説明

ニッケル−亜鉛セルの性能改良用錫及び錫−亜鉛めっきされた下地層

【課題】
【解決手段】製造工程に於いて錫或いは錫と亜鉛でめっきされた陰極下地層を有する改良されたニッケル−亜鉛バッテリセルはガス発生速度が低い。銅或いは真鍮の下地層は電解的に浄化され、活性化され、マット表面と共に定義された厚さの範囲までに電気めっきされ、酸化亜鉛の電気化学的活性物質を貼られ、焼成される。定義されためっきの厚さが40〜80μインチであると金属間化合物Cu3Snの形成が最大となり、下のめっき層から表面への銅の拡散が抑制され、焼成工程中の金属間化合物Cu6Sn5の形成を削除し、バッテリ運行中の好適な耐腐食性を供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は充電式バッテリに関し、殊にニッケル−亜鉛の充電式バッテリセルに関する。更に、本発明は亜鉛電極内の負ペーストの為の電流コレクタの構造と構成に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形バッテリセルは、電極と電解質の交互の層を使用する。各電極は電流コレクタ下地層と一枚以上の電気化学的活性層から成ることが出来る。電流コレクタの設計に考慮されるものには以下のものがある: (イ)高い電気的伝導性; (ロ)使用される電解質による腐食に対する抵抗性;(ハ)急速に消費されないような電気化学的反応に対する抵抗性;(ニ)製造過程での操作(例えば貼り付けとか、ローリング)に抵抗可能な機械的強度と柔軟性;(ホ)材料費と製造費とを含めて廉価;及び(ヘ)電気化学的に活性な層との良好な物理的接触(即ち「接触性」)を与えられる表面構成(例えば、良好な物理的接触を妨げるような不動態化フィルムを形成せず、又、電気化学的に活性な層に良好に粘着する物質でなくてはならない)。上記に考慮される点の中、いずれの条件が満たされなくてはならないかと言うことは必須条件ではない。例えば、電流コレクタは上記の中の或る一個以上の観点に於いて優秀ながら、他の観点に於いて標準以下であってもよい。即ち、上記の内一個のカテゴリに於いて不利な物質であっても、総括的なバッテリ設計に於いてこの不利な性質が克服されるものならば、使用可能であると言うことである。亜鉛陰極電流コレクタに現在一般的に使用されて居るものには銅と真鍮がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
セルの性能を評価し、電流コレクタの特徴とセルの性能との間の関係を決定する一方法として、種々の条件下で電流コレクタ片のガス生成速度を測定することがある。バッテリの運行中には水素のようなガスが発生する。発生する水素の一部は酸素と再結合して水となるが、残りの水素はセルの中に溜まって破裂したり導通路を障碍することがある。ガス生成速度の低いセル成分のデザインが望まれて居る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ガスの発生速度低下のため、電流コレクタを有する改良されたニッケル−亜鉛セルが錫或は錫と亜鉛のめっきで製造される。銅或は真鍮の下地層が電解的に浄化され、マット表面と共に活性化され、決められた範囲の厚さまで電気めっきされ、酸化亜鉛に基づく電気化学的活性物質が貼られ、焼成される。40〜80μインチに定義された厚さの範囲により焼成工程の間での金属間化合物Cu6Sn5の形成がなく、めっき層の安定性が向上し、バッテリの運行期間中に十分な耐腐食性が供される。改良された電流コレクタは高度の導電率、腐食及び電気化学的反応への抵抗、良好な機械的強度及び弾力性、及び電気化学的活性層との良好な境界面を供する。
【0005】
一面に於いて本発明はニッケル−亜鉛バッテリセルのための亜鉛電極下地層の製造方法に関する。この方法とは、下地層物質の穿孔された細長片を準備する工程、この片を脱脂浄化する工程、この片を電解的に浄化する工程、この片を活性化する工程、及び金属或は錫或は錫−亜鉛を含む合金の層を約40〜80μインチの厚さに電気めっきする工程を含むものでよい。下地層の物質は銅或は真鍮でよい。電気めっきされる金属は錫或は錫と亜鉛の両方でよく、それは約75〜100重量%が錫で約0〜25重量%が亜鉛であってよい。
【0006】
穿孔された片は変性アルコール或はその他の有機溶媒を使用して5〜15分間位の期間脱脂浄化されてよい。脱脂浄化と電解的洗浄の中間に於いて、穿孔片はDI水によってすすがれてもよい。電解的浄化工程は穿孔片をアルカリ性浸潤溶液に浸ける工程とその片に電流を通じる工程とを含む。例えば15インチの穿孔片に浄化を5〜10分間行う場合、この電流は1〜3ampでよい。表面が純で、均一的、平滑であることを確認するため、これ以上或は以下の電流でもよい。このアルカリ性浸潤溶液はpHが約10〜13であり、アルカリ性水酸化物、アルカリ性炭酸塩、アルカリ性リン酸塩、或はこれらの中の二種類以上を組み合わせたものでよい。アルカリ性水酸化物は水酸化ナトリウム或は水酸化カリウムでよい。アルカリ性炭酸塩は炭酸ナトリウム或は炭酸カリウムでよい。アルカリ性リン酸塩はリン酸ナトリウム或はリン酸カリウムでよく、酢酸ナトリウムが代用されてもよい。
【0007】
この穿孔片は活性化工程に於いて活性化溶液に約5〜10分間浸されてもよい。活性化工程によってマット表面が出来る。活性化溶液は酸でよい。殊に活性化溶液は酸濃度を4〜20%とする硫酸でよい。硫酸の代わりにその他の強酸を使用してもよい。活性化溶液のpHは1〜3以下であってもよい。前工程からの薬品を除去するために、活性化工程の前後に於いて、穿孔片はDI水によってすすがれてもよい。
【0008】
この穿孔片は電気めっきされ、40〜80μインチの金属が堆積される。この金属は錫或は錫と亜鉛の両方でよい。下地層の上の電気めっき層は錫と銅及び任意的に亜鉛の合金でよい。電流密度は約40〜80A/m2で約4〜6分間である。或る実施例に於いて、電流密度は約4〜6分間で約40〜70A/m2或は約60A/m2でよい。電気めっき浴は錫イオン或は亜鉛イオン源と電流キャリヤ源を含むものでよい。好ましくは、電気めっき浴は更に酸化遅延剤及び耐トリーイング剤を含み、漂白剤を含まないものである。錫イオン源は硫酸第一錫(SnSO4)でよく、その密度は約50〜300g/Lでよい。その他の錫イオン源が使用されてもよく、その例には塩化第一錫(SnCl2)、ホウフッ化第一錫(Sn(BF42)、メタンスルフォン酸第一錫(Sn(CH3SO32)が含まれる。亜鉛イオン源の例には密度10〜100g/Lの塩化亜鉛(ZnCl2)、硫酸亜鉛(ZnSO4)、ピロリン酸亜鉛(Zn227)が含まれる。電流キャリヤ源はめっき路に十分な導電性を与えることの出来る如何なる酸であってもよい。例えば、電流キャリヤ源は密度約50〜250g/Lの硫酸、酢酸、ホウ酸、硫酸ナトリウム、ホウフッ酸、クレゾールスルフォン酸、メタンスルフォン酸(CH3SO3H)、或はスルファン酸(sulfamic acid)でよい。酸化遅延剤は第一錫の酸化を遅延させるためのもので、クレゾールスルフォン或はフェノールスルフォン酸でよい。その密度は約50〜100g/Lでよい。トリーイング効果とは樹状突起及びその他の変則形状を形成する過剰の堆積のことである。トリーイングは好ましからぬ伝導路を生成したり、電気化学的活性物質の不均一な消耗を起こしたりするので、セルの有効寿命を短縮させることがある。耐トリーイング剤はナフトール、ジヒドロキシジフェニルスルフォン、接着剤、ゼラチン、或はクレゾールでよい。ナフトール或はジヒドロキシジフェニルスルフォンは0.5〜10g/Lの密度で使用可能である。接着剤、ゼラチン、或はクレゾールは0.2〜12g/Lの密度で使用可能である。電気めっき浴のpHは約0.1〜3である。
【0009】
電気化学的活性物質の好ましい例は酸化亜鉛を含むペーストであり、これが下地層に付けられてもよい。下地層と酸化亜鉛に基づくペーストは次に温度を200〜350℃に維持して30分から2時間焼成されてもよい。或る実施例に於いて、焼成は温度を260℃に維持して約45分間実施される。錫めっきされた下地層が焼成されないと、1ヶ月室温で貯蔵の結果銅が下地層表面に拡散する。下地層表面の銅の量はめっきの厚さに依存して2から35%まで変化する。室温での貯蔵によって、金属間化合物(Cu3Sn及び/或はCu6Sn5)の形成はなかった。焼成は下地層物質の銅が電気めっきされた層に拡散して銅が高成分である銅/錫合金及び金属間化合物を形成することを亢進する。下地層が錫の厚い層(例えば200μインチ以上)で電気めっきされ、200−350℃で30分から2時間焼成されると、錫−銅金属間化合物がめっき層に形成され、表面に火ぶくれが生じる。火ぶくれは結果としてガス生成速度を増加し、セルの性能に有害である。めっきされた厚さが20μインチ未満であると、めっきされた層に金属間化合物の形成はない。めっきされた厚さが40〜80μインチであると、めっき層は主として錫/銅合金及び金属間化合物(Cu3Sn)の薄い(約10〜40%)層を含む。めっきされた厚さが200μインチ以上の場合、Cu3Sn(約5〜15%)及びCu6Sn5(約85〜95%)両方の化合物が形成され、SEM写真に於ける色と形態の相違から明らかに特定可能である。
