説明

ニッケルナノ粒子の製造方法

【課題】逆マイクロエマルジョン中でニッケル−ヒドラジン着物を形成した後還元する方法により均一な大きさの優れた分散安定性を有する平滑な表面のニッケルナノ粒子を製造する方法およびこれにより製造されたニッケルナノ粒子を提供する。また、100nm以下、好ましくは10ないし50nmの狭い粒度分布を有するニッケルナノ粒子の製造方法およびこれにより製造されたニッケルナノ粒子を提供する。
【解決手段】本発明は、(a)ニッケル前駆体、界面活性剤および疎水性溶媒を含む水溶液を形成する段階と、(b)上記混合液にヒドラジンを含む化合物を添加してニッケル−ヒドラジン着物を形成する段階と、(c)上記ニッケル−ヒドラジン着物を含む混合液に還元剤を添加してニッケルナノ粒子を形成する段階と、を含むニッケルナノ粒子の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルナノ粒子の製造方法に関するもので、特に均一な大きさの分散安定性が優れたニッケルナノ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電気機器の小型化に応じて電子部品の小型化が切実に要求されており、これにより積層セラミックコンデンサ(MLCC)において小型化、高容量化されたものが要求されていて、基板においても高密度、高集積の多層基板が要求されている。
【0003】
このような積層セラミックコンデンサや基板において、内部伝導性材料または電極材料として、銀、白金、またはパラジウムのような高価の貴金属材料を用いて来たが、製造費の節減のためニッケル粒子に取り替えられている趨勢である。このうち、積層セラミックコンデンサにおいてニッケル電極層は粉末冶金での成形体の充填密度に比して低くて、焼成時焼結に応ずる収縮量が誘電体層より大きいのでニッケル電極の層間短絡や断線による不良が発生しやすいという問題点がある。このような問題点を防ぐために内部電極層として使用されるニッケル粉末は、大きい粒子を含まなく粒度分布も狭くて均一であり、凝集のない優れた分散性を有するべきである。これのために、ナノ大きさの分散安定性が優れて均一な大きさのニッケル粒子を製造する方法が要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のニッケル粒子の製造方法による100nm以下の均一で分散安定性が優れたナノ粒子を製造する方法は提案されていない。
【0005】
従来の一実施例によれば、1000℃ほどの高温下で、水素で気相還元させる方法が提案されたが、この方法は、高温下で反応が熱履歴を有していて核の生成と成長が同時に起きて粒度分布が広くて1μmの大きい粒子が存在して内部電極や内部配線に適用するのに不足な点が多い。また、従来の他の一実施例によれば、湿式還元法によりサブマイクロン単位の微粉末の製造が可能であるが、反応の変数が多くて生成されたナノ粒子が不均一であったり、微粉末の表面が平滑ではなく、200nmないし1μmの大きさに製造されて、100nm以下の均一な粒子を製造するのに困難であるという短所がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するために、逆マイクロエマルジョン中でニッケル−ヒドラジン着物を形成した後還元する方法により均一な大きさの優れた分散安定性を有する平滑な表面のニッケルナノ粒子を製造する方法およびこれにより製造されるニッケルナノ粒子を提供する。また、本発明は100nm以下、好ましくは10ないし50nmの狭い粒度分布を有するニッケルナノ粒子の製造方法およびこれにより製造されるニッケルナノ粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、(a)ニッケル前駆体、界面活性剤および疎水性溶媒を含む混合液を形成する段階と、(b)上記混合液にヒドラジンを含む化合物を添加してニッケル−ヒドラジンの着物を形成する段階と、(c)上記ニッケル−ヒドラジンの着物を含む混合液に還元剤を添加してニッケルナノ粒子を形成する段階と、を含むニッケルナノ粒子の製造方法が提供される。
【0008】
ここで、上記ニッケル前駆体は、NiCl、Ni(NO、NiSOおよび(CHCOO)Niからなる群から選択される一つ以上の化合物であっても良い。また、ここで、上記界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(cetyltrimethyl ammonium bromide)、ドデシル硫酸ナトリウム(sodiumdodecyl sulfate)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(sodium carboxymethyl cellulose)、および、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)からなる群から選択される一つ以上の化合物であっても良い。またここで、界面活性剤は、エタノール、プロパノールおよびブタノールからなる群から選択される一つ以上の補助界面活性剤をさらに含んでも良い。またここで、上記疎水性溶媒は、へキサン、シクロへキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、テトラデカン、ヘキサデカン、トルエン、キシレン(xylene)、1−オクタデセン(1−octadecene)および1−ヘキサデセン(1−hexadecene)からなる群から選択される一つ以上の化合物であっても良い。
