説明

ナビゲーション装置

【課題】未登録道路を含む道路上の走行軌跡から登録道路外走行軌跡の座標を自動的かつ正確に検出できるナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】センサ1〜3からの信号に基づき車両の挙動を推測する測位手段41からの測位データと道路地図データ記憶手段43からの道路データとを照合して車両の現在位置を同定し、マッチング、ペンディングまたはフリー状態を表す照合結果を出力する道路照合手段42と、照合結果がフリー状態である区間の前後でマッチング状態にあった登録道路上に、走行軌跡のうちの登録道路と重複しない走行軌跡部分である登録道路外走行軌跡の検出開始地点Aおよび検出終了地点Bを設定し、地点A−B間の走行軌跡をそれらの間の登録道路の座標に一致するように座標変換した走行軌跡中の登録道路と不重複部分から登録道路外走行軌跡の座標を検出する検出手段45とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ナビゲーション装置に関し、特に道路データが登録されていない未登録道路上を車両が走行した際に、車両の走行軌跡から未登録道路の道路データを作成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路地図データに道路データが登録されていない未登録道路を車両が走行した場合に、その未登録道路の道路データを生成して道路地図データに登録するナビゲーション装置が知られている。例えば、特許文献1は、オフロードにおける走行軌跡を保存し、後に走行軌跡を読み出して表示できるようにしたナビゲーション装置およびオフロード走行時におけるナビゲーション方法を開示している。この特許文献1に開示されたナビゲーション装置は、道路データによって示される道路上で車両の現在位置をマップマッチングできない区間の走行軌跡に基づいて道路データを自動生成する。また、自動生成された道路データによって示される道路から道路データが登録されていない未登録道路へ車両が走行した際に、道路データによって示される道路外で車両の現在位置を同定すると、その地点を道路の分岐点として、分岐後の走行軌跡に基づいて道路データを自動生成する。
【0003】
また、特許文献2は、ナビゲーションシステムなどで用いられる道路地図データを作成するために適用される道路地図データの作成方法を開示している。この道路地図データ作成方法は、ユーザが手動設定した、道路地図データ上の位置が既知である第1の地点A(道路離脱位置)から、道路地図データ上の位置が既知である第2の地点B(道路復帰位置)までの未知の経路を走行することにより走行軌跡Mを取得し、この走行軌跡Mの終点を第2の地点Bに合致させるため第1の地点Aを中心とする回転操作および拡大縮小操作を施して車両の走行軌跡Mを補正し、この補正された走行軌跡に基づいて道路地図データを作成する。この道路地図データの作成方法によれば、道路地図データを作成すべき経路に従って車両を1回移動させるだけで、航空写真の撮影などを待つまでもなく、新設された道路などの正確な道路地図データを容易に作成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−357431号公報
【特許文献2】特開平06−201392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているような従来のナビゲーション装置は、以下の問題点を有する。すなわち、車両は道路上を走行することを前提にして、道路データと車両の現在位置とを照合するマップマッチングを行うように設計されているため、マッチング状態では道路データによって示される登録道路上から車両の現在位置を外し難く、また、フリー状態(マッチング状態ではない状態)で未登録道路を走行したときに、走行軌跡の近傍に並走する登録道路があると、その登録道路上に車両の現在位置を誤って同定することがある。一方、車両の現在位置の近傍に複数の道路がある場合には、車両の走行軌跡の形状との相似性および位置の整合性が所定距離以上継続して確認できるまで、登録道路上に車両の現在位置を同定しない。その結果、車両の現在位置が登録道路から外れたフリー状態になった区間の走行軌跡から未登録道路の座標および未登録道路が接続される登録道路を検出すると誤差が大きくなるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に開示された道路地図データの作成方法では、ユーザが操作したくても操作できない場合(交通量が多い道路)やユーザの操作忘れがあった場合には、未登録道路を検出できず、また、ユーザの操作ミス(不慣れな地域では、ユーザが操作した位置が正しいとは限らない)があると、未登録道路に接続される道路の指定を誤るという問題がある。
【0007】
この発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その課題は、道路地図データに登録されていない未登録道路を含む道路上を車両が走行した際に、車両の走行軌跡から登録道路外走行軌跡の座標を自動的かつ正確に検出できるナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るナビゲーション装置は、車両の挙動を検出するセンサと、センサからの信号に基づき車両の挙動を推測する測位手段と、道路データを記憶する道路地図データ記憶手段と、測位手段から推測結果として送られてくる測位データと道路地図データ記憶手段から読み出した道路データとを照合して車両の現在位置を同定し、該同定状態が、道路データによって示される登録道路上に確定されたマッチング状態、該登録道路上で確認中であるペンディング状態または該登録道路外に確定されたフリー状態のいずれであるかを表す照合結果データを出力する道路照合手段と、道路照合手段からの照合結果データがフリー状態を表している区間の前後でマッチング状態にあった登録道路上に、走行軌跡のうちの登録道路と重複しない走行軌跡部分である登録道路外走行軌跡の検出開始地点および検出終了地点を設定し、測位手段からの測位データに基づき生成された検出開始地点から検出終了地点までの走行軌跡の始点および終点の座標が検出開始地点および検出終了地点の座標に一致するように走行軌跡を座標変換し、該座標変換における走行軌跡の座標移動量、伸縮係数および回転角の各々が、車両の現在位置の精度、センサの補正精度から推定される所定の範囲内であれば、該座標変換された走行軌跡のうちの登録道路と重複しない走行軌跡部分から登録道路外走行軌跡の座標を検出する検出手段とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、フリー状態を表している区間の前後でマッチング状態にあった登録道路上の2地点間を未登録道路の検出区間として定め、道路照合手段における処理とは無関係に2地点間で推測された走行軌跡の始点および終点が登録道路上の2地点の座標に一致するように走行軌跡を座標変換し、該座標変換における走行軌跡の座標移動量、伸縮係数および回転角の各々が、車両の現在位置の精度、センサの補正精度から推定される所定の範囲内であれば、該座標変換された走行軌跡のうちの登録道路と相似形かつ登録道路の近傍で並走している走行軌跡部分を登録道路と重複すると判断して走行軌跡から除き、残りの走行軌跡から登録道路外走行軌跡の座標を検出するように構成したので、信頼性の低い登録道路外走行軌跡を検出しないようになるとともに、未登録道路の座標をより正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置で行われる割り込み処理を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置で行われる定時処理を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置の定時処理における未登録道路検出処理の詳細を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置において、未登録道路の検出開始地点と道路逸脱地点との位置関係を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置において、未登録道路の検出開始地点を設定するために作成される履歴データを説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置において、走行軌跡の補間点を設定する方法を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置において、未登録道路の検出終了地点とフリー状態からペンディング状態、マッチング状態に変化した地点との位置関係を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置において、未登録道路を含む走行軌跡から未登録道路の座標を検出する手順を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2に係るナビゲーション装置において、トンネルを通過した直後の位置とびにより走行軌跡が分断された場合に走行軌跡を一つに繋げる手順を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係るナビゲーション装置において、同一の未登録道路を複数回走行した際に走行軌跡がぶれる状態を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態3に係るナビゲーション装置において、未登録道路通過後に2方向の登録道路上でマッチング状態になった場合の未登録道路の検出終了地点の設定を説明するための図である。
【図13】この発明の実施の形態4に係るナビゲーション装置において、測位手段の方位誤差を考慮した道路逸脱地点の判断方法を説明するための図である。
【図14】この発明の実施の形態5に係るナビゲーション装置において、未登録道路の検出終了地点の設定方法を説明するための図である。
【図15】この発明の実施の形態6に係るナビゲーション装置において、未登録道路近傍で並走する登録道路上に道路照合手段が誤マッチングする状況および検出手段が検出終了地点の設定可否を判断する方法を説明するための図である。
【図16】この発明の実施の形態7に係るナビゲーション装置において、車両が右折または左折時にマッチング状態からフリー状態に変化したときの道路データ生成可否の判断方法を説明するための図である。
