説明

ナノワイヤの配列方法、及び分離方法

【課題】所望の長さのナノワイヤを、所望の向き、位置に配列させる方法。
【解決手段】ナノワイヤの配列方法であって、二つの電極を有する基板上に、両末端が互いに異なる二つの極性であるナノワイヤを静置、第1電極に第1極性の電圧を印加し、その反対の第2極性の片末端を第1電極上に固定、第1電極に第1極性の電圧を印加した状態で、第1電極から第2電極に流体を流す、第1電極の電圧を自然電位に設定後、第2極性の電圧を第2電極に印加し、第1極性の片末端を第2電極に固定、第2電極に第2極性の電圧を印加した状態で、第2電極から第1電極に流体を流す、第2電極の電圧を自然電位に設定後、第1電極に第1極性の電圧を印加し、第2極性の片末端を第1電極上に固定、第1電極に第1極性の電圧を印加した状態で、第2電極から第1電極に流体を流す、第1電極に第1極性の電圧を印加した状態で、第1電極から第2電極に流体を流す、を順次行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノワイヤの配列方法及び分離方法に関する。より詳細には、所望の長さのナノワイヤを所望の向きに、所望の位置に配列させる方法、並びに所望の長さのナノワイヤを分離抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体加工技術の進展に伴い、従来の平面型スケーリングでは所望の特性を実現することが困難になっている。また設計寸法の縮小に伴い短チャネル効果等の要因も顕在化しつつあるため、単純な設計寸法縮小以外のブレークスルーが必要になっている。その中で、半導体のナノワイヤは、伝達特性の良いトランジスタを得られる可能性などから注目を集めている。加えて、非常に大きな表面体積比を有するという特徴から、センサへの応用面からも注目されている。ナノワイヤの作製技術としては、リソグラフィーとエッチングを用いて作製するトップダウン法と、VLS(気相−液相−固相)法に代表されるボトムアップ法が挙げられる。ボトムアップ法を用いることによって、例えば、直径が500nmサイズ以下の円形の断面を有する単結晶半導体で、結晶欠陥密度の低いナノワイヤが得られる。これらはトップダウンによって作製されるナノワイヤでは得ることの困難な特性である。しかし、ボトムアップ手法は、その成長方位や位置制御の困難性から未だ半導体デバイスとしての実用化には至っていないのが実情である。デバイス化の手法として、成長させたナノワイヤを溶液中で超音波などの刺激によって基板から遊離させ、回収した後、別の基板上に塗布し、水平に配置した後両端に電極を形成するという手法が提案されている。この製法では、ナノワイヤは基板表面にランダムにレイアウトされるため、特性再現性良くデバイスを作製するのは困難である。これに対し、ナノワイヤの向き、方向を制御するための手法が特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−193362
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の配列方法においては、長さの異なるナノワイヤが分散液中に存在した場合同時に配列されてしまう。例えば2端子以上の素子の構成要素として用いる場合,電極間距離より所望の長さよりも短いワイヤが配列された場合には、素子として機能しないことが想定される。また所望の距離よりも長いナノワイヤが配列された場合、電極との接触面積が変動することが想定される。加えて、既報(H.Schmid.et.al、NanoLetter 2009、9、p173)に示されるような径と長さの相関性を考慮すると、長さの異なるナノワイヤは径も異なることが想定される。
【0005】
本発明は、ナノワイヤを構成要素として用いる素子の作製歩留まりや特性の改善のため、所望の長さのワイヤを精確に抽出し、配列する方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
基板上の所定位置にナノワイヤを配置するためのナノワイヤの配列方法であって、
(1)第1の電極と第2の電極を備えた基板上に、互いに異なる第1の極性と第2の極性を有する部位を両末端に有するナノワイヤを静置する工程、
(2)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、前記第1の極性と反対の第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(3)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(4)第1の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第2の極性を有する電圧を第2の電極に印加し、第1の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第2の電極に固定する工程、
(5)第2の電極に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極から第1の電極に向けて流体を流す工程、
(6)第2の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(7)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極から第1の電極に向けて流体を流す工程、
(8)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
を順次行うことを特徴とするナノワイヤの配列方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、請求項1に記載のナノワイヤの配列方法を用いることで、所望の長さのナノワイヤを所定位置に制御良く配列させることが可能となる。従って、ナノワイヤを構成要素として用いる素子の作製歩留まりや特性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明で用いられるナノワイヤを模式的に示した図である。
【図2】本発明における電極と流路を備えた基板を模式的に示した図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係るナノワイヤの配列工程を説明する図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係るナノワイヤの配列工程を説明する図である。
【図5】本発明の第1の実施例、および第2の実施例に係るナノワイヤの配列工程を説明する図である。
【図6】本発明の第1の実施例、および第2の実施例における印加電圧と流体の流速との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい実施形態について、詳細に説明する。
まず、本発明における配列方法、分離方法について述べた後に、各構成要素の形態について詳細に説明する。
【0010】
<配列方法>
(第1の実施形態)
本発明による配列方法の第1の実施形態は、基板上の所定位置にナノワイヤを配置するための配列方法であって、
(1)第1の電極と第2の電極を備えた基板上に、互いに異なる第1の極性と第2の極性を有する部位を両末端に有するナノワイヤを静置する工程、
(2)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、前記第1の極性と反対の第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(3)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(4)第1の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第2の極性を有する電圧を第2の電極に印加し、第1の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第2の電極に固定する工程、
(5)第2の電極に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極から第1の電極に向けて流体を流す工程、
(6)第2の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(7)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極から第1の電極に向けて流体を流す工程、
