説明

デンドリマーおよびこれを用いた有機半導体

【課題】溶媒への溶解性が良好であり、かつ室温を含めた広い温度範囲において安定で高いキャリア輸送性を維持でき、塗布法により良好な成膜性を有する有機半導体材料ならびにこれを用いた有機半導体を提供する。
【解決手段】ポリアルキレンイミンデンドリマーから誘導され、末端基が式(B1)シクロへキシレン、フェニレン、ナフタレン、ピリミジン、ピリジン、ベンゾチアゾール、オキサジアゾールを含むポリアルキレンイミン末端変性化合物、(B2)チオフェンを含むポリアルキレンイミン末端変性化合物、(B3)チオフェンとフェニレン、ナフタレンを含むポリアルキレンイミン末端変性化合物、(4)縮合チオフェンを含むポリアルキレンイミン末端変性化合物、(B5)縮合チオフェン、チアゾロチアゾール、フルオレン、またはカルバゾールを含むポリアルキレンイミン末端変性化合物で表される基からなる群より選択される基であるデンドリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端にキャリア輸送性を有する基を有するデンドリマーに関する。さらに本発明は、該デンドリマー化合物を用いた有機半導体薄膜、有機半導体素子および有機薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体デバイスに用いられてきた無機半導体材料のシリコンは、その薄膜形成において、高温プロセスと高真空プロセスが必須である。高温プロセスを要することから、シリコンをプラスチック基板上等に薄膜形成することができないため、半導体デバイスを組み込んだ製品に対して、可とう性を付与したり、軽量化を達成することができない。また、高真空プロセスを要することから、半導体デバイスを組み込んだ製品の大面積化と低コスト化が困難である。
【0003】
そこで、近年、有機半導体材料を用いた有機半導体デバイスに関する研究が活発に行われている。有機半導体デバイスとしては、具体的には、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜光電変換デバイス、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)デバイス等が挙げられる。これら有機半導体材料は、無機半導体材料に比べて、作製プロセス温度を著しく低減できるため、プラスチック基板上等に形成することが可能となる。さらに、溶媒への溶解性が大きく、かつ、良好な成膜性を有する有機半導体に対しては、真空プロセスを要さない塗布法、例えば、インクジェット装置等を用いて薄膜形成ができるため、大面積化と低コスト化とが可能となる。
【0004】
このように、有機半導体材料は、無機半導体材料と比べて、大面積化、可とう性、軽量化、低コスト化等の点で有利であるため、これらの特性を生かした有機半導体製品への応用が盛んに行われている。例えば、情報タグ、電子人工皮膚シートやシート型スキャナー等の大面積センサー、液晶ディスプレイ、電気泳動型ディスプレイ(電子ペーパー)および有機ELパネル等のディスプレイなどへの応用である。
【0005】
有機半導体材料を用いた有機薄膜トランジスタに要求される主な素子特性は、以下の通りである。
(1)オンオフ比が大きく、オフ電流が小さい。
【0006】
(2)駆動電圧が低い(閾値電圧が低く、オン電流が大きい。)
(3)遮断周波数が高い。
(4)有機薄膜トランジスタの特性のバラツキが小さい。
【0007】
(5)大気下で安定に動作し経時的劣化が小さい。
これらの素子特性を満足するために、有機半導体材料に要求される特性は、以下の通りである。
【0008】
(i)電界効果移動度(μ)が高い。
(ii)成膜性が優れており、薄膜形成プロセスが容易である。
(iii)酸素および水分に対して耐性があり大気下で安定である。
【0009】
特に、(i)の電界効果移動度(μ)が大きいことが大前提となる。この観点から、近年、アモルファスシリコンに匹敵する電界効果移動度を有する有機半導体材料が次々に報告されている。また、(ii)に関して、有機半導体膜の成膜工程において、真空蒸着では
なく、塗布成膜できることが重要である。そのためには、溶媒への溶解性が良好であることと、成膜性が良好であることとが必須となる。
【0010】
有機半導体材料は、低分子系(オリゴマーも含む)と高分子系に大別される。低分子系有機半導体材料としては、例えば、ペンタセンを用いた有機FET(Field Effect Transistor:電界効果型トランジスタ)が作製されており、高い移動度が報告されている(非特許文献1参照)。
【0011】
しかしながら、有機半導体層のペンタセンは、真空蒸着法で形成されるため、大面積化、可とう性、軽量化および低コスト化の観点で不利である。また、真空蒸着法を用いずに、トリクロロベンゼンの希薄溶液中でペンタセン結晶を形成させる方法(特許文献1参照)も提案されているが、製造方法が難しく安定な素子を得るには至っていない。これら低分子系有機半導体材料は、高結晶化状態の均一な膜を安定に作製するのが困難であり、結晶相の結晶粒界がそのままFET素子のバラツキを誘引する。結晶化度が高いと、塗布法を用いた際に良好な成膜性を得るのが困難となる。
【0012】
そこで、この結晶粒界の影響がなく、かつ有機溶媒に可溶な低分系有機半導体材料として、液晶性を利用した液晶有機半導体が提案されている(非特許文献2参照)。液晶有機半導体は、公知の方法を利用した配向制御によってさらに移動度を高くすることができる。しかしながら、一般的に、液晶有機半導体は液晶相を示す温度範囲が室温より高いため、室温下では結晶状態となる。
【0013】
そのため、液晶相を示す温度範囲下では結晶粒界の影響を受けることなく安定なキャリア輸送性を示すものの、室温下では成膜性が悪く安定なキャリア輸送性を示さない(非特許文献3参照)。また、移動度の値も不十分である。一方、移動度が高い液晶有機半導体を得るためには、大きいπ共役系を有する分子構造を導入する必要が生じるため、液晶相を示す温度範囲の下限値はますます上昇する傾向にあり、良好な成膜性と室温下で安定したキャリア輸送性を付与するに至らない。
【0014】
このように、塗布成膜を用いることができ、かつ室温下でバラツキのない安定した特性を有する有機トランジスタを得ることは困難であった。
高分子系有機半導体材料としては、ポリチオフェンを用いた有機FETが開示されている(特許文献2参照)。該有機FETは、溶液塗布で容易に薄膜形成できるという点で成膜性に優れているものの、十分なFET特性を得るには至っていない。
【0015】
また、近年、成膜性に優れ、かつ良好なFET特性を有する高分子系有機半導体材料として、デンドリマーやハイパーブランチ構造を有する超分岐高分子化合物が検討されている(特許文献3〜7参照)。これらは、非晶質であり、有機溶媒に可溶であり、機能性基を末端に導入することができるという特徴を有する。しかしながら、移動度の値が不充分であり、更に、配向制御が困難であったり、配向制御を必要としない等方的な伝導性を示す構造を有していたりするため、移動度の改善が見込めない。
【0016】
このように、有機半導体材料は低分系と高分子系を含めて多くの開発がなされているものの、未だ種々の特性を十分に満足する有機半導体材料の開発には至っていない。
【非特許文献1】Yen−Yi Lin.,IEEE Transaction on Electron Device,Vol.44,No8 p.1325(1997)
【非特許文献2】M.Funahashi and J.Hanna,Jpn.J.Appl.Phys.,(1999)38,L132−135
【非特許文献3】M.Funahashi,Appl.Phys.Lett.,Vol.73,No.25(1998)3733
【特許文献1】特開2005−281180号公報
【特許文献2】特開昭63−076378号公報
【特許文献3】特開2000−336171号公報
【特許文献4】特開2003−243660号公報
【特許文献5】特開2003−92407号公報
【特許文献6】特開2003−324203号公報
【特許文献7】特開2004−107625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したように、従来の液晶性を有する液晶有機半導体化合物は、一般的に液晶相を示す温度範囲の下限値が室温より高く、室温下では結晶状態を示す。液晶温度範囲では安定なキャリア輸送特性を示すが、結晶状態では結晶粒界の影響により安定なキャリア輸送性を示さない。そのため、このような液晶有機半導体を利用した有機トランジスタは、室温を含めた広い温度範囲でスイッチング特性を示さないという問題があった。
【0018】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく、例えば溶媒への溶解性が良好であり、かつ液晶温度範囲における安定で高いキャリア輸送性を維持しながら、室温を含めた広い温度範囲で、(1)液晶相を発現する構造、もしくは(2)結晶化度を下げる構造を有し、塗布法により良好な成膜性を有する有機半導体材料を提供することを課題としている。
【0019】
また、本発明の有機半導体材料を用いることで、例えば素子のバラツキを低減し、かつ良好なスイッチング特性を有する有機トランジスタを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、柔軟な分子構造のコアとビルディングブロックを有するポリアルキレンデンドリマーの末端に特定の基を導入したデンドリマーによって、上述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち、本発明のデンドリマーは、ポリアルキレンイミンデンドリマーから誘導され、少なくとも一部の末端基が式(B1)〜(B5)で表される基からなる群より選択される基であることを特徴としている。
【0022】
【化1】

式(B1)〜(B5)中、Y1は水素、ハロゲン、シアノ、炭素数1から20のアルキ
ルまたは炭素数1から20のハロゲン化アルキルであり、Y1が炭素数1から20のアル
キルまたは炭素数1から20のハロゲン化アルキルである場合には、直鎖アルキルまたは分岐アルキルのいずれかであり、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−
、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられていてもよく、基中の炭素はSiで置き換えられてもよい。
【0023】
1は炭素数1から30のアルキレンであり、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−CO−、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられていてもよく、Z2、Z3およびZ4は独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C
−、−CH2−O−、−O−CH2−、−COO−、または−OCO−であり、Z5および
6は独立して単結合または−C≡C−であり、Z7およびZ8は独立して単結合、−CO
−、−O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−O−、−O−CH2−、−COO−、または−OCO−である。
【0024】
1、A2、A3およびA4は独立して単結合、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、2,5−ピリミジン、2,5−ピリジン、2,6−ベンゾチアゾール、または2,5−オキサジアゾールである(ただし、A1、A2、A3およびA4
のうち、少なくとも3つは独立して、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、2,5−ピリミジン、2,5−ピリジン、または2,5−オキサジアゾールである)。
【0025】
5およびA7は独立して単結合、1,4−フェニレンまたは2,5−チオフェンであり、A6は1,4−フェニレンまたは2,6−ナフタレンであり、A8およびA9は独立して
単結合、1,4−フェニレンまたは2,5−チオフェンであり、A10、A11、A12、A13およびA14は独立して単結合、縮合チオフェン、2,5−チオフェン、2,2’−ジチオフェン、チアゾロチアゾール、フルオレン、カルバゾール、または1,4−フェニレンである(ただし、A10、A11、A12、A13およびA14のうち、少なくとも1つは独立して、縮合チオフェン、チアゾロチアゾール、フルオレン、またはカルバゾールである)。
【0026】
pは1から5の整数である。また、式(B1)〜(B5)において、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、2,5−チオフェン、縮合チオフェン、フルオレンおよびカルバゾールの側方位の少なくとも1つの水素は、ハロゲン、シアノ、炭素数1から20のア
ルキル、または炭素数1から20のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、炭素数1から20のアルキルまたは炭素数1から20のハロゲン化アルキルで置き換えられる場合は、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−、−CH=CH−または−
C≡C−で置き換えられてもよい。
【0027】
また、前記式(B1)〜(B5)中、Y1が炭素数1から20の直鎖または分岐のアル
キルであり(ただし、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−COO−、−O
CO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよい)、Z2からZ8が単結合であってもよい。
【0028】
さらに、本発明のデンドリマーは、ポリアルキレンイミンデンドリマーから誘導され、少なくとも一部の末端基が式(B1−a)、(B1−b)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)、(B4−b)、(B5−a)、(B5−b)または(B5−c)で表される基からなる群より選択される基であるのが好ましい。
【0029】
【化2】

