説明

バスバー構造およびインバータ一体型電動圧縮機

【課題】耐振動性を確保しつつ、衝撃を吸収するバスバー構造およびインバータ一体型電動圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮機と、この圧縮機を駆動させるための電動モータと、高圧電源から直流電力を交流電力に変換してモータに給電するインバータ装置13と、圧縮機、電動モータ、インバータ装置13が収容されるハウジング2と、を有するインバータ一体型電動圧縮機に用いられ、インバータ装置13は、回路基板と電気部品から構成され、回路基板と電気部品を接続配線するための絶縁樹脂が施されたバスバー構造において、バスバー構造は、絶縁樹脂にて一体成形される本体部21と、絶縁樹脂から露出した外部接続部22から構成され、外部接続部22は、本体部21に対して屈曲して延在する屈曲延在部23を有し、屈曲延在部23の一部に、バスバー構造の振動を吸収させるための弾性部28が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両用空気調和装置に用いられて好適なバスバー構造およびインバータ一体型電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用の空気調和装置に適用される圧縮機として、電動モータを動力源とする電動圧縮機が採用されている。この電動圧縮機として、ハウジングにインバータ収容部が設けられ、このインバータ収容部に、高圧電源からの直流電力を三相交流電力に変換して電動モータに給電を行うインバータ装置を組み込んだインバータ一体型電動圧縮機が実用に供されている。このインバータ装置は、例えば、特許文献1および2に開示されているように、インバータ回路を構成する電力スイッチング素子、平滑コンデンサ、制御回路を備えたプリント回路基板を有し、更に、外部の直流電源やモータ部に接続するためのコネクタ部を備えている。これらの各構成要素は、バスバー内蔵プレートにより配線、接続されている。そして、このバスバー内蔵プレートは、複数のバスバーを樹脂インサート成形により一体化されて絶縁が確保されつつ、ハウジングの周壁外周面に固定されてバスバーアセンブリとして用いられている。(特許文献1および2参照)
【0003】
また、特許文献3に開示されているように、一般に、バスバー構造は、導電性金属からなる複数のバスバーと、合成樹脂製の絶縁基材とを積層させる構造となっている。このバスバー積層体から、接続片がバスバー積層体の水平方向に突設され、バスバー同士や、各種電気部品と溶接接合されて、配線、接続されることとなっている。一方、特許文献4に開示されているように、絶縁基材が施されていない架橋形状のバスバーもある。
【0004】
【特許文献1】特許第3827158号公報
【特許文献2】特許第3760887号公報
【特許文献3】特開2002−281643号公報
【特許文献4】特開2004−80873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両用の空気調和装置のインバータ一体型電動圧縮機に適用されるバスバーにおいては、走行中の車両の揺れやエンジン自体の振動を受けることとなる。これに対して、バスバーは上述した各特許文献に開示されているように、ハウジングの外周壁面に一体化されて、耐振動性を確保してバスバーの疲労破壊を防止する構造となっている。更に、車両衝突時の衝撃でバスバーの配線位置がずれてしまうことによる電気的短絡も防止できるようになっている。
【0006】
しかしながら、インバータ装置における各種電気部品の配置構成は必ずしも一様ではなく、バスバーをハウジング外周面と一体成形できないこともある。このような場合、一般的なバスバーとして、特許文献3に開示されている絶縁樹脂にて一体成形された部分から突出された接続片を有するバスバーや特許文献4に開示されているバスバーを用いることとなる。このようなバスバー構造では、車両やエンジン自体の振動による影響をそのまま受けてしまい、バスバーが疲労破壊されてインバータ装置の不具合を引き起こし、インバータ一体型電動圧縮機の故障が懸念される。また、車両が衝突事故を起こした場合、インバータ装置の収容部が破損し、電気部品の短絡が生じる可能性がある。短絡が生じてしまうと、電気部品に大電流が流れて発熱し、車両火災等の二次災害に繋がるおそれもある。この場合、ヒューズを即破断して導通を切ることで火災が防止されるが、正常にヒューズが破断されないことも考えられ、また、ヒューズが設置されていない場合は、導通を切るための対策を別途行う必要があった。
