説明

ハイブリッド型建設機械

【課題】上位制御部に異常が発生しても、異常の種類に応じて下位制御部で対処できるようにすることにより、作業効率の向上を図ったハイブリッド型建設機械を提供することを課題とする。
【解決手段】内燃機関又は電動発電機の駆動力で発生される油圧によって駆動される油圧作業要素と、電動駆動される電動作業要素とを含むハイブリッド型建設機械は、油圧作業要素及び電動作業要素の駆動制御を行うための制御指令を生成する上位制御部と、上位制御部によって生成される制御指令に基づき油圧作業要素及び電動作業要素の駆動制御を行う下位制御部とを含む。下位制御部は上位制御部の異常を監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動作業要素と油圧作業要素を含むハイブリッド型建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、駆動機構の一部を電動化したハイブリッド型建設機械が提案されている。このような建設機械は、ブーム、アーム、及びバケット等の油圧作業要素を油圧駆動するための油圧ポンプを備え、この油圧ポンプを駆動するためのエンジンに減速機を介して電動発電機を接続し、電動発電機でエンジンの駆動をアシストするとともに、発電によって得る電力を蓄電器に充電している。
【0003】
また、上部旋回体を旋回させるための旋回機構の動力源として油圧モータに加えて電動機を備え、旋回機構の加速時に電動機で油圧モータの駆動をアシストし、旋回機構の減速時に電動機で回生運転を行い、発電される電力をバッテリに充電している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−103112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動発電機等の電動作業要素、油圧作業要素、又は冷却系等を制御する制御系として、上位制御部と、上位制御部で生成された駆動指令に基づいて、電動作業要素、油圧作業要素、又は冷却系等の駆動制御を行う下位制御部とを有するハイブリッド型建設機械がある。
【0006】
このようなハイブリッド型建設機械では、上位制御部が故障等の異常が発生した場合に対する対策は、特に行われていなかった。
【0007】
しかしながら、ハイブリッド型建設機械では、異常の発生した部位や異常の状態によっては、運転を停止した方が良い場合と運転を継続した方が良い場合とがある。
【0008】
そこで、本発明は、上位制御部の異常を下位制御部で検出することができ、上位制御部に異常が発生しても、異常の種類に応じて下位制御部で対処できるようにすることにより、作業効率の向上を図ったハイブリッド型建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面のハイブリッド型建設機械は、内燃機関又は電動発電機の駆動力で発生される油圧によって駆動される油圧作業要素と、電動駆動される電動作業要素とを含むハイブリッド型建設機械において、前記油圧作業要素及び前記電動作業要素の駆動制御を行うための制御指令を生成する上位制御部と、前記上位制御部によって生成される制御指令に基づき、前記油圧作業要素及び前記電動作業要素の駆動制御を行う下位制御部とを含み、前記下位制御部は、前記上位制御部の異常を監視する。
【0010】
また、前記下位制御部は、一又は複数の前記油圧作業要素、及び、一又は複数の前記電動作業要素の各々に対して配設されており、前記下位制御部の各々は、前記上位制御部の異常を検出すると、各々の制御対象である前記油圧作業要素又は前記電動作業要素の駆動態様に応じた異常時用の制御処理を実行してもよい。
【0011】
また、前記上位制御部は、前記下位制御部の各々に対応した複数の上位制御モジュールを含んでもよい。
【0012】
また、前記上位制御部は、前記上位制御モジュールのうちの一つとしてハイブリッド型建設機械の蓄電系の制御指令を生成する蓄電系上位制御モジュールを含むとともに、前記下位制御部のうちの一つは、前記蓄電系上位制御モジュールによって生成される制御指令に基づいて前記蓄電系の駆動制御を行う蓄電系下位制御部であり、前記蓄電系下位制御部は、前記蓄電系上位制御モジュールの異常を検出すると、前記蓄電系における充放電制御を所定時間経過後に停止させてもよい。
【0013】
また、前記上位制御部は、前記上位制御モジュールのうちの一つとして前記電動作業要素のうちの回転機の制御指令を生成する回転機上位制御モジュールを含むとともに、前記下位制御部のうちの一つは、前記回転機上位制御モジュールによって生成される制御指令に基づいて前記回転機の駆動制御を行う回転機下位制御部であり、前記回転機下位制御部は、前記回転機上位制御モジュールの異常を検出すると、前記回転機の駆動を停止させてもよい。
【0014】
また、前記上位制御部は、前記上位制御モジュールのうちの一つとして前記電動作業要素のうちのリフティングマグネットの制御指令を生成するリフティングマグネット上位制御モジュールを含むとともに、前記下位制御部のうちの一つは、前記リフティングマグネット上位制御モジュールによって生成される制御指令に基づいて前記リフティングマグネットの駆動制御を行うリフティングマグネット下位制御部であり、前記リフティングマグネット下位制御部は、前記リフティングマグネット上位制御モジュールの異常を検出した場合に、前記リフティングマグネットが吸引作業中である場合は、前記リフティングマグネットの吸引状態を保持し、前記リフティングマグネットが吸引作業を行っていない場合は、前記リフティングマグネットの吸引操作を禁止してもよい。
【0015】
また、前記上位制御部は、前記上位制御モジュールのうちの一つとして前記内燃機関の制御指令を生成する内燃機関上位制御モジュールを含むとともに、前記下位制御部のうちの一つは、前記内燃機関上位制御モジュールによって生成される制御指令に基づいて前記内燃機関の駆動制御を行う内燃機関下位制御部であり、
前記内燃機関下位制御部は、前記内燃機関上位制御モジュールの異常を検出すると、前記内燃機関の駆動を継続してもよい。
【0016】
また、前記ハイブリッド型建設機械の電力系統の冷却水を循環させる電動冷却ポンプの駆動制御を行う冷却系下位制御部をさらに含むとともに、前記上位制御部は、前記冷却ポンプ駆動部に前記電動冷却ポンプの駆動制御を行うための制御指令を生成する冷却系上位制御モジュールをさらに含み、前記冷却系下位制御部は、前記冷却系上位制御モジュールの異常を検出すると、前記電動冷却ポンプの駆動を継続させてもよい。
【0017】
また、前記油圧作業要素を駆動させるための油圧を生成する油圧ポンプの出力を制御する油圧ポンプ出力下位制御部をさらに含むとともに、前記上位制御部は、前記油圧ポンプ出力下位制御部に前記油圧ポンプの出力を制御するための制御指令を生成する油圧ポンプ上位制御モジュールをさらに含み、前記油圧ポンプ出力下位制御部は、前記油圧ポンプ上位制御モジュールの異常を検出すると、前記油圧ポンプの出力を所定出力まで低下させてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上位制御部の異常を下位制御部で検出することができ、上位制御部に異常が発生しても、異常の種類に応じて下位制御部で対処できるようにすることにより、作業効率の向上を図ったハイブリッド型建設機械を提供できるという特有の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1のハイブリッド型建設機械を示す側面図である。
