説明

ナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造、ナビゲーション装置

【課題】省スペース化を図りつつ、メインCPU及びサブCPUを十分に冷却することができるナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造、及びナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】メインCPU15aと該メインCPU15aよりも消費電力が少ないサブCPU15bを有するナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造であって、メインCPU15a及びサブCPU15bに対して熱伝導可能に接続される冷却部材17と、冷却部材17を冷却する冷却ファン41とを備え、冷却ファン41の回転軸がサブCPU15bよりもメインCPU15aに近い位置となるように冷却ファン41が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メインCPU及びサブCPUを有するナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造、及びナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パソコン(パーソナルコンピュータ)などにおいては、複数のCPUを実装した回路基板が用いられている。こうした回路基板は、近年では、車両用のナビゲーション装置などにも採用されている。そして、複数のCPUを用いて演算処理を並行して実行することにより、ナビゲーション装置の処理速度が高められるようになっている。
【0003】
ところで、こうした回路基板には、各々のCPUに隣接する位置に信号線を敷設する必要があるため、発熱量の大きい各々のCPUが互いに離間した位置に実装されるようになっている。したがって、回路基板を局所的に一箇所だけ冷却する構成では、全てのCPUを十分に冷却することができない虞があった。
【0004】
そこで、特許文献1に記載のCPUの冷却構造では、回路基板に実装された複数のCPUの各々の上面に熱伝導性の高い金属からなるヒートシンクベース部を当接させると共に、そのヒートシンクベース部の上面にフィン構造をなす放熱部を設けている。そして、発熱した各々のCPUからヒートシンクベース部を介して放熱部に熱がそれぞれ伝播した後、伝播した熱が放熱部のフィン構造を介して空気中に効率よく放熱されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−93960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数のCPUを回路基板に実装する場合には、回路基板からヒートシンクベース部に対して伝播される熱量が大きくなる。そのため、特許文献1に記載のCPUの冷却構造において、これら複数のCPUを十分に冷却するためには、放熱部のフィン構造の表面積を大きく確保する必要がある。その結果、放熱部のフィン構造のサイズが大きくなるため、CPUの冷却構造の設置スペースを増大させてしまうという問題があった。なお、こうした問題は、筐体内の部品の設置スペースに制約のある車両用のナビゲーション装置においては特に顕著となっていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、省スペース化を図りつつ、メインCPU及びサブCPUを十分に冷却することができるナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造、及びナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造は、メインCPUと該メインCPUよりも消費電力が少ないサブCPUを有するナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造であって、前記メインCPU及び前記サブCPUに対して熱伝導可能に接続される1つの熱伝導体と、前記熱伝導体を冷却する1つの冷却ファンとを備え、前記冷却ファンの回転軸が前記サブCPUよりも前記メインCPUに近い位置となるように前記冷却ファンが配置される。
【0009】
上記構成によれば、熱伝導体におけるメインCPU寄りの部位は、冷却ファンから送風される空気によって、サブCPU寄りの部位よりも相対的に大きく冷却される。そのため、メインCPUで発生した熱が熱伝導体に対して効率よく伝播されるため、メインCPUは重点的に冷却される。したがって、冷却ファンは、サブCPUよりも発熱量が相対的に大きいメインCPUを十分に冷却することができる。
【0010】