【0010】
金属間化合物Cu3Snの層は焼成の間めっき層の下から表面へとの銅の拡散を抑制し、Cu6Sn5化合物は不規則でもろく、Cu3Snより伝導性が低いので、下地層/めっき層の境界面に於けるCu3Snの形成はCu6Sn5より好ましい。Cu6Sn5は密度が小さく、従って体積が大きいので、圧縮ストレスが生成される。Cu6Sn5は後の製造工程に於いて割れ易く、腐食に於いて弱点を生成し、伝導性を低下する。
【0011】
他の面に於いて、本発明は改良された下地層電流コレクタを有するニッケル−亜鉛バッテリセルに関するものである。このセルは陰極層、ニッケルを有する陽極層、及び隔離層とを含む。陰極層は電流コレクタ及び酸化亜鉛に基づく電気化学的活性層を含む。電流コレクタは銅或は真鍮の下地層であってよく、焼成の後有害な金属間化合物(例えばCu6Sn5)が形成されて居ない。めっき層は下地層及びペースト腐食からの保護、及び秀逸なめっき層の安定性を供するために約40〜80μインチの厚さであってよい。或る実施例に於いて、金属間化合物はCu3Snのみを含むものであってよい。
【0012】
他の面に於いて,本発明は陰極構成に関するものである。この構成は電流コレクタと酸化亜鉛に基づく電気化学的活性層を含む。電流コレクタは約40〜80μインチの厚さの錫或は錫/亜鉛めっきを持つ銅或は真鍮下地層であってよい。或る実施例に於いて、電流コレクタは約60μインチの厚さの錫めっきを有する構成でよい。その他の実施例に於いて、電流コレクタは約55μインチの厚さの錫/亜鉛めっきを有する構成でよい。
【0013】
本発明のこれら及びその他の特徴及び利点について、以下添付された図面を参照して詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明によるニッケル−亜鉛バッテリセルの分解図である。
【図1B】組み立てられた本発明によるニッケル−亜鉛バッテリセルの断面図である。
【図2】本発明の一例によるキャップ及び通気口を図示するものである。
【図3】本発明の実施例による陰極−隔離部−陽極のサンドイッチ構成に於ける種々の層を図示するものである。
【図4A】異なる厚さに電気めっきされ焼成された下地層の断面をSEM拡大によって示すものである。
【図4B】異なる厚さに電気めっきされ焼成された下地層の断面をSEM拡大によって示すものである。
【図4C】異なる厚さに電気めっきされ焼成された下地層の断面をSEM拡大によって示すものである。
【図5】本発明の方法実施例の工程フロー図である。
【図6】種々の計算された厚さに電気めっきされた下地層のガス発生速度の測定値である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以降の発明の詳細な説明に於いては、発明が完全に理解されるように、特別な実施例が数々詳細に説明されるが、当業者には自明である如く、本発明はこれらの実施例を使用せず、その他の代用部品乃至方法を使用して実施できるものである。それ以外の場合として、公知の手法とか部品などについては、本発明の観点をむしろ不明瞭にするものとして、詳細な説明は避けてある。
【0016】
本発明は、ニッケル−亜鉛バッテリセルの製造方法に関し、殊に陰極の製造工程に関する。陰極は銅或は真鍮金属に基づく電流コレクタ下地層を有してよい。その製造工程に於いて、下地層は電解的に浄化され、錫或は錫と亜鉛の両方で電気めっきされ、次いで、酸化亜鉛に基づく電気化学的活性物質がめっきされた下地層に貼られる。下地層とペーストとは焼成されて錫/銅合金及び金属間化合物を形成する。この工程で好ましいことは、下地層物質を腐食力から保護し、その後の製造工程に便利とする錫/銅合金及び或る種の金属間化合物の形成である。好ましくないことは、電極性能に悪影響を及ぼす或る種の金属間化合物の形成である。これら好もしくない金属間化合物は不規則でもろく、及び/或はその他の化合物より低い伝導度である。結果として発明にかかる工程を使用して製作されたニッケル−亜鉛バッテリはガス発生速度が低く、低速及び高速両方の応用の能力を有する。
【0017】
本発明の内容を枠組みするために一般的なバッテリセルの構成について記述する。
【0018】
一般的セル構成
図1A及び1Bは本発明実施例の円筒形燃料セルの主成分を図示するものであり、図1Aはセルの分解図である。電極と電解質の層が交互に円筒形の集合101(ジェリイロールと呼ばれる)の中に与えられて居る。円筒形集合或はジェリイロール101は缶113或はその他の収容容器の内部に位置されている。陰性コレクタ円板103と陽性コレクタ円板105とが円筒形集合101の相対する端部に付着されている。陰性と陽性のコレクタ円板は内部端子として機能し、陰性コレクタ円板は陰極に電気的に接続し、陽性コレクタ円板は陽極に電気的に接続して居る。キャップ109と缶113とは外部端子として機能する。図示された実施例では、陰性コレクタ円板103は陰性コレクタ円板103をキャップ109に接続するためのタブ107を含んで居る。陽性コレクタ円板105は溶接或は別法によって電気的に缶113に接続されて居る。別の実施例に於いては、陰性コレクタ円板が缶に接続し、陽性コレクタ円板がキャップに接続する。
【0019】
陰性と陽性のコレクタ円板103、105は穿孔と共に示されて居り、これによってジェリイロールへの結合及び/或は電解質のセルの一部から他の部分への移行を容易にする。別の実施例に於いては、円板に於ける(径方向、或は周辺の)孔、溝、或はその他の構成によって、これらの結合及び/或は電解質の分布を容易にする。
【0020】
柔軟なガスケット111が、キャップ109に近く、缶113の上部の周辺に沿って備えられた周辺ビーズ115の上に設置されている。このガスケット111はキャップ109を電気的に缶113から隔離する役を果たす。実施例によっては、ガスケット111が置かれるこれらのビーズ115はポリマーが塗布されて居る。ガスケットはキャップを缶から電気的に隔離するならば、どのような材料であってもよい。この材料は高温であまり変形しないものが好ましく、ナイロンなどがその一例である。別例として好ましいのは、比較的疎水性の材料を使用することで、アルカリ性の電解液をしみこませて終局的に継ぎ目とかそれ以外の侵入口の点から漏れる力を減少させることである。濡れにくい材料の一例としてプロプロピレンがある。
【0021】
缶或はそれ以外の収容容器が電解液で満たされた後、容器は密封されて、図1Bに示される如く、電極や電解質が環境から隔離される。ガスケットが典型的にクリンピングされる。実施例によっては、漏れを防ぐために密封剤が使用される。密封剤の適宜な例として、瀝青剤、タール 及びVERSAMID(登録商標、オハイオ州、シンシナティ在のCognisにより販売)がある。
【0022】
実施例によっては、セルは電解質枯渇の状態で作用するように構成されている。更に或る実施例に於いては、本発明のニッケル−亜鉛セルは電解質枯渇様式を使用するものである。かようなセルは、活性電極材料に比して、相対的に少量の電解質を有するものであり、セル内部に遊離電解液を有する浸水セルから容易に区別することが出来る。米国特許出願11/116、113("Nickel Zinc Battery Design"2005年4月26日出願)(本願に参照して組み込むものとする)で説明される如く、セルを枯渇した状態で作用することは、多くの理由により望ましいことである。一般的に、枯渇したセルとは、セル電極スタックの中の空間総体積が電解質によって占められて居ないもののことと理解されて居る。典型的な例の場合、電解質充填後の枯渇状態のセルのボイド容積は、充填前のボイドの総容積の少なくとも約10%である。
【0023】
