説明

ハイブリッドシステムの制御装置

【課題】エンジン及びモータの排熱を適切に利用して、効率良くバッテリの加熱保温を行う。
【解決手段】ハイブリッドシステムの制御装置は、モータ及びエンジンを駆動源とするハイブリッドシステムに適用される。第1切り替え手段は、バッテリとエンジンとの熱的な接続/非接続を切り替え、第2切り替え手段は、バッテリとモータとの熱的な接続/非接続を切り替える。温度検出手段は、バッテリに備わる1又は複数の端子の温度を検出する。そして、切り替え制御手段は、温度検出手段によって検出された温度、及び、ハイブリッドシステムにおける走行モードに応じて、第1切り替え手段及び第2切り替え手段に対する切り替えの制御を行う。これにより、効率良くバッテリの加熱保温を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばモータ及びエンジンを駆動源とするハイブリッドシステムを制御するための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のハイブリッドシステムは、周知のように、エンジン、車両駆動用モータ、該車両駆動用モータに給電するための蓄電装置(以下、単に「バッテリ」とも呼ぶ。)を搭載している。これらは、いずれも温度が上昇すると動作に支障を来すので、適宜なる方法にて冷却される。その一方で、バッテリの温度が或る所定温度より低いとバッテリの動作効率が悪くなる。即ち、バッテリは、適切に使用可能な固有の駆動温度帯域を有するといえる。
【0003】
このような不具合に対処するため、即ち、低温時にも好適な動作を確保するため、低温時には、バッテリを加熱する技術、あるいは、低温時には、バッテリ以外の動力源を使用する技術が提案されている。例えば以下の特許文献1乃至3に開示されている技術が提案されている。
【0004】
特許文献1には、防水シートを介して冷媒体の熱をバッテリに熱伝導して、バッテリを加熱することが提案されている。特許文献2には、自動車を走行させるための駆動モータやブレーキ等の機器で発生する当該機器の機能上有害な熱を、バッテリを加熱するための熱源とすることが提案されている。特許文献3には、バッテリにおける複数の端子の温度に応じて、バッテリとエンジンとの熱的な接続/非接続を切り替えることが提案されている。
【0005】
その他にも、本発明に関連する技術が特許文献4及び5に提案されている。特許文献4には、ハイブリッド車両における走行用モータの排熱(廃熱)を熱機関の加熱用に活用する技術が提案されている。特許文献5には、変速機に用いられる潤滑媒体の温度を速やかに上昇させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−290636号公報
【特許文献2】特開平7−329581号公報
【特許文献3】特開2008−279878号公報
【特許文献4】特開2006−321389号公報
【特許文献5】特開2006−288141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した特許文献1乃至5には、ハイブリッドシステムにおいて、エンジン及びモータの排熱を適切に利用して、効率良くバッテリの加熱保温を行うことについては記載されていない。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、エンジン及びモータの排熱を適切に利用して、効率良くバッテリの加熱保温を行うことが可能なハイブリッドシステムの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの観点では、ハイブリッドシステムの制御装置は、前記モータとの間で電力の授受を行うバッテリと前記エンジンとを熱的に接続する第1接続手段と、前記バッテリと前記モータとを熱的に接続する第2接続手段と、前記第1接続手段による、前記バッテリと前記エンジンとの熱的な接続/非接続を切り替える第1切り替え手段と、前記第2接続手段による、前記バッテリと前記モータとの熱的な接続/非接続を切り替える第2切り替え手段と、前記バッテリに備わる1又は複数の端子の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段によって検出された温度、及び、前記ハイブリッドシステムにおける走行モードに応じて、前記第1切り替え手段及び前記第2切り替え手段に対する切り替えの制御を行う切り替え制御手段と、を備える。
【0010】
