説明

バリアフィルムの製造方法、バリアフィルム及び有機光電変換素子の製造方法

【課題】本発明の目的は、きわめて高いバリア性能を達成できるフィルムを提供することにあり、また該フィルムを有機光電変換素子用樹脂基材として用いること、また、該有機光電変換素子用樹脂基材を用いて耐久性の高い透有機光電変換素子等のデバイスを得ることにある。
【解決手段】基材上の少なくとも一方の面に、少なくとも1種の珪素化合物を含有する液体を塗布し20℃〜120℃で塗布乾燥させ薄膜を形成した後に、前記薄膜に対し140℃以上での加熱処理を行うことなく、前記薄膜が塗布形成された基材上に、少なくとも1種の有機珪素化合物と酸素を含有する反応性ガスを用いるプラズマCVD法により、珪素酸化物の薄膜を積層することを特徴とするバリアフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電子デバイス等のパッケージ、または有機EL素子や太陽電池、液晶等のプラスチック基板といったディスプレイ材料に用いられるバリアフィルムおよびバリアフィルムを用いた各種デバイス用樹脂基材、および各種デバイス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したバリアフィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(EL)基板等において使用されている。
【0003】
この様な分野での包装材料としてはアルミ箔等が広く用いられているが、使用後の廃棄処理が問題となっているほか、基本的には不透明であり、外から内容物を確認することができないという課題を抱えており、更に、ディスプレイ材料では透明性が求められているため、全く適用することができない。
【0004】
特に、液晶表示素子、太陽電池などへの応用が進んでいる透明基材には、近年、軽量化、大型化という要求に加え、ロールツウロールでの生産が可能であること、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重く割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板として、高分子フィルムを用いた例が開示されて(例えば、特許文献1、2参照)いる。上記の透明樹脂フィルムとして例えばポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記する。)等の比較的酸素透過率の高いものを用いると、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスに対しバリア性が劣るという問題がある。例えば、有機光電変換素子の基板として用いた場合、ガスバリア性が劣る基材を用いると水蒸気や空気が浸透して、性能が経時的に低下し易くなるという問題がある。
【0005】
この様な問題を解決するためにフィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してバリアフィルム基材とすることが知られている。包装材や液晶表示素子に使用されるバリアフィルムとしてはプラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したもの(例えば、特許文献1参照)や酸化アルミニウムを蒸着したもの(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0006】
また、蒸着法の代わりに、ポリシラザンを主成分とする塗布液を塗布後、表面処理する方法でバリア層を形成する方法が知られている(特許文献3、4)。また窒化珪素および/または酸化窒化珪素により膜形成し酸化ガスで放電処理してなるバリア層、樹脂層と該バリア層を交互に形成するバリア膜付き積層体およびその形成方法も知られている。その放電処理方法として大気圧プラズマ処理の記載もある(特許文献5)。
【0007】
しかしながらいずれの技術も、有機光電変換素子等のバリア層としての機能は不十分なものであり、水蒸気透過率として、1×10−2g/(m・24h)を凌駕する、更なるバリア性の改善が求められていた。
【0008】
さらなるバリア性の改善のための技術として、上記ポリシラザン層と、プラズマCVD法を併用した技術も知られている(特許文献6参照)。この技術のポイントはポリシラザンを含む液体を塗布後加熱処理することにあるが、バリア性を得るには比較的高温で長時間の加熱処理が必要であり、例えばPESのような耐熱性の高い基材が必要で汎用性の高いPET等に適用するには困難があり、生産性も悪く、且つこの技術においても上述のバリア性能目標を達成するに至っていなかった。
【0009】
シラザン化合物を原料ガスとして、プラズマ化学蒸着法を用いて緻密で、剥離性、耐傷性、輝度寿命、透過率及び遮光性を有する機能体の形成方法が知られている(例えば、特許文献7)。この技術を用いて作製された機能体は、良好な機能を有する反面、プラズマCVD法特有の課題である、対向する電極間のプラズマ空間内においてパーティクルとよばれる、サブミクロンからミクロンサイズの原料反応生成物粒子が発生し、この粒子が蒸着膜面に付着することで均一な膜形成が阻害される場合があり、その部分が欠陥となって有機光電変換素子としての品質を低下させる懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平2−251429号公報
