トリミング効果とピストンモードでの不安定性を最小化する音響波導波装置および方法
【課題】高結合基板上にSAWトランスデューサまたはSAW共振器を形成し、トランスデューサ領域での導波を保証することにより、トランスデューサ領域のエネルギを誘導する方法を提供する。
【解決手段】圧電基板の表面上にインターデジタルトランスデューサを形成し、音響波を該トランスデューサを通って横方向に誘導するための、横方向に延在する中央領域と横方向に対向するエッジ領域を有する電極で、酸化ケイ素保護膜は該トランスデューサを被覆し、窒化ケイ素層は、該中央領域とエッジ領域内だけの酸化ケイ素保護膜を被覆する。窒化ケイ素層の厚みは中央領域内の音響波の周波数を変更させるに十分なものであり、対向するエッジ領域それぞれ内のチタンストリップの配置によって最適化される。該チタンストリップは、エッジ領域内の音響波速度がトランスデューサ中央領域内の波速度より小さくなるように、エッジ領域内の速度を低減する。
【解決手段】圧電基板の表面上にインターデジタルトランスデューサを形成し、音響波を該トランスデューサを通って横方向に誘導するための、横方向に延在する中央領域と横方向に対向するエッジ領域を有する電極で、酸化ケイ素保護膜は該トランスデューサを被覆し、窒化ケイ素層は、該中央領域とエッジ領域内だけの酸化ケイ素保護膜を被覆する。窒化ケイ素層の厚みは中央領域内の音響波の周波数を変更させるに十分なものであり、対向するエッジ領域それぞれ内のチタンストリップの配置によって最適化される。該チタンストリップは、エッジ領域内の音響波速度がトランスデューサ中央領域内の波速度より小さくなるように、エッジ領域内の速度を低減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広くは音響波装置と関連の方法に関し、より詳細には、トランスデューサ開口部内で概ねフラットな伝播モードを得る音響波装置のトランスデューサ電極の変更に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年9月22日出願の米国特許出願第12/564,305号の一部継続出願であり、その開示のすべては参照により本明細書に援用され、すべては共通に所有される。
【0003】
本明細書では、「表面弾性波(SAW)」および「SAW装置」という用語は、材料の表面上あるいは複数の材料の界面における弾性波の伝播を使用する任意の装置に対して参照及び使用されるものとする。本明細書で説明される開示は、弾性波がインターデジタルトランスデューサ(IDT)を使用して生成または検出される限り、様々な種類の弾性波に適用され得ることは理解されるべきである。例えば、所謂、漏れSAW、擬似SAW、境界波、表面横波、界面波またはラブ波は本明細書ではSAWと見なされる。
【0004】
従来技術で周知のように、SAW装置はIDTを用いて電気エネルギを音響エネルギに、または逆に音響エネルギを電気エネルギに変換する。例えば図1に示すIDTは、圧電基板と、2つの異なる電位にある2つの対向するバスバーと、該2つのバスバーに接続された2つの電極セットとを使用する。圧電効果により、電位が異なる2つの連続する電極間の電界は音響源となる。
【0005】
逆に、トランスデューサが入射波を受ける場合、圧電効果の結果として、電極に電荷が生じる。図2に示すように、2つの反射格子間にトランスデューサ配置することにより、共振器が得られる。従来技術で周知のように、複数の共振器を接続することにより、あるいは、1つまたは複数のIDTから受け取られる音響エネルギを生成する1つまたは複数の伝播IDTを有することにより、フィルタまたはデュプレクサが設計できる。
【0006】
表面弾性波(SAW)装置を設計する場合の典型的な1つの問題は、トランスデューサ領域での弾性波の速度がバスバー領域での速度よりも遅くなることに関するものである。トランスデューサは、トランスデューサからの音響エネルギの漏れを防止する導波路として機能し、損失の低減に役立つ。しかしながら、この導波路が複数の音響波伝播導波モードをサポートするとき、装置の伝達関数により、望ましくないリップルまたは偽信号がもたらされる。これは一般に複数の方法で対処される。
【0007】
1つの方法は、1つの導波モードだけを持つように小さな音響開口部を選択することを含む。この方法によって、装置に対して過度の負荷または好ましくない信号源インピーダンスが生じ得る。別の方法は、モードの横プロファイルの一致を試みるために、トランスデューサのアポダイゼーションを使用することを含む。この方法でも、望ましくない大きなインピーダンスと、電気機械結合の低減と、損失が生じる。横モードを減少させるさらに別の方法として、二次元の障害物を周期的に使用する方法があるが、この場合はより複雑な製造プロセスが必要になる。
【0008】
ピストンモードアプローチは、トランスデューサ開口部に本質的にフラットな形状を持つ1つの伝播モードを保持するために、トランスデューサの速度プロフィールの変化に依存する。このアプローチは、トランスデューサでの速度がバスバー内の速度でのものより遅い場合については米国特許第7,576,471号に開示されており、その全体は参照により本明細書に援用される。
【0009】
ニオブ酸リチウムなどの高結合基板では、表面での電気的条件が速度に大きな影響を与え、通常、電極端部ギャップでの速度はトランスデューサ開口部での速度よりはるかに大きく、またバスバーでの速度より大きい。該ギャップの長さは通常、電極幅と同程度であり、典型的には音響波長の何分の1かである。この場合、エッジギャップへの反射による横モードとトランスデューサ外部へのエネルギ漏れが生じる。トランスデューサ領域とギャップ領域の間の速度差は、エッジへの全反射には十分な大きさである。
【0010】
不要な横モードを抑制するために、典型的な一方法は、図3に示すようにアポダイゼーションの使用を含む。この場合、エッジギャップの位置はトランスデューサ開口部領域内まで延びている。ギャップの位置はモードに大きな影響を及ぼすので、モード形はトランスデューサの長さに沿って変化する。その結果、望ましくない横モードが異なる周波数で発生し、所望の効果が低下する。
【0011】
同様に、Ken Hashimotoは、「T.Omori,*K.Matsuda,Y.Sugama,*Y.Tanaka,K.Hashimoto and M.Yamaguchi,「Suppression of Spurious Responses for Ultra−Wideband and Low−Loss SAW Ladder Filter on a Cu−grating/15°YX−LiNbO3 Structure」,2006 IEEE Ultrasonics symp.,pp1874−1877」の中で、図4に示すように、ギャップ位置は一定だが開口部はトランスデューサ内で変化するトランスデューサを提示した。これは、ダミー電極アポダイゼーションの使用と呼んでもよい。このトランスデューサは、それに沿った横モード周波数を変化させることで機能する。
【0012】
さらなる例として、Murataの米国特許出願第2007/0296528A1には、図5に示すように、エッジギャップ領域とトランスデューサ開口部領域間の速度差を低減するためにエッジギャップの前で電極の幅を広くしたSAWトランスデューサが記載されている。Murataの別の米国特許出願第2008/0309192A1号には、図6に示すようにアポダイゼーションの変形版が開示されている。そのような場合の位相やインピーダンスを含む性能特性を図6aのグラフに示す。
【0013】
SAWトランスデューサでは、再度図3に示すように、所謂「ダミー電極」がしばしば使用される。これらのダミーの電極は、特にアポダイゼーションを使用する場合に、トランスデューサの活性領域とトランスデューサの不活性領域間の速度差を抑制するために使用される。
【0014】
典型的には、ダミー電極と活性電極とを分離する電極端部ギャップは、その効果をできるだけ低減するために、電極幅程度の大きさ(波長の何分かの1)で選択される。高結合材料が選択された場合、ギャップでの速度は、トランスデューサでの速度よりかなり大きくなる。この場合、ギャップ長が短くても、ギャップ位置は横モードに非常に大きな影響を及ぼすことが分かる。
【0015】
これらの教示はすべて、トランスデューサのエッジギャップにおける望ましくない効果を低減しようとするものである。良好なクォリティファクタが実証されたとしても、アポダイゼーションにより等価結合係数の望ましくない低下が生じる。さらに、トランスデューサに対して導波が著しく軽減されるか、あるいは有用なエネルギがトランスデューサの外部に漏れるような波速度となる。
【0016】
例として、高結合基板を使用する場合の問題を再度述べると、SAW共振器またはSAWトランスデューサを設計する場合の難しさの1つは、トランスデューサ開口部領域よりはるかに大きな速度を有する電極エッジギャップの存在である。これは特に、レイリー波またはラブ波が使用される場合の問題である。特に、一般に、Y+128°近傍またはY+15°近傍の方位を有するニオブ酸リチウム基板で発生する。これらの方位は、感温性を低下させるための酸化ケイ素誘電体層または保護膜と共にしばしば使用される。音響反射率を高めるために銅などの電極用重金属が使用される場合も多い。
【0017】
この場合、モード形と周波数は、トランスデューサ領域内のギャップ位置に強く依存する。アポダイゼーションを使用する場合、ギャップ位置が変化することから、これらのモード形と速度はトランスデューサに沿って変化する。これによって、ギャップ位置が異なる領域間でモード変換と損失が生じる。さらに、アポダイゼーションによって、装置の等価圧電結合が低減される。高結合基板では通常の場合、バスバーでの速度がトランスデューサでの速度より小さいと、トランスデューサ領域での導波は発生せず、エネルギが外部に漏れて、やはり損失とクォリティファクタの低下が生じる。
【発明の概要】
【0018】
例として、本明細書で説明する本発明の実施形態では、高結合基板上にSAWトランスデューサまたはSAW共振器を形成し、アポダイゼーションを必要とすることなく、トランスデューサ領域のエネルギを誘導する方法を提供する。より高い等価結合係数とより少ない損失とが得られる。アポダイゼーションの代替として、トランスデューサ領域での導波を保証することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の十分な理解のために、本発明の種々の実施形態を示す添付図と共に、以下の詳細な説明を参照する。
【図1】図1は、インターデジタルトランスデューサ(IDT)の概略図である。
【図2】図2は、SAW共振器の概略図である。
【図3】図3は、要素の三角形アポダイゼーションを有するSAW共振器の概略図である。
【図4】図4は、ダミー電極アポダイゼーションを含むSAW共振器の概略図である。
【図5】図5は、ギャップ領域での速度を低減するためのIDT構成の概略図である。
【図6】図6は、二重の三角形アポダイゼーションを有するトランスデューサの概略図である。
【図6a.1】図6a.1は、二重の三角形アポダイゼーションの場合に生成するインピーダンスを示す。
【図6a.2】図6a.2は、二重の三角形アポダイゼーションの場合に生成する位相特性を示す。
【図7】図7は、長いギャップと、要素内に対応する速度プロファイルを有するトランスデューサの概略図である。
【図8】図8は、中央領域と物理的に異なり、中央領域およびギャップ領域よりも小さな速度プロファイルを有する長いギャップエッジ領域を有する、本発明の教示によるトランスデューサの概略図である。
【図9】図9は、長いエッジギャップと変形エッジ領域を有し、ギャップ領域での電極の幅がトランスデューサ領域での幅と同じであるトランスデューサの例を示す。
【図10】図10は、長いエッジギャップと変形エッジ領域を有し、ギャップ領域での電極の幅がエッジ領域での幅と同じであるトランスデューサの例を示す。
【図11】図11は、横モードが低減されQが向上した共振器であって、2つの格子が短絡していることを除けば、トランスデューサと同じ音響構造を有し、この短絡は、格子の外側において接続を追加することによりもたらされる共振器の概略図である。
【図11a.1】図11a.1は、共振器の周期が2μm、エッジ長が3μmである図11の共振器の特性データを示す。
【図11a.2】図11a.2は、共振器の周期が2μm、エッジ長が3μmである図11の共振器の特性データを示す。
【図11a.3】図11a.3は、共振器の周期が2μm、エッジ長が3μmである図11の共振器の特性データを示す。
【図12】図12は、エッジ領域での速度低減のために頂部に誘電体層または金属層を有し、ダミー電極のないトランスデューサの概略図である。
【図13】図13は、中央領域での速度上昇のために頂部に誘電体層または金属層を有し、ダミー電極のないトランスデューサの概略図である。
【図14】図14は、中央領域での速度上昇のために頂部に誘電体層を有し、ダミー電極のない共振器の概略図である。
【図15】図15は、電極が誘電材料(例えばSiOX)に埋め込まれたSAW装置の概略断面図である。
【図16】図16は、本発明の一実施形態を、高速誘電材料がトランスデューサ中央領域の頂部に層状に重ねられて酸化ケイ素内に埋め込まれた電極に沿った断面図で示す。
【図16a】図16aは、所望の速度構成を得るために高速誘電体が使用され、酸化ケイ素に埋め込まれた装置の電極に沿った一実施形態の概略断面図である。ここでは、周波数トリミングプロセスを容易にするために、この高速材料がトランスデューサの全表面(ギャップ/エッジ/トランスデューサ)に追加され、中央にはさらなる材料が追加されており、一部の高速材料が除去されても、高速材料の厚みの差は一定に保たれるので、速度差は所望の値に維持される。