上記のハイブリッドシステムの制御装置は、モータ及びエンジンを駆動源とするハイブリッドシステムに好適に適用される。第1接続手段は、バッテリとエンジンとを熱的に接続し、第2接続手段は、バッテリとモータとを熱的に接続する。第1切り替え手段は、第1接続手段による、バッテリとエンジンとの熱的な接続/非接続を切り替え、第2切り替え手段は、第2接続手段による、バッテリとモータとの熱的な接続/非接続を切り替える。温度検出手段は、バッテリに備わる1又は複数の端子の温度を検出する。そして、切り替え制御手段は、温度検出手段によって検出された温度、及び、ハイブリッドシステムにおける走行モードに応じて、第1切り替え手段及び第2切り替え手段に対する切り替えの制御を行う。これにより、効率良くバッテリの加熱保温を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るハイブリッドシステムの制御装置及びその制御対象であるハイブリッドシステムの基本的構成を示す模式図である。
【図2】実施形態に係るハイブリッドシステムの温度調整機構を示す模式図である。
【図3】実施形態に係るハイブリッドシステムの選択的熱伝導機構の具体例を示す模式図である。
【図4】実施形態に係るハイブリッドシステムの制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[装置構成]
まず、本実施形態に係るハイブリッドシステムの制御装置の構成について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0013】
図1のブロック図を参照して、本発明の実施形態に係るハイブリッドシステムの制御装置及びその制御対象であるハイブリッドシステムについて説明をする。
【0014】
図1において、ハイブリッドシステム10は、ECU(Electronic Control Unit)100、エンジン200、モータMG1、モータMG2、動力分割機構300、インバータ400、バッテリ500、及びバッテリセンサ501を備え、伝達機構21を介してハイブリッド車両20の車輪22を駆動させるシステムである。
【0015】
ECU100は、本発明に係る「切り替え制御手段」の一部の一具体例であり、ハイブリッドシステム10の動作全体を制御する電子制御ユニットとして機能するよう構成されている。具体的には、ECU100は、制御プログラムを格納した読み出し専用メモリ(Read Only Memory:ROM)及び各種データを格納する随時書き込み読み出しメモリ(Random Access Memory:RAM)等を中心とした論理演算回路として構成されている。そして、各種センサから入力信号を受ける入力ポートと、エンジン200、インバータ400、モータMG1、MG2等に備わる各種アクチュエータに制御信号を送る出力ポートとに、電気的に接続されている。
【0016】
エンジン200は、ガソリンなどの燃料の燃焼により動力を出力する内燃機関であり、運転状態を検出する各種センサから信号を入力するECU100により燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。
【0017】
モータMG1及びモータMG2は、ECU100による制御下で動作する周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ400を介してバッテリ500と電力のやりとりを行なう。インバータ400とバッテリ500とを接続する電力ラインは、インバータ400が共用する正極母線及び負極母線として構成されており、モータMG1、モータMG2のうち少なくとも一方で発電される電力を何れかのモータで消費可能となっている。したがって、バッテリ500は、モータMG1、モータMG2から生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。
【0018】
なお、以下では、モータMG1及びモータMG2の両方を指す場合、及びモータMG1及びモータMG2を区別しないで用いる場合には、「モータMG」と表記する。
【0019】
動力分割機構300は、例えば遊星歯車(プラネタリーギヤ)を採用している。歯車機構内部のプラネタリーキャリアの回転軸は、エンジン200と連結し、ピニオンギヤを通じて外周のリングギヤ及び内側のサンギヤに動力を伝達する。リングギヤ回転軸はモータMG2に直結し、ハイブリッド車両20に駆動力を伝え、サンギヤ回転軸はモータMG1に連結している。
【0020】
伝達機構21は、動力分割機構300のリングギヤの回転軸に連結されており、車輪22に駆動力を伝達可能に構成されている。
【0021】
インバータ400は、電力を交流−直流変換するよう構成され、バッテリ500とモータジェネレータMG1及びモータMG2との間で電力の授受を媒介する。
【0022】
バッテリ500は駆動時にはモータジェネレータMG1及びモータMG2を駆動することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。
【0023】