また同時に、こうした冷却ファンの稼動に伴って、熱伝導体には、サブCPU寄りの部位とメインCPU寄りの部位との間にサブCPU寄りの部位の方がメインCPU寄りの部位よりも高温になるという温度差を生じることがあり得る。すると、そのような温度差を生じた熱伝導体は、高温側となるサブCPU寄りの部位から低温側となるメインCPU寄りの部位に向けて熱を伝播させるようになる。その結果、今度はサブCPU寄りの部位が冷却されるようになり、サブCPUで発生した熱が熱伝導体に対して効率よく伝播される。したがって、冷却ファンは、メインCPUよりも発熱量が相対的に小さいサブCPUについても熱伝導体を介して間接的に冷却することができる。
【0011】
以上のように、上記構成によれば、単一の冷却ファンによって、メインCPU及びサブCPUの双方を十分に冷却することができる。そのため、各々のCPUに対して個別に対応するように冷却ファンを設ける場合と比較して、省スペース化を図ることができる。したがって、省スペース化を図りつつ、メインCPU及びサブCPUを十分に冷却することができる。
【0012】
また、本発明に係るナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造において、前記熱伝導体には、前記冷却ファンを組み付けるための組み付け部が当該熱伝導体に対して一体的に形成されている。
【0013】
上記構成によれば、冷却ファンを組み付けるための機構を熱伝導体とは別部材構成で設けることが不要となる。そのため、部品点数が低減されることにより、CPUの冷却構造の組み付け性を向上することができる。
【0014】
また、本発明に係るナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造において、前記熱伝導体には、前記冷却ファンから送風される空気が流動する排気流路が形成されている。
上記構成によれば、冷却ファンは、熱伝導体に形成された排気流路の内面から熱を放熱させることにより、回路基板に実装されたメインCPU及びサブCPUから熱が伝播して加熱された熱伝導体が冷却される。したがって、これらのCPUで発生した熱が熱伝導体に対して効率よく伝播されるため、両CPUを効率よく冷却することができる。
【0015】
また、本発明に係るナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造において、前記メインCPUは、前記排気流路の近傍に配置される。
上記構成によれば、冷却ファンは、熱伝導体において発熱量が相対的に大きいメインCPUの近傍となる部位を冷却する。したがって、メインCPUで発生した熱が熱伝導体に対して効率よく伝播されるため、メインCPUを効率よく冷却することができる。
【0016】
また、本発明に係るナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造において、前記サブCPUは、前記排気流路の近傍に配置される。
上記構成によれば、冷却ファンは、熱伝導体において発熱量が相対的に大きいメインCPUの近傍となる部位だけでなく、熱伝導体において発熱量が相対的に小さいサブCPUの近傍となる部位も冷却する。したがって、これらのCPUで発生した熱が熱伝導体に対して効率よく伝播されるため、両CPUを効率よく冷却することができる。
【0017】
また、本発明に係るナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造において、前記熱伝導体は、前記メインCPU及び前記サブCPUを実装した回路基板における回路パターンの形成面に対向する部位が平面状をなすように構成されている。
【0018】
一般に、回路基板から放出される放射ノイズを低減するために、回路基板上のグランド端子を熱伝導体に対して多点で接続させるオンボードコンタクトを、回路基板に対して新たに実装することがあり得る。このような場合であっても、上記構成によれば、新たなオンボードコンタクトに対する当接部を熱伝導体に対して容易に追加することができる。また同様に、回路基板に対して新たにCPUを実装した場合であっても、新たなCPUに対する当接部を熱伝導体に対して容易に追加することができる。
【0019】
また、本発明に係るナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造において、前記熱伝導体は、前記メインCPU及び前記サブCPUを実装した回路基板に対して締結される締結部が、前記メインCPUと前記サブCPUとの間となる位置に配設されている。
【0020】
上記構成によれば、熱伝導体は、メインCPU及びサブCPUから熱が伝播されて加熱された高温側の部位から、冷却ファンによって局所的に冷却された低温側の部位に向けて熱を伝播させる。この際、熱伝導体を伝播される熱の一部が締結部を介して熱伝導体から放熱される。そのため、メインCPU及びサブCPUから熱伝導体への熱の伝播が促進されることにより、これらのCPUを更に効率的に冷却することができる。
【0021】
