説明

ハンド及びロボット

【課題】把持したボルトをタップ穴に挿入することが可能なハンド及びロボットを提供する。
【解決手段】ハンド20は、1対の支持部22a、22bと、1対の支持部22a、22bの内側にそれぞれ支持され、ボルトBを把持する第1及び第2の把持爪21a、21bと、第1及び第2の把持爪21a、21bを各支持部22a、22bの長手方向と交差する揺動軸回りに揺動させ、第1及び第2把持爪21a、21bの先端の向きを変更させる揺動機構29と、第1及び第2の把持爪21a、21bが把持したボルトBをボルトBの軸回りに回転させるボルト回転機構30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンド及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、嵌合作業等に使用されるロボットハンドが記載されている。このロボットハンドは、部品把持用の把持部を有する指を備えている。把持部は、指に回転自在に支持されている。指には、把持部を回転させる駆動手段が設けられている。また、指には、把持部に把持される部品の把持部回転方向の位置変動を検出してこの位置変動を修正するように駆動手段を作動させる検出手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−239491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、把持したボルトをタップ穴に挿入することが可能なハンド及びロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係るハンドは、1対の支持部と、
前記1対の支持部の内側にそれぞれ支持され、ボルトを把持する第1及び第2の把持爪と、
前記第1及び第2の把持爪を前記各支持部の長手方向と交差する揺動軸回りに揺動させ、該第1及び第2把持爪の先端の向きを変更させる揺動機構と、
前記第1及び第2の把持爪が把持したボルトを該ボルトの軸回りに回転させるボルト回転機構とを備える。
【0006】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記ボルト回転機構は、前記第1の把持爪を支持する前記支持部の内側に設けられたボルト回転用モータと、
前記ボルト回転用モータの回転を伝達する回転伝達部と、
前記第1の把持爪の先端部の内側に設けられ、前記回転伝達部によって駆動され前記ボルトの軸と実質的に平行な軸回りに回転する駆動ローラと、
前記第2の把持爪の先端部の内側に設けられ、前記ボルトの軸と実質的に平行な軸回りに回転可能に支持された第1の従動ローラと、
前記第1又は第2の把持爪の先端部の内側に設けられ、前記ボルトの軸と実質的に平行な軸回りに回転可能に支持された第2の従動ローラと、を備え、
前記ボルトが、前記駆動ローラ並びに前記第1及び第2の従動ローラの外周面に接することが好ましい。
【0007】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記回転伝達部を、トルクを伝達することが可能なトルク伝達ワイヤとすることができる。
【0008】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記第1の把持爪の基端部の内側に、該第1の把持爪と共に揺動し、前記トルク伝達ワイヤを案内する溝が形成されたワイヤガイドを更に有し、
該ワイヤガイドが、前記第1の把持部の揺動に伴って生じる前記トルク伝達ワイヤの変形を抑制することが好ましい。
【0009】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記回転伝達部を、ユニバーサルジョイントによって連結されたシャフトとしてもよい。
【0010】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記揺動機構は、揺動用サーボモータと、
前記揺動用サーボモータによって回転するスプラインシャフトと、
前記スプラインシャフトと共に該スプラインシャフトの回転軸回りに回転し、該スプラインシャフトの回転軸方向に沿って移動可能な1対の第1のスプラインナット部と、
前記1対の支持部にそれぞれ固定され、前記第1のスプラインナット部と共に前記スプラインシャフトの回転軸に沿ってそれぞれ移動し、前記第1のスプラインナット部の回転軸回りに該第1のスプラインナット部に対してそれぞれ相対回転可能な1対の第2のスプラインナット部と、を有し、
前記第1及び第2の把持爪は、前記1対の第1のスプラインナット部によってそれぞれ駆動され、揺動することが好ましい。