【図16b】図16bは、本発明の教示による一実施形態を、適切な速度構成を得るために低速誘電材料が使用され、酸化ケイ素に埋め込まれた改良された装置の例における電極に沿った断面図で示す。ここでは、周波数トリミングプロセスを容易にするために、この高速材料がトランスデューサの全表面(ギャップ/エッジ/トランスデューサ)に追加され、中央にはさらなる低速材料が追加され、あるいは中央領域に埋め込まれていてもよい。
【図16c】本発明の教示による実施形態を、酸化ケイ素層に埋め込まれたIDTの電極に沿った断面図で示す。ここでは、周波数トリミングのために窒化ケイ素層が使用されており、この窒化ケイ素層は、図16cの実施形態では中央領域とエッジ領域に追加されている。また、チタンストリップなどの「低速」材料がエッジ領域内だけの酸化ケイ素保護膜内に配置されている。
【図16d】本発明の教示による実施形態を、酸化ケイ素層に埋め込まれたIDTの電極に沿った断面図で示す。ここでは、周波数トリミングのために窒化ケイ素層が使用されており、この窒化ケイ素層は、図16dの実施形態では好適にギャップ領域内まで延在している。また、チタンストリップなどの「低速」材料がエッジ領域内だけの酸化ケイ素保護膜内に配置されている。
【図17】図17は、長いエッジギャップとより低速のエッジ領域を有し、ギャップ領域での電極幅はトランスデューサ領域での幅と同じであり、ダミー電極が存在するトランスデューサの例を示す。
【図18】図18は、長いエッジギャップとより低速のエッジ領域を有する本発明の教示によるトランスデューサの例を示す。ここでは、デューティファクタを高めることによってエッジ領域での速度が低減されており、その頂部に誘電体層を追加することによって中央領域での速度が増加されている。
【図19】図19は、長いエッジギャップとより低速のエッジ領域を有するトランスデューサの一例を示す。ここでは、横モードレベルをさらに低減するために一部のアポダイゼーションを有するが、この場合は非常に軽いアポダイゼーションで十分である。
【図20】図20は、低速エッジ領域幅が一定でないトランスデューサの一例を示す。
【図21】図21は、長いエッジギャップとより低速のエッジ領域を有し、より低速の領域の速度が一定でないトランスデューサの一例を示す。
【図22】図22は、モード抑制を備える2つのトランスデューサが結合された共振器フィルタの一例を示す。
【図23】図23は、標準の装置と、本発明の教示によるピストンモードトランスデューサを使用した装置で行った伝達関数の比較を示す。
【図24】図24は、本発明の教示によるモード抑制を備える3つのトランスデューサが結合された共振器フィルタの一例を示す。
【図25】図25a〜図25hは、本発明のピストンモード共振器で得られた結果を示す。ここでは、種々のギャップエッジ長が示されており、図示されたグラフは、インピーダンスの位相、共振におけるQおよび反共振におけるQを示す。共振の周期は2μmであり、4μmの波長に対応している。低速側のモードはギャップ長が1λの場合に消滅する。クォリティファクタは、ギャップ長が3λの場合に所望の値となり、より大きなギャップ長に対しても所望の値は維持される。
【図26】図26a〜図26kは、保護膜誘電体層(本明細書では酸化ケイ素)内に埋め込まれたチタンストリップの種々の位置に対する窒化ケイ素トリミング材料厚みの関数として、電極のエッジ領域内にチタンストリップが埋め込まれた場合のエッジ領域での速度シフトに対する厚みを示す曲線である。上記の種々の位置は、エッジ領域の誘電体層内に延在する電極上の0%から100%までの、増分10%での位置である。
【図27】図27は、電極のエッジ領域における誘電体層内のチタンストリップの位置の関数としての、公称の波速度シフトを示す曲線である。
【図28】図28は、窒化ケイ素トップ層の種々の厚みに対する、エッジ領域の誘電体層内のチタンストリップの位置の関数としての速度シフトの変形を示す曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の諸実施形態を示す添付図を参照して本発明をより詳細に説明する。但し、本発明は多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。これらの実施形態は、本開示を完璧で完全なものにし、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供されるものである。
【0021】
長手方向に延在するエッジ領域内のトランスデューサ電極の物性が変更されて、該エッジ領域内の音響波の波速度がトランスデューサ中央領域内の波速度より小さく、対向するギャップ領域内の波速度がトランスデューサ中央領域の速度より大きくなると、好適なことに、フラットな伝播モードが生じる。さらに、長手方向に延在するエッジ領域のトランスデューサの物性が変更されて、該エッジ領域内の音響波の波速度がトランスデューサ中央領域内の波速度より小さく、対向するギャップ領域内の波速度がトランスデューサ中央領域内の波速度より大きくなると、本質的にフラットな伝播モードがトランスデューサ開口部内に生じる。このモードにおける振幅は電気音響源の振幅に一致するため、それは優先的に励振されるであろう。高結合基板上のSAWトランスデューサまたはSAW共振器はこうして、アポダイゼーションを必要とせずに、トランスデューサ領域でエネルギを誘導する。より高い等価結合係数とより少ない損失とが得られる。エッジ領域の物性は、電極寸法を変えるか、エッジ領域に誘電体層または金属層を追加するか、あるいはこれらの組み合わせによって変更できる。誘電体層(またはこの複数)は中央領域に追加されてもよい。誘電体層は本明細書では例として説明されるが、該層は、誘電体層、複数の誘電体層、金属層あるいはこれらの組み合わせの内の1つであってもよいと理解される。その結果、対向するギャップ領域内での音響波の速度は、ギャップ領域間のトランスデューサ中央領域での速度より大きくなり、エッジ領域での速度は中央領域での速度より小さくなるため、トランスデューサの開口部(中央領域)内に本質的にフラットな望ましい伝播モードが生じる。
【0022】
例として、音響波を支持する表面14を有する圧電基板12を備えた音響波装置10として、本発明のある実施形態を図7及び図8を参照して説明する。第1の細長いバスバー16と、対向する第2の細長いバスバー18は、概ね音響波の長手方向20に沿って延在している。複数の第1の電極22は第1のバスバー16と電気的に接続されてそれから概ね横方向に延在し、複数の第2の電極24は第2のバスバー18と電気的に接続されてそこから延在している。対向するバスバー16、18および複数の電極22、24は、音響波伝播を支持する圧電基板12の表面14に担持されたインターデジタルトランスデューサ(IDT)26を形成する。
【0023】
引き続き図7および図8を参照し、複数の電極22、24のそれぞれは、第1のバスバー16および第2のバスバー18の内の1つと電気的に接続された第1の端部28と、対向するバスバー16、18から離間したエッジ32を有する対向する第2の端部30とを有し、これにより、電極22、24のそれぞれのエッジと対向するバスバー16、18との間にギャップ34、36を形成する。対向するバスバー16、18に近接するギャップ34、36は、トランスデューサに沿って長手方向に延在し概ね互いに平行なギャップ領域38、40を形成する。
【0024】
本発明の実施形態では、以下にさらに詳細に述べるように、ギャップ34、36の長さ寸法42は、IDT26内で伝播される音響波の一波長より長い。一波長より長くまた三波長より長いことが好適に効果的であることが示された。さらに、引き続き図8を参照して、複数の電極22、24のそれぞれは、電気的に接続された関連するバスバー16、18に近接しギャップ領域38、40内に概ね含まれる横方向に延在する第1の電極部50と、エッジ32に近接しトランスデューサ26に沿って長手方向に延在するエッジ領域54、56を定義する横方向に延在する第2の電極部52と、により定義される。電極22、24の横方向に延在する第3の電極部58は、横方向に延在する第1および第2の電極部50および52の間に延在する。横方向に延在する第3の電極部58は、その全体がトランスデューサ中央領域46内に存在する。
【0025】
さらに図8に示されるように、エッジ領域54、56の物性は、中央領域46の電極部58の物性とは異なっており、エッジ領域波速度(Ve)は中央領域波速度(Vc)より小さく、対向するギャップ領域38、40内の音響波の速度44は、対向するギャップ領域間のトランスデューサ中央領域46の速度より大きいという結果をもたらしている。
【0026】
例として、図9を参照し、対向するエッジ領域54、56内の横方向に延在する第2の電極部52の幅寸法60は、ギャップ領域38、40およびトランスデューサ中央領域46内の横方向に延在する第1および第3の電極部50、58のそれぞれの幅寸法62、64より大きく、それによって、向上したデューティファクタと、従って、トランスデューサ中央領域46内の波速度より小さいエッジ領域54、56内の波速度44と、が得られる。トランスデューサのデューティファクタに関し、エッジ領域の物性はトランスデューサ中央領域のそれとは異なっている。本質的にフラットな伝播モードがトランスデューサ26の開口部48内に生じる。図9を参照して本明細書で説明した本発明の実施形態は、IDTによって伝播される波長の少なくとも3倍より長いギャップ長寸法を含む。
【0027】
例として、本明細書で説明する本発明の実施形態では、エッジギャップ長は、ギャップによるトンネル効果の低減さらには除去のために十分に長くしてもよい。本明細書では長い端部ギャップ34、36が開示されている。「長い」とは本明細書では、少なくとも伝播波の波長およびSAW装置で典型的に使用されるものより大きなギャップの長さ寸法を示すものとして使用される。一波長以上のエッジギャップ長によって、望ましい導波が得られる。三波長より大きなエッジギャップ長によって、さらに向上した導波が可能となる。この場合、非常に強い横モードが得られる。これらの強い横モードにかかわらず、エネルギはトランスデューサ内に限定されるので、損失は少ない。例として再度図8を参照し、横モードを減少させるために、エッジでの低速度によって、トランスデューサ領域に本質的にフラットなモードが得られる。これは例えば、電極のエッジにおけるデューティファクタを増加させることにより実現できる。フラットモード、すなわち所謂ピストンモードが得られる。信号源プロファイルがほぼ完全にモード形に一致するため、他のモードはほとんど励振されない。
【0028】
図10を参照し、装置10の一実施形態は、関連する電気的に接続されたバスバー16、18に近接しギャップ領域38、40内に概ね含まれる横方向に延在する第1の電極部50と、エッジ32に近接し、トランスデューサ26に沿って長手方向に延在するエッジ領域54、56を定義する横方向に延在する第2の電極部52と、によって定義される複数の電極22、24のそれぞれをさらに含む。電極22、24の横方向に延在する第3の電極部58は、横方向に延在する第1および第2の電極部50、52間に延在する。横方向に延在する第3の電極部58は、その全体がトランスデューサ中央領域46内に存在する。
【0029】
引き続き図10を参照して説明する本明細書の実施形態では、ギャップ領域38、40およびエッジ領域54、56それぞれ内の横方向に延在する第1および第2の電極部50、52は、トランスデューサ中央領域46内に存在する横方向に延在する第3の電極部58の幅寸法64より大きな幅寸法60、62を有しており、これにより、向上したデューティファクタと、従って、トランスデューサ中央領域内の波速度より小さな長手方向に延在するエッジ領域内の波速度44と、が得られる。
【0030】
図10は、長い端部ギャップ34、36を使用してトランスデューサ内の導波を可能にする本発明の別の実施形態を示す。横モードを低減するために、トランスデューサのエッジでの速度は、エッジ領域38,40内のフィンガ要素部分に対するデューティファクタを増加させることによって低減される。図9の場合、ギャップでのデューティファクタはエッジ領域でのものと同じであり、デューティサイクルは、図10の実施形態での中央領域におけるギャップでのものと同じである。
【0031】
図9および図10の実施形態での両方の構成とも、ギャップ領域38、40での平均速度44がトランスデューサ開口部中央領域46での速度より大きく、エッジ領域での速度が中央領域での速度より小さければ、他の構成と同様に機能する。本質的にフラットなモードを優先的に励振するために、エッジ領域の長さおよびその速度を調節してトランスデューサ中央領域にこのモードを得る。本発明を機能させるために重要なパラメータは、異なる領域における平均速度であることを理解することが重要である。それは、エッジ領域での平均速度が中央領域でのものより遅く、ギャップ領域での平均速度が中央領域でのものより早い限り、連続する電極領域が物理的に同一でなくても(例えば幅が異なっていても)、恐らく同様な結果が得られることを意味する。さらに、対向するバスバーは厳密に平行である必要がないことも理解される。ギャップ領域が十分に大きければ、バスバーでの音響エネルギは無視されてもよく、それらの正確なレイアウトは、装置性能にわずかな影響を及ぼすのみである。
【0032】