式(B1−a)、(B1−b)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)、(B4−b)、(B5−a)、(B5−b)および(B5−c)中、Y2はハロ
ゲン、または炭素数1から20のアルキルであり、Y2が炭素数1から20のアルキルで
ある場合には、直鎖アルキルまたは分岐アルキルのいずれかであり、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、または−C≡C
−で置き換えられていてもよい。
1は炭素数1から30のアルキレンであり、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−CO−、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられていてもよい。
【0030】
15およびA16は独立して単結合、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニル、または2,6−ナフタレンである(ただし、A15およびA16の両方が単結合である場合、ならびにA15およびA16の両方が4,4’−ビフェニルの場合を除く);
17、A18、A19およびA20は独立して単結合または1,4−フェニレンであり、A21およびA22は独立して1,4−フェニレン、2,5−チオフェンまたは2,2’−ビチオフェンである;A23およびA24は独立して単結合、2,5−チオフェン、または1,4−フェニレンである。
【0031】
qは3から7の整数である。
また、式(B1−a)、(B1−b)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)、(B4−b)、(B5−a)、(B5−b)および(B5−c)において、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、4,4’−ビフェニルおよび2,5−チオフェンの側方位の少なくとも1つの水素は、ハロゲン、メチルまたはエチルで置き換えられていてもよい。
【0032】
さらに、前記式(B1−a)、(B1−b)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)、(B4−b)、(B5−a)、(B5−b)および(B5−c)中、Y2が炭素数1から20の直鎖または分岐のアルキルであり(ただし、基中の少なくと
も1つの−CH2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡
C−で置き換えられていてもよい)、A15が単結合であり、A16が1,4−フェニレンであり、A17およびA18が単結合であり、A19およびA20が単結合であり、A21およびA22が2,2’−ビチオフェンであり、A23およびA24は独立して単結合または2,5−チオフェンであってもよい。
【0033】
前記ポリアルキレンイミンデンドリマーは、良好な成膜性および合成の容易さの観点から、ポリプロピレンイミンデンドリマーであるのが好ましく、世代数が0〜5であるのが望ましい。更に好ましい世代数は0〜3であり、特に好ましい世代数は1と2である。
【0034】
また、本発明のデンドリマーは、塗布法を用いた良好な成膜性と高い移動度の観点から、液晶相(中間相)を有するのが好ましい。さらに好ましくは、室温(25℃)において液晶相を示すのが好ましい。特に好ましくは該液晶相がスメクチック相であるのが好ましい。
【0035】
本発明の有機半導体は、上記デンドリマーを用いたもの、または磁場を利用することによって配向性を増したものであることを特徴としており、さらに本発明の有機トランジスタは、該有機半導体を用いたものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0036】
本発明のデンドリマーは、柔軟な分子構造のコアとビルディングブロックを有するポリアルキレンイミンデンドリマーの末端に良好なキャリア輸送性を有する特定の基が導入されているので、室温を含めた広い温度範囲で安定なキャリア輸送性が得られるとともに高い移動度を有する。
【0037】
また、本発明のデンドリマーを用いれば、塗布法による良好な成膜性を有する有機半導体層および有機トランジスタ(液晶有機半導体)を提供することができる。
さらに、本発明のデンドリマーを用いれば、有機半導体層の成膜工程において、外場(電場、磁場)を利用することによって容易に配向制御することができるので、移動度をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
次に、本発明について具体的に説明する。
本発明のデンドリマーは、ポリアルキレンイミンデンドリマーから誘導され、少なくとも一部の末端基が式(B1)〜(B5)で表される基からなる群より選択される基であることを特徴としている。
【0039】
なお、本明細書において、前記ポリアルキレンイミンデンドリマーの末端基に導入されるこれら特定の基を「メソゲン基」ともいう。
【0040】
【化3】

式(B1)〜(B5)中、Y1は水素、ハロゲン、シアノ、炭素数1から20のアルキ
ルまたは炭素数1から20のハロゲン化アルキルであり、Y1が炭素数1から20のアル
キルまたは炭素数1から20のハロゲン化アルキルである場合には、直鎖アルキルまたは分岐アルキルのいずれかであり、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−
、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられていてもよく、基中の炭素はSiで置き換えられてもよい。
【0041】
好ましいY1は、良好な配向性、広い液晶相温度範囲および信頼性の観点から、炭素数
1から20のアルキルまたは炭素数1から20のハロゲン化アルキルが好ましい。ここで、Y1は、直鎖アルキルまたは分岐アルキルのいずれかでよく、また、基中の少なくとも
1つの−CH2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、また
は−C≡C−で置き換えられていてもよく、基中の炭素はSiで置き換えられてもよい。さらに好ましいY1は、炭素数5から20のアルキルまたは炭素数5から20のハロゲン
化アルキルである。ここで、Y1は、直鎖アルキルであり、また、基中の少なくとも1つ
の−CH2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、または−C≡C−
で置き換えられていてもよい。
【0042】
1は炭素数1から30のアルキレンであり、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−CO−、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられていてもよく、Z2、Z3およびZ4は独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C
−、−CH2−O−、−O−CH2−、−COO−、または−OCO−であり、Z5および
6は独立して単結合または−C≡C−であり、Z7およびZ8は独立して単結合、−CO
−、−O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−O−、−O−CH2−、−COO−、または−OCO−である。好ましいZ1は、高い移動度を維持する観点から、すなわち
、メソゲン基間の相互作用を保持する観点から、炭素数5以上のアルキレンが好ましい。
【0043】
さらに好ましくは炭素数10以上のアルキレンである。なかでも合成の容易さの観点から、基中の1つの−CH2−は、−CO−で置き換えられているアルキレンが好ましい。
好ましいZ2、Z3およびZ4は、高い移動度の観点から、独立して単結合、−C≡C−で
ある。
【0044】
さらに好ましいZ2、Z3およびZ4は、単結合である。好ましいZ5およびZ6は、高い
移動度の観点から、単結合である。好ましいZ7およびZ8は、高い移動度の観点から、独立して単結合、または−C≡C−である。さらに好ましいZ7およびZ8は、単結合である。
【0045】
1、A2、A3およびA4は独立して単結合、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、2,5−ピリミジン、2,5−ピリジン、2,6−ベンゾチアゾール、または2,5−オキサジアゾールである(ただし、A1、A2、A3およびA4
のうち、少なくとも3つは独立して、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、2,5−ピリミジン、2,5−ピリジン、または2,5−オキサジアゾールである)。好ましい
1、A2、A3およびA4は、高い移動度、広い液晶相温度範囲および信頼性の観点から、独立して単結合、1,4−フェニレン、または2,6−ナフタレンである。
【0046】
5およびA7は独立して単結合、1,4−フェニレンまたは2,5−チオフェンであり、A6は1,4−フェニレンまたは2,6−ナフタレンであり、A8およびA9は独立して
単結合、1,4−フェニレンまたは2,5−チオフェンであり、A10、A11、A12、A13およびA14は独立して単結合、縮合チオフェン、2,5−チオフェン、2,2’−ジチオフェン、チアゾロチアゾール、フルオレン、カルバゾール、1,4−フェニレンである(ただし、A10、A11、A12、A13およびA14のうち、少なくとも1つは独立して、縮合チオフェン、チアゾロチアゾール、フルオレン、またはカルバゾールである)。
【0047】
高い移動度および広い液晶温度範囲の観点から、A10、A11、A12、A13およびA14のうち、少なくとも1つが独立して縮合チオフェンまたはチアゾロチアゾールであるのが好ましい。縮合チオフェンとして、チエノチオフェンまたはジチエノチオフェンが好ましい。特に好ましい縮合チオフェンはチエノチオフェンである。
【0048】
pは1から5の整数である。
また、式(B1)〜(B5)において、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、2,5−チオフェン、縮合チオフェン、フルオレンおよびカルバゾールの側方位の少なくとも1つの水素は、ハロゲン、シアノ、炭素数1から20のアルキル、または炭素数1から20のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、炭素数1から20のアルキルまたは炭素数1から20のハロゲン化アルキルで置き換えられる場合は、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられても
よい。
【0049】
この場合には、高い信頼性、広い液晶相温度範囲および液晶相温度範囲の下限値を下げる等の観点から、好ましい置換基として、ハロゲン、炭素数1から20のアルキルまたは炭素数1から20のアルコキシが挙げられる。さらに好ましい置換基は、フッ素、あるいは炭素数1から5のアルキルまたはアルコキシである。特に好ましい置換基は、メチルまたはエチルである。
【0050】
本発明のデンドリマーは、ポリアルキレンイミンデンドリマーから誘導されるが、該ポリアルキレンイミンデンドリマーは、柔軟な分子構造のコアとビルディングブロックを有
しているため、ポリアミドアミンデンドリマーやカルボシランデンドリマーから誘導されるデンドリマーと比較して、メソゲン基間の相互作用を保持し易い。したがって、該ポリアルキレンイミンデンドリマーの末端に導入された前記特定の基と相まって、液晶性の発現のし易さに著しく優れているとともに、室温を含めた広い温度範囲で安定なキャリア輸送性および高い移動度を保持することができる。
【0051】
本発明のデンドリマーにおける前記特定の末端基は、大きいπ共役を有する棒状のメソゲン基であり、優れた液晶性を示す。
前記式(B1)〜(B5)の好ましい例として、たとえば、式(B1−a)、(B1−b)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)、(B4−b)、(B5−a)、(B5−b)または(B5−c)が挙げられる。
【0052】
【化4】

