説明

データ伝送システム及び試験制御方法

【課題】複数の伝送装置を伝送路により接続したデータ伝送システム及び試験制御方法に関し、任意の伝送装置を指定して折り返し試験を行う。
【解決手段】複数の伝送装置1〜7を伝送路により直列的に順次接続したデータ伝送システム及び試験制御方法であって、伝送フレームのオーバヘッドに要求情報と指定情報とからなる制御情報を設定し、指定情報により目的の伝送装置を指定し、要求情報により折り返しループの形成要求か解除要求かを指定し、制御情報を受信した伝送装置は、制御部12により、指定情報のディクリメント処理を行って“0”となった時は自装置指定と判定して、要求情報に従って折り返しループ形成部11を制御し、折り返しループの形成又は解除の制御を行い、且つ次の伝送装置に対しては制御情報をオール“0”として転送し、“0”とならない時は、次の伝送装置にそのまま転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の伝送装置を伝送路により順次接続してデータ伝送を行うデータ伝送システム及び任意の指定した伝送装置に対する折り返し試験を可能とする試験制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の伝送装置を伝送路により接続してデータ伝送を行うデータ伝送システムは、対向する伝送装置間を伝送路により接続した構成、複数の伝送装置を順次伝送路により接続した構成、複数の伝送装置をリング状に伝送路により接続した構成、各伝送装置を単一或いは複数の伝送装置とそれぞれ伝送路により接続した構成等の各種の構成が提案され、且つ実用化されている。又伝送データは、フレーム形式やパケット形式等の各種の形式が適用されている。このようなデータ伝送システムに於いて、対向接続された伝送装置間で正常性を確認する為の折り返し試験を行う手段が知られている。
【0003】
例えば、図8に示すように、伝送装置100,106間に、複数の伝送装置101〜105を伝送路によって順次接続したデータ伝送システムが知られており、このようなデータ伝送システムに於いて、両端に位置する伝送装置100,106間の正常性を確認する為に、伝送装置100から伝送装置106に対して、送信フレームのオーバヘッドに遠隔ループ形成指示情報を挿入して送信し、伝送装置106は、その遠隔ループ形成指示情報に従って、伝送装置100に対して点線で示すように折り返しループを形成し、伝送装置100は、PRBS(Pseudo Random Bit Sequence)パターン(擬似ランダムパターン)等の試験パターンを送信し、伝送装置106の点線で示す折り返しループにより折り返された試験パターンを受信して、送信試験パターンと受信試験パターンとを照合し、エラーがなければ、伝送装置100,106間の伝送経路は正常と判定する。同様に、伝送装置106から伝送装置100に対して遠隔ループ形成指示情報を送出して、伝送装置100に折り返しループを形成し、伝送装置106からの試験パターンを伝送装置100に於いて折り返すことにより、伝送装置106は、伝送装置100との間の正常性確認を行うことも可能である。
【0004】
又伝送路により対向して接続された一方の伝送装置から他方の伝送装置に対して、MAC(Media Access Control)フレームの特定領域に特定のコードを割り当てたループ制御要求フレームを送信し、このループ制御要求フレームを受信した他方の伝送装置は、一方の伝送装置に対して折り返しループを形成して、ループ制御応答フレームを返送し、この一方の伝送装置は、ループ制御応答フレーム受信により、試験フレームを送信し、他方の伝送装置の折り返しループにより折り返された試験フレームを一方の伝送装置が受信して、送信試験フレームと受信試験フレームとの照合により、正常か否かを試験し、試験終了により、一方の伝送装置から他方の伝送装置にループ解除要求フレームを送信し、他方の伝送装置は、折り返しループを元に戻して、ループ解除応答フレームを送信し、通常のデータ伝送状態に戻る回線試験手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−203914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の複数の伝送装置を伝送路により順次接続したデータ伝送システムに於いては、前述の特許文献1に示すように、伝送路を介して対向接続された伝送装置間で折り返し試験を行うか、又は図8に示すように、複数の伝送装置100〜106を順次伝送路により接続したデータ伝送システムに於いては、両端に位置する伝送装置100,106に於いて、一方から他方に対する折り返し試験を行うものであった。或いは、前述の特許文献1に示すように、伝送装置100,101間、伝送装置101,102間、伝送装置102,103間のように、対向接続された伝送装置間で順次行うことになる。従って、何れかの伝送装置間の障害発生時には、障害発生個所の切り分けが容易でない問題があった。