バッテリセンサ501は、バッテリ500を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(State Of Charge:SOC)を演算している。その他、バッテリ500には各種センサが設けられており(図2参照)、必要に応じてバッテリ500の状態に関するデータを通信によりECU100に出力する。
【0024】
次に、図2の模式図を参照して、実施形態に係るハイブリッドシステム10の温度調整機構について説明する。図2は、図1に示すハイブリッドシステム10のうち、特にバッテリ500及びエンジン200について詳述するための図である。なお、図2において、図1と同様の構成には同一の参照符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0025】
図2に示すように、実施形態に係るハイブリッドシステム10の温度調整機構は、バッテリ500と、エンジン200と、モータMGと、熱媒730、735と、温度検知部610、615、620、630と、選択的熱伝導機構と、ECU100と、を含んでなる。
【0026】
バッテリ500は、バッテリケース530に収容された電極体540と、この電極体540と接合されておりバッテリケース530の内外に亘って延びている正極接続端子510、負極接続端子520とを含んでなる。
【0027】
電極体540は、その動作効率を一定以上に維持可能な固有の温度帯域(言い換えれば、「駆動温度帯域」)を有する。電極体540は、所定の電力を貯蔵及び放出しできる蓄電素子であれば特に限定されないが、電極体の形状やサイズには特に制限はなく、所望の形態、サイズに構成することができる。典型的例としては、周知の全固体電池、種々の形態の一次電池(例えばリチウム一次電池、マンガン電池)、二次電池(例えばリチウム二次電池、ニッケル水素電池)、或いはキャパシタ(例えば電気二重層キャパシタ)を挙げることができる。中でも、固体電解質を用いた全固体電池が、熱伝導性が良好であること、高温度域における出力特性が良好であること、高温度域における耐劣化特性が良好であること等の理由により、特に好ましい。
【0028】
バッテリケース530は、例えば熱可塑性樹脂であるポリプロピレン樹脂から構成された直方体状の平箱構造であり、内部に電極体540の収容部を有する。これにより、電極体540が物理的に保護され、外側からの応力による変形や破損を防止することができる。ポリプロピレン樹脂は、電池を密封するために利用するラミネートフィルムとの接着性に優れ、剛性があるため、この種の電池に好ましく適用される。この他、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂などを使用することもできる。
【0029】
正極接続端子510は、例えばアルミニウム製の薄い長板形状の部材である。負極接続端子520は、例えば銅製の薄い長板形状の部材である。両極接続端子は、バッテリケース530を射出成形する際にインサート成形することによって、バッテリケース530に固定されている。
【0030】
熱媒730は、例えば冷却水であり、エンジン200と熱的に接続されている。そして、例えば燃焼に際して高温となったエンジン200の内部を熱媒730が循環することにより、エンジン200の冷却を行う。エンジン200により昇温された熱媒730は、ラジエータ(不図示)に供給されて冷却され、冷却された熱媒730は再びエンジン200に送られる。
【0031】
また、熱媒735は、例えば冷却水であり、モータMGと熱的に接続されている。そして、例えば作動することで高温となったモータMGを熱媒735が循環することにより、モータMGの冷却を行う。なお、熱媒735は、モータMG1及びモータMG2の片方と、若しくはモータMG1及びモータMG2の両方と、熱的に接続されている。
【0032】
温度検知部610、615、620、630は、本発明に係る「温度検出手段」の一具体例であり、例えば白金測温抵抗体、サーミスタ、熱電対式の温度センサである。温度検知部610は熱媒730の温度T3を、温度検知部615は熱媒735の温度T4を、温度検知部620は正極接続端子510の温度T2を、温度検知部630は負極接続端子520の温度T1を夫々検出して、その結果をECU100に夫々送信するように構成されている。
【0033】
熱媒730とバッテリ500とは、選択的熱伝導機構によって、互いの熱の授受が選択的に可能となっている。選択的熱伝導機構は、本発明に係る「第1接続手段」の一具体例である熱伝導体720と、本発明に係る「第1切り替え手段」の一部の一具体例であるスイッチ710とを含んでなる。熱伝導体720は、例えば金属のような熱伝性材料からなり、一端が熱媒730に接し他端が正極接続端子510(又は負極接続端子520)に選択的に接するように構成されており、図2中の矢印A1で示すように、両者の熱的接続状態をスイッチ710のオン(接続)/オフ(非接続)により調整可能である。スイッチ710は、ECU100によって制御される。
