説明

ハンドリング治具

【課題】被ハンドリング体を支持する際、当接部材からの異物の発生量を低減するとともに、当接部材に取り付けられる衝撃緩衝部材を容易に交換することの可能なハンドリング治具の提供する。
【解決手段】 ハンドリング治具1は、フォトマスク用基板10を保持する固定アーム4及び回動アーム5と、固定アーム4及び回動アーム5に取り付けられ、フォトマスク用基板10と当接する当接部材としての爪6とを有し、爪6が、フォトマスク用基板10を係止する係止溝と、この係止溝にフォトマスク用基板10を導く線状の突起部と、フォトマスク用基板10と当接するOリングとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドリング治具に関し、特に、フォトマスク用基板などの被ハンドリング体を支持する際、当接部材からの異物の発生量を低減するとともに、当接部材に取り付けられる衝撃緩衝部材を容易に交換することの可能なハンドリング治具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体装置,表示装置,撮像装置、あるいは、これらの製造におけるリソグラフィー工程において用いられるフォトマスク,磁気記録媒体等の電子デバイスは、各製造工程ごとに異なる複数の製造装置を用いて製造される。たとえば、半導体装置,表示装置,撮像装置等の製造に用いられるフォトマスクは、透明基板上に微細加工された遮光膜パターンが形成されたものが代表的であるが、フォトマスク用基板に遮光膜を成膜する成膜装置,遮光膜上にレジストを塗布する塗布装置,レジスト膜にパターン描画を施す描画装置,レジストを現像する現像装置,遮光膜をエッチングするエッチング装置,洗浄装置,各種検査装置など、多数の装置が用いられる。各装置においては、処理部へ移送するための移送手段(ローダー)を備えているのが一般的であるが、装置どうしを連結する連結移送手段を備えていない。このため、作業者が、ハンドリング治具を用いてフォトマスク用基板,フォトマスクブランク(透明基板上に遮光膜が形成されたフォトマスクの素材),及びフォトマスク等(以下、これらフォトマスクを製造する段階を含めた基板を、フォトマスク基板と総称する。)を移動させ、各装置の移送手段に取付け及び取外しを行っている。
【0003】
また、上記のような電子デバイスは、異物が付着することによって品質が低下することから、クリーンルームにて製造される。しかしながら、クリーンルームにおいても、異物が完全に排除できるわけではなく、異物の付着に注意を払う必要がある。
例えば、半導体装置,表示装置,撮像装置等の製造に用いられるフォトマスクは、透明基板上に微細加工された遮光膜パターンが形成されたものが代表的であるが、フォトマスクの製造過程、すなわち、フォトマスク用基板やフォトマスクブランク(透明基板上に遮光膜が形成されたフォトマスクの素材)の状態で異物が付着することで、フォトマスクのパターン欠陥につながってしまう。さらに、フォトマスクの完成後に付着した異物は、デバイスのリソグラフィー工程において異物が転写され、デバイス欠陥を引き起こす。したがって、フォトマスク用基板の取扱いにおいて、異物の付着を防止する必要がある。
さらに、ハンドリング治具を用いてフォトマスク用基板を支持する際、フォトマスク用基板をアーム先端に取り付けられた当接部材に容易に係止するとともに、フォトマスク用基板に衝撃を与えないように支持する必要がある。また、支持したフォトマスク用基板の向きを、たとえば、水平方向から垂直方向に傾けても、フォトマスク用基板が当接部材から滑り落ちないように支持する必要もある。
これら要望を満足すべく、様々なハンドリング治具が開発されてきた。
【0004】
たとえば、特許文献1には、被搬送用平板(被ハンドリング体)の側部を保持するための保持部(当接部材)に先端が固定され、被搬送用平板上領域の外側に位置するような形状の第1腕部及び第2腕部が回転支点軸を枢軸として接続された鋏状構造を有するハンドリング治具の技術が開示されている。
このハンドリング治具の保持部は、直方体状のブロックの側面に、被搬送用平板の縁部が係止される係止溝を水平方向に形成し、係止溝の反対側の側面に、アームが嵌入される嵌入溝を垂直方向に形成した構成としてある。また、係止溝の底面に、滑り止めブッシュを突設し、被搬送用平板が保持部から滑り落ちるのを防止するとともに、係止溝の対向する側面を、外方向に向かって幅広に成形しガイド面とすることにより、被搬送用平板を容易に支持することができる。
【特許文献1】特開2000−174107号公報 (段落0016、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のハンドリング治具は、係止溝に被ハンドリング体を装入する際、ガイド面と被ハンドリング体が線接触した状態で擦れるので、線接触の状態に応じて磨耗粉が多く発生するといった問題があった。特に、被ハンドリング体が、たとえば、フォトマスク用基板のようにクリーンルーム内で製造される場合には、係止溝の上方のガイド面と被ハンドリング体が擦れると、発生した磨耗粉が被ハンドリング体の上面に落下するので、異物付着に起因する不良を低減することができないといった問題があった。
