説明

トナー残量監視装置、画像形成装置、トナー残量監視プログラム

【課題】トナーの残量が空になったことを精度よく判別する。
【解決手段】高濃度基準画像のトナー濃度が第3のしきい値S3を超えて低濃度となった場合に、現像性の変動が発生していると判断し、第1のしきい値S1及び第2のしきい値S2を一定の割合で高濃度側にシフトする(二点鎖線で示した第1のしきい値(補正)S1Hと、第2のしきい値(補正)S2H参照)。この第1のしきい値(補正)S1Hと第2のしきい値(補正)S2Hとすることで、△印Fで強制トナー補給とすることが可能であり、定常状態の特性と同一トナー濃度での判定となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー残量監視装置、画像形成装置、トナー残量監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
二成分現像剤を用いた画像形成装置において、トナー濃度(トナー量/(トナー量+キャリア量))を制御(例えば、目標は約8wt%)するため、定期的に基準画像(パッチ画像)を形成し、濃度センサによって読み取った当該基準画像の濃度値に基づいて、トナー量を加減している。なお、この明細書において、二成分現像剤をトナーとキャリアとに明確に区別する必要がない場合、単に「現像剤」、「トナー」という場合がある。
【0003】
この場合、トナー濃度の広いレンジ(例えば、2〜12wt%)をカバーし、かつ周囲に環境変動があっても対応可能となるように、定常状態の基準画像濃度が濃度センサのダイナミックレンジ(検出範囲)の中央領域になるように設定している。このため、トナー濃度制御のための基準画像は、中間調(グレー画像)の基準画像が採用される。
【0004】
トナー濃度と基準画像濃度との相関関係は、例えば、正比例的に推移するが(y=ax+b)、現像剤の種類や、周囲環境、画像形成装置の仕様を含めた要因(現像性)により、特性が平行移動する。言い換えれば、前記正比例の公式の傾きaは変わらないが、定数bが変動する。
【0005】
ところで、上記トナー濃度制御では、基準画像の濃度値が極端に薄い場合、補給するトナーの有無、すなわちトナー残量の有無を判別するようになっている。
【0006】
より具体的には、前記基準画像の目標濃度に対して2つのしきい値を設定しておき、濃度センサからの出力値と比較する。
【0007】
すなわち、相対的に目標濃度から遠いしきい値(以下、「第1のしきい値」という)と、相対的に目標濃度に近いしきい値(以下、「第2のしきい値」という)を設定しておき、濃度センサによる検出の結果、第1のしきい値よりも低濃度となり、強制的にトナー補給を行っても、第2のしきい値よりも高濃度に戻らない場合、トナー残量がほとんど無いと判定(空判定)する。
【0008】
なお、参考として、特許文献1では、基準画像で現像器のトナー濃度を調整するとき、基準画像の目標値を出力されている画像や、トナー帯電量に基づいて補正することが開示されている。
【0009】
また、特許文献2では、相対的に低濃度、中濃度、高濃度の基準画像を形成し、現像カーブの状態を検出することで、現像剤の異常を検出し、トナー濃度を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−017627公報
【特許文献2】特開平7−271173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、本構成を有しない場合に比べて、トナーの残量が空になったことを精度よく判別することができるトナー残量監視装置、画像形成装置、トナー残量監視プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、像保持体に対峙して配置され、トナー成分とキャリア成分とによって生成された現像剤によって現像された中間調画像データに基づく基準画像の濃度検出する濃度センサと、記濃度センサで検出した基準画像の濃度が、目標濃度よりも低濃度側、かつ相対的に目標濃度に遠い濃度である第1のしきい値よりも低濃度となった場合に、強制的に少なくともトナー成分を補給する強制補給手段と、記強制補給手段による強制補給後において、前記濃度センサで検出した基準画像の濃度が、目標濃度よりも低濃度側、かつ相対的に目標濃度に近い濃度である第2のしきい値よりも高濃度にならない場合、トナーの残量が不足と判定する判定手段と、記像保持体に、前記基準画像よりも高濃度階調データで形成した高濃度基準画像を、前記濃度センサで検出したときの濃度が、予め定めた第3のしきい値を超えて低濃度となった場合に、前記第1のしきい値及び第2のしきい値を前記目標濃度側に近づけるように補正する補正手段と、を有している。