説明

ドライブレコーダ

【課題】車両が走行する走行道路とこの走行道路に交差する交差道路へ進入する車両の進行方向に応じて車載撮影手段の撮影方向を設定し、車載撮影手段の限られた画角内で必要な情報がより多く取得されるドライブレコーダを提供する。
【解決手段】自車101に搭載されている車載カメラ16は、走行道路R11と交差道路R12とが交差する道路交差部C11において、自車101の位置に応じて旋回駆動される。走行道路R11と交差道路R12とが鋭角に交差する道路交差部C11において、自車101が走行道路R11から交差道路R12へ右折しながら進入する場合、車載カメラ16は進行方向左側へ旋回される。これにより、車載カメラ16は、交差道路R12を走行しつつ自車101に接近する他車102を重点的に撮影することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブレコーダに関し、特に車両の走行条件に応じて車載撮影手段の撮影方向が設定されるドライブレコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば予期しない事故などの際に、車両の周囲の画像を記録するドライブレコーダが普及しつつある。ドライブレコーダでは、車両の前方、後方および側方などを車載撮影手段で撮影している。車載撮影手段は、例えば車両の前方に固定されている。そのため、車載撮影手段は、より多くの情報を取得するために、撮影角度いわゆる画角を拡大することが望まれている。また、近年では、ナビゲーション装置にドライブレコーダを搭載し、画像情報と位置情報とを連携させることも提案されている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平10−262239号公報
【特許文献2】特開2006−200936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、車載撮影手段が車両に固定されている場合、条件によっては走行道路と交差道路との道路交差部において左端または右端側の画像が欠落するおそれがある。例えば、走行道路と交差道路とが道路交差部において鋭角に交差している場合、車両の前方を車載撮影手段で撮影すると、車両の進行方向において交差道路の右方の画像が欠落する。特許文献1の場合、ドライブレコーダとナビゲーション装置との連携が図られているものの、予め登録された撮影地点では車載撮影手段を制御するものにすぎない。そのため、事故やいわゆるヒヤリハットの発生が予測される地点のすべてにおいて、車載撮影手段による撮影の制御は困難である。また、特許文献2の場合、ドライブレコーダとナビゲーション装置との連携は図られているものの、車両が走行する道路の形状等は考慮されていない。そのため、車両の走行に応じて適切な画像の取得は困難である。
【0004】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両が走行する走行道路とこの走行道路に交差する交差道路へ進入する車両の進行方向に応じて車載撮影手段の撮影方向を設定し、車載撮影手段の限られた画角内で必要な情報がより多く取得されるドライブレコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明では、進行方向予測手段は、走行道路から交差道路へ進入する車両の進行方向を予測する。進行方向予測手段は、例えば車両のウィンカの点滅状態、速度あるいは操舵角度などから道路交差部における車両の進行方向を予測する。また、撮影方向設定手段は、進行方向予測手段で予測された車両の進行方向と車両位置特定手段で特定した車両の現在位置とに基づいて、車載撮影手段による撮影方向を設定する。撮影手段駆動装置は、撮影方向設定手段で設定された撮影方向へ車載撮影手段を旋回駆動する。これにより、道路交差部において車両が走行道路から交差道路へ進入するとき、車載撮影手段の撮影方向はより撮影が必要な方向へ向けられる。例えば、車両が道路交差部において走行道路から交差道路へ右折するとき、撮影方向設定手段は撮影方向を進行方向よりもやや左方に設定する。これにより、車載撮影手段は、その画角に交差道路の道路上よりも走行道路の反対車線を多く含む。したがって、車載撮影手段の限られた画角内で必要な情報をより多く取得することができる。
【0006】
