説明

ハードコート層形成用組成物及び積層体

【課題】 ハードコート層上に親水性の機能層を設ける場合において、機能層との密着性が良好であるハードコート層形成用組成物を提供することを目的とする。またさらにハードコート層上に低屈折率層を設けた反射防止性の積層体において、最表面に傷が付きにくく耐擦傷性が良好な積層体とすることを目的とする。
【解決手段】 透明支持体上にハードコート層、ハードコート層よりも屈折率の低い低屈折率層がこの順に積層された反射防止フィルムにおいて、このハードコート層が多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、重合性化合物(B)、光ラジカル重合開始剤(C)からなることを特徴とするハードコート層形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハードコートフィルムに関し、さらに詳しくは、本発明は、表面硬度が高く、耐摩耗性に優れると同時に、ハードコート層と反射防止層との密着性が優れ、かつ生産性に優れたハードコートフィルム用組成物及び積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くのディスプレイは、室内外を問わず外光などが入射するような環境下で使用される。この外光などの入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、反射像が表示光と混合し表示品質を低下させ、表示画像を見にくくしている。特に、最近のオフィスのOA化に伴い、コンピューターを使用する頻度が増し、ディスプレイと相対していることが長時間化した。これにより反射像等による表示品質の低下は、目の疲労など健康障害等を引き起こす要因とも考えられている。更には、近年ではアウトドアライフの普及に伴い、各種ディスプレイを室外で使用する機会が益々増える傾向にあり、表示品質をより向上して表示画像を明確に認識できるような要求が出てきている。これらの要求を満たす為の例として、透明プラスチックフィルム基材の表面に透明な微粒子を含むコーティング層を形成し、凹凸状の表面により外光を乱反射させることが知られている。
【0003】
これとは別に、透明プラスチックフィルム基材の表面に、金属酸化物などから成る高屈折率層と低屈折率層を積層した、あるいは無機化合物や有機フッ素化合物などの低屈折率層を単層で形成した可視光の広範囲にわたり反射防止効果を有する反射防止フィルムをディスプレイ表面に貼り合わせる等して利用することが知られている。
【0004】
上記の金属化合物などから成る高屈折率層と低屈折率層を積層した、あるいは無機化合物や有機フッ素化合物などの低屈折率層を単層で形成した反射防止層は、一般的に、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法等、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等のドライコーティング法により形成される。このようなドライコーティング法は、基材の大きさが限定され、又、連続生産には適しておらず、生産コストが高いという欠点が有る。
【0005】
そこで、大面積化、および連続生産ができ、低コスト化が可能なウエットコーティング法(ディップコーティング法、フローコーティング法、グラビアロールコーティング法、ブレードコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キャストコーティング法、ダイコーティング法等)による反射防止フィルムの生産が注目されている。ウエットコーティング法による低屈折率層を得る手段としては、(1)屈折率の低いフッ素元素を含有する材料を用いる手法と、(2)層中に空孔を設け、空気の混入により屈折率を低くする手法とに大別される。
【0006】
上記の手法により、低屈折率層を構成する具体的な材料としては、フッ素含有有機材料、低屈折率の微粒子等が挙げられ、これらの材料を単独に、あるいは組み合わせることが提案されている。例えば、特許文献1には、フッ素含有有機材料を用いることが提案されている。特許文献2には、フッ素含有有機材料と低屈折率微粒子を用いることが提案されている。特許文献3には、フッ素含有有機材料とアルコキシシランを用いることが提案されている。特許文献4、特許文献5には、アルコキシシランと低屈折率微粒子を用いることが提案されている。このような低屈折率層はいわゆるゾル−ゲル法により作製されており、シラノール基の脱水縮合反応を利用して低屈折率層を形成している。
【0007】
この反射防止フィルムの最外層に使用する低屈折率層は、屈折率が低いことはもちろん、擦過などによる傷が付きにくいことが必要である。また、人が使用するにあたって、指紋、皮脂、汗、化粧品などの汚れが付着することを防止し、また、付着しても容易に拭き取れるようにしなければならない。
【0008】
しかしながら、この低屈折率層はその構成物から推測できるように親水性が非常に高いため、疎水性であるハードコート層の上に直接作製したとしても、反射防止層とハードコート層の密着性が非常に低く、耐摩耗性が非常に低いものとなってしまう。この問題を解決するために、従来の技術では、例えば特許文献5に記載されているように、ハードコート層の低屈折率層を設ける面を表面処理(例えばアルカリ処理、いわゆるけん化処理)することで低屈折率層とハードコート層の密着性を向上させている。
【0009】
しかし、けん化処理はハードコートフィルムをアルカリ水溶液に漬けて処理を行うことからゴミ等の付着しやすく欠陥等が発生しやすい。また、アルカリ水溶液の状態によりけん化処理の程度が影響を受けることから、工程管理、品質管理が重要な課題となっている。これらのことから、ハードコートフィルムの工程削減、収率向上、量産安定化が望まれている。
【0010】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開平2―19801号公報
【特許文献2】特開平6―230201号公報
【特許文献3】特開平7―331115号公報
【特許文献4】特開平8―211202号公報
【特許文献5】特開2002−317152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような従来技術の課題を解決しようとするものであり、ハードコート層上に親水性の機能層を設ける場合において、最表面に傷が付きにくい耐擦傷性が良好になる、ハードコート組成物を提供することを目的とする。またハードコート層上に低屈折率層を設けた反射防止性の積層体において、最表面の耐擦傷性が良好であり、ハードコート層と反射防止層の密着性が優れた積層体とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、一般式(1)で示される重合性化合物(B)、光ラジカル重合開始剤(C)からなることを特徴とするハードコート層形成用組成物である。
【0013】
【化4】

