説明

バイオミメティック化合物およびその合成方法

所望の表面活性効果を有するジヒドロキシフェニル誘導体(DHPD)、またはDHPp、すなわちDHPDで改変されたポリマーを含むポリマー化合物を得るための合成方法を説明する。DHPpのポリマー骨格は、DHPpの物理的特性を制御するように調節して様々な用途、すなわち組織接着剤または封止剤、付着促進コーティング物および防汚コーティング剤のために有用にすることができる構造または性能の特徴を有する。一態様では、本発明は、1)DHPpの約1〜約100重量%、好ましくはDHPp約1〜75重量%を占める、濃度、分布または数が可変のDHPD部分、2)1,000〜5,000,000Daの総分子量、および3)可変の物理的特性を有するpBを有するDHPD改変ポリマー(DHPp)を形成させるための、ほぼ懸垂型のジヒドロキシフェニル誘導体(DHPD)を結合したポリマー骨格(pB)を含むポリマーまたはコポリマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2006年8月4日に出願された米国仮特許出願第60/821,459号の利益および優先権を主張し、この出願の全体は、本明細書に参考として援用される。上記出願第60/821,459号中で参考として援用される関連文献もまた本明細書に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
海産イガイは、湿っていて、乱流状態の塩分を含んだ環境で岩、杭、船殻のような様々な表面にしっかりとへばり付くその能力で知られている[1、2]。こうした海洋生物は、それが水面下で急速に硬化して粘着性プラークを形成する粘着性タンパク質を液体として分泌し、その生物自体が様々な表面に付着するようにする。イガイの粘着性タンパク質(MAP)の耐水性のある付着特性は、界面接着と急速な硬化の両方にも関与する3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)の存在によるものと考えられている[3〜5]。
【0003】
海産イガイが分泌する粘着性タンパク質を模倣した化合物を得ようとする多くの試みがなされてきた。これらの方法には、天然MAPの抽出[6〜8]、粘着性タンパク質を得るための組み換えDNA技術の使用[9〜11]、および固相法と溶液相法の両方を用いたDOPA含有ペプチドの合成[12〜15]が含まれる。これらのMAP模倣付着物質は様々な表面への強い付着性を示すが[12、16〜19]、その付着配合物ではペプチド骨格が使用される。これは大量生産するのには高価であり、物理的特性も限られている。Messersmithおよびその同僚[非特許文献1〜4]は最近、耐水性のある強い付着性を示す一連のDOPA改変合成ポリマーゲルを開発している。その同じ研究グループは、MAP模倣ペプチド防汚性合成高分子と化学的に結合させることによって、タンパク質および細胞吸着を防ぐことができるコーティング物も作製している[24〜28]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Lee, B.P., et al., Synthesis of 3,4-Dihydroxyphenylalanine (DOPA) Containing Monomers and Their Copolymerization with PEG-Diacrylate to from Hydrogels. Journal of Biomaterials Science, Polymer Edition, 2004. 15: p. 449-464.
【非特許文献2】Lee, B.P., J.L. Dalsin, and P.B. Messersmith, Synthesis and Gelation of DOPA-Modified Poly(ethylene glycol) Hydrogels. Biomacromolecules, 2002. 3(5): p. 1038-47.
【非特許文献3】Lee, B.P., et al., Rapid Photocurable of Amphiphilic Block Copolymers Hydrogels with High DOPA Contents. Maclomolecules, 2006. 39: p. 1740-48.
【非特許文献4】Huang, K., et al., Synthesis and Characterization of Self-Assembling Block Copolymers Containing Bioadhesive End Groups. Biomacromolecules, 2002. 3(2): p. 397-406.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
合成高分子をDOPAおよびそのジヒドロキシフェニル誘導体(DHPD)と結合してDHPD改変付着性ポリマー(DHPp)を形成させるアプローチは、臨床用、歯科用および工業用の領域で多くの応用分野を有している。DHPpの概略構造を図1に示す。DHPDは、強力な耐水性の付着、ならびに付着性ポリマーの急速かつ制御可能な分子間硬化を付与することができる。様々な合成高分子を用いて、これらに限定されないが、生体適合性、溶解性、生分解性、自己集合能、化学構造、刺激応答能、分岐および分子量などの他の物理的特性を制御することができる。したがって、その化合物のポリマー部分を変えることによって、これらの分子を特定の用途に仕立てることができる。具体的には、本明細書で述べる付着性ポリマーは、2つの異種表面間の接着を促進するように設計することができるだけでなく、これを、望ましくない粒子(すなわち、細胞、タンパク質、細菌等)の付着を防止するように設計することもできる。さらに、合成用に安価な出発原料が用いられ、そのため、得られる付着性ポリマーを安価に、かつ商業化のために大量に製造することができる。さらに、既知の生体適合性出発原料を用いてこれらのポリマーを配合することができる。そのことはこれらのポリマーを臨床用途に適したものにしている。
【0006】
本明細書では、マルチDHPDで改変した付着性ポリマーを作製するための新規なアプローチを説明する。様々な方法を用いて、付着性部分のDHPDを様々な生体適合性の合成化合物と組み合わせて所望の用途のために設計できる付着性ポリマーのライブラリーを生み出した。これらのマルチDHPDポリマーについて、組織付着物質、付着を促進するためのコーティング物、および付着を防止するためのコーティング物としてのその可能性を試験した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の簡単な要旨
簡単に述べると、一態様では、本発明は、1)DHPpの約1〜約100重量%、好ましくはDHPp約1〜75重量%を占める、濃度、分布または数が可変のDHPD部分、2)1,000〜5,000,000Daの総分子量、および3)可変の物理的特性を有するpBを有するDHPD改変ポリマー(DHPp)を形成させるための、ほぼ懸垂型のジヒドロキシフェニル誘導体(DHPD)を結合したポリマー骨格(pB)を含むポリマーまたはコポリマーである。
【0008】
本発明のこの態様の好ましい実施形態では、DHPDは好ましくはDHPpの約2〜約65重量%、より好ましくはDHPpの約3〜約55重量%、さらに好ましくは少なくともDHPpの約5重量%を構成する。
【0009】
本発明のこの態様の他の好ましい実施形態では、DHPpは好ましくは約3,000〜約1,000,000、最も好ましくは約5,000〜約500,000Daの範囲の総分子量を有する。
【0010】
より具体的には、本発明は、概ね構造(I)のDHPp
【0011】
【化1】

(式中、LGは任意の連結基であり、pBはポリマー骨格を示す)
を提供する懸垂型のDHPDを有するpBを含む。
【0012】
DHPpにおいて、DHPDは、1)水性、湿潤性または非水性環境下で、有機と無機両方の異種基体、表面、化合物または粒子と結合するかあるいは付着する能力、および2)他のDHPD、他の官能基(すなわち、アミン、チオール、ヒドロキシルまたはカルボキシル基)または他の反応基のいずれかと、不可逆的(共有結合)または可逆的(水素結合、電子π−π相互作用)化学架橋を形成する能力を付与する。
【0013】
さらに、所望の用途のために、ポリマー骨格の組成物および化学構造を変えて、1)DHPD重量%、2)DHPpの分子量、および3)DHPp(とりわけ、溶解性、親水性−疎水性、物理的架橋能、自己集合能、構造、電荷、分解性)の物理的特性を制御することができる。
【0014】
他の態様では、本発明は、DHPpの分子量に関して、制御可能であり、かつその数、濃度または分布が変更可能な懸垂型DHPDを有するpBを含むポリマーまたはコポリマーである。他の変更形態では、pBは構造式(II)に示すような、
【0015】
【化2】

可変の化学的組成を有するか、またはDHPD懸垂型の部分に沿って、かつその部分間(およびpB中)に分布した懸垂型の基または部分を含む、より小さな分子量のモノマー、プレポリマーまたはオリゴマーで構成される。
【0016】
上記のRは、結合するかまたは重合してpBを形成するモノマー、プレポリマーまたはオリゴマーである。ポリマー骨格は、「インライン」すなわち骨格結合Rによって設計されるかまたはそれによって骨格中に導入される構造的もしくは性能的特性または特徴を有する。式(I)の右側の枠内に示したポリマーの特徴のすべてを制御または改変するように、インラインすなわち骨格の結合または結合基を導入することができる。そうした骨格結合の例には、これらに限定されないが、アミド、エステル、ウレタン、尿素、カーボネートもしくは炭素−炭素結合またはその組合せが含まれる。
【0017】
一般に、DHPDは構造式(III)で示すことができる。
【0018】
【化3】

但し、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、水素、飽和および不飽和、分鎖および非分鎖、置換および非置換のC1〜4炭化水素からなる群から独立に選択され;
は個別にかつ独立に、−NH、−COOH、−OH、−SH、
【0019】
【化4】

(式中、RおよびRは上記定義通りである)
単結合、ハロゲン、
【0020】
【化5】

(式中、AおよびAは個別にかつ独立にH、単結合からなる群から選択される)
保護基、
実質的にポリ(アルキレンオキサイド)、
【0021】
【化6】

[n=1〜3であり、

【0022】
【化7】

{式中、RはC1〜6低級アルキルまたは
【0023】
【化8】

(式中、Rは上記RまたはRと同じ定義であり、Dは式(III)に示されている)}]
からなる群から選択される。
【0024】
一態様では、上記ポリ(アルキレンオキサイド)は以下の構造を有する。
【0025】
【化9】

但し、RおよびRは個別にかつ独立に−Hまたは−CHであり、mは1〜250の範囲の値を有し、Aは−NH、−COOH、−OH、−SH、−Hまたは保護基である。
【0026】
非常に好ましい形態では、DHPDは、
【0027】
【化10】

である。但し、R、RおよびPは上記定義通りである。
【0028】
さらに好ましい形態では、DHPDは以下の構造のものである。
【0029】
【化11】

但し、Aは−OHであり、Aは実質的にポリ(アルキレンオキサイド)の構造、
【0030】
【化12】

(式中、R、Rおよびmは上記定義通りである)
のものである。一般的には、ポリ(アルキレンオキサイド)はエチレンオキサイドとプロピレオキサイドのブロックコポリマーである。
【0031】
本発明の方法は、以下の構造のDHPD
【0032】
【化13】

(式中、RおよびRは上記定義通りである)
を提供するステップと、上記構造のDHPDを、接着させようとする基体の一方もしくは他方またはその両方に塗布するステップと、接着させようとする基体を、上記構造のDHPDをその間にして、接触させて基体同士を互いに接着させるステップと、任意で、基体を分離しその基体を、上記構造のDHPDをその間にして再接触させることによってお互いに対して基体を再配置するステップとを含む、基体同士を互いに接着させることを含む。
【0033】
好ましい方法では、RおよびRは水素である。
【0034】
さらに好ましい形態では、DHPDは、
【0035】
【化14】

(式中、P、RおよびRは上記定義通りであり、nは1〜約5の範囲である)
である。一実施形態では、RおよびRは水素であり、P自体はジヒドロキシフェニルである。本発明の実施形態でより好ましいDHPDは3,4,ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)(一般に)
【0036】
【化15】

(式中、AおよびAは上記定義通りである)
である。
【0037】
本発明のさらに他の態様では、DHPDは以下の一般化学構造式(IV)を有する。
【0038】
【化16】

但し、LGはDHPDをpBと結合させる連結基であり、以下でさらに定義され、Rは−H、保護基または金属イオンであり、各R構造は、別個にかつ独立に示した基から選択され、Rは−SH、−NH、−COOH、アルキル、LG、ハロゲンまたはその組合せから選択される他の構成要素であり、各R構造は、別個にかつ独立に示した基から選択される。
【0039】
qは0〜5の値であるが、好ましくは2である。
【0040】
LGは、実質的にポリ(アルキレンオキサイド)、アクリレート、メタクリレート、ビニル基およびその誘導体、または化学構造式(V)
【0041】
【化17】

{式中、RおよびRは上記定義通りであり、xは0〜4の範囲の値であり、
は、─NH、─COOH、─OH、─SH、単結合、ハロゲン、
─NH─A─、
(Aは−H、−C、単結合、保護基、概ねアルキル、ポリ(アルキレンオキサイド)、ペプチド性のもの、アクリレート化されたもの、メタクリレート化されたもの、またはAおよびAと同じものからなる群から選択される)
【0042】
【化18】

(式中、Aの定義に加え、Aは−OH、−NH−からなる群から選択される)
【0043】
【化19】

(式中、AおよびAは上記定義通りである)
からなる群から選択される}
を有するもののオリゴマーから選択される。
【0044】
DHPDの好ましい1つの化学構造は以下のものである。
【0045】
【化20】