請求項2記載の発明では、撮影方向設定手段は交差道路の規制情報および車両の進入条件に基づいて撮影方向を設定する。規制情報とは、例えば交差道路に設定されている一方通行などの規制である。また、進入条件とは、車両が走行道路から交差道路へ進入する条件である。進入条件には、例えば車両が道路交差部において走行道路から交差道路へ右折若しくは左折で進入するのか、高速道路における走行道路である合流車線から交差道路である走行車線へ進入するのかなど、走行道路を走行する車両が交差道路へどのような条件で進入するのかが含まれている。規制情報および車両の進入条件は、車両位置特定手段で特定した現在の車両の位置と、地図データから取得される走行道路と交差道路との交差状態とから取得される。例えば道路交差部における走行道路と左方から右方への一方通行の交差道路との三叉路に車両が進入する場合、交差道路を走行する他車は左方からのみ接近し、自身の車両は道路交差部において右折する。そのため、撮影方向設定手段は、上記のような条件のとき、撮影方向を進行方向よりも左方に設定する。これにより、交差道路を走行する他車を重点的に撮影可能である。また、例えば高速道路の走行道路である合流車線から交差道路である走行車線へ進入する場合、走行車線を走行する車両は右手後方からのみ接近し、自身の車両は合流車線から走行車線へ右側へ移動する。そのため、撮影方向設定手段は、上記のような条件のとき、撮影方向を進行方向よりも右方に設定する。これにより、交差道路を走行する他車を重点的に撮影可能である。したがって、車載撮影手段の限られた画角内で必要な情報をより多く取得することができる。
【0007】
請求項3記載の発明では、撮影方向設定手段は、走行道路と交差道路との交差角度に基づいて撮影方向を設定する。走行道路と交差道路との交差角度は、地図データから取得される走行道路と交差道路との交差状態から取得される。道路交差部で交差する走行道路と交差道路とは、必ずしも直角に交差するとは限らない。そのため、撮影方向設定手段は、地図データから取得した道路交差部における走行道路と交差道路との交差角度に基づいて、撮影方向を設定する。例えば、走行道路の前方において交差道路が鋭角に交差し、走行道路から交差道路へ右折進入する場合、自身の車両の左手後方から交差道路を走行する他車を重点的に撮影可能である。したがって、車載撮影手段の限られた画角内で必要な情報をより多く取得することができる。
【0008】
請求項4記載の発明では、車載撮影手段の旋回角度には上限が設定されている。車載撮影手段の旋回角度が大きくなりすぎると、車載撮影手段で本来撮影されるべき範囲の画像が欠落するおそれがある。そのため、車載撮影手段の旋回角度は、車両が走行道路を直進した場合に車両の前方における走行道路の反対車線を撮影可能な範囲を上限としている。これにより、車載撮影手段の画角を必要以上に拡大する必要がない。
請求項5記載の発明では、記録手段には車載撮影手段で撮影した画像とともに撮影方向設定手段で設定した撮影方向が記録される。これにより、記録した画像を再生するとき、車載撮影手段が向いていた方向が再生される画像と合わせて確認される。したがって、撮影された画像がいずれの方向を撮影したものかを容易に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のドライブレコーダについて図面に基づいて説明する。
(車載装置の構成)
本発明の一実施形態によるドライブレコーダ(以下、ドライブレコーダを「車載装置」という。)を図2に示す。車載装置10は、車両に搭載されている。すなわち、車載装置10は、図3に示すように車両100に搭載されている。車載装置10は、図2に示すようにレコーダ部11およびナビゲーション部12から構成されている。レコーダ部11とナビゲーション部12とは、一体の車載装置10として構成してもよく、それぞれ単独で構成されたドライブレコーダおよびナビゲーション装置を組み合わせて構成してもよい。レコーダ部11は、制御部13を備えている。レコーダ部11の制御部13は、外部メモリ14に接続している。外部メモリ14は、記録手段を構成している。制御部13は、図示しないCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータで構成されている。外部メモリ14は、例えばEPPROMなどの不揮発性のメモリ素子やハードディスクドライブなどの記録装置で構成されている。外部メモリ14は、レコーダ部11とナビゲーション部12との間で共用されている。なお、レコーダ部11およびナビゲーション部12にそれぞれ専用の外部メモリを設けてもよい。
【0010】
レコーダ部11は、画像処理部15、車載撮影手段としての車載カメラ16、進行方向予測部17、撮影方向設定部18、舵角センサ19、ウィンカ操作部21、車速センサ22、RTC(Real Time Clock)23および撮影手段駆動装置としてのカメラ駆動部24などを備えている。画像処理部15は、車載カメラ16に接続しており、車載カメラ16で撮影した画像から例えばJPEG形式やMPEG形式の電子データを作成する。車載カメラ16は、例えば車両100のフロントガラスやサイドミラーなどに設けられている。進行方向予測部17は、道路交差部において走行道路から交差道路へ進入した車両100の進行方向を予測する。撮影方向設定部18は、進行方向予測部17で予測された車両100の進行方向に基づいて車載カメラ16の撮影方向すなわち旋回角度を設定する。舵角センサ19は、車両100の図示しないハンドルの舵角を検出する。ウィンカ操作部21は、車両100の図示しないウィンカレバーの操作に基づいて、ウィンカすなわち方向指示器の点滅を制御する。車速センサ22は、車両100の速度を検出する。
