説明

データ伝送アダプタ

【課題】通信量に応じて使用する回線を動的に選択する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るデータ伝送アダプタA100は、複数の通信経路を具備する衛星通信を介したIPパケットのバルク伝送に対応するデータ伝送アダプタであって、IPパケットの単位時間当たりの通信量を算出する通信量監視部104と、通信量監視部104が算出した通信量と複数の通信経路の伝送レートに基づいて複数の通信経路のうち有効化する経路を判定する有効経路判定部111と、有効経路判定部111によって有効化すると判定された経路に、IPパケットを転送するパケット転送部105を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数の回線を用いてデータを一括して伝送するバルク伝送に対応するデータ伝送アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
通信衛星を介してIPデータを伝送する地域衛星通信第二世代ネットワークやEsbirdネットワーク等のIPデータ通信ネットワークでは、一般に、32k〜8Mbpsの可変レート変復調器及び当該変復調器に対応するデータ伝送アダプタが用いられている。この可変レートにおいて32k〜2Mbpsの通信と3〜8Mbpsの通信とでは、誤り訂正方式等に差異があり、3〜8Mbps対応の変復調器は現状では余り使用されていない。32k〜2Mbpsの通信によって大容量のIPパケットを伝送するためには、複数の変復調器を用いてバルク伝送を行い、擬似的に3〜8MbpsのIPパケット伝送路を構築することが考えられる。
【0003】
例えば特許文献1には、TCP/UDPを用いたバルク通信を行なうためのバルク通信制御装置が開示されている。このバルク通信制御装置では、アプリケーションに応じて確保する帯域を予め決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−228791号公報(段落0025〜0028、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
衛星通信では使用されていない帯域(回線)は開放することが望まれるが、上述のようなバルク通信制御装置は、使用されていない回線を開放する機能を有していない。このため通信量が少ない状態であっても、バルク伝送に割り当てられた回線全てを占有し続けてしまうことが懸念される。
【0006】
本発明は、前記のような問題に鑑みなされたもので、通信量に応じて使用する回線を動的に選択するデータ伝送アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るデータ伝送アダプタは、複数の通信経路を具備する衛星通信を介したIPパケットのバルク伝送に対応するデータ伝送アダプタであって、前記IPパケットの単位時間当たりの通信量を算出する通信量算出手段と、前記通信量算出手段が算出した通信量と前記複数の通信経路の伝送レートに基づいて、前記複数の通信経路のうち有効化する経路を判定する有効経路判定手段と、前記有効経路判定手段によって有効化すると判定された経路に、前記IPパケットを転送するパケット転送手段を具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通信量に応じて使用する回線を動的に選択するデータ伝送アダプタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るデータ伝送アダプタを用いて構築される衛星回線を介したIP通信システムの一例を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係るデータ伝送アダプタの構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】図2に示された経路通信量管理テーブルに格納される各経路の情報の一例を示す図。
【図4】図2に示された転送量計算部による各ラウンドでの判定式の算出結果の一例を示す図。
【図5】伝送レートの比に応じて送信バッファに保存されたIPパケットカプセルが、通信衛星Sを介して受信側のデータ伝送アダプタに伝送される様子を模式的に表した図。
【図6】本実施形態に係るデータ伝送アダプタによるIPパケットの送信処理を示すフローチャート。
【図7】本実施形態に係るデータ伝送アダプタによるIPパケットの受信処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明によるデータ伝送アダプタの実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るデータ伝送アダプタを用いて構築される、衛星回線を介したIP通信システムの一例を示す図である。このIP通信システムでは、ホストAに接続されたネットワークA−NとホストBに接続されたネットワークB−Nとの間で、衛星回線を経由したIP通信が行なわれる。
