説明

ハンドオーバ制御方法

【課題】 移動局と基地局間のハンドオーバ処理をなくすることにより、伝送効率を改善すること。
【解決手段】 移動局104が基地局101と通信している場合、基地局101は、移動局104の情報と自局の情報を逐次、移動局管理装置107に通知している。移動局管理装置107が、現在通信中の基地局101のサービスエリア111の所定の領域に入ったことを検出した場合、移動局104の位置情報から、隣接基地局である基地局102を検索する。そして、移動局管理装置107は、移動局の情報を、基地局102に通知する。基地局102は、移動局104の情報を通知されるまでは、移動局104宛のユーザデータを廃棄しているが、移動局管理装置107から移動局104の情報を通知された後は、移動局104宛のユーザデータを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドオーバ制御方法に関し、特に、予め決められたルートを高速に移動する鉄道、自動車等に搭載されている移動局と基地局間で行われる高速データ通信に好適なハンドオーバ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル環境でのデータ通信の利用が増えており、さらなる高速データ通信サービスが要望されている。第3世代移動体通信システムの伝送速度は、高速移動時は、数百kbps、静止時でも、せいぜい1〜2Mbpsである。
【0003】
一方、無線LANシステムでは、数十Mbpsの伝送速度を実現できるが、ハンドオーバに時間を要し、ハンドオーバを頻繁に行なわなければならず、高速移動環境下では、伝送効率が落ちてしまう。
【0004】
図6は、以下の特許文献1に示された移動局の構成を示すブロック図である。図6に示す移動局の端末601では、ベースバンド信号処理部602において、基地局からの受信信号の強度が周期的に測定されており、相対変化量算出部603において、ベースバンド処理部602にて測定された受信信号の強度の測定時間毎の相対変化量が算出されている。そして、受信信号の強度及び受信信号の強度の相対変化量に基づき、ハンドオーバ処理を行うようになっている。
【0005】
このように、ハンドオーバは、移動局が複数の基地局が定期的に送信している信号の電界強度等を測定し、現在、接続している基地局との通信品質が低下し、他の基地局と接続した方が通信品質が良くなると判断した場合に、移動局主導でハンドオーバを起動し、ハンドオーバ先の基地局情報をネットワークにある移動局管理装置に通知し、ハンドオーバを行っている。
【0006】
上記の方式では、移動局が、ハンドオーバ先の基地局を検出し、そこから送信されるハンドオーバ先の基地局情報を、ネットワークにある移動局管理装置に送信することにより、移動局管理装置が、移動局のハンドオーバ先を検出し、その後、ハンドオーバ処理を行うようになっている。
【0007】
又、図7は、特許文献2に示された移動通信システムの構成を示すブロック図である。
【0008】
図7に示す通信システムは、ハンドオーバ時にいかに、次のハンドオーバ先の無線リソースを確保して、ハンドオーバの確度を高めるかという観点に着目したシステムである。
【0009】
このため、図7に示す通信システムでは、複数の無線ゾーンの内、移動局701が位置する無線ゾーンに隣接した何れかの隣接無線ゾーンについて、その移動局が移動することを予測し、移動局の移動先の候補である候補無線ゾーンを選択し、その候補無線ゾーンを交換局702を介して、移動局に通知する候補ゾーン通知手段703と、予測された時点の移動先の候補である候補無線ゾーンを選択すると共に、空いている無線チャネルを捕捉し、通信リンクにパスを形成する候補ゾーン選択手段704とを備えている。
【特許文献1】特許第3127898号公報
【特許文献2】特開平10−290475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の方法においては、移動局からハンドオーバが要求されてから、ハンドオーバ処理を行っているので、ハンドオーバが完了するまでの時間、即ちハンドオーバに要する所要時間が長くなってしまい、移動局が高速に移動し、頻繁にハンドオーバする場合、データ通信のスループットの低下を招き、伝送効率が低下してしまうという問題がある。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、移動局と基地局間のハンドオーバ処理をなくすることにより、伝送効率を改善することができるハンドオーバ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のハンドオーバ制御方法は、予め決められたルートを移動する移動局と通信中の第1の基地局が、前記移動局を識別する情報とその位置情報及び自局を識別する情報を移動局管理装置に通知する第1の工程と、前記第1の基地局から情報を受信した移動局管理装置が、前記第1の基地局に隣接し、接続が予測される第2の基地局を検索し、検索の結果、得られた第2の基地局に、受信した移動局の情報を通知する第2の工程と、前記移動局の情報を受信した前記第2の基地局が、前記移動局宛のユーザデータを前記移動局に対して送信する第3の工程と、を具備するようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、移動局と基地局間のハンドオーバ処理をなくすることにより、伝送効率を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1〜図3は、本発明の実施の形態1に係るハンドオーバ制御方法を説明するための図であり、図1は、実施の形態1の全体構成を示す図、図2は、移動局管理装置107の構成を示すブロック図、図3は、実施の形態1の動作の流れを示すフロー図である。