式(B1−a)、(B1−b)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)、(B4−b)、(B5−a)、(B5−b)および(B5−c)中、Y2はハロ
ゲン、または炭素数1から20のアルキルであり、Y2が炭素数1から20のアルキルで
ある場合には、直鎖アルキルまたは分岐アルキルのいずれかであり、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、または−C≡C
−で置き換えられていてもよい。
【0053】
1は式(B1)〜(B5)におけるZ1と同義である。
15およびA16は独立して単結合、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニル、または2,6−ナフタレンである(ただし、A15およびA16の両方が単結合である場合、なら
びにA15およびA16の両方が4,4’−ビフェニルの場合を除く)。A17、A18、A19およびA20は独立して単結合、または1,4−フェニレンであり、A21およびA22は独立して1,4−フェニレン、2,5−チオフェンまたは2,2’−ビチオフェンである;A23およびA24は独立して単結合、2,5−チオフェン、または1,4−フェニレンである。
【0054】
また、式(B1−a)、(B1−b)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)、(B4−b)、(B5−a)、(B5−b)および(B5−c)において、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、4,4’−ビフェニルおよび2,5−チオフェンの側方位の少なくとも1つの水素は、ハロゲン、メチルまたはエチルで置き換えられていてもよい。
【0055】
さらに、前記式(B1−a)、(B1−b)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)、(B4−b)、(B5−a)、(B5−b)および(B5−c)中、Y2が炭素数1から20の直鎖または分岐のアルキルであり(ただし、基中の少なくと
も1つの−CH2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡
C−で置き換えられていてもよい)、A15が単結合であり、A16が1,4−フェニレンであり、A17およびA18が単結合であり、A19およびA20が1,4−フェニレンであり、A21およびA22が2,2’−ビチオフェンであり、A23およびA24が独立して単結合または2,5−チオフェンであるのが好ましい。
【0056】
前記式(B1−a)、(B1−b)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)、(B4−b)、(B5−a)、(B5−b)および(B5−c)中、式(B1−a)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)または(B4−b)が好ましく、式(B1−a)、(B2−a)、(B4−b)がより好ましい。
【0057】
前記式(B1)、(B2)、(B3)、(B4)、(B5)、(B1−a)、(B1−b)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)、(B4−b)、(B5−a)、(B5−b)および(B5−c)として、より具体的には、たとえば、式(B1−1)〜(B5−10)が挙げられる。これらの中でも、高い移動度および良好な成膜性の観点から、式(B1−1)〜(B1−6)、式(B2−1)〜(B2−4)、式(B3−1)、式(B3−2)、式(B4−1)〜式(B4−9)が好ましい。
【0058】
【化5】

【0059】
【化6】

【0060】
【化7】

【0061】
【化8】

【0062】
【化9】

【0063】
【化10】

【0064】
【化11】

【0065】
【化12】

本発明のデンドリマーは、ポリアルキレンイミンデンドリマーの末端基のうち、少なくとも一部の末端基が前記特定の基(メソゲン基)で修飾されていればよい。高いキャリア輸送性の観点から、末端基の75%以上が上記特定の基(メソゲン基)で修飾されているのが好ましく、末端基の90%以上が上記特定の基(メソゲン基)で修飾されているのがより好ましい。
【0066】
さらに、末端基の100%が上記特定の基(メソゲン基)で修飾されているのが特に好
ましい。また、本発明の有機半導体は、全ての末端基が前記特定の基で修飾されたデンドリマーと、一部の末端基が修飾されたデンドリマーとの混合物を用いてもよい。末端基の修飾率は、H1−NMRおよび元素分析によって確認することができる。
【0067】
さらに、本発明のデンドリマーは、柔軟な分子構造のコアとビルディングブロックを有するポリアルキレンイミンデンドリマーから誘導されるため、得られるデンドリマーの世代数の制御を容易に行うことができる。第0世代、第1世代、第2世代および第3世代のポリプロピレンイミンデンドリマーの例を以下に示す。以下の例は、NH2−(CH24
−NH2(1,4−ジアミノブタン)を第0世代の中心構造としているが、該中心構造は
、NH2−(CH2n−NH2(nは1〜20の整数)であればよい。
【0068】
【化13】

【0069】
【化14】

【0070】
【化15】

【0071】
【化16】

デンドリマーの世代数とは、上述のように規則分岐の次数を示している。本発明のデンドリマー化合物の分岐構造に特に制限はなく、完全に制御されたデンドリマーでなくても差し支えない。本発明のデンドリマーの世代数は、高いキャリア輸送性、良好な成膜性および合成の容易性の観点から、通常0〜8であり、好ましくは0〜5であり、より好ましくは0〜3である。
【0072】
なお、本明細書において、「本発明のデンドリマー」とは、第0世代のデンドリマーをも含む広義の意味である。
本発明に用いられるポリアルキレンイミンデンドリマーとしては、特に制限はないが、合成の容易性と高いキャリア輸送性の観点から、ポリプロピレンイミンデンドリマーが好ましい。これらのイミンデンドリマーは、公知の方法、たとえば、特許文献5に記載の方法で合成してもよく、また上市のものを用いてもよい。
【0073】
上市のものとしては、例えば、アルドリッチ社製DAB−Am−4(ポリプロピレンイミンテトラミンデンドリマー:[−CH2CH2N(CH2CH2CH2NH222:世代数=1)、DAB−Am−8(ポリプロピレンイミンオクタミンデンドリマー:[−CH2
CH2N[(CH23N[(CH23NH2222:世代数=2)、DAB−Am−1
6(ポリプロピレンイミンヘキサデカミンデンドリマー:[−CH2CH2N[(CH23N[(CH23N[(CH23NH22222:世代数=3)またはDAB−Am−
64(ポリプロピレンイミンテトラヘキサコンタミンデンドリマー:[−CH2CH2N[(CH23N[(CH23N[(CH23N[(CH23N[(CH23NH2222222:世代数=5)等を用いることができる。
【0074】
本発明のデンドリマーは、これらポリアルキレンイミンデンドリマー末端のNH2基の
Hを前記特定の基で置換することによって得られる。
多官能性アミン化合物であるポリプロピレンイミンデンドリマー末端の修飾には、アクリル酸エステル誘導体を用いる。すなわち、前記多官能性アミン化合物とアクリル酸エステル誘導体を有機溶媒中で反応させることにより、本発明のデンドリマーを得ることができる。
【0075】
多官能性アミン化合物とアクリル酸エステルとの反応比は、好ましくはアミン化合物1
モルに対してアクリル酸エステル1.0〜3.0モル、より好ましくは1.1〜1.5モルである。反応溶剤としては、これらの溶剤として従来公知のものを用いることができる。
【0076】
具体的にはテトラクロロエチレン、1,2−ジクロロエタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフランまたはジオキサンなどの環状エーテル系溶媒、トルエンまたはキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0077】
反応温度としては、好ましくは−50℃〜150℃、より好ましくは25℃〜80℃である。この温度範囲であると、反応速度が低下するおそれがなく、かつ多官能アミン化合物や液晶性アクリル酸エステル誘導体の安定性を保持することができる。末端基の置換の確認は、未反応アミンの1H−NMRを測定することによって行うことができる。本発明
のデンドリマーは、上述したとおり、末端基の全てが完全に置き換えられていなくてもよい。
【0078】
本発明のデンドリマーは、柔軟な分子構造のコアとビルディングブロックを有したポリアルキレンイミンデンドリマーから誘導されるため、該ポリアルキレンイミンデンドリマーの末端に導入された前記特定の基と相まって、塗布法で良好な成膜性を有し、かつ高移動度を有することができる。良好な成膜性を有するためには、室温で結晶性を下げること、および溶媒への良好な溶解性を保持することが必要である。特に、室温で液晶相を有するのが好ましい。
【0079】
なお、本明細書において、「室温」とは25℃を意味する。
本発明のデンドリマーが液晶性を保持できる温度範囲とは、通常0〜100℃、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは−40〜200℃である。このように、本発明のデンドリマーは室温を含めた広い温度範囲で優れた液晶性を保持することができるため、室温下においても充分に安定なキャリア輸送性および高い移動度を有することができるとともに、高温プロセスを要しない塗布成膜法を用いることにより、容易に薄膜形成を行うことができる。ただし、本発明のデンドリマーは、室温で結晶化せず良好な成膜性を有するため、必ずしも室温で液晶相を示さなくてもよい。
【0080】
なお、移動度には、TOF(Time of Flight)法による移動度(μTOF
:単位cm2/V・s)、および有機FET素子により求められる移動度(μFET:単位cm2/V・s)があり、μTOFが高いほど、μFETを高くすることができる。
【0081】
移動度(μTOF)は、TOF測定用セルの電極間の電圧を(V)、電極間距離をd、光
電流の波形から算出した膜厚中を横切る時間をTrとし、下記式(i)により求められる。
【0082】
μTOF=d2 / (V・Tr) ・・・(i)
また、移動度(μFET)は、ドレイン電圧(VD)を固定し、ゲート電圧(VG)を変化
させることによって得られる伝達特性の曲線を用いて、下記式(ii)により求められる。
【0083】
【数1】

