説明

バイオセンサー

【課題】 センサー面に発散光状態で光ビームを入射させることにより、発熱、光量バラツキを抑制できると共に、小さいセンサー面でも確実に測定可能な表面プラズモンセンサーを提供する。
【解決手段】 保持部材58(レール部58A)を、Y方向に所定量移動させる。これにより、測定領域E1、参照領域E2へ入射される光ビームM1、M2の入射角度範囲がθ1からθ2に変化する。例えば、入射角度範囲θ1を入射角度α1〜α2の範囲とすると、入射角度範囲θ2は、α3〜α4の範囲となり、測定領域E1、参照領域E2へ入射する光ビームM1、M2の入射角度範囲が変化する。暗線Uが検出されるまで保持部材58の移動は続けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センシング面へ光を入射させ、反射光の光量が減衰される暗線角度により、リガンドとアナライトとの相互作用を測定するバイオセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エバネッセント波を利用した測定装置の1つとして、表面プラズモンセンサーが知られている。金属中においては、自由電子が集団的に振動して、プラズマ波と呼ばれる粗密波が生じる。そして、金属表面に生じるこの粗密波を量子化したものは、表面プラズモンと呼ばれている。表面プラズモンセンサーは、この表画プラズモンが光波によって励起される現象を利用して、試料の特性を分析するものであり、種々のタイプのセンサーが提案されている。そして、それらの中で特に良く知られているものとして、Kretschmann配置と称される系を用いるものが挙げられる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記の系を用いる表面プラズモンセンサーは、基本的に、例えばプリズム、試料に接触させられる金属膜、光ビームを発生させると共にこの光ビームをプリズムに対して、プリズムと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系、上記界面で全反射した光ビームの強度を検出する光検出手段を備えている。
【0004】
上記構成の表面プラズモンセンサーにおいて、光ビームを金属膜に対して全反射角以上の特定入射角θSPで入射させると、該金属膜に接している試料中に電界分布をもつエバネッセント波が生じ、このエバネッセント波によって金属膜と試料との界面に表面プラズモンが励起される。エバネッセント光の波数ベクトルが表面プラズモンの波数と等しくて波数整合が成立しているとき、両者は共鳴状態となり、光のエネルギーが表面プラズモンに移行するので、誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射した光の強度が鋭く低下する。この光強度の低下が、一般に上記光検出手段により暗線として検出される。
【0005】
この光強度の低下が生じる全反射角以上の特定入射角θSP(以後全反射減衰角θSPと記載)より表面プラズモンの波数が解ると、試料の誘電率が求められる。すなわち表面プラズモンの波数をKSP、表面プラズモンの角周波数をω、cを真空中の光速、εmとεsをそれぞれ金属、試料の誘電率とすると、以下の関係がある。
【0006】
【数1】

【0007】
試料の誘電率εsが分かれば、所定の較正曲線等に基づいて試料の屈折率等が分かるので、結局、全反射減衰角θSPを知ることにより、試料の誘電率つまりは屈折率に関連する特性を求めることができる。
【0008】
ところで、プリズムと金属膜との界面に光ビームが種々の角度で入射する成分が含まれるように、比較的太い光ビームを上記界面に発散光状態で入射させることがある(例えば特許文献2、3参照)。この場合、種々の角度成分を有する収束光を入射させる場合と比較して、光量集中による発熱がない、光量のバラツキが少ない等といった利点を有する。しかしながら、測定対象となるセンサー面が小さい場合には、光ビームの入射角度範囲が狭くなり、試料の屈折率によっては、暗線が検出されず測定ができないということも生じうる。
【特許文献1】特開平6−167443号公報
【特許文献2】特表平7−502815号公報
