説明

データ記録装置、データ記録方法、データ記録プログラム、および記録媒体

【課題】衝突前などに車両に生じる不自然な走行状態を保存する。
【解決手段】データ記録装置100は、車両外部の状況を撮影した映像情報を取得する取得部110と、取得部110によって撮影された前記映像情報を記録する記録部120と、車両に生じる加速度を検知する加速度検知部130と、前記加速度以外の路面に対する車両の変化状態を検知する車両状態検知部140と、加速度検知部130によって検知された加速度と、車両状態検知部140によって検知された車両の変化状態と、に基づいて、加速度検知部130によって所定値以上の加速度が検知される前に生じる異常走行状態にあるか否かを判断する判断部150と、判断部150によって車両が異常走行状態にあると判断されたとき、少なくとも異常走行状態となる以前に記録した映像情報を保存するように記録部120を制御する記録制御部160と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、データ記録装置、データ記録方法、データ記録プログラム、および記録媒体に関する。ただし、この発明の利用は上述のデータ記録装置、データ記録方法、データ記録プログラム、および記録媒体には限らない。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には、車両外部の状況を撮影し、事故が発生した際に、事故の発生前後の状況を記録するようにしたドライブレコーダが搭載されている。ドライブレコーダの一般的な構成としては、CCD等の撮影カメラと、メモリなどのレコーダとを備えて構成されている。車両走行中は、撮影カメラが車両外部の状況を撮影し、カメラによって撮影された映像情報をレコーダが所定時間記録する。この記録される映像情報は、撮影カメラによる撮影に応じて、順次更新されていく。そして、事故が発生したときには、所定時間記録されている映像情報のうち、事故発生時から一定時間遡った時間を起点として事故発生後の一定時間経過するまでの間に記録した映像情報について、上書きを禁止して、当該映像情報を保存する。
【0003】
このようなドライブレコーダにおいて、事故が発生したことを検知する機能、つまり、映像情報の保存を開始するためのトリガとしては、加速度センサによる検知結果を用いたものが知られている。具体的には、車両内に加速度センサを配置し、当該加速度センサの出力値を計測するとともに、衝突により、加速度センサの出力値が所定の閾値を超えたときに、事故が発生したものとして判断し、映像情報の保存をおこなうようにした技術が提案されている(たとえば、下記特許文献1参照。)。また、このほかにも、エアバッグを備えた車両において、エアバッグが起動したときに、事故が発生したものとして、映像情報の保存を開始するようにした技術が提案されている(たとえば、下記特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−70594号公報
【特許文献2】特開2001−2255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1または特許文献2の技術は、いずれも、加速度センサの出力値のみに基づいて、事故の発生を検知するものであるため、衝突の前に、車両に不自然な状態が発生した場合であっても、加速度センサの出力値が一定値以上にならないと、映像情報の保存をおこなうことができないといった問題が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかるデータ記録装置は、車両外部の状況を撮影した映像情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記映像情報を記録する記録手段と、車両に生じる加速度を検知する加速度検知手段と、前記加速度以外の路面に対する車両の変化状態を検知する車両状態検知手段と、前記加速度検知手段によって検知された加速度と、前記車両状態検知手段によって検知された車両の変化状態と、に基づいて、前記加速度検知工程によって所定値以上の加速度が検知される前に生じる異常走行状態にあるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段によって車両が異常走行状態にあると判断されたとき、少なくとも異常走行状態となる以前に記録した映像情報を保存するように前記記録手段を制御する記録制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項8の発明にかかるデータ記録方法は、車両外部の状況を撮影した映像情報を取得する取得工程と、前記取得工程によって撮影された前記映像情報を記録する記録工程と、車両に生じる加速度を検知する加速度検知工程と、前記加速度以外の路面に対する車両の変化状態を検知する車両状態検知工程と、前記加速度検知工程によって検知された加速度と、前記車両状態検知工程によって検知された車両の変化状態と、に基づいて、前記加速度検知工程によって所定値以上の加速度が検知される前に生じる異常走行状態にあるか否かを判断する判断工程と、前記判断工程によって車両が異常走行状態にあると判断されたとき、少なくとも異常走行状態となる以前に記録した映像情報を保存するように前記記録工程を制御する記録制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、請求項9の発明にかかるデータ記録プログラムは、請求項8に記載のデータ記録方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0009】
また、請求項10の発明にかかる記録媒体は、請求項9に記載のデータ記録プログラムをコンピュータに読み取り可能に記録したことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるデータ記録装置、データ記録方法、データ記録プログラム、および記録媒体の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態)
(データ記録装置の機能的構成)
この発明の実施の形態にかかるデータ記録装置100の機能的構成について説明する。図1は、実施の形態にかかるデータ記録装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。図1において、データ記録装置100は、撮影部110と、記録部120と、加速度検知部130と、車両状態検知部140と、判断部150と、記録制御部160と、を備えている。データ記録装置100が撮影部110を備えているとしたが、撮影部110をデータ記録装置100とは別の撮影装置として備え、撮影装置から映像情報を取得する取得部をデータ記録装置100が備える構成としてもよい。
【0012】
撮影部110は、車両外部の状況を撮影する。撮影部110は、具体的には、CCDカメラやCMOSセンサなどが用いられ、車両の周囲の状況を撮像し、映像信号を出力する。
【0013】
記録部120は、撮影部110によって撮影された映像情報を記録する。記録部120は、一定容量のメモリがあるものであり、たとえば、メモリカードなどが用いられ、撮影部110によって撮影された映像情報を常に一定時間記録する。そして、一定時間が経過すると、記録した映像情報を順次上書きする。なお、上書きを止めた時に、後述するように、映像情報が保存されることになる。
