説明

ニコチン類縁アルカロイド含量の上昇

4つの遺伝子、A622、NBBl、PMT、およびQPTに影響を及ぼすことにより、タバコ植物におけるニコチン類縁アルカロイド含量を上昇させること、および、ニコチン非産生植物および細胞においてニコチン類縁アルカロイドを合成させることができる。特に、A622、NBBl、PMT、およびQPTの1以上の過剰発現を利用してタバコ植物におけるニコチンおよびニコチン類縁アルカロイド含量を上昇させることが出来る。A622およびNBBlの過剰発現により
ニコチン非産生細胞を操作して、ニコチンおよび関連化合物を産生させることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、分子生物学の分野およびニコチン類縁アルカロイド合成の制御に関する。したがって、本発明は、とりわけ、タバコ植物においてニコチン類縁アルカロイドの含量を上昇させるための方法およびコンストラクト、ならびに、遺伝子工学的手法を用いなければニコチン類縁アルカロイドおよび関連化合物を生産しない細胞であって、遺伝子工学的手法によりニコチン類縁アルカロイドおよび関連化合物を産生するようになった細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
現在、いくつかのニコチン生合成酵素が知られている。例えば、タバコキノリン酸ホスホリボシル基転位酵素 (QPT) 遺伝子がクローニングされており(米国特許第6,423,520号およびSinclair et al., Plant Mol. Biol. 44: 603-17 (2000)参照)、その抑制は、形質転換タバコ植物における顕著なニコチン含量の低下をもたらす(Xie et al.、Recent Advances in Tobbaco Science 30: 17-37 (2004))。同様に、内在性 プトレッシンメチル基転位酵素 (PMT) 配列の抑制は、ニコチン含量を低下させるが、アナタビン含量を約 2から6倍上昇させることが示されている(Hibi et al., Plant Cell 6: 723-35 (1994); Chintapakorn and Hamill, Plant Mol. Biol. 53:87-105 (2003); Steppuhn et al. PLoS Biol 2:8:e217:1074-1080 (2004))。
【0003】
従来の研究の努力は植物におけるニコチン含量を低下させるためのニコチン生合成酵素の使用に注目してきたが、ニコチン類縁アルカロイド合成の上昇におけるニコチン生合成酵素の役割に取り組んだ研究はほとんど存在しない。このように上方制御のデータがないことは、PMT、またはQPT等の既知のニコチン類縁アルカロイド生合成遺伝子の過剰発現は必ずしも二次代謝産物の植物による産生および蓄積を上昇させないという事実に起因しうる。即ち、ニコチン類縁アルカロイド生合成遺伝子の下方制御によりアルカロイドの産生および蓄積が低下するからといって、同じニコチン類縁アルカロイド生合成遺伝子の過剰発現によりニコチン類縁アルカロイドの産生および蓄積が上昇するとは必ずしもいえない。
【0004】
研究の不足のために、ニコチンの生合成および蓄積を上昇させる遺伝子を同定する必要がある。例えば、ニコチン類縁アルカロイドは、昆虫および草食動物に対する植物の保護において重要な役割を果たすため、それはおそらく宿主植物におけるニコチン類縁アルカロイドの合成を上昇させるために有益であろう。食害の観点からは、ニコチンの合成および蓄積の上昇は、植物と有害生物との相互作用を媒介するための環境上受け入れられる手段を提供するであろう。
【0005】
ニコチンがタバコの煙において物理的および心理的に活性の成分であるタバコ業界の観点からは、遺伝子工学的手法によりタバコにおけるニコチン含量を上昇させることは有益でありうる。研究により、補足的なニコチンを外部源から物理的にタバコ(シガレット・巻きタバコ)に添加した場合は、煙のより有害な成分、例えば、タールおよび一酸化炭素の喫煙者による吸入量が減ることが示されている。Armitage et al., Psychopharmacology 96: 447-53 (1988), Fagerstroem, Psychopharmacology 77: 164-67 (1982), Russell, Nicotine and Public Health 15: 265-84 (2000)、およびWoodman et al., European Journal of Respiratory Disease 70: 316-21 (1987)を参照されたい。同様に、曝露を低減する可能性のある製品(PREP)(potential reduced-exposure product)についての米国医学研究所による報告は、「ニコチンを快いまたは常習性の量に保持しつつ、タバコのより有害な成分を低減することは、害の低下のためのもうひとつの一般的戦略である」と結論づけた(CLEARING THE SMOKE, ASSESSING THE SCIENCE BASE FOR TOBACCO HARM REDUCTION, IOM at page 29 (2001)(一般にタバコ業界により「IOM Report」と称されている)参照)。
【0006】
ニコチン含量が上昇した製品、例えば、タバコ(シガレット・巻きタバコ)およびその他のタバコ製品のより伝統的な用途に加えて、最近の薬理学的研究は、ニコチンおよび関連化合物の治療上の役割を示唆している。例えば、いくつかの研究グループは現在、認知機能障害、例えば、アルツハイマー病、統合失調症、および加齢による記憶の低下の治療のための手段として、ニコチン受容体を標的とする薬物を研究している(Singer, “The Upside to Nicotine,” Technology Review (July 28, 2006))。アセチルコリン受容体リガンド、例えば、ニコチンは、注意、認知、食欲、薬物乱用、記憶、錐体外路機能、心血管機能、疼痛、および胃腸の運動および機能に対する効果を有することが示されている(米国特許第5,852,041号)。したがって、ニコチンおよび関連化合物には治療的利益があり、それゆえそれらを生産するための改良方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、植物におけるニコチン類縁アルカロイド含量、特に、タバコ(N. tabacum)植物におけるニコチン含量を上昇させるよう、そしてニコチン非産生細胞においてニコチンおよび関連化合物を産生させるよう、その発現が影響されうるさらなる遺伝子を同定することが求められ続けている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
4つの遺伝子、A622NBB1PMTおよびQPTは、タバコ植物におけるニコチン類縁アルカロイド含量を上昇させるため、およびニコチン非産生細胞においてニコチン類縁アルカロイドおよび関連化合物を合成させるために影響されうる。
【0009】
1つの側面において、本発明は、コントロール植物と比較してA622およびNBB1の少なくとも一方を過剰発現させることによる、タバコ植物におけるニコチン類縁アルカロイド、例えば、ニコチン含量を上昇させる方法を提供する。1つの態様において、A622が過剰発現される。別の態様において、NBB1が過剰発現される。別の態様において、A622 およびNBB1が共に過剰発現される。さらなる態様において、A622およびNBB1が共に過剰発現され、かつQPTおよびPMTの少なくとも一方が過剰発現される。さらに別の態様において、QPT およびA622が共に過剰発現される。
【0010】
別の態様において、ニコチン含量が上昇している植物、およびそれに由来する製品は、A622NBB1PMTおよびQPTの1以上を過剰発現させるあらゆる方法によって生産される。さらなる態様において、製品は、タバコ(シガレット・巻きタバコ)、医薬品、および栄養補助食品からなる群から選択される。
【0011】
別の側面において、本発明は、本発明によらなければニコチン類縁アルカロイドを産生しない植物または細胞において、NBB1およびA622を異種発現させることを含むニコチン類縁アルカロイドの生産方法を提供する。1つの態様において、NBB1およびA622の発現は、細菌、酵母、糸状菌、藻類、哺乳類、および昆虫細胞からなる群から選択される細胞において起こる。
【0012】
別の態様において、ニコチン類縁アルカロイド含量が上昇している植物は、本発明によらなければニコチン類縁アルカロイドを産生しない植物または細胞においてNBB1およびA622を異種発現させることによって生産される。別の態様において、ニコチン類縁アルカロイド製品は、本発明によらなければニコチン類縁アルカロイドを産生しない植物または細胞においてNBB1およびA622を異種発現させることによって生産される。
【0013】
別の側面において、以下の工程を含むニコチン類縁アルカロイドの商業的生産方法を提供する:(a) A622およびNBB1を発現する複数の細胞を提供する工程、および、(b)該複数の細胞から該ニコチン類縁アルカロイドを得る工程。
【0014】
別の側面において、本発明は、コントロール植物と比較してPMTおよびQPTを過剰発現させることを含む植物におけるニコチン含量を上昇させる方法を提供する。1つの態様において、ニコチン含量が上昇している植物が生産される。別の態様において、ニコチン含量が上昇している製品が生産される。
【0015】
別の側面において、本発明は、細胞をNBB1をコードする単離核酸分子により形質転換する工程、および NBB1 酵素が産生される条件下で形質転換細胞を培養する工程を含む、NBB1 酵素の産生方法を提供する。1つの態様において、形質転換細胞は、細菌、酵母、糸状菌、藻類、緑色植物および哺乳類細胞からなる群から選択される。
【0016】
別の側面において、本発明は、以下の工程を含む、タバコ植物におけるニコチン含量および生産量(yield)を上昇させる方法を提供する:a)ニコチン含量が上昇しているタバコ植物と多生産タバコ植物とを交配する工程;およびb)ニコチン含量および生産量が上昇したタバコ子孫植物を選抜する工程。1つの態様において、ニコチン含量および生産量が上昇した植物が生産される。
【0017】
1つの態様において、ニコチン含量が上昇している植物は以下の工程によって生産される: a)5'から3'の方向にて、プロモーターおよびそれに作動可能に連結したニコチン合成を上昇させる酵素をコードする異種核酸を含むコンストラクトによりタバコ植物を形質転換する工程; b)形質転換植物から形質転換タバコ植物を再生させる工程;および、 c)コントロール植物と比較してニコチン含量が上昇した形質転換タバコ植物を選抜する工程。さらなる態様において、核酸は、QPTPMTA622およびNBB1 からなる群から選択される。
【0018】
別の側面において、本発明は、以下の工程を含むタバコ植物におけるニコチン含量および生産量を上昇させる方法を提供する: (a) (i) 5'から3'の方向にて、プロモーターおよびそれに作動可能に連結したニコチン合成を上昇させる酵素をコードする異種核酸を含む第1のコンストラクト; および(ii) 5'から3'の方向にて、プロモーターおよびそれに作動可能に連結した生産量を上昇させる酵素をコードする異種核酸を含む第2のコンストラクトによりタバコ植物を形質転換する工程; (b)形質転換タバコ植物を形質転換植物から再生させる工程;および(c)コントロール植物と比較してニコチン含量が上昇し、かつ生産量が上昇した形質転換タバコ植物を選抜する工程。
【0019】
1つの態様において、第1のコンストラクトはQPT、PMT、A622およびNBB1からなる群から選択される酵素をコードする核酸を含む。別の態様において、ニコチン含量および生産量が上昇した植物が生産される。
【0020】
別の側面において、本発明は、コントロール植物と比較してPMT を過剰発現させることを含むタバコ(N. tabacum)におけるニコチン含量を上昇させる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図 1: NBB1 発現のRNA ブロット分析
【図2】図 2: NBB1とハナビシソウ(Eschscholzia californica) ベルベリン架橋酵素 (EcBBE)とのアラインメント
【図3】図 3: NBB1 ポリペプチドおよび植物 BBE-様タンパク質の配列を用いて作製した系統樹
【図4】図 4A: pTobRD2-DESTのT-DNA領域図 4B: pTobRD2-NBB1oxのT-DNA領域図 4C: pTobRD2-A622oxのT-DNA領域図 4D: pTobRD2-A622ox-NBB1oxのT-DNA領域図 4E: pBI101H-E2113-DESTのT-DNA領域図 4F: pEl235SΩ-NBB1のT-DNA領域
【図5】図 5A:タバコ毛状根におけるNBB1のイムノブロット分析図 5B: タバコ毛状根におけるA622のイムノブロット分析
【図6】図 6: TobRD2-NBB1 (TN)、TobRD2-A622 (TA)、TobRD2-NBB1-A622 (TNA)の毛状根におけるニコチンアルカロイド含量
【図7】図 7:形質転換ベラドンナ(A. belladonna)における A622 タンパク質の発現
【図8】図 8: NBB1およびA622を発現する形質転換ベラドンナ
【図9】図 9: NBB1およびA622を発現する形質転換ベラドンナの毛状根におけるニコチン合成
【図10】図 10: A622およびNBB1を発現するベラドンナの毛状根において合成されたニコチンのMS プロフィール
【図11】図 11A: pA622pro-DESTのT-DNA領域図 11B: pA622pro-PMToxのT-DNA領域図 11C: pTobRD2-PMToxのT-DNA領域図 11D: pA622pro-QPToxのT-DNA領域図 11E: pTobRD2-QPToxのT-DNA領域図 11F: pA622pro-PMTox-QPToxのT-DNA領域図 11G: pTobRD2-PMTox-QPToxのT-DNA領域
【図12】図 12: A622pro-PMTox により形質転換されたタバコ植物(AP-1からAP-24)の葉におけるニコチン含量。AG-1からAG-4はA622-GUSにより形質転換されたコントロール植物である。
【図13】図 13: TobRD2-PMToxにより形質転換されたタバコ植物(TP-1からTP-14)の葉におけるニコチン含量。TG-1からTG-3はTobRD2-GUSにより形質転換されたコントロール植物である。
【図14】図 14: A622pro-QPToxにより形質転換されたタバコ植物(AQ-1からAQ-15) の葉におけるニコチン含量。AG-1からAG-4はA622-GUSにより形質転換されたコントロール植物である。
【図15】図 15: TobRD2-QPToxにより形質転換されたタバコ植物(TQ-1からTQ-14) の葉におけるニコチン含量。 TG-1からTG-3はTobRD2-GUS により形質転換されたコントロール植物である。
【図16】図 16: A622pro-PMTox-QPToxにより形質転換されたタバコ植物(APQ-1からAPQ-27) の葉におけるニコチン含量。AG-1からAG-3 はA622-GUS により形質転換されたコントロール植物である。
【図17】図 17: pTobRD2-PMTox-QPToxにより形質転換されたタバコ植物(TPQ-1からTPQ-24) の葉におけるニコチン含量。TG-1からTG-3はTobRD2-GUSにより形質転換されたコントロール植物である。
【図18】図 18A: pGWB2のT-DNA領域 図 18B: p35S-NBB1のT-DNA領域図 18C: p35S-NBB1のT-DNA領域
【図19】図 19: 35S-A622-35S-NBB1-35S-PMT カセットにより形質転換されたシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) 系統のイムノブロット分析
【図20】図 20: NBB1、A622、およびPMTを共発現する形質転換 シロイヌナズナ(Arabidopsis)
【図21】図 21A:組換えバクミドにおけるA622およびNBB1の存在の確認図 21B:昆虫細胞 Sf9 細胞およびNi-NTA カラム溶出液における A622およびNBB1の検出
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、タバコ植物におけるニコチン類縁アルカロイド含量を上昇させること、ならびに、本発明によらなければニコチン類縁アルカロイドを産生しない細胞においてニコチン類縁アルカロイドを産生させることに関する。以下に記載するように、本発明者らは、4つの遺伝子、A622NBB1QPTおよびPMTに影響を及ぼすことにより、タバコ植物におけるニコチン類縁アルカロイド含量の上昇を達成することが出来ることを認識した。すなわち、これら4つの遺伝子のいずれかを過剰発現させることによりタバコ(Nicotiana)のニコチン類縁アルカロイド含量が上昇する。さらに、タバコのニコチン類縁アルカロイド含量の上昇は、4つの遺伝子の少なくとも2つ、例えば QPTおよびPMTを同時に過剰発現させることにより達成することが出来る。A622およびNBB1をニコチン非産生植物または細胞に導入することにより、ニコチンまたは関連化合物のそれらによる産生が達成されうる。
【0023】
タバコにおけるニコチン類縁アルカロイド含量の上昇のための方法を提供することに加えて、本発明はまた、タバコにおけるニコチン類縁アルカロイド含量および生産量(yield)を同時に上昇させる方法も提供する。本発明のこの側面によると、ニコチン類縁アルカロイド含量および生産量の上昇は、遺伝子工学的手法および従来型の育種の組合せにより達成することが出来る。
【0024】
本明細書において用いられるすべての技術用語は、生化学、分子生物学および農学において一般に用いられるものである; したがって、それらは本発明が属する技術分野の当業者によって理解される。かかる技術用語は、例えば: MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 3rd ed., vol. 1-3, ed. Sambrook and Russel, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 2001; CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, ed. Ausubel et al., Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience, New York, 1988 (定期的に改訂されている); SHORT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY: A COMPENDIUM OF METHODS FROM CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, 5th ed., vol. 1-2, ed. Ausubel et al., John Wiley & Sons, Inc., 2002; GENOME ANALYSIS: A LABORATORY MANUAL, vol. 1-2, ed. Green et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1997; PRODUCTION, CHEMISTRY AND TECHNOLOGY, D.L. Davis and M.T. Nielson (eds.) Coresta, 1999 (一般に「IOM Report」と称される)にみることができる。
【0025】
植物生物学技術を伴う方法が本明細書において記載され、また、文献、例えば、METHODS IN PLANT MOLEULAR BIOLOGY: A LABORATORY COURSE MANUAL, ed. Maliga et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1995において詳細に記載されている。 PCRを用いる様々な技術は、例えば、Innis et al., PCR PROTOCOLS: A GUIDE TO METHODS AND APPLICATIONS, Academic Press, San Diego, 1990およびDieffenbach and Dveksler, PCR PRIMER: A LABORATORY MANUAL, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 2003に記載されている。PCR-プライマー対は公知の技術により、例えば、この目的のためのコンピュータプログラム、例えば、Primer, Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge, MAを用いることにより公知の配列から導き出すことが出来る。核酸の化学合成方法は、例えば、Beaucage & Caruthers、Tetra. Letts. 22: 1859-62 (1981)、および Matteucci & Caruthers、J. Am. Chem. Soc. 103: 3185 (1981)に記載されている。