【特許文献3】特開2000−356586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、センサー面に発散光状態で光ビームを入射させることにより、発熱、光量バラツキを抑制できると共に、小さいセンサー面でも確実に測定可能なバイオセンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様のバイオセンサーは、金属膜を備えたセンシング面へ全反射されるように光を入射させ、反射光の光量が減衰される暗線位置により、リガンドとアナライトとの相互作用を測定するバイオセンサーであって、前記センシング面の形成されたセンサーチップと、前記センシング面へ発散状態の光ビームを照射する発散光照射手段と、前記センシング面で反射された反射光を受光する受光手段と、前記受光手段で受光した反射光に基づいて前記暗線位置を検出する検出手段と、前記測定の前に、前記センシング面と前記発散光照射手段とを相対移動させて前記センシング面へ照射される前記光ビームの入射角度範囲を前記検出手段で前記暗線位置を検出可能な入射角度範囲に調整する入射角度範囲調整手段と、を備えている。
【0011】
本発明の第1の態様のバイオセンサーは、発散光照射手段でセンサーチップのセンシング面へ発散状態の光ビームを照射する。センシング面へは、種々の入射角度で光ビームが入射するが、センシング面が小さい場合には、光ビームの入射角度の範囲は狭いものとなり、暗線が検出されない場合も生じうる。
【0012】
そこで、本発明では、測定の前に入射角度範囲調整手段で、センシング面と発散光照射手段とを相対移動させて、センシング面へ照射される光ビームの入射角度範囲を検出手段で暗線位置を検出可能な入射角度範囲に調整する。
【0013】
このように入射角度範囲調整手段を備えることにより、発散状態の光ビームを用いて確実に測定することができる。
【0014】
なお、本願においてリガンドとは、生理活性のある高分子物質をいい、タンパク質、DNA、RNA、糖類などが例示されるがそれらに限られない。
【0015】
また、本願においてアナライトとは、リガンドと相互作用をするか否か試験される目的をもってリガンドに供給されるすべての化合物をいう。
【0016】
また、本発明のバイオセンサーは、全反射減衰を利用したものであるが、全反射減衰を利用した測定としては、表面プラズモン共鳴、漏洩モード検出を用いることができる。
【0017】
第1の態様のバイオセンサーは、前記センサーチップを保持しつつ移動可能とされた保持部材をさらに備え、前記入射角度範囲調整手段は、前記保持部材の移動により前記センシング面へ照射される前記発散光の入射角度範囲を調整すること、を特徴とすることができる。
【0018】
ここでの保持部材の移動は、光ビームの入射角が変化する方向への移動であればよく、上下方向への移動、回転移動、金属膜と同一平面上での平行移動などの移動とすることができる。
【0019】
上記構成によれば、センサーチップを保持する保持部材を移動させることにより、入射角度範囲を調整して、確実に測定を行うことができる。
【0020】
また、第1の態様のバイオセンサーは、前記入射角度範囲調整手段が、前記発散光照射手段を移動させることにより前記センシング面へ照射される前記発散光の入射角度範囲を調整すること、を特徴とすることもできる。
【0021】
ここでの発散光照射手段の移動は、光ビームの入射角が変化する方向への移動であればよく、上下方向への移動、回転移動、金属膜と同一平面上での平行移動などの移動とすることができる。
【0022】
上記構成によれば、発散光照射手段を移動させることにより、入射角度範囲を調整して、確実に測定を行うことができる。
【0023】
また、第1の態様のバイオセンサーは、前記入射角度範囲調整手段が、前記発散光照射手段から出射される発散状態の光ビームを偏向することにより前記センシング面へ照射される前記発散光の入射角度範囲を調整すること、を特徴とすることもできる。
【0024】
なお、光ビームの偏向は、例えば、可動式の偏向用ミラー等をセンシング面と発散光照射手段との間に配置することにより行うことができる。
【0025】
上記構成によれば、光ビームを偏向することにより、入射角度範囲を調整して、確実に測定を行うことができる。
【0026】
また、第1の態様のバイオセンサーは、前記センシング面と前記受光手段との間に配置され、前記暗線位置の変動範囲外の反射光を遮光するアパーチャをさらに備えたこと、を特徴とすることができる。
【0027】
上記アパーチャを備えることにより、測定に必要ない反射光が受光手段へ入射されるのが防止され、精度よく暗線を検出して測定することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は上記構成としたので、センサー面に発散光状態で光ビームを入射させることにより、発熱、光量バラツキを抑制できると共に、小さいセンサー面でも確実に測定をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0030】
本発明のバイオセンサーは、表面プラズモンセンサー10として構成されている。表面プラズモンセンサー10は、金属膜の表面に発生する表面プラズモン共鳴を利用して、リガンドDとアナライトAとの相互作用を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。
