説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】モード切替可能なハイブリッド車両において、動力伝達効率の低下を抑制することができるハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】走行モードとして、EVモードと、シリーズモードと、パラレルモードと、を有するハイブリッド車両の制御装置において、SOCが高いときに、前記EVモードと、前記パラレルモードとの間で走行モードを走行状態に応じて切り替える高SOC走行状態となり、SOCが低いときに、前記シリーズモードと、前記パラレルモードとの間で走行モードを走行状態に応じて切り替える低SOC走行状態となり、高SOC走行状態ではでは、現在のバッテリ22の充電状態で、ハイブリッド車両がEVモードで走行可能な距離である予測走行可能距離L2が、所定距離L1より小さい場合、EVモードとパラレルモードとの間の切り替えを前記パラレルモードに切り替わりやすくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と電気モータとを動力源として走行可能なハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料の燃焼によりトルクを出力する内燃機関と、電力の供給によりトルクを出力する電気モータとを搭載し、この内燃機関と電気モータのトルクを車輪に伝達することで走行可能とするハイブリッド車両が知られている。このうち、車両にクラッチ機構を設け、クラッチ機構の連結または解放により、電気モータのトルクだけで車輪を駆動するEVモードと、内燃機関から出力する動力で発電機を回転させて発電し、その発電した電力を用いて電気モータを作動し、電気モータから出力されるトルクで車輪を駆動するシリーズモードと、内燃機関と電気モータの両者のトルクにより車輪を駆動するパラレルモードとの切り替えが可能であるハイブリッド車両が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、下記の特許文献1には、ハイブリッド車両において、内燃機関と電動機との間に、クラッチ機構を設け、バッテリの充電状態(State-of-Charge:以下、「SOC」と記す)、車速に応じて、走行モードの切り替えを行うEVモード、またはシリーズモードと、パラレルモードとの切替式ハイブリッド車両の制御装置が開示されている。
【0004】
さらに、バッテリのSOCが高いほど、車速が高い点で車両の走行モードをパラレルモードに切り替え、走行経路における燃料消費量を最小限に抑制することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−298805号公報
【特許文献2】特開2008−74267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のように、走行モードの切り替えを行うEVモード、またはシリーズモードと、パラレルモードとの切替式ハイブリッド車両において、パラレルモードでは、内燃機関と電気モータの両者のトルクにより車輪を駆動するため、エンジン効率が低く、動力伝達効率が高い。また、シリーズモードでは、内燃機関から出力する動力で発電機を回転させて発電させ、発電機で発生する電力によって電気モータを作動させて、車輪を駆動するため、エンジン効率が高く、動力伝達効率が低い。このため、システム全体としては、シリーズモードはパラレルモードに比べてエネルギ効率が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、モード切替可能なハイブリッド車両において、エネルギ効率の低下を抑制することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内燃機関と、内燃機関から出力される動力により発電、あるいは内燃機関を始動する第一モータジェネレータと、少なくとも駆動輪に動力を出力する第二モータジェネレータと、内燃機関および第二モータジェネレータから出力される動力を駆動輪に伝達する動力伝達機構と、第一モータジェネレータおよび第二モータジェネレータに接続され、充放電が可能なバッテリと、を備え、走行モードとして、バッテリから供給される電力によって、第二モータジェネレータから出力される動力のみで駆動輪を駆動するEVモードと、内燃機関から出力される動力で、第一モータジェネレータを回転させて発電し、その発電した電力を用いて、第二モータジェネレータを駆動し、第二モータジェネレータから出力される動力で駆動輪を駆動するシリーズモードと、内燃機関と第二モータジェネレータの両者から出力される動力により駆動輪を駆動するパラレルモードと、を有するハイブリッド車両の制御装置において、SOCが高いときに、前記EVモードと、前記パラレルモードとの間で走行モードを走行状態に応じて切り替える高SOC走行状態となり、SOCが低いときに、前記シリーズモードと、前記パラレルモードとの間で走行モードを走行状態に応じて切り替える低SOC走行状態となり、高SOC走行状態では、現在のバッテリの充電状態で、ハイブリッド車両がEVモードで走行可能な距離である予測走行可能距離が、所定距離より小さい場合、EVモードとパラレルモードとの間の切り替えを前記パラレルモードに切り替わりやすくすることを特徴とする。
【0009】
上記のハイブリッド車両の制御装置において、高SOC走行状態では、ハイブリッド車両の車速が所定の第一車速より大きくなる場合、EVモードから、パラレルモードへの切替が行われ、予測走行可能距離が、所定距離より小さい場合、前記第一車速を小さくすることが好ましい。
【0010】
上記のハイブリッド車両の制御装置において、低SOC走行状態では、ハイブリッド車両の車速が所定の第二車速より大きくなる場合、シリーズモードから、パラレルモードへの切替が行われ、バッテリの充電状態が高いほど、第二車速を小さくすることが好ましい。
【0011】
