ナノチューブデバイスおよび製造方法
ナノチューブデバイスおよびデバイス製造のためにナノチューブを堆積させる方法を開示する。本方法は、ナノチューブの電気泳動堆積に関し、画定された領域内での堆積したナノチューブの数および位置決めの制御を可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年6月20日に出願された本願と同一の譲受人が所有する米国特許出願第11/765,788号明細書、「Method of Forming Nanotube Vertical Field Effect Transistor」に関連する主題を含み、上記出願の開示内容はすべて参照により本明細書に援用される。
【0002】
米国政府の権利に関する記述
本発明は、米空軍科学研究局に認定された助成金契約番号AFOSR Grant:FA9550−05−1−0461に基づく米国政府の補助を受けてなされたものである。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、包括的にはナノチューブデバイスおよびデバイス形成方法に関し、特に、画定された領域に1つまたは複数のナノチューブを制御可能に堆積させる方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ナノチューブ、たとえばカーボンナノチューブ(CNT)またはナノチューブのアレイを、電気プローブまたは電子デバイスにおける検出または能動デバイス素子として採用することができる、多くの応用がある。これら応用では、ナノチューブとの電気的接触を行わなければならず、それには、さまざまな導電性リンク(すなわち相互接続(配線))および他の回路構成に対してナノチューブを正確に位置決めする必要がある。
【0005】
正確な位置合せが必要であることとは別に、所望の仕様によるデバイス性能を提供するために、ナノチューブの特性を制御する必要もある。たとえば、CNTのトランジスタとしての応用の多くは、多層カーボンナノチューブ(MWNT)ではなく単層カーボンナノチューブ(SWNT)で最適に達成される。さらに、トランジスタの能動素子としては、金属SWNTではなく半導体SWNTが必要である。しかしながら、配線およびナノプローブ等の他の応用では、金属CNTが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CNTデバイスに対する既存の製造方法は、位置合せおよび特性制御に対する両方のニーズに対して完全には対応していない。さらに、CNT電気デバイス製造では、CNT堆積の前に少なくとも1つの配線レベルを処理する場合がある。たとえばアルミニウム配線および銅配線を用いる最も一般的なメタライゼーション方式は、後続する処理ステップに対してサーマルバジェットの制約を課すことが多い。CNTを堆積させるために通常用いられる化学気相成長(CVD)法は、比較的高い温度を伴うためアルミニウム配線または銅配線とは適合しない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、ナノチューブデバイスとデバイス製造のためにナノチューブを堆積させる方法とを提供する。
【0008】
一実施形態は、(a)構造体の上に開口部によって領域を画定するステップと、(b)領域に電気泳動によって堆積させるナノチューブの数を制御するように開口部を構成するステップと、(c)電気泳動によって領域に上記数のナノチューブを堆積させるステップと、を含む方法に関する。
【0009】
本発明の別の実施形態は、基板上に形成される金属接点の上の絶縁層と、絶縁層に形成される開口部であって、金属接点まで延在しかつ金属接点における領域を画定する、開口部と、開口部内に堆積し、かつ領域の実質的に中心において領域と接触する第1端と、試料と相互作用する官能基を有する分子に結合された第2端とを有する、カーボンナノチューブと、を有する、ナノチューブベースセンサを提供する。
【0010】
さらに別の実施形態は、カーボンナノチューブベースデバイスを形成する方法を提供し、本方法は、導電層の上に絶縁層が形成された基板を提供するステップと、絶縁層を通して開口部を形成することにより、導電層の領域を露出させるステップと、カーボンナノチューブを含む電解質流体に基板を浸漬させるステップと、電解質流体に金属電極を提供するステップと、導電層および金属電極にバイアス電圧を印加するステップと、少なくとも1つのカーボンナノチューブを、領域に対して実質的に垂直な向きに堆積させるステップであって、カーボンナノチューブの一端が領域の中心に近接して領域に接触する、ステップと、を含む。
【0011】
本発明の教示を、添付の図面とともに以下の詳細な説明を考慮することによって容易に理解することができる。
【0012】
理解を容易にするために、可能な場合は、図に共通の同一の要素を示すために同一の参照数字を用いている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態を用いて製造することができるナノチューブベース構造体の略断面図である。
【図2A】本発明の一実施形態によりカーボンナノチューブを堆積させる実験装置および工程手順を示す概略図である。
【図2B】本発明の一実施形態によりカーボンナノチューブを堆積させる実験装置および工程手順を示す概略図である。
【図2C】本発明の一実施形態によりカーボンナノチューブを堆積させる実験装置および工程手順を示す概略図である。
【図2D】本発明の一実施形態によりカーボンナノチューブを堆積させる実験装置および工程手順を示す概略図である。
【図3A】直径が100nmであり深さが50nmである開口部の周囲の電界分布の概略図である。
【図3B】直径が100nmであり深さが50nmである開口部の周囲の電界分布の概略図である。
【図3C】直径が100nmであり深さが50nmである開口部の周囲の電界分布の概略図である。
【図4A】直径が500nmであり深さが50nmである開口部の周囲の電界分布の概略図である。
【図4B】直径が500nmであり深さが50nmである開口部の周囲の電界分布の概略図である。
【図5A】ナノチューブセンサアレイの概略図である。
【図5B】図5Aのナノチューブセンサアレイの断面図である。
【図6A】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6B】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6C】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6D】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6E】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6F】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6G】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6H】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6I】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6J】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図7】細胞内プローブとしてナノチューブセンサを用いる実験装置の概略図である。
【図8】本発明の実施形態を用いて製造することができるナノチューブベーストランジスタの概略図である。
【図9A】本発明の実施形態を実施するために好適な開口部の構造の概略図である。
【図9B】本発明の実施形態を実施するために好適な開口部の構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
CNTデバイスの製造では、開口部内に垂直に向けられたCNTを提供することが必要な場合が多い。トランジスタ製造工程では、所定の段階またはレベルに応じて、開口部をビアとも呼ぶ。
【0015】
本発明の実施形態は、堆積させるナノチューブの数とともにナノチューブのパターンおよび間隔を制御して、開口部によって画定される領域にナノチューブを堆積させる方法を提供する。特に、開口部の適切な構造とともに電気泳動堆積により、ナノメートルスケールの精度で目標領域に少なくとも1つのナノチューブを堆積させることができる。本発明の実施形態とともに、ナノチューブのたとえば形状または他の特性による事前選別(pre−sorting)を用いることにより、所定の性能要件でのデバイスの製造を容易にすることができる。
【0016】
図1Aは、本発明の実施形態を用いて製造することができるナノチューブ構造体100の略断面図である。構造体100は基板102を有しており、その上には絶縁材料層104が堆積している。絶縁層104は、基板102の上面108を露出させる開口部106を形成するようにパターニングされている。開口部106内部に単一のCNT110が堆積しており、CNT110の一端112が基板102の上面に接触している。基板102は、ナノチューブ110の電気泳動堆積のためにバイアス電圧が印加されるのを可能にする金属または導電膜等の導電性材料(絶縁材料の上に堆積する)である。
【0017】
本発明の実施形態により、開口部106の内側に、他のCNTを排除してCNT110を堆積させることができる。CNT110を収容するのに十分大きくなければならない開口部106を、種々のリソグラフィ工程を用いてパターニングすることができる。したがって、一実施形態では、開口部106は、直径(D)が、リソグラフィ工程のおよその下限(たとえば分解能)から約100nmまでの範囲であり得る。たとえば、193nmでの既存のリソグラフィは、約90nmの分解能限界を容易に提供する。一実施形態では、基板102は、横方向の寸法(たとえば開口部を横切って延在する)が、開口部106に関してレベル間オーバーレイ制約を満たすのに十分大きい。以下に示すように、CNT110を、たとえば数ナノメートルの横方向位置合せ精度で、開口部106の中心に近接して堆積させることができる。さらに、CNT110を、多層CNT対単層CNTおよび/または導電性CNT対半導体CNTを含む好ましい物理特性を有するように事前に選択することができる。
【0018】
図2A〜図2Dは、本発明の一実施形態による電気泳動の実験装置と基板にCNTを堆積させる手順とを概略的に示す。電気泳動堆積(EPD)は、電界の影響下で電極に向かう、適切な溶剤内に分散した荷電粒子の動きによって駆動される。約30μm未満のサイズの粒子を、固体含有量(solid loading)が低くかつ低粘度の懸濁液内で
用いることができる。一般に、ナノチューブが束の形態で堆積するか個々のチューブの形態で堆積するかは、懸濁液の特質と各々の相対的な移動性とによって決まり、相対的な移動性は、それらの形状と開口部またはビア内部の接触面に向かう拡散に対する関連する抵抗とによって決まる。
【0019】
図2Aは、導電層202を有する基板構造体200を示す。導電層202の上に絶縁層204が提供され、絶縁層204には1つまたは複数の開口部206がパターニングされている。基板構造体200は、適切な溶剤に電解質およびCNT210の懸濁液を収容する液槽220に、たとえば室温で浸漬されている。
【0020】
EPDをうまく行うためには、安定分散の調製が必要である。一般に、静電的に安定した分散は、懸濁液のイオン伝導性を低く維持しながら、高ζ電位の粒子により得ることができる。SWNTは、低pH値で高ζ電位値を示した。帯電塩の存在は、基板へのナノチューブの付着を向上させかつ堆積速度を上昇させるのに重要な役割を果たすことができることも知られている。
【0021】
一実施形態では、10mgの精製SWNTを30mlの蒸留水内に懸濁させ、懸濁液に10−4モルの硝酸マグネシウム六水和物[Mg(NO3)26H20]を添加し、約2時間〜3時間超音波処理する。一般に、液槽220内のナノチューブを、応用のニーズに従ってナノチューブのタイプで事前選別することが好ましい。たとえば、トランジスタの能動素子として半導体SWNTが用いられるが、プローブまたは他のデバイスには半導体ナノチューブまたは金属ナノチューブのいずれを用いてもよい。溶液の最終pHが約4であるように懸濁液の質を向上させるために、非イオンTriton−X界面活性剤を数滴添加する。
