説明

バイアス回路を一体化した金属酸化膜半導体デバイス

【課題】デバイスの温度変動および/またはプロセス変動に起因するMOSデバイスのバイアス条件の変動を正確に補償できる技術を提供する。
【解決手段】ICデバイスがゲート端子、ソース端子およびドレイン端子を有するMOSデバイスを備え、ゲート端子はICデバイスの入力部に動作可能に結合され、ドレイン端子はICデバイスの出力部に動作可能に結合され、ソース端子は負電圧供給源に結合している。ICデバイスは、さらに、MOSデバイスのゲート端子に動作可能に結合されているバイアス発生器を備え、このバイアス発生器は、MOSデバイスにほぼ一定の静止動作点でバイアスをかけるバイアス電圧および/またはバイアス電流を発生する。バイアス発生器は、バイアス電圧および/またはバイアス電流がMOSデバイスの接合温度の関数として変化するように構成されている。このようにして、バイアス発生器が、MOSデバイスの1つまたは複数の動作条件を正確にたどり、それによってデバイスの性能を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、半導体デバイス、より詳細には、バイアス回路を一体化した金属酸化膜半導体(MOS)デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
増幅器(たとえば、AB級増幅器)を特定の設計基準に従って動作させるためには、外方拡散MOS(LDMOS)パワー・トランジスタを含めて、増幅器に使用されるMOSデバイスの静止バイアス電流が、温度変動および/またはプロセス変動においてほぼ一定に留まらなければならない。遺憾ながら、このバイアス電流は、他の諸パラメータのうちでもとりわけ、強い温度依存性を示すMOSデバイスの閾値電圧に大きく依存している。さらに、MOSデバイスのこの閾値電圧は、半導体のプロセス・パラメータの変動の影響を大きく受けるので、一般にデバイス間で大きく変動する。
【0003】
従来の増幅器では、増幅器内で使用される離散的MOSデバイスにバイアスをかけるための比較的温度依存性のないバイアス電流を提供する温度補償回路を有する外部バイアス発生器を使用することが知られている。たとえば、温度変動を検出する温度追跡ダイオードと共に、本質的にオペアンプであるバンドギャップ基準発生器を使用することはよく知られている。温度を追跡する他の知られた方法には、ソフトウェアのルックアップ・テーブルの使用が含まれ得る。しかし、これらのバイアス回路は、パッケージ化されたMOSデバイスの外部にあるので、しばしば、デバイスの周囲の空気温度またはデバイスのケースの温度を感知することを利用するこのような従来の補償方法では、MOSデバイス自体の温度特性および/またはプロセス特性を正確に追跡することができない。さらに、これらの追加の回路および/または方法は、しばしば非常に複雑であり、それぞれの使用される増幅器毎に(たとえば、プロセス変動を補償するために)手動でのバイアス電流調節が必要とされ得、したがってこのような回路構成の実施をコスト高にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、従来の回路および方法に伴う1つまたは複数の問題を伴わず、少なくとも部分的にデバイスの温度変動および/またはプロセス変動に起因するMOSデバイスのバイアス条件の変動を正確に補償できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に従えば、半導体デバイスが、第1のトランジスタ内のほぼ一定の動作静止点を維持するために第1トランジスタに結合可能である。この半導体デバイスは、第1トランジスタに動作可能に結合されそれに一体化されたバイアス発生器を備える。このバイアス発生器は、あるほぼ一定の動作静止点で第1トランジスタにバイアスをかけるバイアス出力を発生する。このバイアス発生器は、バイアス出力が第1トランジスタの接合温度の関数として変化するように構成されている。
【0006】
本発明の別の態様によれば、集積回路(IC)デバイスは、このICデバイスの入力部に動作可能に結合されたゲート端子、このICデバイスの出力部に動作可能に結合されたドレイン端子、および負電圧供給源に結合されたソース端子を備える。さらに、ICデバイスは、MOSデバイスのゲート端子に動作可能に結合されるバイアス発生器を備える。このバイアス発生器は、MOSデバイスにほぼ一定の動作静止点でバイアスをかけるバイアス電圧および/またはバイアス電流を発生する。バイアス発生器は、バイアス電圧および/またはバイアス電流がMOSデバイスの接合温度の関数として変化するように構成されている。このようにして、バイアス発生器はMOSデバイスの1つまたは複数の動作条件を正確に追跡し、それによってデバイスの性能を向上させる。