【0006】
本発明は、前述の従来の問題点を解決することを目的とし、複数の伝送装置を伝送路により順次直列的に接続したデータ伝送システムに於いて、任意の伝送装置間で折り返し試験を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のデータ伝送システムは、複数の伝送装置を伝送路により直列的に順次接続してデータを伝送するデータ伝送システムであって、各伝送装置は、折り返しループ形成部と制御部とを含み、制御部は、伝送フレームのオーバヘッドに設定した制御情報により他の伝送装置を指定して折り返しループの形成要求又は解除要求を送出する手段と、他の伝送装置からの制御情報のディクリメントにより転送制御すると共に、該ディクリメントにより“0”となった時に自装置指定と判定する判定処理手段と、この判定処理手段により自装置指定と判定した時に、折り返しループの形成要求か解除要求かの制御情報に従って、折り返しループ形成部を制御する制御手段とを含む構成を有するものである。
【0008】
又伝送装置は、SDHフレームのセクションオーバヘッドの未使用バイトを制御情報に割当て、この制御情報の前半4ビットを折り返しループの形成要求又は解除要求又は要求応答の要求情報とし、後半4ビットを接続数に従って伝送装置を指定する指定情報とし、この指定情報のディクリメント処理により“0”となった時に自装置指定と判定して、前記要求情報に従って折り返しループの形成制御又は解除制御を行う制御部を備えている。
【0009】
又伝送装置は、SDHフレームのセクションオーバヘッドの未使用バイトを制御情報に割当て、データを受信できない伝送障害発生時に、制御情報をオール“1”として次の転送先の伝送装置に送出制御する制御部を備えている。
【0010】
又本発明の試験制御方法は、複数の伝送装置を伝送路により直列的に順次接続してデータを伝送するデータ伝送システムの折り返しループ試験を行う試験制御方法であって、伝送装置間を伝送する伝送フレームのオーバヘッドに制御情報を設定し、この制御情報は、他の伝送装置を指定する指定情報と、この指定情報により指定した伝送装置に対する折り返しループの形成要求、解除要求、要求応答を示す要求情報とを含み、指定情報により目的の伝送装置を指定し、要求情報により折り返しループの形成要求か解除要求かを指定して送出する過程と、この制御情報を受信した伝送装置は、指定情報のディクリメント処理により“0”となったか否かを判定し、“0”となった時は自装置指定と判定して、要求情報に従って折り返しループの形成又は解除の制御を行い、且つ次の伝送装置に対しては制御情報をオール“0”として転送し、“0”とならない時は、次の伝送装置にそのまま転送する過程とを含むものである。
【0011】
又複数の伝送装置間でSDHフレームによりデータ伝送し、このSDHフレームのセクションオーバヘッドの未使用バイトを制御情報に割当て、この制御情報の前半4ビットを折り返しループの形成要求又は解除要求又は要求応答の要求情報とし、後半4ビットを接続数に従って伝送装置を指定する指定情報とし、この指定情報のディクリメント処理により“0”となった時に自装置指定と判定して、要求情報に従って折り返しループの形成制御又は解除制御を行い、且つ次の伝送装置に対して制御情報をオール“0”として転送し、ディクリメントにより“0”とならない時は、次の伝送装置にそのまま転送する過程を含むものである。
【0012】
又伝送装置は、SDHフレームのセクションオーバヘッドの未使用バイトを制御情報に割当て、伝送装置が他の伝送装置からデータを受信できない伝送障害発生検出により、制御情報をオール“1”として次の転送先の伝送装置に障害発生通知情報として送出し、この制御情報を受信した伝送装置は、次の伝送装置に対しても、制御情報を障害発生通知情報として転送する過程を含むものである。
