説明

トレッド製造装置

【課題】所定長さのトレッドを複数段重畳して同時に加硫成型するときに、トレッドの踏面と非踏面との加硫の進行に差を生じさせ、かつ、重畳する全てのトレッドの加硫の進行を均一にすることができるトレッド製造装置を提供する。
【解決手段】トレッドの踏面を成型する成型面を有する踏面金型、及び、トレッドの踏面と反対側の非踏面を成型する非踏面金型により閉塞された成型空間を有するモールドと、踏面金型を加熱する第1加熱手段と、非踏面金型を加熱する第2加熱手段とを備え、成型空間内に配置される未加硫トレッドを加硫成型するトレッド製造装置であって、第1加熱手段により加熱される踏面の温度が、第2加熱手段により加熱される非踏面の温度とは異なるように設定されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド製造装置に関し、特に予め所定長さに形成されるトレッドを複数同時に加硫成型するトレッド製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤを製造する方法の一つに、タイヤの基台となる台タイヤの外周面にタイヤの外周長さと略同一の長さで加硫成型されたトレッドを貼り付け、台タイヤとトレッドとを一体にするタイヤの製造方法が知られている。
上記トレッドを製造するトレッド製造装置は、未加硫のトレッドを加熱するためのプラテンを所定距離離間して重畳するようにして複数配置し、当該プラテンの間に踏面及び非踏面を成型する一対の金型をそれぞれ配置する。踏面を成型する金型はプラテンの上面に固着され、非踏面を成型する金型はプラテンの下面に固着される。
そして、所定距離離間して配置されたプラテンをプレスによって一方に寄せるように加圧することにより踏面を成型する金型の成型空間に配置されたトレッドを成型し、複数のプラテンを同一の所定温度及び所定時間で加熱することによりトレッドを加硫成型するようにしている。そして、所定時間経過後にプラテンを離間させることにより加硫成型済みのトレッドが複数同時に製造される。
【0003】
しかしながら、トレッドを加硫するときに複数のプラテンの温度を同一に設定して加熱するようにしているため、上記のように製造されるトレッドと台タイヤとを一体にする後工程で再び加硫されるときに、トレッドの踏面が非踏面よりも過加硫となってしまう場合や台タイヤとクッションゴムを介して接着される非踏面が過加硫となり台タイヤとの間で接着不良が生じる場合がある。
前者の場合、トレッドを加硫成型するときに、トレッドの非踏面が踏面よりも加硫が進んだ状態となることが好ましく、後者の場合、トレッドを加硫成型するときに、トレッドの踏面が非踏面よりも加硫が進んだ状態となることが好ましい。例えば、プラテンの設定温度をそれぞれ変え、トレッドの非踏面が踏面よりも加硫が進むようにプラテンに温度差を設ける方法、又は、トレッドの踏面が非踏面よりも加硫が進むようにプラテンに温度差を設ける方法が考えられるが、プラテンに温度差を生じさせても、プラテンに固着された金型同士が直接接触することで、金型がプラテンの温度差を打ち消すように熱を伝導させてしまい、一定時間経過後には、トレッドの踏面と非踏面とを加熱するプラテンの温度が同じになり、トレッドの踏面と非踏面とに加硫の進行の差を好適に設定することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−120044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、所定長さのトレッドを複数段重畳して同時に加硫成型するときに、トレッドの踏面と非踏面との加硫の進行に差を生じさせ、かつ、重畳する全てのトレッドの加硫の進行を均一にすることができるトレッド製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための構成として、トレッドの踏面を成型する成型面を有する踏面金型、及び、トレッドの踏面と反対側の非踏面を成型する非踏面金型により閉塞された成型空間を有するモールドと、踏面金型を加熱する第1加熱手段と、非踏面金型を加熱する第2加熱手段とを備え、成型空間内に配置される未加硫トレッドを加硫成型するトレッド製造装置であって、第1加熱手段により加熱される踏面の温度が、第2加熱手段により加熱される非踏面の温度とは異なるように設定される構成とした。
本構成によれば、踏面金型を加熱する第1加熱手段の温度と、非踏面金型を加熱する第2加熱手段の温度とが異なるように設定されるので、トレッドの踏面と非踏面とを異なる温度で加硫することができ、トレッドの踏面と非踏面との加硫の進行に差を生じさせることができる。
また、他の構成として、踏面金型及び非踏面金型が、互いの接触面に配置される断熱材を介して閉塞される構成とした。
本構成によれば、踏面金型と非踏面金型とが断熱材を介して接することにより、踏面金型を加熱する第1加熱手段の熱と、非踏面金型を加熱する第2加熱手段の熱とが干渉しないので、トレッドの踏面と非踏面とを独立した状態で加硫することができ、トレッドの踏面と非踏面との加硫の進行に差を生じさせることができる。
また、他の構成として、踏面金型が、成型面の周囲を取り囲む平坦面を有し、断熱材が、平坦面上に配置される構成とした。
本構成によれば、断熱材が成型面の周囲を取り囲む平坦面上に設けられることにより、踏面金型を異なるパターンの踏面金型に交換しても、踏面金型を加熱する第1加熱手段の熱と非踏面金型を加熱する第2加熱手段の熱とが互いに干渉することがないので、トレッドの踏面と非踏面とを独立した状態で異なる温度で加硫することができる。
また、他の構成として、請求項1乃至請求項3いずれかに記載のモールドが上下方向に重畳されたトレッド製造装置であって、上下方向に隣接するモールドの間に位置する第1加熱手段と第2加熱手段が断熱手段を介して上下方向に離間して配置され、当該上下方向に離間して配置される第1加熱手段と第2加熱手段のうち、下側の第2加熱手段が下面に非踏面金型を有し、上側の第1加熱手段が上面に踏面金型を有する構成とした。