【図2】実施の形態1のハイブリッド型建設機械の構成を表すブロック図である。
【図3】蓄電系の内部の詳細図である。
【図4】実施の形態1のハイブリッド型建設機械の電動発電機12、減速機13、及び旋回用電動機21の駆動制御系の冷却経路を示す。
【図5】実施の形態1のハイブリッド型建設機械の制御系の構成を示す図である。
【図6】実施の形態1のハイブリッド型建設機械の下位制御部による上位制御部の異常監視処理の手順を示す図である。
【図7】実施の形態3のハイブリッド型建設機械の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のハイブリッド型建設機械を適用した実施の形態について説明する。
【0021】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械を示す側面図である。
【0022】
このハイブリッド型建設機械の下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。また、上部旋回体3には、ブーム4、アーム5、及びリフティングマグネット6と、これらを油圧駆動するためのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に加えて、キャビン10及び動力源が搭載される。
【0023】
「全体構成」
図2は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の構成を表すブロック図である。この図2では、機械的動力系を二重線、高圧油圧ラインを実線、パイロットラインを破線、電気駆動・制御系を実線でそれぞれ示す。
【0024】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、ともに増力機としての減速機13の入力軸に接続されている。また、この減速機13の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
【0025】
コントロールバルブ17は、実施の形態1の建設機械における油圧系の制御を行う制御装置であり、このコントロールバルブ17には、下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続される。
【0026】
また、電動発電機12には、インバータ18A及び昇降圧コンバータ100を介して蓄電器としてのバッテリ19が接続される。このインバータ18Aと昇降圧コンバータ100との間は、DCバス110によって接続されている。そして、蓄電器19と昇降圧コンバータ100とで蓄電系を構成し、電動発電機12とインバータ18Aとで電動発電系を構成している。
【0027】
また、DCバス110には、インバータ18Bを介してリフティングマグネット6が接続されるとともに、インバータ20を介して電動作業要素としての旋回用電動機21が接続されている。DCバス110は、バッテリ19、電動発電機12、リフティングマグネット6、及び旋回用電動機21の間で電力の授受を行うために配設されている。
【0028】
DCバス110には、DCバス110の電圧値(以下、DCバス電圧値と称す)を検出するためのDCバス電圧検出部111が配設されている。検出されるDCバス電圧値は、コントローラ30に入力される。
【0029】
また、バッテリ19には、バッテリ電圧値を検出するためのバッテリ電圧検出部112と、バッテリ電流値を検出するためのバッテリ電流検出部113が配設されている。これらによって検出されるバッテリ電圧値とバッテリ電流値は、コントローラ30に入力される。
【0030】
旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。旋回用電動機21、インバータ20、レゾルバ22、及び旋回用減速機24とで負荷駆動系を構成する。
【0031】
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26C、及びボタンスイッチ26Dを含み、レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cには、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29がそれぞれ接続される。この圧力センサ29には、実施の形態1の建設機械の電気系の駆動制御を行うコントローラ30が接続されている。
【0032】
このような実施の形態1の建設機械は、エンジン11、電動発電機12、及び旋回用電動機21を動力源とするハイブリッド型建設機械である。これらの動力源は、図1に示す上部旋回体3に搭載される。以下、各部について説明する。
【0033】
「各部の構成」
エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンで構成される内燃機関であり、その出力軸は減速機13の一方の入力軸に接続される。このエンジン11は、建設機械の運転中は常時運転される。エンジン11は、ECU(Electronic Control Unit)11Aによって運転制御が行われる。
【0034】
電動発電機12は、電動(アシスト)運転及び発電運転の双方が可能な電動機であればよい。ここでは、電動発電機12として、インバータ20によって交流駆動される電動発電機を示す。この電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータで構成することができる。電動発電機12の回転軸は減速機13の他方の入力軸に接続される。
【0035】
減速機13は、2つの入力軸と1つの出力軸を有する。2つの入力軸の各々には、エンジン11の駆動軸と電動発電機12の駆動軸が接続される。また、出力軸にはメインポンプ14の駆動軸が接続される。エンジン11の負荷が大きい場合には、電動発電機12が電動(アシスト)運転を行い、電動発電機12の駆動力が減速機13の出力軸を経てメインポンプ14に伝達される。これによりエンジン11の駆動がアシストされる。一方、エンジン11の負荷が小さい場合は、エンジン11の駆動力が減速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が発電運転による発電を行う。電動発電機12の力行運転と発電運転の切り替えは、コントローラ30により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。ここで、減速機13は、エンジン11の回転を増速して電動発電機12へ伝達し、電動発電機12の回転を減速してエンジン11の回転をアシストする。
【0036】
メインポンプ14は、コントロールバルブ17に供給するための圧油を発生するポンプであり、傾転角を制御するポンプ制御部14Aを有する。このポンプ制御部14Aは、コントローラ30によって電気的に駆動され、メインポンプ14の傾転角の制御が行われる。メインポンプ14から吐出される圧油は、コントロールバルブ17を介して油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々を駆動するために供給される。
【0037】
パイロットポンプ15は、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生するポンプである。この油圧操作系の構成については後述する。