本発明のバッテリセルは、多くの異なる形状及びサイズであり得る。例えば、本発明の円筒形セルは通常のAAA型セル、AA型セル、A型セル、C型セルなどの直径や長さでよい。或る応用面に於いては、カストマイズされたセル設計が適当となる。特別な実施例のセル直径22mmで、長さ43mmのサブC型セルのものでよい。本発明は種々の非携帯用の応用で使用される種々の大きさのセルのみならず、比較的小さい角柱のセル形で使用されることに留意されるべきである。動力機具とか芝刈り機のようなものの為のバッテリパックのプロファイルによって、バッテリセルの大きさとか形状は決定されるものである。本発明は、本発明によるニッケル−亜鉛バッテリセルを一個以上含んだバッテリパックとか、電気器具の充電放電を可能とする適宜なケーシング、接点、導電線にも関するものである。
【0024】
図1A及び1Bに示された実施例は従来例のNiCdセルと極性が逆になって居り、キャップが陰性で缶が陽性となって居ることに留意されたい。従来の電力セルでは、セルの極性がキャップで陽性、缶或は容器で陰性である。即ち、セル集合体の陽極はキャップと電気的に連結し、セル集合体の陰極はセル集合体を保持する缶と電気的に連結する。図1A及び1Bに示されるものを含めて本発明の或る実施例に於いて、セルの極性は従来例のセルのものと逆である。従って、陰極はキャップと電気的に連結し、陽極は缶と電気的に連結する。本発明の或る実施例に於いては、極性が従来例のデザインと同じであり、キャップが陽性であると留意されたい。
【0025】
セル缶
缶とは、最終的なセルの外側のハウジング或はケーシングとなる容器のことである。缶が陰性端子となる従来例のニッケル−カドミウムセルに於いて、これは典型的にニッケルでメッキされたスチールである。上記の如く、本発明に於いて、缶は陰性端子でも陽性端子であってもよい。缶が陰性である実施例の場合、缶材料は、亜鉛電極の電圧に対応出来る物質でコーティングされて居る限り、スチールのような、従来例のニッケル−カドミウムバッテリで使用されるような構成に似たものであってよい。例えば、陰性の缶は腐食を妨げるべく、銅のような物質でコーティングされてよい。缶が陽性でキャップが陰性の実施例の場合では、缶は従来例のニッケル−カドミウムセルで使用されるような構成に似たもの、典型的にはニッケルでメッキされたスチールでよい。
【0026】
或る実施例に於いては、水素再結合を補助するための物質で缶の内部をコーティングすることが出来る。水素再結合の触媒となる物質ならば、何を使用してもよい。酸化銀はその一例である。
【0027】
通気キャップ
セルは通常環境から密閉されたものであるが、充電や放電に際してバッテリから発生するガスを放出可能にしてもよい。典型的なニッケル−カドミウムセルの場合、約200PSIの圧力でガスを放出する。或る実施例に於いて、本発明のニッケル−亜鉛セルは、通気なしのまま、この圧力或はそれ以上の圧力(例えば300PSI位まで)で作用するように設計されて居る。これにより、セル内部で生成される酸素や水素の再結合が促進される。実施例によっては、内圧を450PSI位まで、更には600PSI位までに保つように、セルが構成されてある。その他の実施例のニッケル−亜鉛セルは、比較的低圧でガスを放出するように設計される。設計が水素及び/或は酸素ガスをセル内部で再結合させず、制御された状態での放出を促進する場合に適切である。
【0028】
図2は発明の一実施例によるキャップ201と通気機構を示す。通気機構は、好ましくはガスのみ放出し、電解質は逃さない設計とする。キャップ201は、ガスケットの上に置かれたディスク208、通気窓203、及びキャップ201の上部205とを含む。ディスク208にはガス放出用の孔207がある。通気窓203は孔207を覆い、放出されるガスによって変位される。通気窓203は通常ゴムであるが、ガスの放出が可能で高温に耐えるものならいずれの物質でもよい。正方形の通気窓が好調に作用することが見出されて居る。上部205は溶接点209に於いてディスク208に溶接されて居り、ガス放出の為の孔211を有する。溶接点209と211の図示された位置は単に例示のためであり、どこでも適切な位置であってよい。好適な実施例によれば、通気機構は疎水性でガスを浸透させる膜から成る通気カバー213を含む。通気カバー材料の例としては、微小な孔を有するポリプロピレン、微小な孔を有するポリエチレン、微小な孔を有するPTFE、微小な孔を有するFEP、微小な孔を有するフルオロポリマー、及びこれらの混合物や共重合体がある(例えば、2005年9月27日発行で、本願にあらゆる目的に対して参照して組み込まれる米国特許6949310(J.Phillips)"Leak ProofPressure Relief Valve for Secondary Batteries”を参照)。材料は耐高温でなくてはならない。
【0029】
或る実施例に於いては、疎水性でガスを浸透させる膜が、曲がりくねったガス放出路と共に使用される。その他の通気機構も当業者には周知であり、本発明での使用が適切である。或る実施例に於いては、水素用出口区域を提供するように、セルの構成材料が選択される。例えば、水素浸透性の重合体材料でセルのキャップやガスケットが出来てもよい。特別な一例によれば、セルのキャップの外輪部が、アクリルプラスティク或は上記の重合体の一種以上のような、水素浸透性のから出来て居る。そのような実施例では、実際の端子(キャップの中央にあり、水素浸透性の材料で囲まれて居る)のみ導電性であればよい。
【0030】
通気キャップ及び電流コレクタ円板並びにキャリヤ下地層自身の構成の詳細は本願にあらゆる目的に対して参照して組み込まれる2006年4月25日出願のPCT/US2006/015807及び2004年8月17日出願のPCT/US2004/026859(発行WO2005/020353A3)に記載されてある。
【0031】
電極−隔離層サンドイッチ構成
図3は巻かれる前の陰極−隔離部−陽極サンドイッチ構成の種々の層を示す。隔離部305は電極と電解質の間のイオン交換を可能にする一方、陰極(成分301と303)を陽極(成分307と309)から機械的に隔離するものである。陰極は電気化学的活性層301と電流コレクタ303とを含む。亜鉛陰極の電気化学的活性層301は、典型的に電気化学的活性成分として、酸化亜鉛及び/或は金属亜鉛を含む。後記の如く、層301はその他の添加剤或は亜鉛酸カルシウム、酸化ビスマス、酸化アルミニウム、酸化インジウム、ヒドロエチルセルローズのような電気化学的活性成分、及び分散剤を更に含んでも良い。
【0032】
電流コレクタ303は陰極材料301と電気化学的に共存可能であるべきものである。上記の如く、電流コレクタは穿孔された金属シート、拡張された金属、泡状金属、或は連続パタンの金属シートの形体であり得る。
【0033】
陰極に対して、隔離部305の別側にあるのが陽極である。陽極も電気化学的活性層307と電流コレクタ309を含むものである。陽極の層307は電気化学的活性材料として、水酸化ニッケル、酸化ニッケル、及び/或はオキシ水酸化ニッケルを含んでもよい。添加剤には、酸化亜鉛及び酸化コバルト或はコバルト金属が含まれてもよい。電流コレクタ309はニッケル泡状金属マトリクス或はニッケル金属シートでもよい。ニッケル泡状マトリクスが使用される場合には、マトリクスに層307が吸収されてしまうことに留意すべきである。
【0034】
隔離部
隔離部は、電極と電解質の間のイオン交換を許容する一方、陰極と陽極とを機械的に孤立させる役を果たすものである。隔離部は叉亜鉛の樹枝状構成を防止するものである。樹状突起とは、金属付着に於ける骨格的或は樹枝的成長パタン(樹枝的成長)を持つ結晶構造のことである。実際問題として、樹状突起はセルの寿命の間に燃料セルの導電体の中に形成されて陰極と陽極とを実質上つないでしまって短絡を起こし、よってバッテリの機能を失わせるものである。
【0035】
典型的に、隔離部とは小さい孔を有するものである。此処に記載されるいくつかの実施例に於いて、隔離層は複数の層を含むものである。孔の存在及び/或は層状構成により、亜鉛の樹状突起は曲がりくねった通路を形成することになり、従って効果的に貫通することと、短絡とを防止することになる。好ましくは、多孔性隔離層のくねり度は約1.5〜10の範囲であり、より好ましくは約2〜5である。孔の平均直径は好ましくは大きくとも約0.2ミクロンで、更に好ましくは、約0.02〜0.1ミクロンの間である。孔のサイズは隔離層の内部に於いて均一であることが好ましい。特別な実施例に於いて、隔離層は多孔率が約35〜55%の間であり、多孔率が45%で孔のサイズが0.1ミクロンの好ましい材料を有するものとする。