【0011】
RTC23は、時刻および時間を設定する計時手段である。RTC23は、発信器が出力したクロックパルスのパルス数をカウントし、カウントしたカウント値が基準値に到達すると単位時間を示す単位時間信号を生成する。そして、RTC23は、生成した単位時間信号に基づいて端末時刻を生成する。カメラ駆動部24は、例えば図示しないモータ、およびモータの駆動力を伝達する伝達機構などを有している。制御部13は、撮影方向設定部18で設定された撮影方向に基づいてモータへ駆動信号を出力する。これにより、カメラ駆動部24は、車載カメラ16を撮影方向設定部18で設定された撮影方向へ駆動する。車載カメラ16は、カメラ駆動部24によって図3に示すように車両100の進行方向に対し左右へ旋回駆動される。すなわち、車載カメラ16は、車両100の進行方向の前方を撮影する基準位置から進行方向左側の左側限界位置および進行方向右側の右側限界位置まで旋回する。これにより、車載カメラ16で画像が撮影される範囲は、基準位置における基準範囲A1を中心に左側限界位置における撮影範囲A2と右側限界位置における撮影範囲A3との間に設定される。
【0012】
ナビゲーション部12は、図2に示すように制御部31、位置検出部32、地図データ入力部33、操作スイッチ部34、表示部35、音声コントローラ36およびリモコンセンサ37などを備えている。制御部31は、図示しないCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータで構成されている。位置検出部32は、車両100の現在位置を検出する。位置検出部32は、方位センサ41、ジャイロスコープ42、距離センサ43およびGPS受信器44を有している。方位センサ41は、車両100の方位を検出する。ジャイロスコープ42は、車両100の回転角度を検出する。距離センサ43は、車両100の走行距離を検出する。GPS受信器44は、GPS(Global Positioning System)により、車両100の現在位置を測位するために、GPS衛星から送信される電波を受信する。
【0013】
地図データ入力部33は、地図データ記憶部45に記憶された各種のデータを読み出す。地図データ記憶部45には、複数のノードおよびノード同士をつなぐリンクにより形成された地図データを記憶している。地図データに含まれるノードは、走行道路と交差道路とが交差する道路交差部に対応する。また、地図データに含まれるリンクは、走行道路または交差道路に対応する。地図データ記憶部45には、地図データに加え、目印データ、マップマッチング用データ、目的地データ、交通情報を道路データに変換するためのテーブルデータなどの各種のデータを記憶している。地図データ記憶部45としては、例えばDVDやCDなどの大容量記憶媒体、メモリカードあるいはハードディスクドライブなどの記憶媒体が用いられる。
【0014】
操作スイッチ部34は、表示部35の画面の近傍に設けられているメカニカルスイッチ、および表示部35の画面に設けられているタッチパネルスイッチなどから構成されている。使用者は、操作スイッチ部34の各スイッチを用いて、車両100の目的地、表示部35の画面や表示態様の切り替え(例えば、地図縮尺の変更、メニュー表示の選択、経路の探索、経路案内の開始、現在位置の修正および音量の調整など)を行う各種のコマンドの入力を行う。これにより、車載装置10は、使用者の指示にしたがって作動する。リモコンセンサ37は、リモコン46との間でコマンドなどの送受信を行う。リモコン46には、複数の操作スイッチが設けられている。リモコン46の操作スイッチを操作することにより、リモコン46からリモコンセンサ37を経由して各種の指令信号が制御部31へ送信される。操作スイッチ部34およびリモコン46は、いずれの操作によっても制御部31へ同一の機能を実行させることができる。
【0015】
表示部35は、例えばカラー液晶ディスプレイを有している。表示部35の画面は、車両100の現在位置周辺の地図が各種縮尺で表示されるとともに、この地図表示に重ねて車両100の現在位置および進行方向を示す現在地マークが表示される。また、目的地までの経路案内を実行するとき、表示部35の画面には経路案内用の画面が表示される。音声コントローラ36は、車載スピーカ47に接続されている。音声コントローラ36は、図示しない車載マイクロホンが接続されているとき、マイクロホン接続部を経由して音声認識結果を制御部31へ出力する。これとともに、音声コントローラ36は、認識された音声を、車載スピーカ47を経由してトークバック出力する。また、音声コントローラ36は、制御部31からの音声出力信号に基づいて、音声信号を車載スピーカ47へ出力する。車載スピーカ47から出力される音声は、案内に関する音声、操作説明に関する音声、盗難防止機能の動作中であることを報知する音声および音声認識結果に応じたトークバック音声などである。