【0022】
図2Aにおいて円として示す水素イオン(H+)のほかに、液槽220はまた、CNTを吸収するかまたはそれに付着する傾向にあるマグネシウムイオンMg2+も収容している。電極224、たとえばプラチナ電極が液槽220内に浸漬されており、DC電源222の正端子に接続されている。導電層202はスイッチ226に接続されている。
【0023】
図2Aにおいて、スイッチ226が開放され、液槽220に電流が流れていない場合(電流を、電流計Aを用いて測定することができる)、CNTは懸濁液内でランダムに分散し、基板上のいかなる堆積もランダムになる。
【0024】
図2Bにおいて、スイッチ226が閉鎖され、それにより導電層202がDC電源222の負端末に接続される。たとえば約5V〜25Vの範囲のDC電位がプラチナ電極224および導電層202に印加されると、液体内の荷電粒子または荷電種がカソードまたはアノードのいずれかに向かって移動する。たとえば、H+イオンおよび正荷電CNTは、この場合はカソードである基板構造体200に向かって移動する。
【0025】
H+イオンは、CNTを含む他の正荷電種より高い移動性を有するため、他の荷電種より高速に基板構造体200に到達し、したがって、図2Bに示すように、絶縁層204の表面に優先的に蓄積する。絶縁層204の表面が正に荷電することにより、各開口部206の周囲に電界がもたらされる結果となる。
【0026】
基板構造体200近くに到達する正荷電CNTは、図2Cに示すように、電界により各開口部206の中心の方に向けられる。この「集束」効果に関する詳細については後の説明で示す。一実施形態では、開口部206および電界分布は、開口部206の直径(すなわち横方向寸法)が追加のCNTを物理的に収容するのに十分広くても、各開口部206内に1つのCNT(CNT210*として示す)しか堆積しないように、構成されている
。CNT210*は、各開口部206内に「長手方向に」向くように配置され、すなわち、CNT210*の長さは、開口部206の深さと同じ方向に沿っており、CNT210*の一端が導電層202と接触している。
【0027】
図2Dは、CNT210*の付着していない端部が、プラチナ電極に向かって整列するかまたは向く傾向にあり、さらに、追加のCNTに対する焦点(focal point)としての役割を果たすことを示す。したがって、第2CNT210AがCNT210*の自由端に、たとえば縦方向に付着し、追加のCNTは互いに端部同士が付着する。その後、基板構造体200を槽220から取り除き、蒸留脱イオン水で洗浄し、不活性ガスで乾燥させる。乾燥後、導電層202に付着しているCNT210*のみが残り、図2Eに示すもののような結果として得られる構造体は、さらなる処理の容易ができている。
【0028】
デバイスが異なると、適切な動作および/または最適な性能のために必要なナノチューブの特性が異なることが多いため、電気泳動堆積の前にナノチューブの事前選別を提供することが有利であり得る。たとえば、ナノチューブを、半導体対金属、単層対多層等の特性に従って選別してもよく、または長さ、直径等の形状または寸法に従って選別してもよい。
【0029】
ナノチューブのタイプが異なると移動性が異なり、たとえば、長いかまたは多層ナノチューブは、一般に短いかまたは単層ナノチューブに比べて移動性が低いため、選別の目的で電気泳動を用いることも可能である。こうした選別を、電気泳動堆積の前に、槽内のナノチューブが特性および/または形状に関して比較的一様な分布を有するように行うことができる。別法として、電気泳動槽内のナノチューブが形状または他の特性に関して比較的広い分布を有する場合、ナノチューブの移動性が異なることにより、ある程度の選別を堆積中に「インサイチュで」達成することも可能である。
【0030】
ナノチューブを開口部の方に向ける集束の程度は、開口部の構造とともに、電界分布の大きさおよび形状によって影響を受ける。堆積するナノチューブの数およびそれらの位置決めに対する制御を提供するために、有限要素モデルを用いて、さまざまな入力パラメータの関数として電界分布を調査する。ナノチューブ堆積を制御することに対して関連するパラメータまたは係数には、他にもあるが特に、開口部構造、ナノチューブ特性、絶縁層および基板の特徴、バイアス電位、溶液の誘電性特性がある。開口部構造には、概して、形状、寸法(たとえば幅、長さ、深さ、寸法比)、側壁断面等があり得る。ナノチューブ特性には、概して、寸法(たとえば長さ、直径)、単層または多層、半導体または金属があり得る。
【0031】
開口部の周囲の電界は、基板構造体上の金属層に印加される電位と、絶縁層の表面に蓄積する電荷との組合せからもたらされる。カソードを覆う誘電体層上に正電荷が蓄積することにより、アノードとカソードとの間に印加されるバイアスから発生する電界とは逆の電界がもたらされる。2つの電界が等しくかつ逆になると、正電荷はそれ以上絶縁層の表面に引き寄せられなくなる。この結果として得られる電界分布からナノスケールのレンズの強度を画定する「飽和電荷密度」σを、以下の式から計算することができる。
σ=ε0εrE 式(1)
ここで、Eはアノードとカソードとの間の電界の大きさであり、ε0は自由空間の誘電率であり、εrは液体の相対誘電率である。
【0032】
一例として、E=103V/mの場合、ε0=8.85×10−12ファラッド/メートルであり、液体はεr=80の水であり、表面電荷密度σは7.1×10−7クローン/メートル2に等しい。
【0033】
所定の開口部形状が選択され、表面電荷密度が計算されると、開口部近くの領域における電界と正荷電粒子の動きとを、周知の有限要素解析技法を用いて計算することができる。したがって、適切な構造および設計により、ナノチューブ堆積を誘導するための所望の集束またはレンズ効果をもたらす電界分布を得ることができる。
【0034】
図3A〜図3Cは、直径が100nmであり深さが50nmである開口部306の周囲の電界分布の結果を示す。この例では、導電層302に負の10Vバイアスが印加される。図3Aは、H+イオンが絶縁層の上に蓄積される前の電界分布を示す。電界分布は、比較的一様であり、電気力線は絶縁層304の表面に対して概ね垂直である。図に示すように、電気力線方向を、負電位の領域の方に向いている矢印によって示す。開口部306またはその近くにおいてのみ電気力線がわずかに逸れている。
【0035】
図3Bは、絶縁層304の表面がH+イオンで飽和した後の変更された電界分布を示す。絶縁層304の上方の矢印320は、負荷電種が表面から反発されることを示し、開口部306の両側の矢印322は、電気力線が内側に、すなわち開口部306の上方の領域の方に向けられていることを示す。開口部306の中心近くにおいて、矢印334によって示すように、電気力線は下方に、すなわち開口部306の内部の方に向けられている。したがって、CNT等の正荷電種は、開口部306の方に向けられている。
【0036】
十分な電荷が電荷飽和点に達するように蓄積した後、静電レンズ効果により、すべての荷電粒子が開口部306の中心のほうに向けられる。この形状に対する等電位線は、移動する荷電ナノチューブを開口部306の中心に向かう集束に有利である。この場合、開口部306の直径は100nmであり、深さは50nmである。この例では、開口部306の周囲の電界分布は、開口部の中心長手方向軸に対して実質的に対称であるため、CNT310もまた開口部306内で実質的に中心に配置される。したがって、CNT310の一端は、開口部306によって画定される導電層302の領域(すなわち、開口部の底部の露出領域)の、たとえば、画定された領域の中心数ナノメートル内に取り付けられる。
【0037】
図3Cは、1つのCNT310が開口部306内に堆積した後の電界分布を示す。CNTが導電性であり、導電層302と電気的に接触しているため、電界分布は堆積したCNT310によって変更される。さらに、この場合のように開口部306が十分に小さい場合、電気力線は、開口部306の内部の方に向かうのではなく、CNT310の自由端に向かって集中する傾向がある。したがって、CNT310の自由端は、開口部306の底部に堆積するのではなく、ナノチューブのさらなる堆積のための焦点となる。
【0038】
一般に、参照電極と開口部の底部における金属接点との間の電位差が固定である場合、集束効果の強度は、開口部深さが固定である場合、開口部の直径に対して反比例する。
【0039】
図4Aおよび図4Bは、直径が500nmであり深さが50nmである開口部406に対して得られる、異なる結果を示し、導電層402には負の10Vバイアスが印加されている。図4Aは、開口部406の周囲の電気力線を示し、絶縁層404の表面にはH+イオンが蓄積しており、図4Bは、開口部406内のCNT410によって変更された電気力線を示す。この場合、CNT410は、開口部406の中心406Cから横方向にずれて配置されており、それは、たとえば槽内のランダムな進入方向から発生し、その後、電界がナノチューブをその堆積位置に向けてもよい。図の電気力線が示唆するように、開口部406内に2つ以上のCNTを堆積させてもよい。
【0040】
この場合、電界分布によって、ナノチューブを開口部406の中心領域に向けて誘導する優先方向は提供されない。ナノチューブの最終位置は、バイアスが印加される前のナノチューブの初期位置によって決まる。大きい開口部、たとえば直径すなわち横方向寸法が
約100nmを上回る場合、最初に堆積したナノチューブの取り付けられていない端部は、依然として、さらなるナノチューブ堆積のための焦点であり得る。しかしながら、開口部の横方向寸法が十分に大きい場合、電界はまた、他のナノチューブも導電層402の露出面の他の位置に向ける。
【0041】
結果により、約100nmの開口部径が、堆積が単一ナノチューブに制限される遷移または基準点を提供し、約100nmを上回る開口部は2つ以上のナノチューブの堆積に有利である傾向があることが示唆されるが、この基準点は、ナノチューブおよび/または構造的構成の所定の組合せによって変化し得ることが理解される。
【0042】
開口部径(すなわち横方向寸法)とは別に、ナノチューブの堆積を制御する目的で、他のパラメータ、たとえば他にもあるが特に、形状、アスペクト比(開口部の深さまたは高さを横方向寸法で割ったものとして定義される)を、たとえば、ナノチューブ特性および/または形状に従って異なる構造を提供することにより用いることも可能である。
【0043】
別の有限要素解析の結果もまた、ナノチューブの直径が10nmでありかつ長さが100nmであり、直径が100nmでありかつ深さ(または高さ)が18nmを超える開口部が窒化ケイ素に形成される場合、開口部内に1つのナノチューブのみが堆積されることを示す。これは、堆積するナノチューブの数を1つのみに制限するために、アスペクト比が少なくとも0.18以上である開口部を用いることができることを示唆している。直径がより小さいナノチューブの場合、堆積を1つのナノチューブのみに制限するために、より大きいアスペクト比が必要な場合もある。同様の分析を用いて、他の開口部構造およびナノチューブ特性に対し堆積するナノチューブのあり得る位置をシミュレートすることができる。対称面が得られる状況の場合は2次元分析が好適であるが、他の状況では一般に3次元分析を用いることができる。したがって、さらなる制御レベルでナノチューブ堆積を提供するガイドとしてのナノスケールレンズ設計に対して、有限要素解析を用いることができる。
【0044】
本発明の方法を用いて、多くの異なるナノチューブベースデバイスを製造することができる。本方法は、概して、直径の異なる開口部内のナノチューブの堆積に適用され得るが、堆積させるナノチューブの数またはナノチューブの横方向位置決めまたは位置合せを制御することが望ましい状況に特に適している。この方法から利益を得ることができるナノチューブベースデバイスの例には、他にもあるが特に、縦型CNTトランジスタ、化学センサまたはバイオセンサがある。
【0045】