【発明の効果】
【0013】
任意の伝送装置から他の任意の伝送装置を制御情報の指定情報として送出し、この指定情報をディクリメント処理して次の伝送装置に転送し、指定情報が“0”となった時は、自装置指定と判定し、要求情報に従って折り返しループの形成又は解除を行うもので、折り返し試験を行う為に、相手装置の指定と、指定された装置の認識とは簡単であり、障害発生時等に於ける切り分けを比較的簡単に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のデータ伝送システムは、図1を参照して説明すると、複数の伝送装置1〜7を伝送路により直列的に順次接続してデータを伝送するデータ伝送システムであって、各伝送装置1〜7は、折り返しループ形成部11と、制御部12とを含む構成を有し、制御部12は、伝送フレームのオーバヘッドに設定した制御情報により他の伝送装置を指定して折り返しループの形成要求又は解除要求を送出する手段と、他の伝送装置からの制御情報のディクリメント処理により転送制御し、このディクリメント処理によって“0”となった時に自装置指定と判定する判定処理手段と、この判定処理手段により自装置指定と判定した時、折り返しループの形成要求か解除要求かの制御情報に従って、折り返しループ形成部11を制御する制御手段とを含む構成を備えている。
【0015】
又本発明の試験制御方法は、複数の伝送装置1〜7を伝送路により直列的に順次接続してデータを伝送するデータ伝送システムの折り返し試験を行う試験制御方法であって、伝送装置1〜7間を伝送する伝送フレームのオーバヘッドに制御情報を設定し、この制御情報は、他の伝送装置を指定する指定情報と、この指定情報により指定した伝送装置に対する折り返しループの形成要求、解除要求、要求応答を示す要求情報とを含み、指定情報により目的の伝送装置を指定し、要求情報により折り返しループの形成要求か解除要求かを指定して送出する過程と、この制御情報を受信した伝送装置は、制御部12により、指定情報のディクリメント処理を行って“0”となったか否かを判定し、“0”となった時は自装置指定と判定して、要求情報に従って折り返しループ形成部11を制御部12により制御して、折り返しループの形成又は解除の制御を行い、且つ次の伝送装置に対しては制御情報をオール“0”として転送し、“0”とならない時は、次の伝送装置にそのまま転送する過程とを含むものである。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1の説明図であり、主要部のみ示し、1〜7は伝送装置、11は折り返しループ形成部、12は制御部を示す。複数の伝送装置1〜7を、往復の伝送路によって順次直列的に接続し、所定の伝送フレームによって任意の伝送装置間でデータ伝送を行うデータ伝送システムを構成する。各伝送装置1〜7の制御部12は、装置内の各部を制御する手段と、伝送フレームのオーバヘッドに設定した制御情報により他の伝送装置を指定して折り返しループの形成要求又は解除要求を送出する手段と、他の伝送装置からの受信した制御情報をディクリメント処理して転送制御すると共に、ディクリメントにより“0”となった時に自装置指定と判定する判定処理手段と、この判定処理手段により自装置指定と判定した時に、折り返しループの形成要求か解除要求かの制御情報に従って、折り返しループ形成部11を制御する制御手段とを含むものであり、更に、自装置が指定されて折り返しループの形成又は解除を行った時は、その制御情報によりACKに相当する要求応答を送出するものである。又これらの制御情報の送受信処理手段や折り返しループ形成部11に対する制御手段は、プロセッサ等による既に知られている各種の制御処理手段により実現することができる。
【0017】
又伝送装置1〜7の接続数は、図示の場合と比較して更に多く或いは少なくすることも可能であり、又両端の伝送装置1,7を終端装置又は端局装置とすることができる。又各伝送装置1〜7に多重化多重分離の手段を設けて、それぞれに単一又は複数の端末装置を接続し、端末装置からのデータを多重化して伝送し、端末装置宛のデータを多重分離して端末装置へ転送する構成とすることができる。又伝送装置1〜7を接続する伝送路は、電気信号としてデータを伝送するケーブル伝送路又は光信号としてデータを伝送する光ファイバ伝送路とすることができる。又各伝送装置1〜7は、それぞれ対向伝送装置に対する折り返しループを形成可能の構成を有するものである。