一方、バスバーの板厚を厚くすることも考えられるが、バスバー全体の板厚が厚くなり、バスバー全体が大きくなってしまうため、設置スペースの観点から好ましくない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、バスバーの板厚を厚くすることなく、振動に耐えうる構造であって耐振動性を確保しつつ、衝撃を受けた際には、その衝撃を吸収するバスバー構造およびインバータ一体型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のバスバー構造は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるバスバー構造は、圧縮機と、該圧縮機を駆動させるための電動モータと、高圧電源から直流電力を交流電力に変換して前記モータに給電するインバータ装置と、前記圧縮機、前記電動モータ、前記インバータ装置が収容されるハウジングとを有するインバータ一体型電動圧縮機に用いられ、前記インバータ装置は、回路基板と電気部品から構成され、前記回路基板と前記電気部品を接続配線するための絶縁樹脂が施されたバスバー構造において、前記バスバー構造は、前記絶縁樹脂にて一体成形される本体部と、前記絶縁樹脂から露出した外部接続部から構成され、前記外部接続部は、前記本体部に対して屈曲して延在する屈曲延在部を有し、前記屈曲延在部の一部に、前記バスバー構造の振動を吸収させるための弾性部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、特に、車両用空気調和装置のインバータ一体型電動圧縮機に適用される場合、車両走行時の揺れの影響やエンジン自体の振動の影響を受けた場合であっても、絶縁樹脂にて一体成形される本体部と、絶縁樹脂から露出した外部接続部から構成され、この外部接続部は、本体部に対して屈曲して延在する屈曲延在部を有し、屈曲延在部の一部に、バスバーの振動を吸収させるための弾性部が形成されているため、車両の揺れやエンジン自体の振動が、この弾性部により吸収される。したがって、バスバーの疲労破壊を防止することができる。
【0010】
さらに、本発明のバスバー構造では、上述した屈曲延在部は、前記バスバー構造に衝撃が加わった際に、前記屈曲延在部の破断を開始するための破断開始部が、前記屈曲延在部の一部に形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、車両の衝突事故により、インバータ装置の収容部が衝撃を受けた場合であっても、衝撃荷重を屈曲延在部に集中させて、屈曲延在部の破断を開始するための破断開始部が形成されているため、この破断開始部から屈曲延在部の破断を開始させることができる。したがって、バスバーが破断されて電流の導通が切られることで車両衝突時のインバータ装置の電気部品の短絡を防止することができる。
【0012】
さらに、本発明のバスバー構造では、上述した弾性部は、前記屈曲延在部の幅方向に亘って、円弧状に突出されて形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、上述した弾性部は、屈曲延在部の幅方向に亘って、円弧状に突出されて形成されているため、車両走行時の揺れやエンジン自体の振動による上下方向の揺動や左右方向の揺動を、この突出した円弧状の弾性部によって効果的に吸収することができる。したがって、バスバーの振動による疲労破壊を防止することができる。また、屈曲延在部の一部を円弧状に突出させるのみであるため、簡便な構造であり加工も容易である。
【0014】
さらに本発明のバスバー構造では、上述した破断開始部は、前記屈曲延在部の幅方向の中心部に向かって、前記屈曲延在部の幅方向の一部の幅を小さくするように形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、車両の衝突事故等により、インバータ装置の収容部が衝撃を受けた場合であっても、上述した破断開始部は、屈曲延在部の幅方向の中心部に向かって、屈曲延在部の幅方向の一部の幅を小さくするように形成されているので、幅が小さくなっている部分に衝撃荷重が集中して、この破断開始部から屈曲延在部の破断を開始させることができる。したがって、バスバーが破断されて電流の導通が切られることで、車両衝突時のインバータ装置の電気部品の短絡を防止することができる。また、屈曲延在部の一部の幅を小さくするのみでよいため簡便な構造で加工も容易である。