図5Aは、本発明の一実施形態によるナノチューブベースセンサアレイデバイス500の概略図であり、図5Bは、線BB’を含む垂直面に沿った断面図である。デバイス500は、概して、基板501の上に堆積される1つまたは複数のナノチューブ510を有している。導電性材料502、たとえば金属が、基板501の選択された領域に形成されることにより、ナノチューブ510に対する導電経路を提供する。上述したように電気泳動を用いて、たとえば導電性材料502の上に提供される絶縁層504に開口部を形成し、導電性材料502にバイアス電圧を印加することにより、導電性材料502の上にナノチューブ510を堆積させることができる。ナノチューブ510に対しパッシベーションおよび絶縁を提供するために、各ナノチューブ510の周囲にシース512が形成されている。ナノチューブ510の側壁を絶縁し、先端のみを露出させることにより、あり得る背景雑音を低減することができ、それによりセンサの電気的感度が上昇する。CNT電気特性の変化を測定するために、ナノチューブ510に対する配線が用いられる。
【0046】
図5Aおよび図5Bに示すものと同様のデバイスを、生体細胞における細胞内活動を調査するために用いることができる。特に、CNTは、こうしたプローブに対する優れた候
補であり、それは、その直径が小さい(たとえば、細胞膜厚さに比べて)ことにより、プローブを用いて調査されている細胞に対する歪みを最小限にすることができるためである。
【0047】
所定のセンサ応用に応じて、ナノチューブ510の他端に異なる機能分子514が設けられる。一般に、SWNTがセンサ応用に対して好ましいが、MWNTを用いてもよい状況もあり得る。
【0048】
図6A〜図6Jは、図5Aに示すもののようなデバイスアレイを形成するために好適な工程手順のさまざまな段階の間のセンサデバイス構造体の略断面図である。図6Aは、基板600に形成された導電部602を示す。バイオセンサの場合、基板材料として石英を用いてもよく、それは、光学顕微鏡を用いて透過モードで生体試料を見るのを容易にする。一実施形態では、直径が100mmであり厚さが350μmである石英ウェハを用いてもよく、それらを、デバイス製造の前に、当業者には既知である方法を用いて洗浄し調製することができる。しかしながら、一般に、シリコンを含む任意の好適な基板で十分である。出発基板がシリコンまたは他の導電性材料である場合、金属配線の前に、まず絶縁層を堆積させなければならない。
【0049】
導電部602、たとえば配線金属を、当業者には既知であるフォトリソグラフィおよびレジストリフトオフ技法を用いて、堆積させかつパターニングすることができる。配線金属は、CNTとの電気的接触および接着を維持するために好適である必要があり、限定されないがコバルト(Co)、ニッケル(Ni)または鉄(Fe)があり得る。
【0050】
金属配線の石英基板との接着を容易にするために、導電部602の形成の前に、接着層(図示せず)を形成してもよい。一実施形態では、金属配線としてコバルト(Co)を使用し、20nm厚さのクロム(Cr)接着層を用いて、コバルトの石英面への接着を促進する。Cr層を、約2オングストローム/秒(Å/s)の速度で蒸着させてもよく、その後、120nm厚さのCo層を約1Å/sの速度で蒸着させることができる。Cr層およびCo層それぞれに対して、約20nmおよび約120nmの厚さを用いることができる。コバルト材料配線はまた、ナノチューブの電気泳動堆積中のカソードとしての役割を果たすこともできる。
【0051】
CNTを、電気泳動を用いて堆積させる実施形態では、導電部602は、基板602の縁または周縁に設けられたコンタクトパッド(図示せず)に電気的に接続されるように構成されている。一実施形態では、CNTが堆積する各導電部602は、電気的接続経路を簡略化するために、基板600の上に形成された連続的な導電層の一部として提供される。これにより、電子ビームリソグラフィ(製造中に電子ビームが用いられる場合)中の金属の電気的接地が容易になり、CNTの電気泳動堆積のための単一接続点が提供される。一例では、異なるデバイス間の電気的接続は、カーフ(各デバイス間の領域)においてなされ、これにより、デバイスの組立てを容易にするために基板が切断される場合に、接続をダイシングソーで破断することができる。製造中に必要な電気的接続を提供するために別の構成を用いてもよく、種々の従来のリソグラフィ工程およびエッチング工程をこの目的に適応させてもよい。
【0052】
各個々のセンサデバイスに対して、たとえばはんだ付けまたはワイヤボンディングにより、外部回路への電気的接続を提供するために、金属接点が必要である。一実施形態では、金属接点材料として金(Au)を用いる。金属接点を、フォトリソグラフィ技法およびレジストリフトオフ技法を用いて形成することができる。図6Bは、金属接点形成段階中の構造体を示し、そこでは、フォトレジスト層603が、下にある導電部602の領域まで延在する開口部608を形成するように、パターニングされている。パターニングされ
たレジスト603と導電部602の露出領域との上に、導電層604が堆積している。レジスト層603が図6Bの基板から除去されると、開口部606内部の導電層のみが残り、結果として図6Cに示す構造体となる。
【0053】
図6Dは、基板600および導電部602の上に堆積され、後に開口部610(ビアまたは窓とも呼ぶ)を形成するようにパターニングされる、絶縁層608を示す。一実施形態では、絶縁層608として窒化ケイ素(SiNx)が用いられる。絶縁層608の厚さは、パターニング後の静電レンズ実装に対して適当なアスペクト比を提供するように選択される。たとえば、横方向寸法、たとえば直径が約100nmである開口部を形成するためには、50nm厚さのSiNx膜が好適である。たとえば、50nm厚さの低応力SiNx膜を、約350℃の温度でのPlasma Therm 790標準設備を用いて、プラズマ化学気相成長(PECVD)により、低温で堆積させてもよい。センサデバイスの文脈では、SiNx層は2つの機能を提供する。デバイス製造中に開口部を形成するために絶縁層を提供するだけでなく、SiNx層はまた、完成したセンサにおいて、導電性配線金属と測定が行われる細胞培養液との間の絶縁障壁も提供する。
【0054】
好適なリソグラフィ工程を用いて、絶縁層608に、横方向寸法が約100nm以下である開口部610を形成することができる。開口部610は、基板602上に堆積するナノチューブを収容するのに十分大きい。一実施形態では、開口部610の直径は、リソグラフィ工程のおよそ下限(たとえば分解能)から約100nmまでの範囲である。一実施形態では、193nm光源照明を用いる光リソグラフィを用いて、約90nmの分解能を提供して、フォトレジストに開口部をパターニングしてもよい。別法として、これら開口部を、電子ビームリソグラフィまたは集束イオンビームミリング技法を用いて製作してもよい。ナノチューブの電気泳動堆積中に静電レンズ効果を提供するために、寸法が約100nm未満の開口部が好適である。配線金属およびビアのリソグラフィ技法により、ナノチューブデバイス間の分離が制限される。
【0055】
そして、図6Dの構造体を、図2に関連して上述したものと同様の装置を用いて、ナノチューブの電気泳動堆積用の電解質槽内に浸漬させることができる。一実施形態では、石英基板上のコバルト金属層を備えた、パターニングされた構造体が、負電極として用いられ、プラチナワイヤが正電極として用いられる。約5V〜25Vの範囲のDCバイアス電圧を用いてもよい。
【0056】
図6Eは、開口部610内のナノチューブ650の堆積後の構造体を示す。電気泳動堆積の前に、ナノチューブを金属SWNTに対して事前選別し、SWNTの束を制限するように選択的に除去してもよい。CNTまたはSWNTの長さは、たとえば約1ミクロン(μm)未満であってもよく、通常、応用のニーズによって確定される。細胞内プローブ等のバイオセンサの場合、長さは、機械的安定性および目標細胞内への貫通距離に対する要件によって決まる可能性がある。
【0057】
ナノチューブ650を開口部610に堆積した後、その垂直の方向付けを、すすぎ工程によりまたは帯電効果によって行ってもよい。ナノチューブが堆積した金属層とウェハ基板の上方の金属板との間に電位を印加することにより、ナノチューブを垂直方向に再度位置合せすることができる。これを、たとえば、製造手順における後続する堆積工程の前に反応器において行ってもよい。プラズマ処理システムは、通常、ウェハの上方に、プラズマを発生する電気回路の一部である金属板を有している。この金属板(または別の電極)とナノチューブが堆積する金属層との間にDCまたはAC電界を確立することにより、後続する処理の前にナノチューブを所望の向きに再度位置合せすることができる。
【0058】
ナノチューブ堆積後、ナノチューブ650を封止し不動態化する(または絶縁する)た
めに、厚さが約2nm〜5nmの範囲である絶縁材料のコンフォーマルな膜612を形成してもよい。この封止膜に好適な材料には、SiNxまたは好適なポリマー、たとえばポリテトラフルオロエチレンがある。
【0059】
電気泳動堆積の前またはその間のナノチューブの選別は、通常ナノチューブの長さの十分に正確な制御を提供しないため、ナノチューブに一定の長さ仕様を提供するために、追加のトリミングが必要となる場合もある。これを、封止膜612(図6G)の上に形成された(たとえば成長または堆積した)ポリシリコン層613を示す、図6Gおよび図6Hに示す工程ステップによって達成することができる。そして、ポリシリコン層615を、図6Hに示すように所望のナノチューブ長さが達成されるまで、たとえば化学機械研磨(CMP)を用いて、研磨することができる。
【0060】
そして、堆積したナノチューブ650の先端の周囲の封止膜612の一部を、短時間の反応性イオンエッチング(RIE)または化学エッチングによって除去することにより、ナノチューブ650の先端を露出させることができる。露出されるナノチューブ650の長さは、エッチング速度およびエッチング時間によって決まる。SiNxに対するRIEエッチングは、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)集積回路の製造の場合の標準工程であり、エッチング速度は周知であり、市販のSiNxエッチング装置に組み込まれている。
【0061】
そして、ポリSi層613を除去して、図6Iに示すように、自立型の封止されたナノチューブ650を残す。図6Jは、封止膜612および絶縁層608に開口部616を形成することにより金属接点606を露出させた後の構造体を示す。開口部616を、当業者には既知である標準フォトリソグラフィおよびドライエッチング工程で形成することができる。
【0062】
図7は、こうしたナノチューブセンサを細胞内プローブとして用いる実験装置の概略図である。図7は、2つのCNTプローブ710を示し、各々、基板700上に形成されたそれぞれの配線金属702に接続されている。CNTプローブ710は、電気的プロービングのために液槽720内の細胞750内に挿入される。槽電極722とコンタクトパッド704(絶縁層708に形成された開口部内部に設けられる)とは、各々、細胞内活動を示す電気的特性を監視するために好適な電子装置(図示せず)に接続される。
【0063】
上記実施形態および説明は、開口部によって画定される領域の中心近くにナノスケールの横方向精度で単一ナノチューブを制御可能に堆積させることができることを示している。本方法は、特に、実装または処理の観点から魅力的であり、それは、比較的大きい領域内でこうした制御された堆積を達成することができることにより、リソグラフィ技法に対する要件が大幅に緩和されるためである。したがって、目標堆積領域を画定するために十分小さい開口部を形成するためにより複雑なリソグラフィ器具(電子ビームまたは集束イオンビーム等)に頼ることなく、光リソグラフィを用いて製造を容易に行うことができる。
【0064】
本発明の実施形態はまた、所与の領域において堆積させるナノチューブの数およびそれらの間隔を制御する方法も提供する。こうした方法は、画定された領域に2つ以上のナノチューブを堆積させることが望ましい多くの応用に対して有用である。たとえば、縦型電界効果トランジスタ(VFET)設計によっては、デバイスにより多くの電流が流れるのを可能にするチャネルを形成する2つ以上のナノチューブから利益を得る場合もある。したがって、堆積させるナノチューブの数を制御することにより、論理回路入力のパラメータを満たすために十分な電流を用いてVFET出力を設計することができることを確実にすることができる。
