ネジ山を有する金属マトリックス複合物品
可溶性コアを含むモールド部品、金属マトリックス複合物品、および金属マトリックス複合物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属マトリックス複合物品と、金属マトリックス複合物品の製造方法、特に可溶性コアを用いる方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、当該技術分野では、セラミックを用いる金属マトリックスの補強が知られている。補強のために使用されるセラミック材料の例には、粒子、不連続繊維(ウイスカーを含む)および連続繊維、ならびにセラミックプリフォームが含まれる。通常、セラミック材料は金属中に取り込まれ、金属自体と比較して改善された機械特性を有する金属マトリックス複合体(MMC)を生じる。
【0003】
物品によっては、二次成型加工(例えば、所望の形状を提供するために材料の除去を必要とする、穴、ネジ山、またはその他の要素の形成)を受けることがある。従来のMMC物品は、通常十分なセラミック補強材料を含有し、機械加工は、実際的でない、あるいは少なくとも望ましくないとされる。通常、セラミック材料の存在は切削工具を急速に摩滅させ、MMCの機械加工を望ましくないものとする。従って、二次成形加工または処理を少ししか必要としない、あるいは全く必要としない「ネットシェイプ」または「ニアネットシェイプ」物品を製造するのが好ましい。一般に、ネットシェイプ物品の製造技法は、当該技術分野において知られている(例えば、米国特許第5,234,045号明細書(シスコ(Cisko))および米国特許第5,887,684号明細書(ドール(Doll)ら))。
【0004】
それに加えて、または代替的に、実現可能な限り、セラミックの補強材は低減されるか、あるいは機械加工および/または溶接などのその他の処理を妨げ得る領域には配置されないこともある。例えば、MMC物品と共に金属スリーブおよび/またはインサートが使用され、二次成形加工は、実質的にスリーブおよび/またはインサートに制限されることもある。しかしながら、この構成は、MMC鋳造物と、金属スリーブおよび/またはインサートとの間に弱い界面をもたらし得る。
【0005】
MMC物品の設計および製造において考慮すべきもう1つの問題は、セラミック補強材料自体のコストである。例えば、いくつかの連続多結晶性α−アルミナ繊維などのセラミック材料の機械特性は、アルミニウムなどの低密度金属と比較して高いが、このようなセラミック酸化物材料のコストは、通常、アルミニウムなどの金属よりも実質的に高い。従って、使用されるセラミック酸化物材料の量を最小限にすること、そしてセラミック酸化物材料により付与される特性を最大にするためにセラミック酸化物材料の配置を最適化する試みをすることが望ましい。
【0006】
いくつかの実施形態では、高応力領域にセラミック材料を有するMMC物品を提供するのが望ましい。もう1つの態様において、いくつかの実施形態では、ネットシェイプMMC物品(例えば、ネットシェイプのネジ付きMMC物品)を形成することが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、本発明は、第1の主表面を含む金属マトリックス複合物品を提供し、第1の主表面は第1のネジ山を含み、第1のネジ山は第1の金属マトリックス複合体を含み、第1の金属マトリックス複合体は、第1の金属と、第1のネジ山と実質的に位置合わせされた第1の複数の実質的に連続的な繊維とを含む。いくつかの実施形態では、第1の金属は、アルミニウム、マグネシウム、およびこれらの合金からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のネジ山は、約0度のらせん角を有する。
【0008】
いくつかの実施形態では、金属マトリックス複合物品の第1の主表面は、少なくとも1つの追加のネジ山(例えば、第2のネジ山)を更に含む。いくつかの実施形態では、第1のネジ山のらせん角と第2のネジ山のらせん角は、実質的に同一である。いくつかの実施形態では、第1のネジ山および第2のネジ山は散在される。いくつかの実施形態では、第2のネジ山は第2の金属を含む。いくつかの実施形態では、第1の金属および第2の金属は同一の金属である。いくつかの実施形態では、第2のネジ山は、第2の複数の実質的に連続的な繊維を含む。いくつかの実施形態では、第1の複数の繊維および第2の複数の繊維は同一材料を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、金属マトリックス複合物品は、第3の複数の実質的に連続的な繊維を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の複数の繊維の主軸と第3の複数の繊維の主軸との間の角度は、30度〜60度である。
【0010】
いくつかの実施形態では、金属マトリックス複合物品は、第1の主表面と反対側の第2の主表面を更に含み、任意に、第2の表面は第3のネジ山を含む。
【0011】
もう1つの態様では、本発明は、第1の主表面と、第1の主表面の少なくとも一部に隣接する第1の複数の実質的に連続的な繊維とを有する可溶性コアを含むモールド部品を提供する。いくつかの実施形態では、可溶性コアは塩を含む。いくつかの実施形態では、可溶性コアは水溶性である。
【0012】
いくつかの実施形態では、モールド部品の第1の主表面は第1の溝を含み、第1の複数の繊維は、任意に、第1の溝と実質的に位置合わせされる。
【0013】
更にもう1つの態様では、本発明は、金属マトリックス複合物品の製造方法を提供する。1つの実施形態では、本方法は、
第1の複数の実質的に連続的な繊維で包まれた第1の領域を含む第1の主表面を有する可溶性コアを提供することと、
第1の複数の繊維に第1の溶融金属を浸透させることと、
第1の金属を凝固させることと、
を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、可溶性コアを除去することを更に含む。いくつかの実施形態では、可溶性コアの除去は、コアが可溶性である流体にコアをさらすことを含み、流体は、任意に、水、蒸気、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本方法は、第1の溶融金属上に第2の溶融金属を施すことと、第2の溶融金属を凝固させることとを更に含み、第1の溶融金属および第2の溶融金属は、任意に、同一である。
【0015】
いくつかの実施形態では、本方法は、可溶性コアの第1の領域に第1の溝を形成することを更に含み、第1の複数の繊維は、任意に、第1の溝と実質的に位置合わせされる。
【0016】
いくつかの実施形態では、可溶性コアの第1の主表面は第2の領域を更に含み、第2の領域は、任意に、第1の領域と少なくとも部分的に重なり合い、本方法は、コアの第2の領域に第2複数の実質的に連続的な繊維を施すことと、第2の複数の繊維に第3の溶融金属を浸透させることとを更に含み、第1の溶融金属および第3の溶融金属は、任意に、同一の金属である。
【0017】
更にもう1つの態様では、本発明は、ネジ山を含む内側主表面を有するシリンダを含むネジ付き物品を提供し、ネジ山は、金属と、複数の実質的に連続的な繊維とを含む。いくつかの実施形態では、複数の実質的に連続的な繊維は、ネジ山と実質的に位置合わせされる。いくつかの実施形態では、複数の実質的に連続的な繊維は、200よりも大きいアスペクト比を有する。いくつかの実施形態では、複数の実質的に連続的な繊維は、少なくとも5センチメートルの平均長さを有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明は、二次成形加工を少ししか必要としない、あるいは全く必要としないニアネットシェイプおよび/またはネットシェイプMMC物品を製造するために適切な可溶性コアを提供する。いくつかの実施形態では、本発明に従う可溶性コアの使用は、廃棄物および二次成形加工を低減する。
【0019】
もう1つの態様では、本発明のいくつかの実施形態は、可溶性コアと、実質的に連続的な繊維の1つまたは複数のプライとを含むモールド部品を提供する。
【0020】
もう1つの態様では、本発明のいくつかの実施形態は、MMC物品の特徴物(例えば、ネジ山)と実質的に位置合わせされた実質的に連続的な繊維を有するMMC物品を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維は、金属繊維、セラミック繊維、黒鉛繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維は、アルミナ繊維(例えば、α−アルミナ繊維)、アルミノシリケート繊維、アルミノボロシリケート繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明は、高強度、高モジュラスの軽量構造要素への追加構造部材(例えば、フィン部分および/またはノーズコーン)の取付けを容易にする。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明は、ネジ部分と構造要素の大部分との両方において同様の熱膨張係数(CTE)を有する比較的軽量の構造要素(例えば、発射体管)を提供する。
【0024】
更にもう1つの態様では、本発明のいくつかの実施形態は、MMC物品にネットシェイプおよび/またはニアネットシェイプ特徴物(例えば、ネジ山)を提供する方法を提供し、これにより、製造方法のほぼ最後に重要な追加処理工程(例えば、研削)を実行する必要性が低減および/または排除される。
【0025】
本発明の上記の概要は、本発明の各実施形態を説明することは意図されない。本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、以下の説明においても示される。本発明のその他の特徴および利点は、その説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
いくつかの用途では、金属マトリックス複合(MMC)物品を含む部品を1つまたは複数の追加の物品(例えば、金属物品または別のMMC物品)に接続することが望ましい。例えば、物品を接続する1つの方法は、雌ネジ付き物品を雄ネジ付き物品とはめ合わせる(例えば、雌ネジ付きナット雄をネジ付きボルトとはめ合わせる、または2つの雄ネジ付きパイプを雌ネジ付き連結器と接続する)ことを含む。このアプローチでは、ネジ山は、ネジ山が位置合わせされて係合されたときに物品がはめ合わされるように、通常、それぞれの物品に形成される。
【0027】
本発明の1つの態様では、可溶性コアを使用して、MMC物品におけるネジ山の形成を容易にする。いくつかの実施形態では、可溶性コアの使用は、ネジ山を作るために除去されるMMC材料の量を低減する。いくつかの実施形態では、ネジ山はネットシェイプまたはニアネットシェイプである(すなわち、次の処理(例えば、研削または研磨)が少ししか、あるいは全く必要とされない)。
【0028】
本発明のもう1つの態様では、モールド部品(すなわち、可溶性コアおよび実質的に連続的な繊維の1つまたは複数のプライ)のいくつかの実施形態を使用して、ネジ領域とMMC物品の大部分との両方において実質的に同一の熱膨張係数(CTE)を有するMMC物品を形成する。
【0029】
図1A〜図1Eを参照すると、本発明に従う例示的なMMC物品を製造するための1つの例示的な方法が説明されている。一般に、可溶性コアは、実質的に連続的な繊維の1つまたは複数のプライで包まれて、モールド部品を形成する。モールド部品はモールド内に配置され、そこで金属が繊維に浸透し、MMC領域を形成する。任意に、1つまたは複数の追加のMMC領域および/または金属領域(すなわち、繊維のない領域)が、同一または次の鋳造工程で形成されてもよい。最後の鋳造工程の後、可溶性コアは、適切な溶媒(例えば、水)で溶解され、MMC物品をもたらす。次に、研削および/または研磨などの任意的な機械加工工程が実施されてもよい(例えば、いくつかの実施形態では、MMC物品にネジ山が機械加工され得る)。
【0030】
より具体的には、図1Aは、例示的な可溶性コア100を説明する。可溶性コアは、どの可溶性材料から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、可溶性コアは、流体(例えば、液体(例えば、水)および/または気体(例えば、蒸気))に可溶性の材料を含む。いくつかの実施形態では、可溶性コアは、塩(例えば、ソーダ灰(例えば、マサチューセッツ州インディアン・オーチャードのヒートバス/パーク・メタラジカル社(Heatbath/Park Metallurgical Corp.,Indian Orchard,Massachusetts)から、商品名「アルミニウム・キャスティング・ソルト(ALUMINUM CASTING SALT)AC」で入手可能)、または塩化ナトリウム)を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、可溶性コアは、可溶性材料および不溶性材料の組み合わせを含むことができる。例えば、コアは、砂および/またはセラミック材料(例えば、酸化物、窒化物、および炭化物)と組み合わせて、塩を含むことができ、セラミック材料は、様々な形態(例えば、ウイスカー、繊維、微粒子、および/またはプレートレット)で取り込むことができる。いくつかの実施形態では、コアは、不溶性部材(例えば、ロッドまたは棒)を含むことができ、その少なくとも一部は可溶性層によって被覆され、可溶性層は、例えば、可溶性材料、または可溶性材料および不溶性材料の組み合わせを含むことができる。
【0032】
可溶性コアを製造するための追加の適切な材料は、例えば、米国特許第5,273,098号明細書(ヒンドマン(Hyndman)ら)、米国特許第5,921,312号明細書(カーデン(Carden))、および米国特許第6,478,073号明細書(グレーブ(Grebe)ら)に記載されている。
【0033】
可溶性コア100は主軸M1を有するシリンダとして示されているが、例えば、コアを用いて形成した結果得られるMMC物品または該物品の一部の所望のサイズおよび形状によって、様々なコアの形状およびサイズを使用することができる。適切なコアは、当該技術分野において既知の技法(例えば、溶融塩のダイへの注入、プレス、焼成、鋳造(例えば、消失模型鋳造)、およびこれらの組み合わせ)によって形成することができる。更に、コアの形状は、様々な既知の技法(例えば、機械加工、旋削、および研削)によって変更することができる。適切なコア形成方法は、例えば、米国特許第5,273,098号明細書(ヒンドマン(Hyndman)ら)および米国特許第5,303,761号明細書(フレスナー(Flessner)ら)に記載されている。
【0034】
更に、図1Bは、可溶性コア100と、コア100に施された4プライの連続繊維(すなわち、プライ101、102、103、および104)とを含むモールド部品110を説明する。プライは、実質的に連続的な繊維の少なくとも1つの層である。いくつかの実施形態では、繊維は補強繊維である。各プライ(すなわち、プライ101、102、103、および104)は、コア100の全長(すなわち、第1の端部108から第2の端部109まで)にわたる。明確にするために、上側のプライ(すなわち、プライ102、103、および104)は、下側のプライを露出させるために切り取られている。
【0035】
「実質的に連続的な繊維」は、平均繊維直径と比べたときに、比較的無限である長さを有する繊維を意味する。通常、本発明に関しては、実質的に連続的な繊維は、少なくとも5センチメートル(cm)(いくつかの実施形態では、少なくとも10cm、15cm、20cm、あるいは更に、少なくとも25cm、いくつかの実施形態では、5〜25cmの範囲)の長さを有する。通常、完成MMC物品中、数で少なくとも約85%の繊維は、実質的に連続的である(いくつかの実施形態では、少なくとも約90%、または更に、少なくとも約95%)。いくつかの実施形態では、完成MMC物品中、実質的に全ての(すなわち、数で95%よりも多い、あるいは98%よりも多い、あるいは更に、99%よりも多い)繊維が、実質的に連続的である。いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維は、200よりも大きい(いくつかの実施形態では、500よりも大きい、1000よりも大きい、2000よりも大きい、10,000よりも大きい、25,000よりも大きい、または更に、50,000よりも大きい)アスペクト比(すなわち、平均繊維直径に対する繊維の長さの比)を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、特定のプライの実質的に連続的な繊維は、互いに略平行であるように実質的に長手方向に位置合わせされている。通常、特定のプライの実質的に連続的な繊維は全て、実質的に長手方向に位置合わせされた配置で保持され、個々の繊維の位置合わせは、その平均の長手方向軸(すなわち、プライの主軸)の±10°(いくつかの実施形態では、±5°、または更に±3°)以内に保持されるのが望ましい。
【0037】
