説明

ノルボルネン系開環共重合体水素化物からなるフィルム

【課題】防湿性、透明性のバランスに優れるフィルムを提供する。
【解決手段】炭素数14〜40の直鎖α−オレフィン存在下、ノルボルネン系単量体を開環重合して得られるノルボルネン系開環共重合体を水素化することにより得られるノルボルネン系開環共重合体水素化物からなるフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防湿性、透明性及び耐熱性のバランスに優れるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノルボルネン系開環共重合体水素化物は、光学的特性、耐候特性、電気特性などに優れているため、光学材料をはじめ種々の分野で使用されている。一方、ノルボルネン系開環共重合体水素化物は、防湿性、透明性、耐熱性、耐薬品性等の特性にも優れることから、食品や医薬品等の包装フィルムの分野において好適であることが知られている。しかし、技術の急速な進歩に従い、従来のノルボルネン系開環共重合体水素化物からなるフィルムでは、防湿性が不十分な場合があり、透明性が高く、かつ防湿性の高い成形材料が求められるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ジシクロペンタジエン系化合物由来の構造単位、テトラシクロドデセン系化合物由来の構造単位およびノルボルネン系化合物由来の構造単位を特定の割合で有する3元系ノルボルネン系開環共重合体水素化物が、防湿性、透明性、および成形性に優れていることが開示されている。
しかしながら、この3元系ノルボルネン系開環共重合体水素化物は、防湿性に優れるものの、ガラス転移温度が100℃以下と耐熱性が低く、実質的に低温環境下での使用に限定されるという問題を有していた。
【0004】
ところで、一般に、ノルボルネン系単量体とエチレンとの付加重合により得られるエチレン−ノルボルネン系付加共重合体は、ノルボルネン系開環共重合体水素化物より、透湿度が高い(即ち防湿性に劣る)傾向がある。これは、付加共重合体中に存在するエチレン鎖が原因と考えられている。
通常、ノルボルネン系単量体を開環重合する場合、α−オレフィンを分子量調整剤として用いる。α−オレフィン存在下に開環重合すると、重合体末端にα−オレフィンが結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−6985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、フィルムを構成するノルボルネン系開環共重合体水素化物の製造において、分子量調整剤として炭素数の多いα−オレフィンを用いた場合、炭素数6程度のα−オレフィンを用いて得られた重合体と比べて、重合体末端に結合するエチレン鎖の炭素数が増えるため、防湿性が低下すると予想した。
しかしながら、実際に分子量調整剤として炭素数14〜40の直鎖α−オレフィンを用いて得られたノルボルネン系開環共重合体水素化物から得られたフィルムは、透明性が維持されたまま、むしろ防湿性が向上していることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かくして、本発明によれば、炭素数14〜40の直鎖α−オレフィン存在下、ノルボルネン系単量体を開環重合して得られるノルボルネン系開環共重合体を水素化することにより得られるノルボルネン系開環共重合体水素化物からなるフィルムが提供される。
前記ノルボルネン系開環共重合体水素化物のガラス転移温度は、100〜200℃であることが好ましい。
また、本発明によれば、前記フィルムからなる包装材料、及び電子デバイス用封止材料が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いるノルボルネン系開環共重合体水素化物は、直鎖α−オレフィン存在下、ノルボルネン系単量体を開環重合して得られるノルボルネン系開環共重合体を水素化することにより得られる。
【0009】
1)ノルボルネン系開環共重合体
本発明で用いるノルボルネン系開環共重合体は、直鎖α−オレフィン存在下、ノルボルネン系単量体を開環重合して得られる。
【0010】
・ノルボルネン系単量体
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:エチリデンノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、などの2環式単量体;トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、などの3環式単量体;7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン及びその誘導体、などの4環式単量体;などが挙げられる。
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが例示でき、上記ノルボルネン系単量体は、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも耐熱性の面から、全単量体中に含まれる2環式単量体の量は、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜15重量%であり、全体量体に含まれる3環及び4環式単量体の合計量は、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは85〜100重量%である。特に耐熱性が要求される分野においては、4環式単量体4環式単量体の量は、好ましくは40〜100重量%である。
