説明

ハイブリッド車両用駆動装置

【課題】プラネタリギヤのキャリアにワンウェイクラッチを連結した構成の場合でも軸方向の全長が増大するのを抑制できるハイブリッド車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】ワンウェイクラッチ3と、カウンタドライブギヤ6とが同軸に配置されたハイブリッド車両用駆動装置1において、ワンウェイクラッチ3のリングギヤ23を内周面81に設け、カウンタドライブギヤ6を外周面82に設け、リングギヤ23及びカウンタドライブギヤ6を一体的に形成した複合ギヤ8と、複合ギヤ8の軸線方向両端部において複合ギヤ8を支持する軸受10,11とを備え、一方の軸受10が、複合ギヤ8の径方向内側から複合ギヤ8を支持するよう配置され、ワンウェイクラッチ3が、リングギヤ23を挟んで一方の軸受10と軸方向反対側において、複合ギヤ8の径方向内側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されるように、シリーズパラレル方式のハイブリッド車両用駆動装置において、エンジンからの動力を出力軸と発電機に分割して伝達する動力分割機構としてのプラネタリギヤのうち、エンジンと連結するキャリアにワンウェイクラッチを連結する構成が知られている。この構成では、エンジン停止時に発電機を電動機として駆動させたときに、ワンウェイクラッチによりエンジンの逆回転が防止され、発電機の出力を出力軸側に伝達することができ、モータと発電機との同時出力により駆動力を強化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−103999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるような従来のハイブリッド車両用駆動装置では、ワンウェイクラッチ、プラネタリギヤ、カウンタギヤ、軸受などの各構成要素が同軸上に直列状に配置されているため、ワンウェイクラッチを設けない構成と比べて駆動装置の軸方向の全長が増大する虞があった。駆動装置の軸方向の全長が増大すると、装置の大型化を招き、設置スペースなどで制約を受けやすくなる。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、プラネタリギヤのキャリアにワンウェイクラッチを連結した構成の場合でも軸方向の全長が増大するのを抑制できるハイブリッド車両用駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エンジンに連結されるキャリア、発電機に連結されるサンギヤ、及びカウンタギヤに連結されるリングギヤを有するプラネタリギヤと、前記キャリア及び当該装置のケースの間に連結されたワンウェイクラッチと、前記カウンタギヤとが同軸に配置されたハイブリッド車両用駆動装置において、前記リングギヤを内周面に設け、前記カウンタギヤを外周面に設け、前記リングギヤ及び前記カウンタギヤを一体的に形成した円筒部材と、前記円筒部材の軸線方向両端部において前記円筒部材を支持する軸受と、を備え、前記軸受のうち一方の軸受が、前記円筒部材の径方向内側から前記円筒部材を支持するよう配置され、前記ワンウェイクラッチが、前記リングギヤを挟んで前記一方の軸受と軸方向反対側において、前記円筒部材の径方向内側に配置されることを特徴とする。
【0007】
また、上記のハイブリッド車両用駆動装置では、前記軸受のうち他方の軸受は、前記円筒部材の径方向外側から前記円筒部材を支持するよう配置されることが好ましい。
【0008】
また、上記のハイブリッド車両用駆動装置では、前記プラネタリギヤ、前記ワンウェイクラッチ、及び前記カウンタギヤと同軸に配置されたパーキングギヤが、前記円筒部材の前記外周面に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るハイブリッド車両用駆動装置は、円筒部材の外周面側のカウンタギヤと、円筒部材の内周面側のリングギヤ、軸受、及びワンウェイクラッチとを、軸線方向に重複して配置させることが可能となる。これにより、プラネタリギヤのキャリアにワンウェイクラッチを連結した構成の場合でも、軸方向の全長が増大するのを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、本実施形態の変形例に係るハイブリッド車両用駆動装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るハイブリッド車両用駆動装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0012】
