説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】エンジン出力トルクの余剰トルクで電動機の発電を行う際に、燃費の向上を図りつつドライバビリティの低下を抑制するハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて電動機MGによる充電を行う制御において、自動変速機18の変速比γが大きいほどその電動機MGによる充電量の制限値が小さい値とされることから、要求トルクとエンジン出力トルクとの誤差が加速度に影響を与え易い、自動変速機18の変速比γが比較的大きい駆動状態においては充電量の制限値を小さくして違和感の発生を抑制できると共に、変速比γが比較的小さい駆動状態においては最大限燃費の向上を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン出力トルクの余剰トルクで電動機の発電を行うハイブリッド車両の制御装置に関し、特に、燃費の向上を図りつつドライバビリティの低下を抑制するための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
主駆動源であるエンジンと、駆動源として機能する電動機とを、備えたハイブリッド車両が知られている。例えば、エンジンと、そのエンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に接続された電動機と、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた変速機と、前記エンジンとその変速機との間の動力伝達経路に設けられたトルクコンバータと、そのトルクコンバータにおける入力部材及び出力部材の間に設けられたロックアップクラッチとを、備えたハイブリッド車両がそれである。斯かるハイブリッド車両において、エンジン出力トルクの余剰トルクで電動機の発電を行うことで燃費の向上を図る技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載されたハイブリッド車両の駆動制御装置がそれである。この技術によれば、エンジン出力における要求トルク(要求駆動力)に対する余剰トルクで電動機の発電を行うと共に、燃料消費相当量が最小となる駆動パターンを決定することで、常に最良の燃費で車両を駆動することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−269257号公報
【特許文献2】特開2005−039884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般にエンジン出力トルクを大きく出力すると要求トルク(目標トルク)と実トルクとの誤差が大きくなる。しかし、前記従来の技術においては、エンジン出力トルクの余剰トルクで電動機の発電を行う制御におけるエンジン動作点の設定及び電動機の発電量に関して、斯かる誤差を考慮に入れていなかったため、車両の駆動状態によってはこの誤差が加速度に影響し、運転者に違和感を与えるおそれがあった。すなわち、エンジン出力トルクの余剰トルクで電動機の発電を行う際に、ドライバビリティが低下するおそれがあった。このような課題は、ハイブリッド車両におけるドライバビリティ向上及び燃費向上を意図して本発明者等が鋭意研究を続ける過程において新たに見出したものである。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジン出力トルクの余剰トルクで電動機の発電を行う際に、燃費の向上を図りつつドライバビリティの低下を抑制するハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる目的を達成するために、本第1発明の要旨とするところは、エンジンと、そのエンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に接続された電動機と、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた変速機とを、備えたハイブリッド車両の制御装置であって、要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて前記電動機による充電を行う制御において、前記変速機の変速比が大きいほどその電動機による充電量の制限値が小さい値とされることを特徴とするものである。
【0007】
前記目的を達成するために、本第2発明の要旨とするところは、エンジンと、そのエンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に接続された電動機と、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に設けられたトルクコンバータと、そのトルクコンバータにおける入力部材及び出力部材の間に設けられたロックアップクラッチとを、備えたハイブリッド車両の制御装置であって、要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて前記電動機による充電を行う制御において、前記ロックアップクラッチが開放された状態においては、そのロックアップクラッチが係合された状態よりも前記電動機による充電量の制限値が小さい値とされることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
このように、前記第1発明によれば、要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて前記電動機による充電を行う制御において、前記変速機の変速比が大きいほどその電動機による充電量の制限値が小さい値とされることから、要求トルクとエンジン出力トルクとの誤差が加速度に影響を与え易い、前記変速機の変速比が比較的大きい駆動状態においては充電量の制限値を小さくして違和感の発生を抑制できると共に、変速比が比較的小さい駆動状態においては最大限燃費の向上を実現できる。すなわち、エンジン出力トルクの余剰トルクで電動機の発電を行う際に、燃費の向上を図りつつドライバビリティの低下を抑制するハイブリッド車両の制御装置を提供することができる。
【0009】
前記第2発明によれば、要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて前記電動機による充電を行う制御において、前記ロックアップクラッチが開放された状態においては、そのロックアップクラッチが係合された状態よりも前記電動機による充電量の制限値が小さい値とされることから、要求トルクとエンジン出力トルクとの誤差が加速度に影響を与え易い、前記ロックアップクラッチが開放された駆動状態においては充電量の制限値を小さくして違和感の発生を抑制できると共に、そのロックアップクラッチが係合された駆動状態においては最大限燃費の向上を実現できる。すなわち、エンジン出力トルクの余剰トルクで電動機の発電を行う際に、燃費の向上を図りつつドライバビリティの低下を抑制するハイブリッド車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明が好適に適用されるハイブリッド車両に係る駆動系統の構成を概念的に示す図である。
【図2】図1のハイブリッド車両の電子制御装置に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図3】図1のハイブリッド車両における自動変速機の変速制御に用いられる変速線図の一例を示す図である。
【図4】図1のハイブリッド車両におけるロックアップクラッチの係合制御に用いられるロックアップ線図の一例を示す図である。
【図5】図1のハイブリッド車両においてエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて電動機による充電を行う制御について概略的に説明する図である。
【図6】図1のハイブリッド車両におけるエンジンに関して予め実験的に求められて記憶された燃費マップの一例を示す図である。
【図7】一般的なエンジンにおける目標エンジントルクと実際のエンジントルクとの誤差について説明する図である。
【図8】図1のハイブリッド車両における充電量制限値の設定に用いられる充電量制限値設定マップの一例を示す図である。
【図9】図1のハイブリッド車両における充電量制限値の設定に用いられる充電量制限値設定マップの他の一例を示す図である。
【図10】図1のハイブリッド車両における充電量制限値の設定に用いられる充電量制限値設定マップを選択するための関係の一例を示す図である。
【図11】図1のハイブリッド車両における電子制御装置による本実施例の充電量制限値設定制御について説明するタイムチャートである。
【図12】図1のハイブリッド車両における電子制御装置による本実施例の充電量制限値設定制御の要部を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、係合状態に応じてエンジンと電動機との間の動力伝達経路を断続するクラッチを備えたハイブリッド車両に好適に適用される。好適には、そのクラッチが係合された状態において、前記エンジンの駆動が行われる走行モードにおけるエンジン出力トルクの余剰トルクで電動機の発電を行う制御に、本発明は好適に適用される。換言すれば、前記クラッチの開放時には本発明の制御は行われず、専ら前記電動機を駆動源とする走行モードにおけるその電動機のトルク制御が行われる。
【0012】
前記クラッチは、好適には、油圧により係合状態が制御される油圧式摩擦係合装置であるが、電磁気的に係合状態が制御される電磁式クラッチ或いは磁粉式クラッチ等が用いられてもよい。前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に複数の前記クラッチが備えられ、各クラッチの係合状態に応じてその動力伝達経路における動力伝達を制御する態様のハイブリッド車両にも本発明は好適に適用される。
【0013】
前記変速機は、好適には、複数の油圧式摩擦係合装置を備えた有段式の自動変速機であるが、ベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機等のCVTを備えたハイブリッド車両にも本発明は好適に適用される。複数の電動機相互間の電気パスによりそれら複数の電動機が電気的な無段変速機として機能する形式のハイブリッド車両に本発明が適用されても構わない。前記変速機として、それぞれギヤ比の異なる複数のギヤ対及びシンクロメッシュ機構を備えたギヤ式変速機や、クラッチペダルの踏込操作を行うことなく斯かるギヤ式変速機の変速を自動で行う所謂セミオートマチックトランスミッションを備えたハイブリッド車両に本発明が適用されても構わない。
【0014】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明が好適に適用されるハイブリッド車両10に係る駆動系統の構成を概念的に示す図である。この図1に示すハイブリッド車両10は、駆動源として機能するエンジン12及び電動機MGを備えており、それらエンジン12及び電動機MGにより発生させられた駆動力は、トルクコンバータ16、自動変速機18、差動歯車装置20、及び左右1対の車軸22をそれぞれ介して左右1対の駆動輪24へ伝達されるように構成されている。斯かる構成から、上記ハイブリッド車両10は、上記エンジン12及び電動機MGの少なくとも一方を走行用の駆動源として駆動される。すなわち、上記ハイブリッド車両10においては、専ら上記エンジン12を走行用の駆動源とするエンジン走行モード、専ら上記電動機MGを走行用の駆動源とするEV走行(モータ走行)モード、及び上記エンジン12及び電動機MGを走行用の駆動源とするハイブリッド走行モードの何れかが選択的に成立させられる。
【0016】