また、熱伝導体は、メインCPUとサブCPUとの間に位置する締結部を介して回路基板に対して固定される。そして、熱伝導体を回路基板に対して固定することにより、回路基板及び熱伝導体は締結部の近傍の剛性が補強される。そのため、回路基板及び熱伝導体が、メインCPUとサブCPUとの間となる位置で反るように変形することを抑制できる。
【0022】
また、本発明に係るナビゲーション装置は、上記構成のナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造と、前記ナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造を内部に収容する筐体とを備え、前記熱伝導体には、前記冷却ファンから送風される空気が流動する排気流路が形成されると共に、前記排気流路は、当該排気流路から空気を排気するための排気口が、前記筐体の内外を貫通するように形成された貫通部の近傍に開口している。
【0023】
上記構成によれば、排気流路から排気された空気は、筐体に形成された貫通部を介して筐体の外部に排気される。そのため、排気流路を流動する空気が当該排気流路の内面から放熱される熱によって加熱された状態で筐体の内部に還流することはなく、筐体の内部に温度上昇が生じることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ナビゲーション装置の正断面図。
【図2】(a)は回路基板及び冷却部材を下方から見た分解斜視図、(b)は回路基板及び冷却部材を上方から見た分解斜視図。
【図3】図1の3−3線矢視断面図。
【図4】図1の4−4線矢視断面図。
【図5】(a)は回路基板及び冷却部材を上方から見た分解斜視図、(b)は回路基板及び冷却部材を下方から見た平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を車両用のナビゲーション装置に具体化した一実施形態を図1〜図4を参照しながら説明する。なお、以下における本明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合には図中における矢印に示す方向を示すものとする。
【0026】
図1に示すように、ナビゲーション装置10は、内部が中空の略箱体状をなす筐体11を備えている。そして、筐体11の内部における上方寄りの位置には、CDやDVD等のディスクを挿入するための挿入口を有するCD/DVDデッキ12が配置されている。また、筐体11内におけるCD/DVDデッキ12の下方には、チューナやカードスロット等を搭載した回路基板13が配置されている。また、筐体11内における回路基板13の下方には、地図データや電話番号データ等の各種のデータ、及びナビゲーション動作時に起動される各種のプログラムを記憶したハードディスク装置14が配置されている。
【0027】
また、筐体11内におけるハードディスク装置14の下方には、二つのCPU15a,15bを実装した回路基板16が配置されている。この回路基板16は、CPU15a,15bが実装された回路パターンの形成面16aを下方に向けた状態で配置されている。なお、本実施形態では、回路基板16に実装された二つのCPU15a,15bのうち、右方に位置するCPU15aがナビゲーション動作時における各種の処理を統括的に実行するメインCPU15aとして機能すると共に、左方に位置するCPU15bがメインCPU15aと協調して動作するサブCPU15bとして機能する。そのため、これらのCPU15a,15bのうち、右方に位置するメインCPU15aの方が、左方に位置するサブCPU15bよりも消費電力が相対的に大きいため、発熱量も相対的に大きくなっている。
【0028】
また、回路基板16には、当該回路基板16に実装された2つのCPU15a,15bを冷却するための熱伝導体としての冷却部材17が固定されている。冷却部材17は、これらのCPU15a,15bを実装した回路パターンの形成面16aに対して上下方向に対向するように配置されている。また、筐体11内における冷却部材17の下方には、チルト機構18が配置されている。そして、チルト機構18は、駆動モーター18aを駆動制御することにより、ディスプレイの傾斜角度を調整するようになっている。
【0029】
また、筐体11内における冷却部材17の下方には可動レール19が配置されている。可動レール19は、図4に示すように、平面視で略U字状をなすと共に、筐体11内における冷却部材17の下方の空間域を前側及び左右両側から囲繞するように配置されている。そして、可動レール19は、チルト機構18がディスプレイを傾斜させる際に、筐体11から前方に延出するように移動することによって、ディスプレイを下方から支持しつつディスプレイのチルト動作をガイドするようになっている。
【0030】
また、筐体11の右側壁部11aの略中央位置には、筐体11の内外を貫通する貫通孔20が設けられている。また、筐体11の右側壁部11aの内面には、当該貫通孔20における筐体11の内側に位置する開口の近傍に、排気ファン21が固定されている。そして、回路基板13、ハードディスク装置14、回路基板16、及びチルト機構18等の各部材から発する熱によって加熱された筐体11内の空気は、排気ファン21によって貫通孔20を通じて筐体11の外部に排気されるようになっている。