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記中間調画像データが、全階調幅を均等に3分割したときの中間に位置する領域の階調の画像データである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記高濃度階調データが、全階調幅を複数分割したときの最も高濃度側に位置する領域の階調の画像データである。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記請求項1〜請求項3の何れか1項記載の発明において、前記補正手段が、元の第1のしきい値及び第2のしきい値に対して60%とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記請求項1〜請求項4の何れか1項記載の発明において、前記第3のしきい値よりも高濃度となった時点で、前記第1のしきい値及び第2のしきい値を元のレベルに復帰させる復帰手段をさらに有する。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか1項記載のトナー残量監視装置を搭載した画像形成装置である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、コンピュータに、前記請求項1〜請求項5の何れか1項記載のトナー残量監視を実行させるトナー残量監視プログラムである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、トナーの残量が空になったことを精度よく判別することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、トナー濃度の検出幅を拡大することができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、目標濃度よりも低濃度側において、現像性に依存することがない、トナー濃度−基準画像濃度の特性を得ることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、トナーの残量の監視精度を最大限に高めることができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、トナー成分が正常に補給された場合は、元の第1のしきい値及び第2のしきい値に復帰することができる。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、トナーの残量が空になったことを精度よく判別することができる。
【0025】
請求項7記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、トナーの残量が空になったことを精度よく判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施の形態に係るプリンタの概略図である。
【図2】本実施の形態に係るプリンタにおける制御ユニットのハード構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態に係るトナー濃度−中間調基準画像濃度特性曲線を示す特性図である。
【図4】本実施の形態に係るトナー濃度−高濃度基準画像濃度特性曲線を示す特性図である。
【図5】本実施の形態に係る印刷制御管理部における、トナー残量監視制御を機能的示したブロック図である。
【図6】本実施の形態に係るトナー濃度制御及び空検知制御のための流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、画像形成装置としてのプリンタ10が示されている。プリンタ10は、フルカラー画像又は白黒画像を形成するデジタルプリンタである。
【0028】
プリンタ10内部の上方には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各トナーを収容するトナーカートリッジ11Y、11M、11C、11Kが交換可能に設けられている。なお、以後の説明では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(黒)の各色に対応する部材の符号にY、M、C、Kを付与して区別する。
【0029】
トナーカートリッジ11Y、11M、11C、11Kには、それぞれトナー供給路13Y、13M、13C、13Kの一端が接続されている。なお、トナー供給路13Y、13M、13C、13Kは、管状部材で構成されている。
【0030】
トナーカートリッジ11Y、11M、11C、11Kには、トナーディスペンサ(図示省略)が設けられている。
【0031】