【0014】
加速度検知部130は、車両に生じる加速度を検知する。加速度検知部130は、具体的には、加速度センサが用いられる。また、加速度検知部130は、車両の進行、後退方向(フロントおよびリア成分)にそれぞれ出力する。
【0015】
車両状態検知部140は、加速度以外の路面に対する車両の変化状態を検知する。路面に対する車両の変化状態とは、主に、タイヤなどの車輪の回転状態や、車両が水平面に対して傾斜した状態などが挙げられる。車輪の回転状態の検知は、たとえば、車輪の回転数を電気信号化した車速パルス数を検知することによっておこなわれる。車両の傾斜状態の検知には、たとえば、加速度センサと車速センサが用いられる。
【0016】
判断部150は、加速度検知部130によって検知された加速度と、車両状態検知部140によって検知された車両の変化状態と、に基づいて、加速度検知部130によって所定値以上の加速度が検知される前に生じる異常走行状態にあるか否かを判断する。異常走行状態とは、加速度検知部130によって検知された加速度と、車両状態検知部160によって検知された車両の状態とが対応していない場合であり、具体的には、車輪のロック、スリップ、路面に対する車輪の空回転、車両の浮き上がりに伴う車輪の空回転などの異常車輪状態や、車両が障害物等に乗り上げて車両が傾いた場合の異常傾斜状態などが挙げられる。
【0017】
記録制御部160は、判断部150によって車両が異常走行状態にあると判断されたとき、少なくとも異常走行状態となる以前に記録した車両外部の状況を保存するように記録部120を制御する。少なくとも異常走行状態となる以前とは、たとえば、少なくとも上述した異常車輪状態や異常傾斜状態となる以前という趣旨であり、異常走行状態となった後の映像情報を保存するようにしてもよい。
【0018】
また、記録制御部160は、具体的には、記録部120に記録される映像情報の上書きを禁止することによって、当該映像情報を保存する。より具体的には、記録制御部160は、記録部120に記録される映像情報のうち、異常走行状態となる一定時間前を起点として、異常走行状態後に生じた衝突後の一定時間経過するまでの間に記録された映像情報を保存するように制御する。また、保存した映像情報は、たとえば、一定件数保存され、新たに保存するものがあるときは、古いものから順に上書きすればよい。
【0019】
また、判断部150は、車輪の回転数を検知する車両状態検知部140を備えた構成において、加速度検知部130によって検知された加速度と、車両状態検知部140によって検知された車速パルス数と、に基づいて、加速度および速度に対する車輪の回転状態に異常がある場合に、異常走行状態にあると判断するようにしてもよい。
【0020】
具体的には、たとえば、判断部150は、車両状態検知部140によって検知された車速パルス数が減少したにもかかわらず、加速度検知部130によって車両の減速が検知されていない場合に、車輪がロックまたはスリップしたものとして判断すればよい。また、車両状態検知部140によって検知された車速パルス数が増加したにもかかわらず、加速度検知部130によって車両の加速が検知されていない場合に、車輪が空回転しているものとして判断すればよい。
【0021】
また、判断部150は、水平面に対する車両の傾斜状態を検知する車両状態検知部140を備えた構成において、加速度検知部130によって検知された加速度と、車両状態検知部140によって検知された車両の傾斜状態と、に基づいて、車両が所定値以上傾斜した場合に、異常走行状態にあると判断するようにしてもよい。所定値以上とは、たとえば、水平面に対する車両の傾斜角度が20°以上である。
【0022】
衝突などが生じた場合、加速度検知部130のみの検知情報によって、異常走行状態を判断することができるが、車両の傾斜状態を検知するようにすれば、加速度検知部130のみの検知情報では検知することができない異常傾斜状態、つまり、具体的には、車両が何かに乗り上げてしまい、車両に加速度が生じることなく、車両が傾斜した場合についても異常傾斜状態として判断することができる。
【0023】
また、路面や気候に関する走行条件を検知する走行条件検知部170をさらに備え、判断部150は、走行条件検知部170によって検知された走行条件に応じて、車両が異常走行状態にあると判断する際の判断基準を変更して、異常走行状態にあるか否かを判断するようにしてもよい。判断基準の変更は、具体的には、車両状態検知部140によって検知された検知情報に対する閾値を変更することによって、おこなえばよい。走行条件とは、道路の舗装の有無、凍結の有無、ウェット状態か否か、一般道路か高速道路か、上り坂か下り坂か、などが挙げられる。
【0024】
具体的には、路面凍結時や降雨時などには、タイヤのロックや、スリップが発生しやすいため、加速度や車速パルス数に基づく異常車輪状態の判断をおこなう際の閾値を適宜変更すればよい。また、たとえば、舗装されていない道路などでは、加速度や車速パルス数に基づく異常車輪状態の判断を行う際の閾値を適宜変更すればよい。さらに、上り坂や下り坂などでは、車両が傾斜するため、異常傾斜状態であると判断を行う際の閾値を適宜変更すればよい。
【0025】
また、より具体的な判断基準の変更について、上り坂と下り坂における走行を例に挙げて説明する。車両が上り坂を走行中であれば、車両は加速し難い傾向にあり、ブレーキ操作によって生じる車両の加速度は小さくなる。つまり、車両の加速度の増減幅が狭い傾向にあるため異常走行状態であると判断しにくくなる傾向にある。そのため、上り坂であれば、高加速度であると判断する際の判断基準となる所定値を低く設定する。また、この場合、車両の傾斜角度については、異常傾斜状態であると判断する際の傾斜角度の上限、下限を高く設定すればよい。これは、上り坂の傾斜角度分を加味して車両の異常傾斜状態を判断するためである。
【0026】
また、車両が下り坂を走行中であれば、車両は加速し易い傾向にあり、ブレーキ操作によって生じる車両の加速度は大きくなる。つまり、車両の加速度の増減幅が広い傾向にあるため異常走行状態であると判断しやすくなる傾向にある。そのため、下り坂であれば、高加速度であると判断する際の判断基準となる所定値を高く設定する。また、この場合、車両の傾斜角度については、異常傾斜状態であると判断する際の傾斜角度の上限、下限を低く設定すればよい。これは、下り坂の傾斜角度分を加味して車両の異常傾斜状態を判断するためである。
【0027】
また、車両状態検知部140が車輪の回転数と、水平面に対する車両の傾斜状態と、を検知するようにした構成において、判断部150は、走行条件検知部170によって検知された走行条件に応じて、車両状態検知部140によって検知された複数の検知情報のうち、判断要素として用いる検知情報の優先順位を変更して、車両が異常走行状態にあるか否かを判断してもよい。つまり、判断部150は、路面凍結時には、車両の傾斜よりもスリップ等が起こりやすいため、判断部150は、異常車輪状態を優先して判断すればよい。なお、記録部120に記録させるものは、映像情報のみならず、車輪がロックした状態であることや傾斜した状態についての情報をも同時に記録させるようにしてもよい。具体的には、映像情報を再生した際に、ロック中である旨の表示や、傾斜角度の数値などを表示するようにしてもよい。