【0036】
好ましい実施例によれば、隔離部は亜鉛の貫通を防止するバリヤ層とセルを電解質と共に浸潤状態に保ってイオン交換を可能にする浸潤層の少なくとも二層を含む(更に好ましくは只二層のみを含む)ものである。これはニッケル−カドミウムセルに於いて通常のことではなく、互いに隣接する電極間に唯一の隔離材料を使用するものである。
【0037】
セルの作用は出来るだけ陽極を浸潤させ、陰極を比較的乾燥状態に保てば向上する。従って、或る実施例に於いては、バリヤ層は陰極に隣接し、浸潤層を陽極に隣接して位置させる。この配置により、電解層を陽極に密接させ、セルの作用が向上する。
【0038】
その他の実施例に於いては、浸潤層が陰極に隣接し、バリヤ層が陽極に隣接して位置される。この配置は酸素の電解質を通って陰極への移行を容易にし、陰極での酸素の再結合に役立つ。
【0039】
バリヤ層は典型的に微小な孔を有する多孔性の膜である。導イオン性の微小な孔を持つ多孔性の膜ならば、いずれのものでも使用可能である。多孔率が30〜80%の間のポリオレフィンがしばしば使用されるが、孔の平均径が約0.005〜0.3ミクロンの間であることが好適である。好ましい実施例では、バリヤ層は微小な孔を持つ多孔性のポリプロピレンである。バリヤ層は典型的に厚さが約0.5〜4ミルで、より好ましくは約1.5〜4ミルの間である。
【0040】
浸潤層は浸潤性が適当にある如何なる隔離層材料であってもよい。典型的に、浸潤層の多孔率は比較的高く、例えば約50〜85%の間である。例として、ナイロンを基にした浸潤性のあるポリエチレンやポリプロピレン材料のようなポリアミドが挙げられる。或る実施例に於いては、浸潤層の厚さは約1〜10ミルの間であり、好ましくは約3〜6ミルの間である。隔離層材料で、浸潤層材料として使用できるものの例としては、NKK VL100 (東京のNKK Corporation製)、Freudenberg FS2213E、Scimat 650/45(英国 Swindon のSciMAT Limited製)、及びVilene FV4365 がある。
【0041】
当業者に周知のその他の隔離部材料も使用可能である。上記の如く、ナイロンを基にした材料や、微小な孔を有する多孔性ポリオレフィン(例えばポリエチレン及びポロプロピレン)はしばしば非常に好適である。
【0042】
その他の実施例に於いて、亜鉛の通過を妨げ、セルを電解液で浸潤状態に保つのに、単一の隔離部材料を用いてもよい。このような単一隔離部材料としては、従来のリチウムイオンセルで使用される隔離部であって、ニッケル−亜鉛セル用に変更させたものでよい。例えば、リチウムイオン型隔離部にゲルを満たして、その浸潤性を向上させることが出来る。その一例としてはオレゴン州LebanonのEntek Membrane LLCの製品であるポリエチレンTeklon材料が挙げられる。この材料は厚さ20ミクロンで、多孔率は約40%である。ゲルは隔離部材料に直接、或は亜鉛電極に加えるような間接法で付与される。後記の如く、ゲルの電解質は或る実施例に於いて使用される。
【0043】
実施例によっては、陽極/陰極構成に組み込まれる前に、界面活性剤が隔離部に施されてもよい。これで浸潤性を向上させ、電流の均一性を増加させることが出来る。特別な実施例に於いて、隔離部は先ずミシガン州MidlandのDow Chemical CorporationのTriton界面活性剤(例えばX100)の約0.5〜5%溶液で処理される。界面活性剤との接触時間、乾燥時間、界面活性剤の種類及び界面活性剤の濃度など、すべて処理の効率に関係するものである。数時間低濃度の溶液に浸潤し、次いで空気で乾燥させることで優秀な結果が得られる。追加的にメタノールのようなその他の溶媒を使用することで界面活性剤の摂取が加速される。
【0044】
微小な孔を有するポリプロピレンを浸潤性にする別法とは、特種な親水性の化学基を重合体の表面に放射線グラフトすることである。このような方法の一つが、Shanghai Institute of Applied Physics, Chinese Academy of SciencesのShanghai Shilong Hi−Tech Co, Ltd.によって使用されて居る。この場合、活性化プロセスはコバルト60の放射源を使用して行われて居る。
【0045】
電極/隔離部のデザインについて更に考慮すべきことは、隔離部を(例えば図2に示す如く)電極や電流コレクタシートのように略同じ厚さの単一層として提供するか、或は片方或は両方の電極を隔離部の中につめるかと言うことである。後者の例での隔離部は、電極シートの中の一枚用の「袋」として作用し、効果的に電極層を包み込むものである。或る実施例に於いては、陰極を隔離部に包み込むことが、樹状突起の生成防止に役立つ。しかし、叉別の実施例では、電極を包み込まずに、バリヤ層を使用するだけで、樹状突起の貫通に対する保護に十分である。
【0046】
陽極
陽極は一般に電気化学的活性酸化或は水酸化ニッケル及び製造、電子運行、浸潤性、機械的性能などの観点から一種類以上の添加剤とを含んで居る。例えば、陽極構成として少なくとも電気化学的活性酸化或は水酸化ニッケル(例えばNi(OH)2)、酸化亜鉛、酸化コバルト(CoO)、金属コバルト、金属ニッケル及びカルボキシルメチルセルローズ(CMC)のような流制御剤を含む。金属ニッケルやコバルトは化学的純粋なものであっても、合金であってもよい。或る実施例では、陽極は一般のニッケル−カドミウムバッテリのニッケル電極製造に使用されるような構成であってもよいが、ニッケル−亜鉛バッテリシステムの為に必要な最適化が必要かも知れない。
【0047】
好ましくは泡状ニッケルマトリクスが電気的活性ニッケル電極材料(例えばNi(OH)2)として使用される。一例として、市売のInco Ltd.の泡状ニッケルが使用されてもよい。高い放電率を要する応用に於いては、泡状ニッケルを通ってNi(OH)2(或はその他の電気化学的活性材料)に至る拡散路が短くなくてはならない。高率の場合、イオンが泡状ニッケルを貫通するに要する時間は重要である。Ni(OH)2(或はその他の電気化学的活性材料)及びその他の電極物質で充填された泡状ニッケルを含む陽極の幅は、泡を通ってNi(OH)2に至るイオンの拡散路を短く保ちながら、Ni(OH)2のために十分な空間を提供出来るように最適化されるべきである。泡状下地層の厚さは15〜60ミルの間でよい。好もしい実施例によれば、電気化学的活性物質或はその他の電極物質で満たされた泡状ニッケルを含む陽極の厚さは約16〜24ミルの範囲である。特別な実施例では、陽極の厚さは約20ミルである。
【0048】
泡状ニッケルの密度は、電気化学的活性材料が泡のボイド空間を均一的に貫通するように最適化されるべきである。好ましい実施例に於いては、密度の範囲が約300〜500g/m2の泡状ニッケルが使用される。更に好ましくは、約350〜500g/m2の範囲であり、殊に好ましい実施例では密度が約350g/m2の泡状ニッケルが使用される。電極の幅が減少するに従って、ボイド空間が十分存在するように泡の密度も小さく出来る。好ましい実施例として、密度が約350g/m2であり、厚さが約16〜18ミルの範囲にある泡状ニッケルが使用される。
【0049】
陰極構成
一般的に、陰極は下記の如く、導電性増加物質、腐食抑制剤、浸潤剤などの一種以上と共に、亜鉛或は亜鉛酸イオンの電気的活性源を一種以上含むものである。陰極は、その製造の時に、クーロン容量、活性亜鉛の科学的構成、多孔性、曲げ特性のような物理的、化学的、形態的特性によって特徴付けられるものである。
【0050】
或る実施例に於いて、電気化学的活性亜鉛源は、酸化亜鉛、亜鉛酸カルシウム、金属亜鉛、及び種々な亜鉛合金から選ばれる一種以上を含む。これらの物質はいずれも製造中に供給及び/或は通常のセル周期の間に生成されるものである。特別な例として、亜鉛酸カルシウムが考慮されるが、これは例えば酸化カルシウムと酸化亜鉛とを含むペースト或はスラリーから製造出来るものである。亜鉛合金が使用される場合、実施例によっては、これにビスマス及び/或はインジウムが含まれて居てもよい。実施例によっては、百万に対して約20部未満の鉛が含まれてもよい。この構成条件を満たし、市場で入手可能な亜鉛合金として、カナダのNoranda社によるPG101がある。
【0051】