【0007】
本発明は、例示的な一実施形態において、離散的トランジスタ・デバイスと同じICパッケージ内にバイアス発生器を一体化させることにより、このパッケージ化された離散的トランジスタ・デバイス内の静止バイアス電流を自動的に調節する技法を提供する。このバイアス発生器は、その内部の基準トランジスタ内を流れる基準電流が離散的トランジスタ・デバイス内を流れる静止電流のほぼ一定割合になるように構成されている。この基準トランジスタは、少なくとも半導体プロセス特性(たとえば、閾値電圧)の点では、離散的トランジスタとほぼ同じであり、好ましくは、バイアス発生器は離散的トランジスタ・デバイスに関連する接合温度の変動および/またはプロセス・パラメータの変動をより正確に追跡するように離散的デバイスの比較的近傍に配置される。
本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、その例示的実施形態についての以下の詳細な説明を添付の図面と共に読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に従って形成された、バイアス発生器とパッケージ化されたMOSトランジスタを備える例示的なICデバイスを示す簡略ブロック図である。
【図2】本発明の技法が実施された例示的な増幅回路を示すブロック図である。
【図3】本発明の例示的な実施形態に従って形成された例示的な増幅回路を示す概略図である。
【図4】本発明による、図3に示すパワー・トランジスタM1内の静止ドレイン電流についての特定の温度範囲にわたるシミュレーシュン結果を示すグラフである。
【図5】本発明の例示的な実施形態に従って形成された、バイアス発生器と一体化したMOSデバイスを備える例示的なICパッケージを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、パッケージ化されたバイアス回路を備える、例示的な離散的パワーMOSトランジスタ・デバイスの状況で本発明を説明する。しかし、当然のことながら、本発明は、この回路構成および任意の具体的回路構成に限定されるものではない。そうではなくて、本発明は、一般に、デバイスの動作点への望まない影響を生じ得る、少なくとも温度変動および/または半導体プロセス・パラメータの変動を正確に補償する静止バイアス電圧および/または静止バイアス電流をトランジスタ・デバイスに与える向上した技法に適用できる。さらに、バイアス回路は、トランジスタ・デバイスと同じパッケージに一体化されているので、たとえば、パッケージ化デバイスを増幅回路と共に実装するのに必要な外部回路構成部品の数を有利に低減することができる。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に従って形成された例示的なICデバイス100の簡略化したブロック図を示す。この例示的なICデバイス100は、ゲート(G)端子、ドレイン(D)端子、およびソース(S)端子を有するMOSトランジスタ・デバイス102を備える。このMOSトランジスタ102は、たとえば、約400メガヘルツ(MHz)を超える周波数で動作可能な無線周波数(RF)パワー増幅回路の用途に適するn型パワーMOS(NMOS)トランジスタが好ましいが、当業者なら分かるように、本質的に、ICデバイス100への変更なしでまたは変更を伴って、(たとえば、p型MOSトランジスタ、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)などの)任意のトランジスタ・デバイスを使用することができる。このようなパワー増幅回路は、たとえば、複数キャリアおよび/または単一キャリアの無線基地局で使用することができる。ICデバイス100の入力ゲートは、トランジスタ102のゲート端子に結合することが好ましく、ICデバイスの出力ドレインは、トランジスタのドレイン端子に結合される。トランジスタ102のソース端子は、グラウンドまたは代替電圧源であってもよい負電圧供給源に接続することができる。
【0011】
例示的なICデバイス100は、さらに、トランジスタ102のゲート端子に結合されたバイアス発生器104を備える。このバイアス発生器104は、ほぼ一定の動作静止点でトランジスタ102に自動的にバイアスをかけるように構成することが好ましい。バイアス発生器104は、基準電圧VREF、基準電流(図示せず)、または基準電圧と基準電流の任意の組み合わせを受け取る入力部を備えることができる。これらの基準電圧VREFおよび/または基準電流を、ICデバイス100の内部で発生させてもよく、代わりに、図示するように、基準電圧および/または基準電流をICデバイスの外部で発生させてもよい。
【0012】