本発明によれば、重畳したモールドをプレスにより加圧した状態でトレッドを加硫成型するときに、踏面金型を加熱する第1加熱手段と非踏面金型を加熱する第2加熱手段との間に断熱手段を設けることで、踏面金型を加熱する第1加熱手段の熱と非踏面金型を加熱する第2加熱手段の熱とが互いに干渉することなく、トレッドの踏面及び非踏面を独立して加熱し、加硫することができる。よって、複数重畳された各トレッドの踏面と非踏面との加硫の進行に差を生じさせることができ、さらに、重畳する全てのトレッドの加硫の進行を均一にすることができる。
また、他の構成として、断熱手段を断熱材により構成した。
本構成によれば、踏面金型の温度と非踏面金型の温度とが断熱材により遮断されるので、トレッドの踏面及び非踏面を独立して加熱し、加硫することができる。よって、複数重畳された各トレッドの踏面と非踏面との加硫の進行に差を生じさせることができ、さらに、重畳する全てのトレッドの加硫の進行を均一にすることができる。
また、他の構成として、断熱手段を空隙により構成した。
本構成によれば、踏面金型の温度と非踏面金型の温度とが空隙により遮断されるので、トレッドの踏面及び非踏面を独立して加熱し、加硫することができる。よって、複数重畳された各トレッドの踏面と非踏面との加硫の進行に差を生じさせることができ、さらに、重畳する全てのトレッドの加硫の進行を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るトレッド製造装置の側面図及び平面図。
【図2】本発明に係るプラテン及び金型の配置を示す部分拡大図。
【図3】本発明に係る金型の斜視図及び断面図。
【図4】本発明に係るトレッドを加硫成型するときの金型及びプラテンの配置図。
【図5】本発明に係るトレッド製造装置の効果を検証するための試験結果を示す図。
【図6】本発明に係るプラテンの他の形態を示す図。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1
図1は、トレッド製造装置1の一例としての概略構成を示す(側面図及び正面図)。図2は、プラテン及び金型の配置を示す部分拡大図である。以下、図1及び図2を用いて本発明のトレッド製造装置1について説明する。
トレッド製造装置1は、概略、工場の床面に立設されるフレーム2と、プレス装置3と、加硫装置4とを備える。
フレーム2は、複数の支柱21A〜21Dと、支柱21A〜21Dの中間部において長手方向に配置される支柱間を接続する中間梁22,22と、中間梁22,22の上側の支柱21A〜21Dの上端において支柱間を接続する上梁23,23と、天板24とにより門形に構成される。
支柱21A〜21Dは、例えば、等しい長さの断面H形の鋼材からなり、長方形状の角部床面に立設される。また、短辺を形成する支柱21A,21B及び支柱21C,21Dは、H形断面の凹部が互いに対向するように配置される。支柱21A,21B及び支柱21C,21Dの対向する凹部には、断面I形の一対のレール25が延長方向に沿って固着される。また、支柱21A〜21Dの中間部と上端側には、中間梁22,22と上梁23,23とを固定するための切欠き部が外側に形成される。
【0010】
中間梁22,22は、長方形断面を有する鋼材により構成され、長辺をなす支柱21A,21C及び支柱21B,21Dの外側に形成された切欠き部を介して、支柱21A,21C及び支柱21B,21Dに固着される。
上梁23,23は、中間梁22,22が固着する支柱21A,21C及び支柱21B,21Dの上端側に形成された切欠き部を介して支柱21A,21C及び支柱21B,21Dにそれぞれ固着される。
天板24は、支柱21A乃至21Dによって囲まれる領域よりも大きな長方形状に形成され、上梁23,23及び支柱21A〜21Dの上端に固着される。天板24の下面24aには、後述のプレス装置3の下プレス台と対をなす上プレス台が配設される。なお、上プレス台の詳細については後述する。
レール25,25には、当該レール25,25に沿って移動し、後述の複数のプラテンを保持するプラテン枠がレール25,25に沿って複数配置される。
【0011】
プレス装置3は、例えば、支柱21A〜21Dによって囲まれる床面に配置される。プレス装置3は、複数の油圧シリンダ31と、油圧シリンダ31への油圧を制御する油圧制御バルブ32と、油圧を発生する油圧ポンプ33と、上,下プレス台34A,34Bにより概略構成される。
複数の油圧シリンダ31は、短手方向に配置される支柱21A,21Bの中央、かつ、長手方向に配置される支柱21A,21Cと平行に均等に配置される。複数の油圧シリンダ31には油圧制御バルブ32から個別に延長する油圧ホース35が接続され、油圧制御バルブ32には図外のモータにより油圧を発生する油圧ポンプ33からの油圧ホース36が接続される。油圧制御バルブ32は、電気的に油圧を制御する制御機構を備え、図外の制御装置と接続され、当該制御装置から出力される信号に基づき油圧シリンダ31のピストン31Aの伸縮を制御する。
【0012】
上,下プレス台34A,34Bは、成型対象たるトレッド11を加硫成型する金型よりも一回り大きい大きさを有する長方形状に同一の大きさに形成される金属板である。上,下プレス台34A,34Bの素材は、例えば、金型よりも熱伝導の低い素材により構成される。上プレス台34Aは、上記天板24に固着され、下プレス台34Bは、複数の油圧シリンダ31のピストン31Aの上端面31aに固着される。
上プレス台34Aと、下プレス台34Bとの間には、複数のプラテン41〜45が重畳するように配置される。
【0013】
加硫装置4は、複数のプラテン41〜45と、プラテンを保持するプラテン枠52〜54と、プラテン41〜45に熱流体を供給する熱供給手段46とにより構成される。
プラテン41〜45は、上下方向に重畳するように上,下プレス台34A,34Bの間に、例えば5段配置される。各プラテン41〜45は、上,下プレス台34A,34Bと等しい大きさの長方形状に形成され、上面及び下面が互いに平行かつ、平面に仕上げられた平板状の金属板からなる。また、プラテン41〜45の内部には、プラテン41〜45を延長方向に貫通する流路47が、短手方向に複数配設される。