【0065】
VFETの設計における1つの制約は、デバイスの横方向のサイズが、単位面積辺りのVFETの数を最大限にするために可能な限り小さくなければならない、ということである。1つの可能性は、図8に示すように、間隔の狭いビアを製作し、各ソース802、ドレイン804およびゲート806を並列に接続する、というものである(CNT810はデバイスのチャネルとしての役割を果たし、ゲート806からゲート誘電体808によって分離されている)。この概念は、HoenleinらによるMaterials Science and Engineering C,23,p.663〜669(2003)および独国特許第0010036897C1号明細書(2000)によって示唆されている。しかしながら、ナノチューブを位置決めするために間隔の狭いビアを製作することの問題は、単位面積辺りのナノチューブの数が、ビアの最小径とビア間の離隔距離とによってのみ確定される、ということである。これにより、リソグラフィおよびエッチング処理に対し厳しい要件が課され、単位長さ辺りの妥当な最大電流(1500マイクロアンペア/マイクロメートル)のVFETデバイスの場合、直径が20nm未満のビアが必要となる。
【0066】
本発明の実施形態により、図8に示すもののようなデバイス概念を、リソグラフィに厳しい要件を課すことなく製造することができる。特に、開口部を、電気泳動堆積を用いて開口領域内におけるナノチューブの数とともにそれらの間隔または位置決めを制御するように構成することができる。
【0067】
図9Aおよび図9Bは、ナノチューブ堆積を制御するのに好適な開口部構造の平面図の概略図である。図9Aに示すように、開口部は溝穴等、細長い形状を有し、それは、横方向寸法または横断寸法(線X−X’で示す方向に沿った)とも呼ばれる幅(W)と、長手方向寸法(線Y−Y’によって示す方向に沿った)とも呼ばれる長さ(L)とによって特徴付けられ、LはWより大きい。この例では、幅Wは、1つのナノチューブのみを横断方向に沿って堆積させることができるように十分狭いように設計されている。したがって、堆積するナノチューブはすべて、長手方向に沿って、線パターンで堆積し、すなわち互いに隣接して整列する。
【0068】
さらに、溝穴内に堆積するナノチューブの数を、溝穴の長さによって制御することができる。溝穴に第1ナノチューブが堆積すると、溝穴の周囲の電界分布が変更される。有限要素解析を用いて新たな電界分布を計算することができる。隣接するナノチューブ間の最も近い離隔距離もまた、有限要素解析を用いて分析することにより、溝穴内に連続して堆積するランダムに進入する荷電粒子の軌道を予測することができる。
【0069】
長さが100nmのナノチューブにこの分析を用いることにより、直径が1nmのナノチューブ間の最も近い離隔距離は約15nmであると推定された。直径が10nmであり長さが100nmであるナノチューブの場合、隣接するナノチューブに対する最も近い離隔距離は約20nmである。同じ方法を用いて、任意の形状のナノチューブの最も近い離隔距離を計算することができる。別の方法を用いて、2つの間隔の狭いナノチューブの付近の電界を計算し、計算された電界が、すでに堆積した2つの間の第3ナノチューブの堆積を排除する分布を有するまで、間隔を狭くすることができる。
【0070】
ナノチューブ間の最も近い離隔距離(s)が既知となると、溝穴内に堆積するナノチューブの数Nは、N=MOD(L/s)によって与えられる。関数MOD()は、結果として得られる数L/sの整数未満を切り捨てる。溝穴の端部の形状によってもまた、丸めの程度に応じてこの結果が変更され得る。計算は、丸めがない場合に最も正確である。丸めがあることにより、追加の集束の程度によって堆積するナノチューブの数が低減する可能性があり、これを、正確な形状に対する3次元有限要素解析を用いて確定することができ
る。
【0071】
上述したように、本発明の実施形態は、画定された領域において電気泳動を用いてナノチューブを制御可能に堆積させる方法を提供する。堆積領域は、その領域に堆積させることができるナノチューブの数とともに、堆積するナノチューブの間隔を制御するように構成することができる、開口部によって画定され得る。開口部を適切に構成することにより、たとえば約100nm未満等の十分に小さい開口部サイズを提供することにより、数ナノメートルの横方向位置合せ精度で、その領域に単一ナノチューブのみが堆積するように堆積を制御することも可能になる。
【0072】
本発明の実施形態は、容易にスケーラブルであり従来の製造工程および材料と互換性のある室温工程を提供し、デバイス製造に用いられているナノチューブの特性に対する制御の改善を可能にする。
【0073】
カーボンナノチューブの堆積の文脈でいくつかの例について説明したが、本方法を、概して他のナノチューブの堆積に適応させることができる、ということが理解される。さらに、本発明の実施形態を、概して、種々のデバイスの製造に対し単層、多層、半導体または金属ナノチューブを堆積させることに対して適用することができる。
【0074】
上述したことは、本発明の実施形態に関するが、本発明の他のかつさらなる実施形態を、その基本的な範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は以下の特許請求の範囲によって確定される。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年6月20日に出願された本願と同一の譲受人が所有する米国特許出願第11/765,788号明細書、「Method of Forming Nanotube Vertical Field Effect Transistor」に関連する主題を含み、上記出願の開示内容はすべて参照により本明細書に援用される。
【0002】
米国政府の権利に関する記述
本発明は、米空軍科学研究局に認定された助成金契約番号AFOSR Grant:FA9550−05−1−0461に基づく米国政府の補助を受けてなされたものである。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、包括的にはナノチューブデバイスおよびデバイス形成方法に関し、特に、画定された領域に1つまたは複数のナノチューブを制御可能に堆積させる方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ナノチューブ、たとえばカーボンナノチューブ(CNT)またはナノチューブのアレイを、電気プローブまたは電子デバイスにおける検出または能動デバイス素子として採用することができる、多くの応用がある。これら応用では、ナノチューブとの電気的接触を行わなければならず、それには、さまざまな導電性リンク(すなわち相互接続(配線))および他の回路構成に対してナノチューブを正確に位置決めする必要がある。
【0005】
正確な位置合せが必要であることとは別に、所望の仕様によるデバイス性能を提供するために、ナノチューブの特性を制御する必要もある。たとえば、CNTのトランジスタとしての応用の多くは、多層カーボンナノチューブ(MWNT)ではなく単層カーボンナノチューブ(SWNT)で最適に達成される。さらに、トランジスタの能動素子としては、金属SWNTではなく半導体SWNTが必要である。しかしながら、配線およびナノプローブ等の他の応用では、金属CNTが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CNTデバイスに対する既存の製造方法は、位置合せおよび特性制御に対する両方のニーズに対して完全には対応していない。さらに、CNT電気デバイス製造では、CNT堆積の前に少なくとも1つの配線レベルを処理する場合がある。たとえばアルミニウム配線および銅配線を用いる最も一般的なメタライゼーション方式は、後続する処理ステップに対してサーマルバジェットの制約を課すことが多い。CNTを堆積させるために通常用いられる化学気相成長(CVD)法は、比較的高い温度を伴うためアルミニウム配線または銅配線とは適合しない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、ナノチューブデバイスとデバイス製造のためにナノチューブを堆積させる方法とを提供する。
【0008】
一実施形態は、(a)構造体の上に開口部によって領域を画定するステップと、(b)領域に電気泳動によって堆積させるナノチューブの数を制御するように開口部を構成するステップと、(c)電気泳動によって領域に上記数のナノチューブを堆積させるステップと、を含む方法に関する。
【0009】
本発明の別の実施形態は、基板上に形成される金属接点の上の絶縁層と、絶縁層に形成される開口部であって、金属接点まで延在しかつ金属接点における領域を画定する、開口部と、開口部内に堆積し、かつ領域の実質的に中心において領域と接触する第1端と、試料と相互作用する官能基を有する分子に結合された第2端とを有する、カーボンナノチューブと、を有する、ナノチューブベースセンサを提供する。
【0010】
さらに別の実施形態は、カーボンナノチューブベースデバイスを形成する方法を提供し、本方法は、導電層の上に絶縁層が形成された基板を提供するステップと、絶縁層を通して開口部を形成することにより、導電層の領域を露出させるステップと、カーボンナノチューブを含む電解質流体に基板を浸漬させるステップと、電解質流体に金属電極を提供するステップと、導電層および金属電極にバイアス電圧を印加するステップと、少なくとも1つのカーボンナノチューブを、領域に対して実質的に垂直な向きに堆積させるステップであって、カーボンナノチューブの一端が領域の中心に近接して領域に接触する、ステップと、を含む。
【0011】
本発明の教示を、添付の図面とともに以下の詳細な説明を考慮することによって容易に理解することができる。
【0012】
理解を容易にするために、可能な場合は、図に共通の同一の要素を示すために同一の参照数字を用いている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態を用いて製造することができるナノチューブベース構造体の略断面図である。
【図2A】本発明の一実施形態によりカーボンナノチューブを堆積させる実験装置および工程手順を示す概略図である。
【図2B】本発明の一実施形態によりカーボンナノチューブを堆積させる実験装置および工程手順を示す概略図である。
【図2C】本発明の一実施形態によりカーボンナノチューブを堆積させる実験装置および工程手順を示す概略図である。
【図2D】本発明の一実施形態によりカーボンナノチューブを堆積させる実験装置および工程手順を示す概略図である。
【図3A】直径が100nmであり深さが50nmである開口部の周囲の電界分布の概略図である。
【図3B】直径が100nmであり深さが50nmである開口部の周囲の電界分布の概略図である。
【図3C】直径が100nmであり深さが50nmである開口部の周囲の電界分布の概略図である。
【図4A】直径が500nmであり深さが50nmである開口部の周囲の電界分布の概略図である。
【図4B】直径が500nmであり深さが50nmである開口部の周囲の電界分布の概略図である。
【図5A】ナノチューブセンサアレイの概略図である。
【図5B】図5Aのナノチューブセンサアレイの断面図である。
【図6A】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6B】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6C】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6D】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6E】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6F】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6G】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6H】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6I】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図6J】センサ製造手順の各段階の間の構造体の断面図である。