【0026】
制限酵素消化、リン酸化、ライゲーション、および形質転換は、Sambrook et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd ed. (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されているようにして行った。細菌細胞の培養および維持のために用いたすべての試薬および材料は、特に断りのない限り、Aldrich Chemicals (Milwaukee、Wis.)、DIFCO Laboratories (Detroit、Mich.)、Invitrogen (Gaithersburg、Md.)、または Sigma Chemical Company (St. Louis、Mo.)から得た。
【0027】
「コードする」および「コード」という語は、遺伝子が転写および翻訳の機構を介して、一連のアミノ酸が特定のアミノ酸配列へとアセンブリーされて活性の酵素を生産し得る細胞へと情報を提供するプロセスをいう。遺伝暗号の縮重により、DNA 配列における特定の塩基の変化は、タンパク質のアミノ酸配列を変化させない。それゆえ、それぞれA622およびNBB1をコードするDNA 配列における改変であって、それらいずれかの酵素の機能的特性に実質的に影響を及ぼさない改変が想定されることが理解される。
【0028】
I. A622およびNBB1の少なくとも一方の過剰発現によるタバコにおけるニコチン類縁アルカロイド含量の上昇
A622およびNBB1は以前に同定されたものであるが、本発明の以前には当該技術分野において、タバコ植物においてA622または NBB1の少なくとも1つの過剰発現によりニコチン類縁アルカロイド含量が上昇することはまったく認識されていなかった。したがって、本発明は、A622またはNBB1の少なくとも1つを過剰発現させることによる、タバコ植物におけるニコチン類縁アルカロイド含量を上昇させるための方法およびコンストラクトの両方を包含する。A622およびNBB1の両方の過剰発現はさらにタバコ植物におけるニコチン類縁アルカロイド含量を上昇させる。
【0029】
本明細書の記載において、「アルカロイド」は、植物においてみられ、二次代謝により産生される窒素含有塩基性化合物である。「ニコチン類縁アルカロイド」は、ニコチンまたはニコチンに構造的に関連するアルカロイドである。タバコの場合、ニコチン類縁アルカロイド含量および総アルカロイド含量は同義にて用いられる。
【0030】
例示的な主要なタバコのニコチン類縁アルカロイドとしてはこれらに限定されないが、ニコチン、ノルニコチン、アナタビン、およびアナバシンが挙げられる。例示的な微量のタバコのアルカロイドとしてはこれらに限定されないが、 アナタリン、N-メチルアナタビン、N-メチルアナバシン、ミオスミン、アナバセイン、N’-ホルミルノルニコチン、ニコチリン、およびコチニンが挙げられる。タバコにおけるその他の微量のニコチン類縁アルカロイドが、例えば、Hecht, S.S. et al., Accounts of Chemical Research 12: 92-98 (1979); Tso, T.C., PRODUCTION, PHYSIOLOGY AND BIOCHEMISTRY OF TOBACCO PLANT, Ideals Inc. (Beltsville, MD), 1990に報告されている。
【0031】
多くのその他のピリジル塩基およびノルニコチン、アナタビン、およびアナバシンの多くの誘導体が、タバコにおいて存在することが報告されているニコチン類縁アルカロイドであり、本発明の目的のために微量のタバコのアルカロイドに含めるべきである。これらのいわゆる微量のニコチン類縁アルカロイドのほとんどは50 μg/g (乾燥重量に基づく)未満にて存在しており、その他の多くのものはナノグラム単位の量にて存在している(Bush, L.P., et al., “Biosynthesis and metabolism in nicotine and related alkaloids” in NICOTINE AND RELATED ALKALOIDS, J.W. Gorrod & J. Wahren (eds.) Chapman & Hall, London (1993); Bush, L.P., et al., “Alkaloid Biosynthesis” in TOBACCO PRODUCTION, CHEMISTRY AND TECHNOLOGY, D.L. Davis and M.T. Nielson (eds.) Coresta, 1999)。いくつかのニコチン類縁アルカロイドの化学構造が、例えば、Felpin et al.、J. Org. Chem. 66: 6305-312 (2001)において示されている。
【0032】
ニコチンは、タバコ(N. tabacum)に加え、その他のタバコ属の50〜60パーセントの種において、最も主要なアルカロイドである。品種に応じて異なるが、タバコ(N. tabacum)における総アルカロイドの約 85〜約 95 パーセントがニコチンである(Bush et al. (1999), 前掲; Hoffmann et al., Journal of Toxicology and Environmental Health 41: 1-52 (1994))。葉に蓄積するアルカロイドに基づくと、ノルニコチン、アナタビン、およびアナバシンは、タバコ(N. tabacum)におけるその他の主要なアルカロイドである。アナタビンは通常いずれのタバコ種においても主要なアルカロイドではないが、3つの種において相対的に高い量で蓄積する; アナバシンは4つの種において最も主要なアルカロイドである。ノルニコチンは、タバコ種の 30〜40 パーセントにおいて最も主要なアルカロイドである。
【0033】
本明細書の記載において、「発現」とは、 ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質産物の産生をいう。「過剰発現」とは、正常または遺伝子工学的手法により操作されていない生物における産生量を超える形質転換生物におけるタンパク質産物の産生をいう。当該技術分野において常套的であるように、ヌクレオチド配列はイタリック体により示し(例えば、PMT)、ポリペプチド配列はイタリック体によっては示さない(例えば、PMT)。
【0034】
・A622
A622PMTと同じ発現様式を示すことが報告されている(Shoji et al., Plant Cell Physiol. 41: 1072-76 (2000a)、およびPlant Mol. Biol. 50: 427-40 (2002))。A622およびPMTの両方は、根、特に、根および根毛の頂端部の皮層および内皮に特異的に発現している。さらに、A622およびPMTは、NIC 制御およびジャスモン酸メチル刺激に応答して共通の発現様式を有する。A622は地上組織の損傷に応答してタバコ(Nicotiana tabacum)の根において誘導される(Cane et al., Func. Plant Biol. 32: 305-20 (2005))。キダチタバコ(N. glauca))において、A622QPT 誘導を導く条件下で損傷を受けた葉において誘導される(Sinclair et al., Func. Plant Biol. 31: 721-29 (2004))。
【0035】
NIC1および NIC2 座はタバコ(N. tabacum)における2つの独立した遺伝子座であり、以前にはAおよびBと称されていた。突然変異nic1および nic2は、ニコチン生合成酵素の発現量およびニコチン含量を低下させ、一般に、ニコチン含量は以下の順となる:野生型 > ホモ接合性 nic2 > ホモ接合性 nicl > ホモ接合性 niclかつホモ接合性 nic2 植物(Legg & Collins, Can. J. Cyto. 13: 287 (1971); Hibi et al., Plant Cell 6: 723-35 (1994); Reed & Jelesko, Plant Science 167: 1123 (2004))。本明細書の記載において、「nic1nic2」は、nic1およびnic2 突然変異の両方についてホモ接合性であるタバコ遺伝子型をいう。
【0036】
A662の核酸配列(配列番号3)は決定されている(Hibi et al. (1994)、前掲)。この核酸配列にコードされるタンパク質A622 (配列番号4)はイソフラボンレダクターゼ (IFR)と類似しており、NADPH-結合モチーフを含む。 A622は、リグニン生合成に関与するタバコフェニルクマランベンジル(benzylic)エーテルレダクターゼ(PCBER)であるTP7との相同性を示す(Shoji et al. (2002)、前掲)。しかし、大腸菌で発現させたA622を2種類の基質を用いてアッセイした場合、PCBER 活性は観察されなかった。
【0037】
A622およびPMTの共制御およびA622のIFRとの類似性に基づき、A622はニコチン類縁アルカロイド合成の最終段階におけるレダクターゼとして機能すると提案された(Hibi et al. (1994); Shoji、et al. (2000a))。しかし、タンパク質を細菌中で発現させた場合には、IFR 活性は観察されなかった(前掲)。今まで、A622の過剰発現によりニコチン含量が上昇するということは理解されていなかった。
【0038】
A622 発現」とは、配列番号3によってコードされる遺伝子産物の生合成をいう。「A622 過剰発現」とは、A622 発現の上昇をいう。A622 過剰発現は、過剰発現が起こる植物または細胞のニコチン類縁アルカロイド含量の上昇に影響する。A622 過剰発現は以下によってコードされる遺伝子産物の生合成を含む: Hibi et al. (1994)、前掲に開示される全長 A622 核酸配列(配列番号3)、配列番号3B、およびすべてのA622 ポリヌクレオチド変異体。
【0039】
・NBB1
NBB1配列は、Katoh et al.、Proc. Japan Acad. 79 (Ser. B): 151-54 (2003) のプロトコールにしたがってニコチアナ・シルベストリス-由来cDNA ライブラリーから調製されたcDNAとして同定された。A622と同様に、NBB1は、ニコチン生合成調節座、NIC1および NIC2によって制御される。NBB1およびPMTは、タバコ植物において同じ発現様式を有する。NBB1がニコチン生合成に関与していることは、NBB1が、PMT およびA622と同様に、NIC 遺伝子の制御下にあり、類似の発現様式を示すという事実により示される。
【0040】
NBB1の核酸配列(配列番号1)が決定され、これは配列番号2に示すポリペプチド配列をコードする。「NBB1 発現」は、配列番号1によってコードされる遺伝子産物の生合成をいう。「NBB1 過剰発現」は、NBB1 発現の上昇をいう。NBB1 過剰発現は、過剰発現が起こる植物または細胞のニコチン類縁アルカロイド含量の上昇に影響を及ぼす。NBB1 過剰発現は以下によってコードされる遺伝子産物の生合成を含む: 配列番号1、配列番号1B、およびすべてのNBB1 ポリヌクレオチド変異体。
【0041】
II. PMTの過剰発現によるタバコ(N. tabacum)におけるニコチン類縁アルカロイド含量の上昇
タバコ種におけるニコチン類縁アルカロイド生合成遺伝子の過剰発現を示す唯一の以前の報告は、ニコチアナ・シルベストリス(N. sylvestris)におけるものであり、ここでPMT 過剰発現の結果、葉のニコチン含量が40%程度上昇した(Sato et al.、Proc. Nat’l Acad. Sci . USA 98: 367-72 (2001))。1つの植物種、例えば、ニコチアナ・シルベストリスにおけるニコチン類縁アルカロイド生合成遺伝子の過剰発現の結果、二次代謝産物の蓄積が上昇するとしても、関連種、例えば、タバコ(N. tabacum)においても同様に二次代謝産物の蓄積が起こるとは限らない(Saitoh et al., Phytochemistry 24: 477-80 (1985))。これは特にPMT 過剰発現についていえることであり、というのはタバコ(N. tabacum)は5つの発現したPMT 遺伝子を含んでおり、ニコチアナ・シルベストリスは3つの発現したPMT 遺伝子を含んでいるからである(Hashimoto et al., Plant Mol. Biol. 37: 25-37 (1998); Reichers & Timko, Plant Mol. Biol. 41: 387-401 (1999))。実際、タバコ(N. tabacum)からのPMT 遺伝子を、ズボイシア属(Duboisia)毛状根培養物において過剰発現させた場合、ニコチン、ヒヨスチアミン、およびスコポラミンの含量は有意に上昇しなかった(Moyano et al.、Phytochemistry 59、697-702 (2002))。同様に、ベラドンナ(Atropa belladonna)の形質転換植物および毛状根培養物における同じPMT 遺伝子の過剰発現もヒヨスチアミンおよびスコポラミン含量に影響を及ぼさなかった(Sato et al.、Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 98: 367-72 (2001); Rothe et al.、J. Exp. Bot. 54: 2065-070 (2003))。
【0042】
ナス科(Solanaceous)の種、例えばタバコにおいて、2つの関連植物種における同じアルカロイド生合成経路が異なるように制御されている可能性があるようであり、所与の遺伝子の過剰発現は必ずしも二次代謝産物の同様の蓄積様式を導くわけではない(Moyano et al.、J. Exp. Bot. 54 : 203-11 (2003))。例えば、60のタバコ種が分析された場合、総アルカロイド含量およびアルカロイドプロフィールには種の間でかなりの変動があった(Saitoh et al.、Phytochemistry 24: 477-80 (1985))。例えば、ニコチアナ・シルベストリスは29,600 μg/gすなわち2.96 パーセントという最高の総アルカロイド乾燥重量含量(ニコチン、ノルニコチン、アナバシン およびアナタビンの和)であったが、ハナタバコ (N. alata)では含量は最低であり20μg/gすなわち0.002 パーセントであった。ニコチアナ・シルベストリスの葉における総アルカロイドに対するニコチンの比は約 80 パーセントであったのに対してタバコ(N. tabacum L)では約 95 パーセントであった(同文献)。同様に、ニコチアナ・シルベストリスの葉における総アルカロイドに対するノルニコチンの比は19.1 パーセントであったのに対し、タバコ(N. tabacum L)では3 パーセントであった(同文献)。この60のタバコ種の間のこのような大きな変動に基づき、Saitoh et alは、「植物に存在する総アルカロイドおよび個々のアルカロイドの量および比は種に依存する。アルカロイドの様式とタバコ属の分類との間には明快な相関は存在しないようである」と結論づけている(同文献第477頁)。
【0043】
したがって、本発明は、PMTを過剰発現させることによるタバコ(N. tabacum)におけるニコチン類縁アルカロイド含量を上昇させるための方法およびコンストラクトを提供する。
【0044】
PMTの核酸配列(配列番号7)を決定し、これは配列番号8に示すポリペプチド配列をコードする。「PMT 発現」とは、配列番号7によってコードされる遺伝子産物の生合成をいう。「PMT 過剰発現」とは、PMT 発現の上昇をいう。PMT 過剰発現は過剰発現が起こる植物または細胞におけるニコチン類縁アルカロイド含量の上昇に影響する。PMT 過剰発現は以下によってコードされる遺伝子産物の生合成を含む: Hibi et al. (1994)、前掲に開示の全長 PMT 核酸配列(配列番号7)、配列番号7B、およびすべてのPMT ポリヌクレオチド変異体。
【0045】
III. QPTおよびPMTの過剰発現によるタバコにおけるニコチン類縁アルカロイド含量の上昇
現在まで、QPTおよびPMTの過剰発現が、相乗的にニコチン類縁アルカロイド含量を上昇させるという知識はなかった。すなわち、ニコチン含量のさらなる上昇は、QPTまたはPMTのみの過剰発現に比べてQPTおよびPMTの両方の過剰発現によって達成することが出来る。本発明のこの側面にしたがって、QPTおよびPMTの両方を含む核酸コンストラクトがタバコ植物細胞に導入される。
【0046】
QPTの核酸配列(配列番号5)を決定し、それは配列番号6に示すポリペプチド配列をコードする。「QPT 発現」とは、配列番号5によってコードされる遺伝子産物の生合成をいう。「QPT 過剰発現」とはQPT 発現量の上昇をいう。QPT 過剰発現は、過剰発現が起こる植物または細胞のニコチン類縁アルカロイド含量の上昇に影響を及ぼす。QPT 過剰発現は以下によってコードされる遺伝子産物の生合成を含む: 米国特許第6,423,520号に開示の全長 QPT 核酸配列(配列番号5)、配列番号5B、およびすべてのQPT ポリヌクレオチド変異体。
【0047】
IV. A622NBB1QPTおよびPMTの少なくとも2以上の過剰発現によるタバコにおけるニコチン類縁アルカロイド含量の上昇
QPTはニコチン生合成において役割を果たしていることがよく認識されているが(WO 98/56923参照)、本発明は、タバコにおいてA622NBB1QPTおよびPMTの少なくとも2以上を過剰発現させることによるニコチン合成量のさらなる上昇を意図する。本発明のこの側面にしたがって、A622NBB1QPTおよびPMTの少なくとも2つを含む核酸コンストラクトがタバコ植物細胞に導入される。例示的な核酸コンストラクトは、QPTおよびA622の両方を含みうる。
【0048】
V.タバコのニコチン類縁アルカロイド含量および生産量の上昇
本発明のニコチン含量が上昇している植物は、Wernsman et alによって2 PRINCIPLES OF CULTIVAR DEVELOPMENT: CROP SPECIES (Macmillan 1997)に記載されるように常套の育種または交配によって生産することが出来る。例えば、好適な導入遺伝子を含むタバコ材料から再生された安定な遺伝子工学的手法により操作した形質転換体が、高ニコチン含量形質を望ましい市販の遺伝的背景に移入するのに用いられ、それにより高ニコチン含量とその望ましい背景とを組み合わせて有するタバコ品種または変種が得られる。
【0049】
同様に、例えば、遺伝子工学的手法によりQPTおよびA622を過剰発現させた植物は、QPTを過剰発現する形質転換植物とA622を過剰発現する形質転換植物とを交配することにより生産することが出来る。交配および選抜を繰り返して行うことにより、QPTおよびA622を過剰発現するよう遺伝子工学的手法により操作された植物を選抜することが出来る。
【0050】
いずれの望ましい遺伝子も高ニコチン含量品種に移入することができるが、高ニコチン含量形質を多生産量タバコ背景に導入する必要がある。いくつかの研究により、「生産量の改善はニコチン濃度との間に存在する負の相関によって妨げられてきた」ことが示されている(PRODUCTION, CHEMISTRY AND TECHNOLOGY, D.L. Davis and M.T. Nielson (eds.) Coresta at page 46 (1999))。タバコ育種についての考察において、Dr. Earl Wernsmanは、「生産量のみのための選抜の連続によって、干葉におけるニコチン濃度が低いためにタバコが産業上利用できない集団を導いてしまうであろう」と主張している(Wernsman, Recent Advances in Tobacco Science 25: 5-35 (1999))。彼は「ニコチン合成を上方制御する遺伝子的方法が、ニコチン濃度を維持しつつ生産能力をさらに上昇させるために必要であり得る」と提案している(同文献)。
【0051】
したがって、本発明は、タバコ植物における生産量とニコチン含量との間の「負の相関」を、多生産量タバコ植物においてニコチン生合成酵素をコードする遺伝子を過剰発現させることによって修正する手段を提供する。例示的なニコチン生合成酵素としては、これらに限定されないが、QPTase、PMTase、A622、NBB1、アルギニン脱炭酸酵素 (ADC)、メチルプトレッシン酸化酵素 (MPO)、NADH 脱水素酵素、オルニチン脱炭酸酵素 (ODC)、およびS-アデノシルメチオニン合成酵素 (SAMS)が挙げられる。それにより得られるニコチン含量が上昇している植物は次いで高生産量を維持するいずれかの望ましい市販の遺伝的背景と交配される。好適な高生産量タバコ植物としては、これらに限定されないが、タバコ(Nicotiana tabacum) 品種K 326、NC71、NC72およびRG81が挙げられる。交配および選抜を繰り返した後、遺伝子工学的手法により操作されたニコチン含量および生産量が上昇した植物がしたがって生産される。
【0052】