【0016】
制御部31は、車両100が走行道路に沿って移動可能とするために、表示部35の画面に現在地周辺の道路地図を表示するとともに、車両100の位置および進行方向を示す現在地マークを道路地図に重ねて表示する。この場合、車両100の走行にともなって現在地の表示は表示された地図上を移動し、地図は車両100の位置に応じてスクロール表示される。このとき、制御部31は、車両100の現在地を走行道路上にあわせるマップマッチングを実施する。このように、ナビゲーション部12は、特許請求の範囲における車両位置特定手段に相当する。
【0017】
外部メモリ14は、レコーダ部11で撮影された画像を記録する。レコーダ部11で撮影された画像は、例えばJPEG形式やMPEG形式の電子データとして外部メモリ14に記録される。また、外部メモリ14は、撮影方向設定部18で設定された車載カメラ16の旋回角度を画像の電子データとともに記録する。これにより、外部メモリ14には、撮影された画像の電子データと、この画像を撮影したときの車載カメラ16の旋回角度とが関連づけられて記録される。
【0018】
次に、進行方向予測部17および撮影方向設定部18について詳細に説明する。
進行方向予測部17は、車両100の進行方向を予測する。本明細書中において、走行道路とは、車両100が走行している道路を意味する。これに対し、交差道路とは、道路交差部において走行道路と交差する道路を意味する。進行方向予測部17は、走行道路上における次の道路交差部で交差する交差道路に対し、車両100が走行道路から交差道路へ進入する方向を予測する。進行方向予測部17は、舵角センサ19から取得した車両100のハンドルの回転角度、ウィンカ操作部21から取得したウィンカレバーの操作、または車速センサ22で取得した車両100の速度のいずれかまたはこれらの組み合わせから車両100の進行方向を予測する。例えば車両100が走行する走行道路が道路交差部において交差道路と交差している場合、車両100の速度が低下し、右ウィンカが操作されたと仮定する。このとき、進行方向予測部17は、ウィンカ操作部21における右ウィンカの操作、道路交差部における車速の低下、および車両100のハンドルの操作などから、車両100が走行道路から交差道路へ右折すると予測する。このように、進行方向予測部17は、車両100の挙動、および車両100への操作から交差道路に対する進行方向を予測する。
【0019】
撮影方向設定部18は、進行方向予測部17で予測された道路交差部における車両100の進行方向、および位置検出部32で特定した車両100の現在位置に基づいて、車載カメラ16による撮影方向を設定する。上記の例のように、走行道路を走行する車両100が交差道路へ右折する場合、車載カメラ16では交差道路へ進入した後の車両100の前方に加え、走行道路の反対車線を走行する対向車両を撮影することが望ましい。そのため、撮影方向設定部18は、道路交差部において予測された自身の車両100の進行方向、および道路交差部における車両100の現在位置に基づいて車載カメラ16を向けるべき方向を撮影方向として設定する。カメラ駆動部24は、車載カメラ16を撮影方向設定部18で設定された撮影方向へ旋回駆動する。撮影方向設定部18で設定される車載カメラ16の旋回角度は、上限値が設定されている。具体的には、車載カメラ16の旋回角度は、車両100が走行道路を直進していると仮定したとき、車両100の右折にともない車載カメラ16を旋回駆動しても、車両100の前方における走行道路の反対車線すなわち対向車線が撮影される範囲を上限としている。
【0020】
また、撮影方向設定部18は、交差道路の規制情報および進入条件に基づいて撮影方向を設定する。規制情報とは、例えば一方通行など交差道路に予め設定されている規制情報を意味する。撮影方向設定部18は、地図データ記憶部45に記憶されている地図データから交差道路の規制情報を取得する。進入条件とは、車両100が道路交差部において走行道路から交差道路へ進入する条件を意味する。具体的な進入条件とは、例えば車両100が走行道路から交差道路へ右折または左折で進入するのか、あるいは走行道路から交差道路への合流であるのかなどである。撮影方向設定部18は、これら交差道路の規制情報や車両の進入条件などに基づいて、車載カメラ16による撮影方向を設定する。
【0021】