【0028】
また、加速度検知部130が衝突に相当する加速度を検知するようにし、判断部150は、加速度検知部130によって検知された衝突に相当する加速度に基づいて、車両の衝突方向を判断するようにしてもよい。衝突に相当する加速度とは、通常の走行時では生じない衝突時や急ブレーキをおこなった際に生じる加速度としてもよい。加速度検知部130によって検知された加速度により、車両が前方に衝突したのか、または、後方から衝突されたということが判断できる。
【0029】
つまり、加速度検知部130によって加速度の方向(加速または減速)に基づき、車両の進行方向と逆方向に、衝突に相当する加速度が検知されたときには、前方に衝突したものとして判断でき、一方、車両の進行方向と同じ方向に衝突に相当する加速度が検知されたときには、後方から衝突されたものとして判断すればよい。なお、停車時に車両の前方への衝突に相当する加速度が検知された場合には、後方から衝突されたものとして判断すればよい。また、停車時に車両の後方への衝突に相当する加速度が検知された場合には、前方から衝突されたものとして判断すればよい。
【0030】
また、加速度検知部130は、車両の前方と後方とに配置され、判断部150は、車両の前方に配置された加速度検知部130によって検知された加速度と、後方に配置された加速度検知部130によって検知した加速度とに基づいて、車両の衝突方向を判断するようにしてもよい。車両の前方と後方に加速度検知部130を配置することにより、前方および後方で検知された衝突に相当する加速度の大小関係や、検知された時間差から、前方または後方のどちらが先に衝突したかを判断できる。つまり、たとえば、前方に配置される加速度検知部130の方が、後方に配置される加速度検知部130よりも、検知した加速度が大きい場合や、検知した時間が早い場合には、前方で衝突が起こったものとして判断できる。たとえば、玉突き事故の場合、自車が最後尾で追突する場合、後方から他車に追突されたため前方の車に追突する場合など、様々な衝突の可能性が考えられる。加速度検知部130を車両の前方と後方とに設置することで、どのような状況のもとで衝突が起こったのかを分析する材料となりうる。
【0031】
(データ記録装置のデータ記録処理手順)
つぎに、図2を用いて、データ記録装置100のデータ記録処理手順について説明する。図2は、実施の形態にかかるデータ記録装置のデータ記録処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0032】
図2のフローチャートにおいて、データ記録装置100は、たとえば、車両のエンジンが始動し、電源が投入されるのを待って(ステップS201:Noのループ)、電源が投入された場合(ステップS201:Yes)、撮影部110が車両外部の状況を撮影する(ステップS202)。そして、記録部120は、撮影部110によって撮影された映像情報を記録する(ステップS203)。そして、加速度検知部130が車両に生じる加速度を検知する(ステップS204)。また、車両状態検知部140が、加速度以外の路面に対する車両の変化状態を検知する(ステップS205)。
【0033】
そして、加速度検知部130によって検知された車両の加速度と、車両状態検知部140によって検知された車両の変化状態とに基づいて、判断部150は、加速度検知部130によって所定値以上の加速度が検知される前に生じる異常走行状態にあるか否かを判断する(ステップS206)。ステップS206において、異常走行状態にあると判断した場合(ステップS206:Yes)、記録制御部160は、異常走行状態となる前後の記録部120に記録された映像情報を保存するように(ステップS207)、記録部120を制御し、一連の処理を終了する。
【0034】
なお、ステップS206において、判断部150が異常走行状態ではないと判断した場合(ステップS206:No)、ステップS202に戻り、ステップS206において、異常走行状態であると判断されるまで、ステップS202〜ステップS206の処理を繰り返す。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態にかかるデータ記録装置100によれば、加速度検知部130と、車両状態検知部140との検知結果に基づいて、所定値以上の加速度が検知される前に生じる異常走行状態にあるか否かを判断するようにした。これにより、加速度を検知するだけでは判断できない車両の変化状態についても異常走行状態として判断することができ、様々な走行パターンに対応して、映像情報を保存することができる。したがって、衝突前などに生じる、車両の不自然な走行状態などの映像情報についても保存することができる。また、利用者は、保存した映像情報を基に、事故の解析を効果的におこなうことができる。
【0036】
また、本実施の形態にかかるデータ記録装置100によれば、車輪の回転数を検知し、当該車速パルス数と加速度に基づいて、路面に対する車輪の回転状態に異常がある場合に異常走行状態にあると判断するようにしてもよい。これにより、車輪のロック、スリップ、空回転など、加速度を検知するだけでは判断できない車両の変化状態についても、異常車輪状態として判断することができ、当該異常車輪状態となる以前に記録した映像情報を保存することができる。したがって、衝突前などに生じる、車両の不自然な走行状態などの映像情報についても保存することができる。
【0037】
また、本実施の形態にかかるデータ記録装置100によれば、水平面に対する車両の傾斜状態を検知するようにしてもよい。これにより、加速度を検知するだけでは判断できない車両の変化状態についても、所定値以上、車両が傾斜したときに異常傾斜状態として判断することができ、当該異常傾斜状態となる以前に記録した映像情報を保存することができる。したがって、衝突前などに生じる、車両の不自然な走行状態などの映像情報についても保存することができる。
【0038】
また、本実施の形態にかかるデータ記録装置100によれば、路面や気候に関する走行条件を検知するようにし、検知された走行条件に応じて、異常走行状態にあると判断する際の判断基準を変更して、異常走行状態にあるか否かを判断してもよい。これにより、走行条件に対応して、車両の異常走行状態の判断をおこなうことができる。
【0039】
また、本実施の形態にかかるデータ記録装置100によれば、車両状態検知部140が車速パルス数と、水平面に対する車両の傾斜状態と、を検知し、判断部150は、走行条件検知部170によって検知された走行条件に応じて、車両状態検知部140によって検知された複数の検知情報のうち、判断要素として用いる検知情報の優先順位を変更して、異常走行状態にあるか否かを判断するようにしてもよい。これによって、より走行条件に対応した、異常走行状態の判断をおこなうことができる。
【0040】
また、本実施の形態にかかるデータ記録装置100によれば、衝突に相当する加速度に基づいて、車両の衝突方向を判断するようにしてもよい。これにより、たとえば、自車が前方の車両に衝突したのか、または後方から衝突されたのかを判断することができ、衝突の状況を詳細に把握することができる。
【0041】
