説明

バッテリ収納部の配線構造

【課題】ハーネスが常に所定の状態に保持され、バッテリの移動に伴いハーネスに無理な力が加えられたり、周囲の部材と過度な擦過が生じることのないバッテリ収納部の配線構造を提供すること。
【解決手段】車両のバッテリ収納部において、一端が固定ブラケットに固着され、他端が車両用バッテリの上面部で、かつバッテリボックスの前記車両外側近傍に位置する固定プレートと、前記バッテリボックスの天井部分に設けられ、ハーネスの前記車両の内方側が取り付けられる第1クランプ部と、前記固定プレートの他端側に設けられ、前記ハーネスの前記車両の外方側が取り付けられる第2クランプ部とを有し、バッテリ架台を前記バッテリボックス内から引き出すと、前記ハーネスの前記車両の外方側が該バッテリ架台とともに引き出され、前記バッテリ架台を前記バッテリボックス内に収納すると、前記第1クランプ部と第2クランプ部との間において前記ハーネスがほぼ所定の形状に撓み撓み部が形成されることとしてバッテリ収納部の配線構造を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に大型路線バスにおけるバッテリ収納部の配線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
大型路線バスは、車両の周囲を外壁で覆われていることから、外壁に開閉自在なリッドを形成し、リッドの内側に設けられたバッテリボックスに車両用バッテリを収納している。更に大型路線バスでは、バッテリボックスの内部に車両用バッテリを搭載するバッテリ架台を設け、リッドを開けてバッテリ架台を車両外方に引き出し、車両用バッテリの点検などが行えるように構成されている。
【0003】
また近年、交差点などで停車するとエンジンの作動が停止し、燃料の使用量と排気ガスの排出量とを低減させるようにした、いわゆるアイドリングストップのシステムを搭載した路線バスが知られている。
【0004】
更に走行用電動モータで走行し、エンジンで発電機を駆動して走行用の電力を発生させるようにしたシリーズ式ハイブリッド方式の路線バスも知られている。この方式は、エンジンを最も効率の良い状態で作動させることができるとともに充電池に十分な電力が蓄えられているときはエンジンの作動を停止させ、燃料の使用量と排ガスの排出量とを低減させることができるシステムとなっている。特許文献1参照。
【特許文献1】特開2006−132391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アイドリングストップを行う車両の場合、エンジンの始動回数が多くなるため、車両用バッテリに径の太いハーネスを接続させ、車両用バッテリからスターターモータに頻繁に大電流が供給されることに対応させている。
【0006】
またハイブリッド方式のバスにおいては、走行用電動モータや発電機に関する制御リレーやヒューズなどの電気機器類をバッテリ架台の前面側に取り付け、バッテリ架台とともに電気機器類を車両外側に引き出して、日常点検などの作業を容易にした例がある。この場合も、径の太いハーネスを車体側からバッテリ架台の前面に配線し、ハーネスに車両走行用の大電流が流れることに対応させている。
【0007】
ところで径が太いハーネスは、素線が太くかつ硬く、また絶縁被膜も厚く頑丈に形成されているので曲げに対する柔軟性に乏しい。したがって、バッテリ架台に太いハーネスが接続されていると、バッテリ架台をバッテリボックスから引き出した際、ハーネスやハーネスを固定している端子などに無理な力がかかる恐れがある。またハーネスがバッテリボックスの内面などに接触して損傷を与えたり、またハーネスの絶縁皮膜が損傷を受けてしまうなどの問題があった。
【0008】
一方、バッテリ架台はバッテリボックスに引き出し可能に設けられているため、バッテリボックスの内側壁などにハーネスを直接固定することはできない。また、床面高さの制約などがあり、バッテリ上面とバッテリボックスの天井部との間の空間は広くできず、全長の長いハーネスをバッテリボックスの空間内に緩やかに撓ませておくこともできなかった。
【0009】
本発明は上記課題を解決し、車両用バッテリを搭載したバッテリ架台を、ハーネスが周囲の壁体や他の部品と無理な擦過を生じさせることなく円滑に引き出すことができ、かつバッテリ架台をバッテリボックス内に押し入れたとき、ハーネスが常に一定の状態で配線されるバッテリ収納部の配線構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためバッテリ収納部の配線構造を次のように構成した。
