説明

トラック用フォークローダ

【課題】特にエアサスペンション機構を備えたトラックで発生し易い、トラックの荷台に貨物を移載した直後の荷台のリバウンドにより、貨物からフォークが上手く抜き取れない現象の発生を抑える。
【解決手段】ワイヤ19を巻き取る又は巻き戻すことによりフォーク15を上下させるフォーク昇降機構16を備えたフォークローダ8であり、フォーク昇降機構16には、ワイヤ19に弛みが発生しないようにワイヤ19の張力を維持するテンション維持機構25が付加されている。フォーク15で持ち上げた貨物CBをトラック10の荷台10aに移載した後、貨物CBからフォーク15を引き抜く動作を開始する前にフォーク15の高さ位置が調整される。この調整は、貨物CBをトラック10の荷台10aに移載した後にフォーク15を上昇させて貨物CBのフォーク差込部6cと干渉しない高さ位置にフォーク15の高さ位置を調整することにより行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等の搬送車の荷台に荷役する、フォークリフトなどのフォークローダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場などにおいて、トラックの荷台に、典型的には段ボール箱が載置したパレットやコンテナを移載するのにフォークリフト等が用いられている。
【0003】
このようなトラック用フォークローダの適用例としては、例えば特許文献1に開示されるような荷積みシステムがある。この荷積みシステムにおいては、トラック用フォークローダがトラックの両側のレールを走行し、コンベア等に貯留された段ボール箱を積み上げたパレットをトラックの荷台の両側から積み込む作業を行う。
【0004】
従来、このようなフォークローダは、段ボール箱を積載したパレットを荷台に荷積みした後、フォークを後退させてパレットからフォークを引き抜く際に、パレットと干渉することが無いように、図10のフローチャートで示す手順で実行されていた。
【0005】
図10を参照して、段ボール箱を積載したパレットをフォークで持ち上げてトラックの荷台の所定位置にフォークローダを位置決めし、次いでフォークを前進させてトラックの荷台の真上に段ボール箱を位置させる荷積みの準備が整うと(S100)、フォークを下降させて段ボール箱をパレットと一緒にトラックの荷台に移載する(S101)。この移載は、フォークに設置した載荷センサの出力信号に基づいて判定され(S102)、載荷センサの出力信号によって移載を確認したらフォークの下降動が停止される(S103)。
【0006】
次いで、トラックを挟んで対向するフォークローダの荷降ろし動作が完了したか否かを確認して(S104)、これが確認し終わった段階で、フォークを後退させてパレットからフォークを抜き去る動作が実行され、このフォークを所定位置まで後退させる収納動作が完了する(S106)。
【特許文献1】特開2001-301984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トラックの後輪サスペンションは一般的にリーフスプリングが採用されているが、近年は、エアサスペンション機構で代表される流体サスペンション機構を付加したトラックが多くなっている。このエアサスペンション機構を備えたトラックは、オートレベリング機能によって積載荷重の大小に関わりなく荷台を一定の高さ位置に維持することができるだけでなく、地面からの突き上げを柔軟に吸収することができるため荷傷みを防止できるというメリットを備えている。
【0008】
しかし、流体サスペンション機構を備えたトラックにあっては、荷積みするときに、荷台に加わる急激な荷重変動によって荷台が一旦沈み込んだ後に跳ね上がるリバウンド現象を発生し易いという問題があり、このため、貨物(段ボール箱を積載したパレット)からフォークを抜き去る際に、フォークが貨物のフォーク差込部と干渉して、フォークの後退動に貨物が引きずられて荷台の所定の位置から位置ズレを発生する問題を招いていた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上述したフォークと貨物のフォーク差込部との干渉を招くことなく、荷積みした後に円滑にフォークを後退させることのできるフォークローダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した技術的課題は、本発明によれば、基本的には、
