ハイブリッド車両の駆動トルク制御装置
【課題】ギヤガタ詰め精度向上に好適なハイブリッド車両の駆動トルク制御装置を提供する。
【解決手段】アクセルペダル操作と車速に応じて設定される目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際に、変速機3から駆動車輪2までの伝達駆動系が負駆動状態から正駆動状態に切り替わるまでのギヤガタ詰め判定の間は、変速機3への入力トルクを目標駆動トルクよりも小さく、0トルクよりも大きい所定値(ギヤガタ詰めトルク)に制限する変速機入力トルク制限手段を備える。そして、変速機入力トルク制限手段は、ハイブリッド走行モードの場合は、エンジン1への要求トルクを目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際のエンジントルク指令値とエンジン燃焼下限トルクの大きい方の値に保持させて、前記所定値(ギヤガタ詰めトルク)との差分をモータジェネレータ5で補正する。
【解決手段】アクセルペダル操作と車速に応じて設定される目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際に、変速機3から駆動車輪2までの伝達駆動系が負駆動状態から正駆動状態に切り替わるまでのギヤガタ詰め判定の間は、変速機3への入力トルクを目標駆動トルクよりも小さく、0トルクよりも大きい所定値(ギヤガタ詰めトルク)に制限する変速機入力トルク制限手段を備える。そして、変速機入力トルク制限手段は、ハイブリッド走行モードの場合は、エンジン1への要求トルクを目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際のエンジントルク指令値とエンジン燃焼下限トルクの大きい方の値に保持させて、前記所定値(ギヤガタ詰めトルク)との差分をモータジェネレータ5で補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機を介して駆動力が伝達されるハイブリッド車両の駆動トルク制御装置に関し、特に、駆動トルクが負トルクと正トルクとの間で切り替る際に発生する加減速ショックを低減するに好適なハイブリッド車両の駆動トルク制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から運転者が原動機を無負荷状態から負荷状態に切り替える操作を行ったことで、変速ギヤの噛み合い位置が変化し、ギヤバックラッシュ分だけ回転が加速し、ギヤ噛み合い時に発生する大きなショックを抑制する加速ショック軽減装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、変速機を含む伝動系が逆駆動状態から正駆動状態に切り替わるまでの駆動状態切り替え中は、原動機の出力トルクを運転者の前記操作に対応した原動機要求トルクよりも小さな所定値(ギヤガタ詰めトルク)に保持するトルク制限手段を設けている。このため、変速機入力トルクはトルク制限手段により小さくされ、ギヤバックラッシュ分の回転加速を抑えて加速ショックが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−47080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、トルクバラツキや応答遅れが大きいエンジンの応答に基づいてギヤガタ詰めを行なっている。このため、駆動トルクの応答精度が低く、ギヤガタ詰めトルクまでの到達時間のバラツキやギヤガタ詰めトルクのバラツキにより、ギヤガタ詰め精度が低下するという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、ギヤガタ詰め制御の精度向上に好適なハイブリッド車両の駆動トルク制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、動力源としてエンジンおよびモータジェネレータを具え、モータジェネレータからの動力のみによる電気走行モードと、エンジンおよびモータジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードとを選択可能なハイブリッド車両を対象とする。
【0008】
そして、運転者による要求負荷に応じた情報に基づき駆動力を決定すると共に電気走行モードおよびハイブリッド走行モード間でのモード切り替えを行うようにしたハイブリッド車両である。
【0009】
本発明は、かかるハイブリッド車両において、アクセルペダル操作と車速に応じて設定される目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際に、変速機から駆動車輪までの伝達駆動系が負駆動状態から正駆動状態に切り替わるまでのギヤガタ詰め判定の間は、変速機への入力トルクを目標駆動トルクよりも小さく、0トルクよりも大きい所定値に制限する変速機入力トルク制限手段を備えることを特徴としている。
【0010】
また、前記変速機入力トルク制限手段は、ハイブリッド走行モードの場合は、エンジンへの要求トルクを目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際のエンジントルク指令値とエンジン燃焼下限トルクの大きい方の値に保持させて、前記所定値との差分をモータジェネレータで補正するよう作動することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
したがって、本発明では、ギヤガタ詰め判定中は、エンジントルクをギヤガタ詰め制御前のエンジントルクとエンジン燃焼下限トルクの大きい方の値に保持させて、ギヤガタ詰め中のエンジントルクを一定にする。これにより、ギヤガタ詰め中のギヤガタ詰めトルクの精度を向上させることができる。
【0012】
また、ギヤガタ詰め中にエンジントルクを一定にして、ギヤガタ詰めトルクとの差分をモータジェネレータ5で補正することで、ギヤガタ詰めトルクの精度向上が図れ、さらにギヤガタ詰め後はエンジンのトルクが遅れなく出力できるので発進レスポンスも向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の着想を適用可能なハイブリッド車両のパワートレーンを示す概略平面図。
【図2】パワートレーンの制御システムを示すブロック線図。
【図3】制御システムにおける統合コントローラの機能別ブロック線図。
【図4】目標駆動力演算部が目標駆動力を求めるときに用いる目標駆動力の特性線図。
【図5】目標駆動力演算部がモータジェネレータのアシストトルクを求めるときに用いるアシストトルクの特性線図。
【図6】ハイブリッド車両の電気走行(EV)モード領域およびハイブリッド走行(HEV)モード領域を示す領域線図。
【図7】ハイブリッド車両のバッテリ蓄電状態に対する目標充放電量特性を示す特性線図。
【図8】車速に応じた最良燃費線までのエンジントルクの上昇経過を示すエンジントルク上昇経過説明図。
【図9】変速制御部で変速機の変速比を設定する変速特性線図。
【図10】アクセル開度のON−OFF切り替わり状態を判定する制御フローチャート。
【図11】ギヤガタ詰め制御が可能な状態であるか否かを判定する制御フローチャート。
【図12】アクセル開度をOFF状態からON状態に変化される際に実行されるギヤガタ詰め制御の制御フローチャート。
【図13】アクセル開度をON状態からOFF状態に変化される際に実行されるギヤガタ詰め制御の制御フローチャート。
【図14】ギヤガタ詰め制御時における目標駆動トルク(変速機入力トルク)を設定する制御フローチャート。
【図15】ギヤガタ詰め制御時におけるエンジントルク・モータトルク指令値を設定する制御フローチャート。
【図16】ギヤガタ詰め制御時における各トルクの変化状態を示すタイムチャート。
【図17】ギヤガタ詰め制御時における各トルクの変化状態を示す別のタイムチャート。
【図18】ギヤガタ詰めトルクの変速比に対する特性を説明する特性図。
【図19】ギヤガタ詰め時間の変速比に対する特性を説明する特性図。
【図20】ギヤガタ詰めトルク及びギヤガタ詰め時間の変速機潤滑油温度に対する補正係数を説明する説明図。
【図21】第2クラッチの配列を変更した例(A)(B)を示すハイブリッド車両のパワートレーンを示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の前記したハイブリッド車両の駆動トルク制御装置を適用可能なハイブリッド車両のパワートレーンを例示する。このハイブリッド車両は、フロントエンジン・リヤホイールドライブ車(後輪駆動車)をベース車両とし、これをハイブリッド化したものである。図中、1は、第1動力源としてのエンジンであり、2は駆動車輪(後輪)である。
【0016】
図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンにおいては、通常の後輪駆動車と同様にエンジン1の車両前後方向後方に自動変速機3をタンデムに配置している。即ち、エンジン1(クランクシャフト1a)からの回転を自動変速機3の入力軸3aへ伝達する軸4に結合してモータジェネレータ5を設け、このモータジェネレータ5を、第2動力源として具える。
【0017】
モータジェネレータ5は、駆動モータ(電動機)として作用し、ジェネレータ(発電機)として作用するもので、エンジン1および自動変速機3間に配置する。このモータジェネレータ5およびエンジン1間、より詳しくは、軸4とエンジンクランクシャフト1aとの間に第1クラッチ6を介挿し、この第1クラッチ6によりエンジン1およびモータジェネレータ5間を切り離し可能に結合する。ここで第1クラッチ6は、伝達トルク容量を連続的もしくは段階的に変更可能なものとし、例えば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的もしくは段階的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成する。
【0018】
モータジェネレータ5および駆動車輪(後輪)2間に第2クラッチ7を介挿し、この第2クラッチ7によりモータジェネレータ5および駆動車輪(後輪)2間を切り離し可能に結合する。第2クラッチ7も第1クラッチ6と同様、伝達トルク容量を連続的もしくは段階的に変更可能なものとし、例えば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的もしくは段階的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成する。
【0019】
自動変速機3は、周知の任意なものでよく、複数の変速摩擦要素(クラッチやブレーキ等)を選択的に締結・解放することで、これら変速摩擦要素の締結・解放の組み合わせにより伝動系路(変速段)を決定するものとする。従って自動変速機3は、入力軸3aからの回転を選択変速段に応じたギヤ比で変速して出力軸3bに出力する。この出力回転は、ディファレンシャルギヤ装置8により左右後輪2へ分配して伝達され、車両の走行に供される。但し自動変速機3は、上記したような有段式のものに限られず、無段変速機であってもよいのは言うまでもない。
【0020】
ところで図1においては、モータジェネレータ5および駆動車輪2を切り離し可能に結合する第2クラッチ7として専用のものを新設するのではなく、自動変速機3内に既存する変速摩擦要素を流用する。この場合、第2クラッチ7が締結により上記の変速段選択機能(変速機能)を果たして自動変速機3を動力伝達状態にするのに加え、第1クラッチ6の解放・締結との共働により、後述するモード選択機能を果たし得ることとなり、専用の第2クラッチが不要でコスト上大いに有利である。
【0021】
なお、第2クラッチ7は専用のものを新設してもよく、この場合、図21(A)のように、第2クラッチ7は自動変速機3の入力軸3aとモータジェネレータ軸4との間に設けたり、図21(B)のように、自動変速機3の出力軸3bと後輪駆動系との間に設ける。
【0022】
上記した図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンにおいては、停車状態からの発進時などを含む低負荷・低車速時に用いられる電気走行(EV)モードが要求される場合、第1クラッチ6を解放し、第2クラッチ7の締結により自動変速機3を動力伝達状態にする。なお第2クラッチ7は、自動変速機3内の変速摩擦要素のうち、現変速段で締結させるべき変速摩擦要素であって、選択中の変速段ごとに異なる。
【0023】
この状態でモータジェネレータ5を駆動すると、当該モータジェネレータ5からの出力回転のみが変速機入力軸3aに達することとなり、自動変速機3が当該入力軸3aへの回転を、選択中の変速段に応じ変速して変速機出力軸3bより出力する。変速機出力軸3bからの回転はその後、ディファレンシャルギヤ装置8を経て後輪2に至り、車両をモータジェネレータ5のみによって電気走行(EV走行)させることができる。
【0024】
高速走行時や大負荷走行時などで用いられるハイブリッド走行(HEV走行)モードが要求される場合、第2クラッチ7の締結により自動変速機3を対応変速段選択状態(動力伝達状態)にしたまま、第1クラッチ6も締結させる。この状態では、エンジン1からの出力回転およびモータジェネレータ5からの出力回転の双方が変速機入力軸3aに達することとなり、自動変速機3が当該入力軸3aへの回転を、選択中の変速段に応じ変速して、変速機出力軸3bより出力する。変速機出力軸3bからの回転はその後、ディファレンシャルギヤ装置8を経て後輪2に至り、車両をエンジン1およびモータジェネレータ5の双方によってハイブリッド走行(HEV走行)させることができる。
【0025】
かかるHEV走行中において、エンジン1を最適燃費で運転させるとエネルギーが余剰となる場合、この余剰エネルギーによりモータジェネレータ5を発電機として作動させることで余剰エネルギーを電力に変換する。そして、この発電電力をモータジェネレータ5のモータ駆動に用いるよう蓄電しておくことでエンジン1の燃費を向上させることができる。
【0026】
図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンを成すエンジン1、モータジェネレータ5、第1クラッチ6、および第2クラッチ7は、図2に示すようなシステムにより制御する。図2の制御システムは、パワートレーンの動作点を統合制御する統合コントローラ20を具える。パワートレーンの動作点は、目標エンジントルクと、目標モータジェネレータトルク(目標モータジェネレータ回転数でもよい)と、第1クラッチ6の目標伝達トルク容量と、第2クラッチ7の目標伝達トルク容量とで規定する。
【0027】
統合コントローラ20には、上記パワートレーンの動作点を決定するために、下記各信号が入力される。入力される信号としては、エンジン回転数を検出するエンジン回転センサ11からの信号と、モータジェネレータ回転数を検出するモータジェネレータ回転センサ12からの信号と、変速機入力回転数を検出する入力回転センサ13からの信号と、がある。また、変速機出力回転数を検出する出力回転センサ14からの信号と、車両への要求負荷を表すアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度APO)を検出するアクセル開度センサ15(運転負荷検出手段)からの信号と、が入力される。さらに、ブレーキ油圧(BPS)を検出するブレーキ油圧センサ23と、モータジェネレータ5用の電力を蓄電しておくバッテリ9の蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)を検出する蓄電状態センサ16からの信号と、が入力される。アクセル開度センサ15には、アクセルペダルが踏込まれていない状態を検出するアイドルスイッチが設けられており、アイドルスイッチがONに変化することによりアクセルOFF状態となっていることを統合コントローラ20に入力する。
【0028】
なお、上記したセンサのうち、エンジン回転センサ11、モータジェネレータ回転センサ12、入力回転センサ13、および出力回転センサ14はそれぞれ、図1に示すように配置することができる。
【0029】