【0038】
コントロールバルブ17は、高圧油圧ラインを介して接続される下部走行体1用の油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々に供給する油圧を運転者の操作入力に応じて制御することにより、これらを油圧駆動制御する油圧制御装置である。
【0039】
インバータ18Aは、電動発電機12と昇降圧コンバータ100との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、電動発電機12の運転制御を行う。これにより、インバータ18Aが電動発電機12の力行を運転制御している際には、必要な電力をバッテリ19と昇降圧コンバータ100からDCバス110を介して電動発電機12に供給する。また、電動発電機12の回生を運転制御している際には、電動発電機12により発電された電力をDCバス110及び昇降圧コンバータ100を介してバッテリ19に充電する。
【0040】
インバータ18Bは、リフティングマグネット6と昇降圧コンバータ100との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、電磁石をオンにする際には、リフティングマグネット6へ要求された電力をDCバス110より供給する。また、電磁石をオフにする場合には、回生された電力をDCバス100に供給する。
【0041】
バッテリ19は、昇降圧コンバータ100を介してインバータ18A、18B及びインバータ20に接続されている。これにより、電動発電機12の電動(アシスト)運転と旋回用電動機21の力行運転との少なくともどちらか一方が行われている際には、電動(アシスト)運転又は力行運転に必要な電力を供給するとともに、また、電動発電機12の発電運転と旋回用電動機21の回生運転の少なくともどちらか一方が行われている際には、発電運転又は回生運転によって発生した電力を電気エネルギとして蓄積するための電源である。
【0042】
このバッテリ19の充放電制御は、バッテリ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、リフティングマグネット6の運転状態、旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づき、昇降圧コンバータ100によって行われる。この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、バッテリ電圧検出部112によって検出されるバッテリ電圧値、及びバッテリ電流検出部113によって検出されるバッテリ電流値に基づき、コントローラ30によって行われる。
【0043】
インバータ20は、旋回用電動機21と昇降圧コンバータ100との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、旋回用電動機21に対して運転制御を行う。これにより、インバータが旋回用電動機21の力行を運転制御している際には、必要な電力をバッテリ19から昇降圧コンバータ100を介して旋回用電動機21に供給する。また、旋回用電動機21が回生運転をしている際には、旋回用電動機21により発電された電力を昇降圧コンバータ100を介してバッテリ19へ充電する。
【0044】
図3は、蓄電系の内部の詳細図である。蓄電系は、一定電圧蓄電部としてのDCバス110、蓄電制御部としての昇降圧コンバータ100と変動電圧蓄電部としてのバッテリ19により構成される。
【0045】
昇降圧コンバータ100は、一側がDCバス110を介して電動発電機12、リフティングマグネット6、及び旋回用電動機21に接続されるとともに、他側がバッテリ19に接続されており、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧又は降圧を切り替える制御を行う。電動発電機12が電動(アシスト)運転を行う場合には、インバータ18Aを介して電動発電機12に電力を供給する必要があるため、DCバス電圧値を昇圧する必要がある。一方、電動発電機12が発電運転を行う場合には、発電された電力をインバータ18Aを介してバッテリ19に充電する必要があるため、DCバス電圧値を降圧する必要がある。これは、リフティングマグネット6の励磁(吸引)動作と消磁(釈放)動作、及び、旋回用電動機21の力行運転と回生運転においても同様であり、その上、電動発電機12はエンジン11の負荷状態に応じて運転状態が切り替えられ、リフティングマグネット6は、作業状態によって励磁(吸引)動作と消磁(釈放)動作が切り替えられ、さらに、旋回用電動機21は上部旋回体3の旋回動作に応じて運転状態が切り替えられるため、電動発電機12、リフティングマグネット6、及び旋回用電動機21には、いずれかが電動(アシスト)運転、励磁(吸引)動作、又は力行運転を行い、いずれかが発電運転、消磁(釈放)動作、又は回生運転を行う状況が生じうる。
【0046】
このため、昇降圧コンバータ100は、電動発電機12、リフティングマグネット6、及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値を一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。
【0047】
DCバス110は、2つのインバータ18A、18B、及び20と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、バッテリ19、電動発電機12、リフティングマグネット6、及び旋回用電動機21の間で電力の授受が可能に構成されている。
【0048】
DCバス電圧検出部111は、DCバス電圧値を検出するための電圧検出部である。検出されるDCバス電圧値はコントローラ30に入力され、このDCバス電圧値を一定の範囲内に収めるための昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
【0049】
バッテリ電圧検出部112は、バッテリ19の電圧値を検出するための電圧検出部であり、バッテリの充電状態を検出するために用いられる。検出されるバッテリ電圧値は、コントローラ30に入力され、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
【0050】
バッテリ電流検出部113は、バッテリ19の電流値を検出するための電流検出部である。バッテリ電流値は、バッテリ19から昇降圧コンバータ100に流れる電流を正の値として検出される。検出されるバッテリ電流値は、コントローラ30に入力され、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
【0051】
旋回用電動機21は、力行運転及び回生運転の双方が可能な電動機であればよく、上部旋回体3の旋回機構2を駆動するために設けられている電動作業要素である。力行運転の際には、旋回用電動機21の回転駆動力の回転力が減速機24にて増幅され、上部旋回体3が加減速制御され回転運動を行う。また、上部旋回体3の慣性回転により、減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させることができる。ここでは、旋回用電動機21として、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によりインバータ20によって交流駆動される電動機を示す。この旋回用電動機21は、例えば、磁石埋込型のIPMモータで構成することができる。これにより、より大きな誘導起電力を発生させることができるので、回生時に旋回用電動機21にて発電される電力を増大させることができる。