上記のハイブリッド車両の制御装置において、低SOC走行状態では、パラレルモードで駆動輪を駆動する際に、内燃機関によって駆動輪を駆動する場合における最大駆動力が、第二モータジェネレータによって駆動輪を駆動する場合における最大駆動力より小さい場合、バッテリから供給される電力によって、第二モータジェネレータを駆動することを許可することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両が高SOC走行状態でEV走行モードからパラレル走行モードに切り替えやすくなり、バッテリのSOC低下が抑制されるので、低SOC走行状態となって、シリーズモードで車両が走行する頻度が減るため、車両全体としてのエネルギ効率が良くなり、燃費が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、噛合い式クラッチの構成図である。
【図3】図3は、EVモードにおける車両の動力伝達経路図である。
【図4】図4は、シリーズモードにおける車両の動力伝達経路図である。
【図5】図5は、パラレルモードにおける車両の動力伝達経路図である。
【図6】図6は、高SOC走行状態における駆動力線図である。
【図7】図7は、高SOC走行状態においてパラレルモード領域を拡げた駆動力線図である。
【図8】図8は、低SOC走行状態における駆動力線図である。
【図9】図9は、低SOC走行状態においてパラレルモード領域を拡げた駆動力線図である。
【図10】図10は、HVECUが実行する車両制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態(以下、「実施形態」と記す)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
実施形態に係る車両の概略構成について、図1、図2を用いて説明する。図1は、車両の概略構成を示す模式図である。図2は、噛合い式クラッチの構成図である。
【0016】
図1に示すように、車両1は、駆動輪94を回転駆動して推進するために、原動機として、内燃機関10と、発電可能な電動機である第一モータジェネレータ(以下、「MG1」と称する),第二モータジェネレータ(以下、「MG2」と称する)とを備えた、いわゆる「ハイブリッド車両」である。MG1,MG2は、後述する係合機構50、動力伝達機構80と共に、駆動装置20(いわゆるハイブリッド・トランスアクスル)を構成している。駆動装置20は、内燃機関10と結合されて動力出力装置(パワープラント)を構成し、車両1に搭載されている。
【0017】
車両1には、内燃機関10及びMG1,MG2を協調して制御する制御手段として、車両用の電子制御装置(以下、「HVECU」と記す)30が設けられている。HVECU30には、各種制御装置に入力信号や、出力信号の入出力を行う入出力ポート(I/O)(図示せず)や、各種マップなどが記憶されているROM(図示せず)が設けられている。HVECU30により制御されて、車両1は、内燃機関10とMG1,MG2を原動機として併用又は選択使用することが可能に構成されている。
【0018】
内燃機関10は、燃料を燃焼させることにより燃料のエネルギを機械的仕事に変換して出力する熱機関であり、ピストン往復動機関である。内燃機関10は、図示しない燃料噴射装置、スロットル弁装置、及び各種センサ等を有しており、これら装置は、後述する内燃機関制御装置(以下、「エンジンECU」と記す)31により制御される。内燃機関10の出力軸(以下、「出力軸」と記す)11には、後述する係合機構50が結合されている。内燃機関10は、出力軸11から駆動輪94に向けて機械的動力を出力する。内燃機関10が出力軸11から出力する機械的動力(以下、「機関出力」と記す)は、後述するエンジンECU31により制御可能となっている。内燃機関10には、出力軸11の回転角位置(以下、「クランク角」と記す)を検出する図示しないクランク角センサが設けられており、クランク角に係る信号をエンジンECU31に送出している。
【0019】
エンジンECU31は、HVECU30から出力された要求出力に基づいて内燃機関10の運転制御を行うものである。具体的には、エンジンECU31は、この要求出力に基づいて、噴射信号、点火信号、開度信号などを内燃機関10に出力し、これらの出力信号によりこの内燃機関10に供給される燃料の燃料供給量や噴射タイミングなどの燃料噴射制御、図示しない点火プラグの点火制御、内燃機関10の図示しない吸気系統に設けられたスロットル弁の開度制御などが行われる。なお、エンジンECU31に入力された内燃機関10の運転状態に基づく情報、例えばクランク角センサ により検出された機関回転数などは、HVECU30に出力される。
【0020】
駆動装置20には、原動機としてMG1,MG2が設けられている。MG1及びMG2は、供給された電力を機械的動力に変換する電動機としての機能と、入力された機械的動力を電力に変換する発電機としての機能とを兼ね備えた、いわゆるモータジェネレータである。MG1は、主に発電機として用いられ、一方、MG2は、主に電動機として用いられる。
【0021】
MG1およびMG2は、同期モータであり、それぞれ回転軸61,64と、ロータ62,65と、ステータ63,66とにより構成されている。回転軸61,64には、永久磁石であるロータ62,65が複数個それぞれ固定されている。ステータ63,66は、それぞれロータ62,65と対向する位置に配置され、図示しないハウジングに固定されている。MG1,MG2には、それぞれロータ62,65の回転角位置を検出するレゾルバ(図示せず)が設けられており、ロータ62,65の回転角位置に係る信号を、後述するモータ制御装置(以下、「モータECU」と記す)32に送出している。
【0022】
また、駆動装置20には、MG1,MG2に電力を供給する電力供給装置として、インバータ21が設けられている。インバータ21は、ステータ63,66に接続されている。インバータ21は、バッテリ22から供給される直流電力を交流電力に変換して、それぞれ対応するMG1,MG2に供給することが可能に構成されている。また、MG1,MG2からの交流電力を直流電力に変換して後述するバッテリ22に回収可能に構成されている。インバータ21の電力供給及び電力回収は、後述するモータECU32により制御される。