統合コントローラ20は、上記入力情報のうちアクセル開度APO、バッテリ蓄電状態SOC、および変速機出力回転数(車速VSP)から、運転者が希望している車両の駆動力を実現可能な運転モード(EVモード、HEVモード)を選択する。また、統合コントローラ20は、アクセル開度APO、バッテリ蓄電状態SOC、および変速機出力回転数(車速VSP)から、目標エンジントルク、目標モータジェネレータトルク、目標第1クラッチ伝達トルク容量、および目標第2クラッチ伝達トルク容量をそれぞれ演算する。目標エンジントルクはエンジンコントローラ21に供給され、目標モータジェネレータトルク(目標モータジェネレータ回転数でもよい)はモータジェネレータコントローラ22に供給される。
【0030】
エンジンコントローラ21は、エンジントルクが目標エンジントルクとなるようエンジン1を制御する。また、モータジェネレータコントローラ22はモータジェネレータ5のトルク(または回転数)が目標モータジェネレータトルク(または目標モータジェネレータ回転数)となるよう、バッテリ9およびインバータ10を介してモータジェネレータ5を制御する。
【0031】
統合コントローラ20は、目標第1クラッチ伝達トルク容量および目標第2クラッチ伝達トルク容量に対応したソレノイド電流を第1クラッチ6および第2クラッチ7の締結制御ソレノイド(図示せず)に供給する。そして、統合コントローラ20は、第1クラッチ6の伝達トルク容量が目標伝達トルク容量に一致するよう、また、第2クラッチ7の伝達トルク容量が目標第2クラッチ伝達トルク容量に一致するよう、第1クラッチ6および第2クラッチ7を個々に締結力制御する。
【0032】
統合コントローラ20は、上記した運転モード(EVモード、HEVモード)の選択、目標エンジントルク、目標モータジェネレータトルク、目標第1クラッチ伝達トルク容量、および目標第2クラッチ伝達トルク容量の演算を、図3の機能別ブロック線図で示すように実行する。
【0033】
目標駆動力演算部30では、図4に示す目標定常駆動トルクマップと図5に示すMGアシストトルクマップを用いて、アクセル開度APOと車速から、目標定常駆動トルクとMGアシストトルクを算出する。
【0034】
運転モード選択部40では、図6に示すEV−HEV領域マップを用いて、アクセル開度APOおよび車速VSPから目標とする運転モードを決定する。図6に示すEV−HEV領域マップから明らかなように、高負荷・高車速時はHEVモードを選択し、低負荷・低車速時はEVモードを選択する。また、運転モード選択部40では、EV走行中にアクセル開度APOおよび車速VSPの組み合わせで決まる運転点がEV→HEV切り換え線を越えてHEV領域に入るとき、EVモードからエンジン1始動を伴うHEVモードへのモード切り換えを行う。また、運転モード選択部40では、HEV走行中に運転点がHEV→EV切り換え線を越えてEV領域に入るとき、HEVモードからエンジン1停止およびエンジン1切り離しを伴うEVモードへのモード切り換えを行うものとする。エンジン始動停止線はバッテリの容量SOCが低くなるにつれて、アクセル開度APOが小さくなる方向に低下させて設定されている。
【0035】
エンジン1の始動処理は、EV状態で図6に示すエンジン始動線をアクセル開度APOが越えた時点で、実行される。即ち、前記第2クラッチ7を半クラッチ状態にスリップさせるように第2クラッチ7のトルク容量を制御し、第2クラッチ7がスリップ開始したと判断した後に第1クラッチ6の締結を開始してエンジン回転を上昇させる。エンジン回転が初爆可能な回転数に達成したらエンジン1を作動させてモータジェネレータ回転数とエンジン回転数が近くなったところで第1クラッチ6を完全に締結し、その後第2クラッチ7をロックアップさせてHEVモードに遷移させる。
【0036】
図3の目標充放電演算部50では、図7に示す走行中発電要求出力マップを用いて、バッテリ蓄電状態SOCから目標充放電量(電力)を演算する。
【0037】
動作点指令部60では、アクセル開度APOと、目標駆動力と、目標運転モードと、車速VSPと、目標充放電電力とから、これら動作点到達目標を演算する。即ち、動作点到達目標として、時々刻々の過渡的な目標エンジントルクと、目標モータジェネレータトルクと、第1クラッチ6の目標伝達トルク容量に対応した目標ソレノイド電流と、第2クラッチ7の目標伝達トルク容量と、目標変速段とを演算する。また、現在の動作点から図8に示す最良燃費線までエンジントルクを上げるのに必要な出力を演算し、これと上記目標充放電量(電力)tPとを比較し、小さい方の出力を要求出力として、エンジン出力に加算する。また、アクセル開度APO若しくは踏込まれていないアクセルペダル状態(アイドルスイッチ信号)に基づき、アクセル開度がOFF状態からON状態に変化された場合及びON状態からOFF状態に変化された場合に、後述する変速機3のギヤガタ詰め制御を実行する。
【0038】
変速制御部70では、上記の目標第2クラッチ伝達トルク容量と、目標変速段とを入力され、これら目標第2クラッチ伝達トルク容量および目標変速段が達成されるよう自動変速機3内の対応するソレノイドバルブを駆動する。これにより図1の自動変速機3は、第2クラッチ7を目標第2クラッチ伝達トルク容量が達成されるよう締結制御されつつ、目標変速段が選択された動力伝達状態になる。図8の実線はアップシフト線、破線はダウンシフト線をそれぞれ示す変速マップである。そして、車速とアクセル開度APOから現在の変速段から次変速段をいくつにするか判定し、変速要求があれば変速クラッチを制御して変速させる。
【0039】
前記動作点指令部60における変速機3のギヤガタ詰め制御は、図10〜図15に示す制御プログラムにより実行される。図10はギヤガタ詰め制御を開始する状態を判定するために実行されるアクセル開度のON−OFF切り替わり状態を判定する制御フローチャートであり、図11はギヤガタ詰め制御が可能な状態であるか否かを判定する制御フローチャートである。また、図12はアクセル開度をOFF状態からON状態に変化される際に、図13はアクセル開度をON状態からOFF状態に変化される際に、夫々実行されるギヤガタ詰め制御の制御フローチャートである。そして、図14はギヤガタ詰め制御時における目標駆動トルク(変速機入力トルク)を設定する制御フローチャートであり、図15はギヤガタ詰め制御時におけるエンジントルク・モータジェネレータトルク指令値を設定する制御フローチャートである。上記した夫々の制御フローチャートについて、図16に示すタイムチャートと共に、以下に説明する。
【0040】
図16に示すタイムチャートの左半分は、時点t1でアクセルペダルがOFF(アクセルスイッチON)状態からON(アイドルスイッチOFF)状態に変化され、時点t3のアクセル開度APOに到達した際の、各トルクの変化状態を示している。また、図16の右半分は、時点t4でアクセルペダルがON(アクセルスイッチOFF)状態から踏み戻されて時点t5でOFF(アイドルスイッチON)状態に変化された際の、各トルクの変化状態を示している。
【0041】
図10に示すギヤガタ詰め制御を開始する状態を判定する制御フローチャートは、アクセル開度状態が、OFF状態(アイドルスイッチON)からON状態(アイドルスイッチOFF)、若しくは、その逆に、変化したか否かを判定する。即ち、アクセル開度がOFF−ON(アイドルスイッチがON−OFF)に変化した場合と、ON−OFF(アイドルスイッチがOFF−ON)に変化した場合に、アクセルONOFF切り替わりフラグをONとする。また、アクセル開度がOFF状態(アイドルスイッチがON−ON状態)に維持されている場合、アクセル開度がON状態(アイドルスイッチがOFF−OFF状態)に維持される場合は、アクセルONOFF切り替わりフラグをOFFとする。
【0042】
先ずステップS1においては、アクセルONOFF切り替わりフラグが前回の処理ステップによって既にONに設定されているが否か、即ち、アクセルONOFF切り替わりフラグがまだOFFであるか否かをチェックする。
【0043】
そして、アクセルONOFF切り替わりフラグがOFFである時は、ステップS2において、前回のアクセルONOFF切り替わり判定結果と今回のアクセルONOFF切り替わり判定結果とが同じか否かを判定する。即ち、アイドルスイッチがON状態に維持されるか、若しくは、OFF状態が維持されている場合は、前回と今回との判定結果が同じ(OFF−OFF)となる。また、アイドルスイッチがON−OFF、若しくは、OFF−ONに変化した場合には、前回と今回との判定結果が変化(OFF−ON)する。
【0044】
アクセルONOFF切り替わりフラグが、前回と今回とで同じである場合には今回の処理を終了させ、前回と今回とで異なる時には、ステップS3において、アクセルONOFF切り替わりフラグをONとする(図16における時点t1,t4参照)。
【0045】
また、ステップS1において、アクセルONOFF切り替わりフラグが前回の処理ステップによりONとされている場合には、図11の後述するギヤガタ詰め制御許可判定を経て図12若しくは図13に示すギヤガタ詰め制御が実行される。このため、ステップS4において、後述するギヤガタ詰め判定中フラグがONからOFFに切り替ったか否かが判定される。ステップS4でギヤガタ詰め判定中フラグがONからOFFに切り替ったと判定された、即ち、ギヤガタ詰め制御が終了した時には、ステップS5において、アクセルONOFF切り替わりフラグをOFFに戻す。また、ステップS4での判定が切り替っていない、即ち、ギヤガタ詰め制御中と判定された時にはアクセルONOFF切り替わりフラグをOFFに戻すことなく今回の処理を終了する。
【0046】
図11に示す制御フローチャートでは、変速機3のギヤ段・走行モード(EVモード、HEVモード)がギヤガタ詰め制御が可能な状態である場合に、ギヤガタ詰め制御許可フラグをONとする。また、ギヤガタ詰め制御が可能な状態でない場合、及び、ギヤガタ詰め制御許可フラグのONが所定時間経過した場合にギヤガタ詰め制御許可フラグをOFFとする。ステップS10〜ステップS14はギヤガタ詰め制御許可フラグの設定を実行し、ステップS15〜ステップS19ではギヤガタ詰め制御許可フラグの設定解除を実行する。ギヤガタ詰め制御が可能でない状態とは、例えば、変速機3のギヤ段・走行モード(EVモード、HEVモード)が変更中である場合とか、特定のギヤ段において、ギヤガタ詰め制御を禁止するように設定する。また、他の条件を追加してもよい。
【0047】
先ずステップS10において、ギヤガタ詰め制御許可フラグがOFFであるか否かを判定する。ギヤガタ詰め制御許可フラグがOFFであると判定する時には、ステップS11において、図10のアクセルONOFF切り替わりフラグがONであるか否かを判定する。そして、アクセルONOFF切り替わりフラグがONである時には、ステップS12において、変速機3のギヤ段・走行モード(EVモード、HEVモード)がギヤガタ詰め制御の許可状態であるか否かを判定する。そして、変速機3のギヤ段・走行モード(EVモード、HEVモード)がギヤガタ詰め制御の許可状態である時には、ステップS13において、ギヤガタ詰め制御許可フラグをONにして、ステップS14においてタイマーカウントを開始する。しかしながら、ステップS11及びステップS12においての判定が、いずれかにおいて否定される場合には、ステップS13,14の設定をすることなく今回の処理を終了させる。
【0048】
また、ステップS10においてギヤガタ詰め制御許可フラグがOFFでない(=ON)時には、ステップS15において、図10のアクセルONOFF切り替わりフラグがONで継続しているか否かを判定する。また、ステップS16において、変速機3のギヤ段・走行モード(EVモード、HEVモード)がギヤガタ詰め制御の許可状態が継続しているか否かを判定する。そして、いずれの判定も継続してする時に、ステップS17において、ギヤガタ詰め制御許可フラグがON状態に切換えられてから所定時間経過しているか否かを判定する。そして、ステップS17での判定において、所定時間が経過していない時には、ギヤガタ詰め制御許可フラグをON状態に維持した状態で今回の処理を終了する。
【0049】
また、ステップS15でのアクセルONOFF切り替わりフラグがONで継続していない時、ステップS16での変速機3のギヤ段・走行モード(EVモード、HEVモード)がギヤガタ詰め制御の許可状態が継続していない時、及び、ステップS17での所定時間が経過している時には、ステップS18に進む。そして、ステップS18において、ギヤガタ詰め制御許可フラグをOFFにして、ステップS19においてタイマーカウントをリセットする。
【0050】
図12に示すアクセル開度がOFF状態からON状態となる時に実行されるギヤガタ詰め制御のフローチャートは、ギヤガタ詰め制御を開始するステップS20〜ステップS25と、ギヤガタ詰め制御を終了させるステップS26〜ステップS29と、からなる。
【0051】
まず、ステップS20において、ギヤガタ詰め制御が実行されているか否かを、ギヤガタ詰め判定中フラグがOFFか否かにより判定する。ギヤガタ詰め判定中フラグがOFFである時には、ステップS21において、図10のギヤガタ詰め制御許可フラグがONであるか否かを判定する。そして、ステップS21のギヤガタ詰め制御許可フラグがOFFである時は、ギヤガタ詰め制御を開始せずに処理を終了させ、上記ギヤガタ詰め制御許可フラグがONである時に、ステップS22に進む。ステップS22においては、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクより低く設定したギヤガタ詰め開始トルクを超えたか否かを判定する。
【0052】
ギヤガタ詰めトルクは、図18に示すように、HEVモードとEVモードごとに分け、しかも、ギヤ段毎に設定する。これは、モータジェネレータ5のみで駆動するEVモードの方がエンジン1とモータジェネレータ5との両者で駆動するHEVモードよりトルク精度が高い。このため、EVモードに合わせてHEVモードのギヤガタトルクを決定すると、HEVモードのギヤガタショックが悪くなる。逆に、HEVモードに合わせてEVモードのギヤガタトルクを決定すると、EVモードのギヤガタショックが悪くなる。このため、ギヤガタ詰めトルクは、EVモードの方が、HEVモードよりも小さく設定する。これにより、HEVモードはエンジン1のトルクバラツキを考慮したギヤガタ詰めトルクを設定することで、EVモードとHEVモード時のギヤガタショックを低減できる。
【0053】
また、ギヤガタ詰めトルクは、ギヤ比(=出力回転数/入力回転数)が高くなるに連れて高くなるように設定する。これは、ギヤ比が高速側変速比であるほど加速ショックが小さくて、その軽減用のギヤガタ詰めトルクを高速側変速比ほど大きくし得るためである。
【0054】
また、ギヤガタ詰めトルクは、図20に示すように、AT油温で補正できるように設定し、AT油温が低くなるほどガタ詰めトルクが大きくなるように補正係数を設定する。これは、ギヤガタ詰めトルクを決める際に、変速機3からデフまでのフリクショントルクに打ち勝つだけのトルクに設定する必要があるためである。しかしながら、ATフリクショントルクはAT油温が低いほど大きくなる特性をもっているので、AT油毎に設定し、AT油温が低くフリクションが大きいときはギヤガタ詰めトルクを大きくすることで、ギヤガタショックをAT油温によらず低くすることができる。
【0055】
そして、ステップS22では、目標駆動力がギヤガタ詰めトルクより低く設定したギヤガタ詰め開始トルクを超えない時点では、今回の処理を終了させる。しかし、ステップS22での判定において、目標駆動力がギヤガタ詰めトルクより低く設定したギヤガタ詰め開始トルクを超えた時点(図16の時点t2参照)で、ステップS23におけるアクセルONOFF切り替わりフラグがONであることを確認してステップS24へ進む。しかし、ステップS23におけるアクセルONOFF切り替わりフラグがOFFである時には今回の処理を終了させる。そして、ステップS24では、ギヤガタ詰め判定中フラグをONとし、ステップS25においてタイマーカウントを開始させ、ギヤガタ詰め制御を開始する。
【0056】