前述したように、トランジスタ・デバイスの静止バイアス電流は、このようなデバイスを使用した増幅回路に(たとえば、線形性、利得、効率などの)性能劣化がもたらされないように温度変動および/またはプロセス変動においてほぼ一定に留まらなければならない。トランジスタ・デバイスの静止バイアス電流(Idq)は、他の諸パラメータの中でとりわけ、強い温度依存性を示すデバイスの閾値電圧に大きく依存しており、したがって固定されたゲート電圧でトランジスタ・デバイスにバイアスをかけることは適当ではない。このために、バイアス発生器が、トランジスタ・デバイスの接合温度を正確に感知し、このような温度変動の補償に従ってバイアス電流Idqを自動的に調節できることが重要である。温度変動に応答してバイアス電圧を調節可能な外部バイアス回路は知られているかもしれないが、このような回路は、本来、パッケージ化されたICデバイスの外部にあることから、簡単にバイアス電圧を正確に調節してトランジスタ・デバイス自体の接合温度を正確に追跡することができない。
【0013】
入力RF信号レベルは、一般に一定ではない、したがってトランジスタ・デバイスの接合温度は、時間とともにかなり変動することがある。従来のパワー増幅回路では、外部バイアス発生器がICパッケージの周囲の空気温度またはICパッケージのケース温度を感知し、この情報を用いて温度が変動したときにトランジスタに供給されるゲート電圧を調節するために構成されることがある。しかし、ICパッケージの周囲の空気温度またはICパッケージのケース温度は、一般にトランジスタ・デバイスの接合温度と等価ではない。ICデバイスのケースは、一般にヒート・シンクとして働き、したがってケース温度は、せいぜいトランジスタ・デバイスの接合温度の時間平均を表すに過ぎない。したがって、従来のパワー増幅回路の構成は、トランジスタ・デバイスの静止バイアス電流を正確に調節してトランジスタの接合温度のリアルタイム変動を補償することができない。さらに、前述したように、従来のパワー増幅回路の実施には、しばしばデバイスに結合した複雑な外部温度補償回路が必要であり、増幅器設計および製造の全体的コストをかなり増加させる。
【0014】
図2は、本発明の技法を使用した例示的な増幅回路200のブロック図を示す。この増幅回路200は、入力インピーダンス整合ネットワーク202に結合された入力部および出力インピーダンス整合ネットワーク206に結合された出力部を有する例示的なICデバイス204を備えることが好ましい。入力信号RFINは、入力インピーダンス整合ネットワーク202の入力部に提示することが好ましく、出力インピーダンス整合ネットワーク206の出力部は、増幅回路200の出力RFOUTを形成することが好ましい。図1に示したICデバイス100と類似のものでよい例示的なICデバイス204は、ゲート(G)端子、ドレイン(D)端子、およびソース(S)端子を有するMOSトランジスタ・デバイス208、ならびにこのMOSトランジスタに動作可能に結合されたバイアス発生器214を備える。ICデバイス204は、ICデバイスの入力部とバイアス発生器214の入力部の間に結合されたロー・パス・フィルタ(LPF)回路212、ならびにICデバイスの入力部とMOSトランジスタ208のゲート端子の間に結合されたハイ・パス・フィルタ(HPF)回路210を備えることもできる。このLPF回路212は、少なくとも部分的には、ICデバイス204に供給される基準電圧VREF中に存在し得る、所望のカットオフ周波数より高い周波数成分をほぼ減衰させ、それによってほぼ直流(DC)の基準信号VREFをバイアス発生器214に渡す働きをする。このHPF回路214は、少なくとも部分的には、MOSトランジスタ208に供給される任意のDC成分を含む入力信号RFIN中に存在する、所望のカットオフより低い任意の周波数成分をほぼ取り除く働きをする。
【0015】
図3は、本発明の技法が実施された例示的な増幅回路300を示す概略図である。この増幅回路300は、入力インピーダンス整合ネットワーク302と出力インピーダンス整合ネットワーク306の間に動作可能に結合された例示的なICデバイス304を備える。この例示的なICデバイス304は、グラウンドでもよい負電圧供給源に接続されたソース(S)端子、ゲート(G)端子、およびドレイン(D)端子を有するNMOSトランジスタM1を備える。トランジスタM1は、それだけには限定されないが、RFLDMOSデバイスなどのパワー・デバイスであることが好ましい。M1のドレイン端子は、ほぼ一定の正電圧供給源VDDまたは代替電圧源に結合することが好ましい。この正電圧供給源は、LPF回路によってフィルタをかけることが好ましい。このLPF回路は、第1端部がノード336で電圧源VDDの正端子に結合され、第2端部がノード332でICデバイス304の出力部に結合されたインダクタL7、およびノード336と負電圧供給源の間に結合されたコンデンサC11を備えることができる。