【0011】
・直鎖α−オレフィン
本発明で用いる直鎖α−オレフィンは炭素数14〜40、好ましくは炭素数20〜36のものである。これらの直鎖α−オレフィンは、通常ティグラー法など公知の方法にてエチレンより商業的に製造されているものであり、リニアレン(登録商標;出光興産社製)、ダイアレン(登録商標;三菱化学社製)等の商品名で市販されているものである。
【0012】
直鎖α−オレフィンの添加量は、ノルボルネン系単量体100モルに対して、通常0.1〜3モル、好ましくは0.3〜2モル、より好ましくは0.5〜1.5モルである。直鎖α−オレフィンの添加量が多すぎると、ノルボルネン系開環共重合体水素化物からなるフィルムの機械強度が低下したり、耐熱性が低下する恐れがある。直鎖α−オレフィンの添加量が少なすぎると、ルボルネン系開環共重合体水素化物の成形性が悪化したり、ノルボルネン系開環共重合体水素化物からなるフィルムの防湿性が悪化する恐れがある。
【0013】
・開環重合方法
ノルボルネン系単量体の開環重合は、メタセシス重合触媒を用い、公知の方法に従って行うことができる。メタセシス重合触媒としては、特に限定はなく公知のものが用いられる。具体的には、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金などから選ばれる金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒系;チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステンおよびモリブデンから選ばれる金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、助触媒の有機アルミニウム化合物とからなる触媒系;あるいは、特開平7−179575号、J.Am.Chem.Soc.,1986年,108,p.733、J.Am.Chem.Soc.,1993年,115,p.9858、およびJ.Am.Chem.Soc.,1996年,118,p.100などに開示されている公知のシュロック型やグラッブス型のリビング開環メタセシス触媒などを用いることができる。
【0014】
これらの触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。触媒の使用量は、重合条件等により適宜選択されればよいが、全単量体量に対するモル比で、通常1/1,000,000〜1/10、好ましくは、1/100,000〜1/100である。
【0015】
さらに、極性化合物を加えて、重合活性や開環重合の選択性を高めることができる。極性化合物としては、例えば、分子状酸素、アルコール、エーテル、過酸化物、カルボン酸、酸無水物、酸クロリド、エステル、ケトン、含窒素化合物、含硫黄化合物、含ハロゲン化合物、分子状ヨウ素、その他のルイス酸などが挙げられる。
含窒素化合物としては、脂肪族または芳香族第三級アミンが好ましく、具体例としては、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、α−ピコリンなどが挙げられる。これらの極性化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。その用量は、適宜選択されるが、上記触媒中の金属との比、すなわち、極性化合物/金属の比(モル比)で、通常1〜100,000、好ましくは5〜10,000の範囲である。
【0016】
重合反応は、有機溶媒などの溶媒中で行ってよい。溶媒としては、重合反応に不活性なものであれば格別な制限はないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;n−ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロノナンなどの脂環族炭化水素;ジクロルエタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;などが挙げられる。
【0017】
本発明で用いるランダム共重合体を重合する形態は、格別制限はないが、一括重合法(バッチ法)、モノマー連続添加法(モノマーを連続添加して重合を進めていく方法)等が挙げられ、特にモノマー連続添加法を用いるとよりランダムな連鎖構造を有し好ましい。
【0018】
直鎖α−オレフィンの添加方法としては、溶媒に直鎖α−オレフィンを全量添加した後に、ノルボルネン系単量体を連続添加していく方法、ノルボルネン系単量体と同時に直鎖α−オレフィンを連続添加していく方法等が挙げられ、特にノルボルネン系単量体と同時に直鎖α−オレフィンを連続添加していく方法がランダムな連鎖構造を有して好ましい。
【0019】
重合温度は、通常−50℃〜250℃、好ましくは−30℃〜200℃、より好ましくは−20℃〜150℃の範囲である。重合圧力は、通常、0〜50kg/cm、好ましくは0〜20kg/cmの範囲である。重合時間は、重合条件により適宜選択されるが、通常30分〜20時間、好ましくは1〜10時間の範囲である。
【0020】
本発明で用いられるノルボルネン系開環共重合体の数平均分子量(Mn)は、通常、5,000〜100,000、好ましくは6,000〜70,000であり、より好ましくは7,000〜60,000である。重量平均分子量(Mw)は、通常、10,000〜350,000、好ましくは12,000〜245,000、より好ましくは14,000〜210,000である。分子量は、シクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定され、標準ポリイソプレン換算値として表す。分子量が、これらの範囲にあるとき機械的強度と成形性とのバランスに優れる。分子量の分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4の範囲である。
