説明

トラクタのエンジンボンネット構造

【課題】 エンジンボンネットが不用意に閉じないように注意することなくメンテナンス作業に専念できるようにする。
【解決手段】 支点b周りに上下に揺動開閉自在なエンジンボンネット26とエンジンルームR内の固定部位に亘ってガススプリング36を架設し、エンジンボンネット26をガススプリング36の付勢伸長力によって開放姿勢に保持可能に構成するとともに、閉じ姿勢のエンジンボンネット26の遊端側を係止ロック機構40で係止保持可能に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用あるいは草刈り用に利用されるトラクタのエンジンボンネット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタのエンジンボンネットは、その一端上部の支点を中心にして上下に揺動開閉されるものが多く、エンジンルーム内のメンテナンス作業においては、持上げ開放したエンジンボンネットを支持棒で支えて開放姿勢に保持するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−61168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようにエンジンボンネットを支持棒で支えて開放姿勢に保持する手段は構造が簡単で安価に実施することができ、実用上の利便性が高いものであるが、メンテナンス作業中に支持棒に触れてエンジンボンネットが不用意に閉じてしまわないように注意してメンテナンス作業を行う必要があった。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、エンジンボンネットが不用意に閉じないように注意することなくメンテナンス作業に専念できるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、支点周りに上下に揺動開閉自在なエンジンボンネットとエンジンルーム内の固定部位に亘ってガススプリングを架設し、エンジンボンネットをガススプリングの付勢伸長力によって開放姿勢に保持可能に構成するとともに、閉じ姿勢のエンジンボンネットの遊端側を係止ロック機構で係止保持可能に構成してあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、ガススプリングによって開放保持されたエンジンボンネットは外力が作用すると上下に多少揺れ動きはするが、意識的に引き下げない限り勝手に閉じることはなく、メンテナンス作業中にエンジンボンネットの閉じ作動に特に気をつける必要はない。
【0007】
従って、第1の発明によると、エンジンボンネットが不用意に閉じないように注意することなくメンテナンス作業に専念できる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記支点を前記エンジンボンネットの前部に設けるとともに、このエンジンボンネットの前端部に前照灯を装備してあるものである。
【0009】
上記構成によると、前照灯への電線を支点近くに挿通することでエンジンボンネットを開閉を許容する電線の余裕を少なくすることができ、電線の振れ動きに起因するコネクタ抜けや損傷を回避することができる。
【0010】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
前記ガススプリングをボンネット横幅方向の中央付近に配備してあるものである。
【0011】
上記構成によると、エンジンボンネットを開放してのメンテナンス作業においてガススプリングが作業に邪魔になることが少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に、草刈機仕様に構成されたトラクタの全体側面が示されている。この草刈機は、前輪1および後輪2を備えた四輪駆動式のトラクタ本機3における前後輪間に、四連リンク構造のリンク機構4を介してモーアMが昇降自在に吊り下げ支持された構造となっている。また、トラクタ本機3の前部にはエンジン6を収容した原動部7が配備されるとともに、トラクタ本機3の後方には、モーアMからダクト10を介して風力搬送されてきた刈草を回収する集草装置11が連結支持されている。
【0013】
集草装置11は、前記ダクト10を介して搬送されてきた刈草を案内カバー12で案内して集草容器13に回収するよう構成されたものであり、その集草フレーム15がトラクタ本機3の後部に脱着自在に連結されている。
【0014】
前記集草フレーム15の上部に横架した横フレーム15aから集草バッグ装着用の支持アーム15bが後向き片持ち状に延出されるとともに、集草フレーム15の上部に備えたブラケット16に、前記案内カバー12が支点a周りに上下に揺動開閉自在に取り付けられ、この案内カバー34に前記ダクト10が接続されている。
【0015】
集草容器13は通気性の高い布材あるいは網材で角形バッグ状に縫製されており、その上端開口縁に金属棒からなる芯枠17を装着してバッグ口縁を矩形に保持するよう構成されている。そして、芯枠17で保形された容器口縁を前記支持アーム15bの上面に載せつけ支持させるとともに、降ろされた案内カバー12の下端縁で容器口縁を上から支持することで、集草容器13の浮き上がり移動が阻止されるようになっている。
【0016】
また、図8に示すように、集草フレーム15のブラケット16には、バネ18でスライド付勢された取っ手付きのロックピン19が装備されている。このロックピン19は、案内カバー12が閉じられている状態では案内カバー12の基部に備えられたヒンジ金具20の側面に接当しており、案内カバー12が容器脱着が可能な所定の開放位置まで持上げ揺動されると、ロックピン19がヒンジ金具20のロック孔21に自動係入して案内カバー12を開放姿勢に保持するよう構成されている。そして、ロックピン19をバネ18に抗してスライド操作してロック孔21から抜き出すことで案内カバー12を閉じることができる。