【0009】
ここで、上記ニッケル前駆体は、上記水溶液100重量部に対して0.1ないし10重量部で含まれることができる。また、ここで上記界面活性剤は、上記水溶液に添加される蒸留水1モルに対して0.1ないし20モルで含まれることができる。また、ここで上記補助界面活性剤は、上記蒸留水100重量部に対して20ないし40重量部で含まれることができる。また、ここで上記疎水性溶媒は、上記水溶液100重量部に対して30ないし60重量部で含まれることができる。
【0010】
また、ここで、上記ヒドラジンを含む化合物は、ヒドラジン(hydrazine)、ヒドラジン水和物(hydrazine hydrate)およびヒドラジン塩化物(hydrazine hydrochloride)からなる群から選択される一つ以上の化合物であっても良い。好ましい一実施例によれば、上記ヒドラジンを含む化合物は上記ニッケル前駆体から提供されるニッケルイオン1モルに対して1ないし10モルで含まれることができる。
【0011】
また、ここで、上記還元剤は、ナトリウムボロハイドライド(sodium borohydride)であっても良い。好ましい一実施例によれば、上記ナトリウムボロハイドライドは上記ニッケル前駆体から提供されるニッケルイオン1モルに対して0.1ないし1モルで含まれることができる。また、ここで、上記段階(a)ないし段階(c)は、25ないし60℃で行われることができるし、上記段階(c)は0.5ないし2時間の間に行われることができる。また、ここで、10ないし50nmの均一な大きさの優れた分散安定性を有する平滑な表面の粒子を形成することができる。
【0012】
本発明の他の実施形態によれば、逆マイクロエマルジョン方法によりニッケルナノ粒子を製造する方法において、ヒドラジンを含む化合物を用いてニッケル−ヒドラジンの着物を形成する段階と、このニッケル−ヒドラジン着物を還元させる段階とを含む均一な大きさの優れた分散安定性を有する平滑な表面のニッケルナノ粒子の製造方法が提供される。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態によれば、上述したニッケルナノ粒子の製造方法により製造されるニッケルナノ粒子が提供される。
【0014】
ここで、10ないし50nmの均一な大きさの優れた分散安定性を有する平滑な表面のニッケルナノ粒子を提供することができ、90ないし97重量%のニッケル金属を含むニッケルナノ粒子が提供される。
【0015】
本発明のさらに他の実施形態によれば、上述したニッケルナノ粒子を含む導電性インクが提供される。また、本発明のさらに他の実施形態によれば、上述したニッケルナノ粒子を電極材料として含む積層セラミックコンデンサが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、逆マイクロエマルジョン中でニッケル−ヒドラジン着物を形成した後還元する方法により均一な大きさの優れた分散安定性を有する平滑な表面のニッケルナノ粒子を製造する方法およびこれにより製造されるニッケルナノ粒子を提供することができる。また、本発明は100nm以下、好ましくは10ないし50nmの狭い粒度分布を有するニッケルナノ粒子の製造方法およびこれにより製造されるニッケルナノ粒子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るニッケルナノ粒子の製造方法およびこれにより製造されるニッケルナノ粒子に対して詳しく説明する。また、本実施形態を詳しく説明することに先立って、逆マイクロエマルジョン(reverse microemulsion)方式に対して先に説明する。
【0018】
水または新水性物質に、難溶性である物質を界面活性剤を加えて溶解させる場合、可溶化に応じてミセル(micelle)は膨脹する。この時、可溶化に応じて膨脹したミセル系をマイクロエマルジョンと言う。このマイクロエマルジョンは熱力学的に安定した系を形成するが、マイクロエマルジョンには水中、または親水性系にミセルが膨脹した場合のOil−in−Water型と、油中または疎水性系に逆ミセルが多量の水または新水性物質を可溶化して膨脹したWater−in−Oil型がある。このWater−in−Oil型を用いる方法を逆マイクロエマルジョン方式と言う。本実施形態は、この逆マイクロエマルジョン方式により任意の界面活性剤を取り入れて、界面活性剤により形成されるナノ大きさの均一な微細液滴を形成する方法に関する。
【0019】
この微細液滴中に、先ずヒドラジンを含む化合物を添加して着物を形成した後、この着物を還元させて均一なニッケル粒子を形成させながらも他の微細粒子との凝集を阻んで表面が平滑で優れた分散安定性を有するニッケルナノ粒子を製造することができる。これのために本実施形態では、補助界面活性剤を含むことができる。