亜鉛活性物質は粉末状、粒子状などでよい。亜鉛電極のペースト材料内部の各成分が比較的小さい粒径であることが望ましい。これは、粒子が浸透或はその他によって陽極と陰極の間の隔離層を傷害する可能性を減少する為である。
【0052】
陰極は電気化学的活性な亜鉛成分に加えて、イオン輸送や電子輸送(即ち導電性の増加)、浸潤性、多孔性、構造的完全性(即ち結合性)、ガス放出、活性材料の溶解性及びバリヤ性(例えば亜鉛の電極からの放出量減少)腐食の抑制などのプロセスを容易にしたり、影響を与えたりする一種以上の物質をも含むことが出来る。例えば、或る実施例によれば、陰極は酸化ビスマス、酸化インジウム、及び/或は酸化アルミニウムのような酸化物を含む。酸化ビスマスと酸化インジウムとは、亜鉛と反応して電極に於けるガス放出を低減する。酸化ビスマスは乾燥状陰極構成に対し、重量で約1%〜10%の間の濃度で与えられる。これで、水素と酸素の再結合を容易にすることが出来る。酸化インジウムは、乾燥状陰極構成に対し、重量で約0.05%と1%の間の濃度で存在出来る。酸化アルミニウム、乾燥状陰極構成に対し、重量で約1%と5%の間の濃度で供給されて良い。
【0053】
或る実施例によれば、電気的活性亜鉛材の耐腐食性を向上し、それによって貯蔵期間を延長させるように、一種以上の添加剤を加えてもよい。貯蔵期間は、バッテリセルが商業的に成功するか不成功に終わるかについて決定的な要素である。バッテリは本来不安定なものであるから、陰極をも含めてバッテリの成分などは、化学的に有用な形態で保存されるように努力が必要である。何週間も何ヶ月も使用しない中に、電極物質が腐食したり、その他の理由で多分に変質すれば、貯蔵期間の短い事でこの値打ちは限られてしまう。腐食抑制剤の例として、インジウム、ビスマス、鉛、錫、カルシウムなどのカチオンがある。一般的にこれらは陰極の中に塩(例えば硫化物、フッ化物など)として乾燥状陰極構成に対し、重量で約25%、典型的には10%以内の濃度で存在するものである。実施例によっては、電気的活性亜鉛材料の腐食を抑制する為、有機物を電極構成に混合してもよい。かかる抑制剤の例として、市場で入手可能な界面活性剤であるTriton及びRS600界面活性剤がある。
【0054】
電解質内での亜鉛の溶解度を減らす為に加えられるアニオンの例として、燐酸塩、フッ酸塩、ホウ酸塩、珪酸塩、ステアリン酸塩などがある。一般的にこれらのアニオンは乾燥状陰極構成に対し重量で約5%以内の濃度で陰極内に存在してよい。これらのアニオンの中、少なくともあるものはセル周期の間に溶液中に入り、亜鉛の溶解度を減少させるものと思われて居る。これらの材料を含んだ電極構成の例は以下の特許及び特許出願に記載されて居り、これらは総て、あらゆる目的に対して参照して本願に組み込むものとする:米国特許6797433号("Negative Electrode Formulation for a Low Toxicity Zinc Electrode Having Additives with Redox Potentials Negative toZinc Potential"、発明者Jeffrey Phillips,2004年9月28日発行);米国特許6835499("Negative Electrode Formulation for a Low Toxicity Zinc Electrode Having Additives with Redox Potentials Positive to Zinc Potential",発明者Jeffrey Phillips,2004年12月28日発行);米国特許6818350("Alkaline Cells Having Low Toxicity Rechargeable Zinc Electrodes",発明者Jeffrey Phillips,2004年11月16日発行);PCT特許出願PCT/NZ02/00036(公開番号WO02/075830号、発明者 Hall,et al.2002年3月15日出願)。
【0055】
浸潤性の向上の為に陰極に添加されてよい物質の例には酸化チタン、アルミナ、シリカなどがある。
【0056】
一般的に、これらは乾燥状陰極構成に対して重量で約10%以内の濃度で付与される。かような物質については米国特許6811926号("Formulation of Zinc Negative Electrode for Rechargeable Cells Having an Alkaline Electrolyte"、発明者Jeffrey Phillips,2004年11月2日発行)に記載されてあり、この特許は本願に全体としてあらゆる目的に対して参照して組み込むものとする。
【0057】
導電性向上の為に陰極に添加されてよい物質の例には固有の高い導電性を持ち、陰極と互換性を有する物質が挙げられる。その例としては、酸化チタンなどがある。一般的に、これらは乾燥状陰極構成に対して重量で約10%以内の濃度で付与される。厳密には、この濃度は勿論添加物の種類によって異なる。
【0058】
結合、分散、及び/或は隔離部の代用物たることの目的として、陰極には種々の有機物が添加され得る。その例として、ヒドロキシルエチルセルローズ(HEC)、カルボキシメチルセルローズ(CMC)、遊離酸の形態のカルボキシメチルセルローズ(HCMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレンスルフォネート(PSS)、ポリビニルアルコール(PVA)、nopcospeprse分散剤(京都のSan Nopco Ltd.より入手可能)などがある。特殊例として、PSS及びPVAは浸潤性及び隔離部のような特徴を付与するために陰極のコーティングに使用される。実施例によっては、隔離部のような電極のコーティングに使用する場合、亜鉛−ニッケルセルは単一層の隔離部を使用してもよく、叉別の実施例に於いては,独立した隔離部が全然なくてもよい。 或る実施例によっては、PSSやPVAのような重合体材料は陰極内で隔離部にとって危険となる鋭い或は大きな粒子を埋め込む目的で、ペースト構成(コーティングではなく)に混入してもよい。
【0059】
ここで電極構成について定義するに当たり、構成に適応すると言うことは、その製造(例えばペースト、スラリー、或は乾燥状の製造方式)の時に得られる構成のみならず、携帯用器具に出力中のように使用中の充電放電の1サイクル以上の最中或はその後に得られるものにも適応すると言うことである。
【0060】
本発明の範囲内の種々の陽極構成は以下の文献に記載されて居り、これらの文献はすべてあらゆる目的に対して参照して本願に組み込まれるものとする:PCT公開WO02/39517(J.Phillips);PCT公開WO02/39520(J.Phillips);PCT公開WO02/39521;PCT公開WO02/39534(J.Phillips);米国特許公開2002182501号。上記文献に於ける陰極添加剤の例として、シリカ、各種アルカリ土金属のフッ化物、遷移金属、貴金属がある。 留意すべきことは、或る特種な性質を得る為に、何種もの物質を陰極に加えることが出来るが、これらの性質は陰極以外のバッテリ成分によって導入されることが出来ると言うことである。例えば、電解質内での亜鉛の溶解度を減少させる為の物質は、陰極によっても導入されるか否かを問わず、電解質或は隔離部(陰極にもまた与えられて居るか否かを問わず)の中に供給されてもよい。そのような物質の例にはリン酸塩、フッ化物、ホウ酸塩、亜鉛酸塩、ケイ酸塩、ステアリン酸塩などがある。上記された電極添加剤のその他の例で、電解質及び/或は隔離層の中に付与されてもよいものとして、インジウム、ビスマス、鉛、錫、カルシウムなどのイオンがある。
【0061】
負電子導通路
負電子導通路は、充電放電の期間に、電子を陰極と陰性(負)端子の間を通すバッテリ成分を含む。これら成分の中の一つはキャリヤ或は電流コレクタ下地層であり、陰極材料はその上に形成され、支持されるものである。これは本発明の主題である。円筒形のセルのデザインの場合、下地層は典型的には陰極材料、セル隔離部、及び陽極成分(電極それ自体、及び陽性電流コレクタ下地層を含む)、螺旋状に巻かれたサンドイッチ構成内に付与される。上記の如く、この構成はしばしばジェリイロールと呼ばれて居る。負電子導通路のその他の成分は、図1Aに示されて居る。これには電流コレクタディスク(往々導電性のタブが付けられている)と、陰性セル端子とが、必然ではないが、典型的に含まれて居る。図示された実施例に於いては、ディスクは陰性電流コレクタ下地層に直接接続されて居り、セル端子は直接電流コレクタディスク(しばしば導電性タブを通じて)接続されて居る。円筒形セルデザインの場合、陰性セル端子は通常キャップか缶である。