即ち、プラテン41は、踏面金型61を加熱する第1加熱手段を構成し、プラテン45は、非踏面金型68を加熱する第2加熱手段を構成する。また、プラテン42乃至プラテン44は、上面側が、踏面金型62乃至64を加熱する第1加熱手段を構成し、下面側が非踏面金型65乃至67を加熱する第2加熱手段を構成する。
【0014】
プラテン41は、下プレス台34Bの上面に固着され、プラテン42〜44は、プラテン枠52〜54により保持され、プラテン45は、上プレス台34Aの下面に固着される。
【0015】
上記プラテン42〜44を保持するプラテン枠52〜54は、それぞれ、一対の保持枠55A,55Bと、保持枠55A,55Bに取り付けられる車輪56A,56Bとにより構成される。
保持枠55A,55Bは、断面四角形状の棒状体からなり、プラテン42〜44の長手方向長さに等しい長さを有し、プラテン42〜44の長手方向側面に固着される。
車輪56A,56Bは、保持枠55A,55Bの側面から水平方向に突出し、上記レール25,25に対応する位置に回転自在に取付けられる。車輪56A,56Bは、レール25,25を挟みこむように両側がフランジ状の断面H状に形成される。なお、プラテン枠52〜54は、支柱21A〜21Dに設けられる図外の位置決め装置により所定距離離間して配置される。また、位置決め装置は、プラテン枠52〜54が離間するときのみ動作し、プレス装置3により上側一方向にプラテン41〜44を移動させるときには動作しない。
【0016】
なお、以下の説明において、最下位に位置するプラテン41を第1プラテン41、下から2番目のプラテン42を第2プラテン42、下から3番目のプラテン43を第3プラテン43、上から2番目のプラテン44を第4プラテン44、最上位に位置するプラテン45を第5プラテン45と称することにする。
第1プラテン41は、下プレス台34Bの上面に設けられ、第2プラテン42は、下プレス台34Bの直上に位置する上記プラテン枠52に保持され、第3プラテン43は、第2プラテン42を保持するプラテン枠52の上側に位置するプラテン枠53に保持される。第4プラテン44は、第3プラテン43を保持するプラテン枠53の上側に位置するプラテン枠54に保持される。第5プラテン45は、上プレス台34Aの下面に設けられる。
【0017】
熱供給手段46は、各プラテン41〜45の流路47に供給する蒸気を発生する図外の蒸気発生器と、蒸気発生器から各プラテン41〜45の流路47に蒸気を供給する供給管48と、流路47から排出される蒸気を蒸気発生器に回収する回収管49と、各プラテン41〜45がトレッド11を加硫成型する位置に位置したときに、各プラテン41〜45の有する複数の流路47の一方の開口全てに蒸気を供給するための複数の流路を備えた供給カプラ50と、他方の開口全てから蒸気を回収する回収カプラ51とにより構成される。
蒸気発生器は、高温の水蒸気を発生させるボイラー等により構成され、高温の水蒸気を供給する供給口46Aと、プラテン41〜45を経由した水蒸気を回収する回収口46Bとを備える。
供給カプラ50は、各プラテン41〜45がトレッド11を加硫成型する位置に位置したときに、各プラテン41〜45の有する複数の流路47の一方の開口全てに蒸気を供給するための複数の流路を備える。回収カプラ51は、各プラテン41〜45がトレッド11を加硫成型する位置に位置したときに、各プラテン41〜45の有する複数の流路47の他方の開口全てから蒸気を回収するための複数の流路を備える。供給管48は、一端が供給口46Aと接続され、他端が供給カプラ50と接続される。回収管49は、一端が回収口46Bと接続され、他端が回収カプラ51と接続される。
【0018】
成型装置6は、トレッド11の踏面11aを成型する踏面金型と非踏面11bを成型する非踏面金型とからなるモールドを複数備える。各モールドは、プラテンの間にそれぞれ配置されるように上下方向に重畳される。具体的には、踏面11aを成型する踏面金型61と非踏面11bを成型する非踏面金型65とで一対のモールドを構成し、踏面11aを成型する踏面金型62と非踏面11bを成型する非踏面金型66とで一対のモールドを構成し、踏面11aを成型する踏面金型63と非踏面11bを成型する非踏面金型67とで一対のモールドを構成し、踏面11aを成型する踏面金型64と非踏面11bを成型する非踏面金型68とで一対のモールドを構成する。なお、本実施形態1では、各モールドは、同一形状のトレッドパターンをトレッド11に成型するものとして説明するが、重畳される各モールドは、異なるトレッドパターンのものであっても良い。
【0019】
図3は、トレッド11を成型する踏面金型61〜64の斜視図及び断面図を示す。
踏面金型61乃至64は、例えば、タイヤ1周分の長さ、又は、タイヤ1周分よりも短い長さにトレッド11を成型する大きさを有し、タイヤの踏面11aとなるトレッド11に幾何学的な溝を形成するための成型面60aと、トレッド11を所定の幅、及び長さに成型するために成型面60aの周囲を取り囲みトレッド11の側面を成型する枠体60bと、枠体60bの外周縁に沿って上面に形成される平坦面60dに配置される断熱材70とを備える。
断熱材70は、例えば、カーボンファイバーやグラスファイバー等を焼結させたものにより構成される。
枠体60bの平坦面60dに配置される断熱材70は、踏面金型61乃至64と非踏面金型65乃至68とが互いに接触し、成型空間60cが閉塞されたときに、踏面金型61乃至64の成型面側の縁部と面一になるように形成される。よって、プレス装置3を用いてトレッド11を成型するときに、踏面金型61乃至64と非踏面金型65乃至68とが互いに接触する接触面に配置される断熱材70を介して成型空間60cが閉塞される。
【0020】
踏面金型61は第1プラテン41の上面に固着され、踏面金型62は第2プラテン42の上面に固着され、踏面金型63は第3プラテン43の上面に固着され、踏面金型64は第4プラテン44の上面に固着される。