また、プリンタ10内部の中央には、Y、M、C、Kの現像剤に対応する4つの画像形成ユニット12(12Y、12M、12C、12K)が、図1の正面視にて右斜め下方に向けて互いに一部を重ねた状態で配置されている。
【0032】
画像形成ユニット12は、感光体28を備えている。感光体28の周囲には、感光体28の表面に接触して感光体28を一様に帯電する帯電装置の一例としての帯電ロールと、前述の露光光Lにより感光体28上に形成された静電潜像を各色の二成分現像剤で現像する現像部と、転写後の感光体28の表面に光を照射して除電を行う除電装置の一例としてのイレーズランプと、除電後の感光体28の表面を清掃するクリーニングユニットとが設けられている。
【0033】
二成分現像剤は、非磁性タイプのトナーと、磁性を有するキャリアとが混合されたものである。ここで、トナー供給路13Y、13M、13C、13Kの他端が、4つの画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kにそれぞれ接続されており、トナーディスペンサの駆動によって、各色のトナーが各画像形成ユニット12に供給されるようになっている。
【0034】
各画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kの上方には、転写部14が設けられている。転写部14は、中間転写ベルト16と、中間転写ベルト16の内側に配置され、各画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kの各トナー像を中間転写ベルト16に多重転写させる4つの一次転写部材としての一次転写ロール18Y、18M、18C、18Kと、中間転写ベルト16上で重ねられたトナー像を、記録用紙Pに転写させる二次転写ロール20とを有している。
【0035】
中間転写ベルト16は、図示しないモータで駆動される駆動ロール22と、中間転写ベルト16の張力を調整するテンションロール24と、二次転写ロール20と対向配置されたバックアップロール26とで構成されるローラ群に、一定の張力で巻き掛けられており、駆動ロール22により、図1の矢印X方向(反時計回り方向)に周回駆動されるようになっている。
【0036】
一次転写ロール18Y、18M、18C、18Kは、中間転写ベルト16を挟んでそれぞれの画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kの感光体28(28Y、28M、28C、28K)と対向配置されている。また、一次転写ロール18Y、18M、18C、18Kは、給電ユニット(図示省略)によって、トナー極性とは逆極性(本実施形態では一例として正極性)の転写バイアス電圧が印加されるようになっている。なお、二次転写ロール20も、給電ユニットによって、トナー極性とは逆極性の転写バイアス電圧が付与されるようになっている。
【0037】
また、中間転写ベルト16の駆動ロール22が設けられている位置の外周面には、クリーニング装置30が設けられている。クリーニング装置30は、クリーニングブラシ32及びクリーニングブレード34を備えており、クリーニングブラシ32及びクリーニングブレード34によって、中間転写ベルト16上の残留トナーや紙粉等を除去するようになっている。
【0038】
さらに、中間転写ベルト16のテンションロール24が設けられている位置の外周面には、濃度センサ112が設けられている。この濃度センサ112は、中間転写ベルト16の幅方向の両端部に設けられ、主として、画像濃度やトナー濃度(TC)の状態を観察するための基準画像の濃度を検出する約目を有している。
【0039】
プリンタ10の記録用紙Pの搬送経路と反対側の側面近傍には、プリンタ10の各部の駆動制御を行う制御ユニット36が設けられている。また、画像形成ユニット12の下側には、帯電された感光体28の表面に各色に対応した露光光L(LY、LM、LC、LK)を照射して静電潜像を形成する露光ユニット40が設けられている。
【0040】
露光ユニット40は、4つの画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kに共通の1つのユニットで構成されており、4つの半導体レーザ(図示省略)を各色の色材階調データに応じて変調して、これらの半導体レーザから露光光LY、LM、LC、LKを階調データに応じて出射するように構成されている。なお、露光ユニット40は、各画像形成ユニット12毎に個別に設けてもよい。
【0041】
また、露光ユニット40は、矩形のフレーム38で密閉されており、内部には、各露光光Lを主走査方向に走査するためのfθレンズ(図示省略)及びポリゴンミラー42が設けられている。フレーム38の上面には、4本の露光光LY、LM、LC、LKを、各画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kの感光体28に向けて出射するためのガラス窓44Y、44M、44C、44Kが設けられている。