【0034】
また、熱媒735とバッテリ500とは、選択的熱伝導機構によって、互いの熱の授受が選択的に可能となっている。選択的熱伝導機構は、本発明に係る「第2接続手段」の一具体例である熱伝導体725と、本発明に係る「第2切り替え手段」の一部の一具体例であるスイッチ715とを含んでなる。熱伝導体725は、例えば金属のような熱伝性材料からなり、一端が熱媒735に接し他端が正極接続端子510(又は負極接続端子520)に選択的に接するように構成されており、図2中の矢印A2で示すように、両者の熱的接続状態をスイッチ715のオン(接続)/オフ(非接続)により調整可能である。スイッチ715は、ECU100によって制御される。
【0035】
ここで、図3を参照して、選択的熱伝導機構の具体例について説明する。図3は、説明の便宜上、熱媒730とバッテリ500との間で熱の授受を行う選択的熱伝導機構のみを示している。なお、図3に示すような構成は、当然、熱媒735とバッテリ500との間で熱の授受を行う選択的熱伝導機構に対しても適用できる。
【0036】
図3に示す選択的熱伝導機構の具体例では、熱伝導体720として圧電素子721が用いられている。圧電素子721は、一端には熱媒730に固定された金属板7211を、他端には金属板7212を備える。圧電素子721の両端と電気的に接続された導線7213は更にスイッチ710に接続されている。スイッチ710がオンにされて電圧が印可された圧電素子721が所定量伸びることによって、熱媒730と正極接続端子510(又は負極接続端子520)とが熱的に接続される。他方で、スイッチ710がオフにされて圧電素子721が所定量縮むことによって、熱媒730と正極接続端子510(又は負極接続端子520)とが熱的に遮断される、つまり熱的に非接続される。加えて、図3に示す選択的熱伝導機構の具体例では、バッテリケース530が断熱材550によって収納されている。これにより、電極体540からの無駄な放熱が抑制され、保温効果とともに、外部の部材の熱劣化を防止できる。
[動作方法]
次に、上述の如く構成された本実施形態に係るハイブリッドシステム10の制御装置の具体的な動作について説明する。
【0037】
本実施形態では、ECU100は、上記した温度T1〜T4と、ハイブリッドシステム10における走行モード(エンジン走行モード、HV走行モード、EV走行モード)とに応じて、エンジン200の排熱を利用したバッテリ500の加熱と、モータMGの排熱を利用したバッテリ500の加熱とを切り替える。具体的には、ECU100は、熱媒730の温度T3、熱媒735の温度T4、正極接続端子510の温度T2、及び負極接続端子520の温度T1に基づいて、スイッチ710及びスイッチ715のオン/オフを制御することで、熱伝導体720を介した熱媒730による加熱と、熱伝導体725を介した熱媒735による加熱とを切り替える。こうすることにより、効率良くバッテリ500の加熱保温を行うことが可能となる。
【0038】
なお、以下の説明では、スイッチ710のことを「スイッチ1」と表記し、スイッチ715のことを「スイッチ2」と表記する。
【0039】
図4は、実施形態に係るハイブリッドシステム10の制御装置の動作例を示すフローチャートである。当該フローチャートでは、基本的には、バッテリ500の駆動温度帯域の下限値Taと駆動温度帯域の上限値Tbとの間の温度に、バッテリ500の温度を保持すべく処理が行われる。
【0040】
図4において、ハイブリッドシステム10の始動にあたり、エンジン200がオンになる(ステップS100)。そして、ECU100がスイッチ1をオンにする(ステップS101)。これにより、熱媒730と正極接続端子510とが熱伝導体720を介して熱的に接続される。続いて、熱伝導体720から遠いがゆえに正極接続端子510よりも低温であると考えられる負極接続端子520の温度T1が、温度検知部630によって検出される。その結果を受けて、ECU100は「T1<Ta」であるか否かを判定する(ステップS102)。「T1<Ta」であると判定される場合(ステップS102:Yes)、即ち、未だバッテリ500全体が駆動温度帯域に到達していない場合、バッテリ500を加熱するべく、ハイブリッドシステム10の走行モードが「エンジン走行モード」に設定される(ステップS103)。これにより、エンジン200が燃焼により昇温し、熱伝導体720を介して、バッテリ500の電極体540が加熱される。
【0041】