非踏面金型65乃至68は、踏面金型61乃至64の成型空間60cを閉塞可能な大きさを有し、例えば、踏面金型61乃至64と同一、若しくは一回り大きい大きさの平板状の金属板からなる。
非踏面金型65は第2プラテン42の下面に固着され、非踏面金型66は第3プラテン43の下面に固着され、非踏面金型67は第4プラテン44の下面に固着され、非踏面金型68は第5プラテン45の下面に固着される。
【0021】
よって、成型装置6により成型されるトレッド11は、当該トレッド11の踏面11a及び側面が踏面金型61〜64により成型され、トレッド11の非踏面11bは、非踏面金型65乃至68により成型される構成である。
以下、第1プラテン41の上面に固着される踏面金型61を第1踏面金型61、第2プラテン42の上面に固着される踏面金型62を第2踏面金型62、第3プラテン43の上面に固着される踏面金型63を第3踏面金型63、第4プラテン44の上面に固着される踏面金型64を第4踏面金型64と称する。
また、第2プラテン42の固着に固定される非踏面金型65を第1非踏面金型65、第3プラテン43の下面に固着される非踏面金型66を第2非踏面金型66、第4プラテン44の固着に固定される非踏面金型67を第3非踏面金型67、第5プラテン45の下面に固着される非踏面金型68を第4非踏面金型68と称する。
【0022】
以下、上記構成のトレッド製造装置1によるトレッド11の加硫成型工程について説明する。
図外の押出し成型機により所定の断面形状及び長さに成型され、搬送されるトレッド11を第1踏面金型61乃至第4踏面金型64の枠体60bによって囲まれる成型空間60cにそれぞれ配置する。
次に、油圧ポンプ33を駆動して油圧を発生させ、油圧制御バルブ32を制御して油圧シリンダ31のピストン31Aを伸張させる。
そして、下プレス台34Bが上側に移動することにより第1プラテン41とともに第1踏面金型61の断熱材70が第2プラテン42の下面に固着する第1非踏面金型65に押圧される。
次に、第2プラテン42が上側に押し上げられ、第2踏面金型62の断熱材70が第3プラテン43の下面に固着する第2非踏面金型66に押圧される。次に、第3プラテン43が上側に押し上げられ、第3踏面金型63の断熱材70が第4プラテン44の下面に固着する第3非踏面金型67に押圧される。次に、第4プラテン44が上側に押し上げられ、第4踏面金型64の断熱材70が第5プラテン45の下面に固着する第4非踏面金型68に押圧され、油圧制御バルブ32に設定されたプレス圧力が油圧シリンダ31に作用すると、プレス圧力を維持したまま加圧を停止する。
よって、各金型に配置された未加硫のトレッド11が所望の形状に成型される。
【0023】
次に、第1プラテン41乃至第5プラテン45に蒸気を供給する供給カプラ50及び回収カプラ51を複数の流路47に接続する。次に、熱供給手段46から所定の温度に加熱された蒸気が、供給管48及び供給カプラ50を介して第1プラテン41乃至第5プラテン45に供給され、第1プラテン41乃至第5プラテン45の流路47を通過した蒸気が回収カプラ51及び回収管49を介して熱供給手段46に回収され、蒸気が還流することにより、第1プラテン41乃至第5プラテン45が加熱される。
【0024】
以下、第1プラテン41乃至第5プラテン45が加熱され、第1踏面金型61乃至第4踏面金型64及び、第1非踏面金型65乃至第4非踏面金型68を介してトレッド11を加硫するときの、第1踏面金型61乃至第4踏面金型64、及び、第1非踏面金型65乃至第4非踏面金型68周りの熱の流れについて詳説する。
図4は、トレッド11を加硫成型するときの金型61乃至64,65乃至68及びプラテン41乃至45の位置を示す。
第1踏面金型61及び第1非踏面金型65により加硫成型されるトレッド11は、踏面11aが第1プラテン41の上面からの熱が伝導することで第1踏面金型61の成型面により加熱され、非踏面11bが第2プラテン42の下面からの熱が伝導することで第1非踏面金型65により加熱される。詳細には、第1踏面金型61と第1非踏面金型65とが、第1踏面金型61の枠体60bの平坦面60dに設けられた断熱材70を介して互いに接触することにより、第1プラテン41によって加熱された第1踏面金型61の熱と第2プラテン42によって加熱された第1非踏面金型65の熱とが互いに干渉することなくトレッド11の表面を踏面11a側と非踏面11b側から独立して加熱し、加硫する。
即ち、トレッド11は、断熱材70を介して互いに接触する第1踏面金型61と第1非踏面金型65とが、同一の熱量を有する第1プラテン41と第2プラテン42によって加熱されることにより、凹凸を有することで表面積の大きい第1踏面金型61に比べ、表面積の小さい第1非踏面金型65による加熱の方が温度が高くなる。つまり、第1プラテン41と第2プラテン42とにより加熱されるトレッド11は、踏面11aよりも非踏面11b側の方が温度が高くなり、踏面11aよりも非踏面11bの方が加硫の進行が早くなる。
また、第2踏面金型62及び第2非踏面金型66により加硫成型されるトレッド11は、踏面11aが第2プラテン42の上面からの熱が伝導することで第2踏面金型62の成型面により加熱され、非踏面11bが第3プラテン43の下面からの熱が伝導することで第2非踏面金型66により加熱される。詳細には、第2踏面金型62と第2非踏面金型66とが、第2踏面金型62の枠体60bの平坦面60dに設けられた断熱材70を介して互いに接触することにより、第2プラテン42によって加熱された第2踏面金型62の熱と第3プラテン43によって加熱された第2非踏面金型66の熱とが互いに干渉することなくトレッド11の表面を踏面11a側と非踏面11b側から独立して加熱し、加硫する。
