説明

ハイブリッド車両用駆動装置

【課題】出力軸が車幅方向に沿って配置されるエンジン及びモータを搭載したハイブリッド車両に関して、モータの減速比を適切に設定しつつ、全体をコンパクトに構成し、エンジンルーム内における各種機器のレイアウト性を高める。
【解決手段】出力軸30が車幅方向に延びるように配置されたエンジン4と、該エンジン4の出力軸30と同軸上に配置された動力伝達軸32と、出力軸34が動力伝達軸32に平行に配置され且つ減速歯車機構70を介して連結されたモータ8と、を有するハイブリッド車両用駆動装置2において、減速歯車機構70を、動力伝達軸32に設けられた内歯ギヤ72と、モータ8の出力軸34に設けられ、内歯ギヤ72に噛み合う外歯ギヤ74と、で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂ハイブリッド車両に搭載される車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用駆動源としてエンジンとモータとが搭載された所謂ハイブリッド車両が実用化されている。このうち、FF式(フロントエンジン・フロントドライブ式)のハイブリッド車両では、エンジンとモータの配置がいわゆる横置き式の配置であり、エンジンとモータの出力軸はいずれも車幅方向に沿って配置される。
【0003】
特許文献1には、FF式ハイブリッド車両の駆動装置の構成が開示されている。
【0004】
この特許文献1に記載された駆動装置は、エンジンの出力軸と同軸上に直結された動力伝達軸(入力軸11)と、該動力伝達軸に平行な第2軸(カウンタ軸15)と、これらの軸に平行に軸線が配置されたデファレンシャル装置(40)と、を有する。
【0005】
動力伝達軸11には、同軸上に遊星歯車機構(差動装置20)が連結されており、この遊星歯車機構を介して第1モータ(MG1)の出力部が動力伝達軸に連結されている。
【0006】
そして、遊星歯車機構のリングギヤ(22)の外側には、出力要素としてのカウンタギヤ(25)が連結されており、前記エンジンや第1モータ等の駆動源からカウンタギヤに伝達された動力は、第2軸上のギヤ(70,71)を介してデファレンシャル装置に伝達され、これにより、左右の車軸(12)が駆動される。
【0007】
さらに、特許文献1の駆動装置は、動力伝達軸に平行な出力軸(14)を有する第2モータ(MG2)を備えている。
【0008】
この第2モータの出力軸に設けられた出力ギヤ(66)は前記カウンタギヤに噛合されており、第2モータの出力がカウンタギヤに伝達されるようになっている。すなわち、特許文献1の駆動装置では、エンジンおよび第1モータ側からの動力と第2モータ側からの動力とがカウンタギヤで合流可能となっており、合流された動力がデファレンシャル装置側へ伝達されるようになっている。
【0009】
その場合に、第2モータの出力ギヤには、カウンタギヤよりも小径のギヤが使用されており、出力ギヤからカウンタギヤへの動力伝達時、第2モータの出力が減速されるようになっている。よって、小型の第2モータを使用しても十分な駆動力を得ることができるため、第2モータの小型化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−23427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1の駆動装置では、第2モータの出力ギヤが大径のカウンタギヤの外側に噛み合うため、第2モータの軸心が、動力伝達軸の軸心すなわちエンジンの軸心から大きく偏心される。例えば、車両の前後方向に関してエンジンよりも後側にデファレンシャル装置が配置される場合、第2モータは、エンジンよりも前方に大きく張り出すように配置される。そのため、エンジンルーム内のレイアウト性が悪化する。
【0012】
これに対しては、第2モータの出力ギヤとカウンタギヤの径をそれぞれ小さくすることで、エンジンと第2モータとの偏心量を小さくすることが考えられる。しかし、ギヤの強度上、両ギヤの径を小さくすることには制約がある。
【0013】