これらの繊維は個々の繊維として特定のプライ内に取り込まれてもよいが、これらは、より一般的には、繊維群(例えば、ロービング(すなわち、撚りがないかまたはわずかな撚りがある、単一のストランド内の繊維のゆるい集合体)、ヤーン(すなわち、一緒に撚られた繊維の集まり)、またはトウ(すなわち、ロープのような形態で集められた複数の(個々の)繊維(通常、少なくとも100本の繊維、より一般的には少なくとも400本の繊維))として取り込まれる。いくつかの実施形態では、繊維群(すなわち、ロービング、ヤーン、またはトウ)は、繊維群あたり少なくとも750本の個々の繊維(または更に、繊維群あたり少なくとも2550本の個々の繊維)を含む。いくつかの実施形態では、繊維は、プリプレグ材料の一部(すなわち、樹脂(例えば、エポキシ)に埋め込まれた実質的に連続的な繊維)として、プライ内に取り込まれてもよい。
【0038】
繊維群内の繊維は、実質的に長手方向に互いに位置合わせされた関係(すなわち、略平行)に保持される。多数の繊維群を用いてプライを形成する場合、繊維群も、実質的に長手方向に互いに位置合わせされた関係(すなわち、略平行)に保持される。織られたり編まれたりした繊維構造形態にある実質的に連続的な繊維は有用であり得るが、通常あまり望ましくない。何故なら、これらは、長手方向に位置合わせされた繊維と共に実現される、より高い繊維充填密度を提供する助けにならないからである。従って、織られたり編まれたりした繊維構造を用いるモールド部品に基づいて金属が浸透された物品は、通常、長手方向に位置合わせされた連続繊維を有る金属浸透物品よりも低い強度特性を示し、従って、あまり望ましくない。
【0039】
いくつかの構造では、長手方向に位置合わせされた繊維は、一直線とは対照的に湾曲されている(すなわち、平面的に延在しない(例えば、シリンダのまわりに円周方向に巻きつけられた繊維))ことが望ましい、または必要なこともある。従って、例えば、長手方向に位置合わせされた繊維は、繊維の全長にわたって平面状でもよいし、繊維の全長にわたって非平面状(すなわち、湾曲)でもよいし、あるいはある部分では平面状であり、他の部分では非平面状(すなわち、湾曲)であってもよく、連続繊維は、その湾曲部分にわたって実質的に交差しない曲線(すなわち、長手方向に位置合わせされた)配列に保持される。いくつかの実施形態では、繊維は、その湾曲部分にわたって互いに実質的に等距離の関係に保持される。
【0040】
もう一度図1Bを参照すると、実質的に連続的な繊維の第1のプライ101は、主軸M1に垂直にコア100のまわりに円周方向に巻きつけられる。実質的に連続的な繊維の第2のプライ102は、コア100の主軸M1に平行に巻きつけられ、第1の繊維プライ101と重なり合う。連続繊維プライのその他の方向付けも可能である(例えば、プライは、ゼロ度(すなわち、主軸M1に平行)〜90度(すなわち、主軸M1に垂直)の主軸M1に対する角度で位置合わせされ得る)。更に、各繊維プライは、1つまたは複数の他の繊維プライに対してどんな角度で施されてもよい。特定の用途次第であるが、別のプライに関するプライの方向付けの違いは、ゼロ度より大きい角度〜90°までのどの角度でもよい。いくつかの実施形態では、別のプライに関するプライの位置決めは、約30°〜約60°の範囲、あるいは更に、例えば約40°〜約50°の範囲であり得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維のただ1つのプライが可溶性コアに施されて、モールド部品が形成されるが、他の実施形態では、実質的に連続的な繊維の2つ以上のプライが可溶性コアに施される。例えば、図1Bでは、4プライの実質的に連続的な繊維が示されており、実質的に連続的な繊維の第3のプライ103、および実質的に連続的な繊維の第4のプライ104はそれぞれ、円周方向および平行な方向で施される。
【0042】
いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維の第1のプライは、可溶性コアと同一の広がりを有する。いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維の第1のプライは、可溶性コアの選択された領域にのみ施される。実質的に連続的な繊維の次のプライは、可溶性コアの選択された領域に独立して施され、例えば、可溶性コアと同一の広がりを有することを含む。いくつかの実施形態では、次の繊維プライは、1つまたは複数の他の繊維プライの全てまたは一部と重なり合ってもよい。いくつかの実施形態では、次のプライは、1つまたは複数の他のプライと当接するが、重なり合わなくてもよい。いくつかの実施形態では、次のプライは、1つまたは複数の他のプライから横方向にいくらかの距離だけ離間されていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維の第1のプライは、可溶性コアの1つの領域に施され、実質的に連続的な繊維の第2のプライは、可溶性コアの第2の領域に施され得る。
【0043】
本発明に従うMMC物品を製造するために有用であり得る実質的に連続的な繊維の例としては、金属酸化物繊維(例えば、アルミナ繊維、α酸化アルミニウム繊維、アルミノシリケート繊維、およびアルミノボロシリケート繊維)、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、黒鉛繊維、および炭化ケイ素繊維などのセラミック繊維がある。通常、セラミック酸化物繊維は、結晶性セラミックおよび/または結晶性セラミックとガラスの混合物(すなわち、繊維は、結晶性セラミック相およびガラス相の両方を含有し得る)である。特定のプライの繊維は、1つの種類の繊維を含んでもよいし、あるいはプライは2つ以上の種類の繊維を含んでもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、これらの繊維は、少なくとも1.4ギガパスカル(GPa)(いくつかの実施形態では、少なくとも1.7GPa、少なくとも2.1GPa、または更に、少なくとも2.8GPa)の平均引張り強さを有する。いくつかの実施形態では、これらの繊維は、少なくとも70GPa(いくつかの実施形態では、少なくとも100GPa、少なくとも150GPa、少なくとも200GPa、少なくとも250GPa、少なくとも300GPa、または更に、少なくとも350GPa)のヤング率を有する。
【0045】
通常、実質的に連続的な繊維は、5マイクロメートル〜250マイクロメートル、更に一般的には5マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲の平均直径を有するが、繊維トウでは、平均繊維直径は、通常、50マイクロメートル以下であり、より一般的には25マイクロメートル以下である。いくつかの実施形態では、繊維は、円形または楕円形の断面形状を有する。
【0046】
アルミナ繊維の製造方法は当該技術分野において知られており、米国特許第4,954,462号明細書(ウッド(Wood)ら)に開示される方法が含まれる。いくつかの実施形態では、アルミナ繊維は多結晶性αアルミナベースの繊維であり、理論上の酸化物に基づいて、アルミナ繊維の全重量を基準として約99重量パーセントよりも多いAl2O3と、約0.2〜0.5重量パーセントのFe2O3とを含む。いくつかの実施形態では、多結晶性αアルミナベースの繊維は、1マイクロメートル未満(または更に、0.5マイクロメートル未満)の平均粒径を有するαアルミナを含む。いくつかの実施形態では、多結晶性αアルミナベースの繊維は、少なくとも1.6GPa(いくつかの実施形態では、少なくとも2.1GPa、または更に、少なくとも2.8GPa)の平均引張り強さを有する。例示的なαアルミナ繊維は、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company,St.Paul,Minnesota)から「ネクステル(NEXTEL)610」の商品名で市販されている。もう1つの例示的なαアルミナ繊維は、繊維の全重量を基準として約89重量パーセントのAl2O3、約10重量パーセントのZrO2、および約1重量パーセントのY2O3を含み、3Mカンパニーにより商品名「ネクステル650」で市販されている。
【0047】
適切なアルミノシリケート繊維は、例えば、米国特許第4,047,965号明細書(カルスト(Karst)ら)に記載されている。いくつかの実施形態では、アルミノシリケート繊維は、理論上の酸化物に基づいて、アルミノシリケート繊維の全重量を基準として67〜85重量パーセントの範囲のAl2O3と、33〜15重量パーセントの範囲のSiO2とを含む。いくつかの例示的なアルミノシリケート繊維は、理論上の酸化物に基づいて、アルミノシリケート繊維の全重量を基準として67〜77重量パーセントの範囲のAl2O3と、33〜23重量パーセントの範囲のSiO2とを含む。いくつかの実施形態では、アルミノシリケート繊維は、理論上の酸化物に基づいて、アルミノシリケート繊維の全重量を基準として約85重量パーセントのAl2O3と、約15重量パーセントのSiO2とを含む。もう1つの例示的なアルミノシリケート繊維は、理論上の酸化物に基づいて、アルミノシリケート繊維の全重量を基準として約73重量パーセントのAl2O3と、約27重量パーセントのSiO2とを含む。アルミノシリケート繊維は、例えば、3Mカンパニーから商品名「ネクステル720」および「ネクステル550」で市販されている。
【0048】
適切なアルミノボロシリケート繊維は、例えば、米国特許第3,795,524号明細書(ソウマン(Sowman))に記載されている。いくつかの実施形態では、アルミノボロシリケート繊維は、理論上の酸化物に基づいて、アルミノボロシリケート繊維の全重量を基準として35重量パーセント〜75重量パーセント(いくつかの実施形態では、55重量パーセント〜75重量パーセント)のAl2O3と、0重量パーセントよりも多く(いくつかの実施形態では、少なくとも15重量パーセント)、そして50重量パーセント未満(いくつかの実施形態では、45重量パーセント未満、または更に、44重量パーセント未満)のSiO2と、1重量パーセントよりも多いB2O3とを含む。いくつかの実施形態では、アルミノボロシリケート繊維は、5重量パーセントよりも多いB2O3を含む。いくつかの実施形態では、アルミノボロシリケート繊維は、約25重量パーセント未満のB2O3を含む。いくつかの実施形態では、アルミノボロシリケート繊維は、約1重量パーセント〜約5重量パーセント、または約2重量パーセント〜約20重量パーセントのB2O3を含む。アルミノボロシリケート繊維は、例えば、3Mカンパニーから商品名「ネクステル(NEXTEL)312」および「ネクステル440」で市販されている。
【0049】
例示的なホウ素繊維は、例えば、マサチューセッツ州ローウェル(Lowell,Massachusetts)のスペシャルティ・マテリアルズ社(Specialty Materials,Inc.)から市販されている。
【0050】
窒化ホウ素繊維は、例えば、米国特許第3,429,722号明細書(エコノミー(Economy))および米国特許第5,780,154号明細書(オカノ(Okano)ら)に記載されるように製造することができる。
【0051】
例示的な炭素繊維は、例えば、2000、4000、5000、および12,000本の繊維のトウにおいてジョージア州アルファレッタ(Alpharetta,Georgia)のBPアモコ・ケミカルズ(BP Amoco Chemicals)から商品名「ソーネル・カーボン(THORNEL CARBON)」で、コネチカット州スタンフォード(Stamford,Connecticut)のヘクセル・コーポレーション(Hexcel Corporation)から、カリフォルニア州サクラメント(Sacramento,California)のグラフィル社(Grafil,Inc.)(三菱レイヨン社(Mitsubishi Rayon Co.)の子会社)から、商品名「パイロフィル(PYROFIL)」で、日本国東京の東レ(Toray)から、商品名「トレカ(TORAYCA)」で、日本の東邦レーヨン社(Toho Rayon of Japan,Ltd.)から商品名「ベスファイト(BESFIGHT)」で、ミズーリ州セントルイス(St.Louis,Missouri)のゾルテック・コーポレーション(Zoltek Corporation)から商品名「パネックス(PANEX)」および「パイロン(PYRON)」で、そしてニュージャージー州ワイコフ(Wyckoff,New Jersey)のインコ・スペシャル・プロダクツ(Inco Special Products)(ニッケル被覆された炭素繊維)から商品名「12K20」および「12K50」で市販されている。
【0052】
例示的な黒鉛繊維は、例えば、1000、3000、および6000本の繊維のトウにおいて、ジョージア州アルファレッタのBPアモコ(BP Amoco)から商品名「T−300」で市販されている。
【0053】
例示的な炭化ケイ素繊維は、例えば、500本の繊維のトウにおいて、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,California)のCOIセラミックス(COI Ceramics)から商品名「ニカロン(NICALON)」で、日本の宇部興産(Ube Industries)から商品名「チラノ(TYRANNO)」で、そしてミシガン州ミッドランド(Midland,Michigan)のダウ・コーニング(Dow Corning)から商品名「シルラミック(SYLRAMIC)」で市販されている。
【0054】
市販されている実質的に連続的な繊維(例えば、セラミック酸化物繊維)は、通常、潤滑性を提供するため、およびハンドリング中に繊維ストランドを保護するために、その製造中に繊維に添加される有機サイジング材料を含む。サイジングは、例えば布地に加工する間に、繊維の破断、静電気、および粉塵の量を低減する傾向があると信じられる。サイジングは、除去することができる(例えば、溶解または焼失によって)。いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維は、水でサイジングされ(water−sized)得る。また、実質的に連続的な繊維上にその他のコーティングを有することも本発明の範囲内である。このようなコーティングを使用して、例えば、繊維の湿潤性を高める、および/または繊維と溶融金属マトリックス材料との間の反応を低減または防止することができる。コーティングおよびコーティングを提供するための技法は、繊維および金属マトリックス複合体技術分野において知られている。
【0055】
例えば、加圧浸透鋳造、スクイズ鋳造、重力鋳造、インベストメント鋳造、または遠心鋳造を含む当該技術分野において既知の技法を用いて、モールド部品を使用して本発明に従うMMC物品を形成することができる。一般に、モールド部品は、モールドキャビティ内に位置決めされる。次に金属がモールドキャビティ内に導入される。いくつかの例示的な実施形態では、金属は固体片として導入され、これは次にその場で溶融される。いくつかの例示的な実施形態では、金属は溶融状態で導入される。通常、圧力を加えて(例えば、加圧ガス、重力、ピストン、および/または遠心力により)、溶融金属を実質的に連続的な繊維のプライに浸透させ、個々の繊維を封入し、金属マトリックス複合体領域を形成する。任意に、例えばモールドキャビティの形状に応じて、金属はモールド部品を包囲することができ、金属領域(すなわち、繊維のない領域)を形成する。いくらか存在すれば、最終MMC物品は、金属マトリックス複合体領域および金属領域の両方を含む。いくつかの実施形態では、モールドキャビティは、MMC物品の金属領域を最小限にするように選択され得る。
【0056】
モールドキャビティは、例えばMMC物品の所望の形状に応じて、様々な形状のどれでも有することができる。いくつかの実施形態では、多段階鋳造方法を用いてMMC物品を形成することができる。MMC物品の例示的な二段形成階方法は、モールド部品を第1のモールド内に配置することを含み、第1の金属が実質的に連続的な繊維のプライに浸透して、第1の金属マトリックス複合体領域と、任意に、第1の金属領域とを形成する。次に、モールド部品は、より大きいモールドキャビティを有する第2のモールドに移動され、第2の金属が施されて、第2の金属領域を形成する。いくつかの実施形態では、第1の金属と第2の金属とは同一である。
【0057】
いくつかの実施形態では、2つよりも多いモールドおよび/または鋳造工程が使用される。いくつかの実施形態では、鋳造工程の合間に追加の繊維プライが導入されてもよい。いくつかの実施形態では、単一の鋳造工程中に、2つ以上の金属がモールドに導入されてもよい。各鋳造工程で使用される繊維および金属はいずれも独立して選択され、他の鋳造工程で使用される繊維および/または金属と同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