【0016】
さらに、本発明のバスバー構造では、上述した破断開始部は、前記屈曲延在部の前記幅方向の前記中心部に向かって、前記屈曲延在部の両端部対称位置に、V字形状の切り欠きにて形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、上述した破断開始部は、屈曲延在部の幅方向の中心部に向かって、屈曲延在部の両端部対称位置に、V字形状の切り欠きにて形成されているため、簡便な構造で加工も容易である。さらに、車両の進行方向に対する電動圧縮機の設置向きに応じて、このV字形状の切り欠きの向きを合わせることで、バスバーが衝撃を受けた際に、V字形状の切り欠きに衝撃荷重が集中されて、より確実に屈曲延在部を破断させることがきる。したがって、バスバーが確実に破断されて電流の導通が切られることで、車両衝突事故によるインバータ装置破損時の電気部品の短絡をより一層防止できる。
【0018】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、圧縮機と、該圧縮機を駆動させるための電動モータと、高圧電源から直流電力を交流電力に変換して前記電動モータに給電するインバータ装置と、前記圧縮機、前記電動モータ、前記インバータ装置が収容されるハウジングと、から構成されるインバータ一体型電動圧縮機において、前記インバータ装置は、回路基板と電気部品から構成され、前記回路基板と前記電気部品とを接続配線するための前記バスバー構造が、上述したいずれかのバスバー構造とされることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、特に車両用空気調和装置に用いられて好適で、上述したバスバー構造が組み込まれたインバータ一体型電動圧縮機によれば、車両走行時の揺れの影響やエンジン自体の振動の影響を受けた場合であっても、バスバーの破損に伴うインバータ一体型電動圧縮機の故障を防止することで、インバータ一体型電動圧縮機の信頼性が向上する。さらに、車両事故によって、インバータ装置が破損した場合であっても、インバータ一体型電動圧縮機の損傷を低減できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のバスバー構造によると、車両走行時の揺れの影響やエンジン自体の振動の影響を受けた場合であっても、簡便な構造で、この揺れや振動を効果的に吸収することができる。したがって、疲労破壊等によるバスバーの破損が防止されて、インバータ装置の故障等の不具合を防止することができる。さらに、車両衝突事故によりインバータ装置の収容部が破損された場合であっても、バスバーの屈曲延在部の破断を確実に行うことができる。したがって、ヒューズの有無に係わらず、バスバーを確実に破断して電流の導通を切り、インバータ装置の電気部品の短絡による車両火災等の二次災害を防止することができる。
また、本発明のインバータ一体型電動圧縮機によると、特に車両用空気調和装置に用いられることが好適であって、本発明のバスバーが組み込まれたインバータ一体型電動圧縮機では、車両走行時の揺れの影響やエンジン自体の振動の影響を受けた場合であっても、バスバーの破損に伴うインバータ一体型電動圧縮機の故障を防止する。さらに、車両事故によって、インバータ装置が破損した場合であっても、インバータ一体型電動圧縮機の損傷を低減できる。したがって、インバータ一体型電動圧縮機の信頼性が向上するとともに、車両事故時の損傷を低減して、車両火災等の二次災害を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態について、図1ないし図3を用いて説明する。
図1には、本発明の第一実施形態に係るインバータ一体型電動圧縮機1の分解斜視図が示されている。インバータ一体型電動圧縮機1は、その外殻を構成するハウジング2を有する。ハウジング2は電動モータ(図示なし)が収容されるモータハウジング3と、圧縮機(図示なし)が収容される圧縮機ハウジング4とが一体に固定されることにより構成される。このモータハウジング3および圧縮機ハウジング4は、アルミダイカスト製とされている。