ワイヤを巻き取る又は巻き戻すことによりフォークを上下させるフォーク昇降機構を備えたフォークローダにおいて、
前記フォーク昇降機構に設けられ、前記ワイヤに弛みが発生しないように該ワイヤの張力を維持するテンション維持機構と、
フォークで持ち上げた貨物をトラックの荷台に移載した後、前記貨物からフォークを引き抜く動作を開始する前に前記フォークの高さ位置を調整する高さ位置調整制御手段とを備え、
該高さ位置調整制御手段が、前記貨物をトラックの荷台に移載した後に前記フォークを上昇させて前記貨物のフォーク差込部と干渉しない高さ位置に前記フォークの高さ位置を調整することを特徴とするフォークローダを提供することにより達成される。
【0011】
本発明は、特に、エアサスペンション機構を備えたトラックのように、トラックの荷台に貨物を移載した直後に荷台が沈み込み、次いで、跳ね上がるリバウンド現象が見られるトラックに対して効果的である。すなわち、リバウンド現象により荷台の高さ位置が上昇したとしても、これに合わせてフォークの高さ位置が調整されるため、フォークと貨物のフォーク差込部との干渉を招くことなく、荷積みした後に円滑にフォークを後退させることのできる。このことに加えて、荷台のリバウンドによりフォークが荷台側から突き上げられる現象が発生したとしても、フォーク昇降機構に上述のテンション機構を設けたことにより、ワイヤの弛みの発生を抑制することができ、これにより上述したフォークの高さ位置調整を円滑に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0013】
図1は、段ボール箱に詰めた製品をトラック用フォークローダを使ってトラックの荷台に荷積みするシステムの概要を示す。図示の荷積みシステムは例えば工場の製品出荷エリアに設置される。製品出荷エリア1は、建物2の出口2aに臨んでトラック停車ステーション3が設けられ、このトラック停車ステーション3よりも奥まった位置に段ボール箱貯留ステーション4が設けられている。トラック停車ステーション3と段ボール箱貯留ステーション4とは一直線上に連続して配置され、段ボール箱貯留ステーション4に対して2列のコンベア5、5を通じて段ボール箱CBが次々と送り込まれる。段ボール箱貯留ステーション4では、パレット6の上に複数の段ボール箱CBが積み上げられた状態にある。
【0014】
これら段ボール箱貯留ステーション4及びトラック停車ステーション3に沿って、その両側にレール7が敷設されている。レール7、7は、夫々、フォークローダ8の走行路を構成し、各レール7には、複数台のフォークローダ8が配置される他に、その先頭に1台の荷役開始位置指示台車9が配置されている。
【0015】
図2は、トラック10の荷台10aに対向して荷役位置に位置決めされたフォークローダ8を示す。図2を参照して、フォークローダ8は、段ボール箱貯留ステーション4の段ボール箱CBを搭載したパレット6を持ち上げて、パレット6を含む段ボール箱CBをトラック10の荷台10aに積み込む作業を行う。この積み込み作業は、トラック10の荷台10aの両側の煽り10bを倒した状態で行われる。
【0016】
フォークローダ8は移動用電動モータ11を備え、この電動モータ11を正転又は逆転させることにより前進又は後退することができる。このフォークローダ8は、ポール12の頂部に配置した集電子13を介してトロリー線(図示せず)から電源の供給を受けて自走することができる。なお、荷役開始位置指示台車9(図1)は、作業員が押すことにより移動する手押し台車で構成されており、この荷役開始位置指示台車9によって、先頭のフォークローダ8がトラック10に最初に荷役作業を行う位置を指示する。
【0017】
フォークローダ8は、フォーク15と、フォーク昇降機構16とを有し、フォーク昇降機構16は、フォーク15を上下動可能に支持するフォークマスト17に設けられ、このフォークマスト17の上端に回転自在に配置された中継プーリ18に掛け渡された昇降ワイヤ19の一端を、電動モータ20で駆動される巻き取りプーリ21で巻き取ることによりフォーク15を上昇させ、また、巻き取りプーリ21の昇降ワイヤ19を巻き戻すことでフォーク15を下降させることができる。
【0018】
フォークマスト17はレール7と直交する方向つまりトラック10の荷台10aを横断する方向に前進又は後退することができる。このフォークマスト17の動作は、電動モータを含むフォーク前後駆動機構22によって行われる。