【0018】
図2は、本発明の実施例1の伝送装置の要部説明図であり、20は試験処理部、21,23は終端部、22は主信号処理部、24は制御部、25,28は送受信インタフェース部、26,27は折り返しループ形成部、29は制御情報処理部を示す。伝送路に接続した終端部21,23は、送受信インタフェース部25,28と折り返しループ形成部26,27とを含む場合を示すが、他のデータ送受信に必要な制御手段も含むものであり、又送受信インタフェース部25,28は、伝送路によるデータの送受信処理手段や、制御情報の分離抽出と挿入等との手段を含み、分離抽出した制御情報は制御部24へ転送し、制御部24からの制御情報を挿入して送出するものである。又折り返しループ形成部26,27は、図1の折り返しループ形成部11に対応し、制御部24は、図1の制御部12に対応した機能部分を示す。なお、折り返しループ形成部26は、主信号処理部22側に対する折り返しループ形成と送受信インタフェース部25,28側に対する折り返しループ形成との何れか一方又は両方の機能を備えている。
【0019】
又制御部24は、試験処理部20と制御情報処理部29とを含み、試験処理部20は、他の伝送装置に折り返しループを形成させた時に、擬似ランダムパターン等の試験信号の送受信による折り返し試験を行う制御手段を含み、又制御情報処理部29は、他の伝送装置からの制御情報の処理機能と、他の伝送装置へ送出する制御情報の処理機能とを含むと共に、他の伝送装置からの制御情報により自装置が指定されたか否かの判断処理機能等を含むものである。
【0020】
図3は、本発明の実施例1の試験処理部の説明図であり、30は折り返し試験機能部、31は折り返し試験を行う為の擬似ランダムパターン等の試験信号を発生するテストパターン発生部、32はテストパターンを送出する送信データ出力部、33は折り返されたテストパターンを受信入力する受信データ入力部、34は送受信データ比較部を示す。この折り返し試験機能部30は、例えば、図2の制御部24の試験処理部20の要部についての一例を示すものであり、テストパターン発生部31は、既に知られているランダムパターン発生器等の各種の構成を適用することが可能である。又送受信データ比較部34は、送信データ出力部32から送信したテストパターンを一時記憶し、指定した伝送装置により折り返されて、受信データ入力部33により受信した受信テストパターンと一時記憶した送信テストパターンとを比較し、比較一致により正常状態を示す状態検出信号を出力し、比較不一致の場合は異常状態を示す状態検出信号を出力する。
【0021】
図4は、SDH(Synchronous Digital Hierarchy)フレームの説明図であり、図1のデータ伝送システムの伝送装置間を接続する伝送路を光ファイバ伝送路とし、SDH方式によりデータを光信号として伝送する場合の伝送フレームの一例を示し、伝送速度を155.52Mb/sとしたSTM−1の伝送フレームを示すものであり、9列9行のセクションオーバヘッドSOHと261列9行のペイロードとにより構成される。又ペイロード内には、例えば、パスオーバヘッドPOHをそれぞれ付加した85列9行の複数のバーチャルコンテナVC−3等を挿入することができる。又バーチャルコンテナVC−3には、例えば、3列9行のバーチャルコンテナVC−11を含ませることができる。なお、セクションオーバヘッドSOHの各バイトを簡単に説明すると、A1,A2は同期バイト、C1はSTM識別バイト、B1,B2は監視用バイト、D1〜D12はデータリンクのバイト、E1,E2はオーダワイヤ用バイト、H1〜H3はAUポインタ用バイト、K1,K2は自動切替用バイト、Z1,Z2は予備バイト、未記入のバイトは未使用バイトを示す。
【0022】
伝送装置間のデータ伝送にSDH方式を適用した場合、SDHフレームのセクションオーバヘッドSOHの未使用バイトの中の1バイト或いは予備バイトZ1,Z2等の中の1バイト或いは複数バイトを遠隔制御情報として利用するものであり、予め利用するバイト位置を取り決めるものである。又この制御情報により、所望の接続位置の伝送装置を指定して、折り返しループの形成及び解除を指示し、指定された伝送装置は、指示応答を送出するものである。その為に、例えば、予め選定した位置の未使用の1バイトを制御情報として利用する場合、その8ビットの前半4ビットを折り返しループの形成要求又は解除要求又はACK等の要求応答として用いる要求情報とし、後半4ビットを他の伝送装置を指定する為の指定情報とする。