【0012】
ネットワークA−N及びネットワークB−Nは、例えば有線又は無線のLANやWAN等のネットワークを含む。
【0013】
ネットワークA−Nには、IPパケットのバルク伝送に対応したデータ伝送アダプタA100が接続される。このデータ伝送アダプタA100は、複数の変復調部A20−1〜A20−n(nは2以上の自然数)と接続され、IPパケットのバルク伝送を制御する。
【0014】
変復調部A20−1〜A20−nはそれぞれ、対応する送受信部A30−1〜A30−nに接続されている。変復調部A20−1〜A20−nは、データ伝送アダプタA100から入力されるIPパケットをIF無線信号に変調する。変調されたIF無線信号は、送受信部A30−1〜A30−nにてRF無線信号にアップコンバートされた後、アンテナA1〜Anへ出力される。また、アンテナA1〜Anから入力するRF無線信号は、送受信部A30−1〜A30−nにてIF無線信号にダウンコンバートされる。ダウンコンバートされたIF無線信号は、変復調部A20−1〜A20−nにてIPパケットに復調され、データ伝送アダプタA100に出力される。
【0015】
送受信部A30−1〜A30−nはそれぞれ対応するアンテナA1〜Anに接続され、通信衛星Sを介して伝送されるRF無線信号の送受信を行なう。
【0016】
同様に、ネットワークB−Nには、IPパケットのバルク伝送に対応したデータ伝送アダプタB100が接続される。このデータ伝送アダプタB100は、複数の変復調部B20−1〜B20−nに接続され、IPパケットのバルク伝送を制御する。
【0017】
変復調部B20−1〜B20−nはそれぞれ、対応する送受信部B30−1〜B30−nに接続されている。変復調部B20−1〜B20−nは、データ伝送アダプタB100から入力するIPパケットをIF無線信号に変調する。変調されたIF無線信号は、送受信部B30−1〜B30−nにてRF無線信号にアップコンバートされた後、アンテナB1〜Bnへ出力される。また、アンテナB1〜Bnから入力するRF無線信号は、送受信部B30−1〜B30−nにてIF無線信号にダウンコンバートされる。ダウンコンバートされたIF無線信号は、変復調部B20−1〜B20−nにてIPパケットに復調され、データ伝送アダプタB100に出力される。
【0018】
送受信部B30−1〜B30−nはそれぞれ対応するアンテナB1〜Bnに接続され、通信衛星Sを介して伝送されるRF無線信号の送受信を行なう。
【0019】
このように、本実施形態に係るIP通信システムでは、変復調部A20−1、送受信部A30−1、アンテナA1、通信衛星S、アンテナB1、送受信部B30−1、及び変復調部B20−1からなる経路1から、変復調部A20−n、送受信部A30−n、アンテナAn、通信衛星S、アンテナBn、送受信部B30−n、及び変復調部B20−nからなる経路n(nは2以上の自然数)までのn系統のIP通信経路が構築される。
【0020】
なお、図1では、各系統においてそれぞれ送受信部A30−iとB30−iが備えられているが、複数の系統で送受信部を共有する併設局構成をとることも可能である。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態に係るデータ伝送アダプタの構成を概略的に示すブロック図である。図2では、ネットワークA−Nに接続されるデータ伝送アダプタA100の構成が一例として示されているが、ネットワークB−Nに接続されるデータ伝送アダプタB100も同様の構成を有する。
【0022】
以下では、このデータ伝送アダプタ100AにおけるIPパケットの送受信系統について説明する。
【0023】
地上側Ethernet(登録商標)インタフェース(I/F)101は、地上側のネットワークA−NからLANケーブル等を介して入力されるIPパケットを受信する。受信されたIPパケットは、送信バッファ102に一時的に保存される。
【0024】
送信バッファ102は、IPパケットを切り出してパケットカプセル化部103に送る。このとき、IPパケットはなるべくデータ長が均一になるように切り出される。
【0025】
パケットカプセル化部103は、切り出されたIPパケットをカプセル化する。すなわち、パケットカプセル化部103は、IPパケットの先頭に、データ伝送アダプタ間の専用ヘッダを付加する。この専用ヘッダには、当該カプセルのシーケンス番号が含まれる。
【0026】
パケットカプセル化部103によって生成されたIPパケットカプセルは、通信量監視部104を通過し、パケット転送部105に送られる。通信量監視部104は、通過するIPパケットの単位時間当たりの通信量Pallを算出する。