【0042】
ここで、露光ユニット40の半導体レーザから出射された露光光LY、LM、LC、LKはポリゴンミラー42に照射され、このポリゴンミラー42から反射した光がfθレンズを介して偏向走査される。ポリゴンミラー42で偏向走査された露光光LY、LM、LC、LKは、結像レンズ及び複数枚のミラーからなる光学系(図示省略)を介して、感光体28上の露光ポイントに走査露光される。
【0043】
一方、露光ユニット40の下側には、記録用紙Pが収納された給紙カセット46が配置されている。また、給紙カセット46の端部から鉛直方向上方には、記録用紙Pを搬送する用紙搬送路50が設けられている。
【0044】
用紙搬送路50には、記録用紙Pを給紙カセット46から送り出す給紙ロール48と、記録用紙Pを1枚ずつ給紙させる用紙分離搬送用のロール対52と、中間転写ベルト16上の画像の移動タイミングと記録用紙Pの搬送タイミングを合わせる用紙先端位置合わせロール54とが設けられている。ここで、給紙カセット46から給紙ロール48によって順次送出された記録用紙Pは、用紙搬送路50を経由して、間欠的に回転する用紙先端位置合わせロール54によって中間転写ベルト16の二次転写位置まで一旦搬送され、停止される。
【0045】
二次転写ロール20の上方には、定着装置60が設けられている。定着装置60は、加熱された加熱ロール62と、この加熱ロール62に圧接された加圧ロール64とを備えている。ここで、二次転写ロール20によって各色のトナー像が転写された記録用紙Pは、加熱ロール62と加圧ロール64との圧接部で熱及び圧力により定着され、記録用紙Pの搬送方向下流側に設けられた排出装置の一例としての排紙ロール66によって、プリンタ10の上部に設けられた排出部68に排出されるようになっている。また、トナー像の二次転写工程が終了した中間転写ベルト16の表面は、クリーニング装置30によって残留トナーや紙粉等が除去される。
【0046】
図2に示される如く、制御ユニット36は、メインコントロール部70を含んでいる。メインコントロール部70は、CPU72、RAM74、ROM76、I/O(入出力部)78、及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス80を有している。
【0047】
I/O78には、前記プリンタ10における搬送系や、画像形成のための走査露光系、現像系等の各処理系を制御し、管理するための印刷制御管理部88が接続されている。
【0048】
より詳細には、印刷制御管理部88には、搬送制御部100、走査露光制御部102、現像制御部104、転写制御部106、定着制御部108が接続され、各部の制御を管理している。
【0049】
印刷制御管理部88は、I/O78ではなく、直接バス80に接続された構成であってもよい。また、ここでは、印刷に関する制御を印刷制御管理部88に集約する構成としたが、当該制御をメインコントロール部70で実行する構成であってもよい。
【0050】
また、I/O78には、UI(ユーザ・インターフェイス)82が接続されている。UI82は、ユーザーからの入力指示を受け付け、かつユーザーへ画像処理に関する情報を報知する役目を有している。さらに、I/O78には、ハードディスク84が接続されている。また、I/O78は、I/F86を介して通信回線網90に接続されている。
【0051】
ここで、濃度センサ112を用いた画像濃度制御のための基準画像と、トナー濃度制御のための基準画像とは、基本的にその形状は形成手順に違いはないが、その濃度パターンに違いがある。
【0052】
画像濃度制御のための基準画像は、低濃度から高濃度までの段階的な複数の基準画像を形成し、露光量や現像バイアス等に基づく画像濃度特性曲線を描き、全濃度域でそれぞ適正な補正値を策定する。
【0053】
一方、トナー濃度制御のための基準画像は、基本的には単一濃度でよい。しかしながら、トナー濃度を広いレンジ(例えば、2wt%〜8wt%)で検出すると共に、周囲環境の変動があっても検出可能となるように、濃度センサ112の検出可能範囲(ダイナミックレンジ)の中央に設定することが好ましい。この結果、中間調(グレー画像)の基準画像を適用している。
【0054】
さらに、トナー濃度制御では、トナーカートリッジ11Y、11M、11C、11Kの残量を判別している。
【0055】
図3は、トナー濃度−中間調基準画像特性曲線を示しており、実線Aが定常状態における特性である。
【0056】
トナー濃度の目標を0.8wt%とすると、このときの中間調基準画像濃度を検出した濃度センサ112の出力値の目標は、縦軸数値102〜105程度に設定される。この数値は、大きくなればなるほど、濃度が薄いことを示す数値である。