【0023】
又この制御情報の中の前半4ビットの要求情報の中の先頭2ビットについて、“00”は折り返しループの解除要求又は通常の伝送状態、“10”は折り返しループの形成要求、“11”は折り返しループの形成要求及び解除要求に対するACK応答、“01”は折り返しループの解除要求を示す。又制御情報の中の後半4ビットの指定情報は、オール“0”の場合はそのまま転送し、それ以外はディクリメント処理を行って転送すると共に、ディクリメントによりオール“0”となった場合は、自装置が指定されたと判定する。又自装置が指定されていない場合の制御信号の前半4ビットは、そのまま転送する。又自装置に対してデータを送出する側の伝送装置の送信側の障害発生や伝送路断等の障害発生時は、データを受信できない状態であるから、これを検出すると、自装置から次の伝送装置に対して、オール“1”(=“FF”)の伝送路断発生を示す制御情報を送出する。このオール“1”の制御情報を受信した伝送装置は、そのまま次の伝送装置に送出する。制御情報は、前述のような取り決めで転送するものとして、以下説明する。なお、伝送フレームのオーバヘッドを利用して伝送する制御情報のパターンは、前述のパターン以外とすることも可能であり、又他の制御状態を指定することも可能である。伝送フレームの形式に対応して前述の制御情報を設定することができる。
【0024】
例えば、図5に示すように、伝送装置1から伝送装置3を指定して折り返しループの形成要求を送出する場合、要求情報としての前半4ビットを“1000”(=“8”)、指定情報としての後半4ビットを“0010”(=“2”)として伝送装置1から送出する。即ち、伝送装置1から伝送装置2に対して制御情報を“82”として送出する。伝送装置2は、制御情報をディクリメントする。それにより、制御情報は、“1000 0001”(=“81”)となり、下位4ビットはオール“0”ではないから、自装置が指定されていないと判定し、この“81”の制御情報を次の伝送装置3へ転送する。伝送装置3は、同様に、制御情報をディクリメントすると、“80”となる。その結果、前半4ビットの要求情報が“1000”、後半4ビットの指定情報が“0000”であるから、自装置が指定され、且つ折り返しループの形成要求であることを識別することができる。
【0025】
そこで、伝送装置3は、折り返し形成部を制御して、点線で示す折り返しループを形成し、前半4ビットの要求情報を“1100”(=“C0”)、後半4ビットの指定情報をオール“0”とした折り返しループの形成要求応答を折り返し方向の伝送装置2に送出する。伝送装置2は、この“C0”の形成要求応答の制御情報をそのまま伝送装置1へ転送する。伝送装置1は、“C0”の形成要求応答を受信識別し、指定した伝送装置3に於いて折り返しループを形成したことを確認し、折り返し試験を開始する。なお、伝送装置3は、自装置を指定した折り返しループの形成要求を識別した後、次の伝送装置4に対しては、オール“0”とした制御情報を送出する。即ち、制御情報の前半4ビットの要求情報を“0”とし、後半4ビットもディクリメントにより“0”となるから、オール“0”の制御情報を次の伝送装置4へ送出する。伝送装置1は、伝送装置3を指定して折り返しループの形成要求を行い、この伝送装置3からの要求応答を受信識別して、折り返し試験を行う。この折り返し試験終了により、伝送装置1は、伝送装置3を指定した折り返しループの解除要求を送出する。この場合、要求情報は、解除要求を示す“0”又は“1”、指定情報は“2”とした制御情報を送出する。伝送装置2はディクリメントにより指定情報は“1”となり、伝送装置3はディクリメントにより指定情報は“0”となるから、自装置が指定された折り返しループの解除要求であることを識別し、点線の折り返しループを解除し、オール“0”の応答情報を送出する。
【0026】
なお、伝送装置1から制御情報の後半4ビットの指定情報を、“1”として送出すると、伝送装置2に於いてディクリメント処理により“0”となるから、伝送装置2は、自装置が指定されたことを識別することができる。同様に、伝送装置1からの制御情報の後半4ビットの指定情報を“3”とすると、伝送装置4を指定し、“4”とすると、伝送装置5を指定し、“5”とすると、伝送装置6を指定し、“6”とすると、伝送装置7を指定することができる。又伝送装置2から伝送装置3を指定する場合は、制御情報の後半4ビットの指定情報を“1”とすることにより、伝送装置3は、ディクリメントにより“0”となって、自装置指定と判定することができる。即ち、任意の伝送装置から伝送路を介して接続された所望の伝送装置を、自装置からの接続順に対応して制御情報の後半4ビットの指定情報によって指定することができる。