【0016】
さらに、ICデバイス304は、NMOSトランジスタM1に動作可能に結合されたバイアス発生器308を備える。本発明の重要な一態様は、このバイアス発生器308がNMOSパワー・トランジスタM1と同じICパッケージ内に一体化されることである。バイアス発生器308は、トランジスタM1の接合温度の変動および/またはトランジスタM1に関連するプロセス・パラメータの変動をほぼ追跡するように構成されている。例示的なICデバイス304内のバイアス発生器308は、第1NMOSトランジスタM2、第2NMOSトランジスタM3、および第3NMOSトランジスタM4を備え、それぞれのトランジスタが、ゲート(G)端子、ドレイン(D)端子、およびソース(S)端子を有する、閾値参照ソースを備えることができる。この閾値参照ソースは、供給電圧の変動に少なくともほぼ無関係であり、かつ比較的温度依存性がない、比較的一定の出力電圧および/または出力電流を提供する簡単な手段である。バイアス発生器308がトランジスタM1をより正確に追跡するために、トランジスタM2、M3、M4をトランジスタM1にほぼ一致させ、トランジスタM1の比較的近傍に設置することが好ましい。
【0017】
バイアス発生器308内のトランジスタM2を、そのソース端子を負電圧供給源に接続させ、そのドレイン端子を直列接続の抵抗器Rrefを介して基準電圧供給源に接続させて、利得段として構成することが好ましい。抵抗器Rrefは、第1端部がノード318でトランジスタM2のドレイン端子に接続され、第2端部がノード316で基準電圧供給源に接続される。トランジスタM3を、そのゲート端子をノード318でM2のドレイン端子に接続させ、そのドレイン端子をノード316で基準電圧に接続させ、そのソース端子をノード320でM2のゲート端子に接続させて、トランジスタM2の周りの負帰還ループを形成するソース・フォロアとして構成することが好ましい。トランジスタM4はトランジスタM3の負荷デバイスとして働くことが好ましく、そのドレイン端子をノード320でM3のソース端子に接続させ、そのソース端子を負電圧供給源に接続させ、そのゲート端子をノード322でバイアス電圧に接続させて構成することが好ましい。負電圧供給源とノード316での基準電圧供給源の間に接続された直列接続の抵抗器R2およびR3を備える単純な分圧器回路により、バイアス電圧を確立することができる。当然のことながら、代替バイアス回路構成も同様に本発明によって企図されている。
【0018】
ノード316でバイアス発生器308に提示される基準電圧を使用してノード320でバイアス発生器308からの出力電圧VBIASを望むように制御することができる。この基準電圧を、ほぼ一定の基準電圧源VREFから供給することが好ましい。基準電圧を外部電圧源として図示したが、その代わりにICデバイス304の内部で発生させることもできる。基準電圧内に存在し得る、所望のカットオフ周波数より高い周波数成分をほぼ取り除くために、基準電圧源VREFを、ノード316でバイアス発生器308に接続する前に1つまたは複数のLPFネットワークでフィルタにかけることができる。
【0019】
たとえば、基準電圧源VREFを、ノード338とICデバイス304へのノード324における入力部との間に接続された第1LPF回路、およびノード324とノード316の間に接続された第2LPF回路310を介してノード316でバイアス発生器に結合させることができる。第1LPF回路は、第1端部で負電圧供給源に接続され、第2端部でノード338での基準電圧源VREFの正端子に接続されたコンデンサC12、およびノード338とノード324の間に直列に接続されたインダクタL11を備える単純なインダクタンス・キャパシタンス(LC)フィルタとして構成することができる。同様に、第2LPF回路310は、ノード316と負電圧供給源の間に接続されたコンデンサC8、およびノード324とノード316の間に直列に接続されたインダクタL9を備える単純なLCフィルタとして構成することができる。当然のことながら、当業者なら分かるように、インダクタL11、L9を適当な抵抗で置き換えることにより、一方または両方のLPF回路を単純な抵抗−キャパシタンス(RC)回路として構成することもできる。
【0020】
ノード320でのバイアス発生器308からの出力電圧VBIASを、トランジスタM1のゲート端子に提示することが好ましい。この出力バイアス電圧をLPF回路314中を通過させることにより、バイアス電圧内に存在し得る、所望のカットオフ周波数より高い周波数成分をほぼ減衰させるように、この出力バイアス電圧にフィルタをかけることができる。LPF回路314の主な働きは、ノード328のトランジスタM1のゲート端子からノード320のバイアス発生器308を見て、動作周波数帯域(たとえば、RF)内で比較的高いインピーダンスを供給することである。このようにして、M1のゲート端子は高周波ではバイアス発生器308によってそれほど負荷をかけられないようになっている。
