説明

ニッケル水素電池およびその製造方法

【課題】 優れた充放電サイクル特性を維持しつつ高出力特性を備えた密閉型ニッケル水素電池を提供すること。
【解決手段】 水素吸蔵電極を、希土類元素とNiを含む希土類以外の金属元素からなる水素吸蔵合金粉末であって、特定の平衡水素解離圧、特定の質量飽和磁化および希土類元素と非希土類金属元素の比が特定の比を有する水素吸蔵合金粉末を適用した電極とすることによって前記課題を解決する。また、該水素吸蔵電極を適用し、封口板0の内面とリード8の溶接点およびリード9と上部集電板2の溶接点のうち少なくとも一方の溶接点を、封口後に電池の正極端子と負極端子間に外部電源により通電することにより溶接してなる密閉形ニッケル水素電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル水素電池に関し、さらに詳しくは出力特性および充放電サイクル特性に優れたニッケル水素電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイルコンピュータ、デジタルカメラなどの移動体電子機器を初めとする小型軽量を求められる電動機器が急速に増加する傾向にある。これらの機器の電源として、ニッケル水素電池はニッケルカドミウム電池や鉛蓄電池等よりも単位体積および単位質量当たりのエネルギーが高く、耐過充電性、耐過放電性に優れるうえ、環境にクリーンな電源と前記電動機器用電源として広く用いられている。また、ハイブリッド形電気自動車(HEV)や従来ニッケルカドミウム電池が用いられていた電動工具や玩具などの電源のように出力特性に優れ、かつ長寿命が要求される分野への適用も始まっている。
【0003】
特にHEVや電動工具用電源のように大きい負荷がかかる用途においては低温(例えば0℃)において400W/kg以上、好ましくは600W/kg以上の出力密度を有することが望ましい。また、HEVのように電池の設置箇所の温度が高温になる虞がある用途においては高温(例えば45℃)において400サイクル以上、好ましくは500サイクル以上のサイクル寿命を有することが望ましい。
【0004】
各種水素吸蔵合金のうち、放電容量が大きいこと、サイクル特性に優れるところからニッケル水素電池の水素吸蔵電極にはLaNi5系の水素吸蔵合金が広く適用されている。例えば、価格を下げ、耐久性を上げるためにLaに替えてMm(ミッシュメタル)を採用したり、Niの一部をCo、Al、Mn等の金属元素で置換した水素吸蔵合金が一般的に用いられている。また、Mmを適用した系であっても、単位重量当たりの容量大きいところからMmに占めるLaの比率が80wt%以上であるものが一般的に用いられていた。しかし、従来の水素吸蔵電極は、放電時の反応抵抗が大きく、該水素吸蔵電極を適用したニッケル水素電池はニッケルカドミウム電池に比較して出力特性に劣るという欠点を有していた。
【0005】
高温下での保存特性を維持しつつ、低温高率放電特性を高めるために、平衡水素解離圧の異なる少なくとも2種類の水素吸蔵合金を含有する負極が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000-149933号公報(段落[0020]) 特許文献1の提案によれば、負極は、45℃での水素吸蔵量0.5重量%時の平衡水素解離圧が異なる少なくとも2種類の水素吸蔵合金a、bを含有し、45℃での水素吸蔵量0.5重量%時の平衡水素解離圧は、水素吸蔵合金aが0.35MPa、水素吸蔵合金bが0.02MPaである例が記載されている。しかし、特許文献1に示されている低温高率放電特性は、−20℃において1ItAの放電レートで放電したときの放電容量の大きさ(初期放電容量に対する比率)であって、本発明の目的とする出力特性の評価方法に比べて低い放電レートで放電した結果であり、且つ、本発明のいう出力特性(後記のように10秒目電圧(放電開始後10秒目の電圧)から求めた出力特性(W)は示されていない。特許文献1に記載のように、レート水素吸蔵合金粉末の一部を平衡水素解離圧の高い水素吸蔵合金粉末にしても、それのみでは水素吸蔵合金粉末表面における電荷移動反応が遅いためか、高率放電特性向上の効果は十分ではなかった。
【0006】
また、平衡水素解離圧の異なる2種類以上の水素吸蔵合金粉末とニッケル粉末を混合して得た負極を用いることによって、高率放電特性および充放電サイクル特性を高めたニッケル水素電池が提案されている(特許文献2参照)
【特許文献2】特開2004-281195号公報(段落[0010]〜段落[0012]) 該提案における水素吸蔵合金の60℃における平衡水素解離圧は、最も高いものが0.65MPa以上、最も低いものが0.1MPa以下である。該提案によれば放電容量を低下させることなく、高率放電特性の向上を行うことができる。
【0007】
しかし、特許文献2に示されている高率放電特性は、5℃において10ItAで放電したときの放電容量の大きさ(20℃における初期放電容量に対する比率)であって、本発明の低温(例えば0℃)に比べて放電温度が高く、且つ、前記特許文献1と同様に本発明のいう出力特性(W)は示されていない。特許文献2のように、水素吸蔵合金粉末の一部を平衡水素解離圧の高い水素吸蔵合金粉末とし、且つ、Ni粉末を混合添加して電極反応を促進するための場を提供したとしても、水素吸蔵合金粉末とNi粉末が接合されていないためか電極反応を促進する効果が十分ではない。
【0008】
水素吸蔵合金中の希土類元素に占めるLaの比率を25〜80wt%または25〜60wt%とし、40℃における平衡水素解離圧が0.15MPa未満または0.10MPa未満とした水素吸蔵合金粉末を適用したニッケル水素電池が提案され、該提案によれば、耐高温放置特性、内圧上昇抑制効果に優れ、充放電を行ったときに電池の内部抵抗の上昇が抑制されて優れたサイクル特性を有する電池が得られるとしている。(例えば特許文献3、特許文献4参照)
【特許文献3】特開2003−317712号公報
【特許文献4】特開2004−119353号公報 しかし、特許文献3、特許文献4には電池の出力特性について触れられていないように、該特許文献に記載の発明は、電池の出力特性の向上を目的とするものではなく、該特許文献に記載の電池は、水素吸蔵合金粉末表面における電荷移動反応が遅いためか、水素吸蔵電極の反応抵抗が大きく、特に低温において高率放電に供される用途には適さなかった。
【0009】
水素吸蔵合金中の希土類元素に占めるLaの比率を40〜70wt%とし、平衡圧(45℃、平衡水素プラトー圧)が0.008〜0.105MPaである水素吸蔵合金粉末を温度80℃、比重1.30のKOH水溶液中で1時間攪拌して合金粉末表面を活性化させた例が示され、該水素吸蔵合金粉末を適用したニッケル水素電池はサイクル特性および高率放電特性に優れているとされる。(例えば特許文献5参照)
【特許文献5】特開平7−286225号公報(段落0014、表1) しかし、特許文献5には高率放電の放電温度が特に示されておらず、且つ、示されているのは2ItAで放電したときの放電容量の大きさ(0.2ItAでの放電容量に対する比率)であって、前記特許文献1、特許文献2と同様、特許文献5には出力特性が示されていない。特許文献5に示されているように、水素吸蔵合金粉末を80℃のKOH中に1時間浸漬しても水素吸蔵合金粉末の表面にNiに富む層が十分に形成されず、依然として水素吸蔵合金粉末表面における電荷移動反応が遅いためか、あるいはまた、引用文献5の実施例には、AB比率{本発明でいうB/A、Bサイト元素(非希土類元素)とAサイト元素(希土類元素)の比}および平衡圧(本発明でいう平衡水素解離圧)を種々変えた例が示されているが、AB比率の低いものの平衡圧が低く、AB比率が高いものの平衡圧が高い組み合わせになっていて、水素吸蔵合金からの水素放出の速度が制約されるためか、水素吸蔵電極の反応抵抗が大きいという欠点が解消されていない。
【0010】
100℃における平衡圧が2〜4atm(0.2〜0.4MPa)であって、温度60℃、8NのKOH水溶液中に48時間浸漬したときに飽和磁化が3.4〜9.0emu/m2となる性情を有する水素吸蔵合金粉末を適用したアルカリ二次電池が提案され、該水素吸蔵合金粉末を適用することによって高容量で、高温におけるサイクル特性および高率放電特性に優れたニッケル水素電池が得られるとしている。(例えば特許文献6参照)
【特許文献6】特開2000−243434号公報(段落0011、0012、0029、表1) しかし、引用文献6には高率放電特性に関する具体的な記載がなく、かつ、前記性情を有する水素吸蔵合金粉末を適用したとしても、電池を高温下に長時間放置するかまたは多数回におよぶ充放電サイクルを繰り返さない限り水素吸蔵合金粉末の飽和磁化が3.4〜9.0emu/m2となる可能性は極めて小さい。このため、電池製造後高温下で長時間エージングするか、使用開始から長時間を経ないと優れた高率放電特性を得られない欠点がある。さらに、実施例に示されている水素吸蔵合金粉末のB/Aが5.0と小さく、充放電を繰り返すと水素吸蔵合金の腐食や微細化が進むためか、サイクル特性が十分ではない。
【0011】
水素を吸蔵脱離する希土類元素とNiおよびNi以外の遷移金属元素を主成分として構成された水素吸蔵合金を活性化処理せずにそのまま電極に用いた場合、初期の活性化が不十分で、数十から数百回の充放電による活性化が必要となる。また、従来の水素吸蔵合金は活性化が遅く、該従来の負極を適用したニッケル水素電池においては、充電時の水素発生量が多くて電解液が消耗するためか、充放電サイクル特性が劣る欠点があった。該水素吸蔵合金の活性化が遅いという点を解決するため、水素吸蔵合金粉末を活性化するために多くの提案がなされている。その一つは水素吸蔵合金粉末を弱酸性の水溶液に浸漬するというもので、例えば水素吸蔵合金粉末を、pH値が0.5〜5の弱酸性水溶液により表面処理を行う方法が開示されている。(特許文献7参照)
【特許文献7】特開平7−73878号公報(段落[0011]) 特許文献7によれば、酸処理により、水素吸蔵合金粉末の表面に形成された酸化物又は水酸化物の被膜が除去され、清浄な面が創出されるために水素吸蔵電極の活性度が向上し、活性化を短縮することが可能となるが、寿命の向上に対する効果は大きくない。これは、酸処理によって溶出する元素とニッケル水素電池に用いる電解液であるアルカリ金属の水溶液とで溶出する元素が異なる為、酸処理をした水素吸蔵合金粉末を適用してニッケル水素蓄池を組み立てるとアルカリ電解液によって水素吸蔵合金粉末が腐蝕するためであると考えられる。また、該特許文献に示されている低温放電特性は、0℃において1ItA(該放電レートは、後記出力特性の評価における放電レートに比べて小さい)で放電したときの放電容量の大きさ(mAh)であり、且つ、該特許文献は出力特性に触れていない。
【0012】
また、Niの含有比率が20〜70wt%の水素吸蔵合金粉末を、温度90℃以上、水酸化ナトリウム濃度30〜80重量%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬する方法が開示され、1.5〜6wt%の磁性体を含有する水素吸蔵合金粉末が示されている。特許文献8によれば、水素吸蔵合金粉末を高濃度で高温のNaOH水溶液で処理することによってKOH水溶液を用いて処理するのに比べて短時間の浸漬で原料粉末表面の酸化物を効果的に除去出来るとしている。(特許文献8参照)
【特許文献8】特開2002−256301号公報(段落[0009]) 特許文献8には高温(例えば45℃)におけるサイクル特性が示されていないが、25℃におけるサイクル特性から推してサイクル特性は十分ではない。また、引用文献8に示されている低温高率放電特性は、−10℃で4ItA相当の電流で、放電カット電圧0.6V(後記品発明における放電カット電圧0.8Vに比べて低い)として放電したときの放電容量の大きさ(25℃で放電したときの放電容量に対する比率)であって、出力特性は示されていない。引用文献8は、水素吸蔵合金粉末の平行水素解離圧に触れておらず、低温における出力特性向上に対して顕著な効果が得られない虞が高い。さらに、予めアルカリ水溶液や弱酸性水溶液に浸漬した水素吸蔵合金粉末に加えてLaに比べて塩基性の弱い希土類元素、例えばSm、Gd、Ho、Er、Ybの単体又は化合物を含有させた水素吸蔵電極が提案されている。(特許文献9、特許文献10参照)