【図17】この発明の実施の形態8に係るナビゲーション装置において、未登録の高速ICを通って高速道路から一般道路に降りた場合の未登録道路の検出終了地点の設定方法を説明するための図である。
【図18】この発明の実施の形態9に係るナビゲーション装置において、未登録道路通過後に走行軌跡の近傍で並走する2つの道路種別の登録道路(高速道度,一般道路)が確認された場合の未登録道路の検出終了地点の設定方法を説明するための図である。
【図19】この発明の実施の形態11に係るナビゲーション装置において、未登録道路区間を含む道路を走行時に道路照合手段により同定された車両の現在位置の遷移を示すもので、道路逸脱候補地点および道路復帰候補地点の設定、および未登録道路区間の特定を行う方法を説明するための図である。
【図20】この発明の実施の形態11に係るナビゲーション装置の定時処理における未登録道路検出処理の詳細を示すフローチャート(その1)である。
【図21】この発明の実施の形態11に係るナビゲーション装置の定時処理における未登録道路検出処理の詳細を示すフローチャート(その2)である。
【図22】この発明の実施の形態12に係るナビゲーション装置において使用される測位データを説明するための図である。
【図23】この発明の実施の形態12の変形例に係るナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。このナビゲーション装置は、GPS(Global Positioning System)受信機1、角速度センサ2、速度センサ3、信号処理器4および表示手段5から構成されている。この発明のセンサは、GPS受信機1、角速度センサ2および速度センサ3から構成されている。
【0012】
GPS受信機1は、GPS衛星から送信されたGPS電波をGPSアンテナ1aで受信してGPS信号を生成する。角速度センサ2は、車両の旋回角を検出して角速度信号を生成する。速度センサ3は、車両の速度を検出して速度信号を生成する。GPS受信機1で生成されたGPS信号、角速度センサ2で生成された角速度信号および速度センサ3で生成された速度信号は、車両の挙動を表す信号として、信号処理器4に送られる。
【0013】
信号処理器4は、例えばコンピュータから構成されており、予めメモリ(図示は省略する)に記憶されている制御プログラムに従って動作することにより、ナビゲーションに必要な機能、例えば位置検出、経路探索、経路案内などを実現するための処理を行う。この信号処理器4の詳細は後述する。
【0014】
表示手段5は、例えば液晶ディスプレイ装置から構成されており、信号処理器4から送られてくる表示データにしたがって、その画面上に種々の情報を表示する。例えば、表示手段5は、地図上に車両の現在位置や経路などを重畳させて表示する。
【0015】
上述した信号処理器4は、測位手段41、道路照合手段42、道路地図データ記憶手段43、表示制御手段44、検出手段45および道路データ生成手段46から構成されている。
【0016】
測位手段41は、GPS受信機1から送られてくるGPS信号、角速度センサ2から送られてくる角速度信号および速度センサ3から送られてくる速度信号に基づき車両の挙動、具体的には、車両の現在位置、進行方位、速度などを推測する。この測位手段41によって推測された結果は、測位データとして道路照合手段42および検出手段45に送られる。
【0017】
道路照合手段42は、測位手段41から送られてくる測位データと道路地図データ記憶手段43から読み出した道路データとを照合して車両の現在位置を同定するとともに、同定状態が、道路データによって示される道路(以下、「登録道路」という)上に確定されたマッチング状態、登録道路上で確認中であるペンディング状態、または、登録道路外で確定されたフリー状態のいずれであるかを判断する。この道路照合手段42における判断結果は、照合結果データとして表示制御手段44および検出手段45に送られる。
【0018】
道路地図データ記憶手段43は、道路データを記憶する。この道路地図データ記憶手段43に記憶されている道路データは、道路照合手段42、表示制御手段44、検出手段45および道路データ生成手段46によって読み出される。また、この道路地図データ記憶手段43には、道路データ生成手段46で生成された道路データが格納される。
【0019】
表示制御手段44は、道路照合手段42から送られてくる照合結果データ、道路地図データ記憶手段43から読み出した道路地図データおよび道路データ生成手段46から送られてくる道路データに基づき、地図上に車両の現在位置や経路などを重畳させて表示するための表示データを生成する。この表示制御手段44で生成された表示データは、表示手段5に送られる。
【0020】
検出手段45は、測位手段41から送られてくる測位データ、道路照合手段42から送られてくる照合結果データおよび道路地図データ記憶手段43から読み出した道路データに基づき、道路地図データ記憶手段43に道路データが登録されていない未登録道路を車両が走行した際の走行軌跡から未登録道路の座標およびこの未登録道路が接続される登録道路の座標(この明細書および特許請求の範囲においては、単に「未登録道路の座標」と記載する)を自動的に検出する。この検出手段45で検出された未登録道路の座標は、道路データ生成手段46に送られる。
【0021】
道路データ生成手段46は、検出手段45から送られてくる未登録道路の座標と道路地図データ記憶手段43から読み出した道路データとに基づいて、未登録道路の道路データを生成する。この道路データ生成手段46で生成された道路データは、道路地図データ記憶手段43に送られて該道路地図データ記憶手段43に格納されるとともに、表示制御手段44に送られる。
【0022】
次に、上記のように構成される、この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置の動作の概略を説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置の測位手段41で行われる割り込み処理を示すフローチャートである。
【0023】
割り込み処理は、イベントに応答して、具体的には、GPS受信機1からGPS信号が送られてきた時に起動される。この割り込み処理では、GPS受信処理が実行される(ステップST201)。すなわち、測位手段41は、GPS受信機1から送られてくるGPS信号を受け取り、GPSデータとしてメモリ(図示は省略する)に記憶する。その後、シーケンスは割り込まれた位置にリターンし、割り込み処理は終了する。
【0024】
図3は、所定周期で起動される定時処理の概略を示すフローチャートである。この定時処理においては、まず、信号処理器4に組み込まれているプログラムの初期化が必要であるかどうかが調べられる(ステップST301)。車両のエンジンが始動されることによってナビゲーション装置に電力の供給が開始されたときに初期化が必要であると判断される。このステップST301において、初期化が必要であることが判断されると、次いで、プログラムの初期化処理が行われる(ステップST302)。すなわち、信号処理器4に組み込まれているプログラムが初期化される。一方、ステップST301において、初期化が必要でないことが判断されると、ステップST302の初期化処理はスキップされる。
【0025】
次いで、測位処理が行われる(ステップST303)。具体的には、測位手段41は、速度センサ3から送られてくる速度信号に基づき車両の速度と所定時間毎の移動距離を算出する。また、測位手段41は、角速度センサ2から送られてくる角速度信号に基づき所定時間毎の車両の旋回角を計算する。その後、測位手段41は、GPS受信機1から受信されてメモリに格納されているGPSデータ(現在位置、進行方位、速度、GPS電波受信状態など)と合わせて車両の挙動、具体的には、車両の現在位置、進行方位、速度など(DR位置、DR方位などと呼ぶ)を計算し、測位データとして道路照合手段42および検出手段45に送る。なお、測位手段41は、速度センサ3から送られてくる速度信号および角速度センサ2から送られてくる角速度信号を補正するセンサ補正の計算も行う。車両の挙動計算およびセンサ補正の具体的な処理内容については、例えば特許第3321096号公報に記載されているので必要に応じて参照されたい。
【0026】
次いで、道路照合処理が行われる(ステップST304)。すなわち、道路照合手段42は、道路地図データ記憶手段43から読み出した所定範囲の道路データと、測位手段41によって計算された車両の挙動を表す測位データとに基づいて、車両の現在位置(「M位置」と呼ばれる)を同定する。そして、道路照合手段42は、登録道路上で車両の現在位置を1つだけ同定できた場合は、同定状態をマッチング状態と判断し、登録道路上の複数の座標にそれぞれ設定された複数の候補位置の中から1つを選出して確認中である場合は同定状態をペンディング状態と判断し、登録道路外で車両の現在位置を同定した場合は同定状態をフリー状態と判断し、各状態を表す照合結果データを表示制御手段44および検出手段45に送る。なお、現在位置を同定する具体的な処理内容については、例えば特開2000−346663号公報に記載されているので必要に応じて参照されたい。
【0027】
次いで、未登録道路検出処理が行われる(ステップST305)。この未登録道路検出処理では、検出手段45によって未登録道路を検出する処理が行われる。この未登録道路検出処理の詳細は、後に説明する。次いで、未登録道路が検出されたかどうかが調べられる(ステップST306)。このステップST306において、未登録道路が検出されたことが判断された場合は、道路データ生成処理が行われる(ステップST307)。すなわち、道路データ生成手段46は、検出手段45で検出された未登録道路の座標から未登録道路の道路データを生成し、道路地図データ記憶手段43に記憶されている道路地図データに追加する。その後、未登録道路は「検出なし」に変更される。上記ステップST306において、未登録道路が検出されなかったことが判断された場合は、ステップST307の道路データ生成処理はスキップされる。
【0028】
次いで、表示制御処理が行われる(ステップST308)。すなわち、表示制御手段44は、道路照合手段42で同定された車両の現在位置および他の情報(図示していない処理によって作成された経路や案内図など)を道路地図データ記憶手段43から読出した道路地図データ上に重畳した表示データを作成し、表示手段5に送る。以上により、定時処理を終了する。
【0029】