(8)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
を順次行うナノワイヤの配列方法である。
【0011】
図3、および図5は、本発明における配列方法の第1の実施形態を最も良く表す図である。
【0012】
図3(a)は、第1の電極111と第2の電極112が所定位置に配置された基板上に、互いに異なる第1の極性13と第2の極性14を有する部位を両末端に有するナノワイヤ11を静置させる工程(1)を示した図である。本発明における第1の極性、および第2の極性を有する部位とは、ナノワイヤの両末端に存在する電荷が互いに逆の極性になるような第1の極性と第2の極性を有する部位を意味する。本工程では、まず、互いに極性の異なる部位を両末端に有するナノワイヤを作製する。末端に極性を有する部位を設ける方法として、電荷部位を有する官能基を化学結合を介して末端に付与することで作製される。例えば、ナノワイヤの末端が金の場合、電荷部位を有するチオール化合物を用いて、金−チオール結合を介して電荷部位を末端に付与することができる。また、末端がシリコンの場合、電荷部位を有するシランアルコキシド化合物を用いて、シランカップリング反応を介して電荷部位を末端に付与することもできる。一方で、本発明に用いられるナノワイヤは、片末端に付与した電荷と、もう一方の片末端に付与した電荷が互いに異なる必要がある。両末端に互いに異なる電荷部位を付与する方法として、以下の手順を用いることができる。例えば、基板上で金触媒を介してVLS(vapor−liquid−solid)成長させたナノワイヤを作製し、正電荷を有するチオール化合物を含む溶液中にこの基板を浸漬させることで、ナノワイヤ片末端の金部位に正電荷を結合させる。尚、基板上にナノワイヤを作製する方法には、VLS成長法以外に、リソグラフィーを用いて所望の形状にエッチングする方法も利用できる。次に、この基板に超音波を照射して、ナノワイヤを基板から取り外した後、無電解金メッキ溶液を用いたもう一方のナノワイヤの末端に金を析出させる。最後に、負電荷を有するチオール化合物を含む溶液中にナノワイヤを浸漬させることで、ナノワイヤのもう一方の片末端の金部位に負電荷を結合させる。この結果、片末端に正電荷の極性と、もう一方の片末端に負電荷の極性を有したナノワイヤを得ることができる。
【0013】
次に、作製したナノワイヤを分散させた溶液を作製する。ナノワイヤを分散させた溶液を調製することで、配列時におけるナノワイヤの凝集を防止し、ナノワイヤ各々を所定位置に配列することが可能となる。調製には、超音波等を用いて効率的に分散させることができる。また、溶液中に塩を加えたり、緩衝液を用いて溶液のpHを調整することで、ナノワイヤの凝集を防ぐことも可能である。溶液のpHは、ナノワイヤ末端の電荷部位の等電点に近い値であることが好ましい。例えば、pHを等電点付近に設定することで、ナノワイヤの末端に双生イオンが生じる。これによって、ナノワイヤは電極への電圧印加時に、ナノワイヤ末端と電極との間に特異的な強い静電力が生じ、ナノワイヤを所定の電極上に効率良く配列することができる。また、配列されたナノワイヤを電界効果型トランジスタ等のチャネルとして用いる場合、分散溶媒には純水、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、有機塩を含む溶媒を用いることが好ましい。これは、ナノワイヤ内へのアルカリ金属混入によるデバイス性能の低下を防止するためである。このようにして調製した分散溶液を第1の電極111、第2の電極112を備えた基板上に静置させる。
【0014】
本発明における第1の電極111と第2の電極112との間隔122は、ナノワイヤの所望の長さに合わせて配置することができる。配置する方法として、例えば、後述するように、電子線リソグラフィーを用いて、所望の位置に、所望の形状で電極を配置することができる。
【0015】
図3(b)は、第1の電極111に第1の極性を有する電圧を印加することにより、第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極111上に固定する工程(2)を示した図である。電極は、電源供給部114に接続されている。本発明における第1の極性を有する電圧とは、電極上に誘起された表面電荷が、ナノワイヤ片末端の電荷部位の極性と逆の極性になるように、電位を印加することを意味する。本工程では、電極に第1の極性を有する電圧を印加することで、分散溶液中に存在する第1の極性と反対の第2の極性を有するナノワイヤの片末端を電極の近傍に引き寄せ、静電力を介して電極上に固定させる。例えば、第1の極性を有する電圧が正電圧である場合、負電荷部位を有するナノワイヤの片末端14が電極111上に固定される。電圧の印加方法としては、例えば、電源供給部114としてポテンショスタットを用い、流路内には対極と参照電極を設置することで、作用電極となる電極111に定電圧を印加することができる。印加する電圧の値は、電極、ナノワイヤ、ナノワイヤ末端の触媒に用いられる材料の種類によって適宜決められる。例えば、一般的に使用される金触媒、または金電極を用いた場合、銀・塩化銀参照電極に対して印加電圧は−1.0Vから+1.0Vの範囲であることが望ましい。これは、溶液中での酸素、水素の発生と金の電気分解を防止するためである。印加する時間は、印加する電圧の値や基板上に存在する溶液の容積によって適宜決められ、第1の電極上に固定されるナノワイヤの量が飽和されるのに十分な時間印加することができる。例えば、溶液量が1mLで電極に+1.0Vを印加した場合、1.0秒以上電圧を印加させることで、ナノワイヤの末端を電極上に効率良く固定することができる。
【0016】
図3(c)は、第1の電極111に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極111から第2の電極112に向けて流体118を流し、電極111上に固定したナノワイヤの向きを揃える工程(3)を示した図である。本発明における流体とは、第1の電極から第2の電極の方向に対して平行に流れる溶媒を意味する。本発明における流体を流す工程は、基板上に流路を設け、送液ポンプを用いて溶媒を流す方法や、基板を液相から気相へ取り出すことによって、任意の方向に溶媒を流す方法などを利用できる。尚、流体の流速を制御する場合は、流路を用いることが望ましい。本発明で用いられる流路は、リソグラフィーを用いて流路型を作製し、その型にポリマー材料を流し込み、硬化させることで作製される。流路を構成する材料は、基板に対して接着性の高く、成形が容易な材料が好ましく、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)などが挙げられる。流路上にインレット部とアウトレット部の穴を設け、これらにシリコンチューブを取り付け、送液ポンプにつなぐことで流路内に流体を流すことが可能となる。流路幅は、ナノワイヤが流路内で詰まることの無い、十分に広い幅であることが望ましい。例えば、0.1〜5.0mm幅の流路を用いることができる。
【0017】
本工程では、第1の電極に電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す。これにより、第1の電極に固定されたナノワイヤの向きは、第1の電極から第2の電極の方向に揃う。例えば、非特許文献(Lieber.et.al、Science、2001、26、p630−633)に記載の方法を用いることで、ナノワイヤの向きを流体の流れる方向に揃えることが可能である。また、本工程では、第1の電極に固定されていないナノワイヤは、基板上から取り除かれる。その結果、第1の電極上には、第1の電極と第2の電極との間の距離122に対して、長いナノワイヤ15、短いナノワイヤ17、そして同じ長さを有する所望のナノワイヤ16の少なくともいずれかが、その向きを揃えて配置される。この時、ナノワイヤ16の第1の電極に固定されていない片末端は、第2の電極の極近傍に配置される。本発明で用いられる流体は、図3(a)の工程で用いた分散溶媒を使用することができる。尚、流路を用いる場合は、流体として、揮発性が低く、且つ脱気された溶媒を用いることが望ましい。これにより、流路中での気泡の発生が防止され、流体を効率良くナノワイヤに接触させることができる。その結果、ナノワイヤの向きは再現良く揃う。脱気された溶媒は、溶媒を所定時間窒素バブリングすることによって調製される。
【0018】