また、滑り止めブッシュ(滑り止め部材)を交換する際、ブロック固定ビスをゆるめて滑り止めブッシュを取り外し、ブロック固定ビスを締めつけて滑り止めブッシュを取り付ける必要があり、作業性が悪いといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決すべく、被ハンドリング体を支持する際、当接部材からの異物の発生量を低減するとともに、当接部材に取り付けられる衝撃緩衝部材を容易に交換することの可能なハンドリング治具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のハンドリング治具は、板状の被ハンドリング体を端面から挟持するアームと、このアームに取り付けられ、前記被ハンドリング体と当接する当接部材とを有するハンドリング治具であって、前記当接部材が、前記被ハンドリング体を端面付近で係止する係止溝と、被ハンドリング体の係止溝への挿入口であって被ハンドリング体の上面及び/又は下面に対向して形成された、挿入方向に対して傾斜したガイド面とを有し、前記ガイド面のうち少なくとも一面に、被ハンドリング体の挿入方向に延びた線状の突起部を備えた構成としてある。
このようにすると、被ハンドリング体が係止溝に装入される際、たとえば、従来技術においては、係止溝に被ハンドリング体を導くガイド面と被ハンドリング体が線接触の状態で擦れるのに対し、線状の突起部により、被ハンドリング体と点接触の状態で擦れるので、接触部分から発生する異物の発生量を最小限に抑えることができる。
【0008】
また、本発明のハンドリング治具は、前記突起部は、少なくとも被ハンドリング体の上面に対向して形成されたガイド面に備えられた構成としてある。
このようにすると、フォトマスク用基板の上面に落下する異物を低減することができるので、異物付着に起因するフォトマスク用基板の品質低下を防止できる。
【0009】
また、本発明のハンドリング治具は、前記係止溝の内底面に、前記ハンドリング体と当設する弾性部材を備えた構成としてある。
このようにすると、弾性部材とハンドリング体が当接することにより、異物の発生量を低減することができる。
【0010】
また、本発明のハンドリング治具は、前記弾性部材がOリングであり、前記Oリングの真下に、該Oリングと交差するように取外し溝を設けた構成としてある。
このようにすると、取外し溝に、たとえば、ピンセットの一方の先端を挿入してOリングを摘むことができ、Oリングを容易かつ異物を発生させずに取り外すし、交換することができる。
【0011】
また、本発明のハンドリング治具は、前記当接部材を、前記アームに交換可能に取り付けた構成としてある。
このようにすると、被ハンドリング体に応じた当接部材に交換する際、容易に交換することができる。
【0012】
また、本発明のハンドリング冶具は、前記被ハンドリング体を、フォトマスク用基板とした構成としてある。
このようにすると、フォトマスク用基板を被ハンドリング対として使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハンドリング治具は、被ハンドリング体を支持する際、線状の突起部により、被ハンドリング体と点接触の状態で擦れるので、異物の発生量を低減することができる。また、衝撃緩衝部材としてのOリングの弾性を利用して、Oリングを着脱容易に当接部材に取り付けることができ、Oリングを交換する際の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の第一実施形態にかかるハンドリング治具の全体的な構造を説明するための概略図であり、(a)は上面図を、(b)は側面図を、(c)は下面図を示している。
同図において、ハンドリング治具1は、グリップ2と、このグリップ2に回動自在に軸支されたレバー3と、グリップ2に取り付けられた固定アーム4と、この固定アーム4と対をなす、レバー3に取り付けられた回動アーム5と、固定アーム4及び回動アーム5の先端に取り付けられる爪(当接部材)6とからなっている。
なお、ハンドリング治具1は、フォトマスク用基板10をハンドリングする治具としてあるが、被ハンドリング体としては、フォトマスク用基板10に限定されるものではない。
【0015】
(グリップ)
グリップ2は、樹脂製の四角棒としてあり、被ハンドリング体側の上端部に、固定アーム4が二本のねじ41によって交換自在に固定されている。本実施形態では、被ハンドリング体側の上端部に溝21を形成し、この溝21に固定アーム4の手前側端部を嵌合させた状態で、ねじ(たとえば、十字穴付き皿小ねじ)41を用いて固定してある(図3(a)参照)。このようにすると、固定アーム4が破損した場合に容易に交換することができ、また、大きさの異なるフォトマスク用基板10や保持位置の異なるフォトマスク用基板10に対して、固定アーム4を交換することにより対応することができるので、グリップ2やレバー3等の主要部を共用化することができる。