【0014】
(一般式(1)中、Xは下記一般式(2)、(3)で表される基を示し、R1は水素原子又はメチル基を示し、mは0−5の整数を示し、mが1−5の整数であるときにpは1、2、3の整数を示す。)
【0015】
【化5】

【0016】
(一般式(2)中、R2はメチル基又はエチル基を示す。)
【0017】
【化6】

【0018】
本発明におけるハードコート形成用組成物は、多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、重合性化合物(B)、光ラジカル重合開始剤(C)からなり、重合性化合物(B)は(メタ)アクリル基を有することから、多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と結合し、優れた硬度を得ることができ、さらに極性基を有することから、低反射層との密着性向上が期待できる。
【0019】
請求項2の発明は、前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)が、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーおよびオリゴマーが主成分であることを特徴とする請求項1に記載のハードコート層形成用組成物である。
【0020】
本発明におけるハードコート形成用組成物は、多官能(メタ)アクリルモノマー(A)にウレタン(メタ)アクリレートモノマーおよびオリゴマーを用いることで、硬化して得られるハードコート層の硬度ならびに可撓性を向上させることができる。
【0021】
請求項3の発明は、前記重合性化合物(B)の添加量が、5〜50wt%であることを特徴とする請求項1または2に記載のハードコート層形成用組成物である。
【0022】
本発明におけるハードコート形成用組成物は、重合性化合物(B)の添加量を5〜50wt%とすることで、硬化して得られるハードコート層の耐擦傷性、鉛筆硬度の向上と低反射層との密着性を両立させることができる。
【0023】
請求項4の発明は、透明基材上に、請求項1〜3のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物を硬化してなるハードコート層を有し、かつ該ハードコート層の膜厚が5〜25μmであることを特徴とする積層体である。
【0024】
本発明における積層体は、多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、重合性化合物(B)、光ラジカル重合開始剤(C)を硬化して得られるハードコート層を有し、該ハードコート層の膜厚を5〜25μmとすることで、十分な硬度が得られ、硬度収縮を防ぐことが可能である。
【0025】
請求項5の発明は、前記ハードコート層上に、さらに低屈折率層を設けたことを特徴とする請求項4に記載の積層体である。
【0026】
本発明における積層体は、ハードコート層に重合性化合物(B)を添加することにより、重合性化合物は(メタ)アクリル基を有することから、ハードコート層と結合することが可能である。一方、これらの重合性化合物は低屈折率層をハードコート層上に塗布する際に用いられるアルコール類の溶剤等に溶解しやすいことから、低屈折率層塗布時にハードコート層表面の重合性化合物が溶け出すことでハードコート層表面に微小な凹凸が形成されることとなる。その後、溶解した重合性化合物は水酸基、アルコキシ基を有することから低屈折率層のゾル−ゲル反応の際に一緒に硬化することとなる。このようにハードコート層と低屈折率層は化学的結合だけでなく表面凹凸による物理的接着が形成されることから、この両層の密着性が非常に高くなる。
【0027】
請求項6の発明は、前記透明基材が三酢酸セルロースであることを特徴とする請求項4または5に記載の積層体である。
【0028】
本発明における積層体は、透明基材を三酢酸セルロースにすることで、高透明性、低複屈折率等の光学特性を得ることが可能である。
【0029】
請求項7の発明は、前記低屈折率層が、一般式(4)で示される有機珪素化合物、もしくはこの有機珪素化合物の重合体のいずれかからなる組成物(D)と、一般式(5)で示される有機珪素化合物、もしくはこの有機珪素化合物の重合体のいずれかからなる組成物(E)の共重合体を含んでなるマトリックス中に、平均粒径0.5〜200nm、屈折率1.34〜1.44のシリカ微粒子を有することを特徴とする請求項5または6に記載の積層体である。
Si(OR3) 一般式(4)
(但し、R3はアルキル基である)
R4Si(OR3)4−n 一般式(5)
(但し、R4はビニル基、もしくはアミノ基、エポキシ基、クロロメチル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、イソシアナート基などの官能基のうち少なくとも1つを有する置換基、R3はアルキル基であり、nは置換数である)
【0030】
本発明における積層体は、一般式(4)、一般式(5)で表される有機珪素化合物を組み合わせることで、ハードコート層との密着性が良好な低屈折率層を形成可能であり、また、シリカ微粒子を添加することで、低屈折率化が可能となる。
【0031】
請求項8の発明は、前記組成物(D)と組成物(E)の混合モル比が、モル%で表したとき50:50〜99:1であることを特徴とする請求項7に記載の積層体である。
【0032】
本発明における積層体は、前記組成物(D)と組成物(E)の混合モル比を50:50〜99:1とすることで、ハードコート層との密着性を保ちつつ、耐擦傷性を保つことが可能となり、組成物(E)のモル比が高くなるに従って耐擦傷性が低下してしまう。