また、本実施の形態にかかるデータ記録装置100によれば、車両の前方および後方に加速度検知部130を配置し、車両の前方および後方に生じる加速度を検知するようにしてもよい。これにより、前方および後方で検知された衝突に相当する加速度の大小関係や、当該加速度を検知した時間差に基づいて、前方または後方のどちらが先に衝突したかを判断することができる。したがって、玉突き事故などのような多重衝突時に、自車が自ら前方に衝突したのか、後方から衝突されたことによって前方に衝突したのかを判断することができ、事故の過失が自車にあるか否かを把握することができる。
【実施例1】
【0042】
以下に、本発明の実施例1について説明する。実施例1では、車両に搭載されるドライブレコーダによって、本発明のデータ記録装置100を実施した場合の一例について説明する。
【0043】
(ドライブレコーダ300のハードウェア構成)
図3を用いて、実施例1にかかるドライブレコーダ300のハードウェア構成について説明する。図3は、実施例1にかかるドライブレコーダのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図3において、ドライブレコーダ300は、車両に搭載されており、CPU301と、ROM302と、RAM303と、磁気ディスクドライブ304と、磁気ディスク305と、光ディスクドライブ306と、光ディスク307と、音声I/F(インターフェース)308と、マイク309と、入力デバイス310と、映像I/F311と、カメラ312と、通信I/F313と、各種センサ314と、を備えている。また、各構成部301〜314はバス320によってそれぞれ接続されている。
【0044】
まず、CPU301は、ドライブレコーダ300の全体の制御を司る。ROM302は、ブートプログラム、データ記録プログラムなどの各種プログラムを記録している。また、RAM303は、CPU301のワークエリアとして使用される。
【0045】
磁気ディスクドライブ304は、CPU301の制御にしたがって磁気ディスク305に対するデータの読み取り/書き込みを制御する。磁気ディスク305は、磁気ディスクドライブ304の制御で書き込まれたデータを記録する。磁気ディスク305としては、たとえば、HD(ハードディスク)やFD(フレキシブルディスク)を用いることができる。
【0046】
光ディスクドライブ306は、CPU301の制御にしたがって光ディスク307に対するデータの読み取り/書き込みを制御する。光ディスク307は、光ディスクドライブ306の制御にしたがってデータの読み出される着脱自在な記録媒体である。光ディスク307は、書き込み可能な記録媒体を利用することもできる。また、この着脱可能な記録媒体として、光ディスク307のほか、MO、メモリカードなどであってもよい。
【0047】
音声I/F308は、音声入力用のマイク309および音声出力用のマイク309に接続される。マイク309に受音された音声は、音声I/F308内でA/D変換される。マイク309は、たとえば、車両のサンバイザー付近に配置され、その数は単数でも複数でもよい。なお、マイク309から入力された音声は、音声情報として磁気ディスク305または光ディスク307に記録可能である。
【0048】
入力デバイス310は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えたリモコン、キーボード、マウス、タッチパネルなどが挙げられる。入力デバイス310は、リモコン、キーボード、マウス、タッチパネルのうち、いずれか一つの形態によって実現されてもよいし、複数の形態によって実現してもよい。
【0049】
映像I/F311は、カメラ312に接続される。カメラ312は、CCDセンサや、CMOSセンサなどからなり、車両外部の状況を撮影する。撮影した映像は、動画のほか、静止画をも含む。また、カメラ312によって撮影された映像を映像I/F311を介して磁気ディスク305や光ディスク307などの記録媒体に出力する。
【0050】
通信I/F313は、無線を介してネットワークに接続され、ドライブレコーダ300とCPU301とのインターフェースとして機能する。通信I/F313は、さらに、無線を介してインターネットなどの通信網に接続され、この通信網とCPU301とのインターフェースとしても機能する。
【0051】
通信網には、LAN、WAN、公衆回線網や携帯電話網などがある。具体的には、通信I/F313は、たとえば、FMチューナーなどによって構成される。
【0052】
各種センサ314は、車速センサ、加速度センサ、角速度センサ、温湿度センサ等を含み、車両の位置や挙動のほか、走行条件を判断することが可能な情報を出力する。
【0053】
図1に示したデータ記録装置100が備える撮影部110、記録部120、加速度検知部130、車両状態検知部140、判断部150、記録制御部160、走行条件検知部170は、図3に示したドライブレコーダ300におけるROM302、RAM303、磁気ディスク305、光ディスク307などに記録されたプログラムやデータを用いて、CPU301が所定のプログラムを実行し、ドライブレコーダ300における各部を制御することによってその機能を実現する。
【0054】
すなわち、本実施例のドライブレコーダ300は、ドライブレコーダ300における記録媒体としてのROM302に記録されているデータ記録プログラムを実行することにより、図1に示したデータ記録装置100が備える機能を、図2に示したデータ記録処理手順で実行することができる。
【0055】
(ドライブレコーダ300のデータ記録処理の一例)
つぎに、図4を用いて、実施例1にかかるドライブレコーダ300がおこなうデータ記録処理の一例について説明する。図4は、実施例1にかかるドライブレコーダのデータ記録処理の一例を示すフローチャートである。
【0056】
図4のフローチャートにおいて、ドライブレコーダ300は、たとえば、車両のエンジンが始動し、電源が投入されるのを待って(ステップS401:Noのループ)、電源が投入された場合(ステップS401:Yes)、カメラ312が車両外部の状況を撮影する(ステップS402)。そして、撮影された映像情報を記録する(ステップS403)。そして、加速度センサが加速度を検知する(ステップS404)。
【0057】
また、加速度センサおよび車速センサが路面に対する車両の変化状態を検知する(ステップS405)。車速センサは、具体的には、車軸の回転数を電気信号化した車速パルス数を検知する。そして、加速度センサおよび車速センサによって、異常傾斜状態の判断、つまり、検知された車両の傾斜角度が閾値以上か否かを判断する(ステップS406)。傾斜角度の閾値は、たとえば、傾斜角度20°に設定されている。なお、傾斜角度は、上下両方向に計測できるため、正負の計測がおこなわれる。
【0058】
ステップS406において、傾斜角度が閾値以上ではないと判断した場合(ステップS406:No)、加速度センサによって検知された加速度と、車速センサによって検知された車速パルス数と、に基づいて、異常車輪状態の判断、つまり、具体的には、タイヤがロックまたはスリップしたか否かを判断する(ステップS407)。なお、ステップS406およびステップS407における判断において、加速度センサによって検知される加速度は、衝突時や急ブレーキ時などに検知される高加速度にはない。
【0059】