【0011】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記第1及び第2の把持爪は、リンク機構を用いて回転を伝達するリンク部を介し、前記1対の第1のスプラインナット部によって駆動されることが好ましい。
【0012】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記1対の支持部を前記揺動軸に沿って開閉させる開閉機構を更に備えることが好ましい。
【0013】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記開閉機構は、開閉用サーボモータと、
前記開閉用サーボモータによって回転する互いに逆向きのねじが左右にそれぞれ形成された左右ねじシャフトと、
前記左右ねじシャフトの回転によって、それぞれ該左右ねじシャフトの回転軸に沿って互いに反対方向に移動する1対の移動部と、を有し、
前記1対の移動部に、前記1対の支持部がそれぞれ固定されることが好ましい。
【0014】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記開閉用サーボモータ及び前記揺動用サーボモータは、互いに反対方向を向き、それぞれの長手方向が前記揺動軸と実質的に平行となるように配置され、該ハンドの基部に設けられることが好ましい。
【0015】
前記目的に沿う第2の発明に係るロボットは、ボルトを把持するハンドを備え、
前記ハンドは、1対の支持部と、
前記1対の支持部の内側にそれぞれ支持され、ボルトを把持する第1及び第2の把持爪と、
前記第1及び第2の把持爪を前記各支持部の長手方向と交差する揺動軸回りに揺動させ、該第1及び第2把持爪の先端の向きを変更させる揺動機構と、
前記第1及び第2の把持爪が把持したボルトを該ボルトの軸回りに回転させるボルト回転機構とを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るハンド及びロボットにおいては、把持したボルトをタップ穴に挿入することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るロボットのアーム先端部の斜視図である。
【図2】同ロボットのハンドの斜視図である。
【図3A】同ロボットのハンドの把持爪が閉じた状態における内部構造を示す模式図である。
【図3B】同ロボットのハンドの把持爪が開いた状態における内部構造を示す模式図である。
【図3C】同ロボットのハンドの把持爪が揺動する様子を示す説明図である。
【図4】同ロボットのハンドの先端部の斜視図である。
【図5】同ロボットのハンドの先端部の部分側断面図である。
【図6】図4とは別の角度から見た同ロボットのハンドの先端部の斜視図である。
【図7】同ロボットのハンドの先端部の平面図である。
【図8】同ロボットのハンドの先端部の部分側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、各図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るロボット10は、アーム11の先端にハンド20を備えている。ハンド20は、アーム11の先端に設けられた回転軸AXt回りに回転する手首フランジ12に力覚センサ13を介して設けられている。なお、ハンド20は、力覚センサ13を介さずに手首フランジ12に設けることも可能である。ロボット10は、例えば、7軸の多関節ロボットである。
【0020】
図2に示すように、ハンド20は、ボルトB(図1参照)を把持する1対の第1及び第2の把持爪21a、21bを有している。各把持爪21a、21bは、例えば回転軸AXtの方向に延びる1対の支持部22a、22bの内側先端部にて支持されている。把持爪21a、21bは、支持部22a、22bが開閉することによって、各支持部22a、22bの長手方向と交差する揺動軸AXpに沿って開閉し、ボルトBを把持することができる。
【0021】
また、把持爪21a、21bは、揺動軸AXp回りに揺動し、その先端の向きを変えることができる。把持爪21a、21bの基端側を除いた部分は、内側に突出している。図4、図6に示すように、各突出部分の内側には、窪み部23a、23bが対向して形成されている。一方の窪み部23aには、1つの駆動ローラ26aが設けられており、他方の窪み部23bには、第1及び第2の従動ローラ26b、26cが設けられている。
【0022】
更に、把持爪21a、21b(詳細には、駆動ローラ26a並びに第1及び第2の従動ローラ26b、26c)は、把持したボルトBをボルトBの軸回りに回転させることができる。
【0023】
