデータ出力変更信号を与える。固定データは、出力レベル制御部22がD/A変換器23を介して可変ATT14に与える制御値として、予め定められた定数値で出力レベル制御部22に保存されており、送信出力をピーク値出力とした時に適正な電力レベルとなるように可変ATT14を制御する。この値は事前に実験的に求めておく。これによって、基地局(制御局)と移動局(端末局)とで同期をとらせるため、ベースバンド信号出力レベルを最大、即ち、マッピング移動距離最大にして送信する場合に、特に、16QAMのようにピークファクタが大きい変調方式でも、ピーク値を平均化し適正な電力レベルに合せるまでの間に送信出力レベルが所定の範囲内を超えてしまうことがない。
【0025】また、送信停止時(ベースバンド信号発生器1′からベースバンド信号が出力されていない時)には、最後に算出した制御値に固定して(減衰量を固定して)可変ATT14を制御する。したがって、次の送信開始時には、送信停止直前に設定されていた減衰量が可変ATT14に保持されている。
【0026】なお、上記の平均化算出処理は、例えば、デジタル無線機の電源がオンされてからオフ(リセット含む)されるまでの送信中の間、続けて実行される。したがって、平均値は送信を停止していても保持されており、次の送信開始時には保持されていた平均値に応じて可変ATT14に制御信号を与える。また、平均化処理を実行する回路としては、例えば平滑化回路が使用される。更に、上記実施例では、コントロール制御部21で送信動作のオン/オフを行っているが、逆に、信号源18′から出力される送信信号にオン/オフ信号を付加して、コントロール制御部21を制御する方法でもよい。
【0027】本発明のデジタル無線機の一実施例の送信動作と可変ATT14の制御状態との関係を図4によって説明する。図4は、無線機が送信している時と送信していない時に、出力レベル制御部22における平均値算出処理の動作状態と、可変ATT14の制御状態との関連を説明するための図である。(a)は無線機の送信状態によってコントロール制御部21から出力される平均値算出オン/オフ信号(送信中(ON)はLOレベル、送信停止中(OFF)はHIレベル)、(b)は出力レベル制御部22が平均値算出処理を実行している状態(オン状態:ON)と実行していない状態(オフ状態:OFF)を示し、(c)は出力レベル制御部22が可変ATT14に出力する制御信号の内容を示す。
【0028】図4に示すように、デジタル無線機の送信部が送信中(ON状態)の時は、出力レベル制御部22は入力データを取込み、平均値算出処理を実行し、平均値の値に応じて可変ATT14の減衰量を制御する。また、デジタル無線機の送信部が送信停止状態(OFF状態)の時は、出力レベル制御部22は入力データの取込みを実行せず、最後に平均値算出処理を実行した結果保持していた平均値の値に応じた制御信号(固定された制御値)を可変ATT14に送り続けるかあるいは制御信号の送信を止め、可変ATT14は減衰量固定のまま入力する帰還信号を減衰して直交復調器16に与える。例えば、TDMA方式では、1フレームが40msecのとき、4CHあるとすれば、各チャネルそれぞれの送信時間は10msecとなる。
【0029】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、送信出力レベルを所定の範囲内に保つため、レベル検波したデータをデジタル信号に変換し、無線機が送信中の時のみ検波データを取り込んで平均値を求め、その平均値が規定値となるように帰還側のレベルを変化させ、また、ベースバンド信号出力レベル最大の状態が続いている時には、事前に求めた固定値によって帰還側のレベルを変化させることにより、通信方式、変調方式によらずに出力レベルを規定値に保ち、送信特性の安定性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のデジタル無線機の送信部の構成の一実施例を示すブロック図。
【図2】 従来のデジタル無線機の送信部の構成を示すブロック図。
【図3】 フィードバック方式のリニアライザの原理構成図。
【図4】 本発明のデジタル無線機の一実施例の送信動作と可変ATT14の制御状態との関係を説明するための図。
【符号の説明】