【0016】
図1及び図2において、101〜103は基地局、104は移動局、105は、ネットワーク106に接続すると共に、基地局101〜103にユーザデータを送信するゲートウエイ装置、107は移動局管理装置である。そして、移動局管理装置107は、図2に示すように、予め決められた経路を移動する移動局104と通信中の第1の基地局101から、移動局を識別する情報とその位置情報及び自局を識別する情報を受信する情報受信部201と、情報受信部201が受信した情報に基づき、第1の基地局101に隣接し、接続が予測される第2の基地局102を検索し決定する隣接局検索部202と、検索の結果、得られた第2の基地局102に受信した移動局の情報を通知する隣接局情報通知部203とで構成されている。
【0017】
なお、図1において、111、112、113は、それぞれ基地局101、102、1103のサービスエリアである。
【0018】
次に、図1及び図3を用いてハンドオーバ制御方法を説明する。
【0019】
移動局104が基地局101と通信している場合、基地局101は、移動局104の情報(MACアドレス:MAC#0)と自局の情報(MAC#1)を逐次、移動局管理装置107に通知している(ステップST301)。この情報を情報受信部201を介して受信した移動局管理装置107が、現在通信中の基地局101(第一の基地局)のサービスエリア111の所定の領域(オーバラップゾーン)に入ったことを検出した場合、隣接局検索部202は、移動局104の位置情報から、隣接基地局である基地局102(第二の基地局)を検索する。そして、移動局管理装置107の隣接局情報通知部203は、移動局の情報(MAC#0)を、基地局102に通知する(ステップST302)。
【0020】
一方、ゲートウェイ装置105は、移動局104宛のユーザデータを、移動局MACアドレス(MAC#0)宛に送信している。従って、基地局101は、移動局104宛のユーザデータを移動局104宛に送信している。一方、基地局102は、移動局104の情報(MAC#0)を通知されるまでは、移動局104宛のユーザデータを廃棄しているが、移動局管理装置107から移動局104の情報(MAC#0)を通知された後は、移動局104宛のユーザデータ(MAC#4 to MAC#0)を送信する(ステップST303)。また、基地局103は、ゲートウェイ装置105からユーザデータ(MAC#4 to MAC#0)を受信しているが、移動局管理装置107から移動局104の情報(MAC#0)を受け取っていないため、受信したユーザデータ(MAC#4 to MAC#0)を廃棄している。
【0021】
なお、移動局の位置情報は、鉄道であれば、鉄道管制システムから取得した位置情報、自動車の場合は、GPSや車載ナビゲーションシステムから取得した位置情報、また、鉄道又は自動車の車内の携帯電話機の場合には、GPSから取得した位置情報を用いればよい。又、移動方向を示す情報を含めるように構成しても良い。
【0022】
このように、本実施の形態1によれば、ハンドオーバのための処理を移動局104から起動する必要がなく、また、ハンドオーバのための処理を移動局104と基地局101間で行う必要がないので、伝送効率を改善することができる。
【0023】
なお、本実施の形態1において、移動局情報として、MACアドレスを例に説明したが、これに限らず、移動局と通信するための固有のID情報、暗号に関する情報(暗号鍵)等の移動局固有に割り当てられており、移動機と通信するために必要な情報も含むように構成してもよい。
【0024】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係るハンドオーバ制御方法を説明するための図である。なお、図1と同一部分には、同一符号を付して、その説明を省略する。また、移動局管理装置107の構成は図2と同一構成であるので、その説明は省略する。
【0025】
実施の形態1では、基地局101、基地局102が同一セグメントに属しており、ゲートウェイ装置105から移動局104(基地局101を経由)宛のデータが、基地局102にも届くように構成されている。これに対して、実施の形態2では、各基地局、ゲートウェイ装置105間にレイヤ2スイッチ(又は、ハブ)401が設けられ、基地局102には届かないように構成した点で、実施の形態1と異なる。
【0026】
以下に、実施の形態2の動作を説明する。
【0027】
移動局104が基地局101と通信している場合、基地局101は、移動局104の情報(MAC#0)と自局の情報(MAC#1)を逐次、移動局管理装置107に通知している。この情報を情報受信部201を介して受信した移動局管理装置107が、現在通信中の基地局101のサービスエリア111の所定の領域(オーバラップゾーン)に入ったことを検出した場合、隣接局検索部202は、移動局104の位置情報から、隣接基地局である基地局102を検索する。そして、移動局管理装置107の隣接局情報通知部203は、移動局104の情報(MAC#0)を、基地局102に通知すると同時に、レイヤ2スイッチ401に対しても、移動局104が通信可能な基地局101、102に関する情報を通知する。この情報を受信したレイヤ2スイッチ401は、ユーザデータ(MAC#4 to MAC#0)をコピーして、基地局101、102の両基地局に対してユーザデータ(MAC#4 to MAC#0)を送信する。