本発明のさらなる側面は、ニコチン含量と生産量との間の負の相関を打破するための別の戦略としてニコチン含量が上昇している植物と生産量が上昇している植物とを交配することを提供する。
【0053】
「生産量が上昇する遺伝子」には、例えば、野生型コントロール植物と比較しての、光合成産物産生量の上昇、成長速度の上昇、活発性の改善、生産量の増大、CO2固定量の増大、バイオマスの増大、種子生産量の上昇、貯蔵能の改善、生産量の増大、耐病性の上昇、昆虫耐性の上昇、水ストレス耐性の上昇、甘味の増大、デンプン組成の改善、スクロース蓄積および輸送の改善、および酸化ストレスに対する応答の改善によって反映されるような生産能力の上昇とその発現が相関しているあらゆる遺伝子が含まれる。
【0054】
同様に、「生産量が上昇している植物」は、「生産量が上昇する遺伝子」を過剰発現し、例えば、野生型コントロール植物と比較しての、光合成産物産生量の上昇、成長速度の上昇、活発性の改善、生産量の増大、CO2固定量の増大、バイオマスの増大、種子生産量の上昇、貯蔵能の改善、生産量の増大、耐病性の上昇、昆虫耐性の上昇、水ストレス耐性の上昇、甘味の増大、デンプン組成の改善、スクロース蓄積および輸送の改善、および酸化ストレスに対する応答の改善によって反映されるような生産能力の上昇を示す植物またはそのあらゆる部分をいう。
【0055】
例えば、本発明を限定するものではないが、生産量が上昇している植物は病原関連 (PR) 遺伝子を過剰発現させることによって生産することが出来る。タバコにおけるトウモロコシPRms 遺伝子の過剰発現により、バイオマスおよび種子生産量が増大した形質転換タバコ植物が生産されたことが示されている(Murillo et al., Plant J. 36: 330-41 (2003))。同様に、生産量が上昇している植物は、カルビン回路の酵素をコードする遺伝子を過剰発現させることによって生産することが出来る(Tamoi et al. Plant Cell Physiol. 47(3)380-390 (2006))。例えば、ラン藻のフルクトース-1,6/セドヘプツロース-1,7-ビスホスファターゼを過剰発現するタバコ植物は、野生型タバコと比較して増大した光合成功率および生育効率を示した(Miyagawa et al., Nature Biotech. 19: 965-69 (2001))。
【0056】
本発明はまた、同じ植物または細胞における、ニコチン生合成酵素、例えば QPT、PMT、A622またはNBB1をコードする遺伝子の過剰発現、および、生産量が上昇する遺伝子、例えば、PRms、フルクトース-1,6-/セドヘプツロース-1,7-ビスホスファターゼ、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ、およびセドヘプツロース-1,7-ビスホスファターゼ、セドヘプツロース-1,7-ビスホスファターゼの過剰発現による、生産量およびニコチン含量が上昇した植物の生産も意図する。
【0057】
VI.ニコチン非産生細胞におけるニコチン類縁アルカロイドおよび関連化合物の生産
A622およびNBB1をニコチン非産生植物または細胞に導入し、それにより本発明によらなければニコチンまたは関連化合物を産生しない生物または細胞においてニコチンまたは関連化合物を産生させることが出来る。多様な生成物をこのように操作された生物および細胞から産生することが出来、例えば、ニコチン、ニコチンアナログおよびニコチン生合成酵素が挙げられる。
【0058】
「ニコチン非産生植物」は、ニコチンまたは関連ニコチン類縁アルカロイドを産生しないあらゆる植物をいう。例示的なニコチン非産生植物としては、これらに限定されないが、ベラドンナおよびシロイヌナズナが挙げられる。
【0059】
「ニコチン非産生細胞」は、ニコチンまたは関連ニコチン類縁アルカロイドを産生しないあらゆる生物からの細胞をいう。例示的な細胞としては、これらに限定されないが、植物細胞、例えば、ベラドンナ、シロイヌナズナ、ならびに昆虫、哺乳類、酵母、真菌、藻類、または細菌細胞が挙げられる。
【0060】
「ニコチンアナログ」はニコチンの基本構造を有するが、例えば、異なる環置換基を有しうる。例えば、ニコチンアナログは水素 (-H)をメチル基 (-CH3)で置換し得、それによりニコチンのアナログであるノルニコチンが生じる。ニコチンと類似の構造を共有することに加えて、ニコチンアナログは類似の生理的作用を提供しうる。コチニンは、例えば、集中および記憶の改善に対するその正の効果が示されており、したがって、ニコチンアナログである。したがって、ニコチンアナログは、ニコチンと類似の構造的および機能的活性を有するあらゆるすべての化合物を包含するよう広く定義される。
【0061】
VII.新規酵素を用いる化合物の合成
最近、ニコチン受容体を標的とし、神経変性疾患および認知障害に対する治療効果を提供するニコチンアナログの合成に大きな関心が払われてきている。例えば、R.J. Reynolds Tobacco Companyからスピンアウトとして形成された医薬品会社であるTargaceptは、ニューロンニコチン性アセチルコリン受容体(NNR)の選択的活性化に基づきニコチンアナログ薬物を開発し商品化しようと試みている。本発明は新規ニコチン生合成酵素を提供するため、NBB1のみ、またはNBB1およびA622を、新規ニコチンアナログの開発のために使用することは価値があり得る。例えば、本発明の方法およびコンストラクトを用いて、細胞培養系においてニコチンアナログ前駆体を提供することによりニコチン類縁アルカロイドアナログを産生することが出来る。
【0062】
さらに、本発明の酵素をニコチンおよび関連化合物のインビトロ合成のために用いることが出来る。即ち、組換え A622およびNBB1はニコチン類縁アルカロイドおよびニコチン類縁アルカロイドアナログの合成または部分的合成のために利用できる。
【0063】
ニコチン類縁アルカロイド生合成配列
ニコチン類縁アルカロイド生合成遺伝子は、タバコ植物によって例示されるいくつかの植物種において同定されている。したがって、本発明は、植物種のゲノムから単離される、または合成によって生産される、タバコのニコチン類縁アルカロイド生合成量を上昇させるあらゆる核酸、遺伝子、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、またはcDNA 分子を包含する。さらに、かかるニコチン類縁アルカロイド生合成配列の発現は、ニコチン非産生細胞、例えば、昆虫細胞においてニコチン類縁アルカロイドを産生させる。DNAまたはRNAは二本鎖であっても一本鎖であってもよい。一本鎖 DNAはセンス鎖としても知られるコード鎖であってもよいし、またはそれはアンチセンス鎖とも称される非コード鎖であってもよい。
【0064】
NBB1A622QPTおよびPMTは、配列番号1、1B、3、3B、5、5B、7、および7Bにそれぞれ示す配列、ならびに配列番号1、1B、3、3B、5、5B、7、および7Bの1以上の塩基が欠失、置換、挿入または付加されており、ニコチン類縁アルカロイド 生合成活性を有するポリペプチドをコードする変異体を含む核酸分子を含むことが理解される。したがって、「1以上の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列」を有する配列は、コードされるアミノ酸配列が1以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加を有していても生理活性を保持している。さらに、複数の形態のA622、NBB1、QPTase、およびPMTaseが存在し得、それは、遺伝子産物の翻訳後修飾または、それぞれのPMTQPTA622またはNBB1 遺伝子の複数の形態に起因しうる。かかる修飾を有し、ニコチン類縁アルカロイド生合成酵素をコードするヌクレオチド配列は本発明の範囲に含まれる。
【0065】
例えば、ポリAテイルまたは5′-または3′-末端の非翻訳領域は欠失させてもよく、アミノ酸が欠失される程度に塩基が欠失されてもよい。塩基はまた、フレームシフトが起こらない限り置換されてもよい。塩基はまたアミノ酸が付加される程度に「付加」されてもよい。しかし、かかる修飾の結果ニコチン類縁アルカロイド生合成酵素活性が失われないことが必須である。この文脈での修飾DNAは本発明のDNA塩基配列を、特定の部位のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されるように例えば部位特異的突然変異誘発によって修飾することによって得ることが出来る(Zoller & Smith, Nucleic Acid Res. 10: 6487-500 (1982))。
【0066】
ニコチン類縁アルカロイド生合成配列は適当な塩基から最初から合成することが出来、例えば、本明細書に開示する適当なタンパク質配列を、ネイティブなDNA 配列とは異なるが、同じまたは類似のアミノ酸配列を有するタンパク質の産生をもたらすDNA 分子を作るためのガイドとして用いることによって合成できる。このタイプの合成 DNA 分子は、異種タンパク質をコードする、異なる(非植物) コドン使用頻度を反映し、修飾されずに用いられると宿主細胞による不十分な翻訳をもたらしうるDNA 配列を非植物細胞に導入する場合に有用である。
【0067】
「単離」核酸分子は、そのネイティブな環境から取り出されている核酸分子、DNAまたはRNAをいう。例えば、DNAコンストラクトに含まれる組換え DNA 分子は、本発明の目的のために、単離されていると考えられる。単離DNA 分子のさらなる例としては、異種宿主細胞に維持されている組換え DNA 分子または、部分的にまたは実質的に、溶液中に精製されているDNA 分子が挙げられる。単離 RNA 分子には、本発明のDNA 分子のインビトロ RNA 転写産物が含まれる。単離核酸分子には、本発明によると、さらに合成により生じたかかる分子が含まれる。
【0068】
「外来性核酸」は、細胞 (または細胞の祖先)に人間の力を介して導入された核酸、DNAまたはRNAをいう。かかる外来性核酸は、それが導入された細胞に天然にみられる配列のコピーであってもよいし、その断片であってもよい。
【0069】
一方、「内在性核酸」は、遺伝子工学的手法により操作されるべき植物または生物のゲノムに存在する核酸、遺伝子、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、またはcDNA 分子をいう。内在性配列は遺伝子工学的手法により操作されるべき植物または生物にとって「ネイティブ」、即ち常在するものである。
【0070】
「異種核酸」は、それが導入される細胞に天然にみられる配列のコピーではない、細胞 (または細胞の祖先) に導入された核酸、DNAまたはRNAをいう。かかる異種核酸は、それが導入された細胞に天然にみられる配列のコピーまたはその断片であるセグメントを含みうる。
【0071】
「キメラ核酸」はコード配列が天然に存在する細胞においてそれが関連する転写開始領域とは異なる転写開始領域に連結したコード配列またはその断片を含む。
【0072】
特にことわりのない限り、本明細書においてDNA 分子の配列決定により決定されたすべてのヌクレオチド配列は自動DNA 配列決定機を用いて決定された(例えば、Model 373、Applied Biosystems、Inc)。 それゆえ、当該技術分野において知られているように、この自動アプローチにより決定されたあらゆるDNA 配列について、本明細書において決定されたいずれのヌクレオチド配列もいくらかエラーを含んでいる可能性がある。自動的に決定されたヌクレオチド配列は典型的には、配列決定されたDNA 分子の実際のヌクレオチド配列に対して少なくとも 約 95% 同一、より典型的には 少なくとも 約 96%から少なくとも 約 99.9% 同一である。 実際の配列は、当該技術分野に周知のマニュアルDNA 配列決定法を含むその他のアプローチによってより正確に決定することが出来る。これもまた当該技術分野において知られているように、決定されたヌクレオチド配列において、実際の配列と比較して、単一の挿入または欠失は、ヌクレオチド配列の翻訳においてフレームシフトをもたらし、その結果、決定されたヌクレオチド配列によってコードされる予測アミノ酸配列は、配列決定されたDNA 分子によって実際にコードされるアミノ酸配列とは、かかる挿入または欠失の地点から全く異なるものになってしまう。
【0073】
本発明の目的のために、2つの配列は、6X SSC、0.5% SDS、5X デンハルト溶液および100μgの非特異的キャリア DNAのハイブリダイゼーション溶液中で二本鎖複合体を形成することで、ハイブリダイズする。Ausubel et al.、前掲、section 2.9、supplement 27 (1994)を参照。配列は「中程度のストリンジェンシー」でもハイブリダイズし得、中程度のストリンジェンシーは、6X SSC、0.5% SDS、5X デンハルト溶液および100μgの非特異的キャリア DNAのハイブリダイゼーション溶液中、温度60℃と定義される。「高いストリンジェンシー」のハイブリダイゼーションでは、温度を68 ℃に上昇させる。中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション反応の後、ヌクレオチドを 2X SSC + 0.05% SDS の溶液中で室温で5回洗浄し、次いで 0.1X SSC + 0.1% SDSで60 ℃で1時間洗浄する。高いストリンジェンシーについては、洗浄温度は68℃に上昇させる。本発明の目的のために、ハイブリダイズしたヌクレオチドは比放射能10,000 cpm/ngを有する1 ngの放射標識プローブを用いて検出されるものであり、ここでハイブリダイズしたヌクレオチドは、72 時間以内-70 ℃でX-線フィルムに曝露した後明確に目視できる。
【0074】
本出願は、配列番号1、1B、3、3B、5、5B、7、および7Bのいずれかに記載の核酸配列に対して少なくとも 60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な核酸分子に関する。配列番号1、1B、3、3B、5、5B、7、および7Bのいずれかに示す核酸配列に対して少なくとも 95%、96%、97%、98%、99% または100%同一な核酸分子が好ましい。2つの核酸配列の間の相違は参照ヌクレオチド配列の5’または3’末端位置、またはこれら末端位置の間のいずれかにおいて、参照配列におけるヌクレオチドのなかで個々に独立して、または参照配列のなかの1以上の連続する基として、分散して存在しうる。
【0075】
実際には、特定の核酸分子が参照ヌクレオチド配列と少なくとも 95%、96%、97%、98%または99% 同一であるかどうかは、当該技術分野に周知の標準的アルゴリズムを用いた2つの分子間での比較を参照し、公共のコンピュータプログラム、 例えば、BLASTN アルゴリズムを用いて常套的に判定することが出来る(Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25: 3389-402 (1997)参照)。
【0076】
本発明はさらに、それぞれ配列番号1、1B、3、3B、5、5B、7、および7Bのヌクレオチド配列を含む、活性のニコチン生合成酵素をコードする核酸分子を提供し、ここで、酵素はそれぞれ配列番号2、4、6、および8に対応するアミノ酸配列を有し、ここで本発明のタンパク質は、ニコチン生合成酵素の機能を変化させないアミノ酸置換、付加および欠失を含む。
【0077】
「変異体」は、特定の遺伝子またはタンパク質の標準または所定のヌクレオチドまたはアミノ酸配列から逸脱したヌクレオチドまたはアミノ酸配列である。「アイソフォーム」、「アイソタイプ」および「アナログ」の用語も、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の「変異体」形態をいう。1以上のアミノ酸の付加、欠失または置換によって変化したアミノ酸配列、またはヌクレオチド配列の変化は、「変異体」配列であると見なされうる。変異体は「保存的」変化を有していてもよく、ここで置換されたアミノ酸は類似の構造または化学的性質を有し、例えば、ロイシンのイソロイシンによる置換が挙げられる。変異体は「非保存的」変化を有していてもよく、例えば、グリシンのトリプトファンによる置換が挙げられる。類似の非主要な変異には、アミノ酸欠失または挿入またはその両方が含まれうる。どのアミノ酸残基が置換、挿入または欠失しているかを同定するためのガイダンスは、当該技術分野に周知のコンピュータプログラム、 例えば Vector NTI Suite (InforMax、MD)ソフトウェアを用いて見いだすことが出来る。「変異体」はまた、「シャッフルされた遺伝子」もいい、例えばMaxygenに譲渡された特許に記載のものが挙げられる。
【0078】
核酸コンストラクト
本発明の1つの側面によると、ニコチン類縁アルカロイド生合成を上昇させる配列が、植物または細胞の形質転換に好適な核酸コンストラクトに組み込まれる。したがって、かかる核酸コンストラクトは、植物におけるA622NBB1PMTおよびQPTの少なくとも1つの過剰発現、ならびに、例えば、ニコチン非産生細胞におけるA622およびNBB1の発現に利用することが出来る。
【0079】
組換え核酸コンストラクトは標準的技術を用いて作ることが出来る。例えば、転写のためのDNA 配列は、適当なセグメントを切り出す制限酵素により該配列を含むベクターを処理することにより得ることが出来る。転写のためのDNA 配列はまた、好適な制限部位を各末端に与えるために、合成オリゴヌクレオチドのアニーリングおよびライゲーションによって、または、合成オリゴヌクレオチドを使用したポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)によって、作ることが出来る。DNA 配列は次いで、好適な調節要素、例えば、上流プロモーターおよび下流ターミネーター配列を含むベクターにクローニングされる。
【0080】
本発明の重要な側面は、ニコチン類縁アルカロイド生合成をコードする配列が、ニコチン類縁アルカロイド生合成をコードする配列の特定の細胞タイプ、器官または組織における発現を駆動し、正常の発達または生理には悪影響を与えない1以上の調節配列に作動可能に連結されている核酸コンストラクトの使用である。
【0081】
「プロモーター」は、RNA ポリメラーゼおよび転写を開始させるその他のタンパク質の認識および結合に関与する、転写の開始から上流のDNA領域を意味する。「構成的プロモーター」は、植物の全生存期間およびほとんどの環境条件下で活性なものである。組織特異的、組織好適、細胞タイプ特異的、および誘導性プロモーターは、「非構成的プロモーター」のクラスを構成する。「作動可能に連結した」とは、プロモーターと第二の配列との機能的連結であって、プロモーター配列が、第二の配列に対応するDNA 配列の転写を開始および媒介する連結をいう。一般に、「作動可能に連結した」とは、連結された核酸配列が連続していることを意味する。
【0082】
A622、NBB1、PMTase、またはQPTaseの発現を上昇させるために細胞に導入される核酸配列の発現に有用なプロモーターは、構成的プロモーター、例えば、カリフラワーモザイクウイルス (CaMV) 35S プロモーター、または、組織特異的、組織好適、細胞タイプ特異的、および誘導性プロモーターであり得る。好ましいプロモーターとしては、根組織において活性なプロモーター、例えば、タバコ RB7プロモーター (Hsu et al. Pestic. Sci. 44: 9-19 (1995); 米国特許第 5,459,252号)、トウモロコシ プロモーター CRWAQ81 (米国特許出願公開 20050097633号); シロイヌナズナ ARSK1 プロモーター (Hwang and Goodman, Plant J 8:37-43 (1995))、トウモロコシ MR7 プロモーター (米国特許第 5,837,848号)、トウモロコシ ZRP2 プロモーター (米国特許第5,633,363号)、トウモロコシ MTL プロモーター (米国特許第5,466,785および6,018,099号)、トウモロコシ MRS1、MRS2、MRS3、およびMRS4 プロモーター(米国特許出願第20050010974号)、シロイヌナズナ潜在的プロモーター (米国特許出願第20030106105号)、および、ニコチン生合成に関与する酵素の発現の上昇を導く条件下で活性化されるプロモーター、例えば、タバコ RD2 プロモーター (米国特許第 5,837,876号)、PMT プロモーター (Shoji T. et al., Plant Cell Physiol. 41: 831-39 (2000b); WO 2002/038588)またはA622 プロモーター (Shoji T. et al., Plant Mol Biol. 50: 427-40 (2002))が挙げられる。
【0083】
本発明のベクターは終止配列を含んでいてもよく、それは本発明の核酸分子の下流に位置し、mRNAの転写を終了させ、そしてポリA 配列を付加させる。かかるターミネーターの例は、カリフラワーモザイクウイルス (CaMV) 35S ターミネーターおよびノパリンシンターゼ遺伝子 (Tnos) ターミネーターである。発現ベクターはまた、エンハンサー、開始コドン、スプライシングシグナル配列およびターゲティング配列を含んでいてもよい。