即ち、トレッド11は、断熱材70を介して互いに接触する第2踏面金型62と第2非踏面金型66とが、同一の熱量を有する第2プラテン42と第3プラテン43によって加熱されることにより、凹凸を有することで表面積の大きい第2踏面金型62に比べ、表面積の小さい第2非踏面金型66による加熱の方が温度が高くなる。つまり、第2プラテン42と第3プラテン43とにより加熱されるトレッド11は、踏面11aよりも非踏面11b側の方が温度が高くなり、踏面11aよりも非踏面11bの方が加硫の進行が早くなる。
また、第3踏面金型63及び第3非踏面金型67により加硫成型されるトレッド11は、踏面11aが第3プラテン43の上面からの熱が伝導することで第3踏面金型63の成型面により加熱され、非踏面11bが第4プラテン44の下面からの熱が伝導することで第3非踏面金型67により加熱される。詳細には、第3踏面金型63と第3非踏面金型67とが、第3踏面金型63の枠体60bの平坦面60dに設けられた断熱材70を介して互いに接触することにより、第3プラテン43によって加熱された第3踏面金型63の熱と第4プラテン44によって加熱された第3非踏面金型67の熱とが互いに干渉することなくトレッド11の表面を踏面11a側と非踏面11b側から独立して加熱し、加硫する。
即ち、トレッド11は、断熱材70を介して互いに接触する第3踏面金型63と第3非踏面金型67とが、同一の熱量を有する第3プラテン43と第4プラテン44によって加熱されることにより、凹凸を有することで表面積の大きい第3踏面金型63に比べ、表面積の小さい第3非踏面金型67による加熱の方が温度が高くなる。つまり、第3プラテン43と第4プラテン44とにより加熱されるトレッド11は、踏面11aよりも非踏面11b側の方が温度が高くなり、踏面11aよりも非踏面11bの方が加硫の進行が早くなる。
また、第4踏面金型64及び第4非踏面金型68により加硫成型されるトレッド11は、踏面11aが第4プラテン44の上面からの熱が伝導することで第4踏面金型64の成型面により加熱され、非踏面11bが第5プラテン45の下面からの熱が伝導することで第4非踏面金型68により加熱される。詳細には、第4踏面金型64と第4非踏面金型68とが、第4踏面金型64の枠体60bの平坦面60dに設けられた断熱材70を介して互いに接触することにより、第4プラテン44によって加熱された第4踏面金型64の熱と第5プラテン45によって加熱された第4非踏面金型68の熱とが互いに干渉することなくトレッド11の表面を踏面11a側と非踏面11b側から独立して加熱し、加硫する。
即ち、トレッド11は、断熱材70を介して互いに接触する第4踏面金型64と第4非踏面金型68とが、同一の熱量を有する第4プラテン44と第5プラテン45によって加熱されることにより、凹凸を有することで表面積の大きい第4踏面金型64に比べ、表面積の小さい第4非踏面金型68による加熱の方が温度が高くなる。つまり、第4プラテン44と第5プラテン45とにより加熱されるトレッド11は、踏面11aよりも非踏面11b側の方が温度が高くなり、踏面11aよりも非踏面11bの方が加硫の進行が早くなる。
つまり、第1踏面金型61乃至第4踏面金型64の枠体60bに形成された平坦面60dに断熱材70を設けたことにより、第1踏面金型61乃至第4踏面金型64を加熱する第1プラテン41乃至第5プラテン45の熱が、第1非踏面金型65乃至第4非踏面金型68に伝導することがない。よって、第1踏面金型61及び第1非踏面金型65,第2踏面金型62及び第2非踏面金型66,第3踏面金型63及び第3非踏面金型67,第4踏面金型64及び第4非踏面金型68によって加硫成型されるトレッド11は、個別に加熱され、各トレッド11の踏面11a及び非踏面11bとが異なる温度で加硫される。そのため、重畳して加硫成型されるトレッド11は、加硫の進行にバラツキが無く、非踏面11bを踏面11aよりも加硫が進行した状態に設定することができる。
【0025】
次に、第1プラテン41乃至第5プラテン45によるトレッド11への加熱開始から所定時間経過後、蒸気発生器から第1プラテン41乃至第5プラテン45への蒸気の供給を停止し、加硫が終了する。そして、第1プラテン41乃至第5プラテン45から供給カプラ50と回収カプラ51とを取り外し、油圧シリンダ31の圧力を開放し、第1踏面金型61乃至第4踏面金型64と第1非踏面金型65乃至第4非踏面金型68への加圧を開放する。よって、第1プラテン41とともに第1踏面金型61が第2プラテン42の第1非踏面金型65と離間し、第2プラテン42とともに第2踏面金型62が第3プラテン43の第2非踏面金型66と離間し、第3プラテン43とともに第3踏面金型63が第4プラテン44の第3非踏面金型67と離間し、第4プラテン44とともに第4踏面金型64が第5プラテン45の第4非踏面金型68と離間する。
そして、第1踏面金型61乃至64の成型空間60cから加硫成型されたトレッド11を取り出すことにより加硫成型済みのトレッド11が一度の工程により複数製造される。
【0026】
[実験例]
上記効果を検証するために、踏面金型に断熱材70を備えない従来のトレッド製造装置と、図1及び図2に示す本発明のトレッド製造装置によるトレッド11の加硫成型において、トレッド表面とトレッド内部との加硫度の進行について調べ、その結果を図5(a),(b)に示す。図5(a)は、図2において最下位に位置する断熱材70を備えない場合の第1踏面金型及び第1非踏面金型65により加硫成型されたトレッド11のトレッド表面とトレッド内部との加硫度の時間変化を示す。図5(b)は、図2において最下位に位置する第1踏面金型61及び第1非踏面金型65によって加硫されたトレッド11のトレッド表面とトレッド内部との加硫度の時間変化を示す。なお、トレッド表面とは、踏面11aの表面を示し、トレッド内部とは、トレッドの厚さの中心を示す。