【0031】
図1に示すように、表面プラズモンセンサー10は、トレイ保持部12、搬送部14、容器載置台16、液体吸排部20、測定部56、光学測定部30、及び、制御部60を備えている。
【0032】
トレイ保持部12は、載置台12A、及び、ベルト12Bを含んで構成されている。載置台12Aは、矢印Y方向に架け渡されたベルト12Bに取り付けられており、ベルト12Bの回転により矢印Y方向に移動可能とされている。載置台12A上には、トレイTが2枚、位置決めして載置される。トレイTには、センサースティック40が8本収納されている。センサースティック40は、リガンドDの固定されるチップであり、詳細については後述する。載置台12Aの下には、センサースティック40を後述するスティック保持部材14Cの位置まで押し上げる、押上機構12Dが配置されている。
【0033】
センサースティック40は、図2及び図3に示すように、誘電体ブロック42、流路部材44、保持部材46、接着部材48、及び、蒸発防止部材49、で構成されている。
【0034】
誘電体ブロック42は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部42A、及び、プリズム部42Aの両端部にプリズム部42Aと一体的に形成された被保持部42Bを備えている。プリズム部42Aの互いに平行な2面の内の広い側の上面には、図4にも示すように金属膜50が形成されている。この金属膜50上に、表面プラズモンセンサー10で解析するリガンドDが固定される。誘電体ブロック42は、いわゆるプリズムとして機能し、表面プラズモンセンサー10での測定の際には、プリズム部42Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から金属膜50との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0035】
金属膜50の表面には、図4に示すように、リンカー層50Aが形成されている。リンカー層50Aは、リガンドDを金属膜50上に固定化するための層である。リンカー層50A上には、リガンドDが固定されアナライトAとリガンドDとの反応が生じる測定領域(E1)と、リガンドDが固定されず、前記測定領域E1の信号測定に際しての参照信号を得るための参照領域(E2)とが形成される。この参照領域E2は、上述したリンカー層50Aを製膜する際に形成される。形成方法としては、例えば、リンカー層50Aに対して表面処理を施して、リガンドDと結合する結合基を失活させる。これにより、リンカー層50Aの半分が測定領域E1となり、残りの半分が参照領域E2となる。このように、結合基を失活させるためには、上記、ブロッキングに用いたエタノールアミン−ヒドロクロライドを用いることができる。参照領域E2の別の構成方法としては、参照領域E2にカルボキシルメチルデキストランの代わりに、例えば、アルキルチオールを配するようにすれば、アルキル基を表面に配することが出来、アルキル基は、アミノカップリング法でリガンド結合させることは出来ないので、参照領域E2として使うことができる。
【0036】
図5にも示すように、液体流路45に露出されたリンカー層50Aの、参照領域E2以外の部分には、リガンドDが固定されている。参照領域E2にはリガンドDは固定されていない。参照領域E2、及び、参照領域E2よりも上流側に位置する測定領域E1には、各々光ビームL2、L1が入射される。参照領域E2は、リガンドDの固定された測定領域E1から得られるデータを補正するために設けられた領域である。
【0037】
プリズム部42Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材46と係合される係合凸部42Cが、下側の端辺に沿ってプリズム部42Aの上面と垂直な仮想面の延長上に構成される垂直凸部42Dが、各々7箇所に形成されている。また、誘電体ブロック42の下面の長手方向に沿った中央部には、係合溝42Eが形成されている。
【0038】
流路部材44は、誘電体ブロック42よりもわずかに狭幅の直方体状とされ、図3に示すように、誘電体ブロック42の金属膜50上に6個並べて配置されている。各々の流路部材44の下面には流路溝44Aが形成されており、上面に形成された供給口45A及び排出口45Bと連通されて、金属膜50との間に、液体流路45が構成される。したがって、1本のセンサースティック40には、独立した6個の液体流路45が構成される。流路部材44の側壁には、保持部材46の内側の図示しない凹部に圧入されて保持部材46との密着性を確保するための凸部44Bが形成されている。
【0039】