さらに、撮影方向設定部18は、走行道路と交差道路との交差角度に基づいても撮影方向を設定する。走行道路と交差道路とは、必ずしも直角に交差しているとは限らない。すなわち、走行道路と交差道路との交差角度によって車載カメラ16で撮影すべき撮影方向は変化する。撮影方向設定部18は、地図データ記憶部45に記憶されている地図データから道路交差部における走行道路と交差道路との交差角度を取得する。そして、撮影方向設定部18は、取得した走行道路と交差道路との交差角度に基づいて、車載カメラ16による撮影方向を設定する。
【0022】
以下、上記の構成による車載装置10の作動について説明する。以下、特に説明しない限り、車載装置10を搭載した車両を「自車」といい、この「自車」以外の車両を「他車」という。
(車載カメラによる画像の取得)
まず、図4に基づいて車載カメラ16による画像の取得の流れについて説明する。レコーダ部11の制御部13は、ナビゲーション部12の位置検出部32で検出した車両100すなわち自車の位置を取得する(S101)。制御部13は、ナビゲーション部12の方位センサ41の出力、ジャイロスコープ42の出力、距離センサ43からの出力およびGPS受信器44で受信したGPS衛星からの電波に基づく測位データなどから自車の位置を検出する。制御部13は、検出した自車の位置を地図データ入力部33によって地図データ記憶部45から取得した地図データに重ねて表示部35に表示する。レコーダ部11の制御部13は、上記の処理により、ナビゲーション部12から所定の時間間隔で地図上の自車の位置を検出する。
【0023】
ステップS101において自車の位置が検出されると、進行方向予測部17は道路交差部における自車の進行方向を予測する(S102)。進行方向予測部17は、地図データ入力部33を経由して地図データ記憶部45から取得した地図データに基づいて、自車が走行する走行道路の延長上にある道路交差部を検出する。そして、進行方向予測部17は、検出した道路交差部の形状や自車から道路交差部までの距離、ならびに自車の挙動に基づいて道路交差部における自車の進行方向を予測する。具体的には、進行方向予測部17は、舵角センサ19から自車のハンドルの舵角、ウィンカ操作部21から左右いずれのウィンカが点滅しているか、および車速センサ22から自車の車速などを取得する。進行方向予測部17は、これら道路交差部の形状、道路交差部までの距離および自車の挙動に基づいて自車の進行方向を予測する。
【0024】
ステップS102において自車の進行方向が予測されると、撮影方向設定部18は車載カメラ16の撮影方向を設定する(S103)。撮影方向設定部18は、ステップS102で推定した自車の進行方向、および位置検出部32で検出した自車の位置に基づいて車載カメラ16による撮影方向を設定する。撮影方向は、自車の移動とともに刻々と変化する。そのため、撮影方向設定部18は、位置検出部32で検出した自車の現在位置と進行方向予測部17で予測した自車の進行方向とに基づいて、自車の移動にしたがって適切な撮影方向を設定する。
【0025】
ステップS103において車載カメラ16の撮影方向が設定されると、制御部13は車載カメラ16の向きが正しいか否かを判断する(S104)。すなわち、制御部13は、車載カメラ16が撮影方向設定部18で設定した撮影方向を向いているか、車載カメラ16の向きは正しいか否かを判断する。
ステップS104において車載カメラ16の向きが正しくないと判断されると、制御部13は正しい車載カメラ16の向きを算出する(S105)。制御部13は、自車の移動にしたがって刻々と撮影方向設定部18で設定される撮影方向、およびカメラ駆動部24から取得した車載カメラ16の旋回角度データに基づいて、車載カメラ16を適切な向きへ駆動するための旋回角度を算出する。
【0026】
ステップS105において車載カメラ16を適切な向きへ駆動するための旋回角度が設定されると、カメラ駆動部24は設定された旋回角度に基づいて車載カメラ16を旋回駆動する(S106)。制御部13は、算出した旋回角度に基づいて、カメラ駆動部24に制御信号を出力する。カメラ駆動部24は、制御部13から出力された駆動信号に基づいて車載カメラ16を適切な向きへ駆動する。
ステップS106において車載カメラ16が適切な向きへ駆動されると、車載カメラ16は画像を取得し(S107)、取得した画像は画像処理部15で処理される(S108)。車載カメラ16は、撮影した画像を電気信号として出力する。車載カメラ16から出力された電気信号は、例えばA/D変換やガンマ補正などが施された後、画像処理部15において圧縮されMPEG形式などの電子データとして作成される。
【0027】
ステップS108において作成された電子データは、外部メモリ14に保存される(S109)。また、ステップS104において車載カメラ16の向きが正しいと判断されたときも、ステップS107およびステップS108において車載カメラ16で撮影された画像から電子データが作成され、作成された電子データが外部メモリ14に保存される。外部メモリ14には、車載カメラ16で撮影された画像の電子データとともに、この画像を撮影した際に撮影方向設定部18で設定された車載カメラ16の向きがあわせて記録される。