即ち、目標駆動力がギヤガタ詰めトルクより低く設定したギヤガタ詰め開始トルクを超えない時点ではギヤガタ詰め制御を開始させず、目標駆動力がギヤガタ詰めトルクより低く設定したギヤガタ詰め開始トルクを超えた時点でギヤガタ詰め制御を開始する。これは、ハイブリッド車両においては、減速度をモータジェネレータトルクで達成することが可能であり、有段ATであってもCVTのように変速前後の駆動力段差を無くすことも可能である。しかしながら、駆動力段差を無くすとハイギヤになるほど目標減速駆動力を達成するためのAT入力トルクが大きくなる。このようなハイブリッド車両ではアクセル開度OFF時の負トルクからギヤガタ詰めトルクまでのトルク段差がギヤ比や車速で異なることになるので、ギヤガタ詰め終了判定の時間がバラつき易くなる。そこで、上記のように、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクまで増加してからギヤガタ詰め判定の時間をカウントし始めることで、ギヤガタ詰め判定の精度を向上することが可能となる。
【0057】
また、ステップS23では、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクよりも大きい時(例えば、クリープ走行時)は、今回の処理を終了させて、ギヤガタ詰め制御を実施しない。これは、ギヤガタ詰め制御が終了している可能性があるのと、ギヤガタ詰め制御を行なうと変速機入力トルクが不用意に低下してしまうためである。
【0058】
また、ステップS20において、ギヤガタ詰め制御が実行されている時には、ステップS26において、ガタ詰め制御許可フラグがOFFであるか否かが判定される。そして、ガタ詰め制御許可フラグがON(許可中)である時は、ステップS27において、ギヤガタ詰め判定中フラグがON状態に切換えられてから所定時間経過しているか否かが判定される。そして、ステップS27での判定において、所定時間が経過していない時には今回の処理は終了させ、ギヤガタ詰め制御を継続させる。しかし、ステップS27での判定において、所定時間が経過している時には、ステップS28において、ギヤガタ詰め判定中フラグをOFFにして、ステップS29においてタイマーカウントをリセットし、ギヤガタ詰め制御を終了させる。
【0059】
前記ステップS27での判定に使用する所定時間(ギアガタ詰め終了判定時間)は、図19に示すように、HEVモードとEVモードごとに分け、しかも、ギヤ段ごとに設定する。これは、モータジェネレータ5のみで駆動するEVモードの方がエンジン1とモータジェネレータ5との両者で駆動するHEVモードよりトルク精度が高く、HEVモードはエンジン1のトルクバラツキを考慮したギヤガタ詰めトルクにする必要がある。よって、HEVモードはトルクバラツキ分を考慮したギヤガタ詰め終了判定時間のバラツキを考慮する必要があり、ギヤガタ詰め終了判定時間をEVモードより長くしている。また、EVモードに合わせてHEVモードのギヤガタトルクを決定すると、実際のギヤガタトルクがEVモードよりも小さかった場合は、判定時間をEVよりも長くする必要あるのでHEVモードのギヤガタショックが悪くなることもある。
【0060】
また、ギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、ギヤ比(=出力回転数/入力回転数)が高くなるに連れて短くなるように設定する。これは、ギヤ比が低速側変速比であるほどギヤガタ詰めに要する時間が長くなり、高速側変速比ほど短くなる。このため、変速機3のギヤ比毎にギヤガタ詰めトルクに制限する時間を設定することにより木目細かくショック低減が可能となる。
【0061】
また、ギヤガタ詰め終了判定時間も、図20に示すように、AT油温で補正できるように設定し、AT油温が低くなるほどガタ詰め終了判定時間が長くなるように補正係数を設定する。これは、ギヤガタ詰め終了判定時間を決める際に、変速機3からデフまでのフリクショントルクに打ち勝つだけの時間に設定する必要があるためである。しかしながら、ATフリクショントルクはAT油温が低いほど大きくなる特性をもっている。このため、ギヤガタ詰め終了判定時間は、AT油毎に設定し、AT油温が低くフリクションが大きいときはギヤガタ詰め終了判定時間を長くすることで、ギヤガタショックをAT油温によらず低くすることができる。
【0062】
図13に示すアクセル開度をON状態からOFF状態になる時に実行されるギヤガタ詰め制御のフローチャートは、ギヤガタ詰め制御を開始するステップS30〜ステップS35と、ギヤガタ詰め制御を終了させるステップS36〜ステップS39と、からなる。
【0063】
まず、ステップS30において、ギヤガタ詰め制御が実行されているか否かを、ギヤガタ詰め判定中フラグがOFFか否かにより判定する。ギヤガタ詰め判定中フラグがOFFである時には、ステップS31において、図10のギヤガタ詰め制御許可フラグがONであるか否かを判定する。そして、ステップS31のギヤガタ詰め制御許可フラグがOFFである時は、ギヤガタ詰め制御を開始せずに処理を終了させ、上記ギヤガタ詰め制御許可フラグがONである時に、ステップS32に進む。
【0064】
ステップS32においては、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクより高く設定したギヤガタ詰め開始トルク以下に低下したか否かを判定する。ギヤガタ詰めトルクは、前述したように、図18及び図20により設定する。
【0065】
そして、ステップS32では、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクより高く設定したギヤガタ詰め開始トルク以下に低下しない時点では、今回の処理を終了させる。しかし、ステップS32での判定において、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクより高く設定したギヤガタ詰め開始トルク以下に低下した時点(図16に示す時点t5参照)で、ステップS33におけるアクセルONOFF切り替わりフラグがONであることを確認してステップS34へ進む。しかし、ステップS33におけるアクセルONOFF切り替わりフラグがOFFである時には今回の処理を終了させる。そして、ステップS34では、ギヤガタ詰め判定中フラグをONとし、ステップS35においてタイマーカウントを開始させ、ギヤガタ詰め制御を開始する。
【0066】
即ち、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクより高く設定したギヤガタ詰め開始トルク以下に低下しない時点ではギヤガタ詰め制御を開始せず、目標駆動トルクがギヤガタ詰め開始トルク以下に低下した時点でギヤガタ詰め制御を開始する。これは、アクセル開度OFFしたときの目標駆動トルクはアクセル開度OFFする前のトルクに左右されるので、ギヤガタ詰めトルクまでのトルク差がバラツクことによる。このため、ギヤガタ詰め終了判定の精度を良くするためには目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルク手前まで低下してから判断することで、バラツキを低減できる。そこで、上記のように、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクまで低下してからギヤガタ詰め判定の時間をカウントし始めることで、ギヤガタ詰め判定の精度を向上することが可能となる。
【0067】
また、ステップS33では、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクよりも低い時は、今回の処理を終了させて、ギヤガタ詰め制御を実施しない。これは、ギヤガタ詰め終了している可能性があるのと、ギヤガタ詰め制御を行なうと変速機入力トルクが不用意に増加してしまうためである。
【0068】
また、ステップS30において、ギヤガタ詰め制御が実行されている時には、ステップS36において、ガタ詰め制御許可フラグがOFFであるか否かが判定される。そして、ガタ詰め制御許可フラグがON(許可中)である時は、ステップS37において、ギヤガタ詰め判定中フラグがON状態に切換えられてから所定時間経過しているか否かが判定される。そして、ステップS37での判定において、所定時間が経過していない時には今回の処理は終了させ、ギヤガタ詰め制御を継続させる。しかし、ステップS37での判定において、所定時間が経過している時には、ステップS38において、ギヤガタ詰め判定中フラグをOFFにして、ステップS39においてタイマーカウントをリセットし、ギヤガタ詰め制御を終了させる。
【0069】
図14の制御フローチャートは、アクセル開度がOFF→ONに変化した時点(図16の時点t1)、若しくは、ON→OFFに変化した時点(図16の時点t4)、からのギヤガタ詰め制御時における目標駆動トルク(変速機入力トルク)を設定するものである。
【0070】
先ず、ステップS41において、モータジェネレータ回転数とアクセル開度APOから目標駆動トルクを演算する。ついで、ステップS42において、ギヤガタ詰め制御中であるか否かを判定し、ギヤガタ詰め制御中でない場合には、今回の処理を終了する。ステップS42での判定がギヤガタ詰め制御中である時には、ステップS43に進む。ステップS43においては、アクセルONOFF切り替わり判定フラグがONに変化した際のアクセル開度がON→OFF(図16の時点t4)に切換えられたか若しくはOFF→ON(図16の時点t1)に切換えられたかを判定する。
【0071】
ステップS43での判定でアクセル開度がON→OFF(図16の時点t4)に切換えられたと判定した時には、ステップS44に進む。ステップS44においては、目標駆動トルクとギヤガタ詰めトルク(アクセル開度OFF→ON時)とのいずれか大きい駆動トルクを変速機入力トルクとして設定する。このステップS44で設定される目標駆動トルクは、アクセル開度がON→OFF状態に変化することにより、アクセル開度がON状態における目標駆動トルクから時間と共に低下される。そして、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクに到達した時点(図16の時点t5)からギヤガタ詰め制御の終了までの間はギヤガタ詰めトルクに保持される。そして、ギヤガタ詰め制御の終了後(図16の時点t6)にステップS41で設定した目標駆動トルクに向かって再び低下される。
【0072】
また、ステップS43での判定でアクセル開度がOFF→ON(図16の時点t1)に切換えられたと判定した時には、ステップS45に進む。ステップS45では、目標駆動トルクとギヤガタ詰めトルク(アクセル開度ON→OFF時)とのいずれか小さい駆動トルクを変速機入力トルクとして設定する。このステップS45で設定される目標駆動トルクは、アクセル開度がOFF→ON状態に変化することにより、アクセル開度がOFF状態における目標駆動トルクから時間と共に上昇される。そして、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクに到達した時点(図16の時点t2)からギヤガタ詰め制御の終了までの間はギヤガタ詰めトルクに保持される。そして、ギヤガタ詰め制御の終了後(図16の時点t3)にステップS41で設定した目標駆動トルクに向かって再び上昇される。ステップS46においては、ステップS44及びステップS45で設定した目標駆動トルクをフィルタで平滑化して出力する。
【0073】
図15に示す制御フローチャートでは、ギヤガタ詰め制御時におけるエンジントルク・モータジェネレータトルク指令値を設定する。
【0074】
まず、ステップS50において、走行モードがHEVモードであるか否かが判定され、EVモードである時にはステップS56において、エンジントルク指令値を「0」に設定する。ステップS50における判定がHEVモードである場合には、ステップS51において、エンジン目標駆動トルクに発電トルクを加算してエンジントルク指令値を演算する。ステップS52において、ステップS51で演算したエンジントルク指令値が所定トルク以上であるか否かを判定する。この場合の所定トルクは、エンジン1がフューエルカット状態にするか否かを判定するトルク値である。そして、演算したエンジントルク指令値が所定トルク未満である時、即ち、フュエルカットトルク値以下である時には、ステップS60において、エンジントルク指令値をフューエルカットによるエンジンフリクショントルク値に設定する。また、演算したエンジントルク指令値が所定トルクを超えている時には、ステップS53において、前回フューエルカット状態であったか否かを判定する。
【0075】
ステップS53の判定がフューエルカット状態である時には、ステップS54において、ギヤガタ詰め制御中(アクセル開度OFF−ON時)である時に、ステップS57において、エンジントルク指定値をエンジン燃焼下限トルクに設定する。また、ステップS54において、ギヤガタ詰め制御中(アクセル開度OFF−ON時)でない時に、ステップS58において、ステップS51で設定したエンジントルク指令値に設定する。
【0076】
また、ステップS53の判定がフューエルカット状態でない時には、ステップS55において、ギヤガタ詰め制御中(アクセル開度OFF−ON時)である時に、ステップS59において、エンジントルク指定値を前回値に設定する。また、ステップS55において、ギヤガタ詰め制御中(アクセル開度OFF−ON時)でない時に、ステップS58において、ステップS51で設定したエンジントルク指令値に設定する。
【0077】
ステップS61においては、ステップS56〜ステップS60で設定したエンジントルク指令値に基づいて、モータジェネレータトルク指令値を(=目標駆動トルク−エンジントルク指令値)と演算する。
【0078】
以上のエンジントルク指令演算では、トルク増加側(アクセル開度OFF→ON時)では、ガタ詰め制御前のエンジントルクがフューエルカット(F/C)状態であれば、ギヤガタ詰め制御中はエンジントルクをエンジン下限トルクにする。また、ガタ詰め制御前のエンジントルクがフューエルカット(F/C)状態以外であれば、ギヤガタ詰め制御前のトルク値を保持させるようにしている。
【0079】
図16のタイムチャートでは、時点t0からエンジン1を駆動して発電している状態である。このため、エンジントルクは、時点t1〜t3のギヤガタ詰め制御中においても、破線で示すアクセル開度に応じて増加するトルク値推移とならずに、実線で示すように、ギヤガタ詰め制御前のトルク値(ステップS59)に保持される。破線と実線とで示すエンジントルクの差分は、ステップS61で設定するモータジェネレータトルクの破線特性から実線特性への増加により補償している。エンジントルクは、ギヤガタ詰め制御が終了した時点t3から目標エンジントルク+発電トルクの特性に復帰するよう制御され、モータジェネレータトルクによる差分トルクの補償もエンジントルクの復帰に伴い終了する。
【0080】
また、図16の時点t5からのギヤガタ詰め制御時においても、エンジントルクもアクセル開度に対応した目標エンジントルク(ステップS58)とエンジンフリクショントルク(ステップS60)のいずれか大きい方に保持される。また、アクセルがONからOFF状態に変化されることに伴い低下する目標駆動トルク(変速機入力トルク)が、時点t5でギヤガタ詰めトルクに保持される。この目標駆動トルクのギヤガタ詰めトルクの保持により発生する時点t5〜t6間のトルク差分は、ステップS61で設定するモータジェネレータトルクの破線特性から実線特性への増加によりにより補償している。
【0081】
図17に示すタイムチャートは、エンジン1がフューエルカット状態である場合を示している。そして、図17の左半分は、時点t11でアクセルペダルがOFF(アクセルスイッチON)状態からON(アイドルスイッチOFF)状態に変化され、時点t13のアクセル開度APOに到達した際の、各トルクの変化状態を示している。また、図17の右半分は、時点t14でアクセルペダルがON(アクセルスイッチOFF)状態から踏み戻されて時点t15でOFF(アイドルスイッチON)状態に変化された際の、各トルクの変化状態を示している。
【0082】
図17のタイムチャートでは、時点t10〜t11において、フューエルカット状態となっている。このため、エンジントルクは時点t11〜t12の間にフリクショントルクからステップS57によりエンジン燃焼下限トルクに増加され、破線で示すアクセル開度に応じて増加するトルク値推移とならずに、実線で示すように、ギヤガタ詰め制御中はエンジン燃焼下限トルクに保持される。破線と実線とで示すエンジントルクの差分は、ステップS61で設定するモータジェネレータトルクの破線特性から実線特性への増加により補償している。エンジントルクは、ギヤガタ詰め制御が終了した時点t13から目標エンジントルク特性に復帰するよう制御され、モータジェネレータトルクによる差分トルクの補償もエンジントルクの復帰に伴い終了する。