【0020】
本発明によるニッケルナノ粒子の製造方法は、(a)ニッケル前駆体、界面活性剤および疎水性溶媒を含む水溶液を形成する段階と、(b)上記混合液にヒドラジンを含む化合物を添加してニッケル−ヒドラジン着物を形成する段階と、(c)上記ニッケル−ヒドラジン着物を含む混合液に還元剤を添加してニッケルナノ粒子を形成する段階と、を含む。従来の逆マイクロエマルジョン方法によるナノ粒子を製造する方法とは異なって、安定的にナノ大きさの均一な粒子を製造するためにニッケル着物を先に形成した後、これを還元させることが本発明の特徴である。またこのような段階を経ると、分散安定性が優れたニッケルナノ粒子を製造することができるという長所がある。
【0021】
これを段階別に見ると、ニッケルイオンを含むニッケル前駆体と界面活性剤を含む逆マイクロエマルジョンを準備する段階を経る。ここで、ニッケル前駆体としてはニッケルイオンを含む化合物であれば制限なしに使用されるが、ニッケル塩が好ましく使用され得る。ニッケル塩の例として、NiCl、Ni(NO、NiSOまたは(CHCOO)Niを挙げることができ、これらを一つまたは二つ以上混合して用いることができる。このニッケル前駆体は、全体水溶液100重量部に対して0.1ないし10重量部で含まれることが好ましい。ニッケル前駆体を0.1重量部の未満に含むと提供されるニッケルイオンが少なくて効率の側面で好ましくないし、10重量部を超過して含むと形成されたニッケル粒子が互いに団結してしまってナノ粒子を形成するのに好ましくない。ここで、ニッケル前駆体の含量が低いほどより小さな大きさのニッケルナノ粒子を形成することができる。
【0022】
界面活性剤として、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(cetyltrimethyl ammonium bromide、CTAB)、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate、SDS)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(sodium carboxymethyl cellulose、Na−CMC)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)またはこれらの混合物を用いることができる。この界面活性剤の以外にも微細ミセルを安定的に形成するために補助界面活性剤をさらに添加することができる。この補助界面活性剤の例として、エタノール、プロパノールまたはブタノールのようなアルコール系化合物を挙げることができる。ここで、界面活性剤は水溶液に添加される蒸留水1モルに対して0.1ないし20モルで含まれることができるが、このような割合で含まれると界面活性剤が蒸留水液滴を充分に覆うことができるので好ましい。この時、上記界面活性剤の含量が高いほどより小さな大きさのニッケルナノ粒子を形成することができる。また補助界面活性剤は、上記蒸留水100重量部に対して20ないし40重量部で含まれることができ、20重量部の未満で含まれるとマイクロエマルジョンの安定化に影響を及ぼすことができないし、40重量部を超過すると界面活性剤の作用を阻害して安定的なマイクロエマルジョンの形成を邪魔するから好ましくない。
【0023】
このようなニッケル前駆体と界面活性剤は、疎水性溶媒と蒸留水で混合されるが、ここで疎水性溶媒としては、へキサン、シクロへキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、テトラデカン、ヘキサデカン、トルエン、キシレン(xylene)、1−オクタデセン(1−octadecene)または1−ヘキサデセン(1−hexadecene)などの炭化水素系化合物を単独または混合して用いることができる。この疎水性溶媒は、上記水溶液100重量部に対して30ないし60重量部で含まれることができる。この割合で疎水性溶媒が含まれるとニッケルイオンを含む安定的な逆マイクロエマルジョンを形成することができる。
【0024】
次に、逆マイクロエマルジョン中にニッケル着物を形成する段階を行う。これのためにヒドラジンを含む化合物を添加するが、その例として、ヒドラジン(hydrazine)、ヒドラジン水和物(hydrazine hydrate)またはヒドラジン塩化物(hydrazine hyddrochloride)を単独または混合して用いることができる。ここで、ヒドラジンはNHNH、ヒドラジン水和物はNHNH・nHO、ヒドラジン塩化物はNHNHClの構造を有する化合物を言う。このヒドラジンを含む化合物は、ニッケル前駆体から提供されるニッケルイオン1モルに対して1ないし10モルで添加されることができ、1モル未満で含まれるとニッケル着物を充分に形成することができないし、10モルを超過して含まれると効率的な側面で好ましくない。
【0025】