【図7】細胞内プローブとしてナノチューブセンサを用いる実験装置の概略図である。
【図8】本発明の実施形態を用いて製造することができるナノチューブベーストランジスタの概略図である。
【図9A】本発明の実施形態を実施するために好適な開口部の構造の概略図である。
【図9B】本発明の実施形態を実施するために好適な開口部の構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
CNTデバイスの製造では、開口部内に垂直に向けられたCNTを提供することが必要な場合が多い。トランジスタ製造工程では、所定の段階またはレベルに応じて、開口部をビアとも呼ぶ。
【0015】
本発明の実施形態は、堆積させるナノチューブの数とともにナノチューブのパターンおよび間隔を制御して、開口部によって画定される領域にナノチューブを堆積させる方法を提供する。特に、開口部の適切な構造とともに電気泳動堆積により、ナノメートルスケールの精度で目標領域に少なくとも1つのナノチューブを堆積させることができる。本発明の実施形態とともに、ナノチューブのたとえば形状または他の特性による事前選別(pre−sorting)を用いることにより、所定の性能要件でのデバイスの製造を容易にすることができる。
【0016】
図1Aは、本発明の実施形態を用いて製造することができるナノチューブ構造体100の略断面図である。構造体100は基板102を有しており、その上には絶縁材料層104が堆積している。絶縁層104は、基板102の上面108を露出させる開口部106を形成するようにパターニングされている。開口部106内部に単一のCNT110が堆積しており、CNT110の一端112が基板102の上面に接触している。基板102は、ナノチューブ110の電気泳動堆積のためにバイアス電圧が印加されるのを可能にする金属または導電膜等の導電性材料(絶縁材料の上に堆積する)である。
【0017】
本発明の実施形態により、開口部106の内側に、他のCNTを排除してCNT110を堆積させることができる。CNT110を収容するのに十分大きくなければならない開口部106を、種々のリソグラフィ工程を用いてパターニングすることができる。したがって、一実施形態では、開口部106は、直径(D)が、リソグラフィ工程のおよその下限(たとえば分解能)から約100nmまでの範囲であり得る。たとえば、193nmでの既存のリソグラフィは、約90nmの分解能限界を容易に提供する。一実施形態では、基板102は、横方向の寸法(たとえば開口部を横切って延在する)が、開口部106に関してレベル間オーバーレイ制約を満たすのに十分大きい。以下に示すように、CNT110を、たとえば数ナノメートルの横方向位置合せ精度で、開口部106の中心に近接して堆積させることができる。さらに、CNT110を、多層CNT対単層CNTおよび/または導電性CNT対半導体CNTを含む好ましい物理特性を有するように事前に選択することができる。
【0018】
図2A〜図2Dは、本発明の一実施形態による電気泳動の実験装置と基板にCNTを堆積させる手順とを概略的に示す。電気泳動堆積(EPD)は、電界の影響下で電極に向かう、適切な溶剤内に分散した荷電粒子の動きによって駆動される。約30μm未満のサイズの粒子を、固体含有量(solid loading)が低くかつ低粘度の懸濁液内で
用いることができる。一般に、ナノチューブが束の形態で堆積するか個々のチューブの形態で堆積するかは、懸濁液の特質と各々の相対的な移動性とによって決まり、相対的な移動性は、それらの形状と開口部またはビア内部の接触面に向かう拡散に対する関連する抵抗とによって決まる。
【0019】
図2Aは、導電層202を有する基板構造体200を示す。導電層202の上に絶縁層204が提供され、絶縁層204には1つまたは複数の開口部206がパターニングされている。基板構造体200は、適切な溶剤に電解質およびCNT210の懸濁液を収容する液槽220に、たとえば室温で浸漬されている。
【0020】
EPDをうまく行うためには、安定分散の調製が必要である。一般に、静電的に安定した分散は、懸濁液のイオン伝導性を低く維持しながら、高ζ電位の粒子により得ることができる。SWNTは、低pH値で高ζ電位値を示した。帯電塩の存在は、基板へのナノチューブの付着を向上させかつ堆積速度を上昇させるのに重要な役割を果たすことができることも知られている。
【0021】
一実施形態では、10mgの精製SWNTを30mlの蒸留水内に懸濁させ、懸濁液に10−4モルの硝酸マグネシウム六水和物[Mg(NO3)26H20]を添加し、約2時間〜3時間超音波処理する。一般に、液槽220内のナノチューブを、応用のニーズに従ってナノチューブのタイプで事前選別することが好ましい。たとえば、トランジスタの能動素子として半導体SWNTが用いられるが、プローブまたは他のデバイスには半導体ナノチューブまたは金属ナノチューブのいずれを用いてもよい。溶液の最終pHが約4であるように懸濁液の質を向上させるために、非イオンTriton−X界面活性剤を数滴添加する。
【0022】
図2Aにおいて円として示す水素イオン(H+)のほかに、液槽220はまた、CNTを吸収するかまたはそれに付着する傾向にあるマグネシウムイオンMg2+も収容している。電極224、たとえばプラチナ電極が液槽220内に浸漬されており、DC電源222の正端子に接続されている。導電層202はスイッチ226に接続されている。
【0023】
図2Aにおいて、スイッチ226が開放され、液槽220に電流が流れていない場合(電流を、電流計Aを用いて測定することができる)、CNTは懸濁液内でランダムに分散し、基板上のいかなる堆積もランダムになる。
【0024】
図2Bにおいて、スイッチ226が閉鎖され、それにより導電層202がDC電源222の負端末に接続される。たとえば約5V〜25Vの範囲のDC電位がプラチナ電極224および導電層202に印加されると、液体内の荷電粒子または荷電種がカソードまたはアノードのいずれかに向かって移動する。たとえば、H+イオンおよび正荷電CNTは、この場合はカソードである基板構造体200に向かって移動する。
【0025】
H+イオンは、CNTを含む他の正荷電種より高い移動性を有するため、他の荷電種より高速に基板構造体200に到達し、したがって、図2Bに示すように、絶縁層204の表面に優先的に蓄積する。絶縁層204の表面が正に荷電することにより、各開口部206の周囲に電界がもたらされる結果となる。
【0026】
基板構造体200近くに到達する正荷電CNTは、図2Cに示すように、電界により各開口部206の中心の方に向けられる。この「集束」効果に関する詳細については後の説明で示す。一実施形態では、開口部206および電界分布は、開口部206の直径(すなわち横方向寸法)が追加のCNTを物理的に収容するのに十分広くても、各開口部206内に1つのCNT(CNT210*として示す)しか堆積しないように、構成されている
。CNT210*は、各開口部206内に「長手方向に」向くように配置され、すなわち、CNT210*の長さは、開口部206の深さと同じ方向に沿っており、CNT210*の一端が導電層202と接触している。
【0027】
図2Dは、CNT210*の付着していない端部が、プラチナ電極に向かって整列するかまたは向く傾向にあり、さらに、追加のCNTに対する焦点(focal point)としての役割を果たすことを示す。したがって、第2CNT210AがCNT210*の自由端に、たとえば縦方向に付着し、追加のCNTは互いに端部同士が付着する。その後、基板構造体200を槽220から取り除き、蒸留脱イオン水で洗浄し、不活性ガスで乾燥させる。乾燥後、導電層202に付着しているCNT210*のみが残り、図2Eに示すもののような結果として得られる構造体は、さらなる処理の容易ができている。
【0028】
デバイスが異なると、適切な動作および/または最適な性能のために必要なナノチューブの特性が異なることが多いため、電気泳動堆積の前にナノチューブの事前選別を提供することが有利であり得る。たとえば、ナノチューブを、半導体対金属、単層対多層等の特性に従って選別してもよく、または長さ、直径等の形状または寸法に従って選別してもよい。
【0029】
ナノチューブのタイプが異なると移動性が異なり、たとえば、長いかまたは多層ナノチューブは、一般に短いかまたは単層ナノチューブに比べて移動性が低いため、選別の目的で電気泳動を用いることも可能である。こうした選別を、電気泳動堆積の前に、槽内のナノチューブが特性および/または形状に関して比較的一様な分布を有するように行うことができる。別法として、電気泳動槽内のナノチューブが形状または他の特性に関して比較的広い分布を有する場合、ナノチューブの移動性が異なることにより、ある程度の選別を堆積中に「インサイチュで」達成することも可能である。
【0030】
ナノチューブを開口部の方に向ける集束の程度は、開口部の構造とともに、電界分布の大きさおよび形状によって影響を受ける。堆積するナノチューブの数およびそれらの位置決めに対する制御を提供するために、有限要素モデルを用いて、さまざまな入力パラメータの関数として電界分布を調査する。ナノチューブ堆積を制御することに対して関連するパラメータまたは係数には、他にもあるが特に、開口部構造、ナノチューブ特性、絶縁層および基板の特徴、バイアス電位、溶液の誘電性特性がある。開口部構造には、概して、形状、寸法(たとえば幅、長さ、深さ、寸法比)、側壁断面等があり得る。ナノチューブ特性には、概して、寸法(たとえば長さ、直径)、単層または多層、半導体または金属があり得る。
【0031】
開口部の周囲の電界は、基板構造体上の金属層に印加される電位と、絶縁層の表面に蓄積する電荷との組合せからもたらされる。カソードを覆う誘電体層上に正電荷が蓄積することにより、アノードとカソードとの間に印加されるバイアスから発生する電界とは逆の電界がもたらされる。2つの電界が等しくかつ逆になると、正電荷はそれ以上絶縁層の表面に引き寄せられなくなる。この結果として得られる電界分布からナノスケールのレンズの強度を画定する「飽和電荷密度」σを、以下の式から計算することができる。
σ=ε0εrE 式(1)
ここで、Eはアノードとカソードとの間の電界の大きさであり、ε0は自由空間の誘電率であり、εrは液体の相対誘電率である。
【0032】
一例として、E=103V/mの場合、ε0=8.85×10−12ファラッド/メートルであり、液体はεr=80の水であり、表面電荷密度σは7.1×10−7クローン/メートル2に等しい。
【0033】
所定の開口部形状が選択され、表面電荷密度が計算されると、開口部近くの領域における電界と正荷電粒子の動きとを、周知の有限要素解析技法を用いて計算することができる。したがって、適切な構造および設計により、ナノチューブ堆積を誘導するための所望の集束またはレンズ効果をもたらす電界分布を得ることができる。
【0034】
図3A〜図3Cは、直径が100nmであり深さが50nmである開口部306の周囲の電界分布の結果を示す。この例では、導電層302に負の10Vバイアスが印加される。図3Aは、H+イオンが絶縁層の上に蓄積される前の電界分布を示す。電界分布は、比較的一様であり、電気力線は絶縁層304の表面に対して概ね垂直である。図に示すように、電気力線方向を、負電位の領域の方に向いている矢印によって示す。開口部306またはその近くにおいてのみ電気力線がわずかに逸れている。
【0035】
図3Bは、絶縁層304の表面がH+イオンで飽和した後の変更された電界分布を示す。絶縁層304の上方の矢印320は、負荷電種が表面から反発されることを示し、開口部306の両側の矢印322は、電気力線が内側に、すなわち開口部306の上方の領域の方に向けられていることを示す。開口部306の中心近くにおいて、矢印334によって示すように、電気力線は下方に、すなわち開口部306の内部の方に向けられている。したがって、CNT等の正荷電種は、開口部306の方に向けられている。