【特許文献2】特開平6−124785号公報
【特許文献3】特開2007−237588号公報
【特許文献4】特開2000−246830号公報
【特許文献5】特開2004−114645号公報
【特許文献6】特開平8−281861号公報
【特許文献7】特開2004−84027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、きわめて高いバリア性能を達成できるフィルムを提供することにあり、また該フィルムを有機光電変換素子用樹脂基材として用いること、また、該有機光電変換素子用樹脂基材を用いて耐久性の高い透有機光電変換素子等のデバイスを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は以下の手段により達成されるものである。
【0013】
1.基材上の少なくとも一方の面に、少なくとも1種の珪素化合物を含有する液体を20℃〜120℃で塗布乾燥させ薄膜を形成した後に、前記薄膜に対し140℃以上の加熱処理を行うことなく、前記薄膜が塗布形成された基材上に、少なくとも1種の有機珪素化合物と酸素を含有する反応性ガスを用いるプラズマCVD法により、珪素酸化物の薄膜を積層することを特徴とするバリアフィルムの製造方法。
【0014】
2.前記珪素化合物を含有する液体が少なくともポリシラザンを含む液体であることを特徴とする前記1記載のバリアフィルムの製造方法。
【0015】
3.前記珪素酸化物の薄膜が、大気圧または大気圧近傍の圧力下におけるプラズマCVD法により形成されることを特徴とする前記1または2記載のバリアフィルムの製造方法。
【0016】
4.前記プラズマCVD法が二種以上の高周波電界の下で行われることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のバリアフィルムの製造方法。
【0017】
5.前記1〜4のいずれか1項に記載のバリアフィルムの製造方法により製造されることを特徴とするバリアフィルム。
【0018】
6.前記1〜4のいずれか1項に記載のバリアフィルムの製造方法を用いることを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、製造安定性、取り扱い性に優れ、高いバリア性能を達成できるバリアフィルムを得ることができ、ガスバリア性に優れた有機光電変換素子用樹脂基材として有用なバリアフィルムを得ることが出来る、またその製造方法、および該基材を用いて有機光電変換素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ポリシラザン膜に加熱処理を行ったときのIR吸収の一例を示す図である。
【図2】バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図3】バルクヘテロジャンクション型で発電層がp−i−nの三層構成となっている有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図4】タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係わるバリアフィルムについて説明する。
【0022】
本発明のバリアフィルムは、樹脂フィルム支持体、例えばポリエチレンテレフタレート上に少なくとも2層のセラミック層を有している。即ち、珪素化合物を含有する液体を塗布乾燥した層と、その上に少なくとも1種の有機珪素化合物と酸素とを含有する反応性ガスを用いたプラズマ放電処理によって薄膜形成された(以下プラズマCVDで形成されたと記載)珪素酸化物層よりなるセラミック層を少なくとも2層有している。また、本発明のバリアフィルムは、このようなセラミック層が3層以上積層されていてもよい。
【0023】
〈ガスバリア性を有する層(以下バリア層)〉
本発明におけるバリア層は、珪素原子および酸素原子を含有し、酸素及び水蒸気の透過を阻止する膜で、構成する材料として具体的には、珪素を有する無機酸化物が好ましく、酸化珪素、酸化窒化珪素等のセラミック層を挙げることができる。
【0024】
この様な、バリア層により、JISK7129B法に従って測定した水蒸気透過率が、10−4g/(m・24h)以下、好ましくは10−5g/(m・24h)以下であり、酸素透過率が0.01ml/(m・24h・atm)以下、好ましくは0.001ml/(m・24h・atm)以下であるバリア性に優れた樹脂フィルムを支持体とするフィルムが得られる。
【0025】
本発明のバリアフィルムの水蒸気透過度としては、有機ELディスプレイや高精彩カラー液晶ディスプレイ等の高度の水蒸気バリア性を必要とする用途に用いる場合、特に有機ELディスプレイ用途の場合、極わずかであっても、成長するダークスポットが発生し、ディスプレイの表示寿命が極端に短くなる場合があるため、JISK7129B法に従って測定した水蒸気透過度は前記の値以下であることが好ましい。
【0026】
この様なバリア性を達成するためには、バリア層表面の表面粗さが、JIS B0601:2001に準じて求めた粗さ曲線の最大断面高さRt(p)で、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。本発明のバリアフィルムは、平滑層上に珪素化合物を塗布することでさらに平滑になり、その上に珪素酸化物層をプラズマCVDで積層しセラミック層を形成することにより、より平滑なバリア層を得ることができる。
【0027】