さらに、遊星歯車機構を用いて動力伝達軸と第2モータの出力軸を同軸上に配置しつつ、第2モータからの動力を減速した上で、エンジン側の動力と合流させることが考えられる。しかし、この場合、遊星歯車機構の減速比の設定に制約があるため、エンジン及び第2モータを常用回転範囲で使用することが困難である。また、エンジンと第2モータとの間に遊星歯車機構を設けることにより、部品点数が増加するとともに、レイアウト性が悪化する難点もある。
【0014】
そこで、本発明は、出力軸が車幅方向に沿って配置されるエンジン及びモータを搭載したハイブリッド車両に関して、モータの減速比を適切に設定しつつ、全体をコンパクトに構成し、エンジンルーム内における各種機器のレイアウト性を高めることを、基本的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本願の第1の発明は、
出力軸が車幅方向に延びるように配置されたエンジンと、
該エンジンの出力軸と同軸上に配置された動力伝達軸と、
出力軸が前記動力伝達軸に平行に配置され且つ減速歯車機構を介して連結されたモータと、を有するハイブリッド車両用駆動装置であって、
前記減速歯車機構は、
前記動力伝達軸に設けられた内歯ギヤと、
前記モータの出力軸に設けられ、前記内歯ギヤに噛み合う外歯ギヤと、で構成されていることを特徴とする。
【0016】
本願の第2の発明に係るハイブリッド車両用駆動装置は、第1の発明において、
前記動力伝達軸に駆動連結され、該動力伝達軸に平行に且つ車両前後方向に関して該動力伝達軸よりも後上方に配置された第2軸と、
該第2軸に駆動連結され、軸線が該第2軸に平行に且つ車両前後方向に関して該第2軸よりも後下方に配置されたデファレンシャル装置と、を有し、
前記モータの出力軸は、車両前後方向に関して前記動力伝達軸よりも前側に配置されていることを特徴とする。
【0017】
本願の第3の発明に係るハイブリッド車両用駆動装置は、第2の発明において、
前記モータの出力軸は、前記動力伝達軸よりも上側に配置されていることを特徴とする。
【0018】
本願の第4の発明に係るハイブリッド車両用駆動装置は、第1の発明において、
前記動力伝達軸に駆動連結され、該動力伝達軸に平行に配置された第2軸と、
該第2軸上に配置されて、前記動力伝達軸の回転を変速して該第2軸に伝達する変速機構と、を有し、
前記モータの出力軸は、該モータと前記変速機構との干渉を回避する方向に、前記動力伝達軸に対して偏心させて配置されていることを特徴とする。
【0019】
本願の第5の発明に係るハイブリッド車両用駆動装置は、第1の発明において、
前記モータの近傍にパーキング操作系部品又は/及び油圧制御系部品が設けられ、
前記モータの出力軸は、前記モータと前記パーキング操作系部品又は/及び前記油圧制御系部品との干渉を回避する方向に、前記動力伝達軸に対して偏心させて配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本願の第1の発明によれば、エンジンの出力軸と同軸上に配置された動力伝達軸と、モータの出力軸とが、モータの出力軸に設けられた外歯ギヤが動力伝達軸に設けられた内歯ギヤに噛み合うことで連結されるため、モータの軸心とエンジンの軸心との偏心量を前記特許文献1に記載された従来のものに比べて小さくすることができる。そのため、エンジンの軸心に対するモータの軸心の偏心方向の自由度が高まり、エンジンルーム内における各種機器のレイアウト性が向上する。また、モータ側の外歯ギヤの径とエンジン側の内歯ギヤの径との比率を設定することにより、モータの減速比を適切に設定することができる。
【0021】
本願の第2の発明によれば、車両の前後方向に関してモータの出力軸がエンジン側の動力伝達軸よりも前側に配置されるため、動力伝達軸よりも後方に配置された第2軸上の部品およびデファレンシャル装置に対してモータが干渉することを防止することができる。
【0022】
本願の第3の発明によれば、モータの出力軸が、動力伝達軸よりも上側に配置されるため、モータの下方に配置される部材とモータとの干渉を防止することができる。
【0023】
本願の第4の発明によれば、モータの出力軸を動力伝達軸に対して所定の方向にずらして配置することで、第2軸に設けられた変速機構とモータとの干渉を回避することができる。
【0024】
本願の第5の発明によれば、モータの出力軸を動力伝達軸に対して所定の方向にずらして配置することで、当該駆動装置に備えられたパーキング操作系部品又は/及び油圧制御系部品とモータとの干渉を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置を示すスケルトン図である。