【0052】
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサであり、旋回用電動機21と機械的に連結することで旋回用電動機21の回転前の回転軸21Aの回転位置と、左回転又は右回転した後の回転位置との差を検出することにより、回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出するように構成されている。旋回用電動機21の回転軸21Aの回転角度を検出することにより、旋回機構2の回転角度及び回転方向が導出される。また、図2にはレゾルバ22を取り付けた形態を示すが、電動機の回転センサを有しないインバータ制御方式を用いてもよい。
【0053】
メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。このメカニカルブレーキ23は、電磁式スイッチにより制動/解除が切り替えられる。この切り替えは、コントローラ30によって行われる。
【0054】
旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を減速して旋回機構2に機械的に伝達する減速機である。これにより、力行運転の際には、旋回用電動機21の回転力を増力させ、より大きな回転力として旋回体へ伝達することができる。これとは逆に、回生運転の際には、旋回体で発生した回転数を増加させ、より多くの回転動作を旋回用電動機21に発生させることができる。
【0055】
旋回機構2は、旋回用電動機21のメカニカルブレーキ23が解除された状態で旋回可能となり、これにより、上部旋回体3が左方向又は右方向に旋回される。
【0056】
操作装置26は、旋回用電動機21、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びリフティングマグネット6を操作するための操作装置である。レバー26A、26B、ペダル26C、及びボタンスイッチ26Dは、キャビン10内の運転席の周囲に配設され、ハイブリッド型建設機械の操作者によって操作される。
【0057】
この操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)を操作者によるレバー26A、26B、及びペダル26Cの操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されるとともに、圧力センサ29によって検出される。
【0058】
なお、レバー26Aは、旋回用電動機21及びアーム5を操作するためのレバーであり、運転席の右前方に位置する。レバー26Bは、ブーム4及びリフティングマグネット6を操作するためのレバーであり、運転席の左前方に位置する。また、ペダル26Cは、下部走行体1を操作するための一対のペダルであり、運転席の足下に設けられる。なお、レバー26Bは、リフティングマグネット6の角度を操作するためのレバーであり、リフティングマグネット6の電磁石のオン/オフの切替は、後述するボタンスイッチ26Dによって操作される。
【0059】
操作装置26のレバー26A、26B、及びペダル26Cが操作されると、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17が駆動され、これにより、油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9内の油圧が制御されることによって、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びリフティングマグネット6が駆動される。
【0060】
また、説明の便宜上、図2のブロック図ではボタンスイッチ26Dを操作装置26とは独立して示すが、このボタンスイッチ26Dはレバー26Aの頂部に配設される押ボタンスイッチであり、コントローラ30に電気的に接続される。このボタンスイッチ26Dはリフティングマグネット6の電磁石のオン/オフの切替操作(励磁(吸引)又は消磁(釈放)の切替操作)を行うためのボタンスイッチである。
【0061】
なお、ボタンスイッチ26Dは、レバー26Bの頂部に配設されていてもよく、また、励磁用と消磁用のスイッチが別々にされていてもよい。励磁用と消磁用のスイッチが別々の場合は、いずれか一方をレバー26Aに配設し、他方をレバー26Bに配設してもよい。
【0062】
油圧ライン27は、油圧モータ1A及び1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダの駆動に必要な油圧をコントロールバルブに供給する。
【0063】
旋回用操作検出部としての圧力センサ29では、操作装置26に対して旋回機構2を旋回させるための操作が入力されると、この操作量を油圧ライン28内の油圧の変化として検出する。圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。これにより、操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるための操作量を的確に把握することができる。この電気信号は、コントローラ30に入力され、旋回用電動機21の駆動制御に用いられる。また、実施の形態1では、レバー操作検出部としての圧力センサを用いる形態について説明するが、操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるための操作量をそのまま電気信号で読み取るセンサを用いてもよい。
【0064】
「コントローラ30」
コントローラ30は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の駆動制御を行う主制御部としての制御装置であり、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納される駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
【0065】
コントローラ30は、圧力センサ29から入力される信号(操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるための操作量を表す信号)を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。
【0066】
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)、リフティングマグネット6の駆動制御(励磁(吸引)動作又は消磁(釈放)動作の切り替え)、及び旋回用電動機21の運転制御(力行運転又は回生運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧制御部として昇降圧コンバータ100を駆動制御することによるバッテリ19の充放電制御を行う。
【0067】
この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、バッテリ電圧検出部112によって検出されるバッテリ電圧値、及びバッテリ電流検出部113によって検出されるバッテリ電流値に基づいて行われる。