【0084】
本発明の発現ベクターはまた、形質転換細胞を培養中で同定しうる選抜マーカーを含んでいてもよい。マーカーは異種核酸分子に連結していてもよく、即ち、プロモーターに作動可能に連結した遺伝子であってよい。本明細書において用いる場合、「マーカー」という用語は、マーカーを含む植物または細胞の選抜またはスクリーニングを可能とする形質または表現型をコードする遺伝子をいう。植物においては、例えば、マーカー遺伝子は、抗生物質または除草剤耐性をコードする。これによって、形質転換または核酸導入されていない細胞のなかからの形質転換細胞の選抜が可能となる。
【0085】
好適な選抜可能なマーカーの例としては、アデノシンデアミナーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ハイグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼ、チミジンキナーゼ、キサンチン-グアニンホスホリボシル基転移酵素、グリフォセートおよびグルフォシネート耐性、およびアミノ-グリコシド 3’-O-ホスホトランスフェラーゼ (カナマイシン、ネオマイシンおよびG418 耐性)が挙げられる。これらのマーカーは、G418、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、カナマイシン、およびゲンタマイシンに対する耐性を含みうる。コンストラクトはまた、グルホシネートアンモニウムなどの除草性ホスフィノトリシンアナログに対する耐性を付与する選抜マーカー遺伝子Barを含んでいてもよい(Thompson et al.、EMBO J. 9: 2519-23 (1987))。その他の好適な選抜マーカーも同様に知られている。
【0086】
可視マーカー、例えば、緑色蛍光タンパク質 (GFP)を用いることも出来る。細胞分裂の制御に基づいて形質転換植物を同定および選抜する方法も記載されている。WO 2000/052168 およびWO 2001/059086を参照。
【0087】
細菌またはウイルス起源の複製配列も、ベクターの細菌またはファージ宿主へのクローニングを可能にするために含めることが出来る。好ましくは、宿主範囲の広い原核生物の複製起点を用いる。細菌のための選抜可能なマーカーを、所望のコンストラクトを担持する細菌細胞の選抜を可能にするために含めることが出来る。好適な原核生物の選抜可能なマーカーには、抗生物質、例えば、カナマイシンまたはテトラサイクリン耐性も含まれる。
【0088】
さらなる機能をコードするその他の核酸配列も当該技術分野において知られているようにベクター中に存在してもよい。例えば、アグロバクテリウムが宿主である場合、T-DNA 配列を含めて、その後の植物染色体への移動および組込みを容易にすることが出来る。
【0089】
遺伝子工学的手法のための植物
本発明は、ニコチン類縁アルカロイド合成のための経路における酵素をコードするポリヌクレオチド配列を導入することによるニコチン類縁アルカロイド合成の上昇のためのタバコ植物の遺伝子操作を包含する。さらに、本発明は、ニコチン非産生植物、例えば、シロイヌナズナおよびベラドンナにおいてニコチン類縁アルカロイドおよび関連化合物を生産させる方法を提供する。
【0090】
「遺伝子工学的手法により操作されている(GE)」とは、宿主生物に核酸または特定の突然変異を導入するあらゆる方法を含む。例えば、タバコ植物が、遺伝子、例えば A622またはNBB1の発現を上昇させ、それによりニコチン含量を上昇させるポリヌクレオチド配列により形質転換されている場合、そのタバコ植物は遺伝子工学的手法により操作されているといえる。一方、ポリヌクレオチド配列により形質転換されていないタバコ植物はコントロール植物であり、「非形質転換」植物と称される。
【0091】
本発明において、「遺伝子工学的手法により操作されている」範疇には、「形質転換」植物および細胞 (以下の定義を参照)、ならびに例えば、以下のような方法を通じた標的変異誘発により生産される植物および細胞が含まれる: Beetham et al.、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 96: 8774-8778 (1999)およびZhu et al.、loc. cit. at 8768-8773に記載のキメラ RNA/DNA オリゴヌクレオチドの使用による、またはPCT出願WO 03/013226に記載のいわゆる「組換え誘導オリゴヌクレオ塩基」による。同様に、遺伝子工学的手法によって操作された植物または細胞は改変ウイルスの導入により産生することも出来、その結果、宿主において本明細書に記載される形質転換植物において得られるものと類似の結果を導く遺伝子修飾がもたらされる(例えば、米国特許第4,407,956号を参照)。さらに、遺伝子工学的手法によって操作された植物または細胞は宿主種または性的に適合性の種由来の核酸配列のみを導入することによって実施されるネイティブアプローチ (即ち、外来ヌクレオチド配列を伴わない)の産物であってもよい(例えば、米国特許出願公開第2004/0107455号参照)。
【0092】
「植物」は、植物体全体、植物器官 (例えば、葉、茎、根等)、種子、分化または未分化植物細胞、およびそれらの子孫を含む用語である。植物材料としてはこれらに限定されないが、種子懸濁培養物、胚、成長点領域、カルス組織、葉、根、シュート、茎、果実、配偶体、胞子体、花粉、および小胞子が挙げられる。本発明に用いることが出来る植物のクラスは一般的に遺伝子工学的手法技術を受け入れられる高等植物のクラスと同じ広さであり、単子葉および双子葉植物の両方、ならびに裸子植物が含まれる。好ましいニコチン生産性植物には、ナス科のタバコ属、ズボイシア属、アントセリシス(Anthocericis)およびサルピグレシス(Salpiglessis) 属またはキク科のエクリプタ(Eclipta)およびジニア(Zinnia)属が挙げられる。
【0093】
「タバコ(Tobacco)」は、ニコチン類縁アルカロイドを産生するタバコ属のあらゆる植物をいう。タバコはまた、タバコ植物によって産生された材料を含む製品のこともいい、それゆえ、例えば、拡張された(expanded)タバコ、再構成された(reconstituted)タバコ、巻きタバコ、葉巻、かみタバコまたはGEによりニコチン含量が上昇したタバコから作られる煙なしタバコ、嗅ぎタバコおよびスヌースの形態が含まれる。タバコ種の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる: Nicotiana acaulis, Nicotiana acuminata, Nicotiana acuminata var. multiflora, Nicotiana africana, Nicotiana alata, Nicotiana amplexicaulis, Nicotiana arentsii, Nicotiana attenuata, Nicotiana benavidesii, Nicotiana benthamiana, Nicotiana bigelovii, Nicotiana bonariensis, Nicotiana cavicola, Nicotiana clevelandii, Nicotiana cordifolia, Nicotiana corymbosa, Nicotiana debneyi, Nicotiana excelsior, Nicotiana forgetiana, Nicotiana fragrans, Nicotiana glauca, Nicotiana glutinosa, Nicotiana goodspeedii, Nicotiana gossei, Nicotiana hybrid, Nicotiana ingulba, Nicotiana kawakamii, Nicotiana knightiana, Nicotiana langsdorffii, Nicotiana linearis, Nicotiana longiflora, Nicotiana maritima, Nicotiana megalosiphon, Nicotiana miersii, Nicotiana noctiflora, Nicotiana nudicaulis, Nicotiana obtusifolia, Nicotiana occidentalis, Nicotiana occidentalis subsp. hesperis, Nicotiana otophora, Nicotiana paniculata, Nicotiana pauciflora, Nicotiana petunioides, Nicotiana plumbaginifolia, Nicotiana quadrivalvis, Nicotiana raimondii, Nicotiana repanda, Nicotiana rosulata, Nicotiana rosulata subsp. ingulba, Nicotiana rotundifolia, Nicotiana rustica, Nicotiana setchellii, Nicotiana simulans, Nicotiana solanifolia, Nicotiana spegazzinii, Nicotiana stocktonii, Nicotiana suaveolens, Nicotiana sylvestris, N. tabacum, Nicotiana thyrsiflora, Nicotiana tomentosa, Nicotiana tomentosiformis, Nicotiana trigonophylla, Nicotiana umbratica, Nicotiana undulata, Nicotiana velutina, Nicotiana wigandioides, および Nicotiana x sanderae。
【0094】
本明細書の記載において、「タバコ毛状根」は、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)のRi プラスミドからのT-DNAをゲノムに組み込んでおり、オーキシンおよびその他の植物ホルモンを追加していない培地で成育するタバコの根をいう。タバコ毛状根は、タバコ植物の根と同様にニコチン類縁アルカロイドを産生する。これらのタイプの根は、速い生育、頻繁な枝分れ、傾斜屈性、およびインタクトな植物の根と同じ化合物を合成する能力により特徴づけられる(David et al.、Biotechnology 2: 73-76.(1984))。ナス科植物の根はトロパンアルカロイド生合成の主要な部位であり、したがって毛状根培養物もこれら代謝産物を高含量にて蓄積することが出来る。例えば、Oksman-Caldentey & Arroo, “Regulation of tropane alkaloid metabolism in plants and plant cell cultures,” in METABOLIC ENGINEERING OF PLANT SECONDARY METABOLISM 253-81 (Kluwer Academic Publishers, 2000)参照。
【0095】
遺伝子工学的手法のためのニコチン非産生細胞
本発明は、ニコチン類縁アルカロイドの産生に関与する酵素をコードする核酸配列により「ニコチン非産生細胞」を遺伝子工学的手法により操作することを意図する。ニコチン非産生細胞とは、ニコチンを産生しない生物からの細胞をいう。例示的な細胞としては、これらに限定されないが、植物細胞、例えば、ベラドンナ、シロイヌナズナ、ならびに昆虫、哺乳類、酵母、真菌、藻類、または細菌細胞が挙げられる。好適な宿主細胞はさらにGoeddel, GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)において記載されている。
【0096】
「昆虫細胞」とは、ニコチン生合成酵素をコードする遺伝子によって形質転換され得、回収可能な量にて酵素またはその産物を発現することができるあらゆる昆虫細胞をいう。例示的な昆虫細胞としては、Sf9 細胞(ATCC CRL 1711)が挙げられる。
【0097】
「真菌細胞」とは、ニコチン生合成酵素をコードする遺伝子によって形質転換され得、回収可能な量にて酵素またはその産物を発現することができるあらゆる真菌細胞をいう。例示的な真菌細胞としては酵母細胞、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerivisae)(Baldari、et al.、1987. EMBO J. 6: 229-234)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)(例えば、Invitrogen から入手可能なピキア・パストリス KM714)が挙げられる。糸状菌細胞、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)およびトリコデルマ(Trichoderma)も用いることが出来る(Archer、et al.、Antonie van Leeuwenhoek 65: 245-250 (2004))。
【0098】
「細菌細胞」とは、ニコチン類縁アルカロイド生合成酵素をコードする遺伝子によって形質転換され得、回収可能な量にて酵素またはその産物を発現することができるあらゆる細菌細胞をいう。例示的な細菌細胞としては、大腸菌、例えば、QIAGENから市販されている大腸菌株 M15/rep4が挙げられる。
【0099】
「哺乳類細胞」とは、ニコチン生合成酵素をコードする遺伝子によって形質転換され得、回収可能な量にて酵素またはその産物を発現することができるあらゆる哺乳類細胞をいう。例示的な哺乳類細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO) またはCOS 細胞が挙げられる。哺乳類細胞はまた、ニコチン類縁アルカロイド生合成酵素-コード配列が導入された受精卵母細胞または胚性幹細胞も含みうる。かかる宿主細胞は次いで非ヒト形質転換動物の作製に使用されうる。哺乳類細胞におけるタンパク質の制御された発現システムの例としては、ClontechのTet-Off and Tet-On遺伝子発現系および類似のシステムが挙げられる(Gossen and Bujard、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 55475551 (1992))。
【0100】
「藻類細胞」とは、正常の藻類の発達または生理に悪影響を与えることなく、ニコチン生合成酵素をコードする遺伝子により形質転換されうるあらゆる藻類種をいう。例示的な藻類細胞としては。コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)が挙げられる(Mayfield and Franklin、Vaccine 23: 1828-1832 (2005))。
【0101】
昆虫細胞におけるニコチン類縁アルカロイドの産生は、昆虫の生育および発達に悪影響を与えうるので、誘導性発現系が有害な影響を軽減しうる。例えば、昆虫細胞は所望の段階までまず非誘導条件下で生育させて、次いで酵素の発現を誘導する。
【0102】
さらに、ニコチン類縁アルカロイド生合成遺伝子を発現する細胞にニコチン類縁アルカロイド合成のための基質利用性を高める前駆体を与えるとよい。細胞に天然ニコチン類縁アルカロイドのアナログに組み込まれうるアナログまたは前駆体を与えるとよい。
【0103】
形質転換および選抜
ニコチンはタバコ(N. tabacum)およびタバコ属におけるいくらかのその他の種において主要なアルカロイドであるが、その他の植物もニコチン産生能を有し、例えば、ナス科のズボイシア属、アントセリシス(Anthocericis) およびサルピグレシス(Salpiglessis) 属、ならびにキク科のエクリプタ(Eclipta)およびジニア(Zinnia)属が挙げられる。本発明のコンストラクトおよび方法を用いることにより、ニコチンは、ニコチン非産生植物、例えば、ベラドンナおよびシロイヌナズナ、ならびに例えば、昆虫、真菌、および細菌細胞などの細胞においても産生されうる。
【0104】
本明細書の目的のために、植物またはニコチン非産生細胞、例えば、真菌細胞は、それぞれプロモーターに作動可能に連結した1以上の配列を含むプラスミドによって形質転換してもよい。例えば、例示的なベクターは、プロモーターに作動可能に連結したQPT 配列を含みうる。同様に、プラスミドは、プロモーターに作動可能に連結したQPT 配列およびプロモーターに作動可能に連結したA622 配列を含んでいてもよい。あるいは、植物またはニコチン非産生細胞は2以上のプラスミドによって形質転換してもよい。例えば、植物またはニコチン非産生細胞は、A622またはNBB1 配列を含む第二のプラスミドとは異なる、プロモーターに作動可能に連結したQPT 配列を含む第一のプラスミドによって形質転換してもよい。もちろん、第一および第二のプラスミドまたはそれらの部分は同じ細胞に導入される。
【0105】
植物形質転換
「形質転換植物」は、他の生物や種においても存在する、あるいは、他の生物や種由来であって宿主のコドンユーセージに最適化された核酸配列を含む植物をいう。単子葉および双子葉の両方の被子植物または裸子植物の植物細胞を当該技術分野において知られている様々な方法で形質転換することができる。例えば、Klein et al.、Biotechnology 4: 583-590 (1993); Bechtold et al.、C. R. Acad. Sci. Paris 316:1194-1199 (1993); Bent et al.、Mol. Gen. Genet. 204:383-396 (1986); Paszowski et al.、EMBO J. 3: 2717-2722 (1984); Sagi et al.、Plant Cell Rep. 13: 262-266 (1994) を参照。アグロバクテリウム種、例えば、アグロバクテリウム・トゥメファシエンス(A. tumefaciens)およびアグロバクテリウム・リゾゲネス(A. rhizogenes)を例えば、Nagel et al.、Microbiol Lett 67: 325 (1990)にしたがって用いることが出来る。さらに、植物は、リゾビウム、シノリゾビウムまたはメソリゾビウム形質転換によって形質転換することができる( Broothaerts et al.、Nature 433:629-633 (2005))。
【0106】
例えば、アグロバクテリウムを、例えば、エレクトロポレーションを介して植物発現ベクターによって形質転換することができ、その後、アグロバクテリウムは植物細胞に、例えば、周知のリーフディスク法を介して導入される。これを達成するさらなる方法としてはこれらに限定されないが、エレクトロポレーション、パーティクルガン、リン酸カルシウム沈殿、およびポリエチレングリコール融合、出芽花粉粒への移入、直接形質転換 (Lorz et al.、Mol. Genet. 199: 179-182 (1985))、およびその他の当該技術分野において知られている方法が挙げられる。選抜マーカー、例えばカナマイシン耐性を用いると、どの細胞が形質転換に成功したのかを判定することがより容易になる。マーカー遺伝子を特異的リコンビナーゼ、例えば creまたはflpによって認識される組換え部位の対内に含めて、選抜後のマーカーの除去を容易にすることが出来る。米国特許出願公開第2004/0143874号を参照。
【0107】
マーカー遺伝子を有さない形質転換植物は、A622またはNBB1 配列を含む第一のプラスミドとは別の、マーカーをコードする核酸を含む第二のプラスミドを用いて作ることが出来る。第一および第二のプラスミドまたはそれらの部分を同じ植物細胞に導入して、一過性に発現する選抜可能なマーカー遺伝子で形質転換された植物細胞を同定し、A622またはNBB1 配列がゲノムに安定に組み込まれており、選抜可能なマーカー遺伝子は安定には組み込まれていない形質転換植物を得る。米国特許出願公開第2003/0221213号を参照。A622またはNBB1 配列を含む第一のプラスミドはT-DNA 領域を有するバイナリーベクターであってもよく、当該T-DNAは、野生型非形質転換タバコまたは性的に和合性のタバコ種に存在する核酸配列から完全に構成されている。
【0108】
上記のアグロバクテリウム形質転換法は、双子葉植物の形質転換に有用であることが知られている。さらに、de la Pena et al.、Nature 325: 274-276 (1987)、Rhodes et al.、Science 240: 204-207 (1988)、およびShimamato et al.、Nature 328: 274-276 (1989)は、アグロバクテリウムを用いて穀類単子葉植物を形質転換した。アグロバクテリウム媒介形質転換のための減圧浸潤法を記載している、Bechtold et al.、C.R. Acad. Sci. Paris 316 (1994)も参照されたい。
【0109】