まず、図1を参照して、本実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置1の構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置1の概略構成を示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のハイブリッド車両用駆動装置(以下「駆動装置」という)1は、シリーズパラレル方式のハイブリッド車両に用いられる駆動装置であり、図示しないエンジン及び発電機と、エンジンの出力を発電機と出力軸側に分割して伝達する動力分割機構として機能するプラネタリギヤ2と、エンジンの逆回転を防止するワンウェイクラッチ3とを同軸上に配置する構成をとるものである。図1に示す例では、エンジンは、図示部分より右方に配置され、エンジン出力軸4と連結されている。また、発電機は、図示部分より左方に配置され、そのロータ軸5が図外左方から図内に延在されている。
【0014】
また、この駆動装置1は、図示しないモータを別軸上にさらに備え、このモータの出力と、上記のプラネタリギヤ2により分割されたエンジンの出力とが、車輪に連結された出力軸に伝達される構成をとる。なお、本実施形態の「モータ」及び「発電機」とは、共に、駆動トルクを発生させる電動機(モータ)としての機能と、電力を発生させる発電機(ジェネレータ)としての機能とを選択的に作動させることができるモータジェネレータであり、両者の機能はハイブリッド車両の運転状態によって適宜切り替えられるものであるが、便宜上、本実施形態の説明では、プラネタリギヤ2と連結されているモータジェネレータ(電動機)を「発電機」と表す。
【0015】
プラネタリギヤ2は、サンギヤ21、キャリア22、リングギヤ23を備えるシングルピニオン式の遊星歯車機構であり、径方向内側に配置されるサンギヤ21と、径方向外側に配置されるリングギヤ23との間にピニオンギヤ24が噛合されて配置され、このピニオンギヤ24にキャリア22が連結されて構成されている。この駆動装置1では、サンギヤ21、キャリア22、リングギヤ23が、それぞれ発電機、エンジン、出力軸側と連結されている。図1に示す例では、プラネタリギヤ2のキャリア22が、エンジン出力軸4と連結されており、エンジン出力軸4は図外の右方にてエンジンと連結されている。また、プラネタリギヤ2のサンギヤ21は、発電機のロータ軸5とスプライン連結されている。リングギヤ23は、カウンタドライブギヤ(カウンタギヤ)6を介して出力軸と連結されている(リングギヤ23とカウンタドライブギヤ6との関係は後述する)。
【0016】
ワンウェイクラッチ3は、キャリア22に連結されるエンジンが逆回転方向に回転するのを防止するよう、プラネタリギヤ2のキャリア22に連結されている。ワンウェイクラッチ3は、径方向外側のアウターレース31と、径方向内側のインナーレース32とを備え、アウターレース31とインナーレース32とが軸周りの一方向に摺動可能に連結されている。アウターレース31は、駆動装置1のケース7の内壁71に連結固定され、また、インナーレース32は、プラネタリギヤ2のキャリア22に連結されている。
【0017】
ここで、図1に示す例では、ケース7の内壁71の所定の径方向位置より軸方向に延在する筒状の突出部72が設けられている。アウターレース31は、その内周面31aをこの突出部72の外周面72aと対向して配置され、さらに、スナップリング13により内周面31aを突出部72の外周面72aとスプライン嵌合することで、ケース7の内壁71に連結固定されている。
【0018】
このワンウェイクラッチ3は、エンジン停止時に発電機を電動機として駆動させたときに、発電機と連結されたサンギヤ21からピニオンギヤ24に伝達された駆動力によって、ピニオンギヤ24と連結したキャリア22が回転するのを係止させることができ、これにより、発電機の駆動力をリングギヤ23に伝達させて出力軸側に伝達することを可能とし、モータと発電機との同時出力ができるよう構成されている。
【0019】