式(ii)中、Cinは、ゲート絶縁膜の単位面積当たりの電気容量、IDはドレイン電流
、Lはチャネル長、Wはチャネル幅、VTHは閾値電圧である。
【0084】
本発明のデンドリマーが示す移動度(μTOF)は、通常10-3cm2/V・s以上、好ましくは10-2cm2/V・s以上であり、特に好ましくは10-1cm2/V・s以上である。上限値は特に限定されないが、通常10cm2/V・s以下である。また、移動度(μFET)は、移動度(μTOF)が大きいほど大きくなり、通常10-3cm2/V・s以上、好ましくは10-2cm2/V・s以上であり、特に好ましくは10-1cm2/V・s以上である。上限値は特に限定されないが、通常10cm2/V・s以下である。このように、本発
明のデンドリマーは、μTOFおよびμFETともに高い移動度を示すため、有機半導体材料として大変有用である。
【0085】
前記ポリアルキレンイミンデンドリマーの末端に導入された前記特定の基は、いわゆるメソゲン基と呼ばれるものである。「メソゲン基」とは、結晶相と非晶相の間に位置づけられる分子配向秩序性を有する中間相(液晶相)を示す基の総称である。中間相は、ネマチック液晶相、コレステリック液晶相、スメクチック液晶相、異方性柔粘性結晶相、光学的等方性液晶相およびディスコチック液晶相等に分類される(液晶便覧:液晶便覧編集委員会編)。
【0086】
これらの中でも、秩序度が高いほど移動度が大きくなるため、特にスメクチック液晶相と異方性柔粘性結晶相が好ましいことが知られている。本発明のデンドリマーは、前記特定の基の種類により種々の液晶相を構成し得るが、分子配向秩序性が増すほど移動度が高くなるため、ネマチック液晶相よりスメクチック液晶相を示すものが好ましい。さらに、スメクチック液晶の中でも、例えば、SmE、SmH>SmB、SmG>SmB、SmF>SmA、SmCの順に好ましい。本発明のデンドリマーを用いれば、室温下においても良好な成膜性を有するため、優れたキャリア輸送性および移動度を有する有機半導体層および有機トランジスタを製造することができる。
【0087】
有機半導体層の形成方法には、公知の種々の成膜方法を適用することができる。具体的には、たとえば、本発明のデンドリマーを溶媒に溶解した溶液を用いることによって、スピンコート法、インクジェット法、キャスティング法、ディッピング法等のいずれの方法をも採用して成膜することができる。溶媒としては、極性溶媒および無極性溶媒のいずれを用いてもよい。
【0088】
具体的な溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロメタン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンまたはトリクロロベンゼン等が挙げられる。溶媒の温度および基板の温度を制御することによって、更に良好な薄膜を形成することもできる。また、溶媒に溶解せず、本発明の化合物を直接加熱して溶融することによって、薄膜を形成することもできる。薄膜は、良好なFET素子特性を得る観点から、水分や酸素の影響ができるだけ少ない環境下において作製するのが好ましい。
【0089】
本発明のデンドリマーを用いることにより得られる有機半導体層を構成要素とし、たとえば、整流機能または信号処理機能を有する素子として用いれば、他の半導体性を有する有機物または無機物と組み合わせることによって、整流素子または電流駆動型のトランジ
スタ、スイッチング動作を行うサイリスタ・トライアック・ダイアックなどの素子を構成することができる。また、液晶表示素子または電子ペーパーのような表示素子としても好適に用いることができる。
【0090】
また、本発明のデンドリマーを用いることにより得られる有機半導体層を用いて、有機FET素子を構成することもできる。有機FET素子は、一般的に、ガラスやプラスチック等の支持基板、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、ゲート絶縁膜および有機半導体層からなり、ゲート電極に印加する電圧を制御することによって、ゲート絶縁膜上の有機半導体層にキャリアを誘起し、ソース電極とドレイン電極に流れる電流を制御し、スイッチング動作を行う。有機FET素子には、ボトムゲート−ボトムコンタクト型、ボトムゲート−トップコンタクト型およびトップゲート型等があり、いずれを採用してもよい。
【0091】
ゲート電極の材料としては、たとえば、Al、Ta、Mo、Nb、Cu、Ag、Au、Pt、In、Ni、Nd、Cr、ポリシリコン、アモルファスシリコン、錫酸化物、酸化インジウムまたはインジウム錫化合物(Indium Tin Oxide:ITO)等の無機材料、またはドープされた導電性高分子等の有機材料が挙げられ、いずれを用いてもよい。また、ゲート絶縁層の材料としては、SiO2、SiN、Ta25またはAl23等の無機材料、ポリイミド、ポリカーボネートまたはポリパラキシリレン等の高分子材
料を採用することができる。
【0092】
ゲート絶縁膜の表面は、公知の表面処理、たとえば、HMDS処理(ヘキサメチルジシラザン処理)を行って、分子配向をコントロールすることができる。ソース電極およびドレイン電極の材料としては、ゲート電極と同種の材料を用いることができ、ゲート電極の材料と同じであっても異なっていてもよく、異種材料を積層してもよい。また、キャリアの注入効率を上げるために、これらの電極に表面処理を施してもよい。
【0093】
さらに、本発明のデンドリマーを用いれば、磁場または電場を利用して配向制御することができる。配向制御の対象は、TOF用セル、または有機FET素子のいずれであってもよい。具体的には、本発明のデンドリマーが等方相を示すまで温度を上げ、等方相を示した状態で磁場を印加し、温度降下時間を制御しながら液晶相を経由して室温まで降温することによって、前記特定の基(メソゲン基)の長軸方向の大部分を磁場と平行にすることができる。TOF(Time of flight)用セル、または有機FET素子の面の法線方向と磁場の印加方向は任意に設定できるため、任意の方向に配向制御することができる。また、電極を形成して電場を利用した外場によっても同様の効果が得られる。
【0094】
これらの効果については、たとえば、TOF用セルの場合、クロスニコルの偏光板にセルを挟持し、組織およびそのサイズの観察結果、およびX線回折の結果により確認することができる。また、有機FET素子の場合、AFM(原子間力顕微鏡)またはSEM(走査型電子顕微鏡)による観察結果、およびX線回折の結果により確認することができる。
【0095】
したがって、本発明のデンドリマーを用いれば、前記特定の基の大部分が磁場方向に配向した有機半導体層を得ることができ、これを利用することによって、更に高い移動度を有する有機半導体および有機トランジスタを実現することができる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。本発明はこれら実施例によってなんら限定されない。
各特性値の測定・算出および化合物の同定は下記の方法にしたがった。
【0097】
(1)相転移系列の評価:
相転移系列は、DSC(Differential scanning calorimetry:示差走査熱量測定)、およびホットステージ付き偏光顕微鏡を用いた光学組織観察の双方の結果により決定した。評価開始温度を−40℃とし、温度上昇および温度下降速度を10℃/minとした。また、液晶相状態の高次の構造解析にはX線回折を利
用した。
【0098】
(2)TOF(Time of Flight)法による移動度(μTOF)の測定:
本発明のデンドリマーをクロロホルムに1wt%の濃度で溶解し、スピンコートして乾燥させ、等方相まで加温し、次いで徐冷することによって有機半導体層を得た。TOF測定用のセルは、20μmの厚みを有する前記有機半導体層を、ITO(Indium Tin Oxide)電極を有するガラス基板で挟んだ構成とした。
【0099】
なお、これらの電極はキャリア種と有機半導体膜の仕事関数によって適宜、別種の電極材料を選択することができる。このTOF測定用セルの電極間に、電圧(V)を印加した状態でパルス光を照射し、光キャリアを生成し、キャリア輸送による電流値の変化を電圧に変換することによって、光電流をオシロスコープで計測した。パルス光には窒素レーザー(波長が337nm、パルス幅が5ns)を用いた。温度を変えてμTOFを測定する場
合は、メトラーにTOF測定用セルを挟持することによって測定した。μTOFは上記式(
i)により算出した。
【0100】
(3)有機FET素子の作製と素子パラメーターの測定:
絶縁膜としてSiO2(膜厚は500nm)、ゲート電極としてn型Siウエハ(株式
会社セミテック製)を用い、ソース電極およびドレイン電極として、Cr(5nm)上にAu(50nm)をメタルマスクを利用して真空蒸着法により形成し、本発明のデンドリマーをクロロホルムに1wt%の濃度で溶解し、キャスティング法により有機半導体膜を形成してボトムコンタクト型の有機FET素子を作製した。
【0101】
チャネル長(L)は、240μm、チャネル幅(W)は1.2mmであった。測定温度は室温(25℃)とした。
《移動度(μFET)と閾値電圧(VTH)の測定》
半導体パラメーターアナライザー(4140B:HEWLETT PACKARD)を用いて、ドレイン電圧(VD=−50V)を固定し、ゲート電圧(VG)を+20Vから−100Vまで1V刻みで変化させることによって、伝達特性の評価を行った。この伝達特性の曲線から上記式(ii)により、移動度(μFET)および閾値電圧(VTH)を算出した

【0102】
《オンオフ比の算出》
上述の条件にて測定された伝達特性から、IDの最大値(IDmax)と最小値(IDmin
を計測し、その比であるIDmax/IDminをオンオフ比として算出した。
【0103】
(4)合成化合物の同定
合成化合物の同定は、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)(使用機器:FT−NM
R JMN−EX270(JEOL(株)製)、溶媒:CDCl3)の測定および元素分
析によって行った。
【0104】
[実施例1]
<デンドリマー(1a)の合成>
【0105】
【化17】

(I) 12−(6−ブロモ−ナフタレン−2−イロキシ)−ドデカン−1−オールの合成
窒素雰囲気下において、6−ブロモ−2−ナフトール(4.22g、18.9mmol:関東化学(株)製)と水酸化カリウム(1.26g、22.6mmol)をエタノール
(鹿一級)に溶解し、78℃で15分間攪拌した後、室温まで冷却し、エタノールに溶かした12−ブロモ−1−ドデカノール(アルドリッチ製)を滴下し、再び78℃にして、24時間攪拌した。反応終了後、エタノールを留去してクロロホルムに溶解し、希塩酸で中和した後、蒸留水で洗浄した。さらに、硫酸マグネシウムで脱水し、クロロホルムを留去した。クロロホルムとn−ヘキサンで再結晶を行い、収率66.1%で白色固体を得た。
【0106】
【化18】

(II) 1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2,ジオキサボロラン)−4−n−オクチルベンゼンの合成
窒素雰囲気下において、1−ブロモ−4−n−オクチルベンゼン(5g、18.6mmol:東京化成工業製)をテトラヒドロフラン(136mL)に溶解し、クールニクスを用いて−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(9.6mL、25.0mmol:n−ヘキサン溶液、2.6mol/L、関東化学(株)製)を加えた後、氷浴において0℃にし、1時間攪拌した後、再び−78℃にした。
【0107】
2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(5.88mL、29.1mmol:アルドリッチ製)を加え、室温において24時間攪拌した。反応後、テトラヒドロフランを留去し、クロロホルムに溶解し、ブラインで洗浄した。カラムクロマトグラフィー(クロロホルム:n−ヘキサン=1:2)にて精製を行い、無色透明の液体1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2,ジオキサボロラン)−4−n−オクチルベンゼンを収率98.0%で得た。
【0108】
【化19】