【0021】
2)ノルボルネン系開環共重合体水素化物
本発明に用いるノルボルネン系開環共重合体水素化物は、前記のノルボルネン系開環共重合体中の炭素―炭素の二重結合を水素化することによって得られる。
【0022】
・水素化触媒および水素化方法
水素化は、常法に従って、水素化触媒の存在下にノルボルネン系開環共重合体を水素と接触させて行うことができる。水素化触媒としては、特開昭58−43412号公報、特開昭60−26024号公報、特開昭64−24826号公報、特開平1−138257号公報、特開平7−41550号公報などに記載されているものを使用することができる。
触媒は均一系でも不均一系でもよい。均一系触媒は、水素化反応液中で分散しやすいので添加量が少なくてよく、また、高温高圧にしなくとも活性を有するので重合体の分解やゲル化が起こらず、低コスト性および品質安定性などに優る。不均一系触媒は、高温高圧下に高活性となり、短時間で水素化でき、さらに除去が容易であるなど、生産効率の面で優る。
【0023】
均一系触媒としては、例えば、ウィルキンソン錯体、すなわち、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I);遷移金属化合物とアルキル金属化合物の組み合わせからなる触媒、具体的には、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせが挙げられる。
【0024】
不均一系触媒としては、例えば、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh等の水素化触媒金属を担体に担持させたものが挙げられる。特に、不純物等の混入が少ないほど好ましい場合は、担体として、アルミナや珪藻土等の吸着剤を用いることが好ましい。
【0025】
水素化反応は、通常、有機溶媒中で実施する。有機溶媒としては、触媒に不活性なものであれば格別な限定はないが、生成する水素化物の溶解性に優れていることから、通常は炭化水素系溶媒が用いられる。炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロノナン等の脂環族炭化水素類;などを挙げることができ、これらの中でも、シクロヘキサノンなどの低沸点の脂環族炭化水素類が好ましい。
これらの有機溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。通常は、重合反応溶媒と同じでよく、重合反応液にそのまま水素化触媒を添加して反応させればよい。
【0026】
本発明に係るノルボルネン系開環共重合体水素化物が、芳香族環を有する繰り返し単位を有する場合には、主鎖構造中の炭素−炭素二重結合の水素化反応において、側鎖の芳香環族構造を残存させることもできるが、完全に水素化しても構わない。なお、H−NMRによる分析により、主鎖構造中の炭素−炭素二重結合は、芳香族環構造中の不飽和結合と区別して認識することができる。
【0027】
水素化反応は、常法に従って行えばよい。
水素化触媒の種類や反応温度によって水素化率は変わり、ノルボルネン系単量体が芳香族環を有する場合、芳香族環の残存率も変化させることがでる。上記の水素化触媒を用いた場合、芳香族環の不飽和結合をある程度以上残存させるためには、反応温度を低くしたり、水素圧力を下げたり、反応時間を短くする等の制御を行えばよい。
【0028】
水素化反応終了後、触媒は、遠心、ろ過等の常法にしたがって除去することができる。必要に応じて、水やアルコール等の触媒不活性化剤を利用したり、活性白土やアルミナ等の吸着剤を添加したりしてもよい。医療用器材等、残留した遷移金属が溶出するのが好ましくない用途では、実質的に遷移金属が残留しないようにする。そのような重合体水素化物を得るためには、特開平5−317411号公報などで開示されているような、特定の細孔容積と比表面積を持ったアルミナ類等の吸着剤を用いたり、重合体溶液を酸性水と純水で洗浄したりすることが好ましい。
遠心方法やろ過方法は、用いた触媒が除去できる条件であれば、特に限定されない。ろ過による除去は、簡便かつ効率的であるので好ましい。ろ過する場合、加圧ろ過しても、吸引ろ過してもよく、また、効率の点から、珪藻土、パーライト等のろ過助剤を用いることが好ましい。
【0029】
本発明に用いるノルボルネン系開環共重合体水素化物の数平均分子量は、通常、5,000〜100,000、好ましくは6,000〜70,000であり、より好ましくは7,000〜60,000である。重量平均分子量は、通常、10,000〜350,000、好ましくは12,000〜245,000、より好ましくは14,000〜210,000である。分子量は、シクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定され、標準ポリイソプレン換算値として表す。分子量が、これらの範囲にあるとき溶液安定性、機械的強度と成形性とのバランスに優れる。分子量の分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4の範囲である。
【0030】
本発明に用いるノルボルネン系開環共重合体水素化物のガラス転移温度(Tg)は、通常、100〜200℃、好ましくは110〜170℃である。Tgが低いと耐熱性が低く使用環境が制限される恐れがあり、Tgが高いと流動性が低下し成形性が悪化する恐れがある。