(式中、LGは上記定義通りである)。
【0046】
さらに好ましい形態のDHPDは、以下のものである。
【0047】
【化21】

(式中、LGは上記定義通りである)。
【0048】
DHPDは、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)、ドーパミンまたは3,4−ジヒドロキシヒドロ桂皮酸(DOHA)、ならびに前記化合物の前駆体および前記化合物からさらに誘導化されたものから選択されることがより好ましい。前駆体の例には、これらに限定されないが、チロシン、チラミン、ヒドロ桂皮酸、フェニルアラニン、ベンゼンプロパン酸、ベンジルエタミン、2,4,5−トリヒドロキシフェニルアラニン、およびヒドロキシル化するかまたは脱ヒドロキシル化してDHPDを形成することができる他のフェノールまたはベンジル化合物が含まれる。DHPDのさらに誘導化された形態の例には、保護基を有するDHPD、ヒドロキシル基上で金属イオン結合したDHPD、アクリレート、メタクリレート、実質的にポリ(アルキレンオキサイド)、ペプチドで改変されたDHPD、またはDHPDおよびその前駆体を含むオリゴマーならびにその組合せが含まれる。
【0049】
pBの組成および物理的特性は、前記pBを構成するのに用いられるモノマーまたはプレポリマーの物理的特性、比、組成または組合せによって変わる。
【0050】
pBは、単一もしくは二種以上のモノマーまたはプレポリマーの重合、鎖延長、結合、架橋または反応によって構築される。
【0051】
pBは、直鎖、分鎖、超分鎖またはブラシ構造(brush architecture)を有するpBを具現化するために、a)直鎖または分鎖、b)単官能性、二官能性、三官能性または多官能性であることが好ましい。
【0052】
pBは、所望の溶解性、剛性、物理的架橋能または自己集合の特性を具現化するために、親水性、疎水性または両親媒性であることが好ましい。
【0053】
pBは、中性pB、荷電pBまたは両性イオンpBを具現化するために、中性か、正もしくは負に荷電するかまたはその組合せであることが好ましい。
【0054】
pBは、とりわけ、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネートまたはポリアクレートおよびその組合せであることが好ましい。
【0055】
pBは、異なる結合で構成することができるが、所望の分解速度または化学的安定性を具現化するために、アクリレート、炭素−炭素、エーテル、アミド、尿素、ウレタン、エステルもしくはカーボネート結合またはその組合せを含むことが好ましい。
【0056】
所望の物理的特性のpBは、予め加工した官能基化ポリマーすなわちFP、DHPDで改変してDHPpを形成することができる官能基(すなわち、アミン、ヒドロキシル、チオール、カルボキシル、ビニル基等)を含むpBから選択することができる。
【0057】
モノマーまたはプレポリマーを結合してpBを形成させる実際的な方法によって、アミド、エステル、ウレタン、尿素、カーボネートもしくは炭素−炭素結合またはこれらの結合の組合せが生成され、そのpBの安定性はこれらの結合の安定性の影響を受ける。
【0058】
モノマーまたはプレポリマーの分子量は約50〜20,000Daの範囲であってよいが、約60〜10,000Daの範囲であることが好ましい。
【0059】
モノマーまたはプレポリマーは、単一化合物、または単一ブロック、ジブロック、トリブロックもしくは多ブロック構造の繰り返しモノマー単位であることが好ましい。
【0060】
モノマーまたはプレポリマーは、単一かまたは複数の化学組成物からなることが好ましい。
【0061】
モノマーまたはプレポリマー、直鎖、分鎖、超分鎖またはブラシ構造を有するpBを具現化するために、a)直鎖または分鎖、b)単官能性、二官能性、三官能性または多官能性であることが好ましい。
【0062】
モノマーまたはプレポリマーは、とりわけ、アミン、ヒドロキシル、チオール、カルボキシルおよびビニル基などの反応性もしくは重合性の官能基を有する単官能性、二官能性または多官能性であることが好ましい。
【0063】
モノマーまたはプレポリマーは、所望のpB溶解性、物理的架橋能または自己集合能を具現化するために、親水性、疎水性または両親媒性であることが好ましい。
【0064】
モノマーまたはプレポリマー、中性pB、荷電pBまたは両性イオンpBを具現化するために、中性か、正もしくは負に荷電するかまたはその組合せであることが好ましい。
【0065】
モノマーまたはプレポリマーは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクレート、ポリアルキル、多糖およびその誘導体または前駆体ならびにその組合せであることが好ましい。
【0066】
本明細書で用いる「DHPD」という用語は、ジヒドロキシフェニル誘導体を意味する。
【0067】
本明細書で用いる「DHPp」という用語は、DHPDで改変されたpBを意味する。
【0068】
本明細書で用いる「モノマー」という用語は、重合してpBを形成することができる非繰り返し化合物または化学薬品を意味する。
【0069】
本明細書で用いる「プレポリマー」という用語は、重合またはポリマー鎖延長によりpBを形成することができるオリゴマー化合物を意味する。プレポリマーの分子量はpBの分子量よりずっと小さく、pBの分子量の10%以下のオーダーである。
【0070】
モノマーおよびプレポリマーは、一緒に重合してpBを形成させることができ、そうすることがしばしばである。
【0071】
本明細書で用いる「pB」という用語は、pBモノマー、pBプレポリマーまたはpBモノマーおよび/またはプレポリマーの混合物の重合によって得られるポリマー、コポリマー、ターポリマー、オリゴマーもしくはマルチマー(multi−mer)を含むポリマー骨格を意味する。ポリマー骨格は好ましくはホモポリマーであるが、最も好ましくはコポリマーである。ポリマー骨格はDHPDを除くDHPpである。
【0072】
本明細書で用いる「FP」という用語は、DHPDと反応してDHPpを形成させるために用いることができる、アミン、チオール、カルボキシ、ヒドロキシルまたはビニル基で官能基化されたポリマー骨格を意味する。
【0073】
本明細書で用いる「DHPD重量%」という用語は、DHPp中でのDHPDの重量割合を意味する。
【0074】
本明細書で用いる「DHPp分子量」という用語は、ポリマー骨格と、前記ポリマー骨格と結合したDHPDの分子量との合計を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】DHPpの概略構造図である。
【図2】概略合成スキーム1−重合性DHPDが重合性コモノマーと共重合してDHPpを生成する図である。Pはビニル、アクリレートまたはメタクリレート基などの重合性基である。
【図3】概略合成スキーム2−二官能性プレポリマーと多官能性鎖延長剤とのポリマー鎖延長反応により官能基化ポリマーを生成し、続くDHPDとの結合によりDHPpを生成する図である。x、yおよびZは官能基(−NH、−OH、−SH、−COOH等)であり、但し、xはyとだけ反応し、Zは残ってDHPDと反応する。
【図4】概略合成スキーム3−DHPDを、市販されているかまたは予め加工された官能基化ポリマーと反応させてDHPpを生成する図である。ZはDHPDと反応できる−NH、−OH、−SH、−COOH等の官能基である。
【図5】DMA1をコモノマーと重合してDHPpを生成する図である。R10=コモノマー側鎖であり、R12=−Hまたは−CHである。
【図6】重合性ビニル基で改変したDHPの例を示す図である。
【図7】連鎖移動剤としてシステアミンを用いたアミン末端ポリマーの合成を示す図である。R10=コモノマー側鎖であり、R12=−Hまたは−CHである。
【図8】PEG−dNPCをリシンと反応させ、続いてカルボジイミドケミストリーによってドーパミンを付加することによるPEU−1の合成を示す図である。
【図9】PEG−ジオールとCbz−Asp Anhを溶融重縮合し、Cbzを脱保護し、続いてカルボジイミドケミストリーによってBoc−DOPAを付加することによるPEE−1の合成を示す図である。
【図10】PEG−ジオールを塩化フマリルと反応させ、−COOHで官能基化し、続いてカルボジイミドケミストリーによってドーパミンを付加することによるPEE−5の合成を示す図である。
【図11】PEG−ジオールおよびHMPAを塩化スクシニルと反応させ、続いてカルボジイミドケミストリーによってドーパミンを付加することによるPEE−9の合成を示す図である。
【図12】ポリマー鎖延長の前に、PEGプレポリマーをDHPで改変することによるPEA−1の合成を示す図である。
【図13】カルボジイミドケミストリーを用いてゼラチンを3,4−ジヒドロキシヒドロ桂皮酸と反応させることによるGEL−1の合成を示す図である。Rはゼラチンのアミノ酸側鎖を表す。
【図14】カルボジイミドケミストリーを用いて最初にゼラチン上に連鎖移動剤をグラフト化させ、続いてDMA1をフリーラジカル重合させることによるGEL−4の合成を示す図である。Rはゼラチンのアミノ酸側鎖を表す。
【図15】A)2つの生物学的組織表面間、およびB)組織と移植物表面の間でのカテコール含有構造の接着剤のその場での硬化および接着を示す図である。
【図16】接着コーティング剤(A)および防汚コーティング剤(B)としてのDHPpの塗布を示す図である。
【図17】破裂強度試験装置の概略図(A)と封止剤および基体の拡大図(B)である。
【図18】ラップせん断(lap shear)付着試験装置の概略図である。
【図19】PDMA−12でコーティングされたナノ構造付着物を示す図である。
【図20】Si片持ち梁を用いたナノスケール付着物上でのAFM力測定を示す図である。(A)空気中または水中における、単一の対照PDMS表面、またはPDMA−12コーティングした表面から引き離すのに要する力。(B)空気中および水中における、PDMA−12コーティングした表面の反復付着接触。
【図21】細菌付着および生物膜形成をアッセイするための改良型Robbins装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
表の参照
以下の節で考察するのは表1A〜1D、2A〜2F、3A〜3D、4A〜4C、5〜11である。これらの表はグループとして文献の節にしたがう。
ポリマー合成
マルチDHPD付着性ポリマーの概略構造を図1に示す。このポリマーはポリマー骨格(pB)と結合したマルチプル懸垂型のDHPDからなる。DHPDは、耐水性の接着部分ならびに分子間架橋前駆体として作用するように組み込まれている。DOPA含量が多くなると、接着強度がより強くなるという相関性が実証されているので[12、22]、DHPp中のDHPDの数を、ポリマーの付着特性を制御するために用いることができる。DHPDが多くなると、これらの付着性ポリマーの硬化速度を増大させることもできる。
【0077】
ポリマー骨格を用いて、これらのマルチDHPDポリマーにおける様々な物理的特性を制御することができる。水溶性DHPpを得るために、ポリ(エチレングリコール)(PEG)などの親水性および水溶性のポリマー骨格を用いることができる。さらに、PEGは非常に良好な生体適合性プロファイルを有しており、臨床用途に認可された多くの製品で使用されている。疎水性部分を組み込んでポリマー骨格の剛性を増大させることができ、それによって、水性媒体でのこれらの疎水性領域の凝集、ならびに化学的に硬化したDHPpの機械的強度の増大をもたらすことができる。異なる種類の化学結合を用いて、ポリマー骨格の安定性および分解速度を制御することができる。これらの結合は安定した炭素−炭素、エーテル、尿素およびアミド結合から、簡単に加水分解されるウレタン、エステルおよびカーボネート結合まで様々であってよい。最後に、分鎖ポリマー骨格を用いてDHPpの硬化速度を増大させることができる。
【0078】
マルチDHPD付着性ポリマーを得るために、3つの一般的なタイプの合成方法を用いた。第1の方法(図2)では、重合性基(すなわち、ビニル、アクリレート、メタクリレート)を含有するDHPDを、1種または複数のコモノマーと共重合してDHPpを生成させる。第2の方法(図3)では、二官能性プレポリマーと多官能性鎖延長剤にポリマー鎖延長反応を施して懸垂型の官能基(すなわち、アミン、チオール、ヒドロキシル、カルボキシル等)を担持する官能基化ポリマー(FP)を生成させる。これを、DHPDでさらに改変してDHPpを生成することができる。最後に、予め作製したFPをDHPDと反応させてDHPpを生成する(図4)。3つのすべての合成方法において、出発原料(コモノマー、プレポリマー、FP)を選択して、ポリマー骨格および最終的なDHPpの物理的特性を制御することができる。
【0079】
合成方法1:DHPD重合
この節では、図5に示すように、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)などの重合開始剤を用いてDHPD改変アクリレートまたはメタクリレート(DMA)を1種または複数のコモノマーと共重合させて、一連のDHPpを生成させた。重合は、反応性DHPD側鎖の保護を行うことなく実施した。これによって、合成ステップ数が少なくなり、ポリマーをより高い収率で得ることができるようになる。フェノール化合物は、重合阻害物質であり、遊離基捕捉剤であることが知られているが[29〜31]、大気中の酸素を除去することによって、高分子量のDHPpを合成することができる。AIBN開始によるフリーラジカル重合をここで報告するが、原子移動ラジカル重合法(ATRP)や可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法などの他の重合技術を使用できる可能性がある。しかし、ATRPで用いられる金属触媒がDHPDを酸化する可能性があるので、重合の際にDHPD側鎖を保護しておく必要がある。
【0080】
可能な重合性DHPDの化学構造を図6に示す。これらの化合物は、重合性ビニル基と結合したカテコールからなる。DMA1は、ドーパミンをメタクリレート基と結合させて作製し、他方DMA2はそれをアクリレート基と結合させて作製した。この2つのDMA間の差は、アクリレート基に水素(−H)があるのに対して、メタクリレート基にはメチル(−CH)基があることにある。メチル基の存在は、ポリマー骨格の疎水性と剛性を増進させ、DHPpの溶解性を低下させる。DMA3は、短い親水性オリゴマーリンカー、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミンを用いて、3,4−ジヒドロキシヒドロ桂皮酸(DOHA)とメタクリレート基を連結することによって得られる。DMA3のこの短いリンカーは、末端DOHAに、界面結合のためのより優れたアクセスをもたせることになる。
【0081】
DMAと共重合させるモノマーのリストを表1A〜1Eに示す。これらのモノマーは、異なる分子量のPEGベースのモノマー(表1A)から、他の中性、親水性(表1B)、塩基性(表1C)酸性(表1D)、および疎水性(表1E)モノマーまでの範囲に及ぶ。DMAとの共重合に使用するモノマーの種類に応じて、広い範囲の物理的特性を有する付着性ポリマーを調製することができる(表2A〜2F)。PDMA−1〜PDMA−5などのPEGベースのポリマーは、水と、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミドおよびほとんどのアルコールなどの多くの有機溶媒の両方に溶解する(表2A)。ポリマーPDMA−6〜PDMA−10はすべて水溶性であるが、これらの化合物はPEGを含まない(表2B)。表2Cには、水に容易には溶解しない2つの親水性ポリマーを挙げる。PDMA−11は水膨潤性であるだけであり、PDMA−12は水不溶性である。さらに、NIPAMなどの温度応答性モノマーとの共重合によってPDMA−22が得られ、これは32℃未満の温度で水溶性であり、より高温で不溶性となる(表2F)。最後に、PDMA−13などの疎水性、フッ素化ポリマーも得られる(表2D)。ここで説明するモノマーのほとんどは市場で安価に入手することができるか、または大量に合成することができる。このため、付着性ポリマーのスケールアップが可能である。
【0082】
上記の二成分ポリマーに加えて、三成分ポリマーを、DMAを2つの他の種類のモノマーと共重合することによって得た(表2E)。ポリマーPDMA−14〜PDMA−17などの塩基性ポリマーでは、DHPpに正電荷を導入するためにAPTA、AAまたはDABMAなどの塩基性モノマーを用いたが(表1C)、これらの付着性ポリマーを水ならびに様々な有機溶媒に可溶性であるようにするために、第3の親水性モノマー(EG9MEまたはNAM)を使用した。他方、AMPSおよびEGMPなどの酸性モノマーを用いて、負電荷を有する酸性ポリマーも調製した(PDMA−18〜PDMA−21)(表1D)。ポリマー骨格でのこれらの電荷は、反対の電荷の表面への界面結合能を高めることができる。具体的には、PDMA−21は、MAPに見られるリン酸化セリンと類似したホスホン酸側鎖を含有しており[32]、この側鎖は、カルシウムまたは石灰質鉱物の表面とよく結合することが分かっている[33、34]。さらに、四級アンモニウム基で官能基化されたポリマーは、接触すると殺菌効果があることが分かっている[35、36]。PDMA−6を、DMA1と、1つの分子中に負電荷と正電荷の両方を含む両性イオンのSBMAから共重合させた。これらの両性イオン化合物は防汚特性[37、38]および防蝕効果[39]を有していることが分かっている。
【0083】