【0028】
次に、上述の車載装置10による車載カメラ16の動作の具体例について説明する。
(具体例1)
具体例1について図1に基づいて説明する。図1に示す具体例1の場合、自車101は道路交差部C11において走行道路R11と鋭角に交差する交差道路R12へ右折によって進入する。図1では、刻々と変化する自車101の位置および車載カメラ16の撮影範囲を模式的に示している。自車101が走行道路R11を直進しているとき、車載カメラ16は自車101の前方を撮影する。このとき、自車101の進行方向と車載カメラ16の画角の中心とはほぼ平行となる。車載カメラ16は、自車101が道路交差部C11に進入するまで自車101の前方を撮影する。
【0029】
進行方向予測部17は、舵角センサ19やウィンカ操作部21から取得した自車101の挙動、および地図データ記憶部45に記憶されている道路交差部C11の形状から道路交差部C11における自車101の進行方向を予測する。具体例1の場合、進行方向予測部17は、自車101が走行道路R11から交差道路R12へ右折しながら合流することを予測する。撮影方向設定部18は、位置検出部32で検出した自車101の現在位置、および地図データ記憶部45に記憶されている道路交差部C11における走行道路R11と交差道路R12との交差角度に基づいて、車載カメラ16による撮影方向を設定する。撮影方向設定部18は、走行道路R11および交差道路R12における自車101の現在位置の変化にしたがって車載カメラ16の撮影方向を設定する。
【0030】
具体例1の場合、自車101が道路交差部C11に進入すると、撮影方向設定部18は車載カメラ16を進行方向に対し左側へ旋回駆動する。道路交差部C11において走行道路R11と交差道路R12とが鋭角に交差する場合、自車101の前方だけでなく交差道路R12上を自車101の左方から接近する他車201に注意を払う必要がある。具体例1のように車載カメラ16を進行方向に対し左側へ旋回駆動することにより、車載カメラ16では交差道路R12上を左方から接近する他車201の撮影が可能となる。撮影方向設定部18は、自車101が道路交差部C11を通過すると、交差道路R12上の自車101の現在位置にしたがって車載カメラ16を徐々に進行方向の前方へ旋回駆動する。
【0031】
(具体例2)
具体例2について図5に基づいて説明する。図5に示す具体例2の場合、自車102は三叉路状の道路交差部C21において走行道路R21と概ね直角に交わる交差道路R22へ右折によって進入する。図5では、刻々と変化する自車102の位置および車載カメラ16の撮影範囲を模式的に示している。この場合、交差道路R22は図5の左方から右方への一方通行である。自車102が走行道路R21を直進しているとき、車載カメラ16は自車102の前方を撮影する。このとき、自車102の進行方向と車載カメラ16の画角の中心とはほぼ平行となる。車載カメラ16は、自車102が道路交差部C21に進入するまで自車102の前方を撮影する。
【0032】
進行方向予測部17は、舵角センサ19やウィンカ操作部21から取得した自車102の挙動、および地図データ記憶部45に記憶されている道路交差部C21の形状から道路交差部C21における自車102の進行方向を予測する。具体例2の場合、進行方向予測部17は、自車102が走行道路R21から交差道路R22へ右折しながら合流することを予測する。撮影方向設定部18は、位置検出部32で検出した自車102の現在位置、および地図データ記憶部45に記憶されている道路交差部C21で走行道路R21と交差する交差道路R22の規制情報に基づいて、車載カメラ16の撮影方向を設定する。撮影方向設定部18は、走行道路R21および交差道路R22における自車102の現在位置の変化にしたがって車載カメラ16の撮影方向を設定する。
【0033】
具体例2の場合、自車102が道路交差部C21へ接近すると、撮影方向設定部18は車載カメラ16を進行方向に対し左側へ旋回駆動する。道路交差部C21で走行道路R21と交差する交差道路R22が左方から右方への一方通行の場合、交差道路R22上を自車102の左方から接近する他車202に対し重点的に注意を払う必要がある。具体例2のように車載カメラ16を進行方向に対し左側へ旋回駆動することにより、車載カメラ16では一方通行の交差道路R22上を左方から接近する他車202の撮影が可能となる。撮影方向設定部18は、自車102が道路交差部C21を通過すると、交差道路R22上の自車101の現在位置にしたがって車載カメラ16を徐々に進行方向の前方へ旋回駆動する。
【0034】
(具体例3)