形質転換細胞または培養から形質転換植物を再生する方法は植物種によって異なるが、既知の方法に基づくものである。例えば、形質転換タバコ植物を再生する方法は周知である。A622NBB1PMTおよびQPTの少なくとも1つの発現が上昇している遺伝子工学的手法により操作された植物が選抜される。さらに、本発明の遺伝子工学的手法により操作された植物はニコチン含量および生産量が上昇している可能性がある。
【0110】
ニコチン非産生細胞形質転換
本発明によるコンストラクトは、好適な形質転換技術、例えば、植物細胞のアグロバクテリウム媒介形質転換、パーティクルガン、エレクトロポレーション、およびポリエチレングリコール融合、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、またはカチオン性脂質媒介トランスフェクションを用いてあらゆる細胞の形質転換に用いることが出来る。
【0111】
ニコチン非産生細胞を選抜または可視マーカーを使用せずに本発明の核酸コンストラクトで形質転換してもよく、形質転換生物は導入したコンストラクトの存在の検出により同定することが出来る。特定の細胞におけるタンパク質、ポリペプチド、または核酸分子の存在は、例えば、細胞の形質転換またはトランスフェクションが成功したかを判定するために測定することが出来る。例えば、当該技術分野において常套であるように、導入したコンストラクトの存在は、PCRまたはその他の好適な特定の核酸またはポリペプチド配列を検出するための方法によって検出することが出来る。さらに、形質転換細胞は、同様の条件下で培養した非形質転換細胞の成長速度または形態的特徴と比較しての形質転換細胞の成長速度または形態的特徴の相違を認識することによって同定することが出来る。WO 2004/076625を参照されたい。
【0112】
本明細書の目的のために、A622およびNBB1を異種性に発現する遺伝子工学的手法により操作された細胞が選抜される。
【0113】
ニコチン類縁アルカロイド含量の定量
遺伝子工学的手法により操作されている植物および細胞は、ニコチン類縁アルカロイド含量が上昇していることを特徴とする。同様に、形質転換されたニコチン非産生細胞は、ニコチン類縁アルカロイドを産生することを特徴とする。
【0114】
本発明の植物の説明において、「ニコチンまたはニコチン類縁アルカロイド含量の上昇」という表現は、非形質転換コントロール植物または細胞と比較した場合の植物または細胞中のニコチン類縁アルカロイドの量的上昇をいう。「ニコチン含量が上昇している植物」は、同じ種または品種のコントロール植物のニコチン含量の10%を超えて、好ましくは 50%、100%、または200%を超えてニコチン含量が上昇した遺伝子工学的手法により操作されている植物を含む。
【0115】
形質転換が成功したニコチン非産生細胞は、ニコチン類縁アルカロイドを合成することを特徴とする。例えば、形質転換ニコチン非産生細胞はニコチンを産生しうるが、非形質転換コントロール細胞は産生しない。
【0116】
ニコチン類縁アルカロイド含量の量的上昇はいくつかの方法によりアッセイでき、例えば、ガス液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ラジオイムノアッセイおよび酵素結合性免疫吸着検定法などに基づく定量方法が挙げられる。本発明において、ニコチン類縁アルカロイド量は、キャピラリーカラムおよびFID 検出器を備えたガス液体クロマトグラフィーにより、Hibi et al.、Plant Physiology 100: 826-835 (1992)に記載のようにして測定した。
【0117】
生産量(yield)の定量
本発明の遺伝子工学的手法により操作されている植物および細胞は、ニコチン類縁アルカロイド含量および生産量が上昇していることを特徴とする。遺伝子工学的手法により操作されている植物におけるニコチン類縁アルカロイドの産生は好ましくは、ニコチン生合成経路遺伝子、例えば、A622NBB1PMT、またはQPTを発現させることにより達成される。
【0118】
本発明の植物の説明において、「生産量の上昇」または「多生産量」という語は、植物の生産量または該植物の生産高の、ニコチン含量が上昇したコントロール植物または該植物の生産高と比較した場合の量的上昇をいう。「生産量が上昇している植物」は、ニコチン含量が上昇している植物または該植物の生産高と同じ植物または該植物の生産高をうみだす遺伝子工学的手法により操作されている植物を含み、同じ種または品種のニコチン含量が上昇したコントロール植物の生産量の好ましくは110%を超える、より好ましくは125%を超えるものを含む。
【0119】
光合成功率の量的上昇はいくつかの方法によってアッセイすることが出来、例えば、光合成速度、例えば、ガス交換およびCO2 固定、およびクロロフィル蛍光の定量が挙げられる(Miyagawa et al., Plant Cell Physiol. 41, 311-320 (2000))。光合成速度はまた、Leegood, Carbon Metabolism In Photosynthesis and production in a changing environment: a field and laboratory manual (eds Hall, Scurlock, Bolhar-Nordenkampf, Leegood, & Long) 247-267 (Chapman & Hall, London; 1993)に記載のように代謝産物および炭水化物含量を測定することによっても定量することが出来る。あるいは、光合成活性は、酵素活性、例えば Rubisco 活性に基づいて算出することが出来る(Portis、A.R. J. Exp. Bot. 46:1285-1291 (1995))。
【0120】
もちろん、生産量の上昇は、より容易に識別できる特徴の測定により判定することが出来、例えばこれらに限定されないが、植物の高さ、重量、葉の大きさ、開花時期、作られる種子の数および種子の重量が挙げられる。
【0121】
ニコチン含量が上昇した製品
本発明は、ニコチン含量が上昇している遺伝子工学的手法により操作された植物、ならびにニコチンまたは関連化合物を産生する遺伝子工学的手法により操作されたニコチン非産生細胞を提供し、ここで、該細胞は、ニコチンを産生しない生物に由来する。様々な製品がかかる遺伝子工学的手法により操作されている植物から製造されうる。同様に、ニコチンまたは関連化合物の産生のために遺伝子工学的手法により操作されている細胞から製品が製造されうる。
【0122】
草食動物抵抗性植物
ニコチンは有害生物による損傷からのタバコ植物の保護を助ける天然の殺虫剤として役立つ。常套的に育種または形質転換されたニコチン低含量タバコは昆虫による損傷に対する感受性が上昇しているということが示された(Legg、P.D.、et al.、Can. J. Cyto.、13:287-291 (1971); Voelckel、C.、et al.、Chemoecology 11:121-126 (2001); Steppuhn、A.、et al.、PLoS Biol、2(8): e217: 1074-1080 (2004))。本発明の方法およびコンストラクトを用いて、昆虫およびその他の有害生物による損傷に対する抵抗性が上昇したニコチン含量が上昇している植物を生産することが出来る。同様に、有害生物に対する抵抗性の上昇は、本発明によりニコチンを産生するように遺伝子工学的手法により操作されたニコチン非産生植物、例えば、ベラドンナおよびシロイヌナズナ(A. thaliana)においても達成されうる。
【0123】
ニコチン高含量タバコ製品
本発明のコンストラクトおよび方法を用いて、例えば、巻きタバコ、葉巻、およびその他の伝統的なタバコ製品、例えば、嗅ぎタバコおよびスヌース(snus)を生産することが出来る。さらに、煙の成分、例えばタールに対する曝露が低減されているが、常套の巻きタバコと同様またはそれより上昇したニコチンを送達できるニコチン含量が上昇した巻きタバコを生産することが出来る。
【0124】
本明細書の記載において、ニコチン含量が上昇したタバコ製品は、葉タバコ、粉砕タバコ、刻みタバコ、挽いたタバコ、再構成されたタバコ、拡張(expanded)または膨らんだ(puffed)タバコおよびタバコ画分、例えば、ニコチンの形態であり得る。ニコチン含量が上昇したタバコ製品は、巻きタバコ、葉巻、パイプタバコ、およびいずれかの形態の煙なしタバコ、例えば、嗅ぎタバコ、スヌース、またはかみタバコを含みうる。
【0125】
異なるタバコのタイプまたは品種をタバコ製品、例えば、巻きタバコにブレンドすることはタバコ業界において一般的である。それゆえ、ニコチン含量が上昇したタバコは非形質転換タバコとあらゆるパーセンテージにてブレンドすることにより、利用されるニコチン含量が上昇したタバコのニコチン含量までの所望のニコチン含量のあらゆる含量を得ることができ、タバコ製品を製造することが出来ることが理解される。
【0126】
ニコチン含量が上昇した巻きタバコは特に有益である。というのは、研究によりニコチン量が上昇すると、喫煙者が吸入するタールおよび一酸化炭素が少なくなることが示されているからである。Armitage et al., Psychopharmacology 96:447-453 (1988); Fagerstroem, Psychopharmacology 77:164-167 (1982); Russell, Nicotine and Public Health 15:265-284 (2000)およびWoodman et al., European Journal of Respiratory Disease 70:316-321 (1987)を参照されたい。
【0127】
タバコの煙は4,000を超える種類の化合物の非常に複雑な混合物である(Green & Rodgman, Recent Advances in Tobacco Science 22: 131-304 (1996); IOM Report, page 9 of executive summary)。タバコの煙は二相から構成される: 「タール」または総粒子状物質と一般に称される粒子状相、および、ガスおよび半揮発性化合物を含む蒸気相である。「タール」についての一般的な定義は、巻きタバコを機械により喫煙させた場合にケンブリッジパッドにより捕獲される「ニコチン非含有乾燥煙」または「ニコチン非含有乾燥粒子状物質」(NFDPM)である。より具体的には、「タール」は、水およびニコチンを除く煙から単離される総粒子状物質である。タールはタバコの煙の重量の10パーセント未満を構成する。にもかかわらず煙のもっとも有害な化合物の大部分を含有するのはタール成分である。
【0128】
高感度の生物学的アッセイと組み合わせた分析方法により、タバコの煙中に69の発癌物質が同定された。THE CHANGING CIGARETTE: CHEMICAL STUDIES AND BIOASSAYS, Chapter 5, Smoking and Tobacco Control Monograph No. 13 (NIH Pub. No. 02-5074, October 2001)参照。しかし、タバコの煙のすべての成分が同等の毒性を有するわけではないことが研究者に明らかとなってきた。注目すべきことに、1964年の最初のU.S. Surgeon General’s report on smokingでは、ニコチンは喫煙者によって吸入される量ではおそらくは毒性ではないことが結論づけられるに至り、喫煙者にとっての第一の薬理学的利益のソースは目前の課題ではないことが示唆された。1964年のSurgeon General’s report には、74頁において、「ニコチンへの長時間の曝露が客観的性質の危険な機能的変化または変性疾患をもたらすということを示す受け入れられる証拠はない」と記載されている。
【0129】
実際、米国食品医薬品局は、禁煙療法における使用のためのニコチン代替品、例えば、パッチおよびチューインガムの販売を許可している。これら代替品は1箱の巻きタバコよりも多くのニコチンを一日につき送達しうる。IOM Reportの167頁には、「ニコチンの多くの研究は、ニコチンはおそらくヒトにおける癌誘発剤ではなく、最悪でも、その発癌性はタバコの他の成分と比較して軽微なものであろうということを示唆している。発癌物質としてのニコチンの考慮は、あるとしても、その他のタバコの成分のリスクと比較して軽微である」と記載されている。
【0130】
巻きタバコは、例えば、巻きタバコが標準条件にしたがって機械により喫煙された場合に生じるタールおよびニコチンの量を測定するFTC (米国)またはISOの喫煙機械方法によって一般に評価される。Pillsbury et al.、J. Assoc. Off. Analytical Chem. (1969); ISO: 4387 (1991)を参照されたい。PCT 出願 WO 2005/018307において分析されたように、ほとんどの市販の巻きタバコは一般にミリグラムにて測定して、ニコチン1 部に対して約 10〜15部の「タール」をもたらす。多くの公衆衛生当局者は、現在のFTC/ISO 機械喫煙体制は、その方法ではニコチン欲求によって第一にもたらされるヒトの喫煙行動を考慮することが出来ないため、欠点があると信じている。換言すると、これらの方法は代償性喫煙を考慮していない。補償とも称される代償性喫煙は、本質的に、タバコの煙中におけるニコチン量の低下に起因する過剰喫煙(より熱心に喫煙すること)またはニコチン量の上昇に起因する過小喫煙(より熱心でなく喫煙すること) を意味する。Benowitz, N. Compensatory Smoking of Low Yield Cigarettes, NCI Monograph 13を参照されたい。
【0131】
新規な喫煙機械方法が現在評価されており、特に低生産量銘柄の代償性喫煙を考慮する方法が評価されている。一例はISO ニコチン量よりも低いニコチンを有する銘柄がより熱心に機械喫煙されるように喫煙パラメーターを調整した方法である(Kozlowski and O'Connor Lancet 355: 2159 (2000))。提案されている別の方法では、ニコチン単位に基づく、または規定された「標的」ニコチン量における毒素の量が測定される。これは、例えば、一吹きの煙の体積、一吹きの煙の間隔を体系的に変動させること、および通気口を標的ニコチン量に達するまで封鎖することにより達成される。巻きタバコは次いで標的ニコチン量に至るまでに要求される労力およびその量での毒素送達に基づいて評価されうる。消費者は様々な銘柄の間での特定の毒素の比較が評価できるためかかる喫煙機械方法から恩恵をこうむるであろう。
【0132】
研究により多くの喫煙者はほとんどの「ライト」および「ウルトラライト」巻きタバコにより本格風味の巻きタバコと同量の煙を吸入していることが示唆された(Gori and Lynch、Regulatory Toxicology and Pharmacology 5:314-326)。喫煙者は、重要な感覚的特性である所望のニコチン効果および煙の口当たりを得るために、(FTC またはISO方法に基づいて) より低量の巻きタバコを (より高量の巻きタバコと比べて)より熱心に補償または喫煙しうる(Rose, J.E. “The role of upper airway stimulation in smoking,” in Nicotine Replacement: A Critical Evaluation, p.95-106, 1988)。
【0133】
喫煙者が補償しうる手段には、巻きタバコ当たりの一吹きの頻度およびかかる一吹きの煙の吸入体積、吐く前に保持される煙吸入の持続時間、特定の時間内に喫煙される巻きタバコの数および喫煙される各巻きタバコのパーセンテージ(巻きタバコが完全に喫煙されるまでの長さ)が含まれる。
【0134】
吸入された煙の体積の単位当たりのニコチンのパーセンテージが増加すると、多くの喫煙者は補償し、より少量の煙を吸入することとなりうる(Gori G.B., Virtually Safe Cigarettes. Reviving an opportunity once tragically rejected. IOS Press. Amsterdam, (2000))。巻きタバコにおけるニコチンのパーセンテージが高いほど、タバコの煙におけるニコチンのパーセンテージも高くなる。より具体的には、巻きタバコの充填物におけるニコチンのパーセンテージが高いほど、タバコの煙におけるニコチンのパーセンテージも高くなる。「充填物」とは、巻きタバコまたは巻きタバコ様装置により巻かれたあらゆる喫煙可能物質を意味し、以下を含む:(a) 再構成されたタバコおよび拡張されたタバコを含むがこれらに限定されないすべてのタバコ、(b) (a)に付随しうるあらゆる非タバコ代用物; (c) タバコ外皮、(d) (a)、(b)または(c)に補充される香料を含むその他の添加物。巻きタバコ様装置は、タバコ物質の加熱により形成される代替的「煙」エアロゾルを介してニコチンを送達するよう特別に意図されたあらゆる装置である。かかる装置の特徴は、最小限の燃焼熱分解を示す、またはまったく燃焼熱分解を示さないグリセリンまたはグリセリン代用物を高含量にて含むことである。加熱されるとグリセリンは迅速に揮発し、吸入されうるエアロゾルを形成し、外観および感覚において常套のタバコの煙と非常に似ている。
【0135】
それゆえ、巻きタバコまたは巻きタバコ様装置に含まれるタバコ充填物のニコチン含量は、その他のすべての因子 (これらに限定されないが以下を含む: フィルター、その気孔率を含む巻きタバコの巻紙、プラグの包装、および用いる先端の紙のタイプ、およびフィルター通気量) を一定に維持すると、主流のタバコの煙におけるニコチンの2倍の上昇に対応するためにはほぼ2倍にならなければならない。さらに、巻きタバコまたは巻きタバコ様装置に含まれるタバコ充填物のニコチン含量は、その他のすべての因子を一定に維持すると、主流のタバコの煙におけるニコチンの3倍の上昇に対応するためにはほぼ3倍にならなければならない。このセクションにおける計算は、ニコチン含量における記載した上昇により増強された巻きタバコの主流の煙におけるプロトン化したニコチンに関するものであり、「遊離」または「揮発性」ニコチンに関するものではない。
【0136】
本発明の1つの好ましい態様において、ニコチンが2倍まで上昇しているニコチン含量が上昇しているタバコ植物を含む曝露が低減された(reduced-exposure)巻きタバコが製造される。本発明の別の好ましい態様において、ニコチン含量が2倍を超えて上昇しているニコチン含量が上昇したタバコを含む曝露が低減された巻きタバコが製造される。
【0137】
North Carolina State UniversityのAgricultural Research Serviceを介して実行される品種試験プログラムは、Regional Minimum Standards Programを介して育種 系統を評価し、North Carolina Official Variety Test (NCOVT)を介して市販の品種を評価する。NCOVT、Three-Year Average from 2001-2003において報告された煙硬化(flue-cured) 市販品種の総アルカロイド濃度は2.45 から3.17 パーセントの範囲である(Smith et al., “Variety Information,” Chapter 3 in: NORTH CAROLINA OFFICIAL VARIETY TEST (2004), Table 3.1)。その3年間の平均総アルカロイド濃度は、実施例4-6および9-14に用いた品種であるK-326について2.5 パーセントであった。分光法を用いて本発明のタバコおよびニコチン含量が上昇している植物の総アルカロイド含量を測定する目的で、上記NCOVTにおけるタバコ品種の総アルカロイド含量を測定する(USA/Technical Advisory Group ISO/TC 126 - Tobacco and tobacco products: ISO/DIS 2881)。図面を含めて本明細書に開示されるように、いくらかのニコチン含量が上昇している植物は、野生型 K326 コントロールのニコチン蓄積量よりも少なくとも2倍または3倍以上ニコチンを蓄積する能力を有することが明らかである。同様に、実施例4〜6において、NBB1およびA622 過剰発現により、野生型コントロールと比較してニコチン含量が2倍または3倍上昇する。
【0138】
「硬化(Curing)」は、水分を低下させ、クロロフィルの破壊をもたらしてタバコの葉を金色にし、そしてデンプンを糖に変換する熟成プロセスである。硬化されたタバコはそれゆえ、収穫された緑の葉と比較して還元糖含量が高く、デンプン含量が低い。「煙硬化タバコ」は、換気した倉庫中で熱によってタバコ植物を乾燥させる方法をいい、特有の色、高い還元糖含量、中程度から高度のこくおよび非常になめらかな喫煙特性を特徴とする(Bacon et al.、Ind. Eng. Chem. 44: 292 (1952))。
【0139】