【0027】
パケット転送部105は、経路1用送信バッファ106−1〜経路n用送信バッファ106−nに、転送量計算部110及び有効経路判定部111から送られる制御信号(図2では破線で示される)に応じてIPパケットカプセルを転送する。
【0028】
経路1用送信バッファ106−1〜経路n用送信バッファ106−nはそれぞれ、ネットワークA−NとネットワークB−N間に構築されたn系統のIP通信路に対応する。経路i用送信バッファ106−i(1≦i≦n)は、IPパケットカプセルを一時的にバッファし、対応する経路i用のEthernet(登録商標)インタフェース(I/F)107−iへ当該IPパケットを転送する。
【0029】
経路1用Ethernet(登録商標)インタフェース107−1〜経路n用Ethernet(登録商標)インタフェース107−nはそれぞれ、対応する経路の変復調部A20−1〜A20−nに接続されている。これらのインタフェースから対応する変復調部A20−1〜A20−nへそれぞれIPパケットが送出される。IPパケットは、変復調部A20−1〜A20−nから、送受信部A30−1〜A30−n及びアンテナA1〜Anを介して通信衛星Sに送出される。
【0030】
一方、変復調部A20−1〜A20nのいずれかを介し、通信衛星Sからデータ伝送アダプタA100に送られたIPパケットカプセルは、経路1用Ethernet(登録商標)インタフェース107−1〜経路n用Ethernet(登録商標)インタフェース107−nのうち対応するインタフェースによって受信される。
【0031】
これらのインタフェースはそれぞれ、経路1用受信バッファ120−1〜経路n用受信バッファ120−nにも接続されている。受信されたIPパケットカプセルは、対応する経路用の受信バッファに送られる。
【0032】
経路1用受信バッファ120−1〜経路n用受信バッファ120−nはそれぞれ、送られてきたIPパケットカプセルを一時的に保存する。各バッファは、カプセルの先頭に付されたデータ伝送アダプタ間専用ヘッダから、当該カプセルのシーケンス番号を取得する。取得されたシーケンス番号は、制御信号(図2では破線として表されている)によってデータ整列部121に通知される。各バッファは、所定時間内はIPパケットカプセルを保存し続ける。
【0033】
データ整列部121は、シーケンス番号順に各受信バッファからIPパケットカプセルを取り出し、カプセルの並べ替えを行なう。並べ替えられたIPパケットカプセルは、パケットカプセル化解除部124に送られる。
【0034】
パケットカプセル化解除部124は、各カプセルにおいて先頭に付されたデータ伝送アダプタ間専用ヘッダを取り外し、カプセル化を解除する。
【0035】
カプセル化が解除されたIPパケットは、受信バッファ125に一時的に格納される。受信バッファ125に格納されたIPパケットは、地上側インタフェース101を介して地上側のネットワークA−Nへ送出される。
【0036】
データ伝送アダプタA100(及びB100)は、以上のようにネットワークと通信衛星Sとの間でIPパケットの伝送を行なう。
【0037】
次に、本実施形態に係るデータ伝送アダプタ100Aにおける通信路選択のための制御系統について説明する。
【0038】
上述のように、通信量監視部104は、通過するIPパケットの単位時間当たりの通信量Pallを算出する。算出された単位時間あたりの通信量Pallは、転送量計算部110及び有効経路判定部111に送られる(図2では破線で示されている)。
【0039】
この転送量計算部110と有効経路判定部11は、経路通信量管理テーブル112に接続されている。図3は、図2に示された経路通信量管理テーブル112に格納される各経路の情報の一例を示す図である。
【0040】
図3に示すように、経路通信量管理テーブル112には、「優先順位」、「転送先」、「最大伝送レート」、「現在の伝送レート」、「次経路有効化通信量閾値」の項目が経路毎に設けられている。経路iの「優先順位」は、当該経路iを有効化する順序を表す。「転送先」は、経路iを通過するIPパケットカプセルの宛て先(この例ではデータ伝送アダプタB100)を示す。「最大伝送レート」は、経路iの最大伝送レートRMAXiを例えば[kbps]単位で表す。「現在の伝送レート」は、経路iの現在の伝送レートRNOWiを例えば[kbps]単位で表す。「次経路有効化通信量閾値」は、経路iの次の優先順位が付された経路を有効化するか否かを判定する閾値RTHiを例えば[kbps]単位で表す。経路iの次の経路を有効化するか否かは、経路1〜経路i−1の伝送レートの合計と当該経路iの次経路有効化閾値RTHiの合算値を、通信量Pallが超えたか否かに基づいて判断される。
【0041】