【0036】
十分な電荷が電荷飽和点に達するように蓄積した後、静電レンズ効果により、すべての荷電粒子が開口部306の中心のほうに向けられる。この形状に対する等電位線は、移動する荷電ナノチューブを開口部306の中心に向かう集束に有利である。この場合、開口部306の直径は100nmであり、深さは50nmである。この例では、開口部306の周囲の電界分布は、開口部の中心長手方向軸に対して実質的に対称であるため、CNT310もまた開口部306内で実質的に中心に配置される。したがって、CNT310の一端は、開口部306によって画定される導電層302の領域(すなわち、開口部の底部の露出領域)の、たとえば、画定された領域の中心数ナノメートル内に取り付けられる。
【0037】
図3Cは、1つのCNT310が開口部306内に堆積した後の電界分布を示す。CNTが導電性であり、導電層302と電気的に接触しているため、電界分布は堆積したCNT310によって変更される。さらに、この場合のように開口部306が十分に小さい場合、電気力線は、開口部306の内部の方に向かうのではなく、CNT310の自由端に向かって集中する傾向がある。したがって、CNT310の自由端は、開口部306の底部に堆積するのではなく、ナノチューブのさらなる堆積のための焦点となる。
【0038】
一般に、参照電極と開口部の底部における金属接点との間の電位差が固定である場合、集束効果の強度は、開口部深さが固定である場合、開口部の直径に対して反比例する。
【0039】
図4Aおよび図4Bは、直径が500nmであり深さが50nmである開口部406に対して得られる、異なる結果を示し、導電層402には負の10Vバイアスが印加されている。図4Aは、開口部406の周囲の電気力線を示し、絶縁層404の表面にはH+イオンが蓄積しており、図4Bは、開口部406内のCNT410によって変更された電気力線を示す。この場合、CNT410は、開口部406の中心406Cから横方向にずれて配置されており、それは、たとえば槽内のランダムな進入方向から発生し、その後、電界がナノチューブをその堆積位置に向けてもよい。図の電気力線が示唆するように、開口部406内に2つ以上のCNTを堆積させてもよい。
【0040】
この場合、電界分布によって、ナノチューブを開口部406の中心領域に向けて誘導する優先方向は提供されない。ナノチューブの最終位置は、バイアスが印加される前のナノチューブの初期位置によって決まる。大きい開口部、たとえば直径すなわち横方向寸法が
約100nmを上回る場合、最初に堆積したナノチューブの取り付けられていない端部は、依然として、さらなるナノチューブ堆積のための焦点であり得る。しかしながら、開口部の横方向寸法が十分に大きい場合、電界はまた、他のナノチューブも導電層402の露出面の他の位置に向ける。
【0041】
結果により、約100nmの開口部径が、堆積が単一ナノチューブに制限される遷移または基準点を提供し、約100nmを上回る開口部は2つ以上のナノチューブの堆積に有利である傾向があることが示唆されるが、この基準点は、ナノチューブおよび/または構造的構成の所定の組合せによって変化し得ることが理解される。
【0042】
開口部径(すなわち横方向寸法)とは別に、ナノチューブの堆積を制御する目的で、他のパラメータ、たとえば他にもあるが特に、形状、アスペクト比(開口部の深さまたは高さを横方向寸法で割ったものとして定義される)を、たとえば、ナノチューブ特性および/または形状に従って異なる構造を提供することにより用いることも可能である。
【0043】
別の有限要素解析の結果もまた、ナノチューブの直径が10nmでありかつ長さが100nmであり、直径が100nmでありかつ深さ(または高さ)が18nmを超える開口部が窒化ケイ素に形成される場合、開口部内に1つのナノチューブのみが堆積されることを示す。これは、堆積するナノチューブの数を1つのみに制限するために、アスペクト比が少なくとも0.18以上である開口部を用いることができることを示唆している。直径がより小さいナノチューブの場合、堆積を1つのナノチューブのみに制限するために、より大きいアスペクト比が必要な場合もある。同様の分析を用いて、他の開口部構造およびナノチューブ特性に対し堆積するナノチューブのあり得る位置をシミュレートすることができる。対称面が得られる状況の場合は2次元分析が好適であるが、他の状況では一般に3次元分析を用いることができる。したがって、さらなる制御レベルでナノチューブ堆積を提供するガイドとしてのナノスケールレンズ設計に対して、有限要素解析を用いることができる。
【0044】
本発明の方法を用いて、多くの異なるナノチューブベースデバイスを製造することができる。本方法は、概して、直径の異なる開口部内のナノチューブの堆積に適用され得るが、堆積させるナノチューブの数またはナノチューブの横方向位置決めまたは位置合せを制御することが望ましい状況に特に適している。この方法から利益を得ることができるナノチューブベースデバイスの例には、他にもあるが特に、縦型CNTトランジスタ、化学センサまたはバイオセンサがある。
【0045】
図5Aは、本発明の一実施形態によるナノチューブベースセンサアレイデバイス500の概略図であり、図5Bは、線BB’を含む垂直面に沿った断面図である。デバイス500は、概して、基板501の上に堆積される1つまたは複数のナノチューブ510を有している。導電性材料502、たとえば金属が、基板501の選択された領域に形成されることにより、ナノチューブ510に対する導電経路を提供する。上述したように電気泳動を用いて、たとえば導電性材料502の上に提供される絶縁層504に開口部を形成し、導電性材料502にバイアス電圧を印加することにより、導電性材料502の上にナノチューブ510を堆積させることができる。ナノチューブ510に対しパッシベーションおよび絶縁を提供するために、各ナノチューブ510の周囲にシース512が形成されている。ナノチューブ510の側壁を絶縁し、先端のみを露出させることにより、あり得る背景雑音を低減することができ、それによりセンサの電気的感度が上昇する。CNT電気特性の変化を測定するために、ナノチューブ510に対する配線が用いられる。
【0046】
図5Aおよび図5Bに示すものと同様のデバイスを、生体細胞における細胞内活動を調査するために用いることができる。特に、CNTは、こうしたプローブに対する優れた候
補であり、それは、その直径が小さい(たとえば、細胞膜厚さに比べて)ことにより、プローブを用いて調査されている細胞に対する歪みを最小限にすることができるためである。
【0047】
所定のセンサ応用に応じて、ナノチューブ510の他端に異なる機能分子514が設けられる。一般に、SWNTがセンサ応用に対して好ましいが、MWNTを用いてもよい状況もあり得る。
【0048】
図6A〜図6Jは、図5Aに示すもののようなデバイスアレイを形成するために好適な工程手順のさまざまな段階の間のセンサデバイス構造体の略断面図である。図6Aは、基板600に形成された導電部602を示す。バイオセンサの場合、基板材料として石英を用いてもよく、それは、光学顕微鏡を用いて透過モードで生体試料を見るのを容易にする。一実施形態では、直径が100mmであり厚さが350μmである石英ウェハを用いてもよく、それらを、デバイス製造の前に、当業者には既知である方法を用いて洗浄し調製することができる。しかしながら、一般に、シリコンを含む任意の好適な基板で十分である。出発基板がシリコンまたは他の導電性材料である場合、金属配線の前に、まず絶縁層を堆積させなければならない。
【0049】
導電部602、たとえば配線金属を、当業者には既知であるフォトリソグラフィおよびレジストリフトオフ技法を用いて、堆積させかつパターニングすることができる。配線金属は、CNTとの電気的接触および接着を維持するために好適である必要があり、限定されないがコバルト(Co)、ニッケル(Ni)または鉄(Fe)があり得る。
【0050】
金属配線の石英基板との接着を容易にするために、導電部602の形成の前に、接着層(図示せず)を形成してもよい。一実施形態では、金属配線としてコバルト(Co)を使用し、20nm厚さのクロム(Cr)接着層を用いて、コバルトの石英面への接着を促進する。Cr層を、約2オングストローム/秒(Å/s)の速度で蒸着させてもよく、その後、120nm厚さのCo層を約1Å/sの速度で蒸着させることができる。Cr層およびCo層それぞれに対して、約20nmおよび約120nmの厚さを用いることができる。コバルト材料配線はまた、ナノチューブの電気泳動堆積中のカソードとしての役割を果たすこともできる。
【0051】
CNTを、電気泳動を用いて堆積させる実施形態では、導電部602は、基板602の縁または周縁に設けられたコンタクトパッド(図示せず)に電気的に接続されるように構成されている。一実施形態では、CNTが堆積する各導電部602は、電気的接続経路を簡略化するために、基板600の上に形成された連続的な導電層の一部として提供される。これにより、電子ビームリソグラフィ(製造中に電子ビームが用いられる場合)中の金属の電気的接地が容易になり、CNTの電気泳動堆積のための単一接続点が提供される。一例では、異なるデバイス間の電気的接続は、カーフ(各デバイス間の領域)においてなされ、これにより、デバイスの組立てを容易にするために基板が切断される場合に、接続をダイシングソーで破断することができる。製造中に必要な電気的接続を提供するために別の構成を用いてもよく、種々の従来のリソグラフィ工程およびエッチング工程をこの目的に適応させてもよい。
【0052】
各個々のセンサデバイスに対して、たとえばはんだ付けまたはワイヤボンディングにより、外部回路への電気的接続を提供するために、金属接点が必要である。一実施形態では、金属接点材料として金(Au)を用いる。金属接点を、フォトリソグラフィ技法およびレジストリフトオフ技法を用いて形成することができる。図6Bは、金属接点形成段階中の構造体を示し、そこでは、フォトレジスト層603が、下にある導電部602の領域まで延在する開口部608を形成するように、パターニングされている。パターニングされ
たレジスト603と導電部602の露出領域との上に、導電層604が堆積している。レジスト層603が図6Bの基板から除去されると、開口部606内部の導電層のみが残り、結果として図6Cに示す構造体となる。
【0053】
図6Dは、基板600および導電部602の上に堆積され、後に開口部610(ビアまたは窓とも呼ぶ)を形成するようにパターニングされる、絶縁層608を示す。一実施形態では、絶縁層608として窒化ケイ素(SiNx)が用いられる。絶縁層608の厚さは、パターニング後の静電レンズ実装に対して適当なアスペクト比を提供するように選択される。たとえば、横方向寸法、たとえば直径が約100nmである開口部を形成するためには、50nm厚さのSiNx膜が好適である。たとえば、50nm厚さの低応力SiNx膜を、約350℃の温度でのPlasma Therm 790標準設備を用いて、プラズマ化学気相成長(PECVD)により、低温で堆積させてもよい。センサデバイスの文脈では、SiNx層は2つの機能を提供する。デバイス製造中に開口部を形成するために絶縁層を提供するだけでなく、SiNx層はまた、完成したセンサにおいて、導電性配線金属と測定が行われる細胞培養液との間の絶縁障壁も提供する。
【0054】
好適なリソグラフィ工程を用いて、絶縁層608に、横方向寸法が約100nm以下である開口部610を形成することができる。開口部610は、基板602上に堆積するナノチューブを収容するのに十分大きい。一実施形態では、開口部610の直径は、リソグラフィ工程のおよそ下限(たとえば分解能)から約100nmまでの範囲である。一実施形態では、193nm光源照明を用いる光リソグラフィを用いて、約90nmの分解能を提供して、フォトレジストに開口部をパターニングしてもよい。別法として、これら開口部を、電子ビームリソグラフィまたは集束イオンビームミリング技法を用いて製作してもよい。ナノチューブの電気泳動堆積中に静電レンズ効果を提供するために、寸法が約100nm未満の開口部が好適である。配線金属およびビアのリソグラフィ技法により、ナノチューブデバイス間の分離が制限される。
【0055】