上記エンジン12は、例えば、燃料が燃焼室内に直接噴射される筒内噴射型のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。上記エンジン12の駆動(出力トルク)を制御するために、電子スロットル弁を開閉制御するスロットルアクチュエータ、燃料噴射制御を行う燃料噴射装置、及び点火時期制御を行う点火装置等を備えた出力制御装置14が設けられている。この出力制御装置14は、後述する電子制御装置60から供給される指令に従ってスロットル制御のために上記スロットルアクチュエータにより上記電子スロットル弁を開閉制御する他、燃料噴射制御のために上記燃料噴射装置による燃料噴射を制御し、点火時期制御のために上記点火装置による点火時期を制御する等して上記エンジン12の出力制御を実行する。
【0017】
前記電動機MGは、駆動力を発生させるモータ(発動機)及び反力を発生させるジェネレータ(発電機)としての機能を有するモータジェネレータであり、前記エンジン12とその電動機MGとの間の動力伝達経路には、係合状態に応じてその動力伝達経路における動力伝達を制御するクラッチK0が設けられている。すなわち、前記エンジン12の出力部材であるクランク軸26は、斯かるクラッチK0を介して前記電動機MGのロータ30に選択的に連結されるようになっている。その電動機MGのロータ30は、前記トルクコンバータ16の入力部材であるフロントカバーに連結されている。前記電動機MGのステータ32は、非回転部材であるハウジング28に固定されている。
【0018】
上記クラッチK0は、例えば、油圧アクチュエータによって係合制御される多板式の油圧式摩擦係合装置であり、油圧制御回路50から供給される油圧に応じてその係合状態が係合(完全係合)、スリップ係合、乃至開放(完全開放)の間で制御されるようになっている。このクラッチK0が係合されることにより、上記クランク軸26とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路における動力伝達が行われる(接続される)一方、上記クラッチK0が開放されることにより、上記クランク軸26とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路における動力伝達が遮断される。上記クラッチK0がスリップ係合されることにより、上記クランク軸26とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路においてそのクラッチK0の伝達トルクに応じた動力伝達が行われる。
【0019】
前記自動変速機18は、例えば、予め定められた複数の変速段(変速比)の何れかが選択的に成立させられる有段式の自動変速機構であり、斯かる変速を行うために複数の係合要素を備えて構成されている。例えば、多板式のクラッチやブレーキ等、油圧アクチュエータによって係合制御される複数の油圧式摩擦係合装置を備えており、上記油圧制御回路50から供給される油圧に応じてそれら複数の油圧式摩擦係合装置が選択的に係合乃至開放されることにより、それら油圧式摩擦係合装置の連結状態の組合せに応じてそれぞれ変速比γの異なる複数(例えば、第1速から第6速)の前進変速段(前進ギヤ段、前進走行用ギヤ段)、或いは後進変速段(後進ギヤ段、後進走行用ギヤ段)の何れかが選択的に成立させられる。
【0020】
前記トルクコンバータ16は、入力部材であるポンプ翼車16pと出力部材であるタービン翼車16tとの間に、それらポンプ翼車16p及びタービン翼車16tが一体的に回転させられるように直結するロックアップクラッチ(直結クラッチ)LUを備えている。このロックアップクラッチLUは、前記油圧制御回路50から供給される油圧に応じてその係合状態が係合(完全係合)、スリップ係合、乃至開放(完全開放)の間で制御されるようになっている。上記ポンプ翼車16pは、前記電動機MGのロータ30に連結されると共に前記クラッチK0を介して前記エンジン12のクランク軸26に連結されている。上記タービン翼車16tは、前記自動変速機18の入力軸に連結されている。
【0021】
前記電動機MGは、インバータ56を介してバッテリやコンデンサ等の蓄電装置58に接続されており、後述する電子制御装置60によりそのインバータ56が制御されることで前記電動機MGに備えられたコイルに供給される駆動電流が調節されることにより、その電動機MGの駆動が制御されるようになっている。換言すれば、上記電子制御装置60によりそのインバータ56が制御されることで前記電動機MGの出力トルクが増減させられるようになっている。斯かる電動機MGからの出力トルクは、前記クラッチK0の開放時(非係合時)には前記トルクコンバータ16に対してのみ出力されるが、前記クラッチK0の係合時にはその出力トルクの一部が前記トルクコンバータ16に出力されると共に他部が前記エンジン12に出力される。
【0022】
前記ハイブリッド車両10においては、例えば専ら前記電動機MGを走行用の駆動源とするEV走行モードから前記エンジン12を駆動源として用いるエンジン走行モード又はハイブリッド走行モードへの移行に際して、前記クラッチK0の係合により前記エンジン12の始動が行われる。すなわち、前記クラッチK0がスリップ係合乃至完全係合させられることにより、そのクラッチK0を介して伝達されるエンジン始動のためのトルクにより前記エンジン12が回転駆動され、それによりエンジン回転速度NEが引き上げられつつエンジン点火や燃料供給等が制御されることで前記エンジン12が始動(押し掛け)される。この際に前記電動機MGにより補償トルクが発生させられ、車両前後方向の加速度(減速G)の発生が抑制される。すなわち、前記エンジン12の始動は、好適には、着火による爆発エネルギから得られるトルクと、前記クラッチK0による係合エネルギから得られるトルクすなわちそのクラッチK0を介して伝達されるエンジン始動トルクとで前記エンジン12が回転駆動されることにより行われる。
【0023】