【0068】
図4は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の電動発電機12、減速機13、及び旋回用電動機21の駆動制御系の冷却経路を示す。図4は、各構成要素に冷却水が通流する順番を示しており、矢印は冷却水の通流方向を示す。
【0069】
実施の形態1のハイブリッド型建設機械は、エンジン11の冷却系統とは別に、電動発電機12、減速機13、及び旋回用電動機21を冷却するための冷却系統を有する。
【0070】
図4に示すように、この冷却系統は、タンク210内の冷却水が、冷却水ポンプ220によって送出され、ラジエタ230で冷却され、コントローラ30、電源系240、旋回用電動機21、電動発電機12、減速機13の順に循環し、タンク210に戻るように構成されている。
【0071】
冷却水ポンプ220は、コントローラ30によって駆動制御が行われるポンプ用モータ221によって駆動される。
【0072】
電源系240は、インバータ18A、18B、20、ポンプ用インバータ222、昇降圧コンバータ100、及びバッテリ19を含む。また、リフティングマグネット6自体は、空冷式であるため、この冷却系統には含まれず、リフティングマグネット6の駆動制御を行うインバータ18Bのみが冷却系統に含まれる。ここで、インバータ18A、18B、20、昇降圧コンバータ100及びコントローラ30は、防水及び防塵のため密閉構造となっている。
【0073】
図5は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の制御系の構成を示す図である。この制御系は、上位制御部としてのコントローラ30と、下位制御部40とを含む。
【0074】
上位制御部としてのコントローラ30は、電動発電機上位制御モジュール31、旋回用上位制御モジュール32、リフティングマグネット上位制御モジュール33、コンバータ上位制御モジュール34、冷却系上位制御モジュール35、エンジン上位制御モジュール36、及び油圧ポンプ上位制御モジュール37を含む。
【0075】
また、下位制御部40は、電動発電機下位制御部41、旋回用下位制御部42、リフティングマグネット下位制御部43、コンバータ下位制御部44、冷却系下位制御部45、ECU11A、及びポンプ制御部14Aを含む。
【0076】
ここで、電動発電機下位制御部41は、インバータ18Aに含まれる下位制御部であり、回転機上位制御モジュールとしての電動発電機上位制御モジュール31から伝送される制御指令に基づき、回転機のうちの一つである電動発電機12の駆動制御を行う回転機下位制御部である。
【0077】
旋回用下位制御部42は、インバータ20に含まれる下位制御部であり、回転機上位制御モジュールとしての旋回用上位制御モジュール32から伝送される制御指令に基づき、回転機のうちの一つである電動発電機12の駆動制御を行う回転機下位制御部である。
【0078】
リフティングマグネット下位制御部43は、インバータ18Bに含まれる下位制御部であり、リフティングマグネット上位制御モジュールとしてのリフティングマグネット上位制御モジュール33から伝送される制御指令に基づき、リフティングマグネット6の駆動制御を行うリフティングマグネット下位制御部である。
【0079】
コンバータ下位制御部44は、昇降圧コンバータ100に内蔵される下位制御部であり、蓄電系上位制御モジュールとしてのコンバータ上位制御モジュール34から伝送される制御指令に基づき、昇降圧コンバータ100の駆動制御を行う蓄電系下位制御部である。
【0080】
そして、コンバータ下位制御部44は、バッテリ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、リフティングマグネット6の作動状態(励磁(吸引)動作又は消磁(釈放)動作)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりバッテリ19の充放電制御を行う。
【0081】
冷却系下位制御部45は、ポンプ用インバータ222に含まれる下位制御部であり、冷却ポンプ上位制御モジュールとしての冷却系上位制御モジュール35から伝送される制御指令に基づき、ポンプ用モータ221の駆動制御を行う冷却ポンプ下位制御部である。
【0082】
ECU11Aは、内燃機関上位制御モジュールとしてのエンジン上位制御モジュール36から伝送される制御指令に基づき、エンジン11の駆動制御(運転制御)を行う内燃機関下位制御部である。
【0083】
ポンプ制御部14Aは、油圧ポンプ上位制御モジュールとしての油圧ポンプ上位制御モジュール37から伝送される制御指令に基づき、油圧ポンプ14の傾転角を制御する油圧ポンプ出力下位制御部である。
【0084】
上位制御部としてのコントローラ30に含まれる各モジュール(31〜37)は、対応する下位制御部(41〜45、11A、及び14A)に制御指令を伝送し、各下位制御部(41〜45、11A、及び14A)は、制御対象の制御を行う。具体的には下記の通りに各制御対象の駆動制御が行われる。
【0085】
「上位制御部の各モジュール及び下位制御部による駆動制御」
電動発電機上位制御モジュール31は、電動発電機下位制御部41に制御指令を伝送する。この制御指令に基づき、インバータ18A内の電動発電機下位制御部41がインバータ18Aを駆動し、これにより電動発電機下位制御部41によって電動発電機12の駆動制御が行われる。
【0086】
旋回用上位制御モジュール32は、旋回用下位制御部42に制御指令を伝送する。この制御指令に基づき、インバータ20内の旋回用下位制御部42がインバータ20を駆動し、これにより旋回用下位制御部42によって旋回用電動機21の駆動制御が行われる。
【0087】
リフティングマグネット上位制御モジュール33は、リフティングマグネット下位制御部43に制御指令を伝送する。この制御指令に基づき、インバータ18B内のリフティングマグネット下位制御部43がインバータ18Bを駆動し、これによりリフティングマグネット下位制御部43によってリフティングマグネット6の駆動制御(励磁(吸引)動作又は消磁(釈放)動作の切り替え)が行われる。
【0088】
コンバータ上位制御モジュール34は、コンバータ下位制御部44に制御指令を伝送する。この制御指令に基づき、コンバータ下位制御部44によって昇降圧コンバータ100の駆動制御(昇降圧制御)が行われる。
【0089】
冷却系上位制御モジュール35は、冷却系下位制御部45に制御指令を伝送する。この制御指令に基づき、ポンプ用インバータ222内の冷却系下位制御部45がポンプ用インバータ222を駆動し、これにより冷却系下位制御部45によってポンプ用モータ221の駆動制御が行われる。
【0090】
エンジン上位制御モジュール36は、ECU11Aに制御指令を伝送する。この制御指令に基づき、ECU11Aによってエンジン11の駆動制御が行われる。
【0091】
油圧ポンプ上位制御モジュール37は、ポンプ制御部14Aに制御指令を伝送する。この制御指令に基づき、ポンプ制御部14Aによって油圧ポンプの駆動制御(傾転角の制御による出力制御)が行われる。
【0092】
また、電動発電機上位制御モジュール31、旋回用上位制御モジュール32、リフティングマグネット上位制御モジュール33、コンバータ上位制御モジュール34、冷却系上位制御モジュール35、エンジン上位制御モジュール36、及び油圧ポンプ上位制御モジュール37は、エネルギ配分を表す情報のやりとりを行う。