【図2】図1に示す駆動装置を各軸を通る切断線に沿って切断して展開した展開断面図である。
【図3】図1に示す駆動装置の各軸の位置関係を示す正面図である。
【図4】第2の実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置を示すスケルトン図である。
【図5】図4に示す駆動装置を各軸を通る切断線に沿って切断して展開した展開断面図である。
【図6】図4に示す駆動装置の各軸の位置関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
[第1の実施形態]
先ず、図1〜図3を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置2について説明する。
【0028】
図1は、駆動装置2を示すスケルトン図であり、図2は、駆動装置2を示す展開断面図である。
【0029】
図1及び図2に示すように、駆動装置2は、車幅方向に延びるように配置されたエンジン4の出力軸4aに直結された入力軸30と、該入力軸30と同軸上に配置された動力伝達軸32と、エンジン4と同軸上に配置されるように入力軸30に連結された第1モータ6と、出力軸34が動力伝達軸32に平行に配置され且つ減速歯車機構70を介して動力伝達軸32に連結された第2モータ8と、を有する。
【0030】
また、この駆動装置2は、動力伝達軸32に駆動連結され、動力伝達軸32に平行に配置された第2軸36と、第2軸36に駆動連結され、軸線11(図3参照)が第2軸36に平行に配置されたデファレンシャル装置10と、を有する。
【0031】
第1モータ6は、後述のケース94に固定された環状のステータ12と、ステータ12の内側に回転自在に設けられたロータ14とを有する。ステータ12は、磁性体からなるステータコアにコイルが巻回されて構成されている。ロータ14は、入力軸30と共に回転するように、この実施形態では該入力軸30と一体化されている。ロータ14は磁性体で構成されている。
【0032】
第1モータ6は、ステータ12に電力が供給されることにより駆動する電動機としての機能と、ロータ14に供給された機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機としての機能とを兼ね備えている。
【0033】
入力軸30の図中左端部は、ダンパ16及びクラッチ18を介して動力伝達軸32に連結されている。ダンパ16は、内周部が入力軸30の図中左端部の外周部にスプライン嵌合され、該入力軸30と一体的に回転しながら、該入力軸30の振動を吸収する。
【0034】
クラッチ18には、油圧式多板クラッチが用いられ、油圧制御によりオン・オフされる。このクラッチ18がオンにされると、前記ダンパ16の外周部の部材に係合されたディスクと、動力伝達軸32に一体のドラム部材に係合されたディスクとが互いに密着され、これにより、入力軸30がダンパ16を介して動力伝達軸32に接続される。逆に、クラッチ18がオフにされると、前記ダンパ16の外周部の部材に係合されたディスクと、動力伝達軸32に一体のドラム部材に係合されたディスクとが互いに離間し、これにより、ダンパ16を介した入力軸30と動力伝達軸32との接続が切断される。
【0035】
動力伝達軸32には出力ギヤ68がスプライン嵌合され、該動力伝達軸32と一体的に回転するようになっている。そして、この出力ギヤ68のボス部を介して、動力伝達軸32は、クラッチ18と出力ギヤ68との間に設けられた軸受50により支持されている。
【0036】
第2軸36には、2つのギヤ76,78が設けられている。一方のギヤ76は前記出力ギヤ68に噛合されており、これらのギヤ68,76を介して動力伝達軸32と第2軸36との間で動力の伝達が可能となっている。他方のギヤ78は、デファレンシャル装置10のリングギヤ80に噛合されており、これらのギヤ78,80を介して第2軸36とデファレンシャル装置10との間で動力の伝達が可能となっている。その場合に、ギヤ78は、リングギヤ80の径よりも小さな径を有し、第2軸36の動力が減速されてデファレンシャル装置10に伝達されるようになっている。第2軸36は、該第2軸36の両端部において軸受56,58により支持されている。