本工程における流体は、ナノワイヤの向きが流体の流れる方向に揃い、且つ電圧を印加した電極上からナノワイヤが外れない流速で流すことが望ましい。ナノワイヤの向きが揃うための流速は、上述の非特許文献(Lieber.et.al、Science、2001、26、p630−633)に記載の値を参考にできる。1um以下の直径と1um以上の長さのナノワイヤを流体によって向きを揃える場合、0.01m/sec以上の流速で流体を流すことによって、該ナノワイヤの向きは流体の流れる方向に揃う。一方、電極上からナノワイヤが外れないための流速は、流体がナノワイヤに与える力:抗力Fdと、電圧印加時に発生する電極とナノワイヤ末端との静電力:Fcが、Fc>Fdを満たすときの流速fとなる。ここで、抗力とは、流体中に置かれた物体に働く力のうち、流れの速度方向に平行で逆向きに働く力を意味する。流体の密度をρ、応力を受ける断面積をS、抗力係数(物体の形状等で決まるパラメータ)をCdとすると、抗力Fdは次式で表される。
Fd=ρ・f・S・Cd / 2
【0019】
また、静電力Fcは、電気素量をq、ナノワイヤ末端に付与されている電荷数をN、印加電圧をv、電極界面に存在するキャパシタンスの厚みをdとすると、次式で表される。
Fc=q・N・v / d
【0020】
例えば、銀・塩化銀参照電極に対して電圧1.0Vを電極に印加して、径が50nm、長さが1umの末端に電荷部位を有するナノワイヤを電極上に固定した場合、1.0m/sec以下の流速であれば電極上からナノワイヤは外れない。以上の点から、本工程で用いる流速は、0.01m/secから1.0m/secの範囲であることが望ましく、該流速で流体を流すことによって、ナノワイヤの向きは流体の流れる方向に揃い、且つ電圧を印加した電極上からナノワイヤは外れない。本工程における印加電圧の値は、電極、ナノワイヤ、ナノワイヤ末端の触媒に用いられる材料の種類に加えて、流体の流速によって適宜決められ、Fc>Fdを満たす電圧値であることが好ましい。特に、一般的に使用される金触媒、または金電極を用いた場合、印加電圧の値は、銀・塩化銀参照電極に対して、−1.0Vから+1.0Vの範囲であることが望ましい。
【0021】
図3(d)は、第1の電極111に印加した電圧を自然電位に設定後、第2の極性を有する電圧を第2の電極112に印加し、ナノワイヤのもう一方の片末端を第2の電極112に固定する工程(4)を示した図である。本工程では、まず第1の電極に印加した電圧を自然電位に設定する。本発明における自然電位とは、電極に電圧を印加していない状態で電極上に発生する電位を意味する。自然電位は、溶液中に存在するイオンが電極界面で形成する電気二重層などに起因し、その値は印加電圧の値に比べ非常に小さい。第1の電極の印加電圧を自然電位に設定することで、第1の電極上に固定されたナノワイヤ15、16、17の末端が電極から外れやすくなる。自然電位に設定と同時に、第2の電極に第2の極性を有する電圧を印加する。ここで、第2の極性を有する電圧とは、図3(b)で印加した電圧に対して、逆の極性の電圧である。第2の極性を有する電圧vの値は、自然電位値ψに対して、|ψ|<|v|の関係を満たす値であることが好ましい。特に、一般的に使用される金触媒、または金電極を用いた場合、印加電圧vは、|ψ|<|v|<1.0Vであることが望ましい。これらの条件を満たす電圧vを第2の電極112に印加することで、ナノワイヤ16の片末端のみが第2の電極112に固定される。ナノワイヤ16の片末端は、第2の電極112の極近傍に配置されているため、電圧印加時と同時にすばやく電極に固定される。
【0022】
図3(e)は、第2の電極112に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極112から第1の電極111に向けて流体119を流し、基板上からナノワイヤ17を取り除く工程(5)を示した図である。本工程において、電圧を印加した状態で、第2の電極112から第1の電極111に向けて流体119を流すことにより、第2の電極112に固定されていないナノワイヤ17は、基板上から取り除かれる。一方で、第2の電極112に固定されていないナノワイヤ15は、流体119を流すことによって、第1の極性を有するナノワイヤ15の片末端が電極112の近傍に配置される。その結果、ナノワイヤ15の片末端が静電力を介して電極112上に固定される。本工程により、第2の電極に固定されたナノワイヤの向きは、第2の電極から第1の電極の方向に揃う。このとき、ナノワイヤ16の第1の電極に固定されていない片末端は、第1の電極の極近傍に配置される。本工程における流速は、図3(c)の工程と同様に、0.01m/secから1.0m/secの範囲であることが望ましい。また、本工程における印加電圧の値は、電極、ナノワイヤ、ナノワイヤ末端の触媒に用いられる材料の種類に加えて流体の流速によって適宜決められ、Fc>Fdを満たす電圧値であることが好ましい。
【0023】
本発明は、本工程が示すように、電圧を印加する電極と流体を流す向きを制御することで、従来法に比べ、所望の長さに対して短いナノワイヤを除去することが可能となる。さらに、電圧値、および流速値を制御することで、より効率良く、短いナノワイヤを基板上から除去できる。
【0024】
図3(f)は、第2の電極112に印加した電圧を自然電位に設定後、第1の電極111に第1の極性を有する電圧を印加し、第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極111上に固定する工程(6)を示した図である。本工程では、第2の電極に印加した電圧を自然電位に設定する。第2の電極の印加電圧を自然電位に設定することで、第2の電極上に固定されたナノワイヤ15、16の末端が電極から外れやすくなる。自然電位に設定すると同時に、第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加する。本工程における第1の極性の印加電圧vの値は、図3(d)と同様に、自然電位値ψに対して、|ψ|<|v|の関係を満たす値であることが好ましく、さらに金触媒、または金電極を用いた場合、印加電圧vは、|ψ|<|v|<1.0Vであることが望ましい。この結果、ナノワイヤ16の片末端のみが第1の電極上に固定される。ナノワイヤ16の片末端は、図3(d)の工程後、第1の電極の極近傍に配置されているため、電圧印加時と同時にすばやく電極に固定される。
【0025】
図3(g)は、第1の電極111に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極112から第1の電極111に向けて流体を流す工程(7)を示した図である。本工程では、電圧を印加した状態で、第2の電極112から第1の電極111に向けて流体119を流すことによって、ナノワイヤ15は、基板上から取り除かれる。これは、ナノワイヤ15が、電極111の方向に流され、電極111との間で静電的斥力が働き、電極上に固定されないためである。本工程における流速は、図3(c)、(e)の工程と同様に、0.01m/secから1.0m/secの範囲であることが望ましく、また、本工程における印加電圧の値は、Fc>Fdを満たす電圧値であることが好ましい。本工程では、電圧を印加する電極と流体を流す向きを制御することで、従来法に比べ、所望の長さに対して長いナノワイヤを除去することが可能となる。さらに、電圧値、および流速値を制御することで、より効率良く、長いナノワイヤを基板上から除去できる。その結果、基板上には、所望の長さを有するナノワイヤ16のみが存在する。
【0026】
図3(h)は、第1の電極111に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体118を流す工程(8)を示した図である。本工程により、第1の電極に固定されたナノワイヤの向きは、第1の電極から第2の電極の方向に揃う。このとき、ナノワイヤ16の第1の電極に固定されていない片末端は、第1の電極の極近傍に配置される。この結果、所望の長さのナノワイヤ16のみが、第1の電極と第2の電極間に配置される。
【0027】
さらに本発明では、工程(8)の後、工程(4)〜(8)を順次繰り返すことができる。第1の電極と第2の電極上に配置されたナノワイヤの量は、本工程を繰り返すことにより、増える。その結果、所定位置に所望のナノワイヤを高密度に配置されたものが得られる。
【0028】
(第2の実施形態)
本発明による配列方法の第2の実施形態は、
基板上の所定位置にナノワイヤを配置するための配列方法であって、
(1)第1の電極と第2の電極を備えた基板上に、互いに異なる第1の極性と第2の極性を有する部位を両末端に有するナノワイヤを静置する工程、