通常、金属マトリックス複合体の金属は、例えば、繊維の外側に保護コーティングを提供する必要性を排除するために、マトリックス材料が繊維材料と化学的に著しく反応しない(すなわち、繊維材料に関して、化学的に比較的不活性である)ように選択される。典型的な適切な金属の例としては、アルミニウム、鉄、チタン、ニッケル、コバルト、銅、スズ、マグネシウム、亜鉛、およびこれらの合金が挙げられる。いくつかの実施形態では、MMC物品のための金属は、アルミニウム、マグネシウム、およびこれらの合金(例えば、アルミニウムと、マグネシウム、銅、ケイ素、クロム、およびこれらの組み合わせとの合金(例えば、少なくとも約98重量パーセントのアルミニウムおよび約2重量パーセントまでの銅を含むアルミニウムおよび銅の合金))からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、金属は、少なくとも98重量パーセントのアルミニウム(いくつかの実施形態では、少なくとも99重量パーセント、99.9重量パーセント、または更に、99.95重量パーセントよりも多いアルミニウム)を含む。いくつかの実施形態では、有用な合金は、200、300、400、700、および/または6000シリーズのアルミニウム合金である。より高純度の金属は、より高い引張り強さの細長い金属マトリックス複合物品を製造するために望ましい傾向があるが、純度の低い金属形態も有用である。
【0059】
適切な金属は、市販されている。例えば、アルミニウムは、ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,Pennsylvania)のアルコア(Alcoa)から商品名「スーパー・ピュア・アルミニウム(SUPER PURE ALUMINUM;99.99%Al」で入手可能である。アルミニウム合金(例えば、Al−2重量パーセントのCu(0.03重量パーセントの不純物))は、例えば、ニューヨーク州ニューヨークのベルモント・メタルズ(Belmont Metals,New York,New York)から入手することができる。例えば、マグネシウムは、英国マンチェスターのマグネシウム・エレクトロン(Magnesium Elektron,Manchester,England)から商品名「ピュア(PURE)」で入手可能である。マグネシウム合金(例えば、WE43A、EZ33A、AZ81A、およびZE41A)は、例えば、コロラド州デンバー(Denver,Colorado)のTIMETから入手することができる。
【0060】
図1Cを見ると、鋳造工程後、そして可溶性コア(図示せず)が除去されて内側主表面127が露出された後のMMC物品120が説明されている。MMC物品120は、MMC領域122および金属領域124を含む。一般に、MMC領域は、実質的に連続的な繊維のプライと、これらのプライの繊維に浸透してこれを封入する金属とを含むが、金属領域は繊維を含まない。一般に、様々な既知の技法を使用して、コアを除去することができる。例えば、コアは、流体(例えば、液体(例えば、水)および/または気体(例えば、蒸気))中に溶解させて除去することができる。いくつかの実施形態では、例えば、コアは、溶媒(例えば、水および/または蒸気)の1つまたは複数の流れ(例えば、ジェット)を塩コアに向けて除去することができる。いくつかの実施形態では、溶媒は、機械的な作用を提供して可溶性コアを分解および除去するのに役立つ充填剤材料(例えば、塩および/または砂)を含有することができる。いくつかの実施形態では、例えば、コアは液体浴中で除去することができ、この際、MMCおよび可溶性コアは溶媒中に浸漬される。
【0061】
いくつかの実施形態では、MMC物品がまだ熱い間にコアを溶解することが望ましいであろう。いくつかの実施形態では、可溶性コア内へ、そして更にそこを通り抜ける通路(例えば、穴)を形成して、例えば、溶媒と接触するコアの表面積を増大させることが望ましいであろう。一般に、可溶性コア(例えば、可溶性材料および/または不溶性材料)を含む材料は、捕集および再利用される。
【0062】
MMC物品においてアンダーカット、ネジ山および/またはその他のパターンが所望される場合、1つまたは複数の研削および/または研磨工程を実施して、所望の形状を形成することができる。一般に、例えばダイアモンド研削を含む様々な既知の技法を用いて、所望の形状を形成することができる。
【0063】
図1Dを参照すると、内側主表面127にネジ山150が形成されたMMC物品130が示されている。
【0064】
図1Eを参照すると、MMC物品130のネジ領域の拡大図が示されている。図1Eでは、MMC物品130は、封入された繊維が示されるようにシャドーラインで示される。実質的に連続的な繊維の第1のプライ101は、主軸M1と90°の角度を形成する。それに対して、らせん角H1を有するネジ山150、主軸M1と角度G1(すなわち、90°−H1)を形成する。従って、第1のプライ101の繊維は、ネジ山150と位置合わせされない。また、内側表面127からMMC材料が除去されて(例えば、研削によって)、ネジ山150が形成されたときに、第1のプライ101内の個々の繊維111は切断されており、従って、ネジ山150内の繊維111はもはや実質的に連続的ではない。
【0065】
図4Aおよび図4Bを見ると、ネジ山のらせん角の定義が説明されている。図4Aおよび図4Bは、外側のネジ山(すなわち、シリンダ外側表面のネジ山)を説明しているが、内側のネジ山(例えば、ネジ付きパイプ)を有する物品にも、らせん角、平均直径、ピッチ、およびリードに対して同一の定義が適用される。
【0066】
ネジ山のらせん角は、ネジ山が巻きつくネジ付き物品の軸に垂直な線に対して測定される。図4Aを参照すると、主軸M4のまわりにらせん状に巻きつく一条ネジ山405を有するネジ付き物品400が示されている。ネジ付き物品400は、長径D2、短径D1、および平均直径D3を有し、ここで、平均直径D3は、長径D2および短径D1の平均である。一条ネジ山では、ピッチP1(すなわち、隣接するネジ山の同様の地点の間の距離)は、リードL1(すなわち、ネジ付き物品400にネジ留めされたナットが、一回のフルターンで回転された場合にネジ付き物品400に沿って移動し得る距離)に等しい。一般に、らせん角のタンジェントは、リードをπ×平均直径の積で除した値に等しい。従って、らせん角H4は、
tan(H4)=L1/πD3
であると定義される。
【0067】
らせん角H4は、一条ネジ山400が巻きつくネジ付き物品400の軸M4に垂直な線に対して定義されるので、軸M4に対する一条ネジ山400の角度(すなわち、角度G4)は、90°−H4に等しい。ゼロ度のらせん角を有するネジ山は、当該技術分野においてゼロ度のネジ山またはバットレス溝として知られており、このようなネジ山は、それが巻きつく物品の主軸に垂直であり得る。
【0068】
図4Bを参照すると、平均直径がD4であり、第1のネジ山415および第2のネジ山416を含む二条ネジ山を有するネジ付き物品410が示されている。ネジ山415および416は、散在されている(すなわち、ネジ山415が広がるネジ付き物品410の領域は、ネジ山416が広がる領域と重なり合うが、ネジ山415および416は交差しない)。二条ネジ山では、リードL2は、ピッチP2の2倍に等しい。一条ネジ山と同様に、らせん角のタンジェントは、リードをπと平均直径の積で除した値に等しい。三条およびそれよりも高次のネジ山も可能である。
【0069】
図2A〜図2Dを参照すると、本発明に従う例示的なMMC物品を製造するための第2の例示的な方法が示されている。一般に、所望のネジ山パターンに対応する溝を有する可溶性コアが作製される。実質的に連続的な繊維の第1のプライがコアに施され、溝内に配置され、溝と実質的に位置合わせされる。任意に、実質的に連続的な繊維の1つまたは複数の追加のプライが可溶性コアに施され、モールド部品が形成される。モールド部品は、モールド内に配置され、金属が繊維に浸透し、MMC領域と、任意に金属領域とを形成する。任意に、同じ鋳造工程または次の鋳造工程で、1つまたは複数の追加のMMC領域および/または金属領域が形成されてもよい。モールドから取り外した後、可溶性コアが除去される(例えば、適切な溶媒(例えば、水および/または蒸気)で溶解することによって)。任意に、次に研削および/または研磨などの仕上げ工程が実行されてもよい。いくつかの実施形態では、MMC物品は、ニアネットシェイプまたはネットシェイプであり、仕上げ工程の必要性が最小限にされるか、あるいは排除される。
【0070】
より具体的には、図2Aは、コア200の表面215内に設けられた溝205を有する可溶性コア200を説明する。コア200は、主軸M2を有するシリンダとして示されているが、例えば、コアを用いて形成した結果得られるMMC物品または該物品の一部の所望のサイズおよび形状によって、様々なコア形状およびサイズのいずれかを使用することができる。同様に、コア200は、コア200の表面215内に設けられた溝205を有して示されているが、例えばコアを用いて形成されるMMC物品の所望の表面特徴物に応じて、適切なコアは、所望の隆起またはレリーフ構造が表面215上に形成されてもよい。一般に、コアの表面上の陥凹特徴物は、そのコアで形成されるMMC物品の表面上の隆起特徴物に対応するであろう。同様に、コアの表面上の隆起特徴物は、通常、MMC物品の表面上の陥凹特徴物に対応するであろう。更に、溝205は矩形断面を有して示されているが、コア表面上の隆起または陥凹特徴物(例えば、溝)は、例えば、完成MMC物品上に得られる特徴物の所望の断面に応じて、所望の断面(例えば、三角形、先端を切った三角形、およびACMEネジ)を有することができる。
【0071】
溝205は、らせん角H2を有するらせんである。一般に、らせん角は、ゼロ度〜90度のいずれの角度でもよい。いくつかの実施形態では、可溶性コアに複数の溝が形成されてもよい。各溝のらせん角は、独立して選択することができる。いくつかの実施形態では、溝のらせん角は、実質的に同一(すなわち、各溝のらせん角は、複数の溝の平均らせん角の±5度(または±3度、あるいは更に±1度)の範囲内)である。いくつかの実施形態では、溝は散在される(すなわち、溝は、重なり合うことなく織り交ぜられる)。いくつかの実施形態では、第1の溝は可溶性コアの第1の領域に形成され、第2の溝は可溶性コアの第2の領域に形成される。
【0072】
いくつかの実施形態では、溝205を有する可溶性コア200は、当該技術分野で既知の技法(例えば、成形または鋳造)を用いて直接形成される。更に、または代替的に、可溶性コア200は、形成技法(例えば、成形および/または鋳造)と既知の機械加工技法(例えば、研削および/または旋削)との組み合わせによって製造され得る。例えば、基本的な可溶性コアは、例えば、成形および/または鋳造技法によって形成することができる。そして、次の機械加工技法(例えば、研削)を用いて、基本的な可溶性コアを所望の最終形状(例えば、らせん状の溝を有するシリンダ)に変化させることができる。
【0073】
更に、図2Bは、本発明のモールド部品の例示的な実施形態を説明する。モールド部品210は、可溶性コア200に施された実質的に連続的な繊維の第1のプライ201を含む。第1のプライ201の繊維は溝205内に配置され、溝205と実質的に位置合わせされる。いくつかの実施形態では、第1のプライは、溝を実質的に充填する。いくつかの実施形態では、第1のプライのいくらかの繊維は、可溶性コアの表面215と実質的に同じ高さである。一般に、実質的に位置合わせされた繊維の使用は、繊維の間の空隙体積を低下させる。通常、空隙体積は約60%未満(いくつかの実施形態では、約50%未満、または更に約40%未満)である。
【0074】
次に、図2Cは、鋳造工程後、そして可溶性コアが除去された後の例示的なMMC物品230を説明する。MMC物品230は、MMC領域222および金属領域224を含む。MMC領域222は、第1のプライ201(図示せず)と、第1のプライ201に浸透した第1の金属241を含む。いくつかの実施形態では、MMC領域は、約60体積%未満の金属(いくつかの実施形態では、約50体積%未満の金属、または約45体積%未満の金属、約40体積%未満の金属、または更に約35体積%未満の金属)を含む。
【0075】
MMC領域222は、内側主表面227上に配置されたネジ山250を含む。ネジ山250は、可溶性コア200(図2Bに示される)の溝205(図2Bに示される)に対応する。金属領域224は、第2の金属242を含む。それぞれの金属(すなわち、第1の金属241および第2の金属242)は独立して選択され、同じ金属でも異なる金属でもよい。いくつかの実施形態では、MMC領域および金属領域は、同一の鋳造作業で形成される。いくつかの実施形態では、MMC領域および金属領域は、別々の鋳造作業で形成される。いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維の追加のプライは、鋳造工程の前に、可溶性コア200に施すことができる。いくつかの実施形態では、ネジ山に隣接するMMC物品の領域は金属マトリックス複合体領域を含み得る。
【0076】
図2Dを参照すると、MMC物品230のネジ領域の拡大図が示されている。図2Dにおいて、MMC物品230は、封入された繊維が示されるようにシャドーラインで示される。実質的に連続的な繊維の第1のプライ201は、ネジ山250と実質的に位置合わせされる。いくつかの実施形態では、ネジ山は、MMC物品230を別の物品(例えば、第2のMMC物品、または金属物品)に取り付けるために使用することができる。
【0077】
鋳造工程中に金属が全くまたは実質的に可溶性コアに浸透しなければ、MMC物品は、使用できる状態にある。このような物品は、続いての研削工程などを必要としないので、「ネットシェイプ」であると説明される。望ましくない量の金属が可溶性コアに浸透すれば、MMC物品の表面から金属を除去する必要があり得る(例えば研削によって)。このような物品は、「ニアネットシェイプ」と呼ばれる。いずれの場合も、ネジ山をMMC物品に機械加工する必要はない。通常、ニアネットシェイプまたはネットシェイプ物品のネジ山内に配置される繊維は、実質的に連続的である(すなわち、例えば研削によってこれらは切断されない)。
【0078】
図3A〜図3Cを参照すると、本発明に従う例示的なMMC物品を製造するための第3の例示的な方法が示される。
【0079】
図3Aを参照すると、本発明に従うモールド部品のもう1つの例示的な実施形態が示される。モールド部品310は、実質的に連続的な繊維の第1のプライ301および実質的に連続的な繊維の第2のプライ302を有する可溶性コア300を含む。第1のプライ301は、第1の溝305aおよび第2の溝305b内に配置され、これらは両方ともゼロ度のらせん角を有する。
【0080】
第2のプライ302は可溶性コア300を包み、プライ301と重なり合う(説明の目的で、第2のプライ302の一部は、第1のプライ301を現わすために除去されている)。第2のプライ302の繊維は、繊維の主軸が可溶性コア300の主軸M3と角度Aを形成するように位置合わせされる。角度Aは、ゼロ度〜90度の全てを含めた角度のいずれでもよい。いくつかの実施形態では、角度Aは約ゼロ度である(すなわち、繊維は主軸M3と実質的に平行である)。いくつかの実施形態では、角度Aは、約90度である(すなわち、繊維は、主軸M3と実質的に垂直である(すなわち、可溶性コア300を円周方向に包む))。いくつかの実施形態では、角度Aは30度〜60度、または更に40度〜50度である。
【0081】
いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維の追加のプライが可溶性コアに施されてもよい。いくつかの実施形態では、追加のプライは、1つまたは複数の他のプライの全てまたは一部と重なり合ってもよい。いくつかの実施形態では、追加のプライは、可溶性コアと実質的に同一の広がりを有し得る。いくつかの実施形態では、プライは、コアの主表面の約90%よりも大きい、または約95%よりも大きい、または更に約99%よりも大きい面積を被覆することができる。いくつかの実施形態では、追加のプライは、1つまたは複数の他のプライと当接することができる。各プライは、独立して、ゼロ度〜90度の全てを含む角度のいずれかを主軸M3と形成することができる。
【0082】
図3Bを見ると、第1のMMC領域322、第2のMMC領域323、および金属領域324を含む例示的なMMC物品330が示されている。それぞれ溝305aおよび305bに対応する第1のネジ山350aおよび第2のネジ山350bを含む第1のMMC領域322は、実質的に連続的な繊維の第1のプライ301(図示せず)と、第1のプライ301に浸透した第1の金属341とを含む。同様に、第2のMMC領域323は、第2のプライ302(図示せず)と、第2のプライ302に浸透した第2の金属342とを含む。最後に、金属領域324は、第3の金属343を含む。各金属(すなわち、第1の金属341、第2の金属342、および第3の金属343)は独立して選択され、各金属は、MMC物品310を製造するために使用される1つまたは複数の他の金属と同一でも異なっていてもよい。
【0083】
図3Cを参照すると、MMC物品330のネジ領域の拡大図が示される。図3Cにおいて、MMC物品330は、封入された繊維が示されるようにシャドーラインによって示される。実質的に連続的な繊維の第1のプライ301は、ネジ山350aと位置合わせされる。実質的に連続的な繊維の第2のプライ302は、主軸M3と角度Aで位置合わせされる。一般に、第1のプライ301内の繊維は切断されておらず、ネジ山350a内で実質的に連続的なままである。