【0037】
デファレンシャル装置10は、互いに対向する一対のピニオンギヤ82,84と、これらのピニオンギヤ82,84に噛合する一対のサイドギヤ86,88と、を有する。各サイドギヤ86,88には車軸38,40が連結されている。また、デファレンシャル装置10の前記リングギヤ80が取り付けられたケース90は、車軸38,40が挿通される一対の車軸挿通部91,92を有し、各車軸挿通部91,92は軸受60,62により支持されている。第2軸36からデファレンシャル装置10に伝達された動力は、走行状況に応じた回転差となるように左右の車軸38,40に伝達され、これにより、各車軸38,40に設けられた図示しない駆動輪が駆動される。
【0038】
第2モータ8は、後述のケース94に固定された環状のステータ20と、ステータ20の内側に回転自在に設けられたロータ22とを有する。ステータ20は、磁性体からなるステータコアにコイルが巻回されて構成されている。ロータ22は、磁性体で構成されているとともに、内周部にスリーブ24を有し、このスリーブ24に第2モータ8の出力軸34がスプライン嵌合されて、ロータ22と出力軸34とが一体的に回転するようになっている。この出力軸34はスリーブ24を介して軸受52,54により支持されている。
【0039】
第2モータ8は、第1モータ6と同様、ステータ20に電力が供給されることにより駆動する電動機としての機能と、ロータ22に供給された機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機としての機能とを兼ね備えている。
【0040】
減速歯車機構70は、動力伝達軸32に設けられた内歯ギヤ72と、第2モータ8の出力軸34に設けられ、内歯ギヤ72に噛み合う外歯ギヤ74と、で構成されている。内歯ギヤ72は、出力ギヤ68と共に回転するように、この実施形態では出力ギヤ68と一体化されている。外歯ギヤ74の径は内歯ギヤ72の径よりも小さいため、第2モータ8の回転は、減速歯車機構70により減速されて出力ギヤ68に伝達される。
【0041】
図2に示すように、第1モータ6、ダンパ16、クラッチ18、減速歯車機構70、第2モータ8及び第2軸36は、複数のハウジング96,98,100が連結されてなる変速機ケース94に収容されており、デファレンシャル装置10は、該変速機ケース94から後ろ下方へ膨出するように設けられている。
【0042】
ここで、図1を参照しながら、駆動装置2の動作について説明する。
【0043】
駆動装置2は、シリーズ方式とパラレル方式を融合したシリーズ・パラレル併用方式の駆動装置である。すなわち、駆動装置2による車両の走行は、第2モータ8の出力のみを駆動輪に伝達するシリーズ走行と、エンジン4(および第1モータ6)の出力と第2モータ8の出力とを合流させて駆動輪に伝達するパラレル走行との間で切替え可能である。
【0044】
シリーズ走行は、例えば、高出力を必要としない走行状態であるときに行われる。シリーズ走行が行われる場合、クラッチ18はオフにされる。これにより、エンジン4の出力は駆動輪側に伝達されず、専ら第2モータ8の出力により駆動輪が駆動される。このとき、第1モータ6は、エンジン4により駆動されることで発電を行い、図示しないバッテリを充電する。そのため、バッテリから第2モータ8へ継続的に電力を供給することができる。
【0045】
シリーズ走行中において車両が減速するとき、第2モータ8は回生ブレーキとして利用される。具体的に説明すると、車両減速時、車両の慣性走行による駆動輪からの動力は第2モータ8に伝達され、この動力により第2モータ8が駆動される。このとき、駆動された第2モータ8は発電機として機能し、運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、そのときの発電抵抗により車両に減速力が作用する。そして、第2モータ8により変換された電気エネルギーはバッテリに充電されるため、エネルギーの有効利用を図ることができる。
【0046】