【特許文献9】米国特許6,136,473号明細書
【特許文献10】特開平9−7588号公報 該特許文献に記載の方法によれば、水素吸蔵合金の腐食を抑制し、サイクル特性を向上させることができ、且つ、水素吸蔵電極の初期の活性化を速めることができる。しかし、特許文献9、特許文献10は出力特性について触れていない。特許文献9、特許文献10においてはアルカリ水溶液や弱酸性水溶液に浸漬による活性化処理が制御されておらず、活性化処理が不足すると水素吸蔵合金の電荷移動反応抵抗が十分に低減されないため、満足できる出力特性向上の効果が得られない虞があった。逆に活性化処理が過ぎると水素吸蔵合金の容量が減少して充電リザーブを十分に確保することが困難になり、満足できるサイクル特性向上の効果が得られない虞があった。また、水素吸蔵合金内に吸蔵された水素に対する束縛が強くて水素吸蔵電極の反応抵抗が大きいためか、前記本発明の目標とする出力特性を得ることが困難であった。
【0013】
さらに、従来の円筒形ニッケル水素電池は、図4に示すように、一方の端子(正極端子)を兼ねる蓋体(蓋体はハット状キャップ6、封口板0および該キャップ6と封口板0に囲まれた空間内に配置された弁体7からなり、封口板0の周縁部にガスケット5が装着され、有底筒状の電槽4の開口端を折り曲げることによって、前記蓋体の周縁部がカシメられて、蓋体と電槽とはガスケット5を介して気密に接触している。)を構成する封口板0と捲回式極群1の上部捲回端面に取り付けた上部集電板(正極集電板)2が、図5に示したリボン状集電リード12で接続されている(図5の13は、集電リード12に設けた溶接用の突起である)。従来の電池においては、上部集電板を取り付けた極群を電槽4内に収納後、一端を上部集電板に溶接したリボン状集電リード12の他端と封口板0の内面を溶接した後、蓋体を電槽4の開放端に装着するために、集電リード12に撓み代を設ける必要があり、該リボン状集電リード12の封口板0の内面との溶接点と、リボン状集電リード12と上部集電板2との溶接点を結ぶ集電リード12の長さが、通常、封口板0と上部集電板2の間隔の6〜7倍の長さとなり、このように集電リードが長いために、集電リード自体の電気抵抗が大きく、このことも電池の出力特性が低い一因となっていた。さらに、集電リードや電槽の内面と集電板の接合部分の電気抵抗が大きいことも電池の出力特性が低いことの一因となっていた。
【0014】
以上記述したように、これまでにニッケル水素電池の特性向上を目的として、水素吸蔵電極に関して種々の提案がされたにも拘わらず、優れたサイクル特性と出力特性を兼ね備えたニッケル水素電池が実現されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、優れた充放電サイクル特性を維持しつつ、従来提案されていなかった低温における出力特性に優れた密閉型ニッケル水素電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を達成するために、本発明者らは負極を高率で放電したときの抵抗成分解析を行った結果、従来の水素吸蔵電極の反応抵抗が大きいのは単に水素吸蔵合金粉末表面における電荷移動反応の反応速度が小さいことのみでは説明できないことをつかみ、前記電荷移動反応の反応抵抗を低減すべく、水素吸蔵合金粉末への触媒機能(触媒作用)の付与について検討することに加えて、さらに、水素吸蔵合金内で水素が強く束縛されるのを避け水素の移動(拡散)を容易にし、さらに水素吸蔵合金内での水素の移動距離を短くするべく水素吸蔵合金の組成について検討した結果、希土類元素とNiを含む希土類以外の金属元素からなる水素吸蔵合金粉末として、平衡水素解離圧、質量飽和磁化、前記B/A比の3つの値が、同時に後記に示す特定の値を有するものを適用することによって、サイクル特性に優れ、かつ、低温において驚くべき優れた出力特性が得られることを見いだし本発明に至った。また、該負極を、特定の組み立て方法により組み立てた密閉形ニッケル水素電池に適用することによって一層優れた低温出力特性を有する密閉形ニッケル水素電池を得られることを見いだし本発明に至った。
【0017】
本発明は、ニッケル水素電池を下記の構成とすることによって前記課題を解決する。
【0018】
本発明に係るニッケル水素電池は、ニッケル電極を正極とし、水素吸蔵合金粉末を有する水素吸蔵電極を負極とするニッケル水素電池において、前記水素吸蔵合金粉末が、希土類元素およびニッケル(Ni)を含む非希土類金属元素からなり、前記水素吸蔵合金粉末に吸蔵された水素と水素吸蔵合金粉末に含まれる全金属元素の原子比(H/M)が0.5であるときの40℃における水素吸蔵合金粉末の平衡水素解離圧が0.04メガパスカル(MPa)以上、0.12MPa以下であり、前記水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化が2emu/g以上、6emu/g以下であり、かつ、前記非希土類金属元素対希土類元素の成分比が、モル比で5.10以上、5.25以下であることを特徴とするニッケル水素電池である。(請求項1)
なお、前記平衡水素解離圧は、水素吸蔵合金の粉末試料0.5グラム(g)を0.1ミリグラム(mg)の精度で精秤し、サンプルホルダーに充填して東洋紡エンジニアリング(株)製、PCT測定用自動高圧ジーベルツ装置(PCT-A02型)を用いて、40℃において、前記H/M=0.5として測定したときの平衡水素解離圧である。
【0019】
また、前記非希土類金属元素対希土類元素の成分比を示すモル比とは、一定量の水素吸蔵合金に含まれる非希土類金属元素のモル数の和/希土類元素のモル数の和(モル数の和を以下総モル数ともいう)をいう。
本発明に係るニッケル水素電池は、前記水素吸蔵合金粉末に吸蔵された水素と水素吸蔵合金粉末に含まれる全金属元素の原子比(H/M)が0.5であるときの℃における水素吸蔵合金粉末の平衡水素解離圧が0.06MPa以上、0.10MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル水素電池である。(請求項2)
本発明に係るニッケル水素電池は、前記質量飽和磁化が3emu/g以上、6emu/g以下であることを特徴とする請求項1または2記載のニッケル水素蓄電池である。(請求項3)
本発明に係るニッケル水素電池は、前記水素吸蔵合金粉末と、該水素吸蔵合金粉末に混合添加してなるErおよび/又はYbの酸化物または水酸化物を含む水素吸蔵電極を適用したことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のニッケル水素電池である。(請求項4)
本発明に係るニッケル水素電池の製造方法は、前記希土類元素およびNiを含む非希土類金属元素からなる水素吸蔵合金粉末を、高温の水酸化アルカリ水溶液中に浸漬することによって、その質量飽和磁化を2emu/g以上、6emu/g以下または3emu/g以上、6emu/g以下とすることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のニッケル水素電池の製造方法である。(請求項5)
本発明に係るニッケル水素電池は、捲回式極群を備え、有底筒状の電槽の開放端を蓋体で封口してなり、前記蓋体を構成する封口板の内面と前記極群の上部捲回端面に取り付けた上部集電板の上面とを集電リードを介して接続した密閉形ニッケル水素電池であって、前記封口板の内面と集電リードの溶接点および集電リードと上部集電板の溶接点のうちの少なくとも一方の溶接点を、封口後の電池の正極端子と負極端子間に、外部電源により電池内を経由して通電することにより溶接したことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のニッケル水素電池である。(請求項6)
本発明に係るニッケル水素電池は、前記集電リードと上部集電板が複数の溶接点で接合され、該溶接点の上部集電板の中心からの距離と前記捲回式極群の半径の比が0.4〜0.7であり、前記捲回式極群の下部捲回端面に円板状の下部集電板が取り付けられ、該下部集電板と電槽底の内面が下部集電板の中央および該中央以外の複数の溶接点で接合され、該中央以外の複数の溶接点の前記下部集電板の中央からの距離と前記捲回式極群の半径の比が0.5〜0.8であることを特徴とする請求項6に記載のニッケル水素電池である。(請求項7)
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1によれば、低温における出力特性に優れた負極を備えたニッケル水素電池を得ることができる。
【0021】
本発明の請求項2および請求項3によれば、さらに低温における出力特性に優れた負極を備えたニッケル水素電池を得ることができる。
【0022】
本発明の請求項4によれば、低温における出力特性に優れ、且つ、高温における充放電サイクル特性に優れた負極を備えたニッケル水素電池を得ることができる。
【0023】
本発明の請求項5によれば、組み立て直後から充放電特性に優れ、低温における出力特性並びに高温における充放電サイクル特性に優れた負極を備えたニッケル水素電池を得ることができる。
【0024】
本発明の請求項6および請求項7によれば、出力特性を一層高めたニッケル水素電池を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(水素吸蔵合金粉末)
負極活物質としての主構成要素である水素吸蔵合金粉末は、構成元素として希土類元素とNiを含むものであって水素を吸蔵放出する機能を有するものであれば良く、特に限定されないが、好ましくは、AB5型の合金のMmNi5(Mmは希土類元素の混合物であるミッシュメタルを指す)のNiの一部をCo,Mn,Al,Cu等で置換した合金が、優れたサイクル寿命特性と高い放電容量を持つので好ましい。
【0026】
本発明においては、水素吸蔵電極に、前記H/M=0.5のときの40℃における平衡水素解離圧が0.04MPa以上の水素吸蔵合金粉末を適用する。該平衡水素解離圧が0.04Mpa以上であると0℃の雰囲気下で高い出力特性が得られる。この理由は、必ずしも明らかではないが、平衡水素解離圧が高いところから水素吸蔵合金内で水素が拘束される力が小さく、水素吸蔵合金内から合金外への水素の放出速度が大きくなり、放電時の水素吸蔵電極の反応抵抗が低減されたことによると考えられる。H/M=0.5のときの40℃における平衡水素解離圧が0.06MPa以上の水素吸蔵合金粉末を適用すると、さらに高い出力特性が得られるので好ましい。
【0027】
ただし、平衡水素解離圧が過度に高いと、何故か0℃における出力密度が低くなる。また、水素吸蔵合金から水素が解離して電池内の圧力を上げてしまい、充電末期に発生する酸素ガスが少量でも電池内圧が上昇して開弁し易くなって、電解液の消耗が進行するためか早期に容量が低下する虞がある。高出力密度を維持し、容量の早期低下を防止するために、本発明においては水素吸蔵合金粉末の前記平衡水素解離圧を0.12MPa以下とするのが良く、さらには、前記平衡水素解離圧を0.10MPa以下することが好ましい。
【0028】
水素吸蔵合金粉末の平衡水素解離圧は、該粉末の組成によって決まる。本発明において水素吸蔵合金の前記平衡水素解離圧を制御する方法は特に限定されるものではない。例えば、非希土類金属元素の総モル数/希土類元素の総モル数(B/A)を一定とし、希土類元素中に含まれるLaの比率を調整することによって、前記平衡水素解離圧を制御することができる。また、前記B/Aおよび希土類元素中に含まれるLaの比率を一定とし、非希土類金属元素中に含まれるAlの比率を調整することによっても前記平衡水素解離圧を制御することができる。