(III) 2−(4−オクチルフェニル)−6−ドデシルオキシナフトールの合成
窒素雰囲気下において、12−(6−ブロモ−ナフタレン−2−イロキシ)−ドデカン−1−オール(3.77g、10.0mmol)と1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2,ジオキサボロラン)−4−n−オクチルベンゼン(3.16g、10.0mmol)をテトラヒドロフラン(110mL)に溶解し、炭酸カリウム水溶液(151mmol、蒸留水108mLと炭酸カリウム20.9g)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.468g、0.405mmol:関東化学(株)製)を加え、60℃で24時間攪拌した。
【0109】
反応終了後、不純物を濾別し、テトラヒドロフランを留去した。さらに、エタノールに溶解し、1規定の希塩酸(塩酸:蒸留水=1:10)に加えた。エタノールを留去し、クロロホルムで抽出、蒸留水で洗浄した。硫酸マグネシウムで脱水した後、クロロホルムを留去した。クロロホルムとn−ヘキサンで再結晶を行い、収率60.5%で白色固体を得た。
【0110】
【化20】

(IV) 2−(4−オクチルフェニル)−6−アクリロイルドデシルオキシナフタレンの合成
窒素雰囲気下において、2−(4−オクチルフェニル)−6−ドデシルオキシナフトール(1.03g、2.00mmol)をジクロロメタンに溶解し、トリエチルアミン(0.558mL、4.00mmol:関東化学(株)製)を加え、氷浴で30分間攪拌した。
【0111】
アクリル酸クロイド(0.324mL、4.00mmol:関東化学(株)製)とジクロロメタンとを混合し、滴下ロートを用いて滴下し、0℃のまま12時間攪拌した。反応終了後、不純物を濾別し、ジクロロメタンを留去した。クロロホルムに溶解し、水酸化ナトリウム水溶液、希塩酸、蒸留水の順で洗浄した。硫酸マグネシウムで脱水し、クロロホルムを留去した。カラムクロマトグラフィー(クロロホルム:n−ヘキサン=4:3)で精製し、収率92.2%で白色の固体を得た。
【0112】
【化21】

得られた化合物の構造を1H−NMRスペクトルで確認した。結果を図1に示す:
{6.9〜7.9ppm(10H,Benzene)、5.8,6.1,6.4ppm(3H,AcrylH)、4.05,4.15ppm(4H,OH-CH2)、1.29〜2.65ppm(34H,AlkylH)、2.35ppm(4H,OC-CH2)、0.96ppm(3H),CH3}。
【0113】
(V) 2−(4−オクチルフェニル)−6−アクリロイルドデシルオキシナフタレン
とポリプロピレンイミンデンドリマーの合成
窒素雰囲気下において、2−(4−オクチルフェニル)−6−アクリロイルドデシルオキシナフタレン(200mg、0.350mmol)に、テトラヒドロフラン(0.8mL)に溶解させた世代数2のポリプロピレンイミンデンドリマー(アルドリッチ製)を加え、45℃で二週間攪拌した。反応終了後、クロロホルムを加えてメタノールを注加した。沈殿物を吸引濾過し、クロロホルム、メタノールを留去した。充分に乾燥させた後、できるだけ少量のクロロホルムに溶解させ、メタノールに注加した。沈殿物を吸引濾過した後、クロロホルム、メタノールを留去し、クリーム色の固体を得た。
【0114】
【化22】

得られた化合物の構造を1H−NMRスペクトルで確認した。結果を図2に示す:
{6.83〜7.86ppm(160H,Benzene)、3.94,4.04,4.08(
96H,O-CH2)、2.75ppm(32H,OC-C-CH2)、2.36ppm(52H,N-CH2)、2.35ppm(32H,OC-CH2)、1.57,1.71ppm(96H,O-C-CH2)、1.49ppm(28H,N-C-CH2)、1.29,1.33ppm(416H,AlkylH)、0.96ppm(48H,CH3)}。
【0115】
さらに、元素分析の結果、理論値(C:78.31%、H:9.41%、N:1.97%)に対して、実測値(C:79.33%、H:9.81%、N:1.92%)となり、上記目的物が合成されたことを確認した。
【0116】
《相転移系列の評価》
評価開始温度を−40℃とし、得られたデンドリマー(1a)の相転移系列を評価した結果、低温から室温を含めた広い温度範囲でSmE相を示し、昇温過程では、91.6℃でSmE相からSmB相に相転移し、111℃でSmB相からSmA相に相転移し、126℃でSmA相から等方相に相転移した。
【0117】
降温過程では、119℃で等方相からSmA相に相転移し、105℃でSmA相からSmB相に相転移し、86.6℃でSmB相からSmX相に相転移し、68.5℃でSmX相からSmE相に相転移した。デンドリマー(1a)は、室温下でSmE相を示し、低温領域まで結晶化しなかった。これより、本発明のデンドリマー(1a)は、液晶相温度範囲が室温まで拡大し(室温下でSmE相)、結晶化されないことがわかった。
【0118】
《TOF法による移動度の測定》
TOF測定用セルを上述の方法により作製し、本発明のデンドリマー(1a)を用いて室温(25℃)下における移動度の測定を行った結果、成膜性が良好であり、移動度は、μTOF(25℃)=2.0×10-3cm2 / V・sとなった。
【0119】
これにより、本発明のデンドリマー(1a)は、液晶相温度範囲の下限値が低く、室温下で液晶状態(SmE相)を実現することができ、室温下でも結晶粒界が存在せず、成膜性が良好であるため高い移動度を保持できることがわかった。
【0120】
《外場を利用した配向制御》
上記TOF用セルに対して磁場を利用して配向制御を行った。用いた装置の構成(電磁石:TM−WV8615 MRC−156)を図3に示す。セラミックヒーター16によって、一旦、等方相まで加熱して5分間保持した後、TOF測定用セルの面に対して平行に磁場10(2.4テスラ)を印加しながら、降温速度0.1℃/minにて室温まで冷却した。
【0121】
光学組織を偏光顕微鏡で観察した結果、磁場を印加しない場合と比べて、配向性が良好になったことが確認された。磁場を印加しながら作製した有機半導体層の移動度を室温下で測定した結果、μTOF=3.1×10-3cm2 / V・sであった。これにより、本発明
のデンドリマー(1a)のメソゲン基の大部分を磁場方向に配向させた有機半導体層とすることで、さらに移動度の値を高くできることがわかった。
【0122】
《有機FET素子の作製と素子パラメーターの測定》
上述の方法に従って、本発明のデンドリマー(1a)を有機半導体層として有機FET素子を作製し、室温下でμFETを評価した結果、μFET=1.2×10-3cm2 / V・s、オンオフ比=8×103、VTH=−40Vであった。
【0123】
[比較例1]
《相転移系列の評価》
下記式(2a)で表される液晶有機半導体材料(Polymer Preprints,Japan Vol.50.No12(2001)2879−2880)を合成し、評価開始温度を−40℃として、相転移系列を評価した。その結果、室温下で結晶相を示し、昇温過程で、79.4℃で結晶相からSmB相に相転移し、101℃でSmB相からSmA相に相転移し、121.4℃でSmA相から等方相に相転移した。
【0124】
【化23】

《TOF法による移動度の測定》
TOF測定用セルを実施例1と同様の方法で作製し、25℃と90℃で評価を行った。上述したように25℃では結晶状態であり、90℃ではSmB相であった。結果を以下に示す。
【0125】
μTOF(25℃)では室温で結晶相を示すため成膜性が悪く、キャリア輸送を示す波
形が観測されなかった。
μTOF(90℃)=1.8×10-3cm2/Vs
これらの結果より、液晶相であるSmB相では良好なキャリア(ホール)輸送性を示すものの、室温(25℃)下では成膜性が悪く、結晶粒界の影響が大きすぎるため、キャリ
ア輸送性が消失したことがわかる。実施例1の評価結果を表1に示す。
【0126】
【表1】

[実施例2]
<本発明のデンドリマー(1b)の合成>
【0127】
【化24】

(I) 12−(6−ブロモ−ナフタレン−2−イロキシ)−ドデカン−1−オールの合成
窒素雰囲気下において、6−ブロモ−2−ナフトール(4.22g、18.9mmol:関東化学(株)製)と水酸化カリウム(1.26g、22.6mmol)をエタノール(鹿一級)に溶解し、78℃で15分間攪拌した。室温まで冷却し、エタノールに溶かした12−ブロモ−1−ドデカノール(アルドリッチ製)を滴下し、再び78℃にして、24時間攪拌した。反応終了後、エタノールを留去してクロロホルムに溶解し、希塩酸で中和し、その後、蒸留水で洗浄した。硫酸マグネシウムで脱水し、クロロホルムを留去した。クロロホルムとn−ヘキサンで再結晶を行い、収率98.0%で白色固体を得た。
【0128】
【化25】

(II) 1−ブロモ−2−メチル−4−n−オクチルオキシ−ベンゼンの合成
窒素雰囲気下において、4−ブロモ−3−メチルフェノール(5.00g、26.7mmol:関東化学(株)製)と水酸化カリウム(1.79g、31.9mmol)をエタノール(20mL)に溶解し、78℃で15分間攪拌した。室温に戻し、エタノールに溶解させた8−ブロモ−1−オクタン(5.16g、26.7mmol:アルドリッチ製)を滴下し、78℃で24時間攪拌した。
【0129】
反応終了後エタノールを留去し、クロロホルムに溶解させ、希塩酸で中和した後、蒸留水で洗浄した。硫酸マグネシウムで脱水し、クロロホルムを留去した。収率91.6%で
白色の固体を得た。
【0130】
【化26】

(III) 1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2,ジオキサボロラン)−
2−メチル−4−n−オクチルオキシベンゼンの合成
窒素雰囲気下において、1−ブロモ−2−メチル−4−オクチルオキシ−ベンゼン(5.57g、18.6mmol)をテトラヒドロフラン(136mL)に溶解し、クールニクスを用いて−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(9.6mL、25.0mmol:n−ヘキサン溶液、2.6mol/L、関東化学(株)製)を加えた。氷浴において0℃にし、1時間攪拌した後、再び−78℃にした。2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(5.88mL、29.1mmol:アルドリッチ製)を加え、室温において24時間攪拌した。
【0131】
反応終了後、テトラヒドロフランを留去し、クロロホルムに溶解させ、ブラインで洗浄した。カラムクロマトグラフィー(クロロホルム:n−ヘキサン=1:2)にて精製を行い、収率87.6%で、無色透明の液体1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2,ジオキサボロラン)−2−メチル−4−n−オクチルオキシベンゼンを得た。
【0132】
【化27】