そして、図6Dの構造体を、図2に関連して上述したものと同様の装置を用いて、ナノチューブの電気泳動堆積用の電解質槽内に浸漬させることができる。一実施形態では、石英基板上のコバルト金属層を備えた、パターニングされた構造体が、負電極として用いられ、プラチナワイヤが正電極として用いられる。約5V〜25Vの範囲のDCバイアス電圧を用いてもよい。
【0056】
図6Eは、開口部610内のナノチューブ650の堆積後の構造体を示す。電気泳動堆積の前に、ナノチューブを金属SWNTに対して事前選別し、SWNTの束を制限するように選択的に除去してもよい。CNTまたはSWNTの長さは、たとえば約1ミクロン(μm)未満であってもよく、通常、応用のニーズによって確定される。細胞内プローブ等のバイオセンサの場合、長さは、機械的安定性および目標細胞内への貫通距離に対する要件によって決まる可能性がある。
【0057】
ナノチューブ650を開口部610に堆積した後、その垂直の方向付けを、すすぎ工程によりまたは帯電効果によって行ってもよい。ナノチューブが堆積した金属層とウェハ基板の上方の金属板との間に電位を印加することにより、ナノチューブを垂直方向に再度位置合せすることができる。これを、たとえば、製造手順における後続する堆積工程の前に反応器において行ってもよい。プラズマ処理システムは、通常、ウェハの上方に、プラズマを発生する電気回路の一部である金属板を有している。この金属板(または別の電極)とナノチューブが堆積する金属層との間にDCまたはAC電界を確立することにより、後続する処理の前にナノチューブを所望の向きに再度位置合せすることができる。
【0058】
ナノチューブ堆積後、ナノチューブ650を封止し不動態化する(または絶縁する)た
めに、厚さが約2nm〜5nmの範囲である絶縁材料のコンフォーマルな膜612を形成してもよい。この封止膜に好適な材料には、SiNxまたは好適なポリマー、たとえばポリテトラフルオロエチレンがある。
【0059】
電気泳動堆積の前またはその間のナノチューブの選別は、通常ナノチューブの長さの十分に正確な制御を提供しないため、ナノチューブに一定の長さ仕様を提供するために、追加のトリミングが必要となる場合もある。これを、封止膜612(図6G)の上に形成された(たとえば成長または堆積した)ポリシリコン層613を示す、図6Gおよび図6Hに示す工程ステップによって達成することができる。そして、ポリシリコン層615を、図6Hに示すように所望のナノチューブ長さが達成されるまで、たとえば化学機械研磨(CMP)を用いて、研磨することができる。
【0060】
そして、堆積したナノチューブ650の先端の周囲の封止膜612の一部を、短時間の反応性イオンエッチング(RIE)または化学エッチングによって除去することにより、ナノチューブ650の先端を露出させることができる。露出されるナノチューブ650の長さは、エッチング速度およびエッチング時間によって決まる。SiNxに対するRIEエッチングは、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)集積回路の製造の場合の標準工程であり、エッチング速度は周知であり、市販のSiNxエッチング装置に組み込まれている。
【0061】
そして、ポリSi層613を除去して、図6Iに示すように、自立型の封止されたナノチューブ650を残す。図6Jは、封止膜612および絶縁層608に開口部616を形成することにより金属接点606を露出させた後の構造体を示す。開口部616を、当業者には既知である標準フォトリソグラフィおよびドライエッチング工程で形成することができる。
【0062】
図7は、こうしたナノチューブセンサを細胞内プローブとして用いる実験装置の概略図である。図7は、2つのCNTプローブ710を示し、各々、基板700上に形成されたそれぞれの配線金属702に接続されている。CNTプローブ710は、電気的プロービングのために液槽720内の細胞750内に挿入される。槽電極722とコンタクトパッド704(絶縁層708に形成された開口部内部に設けられる)とは、各々、細胞内活動を示す電気的特性を監視するために好適な電子装置(図示せず)に接続される。
【0063】
上記実施形態および説明は、開口部によって画定される領域の中心近くにナノスケールの横方向精度で単一ナノチューブを制御可能に堆積させることができることを示している。本方法は、特に、実装または処理の観点から魅力的であり、それは、比較的大きい領域内でこうした制御された堆積を達成することができることにより、リソグラフィ技法に対する要件が大幅に緩和されるためである。したがって、目標堆積領域を画定するために十分小さい開口部を形成するためにより複雑なリソグラフィ器具(電子ビームまたは集束イオンビーム等)に頼ることなく、光リソグラフィを用いて製造を容易に行うことができる。
【0064】
本発明の実施形態はまた、所与の領域において堆積させるナノチューブの数およびそれらの間隔を制御する方法も提供する。こうした方法は、画定された領域に2つ以上のナノチューブを堆積させることが望ましい多くの応用に対して有用である。たとえば、縦型電界効果トランジスタ(VFET)設計によっては、デバイスにより多くの電流が流れるのを可能にするチャネルを形成する2つ以上のナノチューブから利益を得る場合もある。したがって、堆積させるナノチューブの数を制御することにより、論理回路入力のパラメータを満たすために十分な電流を用いてVFET出力を設計することができることを確実にすることができる。
【0065】
VFETの設計における1つの制約は、デバイスの横方向のサイズが、単位面積辺りのVFETの数を最大限にするために可能な限り小さくなければならない、ということである。1つの可能性は、図8に示すように、間隔の狭いビアを製作し、各ソース802、ドレイン804およびゲート806を並列に接続する、というものである(CNT810はデバイスのチャネルとしての役割を果たし、ゲート806からゲート誘電体808によって分離されている)。この概念は、HoenleinらによるMaterials Science and Engineering C,23,p.663〜669(2003)および独国特許第0010036897C1号明細書(2000)によって示唆されている。しかしながら、ナノチューブを位置決めするために間隔の狭いビアを製作することの問題は、単位面積辺りのナノチューブの数が、ビアの最小径とビア間の離隔距離とによってのみ確定される、ということである。これにより、リソグラフィおよびエッチング処理に対し厳しい要件が課され、単位長さ辺りの妥当な最大電流(1500マイクロアンペア/マイクロメートル)のVFETデバイスの場合、直径が20nm未満のビアが必要となる。
【0066】
本発明の実施形態により、図8に示すもののようなデバイス概念を、リソグラフィに厳しい要件を課すことなく製造することができる。特に、開口部を、電気泳動堆積を用いて開口領域内におけるナノチューブの数とともにそれらの間隔または位置決めを制御するように構成することができる。
【0067】
図9Aおよび図9Bは、ナノチューブ堆積を制御するのに好適な開口部構造の平面図の概略図である。図9Aに示すように、開口部は溝穴等、細長い形状を有し、それは、横方向寸法または横断寸法(線X−X’で示す方向に沿った)とも呼ばれる幅(W)と、長手方向寸法(線Y−Y’によって示す方向に沿った)とも呼ばれる長さ(L)とによって特徴付けられ、LはWより大きい。この例では、幅Wは、1つのナノチューブのみを横断方向に沿って堆積させることができるように十分狭いように設計されている。したがって、堆積するナノチューブはすべて、長手方向に沿って、線パターンで堆積し、すなわち互いに隣接して整列する。
【0068】
さらに、溝穴内に堆積するナノチューブの数を、溝穴の長さによって制御することができる。溝穴に第1ナノチューブが堆積すると、溝穴の周囲の電界分布が変更される。有限要素解析を用いて新たな電界分布を計算することができる。隣接するナノチューブ間の最も近い離隔距離もまた、有限要素解析を用いて分析することにより、溝穴内に連続して堆積するランダムに進入する荷電粒子の軌道を予測することができる。
【0069】
長さが100nmのナノチューブにこの分析を用いることにより、直径が1nmのナノチューブ間の最も近い離隔距離は約15nmであると推定された。直径が10nmであり長さが100nmであるナノチューブの場合、隣接するナノチューブに対する最も近い離隔距離は約20nmである。同じ方法を用いて、任意の形状のナノチューブの最も近い離隔距離を計算することができる。別の方法を用いて、2つの間隔の狭いナノチューブの付近の電界を計算し、計算された電界が、すでに堆積した2つの間の第3ナノチューブの堆積を排除する分布を有するまで、間隔を狭くすることができる。
【0070】
ナノチューブ間の最も近い離隔距離(s)が既知となると、溝穴内に堆積するナノチューブの数Nは、N=MOD(L/s)によって与えられる。関数MOD()は、結果として得られる数L/sの整数未満を切り捨てる。溝穴の端部の形状によってもまた、丸めの程度に応じてこの結果が変更され得る。計算は、丸めがない場合に最も正確である。丸めがあることにより、追加の集束の程度によって堆積するナノチューブの数が低減する可能性があり、これを、正確な形状に対する3次元有限要素解析を用いて確定することができ
る。
【0071】
上述したように、本発明の実施形態は、画定された領域において電気泳動を用いてナノチューブを制御可能に堆積させる方法を提供する。堆積領域は、その領域に堆積させることができるナノチューブの数とともに、堆積するナノチューブの間隔を制御するように構成することができる、開口部によって画定され得る。開口部を適切に構成することにより、たとえば約100nm未満等の十分に小さい開口部サイズを提供することにより、数ナノメートルの横方向位置合せ精度で、その領域に単一ナノチューブのみが堆積するように堆積を制御することも可能になる。
【0072】
本発明の実施形態は、容易にスケーラブルであり従来の製造工程および材料と互換性のある室温工程を提供し、デバイス製造に用いられているナノチューブの特性に対する制御の改善を可能にする。
【0073】
カーボンナノチューブの堆積の文脈でいくつかの例について説明したが、本方法を、概して他のナノチューブの堆積に適応させることができる、ということが理解される。さらに、本発明の実施形態を、概して、種々のデバイスの製造に対し単層、多層、半導体または金属ナノチューブを堆積させることに対して適用することができる。
【0074】
上述したことは、本発明の実施形態に関するが、本発明の他のかつさらなる実施形態を、その基本的な範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は以下の特許請求の範囲によって確定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノチューブを堆積させる方法であって、
(a)構造体の上に開口部によって領域を画定するステップと、
(b)前記領域に電気泳動によって堆積させるナノチューブの数を制御するように前記開口部を構成するステップと、
(c)電気泳動によって前記領域に前記数のナノチューブを堆積させるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(b)が、
前記開口部を、前記領域に堆積させるナノチューブのパターンおよび間隔のうちの少なくとも一方を制御するように構成するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)が、
堆積させるナノチューブの前記数を制御するように長さ、幅および深さの組合せを有する前記開口部を提供するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)が、
電気泳動により前記領域に1つのナノチューブのみを堆積させることができるようにする横方向寸法を有する前記開口部を提供するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記開口部の前記横方向寸法が約100nm未満である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記開口部が、幅が約100nm未満であり、長さがその長さ方向に沿った少なくとも2つのナノチューブの堆積を可能にするように十分大きい、溝穴として構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)が、