図11に示すように、装置10は、インターデジタルトランスデューサ26の長手方向の対向する端部70、72上の基板12の表面14上に担持された第1および第2の格子66、68をさらに備えていてもよい。さらに、対向する格子66、68内にあり、トランスデューサ26から最も隔たった予め選択された電極74、76は、接続バー78経由で電気的に接続されて短絡されている。引き続き図11に示すように、第1および第2格子66、68は、これに限定されないが、トランスデューサ26内の電極22、24のように構成された電極80、82を備えていてもよい。
【0033】
格子66、68とトランスデューサ26間の分離部におけるモード変換を避けるために、該格子が音響エネルギの再生を避けるために短絡されていることを除いてトランスデューサと同様である。この短絡は、電極の金属接続部を追加することによりあるいは外的に行うことができる。この追加接続部は、音響エネルギが最も小さくその影響も最も小さい反射器の外部に配置されることが好ましい。
【0034】
図11a.1、11a.2および11a.3は、図9の実施形態を参照して説明した本発明の共振器で得られるインピーダンス曲線を示す。基板はYカット128°ニオブ酸リチウムとした。電極は銅金属で構成し、酸化ケイ素層内に埋め込んでいる。金属の厚みは2500Å、該酸化物の厚みは1μmであった。トランスデューサと反射器の周期は2μmである。トランスデューサのデューティファクタは50%であり、エッジおよびギャップにおけるそれは75%であった。共振器はアクティブ電極を200個備えていた。アクティブ開口部は80μmであり、ギャップ領域は20μm〜40μmの間で変化した。図示のように、エッジ長が2μm〜5μm、従って波長の0.75〜1.2倍の場合に望ましい結果が得られた。得られたクォリティファクタは共振において1252であり、反共振において1424であった。このモードは減衰する。比較として、同じ金属と酸化物について、三角形アポダイゼーションを使用した場合、クォリティファクタは850より小さい。これによって、提示した実施形態が優れていることがわかる。
【0035】
図12を参照し、前述の音響波装置10は、トランスデューサに沿って長手方向に延在した誘電体層または金属層84、86を有するトランスデューサ26を備えていてもよい。ここで、該誘電体層または金属層84、86は、エッジ領域54、56内の電極部52のみを被覆し、トランスデューサ中央領域46には存在しない。エッジ領域54、56での速度を低減するこの代替実施形態は、エッジ領域84、86に誘電体層または金属層84、86を追加することを含む。
金属層は電極の上方または下方のエッジに追加されてもよい。
【0036】
後にこの節でさらに詳細に説明するように、誘電体層の最適な深さに配置されたチタン(Ti)を含む金属層は、誘電体層と組み合わせられてもよい。
【0037】
図13に示すように、窒化アルミニウムまたは窒化ケイ素などの音響速度が速い層を中央領域に追加してもよい。この場合も同様の音速速度構成が得られ、エッジでの速度は最も小さく、ギャップでの速度は大きく、中央での速度はエッジでの速度より大きくなる。層の厚みおよびまたはエッジ幅を適切に選択することにより、フラットな伝播モードが得られる。従って、エッジ領域の物性は、エッジ領域またはトランスデューサ中央領域上に適切な誘電体層を追加することによって中央領域のものとは違ったものにできる。
【0038】
図13および18に示すように、トランスデューサ26は、トランスデューサ中央領域46内の電極部58を被覆する誘電体層を有するトランスデューサに沿って長手方向に延在する誘電体層88を備えていてもよい。共振器90の概略図を示す図14にさらに示すように、共振器90は、トランスデューサ26と隣接する格子66、68との両方に対する中央領域内の電極の頂部に誘電体層88を有し、中央領域46内の音響波の速度を高めている。図18にさらに示すように、誘電体層88は、誘電体部884に示すように、トランスデューサ境界を越えて延在していてもよい。
【0039】
トランスデューサを十分に被覆する酸化ケイ素層または保護膜の感温性は、エッジ領域長を音響波長の1.5倍より小さくすることによって低下する。
【0040】
さらなる例として、図14は、図13の構成を使用した1つの共振器を示す。繰り返しになるが、トランスデューサ構成と類似した音響構成を有する反射器の選定には注意が必要である。
【0041】
図15は、1つの埋め込みIDT構成を示す。この場合、図16にさらに示すように、速度シフトを実現する追加層は頂部に堆積することができる。一実施形態では、第1の誘電体層92はトランスデューサ26を被覆しており、第2の誘電体層94はトランスデューサに沿って長手方向に延在し、トランスデューサ中央領域46内の電極部だけを被覆している。前述のように、また後に本開示で詳細に説明するように、エッジ領域内の誘電体層の1つは、金属で置き換えられてもよい。一実施形態では、チタンがエッジ領域内だけに追加されている。
【0042】
オプションとして、図16aおよび図16bを参照し、装置10は、トランスデューサ26を被覆する第1の誘電体層92と、トランスデューサに沿って長手方向に延在しギャップ領域38、40、エッジ領域54、56および中央領域46内の電極部を被覆する第2の誘電体層94と、さらに備えていてもよい。さらに、図16aに示すように、中央領域46内の電極部をさらに被覆する第3の誘電体層96が含まれていてもよい。またさらに、図16bに示すように、エッジ領域54、56内の電極を被覆する第3の誘電体層96が含まれていてもよい。
【0043】
所望の技術的選択に応じて、これらの層は電極上に直接堆積させることもできる。エッジ領域54,56での音響波速度がより低い速度プロファイルを有することおよび本質的にフラットなモード形を得るためのエッジ長と速度差を選択することが望ましい。
【0044】
フィルタの周波数をトリミングすることが必要となることが多い。これは通常、フィルタの頂部上の材料の一部をエッチングまたは追加することによって可能となる。フィルタ構造の頂部に層を追加して所望の速度シフトを得る場合、図16aおよび図16bに示すものと同様な構成を用いることが有利であり得る。これにより、装置の中心周波数を無相関化しスプリアスモードの低減することができる。
【0045】
代替の実施形態では、引き続き図12、図16、図16aおよび図16bを参照し、エッジ領域54、56内の層84、86は、チタン層(ストリップまたはフィルムとも呼ぶ)84tおよび86tを含む。ここでは、例として図12を参照して前述したエッジ領域内の速度(Ve)が望ましく低下する。後にこの開示で説明するように、チタン層の位置、金属電極の厚みおよび誘電体層の厚みは、好ましい装置性能のために最適化されることになる。
【0046】
図17に示すように、本発明の教示による1つのトランスデューサ26は、図7および図9を参照して前述したようなものであってもよい。ここで、対向するバスバー16、18から延在するダミー電極98を備えることにより、バスバーに隣接するダミー電極領域100、102が形成され、ギャップ領域38、40の長さが低減される。端部ギャップが十分に長いので、これらのダミー電極98の有無は、装置性能に影響しない。
【0047】
図18は、本発明の別の実施形態を示す。この場合、トランスデューサ開口部中央領域46と低速エッジ領域54、56間の速度差は、低速領域で高デューティファクタを選択し中央領域に誘電体層(例としては窒化ケイ素層)を追加することによって得られる。これによって、小さなエッジ幅でありながらも、領域間での速度差を上昇させることが可能になる。これは、フォトリソグラフィ分解能によって可能なデューティファクタが制限されている高周波数の場合にも使用できる。しかしながら、このような窒化物層を追加する場合には注意しなければならない。窒化ケイ素トリミングによって、ピストンモードを不安定化し得る非均一な速度シフトが生じ得る。図12、図16、図16aおよび図16bを参照した前述のチタン層84t、86tの使用によってこうした懸念が回避できる。
【0048】
図19に示すように、ギャップ領域、エッジ領域および中央領域内の電極部は、アポダイズされたトランスデューサ26aを形成するように構成されてもよい。さらに、図20に示すように、中央領域内の電極部は、不等な横方向の長さ寸法を含み、アポダイズされたエッジ領域構造54a、56bを生成するエッジ領域について等しい横方向の長さ寸法を含んでいてもよい。さらに、図21に示すように、エッジ領域内の電極部の各々の幅寸法は先細りであってもよい。先細り電極部52tは、中央領域内の電極部の幅寸法と同じ第1の幅寸法から、ギャップ領域の電極部の幅寸法に等しい第2の幅寸法へ次第に細くなってもよい。
【0049】
例として、図19は、アポダイゼーションとフィンガ要素部分がより広い低速エッジ領域とを有するトランスデューサを示す。ほとんどのモードは低速領域を使用することにより抑制されるが、残りの偽信号を抑制するには非常に小さなアポダイゼーションが役立つであろう。この場合、必要とされるアポダイゼーションは、低速領域またはエッジ領域を使用しない場合よりはるかに小さいので、結合係数は大きいままである。さらに、図20に示すように、低速エッジ領域の幅はトランスデューサに沿って調整できる。
【0050】
図21は、低速エッジ領域での速度が一定でないトランスデューサの例を示す。この場合、デューティファクタは、エッジ領域でのフィンガ要素部分の先細りによってエッジ領域で変化する。エッジ領域での速度が中央領域での速度およびギャップエッジ領域の速度より小さい限り、速度が一定の場合と同様な挙動が得られる。フラットな横モードを得るために、低速エッジ領域幅を調整することができる。同様に、ギャップエッジ領域と共に、中央領域は一定ではない速度を持つことができる。
【0051】
図22は、本発明の教示による結合された共振器フィルタ104を示す。この場合、2つのトランスデューサ106、108が使用されている。図23は、結合された共振器フィルタ104について、ピストンモードトランスデューサを備えた場合と備えていない(標準装置)場合に得られる結果を示している。例として、本明細書に説明した本発明の実施形態の場合、リップルと挿入損失が好適に低減していることが非常に明確である。当業者は、本発明の教示の利点を利用して、所望の周波数特性を得るためにトランスデューサをさらに展開できる。例えば、図24は、3つのトランスデューサを用いた構成を示す。同様に、5つ以上のトランスデューサを使用してもよい。CRFの複数のセクションをカスケードできること、あるいはCRFのセクションを共振器要素とカスケードできることも示されている。さらに、複数の波長当たり2つの電極のSAWトランスデューサだけしか説明していないが、本発明は例えばSPUDTなどの任意のトランスデューサに適用される。
【0052】
図25a〜図25hは、本発明のピストンモード共振器の場合に得られた結果を示す。ここでは、ギャップ横方向長さが変化し、示した曲線はインピーダンスの位相であり、共振におけるQおよび反共振におけるQも示されている。また、共振器の周期は2μmであって4μmの波長に対応しており、低速側のモードは、ギャップ長が1λの場合消滅し、クォリティファクタは、ギャップ長が2λの場合に所望のものとなり、より大きなギャップ長でもその状態が維持されている。
【0053】
代替の実施形態に対して、図12、図16、図16aおよび図16bを参照して前述したように、エッジ領域54、56内の層84、86は、本明細書ではフィルムまたはストリップ84t、86tと呼ぶチタン層を含んでいてもよく、ここでのエッジ領域54、56内の速度(Ve)は好適に低減されている。例として、再度図16を参照し、チタンストリップ84t、86tそれぞれの位置、金属電極22、24の厚み22t、24t、エッジ領域54、56内の厚み92tは、装置10の好適な性能のために最適化されている。
【0054】
引き続き図16を参照し、厚みの選択は好適には、電極厚み22t、24tおよび、所望の結合係数と温度係数が得られるように選択された保護膜層92厚み92tと;ピストンモード導波装置10の構築に必要な速度シフトを得るように選択された、エッジ領域内のチタンストリップ84t、86tの厚み85t、87tと;層92、あるいは周波数変化の修正のためのトリミング時に使用するオプションとしての追加層94のSi3N4厚み範囲と、に基づいて行われる。
【0055】
前述のように、トリミングによって種々の実施形態が得られ得るが、本明細書で提示される好適な厚みの確立に使用される実施形態として図16cおよび図16dが参照される。例示したように、また本発明の教示に従って、電極22、24を備えるIDT26は、本明細書では例えば酸化ケイ素層である第1の誘電体層92内に埋め込まれている。第2の誘電体層94は、周波数トリミングのための窒化ケイ素層である。例示したように、窒化ケイ素層94は、実施形態16cの場合、導波中央領域46とエッジ領域54、56の低速度を被覆している。あるいは、窒化ケイ素トリミング層は、図16dに示したように、ギャップ領域38、40を被覆していてもよい。チタンストリップ84t、86tは、前述のように、エッジ領域54、56内だけの酸化ケイ素保護膜層94内に位置している。
【0056】
例として、本発明の実施形態で使用される典型的な厚みを以下の表Iに示す。
【表1】
【0057】
本発明のある実施形態では、エッジ領域のみ内および保護膜を形成する誘電体層内にチタンストリップが配置されている。該チタンストリップの垂直の位置はピストンモードでの不安定性を最小化するように選択され、誘電体層の頂面上を含む、電極頂部と保護膜を形成する誘電体層の表面間の誘電材料内に位置する。Tiストリップまたはフィルムを適切な垂直位置に配置することによって、導波すなわち中央領域とエッジ領域の低速度間の速度シフトは、トリミングに使用されるSi3N4層の厚み変化に対して安定化し得る。