(2)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、前記第1の極性と反対の第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(3)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(4)第1の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第2の極性を有する電圧を第2の電極に印加し、第1の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第2の電極に固定する工程、
(5)第2の電極に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(6)第2の電極に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極から第1の電極に向けて流体を流す工程、
(7)第2の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(8)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
を順次行うナノワイヤの配列方法である。
【0029】
図4、および図5は、本発明における配列方法の第2の実施形態を最も良く表す図である。
【0030】
図4(a)は、第1の電極111と第2の電極112が所定位置に配置された基板上に、互いに異なる第1の極性13と第2の極性14を有する部位を両末端に有するナノワイヤ11を静置させる工程(1)を示した図である。本工程は、第1の実施形態における工程(1)と同様に、ナノワイヤの分散させた溶液を調製し、基板上に該ナノワイヤ溶液を静置する工程である。
【0031】
図4(b)は、第1の電極111に第1の極性を有する電圧を印加することにより、第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極111上に固定する工程(2)を示した図である。本工程は、第1の実施形態における工程(2)と同様に、ナノワイヤの片末端を第1の電極111に固定する工程である。尚、金触媒、もしくは金電極を用いる場合、印加電圧は、銀・塩化銀参照電極に対して、−1.0〜+1.0Vの範囲であることが好ましい。
【0032】
図4(c)は、第1の電極111に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極111から第2の電極112に向けて流体118を流し、電極111上に固定したナノワイヤの向きを揃える工程(3)を示した図である。本工程は、第1の実施形態における工程(3)と同様に、第1の電極に固定されたナノワイヤの向きを、第1の電極から第2の電極の方向に揃える工程である。本工程では、第1の実施形態と同様に、第1の電極と第2の電極との間の距離122に対して、長いナノワイヤ15、短いナノワイヤ17、そして同じ長さを有する所望のナノワイヤ16の少なくともいずれかが、その向きを揃えて配置される。さらに、ナノワイヤ16の第1の電極に固定されていない片末端は、第2の電極の極近傍に配置される。本工程における流体の流速は、第1の実施形態と同様に、0.01m/secから1.0m/secの範囲であることが望ましく、印加電圧の値は、電極、ナノワイヤ、ナノワイヤ末端の触媒に用いられる材料の種類に加えて、流体の流速によって適宜決められ、Fc>Fdを満たす電圧値であることが好ましい。
【0033】
図4(d)は、第1の電極111に印加した電圧を自然電位に設定後、第2の極性を有する電圧を第2の電極112に印加し、第1の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第2の電極112に固定する工程(4)を示した図である。本工程により、第1の実施形態における工程(4)と同様に、ナノワイヤ16の片末端のみが第2の電極112に固定される。第2の極性を有する印加電圧vの値は、自然電位値ψに対して、|ψ|<|v|の関係を満たす値であることが好ましい。特に、金触媒、または金電極を用いた場合、印加電圧vは、|ψ|<|v|<1.0Vであることが望ましい。
【0034】
図4(e)は、第2の電極112に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極111から第2の電極112に向けて流体118を流す工程(5)を示した図である。本工程により、第2の電極に固定されていないナノワイヤ15は基板上から取り除かれる。一方、ナノワイヤ17は、流体118を流すことによって、第1の極性を有するナノワイヤ17の片末端が静電力を介して電極112上に固定される。本工程における流体の流速は、第1の実施形態と同様に、0.01m/secから1.0m/secの範囲であることが望ましく、印加電圧の値は、Fc>Fdを満たす電圧値であることが好ましい。本工程により、所望の長さに比べて長いナノワイヤを除去することが可能となる。さらに、電圧値、および流速値を制御することで、より効率良く、長いナノワイヤのみを基板上から除去できる。
【0035】
図4(f)は、第2の電極112に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極112から第1の電極111に向けて流体119を流す工程(6)を示した図である。本工程では、工程(5)によりナノワイヤ15が基板上から除去された状態で、第2の電極112から第1の電極111に向けて流体119を流すことよって、第2の電極に固定されたナノワイヤ16、17の向きが、第2の電極から第1の電極の方向に揃う。その結果、ナノワイヤ16の第1の電極に固定されていない片末端は、第1の電極の極近傍に配置される。本工程における流体の流速は、第1の実施形態と同様に、0.01m/secから1.0m/secの範囲であることが望ましい。
【0036】
図4(g)は、第2の電極112に印加した電圧を自然電位に設定後、第1の電極111に第1の極性を有する電圧を印加し、第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極111上に固定する工程(7)を示した図である。本工程により、ナノワイヤ16の片末端のみが第1の電極上に固定される。第1の極性を有する印加電圧vの値は、自然電位値ψに対して、|ψ|<|v|の関係を満たす値であることが好ましく、さらに、金触媒、または金電極を用いた場合、印加電圧vは、|ψ|<|v|<1.0Vであることが望ましい。
【0037】
図4(h)は、第1の電極111に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極111から第2の電極112に向けて流体118を流す工程(8)を示した図である。本工程により、ナノワイヤ17は、第2の電極の方向に流され、電極112との間で静電的斥力が働き、電極上に固定できない。その結果、ナノワイヤ17は、基板上から取り除かれる。本工程における流速は、第1の実施形態と同様に、0.01m/secから1.0m/secの範囲であることが望ましく、また、本工程における印加電圧の値は、Fc>Fdを満たす電圧値であることが好ましい。本工程により、基板上には、所望の長さを有するナノワイヤ16のみが存在する。さらに、本工程により、第1の電極に固定されたナノワイヤ16の向きは、第1の電極から第2の電極の方向に揃う。この結果、所望の長さのナノワイヤ16のみが、第1の電極と第2の電極間に配置される。
【0038】
さらに本発明では、工程(8)の後さらに工程(4)〜(8)を順次繰り返すことにより、所定位置に所望のナノワイヤを高密度に配置することができる。
【0039】
<分離方法>
(第3の実施形態)
本発明による第3の実施形態は、
所望の長さを有するナノワイヤを分離する方法であって、
(1)第1の電極と第2の電極を備えた基板上に、互いに異なる第1の極性と第2の極性を有する部位を両末端に有するナノワイヤを静置する工程、
(2)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、前記第1の極性と反対の第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(3)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(4)第1の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第2の極性を有する電圧を第2の電極に印加し、第1の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第2の電極に固定する工程、