【0023】
また、駆動装置20には、MG1,MG2を制御するためのモータECU32が設けられている。モータECU32は、HVECU30から要求トルク、及び要求回転速度に係る信号を受け、インバータ21を制御することで、MG1,MG2のそれぞれについて、ロータ62,65の回転速度(以下、「モータ回転速度」と記す)と、ロータ62,65から出力する機械的動力(以下、「モータ出力」と記す)とを調整することが可能となっている。
【0024】
また、駆動装置20には、内燃機関10及びMG1,MG2が出力した機械的動力を駆動輪94に伝達する手段として、内燃機関10とMG1と動力伝達機構80との係合状態を変更する係合機構50と、内燃機関10およびMG2から出力される機械的動力を駆動輪94に伝達する動力伝達機構80とが設けられている。
【0025】
内燃機関10と、MG1と、動力伝達機構80との機械的な接続関係を切り替える係合機構50の具体的な構成について説明する。係合機構50は、複数の係合部材51,52,53とスリーブ54とからなる噛合い式クラッチにより構成される。
【0026】
係合機構50は、図2に示すように、内燃機関10、動力伝達機構80、MG1を互いに連結、解放するものである。係合機構50は、内燃機関10とMG1とを連結し、内燃機関10と動力伝達機構80との連結を解放する第一係合状態と、内燃機関10と動力伝達機構80とを連結し、内燃機関10とMG1との連結を解放する第二係合状態とのいずれかの状態を構成するものである。係合機構50は、第一係合部材51と、第二係合部材52と、第三係合部材53と、スリーブ54とにより構成されている。
【0027】
第一係合部材51は、出力軸11に固定されるものである。第一係合部材51は、リング形状であり、例えば内周面に形成されたスプラインと、出力軸11の外周面に形成されたスプラインとがスプライン嵌合することで、出力軸11に固定される。第一係合部材51は、MG1の回転軸61に固定される第三係合部材53と第二係合部材52との間に位置する。第一係合部材51には、外周面に第一係合部材係合部51aが形成されている。第一係合部材係合部51aは、第一係合部材51の外周面から径方向外側に突出して形成されている。第一係合部材係合部51aは、第一係合部材51に対して等間隔に円周上に複数個形成されている。
【0028】
第二係合部材52は、後述する動力伝達機構80の入力軸(以下、「入力軸」と記す)81に固定されるものである。第二係合部材52は、実施形態では、ダンパ12を介して、入力軸81に固定されていることとなるが、以下の説明では、ダンパ12を省略した形で説明する。第二係合部材52は、リング形状であり、例えば内周面に形成されたスプラインと、入力軸81の外周面に形成されたスプラインとがスプライン嵌合することで、入力軸81に固定される。第二係合部材52は、第一係合部材51を挟んで第三係合部材53と対向する位置に位置する。第二係合部材52には、外周面に第二係合部材係合部52aが形成されている。第二係合部材係合部52aは、第二係合部材52の外周面から径方向外側に突出して形成されている。第二係合部材係合部52aは、第二係合部材52に対して等間隔に円周上に複数個形成されている。
【0029】
第三係合部材53は、MG1のロータ62に連結された回転軸61に固定されるものである。第三係合部材53は、リング形状であり、例えば内周面に形成されたスプラインと、回転軸61の外周面に形成されたスプラインとがスプライン嵌合することで、回転軸61に固定される。第三係合部材53は、第一係合部材51を挟んで第二係合部材52と対向する位置に位置する。第三係合部材53には、外周面に第三係合部材係合部53aが形成されている。第三係合部材係合部53aは、第三係合部材53の外周面から径方向外側に突出して形成されている。第三係合部材係合部53aは、第三係合部材53に対して等間隔に円周上に複数個形成されている。
【0030】
ここで、内燃機関10、動力伝達機構80、MG1に形成された各係合部は、同一形状に形成されている。また、内燃機関10、動力伝達機構80、MG1に形成された各係合部は、各軸の径方向における位置が同一となるように、第一係合部材51、第二係合部材52、第三係合部材53にそれぞれ形成されている。
【0031】
スリーブ54は、軸方向に移動自在に支持されている。スリーブ54は、例えば動力伝達機構80が収納されているケース(図示せず)に軸方向に移動自在に支持されている。スリーブ54は、円筒形状であり、各軸の径方向において第一係合部材51、第二係合部材52、第三係合部材53に対向するように配置されている。スリーブ54には、内周面にスリーブ側係合部が形成されている。スリーブ側係合部は、第1スリーブ側係合部54aと、第2スリーブ側係合部54bとにより構成されている。第1スリーブ側係合部54aは、スリーブ54の内周面のうち軸方向における他方の端部(図2の右側端部)に形成されている。第2スリーブ側係合部54bは、スリーブ54の内周面のうち軸方向における一方の端部(図2の左側端部)に形成されている。第1スリーブ側係合部54aおよび第2スリーブ側係合部54bは、スリーブ54の内周面から径方向内側に突出して形成されている。第1スリーブ側係合部54aおよび第2スリーブ側係合部54bは、スリーブ54に対して等間隔に円周上に複数個形成されている。
【0032】
ここで、第1スリーブ側係合部54aおよび第2スリーブ側係合部54bは、同一形状に形成されている。また、第1スリーブ側係合部54aおよび第2スリーブ側係合部54bは、各軸の径方向における位置が同一で、内燃機関10、動力伝達機構80、MG1に形成された各係合部に噛み合うことができるように、スリーブ54にそれぞれ形成されている。また、スリーブ54の第1スリーブ側係合部54aおよび第2スリーブ側係合部54bは、内燃機関10、動力伝達機構80、MG1に形成された各係合部に噛み合うことができる。第1スリーブ側係合部54aおよび第2スリーブ側係合部54bは、第1スリーブ側係合部54aが第一係合部材係合部51aと噛み合う際に、第2スリーブ側係合部54bが第二係合部材係合部52aと噛み合うように、第1スリーブ側係合部54aが第三係合部材係合部53aと噛み合う際に、第2スリーブ側係合部54bが第一係合部材係合部51aと噛み合うように、スリーブ54に形成されている。