【0029】
ただし、水素吸蔵電極に平衡水素解離圧が0.04MPa以上の水素吸蔵合金粉末を適用しただけでは高い出力特性は得られ難い。本発明においては、前記平衡水素解離圧が0.04MPa以上の水素吸蔵合金粉末であって、水素吸蔵合金の質量飽和磁化を2〜6emu/gとし、さらにこのましくは3〜6emu/gとすることによって優れた出力特性を達成する。水素吸蔵合金の質量飽和磁化は通常0.1emu/g未満である。本発明に係る水素吸蔵合金のように高い質量飽和磁化は、水素吸蔵合金粉末の表面にNiやCoの帯磁性金属に富む相が層状に形成されることによってもたらされると考えられる。このように高い質量飽和磁化を有する水素吸蔵合金粉末は、NiやNiおよびCoを含む水素吸蔵合金粉末を90〜110℃の高温の水酸化アルカリ水溶液中に浸漬することによって得ることができる。
【0030】
なお、前記質量飽和磁化の値は、水素吸蔵合金粉末0.3gを精秤し、サンプルホルダーに充填して(株)理研電子製振動試料型磁力計(モデルBHV−30)を用い、5kエルステッドの磁場をかけて測定した値である。
【0031】
高温のアルカリ水溶液に浸漬した後の水素吸蔵合金粉末の観察によれば、水素吸蔵合金粉末の表面や、該表面に通じる亀裂に厚さが100ナノメートル(nm)以上のNiやNiおよびCoに富む相が層状に形成されているのが観測される。質量飽和磁化の高い水素吸蔵合金粉末を適用すると、何故高出力が得られるのかは明らかではないが、水素吸蔵合金粉末の表面に形成されたNiやNiおよびCoに富む相が、放電に際して前記電荷移動反応を促進する触媒の働きをし、且つ、Niに富む相が水素吸蔵合金内における水素の通り道となり、水素の固相内拡散をさらに促す働きをするためと考えられる。
【0032】
しかし、質量飽和磁化を過度に高くすると、電荷移動反応が促進されるものの水素吸蔵合金の水素吸蔵サイトが減少して負極の容量は低下し、充電リザーブ量が小さくなるので充放電サイクル特性は低下する虞がある。質量飽和磁化が2emu/g未満の場合は、前記電荷移動反応に対する触媒作用や水素の固相内拡散を促進する効果が得られない虞がある。また、質量飽和磁化が6emu/gを超えると水素吸蔵合金の容量低下が顕著になる。このような理由から、水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は、2〜6emu/gが良く、3〜6emu/gが好ましい。
【0033】
水素吸蔵合金粉末を前記のように高温のアルカリ水溶液に浸漬しなくても、水素吸蔵合金粉末を電池に組み込んで充放電を繰り返し行うと水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化の値は上昇する。しかし、この場合の質量飽和磁化の上昇速度は遅く、本発明に規定する値に至るまでには数十サイクルもしくは数百サイクルの充放電の繰り返しを必要とする。水素吸蔵合金の活物質としての活性が低いと水素吸蔵能力が低いために充電時に電池の内圧が上昇して開弁し、高い出力が達成される前に、前記の理由によって特性が低下してしまう虞がある。このため、水素吸蔵合金粉末を電池に組み込む以前に高温のアルカリ水溶液に浸漬して、質量飽和磁化を高めることが好ましい。
【0034】
本発明においては、さらに、前記B/Aを5.10以上、5.25以下とする。水素吸蔵合金粉末が、前記平衡水素解離圧、質量飽和磁化を備え、且つ、B/Aが5.25以下の場合、極めて高い出力が得られる。この理由は必ずしも明らかではないが、該組成の水素吸蔵合金粉末は、水素吸蔵合金粉末に水素を吸蔵放出させる過程で合金粉末に亀裂が入り易く、初期活性化の充放電に於いて、合金粉末に亀裂が入って、合金粉末と電解液の接触面積が増大して電荷移動反応の反応抵抗が低下するとともに、放電に際して、水素吸蔵合金内に吸蔵された水素の水素吸蔵合金内における移動距離が小さくなって水素吸蔵電極の反応抵抗が低下したためと考えられる。
【0035】
前記B/A比が5.25以上となると、耐久性が向上するが、亀裂が入りにくくなり、合金粉末と電解液の接触面積の増大効果や、合金粉末内の水素の経路の短縮効果が得られ難いために高い出力特性が得られにくいと考えられる。さらに、水素吸蔵量が制限され、電池に組み込んだ際のリザーブ総量の減少につながる。そのため結果として充放電サイクル特性が悪くなる虞がある。他方、前記B/Aが5.10未満の場合も充放電サイクル特性が劣る虞がある。その理由は明らかではないが、前記B/Aが5.10未満では水素の吸蔵放出を繰り返したときに水素吸蔵合金粉末が過度に割れ易く、水素吸蔵合金粉末の微細化が速く進行するために、早期に容量低下が起きるものと考えられる。
【0036】
従来、高出力を得るためには、負極活物質(水素吸蔵合金)粉末の平均粒径を小さくすることが好ましく、通常は平均粒径を20μm未満、さらには10μm未満にすることが好ましいとされた。しかし、水素吸蔵合金粉末の平均粒径を20μm未満さらには10μm未満と小さくすると、水素吸蔵合金粉末の腐食が促進され、充放電サイクル特性が低下する欠点が生じる。本発明においては水素吸蔵合金粉末を高温の水酸化アルカリ水溶液に浸漬することによって、水素吸蔵合金粉末の活性を高めているので、平均粒径が10μm以上、さらには20μm以上であっても高出力を得ることが可能である。本発明においては、水素吸蔵合金粉末の平均粒径を20〜50μmとすることが好ましく、20〜35μmとすることがさらに好ましい。
【0037】
なお、ここでいう平均粒径とは、累積平均径(d50)を指し、粉体の前体積を100%として累積カーブを求めたときにその累積カーブは50%になる点の粒径をいう。
【0038】
(負極:水素吸蔵電極)
水素吸蔵合金粉末と増粘剤、結着剤および水を主成分とする負極活物質ペーストを支持体(基板ともいう)に塗布し、乾燥したのちロール掛けして所定の厚みとしたのち裁断して負極とする。前記増粘剤としては、通常、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)等の多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることができる。増粘剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1〜3重量%が好ましい。また、前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種または2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、負極の総重量に対して0.1〜3重量%が好ましい。
【0039】
負極活物質ペーストにはそれ以外に水素吸蔵合金の防触用添加剤として、イットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)の他に、ガドリウム(Gd)、セリウム(Ce)を酸化物や水酸化物を混合添加したり、該元素の単体を予め水素吸蔵合金中に含有させても良い。
【0040】
特に、水素吸蔵合金粉末にErやYbの酸化物や水酸化物を添加混合すると水素吸蔵合金粉末の腐食が抑制され、優れたサイクル特性が得られるので好ましい。ErやYbの酸化物や水酸化物は電池内においてアルカリ電解液と反応して水酸化物が生成し、該生成物が水素吸蔵合金粉末の防蝕剤として作用すると考えられる。添加するErやYbの酸化物や水酸化物として平均粒径が5μm以下のものを用いると分散性に優れ、かつ、アルカリ電解液と反応し易いためか、高い防蝕作用が得られるため好ましい。
【0041】
これら防蝕用添加剤の添加量は、水素吸蔵合金粉末100重量部に対して0.3〜1.5重量部とするのが好ましい。添加量が0.3重量部未満では防蝕効果が得られない虞があり、1.5重量部を超えても、添加量を1.5重量部以下としてときと同等の防蝕効果しか得られず、且つ、水素吸蔵合金電極の反応抵抗を増大させる虞がある。
【0042】
さらに、必要に応じて天然黒鉛(鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、気相成長炭素、金属(銅,ニッケル,金等)粉、金属繊維等の導電剤やポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー粉末、炭素粉末等のフィラーを添加することもできる。
【0043】
水素吸蔵電極用集電体としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、耐還元性及び耐酸化性に優れたニッケルやニッケルメッキを行った鋼板を好適に用いることが出来、発泡体、繊維群の形成体、凸凹加工を施した3次元機材の他に、パンチング鋼板等の2次元機材が用いられる。これらの中で、負極用集電体としては、安価で、且つ電導性に優れる点から鉄箔にニッケルメッキを施した穿孔板(パンチング板)が好適である。集電体の厚みは特に限定されないが、5〜700μmのものが用いられる。さらに、パンチング板のパンチング径は1.7mm以下、開口率40%以上であることが好ましく、これにより少量の結着剤でも負極活物質と集電体との密着性は優れたものとなる。
【0044】
(正極:ニッケル電極)
本発明に係る密閉型ニッケル水素電池の正極活物質としては、水酸化ニッケルに水酸化亜鉛、水酸化コバルトを混合したものが用いられるが、共沈法によって水酸化亜鉛や水酸化コバルトを水酸化ニッケル中に均一分散した(固溶させた)水酸化ニッケル複合水酸化物が好ましい。
【0045】
正極活物質への添加物には、導電助剤として水酸化コバルト、酸化コバルト、等を用いるが、前期水酸化ニッケル複合酸化物に水酸化コバルトをコートしたものや、これらの水酸化ニッケル複合酸化物の一部を酸素又は酸素含気体、又は、K228、次亜塩素酸などの酸化剤を用いて酸化したものを用いることができる。この場合、酸化剤の添加量を制御することにより正極活物質に含まれるNiおよびCoの平均酸化数を2.04〜2.40に設定することが好ましい。
【0046】
正極にはその他に酸素過電圧を向上させる物質としてY、Yb等の希土類元素の酸化物や水酸化物を添加することができる。また、高出力を得るためには、正極活物質粉末の平均粒径が小さい方が有利であり、本発明においては、正極活物質粉末の平均粒径が50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。ただし、平均粒径が過度に小さいと活物質の充填密度(g/cm3)が低下する虞があり、充填密度の低下を防ぐためには、正極活物質粉末の平均粒径が5μm以上であることが好ましい。
【0047】
所定の粒径を持つ粉体を得るためには、粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはアルカリ金属を含有した水溶液を用いて湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0048】
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、気相成長炭素、金属(銅,ニッケル,金等)粉、金属繊維等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。
【0049】
これらの中で、導電剤としては、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが望ましい。導電剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1重量%〜10重量%が好ましい。特にアセチレンブラックを0.1〜0.5μmの超微粒子に粉砕して用いると必要炭素量を削減できるため望ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を用いて乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