前記ハイブリッド車両10は、図1に例示するような制御系統を備えている。この図1に示す電子制御装置60は、CPU、RAM、ROM、及び入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUがRAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記エンジン12の駆動制御、前記電動機MGの駆動制御、前記自動変速機18の変速制御、前記クラッチK0の係合力制御、及び前記ロックアップクラッチLUの係合制御等の基本的な制御に加え、後述する本実施例の充電量制限値設定制御等の各種制御を実行する。
【0024】
図1に示すように、上記電子制御装置60には、前記ハイブリッド車両10に設けられた各センサにより検出される各種入力信号が供給されるようになっている。例えば、図示しないアクセルペダルの踏込量に対応してアクセル開度センサ62により検出されるアクセル開度ACCを表す信号、エンジン回転速度センサ64により検出される前記エンジン12の回転速度(エンジン回転速度)NEを表す信号、タービン回転速度センサ66により検出される前記トルクコンバータ16のタービン翼車16tの回転速度(タービン回転速度)NTを表す信号、電動機回転速度センサ68により検出される前記電動機MGの回転速度(電動機回転速度)NMGを表す信号、電動機温度センサ70により検出される前記電動機MG(或いは蓄電装置58)の温度TMGを表す信号、車速センサ72により検出される車速Vを表す信号、水温センサ74により検出される前記エンジン12の冷却水温TWを表す信号、勾配センサ76により検出される車両の走行路面の路面の傾斜角θROAD乃至勾配φを表す信号、及びSOCセンサ78により検出される前記蓄電装置58の蓄電量(残容量、充電量)SOCを表す信号等が上記電子制御装置60に入力される。
【0025】
前記電子制御装置60から、前記ハイブリッド車両10に設けられた各装置に各種出力信号が供給されるようになっている。例えば、前記エンジン12の駆動制御のためにそのエンジン12の出力制御装置14に供給される信号、前記電動機MGの駆動制御のために前記インバータ56に供給される信号、前記自動変速機18の変速制御のために前記油圧制御回路50における複数の電磁制御弁に供給される信号、前記クラッチK0の係合制御のために前記油圧制御回路50におけるリニアソレノイド弁に供給される信号、前記ロックアップクラッチLUの係合制御のために前記油圧制御回路50におけるリニアソレノイド弁に供給される信号、及びライン圧制御のために前記油圧制御回路50におけるリニアソレノイド弁に供給される信号等が、前記電子制御装置60から各部へ供給される。
【0026】
図2は、前記電子制御装置60に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図2に示すハイブリッド駆動制御部80は、前記ハイブリッド車両10におけるハイブリッド駆動制御を実行する。すなわち、図2に示すように、前記出力制御装置14を介して前記エンジン12の駆動(出力トルク)を制御するエンジン駆動制御部82、及び前記インバータ56を介して前記電動機MGの駆動を制御する電動機駆動制御部84を備えており、それらエンジン駆動制御部82及び電動機駆動制御部84を介して前記エンジン12及び電動機MGによる前記ハイブリッド車両10の駆動制御を行う。例えば、前記エンジン12を停止させると共に専ら前記電動機MGを走行用の駆動源とするEV走行モード、専ら前記エンジン12を走行用の駆動源とするエンジン走行モード、前記エンジン12及び電動機MGを共に走行用の駆動源とすると共に走行状態に応じてその電動機MGにより回生(発電)を行うハイブリッド走行モード等の各種走行モードを、前記ハイブリッド車両10の駆動状態(車両の走行状態)に応じて選択的に成立させる。
【0027】
K0クラッチ係合制御部86は、前記クラッチK0の係合制御を行う。具体的には、前記油圧制御回路50に備えられた、前記クラッチK0の係合圧に対応する油圧を調圧する電磁制御弁(例えば、リニアソレノイド弁)の出力圧を制御することにより、前記クラッチK0の係合状態を係合(完全係合)乃至開放(完全開放)の間で切り替える。必要に応じて前記クラッチK0をスリップ係合させるようにその係合圧を制御する。上記K0クラッチ係合制御部86は、例えば、上記ハイブリッド駆動制御部80によりエンジン12を駆動させる駆動状態が成立させられる場合(例えば、EV走行モードからハイブリッド走行モード乃至エンジン走行モードへの切換時)には、前記クラッチK0を係合させる一方、上記ハイブリッド駆動制御部80により前記エンジン12を停止させる駆動状態が成立させられる場合(例えば、ハイブリッド走行モード乃至エンジン走行モードからEV走行モードへの切換時)には、前記クラッチK0を開放させる。
【0028】
変速制御部88は、予め定められた関係から前記ハイブリッド車両10の状態に基づいて前記自動変速機18の変速制御を実行する。例えば、予め定められた図3に示すような変速マップから、前記アクセル開度センサ62により検出されるアクセル開度ACC及び前記車速センサ72により検出される車速V等に基づいて、前記自動変速機18において成立させられるべき変速段を判定し、その変速段が成立させられるように前記自動変速機18へ供給される油圧を制御する。具体的には、前記油圧制御回路50に備えられた、前記自動変速機18における各油圧式摩擦係合装置の係合圧に対応する油圧を調圧する電磁制御弁(例えば、リニアソレノイド弁)の出力圧を制御することにより、各油圧式摩擦係合装置の係合乃至開放を切り替える。
【0029】