タバコ-特異的ニトロソアミン(TSNA)は硬化および加工処理の際に主に形成される発癌物質のクラスである(Hoffman、D.、et al.、J. Natl. Cancer Inst. 58、1841-4 (1977); Wiernik A et al.、Recent Adv. Tob. Sci、(1995)、21: 3980)。TSNA、例えば、4-(N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン (NNK)、N′-ニトロソノルニコチン (NNN)、N′-ニトロソアナタビン (NAT)、およびN′-ニトロソアナバシン (NAB)は、ニコチンおよびその他の微量のタバコのアルカロイド、例えば、ノルニコチン、アナタビン、およびアナバシンのN-ニトロソ化によって形成される。
【0140】
タバコにおけるアルカロイド含量とTSNA 蓄積との間には正の相関が存在するのでニコチン含量が上昇したタバコのニトロソアミン含量はより高い可能性がある。例えば、アナタビンとNATとの間の有意な相関係数は0.76であることが判明した(Djordjevic et al.、J. Agric. Food Chem.、37: 752-56 (1989))。しかし、米国特許第5,803,081、6,135,121、6,805,134、6,895,974 および6,959,712号および米国特許出願公開2005/0034365、2005/0072047、2005/0223442、2006/0041949、およびPCT 出願公開 WO 2006/091194等は、本発明を用いるタバコ製品に適用可能な、タバコ-特異的ニトロソアミンを低減する方法について論じている。
【0141】
したがって、本発明は、ニコチン含量が上昇している巻きタバコおよびその他のタバコ製品を生産するためのコンストラクトおよび方法を提供する。望ましい曝露が低減された巻きタバコは、受け入れられる味を維持しつつ可能な限り有効に巻きタバコ当たりのニコチンの所望の含量を喫煙者に送達すべきである。WO 05/018307を参照されたい。
【0142】
再構成されたタバコ、拡張されたタバコおよびブレンド
ニコチン含量が上昇したタバコは、再構成されたシート状タバコ (Recon)および拡張されたタバコまたは膨らんだタバコの生産に使用することもできる。Reconは、以下から生産することが出来る: タバコの灰、茎、小さな葉粒子、タバコ加工処理および巻きタバコ製造のその他の副産物および場合によっては未加工の全葉。製造者よって異なるが、reconプロセスは、典型的な製紙プロセスに非常に類似しており、様々なタバコ画分の加工処理およびそしてreconシートの巻きタバコ(刻みタバコ)に類似のサイズおよび形状への切断を伴う。
【0143】
さらに本発明によると、ニコチン含量が上昇したタバコは、多くの巻きタバコの銘柄において重要な成分である膨らんだタバコとしても知られる拡張されたタバコの生産にも用いることが出来る。拡張されたタバコは、好適なガスの膨張を介して作られ、それによりタバコは「一吹きの煙」とされ、その結果、密度が低下し充填能力が上昇し、それによって巻きタバコに用いられるタバコの重量が低下する。出発物質としてニコチン含量が上昇したタバコを用いることにより、結果として得られる拡張されたタバコでできた巻きタバコの、毒性の化学物質、例えば、タールおよび一酸化炭素のニコチンに対する比が低減される。
【0144】
ニコチン含量が上昇した拡張されたタバコ、ニコチン含量が上昇した Recon、およびニコチン含量が上昇した刻みタバコは、これら3つの間で所望のパーセンテージでブレンドすることができるし、所望のパーセンテージの非形質転換の拡張されたタバコ、非形質転換のreconまたは非形質転換の刻みタバコとブレンドすることができ、それにより様々なニコチン含量の巻きタバコ充填物を生産することが出来る。このようなあらゆるブレンドは当該技術分野に知られた標準的方法による巻きタバコ製造プロセスに組み入れられる。
【0145】
ニコチン含量が上昇したGEタバコを利用する巻きタバコ以外のタバコ製品が当該技術分野に知られている標準的方法にしたがって本明細書に記載のあらゆるタバコ植物材料を用いて製造される。1つの態様において、ニコチン含量が上昇したタバコから得られた植物材料を含むタバコ製品が製造される。上昇したニコチン含量は野生型品種の含量の3倍を超えるまでになりうる。
【0146】
ニコチン類縁アルカロイド酵素およびアナログ
伝統的なタバコ製品、例えば、巻きタバコおよびかみタバコに加えて、本発明は、ニコチンおよびニコチンアナログを生産する方法、ならびにニコチンおよびニコチンアナログを合成する酵素を提供する。これら化合物は、遺伝子工学的手法により操作されているニコチン生産性植物およびニコチン非産生細胞によって、ならびに無細胞系/インビトロ系において生産されうる。
【0147】
最近の研究は、様々症状および障害、例えば、アルツハイマー病、統合失調症、中枢および自律神経系機能障害、および依存症の治療におけるニコチン受容体の役割を示唆しているので、ニコチン受容体リガンドのソースが必要とされている。例えば、本発明の方法およびコンストラクトをニコチン類縁アルカロイドの生産に用いることが出来る。 PMTを過剰発現する形質転換毛状根培養物が、医薬品として重要なトロパンアルカロイドであるスコポラミンの大規模商業的生産の有効な手段を提供することが示されている(Zhang et al.、Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 101: 6786-91 (2004))。したがって、ニコチン類縁アルカロイドの大規模または商業的な量をA622およびNBB1の少なくとも一方を発現させることによりタバコ毛状根培養物において生産することが出来る。同様に、本発明は、大規模または商業的な量のニコチンを生産するための、A622およびNBB1を発現させることによる、細胞培養系、例えば、細菌または昆虫細胞培養を意図する。
【0148】
さらに、NBB1およびA622 酵素の活性を直接利用することによって製品を作ることが出来る。例えば、組換え NBB1およびA622 酵素を、ニコチン類縁アルカロイドまたはニコチン類縁アルカロイドアナログの合成または部分的合成のために用いることが出来る。したがって、大規模または商業的な量のA622およびNBB1を、例えば、遺伝子工学的手法により操作されている植物、細胞、または培養系、例えばこれらに限定されないが、毛状根培養物、昆虫、細菌、真菌、植物、藻類、および哺乳類細胞培養から組換え酵素を抽出することによって、またはインビトロにて様々な方法によって生産することが出来る。
【実施例】
【0149】
ニコチン生合成に関与する酵素をコードする配列の同定方法、ならびに、標的遺伝子の導入による植物形質転換体の生産方法の具体的な実施例を以下に示す。これらは本発明を例示する目的のものであり、本発明を限定するものではない。
【0150】
実施例 1: NIC 座によって調節される遺伝子としてのNBB1の同定
ニコチアナ・シルベストリス-由来cDNA ライブラリー(Katoh et al.、Proc. Japan Acad. 79、Ser. B: 151-54 (2003)参照)から調製したcDNA マイクロアレイを用いて、ニコチン生合成調節性 NIC 座によって制御される新規遺伝子を探索した。
【0151】
ニコチアナ・シルベストリス cDNAをPCRによって増幅し、ミラーコートスライド(type 7 star、Amersham)にAmersham Lucidea アレイスポッターを用いてスポットした。DNA をスライド表面にUV 架橋によって固定化した (120 mJ/m2)。タバコ(N. tabacum) Burley 21 小植物(WTおよびnic1nic2)を1.5% (W/V) スクロースおよび0.35% (W/V) ジェランガム (Wako)を追加したhalf-strength B5 培地でAgripot 容器(Kirin)で生育させた。
【0152】
8週齡の小植物の根を収集し、すぐに液体窒素で凍結し、使用時まで-80℃で保持した。トータルRNAを凍結した根からPlant RNeasy Mini kit (Qiagen)を用いて単離し、mRNAをGenElute mRNA Miniprep kit (Sigma)を用いて精製した。cDNAを、0.4μgの精製したmRNAからLabelStar Array Kit (Qiagen)を用いてCy3またはCy5-dCTP (Amersham) の存在下で合成した。マイクロアレイスライドとのcDNAのハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション後の洗浄はLucidea SlidePro ハイブリダイゼーション装置 (Amersham)を用いて行った。マイクロアレイをFLA-8000 スキャナー (Fujifilm)を用いてスキャンした。獲得したアレイ画像を、ArrayGauge ソフトウェア (Fujifilm)によりシグナル強度について定量した。野生型およびnic1nic2 タバコからのcDNA プローブを相互に逆となる対の組合せにてCy3およびCy5で標識した。ハイブリダイゼーションシグナルを色素の総シグナル強度を考慮することにより正規化した。nic1nic2 プローブと比較して2倍を超える強さで野生型プローブにハイブリダイズしたcDNA クローンを同定し、それらにはNBB1が含まれていた。
【0153】
全長 NBB1 cDNAをタバコ(N. tabacum)のトータルRNAからSMART RACE cDNA Amplification Kit (Clontech)を用いることにより5’-および3’- RACEによって得た。結果として得られた全長 NBB1 cDNA 配列をpGEM-T ベクター (Promega)にクローニングし、pGEMT-NBB1cDNAfullを得た。
【0154】
NBB1 cDNA インサートのヌクレオチド配列を、ABI PRISM(登録商標) 3100 Genetic Analyzer (Applied Biosystems)およびBigDye(登録商標)Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems)を用いて両鎖について決定した。NBB1 全長 cDNA を配列番号1に示す。ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号2に示す。タンパク質配列はFAD-結合モチーフを含む。推定液胞シグナルペプチドがN-末端に位置する。
【0155】
実施例 2: NBB1の特徴決定
タバコ植物におけるNBB1 発現をノザンブロット分析により調べた。
【0156】
タバコ(Nicotiana tabacum ) cv. Burley 21 (以下WTと略称する) および nic1nic2またはnic1およびnic2の両方の突然変異がBurley 21 背景に導入された突然変異系統の植物を、3% スクロースおよび0.3% ジェランガムを含有する1/2 x B5 培地でインビトロで2 ヶ月間、25℃で150 μモル 光子/m2の光(16時間明期、8時間暗期)にて生育させた。植物を、固形培地容量が80 cm3でありガス容量が250 cm3である植物を含むAgripot 容器 (Kirin、Tokyo)に、0.5 mLの100 μM ジャスモン酸メチルを添加することによってジャスモン酸メチル蒸気により処理した。処理時間を0時間および24時間に設定した。根部分および葉部分 (全部で7から10 葉を有する植物体からの第2から第6葉)を植物体から収集し、すぐに液体窒素を用いて凍結保存した。
【0157】
RNAを製造業者のプロトコールにしたがってRNeasy Midi Kit (Qiagen)を用いて抽出した。しかし、Qiagen キットにおけるRLT バッファーに濃度1%になるようにポリビニルピロリジンを添加した。カラム操作はRNAの純度を高めるために2回行った。
【0158】
RNA ブロッティングをSambrook and Russell (Sambrook、J. et al.、Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory、Chapter 7 (2001))に示される方法にしたがって行った。
【0159】
NBB1 ヌクレオチド配列 (配列番号1)の1278 bpから最後(1759 bp)までの配列断片を、プローブテンプレートとして用いた。テンプレートは以下のプライマーを用いるPCRによりcDNA クローンから増幅により調製した:
プライマー 1: GGAAAACTAACAACGGAATCTCT
プライマー 2: GATCAAGCTATTGCTTTCCCT。
【0160】
プローブを、Bcabest 標識キット (Takara)を用いて製造業者の指示にしたがって32Pで標識した。ハイブリダイゼーションは、製造業者のプロトコールにしたがってバッファーとしてULTRAhyb (Ambion)を用いて達成した。
【0161】
PMT プローブは大腸菌においてpcDNAII ベクターにクローニングしたPMT 配列から調製した(Hibi et al.、1994)。プラスミドをQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen)を用いて大腸菌から抽出および精製し、通常の方法により制限酵素 XbaIおよびHindIIIにより処理し、消化されたDNAをアガロースゲルでの電気泳動にかけた。約 1.5 kbのDNA 断片をQIAquick Gel Extraction Kit (Qiagen)を用いて回収した。回収したDNA 断片を、NBB1 プローブについて用いたものと同じ方法により32Pで標識し、ハイブリダイズさせた。
【0162】
図 1に示すように、NBB1およびPMTはタバコ植物において同じ発現様式を有する。NBB1がニコチン生合成に関与しているという証拠は、NBB1が、PMTと同様にNIC 遺伝子の制御下にあり、PMTと類似の発現様式を示すということである。
【0163】
実施例 3: NBB1の系統発生解析
NBB1 ポリペプチドはハナビシソウのベルベリン架橋酵素 (BBE)に対して25%の同一性および60%の相同性を有する(Dittrich et al.、Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 88: 9969-73 (1991))。NBB1 ポリペプチドとEcBBEとのアラインメントを図 2に示す。
【0164】
系統樹を、Carter & Thornburg, Plant Physiol. 134: 460-69 (2004)に基づいて、NBB1 ポリペプチドおよび植物 BBE-様ポリペプチドの配列を用いて構築した。系統発生解析はCLUSTAL W プログラムにより近隣結合法を用いて行った。数は1,000の複製からのブートストラップ値を示す。用いた配列は以下のものであった: EcBBE、ハナビシソウ BBE (GenBank 受入番号AF005655); PsBBE、ケシ (Papaver somniferum) 推定レチクリン酸化酵素 (AF025430); BsBBE、メギ (Berberis stolonifera) BBE (AF049347); VuCPRD2、ササゲ (Vigna unguiculata) 乾燥誘導タンパク質 (AB056448); NspNEC5、Nicotiana sp. Nectarin V (AF503441/AF503442); HaCHOX、ヒマワリ (Helianthus annuus) 炭水化物酸化酵素 (AF472609); LsCHOX、レタス (Lactuca sativa) 炭水化物酸化酵素 (AF472608);および27 のシロイヌナズナの遺伝子(At1g01980、At1g11770、At1g26380、At1g26390、At1g26400、At1g26410、At1g26420、At1g30700、At1g30710、At1g30720、At1g30730、At1g30740、At1g30760、At1g34575、At2g34790、At2g34810、At4g20800、At4g20820、At4g20830、At4g20840、At4g20860、At5g44360、At5g44380、At5g44390、At5g44400、At5g44410、およびAt5g44440)。
【0165】
結果を図 3に示す。3つの既知のBBEは別々のクレードを形成し、下線で示し、「真のBBE」と称する。NBB1の配列は、BBEまたはBBE-様タンパク質のいずれとも高度には類似しておらず、系統樹の根本でその他の配列から分離している。タバコ属からみられる唯一のその他のBBE-様タンパク質である雑種花卉 Nicotiana langsdorffii X N. sanderaeの花蜜においてみられるタンパク質であるネクタリン V(Carter and Thornburg (2004))は、ササゲ乾燥誘導タンパク質およびシロイヌナズナからのいくつかの推定 BBE-様タンパク質とクラスター形成している。花卉タバコの花蜜はアルカロイドを欠き、ネクタリン Vはグルコース酸化酵素活性を有するので、ネクタリン Vは花における抗微生物防御に関与しており、アルカロイド合成には役割を有さないようであると結論づけられた(同文献)。
【0166】
実施例 4:タバコ毛状根におけるNBB1 過剰発現
NBB1 過剰発現コンストラクトの調製
attB-NBB1 断片を、実施例 1のpGEMT-NBB1cDNAfull ベクターをテンプレートとして、そして2セットの以下のプライマーを用いるPCRにより増幅した;1セットはNBB1のための遺伝子-特異的増幅 (遺伝子特異的プライマー)であり、もう1セットは、 attB 配列を付加するためのものである(アダプタープライマー)。PCR 条件は製造業者によって推奨されているものとした。GATEWAY エントリー(entry)クローン pDONR221-NBB1をattB-NBB1 PCR産物およびpDONR221(Invitrogen)の間のBP 組換え反応により作製した。
【0167】
遺伝子特異的 プライマー
NBB1-attB1 5’ AAAAAGCAGGCTCACCATGTTTCCGCTCATAATTCTG
NBB1-attB2 5’AGAAAGCTGGGTTCATTCACTGCTATACTTGTGC
アダプタープライマー
attB1 アダプター 5’ GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCT
attB2 アダプター 5’ GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGT
【0168】
pTobRD2-DESTの説明
1,031bpのTobRD2 プロモーター領域 (WO9705261における配列番号5)をBurley 21 ゲノムDNAをテンプレートとして、およびTobRD2 プロモーター特異的 プライマーを用いて増幅し、次いでHindIIIおよびXbaIで消化した。
【0169】
TobRD2 プロモーター特異的プライマー:
TobRD2-01F 5’ AAAGCTTGGAAACATATTCAATACATTGTAG
HindIII 部位に下線を施す。
TobRD2-02R 5’ TCTAGATTCTACTACTATTTTATAAGTG
XbaI 部位に下線を施す。
【0170】
結果として得られた断片を、pBI101H (NAISTのDr. Shuji Yokoiから譲り受けた; Molecular Breeding 4: 269-275, 1998参照)のHindIIIとXbaI 部位の間にクローニングし、その結果、プラスミド pTobRD2-BI101Hが得られた。ccdB 遺伝子に隣接するattR 組換え部位およびクロラムフェニコール耐性遺伝子を含有するGATEWAY カセットを、pTobRD2-BI101H バイナリーベクターのXbaIとSacI 部位の間にクローニングし、バイナリーベクター pTobRD2-DESTを得、これは、GATEWAY カセットに隣接するTobRD2 プロモーターに隣接する選抜マーカーとして、NPTII 遺伝子発現カセット (Nos プロモーター-ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ II ORF-Nos ターミネーター) および HPT 遺伝子発現カセット (CaMV 35S プロモーターハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ ORF-Nos ターミネーター) を含有するT-DNA領域を有する。pTobRD2- DESTのT-DNA領域の図を図 4Aに示す。
【0171】
NBB1 ORFをLR 反応によりpDONR221-NBB1 ベクターから、クローニングした ORFをTobRD2 プロモーターの下で発現させるよう設計したGATEWAY バイナリーベクター pTobRD2-DESTに移した。最終発現ベクター、pTobRD2-NBB1oxのT-DNA領域の図を図 4Bに示す。
【0172】
形質転換毛状根の生産