なお、液体流路45には、蛋白質を含む液体が供給されることが想定されるので、流路壁への蛋白質の固着を防止するため、流路部材44の材料としては、蛋白質に対する非特異吸着性を有しないことが好ましい。
【0040】
保持部材46は、長尺とされ、上面板46A及び2枚の側面板46Bで構成されている。側面板46Bには、誘電体ブロック42の係合凸部42Cと係合される係合孔46Cが形成されている。保持部材46は、6個の流路部材44を間に挟んで係合孔46Cと係合凸部42Cとが係合されて、誘電体ブロック42に取り付けられる。これにより、流路部材44は、誘電体ブロック42に取り付けられる。上面板46Aには、流路部材44の供給口45A及び排出口45Bと対向する位置に、流路部材44に向けて狭くなるテーパー状のピペット挿入孔46Dが形成されている。また、隣り合うピペット挿入孔46Dとピペット挿入孔46Dとの間には、位置決め用のボス46Eが形成されている。
【0041】
保持部材46の上面には、蒸発防止部材49が接着部材48を介して接着されている。接着部材48のピペット挿入孔46Dと対向する位置にはピペット挿入用の孔48Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔48Eが形成されている。また、蒸発防止部材49のピペット挿入孔46Dと対向する位置には十字状の切り込みであるスリット49Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔49Eが形成されている。ボス46Eを孔48E及び49Eに挿通させて、蒸発防止部材49を保持部材46の上面に接着することにより、蒸発防止部材49のスリット49Dと流路部材44の供給口45A及び排出口45Bとが対向するように構成される。ピペットチップCPの非挿入時には、スリット49D部分が供給口45Aを覆い、液体流路45に供給されている液体の蒸発が防止される。
【0042】
図1に示すように、表面プラズモンセンサー10の搬送部14は、上部ガイドレール14A、下部ガイドレール14B、及び、スティック保持部材14C、を含んで構成されている。上部ガイドレール14A及び下部ガイドレール74Bは、トレイ保持部12及び光学測定部30の上部で、矢印Y方向と直交する矢印X方向に水平に配置されている。上部ガイドレール14Aには、スティック保持部材14Cが取り付けられている。スティック保持部材14Cは、センサースティック40の両端部の被保持部42Bを保持可能とされていると共に、上部ガイドレール14Aに沿って移動可能とされている。スティック保持部材14Cに保持されたセンサースティック40の係合溝42Eと下部ガイドレール74Bとが係合され、スティック保持部材14Cが矢印X方向に移動することにより、センサースティック40が光学測定部30上の測定部56に搬送される。
【0043】
測定部56には、図6にも示すように、センサースティック40を保持する保持部材58が配置されている。保持部材58は、下部ガイドレール14Bの延長として構成されるレール部58A、及び、センサースティック40を上側から押さえる押さえ部材58Bを含んで構成されている。保持部材58は、図示しない駆動機構により、センサースティック40を保持した状態で、下部ガイドレール14Bと直交するY方向に移動可能とされている。また、押さえ部材58Bは、図示しない他の駆動機構によりZ方向にも移動可能とされている。
【0044】
図1に示すように、容器載置台16には、アナライト溶液プレート17、回収液ストック容器18、供給液ストック容器19が載置されている。アナライト溶液プレート17は、96に区画されており、各種のアナライト溶液をストック可能とされている。回収液ストック容器18は、回収容器18A〜18Eで構成されており、回収容器18A〜18Eには、後述するピペットチップCPを挿入可能な開口Kが形成されている。供給液ストック容器19は、複数のストック容器19A〜19Eで構成されており、回収容器と同様にピペットチップCPを挿入可能な開口Kが形成されている。
【0045】
液体吸排部20は、上部ガイドレール14A、及び、ガイドレール16Bよりも上方で、矢印Y方向に架け渡された横断レール22、及び、ヘッド24を含んで構成されている。横断レール22は、図示しない駆動機構により、矢印X方向移動可能とされている。また、ヘッド24は、横断レール22に取り付けられ、矢印Y方向に移動可能とされている。また、ヘッド24は、図示しない駆動機構により、鉛直方向(矢印Z方向)にも移動可能とされている。ヘッド24は、2本のピペット部24A、24Bを備え、ピペット部24A、24Bには、先端部にピペットチップCPが取り付けられる。
【0046】
なお、本実施形態においてはセンサースティック40への液体供給はピペットチップCPにより行われるが、ピペットチップの代わりに、一端が上記各溶液プレートに接続され、他端がセンサースティック40に接続可能とされたインジェクションチューブを設け、送液ポンプにより液体の供給を行ってもよい。