LUクラッチ係合制御部90は、前記トルクコンバータ16に備えられたロックアップクラッチLUの係合状態を制御する。例えば、予め定められた図4に示すようなロックアップ線図から、前記出力制御装置14における電子スロットル弁の開度θTH(アクセル開度センサ62により検出されるアクセル開度ACCに対応)及び前記車速センサ72により検出される車速V等に基づいて、前記ロックアップクラッチLUを係合(完全係合)、開放(完全開放)、或いは一定の領域でスリップ係合させる。具体的には、前記油圧制御回路50に備えられた、前記ロックアップクラッチLUの係合圧に対応する油圧を調圧する電磁制御弁(例えば、リニアソレノイド弁)の出力圧を制御することにより、前記ロックアップクラッチLUの係合状態を制御する。図4のスリップ領域は必ずしも設けられなくともよく、上記LUクラッチ係合制御部90は、係合乃至開放の間で前記ロックアップクラッチLUの係合状態を制御するものであってもよい。
【0030】
前記ハイブリッド駆動制御部80は、前記EV走行モードにおいて、専ら前記電動機MGを走行用の駆動源として前記ハイブリッド車両10の駆動制御を行う。すなわち、予め記憶された駆動力マップから運転者の出力要求量としてのアクセル開度ACCや車速V等に基づいて要求出力軸トルクを決定し、その要求出力軸トルクから充電要求値等を考慮して要求駆動力(要求トルク)を算出する。そして、その要求駆動力が得られるように前記電動機MGの駆動(出力トルク)を制御する。このEV走行モードにおいて、前記エンジン12の駆動は停止させられると共に前記クラッチK0は開放(完全開放)される。これにより、前記エンジン12と電動機MGとの間の動力伝達経路は遮断され、そのエンジン12から前記ロックアップクラッチ16側へ動力伝達は行われず、逆にそのロックアップクラッチ16側から前記エンジン12へのトルク伝達も行われない。このEV走行モードでは、車両減速時等、所定の条件が成立する場合に前記電動機MGの回生が行われ、発生させられた電気エネルギが前記蓄電装置58に蓄積される。
【0031】
前記ハイブリッド駆動制御部80は、前記エンジン走行モードにおいて、専ら前記エンジン12を走行用の駆動源として前記ハイブリッド車両10の駆動制御を行う。すなわち、上述のようにして求められる要求トルクが得られるように目標エンジン出力を算出し、運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶された図6に示すような関係(燃費マップ)から、燃費効率が可及的に高くなるように前記エンジン12の動作点を決定し、斯かる動作点に対応するエンジン回転速度NE及びエンジントルクとなるように前記エンジン12の駆動を制御する。このエンジン走行モードにおいて、前記クラッチK0は係合(完全係合)される。前記電動機MGは空転させられるが、走行状態に応じて回生を行うように作動させられるものであってもよい。
【0032】
前記ハイブリッド駆動制御部80は、前記ハイブリッド走行モードにおいて、前記エンジン12及び電動機MGを共に走行用の駆動源として前記ハイブリッド車両10の駆動制御を行う。すなわち、基本的には、前述のようにして求められる要求トルクが得られるように伝達損失、補機負荷、前記電動機MGのアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶された図6に示すような関係から、燃費効率が可及的に高くなるように前記エンジン12の動作点を決定し、斯かる動作点に対応するエンジン回転速度NE及びエンジントルクとなるように前記エンジン12の駆動を制御すると共に、前記電動機MGの駆動を制御する。このハイブリッド走行モードにおいて、前記クラッチK0は係合(完全係合)される。
【0033】
前記ハイブリッド駆動制御部80は、前記電動機MGによる回生(発電)を制御する。すなわち、予め定められた関係から運転者の出力要求量としてのアクセル開度ACC等に基づいて回生の実行が判定された場合には、前記電動機MGにより回生が行われるようにその作動を制御する。このようにして前記電動機MGの回生により発生させられた電気エネルギは、前記インバータ56を介して前記蓄電装置58に蓄積される。そして、前記電動機MGが駆動源として用いられる際に、その蓄電装置58から前記インバータ56を介してその電動機MGに電気エネルギが供給されて駆動力が発生させられる。
【0034】
前記ハイブリッド駆動制御部80は、前記クラッチK0が係合されて前記エンジン12が駆動される走行モードにおいて、前述のようにして求められる要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて前記電動機MGによる充電を行う。図5は、前記要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて前記電動機MGによる充電を行う制御について概略的に説明する図である。この図5に示すように、前記ハイブリッド駆動制御部80は、要求トルクよりも大きなエンジン出力トルクNEを前記エンジン12により出力させ、そのエンジン出力トルクNEの一部である充電分負トルクNGを用いて前記電動機MGによる発電を行い、残余のトルクにより前記要求トルクが実現されるように前記エンジン12の駆動制御及び前記電動機MGの回生制御を行う。例えば、前記トルクコンバータ16によるトルク増幅を考えない場合、斯かる制御において、エンジン出力トルクNEの一部が前記電動機MGの発電に係る充電分負トルクNGとして用いられ、残余のトルクNE−NGが出力軸トルクとして前記差動歯車装置20等に伝達される。ここで、NE−NGが前記要求トルクに対応する値となるように制御することで、その要求トルクに対応する駆動力を維持しつつ前記エンジン12の動作点を設定することができる。
【0035】
前述したように、前記エンジン12には燃費効率の良い動作点が存在する。すなわち、運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶された図6に示すような関係において、比較的燃費効率の高い動作点が存在する一方、比較的燃費効率が低い動作点もまた存在する。このため、前記エンジン12により要求トルクよりも大きなエンジン出力トルクを出力させた方が燃費効率が向上する場合があり、図5を用いて前述したように、前記エンジン12により要求トルクよりも大きなエンジン出力トルクNEを出力させ、そのエンジン出力トルクNEの一部である充電分負トルクNGを用いて前記電動機MGによる発電を行い、残余のトルクNE−NGにより前記要求トルクを実現することで、要求駆動力を維持しつつ燃費向上を図ることができる。