【0022】
モータハウジング3および圧縮機ハウジング4内に収容設置される電動モータ(図示なし)および圧縮機(図示なし)は、モータ軸を介して連結され、電動モータの回転によって圧縮機が駆動される。モータハウジング3の後端側には、吸入ポート5が設けられており、この吸入ポート5からモータハウジング3内に吸入された低圧冷媒ガスは、電動モータの周りを流通して圧縮機に吸い込まれて圧縮される。圧縮機により圧縮された高温高圧の冷媒ガスは、圧縮機ハウジング4内に吐出された後、圧縮機ハウジング4の前端部側に設けられている吐出ポート(図示なし)から外部へと吐出される構成となっている。
【0023】
モータハウジング3の外周面上部には、ボックス形状のインバータ収容部7が一体成形されている。インバータ収容部7は、その上面が開放された所定高さの周囲壁により囲われたボックス構造を有する(図1参照)。このインバータ収容部7の側面には、2つの電源ケーブル取り出し口8a、8bが設けられるとともに、インバータ収容部7の内部には、モータ端子取り付け孔9および金属プレート用放熱面15が設けられる他、図示省略の電源ケーブルが接続される直流電力用のP−N端子、金属プレート用設置ボス部およびCPU基板用設置ボス部等が設けられている。また、インバータ収容部7には、モータ端子取り付け孔9に取り付けられるモータ端子10、ヘッドキャパシタ11、インダクタ12、インバータ装置13等が収容設置され、その上面は蓋部材14がネジ止め固定されることによって覆われる構成とされている。
【0024】
インバータ装置13は、図1に示されるように、インバータ収容部7の放熱面15に接触されて四隅がボス部等に固定設置され、ヒートシンクとして機能するアルミ合金製の金属プレート16と、この金属プレート16上に設置される図示省略の電力スイッチング素子(以下「IGBT」;(Insulated Gate Bipolar Transistor)という。)を動作させるパワー系制御回路が実装され、金属プレート16上のボス部に設置されるパワー基板17と、CPU等の低電圧で動作する素子を有する回路が実装され、四隅がボス部等に固定設置されるCPU基板18と、インバータ装置13の配線をなす複数のバスバーを有し、各バスバーを絶縁材である樹脂インサート成形により一体化したバスバーアセンブリ19を備えている。
【0025】
バスバーアセンブリ19は、図示省略IGBTと直流電力のP−N端子とを接続するP−NバスバーやIGBTとモータ端子10とを接続する複数のバスバーを、インサート樹脂により一体成形して一部品としたものである。このバスバーアセンブリ19は、直流電力のP−N端子およびモータ端子10に対向するようにL字形状に構成され、パワー基板17の隣接する二辺に沿って、インバータ収容部7にビス20により一体的に固定される構造とされている。(図1参照)
【0026】
図2に、バスバーアセンブリ19の斜視図が示されている。このバスバーアセンブリ19は、絶縁樹脂にて一体成形されている本体部21と、本体部21から絶縁樹脂から露出した外部接続部22が突出されて構成されている。この外部接続部22は、本体部21の下方側(図1のパワー基板17側)に向かって、本体部21に対して略直角方向に屈曲して延在した屈曲延在部23を有している。屈曲延在部23から更に本体部21に対して平行に略直角に屈曲された先端部24が設けられている形状とされている。この先端部24は、図示省略のP−N端子にボルトダウンにて接続される。図1に示すように、外部接続部25および26はインダクタ12に接続される。外部接続部27は、ヘッドキャパシタ16に接続される。なお、絶縁樹脂から露出した導電性金属である外部接続部22の材料は、通常、黄銅が用いられ、ニッケルメッキが施されている。または、冷間圧延鋼板で錫メッキが施されているものであってもよい。
【0027】
図3に、図2に示された屈曲延在部23の拡大図が示されている。図3の右側がバスバー本体部21側である。図2および図3に示されるように、外部接続部22から本体部21に対して略直角に屈曲して延在した屈曲延在部23の途中に、平面視した場合に、屈曲延在部23の幅方向に亘って、円弧形状に突出されて形成された弾性部28が設けられている。さらに、その途中には、屈曲延在部23の幅方向の中心に向かって、屈曲延在部23の一部の幅が小さくされた破断開始部29が形成されている。