【0016】
(レバー)
レバー3は、被ハンドリング体側の端部がグリップ2に回動自在に軸支され、四角棒31がグリップ2とほぼ平行に手前側に延設された構造としてある。
また、レバー3は、被ハンドリング体側の下端部に、回動アーム5が二本のねじ51によって交換自在に固定されている。本実施形態では、被ハンドリング体側の下端部に溝32を形成し、この溝32に回動アーム5の手前側端部を嵌合させた状態で、ねじ(たとえば、十字穴付き皿小ねじ)51を用いて固定してある(図3(a)参照)。このようにすると、回動アーム5が破損した場合に容易に交換することができ、また、大きさの異なるフォトマスク用基板10や保持位置の異なるフォトマスク用基板10に対して、回動アーム5を交換することにより対応することができるので、グリップ2やレバー3等の主要部を共用化することができる。
上記構成とすることにより、レバー3は、開方向に回動されると、回動アーム5が開かれ、閉方向に回動されると、回動アーム5が閉じられる。
【0017】
(固定アーム)
固定アーム4は、ステンレス製の四角棒を鉤状に折り曲げた構造としてあり、手前側先端が、上述したようにグリップ2に固定され、被ハンドリング体側先端に雌ねじ(図示せず)が設けてあり、爪6が取り付けられている。
また、固定アーム4は、鉤状に折り曲げられることにより、前後方向直線部42と上下方向直線部43が形成される。
【0018】
(回動アーム)
駆動アームとしての回動アーム5は、ステンレス製の四角棒を鉤状に折り曲げた構造としてあり、手前側先端が、上述したようにレバー3に固定され、被ハンドリング体側先端に雌ねじ(図示せず)が設けてあり、爪6が取り付けられている。
また、回動アーム5は、鉤状に折り曲げられることにより、前後方向直線部52と上下方向直線部53が形成される。
【0019】
(爪)
図2は、本発明の第一実施形態にかかるハンドリング治具の爪の構造を説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を、(b)は背面図を、(c)は左側面図を、(d)は上面図を、(e)はB−B断面図を示している。
同図において、当接部材としての爪6は、樹脂製のほぼ直方体状としてあり、正面下部に水平状態のフォトマスク用基板10が係止される係止溝61を左右方向に形成してある。この係止溝61は、フォトマスク用基板10を、上面611と下面612の間に隙間をもって挟むように係止する。
【0020】
上面611の正面側端部は、斜め上方に面取りされ、面取り面613が形成されている。この面取り面613の両端部に、断面が半円状の突起部614(同図(e)参照)が、斜面に沿って線状に形成してある。このようにすると、フォトマスク用基板10を支持する際、線状の突起部614により、フォトマスク用基板10が係止溝61に導かれ、フォトマスク用基板10を係止溝61に容易に装入することができる。さらに、導かれるとき、フォトマスク用基板10の角部が点接触の状態で擦れるので、接触部から発生する異物の発生量を最小限に抑えることができる。
また、支持されたフォトマスク用基板10の上方に突起部614を設けることにより、フォトマスク用基板10の上面に落下する異物を低減できるので、異物付着に起因するフォトマスク用基板10の品質低下を効果的に改善することができる。
なお、本実施形態では、突起部614を二本設けた構成としてあるが、この構成に限定されるものではなく、たとえば、一本又は三本以上設けてもよい。
【0021】
また、下面612の正面側端部は、斜め下方に面取りされガイド面615が形成されている。
なお、ガイド面615に突起部614と同様に突起部(図示せず)を形成してもよく、このようにすると、フォトマスク用基板10の角部が点接触の状態で擦れるので、異物の発生量を低減することができる。
【0022】
爪6の両側面には、Oリング62を取り付ける矩形環状のOリング溝63の形成された側板64を設けてある。また、この側板64は、側面から見た形状が上面611,下面612,ガイド面613,615とほぼ同様な、上面641,下面642,ガイド面643,645を備えた形状としてある。なお、側板64の形状は、この形状に限定されるものではなく、たとえば、単純な矩形板状の形状としてもよい。
ここで、好ましくは、背面下部の両側であってOリング62の真下に、Oリング62と交差するように取外し溝646を設けるとよい。このようにすると、取外し溝646に、たとえば、ピンセットの一方の先端を挿入することにより、容易にOリング62を摘むことができ、Oリング62を容易かつ異物を発生させずに取り外すことができる。
【0023】