【0033】
なお、スリーブ54は、HVECU30によって、運転者の駆動要求や、車両1の状態に応じて、係合機構50を第一係合状態または第二係合状態にするアクチュエータ70を制御することで、軸方向に移動するものである。なお、スリーブ54の軸方向への移動は、運転者の駆動要求や、車両1の状態に応じて、アクチュエータ70を制御することで行われる。また、係合機構50は、噛合い式クラッチを用いているが、内燃機関10と、動力伝達機構80と、MG1との連結または解放ができる二つの機能を備えたものであればよい。
【0034】
動力伝達機構80は、内燃機関10あるいはMG2の少なくとも一方が出力した機械的動力をデファレンシャルの回転軸(以下、「ドライブシャフト」と記す)90に伝達するものである。動力伝達機構80は、入力軸81と、エンジンカウンタギヤ82と、カウンタ軸83と、ドライブピニオン84と、MGカウンタギヤ85と、カウンタドリブンギヤ86と、デフリングギヤ87と、デファレンシャルギヤ88とにより構成されている。
【0035】
入力軸81は、係合機構50を介して、内燃機関10の機械的動力を動力伝達機構80に伝達されるものである。入力軸81の一端側には、動力伝達機構80の伝達トルクの変動を抑制する抑制機構(以下、「ダンパ」と記す)12を介して、係合機構50が連結され、他端側には、エンジンカウンタギヤ82が形成されている。
【0036】
ダンパ12は、第二係合部材52と連結し、かつ内燃機関10の機械的動力が伝達される前記動力伝達機構80の入力軸81に設けられており、内燃機関10の出力する出力トルクの変動を抑制する。また、ダンパ12は、内燃機関10の出力軸11の軸方向において、MG1の外部に設けられている。ダンパ12は、第二係合部材52と、エンジンカウンタギヤ82との間に設けられていれば良く、実施形態では、入力軸81を分断して途中に設けられている。
【0037】
エンジンカウンタギヤ82は、入力軸81に形成されており、ドライブピニオン84は、このエンジンカウンタギヤ82に噛合い、カウンタ軸83の一端側に形成されている。このカウンタ軸83の他端側には、カウンタドリブンギヤ86が形成されており、MGカウンタギヤ85は、このカウンタドリブンギヤ86に噛合い、MG2のロータ65に連結された回転軸64に形成されている。また、デフリングギヤ87は、ドライブピニオン84に噛合い、デファレンシャルギヤ88に形成されている。内燃機関10あるいは、MG2の少なくとも一方から出力される機械的動力は、動力伝達機構80、デファレンシャルギヤ88を介してドライブシャフト90に伝達され、さらにこのドライブシャフト90のそれぞれに装着された駆動輪94に伝達される。なお、駆動輪94の近傍には、駆動輪94の回転速度を検出する車輪速センサ(図示せず)が設けられており、検出した駆動輪94の回転速度に係る信号をHVECU30に送出している。
【0038】
また、車両1には、MG1,MG2に接続され、MG1、MG2に供給する電力を貯蔵し、充放電が可能なバッテリ(蓄電池)22と、バッテリ22の電圧を昇圧してインバータ21の供給電圧に変換可能な昇圧コンバータ(図示せず)が設けられている。バッテリ22は、MG1,MG2に設けられたインバータ21に、昇圧コンバータを介して電気的に接続されている。バッテリ22は、インバータ21を介して、それぞれMG1,MG2との間で充放電を行う。
【0039】
また、車両1には、バッテリ22を監視するバッテリ監視用の電子制御装置(以下、「バッテリECU」と記す)33が設けられている。バッテリECU33は、バッテリ22の温度や電圧、充放電電流値等を監視している。これらの情報からバッテリECU33は、SOC、及び充放電電力を算出している。バッテリECU33は、SOC、及びバッテリ22の充放電電力に係る信号等を、HVECU30に送出している。
【0040】
また、車両1には、運転者によるアクセルペダル(図示せず)の操作量を検出するアクセルペダルポジションセンサ100が設けられており、検出したアクセルペダルの操作量(以下、「アクセル操作量」と記す)に係る信号を、HVECU30に送出している。
【0041】
HVECU30は、クランク角センサからのクランク角及び入力軸81の回転速度に係る信号と、車輪速センサからの駆動輪94の回転速度に係る信号と、MG1,MG2にそれぞれ設けられたレゾルバからのモータ回転速度に係る信号とを検出している。また、HVECU30は、アクセルペダルポジションセンサ100からのアクセル操作量に係る信号を検出している。また、HVECU30は、バッテリECU33からのSOCに係る信号と、加速度センサ(図示せず)からの車両1の前後、上下及び左右方向の加速度に係る信号を検出している。
【0042】
これら信号に基づいて、HVECU30は、運転者の駆動要求として、例えば、アクセル操作量と車速に応じて、要求駆動力を算出し、算出された要求駆動力に応じて、内燃機関10に要求する要求出力、MG1に要求する要求トルク、MG2に要求する要求トルクを算出する。そして、エンジンECU31に要求出力、モータECU32に要求トルクを出力する。さらに、HVECU30は、運転者の駆動要求や、車両1の状態(実施形態では、要求駆動力、車速、SOC)に応じて、係合機構50を第一係合状態または第二係合状態にするアクチュエータ70を制御する。
【0043】
このように構成された車両1は、車両走行中において、内燃機関10及びMG2を原動機として併用又は選択使用し、これら原動機からの機械的動力を、動力伝達機構80によりドライブシャフト90に伝達することで、車両1を駆動することが可能となっている。また、車両1は、車両減速時においては、駆動輪94から動力伝達機構80に伝達された機械的動力を、MG2で電力に変換して、バッテリ22に回収する、いわゆる回生制動を行うことが可能となっている。