以後に、逆マイクロエマルジョンに還元剤を添加してニッケル粒子を形成する段階を行う。ここに添加される還元剤としては、ナトリウムボロハイドライド(sodium borohydride、NaBH)が好ましく使用され得る。ここで、ナトリウムボロハイドライドは、ニッケルイオン1モルに対して0.1ないし1モルで含まれることができ、0.1モルの未満で含まれるとニッケル−ヒドラジン着物を充分に還元させることができないし、1モルを超過すると副反応が過度に起きるしニッケル還元に必要な還元剤が100%以上添加されるので効率面で好ましくない。還元剤を添加して0.5ないし2時間が経過すると100nm以下の狭い粒度分布を有するナノ粒子が形成される。還元反応時間が0.5時間未満であるとニッケルイオンの十分な還元が起きないし、2時間を超過するとニッケル粒子が過成長して不均一になり好ましくない。
【0026】
本実施形態によれば、反応温度は、常温、すなわち25℃ないし60℃で行われることが好ましいが、60℃を超過すると反応が急速に起きて均一な粒子の形成が難しいし、粒子の成長を制御しにくくなって好ましくない。
【0027】
このような段階により形成されたニッケルナノ粒子を当該技術分野の通常的な方法により逆マイクロエマルジョンから分離する段階と、分離されたニッケルナノ粒子を洗浄した後乾燥する段階をさらに含むことができる。例えば、遠心分離により混合液からニッケルナノ粒子を分離することができるし、分離された粒子をアセトンと蒸留水を用いて洗浄して真空乾燥機で乾燥してナノ粒子を得ることができる。
【0028】
以上で、ニッケルナノ粒子の製造方法およびこれにより製造されるニッケル粒子を好ましい実施形態を説明したが、以下ではより具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0029】
塩化ニッケル18g、PVP18g、エタノール150g、トルエン150gを蒸留水300gに添加し、40℃で撹拌機で混合して逆マイクロエマルジョンを製造した。この逆マイクロエマルジョン水溶液にヒドラジン水和物を40g添加して30分間撹拌してニッケル−ヒドラジン着物を形成した。ニッケル−ヒドラジン着物の形成された逆マイクロエマルジョンに0.04モルのNaBHを添加して1時間の間撹拌して還元反応によりニッケルナノ粒子を製造した。遠心分離機を用いて逆マイクロエマルジョンからニッケルナノ粒子を分離した。分離されたナノ粒子をアセトンと蒸留水を用いて3回洗浄した後50℃に維持される真空乾燥機で3時間乾燥してニッケルナノ粒子を得た。
【0030】
実施例1により製造されたニッケルナノ粒子をXRD(X−Ray Diffraction Examination、X−線回折分析)で分析した結果グラフを図1に示した。図1を参照すると、不純物および酸化物のない純粋なニッケル結晶状だけが生成されたことを確認できた。
【0031】
また実施例1により製造されたニッケルナノ粒子をTGA(Thermogravimetric Analysis、熱重量分析)で分析した結果グラフを図2に示した。図2を参照すると、形成されたニッケルナノ粒子中の有機物の含量が3ないし10重量%であることが分かった。すなわち、形成されたニッケルナノ粒子中に90ないし97重量%のニッケル金属が含まれることが分かった。
【0032】
また実施例1により製造されたニッケルナノ粒子の粒度分析結果を図3に示した。図3を参照すると、粒度分布の狭い均一な大きさのナノ粒子が形成されたことが分かった。また、実施例1により製造されたニッケルナノ粒子のSEM(Scanning Electron Microscope、走査電子顕微鏡)写真を図4に示した。図4を参照すると、30ないし40nmの球形の均一な粒子が形成されたことを確認できた。
【実施例2】
【0033】
塩化ニッケル18g、CTAB20g、エタノール150g、トルエン150gを蒸留水300gに添加して40℃で撹拌機で混合して逆マイクロエマルジョンを製造した。この逆マイクロエマルジョンにヒドラジン水和物を30g添加して30分間撹拌してニッケル−ヒドラジン着物を形成した。ニッケル−ヒドラジン着物の形成された逆マイクロエマルジョンに0.03モルのNaBHを添加して1時間の間撹拌して還元反応によりニッケルナノ粒子を製造した。
【0034】
遠心分離機を用いて逆マイクロエマルジョンからニッケルナノ粒子を分離した。分離されたナノ粒子をアセトンと蒸留水を用いて3回洗浄した後50℃に維持される真空乾燥機で3時間乾燥してニッケルナノ粒子を得た。実施例2により製造されたニッケルナノ粒子のSEM写真を図5に示した。図5を参照すると、15ないし20nmの球形の均一な粒子が形成されたことを確認できた。
【実施例3】
【0035】
塩化ニッケル18g、Na−CMC12g、エタノール150g、トルエン150gを蒸留水300gに添加して、40℃で撹拌機で混合して逆マイクロエマルジョンを製造した。上記の逆マイクロエマルジョンにヒドラジン水和物を30g添加して30分間撹拌してニッケル−ヒドラジン着物を形成した。ニッケル−ヒドラジン着物の形成された逆マイクロエマルジョンに0.03モルのNaBHを添加して1時間の間撹拌して還元反応によりニッケルナノ粒子を製造した。
【0036】