【0033】
請求項9の発明は、前記組成物(D)と組成物(E)を溶解する溶剤(F)がアルコール類、グリコール類、グリコールモノエーテル類のいずれかであることを特徴とする請求項7または8に記載の積層体である。
【0034】
本発明における積層体は、溶剤(F)がアルコール類、グリコール類、グリコールモノエーテル類のいずれかにすることで有機珪素化合物が容易に溶解可能であり、また、重合性化合物(B)が溶解しやすい溶剤であることから、ハードコート層と低屈折率層の密着性が良好となる。
【0035】
請求項10の発明は、前記シリカ微粒子の添加量が、5〜95wt%であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の積層体である。
【0036】
本発明における積層体は、シリカ微粒子の添加量が、5〜95wt%であることから、低屈折率層の屈折率を制御可能であり、添加量が少ないと低屈折率化ができなく、多いと製膜性が低下してしまう。
【0037】
請求項11の発明は、前記低反射率層の屈折率が、1.34〜1.40の範囲であることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の積層体である。
【0038】
本発明における積層体は、低反射率層の屈折率が、1.34〜1.40であることから、ハードコート層との屈折率差により反射防止機能が発現することとなる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、ハードコート層に重合性化合物(B)を添加することにより、重合性化合物は(メタ)アクリル基を有することから、ハードコート層と結合することが可能である。一方、これらの重合性化合物は低屈折率層をハードコート層上に塗布する際に用いられるアルコール類の溶剤等に溶解しやすいことから、低屈折率層塗布時にハードコート層表面の重合性化合物が溶け出すことでハードコート層表面に微小な凹凸が形成されることとなる。その後、溶解した重合性化合物は水酸基、アルコキシ基を有することから低屈折率層のゾル−ゲル反応の際に一緒に硬化することとなる。このようにハードコート層と低屈折率層は化学的結合だけでなく表面凹凸による物理的接着が形成されることから、この両層の密着性が非常に高くなる。このハードコート層と低屈折率層との密着性が向上することで、従来行われていたハードコート層の表面処理(けん化処理)の工程が不要となり、収率向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0041】
本発明のハードコート用組成物を構成する多官能(メタ)アクリルモノマー(A)とは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートおよびポリエーテルアクリレートなどであり、また、メラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いられ得るが、本発明では特にウレタンアクリレートを用いると、ハードコート層の硬度ならびに可撓性を著しく向上させることができる。
【0042】
ハードコート層を構成する多官能(メタ)アクリルモノマー(A)の代表的なものを例示すると、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーを主たる構成成分とし、活性線によって得られるハードコート層が、硬度、耐摩耗性および可撓性に優れている点で好ましく用いられる。
【0043】
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーとしては、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、2個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを挙げることができる。
【0044】
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0045】
これらの多官能(メタ)アクリルモノマーの使用割合は、ハードコート層構成成分総量に対して1〜99重量%が好ましく、より好ましくは50〜90重量%である。
【0046】
上記多官能(メタ)アクリルモノマーの使用割合が50重量%未満の場合には、十分な耐擦傷性を有する硬化被膜を得るという点で不十分な場合があり、また、その量が90重量%を超える場合は、低屈折率層との十分な密着性を発現することができず、また、多官能(メタ)アクリルモノマーの硬化収縮により、硬化被膜側に大きくカールするなどの不
都合を招く場合がある。
【0047】
市販されている多官能アクリル系モノマーとしては、「ダイヤビーム」シリーズ(商品名、三菱レイヨン株式会社製)、「デナコール」シリーズ(商品名、ナガセケムテックス株式会社製)、「NKエステル」シリーズ(商品名、新中村化学工業株式会社製)、「UNIDIC」シリーズ(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、「アロニックス」シリーズ(商品名、東亜合成株式会社製)、「ブレンマー」シリーズ(商品名、日本油脂株式会社製)、「KAYARAD」シリーズ(商品名、日本化薬株式会社製)、「ライトエステル」「ライトアクリレート」シリーズ(いずれも商品名、共栄社化学株式会社製)などの製品を利用することができる。
【0048】
本発明の重合性化合物(B)は、一般式(1)で表されるものである。
【0049】
【化7】