【0050】
前記結着剤としては、負極同様、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種または2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1〜3重量%が好ましい。
【0051】
前記増粘剤としては、通常、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、キサンタンガムやウエランガム等の多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることができる。特にキサンタンガムやウエランガムは耐酸化性に優れているので正極活物質ペーストの増粘剤として好ましい材料である。増粘剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1〜3重量%が好ましい。
【0052】
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極または負極の総重量に対して添加量は5重量%以下が好ましい。
【0053】
正極および負極は、前記活物質、導電剤および結着剤を水やアルコール、トルエン等の有機溶媒に混合させた後、得られた混合液を下記に詳述する集電体の上に塗布し、乾燥することによって、好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ブレードコーター、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚みおよび任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0054】
ニッケル電極用集電体は、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、耐還元性及び耐酸化性に優れたニッケルやニッケルメッキを行った鋼板を好適に用いることが出来、発泡体、繊維群の形成体、凸凹加工を施した3次元機材の他に、パンチング鋼板等の2次元機材が用いられる。これらの中で、ニッケル電極用集電体しては、多孔度が高く、且つ、活物質粉末の保持機能に優れたNi製発泡体が好適である。集電体の厚みは特に限定されないが、5〜700μmのものが用いられる。
【0055】
焼成炭素、導電性高分子の他に、接着性、導電性および耐酸化性向上の目的で、集電体のニッケルの表面をNi粉末やカーボンや白金等を付着させて処理した物を用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。
【0056】
セパレータとしては、優れたハイレート特性を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。これら多孔膜や不織布の構成材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂や、ナイロンを挙げることができる。
【0057】
セパレータの強度を確保し、電極のセパレータ貫通による短絡発生を防止し、ガス透過性を確保する点から、セパレータの空孔率を80体積%以下とするのが好ましい。他方、セパレータの電気抵抗を低く抑え、優れたハイレート特性を確保する点から空孔率を20体積%以上とするが好ましい。また、セパレータに親水化処理を施すことが望ましい。例えば、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂に、表面にスルフォン化処理、コロナ処理、PVA処理を施したり、これらの処理を既に施されたものを混合したものを用いてもよい。
【0058】
電解液としては、一般にアルカリ電池に適用されているものが使用可能である。水を溶媒とし、溶質としてはカリウム、ナトリウム、リチウムを単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができ、かつ、これらに限定されるものではないが、電解液における電解質塩の濃度としては、高い電池特性を有する電池を確実に得るために、水酸化カリウム5〜7mol/dm3、水酸化リチウム0.5〜0.8mol/dm3が好ましい。
【0059】
また、電解液に水素吸蔵合金粉末の防食剤、正極の酸素過電圧を増大させるための添加剤、あるいは自己放電抑制のための添加剤を添加することもできる。具体的にはY、Yb、Er、カルシウム(Ca)、硫黄(S)、亜鉛(Zn)等を単独またはそれら2種以上の混合物等を添加剤として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
本発明に係るニッケル水素電池は、電解液を、例えば、正極とセパレータと負極とを積層する前または積層した後に注液し、最終的に、外装材で封止することによって好適に作製される。また、正極と負極とがニッケル水素電池用セパレータを介して積層された発電要素を捲回してなるニッケル水素蓄電池においては、電解液は、前記捲回の前後に発電要素に注液されるのが好ましい。注液法としては、常圧で注液することも可能であるが、真空含浸方法や加圧含浸方法や遠心含浸法も使用可能である。
【0061】
本発明に係るニッケル水素電池の外装体の材料としては、ニッケルメッキした鉄やステンレススチール、ポリオレフィン系樹脂等が一例として挙げられる。
【0062】
本発明に係るニッケル水素電池の構造は、特に限定されるものではないが、電極の枚数が少なくて、且つ、電極の面積を大きくできるところから。正極、セパレータ、負極からなる積層体を捲回した捲回式極群を備えた構造とするのが好ましい。
【0063】
(集電構造)
図1は、本発明に係るニッケル水素電池の構成の1例を模式的に示す断面図である。該例においては、捲回式極群1を有底筒状の電槽4内に収納し、電槽4の開放端を蓋体で封口してなり、該蓋体は周縁部にガスケット5を装着した封口板0、該封口板0の外面に接合したキャップ6およびキャップ6と封口板0で囲まれた空間内に配置した弁体7からなり、前記封口板0の内面と前記極群1の上部捲回端面に取り付けた上部集電板2の上面とを、集電リードを介して接続する。
【0064】
図1は、また、封口板0と集電リードの溶接点、集電リードと上部集電板2の溶接点P1のうち少なくとも一方の溶接点(後記のようにP1が好ましい)を溶接する方法を模式的に示す図である。封口板0と集電リードの溶接点、集電リードと上部集電板2の溶接点のうち少なくとも一方の溶接点を溶接する前に、電槽4の開放端を折り曲げて、封口板0の周縁部に装着されたガスケットをカシメ封口する。封口されたことによって、封口板0と集電リードの溶接点、集電リードと上部集電板2の溶接点のうち少なくとも一方の未溶接点(溶接されていない溶接点)は、当接する。このように封口した状態で、電池の正極端子(蓋体)と負極端子(電槽4)に外部電源(電気抵抗溶接機)の出力端子A、Bを当接させて溶接用の電流を通電する。該通電によって前記未溶接点が溶接される。該方法によれば、封口した状態で溶接用の電流を通電するので、溶接に際して従来必要とした、集電リードに撓み代を設ける必要がない。従って集電リードの長さを小さくして集電リードの電気抵抗を低減することができる。
【0065】
なお、本発明においては、封口板0の内面と集電リードの溶接点と、集電リードと上部集電板の上面の溶接点を結ぶ集電リードの最短長さを封口板0と上部集電板2の間隔の2.1倍以下にすることが好ましく、1.7倍以下にするのがさらに好ましい。
【0066】
図2は、本発明に適用する集電リードの1例を示す図である。本発明によれば、前記溶接に際して集電リードに撓み代を設ける必要がないので、例えばリング状集電リードを適用することができる。該リング状集電リードは、例えば厚さ0.4〜1mmであって、ニッケル製のパイプを輪切りにしたものでもよいし、ニッケル板を丸めて、リング状にしたものでもよい。また、リングは1重に限られず、金属板を折りたたみ2重以上の多重にしたものをリング状にしたり、曲げ加工や絞り加工によって2重以上の多重にしたものでもよい。但し、量産においては、封口板0の内面と上部集電板2の上面との間隔の大きさにバラツキがあるために、単純なリング状の集電リードでは該バラツキを吸収できずに集電リードと上部集電板との溶接において溶接不良を招く虞があるので、集電リードに該バラツキを吸収するバネ機能を持たせることが好ましい。
【0067】
図2に示した例では、リング状主リード8の一方の端面(図2では下側の端面)に複数の突片9′を有する補助リード9を接合する。該補助リードは、例えば厚さが0.2〜0.5mmのニッケル板などの金属板を加工したものであって、図2に示すようにリング状の主リードの下側端面に対して下側に斜めに張り出させてある。補助リード9の切片9′にこのような張り出しを設けることによって、補助リードにバネ機能を持たせ、封口に際して封口板0の内面と上部集電板2の上面との間隔にばらつきがあったとしても、前記補助リード9のバネ機能によって例えば集電リード(突片9′の先端に設けた突起10)と上部集電板2を良好に当接させ、溶接に支障が生じないようにすることができる。
【0068】
図2に示すように、リング状の主リード8の一方の端面(図2では上側の端面)には封口板0との溶接を容易にするために突起11を設ける。また、補助リード9の切片9′先端には上部集電板との溶接を容易にするために突起10を設けている。通常、上部集電板の厚さが、封口板の厚さに比べて小さいく、集電リードとの溶接に際しては小さな熱量で良好な溶接が得られ易い。従って、本発明においては、封口前に封口板0の内面に予め集電リード(図2の例ではリング状主リード8)を溶接しておき、封口した後で電池内に溶接用の電流を通電して集電リード(補助リード9)と上部集電板2を溶接することが好ましい。封口板と集電リードを封口に先立って予め溶接した時点で集電リード(図2ではリング状主リード8)に設けた突起11が溶融し殆ど消滅する。図1は、封口板0と主リード8を封口に先立って溶接した状態を示すもので、主リードに設けた突起11が消滅したことを示している。
【0069】
本発明においては、前記集電リード(補助リード9)と上部集電板2の溶接点P1(図1)の上部集電板の中央(中心ともいう)からの距離と極群1の半径の比を0.4〜0.7に設定すると、上部集電板2に接続した極板の集電機能が優れるためか、高い出力特性が得られるので好ましい。また溶接点P1の数は電池のサイズによっても異なるが2〜16点、好ましくは4〜16点とすると集電抵抗を低く抑えることができるので好ましい。
【0070】
図3は、本発明に適用する上部集電板2の1例を示す斜視図である。上部集電板2は、例えば厚さが0.3〜0.5mmのニッケル板やニッケルメッキ鋼板からなり、図3に示すように円板状であって、中央に透孔を有し、該中央から周縁に向かって放射状にのびるスリット2−2を有するものが好ましい。該スリット2−2は、上部集電板を極群の捲回端面に突出させた電極(例えば正極)の長辺端部に電気抵抗溶接によって接合する際に無効電流を抑制するのに有効である。また、スリット2−2の両辺を折り曲げて高さが0.2〜0.5mmの下駄(下駄の歯状に立った部分)2−3を形成すると、該下駄2−3が前記電極の長辺端部に噛み込み、上部集電板と電極との間に良好な接合が得られるので好ましい。
【0071】
本発明においては極群1の他方の捲回端面(図1では下側)に下部集電板3を取り付けることが好ましい。極群1の他方の捲回端面に他方の電極(例えば負極)の長辺端部を突出させ、該端部に下部集電板3を接合させる。該下部集電板3は、前記上部集電板2と同様に例えば厚さが0.3〜0.5mmのニッケル板又はニッケルメッキ鋼板製であって、中央から周縁に向かって放射状にのびるスリットおよび該スリットの両辺に下駄を有することが好ましい。