【0057】
トナー濃度に変化、特に中間調基準画像濃度が薄くなっていくと、目標値に補正するべく、画像形成時にトナーを供給するとき増量することで、トナー濃度を目標値に維持する。これがトナー濃度制御である。なお、トナー濃度制御では、当然中間調基準画像濃度が濃くなる場合もあり、この場合は現像部内のトナーを廃棄する。
【0058】
ところが、トナー濃度が目標に至らず、予め定めた第1のしきい値S1よりも低濃度になった場合(図3の黒丸(●)印Cの位置参照)、トナーディスペンサを強制的に駆動して、トナーを補給し、その回復状態を観察する。観察の結果、第2のしきい値S2を超えて高濃度になれば(図3の白丸(○)印Dの位置参照)、トナー残量があると判定する。一方、観察の結果、第2のしきい値S2を超えない場合(図3のばつ(×)印Eの位置参照)、トナーカートリッジ11Y、11M、11C、11Kの残量が不足している判定する。
【0059】
ところで、前記トナー濃度制御の基礎でもあり、前記残量判定のための基礎でもある、トナー濃度−中間調基準画像濃度特性は、現像性により変化する。
【0060】
現像性とは、現像剤の種類や、周囲環境、画像形成装置の仕様を含めた変動である。
【0061】
トナー濃度と基準画像濃度との相関関係は、図3に示される如く、正比例的に推移するが(y=ax+b)、現像剤の種類や、周囲環境、画像形成装置の仕様を含めた、現像性により、特性が平行移動する。言い換えれば、前記正比例の公式の傾きaは変わらないが、定数bが変動し、例えば、二点鎖線Bのようにシフトする。なお、トナー濃度と基準画像濃度との相関関係は、正比例に限定されるものではなく、二次関数的に変化する場合もある。いずれにしても、所謂右肩下がりの曲線であり、現像性による変動は平行移動となる。
【0062】
このシフトした特性曲線(図3の二点鎖線B)の下で、トナー残量判定を行うと、前記第1のしきい値S1を超えるときのトナー濃度(図3の黒丸(●)印C’が、平常状態の特性曲線(図3の実線A参照)のときに第1のしきい値S1を超えるときのトナー濃度よりも、さらに低濃度側になり、この差分が検出遅れとなって、トナー残量判定精度を悪化させる原因となっている。
【0063】
そこで、本実施の形態では、高濃度基準画像の濃度センサ112で検出することで、前記トナー濃度−中間調基準画像濃度特性曲線の変化(主として、低濃度側への変化)を第3のしきい値と比較することで判定している。
【0064】
図4に示される如く、高濃度基準画像(所謂黒ベタ画像)では、トナーが充分に残っており、適正トナー濃度以上に保持されているときは、高濃度基準画像を検出した濃度センサ112の出力値は、一定のレベルで推移するが、トナー濃度が4wt%〜5wt%程度になると、徐々に低濃度側に変化する特性を持っている。
【0065】
そこで、高濃度基準画像のトナー濃度が4wt%〜5wt%となる濃度センサ112の出力値を第3のしきい値とし、第3のしきい値S3を超えて低濃度となった場合に、現像性の変動が発生していると判断し、図3の第1のしきい値S1及び第2のしきい値S2を一定の割合で高濃度側にシフトする(図3の二点鎖線で示した第1のしきい値(補正)S1Hと、第2のしきい値(補正)S2H参照)。
【0066】
この第1のしきい値(補正)S1Hと第2のしきい値(補正)S2Hとすることで、図3の△印Fで強制トナー補給とすることが可能であり、定常状態の特性と同一トナー濃度での判定となる。
【0067】
図5は、前記印刷制御管理部88における、トナー濃度制御とトナー残量監視制御のための機能ブロック図である。なお、この図5の各ブロックは機能別に分類したものであり、印刷制御管理部88のハード構成を限定するものではない。
【0068】
印刷制御管理部88には、画像形成実行制御部114が設けられ、前記搬送制御部100、走査露光制御部102、現像制御部104、転写制御部106、定着制御部108がそれぞれ接続されている。
【0069】
この画像形成実行制御部114には、トナー濃度制御部116が接続されている。このトナー濃度制御部116には、前述した図3に示すトナー濃度−中間調基準画像濃度特性マップが格納されている。このトナー濃度制御部116には、画像形成実行制御部114から、トナー濃度制御実行指示信号が入力されるようになっており、このトナー濃度制御実行指示信号に基づいて、トナー濃度制御部116は起動する。
【0070】
トナー濃度制御部116が起動すると、まず、画像形成実行制御部114に対して、中間基準画像を形成するための指示信号を送出すると共に、高濃度基準画像形成指示部118に対して、実行指示信号を送出する。高濃度基準画像形成指示部118では、この実行指示信号に基づいて、前記画像形成実行制御部114に対して、高濃度基準画像を形成するための指示信号を送出する。