(5)第2の電極に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極から第1の電極に向けて流体を流す工程、
(6)第2の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(7)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極から第1の電極に向けて流体を流す工程、
(8)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(9)前記第1の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、前記ナノワイヤを基板上から取り除く工程を順次行うナノワイヤの分離方法である。
【0040】
第3の実施形態においては、第1の実施形態、および第2の実施形態の方法により、電極上に所望のナノワイヤが配置された後、第1の電極111に印加している電圧を自然電位に設定することで、ナノワイヤが基板上から外れやすくなり、基板上からナノワイヤを回収することができる。つまり、所望の長さのナノワイヤを分離抽出することができる。回収方法としては、流体を流す方法、流路を外した基板を超音波照射する方法、電場、磁場などの外力を用いて回収する方法など利用できる。
【0041】
(第4の実施形態)
本発明による第4の実施形態は、
所望の長さを有するナノワイヤを分離する方法であって、
(1)第1の電極と第2の電極を備えた基板上に、互いに異なる第1の極性と第2の極性を有する部位を両末端に有するナノワイヤを静置する工程、
(2)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、前記第1の極性と反対の第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(3)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(4)第1の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第2の極性を有する電圧を第2の電極に印加し、第1の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第2の電極に固定する工程、
(5)第2の電極に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(6)第2の電極に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極から第1の電極に向けて流体を流す工程、
(7)第2の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(8)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(9)前記第1の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、前記ナノワイヤを基板上から取り除く工程を順次行うナノワイヤの分離方法である。
【0042】
第4の実施形態においては、第3の実施形態と同様に、第1の実施形態、および第2の実施形態の方法により電極上に所望のナノワイヤが配置された後、自然電位に設定することで、所望の長さのナノワイヤを分離抽出することができる。回収方法としては、第3の実施形態と同様に、流体を流す方法、流路を外した基板を超音波照射する方法、電場、磁場などの外力を用いて回収する方法など利用できる。
【0043】
(第5の実施形態)
本発明による第5の実施形態は、所望の長さを有するナノワイヤをチャネル部に配した電子デバイスを作製する第1の方法に関する。
【0044】
本実施形態においては、第1の実施形態もしくは第2の実施形態により、電極111と電極112の間隔に略等しい所望の長さのナノワイヤ16を基板上に固定化した後、ナノワイヤ16の両端に、互いに電気的に分離された2つの電極を形成する。ソース電極、ドレイン電極を形成する。ナノワイヤの導電性によっては、ナノワイヤは抵抗素子、もしくはコネクタ素子として用いることが可能である。
【0045】
その後、ナノワイヤの表面を被覆するように絶縁膜を形成した後、前述の2つの電極からそれぞれ電気的に分離されたゲート電極を、2つの電極間に形成することで、2つの電気的接点と、絶縁膜を介して接続された電極とを有する、いわゆる電界効果トランジスタとして用いることも可能である。
【0046】
この場合には、両端の2つの電極はソース電極もしくはドレイン電極に、中間の電極はゲート電極にそれぞれ該当する。ソース電極、ドレイン電極の一方もしくはその両方は、図2、3、4に示される電極111、電極112と略等しい位置に形成されても良い。この場合、ソース電極及びドレイン電極が電極111もしくは112と電気的に接続されていれば、第1の実施形態もしくは第2の実施形態に記載の電極111及び電極112に電位を印加するために用いた電位印加部をそのまま電界効果トランジスタ駆動時に用いることができる。言うまでもなく、ソース電極、ドレイン電極の両方が、電極111、電極112と電気的に分離された位置に形成されても良い。
【0047】
(第6の実施形態)
本発明による第6の実施形態は、所望の長さを有するナノワイヤをチャネル部に配した電子デバイスを作製する第2の方法に関する。
【0048】
本実施形態においては、第3の実施形態もしくは第4の実施形態により、電極111と電極112の間隔に略等しい所望の長さのナノワイヤ16を抽出した後、改めて固定化部位を有する基板上に再固定化を施すことによって電子デバイスを形成する。
【0049】
再固定化の際の基板側固定化部位は極性を有する官能基等を適用することが可能である。
【0050】
第3の実施形態もしくは第4の実施形態により、抽出されたナノワイヤは、末端に異なる極性を有している。よって、抽出されたナノワイヤ16を溶液中に回収し、例えばアミノ基やカルボキシル基、水酸基等を、極性が異なる対として所望の部位に配した固定化基板上に滴下することで所望の位置及び方向に固定化可能である。
以降、第5の実施形態に示したように、固定化されたナノワイヤは、抵抗素子やコネクタ素子、電界効果トランジスタ素子等の電子デバイスに用いることができる。
【0051】
<基板>
本発明で用いられる基板は、電極を設置可能な材料である限り、形状、構成等は特に限定されないが、配列されたナノワイヤを有する基板を電界効果型トランジスタ等のデバイスとして用いる場合、基板は絶縁体からなる材料を用いることが望ましい。例えば、絶縁体として、ガラス、炭化物、窒化物、高分子材料からなるプラスチック類などを用いることができる。
【0052】
<ナノワイヤ>
本発明で用いられるナノワイヤとは、例えば材質は半導体、金属、誘電体、もしくはそれらの複合体からなる。半導体の材料としては、シリコン、ゲルマニウム等のIV属半導体、GaAs等のIII−V属化合物半導体、InP等のII−VI属化合物半導体、SiC等を用いることができる。金属の材料としては、Au、Pt、Pd、Ti等を用いることができる。誘電体としては、SiO、SiN、HfO、Al等を用いることができる。
これらの材料からなる複合体は、例えばVLS法を用いて形成可能である。
また、本発明で用いられるナノワイヤは、概ね1μm以下の直径、1μm以上の長さからなるものを示すが、上記以外のサイズのワイヤを適用範囲から除外するものではない。
【0053】
<極性を有する部位>
本発明におけるナノワイヤ末端に覆われた極性を有する部位には、正電荷、負電荷を有する官能基、もしくは酸性化合物、塩基性化合物を含む官能基を用いることができる。例えば、本発明で用いられる極性を有する官能基として、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アミンを有するアミン誘導体、カルボン酸誘導体、スルホン酸誘導体、ヒドロキシル基を有する化合物、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン元素を有する化合物などが挙げられる。また、本発明で用いられる極性を有する官能基は、ナノワイヤ末端の触媒部位に共有結合や生体反応を利用して付与される。例えば、ナノワイヤ末端が金である場合、チオール化合物を含む極性官能基と金とを接触させることで、金−チオール結合を介して極性を有する官能基がナノワイヤ末端に付与される。また、予めナノワイヤ末端に活性基を設け、これに特異的に反応する反応基を有する極性官能基を作用させることで、末端に極性を有する官能基を付与することができる。例えば、活性基と反応基の組み合わせとして、カルボキシル基とアミノ基、アルデヒド基とアミノ基、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル部位とアミノ基、マレイミド基とチオール基、アセチレン基とアジド基、アジド基とアセチレン基、アビジンとビオチン、ストレプトアビジンとビオチンなどが挙げられる。尚、「活性基と反応基の組み合わせがA−Bである」と表記する場合は、活性基がAであり反応基がBである場合と、活性基がBであり反応基がAである場合の両方を含むものとする。