【0021】
このLPF回路314は、第1端部で負電圧供給源に接続され、第2端部でノード320におけるバイアス発生器の出力部に接続されたコンデンサC4、およびノード320とノード328のトランジスタM1のゲート端子の間に直列に接続されたインダクタL4を備える。上述したLPF回路310の場合と同様に、当業者なら分かるように、代わりに、インダクタL4を適当な抵抗で置き換えることにより、LPF回路314を簡単なRC回路として構成することもできる。
【0022】
さらに、ICデバイス304は、それと一体化した1つまたは複数のインピーダンス整合ネットワークを備えることができる。たとえば、例示的なICデバイス304は、ノード324でのICデバイスに対する入力部とノード328でのトランジスタM1のゲート端子の間に直列に接続された入力インピーダンス整合回路312を備えることが好ましい。さらに、このICデバイス304は、ノード332でのICデバイスに対する出力部とノード330でのトランジスタM1のドレイン端子の間に直列に接続された出力インピーダンス整合回路342を備えることができる。この入力インピーダンス整合回路312は、第1端部でノード324に接続され、第2端部でインダクタL2の第1端部に接続されたコンデンサC2を備えることが好ましい。さらに、入力インピーダンス整合回路312は、ノード326でのインダクタL2の第2端部とノード328でのM1のゲート端子の間に直列に接続された第2のインダクタL3を備える。コンデンサC3は、第1端部がノード326でインダクタL2とL3の接合部に接続され、第2端部が負電圧供給源と接続されている。当然のことながら、当業者なら分かるように、本発明の使用に適した代替インピーダンス整合回路構成も同様に企図されている。
【0023】
出力インピーダンス整合回路342は、第1端部がノード330でトランジスタM1のドレイン端子に結合され、第2端部がノード332でICデバイス304の出力部に結合された第1インダクタL5を備えることが好ましい。さらに、この出力インピーダンス整合回路342は、ノード330でのM1のドレイン端子と負電圧供給源の間に互いに直列に接続された第2インダクタL6およびコンデンサC5を備える。当然のことながら、本発明の使用に適した代替インピーダンス整合回路構成も使用することができる。
【0024】
上述のように、増幅回路300は、入力インピーダンス整合ネットワーク302および出力インピーダンス整合ネットワーク306を備えることができる。この入力インピーダンス整合ネットワークは、第1端部が増幅回路300の入力部RFINに接続され、第2端部がノード340でインダクタL10の第1端部に接続されている第1コンデンサC10を備えることができる。インダクタL10を、第2端部でノード324におけるICデバイス304の入力部に接続することが好ましい。さらに、入力インピーダンス整合ネットワーク302は、ノード340と負電圧供給源の間に接続された第2コンデンサC9を備える。この出力インピーダンス整合ネットワーク306は、入力インピーダンス整合ネットワーク302とほぼ同様な構成にすることができる。出力インピーダンス整合ネットワーク306は、第1端部が増幅回路300の出力部RFOUTに接続され、第2端部がノード334でインダクタL8の第1端部に接続された第1コンデンサC7を備えることができる。インダクタL8は、第2端部をノード332でICデバイス304の出力部に接続することが好ましい。さらに、出力インピーダンス整合ネットワーク306は、ノード334と負電圧供給源の間に接続された第2コンデンサC6を備える。本発明の好ましい実施形態では、入力インピーダンス整合ネットワーク302および出力インピーダンス整合ネットワーク306は、約2.14ギガヘルツの周波数で、それぞれ入力部RFIN、出力部RFOUTにおいて回路を約50オームに整合させる。
【0025】
ICデバイス304に使用されるインダクタの1つまたは複数のものは、一体化されたインダクタ(たとえば、スパイラル・インダクタなど)を含んでよい。当業者なら分かるように、代わりに、インダクタの1つまたは複数のものが、ボンド・ワイア・インダクタなどを含むこともできる。ICデバイス304に使用されるコンデンサの1つまたは複数のものは、それだけには限定されないが、MOSコンデンサ、金属酸化膜金属(MOM)コンデンサ、接合コンデンサなどを含むことができる。
【0026】