ステップS407において、タイヤがロックまたはスリップしたものと判断した場合(ステップS407:Yes)、タイヤがロックまたはスリップしたときより前の映像情報と、タイヤがロックまたはスリップしたときから所定時間経過するまでの映像情報を保存し(ステップS408)、一連の処理を終了する。
【0060】
一方、ステップS406において、傾斜角度が閾値以上である場合(ステップS406:Yes)、ステップS408以降の処理をおこなう。また、ステップS407において、タイヤがロックまたはスリップしていないと判断した場合(ステップS407:No)、ステップS402以降の処理をおこなう。尚、図4において、ステップS406において傾斜角度が閾値異常であるか否か判断した後に、ステップS407において異常車輪状態であるか否かの判断を行っているが、この順序に限るものではない。逆の順に判断してもよいし、並列に判断を行うようにしてもよい。
【0061】
つぎに、図5を用いて、実施例1における記録した映像情報の保存について、時系列を基にして説明する。図5は、実施例1における映像情報の保存形式を示した説明図である。図5において、横軸Tは、時間(秒)である。
【0062】
実施例1にかかるドライブレコーダ300の保存形式について説明する。本実施例においては、タイヤのロックなどの異常走行状態が発生した時刻を異常走行状態発生時刻T2とする。そして、異常走行状態発生時刻T2より所定時間前で、かつ、映像情報の上書きが禁止され始める時刻を上書禁止開始時刻T1として設定する。また、異常走行状態発生時刻T2より所定時間後で、かつ、映像情報の記録が終了する時刻を記録終了時刻T3とする。実施例1におけるドライブレコーダ300は、異常走行状態が発生した際、異常走行状態発生時刻T2の前後に記録した映像情報を保存する。したがって、本実施例においては、上書禁止開始時刻T1から記録終了時刻T3までに記録した映像情報を保存することができる。
【0063】
このあと、衝突が起きたとすれば、さらに、衝突前後に記録した映像情報を保存する。以下に、衝突前後に記録した映像情報の保存について説明する。図5において、衝突が発生した時刻を衝突発生時刻T5とする。衝突発生時刻T5より所定時間前で、かつ、映像情報の上書きが禁止され始める時刻を上書禁止開始時刻T4とする。そして、衝突発生時刻T5より所定時間後で、かつ、映像情報の記録が終了する時刻を記録終了時刻T6とする。つまり、実施例1にかかるドライブレコーダ300は、衝突発生時刻T5を基準にした上書禁止開始時刻T4から記録終了時刻T6までに記録した映像情報をも保存する。したがって、ドライブレコーダ300は、異常走行状態発生時刻T2を基準にした上書禁止開始時刻T1から、衝突発生時刻T5を基準にした記録終了時刻T6までに記録した映像情報を保存することができる。
【0064】
ところで、従来のドライブレコーダは、衝突が発生した際、衝突発生時刻T5の前後に記録した映像情報のみを保存する。つまり、上書禁止開始時刻T4から記録終了時刻T6までに記録した映像情報を保存する。
【0065】
したがって、従来のドライブレコーダでは上書禁止開始時刻T4から記録終了時刻T6までに記録した映像情報しか保存できないのに対して、実施例1にかかるドライブレコーダ300は、異常走行状態発生時刻T2を基準にした上書禁止開始時刻T1から、衝突開始時刻T5を基準にした記録終了時刻T6までの間に記録した映像情報を保存することができる。
【0066】
つぎに、図6を用いて、実施例1における記録した映像情報の表示の一例について説明する。図6は、実施例1における映像情報の表示の一例について示した説明図である。図6は、映像情報の表示の一例として、車両がスリップした状態を示している。図6において、表示画面600には、自車601と、前方車両602と、標識603と、センターライン604と、ガードレール605と、走行車線606と、対向車線607と、が示されている。
【0067】
標識603、およびセンターライン604は、はみ出しての追い越しを禁止する表示である。表示画面600は、自車601がスリップし、走行車線606からセンターライン604をはみ出し、対向車線607を走行している状態を示している。このとき、たとえば、路面凍結などにより、タイヤがロックした状態で、自車601が路面上を滑っている状態、つまり、具体的には、加速度センサが所定の高加速度を検知していない状態であるものとする。
【0068】
この状態において、従来のドライブレコーダでは、自車601が前方車両602やガードレール605へ衝突するなどし、つまり、加速度センサが所定の高加速度を検知して、はじめて、映像情報の保存が開始されていたが、実施例1にかかるドライブレコーダ300では、加速度センサが高加速度を検知しない状態であっても、表示画面600に示すような映像情報を保存することができる。なお、このように、異常走行状態が発生している場合の表示において、表示画面600中に「タイヤロック発生」や「スリップ発生」などを表示してもよい。
【0069】
以上説明したように、実施例1にかかるドライブレコーダ300によれば、加速度と、車両状態を検知し、この検知結果に基づいて、所定値以上の加速度が検知される前に生じる異常走行状態にあるか否かを判断するようにした。これにより、加速度を検知するだけでは判断できない車両の変化状態についても異常走行状態として判断することができ、様々な走行パターンに対応して、異常走行状態となる以前に記録した映像情報を保存することができる。したがって、衝突前などに生じる、車両の不自然な走行状態などの映像情報についても保存することができる。なお、衝突が生じない場合であっても、車両の不自然な走行状態などの映像情報を保存することは、勿論可能である。
【0070】
また、実施例1にかかるドライブレコーダ300によれば、車輪の回転数を検知し、当該車速パルス数と加速度に基づいて、路面に対する車輪の回転状態に異常がある場合に異常走行状態にあると判断するようにした。これにより、車輪のロック、スリップ、空回転などの異常車輪状態となったときに、当該異常車輪状態となる以前に記録した映像情報を保存することができる。したがって、衝突前などに生じる、車両の不自然な走行状態などの映像情報についても保存することができる。
【0071】
また、実施例1にかかるドライブレコーダ300によれば、水平面に対する車両の傾斜状態を検知するようにした。これにより、所定値以上、車両が傾斜した異常傾斜状態となったときに、当該異常傾斜状態となる以前に記録した映像情報を保存することができる。したがって、衝突前などに生じる、車両の不自然な走行状態などの映像情報についても保存することができる。
【実施例2】
【0072】
実施例2は、走行条件に応じて、加速度センサによって検知される衝突加速度の閾値(たとえば、0.4G)や、加速度センサと車速センサによって検知される車両の傾斜角度の閾値(たとえば、傾斜角度20°)を変更するようにした処理について説明する。なお、走行条件については、坂道を例に挙げて説明する。また、実施例2にかかるドライブレコーダ300の構成、および異常走行状態の判断処理については、実施例1で説明したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0073】
(ドライブレコーダ300のデータ記録処理の一例)