【0083】
また、図17の時点t15からのギヤガタ詰め制御時においても、エンジントルクもアクセル開度に対応した目標エンジントルク(ステップS58)とエンジンフリクショントルク(ステップS60)のいずれか大きい方が選択される。また、アクセルがONからOFF状態に変化されることに伴い低下する目標駆動トルク(変速機入力トルク)が、時点t15でギヤガタ詰めトルクに保持される。この目標駆動トルクのギヤガタ詰めトルクの保持により発生する時点t15〜t16間のトルク差分は、ステップS61で設定するモータジェネレータトルクによりにより補償している。
【0084】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0085】
(ア)アクセルペダル操作と車速に応じて設定される目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際に、変速機3から駆動車輪2までの伝達駆動系が負駆動状態から正駆動状態に切り替わるまでのギヤガタ詰め判定の間は、変速機3への入力トルクを目標駆動トルクよりも小さく、0トルクよりも大きい所定値(ギヤガタ詰めトルク)に制限する変速機入力トルク制限手段を備える。そして、変速機入力トルク制限手段は、ハイブリッド走行モードの場合は、エンジン1への要求トルクを目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際のエンジントルク指令値とエンジン燃焼下限トルクの大きい方の値に保持させて、前記所定値(ギヤガタ詰めトルク)との差分をモータジェネレータ5で補正する。
【0086】
即ち、ギヤガタ詰め判定中は、エンジントルクをギヤガタ詰め制御前のエンジントルクとエンジン燃焼下限トルクの大きい方の値に保持させて、ギヤガタ詰め中のエンジントルクを一定にして、ギヤガタ詰めトルクの精度を向上させることができる。
【0087】
こうして、ギヤガタ詰め中にエンジントルクを一定にして、ギヤガタ詰めトルクとの差分をモータジェネレータ5で補正することで、ギヤガタ詰めトルクの精度向上が図れ、さらにギヤガタ詰め後はエンジン1のトルクが遅れなく出力できるので発進レスポンスも向上する。
【0088】
(イ)ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記ギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、前記ギヤガタ詰めトルクより小さく且つ0トルク付近に設定したギヤガタ詰め開始トルクまで、目標駆動トルクが増加した時点から予め設定した所定時間が経過するまでとする。これは、ハイブリッド車両においては、減速度をモータジェネレータトルクで達成することが可能であり、有段ATであってもCVTのように変速前後の駆動力段差を無くすことも可能である。しかしながら、駆動力段差を無くすとハイギヤになるほど目標減速駆動力を達成するためのAT入力トルクが大きくなる。このようなハイブリッド車両ではアクセル開度OFF時の負トルクからギヤガタ詰めトルクまでのトルク段差がギヤ比や車速で異なることになるので、ギヤガタ詰め終了判定の時間がバラつき易くなる。そこで、上記のように、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクまで増加してからギヤガタ詰め判定の時間をカウントし始めることで、ギヤガタ詰め判定の精度を向上することが可能となる。
【0089】
(ウ)アクセルペダル操作と車速に応じて設定される目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際に、変速機3から駆動車輪2までの伝達駆動系が正駆動状態から負駆動状態に切り替わるまでのギヤガタ詰め判定の間は、変速機3への入力トルクを目標駆動トルクよりも大きく、0トルクよりも大きい所定値(ギヤガタ詰めトルク)に制限し、前記所定値(ギヤガタ詰めトルク)との差分をモータジェネレータ5で補正する変速機入力トルク制限手段を備える。
【0090】
これは、目標駆動トルクが正トルクから負トルクに切り変わる際に変速機3からタイヤまでの伝達駆動系が正駆動状態から負駆動状態に切り替わるときも、ギヤのバックラッシュによるショックが発生する。そこで、変速機3の入力トルクを小さいトルクに制限してギヤガタ詰めトルクを行なうことで、ショック低減ができる。この目標駆動トルクが正トルクから負トルクに切り変わる際は、ギヤのフリクショントルクがあるため、ギヤのガタ詰めトルクを正トルクにした方がショック低減可能である。
【0091】
(エ)ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記ギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、前記ギヤガタ詰めトルクより大きく設定したギヤガタ詰め開始トルクまで、目標駆動トルクが低下した時点から予め設定した所定時間が経過するまでとする。これは、アクセル開度OFFしたときの目標駆動トルクはアクセル開度OFFする前のトルクに左右されるので、ギヤガタ詰めトルクまでのトルク差がバラツクことによる。このため、ギヤガタ詰め終了判定の精度を良くするためには目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルク手前まで低下してから判断することで、バラツキを低減できる。そこで、上記のように、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクまで低下してからギヤガタ詰め判定の時間をカウントし始めることで、ギヤガタ詰め判定の精度を向上することが可能となる。
【0092】
(オ)ギヤガタ詰めトルクは、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時の各ギヤガタ詰めトルクは、変速機3の変速比毎に相違させて設定する。即ち、モータジェネレータ5のみで駆動するEVモードの方がエンジン1とモータジェネレータ5との両者で駆動するHEVモードよりトルク精度が高い。このため、HEVモードはエンジン1のトルクバラツキを考慮したギヤガタ詰めトルクを設定することで、EVモードとHEVモード時のギヤガタショックを低減できる。
【0093】
また、ギヤガタ詰めトルクは、ギヤ比(=出力回転数/入力回転数)が高くなるに連れて高くなるように設定することにより、ギヤ比が高速側変速比であるほど加速ショックが小さくて、その軽減用のギヤガタ詰めトルクを高速側変速比ほど大きくし得る。
【0094】
(カ)ギヤガタ詰めトルクは、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、電気走行モードのギヤガタ詰めトルクを、ハイブリッド走行モードのギヤガタ詰めトルクよりも小さく設定する。即ち、モータジェネレータ5のみで駆動するEVモードの方がエンジン1とモータジェネレータ5との両者で駆動するHEVモードよりトルク精度が高い。このため、HEVモードはエンジン1のトルクバラツキを考慮したギヤガタ詰めトルクを設定することで、EVモードとHEVモード時のギヤガタショックを低減できる。
【0095】
(キ)ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記ギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時のギヤガタ詰めトルクに制限する各時間は、変速機3の変速比毎に相違させて設定する。即ち、モータジェネレータ5のみで駆動するEVモードの方がエンジン1とモータジェネレータ5との両者で駆動するHEVモードよりトルク精度が高い。このため、HEVモードはエンジン1のトルクバラツキを考慮したギヤガタ詰めトルクに制限する時間を設定することで、EVモードとHEVモード時のギヤガタショックを低減できる。
【0096】
また、ギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、ギヤ比(=出力回転数/入力回転数)が低くなるほどギヤガタ詰めに要する時間が長くなり、ギヤ比が高速側変速比ほど短くなる。このため、変速機3のギヤ比毎にギヤガタ詰めトルクに制限する時間を設定することにより木目細かくショック低減が可能となる。
【0097】
(ク)ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記ギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、電気走行モードのギヤガタ詰めトルクに制限する時間を、ハイブリッド走行モードのギヤガタ詰めトルクに制限する時間よりも短く設定する。即ち、モータジェネレータ5のみで駆動するEVモードの方がエンジン1とモータジェネレータ5との両者で駆動するHEVモードよりトルク精度が高い。このため、HEVモードはエンジン1のトルクバラツキを考慮したギヤガタ詰めトルクに保持する時間を長く設定することで、EVモードとHEVモード時のギヤガタショックを低減できる。
【0098】
(ケ)ギヤガタ詰めトルクは、変速機3の潤滑油温度が低くなるほど大きくなるように補正する。このため、ATフリクショントルクはAT油温が低いほど大きくなる特性をもっているので、AT油毎に設定し、AT油温が低くフリクションが大きいときはギヤガタ詰めトルクを大きくすることで、ギヤガタショックをAT油温によらず低くすることができる。
【0099】
(コ)ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記ギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、変速機3の潤滑油温度が低くなるほど長くなるように補正する。このため、ATフリクショントルクはAT油温が低いほど大きくなる特性をもっているので、AT油毎にギヤガタ詰めトルクに制限する時間を設定し、AT油温が低くフリクションが大きいときはギヤガタ詰めトルクに制限する時間を長くする。このことで、ギヤガタショックをAT油温によらず低くすることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 エンジン
2 駆動車輪
3 変速機3
5 モータジェネレータ
6 第1クラッチ
7 第2クラッチ
8 ディファレンシャルギヤ装置
9 バッテリ
10 インバータ
11 エンジン回転センサ
12 モータジェネレータ回転センサ
13 変速機入力回転センサ
14 変速機出力回転センサ
15 アクセル開度センサ
16 バッテリ蓄電状態センサ
20 統合コントローラ
21 エンジンコントローラ
22 モータジェネレータコントローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機を介して駆動力が伝達されるハイブリッド車両の駆動トルク制御装置に関し、特に、駆動トルクが負トルクと正トルクとの間で切り替る際に発生する加減速ショックを低減するに好適なハイブリッド車両の駆動トルク制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から運転者が原動機を無負荷状態から負荷状態に切り替える操作を行ったことで、変速ギヤの噛み合い位置が変化し、ギヤバックラッシュ分だけ回転が加速し、ギヤ噛み合い時に発生する大きなショックを抑制する加速ショック軽減装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、変速機を含む伝動系が逆駆動状態から正駆動状態に切り替わるまでの駆動状態切り替え中は、原動機の出力トルクを運転者の前記操作に対応した原動機要求トルクよりも小さな所定値(ギヤガタ詰めトルク)に保持するトルク制限手段を設けている。このため、変速機入力トルクはトルク制限手段により小さくされ、ギヤバックラッシュ分の回転加速を抑えて加速ショックが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−47080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、トルクバラツキや応答遅れが大きいエンジンの応答に基づいてギヤガタ詰めを行なっている。このため、駆動トルクの応答精度が低く、ギヤガタ詰めトルクまでの到達時間のバラツキやギヤガタ詰めトルクのバラツキにより、ギヤガタ詰め精度が低下するという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、ギヤガタ詰め制御の精度向上に好適なハイブリッド車両の駆動トルク制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、動力源としてエンジンおよびモータジェネレータを具え、モータジェネレータからの動力のみによる電気走行モードと、エンジンおよびモータジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードとを選択可能なハイブリッド車両を対象とする。
【0008】
そして、運転者による要求負荷に応じた情報に基づき駆動力を決定すると共に電気走行モードおよびハイブリッド走行モード間でのモード切り替えを行うようにしたハイブリッド車両である。
【0009】
本発明は、かかるハイブリッド車両において、アクセルペダル操作と車速に応じて設定される目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際に、変速機から駆動車輪までの伝達駆動系が負駆動状態から正駆動状態に切り替わるまでのギヤガタ詰め判定の間は、変速機への入力トルクを目標駆動トルクよりも小さく、0トルクよりも大きい所定値に制限する変速機入力トルク制限手段を備えることを特徴としている。
【0010】
また、前記変速機入力トルク制限手段は、ハイブリッド走行モードの場合は、エンジンへの要求トルクを目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際のエンジントルク指令値とエンジン燃焼下限トルクの大きい方の値に保持させて、前記所定値との差分をモータジェネレータで補正するよう作動することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
したがって、本発明では、ギヤガタ詰め判定中は、エンジントルクをギヤガタ詰め制御前のエンジントルクとエンジン燃焼下限トルクの大きい方の値に保持させて、ギヤガタ詰め中のエンジントルクを一定にする。これにより、ギヤガタ詰め中のギヤガタ詰めトルクの精度を向上させることができる。
【0012】
また、ギヤガタ詰め中にエンジントルクを一定にして、ギヤガタ詰めトルクとの差分をモータジェネレータ5で補正することで、ギヤガタ詰めトルクの精度向上が図れ、さらにギヤガタ詰め後はエンジンのトルクが遅れなく出力できるので発進レスポンスも向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の着想を適用可能なハイブリッド車両のパワートレーンを示す概略平面図。
【図2】パワートレーンの制御システムを示すブロック線図。
【図3】制御システムにおける統合コントローラの機能別ブロック線図。
【図4】目標駆動力演算部が目標駆動力を求めるときに用いる目標駆動力の特性線図。
【図5】目標駆動力演算部がモータジェネレータのアシストトルクを求めるときに用いるアシストトルクの特性線図。
【図6】ハイブリッド車両の電気走行(EV)モード領域およびハイブリッド走行(HEV)モード領域を示す領域線図。
【図7】ハイブリッド車両のバッテリ蓄電状態に対する目標充放電量特性を示す特性線図。
【図8】車速に応じた最良燃費線までのエンジントルクの上昇経過を示すエンジントルク上昇経過説明図。
【図9】変速制御部で変速機の変速比を設定する変速特性線図。
【図10】アクセル開度のON−OFF切り替わり状態を判定する制御フローチャート。
【図11】ギヤガタ詰め制御が可能な状態であるか否かを判定する制御フローチャート。
【図12】アクセル開度をOFF状態からON状態に変化される際に実行されるギヤガタ詰め制御の制御フローチャート。
【図13】アクセル開度をON状態からOFF状態に変化される際に実行されるギヤガタ詰め制御の制御フローチャート。