下表1には、図3に示した例示的な増幅回路300に使用することができる例示的な構成部品の値が提供されている。当然のことながら、本発明では、代替の構成部品の値および/または回路構成も使用できることが企図されている。
【表1】

【0027】
次に、ここで単なる例として図3を参照して例示的なICデバイス304の動作のより詳細な説明を行う。基準電圧VREFを、インダクタL11を介してノード324において、ICデバイス304の入力部に印加することが好ましい。この基準信号は、増幅回路300の入力部RFINに印加され、増幅されるRF信号と本質的に混合される。MOSパワー・トランジスタM1は、このRF信号を増幅し、増幅RF信号を発生し、この増幅RF信号は増幅回路300の出力部RFOUTに提供される。LPF回路310は、インダクタL9およびコンデンサC8を備え、ノード324においてICデバイス304の入力部に提示される信号のDC成分のみをほぼ抽出する。このDC基準信号は、ほぼVREFと等価であり、次いで、抵抗Rref、R2、R3、およびNMOSトランジスタM2、M3、M4を備えるバイアス発生器308に供給される。バイアス発生器308はゲート・バイアス電圧VBIASを発生し、このゲート・バイアス電圧VBIASはバイアス・デカップリング・ネットワークとして働くLPF回路314を介してパワーNMOSトランジスタM1のゲートに印加される。
【0028】
少なくともDCにおいては、トランジスタM1、M2のゲート・ソース電圧はほぼ同じになるので、抵抗Rref中、したがってトランジスタM2中を流れる電流Irefは、トランジスタM1に流入する電流Idqに比例する。バイアス発生器の基準電流Irefは、その両端間に約Vref−(VT2+VT3)に等しいほぼ一定の電圧を有する抵抗Rrefにより設定される。なお、式中VT2はトランジスタM2の閾値電圧、VT3はトランジスタM3の閾値電圧である。トランジスタM2、M3がほぼ同一寸法だと仮定すると、抵抗Rrefの両端間の電圧は、約Vref−2Vになり、式中VはトランジスタM2またはトランジスタM3の閾値電圧である。電流Irefは、パワー・トランジスタM1内にミラーリングするのに適した単位ゲート幅当たりの電流で基準トランジスタM2にバイアスをかける。
【0029】
基準トランジスタM2の周りに、負帰還ループが、トランジスタM2のゲート・バイアス電圧を動作可能に調節するソース・フォロア・トランジスタM3を伴って設定される。トランジスタM4は、このソース・フォロア・トランジスタM3の定電流負荷として働く。バイアス発生器308内のトランジスタM2、M3、M4は、幅をパワー・トランジスタM1に比べてかなり小さくすることができる。本発明の好ましい実施形態では、トランジスタM2は数百ミクロン(たとえば、約289ミクロン)の範囲のゲート幅、トランジスタM1は数十または数百ミリメートル(たとえば、約83ミリメートル)の範囲のゲート幅であり、したがってトランジスタM1とトランジスタM2のカレント・ミラー比約300対1をもたらす。トランジスタM3およびM4は、ゲート幅が約1.8ミリメートルの寸法であることが好ましい。パワー・トランジスタM1内に設定される静止バイアス電流は、約(W1/W2)×Irefである。式中W1はトランジスタM1のゲート幅、W2はトランジスタM2のゲート幅であり、2つのトランジスタM1、M2のゲート長が同一であると仮定している。
【0030】
抵抗Rrefの両端間の電圧が温度変動の間ほぼ一定だと仮定すると、基準電流Irefも温度でほぼ一定になる。したがって、バイアス発生器308内のトランジスタM2、M3の帰還構成の結果として、バイアス発生器は温度変動の間ほぼ一定の基準電流Irefを維持するために必要に応じてノード320でゲート電圧VBIASを動作可能に調節する。パワー・トランジスタM1内のミラー電流Idqも同様に、温度変動の間、有利なことにほぼ一定に留まる。
【0031】
バイアス発生器308とパワー・トランジスタM1の間の温度追跡の精度は、少なくとも部分的には、バイアス発生器308内のトランジスタM2、M3、M4とパワー・トランジスタM1の間の整合に依存している。したがって、トランジスタM1、M2、M3、M4は全て同一の特性であることが望ましい。バイアス発生器308をパワー・トランジスタM1と同じ半導体チップ上に作製することは必要条件ではないが、バイアス発生器308とパワー・トランジスタM1を互いに同じチップ上に作製する場合は、バイアス発生器308とパワー・トランジスタM1間の温度追跡は、有利に向上するであろう。さらに、トランジスタM2、M3、M4は、それらが全て同一チップ上に作製されているか否かによらず、トランジスタM1の接合温度の変動がトランジスタM2、M3、M4の対応する接合温度の変動に緊密に整合するように、トランジスタM2、M3、M4をパワー・トランジスタM1の近傍に設置することが好ましい。