(IV) 2−(2−メチル−4−オクチルオキシフェニル)−6−ドデシルオキシナフトールの合成
窒素雰囲気下において、12−(6−ブロモ−ナフタレン−2−イロキシ)−ドデカン−1−オール(4.07g、10.0mmol)と1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2,ジオキサボロラン)−2−メチル−4−n−オクチルオキシベンゼン(3.46g、10.0mmol)をテトラヒドロフラン(110mL)に溶解し、炭酸カリウム水溶液(151mmol、蒸留水108mLと炭酸カリウム20.9g)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.468g、0.405mmol:関東化学(株)製)とを加え、60℃で24時間攪拌した。
【0133】
反応終了後、不純物を濾別し、テトラヒドロフランを留去した。エタノールに溶解させ、1規定の希塩酸(塩酸:蒸留水=1:10)に加えた。エタノールを留去し、クロロホルムで抽出、蒸留水で洗浄した。硫酸マグネシウムで脱水した後、クロロホルムを留去した。クロロホルムとn−ヘキサンで再結晶を行い、収率57.4%で白色の固体2−(2−メチル−4−オクチルオキシフェニル)−6−ドデシルオキシナフトールを得た。
【0134】
【化28】

(V) 2−(2−メチル−4−オクチルオキシフェニル)−6−アクリロイルドデシルオキシナフタレンの合成
窒素雰囲気下において、2−(2−メチル−4−オクチルオキシフェニル)−6−ドデシルオキシナフトール(1.09g、2.00mmol)をジクロロメタンに溶解し、トリエチルアミン(0.558mL、4.00mmol:関東化学(株)製)を加え、氷浴で30分間攪拌した。アクリル酸クロイド(関東化学(株)製)とジクロロメタンとを混合し、滴下ロートを用いて滴下し、0℃のまま12時間攪拌した。
【0135】
反応終了後、不純物を濾別し、ジクロロメタンを留去した。クロロホルムに溶解し、水酸化ナトリウム水溶液、希塩酸、蒸留水の順にこれらを用いて洗浄した。硫酸マグネシウムで脱水し、クロロホルムを留去した。カラムクロマトグラフィー(クロロホルム:n−ヘキサン=4:3)で精製し、収率31.4%で白色の固体2−(2−メチル−4−オクチルオキシフェニル)−6−アクリロイルドデシルオキシナフタレンを得た。
【0136】
【化29】

得られた化合物の構造を1H−NMRスペクトルで確認した。結果を図4に示す:
{6.63〜7.9ppm(9H,Benzene)、5.80,6.05,6.43(3H,AcrylH)、3.53,3.94,4.04ppm(6H,O-CH2)、2.35ppm(3H,Benzene-CH3)、1.29〜1.71ppm(32H,AlkylH)、0.96ppm(3
H,C-CH3)}。
【0137】
(VI) 2−(2−メチル−4−オクチルオキシフェニル)−6−アクリロイルドデシルオキシナフタレンとポリプロピレンイミンデンドリマーの合成
窒素雰囲気下において、2−(2−メチル−4−オクチルオキシフェニル)−6−アクリロイルドデシルオキシナフタレン(210.3mg、0.350mmol)に、テトラヒドロフラン(0.8mL)に溶解した第2世代のポリプロピレンイミンデンドリマー(5.6mg、0.00723mmol:アルドリッチ製)を加え、45℃で二週間攪拌した。
【0138】
反応終了後、クロロホルムを加えてメタノールに注加した。沈殿物を吸引濾過し、クロロホルム、メタノールを留去した。充分に乾燥させた後、できるだけ少量のクロロホルムに溶解させ、メタノールに注加した。沈殿物を吸引濾過した後、クロロホルム、メタノールを留去し、クリーム色の固体を得た。
【0139】
【化30】

得られた化合物の構造を1H−NMRスペクトルで確認した。結果を図5に示す:
{6.63〜7.66ppm(144H,Benzene)、3.94,4.04,4.08p
pm(96H,O-CH2)、2.75ppm(32H,OC-C-CH2)、2.36ppm(52
H,N-CH2)、2.35ppm(80H,Benzene-CH3,OC-CH2)1.57,1.71ppm(96H,O-C-CH2)、1.49ppm(28H,N-C-CH2)、1.29,1.33ppm(416H,AlkoxyH)、0.96ppm(48H,CH3)}。
【0140】
さらに、元素分析の結果、理論値(C:78.47%、H:9.52%、N:1.93%)に対して、実測値(C:78.56%、H:9.70%、N:2.00%)となり、上記目的物が合成されたことを確認した。
【0141】
《相転移系列の評価》
評価開始温度を−40℃とし、得られたデンドリマー(1b)の相転移系列を評価した結果、低温(−5℃)から室温を含めた広い温度範囲でスメクチック相を示し、昇温過程では、36.2℃でSmE相からSmX相に相転移し、42.2℃でSmX相からSmA相に相転移し、64.7℃でSmA相から等方相に相転移した。降温過程では、61.2℃で等方相からSmA相に相転移し、−5℃でガラス状態に転移した。
【0142】
その結果、本発明のデンドリマー(1b)が室温下でSm相を示すことを確認した。
《TOF法による移動度の測定》
実施例1と同様の方法に従って、本発明のデンドリマー(1b)の移動度を測定した結果、成膜性が良好でありμTOF(25℃)=4.7×10-3cm2/V・sと高い値を示し
た。
【0143】
《外場を利用した配向制御》
実施例1と同様の方法に従って、上記TOF用セルに対して磁場を利用して配向制御を行った。光学組織を偏光顕微鏡で観察した結果、磁場を印加しない場合と比べて、配向性が良好になったことが確認された。磁場を印加しながら作製した有機半導体層の移動度を室温下で測定した結果、μTOF(25℃)=5.5×10-3cm2 / V・sとなり、さら
に移動度の値を高くすることができた。実施例2の評価結果を表2に示す。
【0144】
【表2】

[実施例3]
<本発明のデンドリマー(1c)の合成>
ポリプロピレンイミンデンドリマーの末端基となる式(1c)におけるMを、WO2006/022040号公報に記載の方法で合成した以外は、実施例1と同様の方法に従い、式(1c)で表される本発明のデンドリマー(1c)を得た。
【0145】
【化31】

《TOF法による移動度の測定》
実施例1と同様の方法に従って、本発明のデンドリマー(1c)の移動度の測定を行った結果、室温下で液晶相を示し、良好な成膜性を有し、μTOF(25℃)=1.0×10-2cm2 / V・sと高い値を示した。
【0146】
[比較例2]
下記式(2b)で表される液晶有機半導体材料(Chem.Commun.,2005,5337−5339,K.Oikawa,Y.Shimizu)を合成し、評価開始温度を−40℃として相転移系列の評価を行った結果、室温で結晶相であり、昇温過程において、47.5℃で結晶相から中間相(M3)に相転移し、71.4℃で中間相(M3)から中間相(M2)に相転移し、87℃で中間相(M2)から中間相(M1)に相転移し、146℃で中間相(M1)から等方相に相転移した。
【0147】
次いでTOF法を用いた室温(25℃)下での移動度を測定した結果、成膜性が悪く、μTOF(25℃)ではキャリア輸送を示す波形が観測されなかった。
【0148】
【化32】

実施例3の評価結果を表3に示す。
【0149】
【表3】

[実施例4]
<本発明のデンドリマー(1d)の合成>
ポリプロピレンイミンデンドリマーの末端基となる式(1d)におけるMを、特開2005−142526号公報に記載の方法で合成したした以外は、実施例1と同様の方法に従い、式(1d)で表される本発明のデンドリマー(1d)を得た。
【0150】
【化33】

《TOF法による移動度の測定》
実施例1と同様の方法に従って、本発明のデンドリマー(1d)の移動度の測定を行った結果、室温下で液晶相を示し、良好な成膜性を有するためμTOF(25℃)=5.1×
10-2cm2 / V・sと高い値を示した。
【0151】
[比較例3]
下記式(2c)で表される液晶有機半導体材料(第53回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集、p1408)を合成し、評価開始温度を−40℃として相転移系列の評価を行った結果、室温で結晶相であり、昇温過程において、92.4℃で結晶相から中間相(M)に相転移し、181℃で中間相(M)から等方相に相転移した。
【0152】
次いでTOF法を用いた室温(25℃)下での移動度μTOF(25℃)を測定した結果
、室温で結晶相であるため成膜性が悪く、キャリア輸送を示す波形が観測されなかった。
【0153】
【化34】