ノルボルネン系開環共重合体水素化物のガラス転移温度は、示差走査熱量分析計を用いてJIS K 7121に基づいて測定することができる。
【0031】
本発明に用いるノルボルネン系開環共重合体水素化物は、重合体中の主鎖二重結合の水素化率は通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上、特に好ましくは99.9%以上である。水素化率が高いと、耐熱性および防湿性に優れ、成形する際に樹脂焼けが起こり難く、特にフィルム成形する際には、ダイラインの発生を抑制することができる点で、好ましい。
ノルボルネン系開環共重合体水素化物の水素化率は、溶媒に重クロロホルムを用い、H−NMRにより測定して求めることができる。
【0032】
3)フィルム
本発明のフィルムは、前記ノルボルネン系開環共重合体水素化物を成形して得られるものである。
【0033】
本発明のフィルムには、上記ノルボルネン系開環共重合体水素化物以外に、用途分野に応じて、その他の高分子材料、各種添加剤などを配合することができる。
(1)その他の高分子材料
その他の高分子材料としては、例えば、(イ)ゴム質重合体や(ロ)その他の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0034】
イ)ゴム質重合体
ゴム質重合体としては、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム;エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体ゴム;エチレン−メチルメタクリレート、エチレン−ブチルアクリレートなどのエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;エチレン−酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどのアクリル酸アルキルエステルの重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンまたはスチレン−イソプレンのランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル−スチレン共重合体などのジエン系ゴム;ブチレン−イソプレスチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体などの芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、低結晶性ポリブタジエン樹脂、エチレン−プロピレンエラストマー、スチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系アイオノマー樹脂などを挙げることができる。
これらの熱可塑性エラストマーのうち、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体などが好ましく、具体的には、特開平2−133,406号公報、特開平2−305814号公報、特開平3−72512号公報、特開平3−74409号公報などに記載されているものを挙げることができる。
【0035】
上記成形材料が、医用容器材料として使用される場合は、スチーム滅菌(蒸気滅菌)等の加熱加圧処理時に、医用容器の透明性を低下させないことが要求されるが、ゴム質重合体を配合することにより蒸気滅菌時の白化を効果的に防ぐことができる。
その場合のゴム質重合体の配合割合は、ノルボルネン系開環共重合体水素化物100重量部に対して、通常0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜3重量部の範囲である。
【0036】
高度な耐衝撃性や柔軟性を要求される場合のゴム質重合体の配合割合はノルボルネン系開環共重合体水素化物100重量部に対して、通常0.1〜100重量部、好ましくは1〜70重量部、より好ましくは5〜50重量部の範囲である。
【0037】
(ロ)その他の熱可塑性樹脂
その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等の異種の熱可塑性樹脂、及び前記のノルボルネン系開環共重合体水素化物以外のノルボルネン系開環共重合体の水素化物などが挙げられる。
【0038】
これらのその他の熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その他の熱可塑性樹脂の配合割合は、ノルボルネン系開環共重合体水素化物100重量部に対して、通常0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜70重量部、より好ましくは1〜50重量部の範囲である。
【0039】
(2)各種添加剤
必要に応じて配合される添加剤としては、適用する用途分野で一般的に使用されているものであれば特に制限なく用いることができる。このような添加剤としては、例えば、安定剤、滑剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、塩酸吸収剤、帯電防止剤、染料、顔料、有機または無機の充填剤、スリップ剤、防曇剤、天然油、合成油、ワックス、難燃剤、難燃助剤、相溶化剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、などが挙げられる。
【0040】
(イ)安定剤
安定剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩;フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0041】