【0071】
この結果、画像形成実行制御部114では、搬送制御部100、走査露光制御部102、現像制御部104、転写制御部106、定着制御部108を制御して、中間調基準画像と高濃度基準画像のそれぞれを、例えば、中間転写ベルト16上に形成する。
【0072】
形成された中間調基準画像と高濃度基準画像は、中間転写ベルト16の搬送方向に沿って一列に形成されるようになっており、それぞれ時間差で濃度センサ112によって濃度が検出される。
【0073】
中間基準画像の濃度センサ112による検出値は、前記トナー濃度制御部116へ送出されトナー濃度制御管理が実行される。
【0074】
前記高濃度基準画像形成指示部118は、高濃度基準画像検出値読出部120に接続されている。高濃度基準画像形成指示部118では、前記画像形成実行制御部114に対して、高濃度画像形成指示を出すときに、高濃度基準画像検出値読出部120に対して、画像形成実行制御部114から高濃度基準画像の濃度センサ112による検出値を読み出すように指示する。
【0075】
前記トナー濃度制御部116は、トナー残量判定部122に接続されており、前記画像形成実行制御部114から得た濃度センサ検出値を、そのままトナー残量判定部122へ送出する。トナー残量判定部122は、しきい値補正実行部124を介してしきい値メモリ126に接続されている。
【0076】
トナー残量判定部122は、しきい値補正実行部124での補正実行がない場合(トナー濃度−中間調基準画像濃度特性が、図3の実線Aの定常状態の場合)は、しきい値メモリ126に記憶された第1のしきい値S1と第2のしきい値S2とを読み出し、トナー残量の判定を実行する。
【0077】
すなわち、第1のしきい値S1よりも低濃度になった場合(図3の実線A上の黒丸(●)印C参照)、現像制御部104へ、トナーディスペンサの強制駆動を指示し、トナーを強制補給すると共に、トナー濃度制御を継続して、このトナーの強制補給の結果、トナー濃度がどこまで回復するかを観察する。
【0078】
観察の結果、第2のしきい値S2よりも高濃度になった場合(図3の実線A上の白丸(○)印D参照)は、トナー残量有りと判定し、第2のしきい値S2よりも低濃度側に維持された場合(図3の実線A上のばつ(×)印E参照)は、「トナー残量無し(空)」と判定する。
【0079】
トナー残量判定部122は、報知制御部128に接続されており、トナー残量判定において、「トナー残量無し(空)」と判定(空検知)した場合、報知制御部128へ報知指示信号を送出する。報知制御部128では、この報知指示に基づいて、トナーカートリッジ11Y、11M、11C、11Kが空であることを報知するように、UI82を制御する。
【0080】
一方、前記高濃度基準画像検出値読出部120によって読み出した高濃度基準画像の濃度センサ112による検出値は、比較部130に送出されるようになっている。
【0081】
比較部130には、前述した図4に示すトナー濃度−高濃度基準画像濃度特性マップが格納されている。
【0082】
比較部130では、前記高濃度基準画像検出値読出部120から高濃度基準画像から濃度センサ112で検出した検出値が入力されると、前記しきい値メモリ126から第3のしきい値S3を読み出し、両者を比較するようになっている。
【0083】
この比較結果は、しきい値補正要否判定部132へ送出され、しきい値(すなわち、第1のしきい値S1と第2のしきい値S2)の補正が必要か否かを判定する。
【0084】
補正が必要となる判定は、図4に示すように、高濃度基準画像から読み取った検出値が、第3のしきい値S3を超えたと判断されたとき、現像性に関わらず、トナー濃度が4wt%〜5wt%以下になったときである。
【0085】
このような場合、定常状態のトナー濃度−中間調基準画像濃度特性曲線(図3の実線A参照)から、低濃度状態のトナー濃度−中間調基準画像濃度特性曲線(図3の二点鎖線B参照)に変位したと考えられ、この二点鎖線Bの特性曲線に合う、第1のしきい値(補正)S1H及び第2のしきい値(補正)S2Hとするべく、しきい値補正要否判定部132では、しきい値補正実行部124に対して、補正実行信号を送出する。
【0086】
しきい値補正実行部124では、この補正実行信号に基づいて、前記トナー残量判定部122が第1のしきい値S1及び第2のしきい値S2を読み出すとき、補正されて読み出すことになる(第1のしきい値(補正)S1H及び第2のしきい値(補正)S2H)。
【0087】
以下に本実施の形態の作用を説明する。
【0088】
(画像形成手順)
画像データは、さらにイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の色材階調データに変換され、露光ユニット40に順次出力される。露光ユニット40では、各色の色材階調データに応じて各露光光Lを出射して、各感光体28に走査露光を行い、潜像(静電潜像)が形成される。