DMAとコモノマーの供給比やモノマーと重合開始剤のモル比などの反応条件を変えることによって、分子量ならびに得られるポリマーの組成を変えることが可能であった。表2A〜2Fに示すように、DMA:モノマー供給モル比を1:1〜1:25の範囲で変えた。これにより32重量%〜4重量%の範囲のDMA含量のDHPpが得られた。用途に応じて、DMAの量を変えることが望ましい。例えば、支持基体をコーティングし、かつ第2の基体への付着を促進するために十分なDMAが必要であるので、付着を促進するコーティングのためには高いDMA含量が必要である。他方、DMAが多すぎると好ましくない付着を促進する恐れがあるので、表面をコーティングするのに十分なだけの、過剰ではないDMAを有することが望ましい防汚コーティングでは、より低いDMA含量しか必要としない。さらに、モノマーと重合開始剤供給比を変えることによって、異なる分子量の付着性ポリマーが得られる。モノマーの合計量とAIBNのモル比を25:1〜250:1の範囲で変え、これによって5,000〜1,000,000g/モルを超える分子量を有するDHPD改変ポリマーが得られた。
【0084】
上記DHPpはDMAと1種または複数の他のモノマーの線状ランダムコポリマーである。これらの付着性分子の物理的特性をさらに制御するために化学構造に変更を加えることができる。例えば、ポリマー骨格における分岐によって硬化速度を低下させることができ[21]、分岐点は重合の際に少量(<1モル%)のジアクリレート化モノマーを用いて導入することができる。これらの大量の二官能性モノマーによってゲルネットワークの形成がもたらされる。分岐点に加えて、ATRPおよびRAFTなどのリビング重合法を用いてブロックコポリマーを得ることができる。最後に、図7に示すように、システアミン(CA)などの連鎖移動剤(CTA)を用いて末端アミン基を導入することができる。これは、他の活性化合物(すなわち、別のポリマー、配位子、蛍光タグ等)でさらに改変するために使用することができる。CTAとしてCAを用いて、表2Fに挙げたポリマー(PDMA−22、PDMA−23およびPDMA−24)を調製した。3−メルカプトプロピオン酸(MPA)および2−メルカプトエタノールなどの他のCTAを用いて、末端カルボキシルおよびヒドロキシル基をそれぞれ導入することができる。
合成方法2:ポリマー鎖延長
図3に示すように、ここで述べる官能基化ポリマー(FP)を、小分子量二官能性プレポリマー(x−A−x、MW=200〜10,000)を多官能性鎖延長剤(y−B(−z)−y)で鎖延長することによって作製する。官能基化ポリマーをDHPDでさらに改変してDHPpを得る。プレポリマーがDHPpの重量比率の大部分(70〜95重量%)を占めるので、このプレポリマーの組成は、DHPpの物理的特性に対して大きな影響を及ぼすことになる。例えば、PEGなどの親水性プレポリマーを用いる場合、得られるDHPpは水溶性となる。ポリ(プロピレングリコール)などの疎水性プレポリマー、またはポリ(カプロラクトン)(PCL)などのポリエステルを用いて同様の水不溶性DHPpを得ることができる。鎖延長反応の際に2種類以上のプレポリマーを用いてDHPpの物理的特性をさらに改善することができる。親水性プレポリマーと疎水性プレポリマーを組み合わせると、水性媒体中で物理的架橋をもたらすことができる水溶性DHPpが得られ、その架橋によって、ポリマーの微細凝集、高い粘度、熱的に誘導されたゲル生成、またはDHPpが化学的に硬化したネットワークによる機械的特性の向上がもたらされる。水性媒体中での物理的架橋が受けられる水溶性DHPpが得られる。あるいは親水性と疎水性ブロックの両方からなる両親媒性の複数ブロックコポリマーを用いて同じ効果を実現することができる。さらに、ポリエステルを組み込むと、加水分解によって分解するDHPpが得られ、DHPp中のエステル結合の数を用いてその分解速度を制御することができる。最後に、プレポリマーの長さを用いて、DHPpの接着特性と硬化速度に影響を及ぼすDHPDの密度と含量を制御することができる。合成で用いるプレポリマーのリストを表3A〜3Cに示す。
【0085】
鎖延長剤(表3D)は、プレポリマー上の官能基xと反応可能な2つの官能基yと、DHPDと反応可能な少なくとも1つの官能基Zとを含む小分子量(MW≦500Da)化合物からなる。官能基xとyとの反応により、プレポリマーと鎖延長剤の間のエステル、アミド、ウレタン、尿素またはカーボネート結合が得られ、この生成によって官能基化ポリマーの形成がもたらされる。鎖延長反応の際、結合が起こるようにxかまたはyのいずれかを活性化する必要があり、その活性化は反応の間かまたはそれに先行して行うことができる。
【0086】
図8に示すように、PEG−ジオールの末端−OHをまず活性化してニトロフェニルカーボネート(NPC)を形成させ、続いてリシン−テトラブチルアンモニウム塩(Lys−TBA)と反応させて懸垂型の−COOH基を有するポリ(エーテルウレタン)(PEU)を得る。その後これをドーパミンと反応させてPEU−1(表4A)を得る。ここで、xは、Lys−TBA上のアミン基yと容易に反応してウレタン結合をもたらす活性化カルボニル基である。NPCに加えて、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはペンタクロロベンゼンなどの他の活性化化合物を使用することができる。PEU−2とPEU−3はどちらも、活性化基としてNPCの代わりにNHSを用いて合成した。最後に、鎖延長剤上のZ基は、−Hの代わりにTBA対イオンを有するカルボキシル基であり、これによって、Lys−TBAは有機反応混合物において、より可溶性のものになる。対イオンとして、他の四級アンモニウムまたは正に荷電した基を使用できる可能性がある。
【0087】
ある場合には、ポリマー鎖延長反応の際に官能基がxかまたはyのどちらかと反応する恐れがあるので、Z基を保護する必要がある。図9は、PEG−ジオールとN−(ベンジルオキシカルボニル)−L−アスパラギン酸無水物(Cbz−Asp−Anh)を溶融重縮合させ、Cbz保護基を取り除いた後にアミン官能基化ポリ(エーテルエステル)(PEE)を得る方法を示す。Cbzは、保護されていないままであった場合、ポリマー鎖延長の際にカルボキシル基と反応する恐れのあるAspアミン基を保護する。続くこのアミン−官能基化PEEとN−Boc−DOPAのカルボキシル基との反応によってPEE−1(表4B)を得た。PEE−2およびPEE−3では、N−Boc−DOPAの代わりにDOHAを用いた。PEU−1とは異なり、これらのポリ(エーテルエステル)はエステル結合形成によってもたらされた。この結合はウレタン結合より速い速度で加水分解する。
【0088】
あるいは、図10に示すように、鎖延長反応が完了した後にZを導入することができる。PEG−ジオールをまず塩化フマリルと反応して、そのポリマー骨格に沿って不飽和の二重結合を含むp(EG−Fum)を生成させた。次いで、これらの二重結合をチオール化した3−メルカプトプロピオン酸(MPA)と反応させて−COOH基を導入した。これをドーパミンでさらに改変させることができる。この方法を用いてPEE−4〜PEE−6を合成した(図4B)。MPAの代わりに、システアミン(CA)および2−メルカプトエタノールを用いて、−NHおよび−OH基をそれぞれ組み込むことができる。懸垂型のアミン基を導入するためにCAを用いてPEE−7を調製した。続いてこれをDOHAのカルボキシル基と反応させる。PEG−ジオールをアミン末端PEGで置換し、続いて塩化フマリルと反応させてPEEより安定なポリ(エーテルアミド)(PEA)を生成させることができる。ジアミン末端プレポリマーを用いてPEA−1(表4C)を得た。それによってこのポリマーはPEE類似物より加水分解の影響を受けにくくなった。
【0089】
図11は、プレポリマーのxと鎖延長剤のyが同一官能基(−OH)であり、鎖延長が第3の化合物を加えることによって達成される合成方法を示す。PEG−ジオールと2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(HMPA)はどちらも2つの末端−OH基を有しており、ポリマー鎖延長は塩化スクシニルによってなされた。これはエステル結合の形成をもたらす。HMPAは第3の官能基、−COOHを有しており、これはドーパミンを結合するのに用いられてPEE−8を生成した(表4B)。ジアミン末端PEGおよびHMPAを有するPEG−ジオールをLys−TBAなどのジアミン鎖延長剤に変えることによって、塩化スクシニルとの反応により、エステル結合の代わりに安定したアミド結合を有する官能基化ポリマーが得られる。同様に、塩化スクシニルの代わりにジイソシアネートを用いた場合、−OHまたは−NH末端プレポリマーおよび鎖延長剤をそれぞれ用いて、ウレタン結合または尿素結合を有する官能基化ポリマーを作製することができる。最後に、ジクロロホーメート(すなわち、PEG−dCF)をPEG−ジオールおよびHMPAと反応させることによってカーボネート結合を有する官能基化ポリマーを得ることができる。これらの異なる結合は、DHPpの分解速度を制御するのに用いることができる。
【0090】
図12に示すように、ポリマー鎖延長の前に、プレポリマーをDHPDで改変することができる。ジアミン末端ED2kをまずDOPAおよびリシンのN−カルボキシアンヒドリド(NCA)(それぞれ、Cbz−DOPA−NCAおよびCbz−Lys−NCA)と反応させてPEG−DLを形成させた。PEG−DLをさらに塩化スクシニルと反応し、Cbz保護基を取り除いてPEA−2を生成する(表4C)。PEA−2の骨格はエーテル結合およびアミド結合からなり、これらは、それぞれPEEまたはPEUにおけるエステル結合およびウレタン結合より安定である。
【0091】
図8と同様の合成スキームを用いて、PEGプレポリマーの一部を疎水性ポリカプロラクトン(PCL)で置き換えて、ポリ(エーテルエステルウレタン)(PEEU)を合成した(表4D)。これらのPEEUは、ウレタン結合より速く加水分解するエステル結合を含む。さらに、疎水性部分は水の存在下で凝集することができ、そのためPEAUはミクロスケールのドメイン中に自己集合できるようになる。この自己集合能はポリマー溶液の粘度を増大させ、これらは適切な条件下で(高い温度と濃度で)物理的に架橋したゲルネットワークを形成することができる。同様に、PEU−3はその骨格内に親水性部分量と疎水性部分を含み、PEU−3の水溶液も同様の自己集合特性を示す。
【0092】
多種多様のプレポリマーを選択することができることと合わせて、異なる合成方法を用いることができるため、DHPpの物理的特性を変えることができる。様々な合成方法を用いて、安定な(PEA>PEU>PEEU>PEE)様々な骨格結合を生成させた。この中では、PEEは水の存在下で最も簡単に加水分解する。さらに、ポリマー骨格の親水性は加水分解速度に影響を及ぼすことになる。PEE−1〜PEE−5のポリマー骨格は85重量%を超えるPEGを含み、そのためこれらのPEEは、F2k(50%PEGおよび50%PPG)からなるPEE−7よりずっと早く分解するようになる。ポリマー骨格の親水性は水の取り込みの可能性に影響を及ぼし、これは加水分解速度に影響を及ぼす。
【0093】
プレポリマーの長さを用いて、結合するDHPDの量を制御することができる。表4Bに示すように、EG600(600MW PEGプレポリマー)を用いてPEE−2を構成した。これは、この節で合成したDHPpのうち最も高いDHPD含量(21重量%)を有する。より高いMWプレポリマー、例えばEG1k(PEU−1、PEU−2、PEE−1、PEE−3およびPEE−5については8〜13重量%DHPD)およびF2k(PEU−3およびPEE−7については3〜5重量%DHPD)を用いると、より低いDHPD含量のポリマーが得られた。PEEU−3およびPEU−4について、骨格中のEG600の30重量%および65重量%を、より高い分子量のプレポリマーでそれぞれ置き換えると、PEE−2と比較して、これらのポリマー中のDHPD含量は著しく低下した(PEEU−3およびPEU−4について、それぞれ12重量%および6.4重量%)。PEU−2、PEA−2およびPEEU−3を、ポリマー骨格に沿って遊離−NH基を有するリシンを用いて合成した。アミン基は、これらのポリマーの界面結合能を向上させることができ、また、酸化されたDHPDのための追加の結合分子を提供することもできる。さらに、−NHの存在によって両親媒性PEEU−3は、PEEU−1およびPEEU−2と比べて、より水溶性になる。
合成方法3:FPのDHPD改変
この節では、DHPDを、ポリマーの長さ方向にわたって−NH、−COOH、−OHまたは−SHなどの懸垂型の官能基を含む、予め作製した官能基化ポリマー(FP)上にグラフト化する(図4)。様々な多くのFPが市販されており、DHPpの所望の用途に応じて注意深くそれを選択すべきである。例えば、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミン、ポリリシンおよびポリアクリル酸などの合成FPが存在し市販されているが、これらのポリマーは生体適合性が劣っており[40、41]、どれも生分解性がなく、そのためこれらは生体材料として使用する候補とはならない。タンパク質または多糖類などの生体高分子は、合成高分子より優れたある種の利点(すなわち、生体適合性、生分解性、生体吸収性、および天然の組織または細胞との相互作用能)を有している。タンパク質ベースの封止剤がFDAにより臨床使用に承認されており、それらには、ゼラチン−(FloSeal(商標)、Baxter、Inc.)、フィブリノゲン−(Tisseel(商標)、Baxter、Inc.)およびウシ血清アルブミンベースの(Bioglue(登録商標)、Cryolife、Inc.)などの製品が含まれる。キトサン、アルギン酸塩およびヒアルロン酸などの多糖類は、細胞のカプセル化[42]、創傷包帯[43]および軟骨修復[44]などの様々な生物医学的用途のために研究されている。これらの生物高分子は、DHPDで改変できる様々な官能基を含む線状ポリマーである。ここではゼラチンの改変についてだけ述べるが、ここで述べる合成経路を用いて、適切な官能基を有する他の生物高分子をDHPDで改変することができる。
【0094】
ゼラチンは、ウシ、ブタおよび魚などの動物の結合組織から抽出したコラーゲンの部分加水分解によって製造されるタンパク質である。ゼラチンは、アミド、エステルまたはウレタン結合の生成によってDHPDと反応させることができる、10%グルタミン酸、6%アスパラギン酸および4%リシンを含む[45]。図13に示すように、水溶性カルボジイミドは、DOHA、ドーパミンまたはDOPAのいずれかをゼラチンと結合させるのに用いた(75ブルーム、MW約22,000)。GEL−1、GEL−2およびGEL−3を、8重量%ものDHPDの含量で調製した(表5)。これらのゼラチンベースの付着性ポリマーは30重量%もの濃度で水溶性であり、改変されていないゼラチンのように物理的ゲル化を受けることができる。
【0095】
単一DHPDを生体高分子に結合するのに加えて、DHPDの短いポリマーをグラフト化することができる。図14に示すように、システアミン二塩酸塩を、カルボジイミドケミストリーによってゼラチンと反応させ、ジチオール結合を1,4−ジチオスレイトール(DTT)で還元した後、ゼラチンの骨格に沿って−SH基を有するゼラチン−g−CAを調製した。これらの−SH基は、フリーラジカル重合における連鎖移動剤として作用することができる。重合開始剤としてAIBNを用いて、54重量%を超えるDMA1含量でゼラチン上にグラフト化されたDMA1のポリマー鎖を有するGEL−4を調製した(表5)。あるいは、ゼラチンの側鎖官能基(−OH、−NH、−COOH)を連鎖移動剤として用いてGEL−5を合成した。DMA1はGEL−5の17重量%を占める。
【0096】
(適用)
合成したDHPpについて、1)組織接着剤および封止剤、2)接着コーティング剤ならびに3)防汚コーティング剤として機能する可能性を試験した。組織接着剤または封止剤として(図15)、DHPp中のDHPDを、その接着剤の結合性(cohesive)架橋と硬化の両方、ならびに生物学的表面基体と無機表面基体の両方との界面の接着的相互作用を実現するために用いた。接着コーティング剤として機能するためには(図16A)、高いDHPD含量を有するDHPpを用い、それによって、DHPDの一部が支持基体と結合するのに用いられても、第2の基体と結合するための非結合DHPDが依然として存在するようにした。防汚コーティング剤のためには(図16B)、重量で大部分の防汚DHPpが、非特異的接着を阻止するポリマーで構成されていることが必要なので、比較的少ない量のDHPDが望ましい。所望の用途に応じて、様々なDHPD含量、物理的特性および化学組成を有するDHPpを作製した。
【0097】
組織接着剤および封止剤
組織接着剤または封止剤として使用するためには、DHPpは一連の厳しい基準を満たす必要がある。最初の最も重要なものは、それは、安全性プロファイル(すなわち、低毒性、非免疫原性、非変異原性、非刺激性および非抗原性)を有していなければならならず、生体接着剤が、厳しい殺菌の後でもその接着性を維持していなければならないことである[46〜48]。液体の状態では、接着剤は、創傷表面全体に容易に塗布できるように十分な流動特性を有していなければならず、また、境界層から水を追い出して界面の相互作用を最大にできるようにしなければならない[46、49]。接着剤は、穏やかな生理学的条件下で液体状態から固体状態に転換されなければならず、また、手術時間を最短にし、かつ感染の可能性を少なくするために、その転換は急速なものでなければならない[46]。硬化後、生体接着剤は、機能的な使用の間に受ける様々な応力に耐えられる適切なバルク機械的特性を保持しながら、湿潤環境で異なるタイプの組織に強い付着を維持する必要がある[46、48]。縫合糸や他の通常使用される創縫合材料とは異なり、接着剤は、傷の端の結合部で組織成長のためのバリアとして作用することができる。したがって、満足すべき創傷治癒にためには、接着剤は、細胞増殖の速度に近い速度で分解できるものでなければならず、またその分解産物は非毒性であり、かつ容易に再吸収されるかまたは身体から排出されるものでなければならない[46、48、50]。