【0028】
なお、ゲートウェイ装置105は、移動局宛のユーザデータを、移動局104宛に送信しているが、レイヤ2スイッチ401は、移動局104宛のユーザデータを、基地局101、102の両基地局に対して送信するから、基地局102も、移動局104宛のデータを送信する。
【0029】
このように、本実施の形態2によれば、ハンドオーバのための処理を移動局104から起動する必要がなく、また、ハンドオーバのための処理を移動局104と基地局101間で行う必要がないので、伝送効率を改善することができる。
【0030】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係るハンドオーバ制御方法を説明するための図である。なお、図1と同一部分には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0031】
実施の形態2では、レイヤ2スイッチを設けるように構成したが、実施の形態3は、基地局が、レイヤ3スイッチまたはルータとして動作するように構成した点で、実施の形態2と異なる。即ち、ゲートウェイ装置105、基地局101、基地局102及び基地局103は、全てIPルータまたはレイヤ3スイッチとしての機能を有する。
【0032】
ゲートウェイ装置105は、移動局管理装置107からの移動局情報に基づいて、移動局104(IP#0)が、基地局101及び基地局102のセルにいることを認識し、基地局101(MAC#1)及び基地局102(MAC#2)のそれぞれに対して、移動局104(IP#0)宛てのデータをコピーして送信する。各基地局は、自分宛てのユーザデータだけを受け取り、受け取ったユーザデータのIPアドレスが、移動局管理装置107から通知されている移動局情報(IP#0)であれば無線で送信する。なお、他の動作は実施の形態2と同じであるので、その説明は省略する。
【0033】
実施の形態1及び実施の形態2では、第2の工程において、移動局管理装置が、第1の基地局に隣接し、接続が予測される第2の基地局を検索し、検索の結果、得られた第2の基地局に、受信した移動局の情報を通知するように構成した。しかしながら、図5に図示したように、ゲートウェイ装置105の配下の基地局のサービスエリアから、図示しない別のゲートウェイ装置の配下の基地局のサービスエリアに移動するような場合、移動局管理装置107から新たに通信するゲートウェイ装置及び基地局に移動局情報を通知することで、ハンドオーバを確実に実施することができる。
【0034】
このように、本実施の形態3によれば、ハンドオーバのための処理を移動局104から起動する必要がなく、また、ハンドオーバのための処理を移動局104と基地局101間で行う必要がないので、伝送効率を改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、特に、予め決められたルートを高速に移動する鉄道、自動車等に搭載されている移動局と基地局間で行われる高速データ通信、無線LAN等の高速移動体通信に用いるに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1に係るハンドオーバ制御方法の全体構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態1に係る移動局管理装置の構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態1に係るハンドオーバ制御方法の動作を示すフロー図
【図4】本発明の実施の形態2に係るハンドオーバ制御方法の全体構成を示す図
【図5】本発明の実施の形態3に係るハンドオーバ制御方法の全体構成を示す図
【図6】従来技術を示すブロック図
【図7】従来技術を示すブロック図
【符号の説明】
【0037】
101、102、103 基地局
104 移動局
105 ゲートウェイ装置
106 ネットワーク
107 移動局管理装置
111、112、113 サービスエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められたルートを移動する移動局と通信中の第1の基地局が、前記移動局を識別する情報とその位置情報及び自局を識別する情報を移動局管理装置に通知する第1の工程と、
前記第1の基地局から情報を受信した移動局管理装置が、前記第1の基地局に隣接し、接続が予測される第2の基地局を検索し、検索の結果、得られた第2の基地局に、受信した移動局の情報を通知する第2の工程と、
前記移動局の情報を受信した前記第2の基地局が、前記移動局宛のユーザデータを前記移動局に対して送信する第3の工程と、
を具備することを特徴とするハンドオーバ制御方法。
【請求項2】
前記第2の工程において、前記移動局管理装置は、前記移動局の位置情報から移動方向を特定し、前記移動局の位置情報及び移動方向に基づいて、前記第2の基地局を決定し、前記第2の基地局に前記受信した移動局の情報を通知することを特徴とする請求項1記載のハンドオーバ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−148565(P2006−148565A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336184(P2004−336184)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】