(一般式(1)中、Xは下記一般式(2)、(3)で表される基を示し、R1は水素原子又はメチル基を示し、mは0〜5の整数を示し、mが1〜5の整数であるときにpは1,2,3の整数を示す。)
【0050】
【化8】

(一般式(2)中、R2はメチル基又はエチル基を示す。)
【0051】
【化9】

【0052】
上記重合性化合物の上記式(1)におけるmが大きくなると極性溶剤に溶解しやすくなるものの、mが5を超えると、mが5以下の場合に比して、ハードコート層の剛性又は硬度の低下が比較的顕著となる傾向にある。
【0053】
また、上記重合性化合物は、上記式(1)におけるpが2又は3、すなわち、メタクリロイルオキシアルキル基におけるアルキレンオキサイド基がエチレンオキサイド基又はプロピレンオキサイド基のものが好ましい。これらの重合性化合物は、上記pが4以上であるアルキレンオキサイド基を有する重合性化合物と比較して、ハードコート層の耐擦傷性、硬度低下が見られない。さらに上記式(2)のR2はメチル基又はエチル基が好ましい。これらは低屈折率層をコーティングした際に溶解した重合性化合物が低屈折率層成分と一緒にゾル−ゲル反応しやすいためである。このような重合性化合物の好適な具体例としては、下記一般式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0054】
【化10】