【0093】
また、実施の形態1のハイブリッド型建設機械では、下位制御部は、上位制御部の異常を監視する。具体的には、次の通りの異常監視処理が行われる。
【0094】
「下位制御部による異常監視処理」
図6は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の下位制御部による上位制御部の異常監視処理の手順を示す図である。この処理手順は、下位制御部40に含まれる、電動発電機下位制御部41、旋回用下位制御部42、リフティングマグネット下位制御部43、コンバータ下位制御部44、冷却系下位制御部45、ECU11A、及びポンプ制御部14Aの各々によって行われる処理であるが、重複説明を避けるために、監視対象を「上位制御モジュール」と記し、処理主体を「下位制御部」と記す。
【0095】
ハイブリッド型建設機械の運転が開始されると、下位制御部は上位制御モジュールの監視処理を開始する(スタート)。
【0096】
下位制御部は、上位制御モジュールに異常が発生しているか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1による処理は、上位制御モジュールの異常を検出するまで繰り返し実行される。異常検出処理では、まず、予め定められたカウント値N(初期値は例えば0)のインクリメント(加算処理:たとえば+1)が周期的に実行される。そして、下位制御部は、上位制御モジュールでインクリメントにより生成されるサービスクロックを監視しておき、サービスクロックが変化しない時間が所定時間以上になった場合に、上位制御モジュールに異常が発生したと判定する。
【0097】
下位制御部は、上位制御モジュールの異常を検出すると、異常時用の制御処理を実行する(ステップS2)。この異常時用の制御処理は、上位制御モジュールに異常が発生して上位制御モジュールから制御指令が伝送されなくなった場合に、下位制御部が独自に制御対象の駆動制御を行う処理である。
【0098】
下位制御部は、ステップS2の処理が終了すると、異常監視処理を終了する(エンド)。なお、異常監視処理の終了後においても、下位制御部は、制御対象の駆動制御を継続する。
【0099】
この異常監視処理は、具体的には、各下位制御部によって以下のように実行される。
【0100】
「各下位制御部による異常時用の制御処理」
電動発電機下位制御部41は、電動発電機上位制御モジュール31からサービスクロックが伝送されない時間が所定時間以上になった場合には、電動発電機12を停止させる。電動発電機上位制御モジュール31に異常が発生した場合には、電動発電機12に要求されるアシスト量、又はエンジン11の出力の余剰分を把握することができず、電動運転と発電運転の切り替えを適切に行うことができないからである。
【0101】
旋回用下位制御部42は、旋回用上位制御モジュール32からサービスクロックが伝送されない時間が所定時間以上になった場合には、旋回用電動機21を停止させる。旋回用上位制御モジュール32に異常が発生した場合には、旋回加速に必要なトルクや減速時に必要なトルクを的確に把握することができず、力行運転と回生運転の切り替えを適切に行うことができないからである。
【0102】
リフティングマグネット下位制御部43は、リフティングマグネット上位制御モジュール33からサービスクロックが伝送されない時間が所定時間以上になった場合において、リフティングマグネット6が吸引作業中である場合は、リフティングマグネット6の吸引状態を保持する。リフティングマグネット上位制御モジュール33に異常が生じても、リフティングマグネット6で金属物を吸引している場合は、直ちに釈放せずに、吸引状態を保持し、操作者の操作に従って制御を継続する方がハイブリッド型建設機械の操作性を向上させることができるからである。
【0103】
一方、リフティングマグネット上位制御モジュール33からサービスクロックが伝送されない時間が所定時間以上になった場合において、リフティングマグネット6が吸引作業を行っていない場合は、リフティングマグネット6の吸引操作を禁止する。リフティングマグネット上位制御モジュール33に異常が生じた場合に、吸引を行っていない場合は、吸引作業を禁止させる方がハイブリッド型建設機械の操作性を向上させることができるからである。
【0104】
コンバータ下位制御部44は、コンバータ上位制御モジュール34からサービスクロックが伝送されない時間が所定時間以上になった場合には、昇降圧コンバータ100の昇降圧制御(充放電制御)を所定時間だけ許可し、所定時間の経過後に停止させる。
【0105】
コンバータ上位制御モジュール34に異常が生じた場合は、バッテリ19の最大入出力の値やバッテリ19の充電率を的確に把握することができない。また、リフティングマグネット6の吸引や釈放、旋回用電動機21の力行運転、回生運転に伴うキャパシタの充放電を行うため、所定時間経過後に停止させている。
【0106】
冷却系下位制御部45は、冷却系上位制御モジュール35からサービスクロックが伝送されない時間が所定時間以上になった場合には、ポンプ用モータ221の駆動を継続させる。冷却系上位制御モジュール35に異常が発生した場合には、冷却水温度、水圧、残量を的確に把握することができない。しかしながら、ポンプ用モータ221を直ちに停止させてしまうと、冷却系統に含まれるいずれかの要素(230、30、240、21、12、又は13)の温度が上昇してしまう可能性がある。このため、冷却系上位制御モジュール35に異常が発生しても、ポンプ用モータ221の駆動を継続させることとしたものである。
【0107】
ECU11Aは、エンジン上位制御モジュール36からサービスクロックが伝送されない時間が所定時間以上になった場合には、エンジン11の運転を無負荷時の出力で継続する。このとき、エンジン11の回転数を異常時用の回転数に変えてもよい。エンジン上位制御モジュール36に異常が発生した場合には、エンジン11に要求される出力を的確に把握することができないが、エンジン11の運転を継続させることにより、油圧ポンプ14を駆動させて、油圧作業要素の駆動を確保するためである。
【0108】
ポンプ制御部14Aは、油圧ポンプ上位制御モジュール37からサービスクロックが伝送されない時間が所定時間以上になった場合には、油圧ポンプ14の傾転角を所定の角度まで低下させる。油圧ポンプ上位制御モジュール37に異常が発生した場合には、油圧ポンプ14に要求される出力を的確に把握することができないが、油圧ポンプ14の出力をある程度低下させた状態で運転を継続させることにより、油圧作業要素の駆動を確保するためである。
【0109】
従来のハイブリッド型建設機械では、上位制御部に異常が発生すると、一切の作業を行うことができなかった。
【0110】
しかしながら、実施の形態1のハイブリッド型建設機械によれば、上位制御部に異常が発生しても、上述のように、各下位制御部(41〜45、11A、及び14A)による異常時用の制御処理が実行されるため、上位制御モジュールに異常が生じた場合でも、異常の発生箇所に応じて、駆動の停止又は継続を行うことができるため、作業効率の向上を図ったハイブリッド型建設機械を提供することができる。
【0111】
なお、以上の説明では、エンジン上位制御モジュール36及び油圧ポンプ上位制御モジュール37が下位制御部であるECU11A及びポンプ制御部14Aに制御指令を伝送し、下位制御部であるECU11A及びポンプ制御部14Aがエンジン11及び油圧ポンプ14を駆動制御する形態について説明した。