【0084】
いくつかの実施形態では、金属領域は、例えばモールドキャビティの選択によって最小限にされるか、あるいは更に、排除される。いくつかの実施形態では、追加のMMCおよび/または金属領域が形成されてもよい。各領域では、実質的に連続的な繊維および/または金属は、独立して選択される。各領域は、1つまたは複数の他の領域と同一または異なる鋳造作業において形成することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明のMMC物品は、例えば、連結発射体管、アクチュエータ部品(例えば、プッシュプル装置)、ねじり棒または部材、石油掘削管材、構造部材(例えば、宇宙船および/または航空機の管材)、および機械的な動力伝達要素として使用することができる。
【0086】
以下の特定の、しかし非限定的な実施例は、本発明を説明するのに役立つであろう。この実施例では、全ての割合は、特に断りのない限りは重量部である。
【実施例】
【0087】
工業用旋盤(ナルディーニ・レーズ(Nardini Lathe)、モデルNo.TT1230E、テキサス州ダラスのマクダウエル・マシーナリー(McDowell Machinery,Dallas,Texas)から入手可能)を用いて、22.7キログラム(50ポンド)の塩ブロック(カンザス州オーバーランドパークのノース・アメリカン・ソルト社(North American Salt Co.,Overland Park,Kansas)から入手可能)を、その元の寸法(約22センチメートル(cm)(8.5インチ(in.))×22cm(8.5インチ)×25cm(10インチ))から、シリンダ(長さ7cm(2.88インチ)×直径8cm(3.25インチ))に従来どおりに機械加工した。塩のシリンダの全長を更に機械加工して、0.43cm(0.17in)のピッチおよび0.25cm(0.10in)の深さ、1センチメートルあたり2.3個のネジ山(1インチあたり5.9個のネジ山)を有する右回りのACMEネジに対応する溝を有するネガティブな鋳造モールドを製造した。
【0088】
ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company,St.Paul,Minnesota)から入手可能な水でサイジングされたアルミナロービング材料「ネクステル(NEXTEL)610ロービング材料」の形の実質的に連続的な繊維を、溝と位置合わせして、溝が実質的に充満されるまで溝内に巻きつけた。ロービング内の個々の繊維の直径は、10〜12マイクロメートルであった。1500デニールおよび3000デニール(9000メートルあたりのグラム数)の両方のロービングを用いた。溝の約50体積%を繊維で充填し、残りの50%を繊維間の空間で満たした。
【0089】
次に、250マイクロメートル(0.010インチ)厚さのプリプレグ材料のプライをシリンダの表面に施した。60体積パーセントのα−アルミナ繊維(3Mカンパニーから商品名「ネクステル(NEXTEL)610」で入手可能、10,000デニール)と、40体積パーセントの樹脂(テキサス州ヒューストンのレゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ(Resolution Performance Products,Houston,Texas)から商品名「エポン(EPON)828」で得られる)とを含むプリプレグ材料は、カリフォルニア州ポーウェイのアルディラ社(Aldila Corp,Poway California)によって製造された。シリンダに施す際、プリプレグ材料の第1のプライの繊維は、シリンダの主軸と実質的に位置合わせした。プリプレグ材料の第2のプライの繊維は、シリンダの主軸に垂直(すなわち、プリプレグ材料の第1のプライの繊維に垂直)に位置合わせした。シリンダの外径が9.9cm(3.9インチ)になるまで、プリプレグ材料の追加のプライを交互に方向付けて(すなわち、シリンダの主軸に平行および垂直)施した。次に、ロービング材料の繊維をシリンダの主軸に垂直に位置合わせして、ロービング材料(「ネクステル610ロービング材料」)の最終プライをプリプレグ材料の外側プライ上に円周方向に巻きつけ、完全に形成されたモールド部品を得た。
【0090】
このモールド部品を、500℃に予熱した抵抗加熱オーブン(ネーバーサーム(NABERTHERM)モデルN41、デラウェア州ニューカッスルのネーバーサーム(Nabertherm,New Castle,Delaware)から得られる)内に配置した。温度を10時間500℃に保持し、次に、オーブンを消した。室温まで冷却してからコアをオーブンから取り出し、モールドセンタリング機構を、コアの中央の直径1.3cm(0.5インチ)の穴に挿入した。黒鉛るつぼ(長さ20cm(8インチ)×直径10cm(4インチ)、ペンシルベニア州トップテンのグラファイト・マシーニング社(Graphite Machining,Inc.,Topten,Pennsylvania)から入手可能)の底部にコアを配置した。約2,200グラムのアルミニウム合金(ニューヨーク州ニューヨークのベルモント・メタルズ(Belmont Metals,New York,New York)から得られるAl−6061誘導体)の固体片を鋳造アセンブリの上部に配置し、アルミニウム片内に布で包んだJ型熱電対を挿入した。Al−6061誘導体は、Mg:0.8〜1.2%と、Fe:最大(max.)0.04%と、Si:0.4〜0.8%と、その他:最大0.05%(それぞれ)、最大0.15%(合計)とを含み、残りは純粋なアルミニウムであった。
【0091】
長さ91.4cm(36インチ)×直径17.8cm(7インチ)の加圧容器(ニューハンプシャー州プレイストーのプロセス・エンジニアリング社(Process Engineering,Inc.,Plaistow,New Hampshire)から得られる)内にるつぼアセンブリを配置した。加圧容器を密封し、20パスカル(150ミリトル)まで真空に引き、鋳造アセンブリを半径方向に包囲する従来の抵抗ヒーターを用いてチャンバを約720℃まで加熱した。アルミニウム合金が約690℃の温度に到達したことを熱電対が示したら、ヒーターを消し、真空バルブを閉鎖し、加圧容器の内部を9MPa(1300psi)まで加圧して、溶融金属を実質的に連続的な繊維のプライに浸透させた。
【0092】
周囲温度まで冷却したら、加圧容器を開き、鋳造コアおよび鋳造MMC物品を加圧容器から取り出した。鋳造コアおよびMMC物品の上部にある過剰のアルミニウムを、帯鋸を用いて除去した。残りのアセンブリに、塩のほとんどが溶解するまで(約30分)蛇口の熱湯(約60℃)を流した。次に、アセンブリを液圧プレス内に置き、残りの塩コアおよび塩コアに浸透したアルミニウムを除去した。
【0093】
得られた鋳造MMC物品は、塩コア内の溝に対応する右回りのネジ山を有し、実質的に連続的な繊維は、ネジ山と実質的に位置合わせされた。
【0094】
本発明の様々な修正および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1A】本発明に従う金属マトリックス複合物品の実施形態の製造において有用な例示的な可溶性コアを説明する斜視図である。
【図1B】多数の繊維プライで包まれた図1Aの可溶性コアを含む、本発明に従う例示的なモールド部品を説明する斜視図である。
【図1C】図1Bのモールド部品を用いて鋳造され、可溶性コアが除去された後の本発明に従う例示的な金属マトリックス複合物品を説明する斜視図である。
【図1D】金属マトリックス複合物品の内側主表面にネジ山を機械加工した後の図1Cの金属マトリックス複合物品の切欠図である。
【図1E】図1Dの金属マトリックス複合物品のネジ領域の拡大図を説明する断面図である。
【図2A】本発明に従う金属マトリックス複合物品の実施形態の製造において有用な第2の例示的な可溶性コアであって、その主表面にらせん状の溝を有する可溶性コアの斜視図である。
【図2B】図2Aの可溶性コアのまわりに巻かれた繊維を含む本発明に従う第2の例示的なモールド部品であって、繊維はらせん状の溝と位置合わせされているモールド部品の斜視図である。
【図2C】図2Bのモールド部品を用いて鋳造され、可溶性コアが除去された後の本発明に従う例示的な金属マトリックス複合物品を説明する斜視図である。
【図2D】図2Cの金属マトリックス複合物品のネジ領域の拡大図である。
【図3A】本発明に従う金属マトリックス複合物品の実施形態の製造において有用な第3の例示的なモールド部品であって、可溶性コアがその主表面に形成された一連の溝を有するモールド部品の斜視図である。
【図3B】図3Aのモールド部品を用いて鋳造され、可溶性コアが除去された後の本発明に従う第3の例示的な金属マトリックス複合物品を説明する斜視図である。
【図3C】図3Bの金属マトリックス複合物品のネジ領域の拡大図である。
【図4A】単一のネジ山を有する例示的なネジ付き物品を説明する側面図である。
【図4B】同一のらせん角を有する複数の散在されたネジ山を有する例示的なネジ付き物品を説明する側面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属マトリックス複合物品と、金属マトリックス複合物品の製造方法、特に可溶性コアを用いる方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、当該技術分野では、セラミックを用いる金属マトリックスの補強が知られている。補強のために使用されるセラミック材料の例には、粒子、不連続繊維(ウイスカーを含む)および連続繊維、ならびにセラミックプリフォームが含まれる。通常、セラミック材料は金属中に取り込まれ、金属自体と比較して改善された機械特性を有する金属マトリックス複合体(MMC)を生じる。
【0003】
物品によっては、二次成型加工(例えば、所望の形状を提供するために材料の除去を必要とする、穴、ネジ山、またはその他の要素の形成)を受けることがある。従来のMMC物品は、通常十分なセラミック補強材料を含有し、機械加工は、実際的でない、あるいは少なくとも望ましくないとされる。通常、セラミック材料の存在は切削工具を急速に摩滅させ、MMCの機械加工を望ましくないものとする。従って、二次成形加工または処理を少ししか必要としない、あるいは全く必要としない「ネットシェイプ」または「ニアネットシェイプ」物品を製造するのが好ましい。一般に、ネットシェイプ物品の製造技法は、当該技術分野において知られている(例えば、米国特許第5,234,045号明細書(シスコ(Cisko))および米国特許第5,887,684号明細書(ドール(Doll)ら))。
【0004】
それに加えて、または代替的に、実現可能な限り、セラミックの補強材は低減されるか、あるいは機械加工および/または溶接などのその他の処理を妨げ得る領域には配置されないこともある。例えば、MMC物品と共に金属スリーブおよび/またはインサートが使用され、二次成形加工は、実質的にスリーブおよび/またはインサートに制限されることもある。しかしながら、この構成は、MMC鋳造物と、金属スリーブおよび/またはインサートとの間に弱い界面をもたらし得る。
【0005】
MMC物品の設計および製造において考慮すべきもう1つの問題は、セラミック補強材料自体のコストである。例えば、いくつかの連続多結晶性α−アルミナ繊維などのセラミック材料の機械特性は、アルミニウムなどの低密度金属と比較して高いが、このようなセラミック酸化物材料のコストは、通常、アルミニウムなどの金属よりも実質的に高い。従って、使用されるセラミック酸化物材料の量を最小限にすること、そしてセラミック酸化物材料により付与される特性を最大にするためにセラミック酸化物材料の配置を最適化する試みをすることが望ましい。
【0006】
いくつかの実施形態では、高応力領域にセラミック材料を有するMMC物品を提供するのが望ましい。もう1つの態様において、いくつかの実施形態では、ネットシェイプMMC物品(例えば、ネットシェイプのネジ付きMMC物品)を形成することが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、本発明は、第1の主表面を含む金属マトリックス複合物品を提供し、第1の主表面は第1のネジ山を含み、第1のネジ山は第1の金属マトリックス複合体を含み、第1の金属マトリックス複合体は、第1の金属と、第1のネジ山と実質的に位置合わせされた第1の複数の実質的に連続的な繊維とを含む。いくつかの実施形態では、第1の金属は、アルミニウム、マグネシウム、およびこれらの合金からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1のネジ山は、約0度のらせん角を有する。
【0008】
いくつかの実施形態では、金属マトリックス複合物品の第1の主表面は、少なくとも1つの追加のネジ山(例えば、第2のネジ山)を更に含む。いくつかの実施形態では、第1のネジ山のらせん角と第2のネジ山のらせん角は、実質的に同一である。いくつかの実施形態では、第1のネジ山および第2のネジ山は散在される。いくつかの実施形態では、第2のネジ山は第2の金属を含む。いくつかの実施形態では、第1の金属および第2の金属は同一の金属である。いくつかの実施形態では、第2のネジ山は、第2の複数の実質的に連続的な繊維を含む。いくつかの実施形態では、第1の複数の繊維および第2の複数の繊維は同一材料を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、金属マトリックス複合物品は、第3の複数の実質的に連続的な繊維を更に含む。いくつかの実施形態では、第1の複数の繊維の主軸と第3の複数の繊維の主軸との間の角度は、30度〜60度である。
【0010】
いくつかの実施形態では、金属マトリックス複合物品は、第1の主表面と反対側の第2の主表面を更に含み、任意に、第2の表面は第3のネジ山を含む。
【0011】
もう1つの態様では、本発明は、第1の主表面と、第1の主表面の少なくとも一部に隣接する第1の複数の実質的に連続的な繊維とを有する可溶性コアを含むモールド部品を提供する。いくつかの実施形態では、可溶性コアは塩を含む。いくつかの実施形態では、可溶性コアは水溶性である。
【0012】
いくつかの実施形態では、モールド部品の第1の主表面は第1の溝を含み、第1の複数の繊維は、任意に、第1の溝と実質的に位置合わせされる。
【0013】
更にもう1つの態様では、本発明は、金属マトリックス複合物品の製造方法を提供する。1つの実施形態では、本方法は、
第1の複数の実質的に連続的な繊維で包まれた第1の領域を含む第1の主表面を有する可溶性コアを提供することと、
第1の複数の繊維に第1の溶融金属を浸透させることと、
第1の金属を凝固させることと、
を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、可溶性コアを除去することを更に含む。いくつかの実施形態では、可溶性コアの除去は、コアが可溶性である流体にコアをさらすことを含み、流体は、任意に、水、蒸気、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本方法は、第1の溶融金属上に第2の溶融金属を施すことと、第2の溶融金属を凝固させることとを更に含み、第1の溶融金属および第2の溶融金属は、任意に、同一である。
【0015】
いくつかの実施形態では、本方法は、可溶性コアの第1の領域に第1の溝を形成することを更に含み、第1の複数の繊維は、任意に、第1の溝と実質的に位置合わせされる。
【0016】
いくつかの実施形態では、可溶性コアの第1の主表面は第2の領域を更に含み、第2の領域は、任意に、第1の領域と少なくとも部分的に重なり合い、本方法は、コアの第2の領域に第2複数の実質的に連続的な繊維を施すことと、第2の複数の繊維に第3の溶融金属を浸透させることとを更に含み、第1の溶融金属および第3の溶融金属は、任意に、同一の金属である。
【0017】
更にもう1つの態様では、本発明は、ネジ山を含む内側主表面を有するシリンダを含むネジ付き物品を提供し、ネジ山は、金属と、複数の実質的に連続的な繊維とを含む。いくつかの実施形態では、複数の実質的に連続的な繊維は、ネジ山と実質的に位置合わせされる。いくつかの実施形態では、複数の実質的に連続的な繊維は、200よりも大きいアスペクト比を有する。いくつかの実施形態では、複数の実質的に連続的な繊維は、少なくとも5センチメートルの平均長さを有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明は、二次成形加工を少ししか必要としない、あるいは全く必要としないニアネットシェイプおよび/またはネットシェイプMMC物品を製造するために適切な可溶性コアを提供する。いくつかの実施形態では、本発明に従う可溶性コアの使用は、廃棄物および二次成形加工を低減する。
【0019】
もう1つの態様では、本発明のいくつかの実施形態は、可溶性コアと、実質的に連続的な繊維の1つまたは複数のプライとを含むモールド部品を提供する。