【0098】
様々なDHPpについて、まず、これら接着剤が自由流動性の液体から粘弾性のヒドロゲルへ急速に移行するかどうかを見る試験を行った。DHPp(pH7.4)の水溶液と等容積のNaIO溶液(DHPDに対して0.5モル当量)を、双対式シリンジ装置(dual syringe set−up)を用いて混合した。選択した接着性配合物が硬化する時間量を表6に示す。これらのDHPp接着剤の硬化時間は30秒未満から7分までの範囲である。硬化時間はDHPD含量、DHPp化学構造および分子量などの因子に依存する。図15に示すように、DHPDの結合性架橋によってDHPpの硬化がもたらされる。したがって、早く硬化させるためには高いDHPD含量を必要とする。PEU−1、PEU−2およびPEU−3を比較すると、これらの接着剤中のDHPD含量が低下するのにしたがって硬化時間は長くなる(PEU−1、PEU−2およびPEU−3について、それぞれ、13、8.2、4.8重量%ドーパミンで、30秒間、70秒間および7分間である)。DHPDの濃度が低いのにも関わらず、GEL−2(5.9重量%ドーパミン)は約20秒で硬化することができた。主に非反応性ポリエーテル骨格で構成されている、そのPEUの対応物とは異なり、ゼラチンベースの接着剤は、DHPDと反応できる様々なアミノ酸側鎖官能基(すなわち、アミン、ヒドロキシル等)を含む。さらに、硬化速度は、DHPpの化学構造にも強く依存する。PDMA−19は、17重量%のDMA1を有しているにも関わらず、硬化するのに4時間以上かかった(データは図示せず)。PDMA−19のブラシ様の化学構造は、pB−結合DMA1が架橋するのを効果的に阻止している可能性がある。DMA3およびEG9MEで構成されたPDMA−5は2分間で硬化することができた(データは図示せず)。DMA3は、DOHAとメタクリレート基の間に短いオリゴマーリンカーを有しており、これによって、それがPEGポリマーのブラシの中に埋没するのではなく、DOHAは架橋形成のためにより曝露されるようになる。
【0099】
これらの接着配合物が外科用封止剤として機能する能力を試験するために、これらを用いて圧力下で、湿潤したコラーゲン基体上の開口部(3mm径)をシールした。ASTM標準F2392にしたがって、図17に示す装置を用いてDHPpの破裂強度を測定した[51]。この実験は、水性の環境中、応力下で所与のDHPpが、生物学的基体と結合する能力を試験するものなので、硬化した接着剤は、耐水性の接着特性とバルク機械的特性の良好なバランスを必要とする。表6に示すように、種々のDHPp配合物の破裂強度は5〜230mmHg/mmの範囲である。接着剤重量%、ポリマー骨格化学構造、およびDHPDの架橋経路などの様々な因子が、接着剤の破裂強度に影響を及ぼすことになる。例えば、ポリマーの濃度を15重量%から30重量%に増加させるとPEU−2の破裂強度はほぼ倍になる。この増加は、硬化した接着剤の粘着特性と架橋密度が向上したことによるものである。PEU−2が、PEU−1のほぼ2倍の破裂強度を有することも分かった。この結果は、このポリマーの界面結合能を増大させることができるPEU−2中のリシル遊離アミン基の存在によるものである。さらに、−NHの存在は、DHPDが、施される架橋の経路を著しく変え[21、52]、これは、硬化した接着剤の粘着特性に著しく影響を及ぼすことになる。これらの配合物は粘着性が不足していることが分かったので、PEU−1とPEU−2との破裂強度の差は、そのバルク機械的強度間の差に起因しているようである。DHPDを半分しか有していないにも関わらず、15重量%でPEU−3はPEU−2と同様の破裂強度を示した。しかし、純粋に親水性のPEGとは対照的に、PEU−3はF2k、すなわちPEGとポリプロピレングリコール(PPG)の両親媒性トリブロックコポリマーから構成されたものである。PEU−3中の疎水性PPG部分は物理的架橋を形成することができ、これは粘着強度の増大をもたらす。ゼラチンポリマー骨格上にマルチプル官能基を有しているにも関わらず、ゼラチンベースの接着剤は、PEUベースの接着剤と比べて非常に低い破裂強度を示した。
【0100】
表6に示すように、DHPp中のDHPD含量、ならびにポリマー骨格の構造および化学組成を変えることによって、これらのポリマー硬化速度ならびに接着特性を大きな影響を及ぼすことができる。所望の成分を有する新規なポリマーを合成することによって、これらのDHPpの物理的特性を調節することができるが、既存のDHPp同士を一緒に混合して、向上した物理的特性を有する新規な接着配合物を作製することができる。表7に示すように、PEU−3のPEU−1かまたはPEU−2との50−50混合物は、硬化時間を7分から5分に短縮した(PEU−3のみ)。これはその混合物中のドーパミン含量が増大したためのようである。これらの接着配合物も高い破裂強度を示した。例えば、PEU−1とPEU−3(81mmHg/mm)の混合物はPEU−1だけ(55mmHg/mm)の場合の破裂強度より57%高い結果をもたらし、PEU−2とPEU−3の混合物(157mmHg/mm)は、PEU−2(129mmHg/mm)およびPEU−3(121mmHg/mm)の個別の試験結果よりそれぞれ22%および30%高い結果をもたらした。不可逆的な共有結合架橋と可逆的な物理的架橋とのバランスはバルク機械的特性のこうした向上に寄与している可能性がある。他の配合物および混合物を試験して、これらの化合物の接着特性と硬化速度を最適化できる可能性がある。
【0101】
創縫合材料のための重要な1つの基準は、創傷が治癒するにしたがって時間とともに分生解してゆく能力である。非分解性材料は傷の端の結合のバリアとして作用する恐れがあるので、これは、組織接着剤や封止剤では特に重要である。DHPpのインビトロでの分解分析を、硬化した接着剤を37℃でPBS(pH7.4)の中に浸漬させて行った。表6に示すように、そのポリマー骨格に沿って加水分解性エステル結合を含むPEE−5は、2週間以内に完全に分解する。PEU−1は同じ期間で完全には分解しなかったが、酸化されたDHPDが接着剤から放出された結果としてインキュベーション溶液が暗赤色に変化したことから、分解の兆候が見られた。PEU−1は、PEE−5中のエステル結合より遅い速度で加水分解するウレタン結合を含む。分解速度はポリマー骨格(pB)の親水性にも依存していた。その理由は、それがポリマー骨格による水取り込みの速度と量に影響を及ぼすからである。ポリマー骨格(pB)の親水性にも依存していた。PEU−1とPEU−3はどちらもウレタン結合の形成によって構成されたが、2週間を超えてもそのインキュベーション溶液は無色のままであったことから、PEU−3は分解の兆候を示さなかった。PEU−3は、親水性EG1k(1000MWPEG)で構成されたPEU−1と比べて、そのポリマー骨格をより疎水性にするF2k(50重量%PEGおよび50重量%PPGを有する1900MW pluronic)からなる。1000Daプレポリマーを用いて合成されたPEU−1と比べて、1900Daのプレポリマーを用いて作製されたPEU−3もずっと低い加水分解性ウレタン結合含量を有している。したがって、合成方法、ポリマー骨格組成およびプレポリマー分子量などの様々な因子を用いて、異なる分解速度と潜在的に異なる分解の仕方を有する接着剤を作製することができる。
【0102】
接着コーティング剤
接着剤でコーティングしたあらゆる種類のテープ、ラベルおよび保護フィルムが毎日いたるところで見られる[53、54]。医療分野では、これらの接着物製品は、救急包帯、創傷包帯、バイオ電極、経皮薬物送達パッチにおいて、また、医療用具を皮膚に付着させるために用いられる。これらの接着コーティング剤には、外部からかけられた水(すなわち、シャワー)と、テープまたは包帯の下からの水(すなわち、汗、血液または傷からの浸出液)の両方に対する良好な耐水性が必要である[53、55]。生物学的基体(すなわち、皮膚)に迅速に付着することができることのほかに、これらの接着剤はまた、接着剤が皮膚上に移動しないように、裏当て材(すなわち、テープまたは創傷包帯裏当て材)に付着した状態で保持もされなければならない。したがって、接着剤は水溶性であってはならない。疎水性の様々な医療グレードの接着剤がコーティング物またはフィルムとして利用できるが、その表面が湿潤すると、これらは皮膚への付着能を失ってしまう[56、57]。より新しい世代の接着剤は親水性、両親媒性またはヒドロゲルベースの接着剤を基にしており、そのいくつかはあるレベルの耐湿性を示している[57〜59]。しかし、これらの新規な接着剤の性能は、高レベルの水吸着によって、または水の存在下で(すなわち、シャワーをかかること)著しく弱まる。したがって、長期の激しい運動の間や高湿度条件下で、皮膚に付着した状態で留まることができる真の耐水性の接着剤が必要である[56]。
【0103】
接着コーティング剤として機能する可能性を試験するために、PDMA−12を選んだ。PDMA−12は親水性ポリマーであるため、皮膚を湿潤させるかまたは皮膚と良好な付着接触する能力を有する。さらに、PDMA−12は水溶性ではないため、患者が汗をかいても溶解することはない。さらに、PDMA−12は高いDMA1含量(21重量%)を有するため、ポリマーを支持材料と皮膚基体の両方に付着させることができる。最後に、PDMA−12中のコモノマーのMEAは比較的短い側鎖を有しており、それによって、界面接触のためにDMA1部分が曝されるようになる。
【0104】
図19に示すように、PDMA−12をナノスケールのピラー配列で構成されたPDMS支持体上にコーティングした。PDMS上のナノ構造は、ナノサイズの角質足毛でできているヤモリの足の裏(foot pad)を模倣するように設計した[60]。ヤモリの足とそれに対向する表面との接触は、ヤモリが垂直表面、さらには逆さの表面でもしがみ付けるようにするのに十分な付着力を生み出す。原子間力顕微鏡(AFM)測定法によれば、ヤモリ模倣PDMS対照表面は空気中である程度の付着を示したが(図20A)、水の中に沈めて実験すると、付着力は大幅に低下した。しかし、PDMA−12−コーティングされた表面は、空気中と水中の両方で、対照PDMS表面と比べてAFM片持ち梁への著しい付着の増大を示した。PDMA−12処理した表面は1000回の接触と解放のサイクルを行った後でも、空気中と水中の両方で付着性は維持された(図20B)。他のヤモリ合成模倣体が、数回のサイクルにかけて付着を維持できるだけであり[61、67]、水中に完全に浸漬させるとヤモリの付着が著しく低下する[68、69]ことを考えると、上記結果は独特のものである。ここで実証したように、DHPpの接着コーティングは、乾燥した周囲条件下でも、また湿潤したまたは水性の環境下でも、既存の支持材料の接着特性を著しく向上させた。
【0105】
防汚コーティング剤
2つの別個の表面を接着させるように接着剤を設計した前節での接着コーティング剤とは異なり、防汚コーティング用途のポリマーは、他の材料がその表面に付着するのを防止しつつ1つの表面に接着するように設計される。医療用具および移植物のために、タンパク質、細胞、細菌および他の望ましくない材料が材料の表面に付着するのを防止することは、これらの用具の所望の機能、寿命および安全性を維持するために必須である[74]。細胞外液から材料表面に非特異的に吸着するタンパク質は、逆の生物学的応答の引き金を引く恐れがあり[75]、コンタクトレンズや眼内レンズ[75、76]、血液接触機器[77]、ならびに医療移植物および手術道具[70]の場合のように、医療用具が機能するのを妨害する可能性がある。さらに、移植物の表面、ヒト組織工学用足場、および生物活性リガンド(例えば、ペプチド、タンパク質およびオリゴヌクレオチド)で官能基化されたバイオセンサーには、所望の生物学的応答を妨害しない生体不活性なバックグラウンドが有効である。したがって、多くの生体材料系のためには、生体材料と、それが接触している流体または細胞外マトリックスとの間の非特異的相互作用を低減するかまたは完全に排除することに明らかな利益がある。
【0106】
防汚ポリマーの概略図を図16Bに示す。このポリマーは、接着コーティング剤と比べると比較的少量の接着性DHPDしか必要としないが、防汚特性をもつポリマーを高い重量割合で有することが必要である。表8に、ポリ塩化ビニル(PVC)上にコーティングした場合に、様々なDHPpが防汚ポリマーとして機能する能力をまとめる。水接触角拡大分析は、コーティング物が首尾よく塗布されたかを判断するための迅速で好都合な手段である。様々な親水性DHPp−コーティング表面の接触角拡大は、コーティングされていないPVC(93±2.3)の接触角拡大より大幅に低下した。これは、防汚コーティング剤がPVCに首尾よく塗布されたことを示している。
【0107】
各コーティングの防汚特定を3t3線維芽細胞付着アッセイにより測定した。表8に示すように、試験したすべてのコーティング材料は95%を超える細胞付着の低下を示した。PDMA−7を別にすると、これらのポリマーはポリマー骨格から延びるPEGを備えるブラシ様の構造を有しており、これによって、このDHPpに防汚特性が付与される。この表面のいくつかについては、細菌性(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))の付着に抵抗できるかを見るための試験も行った。PDMA−2は、線維芽細胞結合と緑膿菌結合のどちらも等しく、よく撥ねつけたが、他のPEGベースのポリマーは撥ねつけなかった。PDMA−15とPDMA−18はどちらも、PEGベースのモノマーと、荷電したモノマーで構成されたものであり(それぞれAAおよびAMPSy)、これらの荷電ポリマーは、中性PDMA−2と比べて細菌付着に対する抵抗性は劣っていた。負に荷電したPDMA−21がなぜ、対照よりも98%を超える細菌付着の低下を示したかははっきりしない。多分、PDMA−21とPDMA−15の性能の差は、酸性モノマーの表面基体に対する結合能(ホスホン酸(PDMA−21)対スルホン酸(PDMA−15))にあるようである。リン酸化された化合物は、それらをコーティング物−基体の界面に埋没させ、かつ防汚PEGブラシから離れるようにすると考えられる、その表面吸着性で知られている。しかし、中性であることだけでは、細菌付着に対する良好な抵抗性のためには不十分である。中性の両性イオンSBMAから構成されたPDMA−6は、細菌結合を60%低減させただけである。さらに、PDMA−4は、そのポリマー骨格をPEGブラシと連結するアミド結合を有しており、それは、PEGとそのポリマー骨格の間にエステル結合を含むPDMA−2の98%に対して、細菌付着を15%しか低下させない。最後に、PEU−2をNaIOで硬化させたゲルの形態でPVC上にコーティングすると、このゲルベースのコーティングは非常に優れた微生物接着抵抗を示した。
【0108】
PVCに加えて、様々なPDMAを、異なるポリマー表面(アセタール、ポリプロピレン、ポリウレタン)および真ちゅうに塗布した。ポリマー表面は小さな接触角のコーティング表面であった。これは、コーティングの塗布が首尾よくなされたことを示している(表9)。コーティングされていない真ちゅう表面が既にかなり小さい接触角を有しているため、真ちゅうについては接触角の変化はそれほど大きくはなかった。表10に示すように、コーティング物はすべて線維芽細胞付着に対して良好な抵抗性を示した。
【0109】
流動状態または静止状態の下で、PDMA−2−コーティングされた表面をさらに、黄色ブドウ球菌(S.aureus)と緑膿菌の両方に挑戦させた(表11)。コーティングされたポリマー表面のすべてはどちらも>90%の細菌株付着低下を示した。しかし、コーティングされた真ちゅう表面は、微生物付着に対してある程度の抵抗性は示したが、ポリマー表面での抵抗性ほどではなかった。真ちゅう材料でのこれらのコーティング物の評価は、真ちゅうの銅含量が高い(約63重量%)ため、複雑なようである。銅が非常に効果的な殺生物剤であることが考えれば、材料表面からいくらかの銅イオンが浸出しても、この種の実験結果に影響を及ぼす可能性がある。最後に、これらの実験結果を考えれば、この実験的設計の強固な特徴に留意することが重要である。これらのアッセイで用いた細菌の濃度(約10CFU/ml)は、インビボで通常遭遇するものより数桁高い濃度である。これらの実験は、様々なポリマー基体ならびに真ちゅうに対するDNPpの優れた防汚特性を示した。ここで実証したように構造、電荷およびポリマー骨格結合などの様々な因子が、生物膜生成および細菌付着の阻止におけるDHPpの成功に重要な役割を果たす。
【実施例】
【0110】
(実施例1)
DMA1の合成
20gのホウ酸ナトリウム、8gのNaHCOおよび10gのドーパミンHCl(52.8ミリモル)を200mLのHO中に溶解し、Arをバブリングさせた。50mLのTHF中の9.4mLのメタクリレート無水物(58.1ミリモル)を徐々に加えた。反応を終夜実施し、反応混合物を酢酸エチルで2回洗浄し、有機層は廃棄した。水層をpH<2に低下させ、粗生成物を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを減らし、ヘキサンで再結晶化した後、9gのDMA1(41ミリモル)を78%の収率で得た。Hと13C NMRの両方を用いて最終生成物の純度を確認した。
【0111】
(実施例2)
DMA2の合成