【0112】
しかしながら、エンジン11及び油圧ポンプ14の制御系については、上位制御部と下位制御部に分けなくてもよい。例えば、エンジン上位制御モジュール36の代わりにエンジン制御モジュールを備え、ECU11A自体がエンジン11の駆動制御を行い、エンジン制御モジュールは、コントローラ30に含まれる上位制御用の各モジュールとの間で、エネルギ配分に関する情報のやりとりを行うように構成してもよい。
【0113】
また、油圧ポンプ上位制御モジュール37及びポンプ制御部14Aについても同様に、必ずしも上位制御部と下位制御部に分けなくてもよい。例えば、油圧ポンプ上位制御モジュール37の代わりに油圧ポンプ制御モジュールを備え、ポンプ制御部14A自体が油圧ポンプ14の駆動制御を行い、油圧ポンプ制御モジュールは、コントローラ30に含まれる上位制御用の各モジュールとの間で、エネルギ配分に関する情報のやりとりを行うように構成してもよい。
【0114】
また、以上では、ステップS2で下位制御部が異常監視処理を終了する形態について説明したが、ステップS2が終了した後に、制御対象の駆動制御を継続しつつ、手順をステップS1にリターンするようにしてもよい。この場合、上位制御モジュールの異常状態が解消した場合には、下位制御部が上位制御モジュールから伝送される制御指令に基づく駆動制御を行う通常時の制御状態に復帰させるようにしてもよい。
【0115】
なお、以上の説明では、ハイブリッド型建設機械がリフティングマグネット6を備える形態について説明したが、ハイブリッド型建設機械は、リフティングマグネット6の代わりにバケットを備えるものであってもよい。この場合は、リフティングマグネット6についての異常時用の制御処理は不要になる。
【0116】
[実施の形態2]
実施の形態2のハイブリッド型建設機械は、上位制御モジュールの異常を検出する手法が実施の形態1のハイブリッド型建設機械と異なる。
【0117】
実施の形態2のハイブリッド型建設機械の下位制御部は、上位制御モジュールから伝送されるサービスクロックを監視するのではなく、上位制御モジュールから伝送される制御指令の値に基づいて異常を検出する点が実施の形態1のハイブリッド型建設機械と異なる。
【0118】
具体的には、電動発電機下位制御部41、旋回用下位制御部42、リフティングマグネット下位制御部43、コンバータ下位制御部44、冷却系下位制御部45、ECU11A、及びポンプ制御部14Aの各々が、電動発電機上位制御モジュール31、旋回用上位制御モジュール32、リフティングマグネット上位制御モジュール33、冷却系上位制御モジュール35、エンジン上位制御モジュール36、及び油圧ポンプ上位制御モジュール37から伝送される制御指令の値が異常であるか否かを判定するために下限値としての閾値1と、上限値としての閾値2を保持し、制御指令が閾値1から閾値2の範囲内でなくなった場合に、各上位制御モジュールの異常であると判定する。
【0119】
異常を検出した後の異常時用の制御処理は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械と同一であるため、説明を省略する。
【0120】
このように、実施の形態2のハイブリッド型建設機械によれば、上位制御モジュールから伝送される制御指令の値を下位制御部で監視し、上位制御部の異常を検出した場合には、各下位制御部(41〜45、11A、及び14A)による異常時用の制御処理を実行する。このため、上位制御モジュールに異常が生じた場合でも、異常の発生箇所に応じて、駆動の停止又は継続を行うことができ、作業効率の向上を図ったハイブリッド型建設機械を提供することができる。
【0121】
[実施の形態3]
図7は、実施の形態3のハイブリッド型建設機械の構成を示すブロック図である。実施の形態3のハイブリッド型建設機械は、メインポンプ14の駆動がポンプ用電動機300によって行われ、エンジン11によって駆動されることによる電力の回収(発電運転)を行うように構成されている点が実施の形態1のハイブリッド型建設機械と異なる。その他の構成は実施の形態1のハイブリッド型建設機械と同一であるため、同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。また、電動発電機12は、ここではエンジン11によって駆動させることによる発電運転のみを行なう発電機としての機能のみを備えている。
【0122】
ポンプ用電動機300は、メインポンプ14を駆動するための力行運転だけを行うように構成されており、インバータ310を介してDCバス110に接続されている。
【0123】
このポンプ用電動機300は、コントローラ30によって駆動されるように構成されている。レバー26A〜26Cのいずれかが操作されると、ポンプ用電動機300には、DCバス110からインバータ310を介して電力が供給され、これによって力行運転が行われ、ポンプ14が駆動されて圧油が吐出される。
【0124】
実施の形態3のハイブリッド型建設機械では、電動発電機12、ポンプ用電動機300、及び旋回用電動機21には、いずれかにDCバス110を介して電力供給が行われる状況が生じうる。また、電動発電機12、及び旋回用電動機21には、いずれかからDCバス110に電力供給が行う状況が生じうる。
【0125】
実施の形態3では、昇降圧コンバータ100は、電動発電機12、ポンプ用電動機300、及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値を一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。
【0126】
DCバス110は、インバータ18A、310、及び20と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、バッテリ19、ポンプ用電動機300、及び旋回用電動機21の間で電力の授受を行う。
【0127】
このような実施の形態3のハイブリッド型建設機械における下位制御部による上位制御モジュールの異常監視処理は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械と同様に行われる。
【0128】
すなわち、電動発電機下位制御部41、旋回用下位制御部42、リフティングマグネット下位制御部43、コンバータ下位制御部44、冷却系下位制御部45、ECU11A、及びポンプ制御部14Aの各々は、電動発電機上位制御モジュール31、旋回用上位制御モジュール32、リフティングマグネット上位制御モジュール33、冷却系上位制御モジュール35、エンジン上位制御モジュール36、及び油圧ポンプ上位制御モジュール37の各々を監視し、サービスクロックを検出できない時間が所定時間以上になった場合に、上位制御モジュールに異常が発生したと判定する。
【0129】
このように、実施の形態3のシリーズ型のハイブリッド型建設機械においても、実施の形態1のハイブリッド型建設機械と同様に、下位制御部で上位制御モジュールを監視し、上位制御部の異常を検出した場合には、各下位制御部(41〜45、11A、及び14A)による異常時用の制御処理を実行する。このため、上位制御モジュールに異常が生じた場合でも、異常の発生箇所に応じて、駆動の停止又は継続を行うことができ、作業効率の向上を図ったハイブリッド型建設機械を提供することができる。
【0130】