【0020】
もう1つの態様では、本発明のいくつかの実施形態は、MMC物品の特徴物(例えば、ネジ山)と実質的に位置合わせされた実質的に連続的な繊維を有するMMC物品を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維は、金属繊維、セラミック繊維、黒鉛繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維は、アルミナ繊維(例えば、α−アルミナ繊維)、アルミノシリケート繊維、アルミノボロシリケート繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明は、高強度、高モジュラスの軽量構造要素への追加構造部材(例えば、フィン部分および/またはノーズコーン)の取付けを容易にする。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明は、ネジ部分と構造要素の大部分との両方において同様の熱膨張係数(CTE)を有する比較的軽量の構造要素(例えば、発射体管)を提供する。
【0024】
更にもう1つの態様では、本発明のいくつかの実施形態は、MMC物品にネットシェイプおよび/またはニアネットシェイプ特徴物(例えば、ネジ山)を提供する方法を提供し、これにより、製造方法のほぼ最後に重要な追加処理工程(例えば、研削)を実行する必要性が低減および/または排除される。
【0025】
本発明の上記の概要は、本発明の各実施形態を説明することは意図されない。本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、以下の説明においても示される。本発明のその他の特徴および利点は、その説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
いくつかの用途では、金属マトリックス複合(MMC)物品を含む部品を1つまたは複数の追加の物品(例えば、金属物品または別のMMC物品)に接続することが望ましい。例えば、物品を接続する1つの方法は、雌ネジ付き物品を雄ネジ付き物品とはめ合わせる(例えば、雌ネジ付きナット雄をネジ付きボルトとはめ合わせる、または2つの雄ネジ付きパイプを雌ネジ付き連結器と接続する)ことを含む。このアプローチでは、ネジ山は、ネジ山が位置合わせされて係合されたときに物品がはめ合わされるように、通常、それぞれの物品に形成される。
【0027】
本発明の1つの態様では、可溶性コアを使用して、MMC物品におけるネジ山の形成を容易にする。いくつかの実施形態では、可溶性コアの使用は、ネジ山を作るために除去されるMMC材料の量を低減する。いくつかの実施形態では、ネジ山はネットシェイプまたはニアネットシェイプである(すなわち、次の処理(例えば、研削または研磨)が少ししか、あるいは全く必要とされない)。
【0028】
本発明のもう1つの態様では、モールド部品(すなわち、可溶性コアおよび実質的に連続的な繊維の1つまたは複数のプライ)のいくつかの実施形態を使用して、ネジ領域とMMC物品の大部分との両方において実質的に同一の熱膨張係数(CTE)を有するMMC物品を形成する。
【0029】
図1A〜図1Eを参照すると、本発明に従う例示的なMMC物品を製造するための1つの例示的な方法が説明されている。一般に、可溶性コアは、実質的に連続的な繊維の1つまたは複数のプライで包まれて、モールド部品を形成する。モールド部品はモールド内に配置され、そこで金属が繊維に浸透し、MMC領域を形成する。任意に、1つまたは複数の追加のMMC領域および/または金属領域(すなわち、繊維のない領域)が、同一または次の鋳造工程で形成されてもよい。最後の鋳造工程の後、可溶性コアは、適切な溶媒(例えば、水)で溶解され、MMC物品をもたらす。次に、研削および/または研磨などの任意的な機械加工工程が実施されてもよい(例えば、いくつかの実施形態では、MMC物品にネジ山が機械加工され得る)。
【0030】
より具体的には、図1Aは、例示的な可溶性コア100を説明する。可溶性コアは、どの可溶性材料から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、可溶性コアは、流体(例えば、液体(例えば、水)および/または気体(例えば、蒸気))に可溶性の材料を含む。いくつかの実施形態では、可溶性コアは、塩(例えば、ソーダ灰(例えば、マサチューセッツ州インディアン・オーチャードのヒートバス/パーク・メタラジカル社(Heatbath/Park Metallurgical Corp.,Indian Orchard,Massachusetts)から、商品名「アルミニウム・キャスティング・ソルト(ALUMINUM CASTING SALT)AC」で入手可能)、または塩化ナトリウム)を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、可溶性コアは、可溶性材料および不溶性材料の組み合わせを含むことができる。例えば、コアは、砂および/またはセラミック材料(例えば、酸化物、窒化物、および炭化物)と組み合わせて、塩を含むことができ、セラミック材料は、様々な形態(例えば、ウイスカー、繊維、微粒子、および/またはプレートレット)で取り込むことができる。いくつかの実施形態では、コアは、不溶性部材(例えば、ロッドまたは棒)を含むことができ、その少なくとも一部は可溶性層によって被覆され、可溶性層は、例えば、可溶性材料、または可溶性材料および不溶性材料の組み合わせを含むことができる。
【0032】
可溶性コアを製造するための追加の適切な材料は、例えば、米国特許第5,273,098号明細書(ヒンドマン(Hyndman)ら)、米国特許第5,921,312号明細書(カーデン(Carden))、および米国特許第6,478,073号明細書(グレーブ(Grebe)ら)に記載されている。
【0033】
可溶性コア100は主軸M1を有するシリンダとして示されているが、例えば、コアを用いて形成した結果得られるMMC物品または該物品の一部の所望のサイズおよび形状によって、様々なコアの形状およびサイズを使用することができる。適切なコアは、当該技術分野において既知の技法(例えば、溶融塩のダイへの注入、プレス、焼成、鋳造(例えば、消失模型鋳造)、およびこれらの組み合わせ)によって形成することができる。更に、コアの形状は、様々な既知の技法(例えば、機械加工、旋削、および研削)によって変更することができる。適切なコア形成方法は、例えば、米国特許第5,273,098号明細書(ヒンドマン(Hyndman)ら)および米国特許第5,303,761号明細書(フレスナー(Flessner)ら)に記載されている。
【0034】
更に、図1Bは、可溶性コア100と、コア100に施された4プライの連続繊維(すなわち、プライ101、102、103、および104)とを含むモールド部品110を説明する。プライは、実質的に連続的な繊維の少なくとも1つの層である。いくつかの実施形態では、繊維は補強繊維である。各プライ(すなわち、プライ101、102、103、および104)は、コア100の全長(すなわち、第1の端部108から第2の端部109まで)にわたる。明確にするために、上側のプライ(すなわち、プライ102、103、および104)は、下側のプライを露出させるために切り取られている。
【0035】
「実質的に連続的な繊維」は、平均繊維直径と比べたときに、比較的無限である長さを有する繊維を意味する。通常、本発明に関しては、実質的に連続的な繊維は、少なくとも5センチメートル(cm)(いくつかの実施形態では、少なくとも10cm、15cm、20cm、あるいは更に、少なくとも25cm、いくつかの実施形態では、5〜25cmの範囲)の長さを有する。通常、完成MMC物品中、数で少なくとも約85%の繊維は、実質的に連続的である(いくつかの実施形態では、少なくとも約90%、または更に、少なくとも約95%)。いくつかの実施形態では、完成MMC物品中、実質的に全ての(すなわち、数で95%よりも多い、あるいは98%よりも多い、あるいは更に、99%よりも多い)繊維が、実質的に連続的である。いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維は、200よりも大きい(いくつかの実施形態では、500よりも大きい、1000よりも大きい、2000よりも大きい、10,000よりも大きい、25,000よりも大きい、または更に、50,000よりも大きい)アスペクト比(すなわち、平均繊維直径に対する繊維の長さの比)を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、特定のプライの実質的に連続的な繊維は、互いに略平行であるように実質的に長手方向に位置合わせされている。通常、特定のプライの実質的に連続的な繊維は全て、実質的に長手方向に位置合わせされた配置で保持され、個々の繊維の位置合わせは、その平均の長手方向軸(すなわち、プライの主軸)の±10°(いくつかの実施形態では、±5°、または更に±3°)以内に保持されるのが望ましい。
【0037】
これらの繊維は個々の繊維として特定のプライ内に取り込まれてもよいが、これらは、より一般的には、繊維群(例えば、ロービング(すなわち、撚りがないかまたはわずかな撚りがある、単一のストランド内の繊維のゆるい集合体)、ヤーン(すなわち、一緒に撚られた繊維の集まり)、またはトウ(すなわち、ロープのような形態で集められた複数の(個々の)繊維(通常、少なくとも100本の繊維、より一般的には少なくとも400本の繊維))として取り込まれる。いくつかの実施形態では、繊維群(すなわち、ロービング、ヤーン、またはトウ)は、繊維群あたり少なくとも750本の個々の繊維(または更に、繊維群あたり少なくとも2550本の個々の繊維)を含む。いくつかの実施形態では、繊維は、プリプレグ材料の一部(すなわち、樹脂(例えば、エポキシ)に埋め込まれた実質的に連続的な繊維)として、プライ内に取り込まれてもよい。
【0038】
繊維群内の繊維は、実質的に長手方向に互いに位置合わせされた関係(すなわち、略平行)に保持される。多数の繊維群を用いてプライを形成する場合、繊維群も、実質的に長手方向に互いに位置合わせされた関係(すなわち、略平行)に保持される。織られたり編まれたりした繊維構造形態にある実質的に連続的な繊維は有用であり得るが、通常あまり望ましくない。何故なら、これらは、長手方向に位置合わせされた繊維と共に実現される、より高い繊維充填密度を提供する助けにならないからである。従って、織られたり編まれたりした繊維構造を用いるモールド部品に基づいて金属が浸透された物品は、通常、長手方向に位置合わせされた連続繊維を有る金属浸透物品よりも低い強度特性を示し、従って、あまり望ましくない。
【0039】
いくつかの構造では、長手方向に位置合わせされた繊維は、一直線とは対照的に湾曲されている(すなわち、平面的に延在しない(例えば、シリンダのまわりに円周方向に巻きつけられた繊維))ことが望ましい、または必要なこともある。従って、例えば、長手方向に位置合わせされた繊維は、繊維の全長にわたって平面状でもよいし、繊維の全長にわたって非平面状(すなわち、湾曲)でもよいし、あるいはある部分では平面状であり、他の部分では非平面状(すなわち、湾曲)であってもよく、連続繊維は、その湾曲部分にわたって実質的に交差しない曲線(すなわち、長手方向に位置合わせされた)配列に保持される。いくつかの実施形態では、繊維は、その湾曲部分にわたって互いに実質的に等距離の関係に保持される。
【0040】
もう一度図1Bを参照すると、実質的に連続的な繊維の第1のプライ101は、主軸M1に垂直にコア100のまわりに円周方向に巻きつけられる。実質的に連続的な繊維の第2のプライ102は、コア100の主軸M1に平行に巻きつけられ、第1の繊維プライ101と重なり合う。連続繊維プライのその他の方向付けも可能である(例えば、プライは、ゼロ度(すなわち、主軸M1に平行)〜90度(すなわち、主軸M1に垂直)の主軸M1に対する角度で位置合わせされ得る)。更に、各繊維プライは、1つまたは複数の他の繊維プライに対してどんな角度で施されてもよい。特定の用途次第であるが、別のプライに関するプライの方向付けの違いは、ゼロ度より大きい角度〜90°までのどの角度でもよい。いくつかの実施形態では、別のプライに関するプライの位置決めは、約30°〜約60°の範囲、あるいは更に、例えば約40°〜約50°の範囲であり得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維のただ1つのプライが可溶性コアに施されて、モールド部品が形成されるが、他の実施形態では、実質的に連続的な繊維の2つ以上のプライが可溶性コアに施される。例えば、図1Bでは、4プライの実質的に連続的な繊維が示されており、実質的に連続的な繊維の第3のプライ103、および実質的に連続的な繊維の第4のプライ104はそれぞれ、円周方向および平行な方向で施される。
【0042】
いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維の第1のプライは、可溶性コアと同一の広がりを有する。いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維の第1のプライは、可溶性コアの選択された領域にのみ施される。実質的に連続的な繊維の次のプライは、可溶性コアの選択された領域に独立して施され、例えば、可溶性コアと同一の広がりを有することを含む。いくつかの実施形態では、次の繊維プライは、1つまたは複数の他の繊維プライの全てまたは一部と重なり合ってもよい。いくつかの実施形態では、次のプライは、1つまたは複数の他のプライと当接するが、重なり合わなくてもよい。いくつかの実施形態では、次のプライは、1つまたは複数の他のプライから横方向にいくらかの距離だけ離間されていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維の第1のプライは、可溶性コアの1つの領域に施され、実質的に連続的な繊維の第2のプライは、可溶性コアの第2の領域に施され得る。
【0043】
本発明に従うMMC物品を製造するために有用であり得る実質的に連続的な繊維の例としては、金属酸化物繊維(例えば、アルミナ繊維、α酸化アルミニウム繊維、アルミノシリケート繊維、およびアルミノボロシリケート繊維)、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、黒鉛繊維、および炭化ケイ素繊維などのセラミック繊維がある。通常、セラミック酸化物繊維は、結晶性セラミックおよび/または結晶性セラミックとガラスの混合物(すなわち、繊維は、結晶性セラミック相およびガラス相の両方を含有し得る)である。特定のプライの繊維は、1つの種類の繊維を含んでもよいし、あるいはプライは2つ以上の種類の繊維を含んでもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、これらの繊維は、少なくとも1.4ギガパスカル(GPa)(いくつかの実施形態では、少なくとも1.7GPa、少なくとも2.1GPa、または更に、少なくとも2.8GPa)の平均引張り強さを有する。いくつかの実施形態では、これらの繊維は、少なくとも70GPa(いくつかの実施形態では、少なくとも100GPa、少なくとも150GPa、少なくとも200GPa、少なくとも250GPa、少なくとも300GPa、または更に、少なくとも350GPa)のヤング率を有する。
【0045】
通常、実質的に連続的な繊維は、5マイクロメートル〜250マイクロメートル、更に一般的には5マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲の平均直径を有するが、繊維トウでは、平均繊維直径は、通常、50マイクロメートル以下であり、より一般的には25マイクロメートル以下である。いくつかの実施形態では、繊維は、円形または楕円形の断面形状を有する。
【0046】
アルミナ繊維の製造方法は当該技術分野において知られており、米国特許第4,954,462号明細書(ウッド(Wood)ら)に開示される方法が含まれる。いくつかの実施形態では、アルミナ繊維は多結晶性αアルミナベースの繊維であり、理論上の酸化物に基づいて、アルミナ繊維の全重量を基準として約99重量パーセントよりも多いAl2O3と、約0.2〜0.5重量パーセントのFe2O3とを含む。いくつかの実施形態では、多結晶性αアルミナベースの繊維は、1マイクロメートル未満(または更に、0.5マイクロメートル未満)の平均粒径を有するαアルミナを含む。いくつかの実施形態では、多結晶性αアルミナベースの繊維は、少なくとも1.6GPa(いくつかの実施形態では、少なくとも2.1GPa、または更に、少なくとも2.8GPa)の平均引張り強さを有する。例示的なαアルミナ繊維は、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company,St.Paul,Minnesota)から「ネクステル(NEXTEL)610」の商品名で市販されている。もう1つの例示的なαアルミナ繊維は、繊維の全重量を基準として約89重量パーセントのAl2O3、約10重量パーセントのZrO2、および約1重量パーセントのY2O3を含み、3Mカンパニーにより商品名「ネクステル650」で市販されている。