Oリング62は、ゴム製のOリングとしてあり、取り付けられた状態で、係止溝61の底面610より正面方向に突き出でおり、フォトマスク用基板10を支持する際、フォトマスク用基板10と当接し、衝撃緩衝部材として機能する。
また、Oリング62は、滑り止め部材としても機能し、たとえば、フォトマスク用基板10を支持したハンドリング治具1を、グリップ2の中心軸20を軸として90度回転させ、フォトマスク用基板10を垂直方向に傾けても、フォトマスク用基板10が係止溝61に沿って滑らないように支持することができる。
【0024】
Oリング62は、ゴムの弾性を利用することにより、伸ばした状態でOリング溝63に取り付けることができ、また、ピンセットで摘んで取り外すことができるので、容易に取付け及び取外しを行うことができる。
なお、Oリング62が、係止溝61の底面610より正面方向に突き出ることにより、本実施形態では、フォトマスク用基板10が、上面611と下面612の先端部によって係止されることとなるが、これに限定されるものではなく、たとえば、突起部614とガイド面615によって係止される構成としてもよい。
【0025】
爪6は、背面上部の両端部に凸部650を設けることにより、固定アーム4や回動アーム5が嵌入される嵌入溝65を垂直方向に形成してある。また、正面側から嵌入溝65に向けて、十字穴付き皿小ねじ(図示せず)が挿入されるねじ穴651が穿設してある。このようにすると、嵌入溝65とねじ穴651により、固定アーム4や回動アーム5を位置決めできるので、爪6の交換作業を効率よく行うことができる。このようにすることにより、フォトマスク用基板10の厚さに応じて、爪6を容易に交換することができ、グリップ2及びレバー3等の主要部を共用化することができる。
なお、固定アーム4に取り付けられた爪6と回動アーム5に取り付けられた爪6は、同じ高さに対向して配設してある。
【0026】
(軸支機構)
次に、ハンドリング治具1の軸支機構について、図面を参照して説明する。
図3は、本発明の第一実施形態にかかるハンドリング治具の軸支機構を説明するための概略拡大図であり、(a)は図1におけるA−A断面図を、(b)はC−C断面図を示している。
同図において、グリップ2は、被ハンドリング体側の端部下面に、レバー3の被ハンドリング体側の端部を、非摺動の状態で収納する収納溝22が形成してある。また、収納溝22の被ハンドリング体側の端部に、レバー3と当接する凸部221が突設してあり、この凸部221により、閉方向に付勢されたレバー3の閉方向限界位置が設定される。
【0027】
グリップ2は、被ハンドリング体側の端部両側面に対向するように配設されたホルダー25及びすり割り付き止めねじ27を介して、固定軸26の両端を支持している。
また、グリップ2は、溝21の手前側上面から、レバー3に向けて、雌ねじ28が形成され、さらに、雌ねじ28とほぼ同径の貫通孔281が穿設してあり、圧縮ばね(駆動用ばね)29が取り付けられる。
圧縮ばね29は、貫通孔281に貫入され、先端部がレバー3の位置決め穴34に係止された状態で、すり割付き止めねじ291が雌ねじ28に締め込まれることにより、レバー3を閉方向に付勢する。
【0028】
また、圧縮ばね29は、先端部が位置決め穴34に係止されているので、レバー3が、固定軸26の中心軸方向に移動すると復元力が作用し、レバー3がグリップ2と接触しないように所定のクリアランスを保持することができる。このようにすると、レバー3を回動させても、レバー3とグリップ2が摺動しないので、擦れによる異物の発生を防ぐことができる。
【0029】
レバー3は、両側からボールベアリング33が埋設してあり、このボールベアリング33には、固定軸26が貫通される。このように、ボールベアリング33を使用することにより、レバー3が回動されても、ボールベアリング33内のボール(図示せず)が回転するので、異物の発生量を大幅に低減することができる。
【0030】
このように、本実施形態のハンドリング治具1は、フォトマスク用基板10を支持する際、爪6に設けた突起部614がフォトマスク用基板10の角部と点接触の状態で擦れるので、面接触の状態で擦れていた従来技術と比べると、異物の発生量を大幅に低減することができる。
また、衝撃緩衝部材として、ゴム製のOリング62を使用することにより、Oリング62を容易に交換することができ、さらに、取外し溝646を設けることにより、Oリング62を取り外す際、ピンセットを用いて、異物を発生させずに容易にOリング62を取り外すことができる。
【0031】
[第二実施形態]
図4は、本発明の第二実施形態にかかるハンドリング治具の全体的な構造を説明するための概略図であり、(a)は上面図を、(b)は側面図を示している。
同図において、ハンドリング治具1aは、第一実施形態と比較して、フォトマスク用基板10の真上を避けて、固定アーム4a及び回動アーム5aを設け、さらに、爪6aの嵌入溝65aを水平方向に設けた点が相違する。他の構成要素は第一実施形態と同様としてある。