【0031】
次に、冷却部材17の構成について詳細に説明する。
図2(a)及び図2(b)に示すように、冷却部材17は、略平板状をなす平板部23と、当該平板部23の下面から下方に膨出した膨出部24とを有している。平板部23は、平面視において回路基板16と略同一形状をなしている。そして、平板部23は、回路基板16における回路パターンの形成面16aの全域を下方から覆うように配置される。なお、冷却部材17は、アルミニウム、銅、窒化アルミニウム等の金属材料から構成されている。そのため、冷却部材17は、熱伝導性が高く、且つ回路基板16に実装された電子素子から放出される放射ノイズを遮蔽可能な性質を有している。また、冷却部材17は、平板部23及び膨出部24がダイキャスト法によって一体的に成型されている。また、冷却部材17の膨出部24は、可動レール19によって囲繞される空間域に対して上方から進入するように配置されている。すなわち、冷却部材17の膨出部24は、可動レール19の設置スペースに対して上下方向に重畳するように配置されている。そのため、筐体11内における冷却部材17の設置スペースの省スペース化が図られるようになっている。
【0032】
平板部23の上面には、回路基板16に実装された各CPU15a,15bに対して上下方向においてそれぞれ対向する位置に、各CPU15a,15bの下面に対して当接する当接部25a,25bが設けられている。これらの当接部25a,25bは、略円柱状をなすと共に、平板部23の上面から上方に隆起している。
【0033】
また、平板部23における当接部25a,25bの上面とCPU15a,15bの下面との間には、グリースやコンパウンドといった流動性の高い熱伝達媒体が介設される。そして、熱伝達媒体は、当接部25a,25bの上面とCPU15a,15bの下面とを当接させた際に各面に存在する微細な凹凸形状に起因して双方の面の間に形成される微小な隙間に充填される。その結果、この熱伝導体によって当接部25a,25bとCPU15a,15bとの間の熱伝導性が高められるようになっている。
【0034】
また、平板部23の上面には、四角環状をなす環状凸部26a,26bが、各々の当接部25a,25bの周囲を個別に囲繞するように設けられている。これらの環状凸部26a,26bは、平板部23の上面から上方に隆起している。そして、当接部25a,25bとCPU15a,15bとの間に介在する熱伝達媒体は、これらの環状凸部26a,26bによって当接部25a,25bの周辺に漏洩することが規制されるようになっている。
【0035】
さらに、当接部25a,25bには、CPU15a,15bに対する当接面となる上面に、凹溝が縦横に網目状をなすように形成されている。そして、当接部25a,25bとCPU15a,15bとが当接した際には、当接部25a,25bの上面に塗布された余剰な熱伝達媒体が当接部25a,25bに設けられた凹溝内に進入する。その結果、当接部25a,25bとCPU15a,15bとの間に介在する熱伝達媒体が当接部25a,25bの周辺に漏洩することが更に確実に規制されるようになっている。
【0036】
また、回路基板16には、当該回路基板16における左右方向の略中央位置であって且つ当該回路基板16における前後方向の両端位置に、円形状の貫通孔27,28が上下方向に貫通するように形成されている。一方、冷却部材17には、略円柱状をなす凸部29,30が平板部23の上面から上方に突出するように設けられている。これらの凸部29,30は、平板部23の上面において上記の貫通孔27,28に対してそれぞれ対応する位置に形成されている。すなわち、これらの凸部29,30は、冷却部材17の平板部23に設けられた2つの当接部25a,25bにおける左右方向の略中央位置に配置されている。また、これらの凸部29,30の上面にはねじ孔29a,30aが形成されている。
【0037】
そして、回路基板16に形成された貫通孔27,28と平板部23に設けられたねじ孔29a,30aとを位置合わせした状態で、回路基板16の上面側(回路パターンの形成面16aとは反対側の裏面側)から固定ボルト31,32が貫通孔27,28に挿通される。また、回路基板16における回路パターンの形成面16aから下方に突出した固定ボルト31,32の軸部がねじ孔29a,30aに螺合される。その結果、冷却部材17は、回路基板16に対して固定されるようになっている。なお、固定ボルト31,32は、アルミニウム等の熱伝導性の高い金属材料によって構成されている。
【0038】
また、図2(a)(b)及び図3に示すように、膨出部24は、平板部23における右方寄りの位置であって、且つ平板部23に設けられた2つの当接部25a,25bのうち右方側に位置する当接部25aに対して平面視で対応する位置に設けられている。そして、この当接部25aに対して当接するメインCPU15aは、膨出部24の近傍に配置されている。また、膨出部24は、平面視において、前方側が半円状をなすと共に後方側が矩形状をなし、その全体形状は冷却部材17の前後方向の略全域に亘って前後方向に延びるように形成されている。