なお、以上では、油圧ポンプ14の駆動制御系についての異常監視については、ポンプ制御部14Aが油圧ポンプ上位制御モジュール37の異常を監視することによって実現する形態について説明したが、インバータ310内に下位制御部を内蔵するとともに、上位制御部としてのコントローラ30内にポンプ用電動機300の駆動制御を行うための上位制御モジュールを含む場合には、ポンプ制御部14Aによる油圧ポンプ上位制御モジュール37の異常監視に加えて、インバータ310内に下位制御部で、コントローラ30内にポンプ用電動機300の駆動制御を行うための上位制御モジュールを監視するように構成してもよい。
【0131】
この場合、ポンプ用電動機300の駆動制御を行うための上位制御モジュールに異常が発生した場合には、インバータ310内に下位制御部でポンプ用電動機300の運転を継続するようにすればよい。
【0132】
ポンプ用電動機300を駆動させて油圧ポンプ14の出力をある程度低下させた状態で運転を継続させることにより、油圧作業要素の駆動を確保するためである。
【0133】
以上、本発明の例示的な実施の形態のハイブリッド型建設機械について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 下部走行体
1A、1B 走行機構
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 リフティングマグネット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 キャビン
11 エンジン
12 電動発電機
13 減速機
14 メインポンプ
15 パイロットポンプ
16 高圧油圧ライン
17 コントロールバルブ
18、18A、18B、20 インバータ
19 バッテリ
21 旋回用電動機
22 レゾルバ
23 メカニカルブレーキ
24 旋回減速機
25 パイロットライン
26 操作装置
26A、26B レバー
26C ペダル
26D ボタンスイッチ
27 油圧ライン
28 油圧ライン
29 圧力センサ
30 コントローラ
100 昇降圧コンバータ
110 DCバス
111 DCバス電圧検出部
112 バッテリ電圧検出部
113 バッテリ電流検出部
210 タンク
220 冷却水ポンプ
221 ポンプ用モータ
222 ポンプ用インバータ
230 ラジエタ
240 電源系
300 ポンプ用電動機
310 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関又は電動発電機の駆動力で発生される油圧によって駆動される油圧作業要素と、電動駆動される電動作業要素とを含むハイブリッド型建設機械において、
前記油圧作業要素及び前記電動作業要素の駆動制御を行うための制御指令を生成する上位制御部と、
前記上位制御部によって生成される制御指令に基づき、前記油圧作業要素及び前記電動作業要素の駆動制御を行う下位制御部と
を含み、前記下位制御部は、前記上位制御部の異常を監視する、ハイブリッド型建設機械。
【請求項2】
前記下位制御部は、一又は複数の前記油圧作業要素、及び、一又は複数の前記電動作業要素の各々に対して配設されており、
前記下位制御部の各々は、前記上位制御部の異常を検出すると、各々の制御対象である前記油圧作業要素又は前記電動作業要素の駆動態様に応じた異常時用の制御処理を実行する、請求項1に記載のハイブリッド型建設機械。
【請求項3】
前記上位制御部は、前記下位制御部の各々に対応した複数の上位制御モジュールを含む、請求項2に記載のハイブリッド型建設機械。
【請求項4】
前記上位制御部は、前記上位制御モジュールのうちの一つとしてハイブリッド型建設機械の蓄電系の制御指令を生成する蓄電系上位制御モジュールを含むとともに、前記下位制御部のうちの一つは、前記蓄電系上位制御モジュールによって生成される制御指令に基づいて前記蓄電系の駆動制御を行う蓄電系下位制御部であり、
前記蓄電系下位制御部は、前記蓄電系上位制御モジュールの異常を検出すると、前記蓄電系における充放電制御を所定時間経過後に停止させる、請求項3に記載のハイブリッド型建設機械。
【請求項5】
前記上位制御部は、前記上位制御モジュールのうちの一つとして前記電動作業要素のうちの回転機の制御指令を生成する回転機上位制御モジュールを含むとともに、前記下位制御部のうちの一つは、前記回転機上位制御モジュールによって生成される制御指令に基づいて前記回転機の駆動制御を行う回転機下位制御部であり、
前記回転機下位制御部は、前記回転機上位制御モジュールの異常を検出すると、前記回転機の駆動を停止させる、請求項3又は4に記載のハイブリッド型建設機械。
【請求項6】
前記上位制御部は、前記上位制御モジュールのうちの一つとして前記電動作業要素のうちのリフティングマグネットの制御指令を生成するリフティングマグネット上位制御モジュールを含むとともに、前記下位制御部のうちの一つは、前記リフティングマグネット上位制御モジュールによって生成される制御指令に基づいて前記リフティングマグネットの駆動制御を行うリフティングマグネット下位制御部であり、
前記リフティングマグネット下位制御部は、前記リフティングマグネット上位制御モジュールの異常を検出した場合に、前記リフティングマグネットが吸引作業中である場合は、前記リフティングマグネットの吸引状態を保持し、前記リフティングマグネットが吸引作業を行っていない場合は、前記リフティングマグネットの吸引操作を禁止する、請求項3乃至5のいずれか一項に記載のハイブリッド型建設機械。
【請求項7】
前記上位制御部は、前記上位制御モジュールのうちの一つとして前記内燃機関の制御指令を生成する内燃機関上位制御モジュールを含むとともに、前記下位制御部のうちの一つは、前記内燃機関上位制御モジュールによって生成される制御指令に基づいて前記内燃機関の駆動制御を行う内燃機関下位制御部であり、
前記内燃機関下位制御部は、前記内燃機関上位制御モジュールの異常を検出すると、前記内燃機関の駆動を継続する、請求項3乃至6のいずれか一項に記載のハイブリッド型建設機械。
【請求項8】
前記ハイブリッド型建設機械の電力系統の冷却水を循環させる電動冷却ポンプの駆動制御を行う冷却系下位制御部をさらに含むとともに、
前記上位制御部は、前記冷却ポンプ駆動部に前記電動冷却ポンプの駆動制御を行うための制御指令を生成する冷却系上位制御モジュールをさらに含み、
前記冷却系下位制御部は、前記冷却系上位制御モジュールの異常を検出すると、前記電動冷却ポンプの駆動を継続させる、請求項3乃至7のいずれか一項に記載のハイブリッド型建設機械。
【請求項9】
前記油圧作業要素を駆動させるための油圧を生成する油圧ポンプの出力を制御する油圧ポンプ出力下位制御部をさらに含むとともに、
前記上位制御部は、前記油圧ポンプ出力下位制御部に前記油圧ポンプの出力を制御するための制御指令を生成する油圧ポンプ上位制御モジュールをさらに含み、
前記油圧ポンプ出力下位制御部は、前記油圧ポンプ上位制御モジュールの異常を検出すると、前記油圧ポンプの出力を所定出力まで低下させる、請求項3乃至8のいずれか一項に記載のハイブリッド型建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−155724(P2010−155724A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273853(P2009−273853)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】