ここで、把持爪21a、21b(支持部22a、22b)が開閉する動作は、開閉機構28によって実現される。把持爪21a、21bが揺動軸AXp回りに揺動し、把持爪21a、21bの向きが変わる動作は、揺動機構29により実現される。把持したボルトBをボルトBの軸回りに回転させる動作は、ボルト回転機構30により実現される(図3A参照)。以下、各機構について説明する。
【0024】
(開閉機構)
開閉機構28は、図2、図3Aに示すように、開閉用サーボモータ31と、開閉用サーボモータ31によって回転する左右ねじシャフト33と、左右ねじシャフト33の回転によって、互いに反対方向に移動する1対の移動部34とを有している。
【0025】
開閉用サーボモータ31は、その長手方向が、揺動軸AXpと平行となるように、ハンド20の基部にてフレーム35に取り付けられている。なお、ここに言う「平行」とは、厳密な意味での平行ではない。即ち、「平行」とは、設計上、製造上の誤差が許容され、「実質的に平行」という意味である(以下、同様)。また、開閉用サーボモータ31は、その負荷側が、ハンド20の外側を向くように配置される。なお、開閉用サーボモータ31に設けられたエンコーダ(不図示)は、絶対値エンコーダとすることができる。絶対値エンコーダのバックアップ用バッテリ(不図示)は、フレーム35に取り付けられている。
【0026】
左右ねじシャフト33は、フレーム35に設けられた軸受38によって回転可能に支持されている。左右ねじシャフト33は、開閉用サーボモータ31よりもハンド20の先端側にて、開閉用サーボモータ31の長手方向と平行に設けられている。左右ねじシャフト33の一方側と他方側には、それぞれ互いに逆向きのねじ(左右ねじ)が形成されている。左右ねじシャフト33は、タイミングベルト40及びプーリ41によって少なくとも構成された第1のベルトプーリ部42を介して開閉用サーボモータ31によって駆動される。
【0027】
1対の移動部34は、それぞれ左右ねじシャフト33に形成された左右ねじによって移動する。即ち、1対の移動部34は、それぞれ、左右ねじシャフト33の回転に伴い、左右ねじシャフト33の軸方向に沿って互いに反対方向に移動する。移動部34には、それぞれ1対の支持部22a、22bの基端部が固定されている。
【0028】
(揺動機構)
揺動機構29は、図2、図3A、図3Cに示すように、揺動用サーボモータ51と、揺動用サーボモータ51の駆動力を伝達するスプラインシャフト52及び1対のスプラインナット53と、1対のリンク部55とを有している。
揺動用サーボモータ51は、その長手方向が、揺動軸AXpと平行となるように、ハンド20の基部にてフレーム35に取り付けられている。また、揺動用サーボモータ51は、開閉用サーボモータ31とは反対向きに配置される。更に、揺動用サーボモータ51は、ハンド20を側面視して(揺動用サーボモータ51又は開閉用サーボモータ31の負荷側から見て)、開閉用サーボモータ31と並んで配置される。従って、このように揺動用サーボモータ51及び開閉用サーボモータ31を配置しない場合に比べ、ハンド20を小型化することが可能となる。
なお、揺動用サーボモータ51に設けられたエンコーダ(不図示)は、絶対値エンコーダとすることができる。絶対値エンコーダのバックアップ用バッテリ(不図示)は、フレーム35に取り付けられている。
【0029】
スプラインシャフト52は、左右ねじシャフト33よりもハンド20の先端側の位置にて、フレーム35に設けられた軸受58によって回転可能に支持されている。また、スプラインシャフト52は、揺動用サーボモータ51よりもハンド20の先端側の位置にて、揺動用サーボモータ51の長手方向と平行となるように設けられている。スプラインシャフト52は、タイミングベルト56及びプーリ57によって少なくとも構成された第2のベルトプーリ部59を介して揺動用サーボモータ51によって駆動される。
【0030】
1対のスプラインナット53は、それぞれ内周側に位置する第1のスプラインナット部53aと、外周側に位置する第2のスプラインナット部53bによって、少なくとも構成されている。
第1のスプラインナット部53aは、スプラインシャフト52と共に回転し、スプラインシャフト52の軸方向に移動することができる。第1のスプラインナット部53aは、例えば、ボールスプラインインナーである。
第2のスプラインナット部53bは、第1のスプラインナット部53aと共にスプラインシャフト52の回転軸に沿って移動でき、第1のスプラインナット部53aの回転軸回りに第1のスプラインナット部53aに対して相対回転することができる。第2のスプラインナット部53bは、支持部22a、22bの基端部の内側にて固定されている。第2のスプラインナット部53bは、例えば、ボールスプラインアウターである。