【図14】ギヤガタ詰め制御時における目標駆動トルク(変速機入力トルク)を設定する制御フローチャート。
【図15】ギヤガタ詰め制御時におけるエンジントルク・モータトルク指令値を設定する制御フローチャート。
【図16】ギヤガタ詰め制御時における各トルクの変化状態を示すタイムチャート。
【図17】ギヤガタ詰め制御時における各トルクの変化状態を示す別のタイムチャート。
【図18】ギヤガタ詰めトルクの変速比に対する特性を説明する特性図。
【図19】ギヤガタ詰め時間の変速比に対する特性を説明する特性図。
【図20】ギヤガタ詰めトルク及びギヤガタ詰め時間の変速機潤滑油温度に対する補正係数を説明する説明図。
【図21】第2クラッチの配列を変更した例(A)(B)を示すハイブリッド車両のパワートレーンを示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の前記したハイブリッド車両の駆動トルク制御装置を適用可能なハイブリッド車両のパワートレーンを例示する。このハイブリッド車両は、フロントエンジン・リヤホイールドライブ車(後輪駆動車)をベース車両とし、これをハイブリッド化したものである。図中、1は、第1動力源としてのエンジンであり、2は駆動車輪(後輪)である。
【0016】
図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンにおいては、通常の後輪駆動車と同様にエンジン1の車両前後方向後方に自動変速機3をタンデムに配置している。即ち、エンジン1(クランクシャフト1a)からの回転を自動変速機3の入力軸3aへ伝達する軸4に結合してモータジェネレータ5を設け、このモータジェネレータ5を、第2動力源として具える。
【0017】
モータジェネレータ5は、駆動モータ(電動機)として作用し、ジェネレータ(発電機)として作用するもので、エンジン1および自動変速機3間に配置する。このモータジェネレータ5およびエンジン1間、より詳しくは、軸4とエンジンクランクシャフト1aとの間に第1クラッチ6を介挿し、この第1クラッチ6によりエンジン1およびモータジェネレータ5間を切り離し可能に結合する。ここで第1クラッチ6は、伝達トルク容量を連続的もしくは段階的に変更可能なものとし、例えば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的もしくは段階的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成する。
【0018】
モータジェネレータ5および駆動車輪(後輪)2間に第2クラッチ7を介挿し、この第2クラッチ7によりモータジェネレータ5および駆動車輪(後輪)2間を切り離し可能に結合する。第2クラッチ7も第1クラッチ6と同様、伝達トルク容量を連続的もしくは段階的に変更可能なものとし、例えば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的もしくは段階的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成する。
【0019】
自動変速機3は、周知の任意なものでよく、複数の変速摩擦要素(クラッチやブレーキ等)を選択的に締結・解放することで、これら変速摩擦要素の締結・解放の組み合わせにより伝動系路(変速段)を決定するものとする。従って自動変速機3は、入力軸3aからの回転を選択変速段に応じたギヤ比で変速して出力軸3bに出力する。この出力回転は、ディファレンシャルギヤ装置8により左右後輪2へ分配して伝達され、車両の走行に供される。但し自動変速機3は、上記したような有段式のものに限られず、無段変速機であってもよいのは言うまでもない。
【0020】
ところで図1においては、モータジェネレータ5および駆動車輪2を切り離し可能に結合する第2クラッチ7として専用のものを新設するのではなく、自動変速機3内に既存する変速摩擦要素を流用する。この場合、第2クラッチ7が締結により上記の変速段選択機能(変速機能)を果たして自動変速機3を動力伝達状態にするのに加え、第1クラッチ6の解放・締結との共働により、後述するモード選択機能を果たし得ることとなり、専用の第2クラッチが不要でコスト上大いに有利である。
【0021】
なお、第2クラッチ7は専用のものを新設してもよく、この場合、図21(A)のように、第2クラッチ7は自動変速機3の入力軸3aとモータジェネレータ軸4との間に設けたり、図21(B)のように、自動変速機3の出力軸3bと後輪駆動系との間に設ける。
【0022】
上記した図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンにおいては、停車状態からの発進時などを含む低負荷・低車速時に用いられる電気走行(EV)モードが要求される場合、第1クラッチ6を解放し、第2クラッチ7の締結により自動変速機3を動力伝達状態にする。なお第2クラッチ7は、自動変速機3内の変速摩擦要素のうち、現変速段で締結させるべき変速摩擦要素であって、選択中の変速段ごとに異なる。
【0023】
この状態でモータジェネレータ5を駆動すると、当該モータジェネレータ5からの出力回転のみが変速機入力軸3aに達することとなり、自動変速機3が当該入力軸3aへの回転を、選択中の変速段に応じ変速して変速機出力軸3bより出力する。変速機出力軸3bからの回転はその後、ディファレンシャルギヤ装置8を経て後輪2に至り、車両をモータジェネレータ5のみによって電気走行(EV走行)させることができる。
【0024】
高速走行時や大負荷走行時などで用いられるハイブリッド走行(HEV走行)モードが要求される場合、第2クラッチ7の締結により自動変速機3を対応変速段選択状態(動力伝達状態)にしたまま、第1クラッチ6も締結させる。この状態では、エンジン1からの出力回転およびモータジェネレータ5からの出力回転の双方が変速機入力軸3aに達することとなり、自動変速機3が当該入力軸3aへの回転を、選択中の変速段に応じ変速して、変速機出力軸3bより出力する。変速機出力軸3bからの回転はその後、ディファレンシャルギヤ装置8を経て後輪2に至り、車両をエンジン1およびモータジェネレータ5の双方によってハイブリッド走行(HEV走行)させることができる。
【0025】
かかるHEV走行中において、エンジン1を最適燃費で運転させるとエネルギーが余剰となる場合、この余剰エネルギーによりモータジェネレータ5を発電機として作動させることで余剰エネルギーを電力に変換する。そして、この発電電力をモータジェネレータ5のモータ駆動に用いるよう蓄電しておくことでエンジン1の燃費を向上させることができる。
【0026】
図1に示すハイブリッド車両のパワートレーンを成すエンジン1、モータジェネレータ5、第1クラッチ6、および第2クラッチ7は、図2に示すようなシステムにより制御する。図2の制御システムは、パワートレーンの動作点を統合制御する統合コントローラ20を具える。パワートレーンの動作点は、目標エンジントルクと、目標モータジェネレータトルク(目標モータジェネレータ回転数でもよい)と、第1クラッチ6の目標伝達トルク容量と、第2クラッチ7の目標伝達トルク容量とで規定する。
【0027】
統合コントローラ20には、上記パワートレーンの動作点を決定するために、下記各信号が入力される。入力される信号としては、エンジン回転数を検出するエンジン回転センサ11からの信号と、モータジェネレータ回転数を検出するモータジェネレータ回転センサ12からの信号と、変速機入力回転数を検出する入力回転センサ13からの信号と、がある。また、変速機出力回転数を検出する出力回転センサ14からの信号と、車両への要求負荷を表すアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度APO)を検出するアクセル開度センサ15(運転負荷検出手段)からの信号と、が入力される。さらに、ブレーキ油圧(BPS)を検出するブレーキ油圧センサ23と、モータジェネレータ5用の電力を蓄電しておくバッテリ9の蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)を検出する蓄電状態センサ16からの信号と、が入力される。アクセル開度センサ15には、アクセルペダルが踏込まれていない状態を検出するアイドルスイッチが設けられており、アイドルスイッチがONに変化することによりアクセルOFF状態となっていることを統合コントローラ20に入力する。
【0028】
なお、上記したセンサのうち、エンジン回転センサ11、モータジェネレータ回転センサ12、入力回転センサ13、および出力回転センサ14はそれぞれ、図1に示すように配置することができる。
【0029】
統合コントローラ20は、上記入力情報のうちアクセル開度APO、バッテリ蓄電状態SOC、および変速機出力回転数(車速VSP)から、運転者が希望している車両の駆動力を実現可能な運転モード(EVモード、HEVモード)を選択する。また、統合コントローラ20は、アクセル開度APO、バッテリ蓄電状態SOC、および変速機出力回転数(車速VSP)から、目標エンジントルク、目標モータジェネレータトルク、目標第1クラッチ伝達トルク容量、および目標第2クラッチ伝達トルク容量をそれぞれ演算する。目標エンジントルクはエンジンコントローラ21に供給され、目標モータジェネレータトルク(目標モータジェネレータ回転数でもよい)はモータジェネレータコントローラ22に供給される。
【0030】
エンジンコントローラ21は、エンジントルクが目標エンジントルクとなるようエンジン1を制御する。また、モータジェネレータコントローラ22はモータジェネレータ5のトルク(または回転数)が目標モータジェネレータトルク(または目標モータジェネレータ回転数)となるよう、バッテリ9およびインバータ10を介してモータジェネレータ5を制御する。
【0031】
統合コントローラ20は、目標第1クラッチ伝達トルク容量および目標第2クラッチ伝達トルク容量に対応したソレノイド電流を第1クラッチ6および第2クラッチ7の締結制御ソレノイド(図示せず)に供給する。そして、統合コントローラ20は、第1クラッチ6の伝達トルク容量が目標伝達トルク容量に一致するよう、また、第2クラッチ7の伝達トルク容量が目標第2クラッチ伝達トルク容量に一致するよう、第1クラッチ6および第2クラッチ7を個々に締結力制御する。
【0032】
統合コントローラ20は、上記した運転モード(EVモード、HEVモード)の選択、目標エンジントルク、目標モータジェネレータトルク、目標第1クラッチ伝達トルク容量、および目標第2クラッチ伝達トルク容量の演算を、図3の機能別ブロック線図で示すように実行する。
【0033】
目標駆動力演算部30では、図4に示す目標定常駆動トルクマップと図5に示すMGアシストトルクマップを用いて、アクセル開度APOと車速から、目標定常駆動トルクとMGアシストトルクを算出する。
【0034】
運転モード選択部40では、図6に示すEV−HEV領域マップを用いて、アクセル開度APOおよび車速VSPから目標とする運転モードを決定する。図6に示すEV−HEV領域マップから明らかなように、高負荷・高車速時はHEVモードを選択し、低負荷・低車速時はEVモードを選択する。また、運転モード選択部40では、EV走行中にアクセル開度APOおよび車速VSPの組み合わせで決まる運転点がEV→HEV切り換え線を越えてHEV領域に入るとき、EVモードからエンジン1始動を伴うHEVモードへのモード切り換えを行う。また、運転モード選択部40では、HEV走行中に運転点がHEV→EV切り換え線を越えてEV領域に入るとき、HEVモードからエンジン1停止およびエンジン1切り離しを伴うEVモードへのモード切り換えを行うものとする。エンジン始動停止線はバッテリの容量SOCが低くなるにつれて、アクセル開度APOが小さくなる方向に低下させて設定されている。
【0035】
エンジン1の始動処理は、EV状態で図6に示すエンジン始動線をアクセル開度APOが越えた時点で、実行される。即ち、前記第2クラッチ7を半クラッチ状態にスリップさせるように第2クラッチ7のトルク容量を制御し、第2クラッチ7がスリップ開始したと判断した後に第1クラッチ6の締結を開始してエンジン回転を上昇させる。エンジン回転が初爆可能な回転数に達成したらエンジン1を作動させてモータジェネレータ回転数とエンジン回転数が近くなったところで第1クラッチ6を完全に締結し、その後第2クラッチ7をロックアップさせてHEVモードに遷移させる。
【0036】
図3の目標充放電演算部50では、図7に示す走行中発電要求出力マップを用いて、バッテリ蓄電状態SOCから目標充放電量(電力)を演算する。
【0037】
動作点指令部60では、アクセル開度APOと、目標駆動力と、目標運転モードと、車速VSPと、目標充放電電力とから、これら動作点到達目標を演算する。即ち、動作点到達目標として、時々刻々の過渡的な目標エンジントルクと、目標モータジェネレータトルクと、第1クラッチ6の目標伝達トルク容量に対応した目標ソレノイド電流と、第2クラッチ7の目標伝達トルク容量と、目標変速段とを演算する。また、現在の動作点から図8に示す最良燃費線までエンジントルクを上げるのに必要な出力を演算し、これと上記目標充放電量(電力)tPとを比較し、小さい方の出力を要求出力として、エンジン出力に加算する。また、アクセル開度APO若しくは踏込まれていないアクセルペダル状態(アイドルスイッチ信号)に基づき、アクセル開度がOFF状態からON状態に変化された場合及びON状態からOFF状態に変化された場合に、後述する変速機3のギヤガタ詰め制御を実行する。
【0038】
変速制御部70では、上記の目標第2クラッチ伝達トルク容量と、目標変速段とを入力され、これら目標第2クラッチ伝達トルク容量および目標変速段が達成されるよう自動変速機3内の対応するソレノイドバルブを駆動する。これにより図1の自動変速機3は、第2クラッチ7を目標第2クラッチ伝達トルク容量が達成されるよう締結制御されつつ、目標変速段が選択された動力伝達状態になる。図8の実線はアップシフト線、破線はダウンシフト線をそれぞれ示す変速マップである。そして、車速とアクセル開度APOから現在の変速段から次変速段をいくつにするか判定し、変速要求があれば変速クラッチを制御して変速させる。
【0039】
前記動作点指令部60における変速機3のギヤガタ詰め制御は、図10〜図15に示す制御プログラムにより実行される。図10はギヤガタ詰め制御を開始する状態を判定するために実行されるアクセル開度のON−OFF切り替わり状態を判定する制御フローチャートであり、図11はギヤガタ詰め制御が可能な状態であるか否かを判定する制御フローチャートである。また、図12はアクセル開度をOFF状態からON状態に変化される際に、図13はアクセル開度をON状態からOFF状態に変化される際に、夫々実行されるギヤガタ詰め制御の制御フローチャートである。そして、図14はギヤガタ詰め制御時における目標駆動トルク(変速機入力トルク)を設定する制御フローチャートであり、図15はギヤガタ詰め制御時におけるエンジントルク・モータジェネレータトルク指令値を設定する制御フローチャートである。上記した夫々の制御フローチャートについて、図16に示すタイムチャートと共に、以下に説明する。
【0040】
図16に示すタイムチャートの左半分は、時点t1でアクセルペダルがOFF(アクセルスイッチON)状態からON(アイドルスイッチOFF)状態に変化され、時点t3のアクセル開度APOに到達した際の、各トルクの変化状態を示している。また、図16の右半分は、時点t4でアクセルペダルがON(アクセルスイッチOFF)状態から踏み戻されて時点t5でOFF(アイドルスイッチON)状態に変化された際の、各トルクの変化状態を示している。
【0041】
図10に示すギヤガタ詰め制御を開始する状態を判定する制御フローチャートは、アクセル開度状態が、OFF状態(アイドルスイッチON)からON状態(アイドルスイッチOFF)、若しくは、その逆に、変化したか否かを判定する。即ち、アクセル開度がOFF−ON(アイドルスイッチがON−OFF)に変化した場合と、ON−OFF(アイドルスイッチがOFF−ON)に変化した場合に、アクセルONOFF切り替わりフラグをONとする。また、アクセル開度がOFF状態(アイドルスイッチがON−ON状態)に維持されている場合、アクセル開度がON状態(アイドルスイッチがOFF−OFF状態)に維持される場合は、アクセルONOFF切り替わりフラグをOFFとする。
【0042】