【0011】
1、 車両側部に設けられ、内部に車両用バッテリを収納させるバッテリボックスと、前記車両用バッテリを載置し、前記バッテリボックスの内部に前記車両の外方に引き出し可能に設けられたバッテリ架台と、前記車両用バッテリの上面に配設され、該車両用バッテリを前記バッテリ架台に固定する固定ブラケットと、前記車両側と前記バッテリ架台側との間に配設されたハーネスと、前記バッテリ架台と前記バッテリボックスの間に設けられ、前記バッテリ架台を前記車両外方向へ移動可能に支持するスライド部材と、を具備したバッテリ収納部において、
一端が前記固定ブラケットに固着され、他端が前記車両用バッテリの上面部で、かつ前記バッテリボックスの前記車両外側近傍に配置された固定プレートと、前記バッテリボックスの天井部分に設けられ、前記ハーネスの前記車両の内方側が取り付けられる第1クランプ部と、前記固定プレートの他端側に設けられ、前記ハーネスの前記車両の外方側が取り付けられる第2クランプ部とを有し、前記バッテリ架台を前記バッテリボックスの外方に引き出すと、前記ハーネスの前記車両の外方側が該バッテリ架台とともに前記バッテリボックスの外方に引き出され、前記バッテリ架台を前記バッテリボックス内に押し入れると、前記ハーネスの前記第1クランプ部と第2クランプ部との間に、該ハーネスがほぼ所定の形状に撓む撓み部が形成されることとしてバッテリ収納部の配線構造を構成した。
【0012】
2、 1に記載のバッテリ収納部の配線構造において、前記撓み部は、円弧状に湾曲した前記ハーネスにより形成されていることとした。
【0013】
3、 2に記載のバッテリ収納部の配線構造において、前記固定プレートは、位置決め片を前記他端の近傍に具え、該固定プレートの前記一端を前記固定ブラケットに固着させると前記位置決め片が前記バッテリの側面と係合し、前記一端側を中心とした該固定プレートの回動が防止されることとした。
【0014】
4、 3に記載のバッテリ収納部の配線構造において、前記固定プレートの前記一端側を、前記固定ブラケットを前記バッテリ架台に固定する締結部材で前記固定ブラケットに固着させることとした。
【0015】
5、 1〜4のいずれかに記載のバッテリ収納部の配線構造において、前記車両は、該車両を走行させる走行用電動モータおよび該走行用電動モータのための発電機を備えており、前記バッテリ架台には、前記車両用バッテリより車両外方側に、前記走行用電動モータもしくは前記発電機に関する電気機器類が配設されていることとした。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるバッテリ収納部の配線構造は、次の効果を有している。
車両側とバッテリ架台側との間に配線されたハーネスは、第1クリップ部によりバッテリボックスの天井部分に固定され、第2クリップ部により車両外方側の近くの、バッテリの上方に固定されるので、バッテリボックス内の2箇所の位置でハーネスが確実に固定され、かつその間に適宜撓み部が形成されるので、ハーネスの配線に影響されることなくバッテリ架台をバッテリボックス内に確実に収納できる。
【0017】
第1クリップと第2クリップの間に形成された撓み部分のハーネスが適宜引き延ばされるので、径の太いハーネスが配線されていても、バッテリ架台をバッテリボックスから円滑に引き出すことができる。またバッテリ架台をバッテリボックス内に押し入れた際、撓み部分では、ハーネスが円弧状に湾曲されるので、バッテリ架台をバッテリボックスに円滑に押し入れることができる。
【0018】
電気機器類がバッテリ架台の前面に配設されているので、バッテリ架台を車両外側に引き出すことにより、走行駆動に関する電気機器類の点検、整備が容易に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明にかかるバッテリ収納部の配線構造の一実施形態について、図を参照して説明する。
図1に、シリーズ式ハイブリッド方式を採用した大型路線バス(以下「HEVバス」とする。)の概略を示す。以下、車両の進行方向を前方とし、前方を基準に左右を定め、重力の方向を下方とし、車両の中心に向かう側を内側方向、その逆を外側方向として説明する。