【0044】
次に、本発明にかかる係合機構50の動作について説明する。図3〜図5は、係合機構50の状態説明図である。図3は、EVモードにおける車両の動力伝達経路図である。図4は、シリーズモードにおける車両の動力伝達経路図である。図5は、パラレルモードにおける車両の動力伝達経路図である。以下に、係合機構50の動作によってなる第一係合状態と第二係合状態とを説明する。
【0045】
スリーブ54は、図3、図4に示すように、HVECU30がアクチュエータ70を制御し、スリーブ54を軸方向右側に移動させ、各第1スリーブ側係合部54aが第三係合部材53と対向し、各第2スリーブ側係合部54bが第一係合部材51と対向する第一係合状態位置に移動する。スリーブ54が第一係合状態位置に位置すると、各第1スリーブ側係合部54aと第三係合部材係合部53aとが噛み合い、スリーブ54と第三係合部材53とが連結される。さらに、各第1スリーブ側係合部54aと第一係合部材係合部51aとが解放され、スリーブ54と第一係合部材51とが解放される。
【0046】
スリーブ54が第一係合状態位置に位置すると、各第2スリーブ側係合部54bと第一係合部材係合部51aとが噛み合い、スリーブ54と第一係合部材51とが連結される。さらに、各第2スリーブ側係合部54bと第二係合部材係合部52aとが解放され、スリーブ54と第二係合部材52とが解放される。従って、係合機構50は、HVECU30がアクチュエータ70を制御し、スリーブ54を軸方向右側に移動させると、第三係合部材53、第一係合部材51およびスリーブ54を介して、出力軸11と入力軸81とが解放する第一係合状態となる。
【0047】
スリーブ54は、図5に示すように、HVECU30がアクチュエータ70を制御し、スリーブ54を軸方向左側に移動させ、各第1スリーブ側係合部54aが第一係合部材51と対向し、各第2スリーブ側係合部54bが第二係合部材52と対向する第二係合状態位置に移動する。スリーブ54が第二係合状態位置に位置すると、各第1スリーブ側係合部54aと第一係合部材係合部51aとが噛み合い、スリーブ54と第一係合部材51とが連結される。さらに、各第1スリーブ側係合部54aと第三係合部材係合部53aとが解放され、スリーブ54と第三係合部材53とが解放される。
【0048】
また、スリーブ54が第二係合状態位置に位置すると、各第2スリーブ側係合部54bと第二係合部材係合部52aとが噛み合い、スリーブ54と第二係合部材52とが連結される。さらに、各第2スリーブ側係合部54bと第一係合部材係合部51aとが解放され、スリーブ54と第一係合部材51とが解放される。従って、係合機構50は、HVECU30がアクチュエータ70を制御し、スリーブ54を軸方向左側に移動させると、第一係合部材51、第二係合部材52およびスリーブ54を介して、出力軸11と入力軸81とが直接連結する第二係合状態となる。
【0049】
HVECU30は、要求駆動力、車速、SOCに応じて、少なくとも3つの走行モード、すなわちEVモード、シリーズモード、パラレルモードのいずれかで駆動輪94を駆動する。EVモード、またはシリーズモードからパラレルモードに走行モードを切り替えるとき、出力軸11と入力軸81との回転数を同期させ、走行モードを切り替える。また、パラレルモードから、EVモード、またはシリーズモードに走行モードを切り替えるとき、出力軸11と入力軸81との回転数を同期させ、走行モードを切り替える。
【0050】
EVモードは、HVECU30が、インバータ21を制御し、バッテリ22から供給される電力によってMG2のみで駆動輪94を駆動させる。HVECU30は、EVモードでは、係合機構50を第一係合状態とする。なお、内燃機関10および、MG1は回転していない。EVモードにおける動力の伝達経路を図3に矢印Aで示す。
【0051】
シリーズモードは、HVECU30がインバータ21とエンジンECU31を介して内燃機関10を制御し、MG1をセルモータとして機能させて内燃機関10を起動する。そして、インバータ21を制御し、内燃機関10が出力する機械的動力により、MG1を回転させ、MG1による発電を行い、MG1が発電した電力でMG2を駆動させ、MG2で駆動輪94を駆動させる。HVECU30は、シリーズモードでは、係合機構50を第一係合状態とする。シリーズモードにおける動力の伝達経路を図4に矢印Bで示す。
【0052】
パラレルモードは、HVECU30が、インバータ21とエンジンECU31を介して内燃機関10を制御し、MG2に内燃機関10の駆動のアシストをさせ、内燃機関10及びMG2で駆動輪94を駆動させる。HVECU30は、パラレルモードでは、係合機構50を第二係合状態とする。なお、MG1は回転していない。パラレルモードにおける動力の伝達経路を図5に矢印Cで示す。
【0053】
次に、車両1の走行状態について説明する。図6〜図9は車両1の駆動力線図である。図6は、高SOC走行状態における駆動力線図である。図7は、高SOC走行状態においてパラレルモード領域を拡げた駆動力線図である。図8は、低SOC走行状態における駆動力線図である。図9は、低SOC走行状態においてパラレルモード領域を拡げた駆動力線図である。HVECU30は、実施形態では、高SOC走行状態、低SOC走行状態の二つの走行状態のいずれかにより、車両1を走行させる。HVECU30は、SOCに応じて、高SOC走行状態、低SOC走行状態のいずれかの走行状態を選択する。HVECU30は、現在のSOC(以下、「現SOC」と記す)が高いか否かを判断し、SOCが高いと、HVECU30は、高SOC走行状態で車両1を走行させ、SOCが低いと、低SOC走行状態で車両1を走行させる。
【0054】