【0019】
フォークマスト17には、また、ワイヤ19に一定の張力を作用させるテンション維持機構25が付加的に設けられている。図3は、フォークマスト17の部分を抽出した部分拡大図である。同図を参照して、テンション維持機構25は、フォークマスト17に支持された一対の定置プーリ26、27と、この定置プーリ26、27の間に配置された変位プーリ28とを有し、変位プーリ28は引っ張りバネ29によって付勢されている。
【0020】
フォーク昇降機構16にテンション維持機構25を付加することにより、フォーク15に下方から衝撃や突き上げ力Fが加わったときに、図4に示すように変位プーリ28がワイヤ19を押し込む方向に変位して、これによりワイヤ19に弛みが発生するのを防止することができる。
【0021】
図5を参照して、フォーク15の先端部において、その上面には載荷センサ35が設けられている。載荷センサ35は、フォーク15の先端部且つ上面に形成された凹所に配設された可動接触ボタン36と、この可動接触ボタン36を上方に向けて付勢するバネ(作図上の理由から図面に現れていない)とを含む接触式のセンサで構成され、可動接触ボタン36はフォーク15の上面から上方に僅かに突出した状態で配置されている。この可動接触ボタン36及びバネからなる載荷センサ35は、一例に過ぎず、可動接触ボタン36の代わりに、例えば金属片をアーチ状に湾曲させた接触子をフォーク15の上面から突出して配置するようにしてもよいし、光センサ等の非接触式センサで構成してもよい。
【0022】
引き続き図5を参照して、パレット6は、従来と同様に、互いに上下に離間して配置された上板6aと下板6bとを有し、この上板6aと下板6bとの間に、フォーク15を差し込むための一対の差込部6cが形成されている。この差込部6cの高さ寸法は、フォーク15に肉厚よりも若干大きくなるように設計されており、例えば、フォーク15の厚みが約40mmであるのに対して差込部9の高さ寸法は約80mmに設定されている。
【0023】
上記の形態のパレット6は一例に過ぎない。荷役する貨物が例えばコンテナ入りであれば、コンテナの下部に差込部6cを一体に形成してもよく、また、差込部6cを、例えばコンテナの底壁及びこの底壁から下方に延びる脚部とで構成した、下板6b無しの差込部6cであってもよい。
【0024】
上述した荷積みシステムは、図1に参照符号40で示すメイン制御盤及びこれに関連した操作盤41を有し、この操作盤41には、タッチパネルやテンキーなどの各種の入力手段が設けられ、この入力手段を使って、例えばトラック10の車種選択手段41aなどにより、現在トラック停車ステーション3に停車しているトラック10がエアサスペンション機構付きの車両であるか否か等の制御に必要なパラメータを入力することができる。
【0025】
図6は、フォークローダ8の制御に関する全体系統図である。図中、参照符号42は、フォークローダ8に搭載されたコントローラであり、コントローラ42には、フォーク15の昇降及び進退の制御を行う積込み制御部43と、フォークローダ8の走行の制御を行う走行制御部44とを備えている。
【0026】
積込み制御部43は、載荷センサ35などの信号を受けて制御信号を生成し、この制御信号をフォーク昇降機構16及びフォーク前後駆動機構22に供給することによりフォーク15の前後動及びフォーク15の昇降動を制御する。走行制御部44は、フォークローダ移動用モータ11の制御を行うことで、フォークローダ8の停止位置つまり作業位置及び走行速度を制御するものであり、この走行制御は、フォークローダ8に設けられた各種センサ(図示せず)からの信号に基づいて行われる。
【0027】
段ボール箱貯留ステーション4に貯留された段ボール入り製品をフォークローダ8を使ってトラック10の荷台10aに積み込む作業は次のようにして行われる。
【0028】
先ず、図1を参照して、段ボール箱貯留ステーション4には、2列のコンベア5、5から送り出された段ボール箱CBがパレット6の上に積み上げた状態で置かれており、この段ボール箱CBを積載したパレット6は2列に整列され、各列は、これに対応するレール7に沿って延びている。建物2の製品出荷エリアの出口2aを通じて入ってきたトラック10はバック(後退動)で停車ステーション3の所定位置に停車される。次いで、トラック10の荷台10aの両側壁を構成する煽り10bを倒すことによって荷台10aの左右の側方から荷役が可能な状態になる(図2)。