【0039】
そして、冷却部材17には、膨出部24の内面と平板部23の下面とによって空間域33が形成されると共に、この空間域33には冷却部材17の後面側に開口部34が形成されている。すなわち、本実施形態では、空間域33の開口部34は、平面視略U字状をなす可動レール19によって囲繞されていない後方側に向けて開口している。また、平板部23の下面において膨出部24に対して上下方向に対向する部位には複数の放熱フィン36が突設されている。これらの放熱フィン36は、平面視で千鳥状をなすように配置されている。なお、筐体11の後壁部11bには、空間域33の開口部34の近傍となる部位に、筐体11の内外を連通する貫通部としての連通孔37が筐体11の後壁部11bを前後方向に貫通するように形成されている。すなわち、空間域33の開口部34は、筐体11に設けられた連通孔37の近傍に位置している。
【0040】
また、平板部23の上面において、当該平板部23に設けられた2つの当接部25a,25bのうち、右方側に位置する当接部25aに対して前方に隣接する位置には、矩形状の通気口38が形成されている。この通気口38は、平板部23を上下方向に貫通している。また、膨出部24の下面には、この通気口38に対して上下方向で対向する位置に、略扇形形状をなす複数の通気口39が同一の軸線周りに等角度間隔となるように形成されている。これらの通気口39は、空間域33の内外を連通するように、膨出部24を上下方向に貫通している。また、膨出部24の下面には、これらの通気口39によって略円板状の底部40が区画形成されている。そして、この底部40に対して冷却ファン41が組み付けられるようになっている。すなわち、この底部40は、冷却ファン41を冷却部材17に組み付けるための組み付け部として機能する。
【0041】
そして、本実施形態では、冷却部材17及び冷却ファン41によって、回路基板16に実装された二つのCPU15a,15bを冷却するためのCPU15a,15bの冷却構造が構成されている。なお、冷却ファン41は、当該冷却ファン41の回転軸41aが通気口38の中心位置を上下方向に沿って延びるように配置されている。そのため、冷却ファン41の回転軸41aがサブCPU15bよりもメインCPU15aに近い位置となるように冷却ファン41が配置されている。
【0042】
次に、上記のように構成されたナビゲーション装置10の作用について、特に、冷却部材17が回路基板16に実装された2つのCPU15a,15bを冷却する際の作用に着目して以下説明する。
【0043】
さて、図3に示すように、冷却ファン41が稼動すると、冷却ファン41は、平板部23の上面に形成された通気口38、及び膨出部24の下面に形成された通気口39を通じて冷却部材17の外側から空間域33に空気を取り込む。そして、空間域33に取り込まれた空気は、前後方向に延びる空間域33の内面に沿うように後方に向けて流動した後、開口部34を通じて空間域33から排気される。その後、空間域33から排気された空気は、筐体11の後壁部11bに設けられた連通孔37を通じて筐体11の外部に排気される。すなわち、本実施形態では、冷却部材17に形成される空間域33は、冷却ファン41から送風される空気が流動する排気流路として機能する。そして、メインCPU15aはこの排気流路の近傍に配置される。
【0044】
ここで、冷却部材17の平板部23に設けられた各当接部25a,25bは、回路基板16に実装された各々のCPU15a,15bに対して熱伝達媒体を介して熱伝導可能に当接している。そのため、ナビゲーション装置10の動作時には、これらのCPU15a,15bから発生する熱が当接部25a,25bを介して冷却部材17の平板部23に伝達される。
【0045】
この点、本実施形態では、冷却ファン41から送風される空気は、空間域33を流動する過程で空間域33の内面からの放熱を促進させると共に、放熱フィン36の間の隙間を通過する過程で、放熱フィン36からの放熱を促進させる。そして、冷却部材17は、冷却ファン41から送風される空気が流動する膨出部24の近傍が局所的に冷却される。
【0046】
その結果、冷却部材17の平板部23は、当該平板部23に設けられた二つの当接部25a,25bのうち、膨出部24に対して平面視で対応する位置に設けられた当接部25aの近傍が、冷却ファン41の稼動に伴って冷却される。そのため、メインCPU15aで発生した熱がメインCPU15aから冷却部材17の当接部25aに対して効率よく伝播されるため、メインCPU15aが効率よく冷却される。
【0047】