次に、上記ステップST305で行われる未登録道路検出処理の詳細を、図4に示すフローチャートおよび図5〜図9に示す説明図を参照しながら説明する。
【0030】
未登録道路検出処理では、まず、未登録道路の検出開始地点(地点A)が未設定であるかどうかが調べられる(ステップST401)。このステップST401において、検出開始地点(地点A)が未設定であることが判断されると、道路逸脱判断処理が行われる(ステップST402)。この道路逸脱判断処理においては、検出手段45は、道路照合手段42から送られてくる照合結果データによって示される同定状態がマッチング状態からフリー状態に変化した時に車両が登録道路から逸脱を開始したと判断し、それ以外の場合は逸脱を開始したと判断しない。
【0031】
次いで、上記ステップST402の判断結果に基づき、逸脱が開始されたかどうかが調べられる(ステップST403)。このステップST403において、逸脱が開始されていないことが判断されると、検出開始地点候補履歴が作成される(ステップST406)。すなわち、検出手段45は、ステップST404における検出開始地点設定処理を実行できるように、道路照合手段42から送られてくる照合結果データがマッチング状態を示しているときに、図6(a)に示すように、一定距離毎に測位手段41の出力および道路照合手段42の出力を、検出開始地点候補履歴として記録する。検出開始地点候補履歴として記録される履歴データは、図6(b)に示すように、開始地点履歴ID、日時、測位結果および道路照合結果から構成されている。測位結果には、測位手段41から測位データとして送られてくる位置、方位、速度、移動距離、旋回角、GPS電波受信状況などが含まれる。また、道路照合結果には、道路照合手段42から照合結果データとして送られてくる位置、方位、照合状態、道路データなどが含まれる。その後、未登録道路検出処理は終了する。
【0032】
一方、上記ステップST403において、逸脱が開始されたことが判断されると、検出開始地点が設定される(ステップST404)。すなわち、検出手段45は、図5に示すように、フリー状態になる直前のマッチング状態(実際には誤マッチング状態)であったときの登録道路上の位置(道路逸脱地点:地点A”)から所定距離以上後方の車両が走行した地点Aを検出開始地点に設定する。次いで、走行軌跡の初期化が行われる(ステップST405)。すなわち、検出手段45は、ステップST406で作成された検出開始地点候補履歴から走行軌跡の始点と補間点を生成する。始点は、検出開始地点(地点A)に対応する地点であり、補間点は、後述する図7(a)に示す条件を満たす地点である。その後、未登録道路検出処理は終了する。
【0033】
上記ステップST401において、未登録道路の検出開始地点(地点A)が設定されていることが判断されると、次いで、走行軌跡が生成される(ステップST407)。すなわち、検出手段45は、図7(a)に示すように、走行軌跡の補間点から所定距離以上走行し、かつ所定角度以上旋回したときに、測位手段41からの測位データと道路照合手段42からの照合結果データとを用いて新たな補間点を設定する。このようにして補間点を順次設定することにより、図7(b)に破線で示すような走行軌跡が得られる。走行軌跡は、図7(c)に示すように、始点N1から補間点N2〜N6を順次結ぶ直線によって折れ線近似することにより作成される。
【0034】
次いで、検出終了判断が行われる(ステップST408)。すなわち、検出手段45は、道路照合手段42から送られてくる照合結果データによって示されるマッチング状態が所定距離以上継続したときに検出終了と判断し、それ以外は検出終了と判断しない。次いで、上記ステップST408の判断結果に基づき検出終了であるかどうかが調べられる(ステップST409)。このステップST409において、検出終了であることが判断されると、未登録道路検出処理は終了する。
【0035】
一方、ステップST409において、検出終了でないことが判断されると、次いで、検出終了地点が設定される(ステップST410)。すなわち、検出手段45は、図8に示すように、道路照合手段42が道路上に同定している車両の現在位置の座標を検出終了地点(地点B)として設定する。なお、図8は、未登録道路の検出終了地点(地点B)と道路照合手段42による同定状態がフリー状態からペンディング状態、マッチング状態と順次変化した地点との位置関係を示している。
【0036】
次いで、走行軌跡座標変換が行われる(ステップST411)。すなわち、検出手段45は、図9(a)に示すように、未登録道路部分を含む走行軌跡の始点が未登録道路の検出開始地点(地点A)の座標に合致するように走行軌跡を平行移動し、その後、走行軌跡の終点が未登録道路の検出終了地点(地点B)の座標に合致するようにアフィン変換(伸縮・回転移動)する。これにより、図9(b)に示すような、未登録道路を含む走行軌跡が得られる。アフィン変換は、下式にしたがって行われる。アフィン変換による走行軌跡の座標移動量、伸縮係数および回転角の各々が、車両の現在位置の精度、角速度センサ2および速度センサ3の補正精度から推定される所定の範囲内であれば検出成功とされ、いずれかが範囲外になれば検出失敗とされる。
【0037】
S=|PF2-P0|/|PF1-P0|
α=tan-1{(yF2-y0)/(xF2-x0)}-tan-1{(yF1-y0)/(xF1-x0) [rad]
xN2=S{(xN1-x0)cosα-(yN1-y0)sinα}+x0
yN2=S{(xN1-x0)sinα+(yN1-y0)cosα}+y0
ここで、
S:伸縮係数
α:回転角(反時計周りが正、時計周りが負の符号) [rad]
0:始点位置(x0、y0
F1、PF2:修正前、修正後の終点位置(xF1、yF1)、(xF2、yF2
0、y0:始点のx,y座標 [m]
F1、yF1:修正前の終点のx,y座標 [m]
F2、yF2:修正後の終点のx,y座標 [m]
【0038】
次いで、登録道路と走行軌跡との重複区間の検出が行われる(ステップST412)。すなわち、検出手段45は、図9(b)に示すアフィン変換後の走行軌跡の補間点間を結ぶ直線に対して、図9(c)に示すように、登録道路(実線で示す)上の任意の座標を地点Aから進路前方および地点Bから進路後方に順次辿りながら投影し、投影距離が所定値以下の場合は走行軌跡(破線で示す)が登録道路と重複していると判断して、登録道路と重複する走行軌跡部分を削除する。そして、走行軌跡と登録道路とが重複する部分が途切れた地点を、それぞれ道路離脱地点(地点A’)および道路復帰地点(地点B’)として検出する。その後、検出手段45は、図9(d)に示すように、残った走行軌跡の長さ、つまり道路離脱地点(地点A’)と道路復帰地点(地点B’)との間が所定距離以上であれば検出成功と判断し、残った走行軌跡の座標から未登録道路の座標を検出する。一方、残った走行軌跡の長さが所定距離より小さければ、検出失敗と判断する。なお、登録道路を地点A’または地点B’まで辿れない場合は、登録道路の相似性および位置と走行軌跡とを比較して地点A’および地点B’を検出するように構成できる。
【0039】
次いで、上記ステップST411およびステップST412の両判断結果に基づき検出成功であるかどうかが調べられる(ステップST413)。このステップST413において、両方とも検出成功であることが判断されると、未登録道路の座標が計算される(ステップST414)。一方、ステップST413において、少なくとも一方が検出失敗であることが判断されると、ステップST414の処理はスキップされる。次いで、未登録道路の検出開始地点および検出終了地点がクリアされる(ステップST415)。これにより、次の未登録道路を検出できる状態に設定される。その後、未登録道路検出処理は終了する。
【0040】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置によれば、フリー状態を表している区間の前後でマッチング状態にあった登録道路上の2地点間、つまり検出開始地点(地点A)と検出終了地点(地点B)との間を未登録道路の検出区間として定め、道路照合手段42における処理とは無関係に2地点間で推測された走行軌跡の始点および終点が2地点の座標に一致するように走行軌跡を座標変換し、登録道路と相似形かつ登録道路の近傍で並走している走行軌跡部分を登録道路と重複すると判断して走行軌跡から除き、残りの走行軌跡から未登録道路の座標を検出するように構成したので、未登録道路の検出に成功する確率を向上させることができるとともに、未登録道路の座標の検出をより正確に行うことができる。その結果、未登録道路を含む経路探索や経路誘導を実施できる。
【0041】
また、従来のナビゲーション装置では、例えば、本線から未登録道路である側道に進入した際に、本線上で車両の現在位置が同定し続けられ、側道上の本来の現在位置から大きく離れた位置になった後に、側道上に現在位置が修正されるため、本線から外れた直後から未登録道路の検出を開始しても、実際に本線から離脱した位置とは大きく乖離する場合がある。これに対し、実施の形態1に係るナビゲーション装置によれば、道路照合手段42からの照合結果データによって示される同定状態がマッチング状態からフリー状態に変化する直前の登録道路上の座標から所定距離だけ後方の車両が走行した地点Aから未登録道路の検出を開始するように構成したので、車両が未登録道路を走行し始めたにも拘らず、道路照合手段42が登録道路上に車両の現在位置をしばらく誤マッチングし続けた場合であっても、未登録道路が登録道路に接続される地点、つまり道路逸脱地点(地点A’)を正確に検出することができる。
【0042】
また、この実施の形態1に係るナビゲーション装置においては、未登録道路区間の走行軌跡を誤検出しないように道路照合手段42のマッチング状態の連続性を長く設定すると検出開始地点(地点A)または検出終了地点(地点B)の設定が遅れ、登録道路と重複する走行軌跡が長く生成され、この生成された走行軌跡から未登録道路の座標を判断すると登録道路へ接続される地点を誤るため、登録道路と重複する走行軌跡部分を削除するように構成されている。その結果、登録道路上を走行した区間が長くなっても、登録道路と重複する走行軌跡および未登録道路が登録道路に接続される道路逸脱地点(地点A’)および道路復帰地点(地点B’)を簡単に検出できる。また、逆に、未登録道路が登録道路に接続される地点A’および地点B’から離れた登録道路上にマッチング状態が確実な地点Aおよび地点Bを設定できるので、未登録道路の検出に成功する確率を向上させることができる。
【0043】
実施の形態2.