【0072】
本発明においては、前記下部集電板に中央以外に複数の突起14を設け、電槽4の底の内面との溶接点を中央以外(図1の溶接点P2)、に複数設けることが好ましい。該溶接点P2から下部集電板の中央(中心ともいう)の距離と極群1の半径の比を0.5〜0.8に設定すると、下部集電板に接続させた極板の集電機能が優れるためか、高い出力特性が得られるので好ましい。また、溶接点P2の数は電池のサイズによっても異なるが2〜16点、好ましくは4〜16点とすると集電抵抗を低く抑えることができるので好ましい。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載により限定されるものではなく、試験方法や構成する電池の正極材料、負極材料、正極、負極、電解質、セパレータ並びに電池形状等は任意である。
【0074】
(水素吸蔵合金粉末の作製)
希土類元素にはLa、Ce、Pr、Ndを含む(Mm)を適用した。非希土類金属元素としてNi、Co、Al、Mnの4種の元素を選択した。表1に示したa〜mまでの13種類の組成を有する水素吸蔵合金が得られるように成分元素を秤量し、Ar雰囲気中で加熱溶融した後、メルトスピニング法により急冷固化し、次いでAr雰囲気中で900℃に3時間加熱し焼鈍した。得られた水素吸蔵合金を粉砕して平均粒径20μmの水素吸蔵合金粉末とした。なお、表1においてMmの構成比は、Mm全体を100重量%としたときの各元素の重量比率(重量%)で表し、非希土類金属元素の構成比は、Mmを構成する希土類元素の総モル数に対する当該金属元素のモル数の比(モル比)で表した。
【0075】
表1に、作製した水素吸蔵合金粉末の組成、B/A、40℃、H/M=0.5における平衡水素解離圧を示す。
【0076】
【表1】

(実施例1〜実施例5、比較例1、比較例2)
(正極の作製)
硫酸ニッケルと硫酸亜鉛および硫酸コバルトを所定比で溶解した水溶液に硫酸アンモニウムとNaOH水溶液を添加してアンミン錯体を生成させた。反応系を激しく撹拌しながら更にNaOH水溶液を滴下し、反応系のpHを11〜12に制御して芯層母材となる球状高密度水酸化ニッケル粒子を水酸化ニッケル:水酸化亜鉛:水酸化コバルト=88.45:5.12:1.1の比となるように合成した。
【0077】
前記高密度水酸化ニッケル粒子を、NaOH水溶液でpH11〜12に制御したアルカリ水溶液に投入した。該溶液を撹拌しながら、所定濃度の硫酸コバルト、硫酸アンモニウムを含む水溶液を滴下した。この間、NaOH水溶液を適宜滴下して反応浴のpHを11〜12の範囲に維持した。約1時間pHを11〜12の範囲に保持し、水酸化ニッケル粒子表面にCoを含む混合水酸化物から成る表面層を形成させた。該混合水酸化物の表面層の比率は芯層母粒子(以下単に芯層と記述する)に対して、4.0wt%であった。前記混合水酸化物から成る表面層を有する水酸化ニッケル粒子50gを、温度110℃の30wt%(10N)のNaOH水溶液に投入し、充分に攪拌した。続いて表面層に含まれるコバルトの水酸化物の当量に対して過剰のK228を添加し、粒子表面から酸素ガスが発生するのを確認した。得られた粒子をろ過、水洗、乾燥し、活物質粉末とした。
【0078】
前記活物質粉末と平均粒径5μmのYb(OH)3粉末の混合粉末にカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を添加して前記活物質粉末:Yb(OH)3粉末:CMC(固形分)=100:2:0.5のペースト状とし、該ペーストを450g/m2のニッケル多孔体(住友電工(株)社製ニッケルセルメット#8)に充填した。その後80℃で乾燥した後、所定の厚みにプレスし、幅48.5mm、長さ1100mm、片方の長辺に沿って巾が1.5mmの活物質無塗工部を設けた容量6500mAh(6.5Ah)のニッケル正極板とした。
【0079】
(水素吸蔵合金粉末のアルカリ水溶液浸漬処理)
前記表1に示したb、c、e、f、g、a、hに係る平均粒径20μmの水素吸蔵合金粉末を、それぞれ濃度48重量%、温度100℃のNaOH水溶液に3時間浸漬した。この間、浸漬浴を攪拌して、水素吸蔵合金粉末を浴内に分散させた。その後、加圧濾過して処理液と合金を分離した後、純水を合金重量と同重量添加して28kHzの超音波を10分間かけた。その後、緩やかに攪拌しつつ純水を攪拌槽の下部より注入し、上部から排水を流出させた。このように攪拌槽中に純水をフローさせることにより、金粉末から遊離する希土類水酸化物を除去した。その後、pH10以下になるまで水洗した後、加圧濾過した。この後、80℃温水に暴露して水素脱離を行った。温水を加圧濾過して、再度の水洗を行い、合金を25℃に冷却し、攪拌下4%過酸化水素を合金重量と同量加え、水素脱離を行って、水素吸蔵合金粉末を得た。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は、適用した水素吸蔵合金粉末b、c、e、f、g、a、hに対して何れも4.5emu/gであった。
【0080】
(負極の作製)
得られた水素吸蔵合金粉末100重量部に対して平均粒径5μmのEr23粉末1重量部を添加混合、さらにスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)0.65重量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)0.3重量部を添加混合した後、所定量の水を加えて混練してペーストにした。該ペーストを、ブレードコーターを用いて、鉄にニッケルメッキを施したパンチング鋼板からなる負極基板に塗布した後、80℃で乾燥した後、所定の厚みにプレスして幅48.5mm、長さ1180mm、片方の長辺に沿って巾が1.5mmの活物質無塗工部を設けた容量11000mAh(11.0Ah)の負極(水素吸蔵電極)とした。因みに、負極1cm2当たりの水素吸蔵合金粉末の充填量は0.07gであった。
【0081】
(捲回式極群の作製)
前記負極と厚み120μmのスルフォン化処理を施したポリプロピレンの不織布製セパレータと前記正極とを積層し、該積層体をロール状に捲回して半径が15.2mmの極群とした。
【0082】
(集電板の取り付け)
前記極群の一方の捲回端面に突出させた正極基板の端面に、ニッケルメッキを施した鋼板からなる厚さ0.3mm、中央に円形の透孔を有し、中央部から周縁に向かって放射状にのびる8本のスリット2−2を有し、該スリットの両辺には高さが0.5mmの下駄(下駄の歯状で電極基板へのかみ込み部となる。)2−3を設けた半径14.5mmの円板状の上部集電板(正極集電板)2を抵抗溶接により接合した。なお、上部集電板の中心が極群の捲回端面の中心と重なるように配置した。
【0083】
また、極群の他方の捲回端面に突出させた負極基板の端面にニッケルメッキを施した鋼板からなる厚さ0.3mm、中央部から周縁に向かってのびる8本のスリットを有し、該スリットの両辺には高さが0.5mmの下駄(下駄の歯状で電極基板へのかみ込み部となる。)を設けた半径14.5mmの円板状の下部集電板(負極集電板)を抵抗溶接により接合した。この際下部集電板の中心が極群の捲回端面の中心に重なるように配置した。なお、下部集電板の、中央に1個とスリットによって分断された8個の区画毎に1個の合計9個の点状の突起(プロジェクション)14を設けた。下部集電板の中央の突起を除く8個の点状の突起の下部集電板の中央(極群の捲回端面の中央に重なる)からの距離を10.6mm(該距離と極群の半径の比が0.7)とした。なお、中央の突起の高さを中央以外の8個の突起の高さに比べて少し低く設定した。
【0084】
(下部集電板と電槽缶底内面との溶接)
ニッケルメッキを施した鋼板からなる有底円筒状の電槽缶を用意し、前記集電板を取り付けた極群を、上部集電板(正極集電板)を電槽缶の開放端側に、下部集電板(負極集電板)を電槽缶の底に当接するように電槽缶内に収容し、上部集電板が電槽と接触しないように絶縁物で遮断した後、電槽に溝付けを行い、6.8mol/dm3のKOHと0.8mol/dm3のLiOHを含む水溶液からなる電解液を所定量注液した。
【0085】
注液後、正極集電板と、電槽缶の底面(負極端子)に抵抗溶接機の溶接用出力端子を当接させ、充電方向および放電方向に同じ電流値で同じ通電時間となるように通電条件を設定した。具体的には、電流値を正極板の容量(6.5Ah)1Ah当たり0.6kA/Ah(6.0kA)、通電時間を充電方向に4.5msec、放電方向に4.5msecに設定し、該交流パルス通電を1サイクルとして2サイクル通電ができるようにセットし、矩形波からなる交流パルスを通電した。この通電により、下部集電板の前記8個の突起と電槽底の内面とが溶接された。その後、抵抗溶接用の一方の電極棒を極群の中央に設けた円形の孔を挿通させて下部集電板の上面に当接させ、他方の電極棒を電槽缶底の外面に押し当て、下部集電板の下面の中央の突起を電槽底の内面を密着させ、電気抵抗溶接により下部集電板の中央を電槽底の内面に溶接した。
【0086】
(集電リードと蓋体内面の溶接)
厚さ0.8mmのニッケル板であって、幅2.5mm、長さ66mm、長辺の一方に高さ0.2mmの突起を16個備え、他方の長辺に高さ0.2mmの突起を16個備える板を内径20mmのリング状に丸めた主リードと厚さ0.3mmのニッケル板を加工したものであって、該主リードと同じ外径を有するリング状部分と該リング状部分の内側に1mm張り出した8個の切片と該切片それぞれの先端に各各1個の点状の突起(プロジェクション)を備える補助リードを用意した。
【0087】
ニッケルメッキを施した鋼板からなり、中央に直径3.0mmの円形の透孔を設けた円板状の蓋体を用意し、該蓋体の内面側に前記主リードの高さ0.2mmの16個の突起を当接させ、抵抗溶接によりリング状の主リードを蓋体の内面に接合した。次に、リング状の主リードに補助リードを溶接した。蓋体の外面には、ゴム弁(排気弁)およびキャップ状の端子を取り付けた。蓋体の周縁をつつみ込むように蓋体にリング状のガスケットを装着した。なお、蓋の半径は14.5mm キャップの半径は6.5mm ガスケットのカシメ半径は12.5mmである。
【0088】
(封口および成形)
前記補助リード付きの蓋の突起が上部集電板の平坦部に当接するように蓋体と集電リードを一体にしたものを極群の上に載置し、電槽缶の開放端をカシメて気密に密閉した後、圧縮して電池の総高さを調整した。
【0089】
(補助リードと上部集電板の溶接)
蓋体(正極端子)、電槽4の底面(負極端子)に抵抗溶接機の溶接用出力端子A、Bを当接させ、充電方向および放電方向に同じ電流値で同じ通電時間となるように通電条件を設定した。具体的には、電流値を正極板の容量(6.5Ah)1Ah当たり0.6kA/Ah(6.0kA)、通電時間を充電方向に4.5msec、放電方向に4.5msecに設定し、該交流パルス通電を1サイクルとして2サイクル通電ができるようにセットし、矩形波からなる交流パルスを通電した。このとき開弁圧を超えてガス発生していないことを確認した。このようにして蓋体と上部集電板(正極集電板)が、補助リードを介してリング状の主リードで接続された図1に示すような密閉形ニッケル水素電池を作製した。なお、封口板の内面と主リードの溶接点と、上部集電集電板と補助リードの溶接点を結ぶ集電リードの最短の長さは、封口板と上部集電板の間隔の約1.4倍であった。また、集電リードと上部集電板の8個の溶接点の上部集電板の中央からの距離と極群の半径との比が0.6であった。
【0090】
なお、適用した水素吸蔵合金粉末b、c、e、f、g、a、hそれぞれに対応して水素吸蔵合金粉末b〜hまで順に実施例1〜実施例5、比較例1、比較例2とする。因みに実施例1〜実施例5、比較例1、比較例2何れの電池の重量も172gであった。
【0091】
(化成)