【0062】
負電子導通路の各成分は、その構成、電気的特性、化学的特性、幾何学的及び構造的特性などで特徴付けされることが出来る。例えば、或る実施例に於いては、通路の各要素は同じ構成(例えば、亜鉛とか亜鉛で覆われた銅)である。他の実施例に於いては、要素の中、少なくとも二つは異なった構成である。
【0063】
電流コレクタ
上記の如く、本出願の主題である導電路の一要素はキャリヤ或は電流コレクタの役をも果たす陰極用下地層である。電流収集下地層は穿孔金属板、拡張金属、泡状金蔵などを含めて種々の構成形態で提供することが出来る。特種実施例に於いて、下地層は銅或は真鍮に基づく物質から成る穿孔板或は拡張金属である。或る実施例に於いて、下地層は厚さ約2〜5ミルの間の穿孔板である。或る実施例に於いて、下地層は厚さ約2〜20ミルの間の拡張金属である。別の実施例に於いて、下地層は厚さ約15〜60ミルの間の泡状金属である。或る特種例でのキャリヤは厚さ約3〜4ミルの穿孔された銅である。キャリヤ金属と陰極材料とを含めての陰極の厚さは、特種な例として約10〜24ミルである。
【0064】
使用される銅或は真鍮に基づく電流コレクタの種類に拘らず、結果的な電流コレクタ構成として多くの異なる物理的構成が可能である。或る実施例に於いて、これは連続的平滑な箔として提供される。或る実施例に於いて、これは穿孔されたものである。円形、卵形、矩形、その他の幾何学的形状に穿孔されてよい。電気化学的活性層との物理的接触を向上させるため、或る実施例に於いては表面にパタニングを施し、或は粗面としてもよい。或る実施例に於いて、電流コレクタは厚さが例えば約2〜20ミルの拡張金属であってよい。別の実施例に於いて、電流コレクタは厚さが例えば約15〜60ミルの間の泡状金属であってよい。
【0065】
下地層の材料及び構造を選択する為の判断基準には、負電極材料、費用、(負電極材料で)コーティングの容易さ、水素発生の抑制、及び電気化学的活性電極材料と電流コレクタの間の電子輸送を容易にする能力がある。本発明の電流コレクタはこれらの基準を満たすものであり、場合によっては異なるデザインの電流コレクタより良好に作用する。
【0066】
電流コレクタは一つ以上の金属間化合物及び錫と銅或は場合によって錫、銅及び亜鉛の合金で覆われた銅或は真鍮を使用する。合金及び金属間化合物は錫或は錫と亜鉛の両方でめっきされた下地層を焼成する事で形成される。焼成の間、底部下地層からの銅がめっきされた金属に拡散し、拡散した銅は負性ペーストと電気化学的に反応する。従ってこの拡散工程は腐食を促進し(即ちガスをより発生し)、バッテリ性能を悪化する。更に銅原子は錫原子と反応して焼成の間に一枚以上の金属間化合物層を境界面に形成する。形成される金属間化合物のタイプはめっきの厚さに依存する。厚さが20μインチの場合、形成される金属間化合物はない。厚さ40〜80μインチのめっきの場合、形成される金属間化合物はCu3Snである。厚さ200μインチのめっきの場合、形成される金属間化合物はCu3Sn(約5〜15%)とCu6Sn5(約85〜95%)である。
金属間化合物Cu3Snの形成が好まれ、化合物Cu6Sn5の形成はその物理的性質とめっき層構成の違いの理由で忌避されるべきものである。
【0067】
金属間化合物Cu3Sn及び/或はCu6Sn5はめっきされた厚さに依存して形成されることが見出された。一例に於いて、錫めっきされた銅の下地層が260℃で約45分焼成され、走査電子顕微鏡(SEM)で撮像され、エネルギイ散乱X線(EDX)で解析された。種々の厚さに於ける焼成された下地層のSEM画像が図4に示される。図4Aに示されためっきされた厚さが約20μインチの場合、錫/銅合金(403)が形成された。底部下地層は層401として示され、これは全部銅である。図4Bに示される如く、めっきされた厚さが約60μインチの場合、錫/銅合金(403)及び金属間化合物Cu3Sn(405)が形成された。図4Cに示される如く、めっきされた厚さが約200μインチの場合、少量のCu3Sn(層405)のみが見られ、残りはCu6Sn5(層407)と純粋な錫(層409)であった。
【0068】
此処で使用される金属間化合物とは固体相で、任意的にいずれの成分とも異なる構成の一種以上の非金属要素と共に、或る原子率に於ける或いは非常に小さい成分領域の二種類以上の金属要素を含むものである。金属間化合物は金属的性質を有しても、有さなくてもよい。例えば、Cu6Sn5のような或る金属間化合物はもろくて曲がらない。その一方、合金は二種以上の要素の均一的な混合物であり、その原子比にはどの成分にも制限がなく、その中少なくとも一種は金属であり、残りの物質は金属性を有するものである。
【0069】
錫と亜鉛とが電気めっきされ、焼成される時、異なるめっき厚さの錫めっきと比較してめっき層の同様な構成が観察された。即ち、20μインチの厚さでは何の化合物も観察されない。めっきの厚さ40〜80μインチでは、形成される化合物はCu3Snである。めっきの厚さ200μインチでは、形成される化合物はCu3Sn(約5〜15%)とCu6Sn5(約85〜95%)とを含む。亜鉛はこれら二種の化合物の中で或る程度溶解するかも知れない。
【0070】
金属間化合物Cu3Sn及びCu6Sn5は物性が異なる。金属間化合物Cu3Snは大きくて不規則な形状である。Cu6Sn5はもろくてCu3Snより導通性が低い。上記の如く、下地層のデザインについての考慮点の一つは製造工程に対する抵抗能力である。一試験に於いてCu6Sn5はその後の電極を巻き付ける工程で割れた。割れたCu6Sn5は覆いの層を損傷し、底部下地層表面に於ける腐食反応を増加させた。製造中に下地層から分離した場合の物質はその後の工程に於いて汚染物源となる可能性がある。割れたCu6Sn5はバッテリ運行中の水素発生を増加させる可能性がある。上記の如く、通気キャップがあっても、水素の発生は望ましくない。導通性の低下はセルの作用に悪影響を及ぼす。従って、Cu6Sn5の形成は避けなければならない。
【0071】
Cu6Sn5の形成を避けるため、めっきされる厚さは小さくなくてはならない。上記の如く、金属間化合物及び合金の形成は焼成前のめっきされた厚さに影響される。しかし、めっきされた厚さが薄すぎると、下地層が腐食に対して十分保護されない可能性がある。耐腐食性に関しては、約40〜80μインチの厚さが好適であり、しかもCu6Sn5の形成を除去するものと見いだされた。好適にめっきされた錫には約60μインチの厚さ、めっきされた錫と亜鉛には約55μインチの厚さが使用されてよい。
【0072】
めっきされた下地層表面はマット仕上げされてよい。マット仕上げによって電気化学的活性物質のめっきされた下地層への接着が助成される。更に典型的に商業用めっき浴に使用される漂白添加剤がめっきされた層に組み込まれてもよく、めっきされた層を分解する可能性がある。漂白添加剤を含まないめっき浴を使用することにより分解なしのマット仕上げが保障される。
【0073】
製造工程
本発明の電流コレクタは、ニッケル−亜鉛セル製造工程の電極−隔離部サンドイッチ構造の組み立てに至るまでの一部分を示す図5のフロー図での工程によって製作されてもよい。ステップ502に於いて下地穿孔片が供される。この下地穿孔片は銅或いは真鍮のような銅合金から成るものでよい。下地層は更にビスマス、インジウム或いは鉛のような一種以上の要素を少量含んでもよい。一例に於いて、下地層は厚さが約4ミルの99.7%の銅箔である。下地層の長さ及び幅はバッテリの大きさ及び製造法によって異なってよい。(セルの高さが下地層の幅を決定し、種々の浴の大きさが下地層の幅を決定する。)下地層を試験するため、長さ6インチの細長片が使用された。別の場合には15インチの細長片が使用される。全規模の製造工程の場合には12000インチとかそれより長い片が使用されてもよい。サブCセルの製造には、1.325インチの幅でもよい。より大きなバッテリセルはより幅の広い片が必要であろう。場合によって、適当な大きさの片に電気めっきの後長手方向に切断されるならば、一個のセルに使用される幅の二倍から10倍の幅の片が使用されてもよい。
【0074】