なお、本実施形態の破断開始部29は、屈曲延在部23の幅方向の中心部に向かって、屈曲延在部23の両端部における対称位置に、V字形状の切り欠きが形成された一例である。同図に示されるように、この弾性部28と破断開始部29は、屈曲延在部23の途中に並列に設けられる構成とされている。
【0028】
以上説明の構成により、本実施形態によると以下の作用効果を奏する。
車両が走行する際に発生する車体の揺れに伴い、インバータ一体型電動圧縮機1も揺れの影響がある。また、エンジン駆動中は、エンジン自体の振動により、インバータ一体型電動圧縮機1が振動する場合がある。インバータ一体型電動圧縮機1に揺れや振動が発生した際には、当然インバータ装置13やインバータ収容部7にも揺れや振動の影響を伴う。図3に示されるように、屈曲延在部23の一部に、弾性部28が、平面視した場合に、円弧状に突出されて形成されていることにより、この揺れや振動が弾性部28によって吸収されることとなる。この結果、絶縁樹脂から露出した外部接続部22および屈曲延在部23、先端部24の疲労破壊が防止されて、バスバーアセンブリ19の損傷を防止するとともに、インバータ装置13における故障等の不具合を防止することができる。
【0029】
さらに、車両が衝突事故を起こした際に、インバータ収容部7が破損されてしまった場合、図3に示すように、屈曲延在部23の幅方向の中心部に向かって、屈曲延在部23の両端部対称位置に、V字形状の切り欠きにて形成されている破断開始部29が形成されていることにより、バスバーアセンブリ19に衝撃が加わっても、このV字形状の切り欠き部分に衝撃荷重が集中されて、屈曲延在部23が破断されることとなる。この結果、ヒューズ設置の有無に係わらず、屈曲延在部23を破断開始部29から確実に破断することで、バスバーアセンブリ19に流れる電流の導通を切ることができるため、インバータ装置13の電気部品の短絡が防止でき、車両火災等の二次災害を防ぐことができる。
【0030】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、図を用いて説明する。
図4に、第一実施形態のバスバー構造を採用したインバータ一体型電動圧縮機1の車両搭載時の平面図が示されている。
本実施形態では、例えば、インバータ一体型電動圧縮機1は、モータハウジング3の後端側の下部に設けられた取り付け脚6(図1参照)と、圧縮機ハウジング4の前端側および上部側に取り付け脚(図示なし)を有しており、これらの3箇所に設けられた取り付け脚を介して、図示省略の車両走行用エンジンの側壁に設置されたブラケットにボルトにより固定設置されて搭載されている。
【0031】
図4(a)に示されるように、上述した第一実施形態のバスバー構造を採用したインバータ一体型電動圧縮機1が、車両30のエンジンルーム31の左側寄りに、矢印32の車両進行方向に対して水平方向に縦置きに配置されている。この時、図3に示されるバスバーアセンブリ19の屈曲延在部23に設けられている破断開始部29であるV字状の切り欠きにおいて、同図に示されるY軸方向の向きが、図4(a)に示されるY軸方向の向きと同方向となるように設置されている。
一方、図4(b)は、上述した第一実施形態のバスバー構造を採用したインバータ一体型電動圧縮機1が、車両30のエンジンルーム31の左側寄りに、矢印32の車両進行方向に対して鉛直方向に横置きに配置されている。このインバータ一体型電動圧縮機1が横置きに配置された場合であっても、図3に示されるバスバーアセンブリ19の屈曲延在部23に設けられている破断開始部29であるV字状の切り欠きは、同図に示されるY軸方向の向きが、図4(a)に示されるY軸方向の向きと同方向となるように設置されることとなる。
【0032】
以上説明の構成により、本実施形態によると以下の作用効果を奏する。
車両30が事故により前方から衝撃を受けた際、図4(a)(b)に示されるエンジンルーム31内においては、走行用エンジン(図示なし)やインバータ一体型電動圧縮機1が、その衝撃を受けて破損されてしまう可能性がある。