前記実施例1〜実施例5、比較例1、比較例2に係る密閉形ニッケル水素電池を周囲温度25℃において12時間の放置後、130mA(0.02ItA)にて1200mAh充電し、引き続き650mA(0.1ItA)で10時間充電した後、1300mA(0.2ItA)でカット電圧1Vまで放電した。さらに、650mA(0.1ItA)で16時間充電後、1300mA(0.2ItA)でカット電圧1.0Vまで放電し、該充放電を1サイクルとして4サイクル充放電を行った。ついで、周囲温度45℃において6500mA(1ItA)にて−ΔVが5mVの変動が発生するまで充電した後、6500mA(1ItA)にて放電カット電圧を1.0Vとして放電、該充放電を1サイクルとして充放電を10サイクル繰り返し実施した。
【0092】
(出力密度の測定)
出力密度の測定は、化成済みの電池1個用いて25℃雰囲気下において、放電末より650mA(0.1ItA)で5時間充電後、0℃雰囲気に移して4時間放置し、放電電流30A(4.6ItA相当)で12秒間放電した時の放電開始後10秒間経過後の電圧を30A放電時の10秒目電圧とし、放電分の電気容量を充電電流6Aにて該放電の放電電気量に等しい電気量を充電した後、放電電流40A(6.2ItA相当)で12秒間放電した時の放電開始後10秒間経過後の電圧を40A放電時の10秒目電圧とし、放電分の電気容量を充電電流6Aにて該放電の放電電気量に等しい電気量を充電した後、放電電流50A(7.7ItA相当)で12秒間放電した時の放電開始後10秒間経過後の電圧を50A放電時の10秒目電圧とし、放電分の電気容量を充電電流6Aにて該放電の放電電気量に等しい電気量を充電した後、放電電流60A(9.2ItA相当)で12秒間放電した時の放電開始後10秒間経過後の電圧を60A放電時の10秒目電圧とした。この各10秒目電圧(測定値)を放電電流値に対してプロットし、最小二乗法で直線近似し、電流値を0Aに外挿して求めた電流値0Aの時の電圧値をE0とし、直線の傾きをRDCとした。E0、RDC、電池重量を次式
出力密度(W/kg)=(E0−0.8)÷RDC×0.8/電池重量(kg)
に代入し、0.8Vカット時の0℃における出力密度とした。
【0093】
(充放電サイクル試験)
45℃雰囲気下において充放電サイクル試験を行った。化成済みの電池を45℃雰囲気下に4時間放置した後、充電レート0.5ItAにて−ΔVが5mVの変動が発生するまで充電し、放電レート0.5ItA、放電カット電圧1.0Vとして放電した。該充放電を1サイクルとして充放電繰り返し行い、放電容量が1サイクル目の放電容量の80%を切ったサイクル数をもって供試電池のサイクル寿命とした。
【0094】
(実施例6〜実施例10、比較例3、比較例4)
(水素吸蔵合金粉末のアルカリ水溶液浸漬処理)
前記水素吸蔵合金粉末b、c、e、f、g、a、hをそれぞれ濃度48重量%、温度100℃のNaOH水溶液に1.3時間浸漬した。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は、適用した水素吸蔵合金粉末b、c、e、f、g、a、hに対して何れも2emu/gであった。
【0095】
(ニッケル水素電池の作製と試験)
前記水素吸蔵合金粉末のアルカリ水溶液への浸漬時間をかえた以外は前記実施例1〜実施例5、比較例1,比較例2と同様に電池を作製し、同様の試験に供した。該例を適用した水素吸蔵合金粉末b、c、e、f、g、a、hそれぞれに対応して水素吸蔵合金粉末b〜hまで順に実施例6〜実施例10、比較例3、比較例4とする。
【0096】
(比較例5〜比較例11)
(水素吸蔵合金粉末)
前記水素吸蔵合金粉末b、c、e、f、g、a、hをアルカリ水溶液に浸漬することなく水素吸蔵電極に適用した。該水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は、何れも0.06emu/gであった。
【0097】
(ニッケル水素電池の作製と試験)
前記水素吸蔵合金粉末のアルカリ水溶液への浸漬行わなかったこと以外は前記実施例1〜実施例5、比較例1,比較例2と同様に電池を作製し、同様の試験に供した。該例を適用した水素吸蔵合金粉末b、c、e、f、g、a、hそれぞれに対応して水素吸蔵合金粉末b〜hまで順に比較例5〜比較例11とする。
【0098】
表2に実施例1〜実施例10、比較例1〜比較例11の水素吸蔵合金の区分と質量飽和磁化の値を一覧表にして示す。
【0099】
【表2】

(水素吸蔵合金粉末の平衡水素解離圧および質量飽和磁化と出力密度の関係)
図6に実施例1〜実施例10、比較例1〜比較例11の0℃雰囲気下における出力密度を示す。図6に示したように、質量飽和磁化が0.06emu/gと低い水素吸蔵合金粉末を適用した場合は、出力密度と平衡水素解離圧との間に相関性が認められず、せいぜい約130W/kgという低い値しか得られない。水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化がこのように低い場合には、水素吸蔵合金粉末の表面における電荷移動反応が遅く、該電荷移動反応が負極の電極反応を律速しているためにこのような結果になったと考えられる。
【0100】
これに対して、水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化が2.0emu/g、4.5emu/gの場合は、前記0.06emu/gの時に比べて0℃における出力密度が格段に向上している。しかも、出力密度と平衡水素解離圧との間には明確な相関性が認められ、40℃、H/M=0.5における平衡水素解離圧が0.04MPa以上の場合に高い出力特性が得られる。平衡水素解離圧が高い水素吸蔵合金の場合、その中に吸蔵された水素の束縛が弱く水素が移動し易い条件下にあると考えられる。水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化を2.0emu/g以上と高い値にした系では、前記電荷移動反応が速くなったことにより、前記負極の電極反応の律速過程が電荷移動反応から次第に水素吸蔵合金内における水素の拡散の過程に移行したためにこのような結果が得られたものと考えられる。図6に示すように、水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化を4.5emu/gと高くしても、平衡水素解離圧が0.02MPaと低い系ではせいぜい約330W/kgの出力密度しか得られない。
【0101】
ただし、驚くべきことに水素吸蔵合金粉末の平衡水素解離圧が過度に高い場合も出力密度が低くなることが分かった。図6に示すように、水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化が2.0emu/g以上であって、且つ、40℃、H/M=0.5における平衡水素解離圧が0.04〜0.12MPaのときに0℃において400W/kgに近いかそれ以上の高い出力密度が得られることがわかった。
【0102】
(水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化とサイクル特性の関係)
実施例1、実施例3、実施例5、比較例5、比較例7、比較例9の0℃雰囲気下における出力密度と合わせてサイクル試験結果を表3示す。
【0103】
【表3】

表3に示した、実施例1と比較例3、実施例3と比較例7、実施例5と比較例9は、水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化の値が相違する以外に相違点がないが、水素吸蔵合金の水素平衡解離圧の高低の如何に拘わらず出力密度以外にサイクル寿命においても実施例の方が遙かに勝っている。実施例の場合は、前記のように水素吸蔵合金粉末の表面にNiに富む相が層状に形成されており、該相が負極の電荷移動反応を促進する触媒として作用するほかに水素吸蔵合金粉末内を水素が移動する通り道を提供するために充電時の充電受け入れ特性にも優れ、充電時に電気分解によって電解液が分解されて消耗するのを抑制できたために比較例に比べて優れたサイクル特性が達成されたものと考えられる。
【0104】
なお、前記化成工程の25℃での充放電サイクイルの1サイクル目の放電において比較例5、比較例7、比較例9は定格容量の50〜60%の放電容量を示したのに対して、実施例1、実施例3、実施例5は定格容量の90%以上の放電容量を示した。このように、水素吸蔵合金粉末をアルカリ水溶液中に浸漬することによってその質量飽和磁化を高めた本発明に係るニッケル水素電池は、組み立て直後から優れた充放電特性を有する。この結果は、本発明に係るニッケル水素電池において化成を迅速に進めることが可能であることを示し、また、化成工程における充放電効率が高く、化成工程における電解液の分解反応が抑制されるところから、サイクル性能に良い影響を与えていると考えられる。
【0105】
(水素吸蔵合金粉末の平衡水素解離圧と出力特性、サイクル特性の関係)
実施例1〜実施例5、比較例1、比較例2のニッケル水素電池の0℃雰囲気下における出力特性と合わせてサイクル試験結果を図7に示す。図7に示すように、前記のように電解液の消耗が速いためか、平衡水素解離圧が上昇するに従ってサイクル寿命が低下する傾向が認められる。しかし、驚くべきことに40℃、H/M=0.5における平衡水素解離圧の値が0.04〜0.12MPaの範囲内ではサイクル寿命の低下の巾が小さく、平衡水素解離圧の値が0.04〜0.12MPaの場合、45℃において400サイクルを超える(500サイクルに近いか又はそれを超える)サイクル寿命が得られることが分かった。40℃、H/M=0.5における平衡水素解離圧が0.04〜0.12MPaであれば、0℃において500W/kgを超える出力密度が得られ、45℃において400サイクルを超えるサイクル寿命が得られるので良い。また、40℃、H/M=0.5における平衡水素解離圧が0.06〜0.12MPaのときに0℃において600W/kgを超える出力密度と45℃において400サイクルを超えるサイクル寿命が得られるので好ましく、中でも0.06〜0.10MPaのときに45℃において500サイクルを超えるサイクル寿命が得られるのでさらに好ましい。
【0106】
(実施例11)
前記実施例1において、水素吸蔵合金粉末として、表1に示した水素吸蔵合金粉末dを適用した。該水素吸蔵合金粉末dを濃度48重量%、温度100℃のNaOH水溶液中に1.3時間浸漬した。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は2emu/gであった。それ以外は、実施例1と同じ方法でニッケル水素電池を作製し、実施例1と同じ方法で試験に供した。該例を実施例11とする。
【0107】
(実施例12)
前記実施例11において、水素吸蔵合金粉末を、濃度48重量%、温度100℃のNaOH水溶液中に2時間浸漬した。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は3emu/gであった。それ以外は、実施例11と同じ方法でニッケル水素電池を作製し、実施例11と同じ方法で試験に供した。該例を実施例12とする。
【0108】
(実施例13)
前記実施例11において、水素吸蔵合金粉末を、濃度48重量%、温度100℃のNaOH水溶液中に2.6時間浸漬した。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は4emu/gであった。それ以外は、実施例11と同じ方法でニッケル水素電池を作製し、実施例11と同じ方法で試験に供した。該例を実施例13とする。
【0109】
(実施例14)
前記実施例11において、水素吸蔵合金粉末を、濃度48重量%、温度100℃のNaOH水溶液中に4時間浸漬した。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は6emu/gであった。それ以外は、実施例11と同じ方法でニッケル水素電池を作製し、実施例11と同じ方法で試験に供した。該例を実施例14とする。