【0089】
感光体28上に形成された静電潜像は、現像部によって、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像として顕在化される(現像)。そして、各画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kの感光体28上に順次形成された各色のトナー像は、4つの一次転写ロール18Y、18M、18C、18Kによって中間転写ベルト16上に順次多重転写される。
【0090】
中間転写ベルト16上に多重転写された各色のトナー像は、二次転写ロール20によって、搬送されてきた記録用紙P上に二次転写される。そして、記録用紙P上の各色のトナー像が定着装置60で定着され、定着後の記録用紙Pは、排出トレイ68に排出される。
【0091】
トナー像の転写工程が終了した後の感光体28の表面は、クリーニングユニット76によって残留トナーや紙粉等が除去される。また、中間転写ベルト16上の残留トナーや紙粉等が、クリーニング装置30で除去される。
【0092】
図6は、本実施の形態に係るトナー濃度制御に伴うトナーカートリッジ11Y、11M、11C、11Kの空検知判定制御を示すフローチャートである。
【0093】
ステップ200では、トナー濃度制御時期か否かが判断され、否定判定されると、ステップ202へ移行して、前回のトナー濃度制御時において、現像剤(トナー)を強制補給したか否かが判断される。このステップ202で否定判定された場合は、このルーチンは終了する。
【0094】
(トナー濃度制御+空判定予測)
ステップ200で肯定判定されると、トナー濃度制御時期+空判定予測時期であると判断し、ステップ204へ移行して中間調基準画像を形成する指示を行い、次いでステップ206へ移行して高濃度基準画像を形成する指示を行い、ステップ208へ移行する。この指示によって、中間転写ベルト16上には、中間調基準画像と高濃度基準画像が形成される。
【0095】
ステップ208では、濃度センサ112を用いて、前記ステップ204、206で指示し、かつ中間転写ベルト16上に形成された中間調基準画像の濃度Pm、並びに高濃度基準画像の濃度Pdを検出する。
【0096】
次のステップ210では、濃度センサ112の検出値Pm、Pdを読み込み、次いでステップ212へ移行して、第3のしきい値S3を読み出して、ステップ214へ移行する。
【0097】
ステップ214では、高濃度基準画像の濃度Pdと、第3のしきい値S3とを比較する。比較の結果、Pd≧S3と判定された場合は、トナー濃度−中間調基準画像濃度特性曲線が、図3の定常状態(実線A)から低濃度状態(二点鎖線B)に移行していると判断し、ステップ216で第1のしきい値S1を補正してS1Hとし、次いでステップ218へ移行して、第2のしきい値S2を補正してS2Hとして、ステップ222へ移行する(制御上は、SS1←S1H、SS2←S2Hとする)。この補正は、予め定められた割合で一律に行う場合、略60%程度高濃度側にシフトすればよい。なお、一律でシフトせず、細かい演算の下でシフトさせるようにしてもよい。
【0098】
また、前記ステップ214での比較の結果、Pd>S3と判定された場合は、トナー濃度−中間調基準画像濃度特性曲線が、図3の定常状態(実線A)を維持していると判断し、ステップ220へ移行して、現在第1のしきい値(補正)S1Hと第2のしきい値(補正)S2Hとなっている場合は、その補正を解除し(制御上は、SS1←S1、SS2←S2とする)、ステップ222へ移行する。
【0099】
ステップ222では、中間調基準画像に基づくトナー濃度制御を実行する。このトナー濃度制御は、トナー濃度が薄い場合は、画像形成時にトナーを増量し、トナー濃度が濃い場合は、現像部に貯留されているトナーを廃棄して減量する、といった従前の制御であるため、詳細は省略する。
【0100】
次のステップ224では、中間調基準画像の濃度Pmと現在の第1のしきい値SS1(S1又はSH1)とを比較する。この比較の結果、Pm<SS1の場合は、現像剤が空になる可能性はないため、このルーチンは終了する。また、ステップ224での比較の結果、Pm≧SS1の場合は、現像剤が空に近い(ニヤエンプティ)可能性があるため、ステップ226へ移行して、トナーディスペンサを駆動して、強制的に現像剤を補給するように指示し、このルーチンは終了する。
【0101】
(強制補給後の空判定)
一方、前記ステップ202で肯定判定されると、強制補給後の空判定時期と判断し、ステップ228へ移行して中間調基準画像を形成する指示を行い、ステップ230へ移行する。この指示によって、中間転写ベルト16上には、中間調基準画像形成される。