(b1)前記開口部の少なくとも1つのパラメータの関数として有限要素解析を行うことにより、前記開口部に近接する電界分布を得るステップと、
(b2)前記領域に前記数のナノチューブを堆積させるのに好適な前記開口部の構造を選択するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
堆積させる前記ナノチューブに対する少なくとも1つのパラメータが、前記有限要素解析に含まれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノチューブがカーボンナノチューブである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)が、
(a1)金属層の上の絶縁層を前記構造体に提供するステップと、
(a2)前記金属層に前記領域を画定するように前記絶縁層を通して前記開口部を形成するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)が、
(c1)前記構造体を、ナノチューブを含む電解質流体にさらすステップと、
(c2)前記金属層にバイアス電圧を印加するステップと、
(c3)前記開口部内の前記金属層と接触するように前記数のナノチューブを垂直向きに堆積させるステップと、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ナノチューブの前記数は1である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノチューブが前記開口部内において実質的に中心に配置されるように堆積する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(c)が、
(c4)前記電解質流体に金属電極を提供するステップと、
(c5)前記金属層に対し前記金属電極に正のバイアスを提供するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記金属層に対する前記金属電極の向きを調整することにより、前記開口部内の前記ナノチューブの向きを制御するステップ
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記開口部の高さ対幅の比が、少なくとも約0.18である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
基板上に形成される金属接点の上の絶縁層と、
前記絶縁層に形成される開口部であって、前記金属接点まで延在しかつ前記金属接点における領域を画定する、開口部と、
前記開口部内に堆積し、かつ前記領域の実質的に中心において前記領域と接触する第1端と、試料と相互作用する官能基を有する分子に結合された第2端とを有する、ナノチューブと、
を具備する、ナノチューブベースセンサ。
【請求項18】
化学センサまたはバイオセンサのうちの一方である、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記ナノチューブがカーボンナノチューブである、請求項17に記載のデバイス。
【請求項20】
前記センサが、前記ナノチューブを包囲する絶縁層をさらに具備する、請求項17に記載のデバイス。
【請求項21】
カーボンナノチューブベースデバイスを形成する方法であって、
導電層の上に絶縁層が形成された基板を提供するステップと、
前記絶縁層を通して開口部を形成することにより、前記導電層の領域を露出させるステップと、
カーボンナノチューブを含む電解質流体に前記基板を浸漬させるステップと、
前記電解質流体に金属電極を提供するステップと、
前記導電層および前記金属電極にバイアス電圧を印加するステップと、
少なくとも1つのカーボンナノチューブを、前記領域に対して実質的に垂直な向きに堆積させるステップであって、前記カーボンナノチューブの一端が前記領域の中心に近接して前記領域に接触する、ステップと、
を含む、方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つのカーボンナノチューブが堆積した前記基板を、さらなる処理のためにプラズマ処理システムに提供するステップと、
前記導電層と前記プラズマ処理システムの電極との間に電界を印加することにより、前記少なくとも1つの堆積したカーボンナノチューブを所望の向きに再度位置合せするステップと、
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項1】
ナノチューブを堆積させる方法であって、
(a)構造体の上に開口部によって領域を画定するステップと、
(b)前記領域に電気泳動によって堆積させるナノチューブの数を制御するように前記開口部を構成するステップと、
(c)電気泳動によって前記領域に前記数のナノチューブを堆積させるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(b)が、
前記開口部を、前記領域に堆積させるナノチューブのパターンおよび間隔のうちの少なくとも一方を制御するように構成するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)が、
堆積させるナノチューブの前記数を制御するように長さ、幅および深さの組合せを有する前記開口部を提供するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)が、
電気泳動により前記領域に1つのナノチューブのみを堆積させることができるようにする横方向寸法を有する前記開口部を提供するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記開口部の前記横方向寸法が約100nm未満である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記開口部が、幅が約100nm未満であり、長さがその長さ方向に沿った少なくとも2つのナノチューブの堆積を可能にするように十分大きい、溝穴として構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)が、
(b1)前記開口部の少なくとも1つのパラメータの関数として有限要素解析を行うことにより、前記開口部に近接する電界分布を得るステップと、
(b2)前記領域に前記数のナノチューブを堆積させるのに好適な前記開口部の構造を選択するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
堆積させる前記ナノチューブに対する少なくとも1つのパラメータが、前記有限要素解析に含まれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノチューブがカーボンナノチューブである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)が、
(a1)金属層の上の絶縁層を前記構造体に提供するステップと、
(a2)前記金属層に前記領域を画定するように前記絶縁層を通して前記開口部を形成するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)が、
(c1)前記構造体を、ナノチューブを含む電解質流体にさらすステップと、
(c2)前記金属層にバイアス電圧を印加するステップと、
(c3)前記開口部内の前記金属層と接触するように前記数のナノチューブを垂直向きに堆積させるステップと、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ナノチューブの前記数は1である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノチューブが前記開口部内において実質的に中心に配置されるように堆積する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(c)が、
(c4)前記電解質流体に金属電極を提供するステップと、
(c5)前記金属層に対し前記金属電極に正のバイアスを提供するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記金属層に対する前記金属電極の向きを調整することにより、前記開口部内の前記ナノチューブの向きを制御するステップ
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記開口部の高さ対幅の比が、少なくとも約0.18である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
基板上に形成される金属接点の上の絶縁層と、
前記絶縁層に形成される開口部であって、前記金属接点まで延在しかつ前記金属接点における領域を画定する、開口部と、
前記開口部内に堆積し、かつ前記領域の実質的に中心において前記領域と接触する第1端と、試料と相互作用する官能基を有する分子に結合された第2端とを有する、ナノチューブと、
を具備する、ナノチューブベースセンサ。
【請求項18】
化学センサまたはバイオセンサのうちの一方である、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記ナノチューブがカーボンナノチューブである、請求項17に記載のデバイス。
【請求項20】
前記センサが、前記ナノチューブを包囲する絶縁層をさらに具備する、請求項17に記載のデバイス。
【請求項21】
カーボンナノチューブベースデバイスを形成する方法であって、
導電層の上に絶縁層が形成された基板を提供するステップと、
前記絶縁層を通して開口部を形成することにより、前記導電層の領域を露出させるステップと、
カーボンナノチューブを含む電解質流体に前記基板を浸漬させるステップと、
前記電解質流体に金属電極を提供するステップと、
前記導電層および前記金属電極にバイアス電圧を印加するステップと、
少なくとも1つのカーボンナノチューブを、前記領域に対して実質的に垂直な向きに堆積させるステップであって、前記カーボンナノチューブの一端が前記領域の中心に近接して前記領域に接触する、ステップと、
を含む、方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つのカーボンナノチューブが堆積した前記基板を、さらなる処理のためにプラズマ処理システムに提供するステップと、
前記導電層と前記プラズマ処理システムの電極との間に電界を印加することにより、前記少なくとも1つの堆積したカーボンナノチューブを所望の向きに再度位置合せするステップと、
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【公表番号】特表2010−532717(P2010−532717A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513427(P2010−513427)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/067604
【国際公開番号】WO2009/017898
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(509350192)ニユージヤージイ・インスチチユート・オブ・テクノロジー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/067604
【国際公開番号】WO2009/017898
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(509350192)ニユージヤージイ・インスチチユート・オブ・テクノロジー (2)
【Fターム(参考)】
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