【0110】
(比較例12)
前記実施例11において、水素吸蔵合金粉末を、高温アルカリ水溶液中に浸漬せずそのまま用いた。適用した水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は0.06emu/gであった。それ以外は、実施例11と同じ方法でニッケル水素電池を作製し、実施例11と同じ方法で試験に供した。該例を比較例12とする。
【0111】
(比較例13)
前記実施例11において、水素吸蔵合金粉末を、濃度48重量%、温度100℃のNaOH水溶液中に0.6時間浸漬した。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は1emu/gであった。それ以外は、実施例11と同じ方法でニッケル水素電池を作製し、実施例11と同じ方法で試験に供した。該例を比較例13とする。
【0112】
(比較例14)
前記実施例11において、水素吸蔵合金粉末を、濃度48重量%、温度100℃のNaOH水溶液中に5.3時間浸漬した。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は8emu/gであった。それ以外は、実施例11と同じ方法でニッケル水素電池を作製し、実施例11と同じ方法で試験に供した。該例を比較例14とする。
【0113】
実施例11〜実施例14、比較例12〜比較例14の水素吸蔵合金粉末の物性値を表4に示す。また、該例に係るニッケル水素電池の雰囲気温度0℃における出力特性とサイクル寿命を図8に示す。
【0114】
【表4】

(水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化と出力特性、サイクル特性の関係)
図8に示すように、水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化が2〜6emu/gの範囲で0℃において500W/kgを超える優れた出力特性と45℃において500サイクルを超えるサイクル寿命が得られることが分かった。なかでも、質量飽和磁化が3〜6emu/gにおいて、600W/kgを超える優れた出力と規制が得られるところから好ましい。従って、水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化を2〜6emu/gにするのが良く、3〜6emu/gにするのが好ましい。なお、質量飽和磁化を8emu/gとしたときには、質量飽和磁化を2〜6emu/gとしたものに比べてサイクル特性が著しく劣る。その理由は明らかではないが、水素吸蔵合金粉末の水素吸蔵サイトが減少し、水素吸蔵能力が低くなったためと考えられる。
【0115】
(実施例15)
前記実施例1において、水素吸蔵合金粉末を、水素吸蔵合金粉末として表1に示した水素吸蔵合金粉末jを適用し、該水素吸蔵合金粉末jを濃度48重量%、温度100℃のNaOH水溶液中に3時間浸漬した。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は4.5emu/gであった。それ以外は、実施例1と同じ方法でニッケル水素電池を作製し、実施例1と同じ方法で試験に供した。該例を実施例15とする。
【0116】
(実施例16)
前記実施例1において、水素吸蔵合金粉末を、水素吸蔵合金粉末として表1に示した水素吸蔵合金粉末kを適用し、該水素吸蔵合金粉末kを濃度48重量%、温度100℃のNaOH水溶液中に3時間浸漬した。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は4.5emu/gであった。それ以外は、実施例1と同じ方法でニッケル水素電池を作製し、実施例1と同じ方法で試験に供した。該例を実施例16とする。
【0117】
(実施例17)
前記実施例1において、水素吸蔵合金粉末を、水素吸蔵合金粉末として表1に示した水素吸蔵合金粉末dを適用し、該水素吸蔵合金粉末dを濃度48重量%、温度100℃のNaOH水溶液中に3時間浸漬した。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は4.5emu/gであった。それ以外は、実施例1と同じ方法でニッケル水素電池を作製し、実施例1と同じ方法で試験に供した。該例を実施例17とする。
【0118】
(実施例18)
前記実施例1において、水素吸蔵合金粉末を、水素吸蔵合金粉末として表1に示した水素吸蔵合金粉末lを適用し、該水素吸蔵合金粉末lを濃度48重量%、温度100℃のNaOH水溶液中に3時間浸漬した。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は4.5emu/gであった。それ以外は、実施例1と同じ方法でニッケル水素電池を作製し、実施例1と同じ方法で試験に供した。該例を実施例18とする。
【0119】
(比較例15)
前記実施例1において、水素吸蔵合金粉末を、水素吸蔵合金粉末として表1に示した水素吸蔵合金粉末iを適用し、該水素吸蔵合金粉末iを濃度48重量%、温度100℃のNaOH水溶液中に3時間浸漬した。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は4.5emu/gであった。それ以外は、実施例1と同じ方法でニッケル水素電池を作製し、実施例1と同じ方法で試験に供した。該例を比較例15とする。
【0120】
(比較例16)
前記実施例1において、水素吸蔵合金粉末を、水素吸蔵合金粉末として表1に示した水素吸蔵合金粉末mを適用し、該水素吸蔵合金粉末mを濃度48重量%、温度100℃のNaOH水溶液中に3時間浸漬した。得られた水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化は4.5emu/gであった。それ以外は、実施例1と同じ方法でニッケル水素電池を作製し、実施例1と同じ方法で試験に供した。該例を比較例16とする。
【0121】
実施例15〜実施例18、比較例15、比較例16の水素吸蔵合金粉末の物性値を表5に示す。また、該例に係るニッケル水素電池の雰囲気温度0℃における出力特性とサイクル寿命を図9に示す。
【0122】
【表5】

(水素吸蔵合金粉末のB/Aと出力特性、サイクル特性の関係)
図9に示すように、水素吸蔵合金を構成する非希土類金属元素対希土類元素の成分比(B/A)が、モル比率で5.25以下の場合、0℃において600W/kgを超える極めて高い出力が得られる。この理由必ずしも明らかではないが、合金粉末が割れやすくなり、初期活性化のサイクル充放電に於いて、合金粉末の一部が割れ、合金内水素移動より早い合金表面の水素移動によって合金内部の水素が活性点に高速に移動できたのではないかと考えられる。しかしながら、モル比率が小さいと前記合金の割れが多くなりすぎサイクル寿命特性を低下させる。該成分比(B/A)がモル比率で5.10以上のとき45℃において400サイクルを超えるサイクル寿命がえられるので良く、5.15〜5.25のとき500サイクル近くあるいはそれ以上のサイクル寿命が得られるので好ましい。前記成分比(B/A)が大きすぎると、合金の容量が低下するためかB/Aを5.30としたときには成分比(B/A)が5.15〜5.25のときに比べてサイクル特性も低下し、また、合金成分の偏析が起こりやすいため、種々の合金特性が不安定となる可能性がある。そのため、成分比(B/A)がモル比で5.25以下が良い。
【0123】
以上に示した結果から、希土類元素および遷移金属元素を主成分とする水素吸蔵合金において、前記成分比(B/A)が、5.10以上5.25以下であり、かつ40℃におけるH/M=0.5時の水素平衡解離圧が0.04MPa以上0.12MPa以下であり、かつ、質量飽和磁化が2emu/g以上6 emu/g以下であり、且つ、前記成分比(B/A)が、5.10以上5.25以下である水素吸蔵合金粉末を用いることによって、低温領域に於いて高出力特性を有し、かつ、長寿命が期待できる。
【0124】
(実施例19)
前記実施例3において水素吸蔵合金粉末100重量部に、Er23粉末に替えて平均粒径1μmのYb23粉末1重量部を添加混合した。その他の構成は実施例3と同じとした。該例を実施例19とする。
【0125】
(参考例1)
前記実施例3において水素吸蔵合金粉末にEr23粉末を混合添加せず、水素吸蔵合金粉末とスチレンブタジエン共重合体とを固形分重量比で99.35:0.65の比率で混合し、水で分散してペースト状にした。その他は実施例3と同じ構成とした。該例を参考例1とする。
【0126】
実施例3の試験結果と併せて実施例19、参考例1の試験結果(出力密度、サイクル特性)を表6に示す。
【0127】
【表6】

(水素吸蔵合金粉末へのEr23粉末、Yb23粉末添加)
表6に示すように、参考例1はサイクル寿命が実施例3、実施例19に比べて劣る。実施例3においては水素吸蔵合金粉末にEr23粉末を、実施例20においてはYb23粉末添加混合することによって水素吸蔵合金粉末の腐食が抑制されたために良好なサイクル特性が得られたものと考えられる。また、実施例3と実施例19の比較において実施例3の方が出力特性に優れ、実施例19の方がサイクル特性に優れているところから、出力特性を重視する場合にはEr23粉末を、サイクル特性を重視する場合にはYb23粉末を添加混合するのが好ましい。
【0128】
(参考例2)
実施例3において、下部集電板の中央1箇所にのみ1個の突起を設け、下部集電板と電槽底の内面との溶接を下部集電板の中央部のみとした。それ以外の構成は実施例3と同じとした。該例を参考例2とする。
【0129】
(比較例17)
前記実施例20においてリング状リードに替えて図5に示すリボン状リードを用いた。該リボン状リードは、厚さが0.6mm、幅15mm、長さ25mmのニッケル板製とした。蓋体を電池に組み込む前(封口前)に該リボン状リードと封口板の内面、上部集電板の上面とをそれぞれ4点の溶接点で接合させた。集電リードと封口板の溶接点と集電リードと上部集電板の溶接点を結ぶ集電リードの最短長さは約20mm(封口板と上部集電板の間隔の約7倍)であった。その他の構成は実施例20と同じとした。該例を比較例17とする。
【0130】
表7に実施例3の試験結果に併せて参考例2、比較例17の試験結果(出力密度)を示す。
【0131】
【表7】

{集電構造と出力密度の関係(1)}
表7に示すように、比較例17は、実施例3や実施例20に比べて出力密度が劣る。実施例、比較例ともに出力特性に優れた同じ負極を用いているので、このような構成の電池においては負極の特性によって電池の出力特性が左右されることがない。比較例11の出力特性が劣るのは主として、上部集電板と封口板を接続する集電リードの電気抵抗が大きいことによる。実施例3と実施例20を比較すると実施例3の出力特性が優れている。両者の差は負極の集電機能の差によると考えられる。このように、優れた出力特性を適用したニッケル水素電池においては、集電リードの電気抵抗を小さくし、さらには、負極の集電機能を高めることによって格段に優れた出力特性が達成される。
【0132】
(参考例3)
前記実施例3において、リング状集電リードの直径(内径)を11mmとし、下部集電板に設けた中央以外の8個の突起と下部集電板の中央からの距離を7.5mmとした。このこと以外は実施例3と同じ構成の電池を作製し、実施例3と同じ方法で出力密度を測定した。なお、集電リード(補助リード)と上部集電板の8個の溶接点の上部集電板の中央からの距離と極群の半径の比は0.3、下部集電板と電槽底内面の溶接点のうち、下部集電板の中央以外に位置する8個の溶接点から下部集電板の中央との距離と極群の半径の比は0.5であった。該例を参考例3とする。
【0133】
(参考例4)
前記参考例3において、下部集電板に設けた中央以外の8個の突起と下部集電板の中央からの距離を12mmとした。このこと以外は参考例3と同じ構成とし、参考例3と同じ方法で出力密度を測定した。なお、下部集電板の中央以外に位置する8個の溶接点から下部集電板の中央との距離と極群の半径の比は0.8であった。該例を参考例4とする。