【0102】
ステップ230では、濃度センサ112を用いて、前記ステップ228で指示し、かつ中間転写ベルト16上に形成された中間調基準画像の濃度Pmを検出する。
【0103】
次のステップ232では、濃度センサ112の検出値Pmを読み込み、ステップ234へ移行する。
【0104】
ステップ234では、中間調基準画像の濃度Pmと現在の第2のしきい値SS2(S2又はSH2)とを比較する。この比較の結果、Pm<SS2の場合は、強制補給によってトナー濃度が戻ったため、現像剤が空になる可能性はなく、このルーチンは終了する。また、ステップ234での比較の結果、Pm≧SS2の場合は、強制補給してもトナー濃度が回復しないため、現像剤が空であると判断し、ステップ236へ移行して、空判定報知制御を実行し、このルーチンは終了する。
【0105】
なお、本実施の形態では、現像剤の強制補給が実行された場合、中間調基準画像のみを形成し、その濃度が第2のしきい値S2(又はS2H)を下回ったか否かを判断するようしたが、次のトナー濃度制御時期に実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0106】
P 記録用紙
10 プリンタ(画像形成装置)
11Y、11M、11C、11K トナーカートリッジ
12Y、12M、12C、12K 画像形成ユニット
14 転写部
16 中間転写ベルト
18Y、18M、18C、18K 一次転写ロール
20 二次転写ロール
28Y、28M、28C、28K 感光体
36 制御ユニット
40 露光ユニット
60 定着装置
70 メインコントロール部
88 印刷制御管理部
100 搬送制御部
102 走査露光制御部
104 現像制御部
106 転写制御部
108 定着制御部
114 画像形成実行制御部(強制補給手段)
116 トナー濃度制御部
118 高濃度基準画像形成指示部
120 高濃度基準画像検出値読出部
122 トナー残量判定部(判定手段)
124 しきい値補正実行部(補正手段)
126 しきい値メモリ
128 報知制御部
130 比較部(補正手段)
132 しきい値補正要否判定部(補正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像保持体に対峙して配置され、トナー成分とキャリア成分とによって生成された現像剤によって現像された中間調画像データに基づく基準画像の濃度検出する濃度センサと、
前記濃度センサで検出した基準画像の濃度が、目標濃度よりも低濃度側、かつ相対的に目標濃度に遠い濃度である第1のしきい値よりも低濃度となった場合に、強制的に少なくともトナー成分を補給する強制補給手段と、
前記強制補給手段による強制補給後において、前記濃度センサで検出した基準画像の濃度が、目標濃度よりも低濃度側、かつ相対的に目標濃度に近い濃度である第2のしきい値よりも高濃度にならない場合、トナーの残量が不足と判定する判定手段と、
前記像保持体に、前記基準画像よりも高濃度階調データで形成した高濃度基準画像を、前記濃度センサで検出したときの濃度が、予め定めた第3のしきい値を超えて低濃度となった場合に、前記第1のしきい値及び第2のしきい値を前記目標濃度側に近づけるように補正する補正手段と、
を有するトナー残量監視装置。
【請求項2】
前記中間調画像データが、全階調幅を均等に3分割したときの中間に位置する領域の階調の画像データである前記請求項1に記載のトナー残量監視装置。
【請求項3】
前記高濃度階調データが、全階調幅を複数分割したときの最も高濃度側に位置する領域の階調の画像データである前記請求項1又は請求項2に記載のトナー残量監視装置。
【請求項4】
前記補正手段が、元の第1のしきい値及び第2のしきい値に対して60%とする前記請求項1〜請求項3の何れか1項記載のトナー残量監視装置。
【請求項5】
前記第3のしきい値よりも高濃度となった時点で、前記第1のしきい値及び第2のしきい値を元のレベルに復帰させる復帰手段をさらに有する前記請求項1〜請求項4の何れか1項記載のトナー残量監視装置。
【請求項6】
前記請求項1〜請求項5の何れか1項記載のトナー残量監視装置を搭載した画像形成装置。
【請求項7】
コンピュータに、前記請求項1〜請求項5の何れか1項記載のトナー残量監視を実行させるトナー残量監視プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−217379(P2010−217379A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62695(P2009−62695)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】