図7を用いて、実施例2にかかるドライブレコーダ300がおこなうデータ記録処理の一例について説明する。図7は、実施例2にかかるドライブレコーダのデータ記録処理の一例を示すフローチャートである。
【0074】
図7のフローチャートにおいて、ドライブレコーダ300は、電源が投入された状態であり、加速度センサおよび車速センサにより、現在走行する道路が所定角度(たとえば、傾斜角度20°)以上の傾斜を検知したか否かを判断する(ステップS701)。ステップS701において、所定角度以上の傾斜を検知するまで待機状態にあり(ステップS701:Noのループ)、所定角度以上の傾斜を検知したと判断した場合(ステップS701:Yes)、角度の正負により上り方向の傾斜か否かを判断する(ステップS702)。
【0075】
ステップS702において、上り方向の傾斜であると判断した場合(ステップS702:Yes)、衝突加速度の閾値を低く設定する(ステップS703)。具体的には、たとえば、衝突加速度を0.4Gから0.3Gに変更する。これは、車両が上り坂を走行中であれば、車両が加速し難い傾向にあり、ブレーキ操作によって生じる車両の加速度が小さくなり、異常走行状態にあると判断しにくくなるためである。
【0076】
そして、車両の傾斜角度の閾値の上限、下限を上げて(ステップS704)、一連の処理を終了する。なお、車両の傾斜角度の閾値の上限、下限を上げるとは、具体的には、たとえば、車両の傾斜角度の閾値の上限が20°で、車両の傾斜角度が10°の場合、上限を30°に引き上げることである。また、車両の傾斜角度の閾値の下限が−20°で、車両の傾斜角度が10°の場合、下限を−10°に引き上げることである。
【0077】
一方、ステップS702において、上り方向の傾斜ではないと判断した場合(ステップS702:No)、現在走行中の道路を下り坂として認識する(ステップS705)。そして、衝突加速度の閾値を高く設定する(ステップS706)。具体的には、たとえば、衝突加速度を0.4Gから0.5Gに変更する。これは、車両が下り坂を走行中であれば、車両が加速し易い傾向にあり、ブレーキ操作によって生じる車両の加速度が大きくなり、異常走行状態にあると判断しやすくなるためである。
【0078】
そして、車両の傾斜角度の閾値の上限、下限を下げて(ステップS707)、一連の処理を終了する。なお、車両の傾斜角度の閾値の上限、下限を下げるとは、具体的には、たとえば、車両の傾斜角度の閾値の上限が20°で、車両の傾斜角度が−10°の場合、上限を10°に引き下げることである。また、車両の傾斜角度の閾値の下限が−20°で、車両の傾斜角度が−10°の場合、下限を−30°に引き下げることである。
【0079】
以上説明したように、実施例2にかかるドライブレコーダ300によれば、走行条件を検知するようにし、道路状況に応じて、異常走行状態にあると判断する際の衝突加速度や車両の傾斜角度の閾値を変更した。これにより、走行条件に応じて、車両の異常走行状態の判断をおこなうことができる。
【実施例3】
【0080】
実施例3は、路面状況などの走行条件に応じて、タイヤのロックなどの異常車輪状態を判断する際の閾値を変更するようにした処理について説明する。なお、実施例3にかかるドライブレコーダ300の構成は、実施例1で説明したものと同様の構成であり、ここでは説明を省略する。
【0081】
(ドライブレコーダ300のデータ記録処理の一例)
図8を用いて、実施例3にかかるドライブレコーダ300がおこなうデータ記録処理の一例について説明する。図8は、実施例3にかかるドライブレコーダのデータ記録処理の一例を示すフローチャートである。
【0082】
図8のフローチャートにおいて、ドライブレコーダ300は、温湿度センサにより、たとえば、外部の気温が0℃以下であることを検知したか否かを判断する(ステップS801)。ステップS801において、外部の気温が0℃以下であることを検知するまで待機状態にあり(ステップS801:Noのループ)、外部の気温が0℃以下であることを検知したと判断した場合(ステップS801:Yes)、路面が凍結しているものとして認識する(ステップS802)。
【0083】
そして、タイヤのロックやスリップなどの異常車輪状態の判断基準を下げる(ステップS803)。そして、異常車輪状態を優先して判断するようにし(ステップS804)、一連の処理を終了する。
【0084】
なお、タイヤのロック、スリップ、空回転、などの異常車輪状態の判断基準は、検知された加速度と車速パルス数とが通常走行時の対応関係を示していない場合に、つまり、車両の走行中に、車速パルス数が所定量減少または増加した場合に、加速度が所定量減少または増加しないとき、異常車輪状態として判断する。実施例3において、閾値を下げるとは、具体的には、たとえば、車速パルス数が加速度に対応していないものと判断する際の、車速パルス数の減少値または増加値の閾値を下げることにより、異常車輪状態として判断しやすいようにしたものである。
【0085】
以上説明したように、実施例3にかかるドライブレコーダ300によれば、路面状態に応じて、異常走行状態にあると判断する際の衝突加速度や車両の傾斜角度の閾値を変更した。つまり、路面凍結時などには、タイヤのロックやスリップが発生しやすいため、加速度や車速パルス数に基づく異常車輪状態の判断基準を下げる。これにより、路面状態に応じて、車両の異常走行状態の判断をおこなうことができる。
【0086】
なお、実施例3において、路面凍結時に、車両の傾斜角度の閾値を変更してもよい。また、実施例3では、異常車輪状態を優先して判断するようにした。つまり、路面凍結時には、タイヤのロックやスリップの判断について、異常傾斜状態の判断よりも優先して判断するようにした。また、たとえば、道路が舗装されておらず、路面に凹凸があるような場合には、異常傾斜状態の判断よりも、異常車輪状態の判断を適宜優先してしてもよい。これによって、より走行条件に対応して、異常走行状態の判断をおこなうことができる。
【実施例4】
【0087】
実施例4は、車両が停止または走行していることを判断するとともに、衝突時や急ブレーキ時の加速度に相当する閾値としての衝突加速度を検知した場合に、車両の前方または後方のどちらから衝突が起きたかを判断するようにした処理について説明する。実施例4にかかるドライブレコーダ300の構成は、実施例1で説明したものと同様の構成であり、ここでは説明を省略する。
【0088】
(ドライブレコーダ300のデータ記録処理の一例)
図9を用いて、実施例4にかかるドライブレコーダ300がおこなうデータ記録処理の一例について説明する。図9は、実施例4にかかるドライブレコーダのデータ記録処理の一例を示すフローチャートである。
【0089】
図9のフローチャートにおいて、ドライブレコーダ300は、たとえば、車両のエンジンが始動し、電源が投入されるのを待って(ステップS901:Noのループ)、電源が投入された場合(ステップS901:Yes)、カメラ312が車両外部の状況を撮影する(ステップS902)。そして、撮影した映像情報を記録する(ステップS903)そして、加速度センサが加速度を検知する(ステップS904)。また、加速度センサおよび車速センサが路面に対する車両の変化状態を検知する(ステップS905)。車速センサは、具体的には、車軸の回転数を電気信号化した車速パルス数を検知する。
【0090】