実施例4の評価結果を表4に示す。
【0154】
【表4】

[実施例5]
<本発明のデンドリマー(0e)、(1e)、(0f)、(1f)の合成>
【0155】
【化35】

化合物(2)は、文献P. Wilson et al., Mol.Cryst. and Liq. Cryst., 2001, 368, 279-292に従って得た。2−ヘキシルチオフェン(1)(Lancaster社製、5g、29.7mmol)を脱水THF50mlに溶かした。その溶液をドライアイス/アセトンによって、−78℃にまで冷却した。そこに1.6Mノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(関東化学社製、19ml、30mmol)を滴下した。滴下後、15分間その温度で攪拌した後、さらに室温で1時間攪拌し、
再び、−78℃に冷却して、塩化トリブチルスズ(東京化成社製、10g、30.7mmol)を加
えた。室温に戻して一晩攪拌した。その混合物に水を加え、有機物をジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去して、目的物の粗製体を得た。精製は真空蒸留によって行った。
【0156】
化合物(2)(1g、2.19mmol)、5−ブロモ−2,2'−ビチオフェン(Aldrich, 0.5g、2.04mmol)の脱水ジメチルホルムアミド混合物(20ml)を窒素気流に30分間にさらした。そこにビス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(II) ジクロライド(東京化成社
製、20mg、0.03mmol)、トリフェニルフォスフィン(和光純薬社製、26mg、0.1mmol
)を加え、100℃で20時間攪拌した。室温に冷却後、水を加え、有機層をジクロロメタン
で抽出した。ジクロロメタン溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。カラム精製、再結晶を行って、目的物(3)を得た。
【0157】
窒素雰囲気下、(3) (0.9g, 2.8mmol)の脱水THF溶液(100ml)に、−78℃で2.77M n-BuLi(関東化学社製、1.1ml, 3.0mmol)を滴下した。室温に戻し、30分間攪拌して、再び−78℃に冷却し、6−ブロモヘキシルオキシ−tert−ブチルジメチルシラン(Aldrich,0.84g, 2.8mmol)を加えた。室温に戻し、さらに2時間攪拌した。水を加えて反応をとめた後、有機層をジクロロメタンで抽出した。有機層をブラインで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。カラム精製、再結晶を行って、目的物(4)を得た。
【0158】
窒素雰囲気下、粗製物(4) (1.0g, 1.8mmol)の脱水THF溶液(5ml)に、1.0Mテトラブチルアンモニウムフルオライド(Aldrich,14ml, 14mmol)を加え、室温で24時間攪拌した。水を加えて、反応をとめ、有機層を酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。展開溶媒に酢酸エチルを用いて、カラム精製した後、ヘキサンで再結晶して目的物(5)を得た。
【0159】
窒素雰囲気下、(5)(0.56g,1.3mmol)、トリエチルアミン(和光純薬製、0.26g,2.6mmol)を溶かしたジクロロメタン溶液(30ml)に、0℃でアクロイルクロライドのジクロロ
メタン溶液(10ml)を加え、その温度で12時間攪拌した。水を加え、反応を止めた後、ジクロロメタンで有機層を抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。カラム精製をって目的物(6)を得た。
【0160】
化合物(6)(1g, 2.0mmol),1,3-ジアミノプロパン(関東化学製, 18 mg, 0.25mmol) を
窒素雰囲気下、脱水THF中、2 週間還流を行った。反応終了後、THF を留去して、粗製物
を粉末として得た。得られた固体を少量のクロロホルムに溶かし、n-ヘキサンを加え、目的物(0e)を再沈殿させた。この操作を、アクリル基のNMRピークが消えるまで繰り返
した。
【0161】
化合物(6)(1g, 2.0mmol)、およびポリプロピレンイミンデンドリマー第1 世代 (PPID G1.0)(Aldrich, 40 mg, 0.13mmol)を窒素雰囲気下で脱水THF中、2 週間還流を行った。反応終了後、THF を留去して、粗製物を粉末として得た。得られた固体を少量のクロロホルムに溶かし、n-ヘキサンを加え、目的物(1e)を再沈殿させた。この操作を、アクリル基
のNMRピークが消えるまで繰り返した。
【0162】
窒素雰囲気下、(3) (1.0g, 3.0mmol)の脱水ジメチルホルムアミド溶液(30ml)に、ゆっくりとN−ブロモスクシンイミド(関東化学社製、0.53g,3.0mmol)を滴下した。室温
に戻し、十時間攪拌した。水を加えて反応をとめた後、有機層をジクロロメタンで抽出した。有機層をブラインで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィーを用いて精製を行って目的物(9)を得た。
【0163】
窒素雰囲気下、化合物(9)(1.0g, 2.4mmol)、2−チオフェンボロン酸(東京化成工
業製、0.31g, 2.4mmol)、および炭酸セシウム(関東化学製、1g)をジエチレングリコ
ールジメチルエーテル50mlに加え、窒素気流に30分間にさらした。この混合物に、テトラキス(トリフェニルフォスフォニウム)パラジウム(東京化成工業製、0.1g, 0.09mmol)を加え、85℃で数時間攪拌した。室温に戻した反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)に注ぎ、沈殿物をろ過した。沈殿物を真空乾燥後、カラム精製を行って目的
物(10)を得た。
【0164】
窒素雰囲気下、(10) (1.16g, 2.8mmol)の脱水THF溶液(100ml)に、−78℃で2.77M n-BuLi(関東化学社製、1.1ml, 3.0mmol)を滴下した。室温に戻し、30分間攪拌した。
再び−78℃に冷却し、6−ブロモヘキシルオキシ−tert−ブチルジメチルシラン(Aldrich,0.84g, 2.8mmol)を加えた。室温に戻し、2時間攪拌し、水を加えて反応をとめた後、有機層をジクロロメタンで抽出した。有機層をブラインで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。得られた粗製物をカラム精製して目的物(11)を得た。
【0165】
窒素雰囲気下、粗製物(11) (1.13g, 1.8mmol)の脱水THF溶液(5ml)に、1.0Mテトラ
ブチルアンモニウムフルオライド(Aldrich,14ml, 14mmol)を加え、室温で24時間攪拌した。水を加え、反応をとめ、有機層を酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。得られた粗製物をカラム精製して目的物(12)を得た。
【0166】
窒素雰囲気下、(12)(0.67g,1.3mmol)、トリエチルアミン(和光純薬製、0.26g,2.6mmol)を溶かしたジクロロメタン溶液(30ml)に、0℃でアクロイルクロライドのジクロ
ロメタン溶液(10ml)を加え、その温度で12時間攪拌した。水を加え、反応を止めた後、ジクロロメタンで有機層を抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去した。得られた粗製物をカラム精製して目的物(13)を得た。
【0167】
化合物(13)(1.13g, 2.0mmol)、および1,3-ジアミノプロパン(関東化学製, 18 mg, 0.25mmol) を窒素雰囲気下で脱水THF中、2 週間還流を行った。反応終了後、THF を留去し
て、粗製物を粉末として得た。得られた固体を少量のクロロホルムに溶かし、n-ヘキサンを加え、目的物(0f)を再沈殿させた。この操作を、アクリル基のNMRピークが消える
まで繰り返した。
【0168】
化合物(13)(1.13g, 2.0mmol)、およびポリプロピレンイミンデンドリマー第1 世代 (PPID G1.0)(Aldrich, 40 mg, 0.13mmol)を窒素雰囲気下で脱水THF中、2 週間還流を行っ
た。反応終了後、THF を留去して、粗製物を粉末として得た。得られた固体を少量のクロロホルムに溶かし、n-ヘキサンを加え、目的物(1f)を再沈殿させた。この操作を、アク
リル基のNMRピークが消えるまで繰り返した。
【0169】
【化36】

【0170】
【化37】

《TOF法による移動度の測定》
実施例1と同様の方法に従って、本発明のデンドリマー(0e)、(1e)、(0f)および(1f)の移動度の測定を行った結果、それぞれ、μTOF(25℃)=4.5×10-3cm2 / V・s、6.1×10-3cm2 / V・s、8.5×10-3cm2 / V・s、1.0×10-2cm2 / V・sと高い値を示した。
【0171】
[比較例4]
下記式(2d)で表される液晶有機半導体材料(J.Mater.Chem.,2003,13,197−202)を合成し、評価開始温度を−40℃として相転移系列の評価を行った結果、室温で結晶相であり、昇温過程において、54.1℃で結晶相からSmF相に相転移し、84.3℃でSmF相から等方相に相転移した。
【0172】
次いでTOF法を用いた室温(25℃)下での移動度を測定した結果、室温で結晶であるため成膜性が悪く、キャリア輸送性を示す波形は観察されなかった。
【0173】
【化38】

実施例5の評価結果を表5に示す。
【0174】
【表5】

[実施例6]
<本発明のデンドリマー(1g)の合成>
【0175】
【化39】

化合物(1)(1g, 3.7mmol)、水(30ml)、および硫酸(2ml)を混合し、5℃以下に冷却した混合物に、別途、亜硝酸ナトリウム(関東化学製)(630mg, 9.1mmol)と水(10ml)とで調整した溶液を、5℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後30分攪拌したのち、ホスフィン酸(関東化学製)(20ml)、エタノール(20ml)を加え、三時間還流した。室温まで冷却後、沈殿した固体をろ過によって回収した。固体を乾燥させた後、展開溶媒として、クロロホルムを用い、カラムクロマトグラフィーによって精製を行い、収率47%で目的物(2)を得た。
【0176】
得られた化合物の構造を1H−NMRスペクトルで確認した。
1HNMR(500MHz,CDCl3)δ7.93 (d, J=8.6Hz,1H), 7.89(d, J=7.8Hz,1H), 7.46(t, J=1.5Hz,2H), δ: 0.18 (s, 18H, CH3)。
【0177】
化合物(2)(1.0g, 4.2mmol)を脱水ジクロロメタン(100ml)に加え、アセトン/ドライ
アイスバスを用いて−20℃まで冷却した。そこに、塩化アルミニウム(和光純薬製、1.9g, 14.2mmol)を加え、一時間攪拌した。さらに、−78℃まで温度まで冷却し、そこにオクタノイルクロライド(東京化成製、1.1g, 6.7mmol)を加え、その温度で1時間攪拌した。
1時間後、室温に戻し、さらに四時間攪拌した。反応後、水を加え、反応を完全に終了さ
せた。有機物(9)をクロロホルムで抽出した。抽出した溶液は、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧乾固させた。得られた固体を、トルエンを展開溶媒に用い、カラム精製を行った。収率64%で目的物(3)を得た。
【0178】
得られた化合物の構造を1H−NMRスペクトルで確認した。
1HNMR(500MHz,CDCl3)δ8.09 (d, J=1.5Hz,2H), 7.91(d, J=8.1Hz,2H), 7.69(d, J=1.5Hz,2H), δ: 0.18 (s, 18H, CH3)。
【0179】
化合物(3)(1.0g, 2.7mmol)、ヒドラジン一水和物(東京化成製、1.0g,20mmol)、水酸化カリウム(和光純薬製、0.5g,8.91mmol)の混合物を110℃で45分間攪拌した。その
後、温度を200℃まで温度を上げ、さらに五時間攪拌した。室温に冷却した後、固体をろ
過し、メタノールで洗浄した。固体を乾燥させた後、展開溶媒として、ヘキサン/トルエ
ンを用い、カラムクロマトグラフィーによって精製を行い、収率90%で目的物(4)を得た。
【0180】
得られた化合物の構造を1H−NMRスペクトルで確認した。
1HNMR(500MHz,CDCl3)δ8.09 (d, J=1.5Hz,2H), 7.91(d, J=8.1Hz,2H), 7.69(d, J=1.5Hz,2H), δ: 0.18 (s, 18H, CH3)。
【0181】
窒素雰囲気下、(4) (1.0g, 2.8mmol)の脱水THF溶液(100ml)に、−78℃で2.77M n-BuLi(関東化学社製、1.1ml, 3.0mmol)を滴下した。室温に戻し、30分間攪拌して再び−78℃に冷却し、6−ブロモヘキシルオキシ−tert−ブチルジメチルシラン(Aldrich,0.84g, 2.8mmol)を加えた。室温に戻し、2時間攪拌した。水を加えて反応をとめた後、有機層をジクロロメタンで抽出した。有機層をブラインで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾固させた。得られた粗製物(5)は精製せずに、そのまま次の反応に用いた。
1HNMR(500MHz,CDCl3)δ8.09 (d, J=1.5Hz,2H), 7.91(d, J=8.1Hz,2H), 7.69(d, J=1.5Hz,2H), δ: 0.18 (s, 18H, CH3)。
【0182】
窒素雰囲気下、粗製物(5) (1.0g, 1.8mmol)の脱水THF溶液(5ml)に、1.0Mテトラブチルアンモニウムフルオライド(Aldrich,14ml, 14mmol)を加え、室温で24時間攪拌した。水を加え、反応をとめ、有機層を酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、乾固させる。展開溶媒に酢酸エチルを用いて、カラム精製した後、ヘキサンで再結晶して収率80%で目的物(6)を得た。得られた化合物の構造を1H−NMR
スペクトルで確認した。
1HNMR(500MHz,CDCl3)δ8.09 (d, J=1.5Hz,2H), 7.91(d, J=8.1Hz,2H), 7.69(d, J=1.5Hz,2H), δ: 0.18 (s, 18H, CH3)。
【0183】
窒素雰囲気下、(6)(0.59g,1.3mmol)、トリエチルアミン(和光純薬製、0.26g,2.6mmol)を溶かしたジクロロメタン溶液(30ml)に、0℃でアクロイルクロクロライドのジク
ロロメタン溶液(10ml)を加え、その温度で12時間攪拌した。水を加え、反応を止めた後、ジクロロメタンで有機層を抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、乾固させる。展開溶媒としてトルエンを用いて、カラム精製を行って収率36%で目的物(
7)を得た。得られた化合物の構造を1H−NMRスペクトルで確認した。
1HNMR(500MHz,CDCl3)δ8.09 (d, J=1.5Hz,2H), 7.91(d, J=8.1Hz,2H), 7.69(d, J=1.5Hz,2H), δ: 0.18 (s, 18H, CH3)。
【0184】
化合物(7)(1g, 2.0mmol),1,3-ジアミノプロパン(関東化学製, 18 mg, 0.25mmol) を
窒素雰囲気下で脱水THF中、2 週間還流を行った。反応終了後、THF を留去して、粗製物
を粉末として得た。得られた固体を少量のクロロホルムに溶かし、n-ヘキサンを加え、目的物(7)を再沈殿させた。この操作を、アクリル基のNMRピークが消えるまで繰り返した。得られた化合物の構造を1H−NMRスペクトルで確認した。
1HNMR(500MHz,CDCl3)δ8.09 (d, J=1.5Hz,2H), 7.91(d, J=8.1Hz,2H), 7.69(d, J=1.5Hz,2H), δ: 0.18 (s, 18H, CH3)。
【0185】
化合物(7)(1g, 2.0mmol)、およびポリプロピレンイミンデンドリマー第1 世代 (PPID G1.0)(Aldrich, 40 mg, 0.13mmol)を窒素雰囲気下で脱水THF中、2 週間還流を行った。反応終了後、THF を留去して、粗製物を粉末として得た。得られた固体を少量のクロロホルムに溶かし、n-ヘキサンを加え、目的物(1g)を再沈殿させた。この操作を、アクリル基のNMRピークが消えるまで繰り返した。得られた化合物の構造を1H−NMRスペクト
ルで確認した。
1HNMR(500MHz,CDCl3)δ8.09 (d, J=1.5Hz,2H), 7.91(d, J=8.1Hz,2H), 7.69(d, J=1.5Hz,2H), δ: 0.18 (s, 18H, CH3)。
【0186】
【化40】