20gのホウ酸ナトリウム、8gのNaHCOおよび10gのドーパミンHCl(52.8ミリモル)を200mLのHO中に溶解し、Arをバブリングさせた。次いで50mLのTHF中の8.6mL塩化アクリロイル(105ミリモル)を滴下した。反応を終夜実施し、反応混合物を酢酸エチルで2回洗浄し、有機層は廃棄した。水層をpH<2に低下させ、粗生成物を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを減らし、ヘキサンで再結晶化した後、6.6gのDMA2(32ミリモル)を60%の収率で得た。Hと13C NMRの両方を用いて最終生成物の純度を確認した。
【0112】
(実施例3)
DMA3の合成
30gの4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン(3EG−ジアミン、136ミリモル)を50mLのTHFに加えた。30mLのTHF中の6.0gのジ−tert−ブチルジカーボネート(27.2ミリモル)を徐々に加え、混合物を室温で終夜攪拌した。50mLの脱塩水を加え、その溶液を50mLのDCMで4回抽出した。一緒にした有機層を飽和NaClで洗浄し、MgSOで乾燥した。MgSOをろ過し、DCMを減圧下で除去した後、8.0gのBoc−3EG−NHを得た。さらに精製することなく、8.0gのBoc−3EG−NH(25ミリモル)および14mLのトリエチルアミン(EtN,100ミリモル)を50mLのDCMに加え、氷水浴中に置いた。35mLのDCM中の16mLのメタクリル酸無水物(100ミリモル)を徐々に加え、混合物を室温で終夜攪拌した。5%NaHCO、1N HClおよび飽和NaClで洗浄後、MgSOで乾燥し、DCM層を約50mLの容積に減少させた。ジオキサン中の20mLの4N HClを加え、混合物を室温で30分間攪拌した。溶媒混合物を除去した後、粗生成物を真空下で乾燥し、粗生成物をエタノール/ヘキサン混合液中で沈殿させてさらに精製して9.0gのMA−3EG−NHHClを得た。9.0gのMA−3EG−NHHClを100mLのDCM中に溶解し、50mLのDMF中の6.1gの3,4−ジヒドロキシヒドロ桂皮酸(DOHA、33.3ミリモル)、4.46gの1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt、33.3ミリモル)、12.5gの2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU、33.3ミリモル)および4.67mLのEtN(33.3ミリモル)を加えた。混合物を室温で3時間攪拌した。反応混合物を1N HClと飽和NaClで十分に洗浄した。有機層を乾燥して860mgのDMA3を得た。Hと13C NMRの両方を用いて最終生成物の純度を確認した
(実施例4)
PDMA−1の合成
20mLのポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(EG9ME、Mw=475)を30gのAlに通して阻害物質を除去した。2.0gのDMA−1(9.0ミリモル)、4.7gのEG9ME(9.8ミリモル)および62mgのAIBN(0.38ミリモル)を15mLのDMF中に溶解した。凍結−ポンプ−解凍(freeze−pump−thaw)処理して大気中の酸素を除去し、Arで置換した。真空下で反応混合物を60℃で5時間温置し、50mLのエチルエーテルを加えて沈殿させた。乾燥後、4gの透明な粘性固体を得た(光散乱と合わせたゲル透過クロマトグラフィー(GPC):Mw=430,000、PD=1.8;H NMR:24重量%DMA1)。
【0113】
(実施例5)
PDMA−22の合成
987mgのDMA1(4.5ミリモル)、10gのN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM、88.4ミリモル)、123mgのAIBN(0.75ミリモル)および170mgのシステアミン塩酸塩(1.5ミリモル)を50mLのDMF中に溶解した。凍結−ポンプ−解凍処理して大気中の酸素を除去し、Arで置換した。真空下で反応混合物を60℃で終夜温置し、450mLのエチルエーテルを加えて沈殿させた。ポリマーをろ過し、クロロホルム/エチルエーテル中でさらに沈殿させた。乾燥後、4.7gの白色固体を得た(GPC:M=81,000、PD=1.1;UV−vis:11±0.33重量%DMA1)。
【0114】
(実施例6)
PEU−1の合成
20g(20ミリモル)のPEG−ジオール(1000MW)を、トルエンを蒸発させながら共沸的に乾燥させ、真空デシケーター中で終夜乾燥した。トルエン中の105mLの20%ホスゲン溶液(200ミリモル)を、丸底フラスコ(凝縮フラスコ、アルゴン入口、および逃げたホスゲンを捕捉するための50%MeOH中の20重量%NaOHの溶液へ送る出口を装備)中の100mLのトルエンに溶解したPEGに加えた。Arパージしながら、混合物を55℃の油浴で4時間攪拌し、続いて、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。得られたPEG−dCFを、真空ポンプで終夜かけて乾燥し、これをさらに精製することなく使用した。
【0115】
PEG−dCFを50mLのクロロホルム中に溶解し、混合物を氷水浴中に保持した。50mLのDMF中の7.0gの4−ニトロフェノール(50ミリモル)および6.2mLのトリエチルアミン(440ミリモル)をAr雰囲気下で滴下し、混合物を室温で3時間攪拌した。50mLのDMF中の8.6gのリシンテトラブチルアンモニウム塩(Lys−TBA、20ミリモル)を15分間かけて滴下し、混合物を室温で24時間攪拌した。5.7gのドーパミンHCl(30ミリモル)、4.2mLのトリエチルアミン(30ミリモル)、3.2gのHOBt(24ミリモル)および9.1gのHBTU(24ミリモル)を加え、混合物をさらに室温で2時間攪拌した。不溶性粒子をろ過し、ろ液を1.7Lのエチルエーテルに加えた。4℃で終夜保持した後、上澄みをデカントし、真空ポンプで沈殿物を乾燥した。粗生成物を、HClでpH3.5に酸性化した脱塩水で2日間透析して(3,500MWCO)さらに精製した。凍結乾燥した後、15gのネバネバした白色生成物を得た。(GPC:Mw=200,000;UV−vis:13±1.3重量%ドーパミン)
(実施例7)
PEE−1の合成
8gの1000MWPEG−ジオール(8ミリモル)、2gのCbz−Asp−Anh(8ミリモル)および3.1mgのp−トルエンスルホン酸塩(0.016ミリモル)を、ディーンスターク装置および凝縮カラムを備えた丸底フラスコ中の50mLのトルエン中に溶解した。Arをパージしながら、混合物を145℃の油浴中で20時間攪拌した。室温に冷却した後、トルエンをロータリーエバポレーターで除去し、ポリマーを真空下で乾燥した。23.8μLのチタニウム(IV)イソプロポキシドを加え、混合物を、130℃の油浴中、真空下(0.5トール)で18時間攪拌した。60mLのクロロホルムを加え、溶液をろ過して450mLのエチルエーテルに入れた。沈殿したポリマーをろ過し、真空下で乾燥して6gのp(EG1k−CbzAsp)を得た(GPC:Mw=65,000、PD=4.0)。
【0116】
5gのp(EG1k−CbzAsp)を30mLのDMFに溶解し、Arで20分間パージした。活性炭担持させた10gの10重量%パラジウム(Pd/C)を加え、155mLのギ酸を滴下した。混合物をAr雰囲気下で終夜攪拌し、Pd/Cをろ過して200mLの1N HClで洗浄した。ろ液をDCMで抽出し、有機層をMgSOで乾燥した。MgSOをろ過し、DCMを約50mLの容積に減少させ、450mLのエチルエーテルに加えた。得られたポリマーをろ過し、真空下で乾燥して2.1gのp(EG1k−Asp)を得た(GPC:Mw=41,000、PD=4.4)。
【0117】
2.1gのp(EG1k−Asp)(1.77ミリモル−NH)を30mLのDCMおよび15mLのDMF中に溶解した。842mgのN−Boc−DOPA(2.83ミリモル)、382mgのHOBt(2.83ミリモル)、HBTU(2.83ミリモル)および595μLのEtN(4.25ミリモル)を加えた。混合物を室温で1時間攪拌し、450mLのエチルエーテルに加えた。ポリマーを冷MeOH中でさらに沈殿させ、真空下で乾燥して1.9gのPEE−1を得た(GPC:Mw=33,800、PD=1.3;UV−vis:7.7±1.3重量%DOPA)。
【0118】
(実施例8)
PEE−5の合成
50gのPEG−ジオール(1,000MW、50ミリモル)および200mLのトルエンを、ディーンスターク装置および凝縮カラムを備えた3ッ口フラスコ中で攪拌した。Arをパージしながら、PEGを、145℃の油浴で150mLのトルエンを蒸発させて乾燥した。混合物が室温に冷えたら、100mLのDCMを加え、ポリマー溶液を氷水浴中に浸漬させた。60mLのDCM中の17.5mLのEtN(125ミリモル)と70mLのDCM中の5.7mLの塩化フマリル(50ミリモル)を、30分間かけて同時に滴下した。混合物を室温で8時間攪拌した。有機塩をろ別し、ろ液を2.7Lのエチルエーテルに加えた。DCメチルエーテルでもう一度沈殿させた後、ポリマーを乾燥して45.5gのp(EG1k−Fum)を得た(GPC:Mw=21,500、PD=3.2)。
【0119】
45gのp(EG1k−Fum)(41.7ミリモルのフマレートビニル基)、36.2mLの3−メルカプトプロピオン酸(MPA、417ミリモル)および5.7gのAIBNを300mLのDMF中に溶解した。溶液を、凍結−ポンプ−解凍サイクルに3回かけて脱ガスした。真空下(5トール)でシールして、混合物を60℃の水浴中で終夜攪拌した。得られたポリマーをエチルエーテルで2回沈殿させ、乾燥して41.7gのp(EG1kf−MPA)を得た(GPC:Mw=14,300、PD=2.3)。
【0120】
41gのp(EG1kf−MPA)を135mLのDMFおよび270mLのDCM中に溶解した。10.5gのドーパミンHCl(55.4ミリモル)、7.5gのHOBt(55.4ミリモル)、20.9gのHBTU(55.4ミリモル)および11.6mLのEtN(83ミリモル)を加えた。混合物を室温で2時間攪拌し、次いで2.5Lのエチルエーテルに加えた。ポリマーを、脱塩水中で3500MWCO透析チューブを用いた透析に24時間かけてさらに精製した。凍結乾燥後、30gのPEE−5を得た(GPC−LS:Mw=21,000、PD=2.0;UV−vis:9.4±0.91重量%ドーパミン)。
【0121】
(実施例9)
PEE−9の合成
4gのHMPA(30ミリモル)および6gのPEG−ジオール(600MW、10ミリモル)を20mLのクロロホルム、20mLのTHFおよび40mLのDMF中に溶解した。Arパージをしつつ氷水浴中で攪拌しながら、30mLのクロロホルム中の4.18mLの塩化スクシニル(38ミリモル)と20mLのクロロホルム中の14mLのEtN(100ミリモル)を3.5時間かけて同時に滴下した。反応混合物を室温で終夜攪拌した。不溶性有機塩をろ別し、ろ液を800mLのエチルエーテルに加えた。沈殿物を真空下で乾燥して8gのp(EG600DMPA−SA)を得た(H NMR:HMPA:PEG=3:1)。
【0122】
8gのp(EG600DMPA−SA)(10ミリモル−COOH)を20mLのクロロホルムおよび10mLのDMF中に溶解した。3.8gのHBTU(26ミリモル)、1.35gのHOBt(10ミリモル)、2.8gのドーパミンHCl(15ミリモル)および3.64mLのEtN(26ミリモル)を加え、反応混合物を1時間攪拌した。混合物を400mLのエチルエーテルに加え、沈殿したポリマーを、脱塩水中で3500MWCO透析チューブを用いた透析に24時間かけてさらに精製した。凍結乾燥後、600mgのPEE−9を得た(GPC−LS:Mw=15,000、PD=4.8;UV−vis:1.0±0.053μモルのドーパミン/mgポリマー、16±0.82重量%ドーパミン)。
【0123】
(実施例10)
PEA−2の合成
10mLのTHF中の903mgのJeffamineED−2001(0.95ミリモル−NH)を、700mgのCbz−DOPA−NCA(1.4ミリモル)および439mgのCbz−Lys−NCA(1.41ミリモル)と3日間反応させた。293μLのトリエチルアミン(2.1ミリモル)を混合物に加え、105μLの塩化スクシニル(0.95)を滴下し、終夜攪拌した。ポリマーをエチルエーテル中で沈殿させた後、真空下で乾燥させて800mgの固体を得た(H NMR:ED2k当たり、0.6Cbz−DOPAおよび2.2Cbz−Lys)。
【0124】
乾燥した化合物を4mLのMeOHに溶解し、Arパージしながら、Pd(活性炭支持体に10重量%)を加えた。12mLの1Nギ酸を滴下し、混合物をAr雰囲気下で終夜攪拌した。20mLの1N HClを加え、Pd/Cをろ別した。ろ液を、脱塩水(3,500MWCO)中で透析に24時間かけた。凍結乾燥後、80mgのPEA−2を得た(GPC:Mw=16,000;PD=1.4;UV−vis:3.6重量%DOPA)。
【0125】
(実施例11)
GEL−1の合成
3.3gのDOHA(18.3ミリモル)を25mLのDMSOおよび35mLの100mM MES緩衝液(pH6.0、300mM NaCl)に溶解し、3.5gのEDC(18.3ミリモル)および702mgのNHS(6.1ミリモル)を加えた。混合物を室温で10分間攪拌し、100mLの100mM MES緩衝液(pH6.0、300mM NaCl)に溶解した10gのゼラチン(75ブルーム、タイプB、ウシ)を加えた。濃HClでpHを6.0に調節し、混合物を室温で終夜攪拌した。混合物を透析チューブ(15,000MWCO)に加え、pH3に酸性化した脱塩水中で24時間透析した。凍結乾燥後、5.1gのGEL−1を得た(UV−vis:ゼラチン鎖当たり8.4±0.71DOHA、5.9±0.47重量%DOHA)。
【0126】
(実施例12)
GEL−4の合成
10gのゼラチン(75ブルーム、タイプB、ウシ)を200mLの100mM MES緩衝液(pH6.0、300mM NaCl)中に溶解した。2.3gのシステアミン二塩酸塩(10.2ミリモル)を加え、それが溶解するまで攪拌した。1.63gのEDC(8.5ミリモル)および245mgのNHS(2.1ミリモル)を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。1N NaOHを加えてpHを7.5に上げ、9.44gのDTT(61.2ミリモル)を加えた。溶液のpHは8.5に上がった。混合物を室温で24時間攪拌した。6N HClを加えてpHを3.5に低下させ、反応混合物を、pH3に酸性化した脱塩水中で15,000MWCO透析チューブを用いた透析に24時間かけた。溶液を凍結乾燥して7.5gのゼラチン−g−CAを得た(UV−vis:ゼラチン鎖当たり、0.46±0.077μモルCA/mgポリマーまたは11±1.8CA)。
【0127】
7.5gのゼラチン−g−CA(3.4ミリモル−SH)を100mLの12.5mM酢酸中に溶解した。20mLのMeOH中の279mgのAIBN(1.7ミリモル)および3.73gのDMA1(17ミリモル)を加え、混合物を凍結−ポンプ−解凍サイクルに2サイクルかけて脱ガスした。Ar雰囲気でシールしながら、混合物を85℃の油浴中で終夜攪拌した。混合物を、pH3.5に酸性化した脱塩水で15,000MWCO透析チューブを用いた透析に24時間かけた。溶液を凍結乾燥して4.5gのGEL−4を得た(UV−vis:ゼラチン鎖当たり54重量%DMA1、128±56DMA1)。
【0128】
(実施例13)
GEL−5の合成
9gのゼラチン(75ブルーム、タイプB、ウシ)を100mLの脱塩水中に溶解した。1mLのDMF中の150mgのAIBN(0.91ミリモル)を加え、Arを20分間バブリングさせて混合物を脱ガスした。混合物を50℃の水浴中で10分間攪拌した。10mLのMeOH中の1.0gのDMA1(4.6ミリモル)を滴下し、混合物を60℃で終夜攪拌した。反応混合物を750mLのアセトンに加え、沈殿物を、脱塩水中で24時間透析にかけて(3,500MWCO透析チューブを用いて)さらに精製した。溶液を、アセトン中で沈殿させ、ポリマーを真空デシケーターで乾燥して5.0gのGEL−5を得た(UV−vis:ゼラチン鎖当たり17重量%DMA1、21±2.3DMA1)。
【0129】
(実施例14)
付着性ポリマーの硬化時間
DHPpのポリマー溶液が硬化するのにかかる時間量を、バイアル反転法で測定した。DHPpをリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)中に溶解し、DHPDに対して0.5の過ヨウ素酸塩のモル比でNaIOの水溶液を双対式シリンジ中で一緒に混合した。ポリマー溶液を含む反転バイアル中の溶液の流れが停止したら、硬化は完了したと考えられる。
【0130】
(実施例15)
インビトロでの分解
接着剤を、実施例14に記載したようにして調製した。硬化した接着剤のインビトロでの分解を37℃のインキュベーター中で、PBS(pH7.4)中に接着剤を置いて実施した。接着剤が完全に溶解するのにかかる時間を記録した。
【0131】
(実施例16)
DHPpでコーティングされたナノ構造接着剤の作製