脱脂穿孔片からは脂分及び不潔物を除去する(504)。変性アルコール、アセトン、或いはその他の有機溶媒が1から15分間穿孔片に付けられてよい。場合によって、例えば片が全然使用されて居らず、従って脂分とか不潔物のない場合には、この工程はなくてもよい。しかし、細長片の製造工程に於いては機械油のついた除去されるべき銅或いは真鍮の片が屡製造されるものである。片の脱脂工程の後、工程506に於いて、任意的に脱イオン(DI)水によって10−30分間すすがれる。
【0075】
穿孔片はアルカリ性浸潤溶液の中で電解的に浄化される(508)。電解的浄化の間、アルカリ性溶液に浸されたまま下地層の長さに沿って電流が与えられる。電解的浄化によってめっきされる表面が純潔、均一、平滑であることが保証される。15インチの片の場合、1〜3アンペア或は2アンペアの電流が与えられてよい。それより長い片の場合、電流はもっと高くあるべきものである。アルカリ性溶液のpHは約10〜13でよい。溶液はアルカリ性水酸化物、アルカリ性炭酸化物、及びアルカリ性リン酸化物を含んでもよい。例えば溶液は水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウム、或は酢酸ナトリウムを含んでよい。
【0076】
溶液は更に水酸化カリウム、炭酸カリウム、及びリン酸カリウム、或は水酸化、炭酸、及びリン酸ナトリウム及びカリウムの混合も含んでよい。一例に於いて、水酸化ナトリウムは約30〜60グラム/リットルの濃度で供される。炭酸ナトリウムは約40〜90グラム/リットルの濃度で供される。リン酸ナトリウムは50〜90グラム/リットルの濃度で供される。電解的浄化の後、穿孔片は工程510に於いて約10〜30秒間DI水ですすがれてよい。
【0077】
更に電気めっき用に表面を準備するために、穿孔片は活性化溶液に浸されてもよい(512)。活性化溶液はpHが約1の強酸でよい。かような酸の一例として酸濃度約4〜20%の硫酸がある。例えば塩酸、硝酸のようなその他の強酸も使用可能である。例えば、穿孔片は酸濃度約4%の硫酸に約5〜10分間浸されてよい。或る実施例に於いて、pHがより高い、例えばpHが3或は4のより弱い酸が使用されてもよい。例えば、場合によって臭化水素酸が使用されてもよい。活性化溶液に浸されて、表面はより活性となり、結果として電気めっきされた層が好適に結合する。下地層表面は反射性や輝度が減少し、それ程黄色や赤色に見えなくなるかもしれない。活性化の後、穿孔片は工程514に於いて約10〜30秒間DI水ですすがれてよい。
【0078】
穿孔片はめっき浴(516)の中で錫或は錫と亜鉛の両方で電気めっきされてよい。錫めっき用として、電気めっき浴は錫イオン或は亜鉛イオン源、及び電流キャリヤ源から成り、漂白剤は含まない。上記の如く、漂白剤は電気めっき層に組み込まれてしまうかも知れず、そうして劣化の原因となる。叉輝面は電気化学的活性層に良好に接着しない。浴は酸化遅延剤及び/或は耐トリーイング剤から成ってよい。トリーイングとは電気めっきされた層が例えば樹枝状のような不規則な形状に成長する現象のことである。トリーイングは好ましからぬ伝導路を生成したり、電気化学的活性物質の不均一な消耗を起こしたりするので、セルの有効寿命を短縮させることがある。この不規則な形状はバッテリの運行中に成長し、隔離部を穿孔し、好ましからぬ伝導路を生成して陰極と陽極の間の短絡を起こすことがある。不規則形状は或る局部に於いて例えば亜鉛のような或る種の粒子の濃度を増加し、電気化学的活性物質の不均一な欠乏を起こすことがある。
一例に於いて、錫イオン源は硫酸第一錫であり、電流キャリヤ源は酸であり、酸化遅延剤はスルフォン酸であり、耐トリーイング剤はナフトール、接着剤、ゼラチン、或はクレゾールである。その他の錫イオン源、例えば塩化第一錫(SnCl2)、或はメタンスルフォン酸第一錫(Sn(CH3SO32)が使用されてもよい。電流キャリヤ源はめっき路に十分な導電性を与えることの出来る如何なる酸であってもよい。例えば、電流キャリヤ源は密度約50〜100g/Lの硫酸、酢酸、ホウ酸、硫酸ナトリウム、或はスルファン酸(sulfamic acid)でよい。酸化遅延剤は第一錫の酸化を遅延させるためのもので、クレゾールスルフォン或はフェノールスルフォン酸でよい。その密度は約50〜100g/Lでよい。耐トリーイング剤はナフトール、ジヒドロキシジフェニルスルフォン、接着剤、ゼラチン、或はクレゾールでよい。ナフトール或はジヒドロキシジフェニルスルフォンは0.5〜10g/Lの密度で使用可能である。接着剤、ゼラチン、或はクレゾールは0.2〜12g/Lの密度で使用可能である。
【0079】
錫と亜鉛の両方が堆積される別例に於いて、めっき浴は亜鉛イオン源をも含むものである。亜鉛イオン源の例には密度10〜100g/Lの塩化亜鉛(ZnCl2)、硫酸亜鉛(ZnSO4)、ピロリン酸亜鉛(Zn227)が含まれる。これ以外の亜鉛イオン源も適宜に使用可能である。
【0080】
厚さ約40〜80μインチの金属が、下地層の上に電気めっきされてよい。電気めっきの間、下地層の全体或は下地層の一部が浴に浸されてよい。連続的生産の環境に於いて、下地層の部分が交互に電気めっき浴に浸されてよい。一実施例に於いて、約60μインチの錫が下地層の各面の上に電気めっきされる。別例に於いては、約55μインチの錫と亜鉛が5Sn:1Znの割合で下地層の各面の上に電気めっきされる。此処に開示される如く、電気めっきの厚さが焼成工程で形成される金属間化合物を決定する。下地層を覆う電気めっきされた層は錫、錫合金、或は金属間化合物である。電気めっきされた層は更に若干量の銅が錫合金の部分として含まれてよい。電気めっきされた層の構成は勾配的であって、底部下地層に最も近い部分が銅を最も高率に含み、電気めっき浴に最も近い部分が銅を最も低率で含み或は含まないものでよい。
【0081】
下地層に与えられる電流密度は予想外に下地層の試験結果に影響のあることが見出された。電気めっきされる厚さが同じでも、本発明者は下地層のガス発生速度を減少させるのに殊に有益な電流密度を発見した。錫及び錫−亜鉛めっきの両方の場合で、その電流密度は約4〜6分間に於いて40〜80A/m2である。或る実施例に於いて、錫及び錫−亜鉛めっきの両方の場合で、この電流密度は約4〜6分間に於いて40〜70、或は約60A/m2であってよい。
【0082】
めっき工程は殊に室温で行われ、連続的にめっきされた細長片を製造する間、めっき浴の濾過と循環が必要かもしれない。
【0083】
電気めっきに使用される陽極は元素金属の片であってよい。錫及び亜鉛のめっき用として、錫と亜鉛の合金或は錫と亜鉛の各々の片が使用されてよい。電気めっきされる物質は約75〜100重量%錫と約0〜25%重量%亜鉛であってよい。当業者ならば、これらの電気めっき浴構成及びめっき条件を変更してめっきされる錫と亜鉛の望まれる率に到達することが可能であろう。約4Sn:1Znから7Sn:1Zn或は10Sn:2Znの率でめっきされて本発明の電流コレクタを製造することが出来る。
【0084】
電気めっきの後、めっきされた下地層はDI水、温水ですすがれ、熱で乾燥されてよい(518)。熱乾燥は形態学的変化を目的とするものではなく、単に下地層からすすぎを完全に蒸発させるためのものである。従って、与えられるのは少量の熱である。
【0085】
電気化学的活性物質がめっきされた下地層片に与えられてよい(520)。これら電気化学的活性物質の構造については既に記述されてある。通常ペーストの形状であり、これらの物質は下地層片の片面或いは両面に与えられる。平滑な付与が保証されるように、ローラのような機械的装置が使用されてもよい。穿孔片は或る時間の間周囲より高い温度に維持して焼成されてよい(522)。焼成により電気化学的活性物質から重合体が発生し、めっきされた下地層と金属間化合物を形成する金属の拡散を促進する。200−300℃の温度が30分から約2時間維持されてよい。一実施例に於いて、約260℃の温度が約45分間維持されてよい。
【0086】
陰極物質は焼成された後、上記の陰極−隔離部サンドイッチ構成に組み立てられてよい(524)。陰極物質、隔離部、及び陽極は順に積み重ねられてこのサンドイッチ構成に形成される。この構成全体はローリング及びセル製造に適当な大きさの片へと裁断されてもよい。或る実施例に於いて、この裁断の工程は露出した銅或いは真鍮の縁部も焼成されるように片の焼成以前に実施されてもよい。その他の実施例に於いて、下地層はサンドイッチの組み立て前に他のセル構成を下地層の縁部によりよく接続できるように、焼成の後に切断される。
【0087】