【0029】
このようにトラック10側の準備が終わった段階で、作業員は、荷役開始位置指示台車9をトラック10の荷台10aの前端位置に位置決めすると、フォークローダ8は、フォークローダ制御手段42による自動運転で、段ボール箱貯留ステーション4に置かれている、段ボール箱CBを積載したパレット6を1個ずつ持ち上げて、トラック10の荷台10aの前端から後方に向けて荷積み作業を行う。
【0030】
フォークローダ8の自動運転では、先頭に位置するフォークローダ8は、荷役開始位置指示台車9を検出することにより、その停止位置が制御される。後続のフォークローダ8の停止位置は、その直ぐ前方のフォークローダ8を検出することにより制御される。左右のレール7、7に配置された各フォークローダ8は互いに独立して貨物の荷積み作業を実行する。
【0031】
次にフォークローダ8の荷積み制御を説明する前に、トラック10について説明すると、トラック10は、後輪のサスペンション機構として一般的にリーフスプリングが採用されているが、近年、クッション性に優れた流体式サスペンション(典型的にはエアサスペンション)を付加したトラックが多くなっている。エアサスペンションは、既知のように、一般的に自動レベリング機構を備えており、積み荷の積載重量の大小に関わりなく車高を一定に維持することができるだけでなく、凸凹道などの悪路で路面からの衝撃を緩和する「柔らかさ」を提供できるという特性によって荷物の傷みを抑制することができる。
【0032】
フォークローダ8を使って、数多くの製品入り段ボール箱CBを積載したパレット6をトラック10の荷台10aに積み込んだ瞬間、パレット6を含む段ボール箱CBの荷重が一気に荷台10aに作用し、これによりエアサスペンションが沈み込み動作を行った後にエアサスペンションの跳ね上がり(リバウンド)現象が発生し易い。このリバウンドの量は車両毎に異なる。このような荷台10aの跳ね上がり現象が発生した場合でも、フォーク15とパレット6との干渉を防止しつつフォークローダ8の円滑な動作を行う制御が実行される。
【0033】
図7は、トラック10の荷台10aに荷積みする際のフォークローダ8の制御の一例を示すフローチャートである。
【0034】
フォークローダ8が、段ボール箱貯留ステーション4からパレット6を含む段ボール箱CBを持ち上げてトラック10の荷台10aの所定の位置までアクセスし、次いで、フォーク15を前進させて、トラックの荷台10aの上に荷積みする動作が完了すると(S10)、フォーク15の下降動作が開始され(S11)、フォーク15の下降によって、段ボール箱CBを積載したパレット6がトラック10の荷台10aの上に移載される。段ボール箱を積んだパレット6の荷重がフォーク15から荷台10aに移る、段ボール箱を積んだパレット6が荷台10aに乗り移った着床状態は、フォーク15の先端部に配置した載荷センサ35の可動接触ボタン36への荷重が無くなってバネ力によって可動接触ボタン36が上方に変位することで載荷センサ35がOFF信号を出力することで検知することができる(S12)。この載荷センサ35からのOFF信号を受けて、フォーク15の下降動作が停止される(S13)。
【0035】
次のステップ(S14)で、荷台10aの反対側に位置するフォークローダ8の荷降ろし動作が完了したか否かが判断される。つまり、トラック10の荷台10aを挟んで対向する位置で作業を行っているフォークローダ8のフォーク15が下降して、段ボール箱を積んだパレット6を荷台10aに着床させたか否かの判別が行われ、YESになった段階で次のステップS15に移行する。これは、対向のフォークローダ8の荷降ろし、つまり段ボール箱を積んだパレット6を荷台10aに移載することに伴う影響を排除するためのものであり、したがって段ボール箱を積んだパレット6を荷台10aに着床させた後一定時間経過して、荷台10aの上下動が無くなった後に、次のステップS15に移行するのが好ましい。
【0036】
ステップS15では、現在トラック停車ステーション3に停車しているトラック10がエアサスペンション機構を備えた車両であるか否かが判断される。この判断は、先に作業員が操作盤41を使って入力した情報に基づいて行われる。
【0037】