特に本実施形態では、プラネタリギヤ2のリングギヤ23が、サンギヤ21及びキャリア22より径方向外側に配置された円筒状の複合ギヤ(円筒部材)8の内周面81に設けられている。この複合ギヤ8は、リングギヤ23を基準として軸方向の両側にも延在する円筒形状の部材である。この複合ギヤ8には、その外周面82にカウンタドライブギヤ6と、パーキングギヤ9とがさらに設けられている。このように、複合ギヤ8は、プラネタリギヤ2のリングギヤ23と、カウンタドライブギヤ6と、パーキングギヤ9とを一体的に形成している。
【0020】
図1に示す例では、複合ギヤ8では、カウンタドライブギヤ6がリングギヤ23から軸方向のエンジン側(図1の右方向)の外周面82の端部に設けられ、パーキングギヤ9がリングギヤ23から軸方向の発電機側(図1の左方向)の外周面82上に設けられており、軸方向に沿ってパーキングギヤ9、リングギヤ23、カウンタドライブギヤ6の順で直列状に配置されている。パーキングギヤ9、リングギヤ23、及びカウンタドライブギヤ6が径方向で重複しないように配置されている。
【0021】
また、複合ギヤ8は、2つのラジアル軸受10,11(以下「軸受」という)により、軸方向の両端から両持ち支持されている。2つの軸受10、11のうち一方の軸受10、より詳細にはエンジン側の端部に配置される軸受10は、複合ギヤ8の径方向内側から複合ギヤ8を支持するよう配置されている。この軸受10は、アウターレース10aで複合ギヤ8の内周面81と当接して複合ギヤ8を支持しており、また、インナーレース10bでケース7の内壁71と当接しケース7に支持される。図1に示す例では、上述のようにカウンタドライブギヤ6が複合ギヤ8のエンジン側端部に設けられているので、軸受10はカウンタドライブギヤ6の径方向内側に配置されている。
【0022】
一方、発電機側の端部に配置される他方の軸受11は、複合ギヤ8の径方向外側から複合ギヤ8を支持するよう配置されている。この軸受11は、インナーレース11bで複合ギヤ8の外周面82と当接して複合ギヤ8を支持しており、また、アウターレース11aでケース7の内壁71と当接してケース7に支持される。なお、パーキングギヤ9は、軸受11から軸方向のカウンタドライブギヤ6側に隣接して設けられている。
【0023】
このように、軸受10,11は、径方向視において、複合ギヤ8と重複(オーバーラップ)して配置されている。
【0024】
さらに、複合ギヤ8の発電機側、すなわちリングギヤ23を挟んで軸受10と軸方向反対側においては、軸受11が径方向外側から複合ギヤ8を支持する構成のため、複合ギヤ8の発電機側端面からリングギヤ23までの間に、リングギヤ23より内径が大きい円筒溝12を設けることが可能とされている。そして、特に本実施形態では、ワンウェイクラッチ3が、この円筒溝12の内部に格納されるよう配置され、径方向視において複合ギヤ8と重複するよう、複合ギヤ8の径方向内側に配置されている。また、ワンウェイクラッチ3と複合ギヤ8のパーキングギヤ9とが径方向で対向し、少なくとも一部が重複するよう配置されている。
【0025】
次に、本実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置1の作用効果を説明する。
【0026】
本実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置1では、複合ギヤ8が、プラネタリギヤ2のリングギヤ23を内周面81に設け、カウンタドライブギヤ6を外周面82に設け、リングギヤ23及びカウンタドライブギヤ6を一体的に形成される。また、複合ギヤ8の軸線方向の両端部において複合ギヤ8を支持する軸受10,11のうち一方の軸受10が、複合ギヤ8の径方向内側から複合ギヤ8を支持するよう配置される。さらに、プラネタリギヤ2のキャリア22に連結されるワンウェイクラッチ3が、リングギヤ23を挟んで軸受10と軸方向反対側において、複合ギヤ8の径方向内側に配置される。
【0027】
このような構成により、本実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置1は、複合ギヤ8の外周面82側のカウンタドライブギヤ6と、複合ギヤ8の内周面81側のリングギヤ23、軸受10、及びワンウェイクラッチ3とを、軸線方向に沿って重複して配置させることが可能となる。これにより、プラネタリギヤ2のキャリア22にワンウェイクラッチ3を連結した構成の場合でも、軸方向の全長が増大するのを抑制できる。
【0028】