【0027】
図6は、本発明の実施例1の同時的に二重の折り返しループを形成する場合の処理説明図であり、図1及び図5と同一符号は同一名称部分を示す。両端に位置する伝送装置1,7から同一の伝送装置4を同時的に指定して折り返し試験を行う場合を示すものであり、伝送装置4に対して、両端側の伝送装置1と伝送装置7とから、折り返しループの形成要求の“8”(“1000”)と3番目の伝送装置4を指定する指定情報の“3”(“0011”)とからなる“83”の制御情報をそれぞれ送出する。伝送装置2,6は、ディクリメントにより、“82”の制御情報を送出する。伝送装置3,5は、ディクリメントにより、“81”の制御情報を送出する。伝送装置4は、伝送装置3,5からの制御情報をディクリメントすることにより、“80”の制御情報となり、隣接接続されている伝送装置3,5を介して自装置が指定されたことを識別できる。それにより、点線で示すように、隣接接続されている伝送装置3,5に対してそれぞれ折り返しループLP1,LP2を形成して、形成要求応答を示す“C0”の制御情報を伝送装置3,5にそれぞれ送出する。伝送装置2,3,5,6は、それぞれこの制御情報をそのまま転送する。それにより、伝送装置1,7は、指定した伝送装置4に折り返しループLP1,LP2が形成されたことを確認し、擬似ランダムパターン等の試験信号の送受信により折り返し試験を実施する。この場合の折り返しループLP1,LP2は、例えば、図2に示す折り返しループ形成部26,27により同時的に形成することができる。
【0028】
伝送装置1から伝送装置4に対する折り返し試験の要求と、伝送装置7から伝送装置4に対する折り返し試験の要求とを同時的に行い、それぞれ折り返し試験を終了した場合、伝送装置1,7は、それぞれ制御情報としてオール“0”の解除要求を送出する。伝送装置2,3,6,5はそのまま転送し、伝送装置4は、折り返しループL1,L2の解除要求であることを識別し、折り返しループL1,L2を解除して、オール“0”の解除要求応答を送出する。それにより、伝送装置1〜7に於ける伝送制御は、通常の状態に復帰することになる。この場合の伝送装置4は、図2に示す伝送装置の制御部24の制御情報処理部29に於いて、制御情報をディクリメント処理することにより、自装置指定と判定し、且つ隣接伝送装置3,5側に対するそれぞれ折り返しループ形成要求であるから、折り返しループ形成部26,27を制御して、それぞれ送受信インタフェース部25,28側に対する折り返しループを形成し、形成要求応答を示すオール“0”の制御情報の送出制御を行うことになる。又この折り返しループLP1,LP2の解除要求については、前述の伝送装置1から伝送装置3に対する折り返しループの解除要求と同様にして解除することができる。
【0029】
図7は、同時的に異なる伝送装置に折り返しループを形成する場合の処理説明図であり、伝送装置1から制御情報を“83”として伝送装置4を指定した折り返しループの形成要求を送出し、伝送装置7から制御情報を“82”として伝送装置5を指定した折り返しループの形成要求を送出する。伝送装置1からの制御情報は、伝送装置2に於いてディクリメントして“82”、伝送装置3に於いてディクリメントして“81”、伝送装置4に於いてディクリメントして“80”となるから、伝送装置4は自装置が指定されて折り返しループ形成の要求であることを判定し、この制御情報を受信した側に対する折り返しループLP4を形成し、“C0”の形成要求応答を伝送装置1方向へ送出する。又伝送装置7からの制御情報は、伝送装置6に於いてディクリメントして“81”とし、伝送装置5へ転送する。伝送装置5はディクリメントして“80”となるから、自装置が指定された折り返しループ形成の要求と判定し、この制御情報を受信した側に対する折り返しループLP5を形成し、“C0”の形成要求応答を伝送装置7方向へ送出する。伝送装置1,7は、それぞれ形成要求応答を受信して、伝送装置4,5に於いて折り返しループLP4,LP5の形成を確認できるから、折り返し試験を実行する。
【0030】