《TOF法による移動度の測定》
実施例1と同様の方法に従って、本発明のデンドリマー(1g)の移動度を測定した結果、塗布法による成膜性が良好でありμTOF(25℃)=1.1×10-2cm2/V・sと
高い値を示した。
【0187】
[実施例7]
<本発明のデンドリマー(1h)の合成>
ポリプロピレンイミンデンドリマーの末端基となる式(1h)におけるMを、特開2006−339474号公報に記載の方法で合成した以外は、実施例1と同様の方法に従い、式(1h)で表される本発明のデンドリマー(1h)を得ることができた。該デンドリマーも良好な成膜性と高い移動度を示すことができるものと予想される。
【0188】
【化41】

【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】実施例1において得られた2−(4−オクチルフェニル)−6−アクリロイルドデシルオキシナフタレンの1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1において得られた本発明のポリプロピレンイミンデンドリマー(1a)の1H−NMRスペクトルである。
【図3】TOF用セルに対し、磁場を利用して配向制御を行った際に用いた装置の構成図である。
【図4】実施例2において得られた2−(2−メチル−4−オクチルオキシフェニル)−6−アクリロイルドデシルオキシナフタレンの1H−NMRスペクトルである。
【図5】実施例2において得られた本発明のポリプロピレンイミンデンドリマー(1b)の1H−NMRスペクトルである。
【符号の説明】
【0190】
10 磁場
12 試料
14 ITO
16 セラミックヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレンイミンデンドリマーから誘導され、少なくとも一部の末端基が式(B1)〜(B5)で表される基からなる群より選択される基であるデンドリマー
【化1】

(式(B1)〜(B5)中、Y1は水素、ハロゲン、シアノ、炭素数1から20のアルキ
ルまたは炭素数1から20のハロゲン化アルキルであり、Y1が炭素数1から20のアル
キルまたは炭素数1から20のハロゲン化アルキルである場合には、直鎖アルキルまたは分岐アルキルのいずれかであり、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−
、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられていてもよく、基中の炭素はSiで置き換えられてもよい;
1は炭素数1から30のアルキレンであり、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−CO−、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられていてもよく、Z2、Z3およびZ4は独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C
−、−CH2−O−、−O−CH2−、−COO−、または−OCO−であり、Z5および
6は独立して単結合または−C≡C−であり、Z7およびZ8は独立して単結合、−CO
−、−O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−O−、−O−CH2−、−COO−、または−OCO−である;
1、A2、A3およびA4は独立して単結合、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、2,5−ピリミジン、2,5−ピリジン、2,6−ベンゾチアゾール、または2,5−オキサジアゾールである(ただし、A1、A2、A3およびA4
のうち、少なくとも3つは独立して、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、2,5−ピリミジン、2,5−ピリジン、または2,5−オキサジアゾールである);
5およびA7は独立して単結合、1,4−フェニレンまたは2,5−チオフェンであり、A6は1,4−フェニレンまたは2,6−ナフタレンであり、A8およびA9は独立して単
結合、1,4−フェニレンまたは2,5−チオフェンであり、A10、A11、A12、A13およびA14は独立して単結合、縮合チオフェン、2,5−チオフェン、2,2’−ジチオフェン、チアゾロチアゾール、フルオレン、カルバゾール、または1,4−フェニレンである(ただし、A10、A11、A12、A13およびA14のうち、少なくとも1つは独立して、縮合チオフェン、チアゾロチアゾール、フルオレン、またはカルバゾールである);
pは1から5の整数である。また、式(B1)〜(B5)において、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、2,5−チオフェン、縮合チオフェン、フルオレンおよびカルバゾールの側方位の少なくとも1つの水素は、ハロゲン、シアノ、炭素数1から20のア
ルキル、または炭素数1から20のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、炭素数1から20のアルキルまたは炭素数1から20のハロゲン化アルキルで置き換えられる場合は、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−、−CH=CH−または−
C≡C−で置き換えられてもよい。)。
【請求項2】
前記式(B1)〜(B5)中、Y1が炭素数1から20の直鎖または分岐のアルキルで
あり(ただし、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−COO−、−OCO−
、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよい)、Z2からZ8が単結合
である請求項1に記載のデンドリマー。
【請求項3】
前記末端基の式(B1)〜(B5)が式(B1−a)、(B1−b)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)、(B4−b)、(B5−a)、(B5−b)または(B5−c)で表される基である請求項1に記載のデンドリマー;
【化2】

(式(B1−a)、(B1−b)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)、(B4−b)、(B5−a)、(B5−b)および(B5−c)中、Y2はハロ
ゲン、または炭素数1から20のアルキルであり、Y2が炭素数1から20のアルキルで
ある場合には、直鎖アルキルまたは分岐アルキルのいずれかであり、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、または−C≡C
−で置き換えられていてもよい;
1は炭素数1から30のアルキレンであり、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−CO−、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられていてもよい;
15およびA16は独立して単結合、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニル、また
は2,6−ナフタレンである(ただし、A15およびA16の両方が単結合である場合、ならびにA15およびA16の両方が4,4’−ビフェニルの場合を除く);
17、A18、A19およびA20は独立して単結合、または1,4−フェニレンであり、A21およびA22は独立して1,4−フェニレン、2,5−チオフェン、または2,2’−ビチオフェンであり、A23およびA24は独立して単結合、2,5−チオフェン、または1,4−フェニレンである;
qは3から7の整数である;
また、式(B1−a)、(B1−b)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)、(B4−b)、(B5−a)、(B5−b)および(B5−c)において、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、4,4’−ビフェニルおよび2,5−チオフェンの側方位の少なくとも1つの水素は、ハロゲン、メチルまたはエチルで置き換えられてもよい。)。
【請求項4】
前記式(B1−a)、(B1−b)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−a)、(B4−b)、(B5−a)、(B5−b)および(B5−c)中、Y2
炭素数1から20の直鎖または分岐のアルキルであり(ただし、基中の少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置
き換えられていてもよい)、A15が単結合であり、A16が1,4−フェニレンであり、A17およびA18が単結合であり、A19およびA20が単結合であり、A21およびA22が2,2’−ビチオフェンであり、A23およびA24が独立して単結合または2,5−チオフェンである請求項3に記載のデンドリマー。
【請求項5】
前記末端基が式(B1−a)、(B2−a)、(B3−a)、(B3−b)、(B4−b)、(B5−b)または(B5−c)で表される基である請求項3または4に記載のデンドリマー。
【請求項6】
前記末端基が式(B1−a)で表される基である請求項3または4に記載のデンドリマー。
【請求項7】
前記末端基が式(B2−a)で表される基である請求項3または4に記載のデンドリマー。
【請求項8】
前記末端基が式(B4−b)で表される基である請求項3または4に記載のデンドリマー。
【請求項9】
前記ポリアルキレンイミンデンドリマーが、ポリプロピレンイミンデンドリマーである請求項1〜8のいずれかに記載のデンドリマー。
【請求項10】
世代数が0〜5である請求項1〜9のいずれかに記載のデンドリマー。
【請求項11】
25℃において液晶相を有する請求項1〜10のいずれかに記載のデンドリマー。
【請求項12】
前記液晶相がスメクチック相である請求項11に記載のデンドリマー。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のデンドリマーを用いた有機半導体。
【請求項14】
磁場を利用することによって配向性を増した請求項13に記載の有機半導体。
【請求項15】
請求項13に記載の有機半導体を用いた有機トランジスタ。
【請求項16】
請求項14に記載の有機半導体を用いた有機トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−239987(P2008−239987A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49825(P2008−49825)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年9月5日 社団法人 高分子学会発行の「高分子討論会予稿集 55巻2号」に発表
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】