〈バリア層の形成方法〉
本発明のバリアフィルムの製造方法は、フィルム基材上の少なくとも一方の面に、少なくとも1種の珪素化合物を含有する液体を20℃〜120℃で塗布、乾燥させ珪素化合物薄膜を形成した後に、前記薄膜に対し140℃以上での加熱処理を行うことなく、前記薄膜が塗布形成された基材上に、少なくとも1種の有機珪素化合物と酸素を含有する反応性ガスを用いたプラズマCVD法により、珪素酸化物の薄膜を積層することを特徴とする。
【0028】
従来技術(例えば、特開平8−281861号公報記載)の様にポリシラザン塗布後に加熱処理(例えば、160℃で1時間加熱処理)した後に、プラズマCVDで珪素酸化物からなるバリア層を積層した場合、
1.珪素化合物塗布層は、既に珪素酸化物の硬い膜質となるように転化が進行しているため、プラズマCVDによる珪素酸化物の薄膜の積層工程において、搬送時のロールを通過した際の曲率の高い湾曲により、クラックが生じる場合があり、これによりバリア性の低下を引き起こす懸念があった。
【0029】
2.また、塗布で形成した珪素化合物塗布層から形成される珪素酸化物と、有機珪素化合物と酸素とを含有した反応性ガスを用いたプラズマCVDにより形成される珪素酸化物からなるバリア層との界面で密着性の低下が起こりやすくなり、同様にバリア性の低下が起こる懸念があった。
【0030】
それに対し本発明の製造方法においては、形成された塗布膜に乾燥後に新たに、層中の珪素化合物が実質的な酸化珪素への転化を起こしてしまう140℃以上の加熱処理を行わないで、後述のプラズマCVD法により珪素酸化物の薄膜を積層することによって、所望のバリア性と密着性、バリアフィルムとしてのフレキシビリティ性をもつバリア膜が得られる。そのメカニズムは定かではないが、140℃未満の処理温度であれば、珪素化合物が実質的に酸化珪素に転化しておらず、前駆体状態の珪素化合物が実質的に存在しており、この膜に、プラズマCVDを行うことで、プラズマエネルギーによる塗布膜表面近傍のポリシラザン(珪素化合物)の酸化珪素への転化と、一部シラノール基の形成もおこり、これとCVDによる酸化珪素の形成が同時に起こることによって、両層の界面での反応も促進され、緻密でかつ密着性のよい柔軟性のある膜質のバリア層が得られると推定される。さらに処理温度が120℃以下の処理温度であればより良好な性能のバリア層が得られる。
【0031】
従って、本発明は、140℃以上の加熱処理を用いず、塗布により形成された珪素化合物層が十分に酸化珪素に転化してしまう前に、プラズマCVD法により酸化珪素の薄膜を積層することに特徴があるのであり、例えば後述の一般式で表されるポリシラザンの場合には、酸化珪素への転化の程度は、珪素化合物(ポリシラザン)薄膜のIR吸収を測定することで知ることができる。
【0032】
ポリシラザンが酸化珪素に転化するに従って、ポリシラザンのSi−N伸縮振動に帰属される吸収が減衰してゆくので、酸化珪素ももつSi−Oに帰属される(非対称)伸縮振動に帰属される吸収(1080cm−1)のSi−N伸縮振動に帰属される吸収(960cm−1)に対する比(Si−O)1080/(Si−N)960をとれば珪素化合物の酸化珪素への転化の度合いを知ることができる。
【0033】
図1(1)に、ポリシラザンの一例として、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20から形成された薄膜(膜厚300nm)に、60℃、80℃、120℃、150℃で30分加熱処理を行ったもののIR吸収曲線をそれぞれ示した。aで表されるピークがSi−Oに帰属される(非対称)伸縮振動に帰属される吸収(1080cm−1)であり、また、bで表されるピークがSi−N伸縮振動に帰属される吸収(960cm−1)である。
【0034】
加熱時間が30分程度の場合、温度60℃、80℃ではピーク強度比a/bが4以下であるが、また120℃では5程度であり、加熱条件が150℃では、bで表されるSi−N伸縮振動に帰属される吸収(960cm−1)は、殆ど、なくっており(a/b=10以上)、かなりの程度酸化珪素に熱反応の結果転化していると考えられる。因みに、完全に焼成した場合(例えば150℃で1日の加熱条件)、a/bは20以上になる。
【0035】
図1(2)には、各温度での60分、180分加熱のデータも示した。
【0036】
本発明では、実質的に酸化珪素への転化がそれほど進まないうちに、即ち、珪素化合物層を塗布形成後140℃以上の熱処理を行わずにプラズマCVDによる酸化珪素層の形成を行うことを特徴とする。ポリシラザンを用いたとき、Si−Oに帰属される(非対称)伸縮振動に帰属される吸収(1080cm−1)のSi−N伸縮振動に帰属される吸収(960cm−1)に対する比(Si−O)1080/(Si−N)960(=a/b)の変化によりこの酸化珪素への転化をみると、a/bが0.1以上、5以下であれば、充分に珪素化合物が残留し、実質的に酸化珪素への転化が進んでいない状態であると判断でき、好ましくはa/bが0.1以上、5以下であるときに、プラズマCVDによる酸化珪素膜の積層を行えばよい。a/bがこの範囲であれば、充分に珪素化合物が残留し、実質的に酸化珪素への転化が進んでいない状態である。a/bが3以下であれば更に好ましく、より好ましいのは0.3以上、1以下である。
【0037】