【0031】
各リンク部55は、それぞれ揺動軸AXp回りに回転する円板60及びこの円板60と第1のスプラインナット部53aとを連結する1対の棒状のリンク61を備え、リンク機構により各第1のスプラインナット部53aの回転を第1及び第2の把持爪21a、21bに伝達することができる。
各リンク61の一端は、第1のスプラインナット部53aの外側端面に突出して設けられた1対の第1のリンクピン63に連結される。この第1のリンクピン63は、第1のスプラインナット部53aの回転軸方向から見て、この回転軸に関して対称となるように配置されている。なお、ここに言う「対称」とは、厳密な意味での対称ではない。即ち、「対称」とは、設計上、製造上の誤差が許容され、「実質的に対称」という意味である(以下、同様)。各リンク61の一端は、第1のリンクピン63の軸回りに回転可能に連結される。
一方、各リンク61の他端は、円板60の外側の面に突出して設けられた1対の第2のリンクピン64に連結される。この第2のリンクピン64は、揺動軸AXp方向から見て、この揺動軸AXpに関して対称となるように配置されている。各リンク61の他端は、第2のリンクピン64の軸回りに回転可能に連結される。
円板60の内側の面の回転中心部には、揺動軸AXpを回転中心とするシャフト65の一端が固定されている。このシャフト65の他端には、支持部22a、22bの内側にて、第1及び第2の把持爪21a、21bの基端部が固定される。
【0032】
(ボルト回転機構)
ボルト回転機構30は、図2、図3A、図4〜図6に示すように、ボルト回転用モータ71と、トルク伝達ワイヤ73と、駆動ローラ26aと、第1及び第2の従動ローラ26b、26cとを備えている。
【0033】
図4、図5に示すように、ボルト回転用モータ71は、支持部22aの内側に、シャフト74の先端を上向きにして(シャフト74の先端を第1の把持爪21aの基端部の方向に向けて)、ブラケット72を介して設けられている。ボルト回転用モータ71の一例として、減速機付きのDCモータやパルスモータが挙げられる。
【0034】
トルク伝達ワイヤ(回転伝達部の一例)73は、屈曲可能なワイヤである。トルク伝達ワイヤ73は、一端がボルト回転用モータ71のシャフト74に連結具75aを介して固定され、ボルト回転用モータ71の回転(トルク)を他端側に伝達することができる。トルク伝達ワイヤ73は、樹脂製のワイヤガイド80に形成された溝81に収められる。トルク伝達ワイヤ73は、把持爪21aが揺動することを考慮して、把持爪21a先端が上方を向いている場合に余裕が生じるようにその長さが設定されている。そのため、ボルト回転用モータ71が回転すると、トルク伝達ワイヤ73が振れ回ることとなる。しかし、トルク伝達ワイヤ73は、ワイヤガイド80に形成された溝81に案内されることによって、回転を伝達する際の変形が抑制される。ワイヤガイド80は、ボルト回転用モータ71が設けられた支持部22aに支持されている第1の把持爪21aに固定され、第1の把持爪21aと共に揺動軸AXp回りに回転することができる。
【0035】
なお、図5に示すように、溝81は、ワイヤガイド80の回転中心で互いにつながる第1の溝部81a及び第2の溝部81bから少なくとも構成されている。第1の溝部81aは、正面視して(把持爪21aの内側から見て)矩形状の溝である。第1の溝部81aは、把持爪21a先端が上方を向いている場合において、ワイヤガイド80の回転中心から上方へと延びるように形成されている。第2の溝部81bは、正面視して扇形状の溝である。この扇形は、把持爪21a先端が上方を向いている場合において、上下方向の対称軸に関して対称であり、中心角度が把持爪21aの揺動角度以上となっている。
【0036】
駆動ローラ26aは、前述のように、第1の把持爪21aの窪み部23aに設けられている。詳細には、駆動ローラ26aは、外周面の一部が窪み部23aの表面から出るように、軸受96aを介して窪み部23aに設けられている(図7参照)。駆動ローラ26aは、第1の把持爪21aに把持された、即ち駆動ローラ26aに接したボルトBをボルトBの軸回りに回転させることができる。即ち、駆動ローラ26aは、ボルトBの軸と平行な軸回りに回転することができる。図5に示すように、駆動ローラ26aの基端側には、同軸にシャフト76が設けられ、このシャフト76の先端がトルク伝達ワイヤ73の他端に連結具75bを介して固定されている。駆動ローラ26aは金属製であり、ボルトBと接する外周面には、ゴムがコーティングされている。
【0037】