【0036】
図7は、目標エンジントルクと実際のエンジントルクとの誤差について説明する図であり、エンジントルクのターゲット値に対応する関係(狙いエンジントルク線)を実線で、エンジントルクのターゲット値からトルク増加方向へのずれの上限値を一点鎖線で、トルク減少方向へのずれの上限値を二点鎖線でそれぞれ示している。この図7に示すように、一般にエンジン出力トルクが大きくなるほど目標エンジントルクと実際のエンジントルクとの誤差が大きくなる。この誤差は、前記自動変速機18の変速比γが比較的小さい場合(高速比、高速段である場合)に比べ、変速比γが比較的大きい場合(低速比、低速段である場合)において車両加速度(前後G)に影響として大きく現れる傾向にあり、斯かる誤差に起因して運転者に違和感を与えるおそれがある。前記トルクコンバータ16は、前記ロックアップクラッチLUの開放中(スリップ係合中も含む)においてはトルク増幅作用を持つが、上述した目標エンジントルクと実際のエンジントルクとの誤差をも増幅する。すなわち、上記誤差は、前記トルクコンバータ16におけるロックアップクラッチLUの係合中に比べ、開放中において車両加速度(前後G)に影響として大きく現れる傾向にあり、斯かる誤差に起因して運転者に違和感を与えるおそれがある。
【0037】
上記エンジントルクの目標値と実際の出力値の誤差に起因する運転者の違和感を抑制しつつ燃費向上を図るために、本実施例の電子制御装置60は、図2に示す充電量制限値設定制御部92を備えている。この充電量制限値設定制御部92は、前記蓄電装置58の充電量の制限値(上限値)を設定する。例えば、前記ハイブリッド駆動制御部80による、要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて前記電動機MGによる充電を行う制御において、前記ハイブリッド車両10の駆動状態に応じて前記蓄電装置58の充電量の制限値を設定する。
【0038】
上記充電量制限値設定制御部92は、前記ハイブリッド駆動制御部80による、要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて前記電動機MGによる充電を行う制御において、前記自動変速機18の変速比γが大きいほどその電動機MGによる充電量の制限値を小さい値に設定する。好適には、多段型の前記自動変速機18において、変速段(ギヤ段)毎に予め定められた関係(充電量制限値設定マップ)から前記アクセル開度センサ62により検出されるアクセル開度ACCに基づいて前記蓄電装置58の充電量の制限値を設定する。図8は、斯かる充電量制限値の設定に用いられる充電量制限値設定マップの一例を示す図であり、前記自動変速機18における第1速段「1st」、第3速段「3rd」、及び第6速段「6th」における関係を例示している。この図8に示すように、各関係はアクセル開度ACCが大きいほど充電量制限値が大きくなるように予め定められている。第3速段における関係は、第1速段における関係よりも同じアクセル開度ACCに対応する充電量制限値が大きく、第6速段における関係は、第3速段における関係よりも同じアクセル開度ACCに対応する充電量制限値が大きいというように、低速段ほど充電量制限値が小さくなるように(高速段ほど充電量制限値が大きくなるように)予め定められている。よって、上記充電量制限値設定部92は、好適には、前記自動変速機18における各変速段(ギヤ段)毎に、低速段ほど充電量の制限値が小さくなるように前記蓄電装置58の充電量の制限値を設定する。
【0039】
前記充電量制限値設定制御部92は、前記ハイブリッド駆動制御部80による、要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて前記電動機MGによる充電を行う制御において、前記トルクコンバータ16のロックアップクラッチLUが開放された状態においては、そのロックアップクラッチLUが係合された状態よりも前記電動機MGによる充電量の制限値を小さい値に設定する。好適には、前記トルクコンバータ16のロックアップクラッチLUが開放された状態及び係合された状態それぞれについて予め定められた関係(充電量制限値設定マップ)から前記アクセル開度センサ62により検出されるアクセル開度ACCに基づいて前記蓄電装置58の充電量の制限値を設定する。図9は、斯かる充電量制限値の設定に用いられる充電量制限値設定マップの一例を示す図であり、前記ロックアップクラッチLUが係合された状態に対応する関係を実線で、開放された状態に対応する関係を破線でそれぞれ示している。この図9に示すように、各関係はアクセル開度ACCが大きいほど充電量制限値が大きくなるように予め定められている。前記ロックアップクラッチLUが係合された状態に対応する関係は、開放された状態に対応する関係よりも同じアクセル開度ACCに対応する充電量制限値が大きいものとされている。図9においては、前記ロックアップクラッチLUがスリップ係合された状態に対応する関係は定められていないが、好適には、前記ロックアップクラッチLUが開放された状態に対応する関係が用いられる。或いは、前記ロックアップクラッチLUが係合された状態に対応する関係が用いられてもよいし、前記クラッチK0の伝達トルクが所定の閾値以上であれば前記ロックアップクラッチLUが係合された状態に対応する関係、閾値未満であれば前記ロックアップクラッチLUが開放された状態に対応する関係をそれぞれ用いるといった制御を行うものであってもよい。更には、前記ロックアップクラッチLUがスリップ係合された状態に対応する関係として、図9に実線及び破線で示す関係とは別の関係が予め定められており、その関係に基づいて充電量制限値の設定が行われるものであってもよい。