パラレル走行は、例えば加速時など、高出力が要求される走行状態であるときに行われる。パラレル走行が行われる場合、クラッチ18はオンにされ、入力軸30が動力伝達軸32に接続される。これにより、エンジン4の出力と第2モータ8の出力とは出力ギヤ68で合流し、合流した出力により駆動輪が駆動される。このとき、エンジン4の出力を利用して第1モータ6を発電機として機能させることでバッテリを充電するようにしてもよいし、バッテリから第1モータ6に電力を供給することで第1モータ6を補助的な駆動源として機能させるようにしてもよい。
【0047】
第1モータ6はエンジン4のスタータモータとしても利用することができる。これにより、専用のスタータモータを用いなくても済むため、部品点数の削減、及びエンジンルームの省スペース化を図ることができる。
【0048】
次に、図3を参照しながら、この実施形態の特徴である駆動装置2の各軸の配置について説明する。
【0049】
第2軸36は、車両前後方向に関して動力伝達軸32(エンジン4の出力軸4a)よりも後上方に配置され、デファレンシャル装置10は、車両前後方向に関して第2軸36よりも後下方に配置されている。
【0050】
また、第2モータ8の下方には、パーキング機構の制御および所定の油圧制御に用いられるコントロールロッド102と、各種クラッチ又は/及び各種ブレーキに供給される油圧を制御するコントロールバルブユニット104が設けられている。
【0051】
一方、第2モータ8の出力軸34は、車両前後方向に関して動力伝達軸32(エンジン4の出力軸4a)よりも前上方に配置されている。出力軸34は動力伝達軸32よりも前方に配置されているため、第2モータ8が第2軸36上の各種部品およびデファレンシャル装置10に干渉することを回避することができる。また、出力軸34は動力伝達軸32よりも上方に配置されているため、第2モータ8が該第2モータ8の下方に配置されたコントロールロッド102及びコントロールバルブユニット104に干渉することを回避することができる。
【0052】
このように、本実施形態では、第2モータ8の出力軸34の配置に特徴があり、この特徴ある出力軸34の配置は、出力軸34に設けられた外歯ギヤ74が、動力伝達軸32に設けられた内歯ギヤ72に噛み合わされていることにより実現されている。つまり、外歯ギヤ74を内歯ギヤ72に噛み合わせる構成によれば、従来のように外歯ギヤ同士の噛み合いにより第2モータ8の出力軸34と動力伝達軸32とを連結させる構成に比べて、第2モータ8の出力軸34の動力伝達軸32(エンジン4の出力軸4a)に対するオフセット量、すなわちエンジン4の中心に対する第2モータ8の中心の偏心量を小さくすることができる。
【0053】
したがって、エンジン4に対する第2モータ8の偏心方向の自由度が高まるため、第2モータ8が別部材と干渉することを上述のように容易に回避することができる。また、エンジン4に対する第2モータ8の偏心量が小さいため、第2モータ8がエンジン4よりも前方へ突出することを回避することができる。よって、エンジンルーム内における各種機器のレイアウト性を向上させることができる。
【0054】
さらに、第2モータ8の出力軸34と動力伝達軸32との間に介在する減速機構には、内歯ギヤ72と外歯ギヤ74とからなる減速歯車機構70が用いられているため、例えば減速機構に遊星歯車機構が用いられる場合に比べて減速比を自由に設定することができる。
【0055】
[第2の実施形態]
図4〜図6を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置202について説明する。
【0056】
なお、第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同様の構成についての説明は省略する。また、図4〜図6において、第1の実施形態と同様の機能を有する部材については同符号を付してある。
【0057】
図4は、駆動装置202を示すスケルトン図であり、図5は、駆動装置202を示す展開断面図である。
【0058】
図4及び図5に示すように、駆動装置202は、第1の実施形態に係る駆動装置2の構成に加えて、動力伝達軸32の回転を変速して第2軸36に伝達する変速機構210を有する。
【0059】
変速機構210は、第2軸36上に配置されており、変速機ケース94に収容されている。なお、第1の実施形態と同様、変速機ケース94は、複数のハウジング194,196,198,200が連結されて構成されている。