【0020】
HEVバス10は、車両前方に運転席12を有し、車両の天井部分に電池部14、床下に燃料タンク17を具え、後方に、走行用電動モータ16、エンジン18、発電機19、補機ユニット20、ラジエータ23、バッテリ収納部40などを備えて構成されている。
【0021】
電池部14は、リチウムイオン電池などの充電池を複数具え、出力電圧は600V程度となっている。また車両後方の上部には、走行用電動モータ16のための走行用インバータ22と補機ユニット20のための補機用インバータ24が搭載してあり、それぞれ電池部14に接続されている。尚電池部14における、充電池の種類、電池電圧、及び電池部14の設置位置等はこれに限るものではない。
【0022】
エンジン18は、ディーゼルエンジンで、燃料タンク17に貯留されている燃料を用いて作動される。発電機19は、エンジン18に増速機を介して直接連結されており、エンジン18が作動されることにより発電を行なう。エンジン18は、発電機19を駆動させるに効率の最もよい状態で作動するように予め設定されている。エンジン18は、制御装置(図示せず。)に接続されており、HEVバス10のメインスイッチがオン状態であればHEVバス10の走行にかかわらず、制御装置からの指示に従って作動と停止が繰り返される。
【0023】
制御装置は、電池部14における充電状態を検出する検出手段(図示せず。)を具え、主として検出手段が検出した充電状態に基づいてエンジン18の作動、すなわち発電機19による発電の制御を行なう。尚、エンジン18はディーゼルエンジンに限らず、ガソリンその他の燃料を用いたエンジンでよい。
【0024】
ラジエータ23は、エンジン18の左方に設けてあり、ラジエータファン(図示せず。)で、HEVバス10の左方に設けられた左側壁11の開口部を通して外気をHEVバス10内に取り入れ、エンジン18内を循環して加熱された冷却水を冷却させる。ラジエータファンによりHEVバス10内に取り入れられた外気は、HEVバス10の床下や、HEVバス10の後方に設けられた後壁15の開口部(図示せず。)を通して車両後方に排出される。
【0025】
走行用電動モータ16は、後輪30の車軸にデファレンシャル機構26を介して2基並列して接続されている。走行用電動モータ16には走行用インバータ22からの電源線が接続してあり、運転席12での運転操作に従って走行用インバータ22から電力が走行用電動モータ16に供給され、後輪30が回転駆動される。
【0026】
走行用電動モータ16は、走行用インバータ22を介した電池部14からの電力のみで駆動されるとともに、電池部14の電力に発電機19で発電された電力を合わせて駆動され、更には発電機19で発電された電力のみでも駆動し、HEVバス10を走行させることができるように設定されている。
【0027】
補機ユニット20は、補機用モータを備え、HEVバス10のパワステアリングポンプや、エアコンプレッサなど(いずれも図示せず。)を駆動させる。またHEVバス10に設けられている前照灯32、方向指示器34、尾灯その他の車両本体に関する車両用電気機器類は、従来の大型バスで用いられているものと基本的に同一のものが用いられている。
【0028】
次に、バッテリ収納部40について説明する。
【0029】
バッテリ収納部40は、図2に示すように、バッテリボックス42と、バッテリボックス42内に設けられたバッテリ架台44と、車両用バッテリ46と、ハーネス48と、電気機器類52などから構成されている。
【0030】
バッテリボックス42は、金属製で、前面(車両に対しては側方に相当する。)が開放された箱型に形成されている。バッテリボックス42は、図1に示すようにHEVバス10の左側方に、前面をHEVバス10の左側壁11に開口させた状態で取り付けられている。バッテリボックス42の前面には、リッド(図示せず。)が取り付けられている。リッドは、HEVバス10の左側壁11と基本的に同一平面に形成してあり、左側壁11に開閉自在に取り付けられている。
【0031】
バッテリボックス42の奥には、図2に示すように引込口43が設けられ、引込口43を通してハーネス48が車両本体側からバッテリボックス42内に引き入れられている。またバッテリボックス42の天井部分には、第1クランプ部49が取り付けられている。第1クランプ部49は、環状の帯状体で、環状の内部にハーネス48を通し、ハーネス48を適度な保持力で保持している。