また同時に、冷却部材17の平板部23には、当接部25bの近傍に位置する左方寄りの部位と、膨出部24の近傍に位置する右方寄りの部位との間に、当接部25bの近傍に位置する左方寄りの部位の方が膨出部24の近傍に位置する右方寄りの部位よりも高温になるという温度差が生じる。すると、図4に示すように、冷却部材17の平板部23では、高温側となる左方寄りの部位から低温側となる右方寄りの部位に向けて熱が伝播される。すなわち、冷却部材17の平板部23は、当該平板部23に設けられた二つの当接部25a,25bのうち、膨出部24に対して離間した位置に設けられた当接部25bの近傍も冷却ファン41の稼動に伴って冷却される。そのため、サブCPU15bで発生した熱がサブCPU15bから冷却部材17の当接部25bに対して効率よく伝播されるため、サブCPU15bも効率よく冷却される。
【0048】
また、冷却部材17の平板部23には、当該平板部23における熱の伝播経路上における途中位置、即ち、冷却部材17の平板部23における左方寄りの部位と右方寄りの部位との中間位置に凸部29,30が配設されている。そして、冷却部材17の平板部23では、高温側となる左方寄りの部位から低温側となる右方寄りの部位に向けて伝播される熱の一部が凸部29,30に伝播された後、凸部29,30に伝播した熱が固定ボルト31,32及び冷却部材17を介して空気中に放熱される。その結果、冷却部材17は、回路基板16に実装された両CPU15a,15bから伝播される熱を空気中に効率よく放熱する。したがって、これらのCPU15a,15bで発生した熱が冷却部材17の各当接部25a,25bに対して効率よく伝播されるため、これらのCPU15a,15bが更に効率よく冷却される。
【0049】
本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)冷却部材17におけるメインCPU15a寄りの部位は、冷却ファン41から送風される空気によって、サブCPU15b寄りの部位よりも相対的に大きく冷却される。そのため、メインCPU15aで発生した熱が冷却部材17に対して効率よく伝播されるため、メインCPU15aは重点的に冷却される。したがって、冷却ファン41は、サブCPU15bよりも発熱量が相対的に大きいメインCPU15aを十分に冷却することができる。
【0050】
また同時に、こうした冷却ファン41の稼動に伴って、冷却部材17には、サブCPU15b寄りの部位とメインCPU15a寄りの部位との間にサブCPU15b寄りの部位の方がメインCPU15a寄りの部位よりも高温になるという温度差を生じることがあり得る。すると、そのような温度差を生じた冷却部材17は、高温側となるサブCPU15b寄りの部位から低温側となるメインCPU15a寄りの部位に向けて熱を伝播させるようになる。その結果、今度はサブCPU15b寄りの部位が冷却されるようになり、サブCPU15bで発生した熱が冷却部材17に対して効率よく伝播される。したがって、冷却ファン41は、メインCPU15aよりも発熱量が相対的に小さいサブCPU15bについても冷却部材17を介して間接的に冷却することができる。
【0051】
(2)冷却部材17は、膨出部24の下面に形成された底部40が冷却ファン41を組み付けるための組み付け部として機能する。そのため、冷却ファン41を組み付けるための機構を冷却部材17とは別部材構成で設けることが不要となる。したがって、部品点数が低減されることにより、CPU15a,15bの冷却機構の組み付け性を向上することができる。
【0052】
(3)冷却部材17は、平板部23及び膨出部24が、ダイカスト法によって一体的に成型されている。そのため、冷却部材17は、平板部23及び膨出部24を別々の部品で設ける場合と比較して、部品点数が低減されることにより、冷却部材17の組み付け性を向上することができる。
【0053】
(4)冷却ファン41は、冷却部材17に形成された空間域33の内面から熱を放熱させることにより、回路基板16に実装された二つのCPU15a,15bから熱が伝播して加熱された冷却部材17を冷却する。したがって、これらのCPU15a,15bが発生した熱は冷却部材17に対して効率よく伝播されるため、これらのCPU15a,15bを効率よく冷却することができる。
【0054】
(5)冷却部材17は、回路基板16に実装された二つのCPU15a,15bのうち、発熱量が相対的に大きいメインCPU15aの近傍となる部位に、冷却ファン41から送風される空気が流動する空間域33が形成されている。そのため、冷却ファン41は、冷却部材17において発熱量の大きいメインCPU15aの近傍となる部位を局所的に冷却する。したがって、メインCPU15aが発生した熱は冷却部材17に対して効率よく伝播されるため、メインCPU15aを効率よく冷却することができる。
【0055】
(6)冷却部材17は、サブCPU15bから熱が伝播されて加熱された当接部25bを起点として、冷却ファン41によって冷却される空間域33の内面に向けて伝播される熱の一部を、固定ボルト31,32を介して冷却部材17から放熱させる。そのため、回路基板16に実装された二つのCPU15a,15bに対する冷却効率を更に高めることができる。
【0056】