【0017】
図2に示すように、前記原動部7には、エンジンルームRを形成する下部カバー25と、前方の支点b周りに上下に揺動開閉可能なエンジンボンネット26が備えられており、形成されたエンジンルームRにラジエータ8を後向きにして前記エンジン6が収容配置されている。また、原動部7の後方に、前輪操向用のステアリングハンドル27が挿通されたパネルカバー28と、その下方に連なるセンターカバー29が配備されており、このセンターカバー29に形成された防塵構造の通気口30から外気が吸引されてラジエータ8に導かれるようになっている。
【0018】
前記下部カバー25は平面形状が後向きに開放されたコの字形に形成されて機体フレーム31に連結固定されており、この下部カバー25の前面および左右側面の前部にはエンジンルームR内の熱気を排出する網目構造の通気口32が形成されている。
【0019】
前記エンジンボンネット26は、機体フレーム31の前部から立設された固定支持枠33の上端部にヒンジ金具34を介して前記支点b周りに揺動可能に枢支連結されており、その前端部に左右一対の前照灯35が取り付けられて、図示されない電線が支点b付近を通るように配線されている。
【0020】
エンジンボンネット26における前端部内面に取付けられた支点金具23の左右中央部位と前記固定支持枠33の左右中央部位から延出されたステー33aとに亘ってガススプリング36が架設され、図3に示すように、エンジンボンネット26がガススプリング36の伸長付勢力によってメンテナンス作業が可能な開放位置で安定保持することができるように、エンジンボンネット26の重量に対応してガススプリング36の伸長付勢特性が設定されている。
【0021】
また、エンジンボンネット26はその遊端側に配備された係止ロック機構40によって閉じ姿勢に保持されるようになっている。つまり、図4に示すように、エンジンボンネット26における後方遊端部の中央部位には係止金具37が装着固定されるとともに、エンジンルームRの後端上方箇所には、前記係止金具37に後方から係合されるロック金具38が支点c周りに前後回動可能に枢着されている。このロック金具38はバネ39によって係合ロック方向に回動付勢されており、ガススプリング36に抗して閉じられたエンジンボンネット26の係止金具37にロック金具38が係合されることで、エンジンボンネット26が閉じ位置に保持されるようになっている。
【0022】
なお、エンジンボンネット26の後部内面の左右には圧縮コイルバネ41が下向きに備えられるとともに、エンジンルームRの後部上方箇所には前記圧縮コイルバネ41に対向するバネ受け部材42が固定配備されており、エンジンボンネット26を閉じ位置に係止ロックすると、バネ受け部材42で受け止められた圧縮コイルバネ41が圧縮変形されて、エンジンボンネット26が上方に付勢され、係止金具37とロック金具38との係合箇所でのガタつきが防止されるようになっている。
【0023】
前記ロック金具38には操作部38aが連設されてパネルカバー28の上方に突出されており、この操作部38aを後方に押し操作してロック金具38をバネ39に抗して後方に回動させることで、ロック解除されたエンジンボンネット26は圧縮コイルバネ41の弾性復元力によって少し持上げられてその後端が浮き上げられることになり、ここに手指をかけてエンジンボンネット26を大きく揺動開放するだけでガススプリング36によってその開放位置に保持される。
【0024】
ガススプリング36によって開放位置に保持されたエンジンボンネット26は外力が作用すると多少上下に揺れ動くが、意識的に引き下げない限り勝手に閉じることはなく、メンテナンス作業中にエンジンボンネットの閉じ作動に特に気をつける必要はない。
【0025】
〔他の実施例〕
【0026】
本発明は、エンジンボンネット26を後方の支点周りに上下揺動可能に配備した仕様のトラクタに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】草刈機仕様に構成されたトラクタの全体側面図
【図2】原動部の側面図
【図3】エンジンボンネットを開放した原動部の側面図
【図4】係止ロック機構の側面図
【図5】エンジンボンネットの前部支点周りの横断平面図
【図6】集草装置の側面図
【図7】上部カバーを開放した集草装置の側面図
【図8】開放ロック構造の横断平面図
【符号の説明】
【0028】
26 エンジンボンネット
35 前照灯
36 ガススプリング
40 係止ロック機構
R エンジンルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支点周りに上下に揺動開閉自在なエンジンボンネットとエンジンルーム内の固定部位に亘ってガススプリングを架設し、エンジンボンネットをガススプリングの付勢伸長力によって開放姿勢に保持可能に構成するとともに、閉じ姿勢のエンジンボンネットの遊端側を係止ロック機構で係止保持可能に構成してあることを特徴とするトラクタのエンジンボンネット構造。
【請求項2】
前記支点を前記エンジンボンネットの前部に設けるとともに、このエンジンボンネットの前端部に前照灯を装備してある請求項1記載のトラクタのエンジンボンネット構造。
【請求項3】
前記ガススプリングをボンネット横幅方向の中央付近に配備してある請求項1または2記載のトラクタのエンジンボンネット構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−290121(P2006−290121A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112362(P2005−112362)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】