【0032】
バッテリ架台44は、平板状で、バッテリボックス42の内部に設けられている。バッテリ架台44の左右両側にはスライド部材45が取り付けてあり、スライド部材45を介してバッテリ架台44は、車両の幅方向、すなわち車両外方側に移動可能に設けられている。
【0033】
バッテリ架台44のほぼ中央には、ねじ軸58が2本取り付けられている。ねじ軸58はそれぞれ、バッテリ架台44に対して垂直に、かつバッテリ架台44の引き出し方向に並べて取り付けてある。またバッテリ架台44上には、保持板59が取り付けられている。保持板59は、車両用バッテリ46の下部に適合して取り付けられており、車両用バッテリ46の位置を固定させる。
【0034】
車両用バッテリ46は、電圧が12Vのバッテリであり、バッテリ架台44上に、保持板59に従って、かつねじ軸58を間に挟んで2個平行に搭載されている。車両用バッテリ46は、ハーネス48により電気的に直列に接続してあり、車両用バッテリ46の出力電圧は、HEVバス10の車両用電気機器に合わせた24Vになっている。
【0035】
車両用バッテリ46の上部には、図3に示すように固定ブラケット54が設けられている。固定ブラケット54は、平板状で、ねじ孔56が2箇所、バッテリ架台44上に取り付けられたねじ軸58に対応して形成してある。固定ブラケット54は、ねじ孔56をねじ軸58に通すと、2台の車両用バッテリ46の双方にかかり、締結部材としての蝶ねじ60を締結させることにより車両用バッテリ46を上方から押さえてバッテリ架台44上に固定する。
【0036】
また車両外側に位置するねじ軸58には、固定プレート64が取り付けられる。固定プレート64は、長板状で、一端に取付孔66が形成してある。取付孔66は、ねじ軸58に通すことが可能に形成されている。
【0037】
固定プレート64の他端側には、第2クランプ部68、および位置決め片70が設けられている。第2クランプ部68は、環状の帯状体で、固定プレート64の他端にねじ止めされている。第2クランプ部68は、環状の内側にハーネス48を通すと、ハーネス48を適度な保持力で保持するように形成されている。
【0038】
位置決め片70は、断面L字状で、L字状の縦片を下向きにして固定プレート64に取り付けられている。位置決め片70は、固定プレート64に設けられた取付孔66をねじ軸58に通し、固定プレート64を車両用バッテリ46の長手方向と直交した方向に向けると、位置決め片70の縦片が車両用バッテリ46の長手方向沿った端縁に掛かるように形成されている。これにより、固定プレート64の回動が係止され、そして蝶ねじ60を固定プレート64を通したねじ軸58に螺合させると、固定ブラケット54により車両用バッテリ46が固定されるとともに固定プレート64が固定ブラケット54に固着される。
【0039】
HEVバス10には、DC―DCコンバータ(図示せず。)が設けられている。DC―DCコンバータは、電池部14からの電気を24Vの電圧に変換し、その電力で、HEVバス10の車両用電気機器類52を駆動させ、また車両用バッテリ46の充電などを行わせている。
【0040】
次に、ハーネス48について説明する。ハーネス48は、車両用バッテリ46用の24Vの電力線と、走行用インバータ22や補機用インバータ24からの電力線、走行用電動モータ16や発電機19に接続される電力線など複数の電線が束ねられて構成されている。
【0041】
引込口43を通ってバッテリボックス42内に入ったハーネス48は、図4に示すように、第1クランプ部49で保持され、左回りで下降しながら第2クランプ部68に至り、第2クランプ部68で保持され、第2クランプ部68から、バッテリ架台44の前面(車両側方)に設けられた取付パネル61に連結されている。
【0042】
取付パネル61は、板状部材で、バッテリ架台44上の、車両用バッテリ46より車両外方側にほぼ垂直に固定されている。取付パネル61には、車両用電源(24V)の制御リレーやヒューズ類の他、例えば走行用電源(約600V)の制御リレーやヒューズなどからなる電気機器類52が組み付けられている。またこれら電気機器類52は、主に取付パネル61の車両外方側の面に取り付けられている。
【0043】
次に、バッテリ収納部40の作用、効果について説明する。
【0044】