上述した実施の形態1に係るナビゲーション装置において、角速度センサ2のバイアスに誤差が生じたままで未登録のトンネルを通過する場合、GPS受信機1からのGPS信号および道路地図データ記憶手段43からの道路データを基準としてバイアスドリフトを補正することができない。そのため、車両の進行方位誤差および位置誤差が徐々に拡大し、トンネルを通過した直後にGPS受信機1からGPS信号が得られると、このGPS信号に基づき車両の現在位置が修正される。この場合には、図10(a)に示すように、トンネルを通過した直後に「位置とび」が生じて走行軌跡が分断されるため、分断された状態の走行軌跡の座標から道路データを生成すると、その道路データに基づく道路の形状および座標が不正確になる。
【0044】
この実施の形態2に係るナビゲーション装置は、このような問題を解消するものであり、未登録道路の途中にトンネルのようなGPS電波の連続遮蔽区間があり、このGPS電波の連続遮蔽区間を通過した直後に走行軌跡が不連続になるような位置修正が行われた場合であっても、走行軌跡から未登録道路の座標を正確に検出できるようにしたものである。
【0045】
この実施の形態2に係るナビゲーション装置においては、検出手段45は、車両の移動距離とGPS電波の遮蔽状態(GPS電波受信状況)を走行軌跡に関連付けて記録するとともに、GPS電波の連続遮蔽区間を通過した直後に走行軌跡の連続性を、走行軌跡の座標更新量と速度センサ3からの速度信号に基づき計算された移動距離とを比較することにより確認する。そして、図10(a)に示すように、両者に所定値以上の違いがある場合に走行軌跡が分断されたと判断し、図10(b)に示すように、走行軌跡が分断された区間だけ先に部分的にトンネルの入口地点をアフィン変換の回転中心として座標変換して走行軌跡を1つに繋げる修正を行う。その後、図10(c)に示すように、検出開始地点(地点A)および検出終了地点(地点B)の座標に一致するように走行軌跡全体を、地点Aをアフィン変換の回転中心として再度座標変換する。その後、実施の形態1と同様の処理により未登録道路の座標が計算される。
【0046】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係るナビゲーション装置によれば、GPS電波の遮蔽区間で位置精度が低下して走行軌跡が分断されても、分断された区間だけ先に部分的に座標変換して走行軌跡を1つに繋げ、その後、走行軌跡が検出開始地点(地点A)と検出終了地点(地点B)との間の登録道路の座標に一致するように走行軌跡全体を座標変換するように構成したので、GPS電波の遮蔽区間を走行した際の未登録道路の検出に成功する確率および未登録道路の座標の精度を向上させることができる。
【0047】
実施の形態3.
図11に示すように、車両が同じ道路を走行しても、速度センサ3、角速度センサ2およびGPS受信機1の誤差に起因して走行軌跡の座標がぶれることから、図12に示すように、未登録道路が登録道路に接続される道路復帰地点(地点B’)の座標は道路方向に誤差範囲を有する。これに関して、実施の形態1に係るナビゲーション装置においては、検出手段45による検出終了地点(地点B)の設定タイミングに関して、検出手段45は、図4のステップST410において、道路照合手段42が登録道路上に同定している車両の現在位置の座標に地点Bを設定する。
【0048】
これに対して、この実施の形態3に係るナビゲーション装置においては、検出手段45は、車両が右折または左折した際に、右折または左折前後の2方向の登録道路上で所定距離以上連続してマッチング状態にある場合に検出終了地点(地点B)を設定する。
【0049】
この実施の形態3に係るナビゲーション装置によれば、右折または左折前後の道路で所定距離以上連続してマッチング状態にある場合に登録道路上の車両の現在位置の座標に検出終了地点(地点B)を設定するので、図11に示すような走行軌跡のぶれがあっても、未登録道路が接続される登録道路の座標を正確に検出できる。
【0050】
実施の形態4.
上述した実施の形態1に係るナビゲーション装置においては、測位手段41で推測された車両の進行方位に誤差が生じると、道路照合手段42は登録道路から車両が逸脱したと誤った判断を行い易くなり、その結果、誤って生成された未登録道路が増加する。このような誤った未登録道路が増加すると、ユーザは、その未登録道路を削除する操作が必要になり、ユーザの削除操作が遅れると、真に未登録道路を追加したいときに、道路地図データ記憶手段43の記憶容量の不足により未登録道路を登録できない場合が生じる。この実施の形態4に係るナビゲーション装置は、このような問題を解消するものであり、登録道路を走行中に測位手段41で推測された車両の進行方位に誤差が生じても、登録道路外を走行したと判断して未登録道路の走行軌跡を誤検出しないようにしたものである。
【0051】
すなわち、実施の形態1に係るナビゲーション装置においては、検出手段45による検出終了地点(地点B)の設定タイミングに関して、検出手段45は、図4のステップST402において、道路照合手段42からの照合結果データによって示される同定状態がマッチング状態からフリー状態に変化した時に車両が登録道路から逸脱を開始したと判断し、ステップST404において、フリー状態になる直前のマッチング状態であったときの登録道路上の位置、つまり道路逸脱地点(地点A”)から所定距離以上後方の車両が走行した地点Aを検出開始地点に設定する。
【0052】
これに対し、実施の形態4に係るナビゲーション装置においては、道路照合手段42からの照合結果データによって示される同定状態がマッチング状態を示している場合に、検出手段45は、図13(a)に示すように、所定距離分の走行軌跡を座標変換し、図13(b)に示すように、座標変換後にDR位置および補間点と、これらに対応する登録道路上のマッチング位置との間の距離を算出し、この算出した距離と道路幅員とを比較することにより、走行軌跡が道路幅員内に収まるか否かを調べ、走行軌跡が道路幅員内に収まらないと判断した場合に、車両の現在位置の座標に道路逸脱地点(地点A”)を設定し、かつ所定距離だけ後方の登録道路上に地点Aを設定する。
【0053】
以上説明したように、実施の形態4に係るナビゲーション装置によれば、所定距離分の走行軌跡を座標変換して道路幅員内に収まるか否かを判断し、この判断結果に基づき道路逸脱地点(A”)および検出開始地点(地点A)を設定するように構成したので、本来の道路離脱地点(地点A’)をより正確に検出できる。また、速度センサ3および角速度センサ2の誤差ならびにGPS受信機1の誤差の補正不足から測位手段41で推測された車両の進行方位に誤差を生じ、車両の進行方位と登録道路の向きが異なっても、道路幅員内に収まる走行軌跡であればマッチング状態と判断されるので、未登録道路の誤検出が減少し、誤って生成された未登録道路をユーザが削除する操作を減少させることができる。
【0054】
実施の形態5.
上述した実施の形態1に係るナビゲーション装置においては、検出手段45による検出終了地点(地点B)の設定タイミングに関して、検出手段45は、図4のステップST408において、道路照合手段42がマッチング状態を所定距離以上継続したときに検出終了と判断し、ステップST410において、道路照合手段42が登録道路上に同定している車両の現在位置の座標に地点Bを設定するように構成されている。
【0055】
これに対し、実施の形態5に係るナビゲーション装置においては、図14に示すように、マッチング状態において走行軌跡と登録道路の形状が所定距離以上継続して相似形であることをステップST408における検出終了判断の条件に追加し、この条件に該当したときに、道路照合手段42は登録道路上に同定している車両の現在位置の座標に検出終了地点(地点B)を設定する。
【0056】
この実施の形態5に係るナビゲーション装置によれば、道路照合手段42によってフリー状態が示されているときに、検出手段45が登録道路の近傍で推測した車両の現在位置を誤って登録道路に引き込むようにマップマッチングしても、検出手段45は、走行軌跡形状との相似性および位置の整合性が所定距離以上継続して確認できた登録道路上の車両の現在位置の座標に検出終了地点(地点B)を設定するので、未登録道路が接続される登録道路の座標の検出をより高精度で行うことができる。
【0057】
実施の形態6.