【0055】
これら重合性化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができ、式(6)で表される重合性化合物が特に好ましい。
【0056】
さらに、上述したように上記重合性化合物は(メタ)アクリル基が一つである単官能性重合性化合物が望ましい。これは多官能型重合性化合物ではハードコート作製時にこの重合性化合物も十分に硬化してしまい、低屈折率層をコーティングする際の溶剤に溶解することが困難になってしまうためである。そのため結果として、ハードコート層と低屈折率層の密着性が低下してしまう。
【0057】
前記重合性化合物(B)の添加量が、5〜50wt%であることが好ましい。添加量が5wt%以下であるとハードコート層と低屈折率層との密着性が低下してしまい、耐擦傷性が悪くなってしまう。一方、添加量が50wt%以上であると多官能ウレタンアクリレートの重量比が下がり、ハードコート層の鉛筆硬度が低下してしまう。
【0058】
また本発明では、ハードコート層の改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料あるいは安定剤などを用いることができ、これらは活性線による反応を損なわない範囲内でハードコート層を構成する塗布層の組成物成分として使用され、用途に応じてハードコート層の特性を改良することができる。
【0059】
本発明において、上記のハードコート層形成用組成物を硬化させる方法としては、活性線、特に紫外線を照射する方法が好適であり、これらの方法を用いる場合には、前記ハードコート層形成用組成物に、光ラジカル重合開始剤を加えることにより紫外線照射にて硬化させることができる。紫外線照射においては、400nm以下の波長を含む光であれば良く、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ等を用いることができる。また、必要に応じて加熱工程を加えてもよい。
【0060】
光ラジカル重合開始剤(C)の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0061】
光ラジカル重合開始剤(C)の使用量は、ハードコート用組成物100重量部に対して、0.01−10重量部が適当である。
【0062】
本発明で用いられるハードコート層形成用組成物には、製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルまたは2,5−t−ブチルハイドロキノンなどの熱重合防止剤を加えることが望ましい。熱重合防止剤の添加量は、ハードコート層形成用組成物総重量に対し、0.005〜0.05重量%が好ましい。
【0063】
本発明のハードコート層形成用組成物は、基材上に塗布し硬化することにより、ハードコート層を形成する。硬化後の化合物としては、下記一般式(7)で表される化合物が含まれる。
【0064】
【化11】