高SOC走行状態では、HVECU30により、EVモード、あるいはパラレルモードのいずれかのモードで駆動輪94が駆動され、車両1が走行する。図6は、高SOC走行状態における駆動力線図で、MG2のみにより駆動輪94を駆動する場合における最大駆動力(以下、「MG2最大駆動力」と記す)と、内燃機関10のみにより駆動輪94を駆動する場合における最大駆動力(以下、「内燃機関最大駆動力」と記す)と、車両1が定常走行する際に、車速を維持するために必要な力(以下、「定地走行負荷力」と記す)との関係を示している。高SOC走行状態においては、現SOCが高いため、車両1は、原則、EVモードで走行する。EVモード領域は、MG2最大駆動力と、車両1が増速し、MG2最大駆動力を定地走行負荷力が上回る車速、つまり、MG2最大駆動力では、定常走行を行うことができなくなる車速(以下、「第一車速V1」と記す)とによって囲まれる領域である。パラレルモード領域は、EVモード領域と、MG2及び内燃機関10により駆動輪94を駆動する場合における最大駆動力によって囲まれる領域(実施形態では、車速がVmaxまでの領域)である。例えば、HVECU30は、任意の車速に応じて要求駆動力が決まり、任意の車速における要求駆動力が、EVモード領域におけるMG2最大駆動力を超えると、EVモードからパラレルモードに切り替える。また、HVECU30は、車両1が増速し、第一車速V1を上回る場合、EVモードからパラレルモードに切り替える。なお、EVモードからパラレルモードに切り替える第一車速V1が、制御変数として、HVECU30のROMに記憶されている。この第一車速V1は、実験または計算等により予め算出された基準値あるいは、後述する所定距離と予測走行可能距離とに応じた値のいずれかである。
【0055】
さらに、高SOC走行状態では、HVECU30により、後述する所定距離と予測走行可能距離とに応じて、第一車速V1(=vb)を小さくする(=v1)ことができる。図7は、高SOC走行状態においてパラレルモード領域を拡げた駆動力線図を示している。図7に示すように、HVECU30は、第一車速V1を小さくすることによって、パラレルモード領域(図7のX領域)を拡大することができる。
【0056】
低SOC走行状態では、HVECU30により、シリーズモード、あるいはパラレルモードのいずれかのモードで駆動輪94が駆動され、車両1が走行する。図8は、低SOC走行状態における駆動力線図で、MG2最大駆動力と、内燃機関最大駆動力との関係を示している。低SOC走行状態においては、現SOCが低いため、車両1は、原則、シリーズモードで走行する。シリーズモード領域は、MG2最大駆動力と、車両1が増速し、内燃機関最大駆動力が、MG2最大駆動力を上回る車速(以下、「第二車速V2」と記す)とによって囲まれる領域である。パラレルモード領域は、V2を上回る領域であり、基本的には、内燃機関最大駆動力が、MG2最大駆動力を超える領域(実施形態では、車速Vmaxまでの領域)である。例えば、HVECU30は、車両1が増速し、第二車速V2を上回る場合、シリーズモードからパラレルモードに切り替える。なお、シリーズモードからパラレルモードに切り替える第二車速V2が、制御変数として、HVECU30のROMに記憶されている。この第2車速V2は、実験または計算等により予め算出された基準値であり、SOCに応じて変化するものであり、SOCが高いほど、小さい値となるように、例えばマップなどで決定されている。
【0057】
さらに、低SOC走行状態では、HVECU30により、取得するSOCが高いほど、第二車速V2(=v2)を小さくする(=v3)ことができる。図9は、低SOC走行状態においてパラレルモード領域を拡げた駆動力線図を示している。図9に示すように、HVECU30は、第二車速V2を小さくすることによって、パラレルモード領域を拡大すること(図9のY領域)ができる。また、低SOC走行状態では、パラレルモードで駆動輪94を駆動する際に、内燃機関最大駆動力が、MG2最大駆動力より小さい場合、バッテリ22から供給される電力によって、MG2を駆動することを許可し、内燃機関10及びMG2から出力される動力で、駆動輪94を駆動する。
【0058】
なお、HVECU30は、現在のSOC(以下、「現SOC」と記す)が高いか否かを判断する閾値SOC1を、制御定数として、ROMに記憶している。閾値SOC1は、実験または計算等により予め算出された値である。例えば、現SOCでは、EVモードにおけるMG2の最大駆動力が出せないような値である。
【0059】
また、HVECU30は、インフラ・ナビゲーション等の情報から、運転者が現在地から目的地まで車両1を走行する場合に要する走行距離(以下、「所定距離L1」と記す)を算出することができる。なお、所定距離L1は、運転者の要求に応じて設定される走行距離等によって取得する距離でもよい。さらに、EVモードで車両1が定地を所定速度で走行するとき、HVECU30は、EVモードにおいて、現SOCで、車両1が走行可能な距離である予測走行可能距離(以下、「予測走行可能距離L2」と記す)を算出することができる。なお、予測走行可能距離L2は、制御変数としてHVECU30のROMに記憶している。予測走行可能距離L2は、予め算出された値であり、SOCに応じて変化するものであり、SOCが高いほど、大きい値となるように、例えば、マップなどで設定されている。
【0060】
次に、本実施形態における車両用の電子制御装置(HVECU)が実行する制御について、図1〜図10を用いて説明する。図10は、HVECUが実行する車両制御のフローチャートである。
【0061】
図10に示すように、まず、HVECU30は、現SOCを取得する(ステップS10)。現SOCは、バッテリECU33によって算出される。HVECU30は、バッテリECU33により送出されたSOCに係る信号に基づいて現SOCを取得する。
【0062】
次に、HVECU30は、取得した現SOCが閾値SOC1以上か否かを判断する(ステップS11)。すなわち、HVECU30は、現SOCが高く、車両1が高SOC走行状態を維持できるか否かを判断する。HVECU30は、現SOCが閾値SOC1より大きい、すなわち、現SOCが高いと判断する(ステップS11肯定)と、高SOC走行状態で車両1を走行させることを決定する(ステップS12)。