【0058】
この配置は、Tiストリップまたはフィルム下の誘電体層の小数部分で定量化される。好適な実施形態選択のためのストラテジでは、公称値としては、例えば、Ti厚み:hTi/p≒0.08±0.003、Si3N4厚み:0.005≦hSi3N4/p≦0.015、保護膜でのTi位置:電極の頂部から誘電体層(保護膜)92の表面までの距離の0%〜100%が含まれていた。
【0059】
例えば、例として本明細書で説明した構造の場合、構造形状を選択する基準は、例として、Yカット128°ニオブ酸リチウム基板12を使用して図16dの実施形態で示したように、好適な速度シフトを得るためのTiストリップの厚み選択と、共振器周波数に対して調整するためのSi3N4トリミング材の厚み変更と、周波数調整による速度シフト変化を最小化するための誘電体保護膜でのTiストリップ位置の選択と、であった。
【0060】
誘電体層内の電極表面から誘電体表面に向かって約80%上部にチタンストリップを配置することによって、中央領域とエッジ領域間に安定した速度シフトが作られることを示してきた。
【0061】
図26a〜図26kは、本明細書では例えば、トリミングと周波数調節を行うための中央領域上に使用された窒化ケイ素層の種々の厚みだけに対して、エッジ領域の誘電体層内に配置されたチタンストリップでの速度シフトを示す。Si3N4とTi厚みの関数としての速度シフトのこのような等高線図は、保護膜内の種々の位置におけるTiの配置を比較するために使用される。図27および図28に示すように、チタンストリップの配置によって速度シフトが安定化され、電極頂部から誘電体層の頂部エッジまでの距離の約80%におけるチタンストリップの好適な配置が得られる。このようなプロセスによって、フィルタ製造者にとっては、ピストンモード導波のトリミングの影響を最小化し、これによってピストンモードでの不安定性を最小化する好適な実施形態を特定することが可能となる。これらの非均一なシフトによってピストンモードが不安定になる。従って、チタンストリップの誘電体層(保護膜)内での配置すべき位置と、トリミング量と中央領域被覆のために使用される窒化ケイ素量への依存性と、を知ることが好ましい。
【0062】
さらなる例として、下表IIでは、速度シフトに対する安定性許容範囲と誘電体保護膜内でのチタンストリップの配置とを関連付けている。
【表2】
【0063】
より一般的には、エッジ領域と中央領域間の速度シフトの周波数トリミングに対する感度は、誘電体層92とは特性的に異なる層を埋め込むことによって、またその深さを最適化することによって低減できる。今や本発明が教示する利点を得た当業者は、エッジ領域での速度が小さいという結果が得られる限り、Ti以外の金属も同様に誘電材料として使用できることは理解するであろう。誘電体層92にこれらの層を埋め込み、その深さを最適化することによって、トリミングに対する感度は低減するであろう。前述のように、最適な深さは、基板材料、基板の方位、トランスデューサを被覆する誘電体層の性質と厚み、および金属電極の性質と厚みに依存するであろう。同様に、速度の上昇をもたらす層は、誘電体層内の最適な位置に埋め込みできる。
【0064】
上記の説明および関連した図面で提示した教示の利点を有する当業者は、本発明の多くの変更と他の実施形態を想到するであろう。従って、本発明は開示した特定の実施形態に限定されないこと、および変更および実施形態は添付の特許請求の範囲内に包含されるものと意図されることは理解される。
【技術分野】
【0001】
本発明は広くは音響波装置と関連の方法に関し、より詳細には、トランスデューサ開口部内で概ねフラットな伝播モードを得る音響波装置のトランスデューサ電極の変更に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年9月22日出願の米国特許出願第12/564,305号の一部継続出願であり、その開示のすべては参照により本明細書に援用され、すべては共通に所有される。
【0003】
本明細書では、「表面弾性波(SAW)」および「SAW装置」という用語は、材料の表面上あるいは複数の材料の界面における弾性波の伝播を使用する任意の装置に対して参照及び使用されるものとする。本明細書で説明される開示は、弾性波がインターデジタルトランスデューサ(IDT)を使用して生成または検出される限り、様々な種類の弾性波に適用され得ることは理解されるべきである。例えば、所謂、漏れSAW、擬似SAW、境界波、表面横波、界面波またはラブ波は本明細書ではSAWと見なされる。
【0004】
従来技術で周知のように、SAW装置はIDTを用いて電気エネルギを音響エネルギに、または逆に音響エネルギを電気エネルギに変換する。例えば図1に示すIDTは、圧電基板と、2つの異なる電位にある2つの対向するバスバーと、該2つのバスバーに接続された2つの電極セットとを使用する。圧電効果により、電位が異なる2つの連続する電極間の電界は音響源となる。
【0005】
逆に、トランスデューサが入射波を受ける場合、圧電効果の結果として、電極に電荷が生じる。図2に示すように、2つの反射格子間にトランスデューサ配置することにより、共振器が得られる。従来技術で周知のように、複数の共振器を接続することにより、あるいは、1つまたは複数のIDTから受け取られる音響エネルギを生成する1つまたは複数の伝播IDTを有することにより、フィルタまたはデュプレクサが設計できる。
【0006】
表面弾性波(SAW)装置を設計する場合の典型的な1つの問題は、トランスデューサ領域での弾性波の速度がバスバー領域での速度よりも遅くなることに関するものである。トランスデューサは、トランスデューサからの音響エネルギの漏れを防止する導波路として機能し、損失の低減に役立つ。しかしながら、この導波路が複数の音響波伝播導波モードをサポートするとき、装置の伝達関数により、望ましくないリップルまたは偽信号がもたらされる。これは一般に複数の方法で対処される。
【0007】
1つの方法は、1つの導波モードだけを持つように小さな音響開口部を選択することを含む。この方法によって、装置に対して過度の負荷または好ましくない信号源インピーダンスが生じ得る。別の方法は、モードの横プロファイルの一致を試みるために、トランスデューサのアポダイゼーションを使用することを含む。この方法でも、望ましくない大きなインピーダンスと、電気機械結合の低減と、損失が生じる。横モードを減少させるさらに別の方法として、二次元の障害物を周期的に使用する方法があるが、この場合はより複雑な製造プロセスが必要になる。
【0008】
ピストンモードアプローチは、トランスデューサ開口部に本質的にフラットな形状を持つ1つの伝播モードを保持するために、トランスデューサの速度プロフィールの変化に依存する。このアプローチは、トランスデューサでの速度がバスバー内の速度でのものより遅い場合については米国特許第7,576,471号に開示されており、その全体は参照により本明細書に援用される。
【0009】
ニオブ酸リチウムなどの高結合基板では、表面での電気的条件が速度に大きな影響を与え、通常、電極端部ギャップでの速度はトランスデューサ開口部での速度よりはるかに大きく、またバスバーでの速度より大きい。該ギャップの長さは通常、電極幅と同程度であり、典型的には音響波長の何分の1かである。この場合、エッジギャップへの反射による横モードとトランスデューサ外部へのエネルギ漏れが生じる。トランスデューサ領域とギャップ領域の間の速度差は、エッジへの全反射には十分な大きさである。
【0010】
不要な横モードを抑制するために、典型的な一方法は、図3に示すようにアポダイゼーションの使用を含む。この場合、エッジギャップの位置はトランスデューサ開口部領域内まで延びている。ギャップの位置はモードに大きな影響を及ぼすので、モード形はトランスデューサの長さに沿って変化する。その結果、望ましくない横モードが異なる周波数で発生し、所望の効果が低下する。
【0011】
同様に、Ken Hashimotoは、「T.Omori,*K.Matsuda,Y.Sugama,*Y.Tanaka,K.Hashimoto and M.Yamaguchi,「Suppression of Spurious Responses for Ultra−Wideband and Low−Loss SAW Ladder Filter on a Cu−grating/15°YX−LiNbO3 Structure」,2006 IEEE Ultrasonics symp.,pp1874−1877」の中で、図4に示すように、ギャップ位置は一定だが開口部はトランスデューサ内で変化するトランスデューサを提示した。これは、ダミー電極アポダイゼーションの使用と呼んでもよい。このトランスデューサは、それに沿った横モード周波数を変化させることで機能する。
【0012】
さらなる例として、Murataの米国特許出願第2007/0296528A1には、図5に示すように、エッジギャップ領域とトランスデューサ開口部領域間の速度差を低減するためにエッジギャップの前で電極の幅を広くしたSAWトランスデューサが記載されている。Murataの別の米国特許出願第2008/0309192A1号には、図6に示すようにアポダイゼーションの変形版が開示されている。そのような場合の位相やインピーダンスを含む性能特性を図6aのグラフに示す。
【0013】
SAWトランスデューサでは、再度図3に示すように、所謂「ダミー電極」がしばしば使用される。これらのダミーの電極は、特にアポダイゼーションを使用する場合に、トランスデューサの活性領域とトランスデューサの不活性領域間の速度差を抑制するために使用される。
【0014】
典型的には、ダミー電極と活性電極とを分離する電極端部ギャップは、その効果をできるだけ低減するために、電極幅程度の大きさ(波長の何分かの1)で選択される。高結合材料が選択された場合、ギャップでの速度は、トランスデューサでの速度よりかなり大きくなる。この場合、ギャップ長が短くても、ギャップ位置は横モードに非常に大きな影響を及ぼすことが分かる。
【0015】
これらの教示はすべて、トランスデューサのエッジギャップにおける望ましくない効果を低減しようとするものである。良好なクォリティファクタが実証されたとしても、アポダイゼーションにより等価結合係数の望ましくない低下が生じる。さらに、トランスデューサに対して導波が著しく軽減されるか、あるいは有用なエネルギがトランスデューサの外部に漏れるような波速度となる。
【0016】
例として、高結合基板を使用する場合の問題を再度述べると、SAW共振器またはSAWトランスデューサを設計する場合の難しさの1つは、トランスデューサ開口部領域よりはるかに大きな速度を有する電極エッジギャップの存在である。これは特に、レイリー波またはラブ波が使用される場合の問題である。特に、一般に、Y+128°近傍またはY+15°近傍の方位を有するニオブ酸リチウム基板で発生する。これらの方位は、感温性を低下させるための酸化ケイ素誘電体層または保護膜と共にしばしば使用される。音響反射率を高めるために銅などの電極用重金属が使用される場合も多い。
【0017】
この場合、モード形と周波数は、トランスデューサ領域内のギャップ位置に強く依存する。アポダイゼーションを使用する場合、ギャップ位置が変化することから、これらのモード形と速度はトランスデューサに沿って変化する。これによって、ギャップ位置が異なる領域間でモード変換と損失が生じる。さらに、アポダイゼーションによって、装置の等価圧電結合が低減される。高結合基板では通常の場合、バスバーでの速度がトランスデューサでの速度より小さいと、トランスデューサ領域での導波は発生せず、エネルギが外部に漏れて、やはり損失とクォリティファクタの低下が生じる。
【発明の概要】
【0018】
例として、本明細書で説明する本発明の実施形態では、高結合基板上にSAWトランスデューサまたはSAW共振器を形成し、アポダイゼーションを必要とすることなく、トランスデューサ領域のエネルギを誘導する方法を提供する。より高い等価結合係数とより少ない損失とが得られる。アポダイゼーションの代替として、トランスデューサ領域での導波を保証することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の十分な理解のために、本発明の種々の実施形態を示す添付図と共に、以下の詳細な説明を参照する。
【図1】図1は、インターデジタルトランスデューサ(IDT)の概略図である。
【図2】図2は、SAW共振器の概略図である。
【図3】図3は、要素の三角形アポダイゼーションを有するSAW共振器の概略図である。
【図4】図4は、ダミー電極アポダイゼーションを含むSAW共振器の概略図である。
【図5】図5は、ギャップ領域での速度を低減するためのIDT構成の概略図である。
【図6】図6は、二重の三角形アポダイゼーションを有するトランスデューサの概略図である。
【図6a.1】図6a.1は、二重の三角形アポダイゼーションの場合に生成するインピーダンスを示す。
【図6a.2】図6a.2は、二重の三角形アポダイゼーションの場合に生成する位相特性を示す。
【図7】図7は、長いギャップと、要素内に対応する速度プロファイルを有するトランスデューサの概略図である。
【図8】図8は、中央領域と物理的に異なり、中央領域およびギャップ領域よりも小さな速度プロファイルを有する長いギャップエッジ領域を有する、本発明の教示によるトランスデューサの概略図である。
【図9】図9は、長いエッジギャップと変形エッジ領域を有し、ギャップ領域での電極の幅がトランスデューサ領域での幅と同じであるトランスデューサの例を示す。