又折り返し試験の終了により、伝送装置1は、“03”の折り返しループの解除要求を送出し、伝送装置7は、“02”の折り返しループの解除要求を送出し、伝送装置2,34に於いて順次ディクリメント処理することにより、伝送装置4に於いては“00”となり、折り返しループを形成している自装置が指定された解除要求であることを識別し、折り返しループLP4を解除して、伝送装置1方向にはオール“0”の解除要求応答を送出する。同様に、伝送装置6,5に於いて伝送装置7からの折り返しループの解除要求に対してディクリメント処理することにより、伝送装置5に於いて“00”となるから、折り返しループを形成している自装置が指定された解除要求であることを識別し、折り返しループLP5を解除して、伝送装置7方向にはオール“0”の解除要求応答を送出する。伝送装置1,7は、それぞれ解除要求を送出した後のオール“0”の制御情報を受信して、通常のデータ伝送状態に移行することができる。
【0031】
又伝送装置間の伝送路障害等のデータ伝送ができない障害発生時は、その障害発生を検出した伝送装置からデータ伝送先の伝送装置に対して“FF”の制御情報を送出する。この要求情報と指定情報とを共にオール“1”、即ち、“FF”とした制御情報を受信した伝送装置は、伝送経路に障害発生を認識できるから、次の伝送装置に対しても“FF”の制御情報を送出する。例えば、図1の伝送装置1〜7の伝送装置3,4間でデータ伝送断となる障害発生の場合、伝送装置4から伝送装置5方向へは、“FF”の制御情報を送出する。この“FF”の制御情報は、終端の伝送装置7迄転送することになる。従って、“FF”の制御情報を受信した伝送装置は、伝送路障害発生を認識することができる。
【0032】
このような一方の伝送路障害発生時に、他方の伝送路が正常である場合、例えば、伝送装置6から伝送装置5を指定して“81”の折り返しループの形成要求の制御情報を送出すると、伝送装置5はディクリメント処理により“80”となって自装置が伝送装置6側から指定された折り返しループの形成要求であることを識別し、伝送装置4からの障害発生通知の“FF”ではなく、形成要求応答の“C0”を伝送装置6へ送出する。伝送装置6は、この形成要求応答の“C0”を受信して、伝送装置5に於いて折り返しループの形成を確認できるから、伝送装置6から伝送装置5との間の折り返し試験を行って正常性を確認できた場合、その後に、伝送装置6から伝送装置5に対して折り返しループの解除要求を送出し、伝送装置6は、折り返しループの解除確認により、伝送装置4を指定して折り返しループを形成させる為の“82”の制御情報を送出する。前述のような処理により、伝送装置4に於いて折り返しループを形成して、形成要求応答を送出しても、この伝送装置4から伝送装置5に向かう伝送経路に障害が発生していると、伝送装置5は伝送装置6に対して“FF”の制御信号を継続して送出することなる。従って、伝送装置6は、隣接した伝送装置5との間は正常であるが、伝送装置4との間に伝送路障害が発生していることを認識できる。
【0033】
なお、本発明は、前述の実施例のみに限定されるものではなく、種々付加変更することが可能であり、4ビットの指定情報では不足する伝送装置数の場合、例えば、2バイト構成の制御情報を使用することができる。又伝送装置間のデータ伝送は、SDHフレームに限定されるものではなく、他の形式の伝送フレームを適用した場合、その伝送フレームのオーバヘッドを利用した制御情報の送受信制御を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1の説明図である。
【図2】本発明の実施例1の伝送装置の要部説明図である。
【図3】本発明の実施例1の折り返し試験機能部の説明図である。
【図4】本発明の実施例1のSDHフレームの説明図である。
【図5】本発明の実施例1の折り返し試験時の処理説明図である。
【図6】本発明の実施例1の折り返し試験時の処理説明図である。
【図7】本発明の実施例1の折り返し試験時の処理説明図である。
【図8】従来例のデータ伝送システムの説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1〜7 伝送装置
11 折り返しループ形成部
12 制御部
20 試験処理部
21,23 終端部
22 主信号処理部
24 制御部
25,28 送受信インタフェース部
26,27 折り返しループ形成部