【0063】
次に、HVECU30は、所定距離L1を取得する(ステップS13)。
【0064】
次に、HVECU30は、予測走行可能距離L2を取得する(ステップS14)。
【0065】
次に、HVECU30は、取得した所定距離L1が予測走行可能距離L2よりも大きいか否かを判断する(ステップS15)。すなわち、HVECU30は、車両1が所定距離L1をEVモードのみで走行可能か否かを判断する。HVECU30は、予測走行可能距離L2が所定距離L1より小さいと判断する(ステップS15肯定)と、EVモードのみでは、車両1が所定距離L1だけ走行させることができないと判断し、第一車速V1を小さくする。したがって、図7に示すように、第一車速V1は、L1がL2よりも大きいと判断された場合における第一車速V1(=vb)よりも小さい値(=v1)となる(ステップS16)。なお、HVECU30は、所定距離L1に対して予測走行可能距離L2が小さいほど、第一車速V1を小さくしてもよい。
【0066】
また、HVECU30は、予測走行可能距離L2が所定距離L1以上と判断する(ステップS15否定)と、EVモードのみで、車両1が所定距離L1だけ走行させることができると判断し、第一車速V1を維持する。したがって、図7に示すように、第一車速V1は、L1がL2以下と判断された場合における第一車速V1(=vb)となる(ステップS17)。
【0067】
次に、HVECU30は、例えば、車両1の駆動輪94に設けられた車輪速センサ(図示せず)により、車両1の現在の車速(以下、「現車速V」と記す)を取得し、現車速Vが第一車速V1よりも小さいか否かを判断する。すなわち、HVECU30は、現車速Vに応じて、EVモードとパラレルモードとのどちらかを選択する。HVECU30は、現車速Vが第一車速V1より小さいと判断する(ステップS18肯定)と、EVモードで駆動輪94を駆動し、車両1を走行させる(ステップS19)。
【0068】
また、HVECU30は、現車速Vが第一車速V1以上と判断する(ステップS18否定)と、パラレルモードで駆動輪94を駆動し、車両1を走行させる(ステップS20)。
【0069】
また、HVECU30は、現SOCが閾値SOC1以下、すなわち、現SOCが低いと判断する(ステップS11否定)と、低SOC走行状態で車両1を走行させることを決定する(ステップS21)。
【0070】
次に、HVECU30は、現SOCが高いほど、第二車速V2が小さくなるように設定する。例えば、図9に示すように、v2であった第二車速V2が、現SOCが高いと、小さいv3となる(ステップS22)。なお、HVECU30は、現SOCが高い、例えば、現SOCが予め設定された閾値SOC2よりも高い場合に、第二車速V2を小さくしてもよい。閾値SOC2は、制御定数として、ROMに記憶している。閾値SOC2は、実験または計算等により予め算出された値である。
【0071】
次に、HVECU30は、車両1の現車速Vが第二車速V2よりも小さいか否かを判断する(ステップS23)。すなわち、HVECU30は、現車速Vによって、車両1がシリーズモードとパラレルモードとのどちらで走行するかを判断する。HVECU30は、現車速Vが第二車速V2より小さいと判断する(ステップS23肯定)と、シリーズモードで駆動輪94を駆動し、車両1を走行させる(ステップS24)。
【0072】
また、HVECU30は、現車速Vが第二車速V2以上と判断する(ステップS23否定)と、パラレルモードで駆動輪94を駆動し、車両1を走行させる(ステップS25)。
【0073】
以上に説明した走行制御ルーチンは、所定時間ごとに繰り返され、その都度、現車速V、所定距離L1等の制御変数が更新され、現SOCから車両1が走行可能な距離である予測走行可能距離L2を算出することができる。HVECU30は、算出された予測走行可能距離L2と所定距離L1とを比較し、予測走行可能距離L2が小さい場合、EVモードとパラレルモードとの切替を行う第一車速V1を小さくすることによって、高SOC走行状態において、パラレルモードに切り替わりやすくなり、高SOC走行状態における走行距離を伸ばすことができる。これにより、車両1が高SOC走行状態で走行可能な距離が伸び、SOC低下が抑制され、低SOC走行状態になりにくくなり、低SOC走行状態になってもシリーズモードで車両1が走行する頻度が減るため、ハイブリッド車両全体としてのエネルギ効率が良くなり、燃費が向上する。
【0074】
また、シリーズモードでは、内燃機関10から出力する動力で、MG1を回転させて発電し、その発電した電力を用いて、MG2を作動し、MG2から動力を出力し、ハイブリッド車両を駆動させるため、ハイブリッド車両全体としてエネルギ効率が低下するが、現SOCが高いほど第二車速V2を小さくすることで、通常パラレルモードに切り替わる車速よりも低い車速でパラレルモードに切り替えることができる。つまり、SOCが高い場合は、SOCが低い場合と比較してシリーズモードによるバッテリの充電の必要性が低いため、通常よりもシリーズモードからパラレルモードに切り替えやすくなる。したがって、低SOC走行状態においてパラレルモードに切り替わりやすくなる。これにより、低SOC走行状態において、早期にパラレルモードに切り替えるため、内燃機関10からの出力を直接駆動輪94に伝達することができ、車両1全体として動力伝達効率が向上し、シリーズモードで発生する電気パスを抑制することができ、燃費が向上する。
【0075】
さらに、パラレルモードで駆動輪94を駆動する際に、内燃機関最大駆動力がMG2最大駆動力よりも小さいと、バッテリ22から供給される電力によってMG2を駆動することができる。これにより、低SOC走行状態では、現SOCが低いためMG2のバッテリ駆動はなく、車両1は原則シリーズモードで走行するが、車両の要求駆動力が内燃機関最大駆動力とMG2最大駆動力との間であると、内燃機関10では要求駆動力を発生することができない。そこで、低SOC走行状態では、パラレルモードで駆動輪94を駆動する際に内燃機関最大駆動力がMG2最大駆動力より小さい場合、バッテリ22から供給される電力によってMG2を駆動することを許可することで、内燃機関10及びMG2から出力される動力で駆動輪94を駆動し、車両1の要求駆動力を満たすことができる。