【図10】図10は、長いエッジギャップと変形エッジ領域を有し、ギャップ領域での電極の幅がエッジ領域での幅と同じであるトランスデューサの例を示す。
【図11】図11は、横モードが低減されQが向上した共振器であって、2つの格子が短絡していることを除けば、トランスデューサと同じ音響構造を有し、この短絡は、格子の外側において接続を追加することによりもたらされる共振器の概略図である。
【図11a.1】図11a.1は、共振器の周期が2μm、エッジ長が3μmである図11の共振器の特性データを示す。
【図11a.2】図11a.2は、共振器の周期が2μm、エッジ長が3μmである図11の共振器の特性データを示す。
【図11a.3】図11a.3は、共振器の周期が2μm、エッジ長が3μmである図11の共振器の特性データを示す。
【図12】図12は、エッジ領域での速度低減のために頂部に誘電体層または金属層を有し、ダミー電極のないトランスデューサの概略図である。
【図13】図13は、中央領域での速度上昇のために頂部に誘電体層または金属層を有し、ダミー電極のないトランスデューサの概略図である。
【図14】図14は、中央領域での速度上昇のために頂部に誘電体層を有し、ダミー電極のない共振器の概略図である。
【図15】図15は、電極が誘電材料(例えばSiOX)に埋め込まれたSAW装置の概略断面図である。
【図16】図16は、本発明の一実施形態を、高速誘電材料がトランスデューサ中央領域の頂部に層状に重ねられて酸化ケイ素内に埋め込まれた電極に沿った断面図で示す。
【図16a】図16aは、所望の速度構成を得るために高速誘電体が使用され、酸化ケイ素に埋め込まれた装置の電極に沿った一実施形態の概略断面図である。ここでは、周波数トリミングプロセスを容易にするために、この高速材料がトランスデューサの全表面(ギャップ/エッジ/トランスデューサ)に追加され、中央にはさらなる材料が追加されており、一部の高速材料が除去されても、高速材料の厚みの差は一定に保たれるので、速度差は所望の値に維持される。
【図16b】図16bは、本発明の教示による一実施形態を、適切な速度構成を得るために低速誘電材料が使用され、酸化ケイ素に埋め込まれた改良された装置の例における電極に沿った断面図で示す。ここでは、周波数トリミングプロセスを容易にするために、この高速材料がトランスデューサの全表面(ギャップ/エッジ/トランスデューサ)に追加され、中央にはさらなる低速材料が追加され、あるいは中央領域に埋め込まれていてもよい。
【図16c】本発明の教示による実施形態を、酸化ケイ素層に埋め込まれたIDTの電極に沿った断面図で示す。ここでは、周波数トリミングのために窒化ケイ素層が使用されており、この窒化ケイ素層は、図16cの実施形態では中央領域とエッジ領域に追加されている。また、チタンストリップなどの「低速」材料がエッジ領域内だけの酸化ケイ素保護膜内に配置されている。
【図16d】本発明の教示による実施形態を、酸化ケイ素層に埋め込まれたIDTの電極に沿った断面図で示す。ここでは、周波数トリミングのために窒化ケイ素層が使用されており、この窒化ケイ素層は、図16dの実施形態では好適にギャップ領域内まで延在している。また、チタンストリップなどの「低速」材料がエッジ領域内だけの酸化ケイ素保護膜内に配置されている。
【図17】図17は、長いエッジギャップとより低速のエッジ領域を有し、ギャップ領域での電極幅はトランスデューサ領域での幅と同じであり、ダミー電極が存在するトランスデューサの例を示す。
【図18】図18は、長いエッジギャップとより低速のエッジ領域を有する本発明の教示によるトランスデューサの例を示す。ここでは、デューティファクタを高めることによってエッジ領域での速度が低減されており、その頂部に誘電体層を追加することによって中央領域での速度が増加されている。
【図19】図19は、長いエッジギャップとより低速のエッジ領域を有するトランスデューサの一例を示す。ここでは、横モードレベルをさらに低減するために一部のアポダイゼーションを有するが、この場合は非常に軽いアポダイゼーションで十分である。
【図20】図20は、低速エッジ領域幅が一定でないトランスデューサの一例を示す。
【図21】図21は、長いエッジギャップとより低速のエッジ領域を有し、より低速の領域の速度が一定でないトランスデューサの一例を示す。
【図22】図22は、モード抑制を備える2つのトランスデューサが結合された共振器フィルタの一例を示す。
【図23】図23は、標準の装置と、本発明の教示によるピストンモードトランスデューサを使用した装置で行った伝達関数の比較を示す。
【図24】図24は、本発明の教示によるモード抑制を備える3つのトランスデューサが結合された共振器フィルタの一例を示す。
【図25】図25a〜図25hは、本発明のピストンモード共振器で得られた結果を示す。ここでは、種々のギャップエッジ長が示されており、図示されたグラフは、インピーダンスの位相、共振におけるQおよび反共振におけるQを示す。共振の周期は2μmであり、4μmの波長に対応している。低速側のモードはギャップ長が1λの場合に消滅する。クォリティファクタは、ギャップ長が3λの場合に所望の値となり、より大きなギャップ長に対しても所望の値は維持される。
【図26】図26a〜図26kは、保護膜誘電体層(本明細書では酸化ケイ素)内に埋め込まれたチタンストリップの種々の位置に対する窒化ケイ素トリミング材料厚みの関数として、電極のエッジ領域内にチタンストリップが埋め込まれた場合のエッジ領域での速度シフトに対する厚みを示す曲線である。上記の種々の位置は、エッジ領域の誘電体層内に延在する電極上の0%から100%までの、増分10%での位置である。
【図27】図27は、電極のエッジ領域における誘電体層内のチタンストリップの位置の関数としての、公称の波速度シフトを示す曲線である。
【図28】図28は、窒化ケイ素トップ層の種々の厚みに対する、エッジ領域の誘電体層内のチタンストリップの位置の関数としての速度シフトの変形を示す曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の諸実施形態を示す添付図を参照して本発明をより詳細に説明する。但し、本発明は多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。これらの実施形態は、本開示を完璧で完全なものにし、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供されるものである。
【0021】
長手方向に延在するエッジ領域内のトランスデューサ電極の物性が変更されて、該エッジ領域内の音響波の波速度がトランスデューサ中央領域内の波速度より小さく、対向するギャップ領域内の波速度がトランスデューサ中央領域の速度より大きくなると、好適なことに、フラットな伝播モードが生じる。さらに、長手方向に延在するエッジ領域のトランスデューサの物性が変更されて、該エッジ領域内の音響波の波速度がトランスデューサ中央領域内の波速度より小さく、対向するギャップ領域内の波速度がトランスデューサ中央領域内の波速度より大きくなると、本質的にフラットな伝播モードがトランスデューサ開口部内に生じる。このモードにおける振幅は電気音響源の振幅に一致するため、それは優先的に励振されるであろう。高結合基板上のSAWトランスデューサまたはSAW共振器はこうして、アポダイゼーションを必要とせずに、トランスデューサ領域でエネルギを誘導する。より高い等価結合係数とより少ない損失とが得られる。エッジ領域の物性は、電極寸法を変えるか、エッジ領域に誘電体層または金属層を追加するか、あるいはこれらの組み合わせによって変更できる。誘電体層(またはこの複数)は中央領域に追加されてもよい。誘電体層は本明細書では例として説明されるが、該層は、誘電体層、複数の誘電体層、金属層あるいはこれらの組み合わせの内の1つであってもよいと理解される。その結果、対向するギャップ領域内での音響波の速度は、ギャップ領域間のトランスデューサ中央領域での速度より大きくなり、エッジ領域での速度は中央領域での速度より小さくなるため、トランスデューサの開口部(中央領域)内に本質的にフラットな望ましい伝播モードが生じる。
【0022】
例として、音響波を支持する表面14を有する圧電基板12を備えた音響波装置10として、本発明のある実施形態を図7及び図8を参照して説明する。第1の細長いバスバー16と、対向する第2の細長いバスバー18は、概ね音響波の長手方向20に沿って延在している。複数の第1の電極22は第1のバスバー16と電気的に接続されてそれから概ね横方向に延在し、複数の第2の電極24は第2のバスバー18と電気的に接続されてそこから延在している。対向するバスバー16、18および複数の電極22、24は、音響波伝播を支持する圧電基板12の表面14に担持されたインターデジタルトランスデューサ(IDT)26を形成する。
【0023】
引き続き図7および図8を参照し、複数の電極22、24のそれぞれは、第1のバスバー16および第2のバスバー18の内の1つと電気的に接続された第1の端部28と、対向するバスバー16、18から離間したエッジ32を有する対向する第2の端部30とを有し、これにより、電極22、24のそれぞれのエッジと対向するバスバー16、18との間にギャップ34、36を形成する。対向するバスバー16、18に近接するギャップ34、36は、トランスデューサに沿って長手方向に延在し概ね互いに平行なギャップ領域38、40を形成する。
【0024】
本発明の実施形態では、以下にさらに詳細に述べるように、ギャップ34、36の長さ寸法42は、IDT26内で伝播される音響波の一波長より長い。一波長より長くまた三波長より長いことが好適に効果的であることが示された。さらに、引き続き図8を参照して、複数の電極22、24のそれぞれは、電気的に接続された関連するバスバー16、18に近接しギャップ領域38、40内に概ね含まれる横方向に延在する第1の電極部50と、エッジ32に近接しトランスデューサ26に沿って長手方向に延在するエッジ領域54、56を定義する横方向に延在する第2の電極部52と、により定義される。電極22、24の横方向に延在する第3の電極部58は、横方向に延在する第1および第2の電極部50および52の間に延在する。横方向に延在する第3の電極部58は、その全体がトランスデューサ中央領域46内に存在する。
【0025】
さらに図8に示されるように、エッジ領域54、56の物性は、中央領域46の電極部58の物性とは異なっており、エッジ領域波速度(Ve)は中央領域波速度(Vc)より小さく、対向するギャップ領域38、40内の音響波の速度44は、対向するギャップ領域間のトランスデューサ中央領域46の速度より大きいという結果をもたらしている。
【0026】
例として、図9を参照し、対向するエッジ領域54、56内の横方向に延在する第2の電極部52の幅寸法60は、ギャップ領域38、40およびトランスデューサ中央領域46内の横方向に延在する第1および第3の電極部50、58のそれぞれの幅寸法62、64より大きく、それによって、向上したデューティファクタと、従って、トランスデューサ中央領域46内の波速度より小さいエッジ領域54、56内の波速度44と、が得られる。トランスデューサのデューティファクタに関し、エッジ領域の物性はトランスデューサ中央領域のそれとは異なっている。本質的にフラットな伝播モードがトランスデューサ26の開口部48内に生じる。図9を参照して本明細書で説明した本発明の実施形態は、IDTによって伝播される波長の少なくとも3倍より長いギャップ長寸法を含む。
【0027】
例として、本明細書で説明する本発明の実施形態では、エッジギャップ長は、ギャップによるトンネル効果の低減さらには除去のために十分に長くしてもよい。本明細書では長い端部ギャップ34、36が開示されている。「長い」とは本明細書では、少なくとも伝播波の波長およびSAW装置で典型的に使用されるものより大きなギャップの長さ寸法を示すものとして使用される。一波長以上のエッジギャップ長によって、望ましい導波が得られる。三波長より大きなエッジギャップ長によって、さらに向上した導波が可能となる。この場合、非常に強い横モードが得られる。これらの強い横モードにかかわらず、エネルギはトランスデューサ内に限定されるので、損失は少ない。例として再度図8を参照し、横モードを減少させるために、エッジでの低速度によって、トランスデューサ領域に本質的にフラットなモードが得られる。これは例えば、電極のエッジにおけるデューティファクタを増加させることにより実現できる。フラットモード、すなわち所謂ピストンモードが得られる。信号源プロファイルがほぼ完全にモード形に一致するため、他のモードはほとんど励振されない。
【0028】
図10を参照し、装置10の一実施形態は、関連する電気的に接続されたバスバー16、18に近接しギャップ領域38、40内に概ね含まれる横方向に延在する第1の電極部50と、エッジ32に近接し、トランスデューサ26に沿って長手方向に延在するエッジ領域54、56を定義する横方向に延在する第2の電極部52と、によって定義される複数の電極22、24のそれぞれをさらに含む。電極22、24の横方向に延在する第3の電極部58は、横方向に延在する第1および第2の電極部50、52間に延在する。横方向に延在する第3の電極部58は、その全体がトランスデューサ中央領域46内に存在する。
【0029】
引き続き図10を参照して説明する本明細書の実施形態では、ギャップ領域38、40およびエッジ領域54、56それぞれ内の横方向に延在する第1および第2の電極部50、52は、トランスデューサ中央領域46内に存在する横方向に延在する第3の電極部58の幅寸法64より大きな幅寸法60、62を有しており、これにより、向上したデューティファクタと、従って、トランスデューサ中央領域内の波速度より小さな長手方向に延在するエッジ領域内の波速度44と、が得られる。