遠心分離機を用いて逆マイクロエマルジョンからニッケルナノ粒子を分離した。分離されたナノ粒子をアセトンと蒸留水を用いて3回洗浄した後50℃に維持される真空乾燥機で3時間乾燥してニッケルナノ粒子を得た。実施例3により製造されたニッケルナノ粒子のSEM写真を図6に示した。図6を参照すると、30ないし40nmである球形の均一な粒子が形成されたことを確認できた。
【0037】
<比較例1>塩化ニッケル18g、PVP60g、エタノール150g、トルエン150gを蒸留水300gに添加して、40℃で撹拌機で混合して逆マイクロエマルジョンを製造した。この逆マイクロエマルジョンに0.03モルのNaBHを添加して1時間の間撹拌して還元反応によりニッケルナノ粒子を製造した。遠心分離機を用いて逆マイクロエマルジョンからニッケルナノ粒子を分離した。分離されたナノ粒子をアセトンと蒸留水を用いて3回洗浄した後50℃に維持される真空乾燥機で3時間乾燥してニッケルナノ粒子を得た。
【0038】
比較例1により製造されたニッケル粒子は、15ないし20nmであったが、形状が不規則であり凝集がひどくてまともに分散されたナノ粒子を形成することができなかった。実施例1で、18gの塩化ニッケルから約4gのニッケルナノ粒子を得ることができた。これをエタノールに再分散させて3000rpmで5分間遠心分離させた後、沈殿物を除去すると約3.5g程度の分散安定性を有するニッケルナノ粒子を得ることができた。実施例2および3の場合においても等しい方法で測定すると類似の結果を得ることができた。
【0039】
これに反して、比較例1の場合等しく再分散させた時、凝集がひどくて3000rpmで5分間遠心分離を行うと、全量沈殿されて分散安定性を有するニッケルナノ粒子を得ることができなかった。
【0040】
(実施例4ないし実施例10)
一方、本発明によるニッケルナノ粒子の製造方法において、ニッケル前駆体の含量および界面活性剤の含量に応ずるニッケルナノ粒子の大きさの関係を確認するために、塩化ニッケルおよび各種類の界面活性剤を下記の表1に示す含量で投入したことを除き上記実施例1と等しい過程を実施してニッケルナノ粒子を製造して、その粒子の大きさを測定して下記の表1に共に示した。
【表1】

【0041】
上記の表1のように、ニッケル前駆体の含量が低いほど、界面活性剤の含量が高いほどより小さな大きさのニッケルナノ粒子を形成することが確認できた。
【0042】
<導電性インクの製造>
ニッケルナノ粒子をジエチレングリコールブチルエーテルアセテートとエタノール水溶液に入れて、ウルトラソニケータで分散させて20cpsの導電性インクを製造した。このように製造された導電性インクはインクジェット方式により回路基板に印刷されて導電性配線を形成することができる。
【0043】
<積層セラミックコンデンサ>
実施例1ないし3により製造されたニッケル粉末をバインダーに分散させて、高粘度のニッケルペーストを製造し、これをチタン酸バリウムのセラミック誘電体層にスクリーン印刷で塗布して乾燥させた後、これらの多層を積層して圧着させた後還元雰囲気下で約1300℃で焼成して製造する。
【0044】
また、上述した導電性インクをチタン酸バリウムのセラミック誘電体層にインクジェット印刷して乾燥させた後、還元雰囲気下で焼成して内部電極を形成することもできる。
【0045】
本発明は上記実施例に限らず、多くの変形が本発明の思想内で当分野での通常の知識を持った者によって可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例1により製造されたニッケルナノ粒子のXRD分析結果グラフである。
【図2】本発明の実施例1により製造されたニッケルナノ粒子のTGA分析結果グラフである。
【図3】本発明の実施例1により製造されたニッケルナノ粒子の粒度分析結果グラフである。
【図4】本発明の実施例1により製造されたニッケルナノ粒子のSEM写真である。
【図5】本発明の実施例2により製造されたニッケルナノ粒子のSEM写真である。
【図6】本発明の実施例3により製造されたニッケルナノ粒子のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ニッケル前駆体、界面活性剤および疎水性溶媒を含む混合液を形成する段階と、
(b)前記混合液にヒドラジンを含む化合物を添加してニッケル−ヒドラジン着物を形成する段階と、
(c)前記ニッケル−ヒドラジン着物を含む混合液に還元剤を添加してニッケルナノ粒子を形成する段階と
を含むニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ニッケル前駆体は、NiCl、Ni(NO、NiSOおよび(CHCOO)Niからなる群から選択される一つ以上の化合物である請求項1に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(cetyltrimethylammonium bromide)、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(sodium carboxymethyl