【0047】
光学測定部30は、図7に示すように、発散光照射手段として、光源31、コリメータレンズ32、分光部34、集光レンズ36を備えている。光源31は、LED、LDなどの発光素子で構成され発散光を出射する。コリメータレンズ32は、光源31から発散光状態で出射された光ビームLを平行光化する。分光部34は、平行光化された光ビームLを2本の光ビームL1、L2に分光する。集光レンズ36は、分光された光ビームL1、L2を各々集光する。集光レンズ36は、光ビームL1、L2が測定領域E1及び参照領域E2よりも手前で収束するように配置されており、測定領域E1及び参照領域E2へは、種々の入射角成分を含み、測定領域E1及び参照領域E2で全反射角以上の角度で反射する光ビームL1、L2が発散状態で入射される。このとき、光ビームL1、L2のM1、M2部分が測定領域E1及び参照領域E2へ照射されている。M1、M2部分の入射角度範囲をθ1とする。
【0048】
光学測定部30は、光ビームL1、L2が反射される側に、コリメータレンズ37、イメージセンサ38、信号処理部39、を備えている。コリメータレンズ37、イメージセンサ38、信号処理部39は、光ビームL1、L2毎に1セットずつ備えられている。コリメータレンズ37は、測定領域E1及び参照領域E2で全反射された光ビームL1、L2を平行光化する。イメージセンサ38は、平行光化された光ビームL1、L2を受光する。信号処理部39へは、イメージセンサ38で受光された光が光電変換されて出力され、信号処理部39では、入力された信号に基づいて、暗線Uが検出される。検出された暗線Uに対応する光ビームL1、L2の反射角度(暗線角度)に基づいて、アナライトとリガンドとの結合状態データが生成され、制御部60へ出力される。
【0049】
ここで、暗線とは、金属膜50で全反射された光ビームL1、L2の光強度が小さくなる部分をいい、アナライトとリガンドとの反応状態に応じて移動する。
【0050】
制御部60は、表面プラズモンセンサー10の全体を制御する機能を有し、図7に示すように、光源31、信号処理部39、及び、表面プラズモンセンサー10の図示しない駆動系と接続されている。制御部60は、図8示すように、バスBを介して互いに接続される、CPU60A、ROM60B、RAM60C、メモリ60D、及び、インターフェースI/F60E、を有し、各種の情報を表示する表示部62、各種の指示、情報を入力するための入力部64と接続されている。
【0051】
メモリ60Dには、表面プラズモンセンサー10を制御するための各種プログラムや、各種データが記録されている。
【0052】
次に、表面プラズモンセンサー10での、測定について説明する。
【0053】
表面プラズモンセンサー10の載置台12Aには、リガンドDが固定化され液体流路45に保存液Cが充填されたセンサースティック40入りのトレイがセットされている。また、アナライト溶液プレート17、供給液ストック容器19には、所定のアナライト溶液、供給液(バッファー液、解離液、洗浄液、など)がセットされている。
【0054】
まず、押上機構12Dにより、1つのセンサースティック40がスティック保持部材14Cの位置まで押し上げられ、スティック保持部材14Cにより保持される。そして、スティック保持部材14Cは、センサースティック40を保持したまま下部ガイドレール14Bに沿って移動して、センサースティック40を測定部56へ搬送する。測定部56へ搬送されたセンサースティック40は、レール部58A上に載置され、押さえ部材58Bにより上部から押圧されて保持される。
【0055】
入力部64から測定開始の指示が入力されると、制御部60では、図9に示す測定処理が実行される。
【0056】
まず、ステップS12で、光源31へ光ビームLの出射指示信号を出力する。これにより、光源31から光ビームLが出射される。出射された光ビームLは、コリメータレンズ32、分光部34、集光レンズ36を経て、液体流路45の測定領域E1、参照領域E2へ各々発散状態で入射される。また、ステップS14で、イメージセンサ38及び信号処理部39へ、作動指示信号を出力する。これにより、測定領域E1、参照領域E2で全反射されコリメータレンズ37を経た光ビームL1、L2は、イメージセンサ38で受光され、受光された光は、測定領域E1、参照領域E2毎に光電変換されて信号処理部39へ出力される。
【0057】