上述した実施の形態1に係るナビゲーション装置においては、検出手段45による検出終了地点(地点B)の設定タイミングに関して、検出手段45は、図4のステップST408において、道路照合手段42がマッチング状態を所定距離以上継続したときに検出終了と判断し、ステップST410において、道路照合手段42が登録道路上に同定している車両の現在位置の座標に地点Bを設定するように構成されている。
【0058】
これに対し、実施の形態6に係るナビゲーション装置においては、図15(a)に示すように、未登録道路区間の前後の登録道路上で同定状態がマッチング状態からフリー状態、ペンディング状態、マッチング状態へと順次遷移した際に、未登録道路区間より前の登録道路上の地点Aから生成した走行軌跡が、速度センサ3の距離誤差または角速度センサ2の旋回角誤差の予測誤差から想定される位置誤差の範囲内(例えば図15(b)に示すL1、L2およびβが所定の関係を有する)で未登録道路区間より後の登録道路上と形状および座標ともに整合性があることを条件に、道路照合手段42は登録道路上に同定している車両の現在位置の座標に検出終了地点(地点B)を設定する。
【0059】
この実施の形態6に係るナビゲーション装置によれば、道路照合手段42がフリー状態を示しているときに、登録道路の近傍で推測した車両の現在位置を誤って登録道路に引き込むようなマップマッチングを行っても、検出手段45は、走行軌跡形状との相似性および位置の整合性が所定距離以上継続して確認できた登録道路上の車両の現在位置の座標に検出終了地点(地点B)を設定するので、未登録道路に接続される登録道路の座標の検出をより高精度で行うことができる。
【0060】
実施の形態7.
上述した実施の形態1に係るナビゲーション装置において、直線区間で進行方向に所定値以上の位置誤差があると、その後に右折または左折した際に、登録道路の交差点と異なる地点で推測した車両の進行方位が変わるためマッチング状態からフリー状態になり、誤った未登録道路の検出が開始される。その結果、誤って生成された未登録道路が増加するので、ユーザは、その未登録道路を削除する操作が必要になり、ユーザの削除操作が遅れると、真に未登録道路を追加したいときに、道路地図データ記憶手段43の記憶容量の不足により未登録道路を登録できない場合が生じる。この実施の形態7に係るナビゲーション装置は、このような問題を解消するものであり、直線区間の道路走行中に進行方向の位置誤差があったとしても、右折または左折時に不要な道路データを自動生成しないようにしたものである。
【0061】
すなわち、上述した実施の形態1に係るナビゲーション装置においては、登録道路と重複する部分を削除した走行軌跡から未登録道路の道路データを生成することに関して、図4のステップST412においては、検出手段45は、登録道路と重複する走行軌跡を削除し、残った走行軌跡の長さが所定距離以上であれば検出成功として、残った走行軌跡の座標から未登録道路の座標を検出し、また、残った走行軌跡の長さが所定値以下であれば、検出失敗とする。
【0062】
これに対し、実施の形態7に係るナビゲーション装置では、図16に示すように、車両が右折または左折した近傍に交差点が存在する場所において、道路照合手段42からの照合結果データによって示される同定状態が、車両の右折または左折挙動に応じて、マッチング状態からフリー状態に移行し、その後、ペンディング状態を経てマッチング状態に戻った場合に、車両の現在位置の精度、ならびに角速度センサ2および速度センサ3の補正精度から推定される走行軌跡の座標移動量、伸縮係数および回転角の範囲内で走行軌跡の座標変換(平行移動、回転、伸縮)がなされた場合は、検出手段45は、車両の右折または左折前の登録道路を走行時の道路方向の位置誤差により、右折または左折に合わせてマッチング状態からフリー状態になったものと判断して、未登録道路の検出を取りやめる。
【0063】
この実施の形態7に係るナビゲーション装置によれば、車両の現在位置の精度および速度センサ3の補正精度から推定される走行軌跡の伸縮係数の範囲内で走行軌跡の座標変換(伸縮)がなされたか否かを判断するように構成したので、不要な未登録道路を検出し難くなる。その結果、ユーザは、不要な未登録道路を削除する操作を頻度高く行う必要がない。
【0064】
実施の形態8.
従来のナビゲーション装置では、誤マッチングを防止するために、例えば、高速道路と一般道路の相互接続は高速インターチェンジ(以下、「IC」と略する)に制限されている。このため、高速ICが未登録道路の場合には、未登録の高速ICを通って高速道路から一般道路に降りた後に、一般道路上で車両の現在位置を同定してもペンディング状態のままでマッチング状態に変化しない場合がある。この場合には未登録道路の検出終了地点の設定が遅くなり、登録道路と重複する走行軌跡が長くなるため、未登録道路が登録道路に接続される地点の検出が難しくなる。この実施の形態8に係るナビゲーション装置は、このような問題を解消するものであり、高速ICが未登録道路であっても、未登録道路を検出するようにしたものである。
【0065】
すなわち、上述した実施の形態1に係るナビゲーション装置においては、検出手段45による未登録道路の検出終了地点(地点B)の設定タイミングに関して、検出手段45は、図4のステップST408において、道路照合手段42がマッチング状態を所定距離以上継続したときに検出終了と判断し、ステップST410において、道路照合手段42が登録道路上に同定している車両の現在位置の座標に地点Bを設定するように構成されている。
【0066】
これに対し、実施の形態8に係るナビゲーション装置においては、図17に示すように、未登録の高速ICを車両が通過して高速道路から一般道路へ乗り入れたとき、または、一般道路から高速道路へ乗り入れたときに、高速ICを通過した後の登録道路上を車両が所定距離以上走行しても道路照合手段42がペンディング状態のまま変化しない場合には、検出手段45は、高速ICに進入する前の登録道路上の検出開始地点(地点A)から検出を開始した走行軌跡とペンディング状態中の道路とが所定距離以上にわたって重なるか、または近傍で並走する登録道路がある場合には、その登録道路上に検出終了地点(地点B)を設定する。
【0067】
この実施の形態8に係るナビゲーション装置によれば、車両の現在位置を誤った登録道路上へ同定することを防止するために、例えば、高速道路と一般道路の相互接続は高速ICに制限する、という道路照合手段43の処理方法および特性を変えずに、未登録の高速ICを表す道路データを生成できる。
【0068】
実施の形態9.
高速ICまたは高速ジャンクション(以下、「JCT」と略する)が未登録道路の場合には、未登録道路を走行した後の登録道路と走行軌跡の座標が重なったり、または走行軌跡の近傍に並走する登録道路があっても、道路照合手段42は、同定状態をマッチング状態にせずにペンディング状態のまま登録道路上を走行するので、走行軌跡の検出終了地点の設定が遅れる。また、道路照合手段42が接続し易い同じ道路種別の登録道路が走行軌跡の近傍に並走していれば、その登録道路上に誤マッチングする。この実施の形態9に係るナビゲーション装置は、このような問題を解消するものであり、高速ICまたは高速JCTが未登録道路であっても、車両の走行に合わせて一般道路と高速道路の接続、一般道路同士の接続、高速道路同士の接続の妥当性を判断して、未登録道路を検出できるようにしたものである。
【0069】
すなわち、上述した実施の形態1に係るナビゲーション装置においては、検出手段45による未登録道路の検出終了地点(地点B)の設定タイミングに関して、検出手段45は、図4のステップST408において、道路照合手段42がマッチング状態で所定距離以上継続したときに検出終了と判断し、ステップST410において、道路照合手段42が登録道路上に同定している車両の現在位置の座標に地点Bを設定するように構成されている。
【0070】
これに対し、実施の形態9に係るナビゲーション装置においては、図18に示すように、未登録道路へ進入する前の登録道路上の地点Aから検出を開始した走行軌跡の近傍の所定範囲の道路データを道路地図データ記憶手段43から検索し、走行軌跡の近傍に並走する道路が高速道路と一般道路の両方であると確認できた場合には、道路種別および同定状態に係わらず、走行軌跡の形状との相似性または位置において両者に顕著な有意差がでるまで判断を保留し、有意差がでたら走行軌跡と整合性が確認できた登録道路上に検出終了地点(地点B)を設定する。
【0071】
この実施の形態9に係るナビゲーション装置によれば、高速ICまたは高速JCTが未登録道路の場合には、道路照合手段42は、未登録道路を走行する前の登録道路と同じ道路種別の登録道路が車両の現在位置の近傍で並走していると、その登録道路上へ誤マッチングする場合があるが、このような場合であっても、走行軌跡の形状に合致する登録道路を道路種別に無関係に検出できる。
【0072】
実施の形態10.
長い距離の未登録道路を走行の途中で、例えば休憩によって車両がエンジンオフされると、エンジンオン後に未登録道路の検出を継続することできない。この実施の形態10に係るナビゲーション装置は、このような問題を解消するものであり、未登録道路部分の走行軌跡を検出中に車両がエンジンオフされても、エンジンオンされたときに未登録道路の検出処理を再開できるようにしたものである。
【0073】
すなわち、上述した実施の形態1に係るナビゲーション装置においては、未登録道路の検出開始地点(地点A)を設定して未登録道路を検出している途中で車両のエンジンが停止された場合について言及されていないが、この実施の形態10に係るナビゲーション装置は、不揮発メモリ(図示は省略する)を備え、所定時間が経過する毎に、または所定距離を移動する毎に、未登録道路検出に関する諸データを測位手段41により算出された測位データおよび道路照合手段42により算出された照合結果データと合わせて不揮発メモリに記憶する。そして、エンジンオン直後に、不揮発メモリに未登録道路の検出中を示すデータが記録されていた場合に、エンジンオン後にGPS受信機1で受信された車両位置がエンジンオフ前の車両位置の所定範囲内にあれば、未登録道路検出の再開に支障がないと判断されて、未登録道路検出が再開される。また、エンジンオン後にGPS受信機1で受信された車両位置がエンジンオフ前の車両位置の所定範囲外にあれば、エンジンオフ中に車両がフェリーなどで移動され、未登録道路検出の再開に支障があると判断されて、未登録道路検出は中止される。
【0074】
この実施の形態10に係るナビゲーション装置によれば、エンジンのオフ/オンがなされても継続して未登録道路を検出できるので、例えば数十km以上に及ぶ長さの道路が道路地図データに未登録であっても道路データとして生成できる。
【0075】
実施の形態11.