E−ビームレジスト(950PMMA A3、MicroChem)を、偏光解析法(Woolam Co.Lincoln、NE)で測りながら、レジスト厚が600〜700nmに達するまで、シリコンウエハー上に数回スピンコートした(4000rpm、40秒間)。レジストを、Quanta600F(FEI Co.Hillsboro、OR)を用いて30kVで650〜800μC/cmの面積線量でパターン化した。メチルイソブチルケトン/イソプロパノール(1/3、容積/容積)の溶液で1分間、レジストの現像を実施し、続いて水で濯いだ。パターン化した基体を酸素プラズマ(Harrick、Pleasantville、NY)で30秒間処理し、2〜3回繰り返して曝露されたSi領域から残留するレジストを完全に除去した。次いでパターン化した基体をトリエトキシオクチルシラン蒸気に30分間曝露した。PDMSは以下のようにして調製した:4μLのPt−触媒(キシレン中に白金−ジビニルテトラメチル−ジシロキサン)および4μLの調節剤(2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサンを7〜8%ビニルメチルシロキサン溶液(3.5g)に加えた。続いてこの溶液を25〜30%メチルヒドロシロキサン(1g)溶液と混合した。最後に、PMMA/Siマスターにスピンコーティングした後(1000rpmで1分間)、溶液を硬化させた(80℃)。スピンコートした基体に、力測定のためには薄いカバーガラスを被せ、また、光学的画像化法またはX線光電子分光法(XPS)などの他の実験のためにはsylgard−184PDMSを被せた。PDMSパターンリフトオフおよび酸素プラズマ(100W、30秒間)への短期間の曝露によってヤモリ様接着剤を得、プラズマ処理後2〜3時間以内に使用した。DHPp−コーティングしたナノ構造接着剤を、エタノール中のPDMA−12の1mg/mL溶液中、70℃でPDMSを浸漬コーティングして作製した。
【0132】
(実施例17)
AFM試験
力についてのすべてのデータは、Nikon TE2000顕微鏡に取り付けたAsylum Mfp−1D AFM装置(Asylum Research、Santa Barbara、CA)で採取した。個々の片持ち梁(Veecoprobes、NP−20チップレスSiチップ、Santa Barbara、CA)のバネ定数は、均等分配定理を熱雑音スペクトルに適用して較正した。接着剤が示す大きな力のため、高いバネ定数(280〜370pN/nm)を示すチップだけを使用した。Denton Vacuum Desk III(Moorestown、NJ)を用いて、約10nmのAuまたはTi(Ti表面で生成された天然の酸化物、TiO)をスパッタリングコーティングして、金属および金属酸化物でコーティングした片持ち梁を作製した。各片持ち梁の表面組成は、PHI−TRIFTIII(Ga、15keV、Physical Electronics、Eden Prairie、MN)を用いて飛行時間型二次イオン質量分析(ToF−SIMS)で確認した。片持ち梁を、使用する前に酸素プラズマ(100W、150ミリトール)で3分間処理した。力測定は、2μm/秒の片持ち梁けん引速度で脱塩水中の条件かまたは周囲(空気)条件で実施した。湿潤実験では、接触領域の光学顕微鏡による試験で、ナノピラー間およびナノピラー表面(図示せず)上に捕捉された気泡が存在していないことが示された。Si片持ち梁を備えた多重モードVeecoディジタル計器(San Diego、CA)(230〜280kHzの共振周波数)を用いてタッピングモードAFM画像を得た。接触領域を、40×対物レンズを用いた倒立式光学顕微鏡で、光ファイバーの白色光源を対象に垂直に光をあてて画像化した。
【0133】
(実施例18)
コーティング、およびDHPp−コーティングされた表面の特性評価
試験材料を、DHPpを含む水溶液中に浸漬させてコーティングし、表面被覆率を最大にするためにそれぞれのポリマーの雲り点(LCST)近傍の温度で終夜温置した[26、79]。コーティングした後、試料を水で濯ぎ、N雰囲気下で乾燥した。水滴の接触角拡大は、自動液的分注装置、CCDカメラおよびデータ分析ソフトウェアを備えた固定ステージ式ゴニオメーター(Rame−Hart)を用いて、きれいな表面とコーティングされた表面の両方で測定した。
【0134】
(実施例19)
3T3細胞付着への抵抗性
これらのコーティング物の生物学的汚れに抵抗する基礎的能力を判定するために、哺乳類の細胞付着性を、コーティングされた試験材料とコーティングされていない試験材料でアッセイした。試験材料の3通りの試料を12ウェル組織培養皿中に個別に入れ、5%子ウシ血清を含む1mLのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で30分間覆った。次いで、3T3線維芽細胞(ATCC、#CCL−92)を1.5×10細胞/cmで表面に播種し、培養皿を37℃で4時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、試料をPBSで3回濯ぎ、カルセインAMで染色し、落射蛍光顕微鏡を用いて5×の倍率で画像化した。細胞の全面積を、デジタルスレッショルド画像分析法で測定した。次いで、対照表面に対する細胞の付着面積の減少割合%を記録した。
【0135】
(実施例20)
細菌付着に対する抵抗性−連続流実験
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および緑膿菌をケモスタットの中で、トリプチックソイブロス中で0.07時間−1の希釈速度で終夜増殖させた。連続流条件下での細菌付着をアッセイするために、試験表面(1cm×1cm、UV殺菌した)を改良型Robbins装置(MRD;図21)に取り付けた。細菌懸濁液を、MRDを通して40mL/分の速度(せん断速度=37.5秒−1)で、4つのコーティングされた試料およびコーティングされていない試料の表面の全域にポンプで送った。4時間曝露させた後、試料をMRDから取り出し、蛍光染色し、落射蛍光顕微鏡(Leica Microsystems GmbH、Wetzlar、Germany)を用いて40×で画像化した。各表面からランダムな9つの画像を得た。付着した細胞の総投影面積をスレッショルドデジタル画像分析法で測定した。次いで、対照表面に対する細胞の付着面積の減少割合%を記録した。
【0136】
(実施例21)
細菌付着に対する抵抗性−静的実験
黄色ブドウ球菌および緑膿菌を、37℃でのバッチ培養で終夜増殖させた。インキュベーションした後、細菌をPBSに再懸濁し、約1×10CFU/mLに希釈した。コーティングされた表面とコーティングされていない表面を12ウェルプレート中に置き、1mLの細菌性懸濁液を各ウェルに加えた。そのプレートを37℃で4時間インキュベートした。次いで試料を1mLPBSで2回濯ぎ、顕微鏡でみるために染色した。各表面からランダムな9つの画像を得た。細胞の総被覆率をスレッショルドデジタル画像分析法で測定した。次いで、対照表面に対する細胞の付着面積の減少割合%を記録した。
【0137】
(文献)
(すべての文献を参照により本明細書に組み込む)
1. Waite, J.H., Nature's underwater adhesive specialist. Int. J. Adhes. Adhes., 1987. 7(1): p. 9-14.
2. Yamamoto, H., Marine adhesive proteins and some biotechnological applications. Biotechnology and Genetic Engineering Reviews, 1996. 13: p. 133-65.
3. Yu, M., J. Hwang, and T.J. Deming, Role of L-3,4-dihydroxyphenylanine in mussel adhesive proteins. Journal of American Chemical Society, 1999. 121(24): p. 5825-5826.
4. Deming, T.J., M. Yu, and J. Hwang, Mechanical studies of adhesion and crosslinkning in marine adhesive protein analogs. Polymeric Materials: Science and Engineering, 1999. 80: p. 471-472.
5. Waite, J.H., Mussel beards : A coming of Age. Chemistry and Industry, 1991. 2 September: p. 607-611.
6. Waite, J.H. and S.O. Andersen, 3,4-Dihydroxyphenylalanine in an insoluble shell protein of Mytilus edulis. Biochimica et Biophysica Acta, 1978. 541(1): p. 107-14.
7. Pardo, J., et al., Purification of adhesive proteins from mussels. Protein Expr Purif, 1990. 1(2): p. 147-50.
8. Papov, V.V., et al., Hydroxyarginine-containing polyphenolic proteins in the adhesive plaques of the marine mussel Mytilus edulis. Journal of Biological Chemistry, 1995. 270(34): p. 20183-92.
9. Maugh, K.J., et al., Recombinant bioadhesive proteins of marine animals and their use in adhesive compositions, in Genex Corp. 1988: USA. p. 124.
10. Strausberg, R.L., et al., Development of a microbial system for production of mussel adhesive protein, in Adhesives from Renewable Resources. 1989. p. 453-464.
11. Filpula, D.R., et al., Structural and functional repetition in a marine mussel adhesive protein. Biotechnol. Prog., 1990. 6(3): p. 171-7.
12. Yu, M. and T.J. Deming, Synthetic polypeptide mimics of marine adhesives. Macromolecules, 1998. 31(15): p. 4739-45.
13. Yamamoto, H., Adhesive studies of synthetic polypeptides: a model for marine adhesive proteins. J. Adhes. Sci. Technol., 1987. 1(2): p. 177-83.
14. Yamamoto, H., et al., Insolubilizing and adhesive studies of water-soluble synthetic model proteins. Int. J. Biol. Macromol., 1990. 12(5): p. 305-10.
15. Tatehata, H., et al., Model polypeptide of mussel adhesive protein. I. Synthesis and adhesive studies of sequential polypeptides (X-Tyr-Lys)n and (Y-Lys)n. Journal of Applied Polymer Science, 2000. 76(6): p. 929-937.
16. Strausberg, R.L. and R.P. Link, Protein-based medical adhesives. Trends in Biotechnology, 1990. 8(2): p. 53-7.
17. Young, G.A. and D.J. Crisp, Marine Animals and Adhesion, in Adhesion 6. Barking, K.W. Allen, Editor. 1982, Applied Science Publishers, Ltd.: England.
18. Ninan, L., et al., Adhesive strength of marine mussel extracts on porcine skin. Biomaterials, 2003. 24(22): p. 4091-9.
19. Schnurrer, J. and C.-M. Lehr, Mucoadhesive properties of the mussel adhesive protein. International Journal of Pharmaceutics, 1996. 141(1,2): p. 251-256.
20. Lee, B.P., et al., Synthesis of 3,4-Dihydroxyphenylalanine (DOPA) Containing Monomers and Their Copolymerization with PEG-Diacrylate to from Hydrogels. Journal of Biomaterials Science, Polymer Edition, 2004. 15: p. 449-464.
21. Lee, B.P., J.L. Dalsin, and P.B. Messersmith, Synthesis and Gelation of DOPA-Modified Poly(ethylene glycol) Hydrogels. Biomacromolecules, 2002. 3(5): p. 1038-47.
22. Lee, B.P., et al., Rapid Photocurable of Amphiphilic Block Copolymers Hydrogels with High DOPA Contents. Maclomolecules, 2006. 39: p. 1740-48.
23. Huang, K., et al., Synthesis and Characterization of Self-Assembling Block Copolymers Containing Bioadhesive End Groups. Biomacromolecules, 2002. 3(2): p. 397-406.
24. Dalsin, J.L., et al., Mussel Adhesive Protein Mimetic Polymers for the Preparation of Nonfouling Surfaces. Journal of American Chemical Society, 2003. 125: p. 4253-4258.
25. Dalsin, J.L., L. Lin, and P.B. Messersmith, Antifouling performance of poly(ethylene glycol) anchored onto surfaces by mussel adhesive protein mimetic peptides. Polymeric Materials Science and Engineering, 2004. 90: p. 247-248.
26. Dalsin, J.L., et al., Protein Resistance of Titanium Oxide Surfaces Modified by Biologically Inspired mPEG-DOPA. Langmuir, 2005. 21(2): p. 640-646.
27. Statz, A.R., et al., New Peptidomimetic Polymers for Antifouling Surfaces. Journal of the American Chemical Society, 2005. 127(22): p. 7972-7973.
28. Fan, X., L. Lin, and P.B. Messersmith, Surface-initiated polymerization from TiO2 nanoparticle surfaces through a biomimetic initiator: A new route toward polymer-matrix nanocomposites. Composites Science and Technology, 2006. 66: p. 1195-1201.
29. Dossot, M., et al., Role of phenolic derivatives in photopolymerization of an acrylate coating. Journal of Applied Polymer Science, 2000. 78(12): p. 2061-2074.
30. Khudyakov, I.V., et al., Kinetics of Photopolymerization of Acrylates with Functionality of 1-6. Ind. Eng. Chem. Res., 1999. 38: p. 3353-3359.
31. Sichel, G., et al., Relationship between melanin content and superoxide dismutase (SOD) activity in the liver of various species of animals. Cell Biochem. Funct, 1987. 5(2): p. 123-8.