【0040】
前記充電量制限値設定制御部92は、好適には、前記ハイブリッド駆動制御部80による、要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて前記電動機MGによる充電を行う制御において、前記自動変速機18の変速段(変速比)及びトルクコンバータ16におけるロックアップクラッチLUの係合状態に応じて前記電動機MGによる充電量制限値の設定を行う。例えば、図10に示すように、前記自動変速機18の変速段及びトルクコンバータ16におけるロックアップクラッチLUの係合状態に対応して、それぞれ個別の関係(充電量制限値設定マップ)が予め定められている。マップ1−Aが第1速段「1st」でありロックアップクラッチLUが係合している場合の関係、マップ1−Bが第1速段「1st」でありロックアップクラッチLUが開放している場合の関係、マップ2−Aが第2速段「2nd」でありロックアップクラッチLUが係合している場合の関係、マップ2−Bが第2速段「2nd」でありロックアップクラッチLUが開放している場合の関係、マップ3−Aが第3速段「3rd」でありロックアップクラッチLUが係合している場合の関係、マップ3−Bが第3速段「3rd」でありロックアップクラッチLUが開放している場合の関係、・・・にそれぞれ対応する。すなわち、前記自動変速機18の各変速段毎に前記ロックアップクラッチLUが係合されている場合乃至開放されている場合の関係がそれぞれ個別に定められている。斯かる態様においても、各関係は低速段ほど充電量制限値が小さくなるように且つロックアップクラッチLUが開放された状態においては、係合された状態よりも充電量制限値が小さくなるように予め定められている。
【0041】
図11は、前記電子制御装置60による本実施例の充電量制限値設定制御について説明するタイムチャートである。先ず、時点t1において、図示しないアクセルペダルの踏込操作が行われ、アクセル開度ACCの上昇が開始される。次に、時点t2において、アクセル開度ACCの上昇に応じてシステム軸要求トルクの上昇が開始され、エンジントルク及び実際のシステム軸トルクの上昇制御が開始される。ここで、前記電動機MGのトルクは低下(負トルクが増加)させられる。すなわち、エンジントルクの一部が負トルクとして充電に用いられる制御において、前記電動機MGにより充電を行うための負トルクが増加させられ、それに伴い充電量が上昇させられる。次に、時点t3において、システム軸トルクが上昇後のアクセル開度ACCに対応する値に到達し、エンジントルクの上昇が停止させられる。それと相前後して、充電量が前記蓄電装置58の制限値(変速前制限値)に到達し、前記電動機MGの負トルク増加が停止させられる。次に、時点t4において、前記自動変速機18のアップ変速(低速段から高速段への変速)が開始され、エンジントルクの上昇が開始されると共に、前記電動機MGの負トルクの増加が開始される。ここで、システム軸トルクは維持され、エンジントルクの増加分は電動機MGの負トルク増加に用いられる。斯かる電動機MGの負トルク増加に伴い充電量が上昇させられる。次に、時点t5において、充電量が前記蓄電装置58の充電要求量に到達し、前記電動機MGの負トルク増加が停止させられる。すなわち、エンジントルクの増加が停止させられ、その増加分による前記電動機MGの負トルク増加が停止させられる。次に、時点t6において、前記自動変速機18のアップ変速が終了させられる。この変速終了に伴い、前記蓄電装置58の充電量制限値は変速前の値よりも大きな値に設定されるが、図11に示す制御においては、時点t5において充電要求量に到達しているため、前記電動機MGの負トルクは時点t5以降もその時点t5における値に維持される。
【0042】
図12は、前記電子制御装置60による本実施例の充電量制限値設定制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0043】
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、前記クラッチK0が係合中であるか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合には、S2において、通常EV走行時すなわち前記クラッチK0を開放して前記電動機MGを駆動源とする走行モードにおけるその電動機MGのトルク制御が実行された後、本ルーチンが終了させられるが、S1の判断が肯定される場合には、S3において、前記自動変速機18において第1速段「1st」が成立させられているか否かが判断される。このS3の判断が否定される場合には、S7以下の処理が実行されるが、S3の判断が肯定される場合には、S4において、前記トルクコンバータ16のロックアップクラッチLUが係合中であるか否かが判断される。このS4の判断が肯定される場合には、S5において、予め定められた充電量制限値設定マップ1−Aが選択され、そのマップ1−Aからアクセル開度ACC等に基づいて前記蓄電装置58の充電量制限値が設定された後、本ルーチンが終了させられるが、S4の判断が否定される場合には、S6において、予め定められた充電量制限値設定マップ1−Bが選択され、そのマップ1−Bからアクセル開度ACC等に基づいて前記蓄電装置58の充電量制限値が設定された後、本ルーチンが終了させられる。
【0044】
S7においては、前記自動変速機18において第2速段「2nd」が成立させられているか否かが判断される。このS7の判断が否定される場合には、S11以下の処理が実行されるが、S7の判断が肯定される場合には、S8において、前記トルクコンバータ16のロックアップクラッチLUが係合中であるか否かが判断される。このS8の判断が肯定される場合には、S9において、予め定められた充電量制限値設定マップ2−Aが選択され、そのマップ2−Aからアクセル開度ACC等に基づいて前記蓄電装置58の充電量制限値が設定された後、本ルーチンが終了させられるが、S8の判断が否定される場合には、S10において、予め定められた充電量制限値設定マップ2−Bが選択され、そのマップ2−Bからアクセル開度ACC等に基づいて前記蓄電装置58の充電量制限値が設定された後、本ルーチンが終了させられる。