したがって、図4において、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0032】
(固定アーム)
固定アーム4aは、フォトマスク用基板10の真上を避けるように、ステンレス製の四角棒を鉤状に折り曲げた構造としてあり、前後方向直線部42a,上下方向直線部43a及び水平方向直線部44aとからなっている。また、前後方向直線部42aの手前側先端が、上述したようにグリップ2に固定され、水平方向直線部44aの先端に雌ねじ(図示せず)が設けてあり、爪6aが取り付けられている。
【0033】
(回動アーム)
回動アーム5aは、フォトマスク用基板10の真上を避けるように、ステンレス製の四角棒を鉤状に折り曲げた構造としてあり、前後方向直線部52a,上下方向直線部53a及び水平方向直線部54aとからなっている。また、前後方向直線部52aの手前側先端が、上述したようにレバー3に固定され、水平方向直線部54aの先端に雌ねじ(図示せず)が設けてあり、爪6aが取り付けられている。
【0034】
(爪)
図5は、本発明の第二実施形態にかかるハンドリング治具の爪の構造を説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を、(b)は背面図を、(c)は左側面図を、(d)は上面図を示している。
同図において、爪6aは、樹脂製のほぼ四角棒状としてあり、正面中央部に水平状態のフォトマスク用基板10が係止される係止溝61aを左右方向に形成してある。この係止溝61aは、フォトマスク用基板10を、上面611aと下面612aの間に隙間をもって挟むように係止する。
【0035】
上面611aの正面側端部は、斜め上方に面取りされ、面取り面613aが形成されている。この面取り面613aの両側には、断面が半円状の突起部614が、斜面に沿って線状に形成してある。また、下面612aの正面側端部は、斜め下方に面取りされ、面取り面615aが形成されている。この面取り面615aの両側には、断面が半円状の突起部614が、斜面に沿って線状に形成してある。このようにすると、フォトマスク用基板10を支持する際、線状の突起部614により、フォトマスク用基板10の角部が点接触の状態で擦れるので、異物の発生量を低減することができる。
【0036】
爪6aは、側面に、Oリング62aを取り付けるOリング溝63aが形成してある。
ここで、好ましくは、上面の両側であってOリング62aの真下に、Oリング62と交差するように取外し溝646aを設けるとよい。このようにすると、取外し溝646aに、たとえば、ピンセットの一方の先端を挿入することにより、容易にOリング62aを摘むことができ、Oリング62aを容易かつ異物を発生させずに取り外すことができる。
【0037】
Oリング62aは、ゴム製のOリングとしてあり、取り付けられた状態で、係止溝61aの底面610aより正面方向に突き出でおり、フォトマスク用基板10を支持する際、フォトマスク用基板10と当接し、衝撃緩衝部材として機能する。また、Oリング62aは、フォトマスク用基板10が係止溝61aに沿って滑らないように、滑り止め部材としても機能する。
【0038】
爪6aは、背面中央部に、固定アーム4や回動アーム5が嵌入される嵌入溝65aを水平方向に形成し、正面側から十字穴付きさら小ねじ(図示せず)が挿入されるねじ穴651aが穿設してある。このようにすると、嵌入溝65aとねじ穴651aにより、固定アーム4や回動アーム5を位置決めできるので、爪6aの交換作業を効率よく行うことができる。
なお、固定アーム4や回動アーム5は、Oリング62aを取り付けた状態でも、水平方向から嵌入溝65aに嵌入させることができる。
【0039】
このように、本実施形態のハンドリング治具1aは、爪6aの係止溝61aと平行に嵌入溝65aを形成してあり、このような構成とした場合であっても、上記第一実施形態と同様に、爪6aに設けた突起部614がフォトマスク用基板10の角部と点接触の状態で擦れるので、異物の発生量を大幅に低減することができる。
また、衝撃緩衝部材として、ゴム製のOリング62aを使用することにより、Oリング62aを容易に交換することができ、さらに、取外し溝646aを設けることにより、Oリング62aを取り外す際、ピンセットを用いて、異物を発生させずに容易にOリング62aを取り外すことができる。
【0040】
以上、本発明のハンドリング治具について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係るハンドリング治具は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