【0030】
図10は、長い端部ギャップ34、36を使用してトランスデューサ内の導波を可能にする本発明の別の実施形態を示す。横モードを低減するために、トランスデューサのエッジでの速度は、エッジ領域38,40内のフィンガ要素部分に対するデューティファクタを増加させることによって低減される。図9の場合、ギャップでのデューティファクタはエッジ領域でのものと同じであり、デューティサイクルは、図10の実施形態での中央領域におけるギャップでのものと同じである。
【0031】
図9および図10の実施形態での両方の構成とも、ギャップ領域38、40での平均速度44がトランスデューサ開口部中央領域46での速度より大きく、エッジ領域での速度が中央領域での速度より小さければ、他の構成と同様に機能する。本質的にフラットなモードを優先的に励振するために、エッジ領域の長さおよびその速度を調節してトランスデューサ中央領域にこのモードを得る。本発明を機能させるために重要なパラメータは、異なる領域における平均速度であることを理解することが重要である。それは、エッジ領域での平均速度が中央領域でのものより遅く、ギャップ領域での平均速度が中央領域でのものより早い限り、連続する電極領域が物理的に同一でなくても(例えば幅が異なっていても)、恐らく同様な結果が得られることを意味する。さらに、対向するバスバーは厳密に平行である必要がないことも理解される。ギャップ領域が十分に大きければ、バスバーでの音響エネルギは無視されてもよく、それらの正確なレイアウトは、装置性能にわずかな影響を及ぼすのみである。
【0032】
図11に示すように、装置10は、インターデジタルトランスデューサ26の長手方向の対向する端部70、72上の基板12の表面14上に担持された第1および第2の格子66、68をさらに備えていてもよい。さらに、対向する格子66、68内にあり、トランスデューサ26から最も隔たった予め選択された電極74、76は、接続バー78経由で電気的に接続されて短絡されている。引き続き図11に示すように、第1および第2格子66、68は、これに限定されないが、トランスデューサ26内の電極22、24のように構成された電極80、82を備えていてもよい。
【0033】
格子66、68とトランスデューサ26間の分離部におけるモード変換を避けるために、該格子が音響エネルギの再生を避けるために短絡されていることを除いてトランスデューサと同様である。この短絡は、電極の金属接続部を追加することによりあるいは外的に行うことができる。この追加接続部は、音響エネルギが最も小さくその影響も最も小さい反射器の外部に配置されることが好ましい。
【0034】
図11a.1、11a.2および11a.3は、図9の実施形態を参照して説明した本発明の共振器で得られるインピーダンス曲線を示す。基板はYカット128°ニオブ酸リチウムとした。電極は銅金属で構成し、酸化ケイ素層内に埋め込んでいる。金属の厚みは2500Å、該酸化物の厚みは1μmであった。トランスデューサと反射器の周期は2μmである。トランスデューサのデューティファクタは50%であり、エッジおよびギャップにおけるそれは75%であった。共振器はアクティブ電極を200個備えていた。アクティブ開口部は80μmであり、ギャップ領域は20μm〜40μmの間で変化した。図示のように、エッジ長が2μm〜5μm、従って波長の0.75〜1.2倍の場合に望ましい結果が得られた。得られたクォリティファクタは共振において1252であり、反共振において1424であった。このモードは減衰する。比較として、同じ金属と酸化物について、三角形アポダイゼーションを使用した場合、クォリティファクタは850より小さい。これによって、提示した実施形態が優れていることがわかる。
【0035】
図12を参照し、前述の音響波装置10は、トランスデューサに沿って長手方向に延在した誘電体層または金属層84、86を有するトランスデューサ26を備えていてもよい。ここで、該誘電体層または金属層84、86は、エッジ領域54、56内の電極部52のみを被覆し、トランスデューサ中央領域46には存在しない。エッジ領域54、56での速度を低減するこの代替実施形態は、エッジ領域84、86に誘電体層または金属層84、86を追加することを含む。
金属層は電極の上方または下方のエッジに追加されてもよい。
【0036】
後にこの節でさらに詳細に説明するように、誘電体層の最適な深さに配置されたチタン(Ti)を含む金属層は、誘電体層と組み合わせられてもよい。
【0037】
図13に示すように、窒化アルミニウムまたは窒化ケイ素などの音響速度が速い層を中央領域に追加してもよい。この場合も同様の音速速度構成が得られ、エッジでの速度は最も小さく、ギャップでの速度は大きく、中央での速度はエッジでの速度より大きくなる。層の厚みおよびまたはエッジ幅を適切に選択することにより、フラットな伝播モードが得られる。従って、エッジ領域の物性は、エッジ領域またはトランスデューサ中央領域上に適切な誘電体層を追加することによって中央領域のものとは違ったものにできる。
【0038】
図13および18に示すように、トランスデューサ26は、トランスデューサ中央領域46内の電極部58を被覆する誘電体層を有するトランスデューサに沿って長手方向に延在する誘電体層88を備えていてもよい。共振器90の概略図を示す図14にさらに示すように、共振器90は、トランスデューサ26と隣接する格子66、68との両方に対する中央領域内の電極の頂部に誘電体層88を有し、中央領域46内の音響波の速度を高めている。図18にさらに示すように、誘電体層88は、誘電体部884に示すように、トランスデューサ境界を越えて延在していてもよい。
【0039】
トランスデューサを十分に被覆する酸化ケイ素層または保護膜の感温性は、エッジ領域長を音響波長の1.5倍より小さくすることによって低下する。
【0040】
さらなる例として、図14は、図13の構成を使用した1つの共振器を示す。繰り返しになるが、トランスデューサ構成と類似した音響構成を有する反射器の選定には注意が必要である。
【0041】
図15は、1つの埋め込みIDT構成を示す。この場合、図16にさらに示すように、速度シフトを実現する追加層は頂部に堆積することができる。一実施形態では、第1の誘電体層92はトランスデューサ26を被覆しており、第2の誘電体層94はトランスデューサに沿って長手方向に延在し、トランスデューサ中央領域46内の電極部だけを被覆している。前述のように、また後に本開示で詳細に説明するように、エッジ領域内の誘電体層の1つは、金属で置き換えられてもよい。一実施形態では、チタンがエッジ領域内だけに追加されている。
【0042】
オプションとして、図16aおよび図16bを参照し、装置10は、トランスデューサ26を被覆する第1の誘電体層92と、トランスデューサに沿って長手方向に延在しギャップ領域38、40、エッジ領域54、56および中央領域46内の電極部を被覆する第2の誘電体層94と、さらに備えていてもよい。さらに、図16aに示すように、中央領域46内の電極部をさらに被覆する第3の誘電体層96が含まれていてもよい。またさらに、図16bに示すように、エッジ領域54、56内の電極を被覆する第3の誘電体層96が含まれていてもよい。
【0043】
所望の技術的選択に応じて、これらの層は電極上に直接堆積させることもできる。エッジ領域54,56での音響波速度がより低い速度プロファイルを有することおよび本質的にフラットなモード形を得るためのエッジ長と速度差を選択することが望ましい。
【0044】
フィルタの周波数をトリミングすることが必要となることが多い。これは通常、フィルタの頂部上の材料の一部をエッチングまたは追加することによって可能となる。フィルタ構造の頂部に層を追加して所望の速度シフトを得る場合、図16aおよび図16bに示すものと同様な構成を用いることが有利であり得る。これにより、装置の中心周波数を無相関化しスプリアスモードの低減することができる。
【0045】
代替の実施形態では、引き続き図12、図16、図16aおよび図16bを参照し、エッジ領域54、56内の層84、86は、チタン層(ストリップまたはフィルムとも呼ぶ)84tおよび86tを含む。ここでは、例として図12を参照して前述したエッジ領域内の速度(Ve)が望ましく低下する。後にこの開示で説明するように、チタン層の位置、金属電極の厚みおよび誘電体層の厚みは、好ましい装置性能のために最適化されることになる。
【0046】
図17に示すように、本発明の教示による1つのトランスデューサ26は、図7および図9を参照して前述したようなものであってもよい。ここで、対向するバスバー16、18から延在するダミー電極98を備えることにより、バスバーに隣接するダミー電極領域100、102が形成され、ギャップ領域38、40の長さが低減される。端部ギャップが十分に長いので、これらのダミー電極98の有無は、装置性能に影響しない。
【0047】
図18は、本発明の別の実施形態を示す。この場合、トランスデューサ開口部中央領域46と低速エッジ領域54、56間の速度差は、低速領域で高デューティファクタを選択し中央領域に誘電体層(例としては窒化ケイ素層)を追加することによって得られる。これによって、小さなエッジ幅でありながらも、領域間での速度差を上昇させることが可能になる。これは、フォトリソグラフィ分解能によって可能なデューティファクタが制限されている高周波数の場合にも使用できる。しかしながら、このような窒化物層を追加する場合には注意しなければならない。窒化ケイ素トリミングによって、ピストンモードを不安定化し得る非均一な速度シフトが生じ得る。図12、図16、図16aおよび図16bを参照した前述のチタン層84t、86tの使用によってこうした懸念が回避できる。
【0048】
図19に示すように、ギャップ領域、エッジ領域および中央領域内の電極部は、アポダイズされたトランスデューサ26aを形成するように構成されてもよい。さらに、図20に示すように、中央領域内の電極部は、不等な横方向の長さ寸法を含み、アポダイズされたエッジ領域構造54a、56bを生成するエッジ領域について等しい横方向の長さ寸法を含んでいてもよい。さらに、図21に示すように、エッジ領域内の電極部の各々の幅寸法は先細りであってもよい。先細り電極部52tは、中央領域内の電極部の幅寸法と同じ第1の幅寸法から、ギャップ領域の電極部の幅寸法に等しい第2の幅寸法へ次第に細くなってもよい。
【0049】
例として、図19は、アポダイゼーションとフィンガ要素部分がより広い低速エッジ領域とを有するトランスデューサを示す。ほとんどのモードは低速領域を使用することにより抑制されるが、残りの偽信号を抑制するには非常に小さなアポダイゼーションが役立つであろう。この場合、必要とされるアポダイゼーションは、低速領域またはエッジ領域を使用しない場合よりはるかに小さいので、結合係数は大きいままである。さらに、図20に示すように、低速エッジ領域の幅はトランスデューサに沿って調整できる。
【0050】
図21は、低速エッジ領域での速度が一定でないトランスデューサの例を示す。この場合、デューティファクタは、エッジ領域でのフィンガ要素部分の先細りによってエッジ領域で変化する。エッジ領域での速度が中央領域での速度およびギャップエッジ領域の速度より小さい限り、速度が一定の場合と同様な挙動が得られる。フラットな横モードを得るために、低速エッジ領域幅を調整することができる。同様に、ギャップエッジ領域と共に、中央領域は一定ではない速度を持つことができる。
【0051】
図22は、本発明の教示による結合された共振器フィルタ104を示す。この場合、2つのトランスデューサ106、108が使用されている。図23は、結合された共振器フィルタ104について、ピストンモードトランスデューサを備えた場合と備えていない(標準装置)場合に得られる結果を示している。例として、本明細書に説明した本発明の実施形態の場合、リップルと挿入損失が好適に低減していることが非常に明確である。当業者は、本発明の教示の利点を利用して、所望の周波数特性を得るためにトランスデューサをさらに展開できる。例えば、図24は、3つのトランスデューサを用いた構成を示す。同様に、5つ以上のトランスデューサを使用してもよい。CRFの複数のセクションをカスケードできること、あるいはCRFのセクションを共振器要素とカスケードできることも示されている。さらに、複数の波長当たり2つの電極のSAWトランスデューサだけしか説明していないが、本発明は例えばSPUDTなどの任意のトランスデューサに適用される。
【0052】
図25a〜図25hは、本発明のピストンモード共振器の場合に得られた結果を示す。ここでは、ギャップ横方向長さが変化し、示した曲線はインピーダンスの位相であり、共振におけるQおよび反共振におけるQも示されている。また、共振器の周期は2μmであって4μmの波長に対応しており、低速側のモードは、ギャップ長が1λの場合消滅し、クォリティファクタは、ギャップ長が2λの場合に所望のものとなり、より大きなギャップ長でもその状態が維持されている。
【0053】
代替の実施形態に対して、図12、図16、図16aおよび図16bを参照して前述したように、エッジ領域54、56内の層84、86は、本明細書ではフィルムまたはストリップ84t、86tと呼ぶチタン層を含んでいてもよく、ここでのエッジ領域54、56内の速度(Ve)は好適に低減されている。例として、再度図16を参照し、チタンストリップ84t、86tそれぞれの位置、金属電極22、24の厚み22t、24t、エッジ領域54、56内の厚み92tは、装置10の好適な性能のために最適化されている。
【0054】