ここに、現在トラック停車ステーション3に停車しているトラック10がエアサスペンション機構を備えた車両であると判別されたときには、「YES」ということでステップS16以降の、エアサスペンション機構付きトラック10に対するフォーク15の高さ位置調整処理が実行される。このフォーク15の高さ位置調整処理は、トラック10がエアサスペンション機構を備えている場合、荷積み直後にエアサスペンション機構によって荷台10aが跳ね上がり(リバウンド)現象が発生することに対処するために実行される。
【0038】
このフォーク15の高さ位置調整処理は、フォーク15の上昇動作(S16〜S18)と、フォーク15の上昇後に実行されるフォーク15の下降動作(S19〜S21)を含む。言うまでもないことであるが、フォーク15の高さ位置調整処理は、トラック10の荷台10aのリバウンドが終わって荷台10aの動きが無くなった時点から開始するのが好ましい。
【0039】
先ず、上昇動作では、フォーク15の上昇動作が開始され(S16)、次いで載荷センサ35がONに変化したか否かが判断される(S17)。つまり、このステップS17においては、前記ステップS16において上昇が開始されたフォーク15のフォーク15の上面が、パレット6の差込部上面9aに接触したか否かが判断され、フォーク15がパレット6の上板6aと接触することに伴う載荷センサ35のON信号の出力を検出すると、フォーク15の上昇動作が停止される(S18)。これにより、上昇処理は終了する。すなわち、この上昇処理後においては、フォーク15が差込部6cの上面つまり上板6aに接触してフォーク15の自由な上方移動の限界に達したときにフォーク15の上昇動作が停止される。このフォーク15の上昇動作制御は、好ましくは、載荷センサ35のON信号の出力が一定時間継続したときに停止して次の下降動作に移行させるのがよい。他方、載荷センサ35のON信号の出力が一定時間経過する前にOFF信号に変化したときには、フォーク15の上昇動作を再び実行させるのがよい。
【0040】
上記の上昇動作の後に、フォーク15の下降動作(S19〜S21)が行われる。この下降動作においては、まず、フォーク15の下降動作が開始される(S19)。次いで、このフォーク15の下降により、載荷センサ35の出力がOFFに変化したか否かが判断される(S20)。つまり、このステップS20においては、載荷センサ35のON信号からOFF信号への変化によって、フォーク15がパレット6の上板6aから離れたか否かが判断され、YESとなった時点(載荷センサ35がOFF信号を出力した時点)でフォーク15の下降動作を停止してもよい(S21)が、載荷センサ35がOFF信号を出力した時点から所定時間経過してフォーク15が更に僅かに下降した後に、フォーク15の下降動作を停止するようにしてもよい。これにより、フォーク15が、パレット6の上板6aと下板6bとの間、つまり、上板6aにも下板6bにも接触していない状態となったときに、フォーク15の下降動作が停止される。
【0041】
トラック10がエアサスペンション機構を備えた車両での、荷積み直後に発生する荷台10aの跳ね上がり(リバウンド)現象に関連した上述のフォーク15の高さ位置調整処理が完了したら、ステップS22に進んで、フォーク15を後退動作つまりパレット6から引き抜く動作が開始され(ステップS22)、フォーク15の後退ストローク端に至った段階でフォーク15を後退動作が停止される(ステップS23)。これにより、フォーク15の格納動作が完了する。
【0042】
上述したステップS15で、対象となるトラック10がエアサスペンション機構を備えていない車両であると判別されたときには、このステップS15から上記ステップS22に移行して、フォーク15の格納動作が実行される。
【0043】
如上のように、フォークローダ8が持ち上げた段ボール箱CB(パレット6)をトラック10の荷台10aに移載した直後に発生する、特にエアサスペンション機構を備えた車両で発生する荷台10aの跳ね上がり(リバウンド)現象に対して、フォーク15の高さ位置調整処理を行った後にフォーク15を格納する動作を開始するため、パレット6と干渉することなくフォーク15の格納動作を実行できるという利点があることは勿論であるが、フォークローダ8のフォーク昇降機構16にテンション維持機構25(図3)を付加したことにより、荷台10aのリバウンドに対してフォーク昇降機構16の追従性を高めてフォーク昇降機構16の動作を安定化することができる。
【0044】