先ずステップS1においては、アクセルONOFF切り替わりフラグが前回の処理ステップによって既にONに設定されているが否か、即ち、アクセルONOFF切り替わりフラグがまだOFFであるか否かをチェックする。
【0043】
そして、アクセルONOFF切り替わりフラグがOFFである時は、ステップS2において、前回のアクセルONOFF切り替わり判定結果と今回のアクセルONOFF切り替わり判定結果とが同じか否かを判定する。即ち、アイドルスイッチがON状態に維持されるか、若しくは、OFF状態が維持されている場合は、前回と今回との判定結果が同じ(OFF−OFF)となる。また、アイドルスイッチがON−OFF、若しくは、OFF−ONに変化した場合には、前回と今回との判定結果が変化(OFF−ON)する。
【0044】
アクセルONOFF切り替わりフラグが、前回と今回とで同じである場合には今回の処理を終了させ、前回と今回とで異なる時には、ステップS3において、アクセルONOFF切り替わりフラグをONとする(図16における時点t1,t4参照)。
【0045】
また、ステップS1において、アクセルONOFF切り替わりフラグが前回の処理ステップによりONとされている場合には、図11の後述するギヤガタ詰め制御許可判定を経て図12若しくは図13に示すギヤガタ詰め制御が実行される。このため、ステップS4において、後述するギヤガタ詰め判定中フラグがONからOFFに切り替ったか否かが判定される。ステップS4でギヤガタ詰め判定中フラグがONからOFFに切り替ったと判定された、即ち、ギヤガタ詰め制御が終了した時には、ステップS5において、アクセルONOFF切り替わりフラグをOFFに戻す。また、ステップS4での判定が切り替っていない、即ち、ギヤガタ詰め制御中と判定された時にはアクセルONOFF切り替わりフラグをOFFに戻すことなく今回の処理を終了する。
【0046】
図11に示す制御フローチャートでは、変速機3のギヤ段・走行モード(EVモード、HEVモード)がギヤガタ詰め制御が可能な状態である場合に、ギヤガタ詰め制御許可フラグをONとする。また、ギヤガタ詰め制御が可能な状態でない場合、及び、ギヤガタ詰め制御許可フラグのONが所定時間経過した場合にギヤガタ詰め制御許可フラグをOFFとする。ステップS10〜ステップS14はギヤガタ詰め制御許可フラグの設定を実行し、ステップS15〜ステップS19ではギヤガタ詰め制御許可フラグの設定解除を実行する。ギヤガタ詰め制御が可能でない状態とは、例えば、変速機3のギヤ段・走行モード(EVモード、HEVモード)が変更中である場合とか、特定のギヤ段において、ギヤガタ詰め制御を禁止するように設定する。また、他の条件を追加してもよい。
【0047】
先ずステップS10において、ギヤガタ詰め制御許可フラグがOFFであるか否かを判定する。ギヤガタ詰め制御許可フラグがOFFであると判定する時には、ステップS11において、図10のアクセルONOFF切り替わりフラグがONであるか否かを判定する。そして、アクセルONOFF切り替わりフラグがONである時には、ステップS12において、変速機3のギヤ段・走行モード(EVモード、HEVモード)がギヤガタ詰め制御の許可状態であるか否かを判定する。そして、変速機3のギヤ段・走行モード(EVモード、HEVモード)がギヤガタ詰め制御の許可状態である時には、ステップS13において、ギヤガタ詰め制御許可フラグをONにして、ステップS14においてタイマーカウントを開始する。しかしながら、ステップS11及びステップS12においての判定が、いずれかにおいて否定される場合には、ステップS13,14の設定をすることなく今回の処理を終了させる。
【0048】
また、ステップS10においてギヤガタ詰め制御許可フラグがOFFでない(=ON)時には、ステップS15において、図10のアクセルONOFF切り替わりフラグがONで継続しているか否かを判定する。また、ステップS16において、変速機3のギヤ段・走行モード(EVモード、HEVモード)がギヤガタ詰め制御の許可状態が継続しているか否かを判定する。そして、いずれの判定も継続してする時に、ステップS17において、ギヤガタ詰め制御許可フラグがON状態に切換えられてから所定時間経過しているか否かを判定する。そして、ステップS17での判定において、所定時間が経過していない時には、ギヤガタ詰め制御許可フラグをON状態に維持した状態で今回の処理を終了する。
【0049】
また、ステップS15でのアクセルONOFF切り替わりフラグがONで継続していない時、ステップS16での変速機3のギヤ段・走行モード(EVモード、HEVモード)がギヤガタ詰め制御の許可状態が継続していない時、及び、ステップS17での所定時間が経過している時には、ステップS18に進む。そして、ステップS18において、ギヤガタ詰め制御許可フラグをOFFにして、ステップS19においてタイマーカウントをリセットする。
【0050】
図12に示すアクセル開度がOFF状態からON状態となる時に実行されるギヤガタ詰め制御のフローチャートは、ギヤガタ詰め制御を開始するステップS20〜ステップS25と、ギヤガタ詰め制御を終了させるステップS26〜ステップS29と、からなる。
【0051】
まず、ステップS20において、ギヤガタ詰め制御が実行されているか否かを、ギヤガタ詰め判定中フラグがOFFか否かにより判定する。ギヤガタ詰め判定中フラグがOFFである時には、ステップS21において、図10のギヤガタ詰め制御許可フラグがONであるか否かを判定する。そして、ステップS21のギヤガタ詰め制御許可フラグがOFFである時は、ギヤガタ詰め制御を開始せずに処理を終了させ、上記ギヤガタ詰め制御許可フラグがONである時に、ステップS22に進む。ステップS22においては、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクより低く設定したギヤガタ詰め開始トルクを超えたか否かを判定する。
【0052】
ギヤガタ詰めトルクは、図18に示すように、HEVモードとEVモードごとに分け、しかも、ギヤ段毎に設定する。これは、モータジェネレータ5のみで駆動するEVモードの方がエンジン1とモータジェネレータ5との両者で駆動するHEVモードよりトルク精度が高い。このため、EVモードに合わせてHEVモードのギヤガタトルクを決定すると、HEVモードのギヤガタショックが悪くなる。逆に、HEVモードに合わせてEVモードのギヤガタトルクを決定すると、EVモードのギヤガタショックが悪くなる。このため、ギヤガタ詰めトルクは、EVモードの方が、HEVモードよりも小さく設定する。これにより、HEVモードはエンジン1のトルクバラツキを考慮したギヤガタ詰めトルクを設定することで、EVモードとHEVモード時のギヤガタショックを低減できる。
【0053】
また、ギヤガタ詰めトルクは、ギヤ比(=出力回転数/入力回転数)が高くなるに連れて高くなるように設定する。これは、ギヤ比が高速側変速比であるほど加速ショックが小さくて、その軽減用のギヤガタ詰めトルクを高速側変速比ほど大きくし得るためである。
【0054】
また、ギヤガタ詰めトルクは、図20に示すように、AT油温で補正できるように設定し、AT油温が低くなるほどガタ詰めトルクが大きくなるように補正係数を設定する。これは、ギヤガタ詰めトルクを決める際に、変速機3からデフまでのフリクショントルクに打ち勝つだけのトルクに設定する必要があるためである。しかしながら、ATフリクショントルクはAT油温が低いほど大きくなる特性をもっているので、AT油毎に設定し、AT油温が低くフリクションが大きいときはギヤガタ詰めトルクを大きくすることで、ギヤガタショックをAT油温によらず低くすることができる。
【0055】
そして、ステップS22では、目標駆動力がギヤガタ詰めトルクより低く設定したギヤガタ詰め開始トルクを超えない時点では、今回の処理を終了させる。しかし、ステップS22での判定において、目標駆動力がギヤガタ詰めトルクより低く設定したギヤガタ詰め開始トルクを超えた時点(図16の時点t2参照)で、ステップS23におけるアクセルONOFF切り替わりフラグがONであることを確認してステップS24へ進む。しかし、ステップS23におけるアクセルONOFF切り替わりフラグがOFFである時には今回の処理を終了させる。そして、ステップS24では、ギヤガタ詰め判定中フラグをONとし、ステップS25においてタイマーカウントを開始させ、ギヤガタ詰め制御を開始する。
【0056】
即ち、目標駆動力がギヤガタ詰めトルクより低く設定したギヤガタ詰め開始トルクを超えない時点ではギヤガタ詰め制御を開始させず、目標駆動力がギヤガタ詰めトルクより低く設定したギヤガタ詰め開始トルクを超えた時点でギヤガタ詰め制御を開始する。これは、ハイブリッド車両においては、減速度をモータジェネレータトルクで達成することが可能であり、有段ATであってもCVTのように変速前後の駆動力段差を無くすことも可能である。しかしながら、駆動力段差を無くすとハイギヤになるほど目標減速駆動力を達成するためのAT入力トルクが大きくなる。このようなハイブリッド車両ではアクセル開度OFF時の負トルクからギヤガタ詰めトルクまでのトルク段差がギヤ比や車速で異なることになるので、ギヤガタ詰め終了判定の時間がバラつき易くなる。そこで、上記のように、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクまで増加してからギヤガタ詰め判定の時間をカウントし始めることで、ギヤガタ詰め判定の精度を向上することが可能となる。
【0057】
また、ステップS23では、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクよりも大きい時(例えば、クリープ走行時)は、今回の処理を終了させて、ギヤガタ詰め制御を実施しない。これは、ギヤガタ詰め制御が終了している可能性があるのと、ギヤガタ詰め制御を行なうと変速機入力トルクが不用意に低下してしまうためである。
【0058】
また、ステップS20において、ギヤガタ詰め制御が実行されている時には、ステップS26において、ガタ詰め制御許可フラグがOFFであるか否かが判定される。そして、ガタ詰め制御許可フラグがON(許可中)である時は、ステップS27において、ギヤガタ詰め判定中フラグがON状態に切換えられてから所定時間経過しているか否かが判定される。そして、ステップS27での判定において、所定時間が経過していない時には今回の処理は終了させ、ギヤガタ詰め制御を継続させる。しかし、ステップS27での判定において、所定時間が経過している時には、ステップS28において、ギヤガタ詰め判定中フラグをOFFにして、ステップS29においてタイマーカウントをリセットし、ギヤガタ詰め制御を終了させる。
【0059】
前記ステップS27での判定に使用する所定時間(ギアガタ詰め終了判定時間)は、図19に示すように、HEVモードとEVモードごとに分け、しかも、ギヤ段ごとに設定する。これは、モータジェネレータ5のみで駆動するEVモードの方がエンジン1とモータジェネレータ5との両者で駆動するHEVモードよりトルク精度が高く、HEVモードはエンジン1のトルクバラツキを考慮したギヤガタ詰めトルクにする必要がある。よって、HEVモードはトルクバラツキ分を考慮したギヤガタ詰め終了判定時間のバラツキを考慮する必要があり、ギヤガタ詰め終了判定時間をEVモードより長くしている。また、EVモードに合わせてHEVモードのギヤガタトルクを決定すると、実際のギヤガタトルクがEVモードよりも小さかった場合は、判定時間をEVよりも長くする必要あるのでHEVモードのギヤガタショックが悪くなることもある。
【0060】
また、ギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、ギヤ比(=出力回転数/入力回転数)が高くなるに連れて短くなるように設定する。これは、ギヤ比が低速側変速比であるほどギヤガタ詰めに要する時間が長くなり、高速側変速比ほど短くなる。このため、変速機3のギヤ比毎にギヤガタ詰めトルクに制限する時間を設定することにより木目細かくショック低減が可能となる。
【0061】
また、ギヤガタ詰め終了判定時間も、図20に示すように、AT油温で補正できるように設定し、AT油温が低くなるほどガタ詰め終了判定時間が長くなるように補正係数を設定する。これは、ギヤガタ詰め終了判定時間を決める際に、変速機3からデフまでのフリクショントルクに打ち勝つだけの時間に設定する必要があるためである。しかしながら、ATフリクショントルクはAT油温が低いほど大きくなる特性をもっている。このため、ギヤガタ詰め終了判定時間は、AT油毎に設定し、AT油温が低くフリクションが大きいときはギヤガタ詰め終了判定時間を長くすることで、ギヤガタショックをAT油温によらず低くすることができる。
【0062】
図13に示すアクセル開度をON状態からOFF状態になる時に実行されるギヤガタ詰め制御のフローチャートは、ギヤガタ詰め制御を開始するステップS30〜ステップS35と、ギヤガタ詰め制御を終了させるステップS36〜ステップS39と、からなる。
【0063】
まず、ステップS30において、ギヤガタ詰め制御が実行されているか否かを、ギヤガタ詰め判定中フラグがOFFか否かにより判定する。ギヤガタ詰め判定中フラグがOFFである時には、ステップS31において、図10のギヤガタ詰め制御許可フラグがONであるか否かを判定する。そして、ステップS31のギヤガタ詰め制御許可フラグがOFFである時は、ギヤガタ詰め制御を開始せずに処理を終了させ、上記ギヤガタ詰め制御許可フラグがONである時に、ステップS32に進む。
【0064】
ステップS32においては、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクより高く設定したギヤガタ詰め開始トルク以下に低下したか否かを判定する。ギヤガタ詰めトルクは、前述したように、図18及び図20により設定する。
【0065】
そして、ステップS32では、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクより高く設定したギヤガタ詰め開始トルク以下に低下しない時点では、今回の処理を終了させる。しかし、ステップS32での判定において、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクより高く設定したギヤガタ詰め開始トルク以下に低下した時点(図16に示す時点t5参照)で、ステップS33におけるアクセルONOFF切り替わりフラグがONであることを確認してステップS34へ進む。しかし、ステップS33におけるアクセルONOFF切り替わりフラグがOFFである時には今回の処理を終了させる。そして、ステップS34では、ギヤガタ詰め判定中フラグをONとし、ステップS35においてタイマーカウントを開始させ、ギヤガタ詰め制御を開始する。
【0066】
即ち、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクより高く設定したギヤガタ詰め開始トルク以下に低下しない時点ではギヤガタ詰め制御を開始せず、目標駆動トルクがギヤガタ詰め開始トルク以下に低下した時点でギヤガタ詰め制御を開始する。これは、アクセル開度OFFしたときの目標駆動トルクはアクセル開度OFFする前のトルクに左右されるので、ギヤガタ詰めトルクまでのトルク差がバラツクことによる。このため、ギヤガタ詰め終了判定の精度を良くするためには目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルク手前まで低下してから判断することで、バラツキを低減できる。そこで、上記のように、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクまで低下してからギヤガタ詰め判定の時間をカウントし始めることで、ギヤガタ詰め判定の精度を向上することが可能となる。
【0067】
また、ステップS33では、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクよりも低い時は、今回の処理を終了させて、ギヤガタ詰め制御を実施しない。これは、ギヤガタ詰め終了している可能性があるのと、ギヤガタ詰め制御を行なうと変速機入力トルクが不用意に増加してしまうためである。
【0068】