この実施の形態11に係るナビゲーション装置は、検出手段45の動作が実施の形態1に係るナビゲーション装置と異なる。この実施の形態11に係るナビゲーション装置の構成は、上述した実施の形態1に係るナビゲーション装置の構成と同じである。以下では、検出手段45で行われる未登録道路検出処理の詳細を、図19に示す説明図ならびに図20および図21に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0076】
図19は、未登録道路区間(D−P点)がコースの途中に存在する道路(A−D−P−S点)を直進走行した際に、道路照合手段42により同定された車両の位置の遷移(A−D−E−F−H−I−J−K−L−N−O−Q−R−S)を示す図である。A点でナビゲーション装置の電源がオンにされ、現在位置はS点である。登録道路上のA−D、I−J、O−QおよびR−Sの各区間は照合結果データがマッチング状態を示しており、D−HおよびJ−Nの各区間は照合結果データがフリー状態を示している。登録道路上のB−CおよびP−Rの各区間は、道路照合手段42により車両の現在位置の候補が存在すると判断された区間である。また、図中の点線は、測位手段41により得られた走行軌跡である。
【0077】
未登録道路検出処理では、まず、上述した実施の形態1のステップST407と同様にして、走行軌跡が生成される(ステップST501)。次いで、道路照合手段42から出力される照合結果データがマッチング状態を示しているかどうかが調べられる(ステップST502)。このステップST502において、照合結果データがマッチング状態を示していないことが判断されると、車両が登録道路から逸脱したことを確定する逸脱確定処理(ステップST511〜ST515)が行われる。この逸脱確定処理の詳細は後述する。
【0078】
一方、ステップST502において、照合結果データがマッチング状態を示していることが判断されると、マッチング距離の加算およびフリー距離のクリアが行われる(ステップST503)。すなわち、マッチング状態が継続している距離を表すマッチング距離に、測位手段41からの測位データに基づいて算出された値が加算されるとともに、フリー状態が継続している距離を表すフリー距離がゼロに設定される。
【0079】
次いで、未登録道路検出フラグがクリアされているかどうかが調べられる(ステップST504)。このステップST504において、未登録道路検出フラグがクリアされていることが判断されると、登録道路を走行してきた旨が認識され、登録道路から車両が逸脱した可能性を判断する逸脱判断処理(ステップST505〜ST510)が行われる。この逸脱判断処理の詳細は後述する。
【0080】
一方、ステップST504において、未登録道路検出フラグがクリアされていないことが判断されると、未登録道路を走行してきた旨が認識され、車両が登録道路に復帰した可能性を判断し、道路逸脱地点および道路復帰地点の特定および未登録道路区間の座標計算などを行う復帰判断処理(ステップST516〜ST527)が行われる。この復帰判断処理の詳細は後述する。
【0081】
(1)逸脱判断処理
逸脱判断処理では、まず、上述した実施の形態1のステップST402と同様にして、道路逸脱判断が行われる(ステップST505)。次いで、ステップST505における判断結果に基づいて、道路逸脱の可能性があるかどうかが調べられる(ステップST506)。このステップST506において、道路逸脱の可能性があることが判断されると、道路逸脱候補地点を追加する処理が行われる(ステップST507)。すなわち、登録道路上の車両の現在位置が道路逸脱候補地点として記録される。一方、ステップST506において、道路逸脱の可能性がないことが判断されると、ステップST507の処理はスキップされる。
【0082】
次いで、道路逸脱候補地点設定後の移動距離の加算が行われる(ステップST508)。すなわち、記録された複数の道路逸脱候補地点毎に、記録後に、登録道路上で車両位置が同定された距離を表す道路逸脱候補地点設定後の移動距離が、測位手段41からの測位データに基づき算出されて加算される。次いで、道路逸脱候補地点設定後の移動距離が所定値L1より大きいかどうかが調べられる(ステップST509)。このステップST509において、道路逸脱候補地点設定後の移動距離が所定値L1より大きくない、つまり所定値L1以下であることが判断されると、未登録道路検出処理は終了する。
【0083】
一方、ステップST509において、道路逸脱候補地点設定後の移動距離が所定値L1より大きいことが判断されると、記録された道路逸脱候補地点において道路逸脱はなかった旨が認識され、その道路逸脱候補地点と関連情報とが削除される(ステップST510)。例えば、図19に示す例では、道路逸脱候補地点として、C点およびD点が順番に記録されるが、C点については、D点を記録する前に道路逸脱候補地点設定後の移動距離が所定値L1より大きくなったために、道路逸脱候補地点から削除される。その後、未登録道路検出処理は終了する。
【0084】
(2)逸脱確定処理
逸脱確定処理では、まず、フリー距離の加算およびマッチング距離のクリアが行われる(ステップST511)。すなわち、フリー距離が測位手段41からの測位データに基づき算出されて加算されるとともに、マッチング距離がゼロに設定される。次いで、フリー距離が所定値L2より大きいかどうかが調べられる(ステップST512)。このステップST512において、フリー距離が所定値L2より大きくない、つまりフリー距離が所定値L2以下であることが判断されると、未登録道路検出処理は終了する。
【0085】
一方、ステップST512において、フリー距離が所定値L2より大きいことが判断されると、車両が登録道路から逸脱した旨が確定され、未登録道路検出フラグがセットされる(ステップST513)。次いで、道路逸脱候補地点が未設定であるかどうかが調べられる(ステップST514)。すなわち、道路逸脱候補地点の記録数を確認することにより未記録であるかどうかが調べられる。このステップST514において、道路逸脱候補地点が未設定でないことが判断されると、未登録道路検出処理は終了する。
【0086】
一方、ステップST514において、道路逸脱候補地点が未設定であることが判断されると、道路逸脱候補地点が追加される(ステップST515)。すなわち、車両の現在位置からフリー距離分だけ後方に遡った走行軌跡の座標が探索され、その座標が道路逸脱候補地点として記録される。例えば、図19に示す例では、フリー距離が所定値L2より大きくなるF点の前方で車両が登録道路から逸脱したことが確定される。その後、未登録道路検出処理は終了する。
【0087】
(3)復帰判断処理
復帰判断処理では、まず、上述した実施の形態1のステップST408と同様の方法を用いて、道路復帰判断が行われる(ステップST516)。この処理では、道路照合手段42は、登録道路上に車両の現在位置の候補を所定距離以上継続して設定できた場合に道路復帰の可能性があると判断する。次いで、ステップST516における判断結果に基づき、道路復帰の可能性があるかどうかが調べられる(ステップST517)。このステップST517において、道路復帰の可能性があることが判断されると、道路復帰候補地点が追加される(ステップST518)。すなわち、登録道路上の車両の現在位置が道路復帰候補地点として追加的に記録される。一方、ステップST517において、道路復帰の可能性がないことが判断されると、ステップST518の処理はスキップされる。
【0088】
次いで、マッチング距離が所定値L3以上であるかどうかが調べられる(ステップST519)。このステップST519において、マッチング距離が所定値L3以上でない、つまりマッチング距離が所定値L3未満であることが判断されると、車両が登録道路に未だ復帰していないことが認識され、未登録道路検出処理は終了する。
【0089】
一方、ステップST519において、マッチング距離が所定値L3以上であることが判断されると、車両が登録道路に復帰している旨が認識され、ステップST520からステップST527の処理が実行される。例えば、図19に示す例では、道路復帰候補地点として、G点、M点およびP点が記録され、マッチング距離が所定値L3より大きくなるS点で車両が登録道路に復帰した旨が確定される。
【0090】
ステップST520においては、道路復帰候補地点が未設定であるかどうかが調べられる。すなわち、道路復帰候補地点の記録数を確認することにより未記録であるかどうかが調べられる。このステップST520において、道路復帰候補地点が未設定であることが判断されると、道路復帰候補地点が追加される(ステップST521)。すなわち、車両の現在位置からマッチング距離分だけ後方に遡った走行軌跡の座標(特に、測位データとセットで記憶されている登録道路上の車両の現在位置)が探索され、その座標が道路逸脱候補地点として記録される。ステップST520において、道路復帰候補地点が未設定でないことが判断されると、ステップST521の処理はスキップされる。
【0091】
次いで、道路逸脱候補地点と道路復帰候補地点との組み合わせが選択される(ステップST522)。すなわち、道路逸脱候補地点と道路復帰候補地点の全ての組合せにおいて、道路逸脱候補地点および道路復帰候補地点の座標に対応する走行軌跡部分の両端が重なるように、上述した実施の形態1と同様のアフィン変換が行われ、アフィン変換による座標変換量、具体的には座標移動量、伸縮係数および回転角が計算される。そして、アフィン変換による座標変換量が最小になる道路逸脱候補地点と道路復帰候補地点との組合せが選択される。
【0092】
次いで、座標変換量が許容範囲内であるかどうかが調べられる(ステップST523)。このステップST523において、座標変換量が許容範囲内であることが判断されると、未登録道路区間を特定できた旨が認識され、上述した実施の形態1のステップST414と同様の方法で、未登録道路座標計算が行われる(ステップST524)。すなわち、特定した未登録道路区間に繋がるように座標変換された走行軌跡から道路データが生成される。一方、ステップST523において、座標変換量が許容範囲内でないことが判断されると、未登録道路区間を特定できなかった旨が認識され、ステップST524の処理はスキップされる。