引き続き図16を参照し、厚みの選択は好適には、電極厚み22t、24tおよび、所望の結合係数と温度係数が得られるように選択された保護膜層92厚み92tと;ピストンモード導波装置10の構築に必要な速度シフトを得るように選択された、エッジ領域内のチタンストリップ84t、86tの厚み85t、87tと;層92、あるいは周波数変化の修正のためのトリミング時に使用するオプションとしての追加層94のSi3N4厚み範囲と、に基づいて行われる。
【0055】
前述のように、トリミングによって種々の実施形態が得られ得るが、本明細書で提示される好適な厚みの確立に使用される実施形態として図16cおよび図16dが参照される。例示したように、また本発明の教示に従って、電極22、24を備えるIDT26は、本明細書では例えば酸化ケイ素層である第1の誘電体層92内に埋め込まれている。第2の誘電体層94は、周波数トリミングのための窒化ケイ素層である。例示したように、窒化ケイ素層94は、実施形態16cの場合、導波中央領域46とエッジ領域54、56の低速度を被覆している。あるいは、窒化ケイ素トリミング層は、図16dに示したように、ギャップ領域38、40を被覆していてもよい。チタンストリップ84t、86tは、前述のように、エッジ領域54、56内だけの酸化ケイ素保護膜層94内に位置している。
【0056】
例として、本発明の実施形態で使用される典型的な厚みを以下の表Iに示す。
【表1】
【0057】
本発明のある実施形態では、エッジ領域のみ内および保護膜を形成する誘電体層内にチタンストリップが配置されている。該チタンストリップの垂直の位置はピストンモードでの不安定性を最小化するように選択され、誘電体層の頂面上を含む、電極頂部と保護膜を形成する誘電体層の表面間の誘電材料内に位置する。Tiストリップまたはフィルムを適切な垂直位置に配置することによって、導波すなわち中央領域とエッジ領域の低速度間の速度シフトは、トリミングに使用されるSi3N4層の厚み変化に対して安定化し得る。
【0058】
この配置は、Tiストリップまたはフィルム下の誘電体層の小数部分で定量化される。好適な実施形態選択のためのストラテジでは、公称値としては、例えば、Ti厚み:hTi/p≒0.08±0.003、Si3N4厚み:0.005≦hSi3N4/p≦0.015、保護膜でのTi位置:電極の頂部から誘電体層(保護膜)92の表面までの距離の0%〜100%が含まれていた。
【0059】
例えば、例として本明細書で説明した構造の場合、構造形状を選択する基準は、例として、Yカット128°ニオブ酸リチウム基板12を使用して図16dの実施形態で示したように、好適な速度シフトを得るためのTiストリップの厚み選択と、共振器周波数に対して調整するためのSi3N4トリミング材の厚み変更と、周波数調整による速度シフト変化を最小化するための誘電体保護膜でのTiストリップ位置の選択と、であった。
【0060】
誘電体層内の電極表面から誘電体表面に向かって約80%上部にチタンストリップを配置することによって、中央領域とエッジ領域間に安定した速度シフトが作られることを示してきた。
【0061】
図26a〜図26kは、本明細書では例えば、トリミングと周波数調節を行うための中央領域上に使用された窒化ケイ素層の種々の厚みだけに対して、エッジ領域の誘電体層内に配置されたチタンストリップでの速度シフトを示す。Si3N4とTi厚みの関数としての速度シフトのこのような等高線図は、保護膜内の種々の位置におけるTiの配置を比較するために使用される。図27および図28に示すように、チタンストリップの配置によって速度シフトが安定化され、電極頂部から誘電体層の頂部エッジまでの距離の約80%におけるチタンストリップの好適な配置が得られる。このようなプロセスによって、フィルタ製造者にとっては、ピストンモード導波のトリミングの影響を最小化し、これによってピストンモードでの不安定性を最小化する好適な実施形態を特定することが可能となる。これらの非均一なシフトによってピストンモードが不安定になる。従って、チタンストリップの誘電体層(保護膜)内での配置すべき位置と、トリミング量と中央領域被覆のために使用される窒化ケイ素量への依存性と、を知ることが好ましい。
【0062】
さらなる例として、下表IIでは、速度シフトに対する安定性許容範囲と誘電体保護膜内でのチタンストリップの配置とを関連付けている。
【表2】
【0063】
より一般的には、エッジ領域と中央領域間の速度シフトの周波数トリミングに対する感度は、誘電体層92とは特性的に異なる層を埋め込むことによって、またその深さを最適化することによって低減できる。今や本発明が教示する利点を得た当業者は、エッジ領域での速度が小さいという結果が得られる限り、Ti以外の金属も同様に誘電材料として使用できることは理解するであろう。誘電体層92にこれらの層を埋め込み、その深さを最適化することによって、トリミングに対する感度は低減するであろう。前述のように、最適な深さは、基板材料、基板の方位、トランスデューサを被覆する誘電体層の性質と厚み、および金属電極の性質と厚みに依存するであろう。同様に、速度の上昇をもたらす層は、誘電体層内の最適な位置に埋め込みできる。
【0064】
上記の説明および関連した図面で提示した教示の利点を有する当業者は、本発明の多くの変更と他の実施形態を想到するであろう。従って、本発明は開示した特定の実施形態に限定されないこと、および変更および実施形態は添付の特許請求の範囲内に包含されるものと意図されることは理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響波をサポートする表面を有する圧電基板と;
前記圧電基板の前記表面上に担持されたインターデジタルトランスデューサであって、このトランスデューサの複数の電極のそれぞれは、第1のバスバーと第2のバスバーの内の少なくとも1つに電気的に接続された第1の端部と、前記対向するバスバーから離れたエッジを有する対向する第2の端部と、を有して、前記トランスデューサに沿って長手方向に延在するギャップ領域を形成する、前記各電極のエッジと前記対向するバスバー間のギャップを形成し、前記各電極は、前記バスバーに近接し概ね前記ギャップ領域内に含まれる横方向に延在する第1の部分と、前記エッジに近接し、前記トランスデューサに沿って長手方向に延在するエッジ領域を定義する横方向に延在する第2の部分と、トランスデューサ中央領域を定義する、前記第1の部分と前記第2の部分間の電極の横方向に延在する第3の部分と、トランスデューサを埋め込むためにトランスデューサを被覆する第の誘電体層と、によってさらに定義されるトランスデューサと;
少なくとも前記中央領域とエッジ領域内の前記複数の電極を被覆し、前記中央領域内の前記音響波の周波数変更に十分なものである第2の誘電体層と;
前記中央領域と前記エッジ領域の内の少なくとも1つ内の前記音響波の速度変更に十分な誘電体層であって、前記中央領域と2つのエッジ領域の1つだけ内に延在する第3の層と、を備え、前記エッジ領域での速度は前記中央領域での速度より小さいことを特徴とする音響波装置。
【請求項2】
前記第3の層は、誘電体層または金属層の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記金属層はチタンストリップを含むことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記圧電基板はニオブ酸リチウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記電極は、密度がアルミニウムより高い金属から形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の誘電体層は、その感温性を低減するために、前記トランスデューサを十分に被覆する保護膜を形成する酸化ケイ素材を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の誘電体層は窒化ケイ素を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第3の層は前記第1の誘電体層内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第3の層は、前記電極の頂面より前記第1の誘電体層の頂面により近接して配置されることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ギャップの横方向の長さ寸法は、一音響波長と三音響波長超の内の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記電極はh/p厚みが概ね0.10〜0.20の銅を含み、前記第1の誘電体層は厚みが約0.5h/pの酸化ケイ素材を含み、前記第3の層はh/p厚みが概ね0.06〜0.10のチタンストリップを含み、前記第2の誘電体層はh/p厚みが概ね0.005〜0.015の窒化ケイ素材を含み、前記チタンストリップは前記第1の誘電体層内に存在することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記基板は、カットアングルがY+120°〜Y+140°のニオブ酸リチウムを含むことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
圧電基板と、
前記圧電基板の表面上に前記トランスデューサを形成する複数の電極であって、前記複数の電極のそれぞれが、前記トランスデューサを通る長手方向に音響波を誘導するための横方向に延在する中央領域と横方向に対向するエッジ領域とを含む電極と、
前記インターデジタルトランスデューサを被覆する第1の誘電体層と、
少なくとも前記中央領域とエッジ領域内の前記第1の誘電体層を被覆し、前記中央領域内の前記音響波の周波数変更に十分なものである第2の誘電体層と、
前記対向するエッジ領域のそれぞれ内にのみ延在し、前記エッジ領域内の前記音響波の速度の低減に十分なものである金属層と、を備え、前記エッジ領域での速度はトランスデューサ中央領域内の波速度より小さいことを特徴とする音響波装置。
【請求項14】
前記第1の誘電体層は、その感温性を低減するために、前記トランスデューサを十分に被覆する保護膜を形成する酸化ケイ素材を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第3の層は前記第1の誘電体層内に配置されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記第2の誘電体層は窒化ケイ素を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記金属層は前記第1の誘電体層内に配置されることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項18】
前記金属層は、前記電極の頂面より前記第1の誘電体層の頂面により近接して配置されることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記圧電基板はニオブ酸リチウムを含み、前記電極はh/p厚みが概ね0.10〜0.20の銅を実質的に含み、前記第1の誘電体層は厚みが約0.5h/pの酸化ケイ素材を含み、前記金属層はh/p厚みが概ね0.06〜0.10のチタンストリップを含み、前記第2の誘電体層はh/p厚みが概ね0.005〜0.015の窒化ケイ素材を含み、前記チタンストリップは前記第1の誘電体層内に存在することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項20】
前記基板は、カットアングルがY+120°〜Y+140°のニオブ酸リチウムを含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
複数の電極を圧電基板の表面上のインターデジタルトランスデューサに形成するステップであって、前記複数の電極のそれぞれが、前記インターデジタルトランスデューサを通る長手方向に音響波を誘導するための横方向に延在する中央領域と横方向に対向するエッジ領域とを含むステップと、
前記インターデジタルトランスデューサを第1の誘電体層で被覆して保護膜を形成するステップと、
前記対向するエッジ領域のそれぞれ内だけに、前記エッジ領域内の前記音響波速度の低減に十分なものである第3の層を配置するステップであって、前記エッジ領域での速度は前記トランスデューサ中央領域内での波速度より小さいステップと、
前記第1の誘電体層を、前記中央領域内の前記音響波の周波数変更に十分なものである第2の誘電体層で被覆するステップと、を備えることを特徴とする、ピストンモード導波として機能する表面音響波装置の製造方法。
【請求項22】
酸化ケイ素材から前記第1の誘電体層を形成するステップと、
前記第3の層を金属ストリップとして形成するステップと、
ピストンモード導波を得るに十分な速度シフトを得るための前記金属ストリップの厚みを選択するステップと、
前記金属ストリップを前記保護膜内に配置するステップと、
前記電極の頂面と前記第1の誘電体層の頂面間の前記金属ストリップの垂直位置を調節してピストンモードでの不安定性を最小化するステップと、をさらに備えることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記金属ストリップはチタンを含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の誘電体を窒化ケイ素材から形成するステップと、