【0134】
(参考例5)
前記実施例3において、リング状集電リードの直径(内径)を14mmとし、下部集電板に設けた中央以外の8個の突起と下部集電板の中央からの距離を6mmとした。このこと以外は実施例3と同じ構成の電池を作製し、実施例3と同じ方法で出力密度を測定した。なお、集電リード(補助リード)と上部集電板の8個の溶接点の上部集電板の中央からの距離と極群の半径の比は0.4、下部集電板と電槽底内面の溶接点のうち、下部集電板の中央以外に位置する8個の溶接点から下部集電板の中央との距離と極群の半径の比は0.4であった。該例を参考例5とする。
【0135】
(実施例20)
前記参考例5において、下部集電板に設けた中央以外の8個の突起と下部集電板の中央からの距離を7.5mmとした。このこと以外は参考例5と同じ構成とし、参考例5と同じ方法で出力密度を測定した。なお、下部集電板の中央以外に位置する8個の溶接点から下部集電板の中央との距離と極群の半径の比は0.5であった。該例を実施例20とする。
【0136】
(実施例21)
前記参考例5において、下部集電板に設けた中央以外の8個の突起と下部集電板の中央からの距離を12mmとした。このこと以外は参考例5と同じ構成とし、参考例5と同じ方法で出力密度を測定した。なお、下部集電板の中央以外に位置する8個の溶接点から下部集電板の中央との距離と極群の半径の比は0.8であった。該例を実施例21とする。
【0137】
(参考例6)
前記参考例5において、下部集電板に設けた中央以外の8個の突起と下部集電板の中央からの距離を13.7mmとした。このこと以外は参考例5と同じ構成とし、参考例5と同じ方法で出力密度を測定した。なお、下部集電板の中央以外に位置する8個の溶接点から下部集電板の中央との距離と極群の半径の比は0.9であった。該例を参考例6とする。
【0138】
(参考例7)
前記実施例3において、リング状集電リードの直径(内径)を23mmとし、下部集電板に設けた中央以外の8個の突起と下部集電板の中央からの距離を6mmとした。このこと以外は実施例3と同じ構成の電池を作製し、実施例3と同じ方法で出力密度を測定した。なお、集電リード(補助リード)と上部集電板の8個の溶接点の上部集電板の中央からの距離と極群の半径の比は0.7、下部集電板と電槽底内面の溶接点のうち、下部集電板の中央以外に位置する8個の溶接点から下部集電板の中央との距離と極群の半径の比は0.4であった。該例を参考例7とする。
【0139】
(実施例22)
前記参考例7において、下部集電板に設けた中央以外の8個の突起と下部集電板の中央からの距離を7.5mmとした。このこと以外は参考例7と同じ構成とし、参考例7と同じ方法で出力密度を測定した。なお、下部集電板の中央以外に位置する8個の溶接点から下部集電板の中央との距離と極群の半径の比は0.5であった。該例を実施例22とする。
【0140】
(実施例23)
前記参考例7において、下部集電板に設けた中央以外の8個の突起と下部集電板の中央からの距離を12mmとした。このこと以外は参考例7と同じ構成とし、参考例7と同じ方法で出力密度を測定した。なお、下部集電板の中央以外に位置する8個の溶接点から下部集電板の中央との距離と極群の半径の比は0.8であった。該例を実施例23とする。
【0141】
(参考例8)
前記参考例7において、下部集電板に設けた中央以外の8個の突起と下部集電板の中央からの距離を13.7mmとした。このこと以外は参考例7と同じ構成とし、参考例7と同じ方法で出力密度を測定した。なお、下部集電板の中央以外に位置する8個の溶接点から下部集電板の中央との距離と極群の半径の比は0.9であった。該例を参考例8とする。
【0142】
(参考例9)
前記実施例3において、リング状集電リードの直径(内径)を20mm(外径21.6mm)とし、該リング状集電リードに、該リング状集電リードの外周面から外側に向かって放射状に突出する8個の突片を有し、該突片の先端に突起を有する補助リードを取り付けた。前記突片のリング状集電リードの外周面からの突出長さを1mmとした。下部集電板に設けた中央以外の8個の突起と下部集電板の中央からの距離を7.5mmとした。このこと以外は実施例3と同じ構成の電池を作製し、実施例3と同じ方法で出力密度を測定した。なお、集電リード(補助リード)と上部集電板の8個の溶接点の上部集電板の中央からの距離と極群の半径の比は0.8、下部集電板と電槽底内面の溶接点のうち、下部集電板の中央以外に位置する8個の溶接点から下部集電板の中央との距離と極群の半径の比は0.5であった。該例を参考例9とする。
【0143】
(参考例10)
前記参考例9において、下部集電板に設けた中央以外の8個の突起と下部集電板の中央からの距離を12mmとした。このこと以外は参考例7と同じ構成とし、参考例7と同じ方法で出力密度を測定した。なお、下部集電板の中央以外に位置する8個の溶接点から下部集電板の中央との距離と極群の半径の比は0.8であった。該例を参考例10とする。
【0144】
表8に実施例3に合わせて、実施例20〜実施例23、参考例3〜参考例10の出力密度の測定結果を示す。
【0145】
【表8】

{集電構造と出力密度の関係(2)}
表8に示すように、実施例20〜実施例23の周囲温度0℃における出力密度は730W/kgを超えており参考例3〜参考例10に比べて高い値を示している。このことから、集電リードと上部集電板の溶接点の上部集電板の中央からの距離と極群の半径の比を0.4〜0.7とし、かつ、下部集電板と電槽底の内面との溶接点のうち下部集電板の中央に位置する以外の複数の溶接点と下部集電板の中央からの距離と極群の半径の比を0.5〜0.8に設定することが好ましい。該構成とすることによって集電リードと上部集電板の溶接点位置が上部集電板に接続された極板の長辺の中央近傍に位置するために集電機能に優れ、かつ、下部集電板と電槽底の内面との溶接点が下部集電板に接続された極板の長辺の中央近傍に位置して集電機能に優れ、正負両極板ともに集電機能に優れるために高い出力密度が得られたものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
以上詳述したように、本発明は、出力特性およびサイクル特性に優れた負極と、集電リードの電気抵抗の小さい電池構造を適用することによって出力特性、サイクル特性共に優れた密閉形ニッケル水素電池を提供するのもので、産業上の利用可能性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明に係るニッケル水素電池の構造および集電リードと上部集電板の溶接方法を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係るニッケル水素電池に適用する集電リードの1例を示す正面図である。
【図3】本発明に係るニッケル水素電池に適用する上部集電板の1例を示す斜視図である。
【図4】従来の円筒形ニッケル水素電池の要部の断面構造を模式的に示す図である。
【図5】リボン状集電リードを模式的に示す斜視図である。
【図6】水素吸蔵合金粉末の平衡水素解離圧とニッケル水素電池の出力密度との関係を示すグラフである。
【図7】水素吸蔵合金粉末の平衡水素解離圧とニッケル水素電池の出力密度およびサイクル特性との関係を示すグラフである。
【図8】水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化とニッケル水素電池の出力密度およびサイクル特性との関係を示すグラフである。
【図9】水素吸蔵合金粉末を構成する希土類元素と非希土類金属元素の構成比(B/A)とニッケル水素電池の出力密度およびサイクル特性との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0148】
0 封口板
1 極群
2 上部集電板
3 下部集電板
4 電槽
5 ガスケット
6 キャップ
7 弁体
8 主リード
9 補助リード
10、11、13、14 突起
12 リボン状リード
A、B 外部電源(電気抵抗溶接機)の出力端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル電極を正極とし、水素吸蔵合金粉末を有する水素吸蔵電極を負極とするニッケル水素電池において、
前記水素吸蔵合金粉末が、希土類元素およびニッケル(Ni)を含む非希土類金属元素からなり、
前記水素吸蔵合金粉末に吸蔵された水素と水素吸蔵合金粉末に含まれる全金属元素の原子比(水素原子数と金属元素の原子数の比:H/M)が0.5であるときの40℃における水素吸蔵合金粉末の平衡水素解離圧が0.04メガパスカル(MPa)以上、0.12MPa以下であり、
前記水素吸蔵合金粉末の質量飽和磁化が2emu/g以上、6emu/g以下であり、かつ、
前記非希土類金属元素対希土類元素の成分比が、モル比で5.10以上、5.25以下であることを特徴とするニッケル水素電池。
【請求項2】
前記水素吸蔵合金粉末に吸蔵された水素と水素吸蔵合金粉末に含まれる全金属元素の原子比(H/M)が0.5であるときの40℃における水素吸蔵合金粉末の平衡水素解離圧が0.06MPa以上、0.10MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル水素電池。
【請求項3】
前記質量飽和磁化が3emu/g以上、6emu/g以下であることを特徴とする請求項1または2記載のニッケル水素電池。
【請求項4】
前記水素吸蔵合金粉末と、該水素吸蔵合金粉末に混合添加してなるErおよび/又はYbの酸化物または水酸化物を含む水素吸蔵電極を適用したことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のニッケル水素電池。
【請求項5】
前記希土類元素およびNiを含む非希土類金属元素からなる水素吸蔵合金粉末を、高温の苛性アルカリ水溶液中に浸漬することによって、その質量飽和磁化を2emu/g以上、6emu/g以下または3emu/g以上、6emu/g以下とすることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のニッケル水素電池の製造方法。
【請求項6】
捲回式極群を備え、有底筒状の電槽の開放端を蓋体で封口してなり、前記蓋体を構成する封口板の内面と前記極群の上部捲回端面に取り付けた円板状の上部集電板の上面とを集電リードを介して接続した密閉形ニッケル水素電池であって、前記封口板の内面と集電リードの溶接点および集電リードと上部集電板の溶接点のうちの少なくとも一方の溶接点を、封口後の電池の正極端子と負極端子間に、外部電源により電池内を経由して通電することにより溶接したことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のニッケル水素電池。
【請求項7】
前記集電リードと上部集電板が複数の溶接点で接合され、該溶接点の上部集電板の中心からの距離と前記捲回式極群の半径の比が0.4〜0.7であり、前記捲回式極群の下部捲回端面に円板状の下部集電板が取り付けられ、該下部集電板と電槽底の内面が下部集電板の中央および該中央以外の複数の溶接点で接合され、該中央以外の複数の溶接点の前記下部集電板の中央からの距離と前記捲回式極群の半径の比が0.5〜0.8であることを特徴とする請求項6に記載のニッケル水素電池。


























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−12573(P2007−12573A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195373(P2005−195373)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】