有効化経路判定部111は、経路通信量管理テーブル112を参照し、通信量監視部104から送られたIPパケットの単位時間当たりの通信量Pallに基づいて、経路iをIPパケットの伝送路として有効化するか否かを判定する。一例として、経路iを有効化するための判定関数として式(1)に示すP(i)が用いられる。
【数1】

【0042】
ただし、式(1)では、経路1〜nは優先順位に従ってナンバリングされているものと想定されている。
【0043】
有効化経路判定部111は、式(2)で表されるように、この判定関数P(i)の値がIPパケットの単位時間当たりの通信量Pall以下である場合に、当該経路iをIPパケットの伝送路として有効化する。
【数2】

【0044】
有効と判断された経路の情報は、パケット転送部105に送られる。パケット転送部105は、有効化された経路iに対応する送信バッファ106−iに、IPパケットカプセルを転送する。
【0045】
これにより、単位時間あたりの通信量Pallの値が大きい場合には、より多くの(優先順位の低い)経路にまでパケットが転送される。逆にPallの値が小さい場合には、優先順位の高い経路のみにパケットが転送され、優先順位の低い経路には転送されなくなる。優先順位の低い経路へパケット転送されない状況が長く続けば、衛星回線において無通信タイマが満了し、その回線は開放されるので、効率的な帯域の運用が可能になる。無通信タイマとは、一定時間通信が行われなった回線において、自動的に接続を切断する機能であり、従来よりデータ伝送アダプタ部に備えられている。データ伝送アダプタ部は、タイマに従って変復調部A20−1〜A20−nを制御する。
【0046】
また有効化された各経路には、パケット転送部105から各経路の伝送レートの比に応じてIPパケットカプセルが転送される。
【0047】
転送量計算部110は、経路通信量管理テーブル112を参照し、通信量監視部104から送られたIPパケットの単位時間当たりの通信量Pallに基づいて、式(3)に示す判定式Dの計算を行なう。
【数3】

【0048】
転送量計算部110は、各ラウンドR(優先度順に各経路について判定式Dの計算を行い、一巡したらインクリメントされる値)において、式(4)で表されるように、この判定式D=0となる経路iの送信バッファ106−iに、パケットを転送する。
【数4】

【0049】
ここで、関数MOD(A,B)は、AをBで割った余りを表し、RNOWiは経路iにおける現在の伝送レートを表す。また、MAX(RNOW)の値は有効化された全経路のうち最も高い伝送レートを表す。INT(・)は、・の整数部のみを示す。
【0050】
パケットが転送された送信バッファ106−iは、対応するインタフェース107−iへIPパケットカプセルを転送する。
【0051】
図4は、転送量計算部110による各ラウンドRでの判定式Dの算出結果の一例を示す図である。図4に示す例では、経路1〜3が有効化されており、それぞれの経路の現在の伝送レートが、RNOW1=2048[kbps]、RNOW2=1024[kbps]、RNOW3=512[kbps]で表されている。すなわちRNOW1:RNOW2:RNOW3=4:2:1が成り立っている。
【0052】
最初のラウンドR=1では、経路1のみが式(4)の判定式D=0を満たす。このとき、1つのIPパケットカプセルが経路1によって伝送される。
【0053】
次のラウンドR=2では、経路1及び経路2が式(4)の判定式D=0を満たす。このとき、2つのIPパケットカプセルが経路1と経路2によってそれぞれ伝送される。
【0054】
図4に示す例では以降同様にラウンドR=12まで、有効化されたそれぞれの経路について判定式Dの値を算出した結果が示されている。経路1については12ラウンド全てでD=0となり、ラウンドR=1〜12の期間に12個のパケットカプセルが経路1によって伝送される。また、経路2については6つのラウンド(R=2,4,6,8,10,12)でD=0となり、ラウンドR=1〜12の期間に6個のパケットカプセルが経路2によって伝送される。また、経路3については3つのラウンド(R=4,8,12)でD=0となり、ラウンドR=1〜12の期間に3個のパケットカプセルが経路3によって伝送される。すなわち、ラウンドR=1〜12の期間に経路1〜3によって伝送されたIPパケットの比率は、12:6:3=4:2:1となっている。この比率は、各経路の伝送レートの比率RNOW1:RNOW2:RNOW3と一致する。
【0055】
このように、式(4)に示す判定式を用いることで、有効化された経路の現在の伝送レートの比率に応じて、IPパケットを伝送することが可能となる。
【0056】
図5は、伝送レートの比に応じて送信バッファ106−1〜106−3に保存されたIPパケットカプセルが、通信衛星Sを介して受信側のデータ伝送アダプタに伝送される様子を模式的に表した図である。
【0057】