また、ステップS30において、ギヤガタ詰め制御が実行されている時には、ステップS36において、ガタ詰め制御許可フラグがOFFであるか否かが判定される。そして、ガタ詰め制御許可フラグがON(許可中)である時は、ステップS37において、ギヤガタ詰め判定中フラグがON状態に切換えられてから所定時間経過しているか否かが判定される。そして、ステップS37での判定において、所定時間が経過していない時には今回の処理は終了させ、ギヤガタ詰め制御を継続させる。しかし、ステップS37での判定において、所定時間が経過している時には、ステップS38において、ギヤガタ詰め判定中フラグをOFFにして、ステップS39においてタイマーカウントをリセットし、ギヤガタ詰め制御を終了させる。
【0069】
図14の制御フローチャートは、アクセル開度がOFF→ONに変化した時点(図16の時点t1)、若しくは、ON→OFFに変化した時点(図16の時点t4)、からのギヤガタ詰め制御時における目標駆動トルク(変速機入力トルク)を設定するものである。
【0070】
先ず、ステップS41において、モータジェネレータ回転数とアクセル開度APOから目標駆動トルクを演算する。ついで、ステップS42において、ギヤガタ詰め制御中であるか否かを判定し、ギヤガタ詰め制御中でない場合には、今回の処理を終了する。ステップS42での判定がギヤガタ詰め制御中である時には、ステップS43に進む。ステップS43においては、アクセルONOFF切り替わり判定フラグがONに変化した際のアクセル開度がON→OFF(図16の時点t4)に切換えられたか若しくはOFF→ON(図16の時点t1)に切換えられたかを判定する。
【0071】
ステップS43での判定でアクセル開度がON→OFF(図16の時点t4)に切換えられたと判定した時には、ステップS44に進む。ステップS44においては、目標駆動トルクとギヤガタ詰めトルク(アクセル開度OFF→ON時)とのいずれか大きい駆動トルクを変速機入力トルクとして設定する。このステップS44で設定される目標駆動トルクは、アクセル開度がON→OFF状態に変化することにより、アクセル開度がON状態における目標駆動トルクから時間と共に低下される。そして、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクに到達した時点(図16の時点t5)からギヤガタ詰め制御の終了までの間はギヤガタ詰めトルクに保持される。そして、ギヤガタ詰め制御の終了後(図16の時点t6)にステップS41で設定した目標駆動トルクに向かって再び低下される。
【0072】
また、ステップS43での判定でアクセル開度がOFF→ON(図16の時点t1)に切換えられたと判定した時には、ステップS45に進む。ステップS45では、目標駆動トルクとギヤガタ詰めトルク(アクセル開度ON→OFF時)とのいずれか小さい駆動トルクを変速機入力トルクとして設定する。このステップS45で設定される目標駆動トルクは、アクセル開度がOFF→ON状態に変化することにより、アクセル開度がOFF状態における目標駆動トルクから時間と共に上昇される。そして、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクに到達した時点(図16の時点t2)からギヤガタ詰め制御の終了までの間はギヤガタ詰めトルクに保持される。そして、ギヤガタ詰め制御の終了後(図16の時点t3)にステップS41で設定した目標駆動トルクに向かって再び上昇される。ステップS46においては、ステップS44及びステップS45で設定した目標駆動トルクをフィルタで平滑化して出力する。
【0073】
図15に示す制御フローチャートでは、ギヤガタ詰め制御時におけるエンジントルク・モータジェネレータトルク指令値を設定する。
【0074】
まず、ステップS50において、走行モードがHEVモードであるか否かが判定され、EVモードである時にはステップS56において、エンジントルク指令値を「0」に設定する。ステップS50における判定がHEVモードである場合には、ステップS51において、エンジン目標駆動トルクに発電トルクを加算してエンジントルク指令値を演算する。ステップS52において、ステップS51で演算したエンジントルク指令値が所定トルク以上であるか否かを判定する。この場合の所定トルクは、エンジン1がフューエルカット状態にするか否かを判定するトルク値である。そして、演算したエンジントルク指令値が所定トルク未満である時、即ち、フュエルカットトルク値以下である時には、ステップS60において、エンジントルク指令値をフューエルカットによるエンジンフリクショントルク値に設定する。また、演算したエンジントルク指令値が所定トルクを超えている時には、ステップS53において、前回フューエルカット状態であったか否かを判定する。
【0075】
ステップS53の判定がフューエルカット状態である時には、ステップS54において、ギヤガタ詰め制御中(アクセル開度OFF−ON時)である時に、ステップS57において、エンジントルク指定値をエンジン燃焼下限トルクに設定する。また、ステップS54において、ギヤガタ詰め制御中(アクセル開度OFF−ON時)でない時に、ステップS58において、ステップS51で設定したエンジントルク指令値に設定する。
【0076】
また、ステップS53の判定がフューエルカット状態でない時には、ステップS55において、ギヤガタ詰め制御中(アクセル開度OFF−ON時)である時に、ステップS59において、エンジントルク指定値を前回値に設定する。また、ステップS55において、ギヤガタ詰め制御中(アクセル開度OFF−ON時)でない時に、ステップS58において、ステップS51で設定したエンジントルク指令値に設定する。
【0077】
ステップS61においては、ステップS56〜ステップS60で設定したエンジントルク指令値に基づいて、モータジェネレータトルク指令値を(=目標駆動トルク−エンジントルク指令値)と演算する。
【0078】
以上のエンジントルク指令演算では、トルク増加側(アクセル開度OFF→ON時)では、ガタ詰め制御前のエンジントルクがフューエルカット(F/C)状態であれば、ギヤガタ詰め制御中はエンジントルクをエンジン下限トルクにする。また、ガタ詰め制御前のエンジントルクがフューエルカット(F/C)状態以外であれば、ギヤガタ詰め制御前のトルク値を保持させるようにしている。
【0079】
図16のタイムチャートでは、時点t0からエンジン1を駆動して発電している状態である。このため、エンジントルクは、時点t1〜t3のギヤガタ詰め制御中においても、破線で示すアクセル開度に応じて増加するトルク値推移とならずに、実線で示すように、ギヤガタ詰め制御前のトルク値(ステップS59)に保持される。破線と実線とで示すエンジントルクの差分は、ステップS61で設定するモータジェネレータトルクの破線特性から実線特性への増加により補償している。エンジントルクは、ギヤガタ詰め制御が終了した時点t3から目標エンジントルク+発電トルクの特性に復帰するよう制御され、モータジェネレータトルクによる差分トルクの補償もエンジントルクの復帰に伴い終了する。
【0080】
また、図16の時点t5からのギヤガタ詰め制御時においても、エンジントルクもアクセル開度に対応した目標エンジントルク(ステップS58)とエンジンフリクショントルク(ステップS60)のいずれか大きい方に保持される。また、アクセルがONからOFF状態に変化されることに伴い低下する目標駆動トルク(変速機入力トルク)が、時点t5でギヤガタ詰めトルクに保持される。この目標駆動トルクのギヤガタ詰めトルクの保持により発生する時点t5〜t6間のトルク差分は、ステップS61で設定するモータジェネレータトルクの破線特性から実線特性への増加によりにより補償している。
【0081】
図17に示すタイムチャートは、エンジン1がフューエルカット状態である場合を示している。そして、図17の左半分は、時点t11でアクセルペダルがOFF(アクセルスイッチON)状態からON(アイドルスイッチOFF)状態に変化され、時点t13のアクセル開度APOに到達した際の、各トルクの変化状態を示している。また、図17の右半分は、時点t14でアクセルペダルがON(アクセルスイッチOFF)状態から踏み戻されて時点t15でOFF(アイドルスイッチON)状態に変化された際の、各トルクの変化状態を示している。
【0082】
図17のタイムチャートでは、時点t10〜t11において、フューエルカット状態となっている。このため、エンジントルクは時点t11〜t12の間にフリクショントルクからステップS57によりエンジン燃焼下限トルクに増加され、破線で示すアクセル開度に応じて増加するトルク値推移とならずに、実線で示すように、ギヤガタ詰め制御中はエンジン燃焼下限トルクに保持される。破線と実線とで示すエンジントルクの差分は、ステップS61で設定するモータジェネレータトルクの破線特性から実線特性への増加により補償している。エンジントルクは、ギヤガタ詰め制御が終了した時点t13から目標エンジントルク特性に復帰するよう制御され、モータジェネレータトルクによる差分トルクの補償もエンジントルクの復帰に伴い終了する。
【0083】
また、図17の時点t15からのギヤガタ詰め制御時においても、エンジントルクもアクセル開度に対応した目標エンジントルク(ステップS58)とエンジンフリクショントルク(ステップS60)のいずれか大きい方が選択される。また、アクセルがONからOFF状態に変化されることに伴い低下する目標駆動トルク(変速機入力トルク)が、時点t15でギヤガタ詰めトルクに保持される。この目標駆動トルクのギヤガタ詰めトルクの保持により発生する時点t15〜t16間のトルク差分は、ステップS61で設定するモータジェネレータトルクによりにより補償している。
【0084】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0085】
(ア)アクセルペダル操作と車速に応じて設定される目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際に、変速機3から駆動車輪2までの伝達駆動系が負駆動状態から正駆動状態に切り替わるまでのギヤガタ詰め判定の間は、変速機3への入力トルクを目標駆動トルクよりも小さく、0トルクよりも大きい所定値(ギヤガタ詰めトルク)に制限する変速機入力トルク制限手段を備える。そして、変速機入力トルク制限手段は、ハイブリッド走行モードの場合は、エンジン1への要求トルクを目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際のエンジントルク指令値とエンジン燃焼下限トルクの大きい方の値に保持させて、前記所定値(ギヤガタ詰めトルク)との差分をモータジェネレータ5で補正する。
【0086】
即ち、ギヤガタ詰め判定中は、エンジントルクをギヤガタ詰め制御前のエンジントルクとエンジン燃焼下限トルクの大きい方の値に保持させて、ギヤガタ詰め中のエンジントルクを一定にして、ギヤガタ詰めトルクの精度を向上させることができる。
【0087】
こうして、ギヤガタ詰め中にエンジントルクを一定にして、ギヤガタ詰めトルクとの差分をモータジェネレータ5で補正することで、ギヤガタ詰めトルクの精度向上が図れ、さらにギヤガタ詰め後はエンジン1のトルクが遅れなく出力できるので発進レスポンスも向上する。
【0088】
(イ)ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記ギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、前記ギヤガタ詰めトルクより小さく且つ0トルク付近に設定したギヤガタ詰め開始トルクまで、目標駆動トルクが増加した時点から予め設定した所定時間が経過するまでとする。これは、ハイブリッド車両においては、減速度をモータジェネレータトルクで達成することが可能であり、有段ATであってもCVTのように変速前後の駆動力段差を無くすことも可能である。しかしながら、駆動力段差を無くすとハイギヤになるほど目標減速駆動力を達成するためのAT入力トルクが大きくなる。このようなハイブリッド車両ではアクセル開度OFF時の負トルクからギヤガタ詰めトルクまでのトルク段差がギヤ比や車速で異なることになるので、ギヤガタ詰め終了判定の時間がバラつき易くなる。そこで、上記のように、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクまで増加してからギヤガタ詰め判定の時間をカウントし始めることで、ギヤガタ詰め判定の精度を向上することが可能となる。
【0089】
(ウ)アクセルペダル操作と車速に応じて設定される目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際に、変速機3から駆動車輪2までの伝達駆動系が正駆動状態から負駆動状態に切り替わるまでのギヤガタ詰め判定の間は、変速機3への入力トルクを目標駆動トルクよりも大きく、0トルクよりも大きい所定値(ギヤガタ詰めトルク)に制限し、前記所定値(ギヤガタ詰めトルク)との差分をモータジェネレータ5で補正する変速機入力トルク制限手段を備える。
【0090】
これは、目標駆動トルクが正トルクから負トルクに切り変わる際に変速機3からタイヤまでの伝達駆動系が正駆動状態から負駆動状態に切り替わるときも、ギヤのバックラッシュによるショックが発生する。そこで、変速機3の入力トルクを小さいトルクに制限してギヤガタ詰めトルクを行なうことで、ショック低減ができる。この目標駆動トルクが正トルクから負トルクに切り変わる際は、ギヤのフリクショントルクがあるため、ギヤのガタ詰めトルクを正トルクにした方がショック低減可能である。
【0091】
(エ)ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記ギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、前記ギヤガタ詰めトルクより大きく設定したギヤガタ詰め開始トルクまで、目標駆動トルクが低下した時点から予め設定した所定時間が経過するまでとする。これは、アクセル開度OFFしたときの目標駆動トルクはアクセル開度OFFする前のトルクに左右されるので、ギヤガタ詰めトルクまでのトルク差がバラツクことによる。このため、ギヤガタ詰め終了判定の精度を良くするためには目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルク手前まで低下してから判断することで、バラツキを低減できる。そこで、上記のように、目標駆動トルクがギヤガタ詰めトルクまで低下してからギヤガタ詰め判定の時間をカウントし始めることで、ギヤガタ詰め判定の精度を向上することが可能となる。
【0092】
(オ)ギヤガタ詰めトルクは、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時の各ギヤガタ詰めトルクは、変速機3の変速比毎に相違させて設定する。即ち、モータジェネレータ5のみで駆動するEVモードの方がエンジン1とモータジェネレータ5との両者で駆動するHEVモードよりトルク精度が高い。このため、HEVモードはエンジン1のトルクバラツキを考慮したギヤガタ詰めトルクを設定することで、EVモードとHEVモード時のギヤガタショックを低減できる。
【0093】
また、ギヤガタ詰めトルクは、ギヤ比(=出力回転数/入力回転数)が高くなるに連れて高くなるように設定することにより、ギヤ比が高速側変速比であるほど加速ショックが小さくて、その軽減用のギヤガタ詰めトルクを高速側変速比ほど大きくし得る。
【0094】
(カ)ギヤガタ詰めトルクは、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、電気走行モードのギヤガタ詰めトルクを、ハイブリッド走行モードのギヤガタ詰めトルクよりも小さく設定する。即ち、モータジェネレータ5のみで駆動するEVモードの方がエンジン1とモータジェネレータ5との両者で駆動するHEVモードよりトルク精度が高い。このため、HEVモードはエンジン1のトルクバラツキを考慮したギヤガタ詰めトルクを設定することで、EVモードとHEVモード時のギヤガタショックを低減できる。
【0095】
(キ)ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記ギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時のギヤガタ詰めトルクに制限する各時間は、変速機3の変速比毎に相違させて設定する。即ち、モータジェネレータ5のみで駆動するEVモードの方がエンジン1とモータジェネレータ5との両者で駆動するHEVモードよりトルク精度が高い。このため、HEVモードはエンジン1のトルクバラツキを考慮したギヤガタ詰めトルクに制限する時間を設定することで、EVモードとHEVモード時のギヤガタショックを低減できる。