バイナリーベクター pTobRD2-NBB1ox をエレクトロポレーションによってアグロバクテリウム・リゾゲネス 株 15834に導入した。タバコ(Nicotiana tabacum ) cv. K326 野生型植物を、リーフディスク法を用いて、基本的にKanegae et al.、Plant Physiol. 105:2:483-90 (1994)に記載されている方法により、アグロバクテリウム・リゾゲネス(A. rhizogenes)で形質転換した。カナマイシン耐性 (B5 培地中200 mg/L)を、pTobRD2-NBB1ox 形質転換系統 (TN 系統)のための選抜マーカーとして用いた。野生型アグロバクテリウム・リゾゲネスを、コントロール毛状根系統(WT 系統)を生産するために用いた。タバコ毛状根を、B5 液体培地中で27℃、暗条件にて2週間培養し、その後回収した。
【0173】
発現分析のための手順
NBB1 タンパク質の発現量はイムノブロット分析により分析した。毛状根を液体窒素で凍結させ、すぐに1mM フェニルメチルスルホニルフルオリドおよび200 mM ジチオスレイトールを含有する抽出バッファー (100 mM Tris-HCl pH6.8、4% SDS、20% グリセロール)中で乳鉢と乳棒とを用いてホモジナイズした。ホモジネートの遠心分離の後に、上清中の可溶性タンパク質をSDS-PAGEにより分離した。抗-NBB1 ウサギ 血清を用いてイムノブロット分析を行った。詳細な手順は以前に報告されたものである(Shoji et al.、Plant Mol. Biol.、50、427-440 (2002))。抗-NBB1 抗血清を用いたイムノブロットは、形質転換毛状根系統TN9およびTN17では、NBB1 タンパク質含量が上昇していることを示す。図 5Aを参照されたい。
【0174】
アルカロイド含量分析のための手順
形質転換毛状根を2週間培養し、収集し、凍結乾燥した。2 mlの 0.1 N 硫酸を19 mgの凍結乾燥サンプルに添加した。この懸濁液を15 分間超音波処理し、ろ過した。水酸化アンモニウム (0.1 ml、 28% NH3; Wako) を1 mlのろ液に添加し、混合物を10 分間15,000 rpmで遠心分離した。上清 (1 ml)のサンプルをExtrelut-1 column (Merck)にかけ、5 分間放置した。アルカロイドを6 mlの クロロホルムで溶出した。溶出したクロロホルム画分を次いで減圧下で37℃でエバポレーター (Taitec Concentrator TC-8)を用いて乾燥させた。乾燥サンプルを0.1% ドデカンを含有する50 μl のエタノール溶液に溶解した。キャピラリーカラム (Rtx-5Amine column, Restec) およびFID 検出器を備えたガスクロマトグラフィー 装置 (GC-14B、Shimadzu)を用いてサンプルを分析した。カラム温度を100 ℃に10分維持し、25 ℃/分で150 ℃まで昇温させ、 150 ℃で1 分保持し、1 ℃/分で170 ℃まで昇温させ、170 ℃で2 分保持し、30 ℃/分で300 ℃まで昇温させ、次いで、300 ℃で10分保持した。注入および検出器の温度は300 ℃とした。精製アルカロイド調製物の1 μlのサンプルを注入し、アルカロイド含量を内部標準方法により測定した。
【0175】
NBB1 過剰発現ベクター pTobRD2-NBB1oxで形質転換した毛状根系統(TN9、TN17)では、野生型毛状根系統と比較してニコチンおよびノルニコチンの含量が上昇していた。図 6を参照されたい。
【0176】
実施例 5:タバコ毛状根におけるA622 過剰発現
A622 過剰発現コンストラクトの調製
attB-A622 断片を、テンプレートとしてpcDNAII-A622 ベクター(Hibi et al、Plant Cell 6: 723-35 (1994))、以下のA622-特異的プライマーおよびアダプタープライマーを用いて上記実施例4に記載のように増幅した。
【0177】
遺伝子特異的プライマー
A622-attB1
5’AAAAAGCAGGCTTCGAAGGAGATAGAACCATGGTTGTATCAGAGAAAAGC A
A622-attB2
5’AGAAAGCTGGGTCCTAGACAAATTTGTTGTAGAACTCGTCG
【0178】
増幅したA622 断片をBP 反応によりpDONR221 ベクターにクローニングし、その結果pDONR-A622が生じ、次いでA622 断片をLR 反応によりpDONR-A622から pTobRD2-DESTに移した。結果として得られた発現ベクターをpTobRD2-A622oxと命名した。pTobRD2-A622oxのT-DNA領域の図を図 4Cに示す。
【0179】
形質転換毛状根の生産
タバコ(N. tabacum) cv. K326 野生型植物を、上記実施例4に記載のように、pTobRD2-A622ox ベクターを含有するアグロバクテリウム・リゾゲネス 15834で形質転換した。pTobRD2-A622oxからのT-DNAを担持する形質転換毛状根をTA 系統と命名し、上記実施例4に記載のように培養した。
【0180】
発現分析のための手順
イムノブロット分析を、A622 タンパク質検出のために、抗-A622 マウス 血清を用いる他は、上記実施例4に記載のようにして行った。A622 過剰発現ベクターにより形質転換された毛状根系統、TA11、TA14、TA21 では、A622 タンパク質の含量がより高い。図 5Bを参照されたい。
【0181】
アルカロイド含量分析のための手順
タバコアルカロイドを、上記実施例4に記載のように、抽出、精製、および分析した。A622 過剰発現ベクターにより形質転換された毛状根系統、TA11、TA14、TA21では、ニコチンおよびノルニコチンの含量がより高い。図 6を参照されたい。
【0182】
実施例 6: タバコ毛状根におけるNBB1およびA622 過剰発現
A622およびNBB1 過剰発現コンストラクトの調製
単一の T-DNAからA622およびNBB1 タンパク質の両方を発現させるために、TobRD2-A622 発現カセットおよびTobRD2-NBB1 発現カセットをタンデムにバイナリーベクターにクローニングした。TobRD2-A622 カセットをpTobRD2-A622oxからHindIIIにより切り出し、pTobRD2-NBB1oxにおけるTobRD2 プロモーターの5’末端のHindIII 部位にクローニングした。結果として得られたNBB1およびA622の両方の過剰発現のためのベクターをpTobRD2-A622ox-NBB1oxと命名した。pTobRD2-A622ox-NBB1oxのT-DNA領域の図を図 4Dに示す。
【0183】
形質転換毛状根の生産
タバコ(Nicotiana tabacum ) cv. K326 野生型植物を、上記実施例4に記載のように、pTobRD2-A622ox-NBB1ox ベクターを含有するアグロバクテリウム・リゾゲネス 15834により形質転換した。pTobRD2-A622ox-NBB1oxからのT-DNAを担持する形質転換毛状根をTNA 系統と命名し、上記実施例4に記載のように培養した。
【0184】
発現分析のための手順
イムノブロット分析をタンパク質検出のために抗-A622 マウス 血清と抗-NBB1 ウサギ 血清との両方を用いる他は、上記実施例4に記載のように行った。毛状根系統 TNA8において、 NBB1 (図 5Aを参照されたい)およびA622 (図 5Bを参照されたい)の両方の発現量が、野生型毛状根系統と比較して上昇している。
【0185】
アルカロイド含量分析のための手順
タバコアルカロイドを毛状根系統 TNA8から上記実施例4に記載のように、抽出、精製、および分析した。ニコチンおよびノルニコチンの含量は、系統 TNA8において野生型毛状根系統におけるよりも高い(図 6を参照されたい)。
【0186】
実施例 7: A622 タンパク質を発現する形質転換ベラドンナ植物
ベラドンナは、N-メチルピロリニウムカチオンに由来するトロパンアルカロイドである、ヒヨスチアミンおよびスコポラミンを産生するが、おそらくはNBB1およびA622 遺伝子の非存在のためにニコチンアルカロイドを含有しない。
【0187】
最初のATGにおいて導入された NcoI 部位を含むタバコ A622 cDNAをpcDNAII-A622 ベクター (Hibi et al. 1994) からNcoI-BamHI 断片として切り出し、pRTL2 (Restrepo et al.、Plant Cell 2:987-98 (1990))に、重複したエンハンサーを有するCaMV35S プロモーターの制御下にクローニングした。このA622 過剰発現カセットをHindIIIにより切り出し、バイナリーベクター pGA482 (Amersham)にクローニングし、A622 発現ベクター pGA-A622を作成した。
【0188】
形質転換植物の生産
バイナリーベクター pGA-A622をエレクトロポレーションによってアグロバクテリウム・ツメファシエンス(A. tumefaciens)株 EHA105に導入した。ベラドンナ植物を、基本的に Kanegae et al.、(Plant Physiol. 105(2):48390 (1994))に記載のようにして、リーフディスク法を用いてアグロバクテリウム・ツメファシエンスで形質転換した。カナマイシン耐性 (MS/B5 培地中200 mg/L)をpGA-A622 形質転換についての選抜マーカーとして用いた。形質転換 35S-A622 植物をリーフディスクから再生し、22 ℃で連続光の下、グロースチャンバーにて栽培した。
【0189】
発現分析のための手順
総タンパク質を上記実施例5に記載のように、野生型および35S-A622 T1 植物の葉から抽出した。イムノブロット分析を、抗-A622 マウス血清を用いて行った。多量のA622 タンパク質を含む自家受粉T1 世代植物、例えば 系統 C1#3 (図 7を参照されたい)の葉組織を、アルカロイド分析のために用いた。
【0190】
アルカロイド含量分析のための手順
形質転換ベラドンナ植物中のニコチン類縁アルカロイドを1M H2SO4により抽出し、基本的に記載されているようにして精製した(Hashimoto et al.、1992)。アルカロイドを、ガスクロマトグラフィー-質量分析 (GC-MS) (HP-5ms カラムを備える、Hewlett Packard 5890 series II/JEOL MStation JMS700)により、それらの質量スペクトルの標準標品の質量スペクトルとの比較の後に同定した。カラム温度を100 ℃で10分維持し、25 ℃/分で150 ℃に昇温し、150 ℃で1 分保持し、1 ℃/分で170 ℃に昇温し、170 ℃で 2 分保持し、30 ℃/分で300 ℃に昇温し、次いで300 ℃で10分保持した。A622のみのベラドンナへの導入の結果、ニコチンまたはその他のニコチンアルカロイドは蓄積しなかった。
【0191】
実施例 8: NBB1 タンパク質およびA622 タンパク質を発現する形質転換ベラドンナ毛状根
NBB1 過剰発現コンストラクトの調製
NBB1およびA622の組合せがニコチン類縁アルカロイドのカップリング反応に十分であるかどうかを試験するために、本発明者らは、実施例 7のA622を発現するベラドンナ植物の葉を、NBB1 発現ベクターを担持するアグロバクテリウム・リゾゲネス 株 15834で形質転換することによりA622およびNBB1の両方を発現する形質転換ベラドンナ毛状根を生産した。
【0192】
pBI101H-E2113-DESTの説明
重複したエンハンサー(El2)およびタバコモザイクウイルス (Ω)の5’-上流配列を有するCaMV35S プロモーターを担持するバイナリーベクター pBE2113を、National Institute of Agrobiological Resources (Tsukuba、Japan)のDr. Yuko Ohashiから譲り受け(Plant Cell Physiol. 37: 49-59 (1996)を参照されたい)、これを、ccdB 遺伝子に隣接するattR 組換え部位およびクロラムフェニコール耐性遺伝子を含有するGATEWAY カセットを、ベクターのXbaIおよびSacI 部位の間にクローニングした後に、GATEWAY目的ベクターに変換し、これによりβ-グルクロニダーゼ 遺伝子がGATEWAY カセットにより置換された。結果として得られた目的バイナリーベクターをHindIIIおよびSacIで消化し、El2-35S-Ω-GATEWAY カセットを含有するHindIII-SacI 断片をpBI101H中のHindIIIおよびSacI 部位の間にクローニングした。結果として得られた目的バイナリーベクターをpBI101H-E2113-DESTと命名した。pBI101H-E2113-DESTのT-DNA領域の図を図 4Eに示す。
【0193】
NBB1 ORFをLR 反応によりpDONR221-NBB1-2 ベクターからGATEWAY バイナリーベクター pBI101H-E2113-DESTに移した。この発現ベクターをpEl235SΩ-NBB1と命名した。pEl235SΩ-NBB1のT-DNA領域の図を図 4Fに示す。
【0194】
形質転換毛状根の生産
バイナリーベクター pEl235SΩ-NBB1を、エレクトロポレーションによりアグロバクテリウム・リゾゲネス 株 15834に導入した。A662を発現する35S-A622 カセットを含有するT1 世代植物(系統 C1#3)の葉組織を基本的にKanegae et al. (Plant Physiol. 105(2):483-90 (1994))によって記載されているようにしてリーフディスク法を用いてpEl235SΩ-NBB1を担持するアグロバクテリウム・リゾゲネスで形質転換した。ハイグロマイシン耐性 (B5 培地中30 mg/L)を選抜マーカーとして用いた。pEl235SΩ-NBB1 からのT-DNA を担持する形質転換毛状根(系統 E)および、コントロールとしてのT-DNA を有さない野生型アグロバクテリウム・リゾゲネスで感染した形質転換毛状根(WT 系統)をMS/B5 液体培地で2週間培養し、次いで収集した。
【0195】
発現分析
総タンパク質を抽出し、イムノブロット分析を上記実施例4に記載のように行った。抗-A622 マウス 血清をA622 タンパク質の検出に用い、抗-NBB1 ウサギ 血清をNBB1 タンパク質の検出に用いた。形質転換ベラドンナ毛状根系統 (E2)はNBB1およびA622の両方のタンパク質を多量に発現する(図 8を参照されたい)。
【0196】
アルカロイド分析
形質転換ベラドンナ E2 およびWT 毛状根を、100mg/lのニコチン酸を含有する100 mlの MS/B5 液体培地中で3 週間培養した。E2およびWT 毛状根中のニコチンアルカロイドを1M H2SO4で抽出し、基本的に記載されているようにして精製した(Hashimoto et al.、1992)。アルカロイドを、それらの質量スペクトルを標準標品の質量スペクトルと比較した後にガスクロマトグラフィー-質量分析 (GC-MS) (HP-5ms カラムを備えるHewlett Packard 5890 series II/JEOL MStation JMS700)により同定した。カラム温度を100 ℃で10分維持し、25 ℃/分で150 ℃に昇温し、150 ℃で1 分保持し、1 ℃/分で170 ℃に昇温し、170 ℃で2 分保持し、30 ℃/分で300 ℃に昇温し、次いで300 ℃で10 分保持した。
【0197】
小さいが顕著な新規なピークが検出された (図 9のピーク 5を参照されたい)。ピーク 5に対応するピークはWT 系統毛状根においては検出不可能であった。ピーク 5の化合物は、図 10に示すようにニコチンと同じMS 断片化プロフィールを示した。これは、外来性 NBB1およびA622の発現が、ベラドンナ毛状根におけるニコチンの形成に十分であることを示した。
【0198】
実施例 9: A622 プロモーターの制御下でのPMTの発現 によるニコチン含量の上昇
pA622pro-DESTの説明
pA622pro-DESTは、NPTII 遺伝子発現カセットおよびHPT 遺伝子発現カセットを選抜マーカーとして有する。1,407 bpのA622 プロモーターを、A622 プロモーターを含有するベクターをテンプレートとして、そして以下に示すA622 プロモーター特異的プライマーを用いて増幅し(Shoji et al.、Plant Mol. Biol. 50、427-440 (2002))、HindIIIおよびXbaIで消化した。結果として得られた断片を、pBI101H中のHindIIIおよびXbaI 部位の間にクローニングした。ccdB 遺伝子に隣接するattR 組換え部位およびクロラムフェニコール耐性遺伝子を含有するGATEWAY カセットをバイナリーベクター中のXbaIおよびSacI 部位の間にクローニングした後に、バイナリーベクターを GATEWAY目的ベクターに変換した。図 11Aを参照されたい。
【0199】
A622 プロモーター特異的プライマー
A622pro-01F 5’ AAAAGCTTAGATCTCTCTTATGTTTCATG
HindIII 部位を下線で示す。
A622pro-02R 5’ TCTAGATTTACTCCTAGGGGAAGAAAAAAAGTAGC
XbaI 部位を下線で示す。
【0200】
PMT 過剰発現コンストラクトの調製
attB-PMT 断片を、PMT ORF (NCBI 受入番号; D28506) がpcDNAII (Invitrogen) (配列番号7Bを参照されたい) のBstXI 部位にクローニングされているタバコ PMT ベクターをテンプレートとして、以下の遺伝子特異的プライマー、およびattB 配列 アダプタープライマーを用いて、上記実施例4に記載のように増幅した。GATEWAY エントリークローン pDONR221-PMTを、attB-PMT PCR産物およびpDONR221 (Invitrogen)の間のBP 組換え反応により作成した。
【0201】
遺伝子特異的プライマー
PMT-attB1 5’ AAAAAGCAGGCTCAAAAATGGAAGTCATATC
PMT-attB2 5’ AGAAAGCTGGGTTTAAGACTCGATCATACTTC
【0202】
PMT ORFをLR 反応により、pDONR221-PMT ベクターからGATEWAY バイナリーベクター pA622pro-DESTへと移した。遺伝子発現ベクターをpA622pro-PMToxと命名した。図 11Bを参照されたい。
【0203】
形質転換タバコ植物の生産
pA622pro-PMToxをアグロバクテリウム・ツメファシエンス 株 EHA105に形質転換し、これを野生型 K326 葉の形質転換に用いた。形質転換 T0 シュートを再生させ、発根培地に移した。いくつかの発根した形質転換植物を土壌に移した。
【0204】
アルカロイド分析
アルカロイドを上記実施例4に記載のように形質転換タバコ葉から抽出し、分析した。土壌に移した後36日目にサンプリングした植物の葉におけるニコチン含量を分析した。pA622pro-PMToxで形質転換したいくつかの形質転換系統は、野生型 K326 植物がAG-GUS カセットで形質転換されたものであるコントロール 系統よりもより多量のニコチン蓄積を示した。図 12を参照されたい。
【0205】
実施例 10: TobRD2 プロモーターの制御下での PMTの発現によるニコチン含量の上昇
PMT 過剰発現コンストラクトの調製
PMT ORFをLR 反応によりpDONR221-PMT ベクターからGATEWAY バイナリーベクター pTobRD2-DESTへと移した(図 4Aを参照されたい)。遺伝子発現ベクターをpTobRD2-PMToxと命名した。図 11Cを参照されたい。
【0206】
形質転換タバコ植物の生産
pTobRD2-PMToxをアグロバクテリウム・ツメファシエンス 株 EHA105に形質転換し、これを野生型 K326 葉の形質転換に用いた。形質転換 T0 シュートを再生させ、発根培地に移した。いくつかの発根した形質転換植物を土壌に移した。
【0207】
アルカロイド分析
アルカロイドを上記実施例4に記載のように形質転換タバコ葉から抽出し、分析した。土壌に移した後36日目にサンプリングした植物の葉におけるニコチン含量を分析した。いくつかの形質転換系統は、野生型 K326 植物がTobRD2-GUS カセットで形質転換されたコントロール系統よりも多量のニコチン蓄積を示した。図 13を参照されたい。
【0208】
実施例 11: A622 プロモーターの制御下でのQPTの発現によるニコチン含量の上昇
QPT 過剰発現コンストラクトの調製
QPT ORF 断片 (配列番号5B)を、pBJY6 ベクター (Nagoya University、JapanのDr. Kenzo Nakamuraから譲り受けた)をテンプレートとして、以下に示す遺伝子特異的プライマーを用いて増幅した。GATEWAY エントリー クローン pENTR-QPT をTOPO クローニング反応により作成した。
【0209】
QPT 遺伝子特異的プライマー
QPT-F 5’CACCATGTTTAGAGCTATTCC
QPT-R 5’TCATGCTCGTTTTGTACGCC
【0210】
QPT ORFをLR 反応によりpENTR-QPT ベクターからGATEWAY バイナリーベクター pA622pro-DESTに移した (図 11Aを参照されたい)。遺伝子発現ベクターをpA622pro-QPToxと命名した。図 11Dを参照されたい。
【0211】
形質転換タバコ植物の生産