本発明の内容が不明瞭にならないように、周知の工程については此処に詳細は記述は避けてある。亜鉛陰極の製法の詳細は2004年8月17日出願の米国特許出願10/921,062(J.Phillips)(本願に全体としてあらゆる目的に対して参照して組み込むものとする)に記載されてある。本発明はニッケル−亜鉛バッテリを例として説明されたものであるが、これは発明を限定するものではない。本発明による亜鉛を基にした下地層電流コレクタは、亜鉛電極を使用する多くのセルに於いて使用出来る。これらには、例えば、亜鉛−空気セル、亜鉛−銀セル、及び亜鉛−二酸化マンガンセルが含まれる。
【0088】
ガス発生試験結果
もっともガス発生速度を低くするデザイン及び製造条件を見出すために、電気めっきされた下地層のガス発生試験が各種の条件のもとで実施された。一試験に於いては種々の厚さに電気めっきされた下地層が比較された。ガス発生速度はめっきされ、焼成された下地層を電解質及び電気化学的活性物質を気密の壜の中へと結合し、三日間で発生するガスの量を測定して計測された。試験用の壜に加えられた物質の量はバッテリセルの相対的構成を真似して決定された。従って、ガス発生速度の結果は製造されたバッテリセル内でのものと相関するはずである。
【0089】
図6は試験結果を示す。ガス発生速度は三日に亘って測定され、24時間の平均ミリリットル値としてめっきされた層の厚さに対して図示した。厚さは与えられた電流とサンプル面積上の時間とから計算されたものであり、従って寄生的反応を含まない理論的な値である。これらの計算された厚さはSheffield platerを使用して測定された厚さと相関され、測定値に近いことが見出された。例えば理論的厚さの58.7μインチに対して26回の測定の平均は標準偏差を9.81μインチとして53.1であった。厚さの測定は理論的(計算による)厚さが計測値とよく相関することを示す。
【0090】
ガス発生速度の図は、非常に低度の厚さの場合ガス発生速度の高いことを示した。薄い電気めっきされた層は下地層の全体を覆うことをせず、露出された下地層が反応して水素を発生するのだと信じられる。しかし錫めっきの場合約1.5μm即ち約60μインチでガス発生速度は最低であり、5Sn:1Znの割合の錫−亜鉛めっきの場合約1.4μm即ち約55μインチでガス発生速度は最低であった。金属がよけい電気めっきされるに従い、ガス発生速度は徐々に増加する。ガス発生速度の増加は金属間化合物Cu6Sn5の層の形成の増加と一致して居る。Cu6Sn5の厚い層が割れて下地層を露出し、水素を発生するものと信じられる。その代わりに、Cu6Sn5は直接水素の発生に寄与しているのかも知れない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル−亜鉛バッテリセル用の亜鉛電極下地層を製造する方法であって、
(a)銅を含む下地層の細長片を準備する工程、
(b)この片を電解的浄化する工程、
(c)電気めっき浴でこの片に電気めっきを施して40〜80μインチの錫を含む金属を堆積する工程とを含む方法。
【請求項2】
堆積される金属が更に亜鉛を含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
堆積される金属が約75〜100重量%の錫と約0〜25重量%の亜鉛を含むものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
下地層材料が更に亜鉛から成り、銅と亜鉛が真鍮合金を形成するものである、請求項1或は2に記載の方法。
【請求項5】
電解的浄化がアルカリ性浸潤溶液の中で5〜10分の時間実施されるものである、請求項1或は2に記載の方法。
【請求項6】
アルカリ性浸潤溶液のpHが約10〜13である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アルカリ性浸潤溶液がアルカリ性水酸化物、アルカリ性炭酸塩、及びアルカリ性リン酸塩を含むものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
更にこの片を活性化する工程から成り、この活性化工程がこの片を酸を含む活性化溶液に浸す工程を含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
活性化溶液のpHが約0.2〜3である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
活性化溶液が酸濃度を4〜20%とする硫酸である、請求項8或は9に記載の方法。
【請求項11】
電気めっき工程が電流密度約40〜80A/m2で約4〜6分間実施されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
電気めっき浴が錫イオン源と電流キャリヤ源から成り、漂白剤を含まないものである、請求項1或は11に記載の方法。
【請求項13】
電気めっき浴のpHが約0.1〜3である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
電気めっき浴が更に酸化遅延剤及び耐トリーイング剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
錫イオン源が硫酸第一錫であり、電流キャリヤ源が酸であり、酸化遅延剤がスルフォン酸であり、耐トリーイング剤がナフトール、接着剤、ゼラチン、或はクレゾールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
電気めっき浴が錫イオン源と亜鉛イオン源と電流キャリヤ源から成り、漂白剤を含まないものである、請求項1或は2に記載の方法。
【請求項17】
電気めっき浴が更に酸化遅延剤及び耐トリーイング剤から成り、錫イオン源が硫酸第一錫であり、亜鉛イオン源が硫酸亜鉛であり、電流キャリヤ源が酸であり、酸化遅延剤がスルフォン酸であり、耐トリーイング剤がナフトール、接着剤、ゼラチン、或はクレゾールである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
更に
(a)酸化亜鉛に基づく電気化学的活性物質の層を下地層に貼る工程、
(b)めっきされた下地層及びペーストを焼成してペーストから重合体を除去し、錫及び銅の少なくとも一つの金属間化合物を形成する工程とを含む、請求項1或は8に記載の方法。
【請求項19】
焼成する工程が下地層を約200〜300℃の温度に約30分から2時間維持する工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
形成される少なくとも一つの金属間化合物がCu3Snである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
(a)(i)銅或は真鍮の下地層と、(ii)この下地層の上の厚さ約40〜80μインチの錫或は錫/亜鉛めっきと、を含む電流コレクタ、及び
(b)酸化亜鉛に基づく電気化学的活性物質の層とを含む、陰極構成体。
【請求項22】
錫めっきが約60μインチである、請求項21に記載の構成体。
【請求項23】
錫或は錫/亜鉛が約55μインチである、請求項21或は22に記載の構成体。
【請求項24】
ニッケル−亜鉛バッテリセルであって、
(a)電流コレクタ及び酸化亜鉛に基づく電気化学的活性層を含む陰極層と;
(b)ニッケルを含む陽極層と;
(c)陰極層と陽極層とを隔離する隔離層と、から成り、
電流コレクタは銅或は真鍮の下地層及び錫及び銅の少なくとも一つの金属間化合物を含む金属間化合物層を含むものである、ニッケル−亜鉛バッテリセル。
【請求項25】
金属間化合物がCu3Snを主とし、10%以下のCu6Sn5を含むものである、請求項24に記載のセル。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−541183(P2010−541183A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528086(P2010−528086)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/078335
【国際公開番号】WO2009/046031
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(504237337)パワージェニックス システムズ, インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】