【0096】
また、ギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、ギヤ比(=出力回転数/入力回転数)が低くなるほどギヤガタ詰めに要する時間が長くなり、ギヤ比が高速側変速比ほど短くなる。このため、変速機3のギヤ比毎にギヤガタ詰めトルクに制限する時間を設定することにより木目細かくショック低減が可能となる。
【0097】
(ク)ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記ギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、電気走行モードのギヤガタ詰めトルクに制限する時間を、ハイブリッド走行モードのギヤガタ詰めトルクに制限する時間よりも短く設定する。即ち、モータジェネレータ5のみで駆動するEVモードの方がエンジン1とモータジェネレータ5との両者で駆動するHEVモードよりトルク精度が高い。このため、HEVモードはエンジン1のトルクバラツキを考慮したギヤガタ詰めトルクに保持する時間を長く設定することで、EVモードとHEVモード時のギヤガタショックを低減できる。
【0098】
(ケ)ギヤガタ詰めトルクは、変速機3の潤滑油温度が低くなるほど大きくなるように補正する。このため、ATフリクショントルクはAT油温が低いほど大きくなる特性をもっているので、AT油毎に設定し、AT油温が低くフリクションが大きいときはギヤガタ詰めトルクを大きくすることで、ギヤガタショックをAT油温によらず低くすることができる。
【0099】
(コ)ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記ギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、変速機3の潤滑油温度が低くなるほど長くなるように補正する。このため、ATフリクショントルクはAT油温が低いほど大きくなる特性をもっているので、AT油毎にギヤガタ詰めトルクに制限する時間を設定し、AT油温が低くフリクションが大きいときはギヤガタ詰めトルクに制限する時間を長くする。このことで、ギヤガタショックをAT油温によらず低くすることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 エンジン
2 駆動車輪
3 変速機3
5 モータジェネレータ
6 第1クラッチ
7 第2クラッチ
8 ディファレンシャルギヤ装置
9 バッテリ
10 インバータ
11 エンジン回転センサ
12 モータジェネレータ回転センサ
13 変速機入力回転センサ
14 変速機出力回転センサ
15 アクセル開度センサ
16 バッテリ蓄電状態センサ
20 統合コントローラ
21 エンジンコントローラ
22 モータジェネレータコントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源としてエンジンおよびモータジェネレータを具え、モータジェネレータからの動力のみによる電気走行モードと、エンジンおよびモータジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードとを選択可能で、運転者による要求負荷に応じた情報に基づき駆動力を決定すると共に電気走行モードおよびハイブリッド走行モード間でのモード切り替えを行うようにしたハイブリッド車両において、
アクセルペダル操作と車速に応じて設定される目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際に、変速機から駆動車輪までの伝達駆動系が負駆動状態から正駆動状態に切り替わるまでのギヤガタ詰め判定の間は、変速機への入力トルクを目標駆動トルクよりも小さく、0トルクよりも大きい所定値に制限し、
ハイブリッド走行モードの場合は、エンジンへの要求トルクを目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際のエンジントルク指令値とエンジン燃焼下限トルクの大きい方の値に保持させて、前記所定値との差分をモータジェネレータで補正する変速機入力トルク制限手段を備えることを特徴とするハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項2】
前記ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記所定値であるギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、前記ギヤガタ詰めトルクより小さく且つ0トルク付近に設定したギヤガタ詰め開始トルクまで、目標駆動トルクが増加した時点から予め設定した所定時間が経過するまでとすることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項3】
動力源としてエンジンおよびモータジェネレータを具え、モータジェネレータからの動力のみによる電気走行モードと、エンジンおよびモータジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードとを選択可能で、運転者による要求負荷に応じた情報に基づき駆動力を決定すると共に電気走行モードおよびハイブリッド走行モード間でのモード切り替えを行うようにしたハイブリッド車両において、
アクセルペダル操作と車速に応じて設定される目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際に、変速機から駆動車輪までの伝達駆動系が正駆動状態から負駆動状態に切り替わるまでのギヤガタ詰め判定の間は、変速機への入力トルクを目標駆動トルクよりも大きく、0トルクよりも大きい所定値に制限し、
前記所定値との差分をモータジェネレータで補正する変速機入力トルク制限手段を備えることを特徴とするハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項4】
前記ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記所定値であるギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、前記ギヤガタ詰めトルクより大きく設定したギヤガタ詰め開始トルクまで、目標駆動トルクが低下した時点から予め設定した所定時間が経過するまでとすることを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項5】
前記所定値であるギヤガタ詰めトルクは、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、
前記ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時の各ギヤガタ詰めトルクは、変速機の変速比毎に相違させて設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項6】
前記所定値であるギヤガタ詰めトルクは、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、
前記電気走行モード時のギヤガタ詰めトルクを、前記ハイブリッド走行モード時のギヤガタ詰めトルクよりも小さく設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項7】
前記ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記所定値であるギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、
前記ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時のギヤガタ詰めトルクに制限する各時間は、変速機の変速比毎に相違させて設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項8】
前記ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記所定値であるギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、
前記電気走行モードのギヤガタ詰めトルクに制限する時間を、前記ハイブリッド走行モードのギヤガタ詰めトルクに制限する時間よりも短く設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項9】
前記所定値であるギヤガタ詰めトルクは、変速機の潤滑油温度が低くなるほど大きくなるように補正することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項10】
前記ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記所定値であるギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、変速機の潤滑油温度が低くなるほど長くなるように補正することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項1】
動力源としてエンジンおよびモータジェネレータを具え、モータジェネレータからの動力のみによる電気走行モードと、エンジンおよびモータジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードとを選択可能で、運転者による要求負荷に応じた情報に基づき駆動力を決定すると共に電気走行モードおよびハイブリッド走行モード間でのモード切り替えを行うようにしたハイブリッド車両において、
アクセルペダル操作と車速に応じて設定される目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際に、変速機から駆動車輪までの伝達駆動系が負駆動状態から正駆動状態に切り替わるまでのギヤガタ詰め判定の間は、変速機への入力トルクを目標駆動トルクよりも小さく、0トルクよりも大きい所定値に制限し、
ハイブリッド走行モードの場合は、エンジンへの要求トルクを目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際のエンジントルク指令値とエンジン燃焼下限トルクの大きい方の値に保持させて、前記所定値との差分をモータジェネレータで補正する変速機入力トルク制限手段を備えることを特徴とするハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項2】
前記ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記所定値であるギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、前記ギヤガタ詰めトルクより小さく且つ0トルク付近に設定したギヤガタ詰め開始トルクまで、目標駆動トルクが増加した時点から予め設定した所定時間が経過するまでとすることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項3】
動力源としてエンジンおよびモータジェネレータを具え、モータジェネレータからの動力のみによる電気走行モードと、エンジンおよびモータジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードとを選択可能で、運転者による要求負荷に応じた情報に基づき駆動力を決定すると共に電気走行モードおよびハイブリッド走行モード間でのモード切り替えを行うようにしたハイブリッド車両において、
アクセルペダル操作と車速に応じて設定される目標駆動トルクが負トルクから正トルクに切り変わる際に、変速機から駆動車輪までの伝達駆動系が正駆動状態から負駆動状態に切り替わるまでのギヤガタ詰め判定の間は、変速機への入力トルクを目標駆動トルクよりも大きく、0トルクよりも大きい所定値に制限し、
前記所定値との差分をモータジェネレータで補正する変速機入力トルク制限手段を備えることを特徴とするハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項4】
前記ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記所定値であるギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、前記ギヤガタ詰めトルクより大きく設定したギヤガタ詰め開始トルクまで、目標駆動トルクが低下した時点から予め設定した所定時間が経過するまでとすることを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項5】
前記所定値であるギヤガタ詰めトルクは、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、
前記ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時の各ギヤガタ詰めトルクは、変速機の変速比毎に相違させて設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項6】
前記所定値であるギヤガタ詰めトルクは、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、
前記電気走行モード時のギヤガタ詰めトルクを、前記ハイブリッド走行モード時のギヤガタ詰めトルクよりも小さく設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項7】
前記ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記所定値であるギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、
前記ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時のギヤガタ詰めトルクに制限する各時間は、変速機の変速比毎に相違させて設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項8】
前記ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記所定値であるギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、ハイブリッド走行モード時と電気走行モード時とで夫々別々に設定し、
前記電気走行モードのギヤガタ詰めトルクに制限する時間を、前記ハイブリッド走行モードのギヤガタ詰めトルクに制限する時間よりも短く設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項9】
前記所定値であるギヤガタ詰めトルクは、変速機の潤滑油温度が低くなるほど大きくなるように補正することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【請求項10】
前記ギヤガタ詰め判定における変速機入力トルクを前記所定値であるギヤガタ詰めトルクに制限する時間は、変速機の潤滑油温度が低くなるほど長くなるように補正することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の駆動トルク制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−91618(P2012−91618A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239379(P2010−239379)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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