【0093】
次いで、次の未登録道路を検出できる状態に設定するために、走行軌跡の初期化が行われ(ステップST525)、未登録道路検出フラグがクリアされ(ステップST516)、さらに、道路逸脱候補地点および道路復帰候補地点が初期化される(ステップST527)。その後、未登録道路検出処理は終了する。例えば、図19に示す例では、D−G区間、D−M区間およびD−P区間にそれぞれ対応する走行軌跡部分を座標変換して得られた量が比較されるが、未登録道路区間として、D−P区間が選択される。
【0094】
以上説明したように、この実施の形態11に係るナビゲーション装置によれば、道路逸脱および道路復帰の可能性がある地点を道路逸脱候補地点および道路復帰候補地点としてそれぞれ記録しておき、未登録道路区間を走行した後に、登録道路上で所定距離以上マッチング状態にある場合に、道路逸脱候補地点と道路復帰候補地点とのすべての組合せの中から、対応する走行軌跡が所定の範囲内で座標変換され、かつ座標変換された量が最小となる道路逸脱候補地点と道路復帰候補地点の組合せを未登録道路区間と判断するように構成したので、未登録道路の検出に成功する確率をより向上させることができる。
【0095】
なお、この実施の形態11に係るナビゲーション装置において、道路逸脱候補地点と道路復帰候補地点のすべての組合せに対応する走行軌跡部分の中に、座標変換における走行軌跡の座標移動量、伸縮係数および回転角の変換量によって表される座標変換量が、道路データの座標精度、車両の現在位置の精度、およびセンサの補正精度から推定される所定の範囲内において最小となって登録道路との整合性が最も高いと判断される複数の走行軌跡部分を含む場合には、照合結果データがマッチング状態を継続して表している距離がより長い道路逸脱候補地点および道路復帰候補地点を道路逸脱地点および道路復帰地点とそれぞれ決定するように構成することができる。この場合、道路逸脱候補地点と道路復帰候補地点の組合せを1つだけ選択することが可能となり、この選択した道路逸脱候補地点と道路復帰候補地点との組み合わせに基づいて作成した未登録道路区間の座標の信頼性を向上させることができる。
【0096】
実施の形態12.
この実施の形態12に係るナビゲーション装置は、道路照合手段42および検出手段45の機能が実施の形態1に係るナビゲーション装置のそれらと異なる。以下では、道路照合手段42および検出手段45で行われる処理の詳細を、図22に示す説明図を参照しながら説明する。
【0097】
道路照合手段42は、測位手段41から測位データとして自車位置および自車方位が得られた場合に、次の条件にしたがって同定状態(マッチング状態またはフリー状態)を判断し、該判断の結果を照合結果データとして出力する。すなわち、道路照合手段42は、自車位置からの距離が規定距離以下であって、かつ自車方位との角度差が規定角度以下である自車候補位置が1個以上存在する場合、同定状態はマッチング状態と判断し、そうでない場合は、同定状態はフリー状態と判断する。ただし、自車が右左折などにより大きく回転しているとみなすことができる場合、例えば、最新の自車方位と直前の自車方位との角度差が規定角度以上の場合は、角度差に関する判定を行わないように構成することができる。この場合、角度差が大きくても近くに道路リンクが存在すれば同定状態はマッチング状態と判断される。ただし、一方通行などの自車候補位置の属性を同定状態を判定する際に考慮するように構成することができる。この場合、距離および角度に関する前記条件を満たしていても、通行禁止の属性が設定されている自車候補位置しか自車候補位置として存在しない場合、同定状態はフリー状態と判断される。
【0098】
また、道路照合手段42は、同定状態がマッチング状態であると判断した場合は、測位手段41で算出された自車位置および自車方位とともに、マッチング状態であると判断した場合の条件に合致する車両の存在候補位置(1個以上)を候補位置データとして検出手段45に送る。
【0099】
図22(a)は、車両の走行軌跡(車両の現在位置の連続)と登録道路上における車両の存在候補位置との関係を示す図であり、図22(b)は、各時刻における測位データのまとまりである走行軌跡データ、照合結果データ、候補位置データおよび後述する接続関係データの関係を示している。
【0100】
検出手段45は、測位手段41からの測位データと、道路照合手段42からの照合結果データおよび候補位置データを参照することにより、測位データによって示される自車位置と登録道路上の車両の存在候補位置との距離に応じて登録道路上に未登録道路の検出開始地点および検出終了地点を設定する。この場合、例えば、測位データによって示される自車位置に最も近い、登録道路上の車両の存在候補位置を検出開始地点または検出終了地点として選択することができる。
【0101】
この構成によれば、検出開始地点および検出終了地点の設定精度を向上させることができる。また、検出開始地点および検出終了地点の設定のために、改めて道路地図データ記憶手段43に記憶されている道路データを参照する必要がないので、演算量、メモリ消費量を抑えることができる。
【0102】
また、道路照合手段42は、車両の存在候補位置を表す候補位置データとともに、車両の存在候補位置が存在する道路の属性を検出手段45に送るように構成することができる。この場合、検出手段45は、道路照合手段42からの照合結果データ、候補位置データおよび属性を参照することにより、登録道路上に未登録道路の検出開始地点および検出終了地点を設定する際に、属性を考慮して登録道路上の車両の存在候補位置を検出開始地点または検出終了地点として選択する。例えば、未登録道路が接続しやすい属性をあらかじめ設定しておき、その属性を持つ登録道路上の車両の存在位置を他の属性の登録道路上の車両の存在位置よりも優先して検出開始地点または検出終了地点として選択する。これにより、検出開始地点および検出終了地点の設定精度が向上させることができる。
【0103】
また、道路照合手段42は、現在の時刻における車両の存在候補位置とともに、その車両の存在候補位置と直前またはさらにその前の時刻における自車位置に対応する車両の存在候補位置とが接続されているかどうかを判定し、判定結果を接続関係データとして検出手段45に送るように構成することもできる。この接続されているかどうかの判定においては、道路ネットワークとして接続されているかどうかだけでなく、走行軌跡データと矛盾しないように、所定距離の範囲内で接続されているかどうかを判定するように構成することができる。
【0104】
この場合、検出手段45は、道路照合手段42からの照合結果データ、候補位置データおよび接続関係データを参照することにより、登録道路上に未登録道路の検出開始地点および検出終了地点を設定する際に、例えば、登録道路上の車両の存在候補位置の継続距離を求め、接続が所定距離以上継続した登録道路上に未登録道路の検出開始地点および検出終了地点を設定する。これにより、登録道路と未登録道路の接続地点の設定精度を高めることができる。
【0105】
図23は、この実施の形態12の変形例に係るナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。このナビゲーション装置は、実施の形態1に係るナビゲーション装置に、入力手段101が追加されるとともに、信号処理器4の中に未登録道路編集手段100が追加されて構成されている。
【0106】
入力手段101は、ユーザが座標を入力するために使用される。この入力手段101から入力された座標は、未登録道路編集手段100に送られる。未登録道路編集手段100は、入力手段101から入力された座標を結ぶ未登録道路の座標を生成する。この未登録道路編集手段100で生成された座標は、道路データ生成手段46、道路地図データ記憶手段43および表示制御手段44に送られる。
【0107】
この実施の形態12の変形例に係るナビゲーション装置においては、未登録道路編集手段100は、検出手段45から送られてくる走行軌跡データを表示制御手段44および表示手段5を介してユーザに提示し、ユーザが入力手段101を用いて入力した座標を結ぶ未登録道路の座標を生成する。この生成された座標に基づき未登録道路の走行軌跡を生成し、ユーザに提示する。これにより、ユーザは表示された走行軌跡と登録道路との関係を目安にして、正確な座標を入力することができる。さらに、登録道路と未登録道路の接続地点または未登録道路の通過地点の座標をユーザが正確に入力することにより、未登録道路の座標の精度を向上させることができる。
【0108】
ただし、この実施の形態12の変形例に係るナビゲーション装置においては、未登録道路編集手段100は、検出手段45から送られてくる走行軌跡データに加えて関連する候補位置データを表示制御手段44および表示手段5を介してユーザに提示し、ユーザが候補位置データから選択することにより入力手段101を用いて入力した座標を結ぶ未登録道路の座標を生成するように構成することができる。この場合、提示された登録道路上の候補位置から選択することにより、正確な座標を入力することができる。さらに、登録道路と未登録道路の接続地点または未登録道路の通過地点の座標をユーザが正確に入力することにより、未登録道路の座標の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0109】
1 GPS受信機、1a GPSアンテナ(センサ)、2 角速度センサ(センサ)、3 速度センサ(センサ)、4 信号処理器、5 表示手段、41 測位手段、42 道路照合手段、43 道路地図データ記憶手段、44 表示制御手段、45 検出手段、46 道路データ生成手段、100 未登録道路編集手段、101 入力手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の挙動を検出するセンサと、