【0065】
本発明のハードコート層は、重合性化合物(B)を添加することにより、重合性化合物は(メタ)アクリル基を有することから、ハードコート層と結合することが可能であり、表面硬度が高く、耐摩耗性に優れる。また、重合性化合物(B)は、極性基を有するために、低屈折率層との反応も可能であることから、密着性が良好である。さらに、これらの重合性化合物は低屈折率層をハードコート層上に塗布する際に用いられるアルコール類の溶剤等に溶解しやすいことから、低屈折率層塗布時にハードコート層表面の重合性化合物が溶け出すことでハードコート層表面に微小な凹凸が形成されることとなる。その後、溶解した重合性化合物は水酸基、アルコキシ基を有することから低屈折率層のゾル−ゲル反応の際に一緒に硬化することとなる。このようにハードコート層と低屈折率層は化学的結合だけでなく表面凹凸による物理的接着が形成されることから、この両層の密着性が非常に高くなる。このハードコート層と低屈折率層との密着性が向上することで、従来行われていたハードコート層の表面処理(けん化処理)の工程が不要となり、収率向上が期待できる。
【0066】
本発明のハードコート層形成用組成物は、基材上に塗布しハードコート層を形成することにより積層体とすることができる。
【0067】
ハードコート層形成用組成物の塗布方法としては、ハードコート層形成用組成物の各成分を適宜選択し、任意の割合で混合して得た塗布液をバーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマーコーター等の公知の塗工手段を用いて塗布することができる。
【0068】
このハードコート層形成用組成物を塗布する際は、必要に応じて適当な溶剤で希釈してもよいが、その場合には基材上に塗布した後に乾燥を要する。上記溶剤としては、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、エチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−メトキシエチルエーテル、2−エトキシエチルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテート、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0069】
基材としては、透光性を有する板状のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、あるいはポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォンやポリアクリレートなどのプラスチックのシートあるいはフィルムが挙げられる。これらのなかで高透明性、低複屈折率等の光学特性から三酢酸セルロースのフィルムが好ましい。
【0070】
塗布して得られたハードコート層の膜厚は、必要とされる硬度によりその膜厚が決定されるが、好ましい膜厚としては3〜30μm、さらに好ましくは5〜25μmである。3μm以下の膜厚では十分な硬度が得られず、一方、30μm以上ではハードコート層の硬化収縮により基材が非常にカールしてしまい、次工程で破断等の不具合が発生してしまう。
【0071】
本発明に用いる低屈折率層は、例えば、後述の一般式(4)で示される有機珪素化合物もしくはこの有機珪素化合物の重合体のいずれかからなる組成物(D)と、一般式(5)で示される有機珪素化合物、もしくはこの有機珪素化合物の重合体のいずれかからなる組成物(E)の共重合体を含んでなるマトリックス中に、平均粒径0.5〜200nm、屈折率1.44〜1.34のシリカ微粒子を有するものがあげられる。そして低屈折率層は、前述の材料を含むコーティング溶液を塗布することにより形成される。
【0072】
前記低屈折率層を形成するコーティング溶液で用いられる一般式(4)
Si(OR3) 一般式(4)
(但し、R3はアルキル基である)
で表される有機珪素化合物としては、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si〔OCH(CH)〕、Si(OC等が例示でき、それらを単独に、あるいは2種類以上併せて用いてもよい。
【0073】
前記低屈折率層を形成するコーティング溶液で用いられる一般式(5)
R4Si(OR3)4−n 一般式(5)
(但し、R4はビニル基、もしくはアミノ基、エポキシ基、クロル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、イソシアナート基などの官能基のうち少なくとも1つを有する置換基、R3はアルキル基であり、nは置換数である)で表される有機珪素化合物としては、ビニル基含有珪素化合物〔ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等〕、アミノ基含有珪素化合物〔N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等〕、エポキシ基含有珪素化合物〔3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等〕、クロル基含有珪素化合物〔3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン等〕、メタクリロキシ基含有珪素化合物〔3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等〕、アクリロキシ基含有珪素化合物〔3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等〕、イソシアナート基含有珪素化合物〔3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等〕等が例示でき、それらを単独に、あるいは2種類以上併せて用いてもよい。
【0074】
上記一般式(4)と、一般式(5)で表される有機珪素化合物、若しくはその重合体を用いて共重合体を作製する方法は、特に限定されるものではないが、加水分解によって作製するにあたっての触媒としては、公知の、塩酸、硝酸、酢酸、フッ酸、ギ酸、リン酸、蓚酸、アンモニア、ジブチルスズラウレート、オクチル酸スズ化合物、メタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、トリフロロ酢酸等が例示でき、それらを単独に、或いは2種類以上併せて用いてもよい。
【0075】
本発明における積層体は、一般式(4)、一般式(5)で表される有機珪素化合物を組み合わせることで、ハードコート層との密着性が良好な低屈折率層を形成可能であり、また、シリカ微粒子を添加することで、低屈折率化が可能となる。
【0076】
さらに、前記一般式(4)、一般式(5)で表される有機珪素化合物の混合モル比を50:50〜99:1とすることで、ハードコート層との密着性を保ちつつ、耐擦傷性を保つことが可能となり、一般式(5)のモル比が高くなるに従って耐擦傷性が低下してしまう。
【0077】
上記の有機珪素化合物から成るマトリックス中に、シリカ微粒子を添加することにより、低屈折率化が可能となる。シリカ微粒子は通常屈折率が1.46程度であるが、それよりも屈折率の低い、屈折率1.44〜1.34程度のシリカ微粒子を用いることが好ましい。このようなものとしては例えば多孔質シリカ微粒子などがあげられる。
【0078】
シリカ微粒子の平均粒径は、0.5〜200nmの範囲内であれは良い。この平均粒径が200nmよりも大きくなると、低屈折率層の表面においてレイリー散乱によって光が散乱され、白っぽく見え、その透明性が低下する。また、この平均粒径が0.5nm未満であると、シリカ微粒子が凝集しやすくなってしまう。
【0079】
また、このシリカ微粒子の添加量が、5〜95wt%であることから、低屈折率層の屈折率を制御可能であり、添加量が少ないと低屈折率化ができなく、多いと凝集等により製膜性が低下してしまう。
【0080】