ステップS16で、入力された信号に基づいて、暗線Uが検出されているかどうかを判断する。ここで暗線Uが検出されているかどうかを判断するのは、測定領域E1、参照領域E2における屈折率、光ビームL1、L2の入射角度によっては、暗線Uを検出できない場合もあるからである。すなわち、図7に示すように、測定領域E1、参照領域E2へは、発散状態で光ビームL1、L2が入射されるので、収束させて入射する場合と比較して、入射される光ビームM1、M2の入射角度範囲θ1が狭くなる。例えば、図10にも示すように、集光レンズ36で集光される光ビームL1、L2の入射角度範囲はθ0であるのに対し、測定領域E1、参照領域E2へ入射される光ビームM1、M2の入射角度範囲θ1は、θ1<θ0となる。通常、測定領域E1、参照領域E2は、数mm以下の幅であるため、入射角度範囲θ1は狭くなり、アナライト溶液の屈折率変化等によって暗線Uが検出されない場合が生じうるのである。
【0058】
暗線Uが検出されていない場合には、ステップS18で、保持部材58(レール部58A及び押さえ部材58B)を、図10に示すようにY方向に所定量移動させる。これにより、測定領域E1、参照領域E2へ入射される光ビームM1、M2の入射角度範囲がθ1からθ2に変化する。例えば、入射角度範囲θ1を入射角度α1〜α2の範囲とすると、入射角度範囲θ2は、α3〜α4の範囲となり、測定領域E1、参照領域E2へ入射する光ビームM1、M2の入射角度範囲が変化する。そして、再びステップS16で、暗線Uが検出されているかどうかを判断する。ステップS18は、暗線Uが検出されるまで続けられる。
【0059】
暗線Uが検出されると、ステップS20でアナライト溶液YAの供給指示信号を出力する。これにより、ヘッド24で、液体流路45へアナライト溶液YAが供給される。アナライト溶液YAの供給は、アナライト溶液YAが吸引されているピペット部24A側のピペットチップCPAの先端を液体流路45の供給口45Aへ挿入し、ピペット部24B側のピペットチップCPBの先端を液体流路45の排出口45Bへ挿入して、ピペットチップCPAから液体流路45へアナライト溶液YAを注入すると共に、ピペットチップCPBで液体流路45から押し出される保存液を吸引することにより行う。これにより、リガンドDへアナライトAが供給され、リガンドDとアナライトAとが結合する。
【0060】
次に、ステップS22で、暗線Uに対応する光ビームL1、L2の反射角度(暗線角度D)を求める。そして、ステップS24で、暗線角度Dに基づいて、アナライトとリガンドとの結合状態を示す結合状態データを生成し、ステップS26で結合状態データを表示部62に表示する。ステップS28で、所定時間経過したかどうかを判断し、所定時間の経過後に、ステップS24へ戻って上記の処理を繰り返す。これにより、図11に示すように、時間経過に伴うアナライトAとリガンドDとの結合状態がグラフ化されて出力される。この測定処理は、測定処理終了信号を受けるまで継続される。
【0061】
本実施形態によれば、暗線Uが検出されるまで保持部材58を移動させて、光ビームL1、L2の測定領域E1、参照領域E2への入射角度範囲を調整するので、発散状態の光ビームを用いても確実に測定をすることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、保持部材58をY方向に移動させて入射角度範囲θを調整したが、図12に示すように、Z方向に移動させたり、図13に示すように、レール部58Aを回転中心としてR方向に回転させたりして、入射角度範囲θを調整してもよい。
【0063】
また、本実施形態では、保持部材58を移動させたが、発散光照射手段としての、光源31、コリメータレンズ32、分光部34、集光レンズ36を、Y方向、Z方向に移動さたり、R方向に回転させたりして、入射角度範囲θを調整してもよい。
【0064】
さらに、集光レンズ36と誘電体ブロック42との間にミラーを配置して、光ビームL1、L2を偏向することにより、入射角度範囲θを調整してもよい。
【0065】
また、図14に示すように、コリメータレンズ37とイメージセンサ38の間にアパーチャ33を配置して、光ビームM1、M2の外側の光ビームを遮光するようにしてもよい。アパーチャ33を備えることにより、測定に必要ない反射光がイメージセンサ38へ入射されるのが防止され、精度よく暗線Uを検出して測定することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、バイオセンサーとて表面プラズモンセンサーを例に説明したが、本発明のバイオセンサーは、全反射減衰を利用する他のバイオセンサー、例えば、漏洩モードセンサーとしても構成することもできる。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を透過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において、導波モードが励起されると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。導波モードが励起される入射角は、表面プラズモン共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射光の減衰を検出することにより、前記センサ面上の反応を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施形態の表面プラズモンセンサーの全体斜視図である。