前記センサからの信号に基づき車両の挙動を推測する測位手段と、
道路データを記憶する道路地図データ記憶手段と、
前記測位手段から推測結果として送られてくる測位データと前記道路地図データ記憶手段から読み出した道路データとを照合して車両の現在位置を同定し、該同定状態が、前記道路データによって示される登録道路上に確定されたマッチング状態、該登録道路上で確認中であるペンディング状態または該登録道路外に確定されたフリー状態のいずれであるかを表す照合結果データを出力する道路照合手段と、
前記道路照合手段からの照合結果データがフリー状態を表している区間の前後でマッチング状態にあった登録道路上に、走行軌跡のうちの登録道路と重複しない走行軌跡部分である登録道路外走行軌跡の検出開始地点および検出終了地点を設定し、前記測位手段からの測位データに基づき生成された前記検出開始地点から前記検出終了地点までの走行軌跡の始点および終点の座標が前記検出開始地点および前記検出終了地点の座標に一致するように走行軌跡を座標変換し、該座標変換された走行軌跡から登録道路外走行軌跡の座標を検出する検出手段
とを備えたナビゲーション装置。
【請求項2】
検出手段は、座標変換における走行軌跡の座標移動量、伸縮係数および回転角の各々が、車両の現在位置の精度、センサの補正精度から推定される所定の範囲内であれば、該座標変換された走行軌跡から登録道路外走行軌跡の座標を検出する
ことを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
検出手段は、道路照合手段からの照合結果データがフリー状態を表している区間の前後でマッチング状態にあった登録道路上において、フリー状態になる前に車両が登録道路から逸脱した可能性がある登録道路上の地点を道路逸脱候補地点として順次記録し、かつ、フリー状態になった後に車両が登録道路上に復帰した可能性がある登録道路上の地点を道路復帰候補地点として順次記録し、検出開始地点および検出終了地点の間に記録された道路逸脱候補地点と道路復帰候補地点とのすべての組合せに対応する走行軌跡部分について、各走行軌跡部分の両端が道路逸脱候補地点および道路復帰候補地点の座標に一致するように座標変換し、座標変換したすべての走行軌跡部分の中で、該座標変換における走行軌跡部分の座標移動量、伸縮係数および回転角によって表される座標変換量が、車両の現在位置の精度、センサの補正精度から推定される所定の範囲内において最小となる走行軌跡部分に対応する道路逸脱候補地点および道路復帰候補地点を道路逸脱地点および道路復帰地点と決定し、該決定した道路逸脱地点と道路復帰地点との間の走行軌跡部分から登録道路外走行軌跡の座標を検出する
ことを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
検出手段は、道路照合手段からの照合結果データによって示される同定状態がフリー状態からマッチング状態に変化した後に、走行軌跡の形状との相似性および位置の整合性が所定距離以上継続して確認できた登録道路上の車両の現在位置の座標に登録道路外走行軌跡の検出終了地点を設定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
検出手段は、センサからの信号に基づき計算された車両の移動距離とGPS電波の遮蔽状態を走行軌跡に関連付けて記録し、GPS電波の連続遮蔽区間を通過した直後に走行軌跡の連続性を、走行軌跡の座標更新量と移動距離を比較することにより確認し、両者に所定値以上の違いがある場合に走行軌跡が分断されたと判断して、走行軌跡が分断された区間だけを部分的に座標変換して走行軌跡を1つに繋げ、その後、該走行軌跡が検出開始地点と検出終了地点との間の登録道路の座標に一致するように走行軌跡全体を座標変換する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
検出手段は、道路照合手段からの照合結果データによって示される同定状態がペンディング状態またはマッチング状態のときに車両の現在位置が同定された登録道路の部分を記録しておき、登録道路と重複しない走行軌跡部分を判断する際に、この記録された登録道路の部分を登録道路外走行軌跡の検出開始地点から進路前方に辿って道路離脱地点を検出するとともに検出終了地点から進路後方に辿って道路復帰地点を検出し、この記録された登録道路の部分を道路離脱地点または道路復帰地点まで辿れない場合は、記録された登録道路の相似性および位置と走行軌跡とを比較して道路離脱地点および道路復帰地点を検出し、道路離脱地点と道路復帰地点との間の走行軌跡の座標を登録道路外走行軌跡の座標とする
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
検出手段は、車両が右折または左折した近傍に交差点が存在する場所において、道路照合手段からの照合結果データによって示される同定状態が、車両の右折または左折挙動に応じて、マッチング状態からフリー状態に移行し、その後、ペンディング状態を経てマッチング状態に戻った場合に、車両の現在位置の精度およびセンサを構成する速度センサの補正精度から推定される走行軌跡の伸縮係数の範囲内で走行軌跡の座標変換がなされた場合には、登録道路外走行軌跡の検出を取りやめる
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
検出手段は、車両が未登録の高速インターチェンジを通過して高速道路から一般道路へ、または、一般道路から高速道路へ乗り入れたときに、高速インターチェンジを通過した後の登録道路上を車両が所定距離以上走行しても道路照合手段がペンディング状態を示したままである場合は、高速インターチェンジに進入する前の登録道路上における登録道路外走行軌跡の検出開始地点から検出を開始した走行軌跡とペンディング状態の道路が所定距離以上にわたって重なる場合または近傍で登録道路が並走している場合は、その登録道路上に登録道路外走行軌跡の検出終了地点を設定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
検出手段は、登録道路外走行軌跡に進入する前の登録道路上の登録道路外走行軌跡の検出開始地点から検出を開始した走行軌跡と並走する近傍の登録道路が高速道路と一般道路の両方にある場合には、走行軌跡の形状との相似性または位置において両者に有意差が確認できたときに、道路種別に拘らず、走行軌跡の形状との相似性または位置が近い登録道路上に登録道路外走行軌跡の検出終了地点を設定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
検出手段は、検出に関するデータを、測位手段および道路照合手段の処理結果と合わせて不揮発メモリに保存するとともに、エンジンオン直後の不揮発メモリに登録道路外走行軌跡の検出中であることを示すデータが記録されていた場合には、検出を再開する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のナビゲーション装置。
【請求項11】
検出手段は、道路照合手段からの照合結果データによって示される同定状態がマッチング状態からフリー状態に変化する直前の登録道路上の座標から所定距離だけ後方の登録道路上に登録道路外走行軌跡の検出開始地点を設定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のナビゲーション装置。
【請求項12】
検出手段は、道路照合手段からの照合結果データによって示される同定状態がマッチング状態を示している場合に、所定距離分の走行軌跡を座標変換し、該座標変換した後の走行軌跡が道路幅員内に収まらない場合に、車両の現在位置の座標から所定距離だけ後方の登録道路上に登録道路外走行軌跡の検出開始地点を設定する
ことを特徴とする請求項11記載のナビゲーション装置。
【請求項13】
検出手段は、道路逸脱候補地点および道路復帰候補地点毎に道路照合手段からの照合結果データに基づきマッチング状態が継続している距離を求め、道路逸脱候補地点と道路復帰候補地点とのすべての組合せに対応する走行軌跡部分の中に、座標変換における走行軌跡の座標移動量、伸縮係数および回転角の変換量によって表される座標変換量が、道路データの座標精度、車両の現在位置の精度、およびセンサの補正精度から推定される所定の範囲内において最小となる走行軌跡部分が複数存在する場合は、前記距離が最も長い走行軌跡部分に対応する道路逸脱候補地点および道路復帰候補地点を道路逸脱地点および道路復帰地点とそれぞれ決定する
ことを特徴とする請求項3記載のナビゲーション装置。
【請求項14】
検出手段は、道路照合手段からの照合結果データが所定距離以上連続してフリー状態を表す前に記録した道路逸脱候補地点については、その後も前記道路照合手段からの照合結果データがフリー状態にならずに継続してマッチング状態を表している場合は、道路逸脱候補地点毎に求めたマッチング状態を継続している距離が所定距離以上になれば、該道路逸脱候補地点を取消す
ことを特徴とする請求項13記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−99873(P2011−99873A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27092(P2011−27092)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【分割の表示】特願2006−311883(P2006−311883)の分割
【原出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】