従って本発明は、別の好ましい態様においては、基材上の少なくとも一方の面に、少なくとも1種の珪素化合物を含有する液体を塗布し20℃〜120℃で塗布乾燥させ薄膜を形成した後に、前記薄膜において、該薄膜が、IR測定において、Si−Oに帰属される(非対称)伸縮振動に帰属される吸収(1080cm−1)のSi−N伸縮振動に帰属される吸収(960cm−1)に対する比(Si−O)1080/(Si−N)960が、0.1以上、5以下のとき、前記薄膜が塗布形成された基材上に、少なくとも1種の有機珪素化合物と酸素を含有する反応性ガスを用いたプラズマCVD法により、珪素酸化物の薄膜を積層することを特徴とするバリアフィルムの製造方法ということができる。
【0038】
珪素化合物塗膜においてプラズマエネルギーによる一部シラノール基の形成もおこり、これとCVDによる酸化珪素の形成が同時に起こることで、両層の界面での反応が促進され、緻密でかつ密着性のよい柔軟性のある膜質のバリア層が得られると推定される。
【0039】
なお、上記のIR吸収による測定は、別に、珪素化合物薄膜(乾燥膜厚300nm)を(IR吸収のない)BaF板上にスピンコーター等で塗布形成し、これを種々の条件で熱処理して測定すること行うことができる。IR測定装置は、FT−IR Nexus870 サーモフィッシャーサイエンティフィック社製等を用いることができる。
【0040】
基材上への珪素化合物を含有する液体の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布厚みは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗布厚みは、乾燥後の厚みが好ましくは5nm〜2μm程度、さらに好ましくは10nm〜1μm程度、最も好ましくは30nm〜0.5μm程度となるように設定され得る。
【0041】
〈塗布乾燥し形成される珪素化合物塗布層〉
本発明の塗布・乾燥し形成される珪素化合物塗布層に用いることのできる珪素化合物として好ましいものとして、ポリシラザン、シルセスキオキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン、テトラメチルシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、1,1−ジメチル−1−シラシクロブタン、トリメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジビニルシラン、ジメチルエトキシエチニルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、アリールトリメトキシシラン、エトキシジメチルビニルシラン、アリールアミノトリメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミド、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリビニルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、メチルトリアセトキシシラン、アリールオキシジメチルビニルシラン、ジエチルビニルシラン、ブチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、テトラビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン、テトラアセトキシシラン、3−トリフルオロアセトキシプロピルトリメトキシシラン、ジアリールジメトキシシラン、ブチルジメトキシビニルシラン、トリメチル−3−ビニルチオプロピルシラン、フェニルトリメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルイソペンチロキシビニルシラン、2−アリールオキシエチルチオメトキシトリメチルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アリールアミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ジメチルエチキシフェニルシラン、ベンゾイロキシトリメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジアセトキシメチルフェニルシラン、ジメチル−p−トリルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ジエチルメチルフェニルシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、デシルメチルジメトキシシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、オクチロキシトリメチルシラン、フェニルトリビニルシラン、テトラアリールオキシシラン、ドデシルトリメチルシラン、ジアリールメチルフェニルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、ジフェニルエトキシメチルシラン、ジアセトキシジフェニルシラン、ジベンジルジメチルシラン、ジアリールジフェニルシラン、オクタデシルトリメチルシラン、メチルオクタデシルジメチルシラン、ドコシルメチルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アセトキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等を挙げることができる。