前記低屈折率層コーティング溶液の溶剤(F)は、組成物の安定性、ハードコート層に対する濡れ性、揮発性、さらに重合性化合物(B)の溶解性などを考慮して、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール等のグリコールモノエーテル類等が挙げられる。また、溶媒は1種類のみならず2種類以上の混合物として用いることも可能である。
【0081】
これらの溶剤(F)がアルコール類、グリコール類、グリコールモノエーテル類のいずれかにすることで有機珪素化合物が容易に溶解可能であり、また、重合性化合物(B)が溶解しやすい溶剤であることから、ハードコート層と低屈折率層の密着性が良好となる。
【0082】
前記低屈折率コーティング溶液は、前記のウェットコーティング法により前記ハードコート層上に塗工される。塗工後、加熱乾燥により塗膜中の溶媒を揮発させ、その後、加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等を行い塗膜を硬化させる。
【0083】
本発明の低屈折率コーティング溶液を用いて形成された低屈折率層の屈折率は、前記透明プラスチックフィルム基材、ハードコート層のいずれの屈折率よりも低い値であり、また、この低屈折率層の厚さ(d)は、低屈折率層の屈折率をnとすると、nd=λ/4であることが好ましい。
【0084】
低反射率層の屈折率が、1.34〜1.40であることから、ハードコート層との屈折率差により上記理論式に基づいて反射防止機能が発現することとなる。
【0085】
以下、本発明の実施の形態について具体的な実施例と本発明の特徴を明確にするための比較例を挙げて説明するが、下述する実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いるハードコート層形成用組成物は光に対して極めて敏感であるため、自然光など不必要な光による感光を防ぐ必要があり、全ての作業を黄色、または赤色灯下で行うことは言うまでもない。
【実施例】
【0086】
<実施例1>
(ハードコート層の作製)
基材として厚み80μmの三酢酸セルロースフィルムを用いて、ペンタエリスリトールトリアクリレート5重量部、ウレタンオリゴマー(商品名 UA−306I 共栄社化学株式会社製)5重量部、トリメトキシシリル基含有メタクリルモノマー(商品名 KBM−103 信越化学工業株式会社製)2重量部、イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)0.3重量部、メチルエチルケトン5重量部、酢酸メチル5重量部を攪拌、混合した塗布液を、グラビアコーティング法によりWET膜厚20μm(乾燥後膜厚10μm)になるように塗布、乾燥させ、高圧水銀灯により1000mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成し、ハードコート性積層体を作製した。
【0087】
(低屈折率層の作製)
Si(OCを95mol%、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランを5mol%で混合し、20wt%の2−プロパノール溶液を作製し、これに平均粒径60nm、屈折率1.36のシリカ微粒子を50wt%添加し、1.0N−HClを触媒に用いた低屈折率コーティング剤を作製した。上記のハードコート層を形成した三酢酸セルロースフィルム上にマイクログラビア法を用いてコーティング溶液を膜厚100nmで塗布し、120℃で1分間乾燥を行うことにより、低屈折率層を形成して反射防止性積層体を作製した。
【0088】
<実施例2>
基材として厚み80μmの三酢酸セルロースフィルムを用いて、ペンタエリスリトールトリアクリレート5重量部、ウレタンオリゴマー(商品名 UA−306I 共栄社化学株式会社製)5重量部、リン酸基含有メタクリルモノマー(商品名 ライトエステルP−1M 共栄社化学株式会社製)2重量部、イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)0.3重量部、メチルエチルケトン5重量部、酢酸メチル5重量部を攪拌、混合した塗布液を、グラビアコーティング法によりWET膜厚20μm(乾燥後膜厚10μm)になるように塗布、乾燥させ、高圧水銀灯により1000mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成し、ハードコート性積層体を作製した。そのほかは実施例1と同様の方法でハードコート層上に低屈折率層を設置して反射防止性積層体を作製した。
【0089】
<実施例3>
基材として厚み80μmの三酢酸セルロースフィルムを用いて、ウレタンオリゴマー(商品名 UV−1700B 日本合成化学工業株式会社製)10重量部、トリメトキシシリル基含有メタクリルモノマー(商品名 KBM−103 信越化学工業株式会社製)2重量部、イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)0.3重量部、メチルエチルケトン5重量部、酢酸メチル5重量部を攪拌、混合した塗布液を、グラビアコーティング法によりWET膜厚20μm(乾燥後膜厚10μm)になるように塗布、乾燥させ、高圧水銀灯により1000mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成し、ハードコート性積層体を作製した。そのほかは実施例1と同様の方法でハードコート層上に低屈折率層を設置して反射防止性積層体を作製した。
【0090】
<比較例1>
基材として厚み80μmの三酢酸セルロースフィルムを用いて、ペンタエリスリトールトリアクリレート5重量部、ウレタンオリゴマー(商品名 UA−306I 共栄社化学株式会社製)5重量部、イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)0.3重量部、メチルエチルケトン5重量部、酢酸メチル5重量部を攪拌、混合した塗布液を、グラビアコーティング法によりWET膜厚20μm(乾燥後膜厚10μm)になるように塗布、乾燥させ、高圧水銀灯により1000mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成し、ハードコート性積層体を作製した。そのほかは実施例1と同様の方法でハードコート層上に低屈折率層を設置して反射防止性積層体を作製した。
【0091】
<比較例2>
基材として厚み80μmの三酢酸セルロースフィルムを用いて、ウレタンオリゴマー(商品名 UV−1700B 日本合成化学工業株式会社製)10重量部、イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)0.3重量部、メチルエチルケトン5重量部、酢酸メチル5重量部を攪拌、混合した塗布液を、グラビアコーティング法によりWET膜厚20μm(乾燥後膜厚10μm)になるように塗布、乾燥させ、高圧水銀灯により1000mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成し、ハードコート性積層体を作製した。そのほかは実施例1と同様の方法でハードコート層上に低屈折率層を設置して反射防止性積層体を作製した。
【0092】
前記実施例および比較例において、鉛筆硬度、スチールウールラビング、密着性および外観を評価した。その結果は表1に示す。
【0093】
<評価>
(鉛筆硬度)
JIS K5400に示された試験方法に基づき評価した。
(耐擦傷性)
#0000のスチールウールを用いて、250g/cmの荷重をかけながら10回往復摩擦し、キズの発生の有無を評価した。
(密着性)
ハードコート層表面を1mm角100点カット後、セロハンテープ[ニチバン株式会社製、工業用24mm幅粘着テープ]により密着させ、その後セロハンテープを剥がし、剥離数を評価した。
(外観)
光学フィルムのハードコート層が形成された反対の面を、サンドペーパーで擦り、その後艶消しの黒色塗料を塗布し、ハードコート層形成側から光学フィルムを観察した。
【0094】
【表1】