32. Waite, J.H. and X. Qin, Polyphosphoprotein from the Adhesive Pads of Mytilus edulis. Biochemistry, 2001. 40(9): p. 2887-93.
33. Long, J.R., et al., A peptide that inhibits hydroxyapatite growth is in an extended conformation on the crystal surface. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 1998. 95(21): p. 12083-12087.
34. Meisel, H. and C. Olieman, Estimation of calcium-binding constants of casein phosphopeptides by capillary zone electrophoresis. Anal. Chim. Acta, 1998. 372(1-2): p. 291-297.
35. Lu, G., D. Wu, and R. Fu, Studies on the synthesis and antibacterial activities of polymeric quaternary ammonium salts from dimethylaminoethyl methacrylate. Reactive & Functional Polymers, 2007. 67(4): p. 355-366.
36. Li, Z., et al., Two-Level Antibacterial Coating with Both Release-Killing and Contact-Killing Capabilities. Langmuir 2006. 22(24): p. 9820-9823.
37. Sun, Q., et al., Improved antifouling property of zwitterionic ultrafiltration membrane composed of acrylonitrile and sulfobetaine copolymer. Journal of Membrane Science, 2006. 285(1+2): p. 299-305.
38. Kitano, H., et al., Resistance of zwitterionic telomers accumulated on metal surfaces against nonspecific adsorption of proteins. Journal of Colloid and Interface Science, 2005. 282(2): p. 340-348.
39. Hajjaji, N., et al., Effect of N-alkylbetaines on the corrosion of iron in 1 M hydrochloric acid solution. Corrosion, 1993. 49(4): p. 326-34.
40. Morgan, D.M.L., V.L. Larvin, and J.D. Pearson, Biochemical characterization of polycation-induced cytotoxicity to human vascular endothelial cells. Journal of Cell Science, 1989. 94(3): p. 553-9.
41. Fischer, D., et al., In vitro cytotoxicity testing of polycations: influence of polymer structure on cell viability and hemolysis. Biomaterials 2003. 24(7): p. 1121-1131.
42. Zekorn, T.D., et al., Biocompatibility and immunology in the encapsulation of islets of Langerhans (bioartificial pancreas). Int J Artif Organs, 1996. 19(4): p. 251-7.
43. Ishihara, M., et al., Photocrosslinkable chitosan as a dressing for wound occlusion and accelerator in healing process. Biomaterials, 2002. 23(3): p. 833-40.
44. Huin-Amargier, C., et al., New physically and chemically crosslinked hyaluronate (HA)-based hydrogels for cartilage repair. Journal of Biomedical Materials Research, Part A, 2006. 76A(2): p. 416-424.
45. Stevens, P.V., Food Australia, 1992. 44(7): p. 320-324.
46. Ikada, Y., Tissue adhesives, in Wound Closure Biomaterials and Devices, C.C. Chu, J.A. von Fraunhofer, and H.P. Greisler, Editors. 1997, CRC Press, Inc.: Boca Raton, Florida. p. 317-346.
47. Sierra, D. and R. Saltz, Surgical Adhesives and Sealants: Current Technology and Applications. 1996, Lancaster, PA: Technomic Publishing Company, Inc.
48. Donkerwolcke, M., F. Burny, and D. Muster, Tissues and bone adhesives-historical aspects. Biomaterials 1998. 19 p. 1461-1466.
49. Rzepecki, L.M., K.M. Hansen, and J.H. Waite, Bioadhesives: dopa and phenolic proteins as component of organic composite materials, in Principles of Cell Adhesion. 1995, CRC Press. p. 107-142.
50. Spotnitz, W.D., History of tissue adhesive, in Surgical Adhesives and Sealants: Current Technology and Applications, D.H. Sierra and R. Saltz, Editors. 1996, Technomic Publishing Co. Inc.: Lancaster, Pennsylvania. p. 3-11.
51. ASTM-F2392, Standard Test Method for Burst Strength of Surgical Sealants 2004.
52. Lee, B.P., J.L. Dalsin, and P.B. Messersmith, Synthetic Polymer Mimics Of Mussel Adhesive Proteins for Medical Applications, in Biological Adheisves, A.M. Smith and J.A. Callow, Editors. 2006, Springer-Verlag. p. 257-278.
53. Benedek, I., End-Uses of Pressure Sensitive Products, in Developments In Pressure-Sensitive Products, I. Benedek, Editor. 2006, CRC Press: Boca Raton, FL. p. 539-596.
54. Creton, C., Pressure-sensitive adhesives: an introductory course. MRS Bulletin, 2003. 28(6): p. 434-439.
55. Lucast, D.H., Adhesive considerations for developing stick-to-skin products. Adhesives Age 2000. 43(10): p. 38-39.
56. Venkatraman, S. and R. Gale, Skin adhesives and skin adhesion. 1. Transdermal drug delivery systems. Biomaterials, 1998. 19(13): p. 1119-36.
57. Feldstein, M.M., N.A. Plate, and G.W. Cleary, Molecular design of hydrophilic pressure-sensitive adhesives for medical applications, in Developments In Pressure-Sensitive Products, I. Benedek, Editor. 2006, CRC Press: Boca Raton, FL. p. 473-503.
58. Skelhorne, G. and H. Munro, Hydrogel Adhesive for Wound-Care Applications. Medical Device Technology, 2002: p. 19-23.
59. Chalykh, A.A., et al., Pressure-Sensitive Adhesion in the Blends of Poly(N-Vinyl Pyrrolidone) and Poly(Ethylene Glycol) of Disparate Chain Lengths. The Journal of Adhesion, 2002 78(8): p. 667-694.
60. Ruibal, R. and V. Ernst, The structure of the digital setae of lizards. J. Morphology, 1965. 117: p. 271-293.
61. Geim, A.K., et al., Microfabricated adhesive mimicking gecko foot-hair. Nat. Materials, 2003. 2: p. 461-463.
62. Northen, M.T. and K.L. Turner, A batch fabricated biomimetic dry adhesive. Nanotechnology 2005. 16: p. 1159-1166.
63. Sitti, M. and R. Fearing, Synthetic gecko foot-hair micro/nano-structures as dry adhesives. J. Adhes. Sci. Technol., 2003. 17: p. 1055-1073.
64. Yurdumakan, B., et al., Synthetic gecko foot-hairs from multiwalled carbon nanotubes. Chem. Commun. , 2005. 30: p. 3799-3801.
65. Peressadko, A. and S.N. Gorb, When less is more: Experimental evidence for tenacity enhancement by division of contact area. J. Adhesion, 2004. 80: p. 1-5.
66. Crosby, A.J., M. Hageman, and A. Duncan, Controlling polymer adhesion with "Pancakes". Langmuir 2005. 21: p. 11738-11743.
67. Northen, M.T. and K.L. Turner, Meso-scale adhesion testing of integrated micro- and nano-scale structures. Sensors and Actuators A, 2006. 130-131: p. 583-587.
68. Huber, G., et al., Evidence for capillary contributions to gecko adhesion from single spatula nanomechanical measurements. Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 2005. 102: p. 16293-16296.
69. Sun, W., et al., The nature of the gecko lizard adhesive force. Biophys. J. , 2005. 89: p. L14-16.
70. Wisniewski, N. and M. Reichert, Methods for reducing biosensor membrane biofouling. Colloids Surf B Biointerfaces, 2000 18(3-4): p. 197-219.
71. Gu, J.D., et al., The role of microbial biofilms in deterioration of space station candidate materials. Int. Biodeterior Biodegradaton, 1998. 41(1): p. 25-33.
72. Harris, J.M., Introduction to biotechnical and biomedical applications of poly(ethylene glycol), in Poly(ethylene glycol) chemistry : biotechnical and biomedical applications, J.M. Harris, Editor. 1992, Plenum Press: New York. p. 1-14.
73. Ryu, D.Y., et al., A Generalized Approach to the Modification of Solid Surfaces Science 2005. 308(5719): p. 236 - 239.
74. Ratner, B.D., Titanium in Medicine: Material Science, Surface Science, Engineering, Biological Responses and Medical Applications, ed. D.M. Brunette, et al. 2000, Heidelberg: Springer-Verlag.
75. Leonard, E.F., V.T. Turitto, and L. Vroman, Blood in contact with natural and artificial surfaces. New York Academy of Sciences, 1987. 516: p. 688.
76. Mukkamala, R., A.M. Kushner, and C.R. Bertozzi, Hydrogel polymers from alkylthio acrylates for biomedical applications. Polymer Gels: Fundamentals and Applications, 2003. 833: p. 163-174.
77. Bruinsma, G.M., H.C. van der Mei, and H.J. Busscher, Bacterial adhesion to surface hydrophilic and hydrophobic contact lenses. Biomaterials 2001. 22(24): p. 3217-3224.
78. Zawada, J., A-dec, Inc. 2005.
79. Kingshott, P., H. Thissen, and H.J. Griesser, Effects of cloud-point grafting, chain length, and density of PEG layers on competitive adsorption of ocular proteins. Biomaterials, 2002. 23(9): p. 2043-2056.
【0138】
【表1−1】