図5では、図4の例と同様に、経路1〜3が有効化されており、それぞれの経路の現在の伝送レートが、RNOW1=2048[kbps]、RNOW2=1024[kbps]、RNOW3=512[kbps]で表され、RNOW1:RNOW2:RNOW3=4:2:1が成り立つ場合の例が示されている。
【0058】
伝送レートの比に応じて、経路1の送信バッファ106−1には4つのパケットカプセルが、経路2の送信バッファ106−2には2つのパケットカプセルが、経路3の送信バッファ106−3には1つのパケットカプセルが格納されている(図5の最上段)。
【0059】
これらのパケットカプセルは、ラウンドRの進行に応じて、受信側のデータ伝送アダプタB100の受信バッファ120−1〜120−3に伝送される。
【0060】
この例では、伝送レートがRNOW1=2048[kbps]である経路1では、各ラウンドで1つのパケットカプセルが転送され、4ラウンドで4つのパケットカプセルが転送されている。
【0061】
一方、伝送レートがRNOW2=1024[kbps](RNOW1の1/2)である経路2では、2ラウンドで1つのパケットカプセルが転送され、4ラウンドで2つのパケットが転送されている。
【0062】
また、伝送レートがRNOW3=512[kbps](RNOW1の1/4)である経路3では、4ラウンドで1つのパケットカプセルが転送されている。
【0063】
このように、本実施形態に係るデータ伝送アダプタによれば、経路1〜経路3による4個、2個、及び1個のパケットの伝送は、いずれも4ラウンド掛けて行なわれている。すなわち、全ての伝送経路で伝送終了時刻が一致する。伝送レートが異なる複数の通信経路をまとめて1つの通信経路のように取り扱うバルク伝送を行うには、伝送レートの違いによる伝送終了時刻のばらつきを低減する必要がある。本実施形態に係るデータ伝送アダプタによれば、経路の伝送レートに応じて通信量を制御しているため、経路毎の伝送終了時刻のばらつきを低減することができる。
【0064】
次に、本実施形態に係るデータ伝送アダプタ100AにおけるIPパケットカプセル再送のための制御系統について説明する。
【0065】
上述のように、通信衛星Sから送られたIPパケットカプセルは、経路1用受信バッファ120−1〜経路n用受信バッファ120−nに一時的に保存され、各バッファは、カプセルのシーケンス番号をデータ整列部121に通知する。このとき、シーケンス番号に欠落があれば、送信側のデータ伝送アダプタ(例えば図1ではデータ伝送アダプタB100)に対して再送を要求する必要がある。
【0066】
再送要否判定部113は、データ整列部121に通知されたシーケンス番号に欠落があるか否かを検出する。再送要否判定部113は、欠落したシーケンス番号を検出したら、「再送要求信号」を生成するよう制御信号生成部114へ指示する。
【0067】
制御信号生成部114は、送信側データ伝送アダプタ宛に再送要求信号を生成し、通信量監視部104を介してパケット転送部105に送信する。以降、再送要求信号は、他のIPパケットカプセルと同様に、選択された伝送路を介して伝送される。送信側のデータ伝送アダプタでは、各経路の送信バッファ(例えば図2では経路1用送信バッファ106−1〜経路n用送信バッファ106−n)に所定時間内は保存されているため、再送要求信号に応じてIPパケットカプセルを送出することができる。
【0068】
次に、以上のように構成されたデータ伝送アダプタの動作手順について説明する。
【0069】
図6は、本実施形態に係るデータ伝送アダプタによるIPパケットの送信処理を示すフローチャートである。
【0070】
データ伝送アダプタA100は、地上側のネットワークA−NからLANケーブル等を介して入力されるIPパケットを受信し、受信されたIPパケットを送信バッファ102に一時的に保存する(ステップS401)。
【0071】
送信バッファ102に保存されたIPパケットは、なるべくデータ長が均一になるように切り出され、パケットカプセル化部103によってカプセル化される(ステップS402)。パケットカプセル化部103は、カプセル内の先頭に、当該カプセルのシーケンス番号を含む専用ヘッダを付加する。
【0072】
通信量監視部104は、各経路について単位時間あたりの通信量を算出し、監視する(ステップS403)。
【0073】
転送量計算部110は、優先度の順に伝送経路を選択し、それぞれの経路について、式(1)で表される判定関数P(i)の値を算出する(ステップS404)。
【0074】
有効経路判定部111は、式(2)に基づいて、選択された経路を転送経路として有効化するか否かを判定する(ステップS405)。式(2)で表されるように、判定関数P(i)の値がIPパケットの単位時間当たりの通信量Pall以下である場合に、当該経路iはIPパケットの伝送路として有効化される(ステップS405でYes)。そして、ステップS404の処理に戻って次の優先度の伝送経路を選択し、ステップS405の判定を繰り返す。