バッテリ架台44をバッテリボックス42の内部に収納した状態では、図2、図4に示すようにハーネス48は、第1クランプ部49と第2クランプ部68の間において、撓み部74が形成され、図に示すように円弧状にほぼ一周巻回されている。
【0045】
例えば車両用電源(24V)のアース線72は、バッテリボックス42の後方(車幅方向内側)に延設されたフレーム(図示せず。)に一端が固定され、引込口43を通ってバッテリボックス42内に入り、第1クランプ部49を通って撓み部74で一周回した後、車両用バッテリ46のマイナス端子76に固定されている。
【0046】
また、車両用電源の正極側電線78は、アース線72と同様に、引込口43を通ってバッテリボックス42内に入り、第1クランプ部49を通って撓み部74で一周回した後、第2クランプ部68を通って取付パネル61に至り、取付パネル61に固定され、更にその後、第2クランプ部68を通って車両用バッテリ46のプラス端子80に連結されている。
【0047】
更に、走行用の電源線(約600V)や補器類駆動用の電源線が、上述したと同様に第1クランプ部49、第2クランプ部68および撓み部74を通ってバッテリボックス42内に配線されている。
【0048】
すなわちハーネス48は、第1クランプ部49で車両内方側が保持、固定され、第2クランプ部68で車両外方側が保持、固定され、撓み部74で周回された状態となっている。したがって、ハーネス48は、他の部材、特にバッテリボックス42の側壁やバッテリボックス42の上面などに接触することなく、常にかかる状態に保持され、バッテリボックス42内の狭い空間にコンパクトに収納されている。
【0049】
そして車両用バッテリ46や電気機器類52の点検、整備作業等に際して、リッドを開放し、バッテリ架台44をバッテリボックス42から引き出すと、第2クランプ部68がバッテリ架台44とともにバッテリボックス42の前方に移動し、それに伴いハーネス48も車両外方側に引き出される。
【0050】
図5に、バッテリ架台44をバッテリボックス42から引き出した状態を示す。このようにバッテリ架台44が車両外方に引き出されると、ハーネス48は、バッテリボックス42の奥の部分では第1クランプ部49に保持され、手前側が第2クランプ部68に取り付けられた状態で、引き出されるので、撓み部74の湾曲が解け、ハーネス48がほぼ直線状に引き延ばされる。尚撓み部74には、バッテリ架台44を最も前方に引き出した状態でもハーネス48が対応できるよう、予め十分な撓みが形成されている。このようにバッテリ架台44がバッテリボックス42から引き出されても、ハーネス48の車両内方側が第1クランプ部49で保持され、車両外方側が第2クランプ部68で保持されるので、ハーネス48は他の部材などと接触することなく、かつ安定した状態に保持される。
【0051】
車両用バッテリ46や電気機器類52の点検、整備作業等が終了し、再びバッテリ架台44をバッテリボックス42内に押し入れられると、第2クランプ部68がバッテリ架台44とともにバッテリボックス42の内部に移動する。すると第1クランプ部49と第2クランプ部68が、バッテリ架台44の移動方向に対して左右に若干ずれた位置に配置されていることや、ハーネス48の巻き癖などから、第1クランプ部49と第2クランプ部68の間のハーネス48が、図2および図4等に示すように円弧状に湾曲し、再度たわみ部74が形成される。このように撓み部74がハーネス48に形成されることにより、バッテリ架台44をバッテリボックス42から引き出す以前と同様の配線状態にハーネス48が保持される。
【0052】
したがって、バッテリ架台44がバッテリボックス42内に収納された状態であっても、車両外方に引き出された状態であっても、ハーネス48は常にそれぞれ所定の状態に配線される。そしてバッテリボックス42からバッテリ架台44を引き出したり、収納する動作を繰り返し行っても、ハーネス48がバッテリボックス42の内壁や他の部材と接触したり、擦過することがなく、高い耐久性を持たせることができる。
【0053】
固定プレート64は、位置決め片70により、車両用バッテリ46の端縁に当接しているので、むやみに回動することがなく、安定して固定ブラケット54に固着される。また固定プレート64は、蝶ねじ60により、固定ブラケット54とともにねじ軸58に固定されているので構成が簡易であり、また取り付けが容易で、車両用バッテリ46を含め、それらの取り付け、取り外しが容易にできる。
【0054】