他方で、「T1<Ta」でないと判定される場合、あるいは、上述のように加熱された結果「T1≧Ta」であると判定されるまで電極体540が加熱されると(ステップS102:No)、バッテリ500全体が駆動温度帯域に到達しているので、ハイブリッドシステム10の走行モードが「HV走行モード」に設定される(ステップS104)。即ち、エンジン200及びモータMG2により、ハイブリッド車両20の車輪22が駆動させられる。続いて、高負荷走行であるか否かが、例えばエンジン200の吸入空気量を検出することによって判定される(ステップS105)。ここで、高負荷走行であると判定されない場合(ステップS105:No)、即ち低負荷走行である場合、ハイブリッドシステム10の走行モードがモータMG2のみによる「EV走行モード」に設定される(ステップS106)。それに伴い、エンジン200がオフにされる(ステップS107)。
【0042】
その後、温度検知部610によって熱媒730の流路の温度T3が、温度検知部620によって正極接続端子510の温度T2が夫々検出される。その結果を受けて、ECU100は「T3≦T2」であるか否かを判定する(ステップS109)。「T3≦T2」であると判定されない場合(ステップS109:No)、加熱された電極体540から高温側の熱媒730へ放熱してしまうことはないので、熱的接続を維持したまま、高負荷走行であるか否かが再度判定される(ステップS105)。これに対して、「T3≦T2」であると判定される場合(ステップS109:Yes)、加熱された電極体540から低温側の熱媒730へ放熱してしまう。そこで、熱的接続を遮断すべく、ECU100はスイッチ1をオフにする(ステップS110)。
【0043】
続いて、温度検知部615によって熱媒735の流路の温度T4が、温度検知部620によって正極接続端子510の温度T2が夫々検出される。その結果を受けて、ECU100は「T4≦T2」であるか否かを判定する(ステップS111)。「T4≦T2」であると判定される場合(ステップS111:Yes)、ECU100は「T1≦Ta又はT2≦Ta」であるか否かを判定する(ステップS112)。言い換えれば、バッテリ500が駆動温度帯域よりも冷えてしまっていないかが判定される。「T1≦Ta又はT2≦Ta」であると判定される場合(ステップS112:Yes)、バッテリ500の温度が駆動温度帯域よりも冷えてしまっているので、「EV走行モード」は好ましくない。そこで、最初のステップに戻り(リターン)、エンジン200をオンにする(ステップS100)。他方で、「T1≦Ta又はT2≦Ta」であると判定されない場合(ステップS112:No)、バッテリ500の温度が駆動温度帯域内であると考えられるので、高負荷走行であるか否かが再度判定される(ステップS105)。
【0044】
他方、「T4≦T2」であると判定されない場合(ステップS111:No)、モータMGによってバッテリ500を加熱するべく、ECU100がスイッチ2をオンにする(ステップS120)。これにより、熱媒735と正極接続端子510とが熱伝導体725を介して熱的に接続される。続いて、温度検知部620によって正極接続端子510の温度T2が検出される。その結果を受けて、ECU100は「T2≧Tb」であるか否かを判定する(ステップS121)。「T2≧Tb」であると判定されない場合(ステップS121:No)、バッテリ500の温度が駆動温度帯域に達していないかその内であると考えられるので、熱的接続を維持したまま、「HV走行モード」に設定される(ステップS104)。
【0045】
他方で、「T2≧Tb」であると判定される場合(ステップS121:Yes)、バッテリ500の温度が駆動温度帯域を超えていると考えられるので、これ以上の加熱はバッテリ500を熱劣化させてしまう。そこで、熱的接続を遮断すべく、ECU100はスイッチ2をオフにする(ステップS122)。続いて、ECU100は「T1≦Ta又はT2≦Ta」であるか否かを判定する(ステップS123)。言い換えれば、バッテリ500が駆動温度帯域よりも冷えてしまっていないかが判定される。「T1≦Ta又はT2≦Ta」であると判定される場合(ステップS123:Yes)、バッテリ500の温度が駆動温度帯域よりも冷えてしまっているので、最初のステップに戻り(リターン)、エンジン200をオンにする(ステップS100)。他方で、「T1≦Ta又はT2≦Ta」であると判定されない場合(ステップS123:No)、バッテリ500の温度が駆動温度帯域内であると考えられるので、「HV走行モード」に設定される(ステップS104)。
【0046】
他方で、高負荷走行であると判定される場合(ステップS105:Yes)、モータMG2のみではなくエンジン200も利用した、「HV走行モード」が維持される、又は「HV走行モード」に切り替えられる(ステップS130)。それゆえ、エンジン200がオフであればオンにされる。また、温度検知部620によって正極接続端子510の温度T2が検出される。その結果を受けて、ECU100は「T2≧Tb」であるか否かを判定する(ステップS133)。ここで、「T2≧Tb」であると判定されない場合(ステップS133:No)、バッテリ500の温度が駆動温度帯域に達していないかその内であると考えられるので、熱的接続を維持したまま、高負荷走行であるか否かが再度判定される(ステップS105)。