【0060】
変速機構210は、遊星歯車機構211を用いて構成されており、この遊星歯車機構211は、内歯ギヤであるリングギヤ212と、リングギヤ212と同軸上に配置されたサンギヤ214と、リングギヤ212とサンギヤ214とに噛合する複数のプラネタリギヤ218と、これらのプラネタリギヤ218を連結するプラネタリキャリア216と、を有する。
【0061】
リングギヤ212は、第2軸36上に配置されて出力ギヤ68に噛み合わされたギヤ76に結合されており、変速機構210の入力要素として機能する。なお、第1の実施形態と異なり、ギヤ76は、第2軸36に対して相対回転可能なように該第2軸36に外嵌されている。プラネタリキャリア216は、第2軸36に連結され、変速機構210の出力要素として機能する。
【0062】
サンギヤ214とプラネタリキャリア216との間にはクラッチ220が配置されている。また、サンギヤ214と変速機ケース94との間にはブレーキ222が配置されている。さらに、このブレーキ222に並列にワンウェイクラッチ224が配置されている。
【0063】
以上の構成により、変速機構210は、出力ギヤ68と第2軸36との連結状態を、出力ギヤ68の回転が変速されることなく第2軸36に伝達される直結状態と、出力ギヤ68の回転が減速されて第2軸36に伝達される減速状態との間で切替え可能とされている。
【0064】
まず、クラッチ220がオンであり、ブレーキ222がオフであるとき、出力ギヤ68と第2軸36との連結状態は直結状態となる。つまり、クラッチ220を介して互いに接続されたサンギヤ214とプラネタリキャリア216とは、リングギヤ212と共に一体となって回転する。すなわち、入力要素であるリングギヤ212と、出力要素であるプラネタリキャリア216とが同一速度で回転する。よって、第1の実施形態のように変速機構210を設けない場合と同様、出力ギヤ68からギヤ76に伝達された動力が変速されることなく第2軸36に伝達される。
【0065】
一方、クラッチ220がオフであり、ブレーキ222がオンであるとき、出力ギヤ68と第2軸36との連結状態は減速状態となる。つまり、サンギヤ214が回転不能に固定され、リングギヤ212の回転が減速されてプラネタリキャリア216に伝達される。すなわち、出力ギヤ68からギヤ76に伝達された動力は、変速機構210により減速されて第2軸36に伝達される。
【0066】
このように変速機構210による減速が行われると、駆動輪側に伝達されるトルクは増大する。したがって、第2の実施形態では、第2モータ8の最大出力トルクを比較的小さくすることができる。そのため、第2モータ8の小型化を図ることができ、更なるレイアウト性の向上に貢献することができる。
【0067】
最後に、図6を参照しながら、第2の実施形態における駆動装置202の各軸の配置について説明する。
【0068】
本実施形態においても、外歯ギヤ74と内歯ギヤ72との噛み合いにより第2モータ8の出力軸34と動力伝達軸32とが連結されているため、第1の実施形態と同様、高いレイアウト性を得ることができる。
【0069】
ところが、本実施形態では、第2モータ8の出力軸34よりも上方に配置された第2軸36に変速機構210が設けられているため、該変速機構210と第2モータ8との干渉を回避する必要がある。そのため、本実施形態では、第2モータ8の出力軸34は、動力伝達軸32よりも僅かに下方に配置されている。ただし、本実施形態では、上述の理由により比較的小型の第2モータ8を使用することができるため、小型の第2モータ8を使用することにより、第2モータ8がコントロールロッド102及びコントロールバルブユニット104に干渉することを回避することが可能である。
【0070】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0071】
例えば、上述の第1の実施形態では、第2モータ8がコントロールロッド102及びコントロールバルブユニット104に干渉することを回避するために、第2モータ8の出力軸34を動力伝達軸32に対して前上方に偏心させる構成について説明したが、本発明において、動力伝達軸32に対する出力軸34の偏心方向は、第2モータ8とコントロールロッド102及びコントロールバルブユニット104との干渉を回避する方向であれば、第2モータ8とコントロールロッド102及びコントロールバルブユニット104との位置関係に応じて適宜変更可能である。