本実施形態では、図3に示されるバスバーアセンブリ19の屈曲延在部23の一部に設けられた破断開始部29である切り欠きの向きの配置を、図3および図4に示される車両の進行方向である矢印32に対して水平方向であるY軸方向がそれぞれ同方向となるようにインバータ装置13内に配置されている。このため、車両事故によるインバータ収容部7が破損された場合であっても、破断開始部29である切り欠きが車両進行と同方向に設置されているため、この切り欠きから破断が開始されて、屈曲延在部23の破断が促進される。したがって、屈曲延在部23を破断開始部29から確実に破断することで、バスバーアセンブリ19に流れる電流の導通を切ることができるため、各種電気部品の短絡が防止でき、インバータ一体型電動圧縮機の損傷を低減して車両火災等の二次災害を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態にかかるインバータ一体型電動圧縮機1の分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるバスバーアセンブリの側面図である。
【図3】バスバーアセンブリの屈曲延在部の拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるインバータ一体型電動圧縮機の車両配置方向を示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 インバータ一体型電動圧縮機
2 ハウジング
3 モータハウジング
4 圧縮機ハウジング
7 インバータ収容部
11 ヘッドキャパシタ
12 インダクタ
13 インバータ装置
14 蓋部材
19 バスバーアセンブリ
21 バスバー本体部
22,25,26,27 外部接続部
23 屈曲部延在部
24 先端部
28 弾性部
29 破断開始部
30 車両
31 エンジンルーム
32 エナメル線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、
該圧縮機を駆動させるための電動モータと、
高圧電源から直流電力を交流電力に変換して前記モータに給電するインバータ装置と、
前記圧縮機、前記電動モータ、前記インバータ装置が収容されるハウジングと、を有するインバータ一体型電動圧縮機に用いられ、
前記インバータ装置は、回路基板と電気部品から構成され、前記回路基板と前記電気部品を接続配線するための絶縁樹脂が施されたバスバー構造において、
前記バスバー構造は、前記絶縁樹脂にて一体成形される本体部と、前記絶縁樹脂から露出した外部接続部から構成され、前記外部接続部は、前記本体部に対して屈曲して延在する屈曲延在部を有し、前記屈曲延在部の一部に、前記バスバー構造の振動を吸収させるための弾性部が形成されていることを特徴とするバスバー構造。
【請求項2】
前記屈曲延在部は、前記バスバー構造に衝撃が加わった際に、前記屈曲延在部の破断を開始するための破断開始部が、前記屈曲延在部の一部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバスバー構造。
【請求項3】
前記弾性部は、前記屈曲延在部の幅方向に亘って、円弧状に突出されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバスバー構造。
【請求項4】
前記破断開始部は、前記屈曲延在部の幅方向の中心部に向かって、前記屈曲延在部の幅方向の一部の幅を小さくするように形成されていることを特徴とする請求項2に記載のバスバー構造。
【請求項5】
前記破断開始部は、前記屈曲延在部の前記幅方向の前記中心部に向かって、前記屈曲延在部の両端部対称位置に、V字形状の切り欠きにて形成されていることを特徴とする請求項4に記載のバスバー構造。
【請求項6】
圧縮機と、
該圧縮機を駆動させるための電動モータと、
高圧電源から直流電力を交流電力に変換して前記電動モータに給電するインバータ装置と、
前記圧縮機、前記電動モータ、前記インバータ装置が収容されるハウジングと、から構成されるインバータ一体型電動圧縮機において、
前記インバータ装置は、回路基板と電気部品から構成され、前記回路基板と前記電気部品とを接続配線するためのバスバー構造が、請求項1から請求項5のいずれかに記載のバスバー構造とされることを特徴とするインバータ一体型電動圧縮機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−130963(P2009−130963A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300546(P2007−300546)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】