前記導波の望ましいピストンモード機能を得るに十分な共振器周波数と周波数トリミング範囲とを変更するために、前記第2の誘電体の厚みを選択するステップと、をさらに備えることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記金属ストリップの配置は、前記電極の頂面より前記第1の誘電体層の頂面により近接して前記金属ストリップを配置するステップを含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記圧電基板をニオブ酸リチウムから形成するステップと、
h/p厚みが概ね0.10〜0.20の銅材から前記電極を形成するステップと、
厚みが約0.5h/pの酸化ケイ素材から前記第1の誘電体層をっ形成するステップと、
前記第3の層をh/p厚みが概ね0.06〜0.10のチタンストリップとして形成するステップと、
h/p厚みが概ね0.005〜0.015の窒化ケイ素材から前記第2の誘電体層を形成するステップと、をさらに備えることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項1】
音響波をサポートする表面を有する圧電基板と;
前記圧電基板の前記表面上に担持されたインターデジタルトランスデューサであって、このトランスデューサの複数の電極のそれぞれは、第1のバスバーと第2のバスバーの内の少なくとも1つに電気的に接続された第1の端部と、前記対向するバスバーから離れたエッジを有する対向する第2の端部と、を有して、前記トランスデューサに沿って長手方向に延在するギャップ領域を形成する、前記各電極のエッジと前記対向するバスバー間のギャップを形成し、前記各電極は、前記バスバーに近接し概ね前記ギャップ領域内に含まれる横方向に延在する第1の部分と、前記エッジに近接し、前記トランスデューサに沿って長手方向に延在するエッジ領域を定義する横方向に延在する第2の部分と、トランスデューサ中央領域を定義する、前記第1の部分と前記第2の部分間の電極の横方向に延在する第3の部分と、トランスデューサを埋め込むためにトランスデューサを被覆する第の誘電体層と、によってさらに定義されるトランスデューサと;
少なくとも前記中央領域とエッジ領域内の前記複数の電極を被覆し、前記中央領域内の前記音響波の周波数変更に十分なものである第2の誘電体層と;
前記中央領域と前記エッジ領域の内の少なくとも1つ内の前記音響波の速度変更に十分な誘電体層であって、前記中央領域と2つのエッジ領域の1つだけ内に延在する第3の層と、を備え、前記エッジ領域での速度は前記中央領域での速度より小さいことを特徴とする音響波装置。
【請求項2】
前記第3の層は、誘電体層または金属層の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記金属層はチタンストリップを含むことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記圧電基板はニオブ酸リチウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記電極は、密度がアルミニウムより高い金属から形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の誘電体層は、その感温性を低減するために、前記トランスデューサを十分に被覆する保護膜を形成する酸化ケイ素材を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の誘電体層は窒化ケイ素を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第3の層は前記第1の誘電体層内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第3の層は、前記電極の頂面より前記第1の誘電体層の頂面により近接して配置されることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ギャップの横方向の長さ寸法は、一音響波長と三音響波長超の内の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記電極はh/p厚みが概ね0.10〜0.20の銅を含み、前記第1の誘電体層は厚みが約0.5h/pの酸化ケイ素材を含み、前記第3の層はh/p厚みが概ね0.06〜0.10のチタンストリップを含み、前記第2の誘電体層はh/p厚みが概ね0.005〜0.015の窒化ケイ素材を含み、前記チタンストリップは前記第1の誘電体層内に存在することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記基板は、カットアングルがY+120°〜Y+140°のニオブ酸リチウムを含むことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
圧電基板と、
前記圧電基板の表面上に前記トランスデューサを形成する複数の電極であって、前記複数の電極のそれぞれが、前記トランスデューサを通る長手方向に音響波を誘導するための横方向に延在する中央領域と横方向に対向するエッジ領域とを含む電極と、
前記インターデジタルトランスデューサを被覆する第1の誘電体層と、
少なくとも前記中央領域とエッジ領域内の前記第1の誘電体層を被覆し、前記中央領域内の前記音響波の周波数変更に十分なものである第2の誘電体層と、
前記対向するエッジ領域のそれぞれ内にのみ延在し、前記エッジ領域内の前記音響波の速度の低減に十分なものである金属層と、を備え、前記エッジ領域での速度はトランスデューサ中央領域内の波速度より小さいことを特徴とする音響波装置。
【請求項14】
前記第1の誘電体層は、その感温性を低減するために、前記トランスデューサを十分に被覆する保護膜を形成する酸化ケイ素材を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第3の層は前記第1の誘電体層内に配置されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記第2の誘電体層は窒化ケイ素を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記金属層は前記第1の誘電体層内に配置されることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項18】
前記金属層は、前記電極の頂面より前記第1の誘電体層の頂面により近接して配置されることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記圧電基板はニオブ酸リチウムを含み、前記電極はh/p厚みが概ね0.10〜0.20の銅を実質的に含み、前記第1の誘電体層は厚みが約0.5h/pの酸化ケイ素材を含み、前記金属層はh/p厚みが概ね0.06〜0.10のチタンストリップを含み、前記第2の誘電体層はh/p厚みが概ね0.005〜0.015の窒化ケイ素材を含み、前記チタンストリップは前記第1の誘電体層内に存在することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項20】
前記基板は、カットアングルがY+120°〜Y+140°のニオブ酸リチウムを含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
複数の電極を圧電基板の表面上のインターデジタルトランスデューサに形成するステップであって、前記複数の電極のそれぞれが、前記インターデジタルトランスデューサを通る長手方向に音響波を誘導するための横方向に延在する中央領域と横方向に対向するエッジ領域とを含むステップと、
前記インターデジタルトランスデューサを第1の誘電体層で被覆して保護膜を形成するステップと、
前記対向するエッジ領域のそれぞれ内だけに、前記エッジ領域内の前記音響波速度の低減に十分なものである第3の層を配置するステップであって、前記エッジ領域での速度は前記トランスデューサ中央領域内での波速度より小さいステップと、
前記第1の誘電体層を、前記中央領域内の前記音響波の周波数変更に十分なものである第2の誘電体層で被覆するステップと、を備えることを特徴とする、ピストンモード導波として機能する表面音響波装置の製造方法。
【請求項22】
酸化ケイ素材から前記第1の誘電体層を形成するステップと、
前記第3の層を金属ストリップとして形成するステップと、
ピストンモード導波を得るに十分な速度シフトを得るための前記金属ストリップの厚みを選択するステップと、
前記金属ストリップを前記保護膜内に配置するステップと、
前記電極の頂面と前記第1の誘電体層の頂面間の前記金属ストリップの垂直位置を調節してピストンモードでの不安定性を最小化するステップと、をさらに備えることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記金属ストリップはチタンを含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の誘電体を窒化ケイ素材から形成するステップと、
前記導波の望ましいピストンモード機能を得るに十分な共振器周波数と周波数トリミング範囲とを変更するために、前記第2の誘電体の厚みを選択するステップと、をさらに備えることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記金属ストリップの配置は、前記電極の頂面より前記第1の誘電体層の頂面により近接して前記金属ストリップを配置するステップを含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記圧電基板をニオブ酸リチウムから形成するステップと、
h/p厚みが概ね0.10〜0.20の銅材から前記電極を形成するステップと、
厚みが約0.5h/pの酸化ケイ素材から前記第1の誘電体層をっ形成するステップと、
前記第3の層をh/p厚みが概ね0.06〜0.10のチタンストリップとして形成するステップと、
h/p厚みが概ね0.005〜0.015の窒化ケイ素材から前記第2の誘電体層を形成するステップと、をさらに備えることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図6a.1】
【図6a.2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11a.1】
【図11a.2】
【図11a.3】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図16a】
【図16b】
【図16c】
【図16d】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25a】
【図25b】
【図25c】
【図25d】
【図25e】
【図25f】
【図25g】
【図25h】
【図26a】
【図26b】
【図26c】
【図26d】
【図26e】
【図26f】
【図26g】
【図26h】
【図26i】
【図26j】
【図26k】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図6a.1】
【図6a.2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11a.1】
【図11a.2】
【図11a.3】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図16a】
【図16b】
【図16c】
【図16d】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25a】
【図25b】
【図25c】
【図25d】
【図25e】
【図25f】
【図25g】
【図25h】
【図26a】
【図26b】
【図26c】
【図26d】
【図26e】
【図26f】
【図26g】
【図26h】
【図26i】
【図26j】
【図26k】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2012−186808(P2012−186808A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−49020(P2012−49020)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【出願人】(599034594)トライクイント・セミコンダクター・インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】TriQuint Semiconductor,Inc.
【住所又は居所原語表記】2300 NE Brookwood Parkway,Hillsboro,Oregon 94124,U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49020(P2012−49020)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【出願人】(599034594)トライクイント・セミコンダクター・インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】TriQuint Semiconductor,Inc.
【住所又は居所原語表記】2300 NE Brookwood Parkway,Hillsboro,Oregon 94124,U.S.A.
【Fターム(参考)】
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