【0054】
<電極>
本発明で用いられる電極は、電圧の印加により表面に電荷を誘起できる材料であり、比較的電位窓の広い材料を用いることが好ましい。これは、電極の劣化や電圧印加に伴う気泡の発生をできる限り低減するためである。本発明で用いられる電極材料としては、炭素、金、白金、ダイヤモンド、酸化インジウムスズ、タングステンなど挙げられる。本発明では、リソグラフィーを用いて基板上の所定位置に電極を設置できる。電極の形状に対してサブミクロン以下でパターニングする場合は、電子線を用いてパターニングすることもできる。本発明における電極間の距離は、所望のナノワイヤの長さに合わせて、所望の距離に配置させることができる。作製された電極は、電源供給部にそれぞれ接続される。電源供給部には、例えば、ポテンショスタットなどを用い、電極に定電位を印加させることができる。
【0055】
<流体>
本発明で用いられる流体としては、揮発性が低く、且つ脱気された溶媒を用いることが望ましい。このような溶媒を用いることで、流路内における酸素の発生や気泡の発生が防止され、流体を効率良くナノワイヤに接触させることができる。例えば、本発明で用いられる流体としては、純水、金属塩緩衝水溶液、酢酸トリエチルアンモニウム塩などのカルボン酸誘導体とアンモニウム誘導体との塩を含む有機塩緩衝水溶液や、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオンなどの陽イオンとテトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンなどの陰イオンから成るイオン液体、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチルピロリドンなど低揮発性有機溶媒などを用いることができる。脱気された溶媒は、溶媒を所定時間窒素バブリングすることによって調製される。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
本実施例では、ナノワイヤの片末端に正電荷部位、もう一方の片末端に負電荷部位を有するナノワイヤを作製し、図3、および図5の工程により、基板上に設置された第1の電極と第2の電極上に、所望の長さを有するナノワイヤを、向きを揃えて配置させる。
【0057】
(1−1)ナノワイヤの作製
図1は、本発明で用いられる互いに異なる第1の極性を有する部位13、第2の極性を有する部位14を両末端に有するナノワイヤ11を模式的に示した図である。以下、ナノワイヤの作製方法について記載する。
【0058】
基板上に触媒を形成する。本発明に用いられる触媒には、Au、Al、Si、Sn、Pb、Ni、Fe、Agなどから選択される少なくとも一種の材料であって、Si、Ge、Cなどの後述するナノワイヤとなる半導体と共晶を形成する材料が適用できる。本実施例では、触媒部分に電荷部位を付与するために、触媒にAuを用いることにする。触媒は、リフトオフ法や通常のリソグラフィーによるパターニングで形成できる。更には、金属微粒子を含む溶液(例えば、Auコロイド含有溶液)を基板上に滴下することによっても形成可能である。触媒が溶融し液滴となった場合の粒径は200nm以下であることが好ましい。後述のナノワイヤのVLS成長における過飽和がより好適に起こりうるためである。薄膜触媒を用いる場合には初期の膜厚とナノワイヤとなる半導体原料の供給前のアニール条件により、粒径は制御可能である。例えば3nmのAu薄膜を用いた場合、真空チャンバー内で分圧133Paの窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス中において、370℃で2分から5分程度加熱することによって、40nm程度の粒径のナノワイヤを得るための触媒が複数分散して形成される。一方、コロイドを用いる場合には初期コロイド粒径と略等しい径のナノワイヤが得られる。次に、触媒と共晶を作りうるナノワイヤの原料を供給し、触媒とナノワイヤとなる半導体が共晶状態を取りうる温度に基板を加温する。例えば触媒Auによるシリコンナノワイヤ成長では363℃の共晶温度よりも高い温度とする。半導体原料には、SiH、SiF、SiCl、SiHCl、SiHCl、GeH、CH、Cなどのナノワイヤを構成する原子を含むガスを用いることができる。また、PLDやスパッタなどの手法を用いて、蒸着源やターゲットであるところの固体の半導体原料からの気相による供給も適用可能である。半導体原料の供給により半導体種が触媒に溶け込み、共晶状態の溶融液滴となる。そして、半導体原料を供給し続けることによって溶融液滴は半導体種の組成比が過飽和に達し、半導体が結晶成長する。これが、いわゆるVLS成長法であり、この方法によりナノワイヤが得られる。例えば半導体原料にSiHガスを用いることによってシリコンナノワイヤが、GeHを用いることによってゲルマニウムナノワイヤが得られる。上記VLS法以外にも、材料に応じてVSS(気相―固相―固相)法やMOCVD法も適用できる。これらの方法により、基板の表面に対して垂直方向に延びるナノワイヤを成長させることができる。本発明に用いられるナノワイヤは、その直径が1nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上100nm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0059】
次に、ナノワイヤの末端の触媒部分12にそれぞれ異なる極性を有する部位13、14を付与させる。本実施例では、金(Au)触媒を用いてナノワイヤを作製するため、ナノワイヤ末端12には金が形成されている。従って、金−チオール結合を利用して電荷を有する有機物を末端に付与することができる。ナノワイヤが形成された基板を溶媒中に浸漬させ、この溶媒に所定濃度のシステアミン(アルドリッチ社製)を添加する。所定時間静置させた後、溶媒で基板を洗浄する。この基板を溶媒中に浸漬させ、所定時間、超音波を照射させ、基板上からナノワイヤを分離させる。この結果、末端に正電荷を有するアミン部位13が付与されたナノワイヤを得ることができる。次に、もう一方の末端に負電荷を有する有機物を金−チオール結合を利用して付与させる。ナノワイヤを含む溶媒中に、亜硫酸金ナトリウム溶液を含む無電解めっき溶液(日立化成工業社製)を加え、ナノワイヤのもう一方の末端に金を析出させる。このナノワイヤ溶液に所定濃度のメルカプトプロピオン酸(アルドリッチ社製)を添加し、所定時間静置させる。静置後、この溶液を遠心分離させ、上清の溶媒を除去する。この操作を3回繰り返し、最後に溶媒で残渣物を分散させる。分散溶媒には、純水、または有機塩溶媒を用いる。このようにして、片末端に正電荷部位であるアミン部位13が付与され、もう一方の片末端に負電荷部位であるカルボン酸部位14が付与されたナノワイヤ11が分散されたナノワイヤ溶液を得ることができる。
【0060】
(1−2)金電極と流路を設置した基板の作製
図2は、本実施例における電極と流路を備えた基板を模式的に示した図である。電極を配置した基板は、リソグラフィーを用いた以下の手順で、基板上の所定の位置に電極を形成させることができる。シリコン基板上に金(Au)を蒸着させる。この基板にエッチング保護膜としてフォトレジスト(住友化学社製)でパターニングし、所望の形状、位置に金をエッチングする。サブミクロン以下の幅にパターニングする場合は、電子線を用いてパターニングする(電子線リソグラフィー)。本実施例では、電子線リソグラフィーを用いて、図2に示すくし型状の金電極を形成する。くし部の電極間の距離は、所望のナノワイヤ長に合わせて、第1の電極111と第2の電極112を配置させる。このようにして作製された電極111、112は、電源供給部114にそれぞれ接続される。電源供給部には、ポテンショスタット(BAS社製)を用い、流路内に白金対極と銀・塩化銀参照電極を設置し、作用電極となる電極111に定電圧を印加することができる電極111、112にそれぞれ異なる定電位を印加させることが可能である。流路113は、PDMS(ポリジメチルシロキサン)を用いて以下の手順で作製する。本実施例では、ナノワイヤが流路内で詰まらないように、幅1.0mmの流路を有するPDMS流路113を作製する。ガラス基板上に厚膜レジスト(化薬マイクロケム社製)をスピンコートし乾燥させる。これにマスクアライナで所望の流路パタンを露光し,ベーキングした後に現像させ、流路型を作製する。枠の中に型を置き,その上からPDMS(アルドリッチ社製)と硬化剤(アルドリッチ社製)を10:1で混ぜたものを流し込み、ベークして硬化させる。硬化したPDMSを剥がしとり、これを上記で作製した基板上に貼り付ける。硬化したPDMSは、フラットな表面に対して自己接着性を有し、容易に貼り付けることができる。流路上にインレット部とアウトレット部の穴を設け、これらにシリコンチューブを取り付け、送液ポンプ115につなぐ。このようにして、所望の位置に所望の形状で配置された第1の金電極111と第2の金電極112を有し、且つ所望の流路113が設置された基板を得ることができる。