【0075】
一方、判定関数P(i)の値がIPパケットの単位時間当たりの通信量Pallより大きい経路は、IPパケットの伝送路としては有効化されない(ステップS405でNo)。選択された伝送経路が有効化されないと判定されると、以降の優先度の伝送経路もやはり有効化されないため、経路の選択を終了する。 パケット転送部105は、転送量計算部110からの制御信号に応じて、各伝送経路の伝送レートの比に応じて、IPパケットカプセルを有効化された経路のバッファに送信する(ステップS406)。
【0076】
各経路のバッファに保存されたパケットは、当該経路に対応するインタフェースから、変復調部に出力される(ステップS407)。
【0077】
また、図7は本実施形態に係るデータ伝送アダプタによるIPパケットの受信処理を示すフローチャートである。
【0078】
経路1用Ethernet(登録商標)インタフェース107−1〜経路n用Ethernet(登録商標)インタフェース107−nは、通信衛星Sから対応する変復調部A20−1〜A20nを介してIPパケットカプセルを受信し、対応する受信バッファ120−1〜受信バッファ120−nにバッファする(ステップS501)。受信バッファ120−1〜受信バッファ120−nはそれぞれ、送られてきたIPパケットカプセルを一時的に保存する。
【0079】
各バッファは、データ伝送アダプタ間専用ヘッダから受信したカプセルのシーケンス番号を取得し、制御信号によってデータ整列部121に通知される(ステップS503)。
【0080】
データ整列部121は、シーケンス番号順に各受信バッファからIPパケットカプセルを取り出し、カプセルの並べ替え整列させる(ステップS503)。
【0081】
ここで、再送要否判定部113がデータの欠落を検出した場合には(ステップS504でYes)、制御信号生成部114は、送信側データ伝送アダプタ宛に再送要求信号を生成し、送信側のデータ伝送アダプタに欠落したIPパケットカプセルの再送を要求する(ステップS505)。
【0082】
データの欠落が無ければ(ステップS504でNo)、パケットカプセル化解除部124は、IPパケットカプセルの先頭に付されたデータ伝送アダプタ間専用ヘッダを取り外してカプセル化を解除し、受信バッファ125に保存する(ステップS506)。
【0083】
そして、受信バッファ125に格納されたIPパケットは、地上側インタフェース101を介して地上側のネットワークA−Nへ送出される(ステップS507)。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係るデータ伝送アダプタでは、単位時間あたりの通信量が閾値を超えるかどうか、全経路に対して優先度の順に判定し、使用する経路を決定する。このため、データの伝送に使用されない経路を開放することができる。また、データの伝送に使用する経路は、伝送レートの比に応じて通信量を調整するため、効率的にバルク伝送を行うことができる。
【0085】
また、長さが調整されたIPパケットをカプセル化する際に、データ伝送アダプタ間専用のヘッダを付けてカプセル化する。この専用ヘッダ内には、受信側でデータ順序が保証できるようIPパケットカプセルのシーケンス番号が含まれる。
【0086】
IPパケットカプセルは、一定時間内は、送信側のデータ伝送アダプタ内に保存されている。このため、受信側のデータ伝送アダプタからの再送要求に応えることができる。
【0087】
このように、本実施形態によるデータ伝送アダプタによれば、通信量に応じて使用する回線を動的に選択し、不必要な回線ではIPパケットが転送されないようにすることができる。パケットが転送されない回線は無通信タイマ満了により開放される。これによって、通信量に応じて経路ごとのパケット転送量を動的に管理する、バルク伝送機能を有するデータ伝送アダプタが実現できる。バルク伝送の際に経路(衛星回線)ごとのパケット転送量を管理することで、データの伝送量が多い状態になったら使用する回線数を増やし、反対にデータ伝送量が少ない状態になったら、不必要な回線を開放する。このため、回線(すなわち帯域)占有を最小限に抑えることが可能となる。よって、帯域資源が限られる衛星通信を有効に活用することが可能となる。
【0088】
なお、上述の実施形態では、変復調部A20−1〜A20−nはデータ伝送アダプタA100とは別個に設けられているが、変復調部A20−1〜A20−nは、データ伝送アダプタA100と一体に設けられてもよい。同様に、変復調部B20−1〜B20−nがデータ伝送アダプタB100と一体に設けられてもよい。
【0089】