具体例3について図6に基づいて説明する。図6に示す具体例3は、高速道路への合流の例である。図6では、刻々と変化する自車103の位置および車載カメラ16の撮影範囲を模式的に示している。具体例3の場合、自車103は高速道路の合流車線R31を走行し、道路交差部C31において走行道路である合流車線R31から進行方向に対し右側の交差道路である走行車線R32へ進入する。自車103が合流車線R31を走行し、本線の走行車線R32までの距離があるとき、車載カメラ16は自車103の前方を撮影する。
【0035】
進行方向予測部17は、舵角センサ19やウィンカ操作部21から取得した自車103の挙動、および地図データ記憶部45に記憶されている道路交差部C31である合流車線R31と走行車線R32との合流部分の形状から自車103の進行方向を予測する。具体例3の場合、進行方向予測部17は、自車103が合流車線R31から右側の走行車線R32へ合流することを予測する。撮影方向設定部18は、位置検出部32で検出した自車103の現在位置、および地図データ記憶部45に記憶されている合流車線R31と走行車線R32との合流形状に基づいて、車載カメラ16による撮影方向を設定する。撮影方向設定部18は、合流車線R31および走行車線R32における自車103の現在位置の変化にしたがって車載カメラ16の撮影方向を設定する。
【0036】
具体例3の場合、自車103が合流車線R31と走行車線R32とが並行する位置に達すると、撮影方向設定部18は車載カメラ16を進行方向に対し右側すなわち走行車線R32側へ旋回駆動する。高速道路において自車103が合流車線R31から右側の走行車線R32へ進入する場合、自車103の前方だけでなく走行車線R32上を自車103の右手後方から接近する他車203に注意を払う必要がある。具体例3のように車載カメラ16を進行方向に対し右側へ旋回駆動することにより、車載カメラ16では走行車線R32上を右手後方から接近する他車203の撮影が可能となる。撮影方向設定部18は、自車103が道路交差部C31を通過すると、走行車線R32上の自車103の現在位置にしたがって車載カメラ16を徐々に進行方向の前方へ旋回駆動する。
【0037】
(具体例4)
具体例4について図7に基づいて説明する。図7に示す具体例4の場合、自車104は道路交差部C41において走行道路R41と直交する交差道路R42へ右折によって進入する。図4では、刻々と変化する自車104の位置および車載カメラ16の撮影範囲を模式的に示している。自車104が走行道路R41を直進しているとき、車載カメラ16は自車104の前方を撮影する。このとき、自車104の進行方向と車載カメラ16の画角の中心とはほぼ平行となる。車載カメラ16は、自車101が道路交差部C41に進入するまで自車104の前方を撮影する。
【0038】
進行方向予測部17は、舵角センサ19やウィンカ操作部21から取得した自車104の挙動、および地図データ記憶部45に記憶されている道路交差部C41の形状から道路交差部C41における自車104の進行方向を予測する。具体例4の場合、進行方向予測部17は、自車104が走行道路R41から交差道路R42へ右折しながら進入することを予測する。撮影方向設定部18は、位置検出部32で検出した自車104の現在位置、および地図データ記憶部45に記憶されている道路交差部C41における走行道路R41と交差道路R42との交差形状に基づいて、車載カメラ16による撮影方向を設定する。撮影方向設定部18は、走行道路R41および交差道路R42における自車104の現在位置の変化にしたがって車載カメラ16の撮影方向を設定する。
【0039】
具体例4の場合、自車104が道路交差部C41に進入すると、撮影方向設定部18は車載カメラ16を進行方向に対し左側へ旋回駆動する。道路交差部C41において走行道路R41と交差道路R42とが直交する場合、自車104の前方だけでなく走行道路R41の反対車線すなわち対向車線の前方から接近する他車204に注意を払う必要がある。そのため、撮影方向設定部18は、走行道路R41の反対車線が撮影可能な旋回角度の上限まで車載カメラ16を旋回駆動する。具体例4のように車載カメラ16を進行方向に対し左側へ旋回駆動することにより、車載カメラ16では走行道路R41の反対車線上を前方から接近する他車204の撮影が可能となる。撮影方向設定部18は、自車104が道路交差部C41を通過すると、交差道路R42上の自車104の現在位置にしたがって車載カメラ16を徐々に進行方向の前方へ旋回駆動する。
【0040】
以上説明したように本発明の一実施形態では、車載カメラ16の撮影方向は、道路交差部における自車の移動にともなってより撮影が必要な方向へ向けられる。したがって、車載カメラ16の限られた画角の範囲内で必要な画像、すなわちより危険度の高い方向の画像を多く撮影することができる。