たとえば、上記各実施形態では、ボールベアリング33を介して、レバー3がグリップ2に付勢された状態で回動自在に軸支されているが、この構成に限定されるものではなく、図示してないが、リニアベアリング等を介して、レバー3をグリップ2に往復移動自在に付勢した状態で取り付ける構成としてもよい。このようにすると、リニアベアリングのローラやボールが回転するので、異物の発生量を大幅に低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のハンドリング治具は、フォトマスク用基板をハンドリングする構成に限定されるものではなく、たとえば、高度の清浄度を必要とする光学機器や医療器具等のハンドリング治具にも好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第一実施形態にかかるハンドリング治具の全体的な構造を説明するための概略図であり、(a)は上面図を、(b)は側面図を、(c)は下面図を示している。
【図2】本発明の第一実施形態にかかるハンドリング治具の爪の構造を説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を、(b)は背面図を、(c)は左側面図を、(d)は上面図を、(e)はB−B断面図を示している。
【図3】図3は、本発明の第一実施形態にかかるハンドリング治具の軸支機構を説明するための概略拡大図であり、(a)は図1におけるA−A断面図を、(b)はC−C断面図を示している。
【図4】本発明の第二実施形態にかかるハンドリング治具の全体的な構造を説明するための概略図であり、(a)は上面図を、(b)は側面図を示している。
【図5】本発明の第二実施形態にかかるハンドリング治具の爪の構造を説明するための概略拡大図であり、(a)は正面図を、(b)は背面図を、(c)は左側面図を、(d)は上面図を示している。
【符号の説明】
【0043】
1,1a ハンドリング治具
2 グリップ
3 レバー
4,4a 固定アーム
5,5a 回動アーム
6,6a 爪
10 フォトマスク用基板
20 中心軸
21 溝
22 収納溝
25 ホルダー
26 固定軸
27 すり割り付き止めねじ
28 雌ねじ
29 圧縮ばね(駆動用ばね)
31 四角棒
32 溝
33 ボールベアリング
34 位置決め穴
41 ねじ
42,42a 前後方向直線部
43,43a 上下方向直線部
44a 水平方向直線部
51 ねじ
52,52a 前後方向直線部
53,53a 上下方向直線部
54a 水平方向直線部
61,61a 溝
62,62a Oリング
63,63a Oリング溝
64 側板
65,65a 嵌入溝
221 凸部
281 貫通孔
291 すり割付き止めねじ
610,610a 底面
611,611a 上面
612,612a 下面
613,613a 面取り面
614 突起部
615,615a 面取り面
641 上面
642 下面
643 ガイド面
645 ガイド面
646,646a 取外し溝
650 凸部
651,651a ねじ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被ハンドリング体を端面から挟持するアームと、このアームに取り付けられ、前記被ハンドリング体と当接する当接部材とを有するハンドリング治具であって、
前記当接部材が、前記被ハンドリング体を端面付近で係止する係止溝と、被ハンドリング体の係止溝への挿入口であって被ハンドリング体の上面及び/又は下面に対向して形成された、挿入方向に対して傾斜したガイド面とを有し、前記ガイド面のうち少なくとも一面に、被ハンドリング体の挿入方向に延びた線状の突起部を備えたことを特徴とするハンドリング治具。
【請求項2】
前記突起部は、少なくとも被ハンドリング体の上面に対向して形成されたガイド面に備えられたことを特徴とする請求項1に記載のハンドリング冶具。
【請求項3】
前記係止溝の内底面に、前記ハンドリング体と当設する弾性部材を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のハンドリング冶具。
【請求項4】
前記弾性部材がOリングであり、前記Oリングの真下に、該Oリングと交差するように取外し溝を設けたことを特徴とする請求項3記載のハンドリング治具。
【請求項5】
前記当接部材を、前記アームに交換可能に取り付けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のハンドリング治具。
【請求項6】
前記被ハンドリング体を、フォトマスク用基板としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のハンドリング冶具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−108155(P2006−108155A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288769(P2004−288769)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】