【0139】
【表1−2】

【0140】
【表1−3】

【0141】
【表2−1】

【0142】
【表2−2】

【0143】
【表2−3】

【0144】
【表3−1】

【0145】
【表3−2】

【0146】
【表3−3】

【0147】
【表4−1】

【0148】
【表4−2】

【0149】
【表4−3】

【0150】
【表5】

【0151】
【表6】

【0152】
【表7】

【0153】
【表8】

【0154】
【表9】

【0155】
【表10】

【0156】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)によるDHPD改変ポリマー(DHPp)
【化22】

(式中、LGは任意の連結基であり、DHPDはジヒドロキシフェニル誘導体であり、pBはポリマー骨格である)。
【請求項2】
前記DHPDが少なくとも約1〜約100重量%のDHPpを含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記DHPDが少なくとも約2〜約65重量%のDHPpを含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
DHPDが約3〜約55重量%のDHPpを含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
前記pBがポリアルキレンオキサイドから実質的になる、請求項1に記載のポリマー。
【請求項6】
pBが実質的にホモポリマーである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
pBが実質的にコポリマーである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項8】
式(II)によるDHPD改変ポリマーDHPp
【化23】

(式中、Rは結合するかまたは重合してpBを生成するモノマーまたはプレポリマーであり、LGは任意の連結基である)。
【請求項9】
が、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリレートおよびポリアルキルからなる群から選択される、請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
DHPDが1,2ジヒドロキシフェニルである、請求項8に記載のポリマー。
【請求項11】
が、ウレタン、尿素、アミド、エステル、カーボネートまたは炭素−炭素結合の形成によって結合される、請求項8に記載のポリマー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公表番号】特表2010−501027(P2010−501027A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523083(P2009−523083)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/075299
【国際公開番号】WO2008/019352
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(509032221)ネリテス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】