【0047】
適切なアルミノシリケート繊維は、例えば、米国特許第4,047,965号明細書(カルスト(Karst)ら)に記載されている。いくつかの実施形態では、アルミノシリケート繊維は、理論上の酸化物に基づいて、アルミノシリケート繊維の全重量を基準として67〜85重量パーセントの範囲のAl2O3と、33〜15重量パーセントの範囲のSiO2とを含む。いくつかの例示的なアルミノシリケート繊維は、理論上の酸化物に基づいて、アルミノシリケート繊維の全重量を基準として67〜77重量パーセントの範囲のAl2O3と、33〜23重量パーセントの範囲のSiO2とを含む。いくつかの実施形態では、アルミノシリケート繊維は、理論上の酸化物に基づいて、アルミノシリケート繊維の全重量を基準として約85重量パーセントのAl2O3と、約15重量パーセントのSiO2とを含む。もう1つの例示的なアルミノシリケート繊維は、理論上の酸化物に基づいて、アルミノシリケート繊維の全重量を基準として約73重量パーセントのAl2O3と、約27重量パーセントのSiO2とを含む。アルミノシリケート繊維は、例えば、3Mカンパニーから商品名「ネクステル720」および「ネクステル550」で市販されている。
【0048】
適切なアルミノボロシリケート繊維は、例えば、米国特許第3,795,524号明細書(ソウマン(Sowman))に記載されている。いくつかの実施形態では、アルミノボロシリケート繊維は、理論上の酸化物に基づいて、アルミノボロシリケート繊維の全重量を基準として35重量パーセント〜75重量パーセント(いくつかの実施形態では、55重量パーセント〜75重量パーセント)のAl2O3と、0重量パーセントよりも多く(いくつかの実施形態では、少なくとも15重量パーセント)、そして50重量パーセント未満(いくつかの実施形態では、45重量パーセント未満、または更に、44重量パーセント未満)のSiO2と、1重量パーセントよりも多いB2O3とを含む。いくつかの実施形態では、アルミノボロシリケート繊維は、5重量パーセントよりも多いB2O3を含む。いくつかの実施形態では、アルミノボロシリケート繊維は、約25重量パーセント未満のB2O3を含む。いくつかの実施形態では、アルミノボロシリケート繊維は、約1重量パーセント〜約5重量パーセント、または約2重量パーセント〜約20重量パーセントのB2O3を含む。アルミノボロシリケート繊維は、例えば、3Mカンパニーから商品名「ネクステル(NEXTEL)312」および「ネクステル440」で市販されている。
【0049】
例示的なホウ素繊維は、例えば、マサチューセッツ州ローウェル(Lowell,Massachusetts)のスペシャルティ・マテリアルズ社(Specialty Materials,Inc.)から市販されている。
【0050】
窒化ホウ素繊維は、例えば、米国特許第3,429,722号明細書(エコノミー(Economy))および米国特許第5,780,154号明細書(オカノ(Okano)ら)に記載されるように製造することができる。
【0051】
例示的な炭素繊維は、例えば、2000、4000、5000、および12,000本の繊維のトウにおいてジョージア州アルファレッタ(Alpharetta,Georgia)のBPアモコ・ケミカルズ(BP Amoco Chemicals)から商品名「ソーネル・カーボン(THORNEL CARBON)」で、コネチカット州スタンフォード(Stamford,Connecticut)のヘクセル・コーポレーション(Hexcel Corporation)から、カリフォルニア州サクラメント(Sacramento,California)のグラフィル社(Grafil,Inc.)(三菱レイヨン社(Mitsubishi Rayon Co.)の子会社)から、商品名「パイロフィル(PYROFIL)」で、日本国東京の東レ(Toray)から、商品名「トレカ(TORAYCA)」で、日本の東邦レーヨン社(Toho Rayon of Japan,Ltd.)から商品名「ベスファイト(BESFIGHT)」で、ミズーリ州セントルイス(St.Louis,Missouri)のゾルテック・コーポレーション(Zoltek Corporation)から商品名「パネックス(PANEX)」および「パイロン(PYRON)」で、そしてニュージャージー州ワイコフ(Wyckoff,New Jersey)のインコ・スペシャル・プロダクツ(Inco Special Products)(ニッケル被覆された炭素繊維)から商品名「12K20」および「12K50」で市販されている。
【0052】
例示的な黒鉛繊維は、例えば、1000、3000、および6000本の繊維のトウにおいて、ジョージア州アルファレッタのBPアモコ(BP Amoco)から商品名「T−300」で市販されている。
【0053】
例示的な炭化ケイ素繊維は、例えば、500本の繊維のトウにおいて、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,California)のCOIセラミックス(COI Ceramics)から商品名「ニカロン(NICALON)」で、日本の宇部興産(Ube Industries)から商品名「チラノ(TYRANNO)」で、そしてミシガン州ミッドランド(Midland,Michigan)のダウ・コーニング(Dow Corning)から商品名「シルラミック(SYLRAMIC)」で市販されている。
【0054】
市販されている実質的に連続的な繊維(例えば、セラミック酸化物繊維)は、通常、潤滑性を提供するため、およびハンドリング中に繊維ストランドを保護するために、その製造中に繊維に添加される有機サイジング材料を含む。サイジングは、例えば布地に加工する間に、繊維の破断、静電気、および粉塵の量を低減する傾向があると信じられる。サイジングは、除去することができる(例えば、溶解または焼失によって)。いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維は、水でサイジングされ(water−sized)得る。また、実質的に連続的な繊維上にその他のコーティングを有することも本発明の範囲内である。このようなコーティングを使用して、例えば、繊維の湿潤性を高める、および/または繊維と溶融金属マトリックス材料との間の反応を低減または防止することができる。コーティングおよびコーティングを提供するための技法は、繊維および金属マトリックス複合体技術分野において知られている。
【0055】
例えば、加圧浸透鋳造、スクイズ鋳造、重力鋳造、インベストメント鋳造、または遠心鋳造を含む当該技術分野において既知の技法を用いて、モールド部品を使用して本発明に従うMMC物品を形成することができる。一般に、モールド部品は、モールドキャビティ内に位置決めされる。次に金属がモールドキャビティ内に導入される。いくつかの例示的な実施形態では、金属は固体片として導入され、これは次にその場で溶融される。いくつかの例示的な実施形態では、金属は溶融状態で導入される。通常、圧力を加えて(例えば、加圧ガス、重力、ピストン、および/または遠心力により)、溶融金属を実質的に連続的な繊維のプライに浸透させ、個々の繊維を封入し、金属マトリックス複合体領域を形成する。任意に、例えばモールドキャビティの形状に応じて、金属はモールド部品を包囲することができ、金属領域(すなわち、繊維のない領域)を形成する。いくらか存在すれば、最終MMC物品は、金属マトリックス複合体領域および金属領域の両方を含む。いくつかの実施形態では、モールドキャビティは、MMC物品の金属領域を最小限にするように選択され得る。
【0056】
モールドキャビティは、例えばMMC物品の所望の形状に応じて、様々な形状のどれでも有することができる。いくつかの実施形態では、多段階鋳造方法を用いてMMC物品を形成することができる。MMC物品の例示的な二段形成階方法は、モールド部品を第1のモールド内に配置することを含み、第1の金属が実質的に連続的な繊維のプライに浸透して、第1の金属マトリックス複合体領域と、任意に、第1の金属領域とを形成する。次に、モールド部品は、より大きいモールドキャビティを有する第2のモールドに移動され、第2の金属が施されて、第2の金属領域を形成する。いくつかの実施形態では、第1の金属と第2の金属とは同一である。
【0057】
いくつかの実施形態では、2つよりも多いモールドおよび/または鋳造工程が使用される。いくつかの実施形態では、鋳造工程の合間に追加の繊維プライが導入されてもよい。いくつかの実施形態では、単一の鋳造工程中に、2つ以上の金属がモールドに導入されてもよい。各鋳造工程で使用される繊維および金属はいずれも独立して選択され、他の鋳造工程で使用される繊維および/または金属と同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
通常、金属マトリックス複合体の金属は、例えば、繊維の外側に保護コーティングを提供する必要性を排除するために、マトリックス材料が繊維材料と化学的に著しく反応しない(すなわち、繊維材料に関して、化学的に比較的不活性である)ように選択される。典型的な適切な金属の例としては、アルミニウム、鉄、チタン、ニッケル、コバルト、銅、スズ、マグネシウム、亜鉛、およびこれらの合金が挙げられる。いくつかの実施形態では、MMC物品のための金属は、アルミニウム、マグネシウム、およびこれらの合金(例えば、アルミニウムと、マグネシウム、銅、ケイ素、クロム、およびこれらの組み合わせとの合金(例えば、少なくとも約98重量パーセントのアルミニウムおよび約2重量パーセントまでの銅を含むアルミニウムおよび銅の合金))からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、金属は、少なくとも98重量パーセントのアルミニウム(いくつかの実施形態では、少なくとも99重量パーセント、99.9重量パーセント、または更に、99.95重量パーセントよりも多いアルミニウム)を含む。いくつかの実施形態では、有用な合金は、200、300、400、700、および/または6000シリーズのアルミニウム合金である。より高純度の金属は、より高い引張り強さの細長い金属マトリックス複合物品を製造するために望ましい傾向があるが、純度の低い金属形態も有用である。
【0059】
適切な金属は、市販されている。例えば、アルミニウムは、ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh,Pennsylvania)のアルコア(Alcoa)から商品名「スーパー・ピュア・アルミニウム(SUPER PURE ALUMINUM;99.99%Al」で入手可能である。アルミニウム合金(例えば、Al−2重量パーセントのCu(0.03重量パーセントの不純物))は、例えば、ニューヨーク州ニューヨークのベルモント・メタルズ(Belmont Metals,New York,New York)から入手することができる。例えば、マグネシウムは、英国マンチェスターのマグネシウム・エレクトロン(Magnesium Elektron,Manchester,England)から商品名「ピュア(PURE)」で入手可能である。マグネシウム合金(例えば、WE43A、EZ33A、AZ81A、およびZE41A)は、例えば、コロラド州デンバー(Denver,Colorado)のTIMETから入手することができる。
【0060】
図1Cを見ると、鋳造工程後、そして可溶性コア(図示せず)が除去されて内側主表面127が露出された後のMMC物品120が説明されている。MMC物品120は、MMC領域122および金属領域124を含む。一般に、MMC領域は、実質的に連続的な繊維のプライと、これらのプライの繊維に浸透してこれを封入する金属とを含むが、金属領域は繊維を含まない。一般に、様々な既知の技法を使用して、コアを除去することができる。例えば、コアは、流体(例えば、液体(例えば、水)および/または気体(例えば、蒸気))中に溶解させて除去することができる。いくつかの実施形態では、例えば、コアは、溶媒(例えば、水および/または蒸気)の1つまたは複数の流れ(例えば、ジェット)を塩コアに向けて除去することができる。いくつかの実施形態では、溶媒は、機械的な作用を提供して可溶性コアを分解および除去するのに役立つ充填剤材料(例えば、塩および/または砂)を含有することができる。いくつかの実施形態では、例えば、コアは液体浴中で除去することができ、この際、MMCおよび可溶性コアは溶媒中に浸漬される。
【0061】
いくつかの実施形態では、MMC物品がまだ熱い間にコアを溶解することが望ましいであろう。いくつかの実施形態では、可溶性コア内へ、そして更にそこを通り抜ける通路(例えば、穴)を形成して、例えば、溶媒と接触するコアの表面積を増大させることが望ましいであろう。一般に、可溶性コア(例えば、可溶性材料および/または不溶性材料)を含む材料は、捕集および再利用される。
【0062】
MMC物品においてアンダーカット、ネジ山および/またはその他のパターンが所望される場合、1つまたは複数の研削および/または研磨工程を実施して、所望の形状を形成することができる。一般に、例えばダイアモンド研削を含む様々な既知の技法を用いて、所望の形状を形成することができる。
【0063】
図1Dを参照すると、内側主表面127にネジ山150が形成されたMMC物品130が示されている。
【0064】
図1Eを参照すると、MMC物品130のネジ領域の拡大図が示されている。図1Eでは、MMC物品130は、封入された繊維が示されるようにシャドーラインで示される。実質的に連続的な繊維の第1のプライ101は、主軸M1と90°の角度を形成する。それに対して、らせん角H1を有するネジ山150、主軸M1と角度G1(すなわち、90°−H1)を形成する。従って、第1のプライ101の繊維は、ネジ山150と位置合わせされない。また、内側表面127からMMC材料が除去されて(例えば、研削によって)、ネジ山150が形成されたときに、第1のプライ101内の個々の繊維111は切断されており、従って、ネジ山150内の繊維111はもはや実質的に連続的ではない。
【0065】
図4Aおよび図4Bを見ると、ネジ山のらせん角の定義が説明されている。図4Aおよび図4Bは、外側のネジ山(すなわち、シリンダ外側表面のネジ山)を説明しているが、内側のネジ山(例えば、ネジ付きパイプ)を有する物品にも、らせん角、平均直径、ピッチ、およびリードに対して同一の定義が適用される。
【0066】
ネジ山のらせん角は、ネジ山が巻きつくネジ付き物品の軸に垂直な線に対して測定される。図4Aを参照すると、主軸M4のまわりにらせん状に巻きつく一条ネジ山405を有するネジ付き物品400が示されている。ネジ付き物品400は、長径D2、短径D1、および平均直径D3を有し、ここで、平均直径D3は、長径D2および短径D1の平均である。一条ネジ山では、ピッチP1(すなわち、隣接するネジ山の同様の地点の間の距離)は、リードL1(すなわち、ネジ付き物品400にネジ留めされたナットが、一回のフルターンで回転された場合にネジ付き物品400に沿って移動し得る距離)に等しい。一般に、らせん角のタンジェントは、リードをπ×平均直径の積で除した値に等しい。従って、らせん角H4は、
tan(H4)=L1/πD3
であると定義される。
【0067】
らせん角H4は、一条ネジ山400が巻きつくネジ付き物品400の軸M4に垂直な線に対して定義されるので、軸M4に対する一条ネジ山400の角度(すなわち、角度G4)は、90°−H4に等しい。ゼロ度のらせん角を有するネジ山は、当該技術分野においてゼロ度のネジ山またはバットレス溝として知られており、このようなネジ山は、それが巻きつく物品の主軸に垂直であり得る。
【0068】
図4Bを参照すると、平均直径がD4であり、第1のネジ山415および第2のネジ山416を含む二条ネジ山を有するネジ付き物品410が示されている。ネジ山415および416は、散在されている(すなわち、ネジ山415が広がるネジ付き物品410の領域は、ネジ山416が広がる領域と重なり合うが、ネジ山415および416は交差しない)。二条ネジ山では、リードL2は、ピッチP2の2倍に等しい。一条ネジ山と同様に、らせん角のタンジェントは、リードをπと平均直径の積で除した値に等しい。三条およびそれよりも高次のネジ山も可能である。
【0069】
図2A〜図2Dを参照すると、本発明に従う例示的なMMC物品を製造するための第2の例示的な方法が示されている。一般に、所望のネジ山パターンに対応する溝を有する可溶性コアが作製される。実質的に連続的な繊維の第1のプライがコアに施され、溝内に配置され、溝と実質的に位置合わせされる。任意に、実質的に連続的な繊維の1つまたは複数の追加のプライが可溶性コアに施され、モールド部品が形成される。モールド部品は、モールド内に配置され、金属が繊維に浸透し、MMC領域と、任意に金属領域とを形成する。任意に、同じ鋳造工程または次の鋳造工程で、1つまたは複数の追加のMMC領域および/または金属領域が形成されてもよい。モールドから取り外した後、可溶性コアが除去される(例えば、適切な溶媒(例えば、水および/または蒸気)で溶解することによって)。任意に、次に研削および/または研磨などの仕上げ工程が実行されてもよい。いくつかの実施形態では、MMC物品は、ニアネットシェイプまたはネットシェイプであり、仕上げ工程の必要性が最小限にされるか、あるいは排除される。