【0032】
バイアス発生器308に印加される基準電圧Vrefが、このバイアス発生器内のトランジスタM2、M3、M4の閾値電圧の2倍よりいくらか高いと仮定すると、温度により閾値電圧が変動するにもかかわらず、基準電流Irefはほぼ一定に留まる。また、バイアス発生器308は、プロセス変動による閾値電圧の変動を許容する構成にすることも好ましい。すなわち、バイアス発生器308は、ICデバイス304内のプロセス変動を補償するようにトランジスタM1のゲート・バイアス電圧を有利に調節する。このようにして、パワー・トランジスタM1の動作静止点は、個々のICデバイス間でほぼ一定になる。
【0033】
図4は、図3に示した例示的なICデバイス304に対応する例示的なシミュレーション結果400を表すグラフである。このシミュレーション結果400は、トランジスタM1の閾値電圧(vt)のいくつかの変動の場合について、パワー・トランジスタM1の静止電流Idqとトランジスタの接合温度の関係を示している。たとえば、曲線402は、公称の閾値電圧より閾値電圧差で約0.2ボルト低い場合の、−20℃から100℃にわたる温度範囲でのシミュレートしたトランジスタM1の約789ミリアンペア(mA)から約799mAの電流変動の範囲を示している。同様に、曲線404は、公称の閾値電圧より閾値電圧差で約0.2ボルト高い場合の、−20℃から100℃にわたる温度範囲でのシミュレートしたトランジスタM1の約807.5mAから約817mAの電流変動の範囲を示している。全体的に見れば、閾値電圧が公称より約0.2ボルト低い値から公称より約0.2ボルト高い値まで変動すると、−20℃から100℃にわたる温度範囲で、トランジスタM1の静止電流Idqは約789mAから約817mAまで変動する、すなわち約3.5%の差で変動する。
【0034】
前記で説明したように、バイアス発生器308は、同一ICパッケージ中でパワー・トランジスタM1を一体化しているが、この2つの構成部品は、外部バイアス源を使用した従来の増幅回路構成以上の有利な性能向上をもたらすことができるようにするために同じ半導体チップ上に作製する必要はない。例示するためだけであるが、図5に離散的MOSパワー・トランジスタ・デバイス506およびトランジスタに結合したバイアス発生器508を備える例示的なICパッケージ500の上面図を示す。このパッケージ化されたICデバイスは、3端子デバイスとして示され、ドレイン・リード502およびゲート・リード504を備え、パワー・トランジスタ506のソース端子はICパッケージ(図示せず)の底部から利用できる。
【0035】
ここでは、本発明の例示的な実施形態を添付の図面を参照して説明してきたが、本発明はこのとおりの実施形態に限定されるものではなく、当業者によって、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく様々な他の変形および修正をそれに加え得ることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ化されたパワー・トランジスタ集積回路(IC)デバイスであって、
ゲート端子、ソース端子、およびドレイン端子を備え、前記ゲート端子が前記ICデバイスの第1のパッケージリードに動作可能に結合され、前記ドレイン端子が前記ICデバイスの第2のパッケージリードに動作可能に結合され、前記ソース端子が負電圧供給源に接続されるように適合された、金属酸化膜半導体(MOS)トランジスタ・デバイス、及び
ICデバイスの前記第1のパッケージリードに動作可能に結合された入力である電圧基準を有し、前記MOSデバイスの前記ゲート端子に動作可能に結合された出力を有し、ほぼ一定の動作静止点で前記MOSデバイスにバイアスをかけるバイアス出力を発生し、前記バイアス出力が前記MOSデバイスの接合温度の関数として変化するように構成された、バイアス発生器
を備え、
前記ICデバイスが前記第1のパッケージリードで入力無線周波数(RF)及び直流電流(DC)基準電源信号を受信するように構成され、前記バイアス発生器が該基準電源信号を受信してその関数として前記バイアス出力を生成するように適合され、
前記第1のパッケージリードがハイパスフィルタを介して前記MOSデバイスの前記ゲート端子に結合され、
前記第1のパッケージリードがローパスフィルタを介して前記バイアス発生器の前記入力に結合されている、ICデバイス。
【請求項2】
前記バイアス発生器が、前記MOSトランジスタ・デバイスに動作可能に結合され、前記MOSトランジスタ・デバイス中の静止電流のある割合にほぼ一致する基準電流を発生するカレント・ミラーを備え、前記バイアス発生器は、前記基準電流が前記MOSトランジスタ・デバイスの1つまたは複数の動作条件の変動に対してほぼ一定になるように、前記バイアス出力を調節するように構成された請求項1に記載のICデバイス。