このフォーク昇降機構16の追従性について以下に説明すると、荷台10aがリバウンドしたときに、これに伴って荷台10a上のパレット6も急激に上昇し、これによりフォーク15はパレット6の下板6bによって持ち上げられることになる。そして、これに伴いフォーク15を昇降するワイヤ19に弛みが発生する。これをそのままにすると、ステップS16でフォーク15を上昇させるときに、フォーク昇降機構16は、弛んだワイヤ19を緊張状態にするまで空運転を伴うことになる。この空運転はワイヤ19が弛んだ状態で行われることから、巻き取りプーリ21にワイヤ19が緩みを伴った状態で巻き取られることになって乱巻きが発止したときには、次のワイヤ19の巻き戻し(フォーク15の下降動作)が不安定になる。つまり、ステップS19でのフォーク15の下降動作に制御不能なフォーク15の下降量が発生する可能性がある。
【0045】
これに対して、実施例のように、フォークローダ8のフォーク昇降機構16にテンション維持機構25が付加されているため、荷台10aのリバウンドによってフォーク15が急激に持ち上げられたときには、図4に図示のように、テンション維持機構25によってワイヤ9の弛みが吸収され、ワイヤ9に常に一定以上の張力が維持されるため、ワイヤ19に張力が作用した状態で巻き取りプーリ21の巻き取り動作を実行して乱巻きを防止することが可能になる。したがって、フォーク昇汞機構16は荷台10aのリバウンドの影響を吸収して、荷台10aのリバウンドの量の大小に影響されることなく、このリバウンドに追従して、制御された状態を維持しながら、フォーク15を上昇、下降させることができる。
【0046】
前述したようにエアサスペンションによる荷台10aのリバウンド量は、車両毎に異なることから、経験的に最も大きなリバウンド量を念頭に置いて、この最大リバウンド量を吸収できるように、テンション維持機構25の変位プーリ28が変位可能なストローク量を設定するのが好ましい。
【0047】
図8は、図7の手順の変形例のフローチャートであり、この図8の説明では、上述した図7に図示のステップと実質的に同じ動作のステップには、同一のステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0048】
図8の制御フローでは、トラック10の車種(特に、エアサスペンション機構付きの有無)を問わずに制御が実行される。この制御は、トラック停車ステーション3に出入りするトラック10が全てエアサスペンション機構を備えた車両である場合に特に有効であるが、エアサスペンション機構無しの車両に対しても同様に適用することができる。
【0049】
図8のフローチャートを参照して、ステップS13で載荷センサ35からのOFF信号(段ボール箱CBが荷台10aに移載される)を受けて、フォーク15の下降動作が停止されると、直ちにステップS16で、フォーク15の上昇動作が開始され、その後、ステップS17、S18が実行される。そして、ステップS18でフォーク15の上昇動作が停止された後に、ステップS30で、荷台10aの反対側に位置するフォークローダ8の荷降ろし動作が完了したか否かが判断される。このステップS30では、図7のステップS14と同様に、トラック10の荷台10aを挟んで対向する位置で作業を行っているフォークローダ8が下降して、段ボール箱を積んだパレット6を荷台10aに着床させたか否かの判別が行われ、YESになった段階で次のステップS19移行の動作が行われる。
【0050】
この図8の制御においても、前述した図7の制御と同様に、エアサスペンションによる荷台10aの跳ね上がり(リバウンド)現象が発生しても、これを吸収してフォーク15の高さ位置調整を行うことで、パレット6と干渉することなく、荷台10aに荷積みした後のフォーク15を退却してフォーク15の収納動作を実行させることができることは言うまでもないが、このフォーク15の高さ位置調整において、フォーク昇降機構16に付加したテンション維持機構25(図3)により、ワイヤ19の弛みの発生を防止することができ、これにより、フォーク昇降機構16の確実な動作の下で、フォーク15の高さ位置調整を実施することができる。
【0051】
図7や図8に示す制御フローは、フォーク15に設置した接触センサからなる載荷センサ35からの出力信号に依存した制御である。
【0052】
変形例として、載荷センサ35をフォーク15の上面と下面に配設した、例えば上下距離センサで構成した場合には、図9に例示の制御を行うようにしてもよい。図9のフローチャートを参照して、この上下距離センサ(載荷センサ35)を使って常にフォーク15とパレット6(上板6a)との接触の有無を判定して、フォーク15の高さ位置調整を行う構成としている。