第1及び第2の従動ローラ26b、26cは、前述のように、第2の把持爪21bの窪み部23bに設けられている(図6参照)。詳細には、第1及び第2の従動ローラ26b、26cは、外周面の一部が窪み部23bの表面から出るように、それぞれ軸受96b、96cを介して窪み部23bに設けられている(図7参照)。第1及び第2の従動ローラ26b、26cは、ボルトBの軸と平行な軸回りに回転することができる。従って、第1及び第2の従動ローラ26b、26cは、駆動ローラ26aによって回転するボルトBに接して回転する。従動ローラは、少なくとも2つ以上設けられる。第1及び第2の従動ローラ26b、26cはそれぞれ金属製であり、ボルトBと接する外周面には、それぞれゴムがコーティングされている。
【0038】
なお、駆動ローラ26aが第1の把持爪21aに設けられ、第1及び第2の従動ローラ26b、26cが第2の把持爪21bに設けられているが、例えば、駆動ローラ26a及び第2の従動ローラ26cが第1の把持爪21aに、第1の従動ローラ26bが第2の把持爪21bに設けられていてもよい。即ち、ボルトBが少なくとも3つのローラによって3点支持され、そのうち少なくとも1つが駆動ローラであればよい。
【0039】
次に、ハンド20の動作(把持爪21a、21bの開閉動作、揺動動作及びボルト回転動作)について説明する。
【0040】
(開閉動作)
図3Aに示す開閉用サーボモータ31が一方向に回転すると、その回転が第1のベルトプーリ部42を介して伝達され、左右ねじシャフト33が回転する。左右ねじシャフト33には、左右ねじが形成されているので、移動部34は、それぞれ左右ねじシャフト33に沿って、内側に移動する。移動部34の移動に伴い、移動部34にそれぞれ固定された支持部22a、22bの間隔は狭まり、把持爪21a、21bが閉じる。
なお、支持部22a、22bは揺動機構29のスプラインナット53(より詳しくは、第2のスプラインナット部53b)に固定されているが、スプラインナット53(より詳しくは、第1のスプラインナット部53a)はスプラインシャフト52に沿って自在に移動できる。従って、把持爪21a、21bが揺動機構29のスプラインナット53に固定されていることは、把持爪21a、21bの開閉動作を妨げるものではない。
一方、開閉用サーボモータ31が反対方向に回転すると、図3Bに示すように把持爪21a、21bが開くことは明らかであるので、その説明は省略する。
【0041】
(揺動動作)
図3Aに示す揺動用サーボモータ51が一方向に回転すると、その回転が第2のベルトプーリ部59を介して伝達され、スプラインシャフト52が回転する。スプラインシャフト52の回転は、スプラインナット53の第1のスプラインナット部53aに伝達され、第1のスプラインナット部53aが回転する。その際、第2のスプラインナット部53bは第1のスプラインナット部53a(スプラインシャフト52)の回転とは無関係に、スプラインシャフト52の軸回りに回転することができるので、第1のスプラインナット部53aの回転が、支持部22a、22bに伝達されることはない。
第1のスプラインナット部53aが回転すると、リンク61が移動し、このリンク61を介して円板60及びシャフト65が揺動軸AXp回りに回転する。その結果、図3Cに示すように、把持爪21a、21bは、揺動軸AXp回りに揺動することができる。なお、把持爪21a、21bは、揺動用サーボモータ51の回転角度を制御することにより、任意の角度にて位置決めされる。
【0042】
(ボルト回転動作)
図4、図5に示すボルト回転用モータ71が回転すると、トルク伝達ワイヤ73が捻られ、回転がトルク伝達ワイヤ73の先端側に伝達される。この回転は、更に駆動ローラ26aに伝達され、駆動ローラ26aを回転軸回りに回転させる。駆動ローラ26aの回転は、駆動ローラ26a並びに第1及び第2の従動ローラ26b、26cの外周面に接して把持されたボルトBに伝達される(図7参照)。その結果、ボルトBがボルトBの軸回りに回転し、更に、図6に示す第1及び第2の従動ローラ26b、26cも回転する。このように、ボルトBは駆動ローラ26a並びに第1及び第2の従動ローラ26b、26cによって3点で安定して支持(把持)される。
なお、ボルト回転用モータ71の回転は、屈曲するトルク伝達ワイヤ73によって駆動ローラ26aに伝達されるので、図8に示すように、把持爪21a、21bの向きによらず、駆動ローラ26aは回転できる。
【0043】
なお、開閉機構28、揺動機構29及びボルト回転機構30はそれぞれ独立して動作するので、把持爪21a、21bの開閉動作、揺動動作、及びボルト回転動作を、それぞれ独立して行うことができる。
【0044】
次に、ロボット10がボルトBをタップ穴に挿入する動作について説明する。