これらの安定化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。安定化剤の配合割合は、ノルボルネン系開環共重合体水素化物100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0042】
(ロ)滑剤
滑剤としては、脂肪族アルコールのエステル、多価アルコールのエステルあるいは部分エステル等の有機化合物や無機微粒子等を用いることができる。
有機化合物としては、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート等が挙げられる。
無機微粒子としては、IA族、IIA族、IVA族、VI族、VIIA族、VIII族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、ホウ酸塩、及びそれらの含水化合物、それらを中心とする複合化合物、天然鉱物粒子を示す。無機微粒子の平均粒径は、特に制限はないが、好ましくは、0.01〜3μmである。
【0043】
これらの滑剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その滑剤の配合割合は、使用目的に応じて適宜選択されるが、例えば本発明の成形材料をフィルムとする場合の配合割合は、ノルボルネン系開環共重合体水素化物100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.005〜3重量部である。
【0044】
(ハ)有機または無機の充填剤
有機または無機の充填剤としては、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、塩基性炭酸マグネシウム、ドワマイト、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などを例示できる。これらの充填剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて添加することができる。
充填剤の配合割合は、ノルボルネン系開環共重合体水素化物100重量部に対して、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0045】
これらのその他の高分子材料や各種配合剤の添加方法は、これらの配合成分がノルボルネン系開環共重合体水素化物中で十分に分散する方法であれば格別な限定はなく、例えば、重合中の任意の過程で添加するか、あるいは溶融押出する任意の過程で添加する方法で行われる。
ゴム質重合体を配合剤とする場合には、例えば二軸混練機などでノルボルネン系開環共重合体水素化物を溶融状態で混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散混合した後に、溶媒を凝固法、キャスト法、または直接乾燥法により溶剤を除去する方法などがある。
【0046】
本発明のフィルムの成形方法としては、熱可塑性樹脂の一般的な成形方法、例えば、射出成形、押し出し成形、熱プレス成形、溶剤キャスト成形、インフレーションなどによってシートまたはフィルムに成形することができるが、成形が可能な限り特定の成形方法に限定されない。特開平4−276253号公報に記載されているように、他の樹脂との多層成形や二重壁成形を行うことにより、ガスバリア性や耐候性などをさらに高めることが可能である。
本発明のフィルムは、通常はシート状になっているが、チューブ状になっていてもよい。
【0047】
押し出し成形法もおける成形条件としては、成形機、成形材料の物性等により適宜選択すればよく、温度は通常Tg〜(Tg+250℃)、好ましくは(Tg+50〜Tg+200℃)である。
成形時の圧力は、通常0.5〜100MPa、好ましくは1〜50MPaである。
【0048】
本発明のフィルムは、必要に応じて延伸加工を行っても良い。延伸加工方法としては、ロール方式、テンター方式、及びチューブ方式のいずれの方式で行うことが出来る。延伸条件は、使用する防湿性成形材料により適宜選択すればよい。
【0049】
本発明のフィルムは、厚さが1μm〜10mm、好ましくは5μm〜5mm、より好ましくは10μm〜1mmであり、透明性、ガスバリア性、耐衝撃性、防湿性などに優れたものである。
【0050】
本発明のフィルムの厚さ100μmのフィルム換算の透湿度は、好ましくは0.85g/m・24hr以下、より好ましくは0.80g/m・24hr以下、さらに好ましくは0.75g/m・24hr以下である。尚、厚さ100μmのフィルム換算の透湿度は、厚さXμmの透湿度がYg/m・24hrであった場合、下記の式で求められる。
厚さ100μmのフィルム換算の透湿度=Y/(X/100)
【0051】
本発明のフィルムの全光線透過率は、好ましくは90%以上、より好ましくは91%以上である。尚、本発明でいう全光線透過率は、ASTM D 1003に基づいて測定したものである。
【0052】
本発明のフィルムは、防湿性、ガスバリア性、透明性、耐湿性、耐衝撃性、機械的強度、耐蒸気滅菌性、高流動性、耐薬品性等の特性に優れることから、種々の分野で用いられる。本発明のフィルムの好ましい用途としては、例えば、医療用や食品用の包装材料、電子デバイス用封止材料などが挙げられる。
【0053】