(7)冷却部材17は、回路基板16における回路パターンの形成面16aの全域を覆うように配置されると共に、回路基板16に実装される電子素子からの放射ノイズを遮蔽可能な金属材料によって構成されている。そのため、冷却部材17は、回路基板16に実装されたCPU15a,15bを冷却するだけでなく、回路基板16に実装された電子素子からの放射ノイズを遮蔽する役割を果たす。そのため、筐体11内の省スペース化を図りつつ、回路基板16からの放射ノイズによってナビゲーション装置10の周辺機器が誤作動を生じることを回避できる。
【0057】
(8)冷却部材17の空間域33から排気された空気は、筐体11に形成された連通孔37を介して筐体11の外部に排気される。そのため、冷却ファン41から送風される空気は、空間域33の内面から放熱される熱によって加熱された状態で筐体11の内部に還流することはなく、筐体11の内部に温度上昇が生じることを回避できる。
【0058】
(9)冷却部材17は、回路基板16における回路パターンの形成面16aに対して対向する部位が平面状をなすように構成されている。そのため、回路基板16から放出される放射ノイズを低減するために、回路基板16に対して新たにオンボードコンタクトを実装する場合であっても、新たなオンボードコンタクトに対する当接部を冷却部材17に対して容易に追加することができる。また同様に、回路基板16に対して新たに実装された発熱部品を冷却部材17に対して当接させる場合であっても、新たな発熱部品に対応する当接部を容易に追加することができる。
【0059】
(10)冷却部材17の平板部23は、メインCPU15aに当接する当接部25aとサブCPU15bに当接する当接部25bとの中間位置に、固定ボルト31,32を螺合させるための凸部29,30が配設されている。そして、冷却部材17を回路基板16に対して固定することにより、回路基板16及び冷却部材17は凸部29,30の近傍の剛性が補強される。そのため、回路基板16及び冷却部材17が、メインCPU15aとサブCPU15bとの間となる位置で反るように変形することを抑制できる。また、回路基板16は、車両の走行時における振動が回路基板16に伝播した場合であっても、伝播した振動によって、回路基板16がメインCPU15aとサブCPU15bとの間で撓むように変形することを抑制できる。
【0060】
なお、上記実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、図5(a)に示すように、回路基板16における右方寄りの部位に双方のCPU15a,15bを実装すると共に、冷却部材17においてこれらのCPU15a,15bに対して平面視で対応する位置に膨出部24を配設する構成としてもよい。この場合、メインCPU15aに加えてサブCPU15bが膨出部24の近傍に配置される。すなわち、サブCPU15bは排気流路の近傍に配置される。なお、冷却部材17の平板部23には、当該平板部23における前後方向の略中央位置であって且つ当該平板部23における左右方向の両端位置に、固定ボルト31,32の締結部となる凸部29,30を形成することが望ましい。
【0061】
この構成によれば、図5(b)に示すように、冷却部材17の平板部23では、当該平板部23に設けられた二つの当接部25a,25bの近傍が冷却ファン41の稼動に伴って効率よく冷却される。そのため、これらのメインCPU15aで発生した熱が冷却部材17の当接部25aに対して効率よく伝播されるため、これらのCPU15a,15bを効率よく冷却することができる。
【0062】
また、冷却部材17の平板部23では、前方寄りの部位から後方寄りの部位に向けて伝播される熱の一部が凸部29,30に伝播された後、凸部29,30に伝播した熱が固定ボルト31,32を介して空気中に放熱される。そのため、冷却部材17は、回路基板16に実装された両CPU15a,15bから伝播される熱を空気中に効率よく放熱する。したがって、これらのCPU15a,15bで発生した熱が冷却部材17の各当接部25a,25bに対して効率よく伝播されるため、これらのCPU15a,15bを更に効率よく冷却することができる。
【0063】
さらに、この構成によれば、冷却部材17の平板部23は、回路基板16における回路パターンの形成面16aのうち右方寄りの部位のみに対応する形状となるため、冷却部材17の平板部23の大きさを縮小させることにより、筐体11内における冷却部材17の設置スペースを更に低減することができる。
【0064】
・上記実施形態において、冷却部材17は、熱伝導性の高い材料であれば、回路基板16に実装された電子素子からの放射ノイズを遮蔽する性質を有さない材料によって構成してもよい。
【0065】
・上記実施形態において、冷却部材17の平板部23は、メインCPU15aに当接する当接部25aとサブCPU15bに当接する当接部25bとの中間位置に放熱フィンを設ける構成としてもよい。
【0066】
・上記実施形態において、冷却部材17の膨出部24は、回路基板16に実装された双方のCPU15a,15bに対して上下方向において対向しない位置に配設される構成としてもよい。