【0061】
(1−3)ナノワイヤの配列方法と配列条件の最適化
図6(a)、(b)は、所定時刻に与える印加電圧v1、v2と流速f1、f2を模式的に示したグラフである。図6の(b)に示す流速値f1、f2は、第1の電極から第2の電極の流速を正にした場合の値である。従って、負の値:f2で送流した場合は、第2の電極から第1の電極の方向に絶対値|f2|の流速で溶媒が流されている。図6(a)、(b)に示す印加電圧と流速を用いて、図3(a)〜(h)に示す工程により、ナノワイヤを基板上の電極位置に配列させる。以下、配列方法の詳細な手順を示す。(1−1)で作製したナノワイヤを(1−2)で作製した流路の注入口120から注入し、基板上にナノワイヤを静置させる(図3(a))。続いて、所定時刻t1に金電極111に電圧v1(V)を印加し、電極上にナノワイヤ末端の負電荷部位13を固定させる(図3(b))。時刻t2まで電圧v1を印加させた状態で流速f1で流体118を流す(図3(c))。これによって、電極に固定化されていないナノワイヤは基板上から除去され、さらに電極111に固定化されているナノワイヤの向きが揃う。尚、流体に用いられる溶媒は、(1−1)の工程で用いた分散溶媒を用いることができる。時刻t2後、金電極111の印加電圧を0Vにし、同時に金電極112に電圧v2を印加し、電極112にナノワイヤ末端の正電荷部位14を固定させる(図3(d))。時刻t3まで電圧v2を印加させた状態で流速f2で流体119を流す(図3(e))。これによって、電極に固定化されていないナノワイヤは基板上から除去される。時刻t3後、金電極112に印加電圧を0Vにし、同時に金電極111に電圧v1を印加し、電極111にナノワイヤ末端13を固定させる(図3(f))。時刻t4まで電圧v2を印加させた状態で流速f2で流体119を流し(図3(g))、電極に固定化されていないナノワイヤは基板上から除去する。時刻t4後、流速f1で流体118を流し(図3(h))、電極111に固定化されているナノワイヤの向きを揃える。この結果、電極111と電極112の間に所望のナノワイヤを配置させることができる。
【0062】
さらに、再現良くナノワイヤを所定位置に配列させるために、以下の実験を行い、印加電圧値v1、v2と流速f1、f2の最適値を設定する。上記の配列工程である図3(a)〜(h)において、印加電圧v1に対して0.1〜1.0V、および印加電圧v2に対して−0.1〜−1.0Vまで、0.1V間隔で定電圧を印加する。さらに、各電圧において、流速f1を0.01、0.05、0.1、0.2、0.5、1.0 m/sec、および流速f2を−0.01、−0.05、−0.1、−0.2、−0.5、−1.0 m/secで流体を流す。各電圧、および各流速で所定位置にナノワイヤを配列した基板に無電解めっき溶液(日立化成工業社製)を流し、電極に金をメッキ析出させ、ナノワイヤ末端13、および14を電極111、および電極112に固定させる。基板を溶媒で洗浄した後、流路113を剥がし、基板を乾燥させる。乾燥後、走査型電子顕微鏡を用いて、電極に対して配列されているナノワイヤを観測する。観測結果から、電極上にナノワイヤが高密度で配列された印加電圧v1、v2、および流速値f1、f2を求める。
【0063】
本実施例は、図3(a)〜(h)に示す工程で図6(a)、(b)に示す印加電圧と流速を与えながらナノワイヤを配列させることで、従来法に比べ、長さ、及び径の揃ったナノワイヤを所定の位置に配置させることができる。また、本方法を用いれば、電子線リソグラフィーを用いて電極111、および電極112の間隔を変えることで、間隔に合った長さを有するナノワイヤのみを電極上に配置させることが可能である。
【0064】
(実施例2)
本実施例では、実施例1と同様のナノワイヤ、金電極と流路が設置された基板を用いて、図4(a)〜(h)の工程により、所定の電極上に所望のナノワイヤを向きと長さを揃えて配置させる。(2−1)ナノワイヤの作製、および(2−2)金電極と流路を設置された基板の作製は、実施例1と同様な方法で作製する。
【0065】
(2−3)ナノワイヤの配列方法
図6(c)、(d)は、所定時刻に与える印加電圧v1、v2と流速f1、f2を模式的に示したグラフである。図6(c)、(d)に示す印加電圧と流速を用いて、図4(a)〜(f)に示す工程により、ナノワイヤを基板上の電極位置に配列させる。以下、配列方法の詳細な手順を示す。まず、実施例1と同様な方法で基板上にナノワイヤを設置後(図4(a))、時刻t1で電圧v1を印加して、電極上にナノワイヤ末端の負電荷部位13を固定させ(図4(b))、時刻t2まで電圧v1を印加させた状態で流速f1で流体118を流す(図4(c))。次に、時刻t2後、金電極111の印加電圧を0Vにし、同時に金電極112に電圧v2を印加し、電極112にナノワイヤ末端の正電荷部位14を固定させる(図4(d))。時刻t3まで電圧v2を印加させた状態で流速f1で流体118を流す(図4(e))。時刻t3後、金電極112に電圧v2を印加させたまま、時刻t4まで流速f2で流体119を流す(図4(f))。これによって、電極に固定化されていないナノワイヤは基板上から除去される。時刻t4後、金電極112の印加電圧を0Vにし、同時に金電極111に電圧v1を印加し、電極111にナノワイヤ末端13を固定させる(図4(g))。時刻t5まで電圧v1を印加させた状態で流速f1で流体118を流し(図4(h))、電極に固定化されていないナノワイヤの除去と、電極111に固定化されているナノワイヤの向きを揃える。この結果、実施例1と同様に電極111と電極112の間に所望のナノワイヤを配置させることができる。本実施例においても、実施例1と同様の実験で、再現良くナノワイヤを所定位置に配列させるための印加電圧値v1、v2と流速f1、f2を設定することができる。
【0066】
本実施例により、従来法に比べ、長さの揃ったナノワイヤを所定の位置に配置させることができる。また、実施例1と同様に、電子線リソグラフィーを用いて電極111、および電極112の間隔を変え、間隔に合った長さのナノワイヤを配置させることが可能である。
【0067】
(実施例3)
本実施例は、所望の長さを有するナノワイヤのみを分離し回収する。
本実施例では、図5に示す工程を利用して所定の位置に所望のナノワイヤを配置した後、基板上からナノワイヤを回収する。実施例1と同様の方法で、電極上にナノワイヤを配置させる。配置後、電極111の印加電圧を0Vにし、洗浄溶媒で基板上からナノワイヤを除去する。ここで使用する洗浄溶媒は、実施例1で送液した溶媒を用いることができる。除去したナノワイヤ溶液を流路の回収口121から回収することで、所望の長さのナノワイヤを得ることができる。また、電極上にナノワイヤを配置させた後、この基板から流路113を取り外し、基板を洗浄溶媒中に浸漬させる。この溶媒に所定時間、超音波洗浄し、基板からナノワイヤを取り外すことで、所望の長さのナノワイヤを得ることができる。実施例1と同様に、電極111と電極112との間隔をナノワイヤの長さに合わせることで、所望の長さのナノワイヤを得ることができる。
【0068】
(実施例4)
本実施例は、所望の長さを有するナノワイヤのみを分離し回収する。
本実施例では、実施例3と同様に、所定の位置に配置された所望のナノワイヤを基板上からナノワイヤを回収する。実施例2と同様の方法で、電極上にナノワイヤを配置させる。配置後、電極111の印加電圧を0Vにし、洗浄溶媒で基板上からナノワイヤを除去する。ここで使用する洗浄溶媒は、実施例2で送液した溶媒を用いることができる。除去したナノワイヤ溶液を流路の回収口121から回収することで、所望の長さのナノワイヤを得ることができる。また、電極上にナノワイヤを配置させた後、この基板から流路113を取り外し、基板を洗浄溶媒中に浸漬させる。この溶媒に所定時間、超音波洗浄し、基板からナノワイヤを取り外すことで、所望の長さのナノワイヤを得ることができる。実施例2と同様に、電極111と電極112との間隔をナノワイヤの長さに合わせることで、所望の長さのナノワイヤを得ることができる。