【0070】
より具体的には、図2Aは、コア200の表面215内に設けられた溝205を有する可溶性コア200を説明する。コア200は、主軸M2を有するシリンダとして示されているが、例えば、コアを用いて形成した結果得られるMMC物品または該物品の一部の所望のサイズおよび形状によって、様々なコア形状およびサイズのいずれかを使用することができる。同様に、コア200は、コア200の表面215内に設けられた溝205を有して示されているが、例えばコアを用いて形成されるMMC物品の所望の表面特徴物に応じて、適切なコアは、所望の隆起またはレリーフ構造が表面215上に形成されてもよい。一般に、コアの表面上の陥凹特徴物は、そのコアで形成されるMMC物品の表面上の隆起特徴物に対応するであろう。同様に、コアの表面上の隆起特徴物は、通常、MMC物品の表面上の陥凹特徴物に対応するであろう。更に、溝205は矩形断面を有して示されているが、コア表面上の隆起または陥凹特徴物(例えば、溝)は、例えば、完成MMC物品上に得られる特徴物の所望の断面に応じて、所望の断面(例えば、三角形、先端を切った三角形、およびACMEネジ)を有することができる。
【0071】
溝205は、らせん角H2を有するらせんである。一般に、らせん角は、ゼロ度〜90度のいずれの角度でもよい。いくつかの実施形態では、可溶性コアに複数の溝が形成されてもよい。各溝のらせん角は、独立して選択することができる。いくつかの実施形態では、溝のらせん角は、実質的に同一(すなわち、各溝のらせん角は、複数の溝の平均らせん角の±5度(または±3度、あるいは更に±1度)の範囲内)である。いくつかの実施形態では、溝は散在される(すなわち、溝は、重なり合うことなく織り交ぜられる)。いくつかの実施形態では、第1の溝は可溶性コアの第1の領域に形成され、第2の溝は可溶性コアの第2の領域に形成される。
【0072】
いくつかの実施形態では、溝205を有する可溶性コア200は、当該技術分野で既知の技法(例えば、成形または鋳造)を用いて直接形成される。更に、または代替的に、可溶性コア200は、形成技法(例えば、成形および/または鋳造)と既知の機械加工技法(例えば、研削および/または旋削)との組み合わせによって製造され得る。例えば、基本的な可溶性コアは、例えば、成形および/または鋳造技法によって形成することができる。そして、次の機械加工技法(例えば、研削)を用いて、基本的な可溶性コアを所望の最終形状(例えば、らせん状の溝を有するシリンダ)に変化させることができる。
【0073】
更に、図2Bは、本発明のモールド部品の例示的な実施形態を説明する。モールド部品210は、可溶性コア200に施された実質的に連続的な繊維の第1のプライ201を含む。第1のプライ201の繊維は溝205内に配置され、溝205と実質的に位置合わせされる。いくつかの実施形態では、第1のプライは、溝を実質的に充填する。いくつかの実施形態では、第1のプライのいくらかの繊維は、可溶性コアの表面215と実質的に同じ高さである。一般に、実質的に位置合わせされた繊維の使用は、繊維の間の空隙体積を低下させる。通常、空隙体積は約60%未満(いくつかの実施形態では、約50%未満、または更に約40%未満)である。
【0074】
次に、図2Cは、鋳造工程後、そして可溶性コアが除去された後の例示的なMMC物品230を説明する。MMC物品230は、MMC領域222および金属領域224を含む。MMC領域222は、第1のプライ201(図示せず)と、第1のプライ201に浸透した第1の金属241を含む。いくつかの実施形態では、MMC領域は、約60体積%未満の金属(いくつかの実施形態では、約50体積%未満の金属、または約45体積%未満の金属、約40体積%未満の金属、または更に約35体積%未満の金属)を含む。
【0075】
MMC領域222は、内側主表面227上に配置されたネジ山250を含む。ネジ山250は、可溶性コア200(図2Bに示される)の溝205(図2Bに示される)に対応する。金属領域224は、第2の金属242を含む。それぞれの金属(すなわち、第1の金属241および第2の金属242)は独立して選択され、同じ金属でも異なる金属でもよい。いくつかの実施形態では、MMC領域および金属領域は、同一の鋳造作業で形成される。いくつかの実施形態では、MMC領域および金属領域は、別々の鋳造作業で形成される。いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維の追加のプライは、鋳造工程の前に、可溶性コア200に施すことができる。いくつかの実施形態では、ネジ山に隣接するMMC物品の領域は金属マトリックス複合体領域を含み得る。
【0076】
図2Dを参照すると、MMC物品230のネジ領域の拡大図が示されている。図2Dにおいて、MMC物品230は、封入された繊維が示されるようにシャドーラインで示される。実質的に連続的な繊維の第1のプライ201は、ネジ山250と実質的に位置合わせされる。いくつかの実施形態では、ネジ山は、MMC物品230を別の物品(例えば、第2のMMC物品、または金属物品)に取り付けるために使用することができる。
【0077】
鋳造工程中に金属が全くまたは実質的に可溶性コアに浸透しなければ、MMC物品は、使用できる状態にある。このような物品は、続いての研削工程などを必要としないので、「ネットシェイプ」であると説明される。望ましくない量の金属が可溶性コアに浸透すれば、MMC物品の表面から金属を除去する必要があり得る(例えば研削によって)。このような物品は、「ニアネットシェイプ」と呼ばれる。いずれの場合も、ネジ山をMMC物品に機械加工する必要はない。通常、ニアネットシェイプまたはネットシェイプ物品のネジ山内に配置される繊維は、実質的に連続的である(すなわち、例えば研削によってこれらは切断されない)。
【0078】
図3A〜図3Cを参照すると、本発明に従う例示的なMMC物品を製造するための第3の例示的な方法が示される。
【0079】
図3Aを参照すると、本発明に従うモールド部品のもう1つの例示的な実施形態が示される。モールド部品310は、実質的に連続的な繊維の第1のプライ301および実質的に連続的な繊維の第2のプライ302を有する可溶性コア300を含む。第1のプライ301は、第1の溝305aおよび第2の溝305b内に配置され、これらは両方ともゼロ度のらせん角を有する。
【0080】
第2のプライ302は可溶性コア300を包み、プライ301と重なり合う(説明の目的で、第2のプライ302の一部は、第1のプライ301を現わすために除去されている)。第2のプライ302の繊維は、繊維の主軸が可溶性コア300の主軸M3と角度Aを形成するように位置合わせされる。角度Aは、ゼロ度〜90度の全てを含めた角度のいずれでもよい。いくつかの実施形態では、角度Aは約ゼロ度である(すなわち、繊維は主軸M3と実質的に平行である)。いくつかの実施形態では、角度Aは、約90度である(すなわち、繊維は、主軸M3と実質的に垂直である(すなわち、可溶性コア300を円周方向に包む))。いくつかの実施形態では、角度Aは30度〜60度、または更に40度〜50度である。
【0081】
いくつかの実施形態では、実質的に連続的な繊維の追加のプライが可溶性コアに施されてもよい。いくつかの実施形態では、追加のプライは、1つまたは複数の他のプライの全てまたは一部と重なり合ってもよい。いくつかの実施形態では、追加のプライは、可溶性コアと実質的に同一の広がりを有し得る。いくつかの実施形態では、プライは、コアの主表面の約90%よりも大きい、または約95%よりも大きい、または更に約99%よりも大きい面積を被覆することができる。いくつかの実施形態では、追加のプライは、1つまたは複数の他のプライと当接することができる。各プライは、独立して、ゼロ度〜90度の全てを含む角度のいずれかを主軸M3と形成することができる。
【0082】
図3Bを見ると、第1のMMC領域322、第2のMMC領域323、および金属領域324を含む例示的なMMC物品330が示されている。それぞれ溝305aおよび305bに対応する第1のネジ山350aおよび第2のネジ山350bを含む第1のMMC領域322は、実質的に連続的な繊維の第1のプライ301(図示せず)と、第1のプライ301に浸透した第1の金属341とを含む。同様に、第2のMMC領域323は、第2のプライ302(図示せず)と、第2のプライ302に浸透した第2の金属342とを含む。最後に、金属領域324は、第3の金属343を含む。各金属(すなわち、第1の金属341、第2の金属342、および第3の金属343)は独立して選択され、各金属は、MMC物品310を製造するために使用される1つまたは複数の他の金属と同一でも異なっていてもよい。
【0083】
図3Cを参照すると、MMC物品330のネジ領域の拡大図が示される。図3Cにおいて、MMC物品330は、封入された繊維が示されるようにシャドーラインによって示される。実質的に連続的な繊維の第1のプライ301は、ネジ山350aと位置合わせされる。実質的に連続的な繊維の第2のプライ302は、主軸M3と角度Aで位置合わせされる。一般に、第1のプライ301内の繊維は切断されておらず、ネジ山350a内で実質的に連続的なままである。
【0084】
いくつかの実施形態では、金属領域は、例えばモールドキャビティの選択によって最小限にされるか、あるいは更に、排除される。いくつかの実施形態では、追加のMMCおよび/または金属領域が形成されてもよい。各領域では、実質的に連続的な繊維および/または金属は、独立して選択される。各領域は、1つまたは複数の他の領域と同一または異なる鋳造作業において形成することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明のMMC物品は、例えば、連結発射体管、アクチュエータ部品(例えば、プッシュプル装置)、ねじり棒または部材、石油掘削管材、構造部材(例えば、宇宙船および/または航空機の管材)、および機械的な動力伝達要素として使用することができる。
【0086】
以下の特定の、しかし非限定的な実施例は、本発明を説明するのに役立つであろう。この実施例では、全ての割合は、特に断りのない限りは重量部である。
【実施例】
【0087】
工業用旋盤(ナルディーニ・レーズ(Nardini Lathe)、モデルNo.TT1230E、テキサス州ダラスのマクダウエル・マシーナリー(McDowell Machinery,Dallas,Texas)から入手可能)を用いて、22.7キログラム(50ポンド)の塩ブロック(カンザス州オーバーランドパークのノース・アメリカン・ソルト社(North American Salt Co.,Overland Park,Kansas)から入手可能)を、その元の寸法(約22センチメートル(cm)(8.5インチ(in.))×22cm(8.5インチ)×25cm(10インチ))から、シリンダ(長さ7cm(2.88インチ)×直径8cm(3.25インチ))に従来どおりに機械加工した。塩のシリンダの全長を更に機械加工して、0.43cm(0.17in)のピッチおよび0.25cm(0.10in)の深さ、1センチメートルあたり2.3個のネジ山(1インチあたり5.9個のネジ山)を有する右回りのACMEネジに対応する溝を有するネガティブな鋳造モールドを製造した。
【0088】
ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company,St.Paul,Minnesota)から入手可能な水でサイジングされたアルミナロービング材料「ネクステル(NEXTEL)610ロービング材料」の形の実質的に連続的な繊維を、溝と位置合わせして、溝が実質的に充満されるまで溝内に巻きつけた。ロービング内の個々の繊維の直径は、10〜12マイクロメートルであった。1500デニールおよび3000デニール(9000メートルあたりのグラム数)の両方のロービングを用いた。溝の約50体積%を繊維で充填し、残りの50%を繊維間の空間で満たした。
【0089】
次に、250マイクロメートル(0.010インチ)厚さのプリプレグ材料のプライをシリンダの表面に施した。60体積パーセントのα−アルミナ繊維(3Mカンパニーから商品名「ネクステル(NEXTEL)610」で入手可能、10,000デニール)と、40体積パーセントの樹脂(テキサス州ヒューストンのレゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ(Resolution Performance Products,Houston,Texas)から商品名「エポン(EPON)828」で得られる)とを含むプリプレグ材料は、カリフォルニア州ポーウェイのアルディラ社(Aldila Corp,Poway California)によって製造された。シリンダに施す際、プリプレグ材料の第1のプライの繊維は、シリンダの主軸と実質的に位置合わせした。プリプレグ材料の第2のプライの繊維は、シリンダの主軸に垂直(すなわち、プリプレグ材料の第1のプライの繊維に垂直)に位置合わせした。シリンダの外径が9.9cm(3.9インチ)になるまで、プリプレグ材料の追加のプライを交互に方向付けて(すなわち、シリンダの主軸に平行および垂直)施した。次に、ロービング材料の繊維をシリンダの主軸に垂直に位置合わせして、ロービング材料(「ネクステル610ロービング材料」)の最終プライをプリプレグ材料の外側プライ上に円周方向に巻きつけ、完全に形成されたモールド部品を得た。
【0090】
このモールド部品を、500℃に予熱した抵抗加熱オーブン(ネーバーサーム(NABERTHERM)モデルN41、デラウェア州ニューカッスルのネーバーサーム(Nabertherm,New Castle,Delaware)から得られる)内に配置した。温度を10時間500℃に保持し、次に、オーブンを消した。室温まで冷却してからコアをオーブンから取り出し、モールドセンタリング機構を、コアの中央の直径1.3cm(0.5インチ)の穴に挿入した。黒鉛るつぼ(長さ20cm(8インチ)×直径10cm(4インチ)、ペンシルベニア州トップテンのグラファイト・マシーニング社(Graphite Machining,Inc.,Topten,Pennsylvania)から入手可能)の底部にコアを配置した。約2,200グラムのアルミニウム合金(ニューヨーク州ニューヨークのベルモント・メタルズ(Belmont Metals,New York,New York)から得られるAl−6061誘導体)の固体片を鋳造アセンブリの上部に配置し、アルミニウム片内に布で包んだJ型熱電対を挿入した。Al−6061誘導体は、Mg:0.8〜1.2%と、Fe:最大(max.)0.04%と、Si:0.4〜0.8%と、その他:最大0.05%(それぞれ)、最大0.15%(合計)とを含み、残りは純粋なアルミニウムであった。
【0091】
長さ91.4cm(36インチ)×直径17.8cm(7インチ)の加圧容器(ニューハンプシャー州プレイストーのプロセス・エンジニアリング社(Process Engineering,Inc.,Plaistow,New Hampshire)から得られる)内にるつぼアセンブリを配置した。加圧容器を密封し、20パスカル(150ミリトル)まで真空に引き、鋳造アセンブリを半径方向に包囲する従来の抵抗ヒーターを用いてチャンバを約720℃まで加熱した。アルミニウム合金が約690℃の温度に到達したことを熱電対が示したら、ヒーターを消し、真空バルブを閉鎖し、加圧容器の内部を9MPa(1300psi)まで加圧して、溶融金属を実質的に連続的な繊維のプライに浸透させた。
【0092】
周囲温度まで冷却したら、加圧容器を開き、鋳造コアおよび鋳造MMC物品を加圧容器から取り出した。鋳造コアおよびMMC物品の上部にある過剰のアルミニウムを、帯鋸を用いて除去した。残りのアセンブリに、塩のほとんどが溶解するまで(約30分)蛇口の熱湯(約60℃)を流した。次に、アセンブリを液圧プレス内に置き、残りの塩コアおよび塩コアに浸透したアルミニウムを除去した。
【0093】
得られた鋳造MMC物品は、塩コア内の溝に対応する右回りのネジ山を有し、実質的に連続的な繊維は、ネジ山と実質的に位置合わせされた。
【0094】
本発明の様々な修正および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1A】本発明に従う金属マトリックス複合物品の実施形態の製造において有用な例示的な可溶性コアを説明する斜視図である。
【図1B】多数の繊維プライで包まれた図1Aの可溶性コアを含む、本発明に従う例示的なモールド部品を説明する斜視図である。
【図1C】図1Bのモールド部品を用いて鋳造され、可溶性コアが除去された後の本発明に従う例示的な金属マトリックス複合物品を説明する斜視図である。
【図1D】金属マトリックス複合物品の内側主表面にネジ山を機械加工した後の図1Cの金属マトリックス複合物品の切欠図である。
【図1E】図1Dの金属マトリックス複合物品のネジ領域の拡大図を説明する断面図である。
【図2A】本発明に従う金属マトリックス複合物品の実施形態の製造において有用な第2の例示的な可溶性コアであって、その主表面にらせん状の溝を有する可溶性コアの斜視図である。