【0047】
他方で、「T2≧Tb」であると判定される場合(ステップS133:Yes)、バッテリ500の温度が駆動温度帯域を超えていると考えられるので、これ以上の加熱はバッテリ500を熱劣化させてしまう。そこで、熱的接続を遮断すべく、ECU100はスイッチ1をオフにする(ステップS134)。続いて、高負荷走行であるか否かが判定される(ステップS135)。ここで、高負荷走行であると判定される場合(ステップS135:Yes)、「HV走行モード」が維持される(ステップS136)。そして、ECU100は「T1≦Ta」であるか否かを判定する(ステップS137)。「T1≦Ta」であると判定されない場合(ステップS137:No)、バッテリ500の温度が駆動温度帯域内であると考えられるので、引き続き「HV走行モード」が維持され、高負荷走行であるか否かが再度判定される(ステップS135)。
【0048】
他方で、「T1≦Ta」であると判定される場合(ステップS137:Yes)、バッテリ500の温度が駆動温度帯域よりも冷えてしまっているので、スイッチ1をオンにして、エンジン200によってバッテリ500を加熱し(ステップS138)、その後、高負荷走行であるか否かが再度判定される(ステップS105)。他方で、高負荷走行であると判定されない場合(ステップS135:No)、即ち低負荷走行である場合、ハイブリッドシステム10の走行モードがモータMG2のみによる「EV走行モード」に切り替えられる(ステップS140)。それに伴い、エンジン200がオフにされる(ステップS141)。この後は、上述したステップS112以降の処理行われる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係るハイブリッドシステム10の制御装置によれば、バッテリ500を駆動温度帯域に到達するまで好適に加熱し、加熱した熱は今度は好適に保持可能となる。また、伝熱性の高い正極接続端子510を加熱することで電極体540を昇温させるため(つまり、電極体540に接している正極接続端子510を介して、電極体540を昇温させるため)、バッテリ500の表面を加熱するよりも電極体540の昇温効果が高くなる。加えて、バッテリ500の表面温度が上昇しにくいため、周囲の部材の熱劣化を回避できる。
【0050】
更に、本実施形態によれば、スイッチ710、715を用いて2種類の熱媒730、735による加熱を切り替えるため、本実施形態におけるハイブリッドシステム10を、EV走行距離が長い(つまりエンジンを作動させる時間が短い)プラグインハイブリッド車両などに適用した場合にも、バッテリ500の温度を低下させずに、効率良く昇温保温することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 ハイブリッドシステム
100 ECU
200 エンジン
500 バッテリ
510 正極接続端子
520 負極接続端子
540 電極体
610、615、620、630 温度検知部
710、715 スイッチ
721 圧電素子
720、725 熱伝導体
730、735 熱媒
MG1、MG2 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ及びエンジンを駆動源とするハイブリッドシステムを制御するための制御装置であって、
前記モータとの間で電力の授受を行うバッテリと前記エンジンとを熱的に接続する第1接続手段と、
前記バッテリと前記モータとを熱的に接続する第2接続手段と、
前記第1接続手段による、前記バッテリと前記エンジンとの熱的な接続/非接続を切り替える第1切り替え手段と、
前記第2接続手段による、前記バッテリと前記モータとの熱的な接続/非接続を切り替える第2切り替え手段と、
前記バッテリに備わる1又は複数の端子の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段によって検出された温度、及び、前記ハイブリッドシステムにおける走行モードに応じて、前記第1切り替え手段及び前記第2切り替え手段に対する切り替えの制御を行う切り替え制御手段と、を備えることを特徴とするハイブリッドシステムの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−228686(P2010−228686A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80835(P2009−80835)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】