1,1′:ベースバンド信号発生器、 2-1,2-2:加算器、 3-1,3-2:LPF、4:直交変調器、 5:BPF、 6:ミキサ、 7:BPF、 8:PA、 9:アンテナ、 10:方向性結合器、 11:基準信号発生器、 12,13:PLL周波数シンセサイザ、 14:可変ATT、 15:ミキサ、 16:直交復調器、 17:位相制御器、18,18′:デジタル信号源、 19,19′:マッピング部、 20-1,20-2:フィルタ部、 21:コントロール制御部、 22:出力レベル制御部、 23:D/A変換器、 24:A/D変換器、 25:レベル検波部、 26:レベル制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ベースバンド信号を発生し、該ベースバンド信号を増幅して送信する帰還方式のリニアライザを用いたデジタル無線機であって、該デジタル無線機の送信出力レベルを所定の範囲内に保つために帰還信号の信号レベルを可変して制御するデジタル無線機において、前記帰還信号の信号レベルを可変する可変手段と、前記ベースバンド信号の発生と発生の停止を制御することによって前記デジタル無線機の送信と送信の停止を制御する送信制御手段と、前記帰還信号の信号レベルを検出するレベル検出手段と、検出した該信号レベルに基いて前記帰還信号の信号レベルを可変するための信号レベル可変情報を算出する算出手段と、該信号レベル可変情報に対応したレベル制御信号を発生するレベル制御手段とを有し、前記送信制御手段により、前記無線機が送信停止状態の時には前記平均値算出手段における前記信号レベル可変情報の算出動作を停止させるように前記算出手段を制御することを特徴とするデジタル無線機。
【請求項2】 請求項1記載のデジタル無線機において、前記送信停止時には前記レベル可変情報を保持する手段を有し、次の送信開始時には、前記レベル制御手段において前記保持したレベル可変情報に対応したレベル制御信号によって前記帰還信号の信号レベルを可変を開始することを特徴とするデジタル無線機。
【請求項3】 請求項1または請求項2記載のデジタル無線機において、前記信号レベル可変情報は、前記レベル検出手段が検出した前記帰還信号の信号レベルの所定時間の平均値であることを特徴とするデジタル無線機。
【請求項4】 請求項1乃至請求項3記載のデジタル無線機において、前記ベースバンド信号出力レベルが最大の状態であるか否かを検出する検出手段と、前記送信出力レベルを規定値に制御するための固定データを格納する格納手段とを備え、前記ベースバンド信号出力レベルが最大の状態である場合には、前記レベル制御手段が、前記固定データに基いて前記帰還信号レベルの可変を行なうことを特徴とするデジタル無線機。
【請求項5】 請求項4記載のデジタル無線機において、前記ベースバンド信号出力レベルが最大の状態である場合には、前記算出手段における前記信号レベルの可変情報の算出を停止することを特徴とするデジタル無線機。
【請求項6】 請求項5記載のデジタル無線機において、前記算出手段において前記信号レベルの可変情報の算出を停止する時には、前記算出手段によって前記信号レベルの可変情報を保持し、次の信号レベルの可変情報の算出開始時には、前記保持した信号レベルの可変情報に対応したレベル制御信号によって前記帰還信号の信号レベルの可変を開始することを特徴とするデジタル無線機。
【請求項7】 請求項5記載のデジタル無線機において、前記算出手段において前記信号レベルの可変情報の算出を停止する時には、前記レベル制御手段が前記信号レベルの可変情報を保持し、次の信号レベルの可変情報の算出開始時には、前記保持した信号レベルの可変情報に対応したレベル制御信号によって前記信号レベルの可変を開始することを特徴とするデジタル無線機。
【請求項8】 ベースバンド信号を発生し、該ベースバンド信号を増幅して送信する負帰還方式のリニアライザを用いたデジタル無線機であって、前記ベースバンド信号の発生と発生の停止を制御するコントロール部と、前記ベースバンド信号の同相成分を入力する同相成分加算器と、直交成分を入力する直交成分加算器と、前記同相成分加算器と前記直交成分加算器がそれぞれ出力する同相成分信号と直交成分信号をそれぞれ入力し帯域制限するループフィルタと、該ループフィルタからそれぞれ入力する同相成分信号と直交成分信号を第1の局部発振信号によって直交変調し、被変調波信号を出力する直交変調器と、該被変調波信号の不要成分を除去する第1のバンドパスフィルタと、該第1のバンドパスフィルタから入力する信号を第2の局部発振信号によって所望の周波数に周波数変換する第1のミキサと、該第1のミキサから入力する信号から不要なスプリアス成分を除去する第2のバンドパスフィルタと、該第2のバンドパスフィルタから入力する信号を増幅する増幅器と、前記増幅器が増幅した信号の一部を分波する方向性結合器と、前記増幅器が増幅した信号を該方向性結合器を介して出力する出力部と、前記方向性結合器から分波された信号を減衰する可変アッテネータと、該可変アッテネータから入力する信号を前記第2の局部発振信号によって所望の周波数に周波数変換する第2のミキサと、該第2のミキサから入力する信号を前記第1の局部発振信号によって直交復調し、ベースバンド信号の同相成分を前記同相成分加算器の被減算入力側と、ベースバンド信号の直交成分を前記直交成分加算器の被減算入力側にそれぞれ出力する直交復調器と、前記方向性結合器から分波された信号をレベル検波するレベル検波器と、該レベル検波器から入力する信号をデジタル変換するD/A変換器と、該D/A変換器から入力するデータを取込み平均値を算出し、該平均値が所定の値となるように前記可変アッテネータの減衰量を制御するための信号を前記可変アッテネータに与える出力レベル制御部とを有し、前記コントロール部が、前記ベースバンド信号を発生させる時には前記平均値算出手段に前記信号レベルの平均値を算出させ、前記コントロール部が、前記ベースバンド信号の発生を停止する時には前記平均値算出手段に前記信号レベルの平均値の算出を停止させ、前記ベースバンド信号が発生している時ときだけ前記平均値を算出し、前記平均値に応じて送信出力レベルを規定値に保つことを特徴とするデジタル無線機。
【請求項9】 ベースバンド信号を発生し、該ベースバンド信号を増幅して送信する負帰還方式のリニアライザを用いたデジタル無線機であって、前記ベースバンド信号の発生と発生の停止を制御するコントロール部と、前記ベースバンド信号の同相成分を入力する同相成分加算器と、直交成分を入力する直交成分加算器と、前記同相成分加算器と前記直交成分加算器がそれぞれ出力する同相成分信号と直交成分信号をそれぞれ入力し帯域制限するループフィルタと、該ループフィルタからそれぞれ入力する同相成分信号と直交成分信号を第1の局部発振信号によって直交変調し、被変調波信号を出力する直交変調器と、該被変調波信号の不要成分を除去する第1のバンドパスフィルタと、該第1のバンドパスフィルタから入力する信号を第2の局部発振信号によって所望の周波数に周波数変換する第1のミキサと、該第1のミキサから入力する信号から不要なスプリアス成分を除去する第2のバンドパスフィルタと、該第2のバンドパスフィルタから入力する信号を増幅する増幅器と、前記増幅器が増幅した信号の一部を分波する方向性結合器と、前記増幅器が増幅した信号を該方向性結合器を介して出力する出力部と、前記方向性結合器から分波された信号を減衰する可変アッテネータと、該可変アッテネータから入力する信号を前記第2の局部発振信号によって所望の周波数に周波数変換する第2のミキサと、該第2のミキサから入力する信号を前記第1の局部発振信号によって直交復調し、ベースバンド信号の同相成分を前記同相成分加算器の被減算入力側と、ベースバンド信号の直交成分を前記直交成分加算器の被減算入力側にそれぞれ出力する直交復調器と、前記方向性結合器から分波された信号をレベル検波するレベル検波器と、該レベル検波器から入力する信号をデジタル変換するD/A変換器と、該D/A変換器から入力するデータを取込み平均値を算出し、該平均値が所定の値となるように前記可変アッテネータの減衰量を制御するための信号を前記可変アッテネータに与える出力レベル制御部と、前記ベースバンド信号の出力レベルが最大の状態であるか否かを検出する検出部と、前記ベースバンド信号出力レベルが最大の状態のときに、前記出力レベル制御部が前記送信出力レベルを規定値に制御するための固定データを格納する格納手段とを備え、前記ベースバンド信号出力レベルが最大の状態である場合には、前記固定データにより前記信号レベルを可変することを特徴とするデジタル無線機。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2001−326700(P2001−326700A)
【公開日】平成13年11月22日(2001.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−141646(P2000−141646)
【出願日】平成12年5月15日(2000.5.15)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】