【0095】
実施例および比較例の比較によると、ハードコート層形成用組成物に重合性化合物を添加した場合と添加しない場合で、鉛筆硬度等の諸特性を変化させることなく、密着性の向上が可能であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、一般式(1)で示される重合性化合物(B)、光ラジカル重合開始剤(C)からなることを特徴とするハードコート層形成用組成物。
【化1】

(一般式(1)中、Xは下記一般式(2)、(3)で表される基を示し、R1は水素原子又はメチル基を示し、mは0〜5の整数を示し、mが1〜5の整数であるときにpは1、2、3の整数を示す。)
【化2】

(一般式(2)中、R2はメチル基又はエチル基を示す。)
【化3】

【請求項2】
前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)が、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーおよびオリゴマーが主成分であることを特徴とする請求項1に記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項3】
前記重合性化合物(B)の添加量が、5〜50wt%であることを特徴とする請求項1または2に記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項4】
透明基材上に、請求項1〜3のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物を硬化してなるハードコート層を有し、かつ該ハードコート層の膜厚が5〜25μmであることを特徴とする積層体。
【請求項5】
前記ハードコート層上に、さらに低屈折率層を設けたことを特徴とする請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記透明基材が三酢酸セルロースであることを特徴とする請求項4または5に記載の積層体。
【請求項7】
前記低屈折率層が、一般式(4)で示される有機珪素化合物、もしくはこの有機珪素化合物の重合体のいずれかからなる組成物(D)と、一般式(5)で示される有機珪素化合物、もしくはこの有機珪素化合物の重合体のいずれかからなる組成物(E)の共重合体を含んでなるマトリックス中に、平均粒径0.5〜200nm、屈折率1.34〜1.44のシリカ微粒子を有することを特徴とする請求項5または6に記載の積層体。
Si(OR3) 一般式(4)
(但し、R3はアルキル基である)
R4Si(OR3)4−n 一般式(5)
(但し、R4はビニル基、もしくはアミノ基、エポキシ基、クロロメチル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、イソシアナート基などの官能基のうち少なくとも1つを有する置換基、R3はアルキル基であり、nは置換数である)
【請求項8】
前記組成物(D)と組成物(E)の混合モル比が、モル%で表したとき50:50〜99:1であることを特徴とする請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記組成物(D)と組成物(E)を溶解する溶剤(F)がアルコール類、グリコール類、グリコールモノエーテル類のいずれかであることを特徴とする請求項7または8に記載の積層体。
【請求項10】
前記シリカ微粒子の添加量が、5〜95wt%であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の積層体。
【請求項11】
前記低反射率層の屈折率が、1.34〜1.40の範囲であることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の積層体。

【公開番号】特開2007−314594(P2007−314594A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142561(P2006−142561)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】