【0053】
フォークローダ8が、段ボール箱貯留ステーション4からパレット6を含む段ボール箱CBを持ち上げてトラック10の荷台10aの所定の位置までアクセスし、次いで、フォーク15を前進させて、トラックの荷台10aの上に荷積みする動作が完了すると(S40)、フォーク15の下降動作が開始され(S41)、フォーク15の下降によって、段ボール箱CBを積載したパレット6がトラック10の荷台10aの上に移載される。このフォーク15の下降動は、フォーク15がパレット6の上板6aから所定距離離れて、上方の上下距離センサ(載荷センサ35)の出力がON信号からOFF信号に変わると停止される(ステップS43)。
【0054】
次のステップ(S44)で、荷台10aの反対側に位置するフォークローダ8の荷降ろし動作が完了したか否かが判断される。つまり、トラック10の荷台10aを挟んで対向する位置で作業を行っているフォークローダ8のフォーク15が下降して、段ボール箱を積んだパレット6を荷台10aに着床させたか否かの判別が行われ、好ましくはYESになった後、一定時間経過つまり荷台10aの上下動が無くなった後に、次のステップS45に移行して、フォーク15の下面に設置された下方の上下距離センサ(載荷センサ35)の出力がON信号を出力しているか否かの判定が行われる。YESの場合、リバウンドにより荷台10aが上昇してフォーク15の下面がパレット6の下板6bと接触した状態にあるとして、ステップS46に進んでフォーク15の上昇動作が開始され、このフォーク15の上昇動作は、下方の上下距離センサ(載荷センサ35)がパレット6の下板6bよりも若干上方に位置するまで継続され、下方の上下距離センサ(載荷センサ35)の出力がON信号からOFF信号に変化した段階でステップS47からS48に進んで、フォーク15の上昇動作が停止される。これにより、フォーク15はパレット6の上板6aにも下板6bにも接していない状態に高さ位置調整され、次のステップS49に進んでフォーク15の後退動が開始されてフォーク15の収納が行われる(ステップS49、S50)。
【0055】
他方、上記ステップS45でNOの場合には、下方の上下距離センサ(載荷センサ35)のOFF出力が一定時間経過したかの判定が行われ、YESの場合つまりフォーク15がパレット6の下板6bから若干離間した状態が継続していれば、荷台10aが安定していてフォーク15がパレット6の上板6aにも下板6bにも接していない状態にあるとして、ステップS49に進んでフォーク15の後退動が開始されてフォーク15の収納が行われる(ステップS49、S50)。
【0056】
この図9の制御においても、フォークローダ8が持ち上げた段ボール箱CB(パレット6)をトラック10の荷台10aに移載した直後に発生する、特にエアサスペンション機構を備えた車両で発生する荷台10aの跳ね上がり(リバウンド)現象に対して、フォーク15の高さ位置調整処理を行った後にフォーク15を格納する動作を開始するため、パレット6と干渉することなくフォーク15の格納動作を実行できるという利点があることは勿論であるが、フォークローダ8のフォーク昇降機構16にテンション維持機構25を付加したことにより、荷台10aのリバウンドに対してフォーク昇降機構16の追従性を高め、そしてフォーク昇降機構16の動作を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】トラック用フォークローダを使った荷積みシステムのレイアウト図。
【図2】トラックの荷台の側方から臨む位置に位置決めされたフォークローダの側面図。
【図3】トラック用フォークローダのフォーク昇降機構に付加されたテンション維持機構の構成の説明図。
【図4】トラックの荷台のリバウンドにより荷台側からフォークに突き上げ荷重が加わったときのテンション維持機構の動作の説明図。
【図5】フォークに設けられた載荷センサの一例を説明するための図。
【図6】トラックの荷台に荷役するフォークローダの制御に関する全体構成を説明するためのブロック図。
【図7】トラックの荷台に荷役するフォークローダの制御の一例を示すフローチャート。
【図8】図7のトラックの荷台に荷役するフォークローダの制御例の変形例を示すフローチャート。
【図9】トラックの荷台に荷役するフォークローダの制御の他のを示すフローチャート。