また、本実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置1では、複合ギヤ8を支持する軸受10,11のうち他方の軸受11は、複合ギヤ8の径方向外側から複合ギヤ8を支持するよう配置される。この構成により、複合ギヤ8の径方向内側に軸受11を配置するスペースが不要となり、径方向視において、軸受11、複合ギヤ8、及びワンウェイクラッチ3を重複配置させることが可能となるので、軸方向の全長が増大するのをさらに抑制できる。
【0029】
また、本実施形態に係るハイブリッド車両用駆動装置1では、プラネタリギヤ2、ワンウェイクラッチ3、及びカウンタドライブギヤ6と同軸に配置されたパーキングギヤ9が、複合ギヤ8の外周面82に設けられる。この構成により、上記のカウンタドライブギヤ6に加えてパーキングギヤ9も、複合ギヤ8の内周面81側のリングギヤ23、軸受10、及びワンウェイクラッチ3と軸線方向に沿って重複して配置させることが可能となるので、ハイブリッド車両用駆動装置1の軸方向の全長が増大するのをより一層抑制することができる。
【0030】
次に、図2を参照して、本実施形態の変形例について説明する。図2は、本実施形態の変形例に係るハイブリッド車両用駆動装置40の概略構成を示す断面図である。上記実施形態では、ワンウェイクラッチ3のアウターレース31は、スナップリング13によりケース7にスプライン嵌合され、軸方向位置を規制されていたが、図2に示すように、複合ギヤ8との間にスラスト軸受41を配置してもよい。図2に示す例では、スラスト軸受41は、一方のレース41aでワンウェイクラッチ3のアウターレース31の端面33と当接してワンウェイクラッチ3のアウターレース31を支持しており、また、他方のレース41bで複合ギヤ8の円筒溝12の底面42と当接して複合ギヤ8に支持されている。この構成により、上記実施形態と同様にワンウェイクラッチ3のアウターレース31の軸方向位置を規制できると共に、ワンウェイクラッチ3の脱着性を向上させることができる。
【0031】
以上、本発明について好適な実施形態を示して説明したが、本発明はこれらの実施形態により限定されるものではない。
【符号の説明】
【0032】
1,40 ハイブリッド車両用駆動装置
2 プラネタリギヤ
21 サンギヤ
22 キャリア
23 リングギヤ
3 ワンウェイクラッチ
6 カウンタドライブギヤ(カウンタギヤ)
9 パーキングギヤ
10 ラジアル軸受(一方の軸受)
11 ラジアル軸受(他方の軸受)
8 複合ギヤ(円筒部材)
81 複合ギヤの内周面(円筒部材の内周面)
82 複合ギヤの外周面(円筒部材の外周面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに連結されるキャリア、発電機に連結されるサンギヤ、及びカウンタギヤに連結されるリングギヤを有するプラネタリギヤと、前記キャリア及び当該装置のケースの間に連結されたワンウェイクラッチと、前記カウンタギヤとが同軸に配置されたハイブリッド車両用駆動装置において、
前記リングギヤを内周面に設け、前記カウンタギヤを外周面に設け、前記リングギヤ及び前記カウンタギヤを一体的に形成した円筒部材と、
前記円筒部材の軸線方向両端部において前記円筒部材を支持する軸受と、
を備え、
前記軸受のうち一方の軸受が、前記円筒部材の径方向内側から前記円筒部材を支持するよう配置され、
前記ワンウェイクラッチが、前記リングギヤを挟んで前記一方の軸受と軸方向反対側において、前記円筒部材の径方向内側に配置される
ことを特徴とする、ハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項2】
前記軸受のうち他方の軸受は、前記円筒部材の径方向外側から前記円筒部材を支持するよう配置されることを特徴とする、請求項1に記載のハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項3】
前記プラネタリギヤ、前記ワンウェイクラッチ、及び前記カウンタギヤと同軸に配置されたパーキングギヤが、前記円筒部材の前記外周面に設けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載のハイブリッド車両用駆動装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−225371(P2012−225371A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91527(P2011−91527)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】