【符号の説明】
【0069】
11 ナノワイヤ
12 末端触媒
13 第1の極性を有する部位
14 第2の極性を有する部位
15 所望の長さに対して長いナノワイヤ
16 所望の長さのナノワイヤ
17 所望の長さに対して短いナノワイヤ
111 第1の電極
112 第2の電極
113 流路
114 電源供給部
115 送液ポンプ
116 基板
117 印加時の電源供給部
118 第1の電極から第2の電極に向けての流体
119 第2の電極から第1の電極に向けての流体
120 注入口
121 回収口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の所定位置にナノワイヤを配置するためのナノワイヤの配列方法であって、
(1)第1の電極と第2の電極を備えた基板上に、互いに異なる第1の極性と第2の極性を有する部位を両末端に有するナノワイヤを静置する工程、
(2)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、前記第1の極性と反対の第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(3)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(4)第1の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第2の極性を有する電圧を第2の電極に印加し、第1の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第2の電極に固定する工程、
(5)第2の電極に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極から第1の電極に向けて流体を流す工程、
(6)第2の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(7)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極から第1の電極に向けて流体を流す工程、
(8)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程
を順次行うことを特徴とするナノワイヤの配列方法。
【請求項2】
基板上の所定位置にナノワイヤを配置するためのナノワイヤの配列方法であって、
(1)第1の電極と第2の電極を備えた基板上に、互いに異なる第1の極性と第2の極性を有する部位を両末端に有するナノワイヤを静置する工程、
(2)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、前記第1の極性と反対の第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(3)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(4)第1の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第2の極性を有する電圧を第2の電極に印加し、第1の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第2の電極に固定する工程、
(5)第2の電極に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(6)第2の電極に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極から第1の電極に向けて流体を流す工程、
(7)第2の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(8)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
を順次行うことを特徴とするナノワイヤの配列方法。
【請求項3】
前記印加電圧v、自然電位ψ、流体の流速fが以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のナノワイヤの配列方法。
|ψ|<|v|≦1.0(V)、0.01≦|f|≦1.0(m/sec)
【請求項4】
所定の長さを有するナノワイヤを分離する方法であって、
(1)第1の電極と第2の電極を備えた基板上に、互いに異なる第1の極性と第2の極性を有する部位を両末端に有するナノワイヤを静置する工程、
(2)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、前記第1の極性と反対の第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(3)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(4)第1の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第2の極性を有する電圧を第2の電極に印加し、第1の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第2の電極に固定する工程、
(5)第2の電極に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極から第1の電極に向けて流体を流す工程、
(6)第2の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(7)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極から第1の電極に向けて流体を流す工程、
(8)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(9)前記第1の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、前記ナノワイヤを基板上から取り除く工程、
を順次行うことを特徴とするナノワイヤの分離方法。
【請求項5】
所定の長さを有するナノワイヤを分離する方法であって、
(1)第1の電極と第2の電極を備えた基板上に、互いに異なる第1の極性と第2の極性を有する部位を両末端に有するナノワイヤを静置する工程、
(2)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、前記第1の極性と反対の第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(3)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(4)第1の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第2の極性を有する電圧を第2の電極に印加し、第1の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第2の電極に固定する工程、
(5)第2の電極に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(6)第2の電極に第2の極性を有する電圧を印加した状態で、第2の電極から第1の電極に向けて流体を流す工程、
(7)第2の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加し、第2の極性を有する前記ナノワイヤの片末端を第1の電極上に固定する工程、
(8)第1の電極に第1の極性を有する電圧を印加した状態で、第1の電極から第2の電極に向けて流体を流す工程、
(9)前記第1の電極に印加した電圧を自然電位に設定後、前記ナノワイヤを基板上から取り除く工程、
を順次行うことを特徴とするナノワイヤの分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−223843(P2012−223843A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91995(P2011−91995)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】