pA622pro-QPToxをアグロバクテリウム・ツメファシエンス 株 EHA105に形質転換し、これを野生型 K326 葉の形質転換に用いた。形質転換 T0 シュートを再生させ、発根培地に移した。いくつかの発根した形質転換植物を土壌に移した。
【0212】
アルカロイドの分析
アルカロイドを上記実施例4に記載のように、形質転換タバコ葉から抽出し、分析した。土壌へ移した後36日目にサンプリングした植物の葉におけるニコチン含量を分析した。いくつかの形質転換系統は、野生型 K326 植物がA622-GUS カセットにより形質転換されたコントロール系統よりも多いニコチン蓄積を示した。図 14を参照されたい。
【0213】
実施例 12: TobRD2 プロモーターの制御下での QPTの発現によるニコチン含量の上昇
QPT 過剰発現コンストラクトの調製
QPT ORFをLR 反応によりpDONR221-QPT ベクターからGATEWAY バイナリーベクター pTobRD2-DESTに移した(図 4Aを参照されたい)。遺伝子発現ベクターをpTobRD2-QPToxと命名した。図 11Eを参照されたい。
【0214】
形質転換タバコ植物の生産
pTobRD2-QPToxをアグロバクテリウム・ツメファシエンス 株 EHA105に形質転換し、これを野生型 K326 葉の形質転換に用いた。形質転換 T0 シュートを再生させ、発根培地に移した。いくつかの発根した形質転換植物を土壌に移した。
【0215】
アルカロイドの分析
アルカロイドを上記実施例4に記載のように、形質転換タバコ葉から抽出し、分析した。土壌へ移した後36日目にサンプリングした植物の葉におけるニコチン含量を分析した。いくつかの形質転換系統は、野生型 K326 植物がTobRD2 -GUS カセットにより形質転換されたコントロール系統よりも多いニコチン蓄積を示した。図 15を参照されたい。
【0216】
実施例 13: A622 プロモーターの制御下でのPMTおよびQPT の発現によるニコチン含量の上昇
pBI221-A622pro-DEST の説明
pBI221-A622pro-DESTは複数遺伝子発現バイナリーベクターの構築のための基礎ベクターであった。1,407 bp のA622 プロモーターをpUC19-A622profull-LUC ベクターをテンプレートとして、そして、A622 プロモーター特異的プライマーを用いて増幅し、HindIII およびXbaIで消化した。結果として得られた断片を、pBI221 (Clontech)のHindIIIおよびXbaI 部位の間にクローニングし、これによりCaMV 35S プロモーターをA622 プロモーターで置換した。ベクターを、ccdB 遺伝子に隣接するattR 組換え部位およびクロラムフェニコール耐性遺伝子を含有するGATEWAY カセットを、ベクターのXbaIおよびSacI 部位の間にクローニングした後にGATEWAY 目的ベクターに変換し、これによりB-グルクロニダーゼ 遺伝子をGATEWAY カセットで置換した。次いで、HindIII-EcoRI アダプターをNos ターミネーターの3’末端のEcoRI 部位に挿入し、その結果pBI221-A622pro-DESTが得られた。
【0217】
PMT-QPT 過剰発現コンストラクトの調製
PMTおよびQPT タンパク質の両方を過剰発現させるために、A622pro-PMT 発現カセットおよびA622pro-QPT 発現カセットを、バイナリーベクターにタンデムにクローニングした。まず、PMT ORFをLR 反応によりpDONR221-PMT ベクターからGATEWAY バイナリーベクター pBI221-A622pro-DESTに移した。遺伝子発現ベクターをpBI221-A622pro-PMTと命名した。pBI221-A622pro-PMTをHindIIIで消化し、pA622pro-QPTox ベクターのA622 プロモーターの5’末端のHindIII 部位にクローニングした。結果として得られた PMT-QPT 発現ベクターをpA622pro-PMTox-QPToxと命名した。pA622pro-PMTox-QPTox のT-DNA領域の図を図 11Fに示す。
【0218】
形質転換タバコ植物の生産
pA622pro-PMTox-QPToxをアグロバクテリウム・ツメファシエンス 株 EHA105に形質転換し、これを野生型 K326 葉の形質転換に用いた。形質転換 T0 シュートを再生させ、発根培地に移した。いくつかの発根した形質転換植物を土壌に移した。
【0219】
アルカロイド含量の分析のための手順
アルカロイドを上記実施例4に記載のように、形質転換タバコ葉から抽出し、分析した。土壌へ移した後36日目にサンプリングした植物の葉におけるニコチン含量を分析した。A622pro-PMTox-QPToxで形質転換されたいくつかの系統は、野生型 K326 植物がA622-GUS カセットで形質転換されたコントロール系統よりも多いニコチン蓄積を示した。図 16を参照されたい。
【0220】
実施例 14: TobRD2 プロモーターの制御下でのPMTおよびQPT の発現によるニコチン含量の上昇
PMT-QPT 過剰発現コンストラクトの調製
TobRD2の制御下でPMTおよびQPT タンパク質の両方を過剰発現させるために、TobRD2-PMT 発現カセットおよびTobRD2-QPT 発現カセットをタンデムにバイナリーベクターにクローニングした。まず、PMT ORFをLR 反応によりpDONR221-PMT ベクターからGATEWAY バイナリーベクター pBI221-TobRD2-DESTに移した。遺伝子発現ベクターをpBI221-TobRD2-PMTと命名した。pBI221-TobRD2-PMTをHindIIIで消化し、次いでpTobRD2-QPTox中のTobRD2 プロモーターの5’末端のHindIII 部位にクローニングした。結果として得られた PMT-QPT 発現ベクターをpTobRD2-PMTox-QPToxと命名した。図 11Gを参照されたい。
【0221】
形質転換タバコ植物の生産
pTobRD2-PMTox-QPToxをアグロバクテリウム・ツメファシエンス 株 EHA105に形質転換し、これを野生型 K326 葉の形質転換に用いた。形質転換 T0 シュートを再生させ、発根培地に移した。いくつかの発根した形質転換植物を土壌に移した。
【0222】
アルカロイド含量の分析のための手順
アルカロイドを上記実施例4に記載のように、形質転換タバコ葉から抽出し、分析した。土壌へ移した後36日目にサンプリングした植物の葉におけるニコチン含量を分析した。TobRD2-PMTox-QPToxで形質転換されたいくつかの形質転換系統は、野生型 K326 植物がTobRD2-GUS カセットで形質転換されたコントロール系統よりも多いニコチン蓄積を示した。図 17を参照されたい。
【0223】
実施例 15:さらなるアルカロイド生合成酵素と組合せてのNBB1の発現によるシロイヌナズナにおけるニコチン類縁アルカロイドの産生
シロイヌナズナ植物はニコチン類縁アルカロイドを産生しない。しかし、多数のニコチン類縁アルカロイドの前駆体であるニコチン酸は、一般的な代謝産物である。シロイヌナズナにおけるNBB1およびA622の両方の発現の効果を試験した。ニコチンは特に興味深いアルカロイドであるため、PMTの発現を、ニコチンにおけるピロリジン環の前駆体であるメチルプトレッシンの入手可能性を上昇させるために含めた。
【0224】
A622 過剰発現コンストラクトの調製
最初のATGにおいて導入されたNcoI 部位を含むタバコ A622 cDNA (Hibi et al.、1994)を、pcDNAII (Invitrogen) からNcoI-BamHI 断片として切り出し、pRTL2 (Restrepo et al.、Plant Cell 2:987-98 (1990))に重複したエンハンサーを有するCaMV35S プロモーターの制御下となるようにクローニングした。このA622 過剰発現カセットをHindIII により切り出し、バイナリーベクター pGA482 (Amersham)にクローニングし、A622 発現ベクター pGA-A622を作成した。
【0225】
形質転換 35S-A622 植物の生産
バイナリーベクター pGA-A622 をエレクトロポレーションによりアグロバクテリウム・ツメファシエンス 株 LBA4404に導入した。シロイヌナズナ植物 (生態型: Wassilewskija (WS))を、基本的にAkama et al.、Plant Cell Reports 12: 7-11 (1992)に記載されているようにカルス誘導-植物再生方法を用いてアグロバクテリウム・ツメファシエンスにより形質転換した。カナマイシン耐性 (シュート-誘導培地上50 mg/L)をpGA-A622 形質転換についての選抜マーカーとして用いた。形質転換植物をカルスから再生させ、グロースチャンバー中で23 ℃で16時間明期/8時間暗期の条件にて栽培した。
【0226】
NBB1-およびPMT-過剰発現コンストラクトの調製
NBB1 ORF (配列番号1B)をLR 反応によりpDONR221-NBB1-2 ベクターからGATEWAY バイナリーベクター pGWB2に移した(図 18Aを参照されたい)。NBB1がCAMV 35S プロモーターに連結している遺伝子発現ベクターをp35S-NBB1と称する。図 18Bを参照されたい。同様に、PMT ORFをLR 反応によりpDONR221-PMT ベクター からpGWB2に移した。遺伝子発現ベクターをp35S-PMTと称する。図 18Cを参照されたい。
【0227】
形質転換 35S-A622-35S-NBB1 植物、35S-A622-35S-PMT 植物および35S-A622-35S-NBB1-35S-PMT 植物の生産
バイナリーベクター、p35S-NBB1 およびp35S-PMTをエレクトロポレーションによりアグロバクテリウム・ツメファシエンス 株 EHA105に導入した。pGA-A622を担持するT1 世代 植物を基本的にClough et al.、Plant J. 16: 735-43 (1998)に記載されているようにfloral dip法を用いてアグロバクテリウム・ツメファシエンスにより形質転換した。ハイグロマイシン耐性 (シュート-誘導培地上25 mg/L)をp35S-NBB1およびp35S-PMT 形質転換についての選抜マーカーとして用いた。形質転換植物をグロースチャンバー中で23 ℃で16時間明期/8時間暗期の条件にて栽培した。その結果得られた形質転換植物を、35S プロモーター プライマーおよびNBB1- またはPMT-遺伝子特異的プライマーを用いるゲノムPCRによりスクリーニングした。
【0228】
35S-A622-35S-NBB1 植物のスクリーニングのためのプライマー
35S-F 5’ACCCTTCCTCTATATAAGGAAG
NBB1-l140 5’TGAGCCCAAGCTGTTTCAGAATCC
35S-A622-35S-PMT 植物のスクリーニングのためのプライマー
35S-F 5’ACCCTTCCTCTATATAAGGAAG
PMT-01R 5’CGCTAAACTCTGAAAACCAGC
【0229】
PCR 陽性 35S-A622-35S-NBB1 植物および35S-A622-35S-PMT 植物を交配して35S-A622-35S-NBB1-35S-PMT 植物を生産した。F1 子孫をそれぞれの発現カセット特異的プライマー対を用いるゲノムPCRによりスクリーニングした。
【0230】
総タンパク質をPCR-陽性系統から抽出した。凍結した根を1mM フェニルメチル スルホニルフルオリドおよび200 mM ジチオスレイトールを含有する抽出バッファー (100 mM Tris-HCl pH6.8、4% SDS、20% グリセロール)中で乳鉢 および乳棒を用いてすぐに ホモジナイズした。ホモジネートの遠心分離の後、上清中の可溶性タンパク質をSDS-PAGEにより分離した。イムノブロット分析を A622 タンパク質の検出のために抗-A622 マウス 血清、およびNBB1 タンパク質の検出のために抗-NBB1 ウサギ 血清を用いて、Shoji et al.、Plant Mol. Biol. 50: 427-40 (2002)に記載のようにして行った。A622およびNBB1 ポリペプチドの両方を含む形質転換系統の発現を得た。図 19を参照されたい。
【0231】
アルカロイド含量の分析のための手順
NBB1およびA622を発現する形質転換系統を選抜し、アルカロイド分析のために用いた。アルカロイドを上記実施例4に記載のように形質転換タバコ葉から抽出し、分析した。図 20に示すように、ニコチンの溶出時間に対応する新しいピークがNBB1-A622-PMT 系統にみられたが、A622-PMT 系統にはみられなかった。これは、NBB1およびA622の両方の発現がA622のみの発現よりも、通常はアルカロイドを産生しない植物におけるニコチン類縁アルカロイドの産生のために有効であることを示す。
【0232】
実施例 16:非植物細胞におけるNBB1およびA622の発現
昆虫細胞-バキュロウイルス発現系であるBac-to-Bac Expression System (Invitrogen)を、昆虫細胞における6xHis タグを有するNBB1およびA622 タンパク質の発現のために用いた。発現クローンを作成するために、NBB1およびA622 ORF(それぞれ配列番号1Bおよび3B)を、LR 反応によりそれぞれのDONR ベクター(pDONR-NBB1-2、pDONR-A622)からGATEWAY ベクター pDEST10 (Invitrogen)に移した。その結果得られた発現クローンをpDEST10-NBB1およびpDEST10-A622と命名した。
【0233】
pDEST10-NBB1およびpDEST10-A622をMAX Efficiency DH10Bac Cells (Invitrogen)に形質転換して、組換えバクミド DNAを回収した。遺伝子特異的プライマーおよびM13リバースプライマーを用いるPCR 分析を用いて、A622およびNBB1を含有する組換えバクミドの存在を確証した。図 21Aを参照されたい。
【0234】
その結果得られたそれぞれの遺伝子発現カセットを含有する組換えバクミドをCellfectin (Invitrogen)により昆虫細胞 Sf9にトランスフェクトした。Sf9 細胞をウイルスストックにより2ラウンドにて感染させ、ウイルスを増幅およびスケールアップさせた。
【0235】
抗-NBB1および抗-A622 抗血清によるイムノブロッティングによって示されるようにNBB1およびA622が昆虫細胞培養にて産生された。6xHisタグを含有する組換えタンパク質を、Ni-NTA カラムへの吸着、次いで0.5 M イミダゾールによる溶出により精製した。図 21Bを参照されたい。
配列表
【0236】
配列番号1 (NBB1 ポリヌクレオチド)
【表1】

【0237】
配列番号1B (ベクター構築に用いたNBB1 ORF 配列)
【表2】

【0238】
配列番号2 (NBB1 ポリペプチド)
【表3】

【0239】
配列番号3 (A622 ポリヌクレオチド)
【表4】

【0240】
配列番号3B (ベクター構築に用いたA622 ORF 配列)
【表5】

【0241】
配列番号4 (A622 ポリペプチド)
【表6】

【0242】
配列番号5 (QPT ポリヌクレオチド)
【表7】

【0243】
配列番号5B (ベクター構築に用いたQPT ORF)
【表8】

【0244】
配列番号6 (QPT ポリペプチド)
【表9】

【0245】
配列番号7 (PMT ポリヌクレオチド- NCBI No. D28506に開示の全長 cDNA) Hibi et al. Plant Cell (1994)
【表10】

【0246】
配列番号7B (ベクター構築に用いたPMT ORF)
【表11】

【0247】
配列番号8 (PMT ポリペプチド)
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントロール植物と比較してA622およびNBB1の少なくとも一方を過剰発現させることを含む、タバコ植物におけるニコチン含量を上昇させる方法。
【請求項2】
A622を過剰発現させる、請求項 1の方法。
【請求項3】
NBB1を過剰発現させる、請求項 1の方法。
【請求項4】
A622およびNBB1を過剰発現させる、請求項 1の方法。
【請求項5】
QPTおよびPMTの少なくとも一方を過剰発現させることをさらに含む、請求項 4の方法。
【請求項6】
QPTおよびA622を過剰発現させる、請求項 5の方法。
【請求項7】
請求項1-5のいずれかの方法によって生産された、ニコチン含量が上昇している植物。
【請求項8】
請求項 7の植物から生産された、ニコチン含量が上昇している製品。
【請求項9】
巻きタバコ、医薬品、および栄養補助食品からなる群から選択される、請求項 8の製品。
【請求項10】
NBB1およびA622を異種発現させなければニコチン類縁アルカロイドを産生しない植物または細胞においてNBB1およびA622を異種発現させることを含む、ニコチン類縁アルカロイドの生産方法。
【請求項11】
NBB1およびA622の発現が、細菌、酵母、糸状菌、藻類、哺乳類、および昆虫細胞からなる群から選択される細胞において起こる、請求項 10の方法。
【請求項12】
請求項 10の方法によって生産された、ニコチン類縁アルカロイド含量が上昇している植物。
【請求項13】
請求項 10の方法によって生産された、ニコチン類縁アルカロイド製品。
【請求項14】
(a) A622およびNBB1を発現する複数の細胞を提供する工程、および、
(b)該複数の細胞からニコチン類縁アルカロイドを得る工程、
を含む、ニコチン類縁アルカロイドの生産方法。
【請求項15】
コントロール植物と比較して、 PMTおよびQPTを過剰発現させることを含む、植物におけるニコチン含量を上昇させる方法。
【請求項16】
請求項 15の方法によって生産された、ニコチン含量が上昇している植物。
【請求項17】
請求項 15の植物から生産された、ニコチン含量が上昇している製品。
【請求項18】
NBB1をコードする単離核酸分子により細胞を形質転換する工程、および、
NBB1 酵素が産生される条件下で形質転換細胞を培養する工程、
を含む、NBB1 酵素の生産方法。
【請求項19】
形質転換細胞が、細菌、酵母、糸状菌、藻類、緑色植物、および哺乳類細胞からなる群から選択される、請求項 18の方法。
【請求項20】
(a) ニコチン含量が上昇しているタバコ植物と多生産タバコ植物とを交配する工程; および、
(b)ニコチン含量が上昇し、かつ、高生産量である子孫植物を選抜する工程、
を含む、タバコ植物におけるニコチン含量および生産量を上昇させる方法。
【請求項21】
該ニコチン含量が上昇している植物が以下によって生産される、請求項 20の方法:
(a) 5’から3’の方向にて、ニコチン合成を上昇させる酵素をコードする異種核酸に作動可能に連結したプロモーター、および、ニコチン合成を上昇させる酵素をコードする異種核酸を含むコンストラクトによりタバコ植物を形質転換する工程;
(b)形質転換植物から形質転換タバコ植物を再生させる工程;および、
(c)コントロール植物と比較してニコチン含量が上昇した形質転換タバコ植物を選抜する工程。
【請求項22】
該核酸が、QPTPMTA622およびNBB1からなる群から選択される、請求項 21の方法。
【請求項23】
請求項 20の方法によって生産された、ニコチン含量および生産量が上昇した植物。
【請求項24】
(a) (i) 5’から3’の方向にて、ニコチン合成を上昇させる酵素をコードする異種核酸に作動可能に連結したプロモーター、および、ニコチン合成を上昇させる酵素をコードする異種核酸を含む第1のコンストラクト;および
(ii) 5’から3’の方向にて、生産量を上昇させる酵素をコードする異種核酸に作動可能に連結したプロモーター、および、生産量を上昇させる酵素をコードする異種核酸を含む第2のコンストラクト;
によりタバコ植物を形質転換する工程、
(b)形質転換タバコ植物を形質転換植物から再生させる工程;および、
(c)コントロール植物と比較して、ニコチン含量が上昇し、かつ生産量が上昇した形質転換タバコ植物を選抜する工程、
を含む、タバコ植物におけるニコチン含量および生産量を上昇させる方法。
【請求項25】
該第1のコンストラクトが、QPT、PMT、A622およびNBB1からなる群から選択される酵素をコードする核酸を含む、請求項 24の方法。
【請求項26】
コントロール植物と比較してPMT を過剰発現させることを含む、タバコ(N. tabacum)におけるニコチン含量を上昇させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2010−505449(P2010−505449A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537707(P2009−537707)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【国際出願番号】PCT/IB2006/004043
【国際公開番号】WO2007/072224
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【Fターム(参考)】