【0045】
S11においては、前記自動変速機18において第3速段「3rd」が成立させられているか否かが判断される。このS11の判断が否定される場合には、第4速段「4th」以上の高速段に関して、S3〜S10等と同様に各変速段毎にロックアップクラッチLUの係合乃至開放それぞれに対応して定められた充電量制限値設定マップの選択、及びそのマップに基づく充電量制限値の設定が行われるが、S11の判断が肯定される場合には、S12において、前記トルクコンバータ16のロックアップクラッチLUが係合中であるか否かが判断される。このS12の判断が肯定される場合には、S13において、予め定められた充電量制限値設定マップ3−Aが選択され、そのマップ3−Aからアクセル開度ACC等に基づいて前記蓄電装置58の充電量制限値が設定された後、本ルーチンが終了させられるが、S12の判断が否定される場合には、S14において、予め定められた充電量制限値設定マップ3−Bが選択され、そのマップ3−Bからアクセル開度ACC等に基づいて前記蓄電装置58の充電量制限値が設定された後、本ルーチンが終了させられる。以上の制御において、S3〜S14が前記充電量制限値設定制御部92の動作に対応する。
【0046】
このように、本実施例によれば、要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて前記電動機MGによる充電を行う制御において、前記自動変速機18の変速比γが大きいほどその電動機MGによる充電量の制限値が小さい値とされることから、要求トルクとエンジン出力トルクとの誤差が加速度に影響を与え易い、前記自動変速機18の変速比γが比較的大きい駆動状態においては充電量の制限値を小さくすることで目標エンジントルクが小さくなり、結果として目標エンジントルクと実際のエンジントルクとの誤差が小さくなることで運転者の違和感の発生を抑制できる。前記自動変速機18の変速比γが比較的小さい駆動状態においては、エンジントルク誤差の車両加速度への影響は小さいため、充電量制限値を大きくすることで最大限燃費の向上を実現できる。すなわち、エンジン出力トルクの余剰トルクで電動機MGの発電を行う際に、燃費の向上を図りつつドライバビリティの低下を抑制するハイブリッド車両10の電子制御装置60を提供することができる。
【0047】
本実施例によれば、要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて前記電動機MGによる充電を行う制御において、前記ロックアップクラッチLUが開放された状態においては、そのロックアップクラッチLUが係合された状態よりも前記電動機MGによる充電量の制限値が小さい値とされることから、要求トルクとエンジン出力トルクとの誤差が加速度に影響を与え易い、前記ロックアップクラッチLUが開放された駆動状態においては充電量の制限値を小さくすることで目標エンジントルクが小さくなり、結果として目標エンジントルクと実際のエンジントルクとの誤差が小さくなることで運転者の違和感の発生を抑制できる。前記ロックアップクラッチLUが係合された駆動状態においては、エンジントルク誤差の車両加速度への影響は小さいため、充電量制限値を大きくすることで最大限燃費の向上を実現できる。すなわち、エンジン出力トルクの余剰トルクで電動機MGの発電を行う際に、燃費の向上を図りつつドライバビリティの低下を抑制するハイブリッド車両10の電子制御装置60を提供することができる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0049】
10:ハイブリッド車両、12:エンジン、16:トルクコンバータ、16p:ポンプ翼車(入力部材)、16t:タービン翼車(出力部材)、18:自動変速機、24:駆動輪、60:電子制御装置、LU:ロックアップクラッチ、MG:電動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に接続された電動機と、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた変速機とを、備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて前記電動機による充電を行う制御において、前記変速機の変速比が大きいほど該電動機による充電量の制限値が小さい値とされることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
エンジンと、該エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に接続された電動機と、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に設けられたトルクコンバータと、該トルクコンバータにおける入力部材及び出力部材の間に設けられたロックアップクラッチとを、備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
要求トルクに対するエンジン出力トルクの余剰トルクを用いて前記電動機による充電を行う制御において、前記ロックアップクラッチが開放された状態においては、該ロックアップクラッチが係合された状態よりも前記電動機による充電量の制限値が小さい値とされることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−71662(P2013−71662A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213118(P2011−213118)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】