本願発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、前記各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、1つの実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されたり、幾つかの実施形態に示される構成要件が組み合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0090】
A1〜An、B1〜bnアンテナ、A−100、B−100…データ伝送アダプタ、A20−1〜A20−n、B20−1〜B20−n…変復調部、B30−1〜B30−n…送受信部、101…地上側インタフェース、102…送信バッファ、103…パケットカプセル化部、104…通信量監視部、105…パケット転送部、106−1〜106−n…送信バッファ、107−1〜107−n…Ethernet(登録商標)インタフェース、110…転送量計算部、111…有効経路判定部、112…経路通信量管理テーブル、120−1〜120−n…受信バッファ、121…データ整列部、124…パケットカプセル化解除部、125…受信バッファ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信経路を具備する衛星通信を介したIPパケットのバルク伝送に対応するデータ伝送アダプタであって、
前記IPパケットの単位時間当たりの通信量を算出する通信量算出手段と、
前記通信量算出手段が算出した通信量と前記複数の通信経路の伝送レートに基づいて、前記複数の通信経路のうち有効化する経路を判定する有効経路判定手段と、
前記有効経路判定手段によって有効化すると判定された経路に、前記IPパケットを転送するパケット転送手段と、
を具備することを特徴とするデータ伝送アダプタ。
【請求項2】
前記有効経路判定手段が有効すると判定しなかった通信経路は、無通信タイマ機能によって開放されることを特徴とする請求項1に記載のデータ伝送アダプタ。
【請求項3】
前記パケット転送手段は、前記有効化する経路の伝送レートに応じて前記IPパケットの転送量を制御することを特徴とする請求項1に記載のデータ伝送アダプタ。
【請求項4】
前記パケット転送手段によって転送される前記IPパケットを一定時間保存するバッファを更に具備し、
前記パケット転送手段は、前記衛星通信を介して前記IPパケットの再送が要求された場合に、前記バッファに保存された前記IPパケットを対応する経路に転送することを特徴とする請求項1に記載のデータ伝送アダプタ。
【請求項5】
前記IPパケットに、当該IPパケットのシーケンス番号を含む専用ヘッダを付してIPパケットカプセルを生成するカプセル化手段を更に具備することを特徴とする請求項1に記載のデータ伝送アダプタ。
【請求項6】
前記衛星通信から前記複数の通信経路のうち少なくも1つを介して伝送されてきたIPパケットカプセルを受信IPパケットカプセルとして受信する受信手段と、
前記受信IPパケットカプセルの専用ヘッダから、当該受信IPパケットカプセルのシーケンス番号を取得するシーケンス番号取得手段と、
前記取得されたシーケンス番号に従って、前記IPパケットカプセルを整列させる整列手段と、
前記整列されたIPパケットカプセルのカプセル化を解除する解除手段と、
を更に具備することを特徴とする請求項5に記載のデータ伝送アダプタ。
【請求項7】
前記シーケンス番号取得手段が取得したシーケンス番号に欠落がある場合に、当該欠落したシーケンス番号に対応する欠落IPパケットの再送要求信号を生成する再送要求信号生成手段を更に具備し、
前記パケット転送手段は、前記欠落IPパケットの再送要求信号を、前記欠落IPパケットが伝送された通信経路に送出することを特徴とする請求項5に記載のデータ伝送アダプタ。
【請求項8】
前記複数の通信経路の情報を予め記憶する記憶手段を更に具備し、
前記前記有効経路判定手段は、前記記憶手段に記憶された前記複数の通信経路の情報を参照して、前記複数の通信経路のうち有効化する経路を判定することを特徴とする請求項1に記載のデータ伝送アダプタ。
【請求項9】
前記記憶手段は、前記複数の通信経路の情報を、前記複数の通信経路の優先順位と対応付けて記憶し、
前記有効経路判定手段は、前記優先順位に従って、前記複数の通信経路のうち有効化する経路を判定することを特徴とする請求項8に記載のデータ伝送アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−188298(P2011−188298A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52165(P2010−52165)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】