【0072】
また、上述の第1の実施形態では、第2モータ8がコントロールロッド102及びコントロールバルブユニット104に干渉することを回避するための構成について説明したが、本発明は、コントロールロッド102又はコントロールバルブユニット104以外のパーキング操作系部品又は/及び油圧制御系部品が第2モータ8の近傍に設けられ、それらの部品と第2モータ8との干渉を回避する場合にも等しく適用することができる。
【0073】
さらに、上述の第2の実施形態では、第2モータ8が変速機構210に干渉することを回避するために、第2モータ8の出力軸34を動力伝達軸32に対して前方やや下方に偏心させる構成について説明したが、本発明において、動力伝達軸32に対する出力軸34の偏心方向は、第2モータ8と変速機構210との干渉を回避する方向であれば、出力軸34と第2軸36との位置関係に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0074】
2,202:駆動装置、4:エンジン、4a:エンジンの出力軸、6:第1モータ、8:第2モータ、10:デファレンシャル装置、11:デファレンシャル装置の軸心、16:ダンパ、18:クラッチ、30:入力軸、32:動力伝達軸、34:第2モータの出力軸、36:第2軸、38,40:車軸、68:出力ギヤ、70:減速歯車機構、72:内歯ギヤ、74:外歯ギヤ、102:コントロールロッド、104:コントロールバルブユニット、210:変速機構、211:遊星歯車機構、212:リングギヤ、214:サンギヤ、216:プラネタリキャリア、218:プラネタリギヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸が車幅方向に延びるように配置されたエンジンと、
該エンジンの出力軸と同軸上に配置された動力伝達軸と、
出力軸が前記動力伝達軸に平行に配置され且つ減速歯車機構を介して連結されたモータと、を有するハイブリッド車両用駆動装置であって、
前記減速歯車機構は、
前記動力伝達軸に設けられた内歯ギヤと、
前記モータの出力軸に設けられ、前記内歯ギヤに噛み合う外歯ギヤと、で構成されていることを特徴とするハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項2】
前記動力伝達軸に駆動連結され、該動力伝達軸に平行に且つ車両前後方向に関して該動力伝達軸よりも後上方に配置された第2軸と、
該第2軸に駆動連結され、軸線が該第2軸に平行に且つ車両前後方向に関して該第2軸よりも後下方に配置されたデファレンシャル装置と、を有し、
前記モータの出力軸は、車両前後方向に関して前記動力伝達軸よりも前側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項3】
前記モータの出力軸は、前記動力伝達軸よりも上側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項4】
前記動力伝達軸に駆動連結され、該動力伝達軸に平行に配置された第2軸と、
該第2軸上に配置されて、前記動力伝達軸の回転を変速して該第2軸に伝達する変速機構と、を有し、
前記モータの出力軸は、該モータと前記変速機構との干渉を回避する方向に、前記動力伝達軸に対して偏心させて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項5】
前記モータの近傍にパーキング操作系部品又は/及び油圧制御系部品が設けられ、
前記モータの出力軸は、前記モータと前記パーキング操作系部品又は/及び前記油圧制御系部品との干渉を回避する方向に、前記動力伝達軸に対して偏心させて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−11706(P2011−11706A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159715(P2009−159715)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】