cellulose)およびポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)からなる群から選択される一つ以上の化合物である請求項1に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記界面活性剤は、エタノール、プロパノールおよびブタノールからなる群から選択される一つ以上の補助界面活性剤をさらに含む請求項1に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記疎水性溶媒は、へキサン、シクロへキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、テトラデカン、ヘキサデカン、トルエン、キシレン(xylene)、1−オクタデセン(1−octadecene)および1−ヘキサデセン(1−hexadecene)からなる群から選択される一つ以上の化合物である請求項1に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記ニッケル前駆体が、前記水溶液100重量部に対して0.1ないし10重量部で含まれる請求項2に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記界面活性剤が、前記水溶液に添加される蒸留水1モルに対して0.1ないし20モルで含まれる請求項3に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記補助界面活性剤が、蒸留水100重量部に対して20ないし40重量部で含まれる請求項4に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記疎水性溶媒が、前記水溶液100重量部に対して30ないし60重量部で含まれる請求項5に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記ヒドラジンを含む化合物は、ヒドラジン(hydrazine)、ヒドラジン水和物(hydrazine hydrate)およびヒドラジン塩化物(hydrazine hyddrochloride)からなる群から選択される一つ以上の化合物である請求項1に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記ヒドラジンを含む化合物が、前記ニッケル前駆体から提供されるニッケルイオン1モルに対して1ないし10モルで含まれる請求項10に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記還元剤が、ナトリウムボロハイドライド(sodium borohydride)である請求項1に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記ナトリウムボロハイドライドが、前記ニッケル前駆体から提供されるニッケルイオン1モルに対して0.1ないし1モルで含まれる請求項12に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
前記段階(a)ないし段階(c)は、25ないし60℃で行われる請求項1に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
前記段階(c)は、0.5ないし2時間の間に行われる請求項1に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
10ないし50nmの均一な大きさの優れた分散安定性を有する平滑な表面の粒子を形成する請求項1に記載のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項17】
逆マイクロエマルジョン方法によりニッケルナノ粒子を製造する方法において、
ヒドラジンを含む化合物を用いてニッケル−ヒドラジン着物を形成する段階と、
このニッケル−ヒドラジン着物を還元させる段階と
を含む均一な大きさの優れた分散安定性を有する平滑な表面のニッケルナノ粒子の製造方法。
【請求項18】
請求項1に記載の製造方法により製造されるニッケルナノ粒子。
【請求項19】
10ないし50nmの均一な大きさの優れた分散安定性を有する平滑な表面の請求項18に記載のニッケルナノ粒子。
【請求項20】
90ないし97重量%のニッケル金属を含む請求項18に記載のニッケルナノ粒子。
【請求項21】
請求項18に記載のニッケルナノ粒子を含む導電性インク。
【請求項22】
請求項18に記載のニッケルナノ粒子を電極材料として含む積層セラミックコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−122248(P2011−122248A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280187(P2010−280187)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【分割の表示】特願2007−52308(P2007−52308)の分割
【原出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】