29 制御情報処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝送装置を伝送路により直列的に順次接続してデータを伝送するデータ伝送システムに於いて、
前記伝送装置は、折り返しループ形成部と制御部とを含み、前記制御部は、伝送フレームのオーバヘッドに設定した制御情報により他の伝送装置を指定して折り返しループの形成要求又は解除要求を送出する手段と、他の伝送装置からの制御情報のディクリメントにより転送制御すると共に、該ディクリメントにより“0”となった時に自装置指定と判定する判定処理手段と、該判定処理手段により自装置指定と判定した時に前記折り返しループの形成要求か解除要求かの制御情報に従って前記折り返しループ形成部を制御する制御手段とを含む構成を有する
ことを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項2】
前記伝送装置は、SDHフレームのセクションオーバヘッドの未使用バイトを前記制御情報に割当て、該制御情報の前半4ビットを前記折り返しループの形成要求又は解除要求又は要求応答の要求情報とし、後半4ビットを接続数に従って伝送装置を指定する指定情報とし、該指定情報のディクリメント処理により“0”となった時に自装置指定と判定して、前記要求情報に従って折り返しループの形成制御又は解除制御を行う制御部を備えていることを特徴とする請求項1記載のデータ伝送システム。
【請求項3】
前記伝送装置は、SDHフレームのセクションオーバヘッドの未使用バイトを前記制御情報に割当て、データを受信できない伝送障害発生時に、前記制御情報をオール“1”として次の転送先の伝送装置に送出制御する制御部を備えていることを特徴とする請求項1記載のデータ伝送システム。
【請求項4】
複数の伝送装置を伝送路により直列的に順次接続してデータを伝送するデータ伝送システムの折り返しループ試験を行う試験制御方法に於いて、
前記伝送装置間を伝送する伝送フレームのオーバヘッドに制御情報を設定し、該制御情報は、他の伝送装置を指定する指定情報と、該指定情報により指定した伝送装置に対する折り返しループの形成要求、解除要求、要求応答を示す要求情報とを含み、前記指定情報により目的の伝送装置を指定し、前記要求情報により折り返しループの形成要求か解除要求かを指定して送出する過程と、
該制御情報を受信した伝送装置は、前記指定情報のディクリメント処理により“0”となったか否かを判定し、“0”となった時は自装置指定と判定して、前記要求情報に従って折り返しループの形成又は解除の制御を行い、且つ次の伝送装置に対しては前記制御情報をオール“0”として転送し、“0”とならない時は、次の伝送装置にそのまま転送する過程と
を含むことを特徴とする試験制御方法。
【請求項5】
前記複数の伝送装置間でSDHフレームによりデータ伝送し、該SDHフレームのセクションオーバヘッドの未使用バイトを前記制御情報に割当て、該制御情報の前半4ビットを前記折り返しループの形成要求又は解除要求又は要求応答の要求情報とし、後半4ビットを接続数に従って伝送装置を指定する指定情報とし、該指定情報のディクリメント処理により“0”となった時に自装置指定と判定して、前記要求情報に従って折り返しループの形成制御又は解除制御を行い、且つ次の伝送装置に対して前記制御情報をオール“0”として転送し、ディクリメントにより“0”とならない時は、次の伝送装置にそのまま転送する過程を含むことを特徴とする請求項4記載の試験制御方法。
【請求項6】
前記伝送装置は、SDHフレームのセクションオーバヘッドの未使用バイトを前記制御情報に割当て、前記伝送装置が他の伝送装置からデータを受信できない伝送障害発生検出により、前記制御情報をオール“1”として次の転送先の伝送装置に障害発生通知情報として送出し、該制御情報を受信した伝送装置は、次の伝送装置に対しても前記制御情報を前記障害発生通知情報として転送する過程を含むことを特徴とする請求項4記載の試験制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−11001(P2010−11001A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167066(P2008−167066)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】