ロボット10は、図示しない画像認識装置から得られた把持対象のボルトBの位置及び姿勢の情報に基づいて、ハンド20を把持対象とするボルトBの近くへと移動させる。次に、ロボット10は、ハンド20全体を回転軸AXt回りに回転させ、続いて把持爪21a、21bを揺動軸AXp回りに揺動させ、適宜ボルトBをつまみ易い向きに変更した後、把持爪21a、21bを閉じて、ボルトBをつまむ。
例えば、ロボット10は、把持爪21a、21bの長手方向がボルトBの軸線と平行となるように、ハンド20全体を回転させ、把持爪21a、21bを揺動させる。そして、ロボット10は、把持爪21a、21bをボルトBの上方から接近させることにより、アーム11が周囲に配置された物品に干渉する可能性を低減させて、ボルトBの頭をつまむことができる。
なお、ボルトBをつまむ力は、開閉用サーボモータ31によって制御される。
【0045】
このように、ロボット10は、アーム11を大きく移動させることなく、主としてハンド20を回転させ、把持爪21a、21bの向きを変更することによって、ボルトBをつまむことができる。即ち、ロボット10は、把持爪21a、21bが揺動軸AXp回りに揺動しない場合に比べ、ボルトBをつまむために姿勢を大きく変える必要がない。
従って、把持爪21a、21bが揺動軸AXp回りに揺動しない場合に比べ、ボルトBをつまむためのアーム11の姿勢変化が小さく、ボルトBを把持するために要する時間を短縮することができる。また、ロボット10がボルトBをつまむことのできる範囲を広くとることができる。
【0046】
次に、ロボット10は、ボルトBがタップ穴に入るように把持爪21a、21bを揺動させて、把持したボルトBの先端をタップ穴に向ける。更に、ロボット10は、アーム11を力制御し、予め決められた力をボルトBの軸方向に加えた状態で、ボルト回転機構30を動作させる。ボルト回転用モータ71が回転し、トルク伝達ワイヤ73を介して駆動ローラ26aが回転することにより、ボルトBが軸回りに回転し、ボルトBはタップ穴に挿入される。
【0047】
なお、本発明は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能である。例えば、前述の実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて発明を構成する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0048】
前述の実施の形態においては、ボルト回転用モータ71の回転がトルク伝達ワイヤ73によって駆動ローラ26aに伝達されていたが、このトルク伝達ワイヤ73に代えて、例えばユニバーサルジョイントによって連結されたシャフトとすることができる。
リンク部55に用いられたリンク機構は、第1のスプラインナット部53aの回転をシャフト65に伝達することができれば任意のリンク機構でよい。例えば、揺動スライダクランク機構等の他のリンク機構を適用することも可能である。なお、リンク部55は、リンク機構により各第1のスプラインナット部53aの回転を把持爪21a、21bに伝達しているが、リンク機構に代えてベルトプーリ機構とすることもできる。ただし、ベルトプーリ機構よりもリンク機構の方が、ハンド20の先端部を小型化する観点からは好ましい。
【0049】
また、第1のベルトプーリ部42に代えて、平歯車等の歯車によって少なくとも構成された回転伝達機構とすることもできる。
また、開閉用サーボモータ31、揺動用サーボモータ51、及びボルト回転用モータ71は、電磁モータに限定されるものではない。開閉用サーボモータ31、揺動用サーボモータ51、及びボルト回転用モータ71のうち少なくとも1つを空圧駆動のモータとすることもできる。
【符号の説明】
【0050】
10:ロボット、11:アーム、12:手首フランジ、13:力覚センサ、20:ハンド、21a、21b:把持爪、22a、22b:支持部、23a、23b:窪み部、26a:駆動ローラ、26b、26c:従動ローラ、28:開閉機構、29:揺動機構、30:ボルト回転機構、31:開閉用サーボモータ、33:左右ねじシャフト、34:移動部、35:フレーム、38:軸受、40:タイミングベルト、41:プーリ、42:第1のベルトプーリ部、51:揺動用サーボモータ、52:スプラインシャフト、53:スプラインナット、53a:第1のスプラインナット部、53b:第2のスプラインナット部、55:リンク部、56:タイミングベルト、57:プーリ、58:軸受、59:第2のベルトプーリ部、60:円板、61:リンク、63:第1のリンクピン、64:第2のリンクピン、65:シャフト、71:ボルト回転用モータ、72:ブラケット、73:トルク伝達ワイヤ、74:シャフト、75a、75b:連結具、76:シャフト、80:ワイヤガイド、81:溝、81a:第1の溝部、81b:第2の溝部、96a:軸受、96b、96c:軸受、B:ボルト