図5(a)に示すように、従来の加硫装置により加硫成型されるトレッド11は、第1プラテン41からの熱が、第1踏面金型61の枠体60bを介して第1非踏面金型65に伝導されるため、トレッド11を包囲する温度が急激に上昇するので、これに追従してトレッド表面の温度が上昇し、加硫が急激に進行する。ところが、トレッド11を構成するゴムの熱伝導速度が、トレッド表面が加熱される加熱速度よりも遅いため、トレッド内部の温度上昇がゴム厚さ分だけトレッド表面よりも遅れることになる。つまり、トレッド表面に対するトレッド内部の温度上昇の遅れによって、トレッド表面とトレッド内部との加硫度に差を生じることになる。加硫開始直後の加硫度の差は、加硫時間の進行にともなってトレッド内部の加硫度がトレッド表面の加硫度に近づくことにより小さくなることが予測されるが、実際は、図5(a)に示すように、加硫開始直後の差が維持されたまま平衡状態となる。これは、トレッド表面の加硫度が進行するにつれトレッド表面の熱伝導率が低下し、トレッド内部に熱が伝導されにくくなったからと考えられる。
一方、図5(b)に示すように、本発明のトレッド製造装置1によるトレッド11は、第1プラテン41からの熱がトレッド11の踏面11a側、第2プラテン42からの熱が非踏面11b側とを個別に加熱することにより、従来のようにトレッド11を包囲する熱が急激に生じることがないため、トレッド11は、踏面11a側と非踏面11b側から徐々に加熱されることにより、踏面11aと非踏面11bとでは異なる温度で加硫され、加硫の進行に伴うトレッド表面の加硫度とトレッド内部の加硫度との差が小さなものとなり、この差はトレッド表面とトレッド内部の加硫の進行が平衡状態となるまで維持される。
よって、図5(a),(b)からも分かるように、従来のトレッド製造装置と本発明のトレッド製造装置とでは、トレッド表面の加硫度とトレッド内部の加硫度との差において約3倍の差があることになる。つまり、本発明の製造装置により加硫されるトレッド11は、トレッド表面とトレッド内部との間の加硫の進行度が従来よりも近くなるため、非踏面11b側が、踏面11a側よりもやや進行した状態で加硫されたトレッド11を製造することが可能となる。そして、上記トレッド11をクッションゴムを介して台タイヤに固着して製造されたタイヤは、転がり抵抗が小さく、当該タイヤが装着された車両の燃費を向上させることができる。
【0027】
実施形態2
図6は、他の形態のプラテンの構成を示す図である。
上記実施形態1の本発明の製造装置1でトレッド11を加硫成型することにより、トレッド表面とトレッド内部との間の加硫度(加硫の進行)の差を小さくできることが分かった。
そこで、実施形態2では、重畳される各金型61乃至64において、加硫の進行にバラツキが存在しないようにするトレッド製造装置1について説明する。
本実施形態2は、上記実施形態1の第2プラテン42、第3プラテン43、第4プラテン44をそれぞれ、非踏面11b側を加熱するプラテンと踏面11a側を加熱するプラテンとの上下2つに分割した点で実施形態1と異なる。なお、実施形態1の製造装置1と同一構成については省略する。
【0028】
以下、第2プラテン42乃至第4プラテン44の構成について説明する。
実施形態1における第2プラテン42を第1非踏面金型65を加熱する第2Aプラテン42Aと、第2踏面金型62を加熱する第2Bプラテン42Bとに分割し、第2Aプラテン42Aと第2Bプラテン42Bとの間に断熱手段を配置し、1つの構造体として構成する。断熱手段には、断熱材71が配設される。
第2Aプラテン42Aと第2Bプラテン42Bとは、例えば、実施形態1で用いた第2プラテン42と同一の大きさ、かつ、半分の厚さの平板状の金属板からなり、それぞれ内部に長手方向に延長する流路47A,47Bを幅方向に複数備える。
断熱材71には、金型61乃至64の枠体60bの上面に用いた断熱材70と同一の素材が用いられる。断熱材71は、第2Aプラテン42Aと第2Bプラテン42Bと同一の大きさ、かつ、第2Aプラテン42Aと第2Bプラテン42Bとの間で実質的に熱が伝導されない所定の厚さに形成され、第2Aプラテン42Aと第2Bプラテン42Bとの間に配置される。
つまり、第2プラテン42は、第1非踏面金型65を加熱する第2Aプラテン42Aと、第2踏面金型62を加熱する第2Bプラテン42Bと、第2Aプラテン42Aと第2Bプラテン42Bとの間に配設される断熱材71とが積層された構造体として構成される。
【0029】
また、実施形態1における第3プラテン43を第2非踏面金型66を加熱する第3Aプラテン43Aと、第3踏面金型63を加熱する第3Bプラテン43Bとに分割し、第3Aプラテン43Aと第3Bプラテン43Bとの間に断熱手段を配置し、1つの構造体として構成する。断熱手段には、断熱材71が配設される。
第3Aプラテン43Aと第3Bプラテン43Bとは、例えば、実施形態1で用いた第3プラテン43と同一の大きさ、かつ、半分の厚さの平板状の金属板からなり、内部に長手方向に延長する流路47A,47Bを幅方向に複数備える。
断熱材71には、第1踏面金型61乃至第4踏面金型64の枠体60bの上面に用いた断熱材70と同一の素材が用いられる。断熱材71は、第3Aプラテン43Aと第3Bプラテン43Bと同一の大きさ、かつ、第3Aプラテン43Aと第3Bプラテン43Bとの間で実質的に熱が伝導されない所定の厚さに形成され、第3Aプラテン43Aと第3Bプラテン43Bとの間に配置される。
つまり、第3プラテン43は、第2非踏面金型66を加熱する第3Aプラテン43Aと、第3踏面金型63を加熱する第3Bプラテン43Bと、第3Aプラテン43Aと第3Bプラテン43Bとの間に配設される断熱材71とが積層された構造体として構成される。
【0030】
また、実施形態1における第4プラテン44を第3非踏面金型67を加熱する第4Aプラテン44Aと、第4踏面金型64を加熱する第4Bプラテン44Bとに分割し、第4Aプラテン44Aと第4Bプラテン44Bとの間に断熱手段を配置し、1つの構造体として構成する。断熱手段には、断熱材71が配設される。
第4Aプラテン44Aと第4Bプラテン44Bとは、例えば、実施形態1で用いた第4プラテン44と同一の大きさ、かつ、半分の厚さの平板状の金属板からなり、内部に長手方向に延長する流路47A,47Bを幅方向に複数備える。