【0067】
・上記実施形態において、冷却ファン41は、冷却部材17における空間域33の開口部34の近傍となる部位に組み付けられる構成としてもよい。
・上記実施形態において、筐体11は、冷却ファン41から送風される空気の排気口となる連通孔37を、当該筐体11の左側壁部や右側壁部に配設する構成としてもよい。
【0068】
・上記実施形態において、当接部25a,25bとCPU15a,15bとの間に介在させる熱伝達媒体として、熱伝導性の高いゴム状のシリコンを採用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10…ナビゲーション装置、11…筐体、15a…メインCPU、15b…サブCPU、16…回路基板、17…熱伝導体としての冷却部材、25a…当接部、25b…当接部、29…締結部としての凸部、30…締結部としての凸部、33…排気流路としての空間域、34…排気口としての開口部、37…貫通部としての連通孔、40…組み付け部としての底部、41…冷却ファン、41a…回転軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインCPUと該メインCPUよりも消費電力が少ないサブCPUを有するナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造であって、
前記メインCPU及び前記サブCPUに対して熱伝導可能に接続される1つの熱伝導体と、
前記熱伝導体を冷却する1つの冷却ファンと
を備え、
前記冷却ファンの回転軸が前記サブCPUよりも前記メインCPUに近い位置となるように前記冷却ファンが配置されることを特徴とするナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造において、
前記熱伝導体には、前記冷却ファンを組み付けるための組み付け部が当該熱伝導体に対して一体的に形成されていることを特徴とするナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造において、
前記熱伝導体には、前記冷却ファンから送風される空気が流動する排気流路が形成されていることを特徴とするナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造。
【請求項4】
請求項3に記載のナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造において、
前記メインCPUは、前記排気流路の近傍に配置されることを特徴とするナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造。
【請求項5】
請求項4に記載のナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造において、
前記サブCPUは、前記排気流路の近傍に配置されることを特徴とするナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載のナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造において、
前記熱伝導体は、前記メインCPU及び前記サブCPUを実装した回路基板における回路パターンの形成面に対向する部位が平面状をなすように構成されていることを特徴とするナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載のナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造において、
前記熱伝導体は、前記メインCPU及び前記サブCPUを実装した回路基板に対して締結される締結部が、前記メインCPUと前記サブCPUとの間となる位置に配設されていることを特徴とするナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のうち何れか一項に記載のナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造と、
前記ナビゲーション装置におけるCPUの冷却構造を内部に収容する筐体と
を備え、
前記熱伝導体には、前記冷却ファンから送風される空気が流動する排気流路が形成されると共に、前記排気流路は、当該排気流路から空気を排気するための排気口が、前記筐体の内外を貫通するように形成された貫通部の近傍に開口していることを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−211103(P2011−211103A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79740(P2010−79740)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】