そして、車速センサによって検知された車速パルス数に基づいて、車両が停止しているか否かを判断する(ステップS906)。ステップS906において、車両が停止していると判断した場合(ステップS906:Yes)、加速度センサが、たとえば、0.4Gの衝突加速度を検知したか否かを判断する(ステップS907)。ステップS907において、衝突加速度を検知したと判断した場合(ステップS907:Yes)、後方から衝突されたものと認識する(ステップS908)。そして、衝突加速度を検知したときより前の映像情報と、衝突加速度を検知したときから所定時間経過するまでの映像情報を保存し(ステップS909)、一連の処理を終了する。
【0091】
一方、ステップS906において、車両が停止していないと判断した場合(ステップS906:No)、車両が走行中であるものと認識する(ステップS910)。そして、加速度センサが衝突加速度を検知したか否かを判断する(ステップS911)。ステップS911において、衝突加速度を検知したと判断した場合(ステップS911:Yes)、衝突加速度が減速方向か否かを判断する(ステップS912)。
【0092】
ステップS912において、衝突加速度が減速方向であると判断した場合(ステップS912:Yes)、前方に衝突したものと認識し(ステップS913)、ステップS909以降の処理をおこなう。一方、ステップS912において、衝突加速度が減速方向ではない場合(ステップS912:No)、つまり、衝突加速度が進行方向である場合、ステップS908以降の処理をおこなう。
【0093】
一方、ステップS907において、進行方向の衝突加速度を検知しないと判断した場合(ステップS907:No)、ステップS902以降の処理をおこなう。また、ステップS911において、衝突加速度を検知していないと判断した場合(ステップS911:No)、ステップS902以降の処理をおこなう。
【0094】
なお、実施例4では、車両が停止している場合には、車両の前方への衝突加速度を検知することによって、後方から衝突されたものとして認識するようにしている。また、車両の後方への衝突に相当する加速度が検知された場合には、車両の前方から衝突されたものとして認識することになる。
【0095】
以上説明したように、実施例4にかかるドライブレコーダ300によれば、衝突加速度に基づいて、車両の衝突方向を判断するようにした。これにより、たとえば、自車が前方の車両に衝突したのか、または後方から衝突されたのかを判断することができ、衝突の状況を詳細に把握することができる。
【0096】
また、カメラ312を複数備えるようにすれば、より多くの映像情報を取得することができるとともに、認識した衝突方向に基づいて、衝突した箇所を判別することにより、衝突状況を最も的確に撮影したカメラ312の映像情報を保存することができる。
【実施例5】
【0097】
実施例5は、車両の前方と後方に加速度センサを配置して衝突加速度を検知するようにしたことにより、車両の前方または後方のどちらが先に衝突したかを判断するようにした処理について説明する。つまり、たとえば、玉突き事故などのように、前方への衝突および後方からの衝突があることを想定したものであり、自車が自ら前方の車両に衝突したのちに後部から衝突されたのか、または、他の車両に後方から衝突されたのちに前方の車両に衝突したのかを認識できるようにしたものである。なお、実施例5にかかるドライブレコーダ300の構成は、車両の前方と後方に加速度センサを配置した以外は、実施例1で説明したものと同様の構成であり、ここでは説明を省略する。
【0098】
(ドライブレコーダ300のデータ記録処理の一例)
図10を用いて、実施例5にかかるドライブレコーダ300がおこなうデータ記録処理の一例について説明する。図10は、実施例5にかかるドライブレコーダのデータ記録処理の一例を示すフローチャートである。
【0099】
図10のフローチャートにおいて、ドライブレコーダ300は、たとえば、車両のエンジンが始動し、電源が投入されるのを待って(ステップS1001:Noのループ)、電源が投入された場合(ステップS1001:Yes)、カメラ312が車両外部の状況を撮影する(ステップS1002)。そして、撮影された映像情報を記録する(ステップS1003)。そして、加速度センサが加速度を検知する(ステップS1004)。また、加速度センサおよび車速センサが路面に対する車両の変化状態を検知する(ステップS1005)。車速センサは、具体的には、車軸の回転数を電気信号化した車速パルス数を検知する。
【0100】
そして、前方に配置される加速度センサ、または後方に配置される加速度センサが衝突加速度を検知したか否かを判断する(ステップS1006)。ステップS1006において、前方に配置される加速度センサ、または後方に配置される加速度センサが衝突加速度を検知したと判断した場合(ステップS1006:Yes)、前方の加速度センサが先に衝突加速度を検知したか否かを判断する(ステップS1007)。
【0101】
ステップS1007において、前方の加速度センサが先に衝突加速度を検知したと判断した場合(ステップS1007:Yes)、車両が前方に衝突したものと認識する(ステップS1008)。そして、衝突加速度を検知したときより前の映像情報と、衝突加速度を検知したときから所定時間経過するまでの映像情報を保存し(ステップS1009)、一連の処理を終了する。
【0102】
一方、ステップS1007において、前方の加速度センサが先に衝突加速度を検知しない場合(ステップS1007:No)、つまり、後方の加速度センサが先に衝突加速度を検知した場合、後方から衝突されたものと認識し(ステップS1010)、ステップS1009以降の処理をおこなう。また、ステップS1006において、前方に配置される加速度センサ、または後方に配置される加速度センサが衝突加速度を検知していないと判断した場合(ステップS1006:No)、ステップS1002以降の処理をおこなう。なお、実施例5では、前方および後方にて衝突加速度が検知された際の時間差に基づいて、衝突方向を認識するようにしたが、前方および後方にて検知された衝突加速度の大小関係に基づいて、衝突方向を認識するようにしてもよい。
【0103】
以上説明したように、実施例5にかかるドライブレコーダ300によれば、車両の前方および後方に生じる衝突加速度を検知するようにした。これにより、前方および後方で検知された衝突加速度の大小関係や、衝突加速度を検知した時間差に基づいて、前方または後方のどちらが先に衝突したかを判断することができる。したがって、玉突き事故などのような多重衝突時に、自車が自ら前方に衝突したのちに後方から衝突されたのか、または、後方から衝突されたのちに前方に衝突したのかを判断することができ、事故の過失が自車にあるか否かを把握することができる。
【0104】
なお、カメラ312を複数備えるようにすれば、より多くの映像情報を取得することができるとともに、認識した衝突方向に基づいて、衝突した箇所を判別することにより、衝突状況を最も的確に撮影したカメラ312の映像情報を保存することができる。
【0105】