【請求項3】
前記バイアス発生器が、前記MOSトランジスタ・デバイスに動作可能に結合された基準トランジスタを備え、前記基準トランジスタおよび前記MOSトランジスタ・デバイスがカレント・ミラー構成になされ、前記基準トランジスタ中の基準電流と前記MOSトランジスタ・デバイス中の静止電流の比がほぼ一定である、請求項1に記載のICデバイス。
【請求項4】
前記バイアス発生器が、前記基準トランジスタに動作可能に結合され、前記基準電流を発生するように構成された電流源をさらに備え、前記バイアス発生器が、ほぼ一定の基準電流を維持するために前記バイアス出力を変化させるように動作可能である、請求項3に記載のICデバイス。
【請求項5】
バイアス発生器が、
ゲート端子、ソース端子、ドレイン端子を備え、前記ゲート端子および前記ソース端子がそれぞれ前記MOSトランジスタ・デバイスのゲート端子およびソース端子に接続され、前記ドレイン端子がほぼ一定の電流源に接続されている第2トランジスタ、及び
ゲート端子、ソース端子、ドレイン端子を備え、前記ゲート端子が前記第2トランジスタの前記ドレイン端子に接続され、前記ソース端子が前記第2トランジスタの前記ゲート端子に接続され、前記ドレイン端子が正電圧供給源に接続された第3トランジスタであって、前記第2トランジスタおよびMOSトランジスタ・デバイスのゲート端子でバイアス出力を供給するように構成され、それによって前記MOSトランジスタ・デバイスの1つまたは複数の動作条件の変動に対して前記MOSトランジスタ・デバイス中でほぼ一定の静止電流を維持するように前記バイアス出力を調節する第3トランジスタ
を備えた請求項1に記載のICデバイス。
【請求項6】
前記ICデバイスの第1のパッケージリードと前記MOSトランジスタ・デバイスの前記ゲート端子の間に動作可能に結合された入力インピーダンス整合回路、
前記MOSトランジスタ・デバイスの前記ドレイン端子と前記ICデバイスの第2のパッケージリードの間に動作可能に結合された出力インピーダンス整合回路
の少なくとも一方をさらに備えた請求項1に記載のICデバイス。
【請求項7】
前記バイアス発生器と前記MOSトランジスタ・デバイスの前記ゲート端子の間に結合されたフィルタ回路であって、前記バイアス発生器によって発生され前記バイアス出力中に存在する可能性のある所望のカットオフ周波数より高い周波数成分をほぼ取り除くように構成され得るフィルタ回路をさらに備える請求項1に記載のICデバイス。
【請求項8】
前記バイアス発生器が、基準電圧または基準電流の少なくとも一方を受け取るための入力部を備え、前記基準電圧または前記基準電流の少なくとも一方に応答して前記MOSトランジスタ・デバイス中の静止電流を制御する、請求項2に記載のICデバイス。
【請求項9】
ほぼ一定の動作静止点を有する離散的MOSトランジスタ・デバイスを形成する方法であって、
前記トランジスタ・デバイスの接合温度を検出する工程、
動作静止点で前記トランジスタ・デバイスをバイアスするためにバイアス出力を発生する工程であって、該動作静止点はトランジスタ・デバイスに供給される直流(DC)基準信号の関数である、工程、及び
前記トランジスタ・デバイスの検出された接合温度の関数として、前記トランジスタ・デバイスの1つまたは複数の動作条件の変動に対して前記トランジスタ・デバイス中でほぼ一定の動作静止点を維持するように前記バイアス出力を変化させる工程
を備え、
前記トランジスタ・デバイスによって受信される前記DC基準信号及び入力無線周波数(RF)信号が該トランジスタ・デバイスの第1のパッケージリードに供給され、
前記第1のパッケージリードがハイパスフィルタを介して前記MOSトランジスタ・デバイスのゲート端子に結合され、
前記第1のパッケージリードがローパスフィルタを介して、前記バイアス出力を発生するバイアス発生器の入力に結合される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−9440(P2013−9440A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−223941(P2012−223941)
【出願日】平成24年10月9日(2012.10.9)
【分割の表示】特願2004−366956(P2004−366956)の分割
【原出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(500587067)アギア システムズ インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】