【図2】本実施形態のセンサースティックの斜視図である。
【図3】本実施形態のセンサースティックの分解斜視図である。
【図4】本実施形態のセンサースティックの1の液体流路部分の断面図である。
【図5】本実施形態のセンサースティックの測定領域及び参照領域へ光ビームが入射している状態を示す図である。
【図6】本実施形態のセンサースティックが保持部材で保持されている状態を示す図である。
【図7】本実施形態の表面プラズモンセンサーの光学測定部付近の概略図である。
【図8】本実施形態の制御部とその周辺の概略ブロック図である。
【図9】本実施形態の測定処理のフローチャートである。
【図10】センサースティックの移動に伴う入射角度範囲の変化を説明する図である。
【図11】本実施形態での測定結果の一例を示すグラフである。
【図12】センサースティックの他の方向の移動に伴う入射角度範囲の変化を説明する図である。
【図13】センサースティックの回転移動に伴う入射角度範囲の変化を説明する図である。
【図14】本実施形態の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
10 表面プラズモンセンサー
30 光学測定部
31 光源
32 コリメータレンズ
33 アパーチャ
34 分光部
36 集光レンズ
37 コリメータレンズ
38 イメージセンサ
39 信号処理部
40 センサースティック
42 誘電体ブロック
50 金属膜
58A レール部
58B 部材
58 保持部材
60 制御部
E1 測定領域
E2 参照領域
L1、L2 光ビーム
M1、M2 光ビーム
U 暗線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属膜を備えたセンシング面へ全反射されるように光を入射させ、反射光の光量が減衰される暗線位置により、リガンドとアナライトとの相互作用を測定するバイオセンサーであって、
前記センシング面の形成されたセンサーチップと、
前記センシング面へ発散状態の光ビームを照射する発散光照射手段と、
前記センシング面で反射された反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段で受光した反射光に基づいて前記暗線位置を検出する検出手段と、
前記測定の前に、前記センシング面と前記発散光照射手段とを相対移動させて前記センシング面へ照射される前記光ビームの入射角度範囲を前記検出手段で前記暗線位置を検出可能な入射角度範囲に調整する入射角度範囲調整手段と、
を備えた、バイオセンサー。
【請求項2】
前記センサーチップを保持しつつ移動可能とされた保持部材をさらに備え、
前記入射角度範囲調整手段は、前記保持部材の移動により前記センシング面へ照射される前記発散光の入射角度範囲を調整すること、を特徴とする請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項3】
前記入射角度範囲調整手段は、前記発散光照射手段を移動させることにより前記センシング面へ照射される前記発散光の入射角度範囲を調整すること、を特徴とする請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項4】
前記入射角度範囲調整手段は、前記発散光照射手段から出射される発散状態の光ビームを偏向することにより前記センシング面へ照射される前記発散光の入射角度範囲を調整すること、を特徴とする請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項5】
前記センシング面と前記受光手段との間に配置され、前記暗線位置の変動範囲外の反射光を遮光するアパーチャをさらに備えたこと、を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のバイオセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−3488(P2007−3488A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187200(P2005−187200)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】