また、本発明の一実施形態では、道路交差部の形状、交差道路の規制情報および道路交差部における車両100の進入条件などに基づいて車載カメラ16の撮影方向が設定される。そのため、車載カメラ16は、道路交差部の形状や車両100の進行方向などに関わらず、より撮影が必要な方向へ向けられる。したがって、車載カメラ16でより危険度の高い方向の画像を多く撮影することができる。
さらに、本発明の一実施形態では、撮影した画像とともに車載カメラ16の旋回角度が外部メモリ14に記録される。そのため、車載カメラ16で撮影した画像と車載カメラ16の向きとが関連づけられる。したがって、撮影した画像を再生するとき、この画像がいずれの方向を撮影したものか、車両100の進行方向に対しどの程度の撮影範囲の旋回が生じているかなどを容易に把握することができる。
【0041】
(その他の実施形態)
外部メモリ14には、画像および車載カメラ16の旋回角度とともに、車両100の旋回角度や角速度を記録してもよい。車両100の旋回角度は、車両100の前輪側および後輪側の内輪および外輪の回転数の差から取得される。また、車両100の角速度は、ジャイロスコープ42からの出力値によって取得される。これらを外部メモリ14にあわせて記録することにより、道路交差部における車両100の旋回と車載カメラ16の撮影方向とが関連づけられる。したがって、レコーダ部11によって画像が撮影された状況をより詳細に再現することができる。
【0042】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態による車載装置における画像記録の具体例1を示す模式図
【図2】本発明の一実施形態による車載装置の構成を示すブロック図
【図3】本発明の一実施形態による車載装置を搭載した車両および車載カメラの撮影範囲を示す模式図
【図4】本発明の一実施形態による車載装置の作動の流れを示す概略図
【図5】本発明の一実施形態による車載装置における画像記録の具体例2を示す模式図
【図6】本発明の一実施形態による車載装置における画像記録の具体例3を示す模式図
【図7】本発明の一実施形態による車載装置における画像記録の具体例4を示す模式図
【符号の説明】
【0044】
図面中、10は車載装置(ドライブレコーダ)、11はレコーダ部、12はナビゲーション部(車両位置特定手段)、14は外部メモリ(記録手段)、16は車載カメラ(車載撮影手段)、17は進行方向予測部、18は撮影方向設定部、24はカメラ駆動部(撮影手段駆動装置)、45は地図データ記憶部、100は車両を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを記録する地図データ記憶手段と、
前記地図データ記憶手段に記憶されている地図データに基づいて、車両の現在位置を走行道路上に特定する車両位置特定手段と、
前記車両に搭載されている車載撮影手段と、
前記走行道路上の次の道路交差部で交差する交差道路おいて、前記走行道路から前記交差道路へ進入する前記車両の進行方向を予測する進行方向予測手段と、
前記進行方向予測手段で予測された次の道路交差部における前記車両の進行方向と前記車両位置特定手段で特定した前記車両の現在位置に基づいて、前記車載撮影手段による撮影方向を設定する撮影方向設定手段と、
前記撮影方向設定手段で設定された撮影方向へ前記車載撮影手段を旋回駆動する撮影手段駆動装置と、
を備えることを特徴とするドライブレコーダ。
【請求項2】
前記撮影方向設定手段は、前記地図データ記憶手段に記憶された地図データに含まれる前記交差道路の規制情報および前記車両の前記交差道路に進入する進入条件に基づいて撮影方向を設定することを特徴とする請求項1記載のドライブレコーダ。
【請求項3】
前記撮影方向設定手段は、前記地図データ記憶手段に記憶された地図データに含まれる前記走行道路と前記交差道路との交差角度に基づいて撮影方向を設定することを特徴とする請求項1または2記載のドライブレコーダ。
【請求項4】
前記撮影方向設定手段で設定される前記車載撮影手段の旋回角度は、前記車両が前記走行道路を直進した場合に前記車両の前方における前記走行道路の反対車線を撮影可能な範囲を上限とすることを特徴とする請求項1、2または3記載のドライブレコーダ。
【請求項5】
前記車載撮影手段で撮影した画像とともに前記撮影方向設定手段で設定した撮影方向を記録する記録手段を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載のドライブレコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−237740(P2009−237740A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80858(P2008−80858)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】