本発明のフィルムが用いられる包装材料としては、食品包装分野としては、ハム、ソーセージ、レトルト食品などに用いられる包装用部材、ブリスターパッケージ用フィルムなどの食品包装分野が挙げられる。また、医薬品包装分野としては、例えば、輸液用バッグ、密封薬袋、プレス・スルー・パッケージ、点眼薬容器等の液体、粉体、または固体の薬品容器等が例示される。特に、輸液用バッグや薬品容器等においては、従来の樹脂製のものに比べて、防湿性、透明性、耐薬品性等のほかに、耐衝撃性、機械強度、耐蒸気滅菌性に優れているという特性が活かされる。
【0054】
前記包装材料を製造する方法は、特に限定されるものではなく、例えば本発明のフィルムを対向させ、ヒートシールさせる方法を挙げることができる。ヒートシールの形態は、積層フィルムの最内層を折り重ねるか、又は、その2枚を重ね合わせて、さらにその外周の周辺端部を、例えば側面シール型、2方シール型、3方シール型、4方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型、ひだ付きシール型、平底シール型、角底シール型などのヒートシール形態などにより、シールする方法が挙げられる。
ヒートシールする方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法が挙げられる、例えば、バーシール法、回転ロールシール法、ベルトシール法、インパルスシール法、高周波シール法、超音波シール法などである。本発明の包装部材には、ワンピースタイプ、ツーピースタイプなどの注入口や、開閉用ジッパーなどを取り付けることもできる。
【0055】
本発明のフィルムが用いられる電子デバイス用封止材料としては、EL素子、液晶素子、太陽電池素子(結晶、多結晶、アモルファス等)、タッチパネル、各種電極(ITO、銅電極、錫電極、半田電極等)、ICドライバ等の封止、保護に好適に用いられるが、適用される電子デバイス用はこれに限られるものではない。
【0056】
本発明のフィルムと電子デバイスとを貼り合わせる方法としては、接着剤の塗工直後、即ち加熱炉を封止フィルムが出た直後に電子デバイスを圧着ロール等で連続的にラミネートしてもよいし、ラミネート後、更に赤外線ヒーター、誘導加熱、熱ロール等を用いて加熱を行い、インラインで接着剤層の硬化を行ってもよい。また、電子デバイスをインラインで貼り合わせず、基材フィルムと接着剤との積層体(封止フィルム)を一旦巻き取り、オフラインで加熱プレス、真空袋、真空ラミネーター等を用いて電子デバイスとの貼り合わせを行ってもよい。本発明の接着剤は、目的に応じて基材フィルムの片面或いは両面に塗工してもよく、酸等や水蒸気のバリアー性などを考慮して同種又は異種の基材フィルムと多層に貼り合わせてもよい。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。以下において、部または%は、特に断りが無い限り重量基準であり、圧力はゲージ圧力である。
【0058】
なお、各種の物性の測定は、下記の方法に従って行った。
(1)分子量
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(MWD)はシクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による、標準ポリイソプレン換算値として測定した。標準ポリイソプレンとしては、東ソー社製標準ポリイソプレン、Mw=602、1,390、3,920、8,050、13,800、22,700、58,800、71,300、109,000、280,000の計10点を用いた。
測定には、東ソー社製HLC8120GPCを用い、カラムとして東ソー社製TSKgel G5000HXL、TSKgel G4000HXLおよびTSKgel G2000HXLを3本直列に繋いで用い、流速1.0ml/分、サンプル注入量100μml、カラム温度40℃の条件で行った。
(2)水素化率
ノルボルネン系重合体における、主鎖及び環状炭化水素構造の水素化率は、H−NMRスペクトルを測定し算出した。
(3)ガラス転移温度(Tg)
Tgは示差走査熱量分析計を用いて、JIS K 7121に基づいて測定した。
(4)全光線透過率
全光線透過率は、ASTM D 1003に基づき、分光光度計を用いて測定した。
(5)透湿度
透湿度は厚さ100μmとなるよう成形したフィルムを試験片とし、JIS K 7129(A法)に基づいて、温度40℃、湿度90%RHの条件下で水蒸気透過度テスター(LYSSY社製;「L80−5000型」)を用いて測定した。透湿度の値が低いものは、水蒸気透過性が低く、防湿性が高い。
【0059】
[実施例1]
ジシクロペンタジエン(以下、DCPと略記)50重量%、テトラシクロドデセン(以下、TCDと略記)35重量%、及びメタノテトラヒドロフルオレン(以下、MTFと略記)15重量%を混合して、ノルボルネン(NB)系単量体混合物を調製した。前記ノルボルネン系単量体混合物100モルに対して、1−ドコセン(C22)を0.85モル添加して滴下用単量体混合物を調整した。
【0060】
次いで乾燥し、窒素置換した重合反応器に、前記滴下用単量体混合物を7重量部(重合に使用する単量体全量に対して1%)、シクロヘキサン1,600部、ジイソプロピルエ−テル1.3部、イソブチルアルコール0.33部、トリイソブチルアルミニウム0.84部並びに六塩化タングステン0.66%シクロヘキサン溶液30部を入れ、55℃で10分間攪拌した。
次いで、反応系を55℃に保持し、攪拌しながら、前記重合反応器中に滴下用単量体混合物693部と六塩化タングステン0.77%シクロヘキサン溶液72部を各々150分かけて連続的に滴下し、さらに滴下終了後30分間攪拌した後にイソプロピルアルコール1.0部を添加して重合反応を停止させた。ガスクロマトグラフィーによって重合反応溶液を測定したところ、モノマーの重合体への転化率は100%であった。