断熱材71には、第1踏面金型61乃至第4踏面金型64の枠体60bの上面に用いた断熱材70と同一の素材が用いられる。断熱材71は、第4Aプラテン44Aと第4Bプラテン44Bと同一の大きさ、かつ、第4Aプラテン44Aと第4Bプラテン44Bとの間で実質的に熱が伝導されない所定の厚さに形成され、第4Aプラテン44Aと第4Bプラテン44Bとの間に配置される。
つまり、第4プラテン44は、第3非踏面金型67を加熱する第4Aプラテン44Aと、第4踏面金型64を加熱する第4Bプラテン44Bと、第4Aプラテン44Aと第4Bプラテン44Bとの間に配設される断熱材71とが積層された構造体として構成される。
即ち、第2Aプラテン42Aと、第3Aプラテン43Aと、第4Aプラテン44Aとが、第2加熱手段を構成し、第2Bプラテン42Bと、第3Bプラテン43Bと、第4Bプラテン44Bとが、第1加熱手段を構成する。
上記構成の第2プラテン42乃至第4プラテン44は、実施形態1と同様にプラテン枠52乃至54にそれぞれ保持される。
なお、断熱手段を断熱材71に換えて空隙を設けるようにしても良く、踏面金型を加熱するプラテンと非踏面金型を加熱するプラテンとが、互いに接触しないように構成されれば良い。
踏面金型を加熱するプラテンと非踏面金型を加熱するプラテンとの間に空隙を設ける方法としては、プラテン42を例にすれば、第2Aプラテン42Aと第2Bプラテン42Bとの間に熱伝導の低い素材によって所望の厚さとなるように枠体を構成し、第2Aプラテン42Aと第2Bプラテン42Bとの間に設けるようにして1つの構造体として構成すれば良い。或いは、第2Aプラテン42Aと第2Bプラテン42Bとを1つの構造体とせず、それぞれにプラテン枠を取り付けてフレーム2のレール25上を移動するようにして、プレス装置3によりトレッド11を成型するときに第2Aプラテン42Aと第2Bプラテン42Bとの間に空隙が形成されるようにレール25にストッパ機構を設けるようにしても良い。
【0031】
上記構成のトレッド製造装置1によれば、例えば、第2プラテン42を第2Aプラテン42Aと第2Bプラテン42Bとに分け、その間に断熱材71を配置することにより、第1非踏面金型65と第2踏面金型62とを個別に加熱することができるので、第1踏面金型61及び第1非踏面金型65により加熱されるトレッド11と第2踏面金型62及び第2非踏面金型66とにより加熱されるトレッド11とが個別に加熱されるため、上記実施形態1の効果に加え、同時に加硫成型されるトレッド11のと加硫の進行に差が生じることがない。
この効果は、第2プラテン42と第3プラテン43、第3プラテン43と第4プラテン44との関係においても同様に効果を得ることができる。
【0032】
実施形態3
上記実施形態2において、熱供給手段から供給される蒸気を共通にして、第1プラテン41から第5プラテン45に共通の温度の蒸気を供給するとして説明したが、プラテン毎に異なる温度の蒸気を供給するようにしても良い。
即ち、第1踏面金型61乃至第4踏面金型64を加熱する第1加熱手段としての第1プラテン41,第2Bプラテン42B,第3Bプラテン43B,第4Bプラテン44Bの流路47Bに温度の低い蒸気を供給し、第2加熱手段としての第1非踏面金型65乃至第4非踏面金型68を加熱する第2Aプラテン42A,第3Aプラテン43A,第4Aプラテン44A,第5プラテン45の流路47Aに、第1踏面金型61乃至第4踏面金型64を加熱するプラテン41,42B,43B,44Bの流路47Bに供給される蒸気よりも高い温度の蒸気を供給するようにすれば良い。
【0033】
具体的には、熱供給手段が、蒸気発生器と、蒸気発生器から供給される蒸気を冷却体を介して第1プラテン41、第2Bプラテン42B、第3Bプラテン43B、第4Bプラテン44Bに供給する低温配管と、蒸気発生器から供給される蒸気を第2Aプラテン42A、第3Aプラテン43A、第4Aプラテン44A、第5プラテン45に直接供給する高温配管と、全てのプラテンから蒸気を回収する回収配管とにより構成されることで、プラテンによって異なる温度の蒸気を供給すれば良い。
冷却体は、例えば、配管途中に設けられ、蒸気が膨張する膨張室と、膨張室の外側に設けられる複数の冷却フィンとにより構成される。よって、冷却体を通過する蒸気が膨張室で膨張することにより冷却される。なお、冷却体の冷却効率は、第1プラテン41,第2Bプラテン42B,第3Bプラテン43B,第4Bプラテン44Bと、第2Aプラテン42A,第3Aプラテン43A,第4Aプラテン44A,第5プラテン45とを加熱するときに設定する温度差によって適宜設定すれば良い。
上記のように加硫成型されるトレッド11は、非踏面11bが、踏面11aよりも加硫が進行した状態で製造されるので、トレッド11と台タイヤとを一体にする後工程で再び加硫されるときにトレッド11の踏面11aが非踏面11bよりも過加硫となることを防止することができる。
【0034】
実施形態4
上記実施形態3において、第1踏面金型61乃至第4踏面金型64を加熱する第1加熱手段としての第1プラテン41,第2Bプラテン42B,第3Bプラテン43B,第4Bプラテン44Bの流路47Bに温度の低い蒸気を供給し、第2加熱手段としての第1非踏面金型65乃至第4非踏面金型68を加熱する第2Aプラテン42A,第3Aプラテン43A,第4Aプラテン44A,第5プラテン45の流路47Aに、第1踏面金型61乃至第4踏面金型64を加熱するプラテン41,42B,43B,44Bの流路47Bに供給される蒸気よりも高い温度の蒸気を供給するとして説明したが、第1踏面金型61乃至第4踏面金型64を加熱する第1加熱手段としての第1プラテン41,第2Bプラテン42B,第3Bプラテン43B,第4Bプラテン44Bの流路47Bに温度の高い蒸気を供給し、第2加熱手段としての第1非踏面金型65乃至第4非踏面金型68を加熱する第2Aプラテン42A,第3Aプラテン43A,第4Aプラテン44A,第5プラテン45の流路47Aに、第1踏面金型61乃至第4踏面金型64を加熱するプラテン41,42B,43B,44Bの流路47Bに供給される蒸気よりも低い温度の蒸気を供給するようにしても良い。
【0035】