【図10】従来のフォークの動作制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0058】
CB 製品入り段ボール箱(貨物)
6 パレット
6a パレットの上板
6b パレットの下板
6c パレットのフォーク差込部
8 フォークローダ
10 トラック
10a トラックの荷台
15 フォーク
16 フォーク昇降機構
19 昇降ワイヤ
20 フォーク昇降用モータ
25 テンション機構
28 変位プーリ
29 引っ張りバネ
35 載荷センサ
36 可動接触ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを巻き取る又は巻き戻すことによりフォークを上下させるフォーク昇降機構を備えたフォークローダにおいて、
前記フォーク昇降機構に設けられ、前記ワイヤに弛みが発生しないように該ワイヤの張力を維持するテンション維持機構と、
フォークで持ち上げた貨物をトラックの荷台に移載した後、前記貨物からフォークを引き抜く動作を開始する前に前記フォークの高さ位置を調整する高さ位置調整制御手段とを備え、
該高さ位置調整制御手段が、前記貨物をトラックの荷台に移載した後に前記フォークを上昇させて前記貨物のフォーク差込部と干渉しない高さ位置に前記フォークの高さ位置を調整することを特徴とするフォークローダ。
【請求項2】
ワイヤを巻き取る又は巻き戻すことによりフォークを上下させるフォーク昇降機構を備えたフォークローダにおいて、
前記フォーク昇降機構に設けられ、前記フォークがトラックの荷台側からの突き上げられたときに前記ワイヤに弛みが発生しないように該ワイヤの張力を維持するテンション維持機構と、
前記フォークの上面に設けられた載荷センサと、
前記フォークで持ち上げた貨物をトラックの荷台に移載した後、前記貨物からフォークを引き抜く動作を開始する前に前記フォークの高さ位置を調整する高さ位置調整制御手段とを備え、
該高さ位置調整制御手段が、前記貨物をトラックの荷台に移載した後に前記フォークを上昇させ、次いで、前記載荷センサが、前記フォークが前記貨物の荷重を受けていることを示すON信号を出力したときに前記フォークの上昇動を停止し、次いで、前記フォークを下降させて前記載荷センサのON信号がOFF信号に変化した後に前記フォークの下降動を停止することにより、前記貨物のフォーク差込部と干渉しない高さ位置に前記フォークの高さ位置を調整することを特徴とするフォークローダ。
【請求項3】
前記載荷センサのON信号の出力が一定時間継続した後に前記上昇動作を停止して次のフォーク下降動作に移行させ、前記載荷センサのON信号の出力が一定時間経過する前にOFF信号に変化したときには、前記フォークの上昇動作を再び実行させる、請求項2に記載のフォークローダ。
【請求項4】
前記載荷センサが接触センサで構成されている、請求項3に記載のフォークローダ。
【請求項5】
ワイヤを巻き取る又は巻き戻すことによりフォークを上下させるフォーク昇降機構を備えたフォークローダにおいて、
前記フォーク昇降機構に設けられ、前記フォークがトラックの荷台側からの突き上げられたときに前記ワイヤに弛みが発生しないように該ワイヤの張力を維持するテンション維持機構と、
前記フォークの上面及び下面に設けられ、該フォークを差し込む前記貨物のフォーク差込部との上下距離を計測する載荷センサと、
前記フォークで持ち上げた貨物をトラックの荷台に移載した後、前記貨物からフォークを引き抜く動作を開始する前に前記フォークの高さ位置を調整する高さ位置調整制御手段とを備え、
該高さ位置調整制御手段が、前記貨物をトラックの荷台に移載した後に前記フォークの上面及び下面に設けた上方及び下方の載荷センサからの信号が、共に、前記フォークが前記貨物のフォーク差込部から一定距離以上離間していることを示す信号を出力するまで、前記フォークを上昇又は下降させて、前記貨物のフォーク差込部と干渉しない高さ位置に前記フォークの高さ位置を調整することを特徴とするフォークローダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−230683(P2007−230683A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52189(P2006−52189)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】