【0076】
さらに、本発明の実施形態および他の実施形態において、上述の車両用の制御装置(HVECU)30が適用される車両1は、原動機として内燃機関10とMG1,MG2とを備え、内燃機関10と、MG1と、動力伝達機構80との機械的な接続関係を切り替える係合機構50によって、内燃機関10とMG1とを連結し、内燃機関10と動力伝達機構80との連結を解放する第一係合状態と、内燃機関10と動力伝達機構80とを連結し、内燃機関10とMG1との連結を解放する第二係合状態とのいずれかの状態を構成するものとしたが、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置が適用可能な車両は、これに限定されるものではない。内燃機関10及びMG1がすでに直結され、これらと動力伝達機構80との係合あるいは解放を行うクラッチ機構を設けた車両でもよい。このような構成であっても、HVECU30により、クラッチ機構が解放している場合は、EVモード及びシリーズモードを形成し、クラッチ機構が係合している場合は、MG1を制御し、パラレルモードを形成することができる車両であれば、本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明は、内燃機関と電気モータとを動力源として走行可能なハイブリッド車両に有効であり、エネルギ効率の低下の抑制に適している。
【符号の説明】
【0078】
1 車両
10 内燃機関
11 内燃機関の出力軸
12 ダンパ
20 駆動装置
21 インバータ
22 バッテリ
30 車両用の電子制御装置(HVECU)
31 内燃機関制御装置(エンジンECU)
32 モータ制御装置(モータECU)
33 バッテリ監視用の電子制御装置(バッテリECU)
50 係合機構
51 第一係合部材
51a 第一係合部材係合部
52 第二係合部材
52a 第二係合部材係合部
53 第三係合部材
53a 第三係合部材係合部
54 スリーブ
54a 第1スリーブ側係合部
54b 第2スリーブ側係合部
61,64 回転軸
62,65 ロータ
63,66 ステータ
70 アクチュエータ
80 動力伝達機構
81 動力伝達機構の入力軸
82 エンジンカウンタギヤ
83 カウンタ軸
84 ドライブピニオン
85 MGカウンタギヤ
86 カウンタドリブンギヤ
87 デフリングギヤ
88 デファレンシャルギヤ
90 ドライブシャフト
94 駆動輪
100 アクセルペダルポジションセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関から出力される動力により発電、あるいは前記内燃機関を始動する第一モータジェネレータと、
少なくとも駆動輪に動力を出力する第二モータジェネレータと、
前記内燃機関および前記第二モータジェネレータから出力される動力を前記駆動輪に伝達する動力伝達機構と、
前記第一モータジェネレータおよび前記第二モータジェネレータに接続され、充放電が可能なバッテリと、
を備え、走行モードとして、
前記バッテリから供給される電力によって、前記第二モータジェネレータから出力される動力のみで前記駆動輪を駆動するEVモードと、
前記内燃機関から出力される動力で、前記第一モータジェネレータを回転させて発電し、その発電した電力を用いて、前記第二モータジェネレータを駆動し、前記第二モータジェネレータから出力される動力で前記駆動輪を駆動するシリーズモードと、
前記内燃機関と前記第二モータジェネレータの両者から出力される動力により前記駆動輪を駆動するパラレルモードと、
を有するハイブリッド車両の制御装置において、
SOCが高いときに、前記EVモードと、前記パラレルモードとの間で走行モードを走行状態に応じて切り替える高SOC走行状態となり、
SOCが低いときに、前記シリーズモードと、前記パラレルモードとの間で走行モードを走行状態に応じて切り替える低SOC走行状態となり、
前記高SOC走行状態では、現在の前記バッテリの充電状態で、前記ハイブリッド車両が前記EVモードで走行可能な距離である予測走行可能距離が、所定距離より小さい場合、EVモードとパラレルモードとの間の切り替えを前記パラレルモードに切り替わりやすくする
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記高SOC走行状態では、前記ハイブリッド車両の車速が所定の第一車速より大きくなる場合、前記EVモードから、前記パラレルモードへの切替が行われ、前記予測走行可能距離が、前記所定距離より小さい場合、前記第一車速を小さくする
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記低SOC走行状態では、前記ハイブリッド車両の車速が所定の第二車速より大きくなる場合、前記シリーズモードから、前記パラレルモードへの切替が行われ、前記バッテリの充電状態が高いほど、前記第二車速を小さくする
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記低SOC走行状態では、前記パラレルモードで前記駆動輪を駆動する際に、
前記内燃機関によって前記駆動輪を駆動する場合における最大駆動力が、前記第二モータジェネレータによって前記駆動輪を駆動する場合における最大駆動力より小さい場合、
前記バッテリから供給される電力によって、前記第二モータジェネレータを駆動することを許可する
ことを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−156985(P2011−156985A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20699(P2010−20699)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】