【図2B】図2Aの可溶性コアのまわりに巻かれた繊維を含む本発明に従う第2の例示的なモールド部品であって、繊維はらせん状の溝と位置合わせされているモールド部品の斜視図である。
【図2C】図2Bのモールド部品を用いて鋳造され、可溶性コアが除去された後の本発明に従う例示的な金属マトリックス複合物品を説明する斜視図である。
【図2D】図2Cの金属マトリックス複合物品のネジ領域の拡大図である。
【図3A】本発明に従う金属マトリックス複合物品の実施形態の製造において有用な第3の例示的なモールド部品であって、可溶性コアがその主表面に形成された一連の溝を有するモールド部品の斜視図である。
【図3B】図3Aのモールド部品を用いて鋳造され、可溶性コアが除去された後の本発明に従う第3の例示的な金属マトリックス複合物品を説明する斜視図である。
【図3C】図3Bの金属マトリックス複合物品のネジ領域の拡大図である。
【図4A】単一のネジ山を有する例示的なネジ付き物品を説明する側面図である。
【図4B】同一のらせん角を有する複数の散在されたネジ山を有する例示的なネジ付き物品を説明する側面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主表面を含む金属マトリックス複合物品であって、前記第1の主表面が第1のネジ山を含み、前記第1のネジ山が第1の金属マトリックス複合体を含み、前記第1の金属マトリックス複合体が、第1の金属と、前記第1のネジ山と実質的に位置合わせされた第1の複数の実質的に連続的な繊維とを含む金属マトリックス複合物品。
【請求項2】
前記第1の複数の繊維が、金属繊維、セラミック繊維、黒鉛繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される繊維を含む、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項3】
前記第1の複数の繊維が、α−アルミナ繊維、アルミノシリケート繊維、アルミノボロシリケート繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される繊維を含む、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項4】
前記第1の主表面が、少なくとも1つの追加のネジ山を更に含む、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項5】
前記第1の主表面が、第2のネジ山を更に含む、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項6】
前記第1のネジ山のらせん角と、前記第2のネジ山のらせん角とが実質的に同一であり、かつ任意に、前記第1のネジ山および前記第2のネジ山が散在している、請求項5に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項7】
前記第2のネジ山が第2の金属を含み、任意に、前記第1の金属および前記第2の金属が同一の金属である、請求項5に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項8】
前記第2のネジ山が、第2の複数の実質的に連続的な繊維を含み、任意に、前記第1の複数の繊維および前記第2の複数の繊維が同一の材料を含む、請求項5に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項9】
第3の複数の実質的に連続的な繊維を更に含み、任意に、前記第1の複数の繊維の主軸と前記第3の複数の繊維の主軸との間の角度が30度〜60度である、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項10】
前記第1の金属が、アルミニウム、マグネシウム、およびこれらの合金からなる群から選択される、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項11】
前記第1の主表面の反対側の第2の主表面を更に含み、かつ任意に、前記第2の表面が第3のネジ山を含む、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項12】
前記第3のネジ山が、第3の金属と、任意に、前記第3のネジ山と実質的に位置合わせされた第4の複数の実質的に連続的な繊維とを含む、請求項11に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項13】
前記第1のネジ山が約0度のらせん角を有する、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項14】
第1の主表面と、前記第1の主表面の少なくとも一部に隣接する第1の複数の実質的に連続的な繊維とを有する可溶性コアを含むモールド部品。
【請求項15】
前記第1の複数の繊維が、金属繊維、セラミック繊維、黒鉛繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項14に記載のモールド部品。
【請求項16】
前記第1の複数の繊維が、アルミナ繊維、α−酸化アルミニウム繊維、アルミノシリケート繊維、アルミノボロシリケート繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項14に記載のモールド部品。
【請求項17】
前記可溶性コアが塩を含む、請求項14に記載のモールド部品。
【請求項18】
前記可溶性コアが水溶性である、請求項14に記載のモールド部品。
【請求項19】
前記第1の主表面が第1の溝を含み、任意に、前記第1の複数の繊維が前記第1の溝と実質的に位置合わせされる、請求項14に記載のモールド部品。
【請求項20】
第1の複数の実質的に連続的な繊維で包まれた第1の領域を含む第1の主表面を有する可溶性コアを提供することと、
前記第1の複数の繊維に第1の溶融金属を浸透させることと、
前記第1の金属を凝固させることと、
を含む金属マトリックス複合物品の製造方法。
【請求項21】
前記可溶性コアを除去することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記可溶性コアの除去は、前記コアが可溶性である流体に前記コアをさらすことを含み、任意に、前記流体が、水、蒸気、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の複数の繊維が、金属繊維、セラミック繊維、黒鉛繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の複数の繊維が、アルミナ繊維、α−酸化アルミニウム繊維、アルミノシリケート繊維、アルミノボロシリケート繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の溶融金属上に第2の溶融金属を施すことと、前記第2の溶融金属を凝固させることとを更に含み、かつ任意に、前記第1の溶融金属および前記第2の溶融金属が同一である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記可溶性コアの前記第1の領域に第1の溝を形成することを更に含み、かつ任意に、前記第1の複数の繊維が前記第1の溝と実質的に位置合わせされる、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記可溶性コアの前記第1の主表面が第2の領域を更に含み、任意に、前記第2の領域が前記第1の領域と少なくとも部分的に重なり合い、前記方法が、前記コアの前記第2の領域に第2の複数の実質的に連続的な繊維を施すことと、前記第2の複数の繊維に第3の溶融金属を浸透させることとを更に含み、かつ任意に、前記第1の溶融金属および前記第3の溶融金属が同一の金属である、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
ネジ山を含む内側主表面を有するシリンダを含むネジ付き物品であって、前記ネジ山が、金属と、複数の実質的に連続的な繊維とを含むネジ付き物品。
【請求項29】
前記複数の実質的に連続的な繊維が、前記ネジ山と実質的に位置合わせされる、請求項28に記載のネジ付き物品。
【請求項30】
前記金属が、アルミニウム、マグネシウムおよびこれらの合金からなる群から選択され、前記複数の実質的に連続的な繊維がα−アルミナ繊維を含む、請求項28に記載のネジ付き物品。
【請求項31】
前記複数の実質的に連続的な繊維が、200よりも大きいアスペクト比を有する、請求項28に記載のネジ付き物品。
【請求項32】
前記複数の実質的に連続的な繊維が、少なくとも5センチメートルの平均長さを有する、請求項28に記載のネジ付き物品。
【請求項1】
第1の主表面を含む金属マトリックス複合物品であって、前記第1の主表面が第1のネジ山を含み、前記第1のネジ山が第1の金属マトリックス複合体を含み、前記第1の金属マトリックス複合体が、第1の金属と、前記第1のネジ山と実質的に位置合わせされた第1の複数の実質的に連続的な繊維とを含む金属マトリックス複合物品。
【請求項2】
前記第1の複数の繊維が、金属繊維、セラミック繊維、黒鉛繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される繊維を含む、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項3】
前記第1の複数の繊維が、α−アルミナ繊維、アルミノシリケート繊維、アルミノボロシリケート繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される繊維を含む、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項4】
前記第1の主表面が、少なくとも1つの追加のネジ山を更に含む、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項5】
前記第1の主表面が、第2のネジ山を更に含む、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項6】
前記第1のネジ山のらせん角と、前記第2のネジ山のらせん角とが実質的に同一であり、かつ任意に、前記第1のネジ山および前記第2のネジ山が散在している、請求項5に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項7】
前記第2のネジ山が第2の金属を含み、任意に、前記第1の金属および前記第2の金属が同一の金属である、請求項5に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項8】
前記第2のネジ山が、第2の複数の実質的に連続的な繊維を含み、任意に、前記第1の複数の繊維および前記第2の複数の繊維が同一の材料を含む、請求項5に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項9】
第3の複数の実質的に連続的な繊維を更に含み、任意に、前記第1の複数の繊維の主軸と前記第3の複数の繊維の主軸との間の角度が30度〜60度である、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項10】
前記第1の金属が、アルミニウム、マグネシウム、およびこれらの合金からなる群から選択される、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項11】
前記第1の主表面の反対側の第2の主表面を更に含み、かつ任意に、前記第2の表面が第3のネジ山を含む、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項12】
前記第3のネジ山が、第3の金属と、任意に、前記第3のネジ山と実質的に位置合わせされた第4の複数の実質的に連続的な繊維とを含む、請求項11に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項13】
前記第1のネジ山が約0度のらせん角を有する、請求項1に記載の金属マトリックス複合物品。
【請求項14】
第1の主表面と、前記第1の主表面の少なくとも一部に隣接する第1の複数の実質的に連続的な繊維とを有する可溶性コアを含むモールド部品。
【請求項15】
前記第1の複数の繊維が、金属繊維、セラミック繊維、黒鉛繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項14に記載のモールド部品。
【請求項16】
前記第1の複数の繊維が、アルミナ繊維、α−酸化アルミニウム繊維、アルミノシリケート繊維、アルミノボロシリケート繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項14に記載のモールド部品。
【請求項17】
前記可溶性コアが塩を含む、請求項14に記載のモールド部品。
【請求項18】
前記可溶性コアが水溶性である、請求項14に記載のモールド部品。
【請求項19】
前記第1の主表面が第1の溝を含み、任意に、前記第1の複数の繊維が前記第1の溝と実質的に位置合わせされる、請求項14に記載のモールド部品。
【請求項20】
第1の複数の実質的に連続的な繊維で包まれた第1の領域を含む第1の主表面を有する可溶性コアを提供することと、
前記第1の複数の繊維に第1の溶融金属を浸透させることと、
前記第1の金属を凝固させることと、
を含む金属マトリックス複合物品の製造方法。
【請求項21】
前記可溶性コアを除去することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記可溶性コアの除去は、前記コアが可溶性である流体に前記コアをさらすことを含み、任意に、前記流体が、水、蒸気、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の複数の繊維が、金属繊維、セラミック繊維、黒鉛繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の複数の繊維が、アルミナ繊維、α−酸化アルミニウム繊維、アルミノシリケート繊維、アルミノボロシリケート繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の溶融金属上に第2の溶融金属を施すことと、前記第2の溶融金属を凝固させることとを更に含み、かつ任意に、前記第1の溶融金属および前記第2の溶融金属が同一である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記可溶性コアの前記第1の領域に第1の溝を形成することを更に含み、かつ任意に、前記第1の複数の繊維が前記第1の溝と実質的に位置合わせされる、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記可溶性コアの前記第1の主表面が第2の領域を更に含み、任意に、前記第2の領域が前記第1の領域と少なくとも部分的に重なり合い、前記方法が、前記コアの前記第2の領域に第2の複数の実質的に連続的な繊維を施すことと、前記第2の複数の繊維に第3の溶融金属を浸透させることとを更に含み、かつ任意に、前記第1の溶融金属および前記第3の溶融金属が同一の金属である、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
ネジ山を含む内側主表面を有するシリンダを含むネジ付き物品であって、前記ネジ山が、金属と、複数の実質的に連続的な繊維とを含むネジ付き物品。
【請求項29】
前記複数の実質的に連続的な繊維が、前記ネジ山と実質的に位置合わせされる、請求項28に記載のネジ付き物品。
【請求項30】
前記金属が、アルミニウム、マグネシウムおよびこれらの合金からなる群から選択され、前記複数の実質的に連続的な繊維がα−アルミナ繊維を含む、請求項28に記載のネジ付き物品。
【請求項31】
前記複数の実質的に連続的な繊維が、200よりも大きいアスペクト比を有する、請求項28に記載のネジ付き物品。
【請求項32】
前記複数の実質的に連続的な繊維が、少なくとも5センチメートルの平均長さを有する、請求項28に記載のネジ付き物品。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【公表番号】特表2007−514867(P2007−514867A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545634(P2006−545634)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/036975
【国際公開番号】WO2005/068111
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/036975
【国際公開番号】WO2005/068111
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】
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