【0061】
次いで、上記重合体を含有する重合反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、シクロヘキサン100部および珪藻土担持ニッケル触媒(日揮化学社製;「T8400RL」、ニッケル担持率58%)2.0部を加えた。オートクレーブ内を水素で置換した後、180℃、4.5MPaの水素圧力下で6時間反応させた。
水素化反応終了後、珪藻土(昭和化学工業社製;「ラヂオライト(登録商標)♯500」)をろ過床として、加圧ろ過器(IHI社製;「フンダフィルター」)を使用し、圧力0.25MPaで加圧ろ過して、ノルボルネン系開環共重合体水素化物の無色透明な溶液を得た。
次いで、得られた溶液に、ノルボルネン系開環共重合体水素化物100重量部に対して、酸化防止剤として、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;「イルガノックス1010」)0.5部を加えて溶解させた。
この溶液を金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製、孔径0.4μm)にてろ過して異物を除去した。
【0062】
次いで、上記で得られたろ液から、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力1kPa以下で、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザー(長田製作所社製;「OSP−2」)でカッティングしてノルボルネン系開環共重合体水素化物のペレットを得た。
このノルボルネン系開環共重合体水素化物の分子量はMw=35,000、Mw/Mn=2.2であり、水素化率は99.7%、Tgは124℃であった。
【0063】
得られたペレットをスクリュー径65mmの押し出し成形機を用い、樹脂温度250℃、300mm幅でダイス・ギャップが300μmのTダイから押し出し速度20kg/時間で押し出し、厚さが100μmになるようにロールで引き取るように調整し、巻き取り速度は1.5m/分でフィルムの成膜を行った。得られたフィルムの透湿度と全光線透過率を測定した結果を表1に示した。
【0064】
[実施例2]
乾燥し、窒素置換した重合反応器に、実施例1で調製したノルボルネン系単量体混合物を7重量部(重合に使用する単量体全量に対して1%)、脱水したシクロヘキサン1,600部、ジイソプロピルエ−テル1.3部、イソブチルアルコール0.33部、トリイソブチルアルミニウム0.84部、使用するノルボルネン系単量体混合物100モルに対して0.85モルの1−ドコセン、並びに六塩化タングステン0.66%シクロヘキサン溶液30部を入れ、55℃で10分間攪拌した。
次いで、反応系を55℃に保持し、攪拌しながら、前記重合反応器中に実施例1で調整したノルボルネン系単量体混合物と六塩化タングステン0.77%シクロヘキサン溶液72部を各々150分かけて連続的に滴下し、さらに滴下終了後30分間攪拌した後にイソプロピルアルコール1.0部を添加して重合反応を停止させた。ガスクロマトグラフィーによって重合反応溶液を測定したしたところ、モノマーの重合体への転化率は100%であった。
【0065】
上記重合体を含有する重合反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、シクロヘキサン100部および珪藻土担持ニッケル触媒(日揮化学社製;「T8400RL」、ニッケル担持率58%)2.0部を加えた。オートクレーブ内を水素で置換した後、180℃、4.5MPaの水素圧力下で6時間反応させた。
水素化反応終了後、珪藻土(昭和化学工業社製;「ラヂオライト(登録商標)♯500」)をろ過床として、加圧ろ過器(石川島播磨重工社製;「フンダフィルター」)を使用し、圧力0.25MPaで加圧ろ過して、ノルボルネン系開環共重合体水素化物の無色透明な溶液を得た。
次いで、得られた溶液に、ノルボルネン系開環共重合体水素化物100重量部に対して、酸化防止剤として、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;「イルガノックス1010」)0.5部を加えて溶解させた。
この溶液を金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製、孔径0.4μm)にてろ過して異物を除去した。
【0066】
次いで、上記で得られたろ液を円筒型濃縮乾燥機(日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザー(長田製作所社製;「OSP−2」)でカッティングしてノルボルネン系開環共重合体水素化物のペレットを得た。
このノルボルネン系開環共重合体水素化物の分子量はMw=32,000、Mw/Mn=2.1であり、水素化率は99.7%、Tgは123℃であった。
【0067】
得られたペレットをスクリュー径65mmの押し出し成形機を用い、樹脂温度250℃で300mm幅でダイス・ギャップが300μmのTダイから押し出し速度20kg/時間で押し出し、厚さが100μmになるようにロールで引き取るように調整し、巻き取り速度は1.5m/分でフィルムの成膜を行った。得られたフィルムの透湿度と全光線透過率を測定した結果を表1に示した。
【0068】
[実施例3]
1−ドコセン(C22)の変わりに、1−ヘキサデセン(C16)を0.9モル用いた以外は実施例1と同様にして、ノルボルネン系開環共重合体水素化物を得た。このノルボルネン系開環共重合体水素化物の分子量はMw=32,000、Mw/Mn=2.1であり、水素化率は99.8%、Tgは125℃であった。