以上説明したように、各実施例による、本発明のデータ記録装置、データ記録方法、データ記録プログラム、および記録媒体によれば、ドライブレコーダ300は、加速度と車両状態を検知し、この検知結果に基づいて、所定値以上の加速度が検知される前に生じる異常走行状態にあるか否かを判断するようにした。これにより、加速度を検知するだけでは判断できない車両の変化状態についても異常走行状態として判断することができ、様々な走行パターンに対応して、映像情報を保存することができる。したがって、衝突前などに生じる、車両の不自然な走行状態などの映像情報についても保存することができる。また、利用者は、保存した映像情報を基に、事故の解析を効果的におこなうことができる。
【0106】
なお、本実施例で説明したデータ記録方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また、このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】実施の形態にかかるデータ記録装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【図2】実施の形態にかかるデータ記録装置のデータ記録処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】実施例1にかかるドライブレコーダのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図4】実施例1にかかるドライブレコーダのデータ記録処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】実施例1における映像情報の保存形式を示した説明図である。
【図6】実施例1における映像情報の表示の一例について示した説明図である。
【図7】実施例2にかかるドライブレコーダのデータ記録処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】実施例3にかかるドライブレコーダのデータ記録処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】実施例4にかかるドライブレコーダのデータ記録処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】実施例5にかかるドライブレコーダのデータ記録処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
100 データ記録装置
110 撮影部
120 記録部
130 加速度検知部
140 車両状態検知部
150 判断部
160 記録制御部
170 走行条件検知部
300 ドライブレコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部の状況を撮影した映像情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記映像情報を記録する記録手段と、
車両に生じる加速度を検知する加速度検知手段と、
前記加速度以外の路面に対する車両の変化状態を検知する車両状態検知手段と、
前記加速度検知手段によって検知された加速度と、前記車両状態検知手段によって検知された車両の変化状態と、に基づいて、前記加速度検知手段によって所定値以上の加速度が検知される前に生じる異常走行状態にあるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段によって車両が異常走行状態にあると判断されたとき、少なくとも異常走行状態となる以前に記録した映像情報を保存するように前記記録手段を制御する記録制御手段と、
を備えることを特徴とするデータ記録装置。
【請求項2】
前記車両状態検知手段は、車輪の回転数を検知し、
前記判断手段は、前記加速度検知手段によって検知された加速度と、前記車両状態検知手段によって検知された車輪の回転数と、に基づいて、加速度および速度に対する車輪の回転状態に異常がある場合に、異常走行状態にあると判断することを特徴とする請求項1に記載のデータ記録装置。
【請求項3】
前記車両状態検知手段は、水平面に対する車両の傾斜状態を検知し、
前記判断手段は、前記加速度検知手段によって検知された加速度と、前記車両状態検知手段によって検知された車両の傾斜状態と、に基づいて、車両が所定値以上傾斜した場合に、異常走行状態にあると判断することを特徴とする請求項1に記載のデータ記録装置。
【請求項4】
路面や気候に関する走行条件を検知する走行条件検知手段をさらに備え、
前記判断手段は、前記走行条件検知手段によって検知された走行条件に応じて、車両が異常走行状態にあると判断する際の判断基準を変更して、異常走行状態にあるか否かを判断することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のデータ記録装置。
【請求項5】
前記車両状態検知手段は、車輪の回転数と、水平面に対する車両の傾斜状態と、を検知し、
前記判断手段は、前記走行条件検知手段によって検知された走行条件に応じて、前記車両状態検知手段によって検知された複数の検知情報のうち、判断要素として用いる検知情報の優先順位を変更して、異常走行状態にあるか否かを判断することを特徴とする請求項4に記載のデータ記録装置。
【請求項6】
前記加速度検知手段は、衝突に相当する加速度を検知し、
前記判断手段は、前記加速度検知手段によって検知された衝突に相当する加速度に基づいて、車両の衝突方向を判断することを特徴とする請求項1に記載のデータ記録装置。
【請求項7】
前記加速度検知手段は、車両の前方と後方とに配置され、
前記判断手段は、車両の前方に配置された前記加速度検知手段が検知した加速度と、後方に配置された前記加速度検知手段が検知した加速度とに基づいて、車両の衝突方向を判断することを特徴とする請求項1に記載のデータ記録装置。
【請求項8】
車両外部の状況を撮影した映像情報を取得する取得工程と、
前記取得工程によって取得された前記映像情報を記録する記録工程と、
車両に生じる加速度を検知する加速度検知工程と、
前記加速度以外の路面に対する車両の変化状態を検知する車両状態検知工程と、
前記加速度検知工程によって検知された加速度と、前記車両状態検知工程によって検知された車両の変化状態と、に基づいて、前記加速度検知工程によって所定値以上の加速度が検知される前に生じる異常走行状態にあるか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程によって車両が異常走行状態にあると判断されたとき、少なくとも異常走行状態となる以前に記録した映像情報を保存するように前記記録工程を制御する記録制御工程と、
を含むことを特徴とするデータ記録方法。
【請求項9】
請求項8に記載のデータ記録方法をコンピュータに実行させることを特徴とするデータ記録プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のデータ記録プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータに読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−217703(P2008−217703A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57735(P2007−57735)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】