【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の支持部と、
前記1対の支持部の内側にそれぞれ支持され、ボルトを把持する第1及び第2の把持爪と、
前記第1及び第2の把持爪を前記各支持部の長手方向と交差する揺動軸回りに揺動させ、該第1及び第2把持爪の先端の向きを変更させる揺動機構と、
前記第1及び第2の把持爪が把持したボルトを該ボルトの軸回りに回転させるボルト回転機構とを備えたハンド。
【請求項2】
請求項1記載のハンドにおいて、前記ボルト回転機構は、前記第1の把持爪を支持する前記支持部の内側に設けられたボルト回転用モータと、
前記ボルト回転用モータの回転を伝達する回転伝達部と、
前記第1の把持爪の先端部の内側に設けられ、前記回転伝達部によって駆動され前記ボルトの軸と実質的に平行な軸回りに回転する駆動ローラと、
前記第2の把持爪の先端部の内側に設けられ、前記ボルトの軸と実質的に平行な軸回りに回転可能に支持された第1の従動ローラと、
前記第1又は第2の把持爪の先端部の内側に設けられ、前記ボルトの軸と実質的に平行な軸回りに回転可能に支持された第2の従動ローラと、を備え、
前記ボルトが、前記駆動ローラ並びに前記第1及び第2の従動ローラの外周面に接するハンド。
【請求項3】
請求項2記載のハンドにおいて、前記回転伝達部は、トルクを伝達することが可能なトルク伝達ワイヤであるハンド。
【請求項4】
請求項3記載のハンドにおいて、前記第1の把持爪の基端部の内側に、該第1の把持爪と共に揺動し、前記トルク伝達ワイヤを案内する溝が形成されたワイヤガイドを更に有し、
該ワイヤガイドが、前記第1の把持部の揺動に伴って生じる前記トルク伝達ワイヤの変形を抑制するハンド。
【請求項5】
請求項2記載のハンドにおいて、前記回転伝達部は、ユニバーサルジョイントによって連結されたシャフトであるハンド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のハンドにおいて、前記揺動機構は、揺動用サーボモータと、
前記揺動用サーボモータによって回転するスプラインシャフトと、
前記スプラインシャフトと共に該スプラインシャフトの回転軸回りに回転し、該スプラインシャフトの回転軸方向に沿って移動可能な1対の第1のスプラインナット部と、
前記1対の支持部にそれぞれ固定され、前記第1のスプラインナット部と共に前記スプラインシャフトの回転軸に沿ってそれぞれ移動し、前記第1のスプラインナット部の回転軸回りに該第1のスプラインナット部に対してそれぞれ相対回転可能な1対の第2のスプラインナット部と、を有し、
前記第1及び第2の把持爪は、前記1対の第1のスプラインナット部によってそれぞれ駆動され、揺動するハンド。
【請求項7】
請求項6記載のハンドにおいて、前記第1及び第2の把持爪は、リンク機構を用いて回転を伝達するリンク部を介し、前記1対の第1のスプラインナット部によって駆動されるハンド。
【請求項8】
請求項6又は7記載のハンドにおいて、前記1対の支持部を前記揺動軸に沿って開閉させる開閉機構を更に備えたハンド。
【請求項9】
請求項8記載のハンドにおいて、前記開閉機構は、開閉用サーボモータと、
前記開閉用サーボモータによって回転する互いに逆向きのねじが左右にそれぞれ形成された左右ねじシャフトと、
前記左右ねじシャフトの回転によって、それぞれ該左右ねじシャフトの回転軸に沿って互いに反対方向に移動する1対の移動部と、を有し、
前記1対の移動部に、前記1対の支持部がそれぞれ固定されたハンド。
【請求項10】
請求項9記載のハンドにおいて、前記開閉用サーボモータ及び前記揺動用サーボモータは、互いに反対方向を向き、それぞれの長手方向が前記揺動軸と実質的に平行となるように配置され、該ハンドの基部に設けられるハンド。
【請求項11】
ボルトを把持するハンドを備え、
前記ハンドは、1対の支持部と、
前記1対の支持部の内側にそれぞれ支持され、ボルトを把持する第1及び第2の把持爪と、
前記第1及び第2の把持爪を前記各支持部の長手方向と交差する揺動軸回りに揺動させ、該第1及び第2把持爪の先端の向きを変更させる揺動機構と、
前記第1及び第2の把持爪が把持したボルトを該ボルトの軸回りに回転させるボルト回転機構とを有するロボット。




【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−66357(P2012−66357A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214071(P2010−214071)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】