実施例1と同様にして厚さ100μmのフィルムを得て、得られたフィルムの透湿度と全光線透過率を測定した結果を表1に示した。
【0069】
[実施例4]
ノルボルネン系単量体混合物を、DCP40重量%、MTF20重量%、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(以下、ETDと略す)40重量%とし、1−ドコセン(C22)の変わりに、1−トリアコンテン(C30)を1.0モル用いた以外は実施例1と同様にして、ノルボルネン系開環共重合体水素化物を得た。このノルボルネン系開環共重合体水素化物の分子量はMw=29,000、Mw/Mn=2.3であり、水素化率は99.8%、Tgは118℃であった。
実施例1と同様にして厚さ100μmのフィルムを得て、得られたフィルムの透湿度と全光線透過率を測定した結果を表1に示した。
【0070】
[実施例5]
ノルボルネン系単量体混合物を、TCD40重量%、MTF60重量%とし、1−ドコセン(C22)を1.2モル用いた以外は実施例1と同様にして、ノルボルネン系開環共重合体水素化物を得た。このノルボルネン系開環共重合体水素化物の分子量はMw=35,000、Mw/Mn=2.4であり、水素化率は99.4%、Tgは152℃であった。
実施例1と同様にして厚さ100μmのフィルムを得て、得られたフィルムの透湿度と全光線透過率を測定した結果を表1に示した。
【0071】
[実施例6]
ノルボルネン系単量体混合物を、MTF90重量%、2−ノルボルネン(以下、「NB」と略記)10重量%とし、1−トリアコンテン(C30)を1.2モル用いた以外は実施例4と同様にして、ノルボルネン系開環共重合体水素化物を得た。このノルボルネン系開環共重合体水素化物の分子量はMw=34,000、Mw/Mn=2.4であり、水素化率は99.9%、Tgは132℃であった。
実施例1と同様にして厚さ100μmのフィルムを得て、得られたフィルムの透湿度と全光線透過率を測定した結果を表1に示した。
【0072】
[実施例7]
ノルボルネン系単量体混合物を、DCP70重量%、ETD30重量%とし、1−ドコセン(C22)の変わりに、C32〜C36のα−オレフィン混合物を0.6モル用いた以外は実施例1と同様にして、ノルボルネン系開環共重合体水素化物を得た。このノルボルネン系開環共重合体水素化物の分子量はMw=38,000、Mw/Mn=2.8であり、水素化率は99.4%、Tgは101℃であった。
実施例1と同様にして厚さ100μmのフィルムを得て、得られたフィルムの透湿度と全光線透過率を測定した結果を表1に示した。
【0073】
[比較例1]
1−ドコセン(C22)の変わりに、1−ヘキセン(C6)を用いた以外は実施例1と同様にして、ノルボルネン系開環共重合体水素化物を得た。このノルボルネン系開環共重合体水素化物の分子量はMw=34,000、Mw/Mn=2.3であり、水素化率は99.7%、Tgは129℃であった。
実施例1と同様にして厚さ100μmのフィルムを得て、得られたフィルムの透湿度と全光線透過率を測定した結果を表1に示した。
【0074】
[比較例2]
1−ドコセン(C22)の変わりに、1−ドデセン(C12)を用いた以外は実施例1と同様にして、ノルボルネン系開環共重合体水素化物を得た。このノルボルネン系開環共重合体水素化物の分子量はMw=34,000、Mw/Mn=2.2であり、水素化率は99.7%、Tgは128℃であった。
実施例1と同様にして厚さ100μmのフィルムを得て、得られたフィルムの透湿度と全光線透過率を測定した結果を表1に示した。
【0075】
[比較例3]
1−ドコセン(C22)の変わりに、C32〜C36のα−オレフィン混合物0.8モルを用いた以外は実施例4と同様にして、ノルボルネン系開環共重合体水素化物を得た。このノルボルネン系開環共重合体水素化の分子量はMw=33,000、Mw/Mn=2.2であり、水素化率は99.6%、Tgは114℃であった。
実施例1と同様にして厚さ100μmのフィルムを得て、得られたフィルムの透湿度と全光線透過率を測定した結果を表1に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
この結果から以下のことがわかる。
直鎖α−オレフィンの炭素数が低いと、透湿度が高くなり防湿性に劣る(比較例1、2)。
直鎖α−オレフィンの炭素数が高いと、全光線透過率が低下し、透明性に劣る(比較例3)。
本発明のノルボルネン系開環共重合体水素化物は、防湿性と透明性のバランスに優れる。(実施例1〜7)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数14〜40の直鎖α−オレフィン存在下、ノルボルネン系単量体を開環重合して得られるノルボルネン系開環共重合体を水素化することにより得られるノルボルネン系開環共重合体水素化物からなるフィルム。
【請求項2】
ノルボルネン系開環共重合体水素化物のガラス転移温度が100〜200℃であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフィルムからなる包装材料。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のフィルムからなる電子デバイス用封止材料。

【公開番号】特開2012−57122(P2012−57122A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204242(P2010−204242)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】