24Vの車両用電源を含め、高圧の走行用電源の電気機器類52が取付パネル61に設けられているので、点検、交換等の作業が容易となる。従来のバッテリ収納部の構成に大幅の変更を加えることなく構成されており、低いコストで実施できる。
【0055】
尚、上記例では、HEVバス10を例に説明したが、本発明のバッテリ収納部は、HEVバスに限るものではない。また、車両用電源の電圧や、バッテリ収納部40の設置位置、構造等は上記例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】HEVバスを示す斜視図。
【図2】本発明にかかるバッテリボックスの一例を示す斜視図。
【図3】車両用バッテリを示す斜視図。
【図4】図2のバッテリボックスを示す平面図。
【図5】図2のバッテリボックスを示す斜視図。
【符号の説明】
【0057】
10…HEVバス
11…左側壁
12…運転席
14…電池部
16…走行用電動モータ
18…エンジン
19…発電機
40…バッテリ収納部
42…バッテリボックス
44…バッテリ架台
46…車両用バッテリ
48…ハーネス
49…第1クランプ部
52…電気機器類
54…固定ブラケット
64…固定プレート
68…第2クランプ部
70…位置決め片
74…撓み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部に設けられ、内部に車両用バッテリを収納させるバッテリボックスと、
前記車両用バッテリを載置し、前記バッテリボックスの内部に前記車両の外方に引き出し可能に設けられたバッテリ架台と、
前記車両用バッテリの上面に配設され、該車両用バッテリを前記バッテリ架台に固定する固定ブラケットと、
前記車両側と前記バッテリ架台側との間に配設されたハーネスと、
前記バッテリ架台と前記バッテリボックスの間に設けられ、前記バッテリ架台を前記車両外方向へ移動可能に支持するスライド部材と、を具備したバッテリ収納部において、
一端が前記固定ブラケットに固着され、他端が前記車両用バッテリの上面部で、かつ前記バッテリボックスの前記車両外側近傍に配置された固定プレートと、
前記バッテリボックスの天井部分に設けられ、前記ハーネスの前記車両の内方側が取り付けられる第1クランプ部と、
前記固定プレートの他端側に設けられ、前記ハーネスの前記車両の外方側が取り付けられる第2クランプ部とを有し、
前記バッテリ架台を前記バッテリボックスの外方に引き出すと、前記ハーネスの前記車両の外方側が該バッテリ架台とともに前記バッテリボックスの外方に引き出され、前記バッテリ架台を前記バッテリボックス内に押し入れると、前記ハーネスの前記第1クランプ部と第2クランプ部との間に、該ハーネスがほぼ所定の形状に撓む撓み部が形成されることを特徴とするバッテリ収納部の配線構造。
【請求項2】
前記撓み部は、円弧状に湾曲した前記ハーネスにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ収納部の配線構造。
【請求項3】
前記固定プレートは、位置決め片を前記他端の近傍に具え、該固定プレートの前記一端を前記固定ブラケットに固着させると前記位置決め片が前記バッテリの側面と係合し、前記一端側を中心とした該固定プレートの回動が防止されることを特徴とした請求項2に記載のバッテリ収納部の配線構造。
【請求項4】
前記固定プレートの前記一端側を、前記固定ブラケットを前記バッテリ架台に固定する締結部材で前記固定ブラケットに固着させることを特徴とした請求項3に記載のバッテリ収納部の配線構造。
【請求項5】
前記車両は、該車両を走行させる走行用電動モータおよび該走行用電動モータのための発電機を備えており、前記バッテリ架台には、前記車両用バッテリより車両外方側に、前記走行用電動モータもしくは前記発電機に関する電気機器類が配設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバッテリ収納部の配線構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−154824(P2009−154824A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338271(P2007−338271)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】