具体的には、熱供給手段が、蒸気発生器と、蒸気発生器から供給される蒸気を冷却体を介して第2Aプラテン42A、第3Aプラテン43A、第4Aプラテン44A、第5プラテン45に供給する低温配管と、蒸気発生器から供給される蒸気を第1プラテン41、第2Bプラテン42B、第3Bプラテン43B、第4Bプラテン44Bに直接供給する高温配管と、全てのプラテンから蒸気を回収する回収配管とにより構成することで、プラテンによって異なる温度の蒸気を供給すれば良い。
冷却体は、例えば、配管途中に設けられ、蒸気が膨張する膨張室と、膨張室の外側に設けられる複数の冷却フィンとにより構成される。よって、冷却体を通過する蒸気が膨張室で膨張することにより冷却される。なお、冷却体の冷却効率は、第1プラテン41,第2Bプラテン42B,第3Bプラテン43B,第4Bプラテン44Bと、第2Aプラテン42A,第3Aプラテン43A,第4Aプラテン44A,第5プラテン45とを加熱するときに設定する温度差によって適宜設定すれば良い。
上記のように加硫成型されるトレッド11は、踏面11aが、非踏面11bよりも加硫が進行した状態で製造されるので、トレッド11と台タイヤとを一体にする後工程で再び加硫されるときにトレッド11の非踏面11bが台タイヤに良好に接着される。
なお、第1プラテン41、第2プラテン42の第2Aプラテン42Aと第2Bプラテン42B、第3プラテン43の第3Aプラテン43Aと第3Bプラテン43Bと、第4プラテン44の第4Aプラテン44Aと第4Bプラテン44Bと、第5プラテン45に供給する蒸気の温度は、異なる温度に個別に適宜設定してトレッド11を加硫するようにしても良い。
【0036】
なお、上記実施形態1乃至実施形態4において、断熱材70を踏面金型61乃至64の平坦部60dに設けるとして説明したが、踏面金型61乃至64に平坦部60dを形成せずに、踏面金型61乃至64に対応して接触する非踏面金型65乃至68の接触部に断熱材70を配置するようにしても上記各形態に示すものと同様な効果を得ることができる。
また、踏面金型61乃至64をプラテン41乃至44の上面にそれぞれ固着し、非踏面金型65乃至68をプラテン42乃至45の下面にそれぞれ固着するとして説明したが、踏面金型61乃至64をプラテン42乃至45の下面にそれぞれ固着し、非踏面金型65乃至68をプラテン41乃至44の上面にそれぞれ固着するようにしても良い。特に、実施形態2乃至実施形態4にあっては、踏面金型及び非踏面金型からなる一対のモールドが、プラテンの上面、下面に対して固着される上下の位置については、任意に重畳しても良い。さらに、実施形態3及び実施形態4にあっては、異なる種類のトレッドを成型するモールドを重畳するように設定しても良い。
【0037】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 トレッド製造装置、2 フレーム、3 プレス装置、4 加硫装置、
6 成型装置、11 トレッド、11a 踏面、11b 非踏面、
21A〜21D 支柱、22 中間梁、23 上梁、24 天板、24a 下面、
25 レール、31 油圧シリンダ、31A ピストン、31a 上端面、
32 油圧制御バルブ、33 油圧ポンプ、
34A 上プレス台、34B 下プレス台、35:36 油圧ホース、
41〜45 プラテン、42A 第2Aプラテン、42B 第2Bプラテン、
43A 第3Aプラテン、43B 第3Bプラテン、44A 第4Aプラテン、
44B 第4Bプラテン、46 熱供給手段、46A 供給口、46B 回収口、
47 流路、48 供給管、49 回収管、50 供給カプラ、51 回収カプラ、
52〜54 プラテン枠、55A,55B 保持枠、56A,56B 車輪、
60a 成型面、60b 枠体、60c 成型空間、60d 平坦面、
61〜64 踏面金型、65〜68 非踏面金型、70 断熱材、71 断熱材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドの踏面を成型する成型面を有する踏面金型、及び、前記トレッドの踏面と反対側の非踏面を成型する非踏面金型により閉塞された成型空間を有するモールドと、
前記踏面金型を加熱する第1加熱手段と、
前記非踏面金型を加熱する第2加熱手段とを備え、
前記成型空間内に配置される未加硫トレッドを加硫成型するトレッド製造装置であって、
前記第1加熱手段により加熱される踏面の温度が、前記第2加熱手段により加熱される非踏面の温度とは異なるように設定されることを特徴とするトレッド製造装置。
【請求項2】
前記踏面金型及び前記非踏面金型が、互いの接触面に配置される断熱材を介して閉塞されることを特徴とする請求項1に記載のトレッド製造装置。
【請求項3】
前記踏面金型が、前記成型面の周囲を取り囲む平坦面を有し、
前記断熱材が、前記平坦面上に配置されることを特徴とする請求項2に記載のトレッド製造装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至請求項3いずれかに記載のモールドが上下方向に重畳されたトレッド製造装置であって、
上下方向に隣接するモールドの間に位置する第1加熱手段と第2加熱手段が断熱手段を介して上下方向に離間して配置され、
当該上下方向に離間して配置される第1加熱手段と第2加熱手段のうち、下側の第2加熱手段が下面に前記非踏面金型を有し、上側の第1加熱手段が上面に前記踏面金型を有することを特徴とするトレッド製造装置。
【請求項5】
前記断熱手段が、断熱材であることを特徴とする請求項4に記載のトレッド製造装置。
【請求項6】
前記断熱手段が、空隙であることを特徴とする請求項4に記載のトレッド製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−35414(P2012−35414A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174668(P2010−174668)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】