【0042】
なかでもポリシラザン、シルセスキオキサンなどがより好ましく用いられる。
【0043】
本発明で用いられるポリシラザンとは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si、および両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
【0044】
フィルム基材を損なわないようにするには、特開平8−112879号公報に記載されているように比較的低温でセラミック化してシリカに変性するものがよく、下記一般式で表されるものを好ましく用いることが出来る。
【0045】
【化1】

【0046】
ただし、式中のR1、R2、R3のそれぞれは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基などであって、本発明では得られるバリア膜としての緻密性から、R1、R2及びR3のすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
【0047】
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンはメチル基等のアルキル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
【0048】
パーヒドロポリシラザンは直鎖構造と6および8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体または固体の物質であり、分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
【0049】
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記化1のポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
【0050】
ポリシラザンを含有する液体を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは好ましくない。具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリコロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度、等目的にあわせて選択し、複数の溶剤を混合しても良い。
【0051】
ポリシラザン含有塗布液中のポリシラザン濃度は目的とするシリカ膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度である。
【0052】
有機ポリシラザンは、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。アルキル基、特にもっとも分子量の少ないメチル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいシリカ膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる。
【0053】
酸化珪素化合物への転化を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140などが挙げられる。
【0054】
シルセスキオキサンとしては、Mayaterials社製Q8シリーズのOctakis(tetramethylammonium)pentacyclo−octasiloxane−octakis(yloxide)hydrate; Octa(tetramethylammonium)silsesquioxane、Octakis(dimethylsiloxy)octasilsesquioxane、Octa[[3−[(3−ethyl−3−oxetanyl)methoxy]propyl]dimethylsiloxy] octasilsesquioxane; Octaallyloxetane silsesquioxane、Octa[(3−Propylglycidylether)Dimethylsiloxy] Silsesquioxane; Octakis[[3−(2,3−epoxypropoxy)propyl] dimethylsiloxy]octasilsesquioxane、Octakis[[2−(3,4−epoxycyclohexyl)ethyl] dimethylsiloxy]octasilsesquioxane、Octakis[2−(vinyl)dimethylsiloxy]silsesquioxane; Octakis(dimethylvinylsiloxy)octasilsesquioxane、Octakis[(3−hydroxypropyl)dimethylsiloxy] octasilsesquioxane、Octa[(methacryloylpropyl)dimethylsilyloxy]silsesquioxane Octakis[(3−methacryloxypropyl)dimethylsiloxy] octasilsesquioxane、および下記構造式の化合物が挙げられる。
【0055】
【化2】

【0056】
【化3】

【0057】
本発明で珪素化合物を含有する液体を塗布した後の乾燥温度としては通常20℃〜120℃、好ましくは40℃〜100℃であり、乾燥時間は乾燥温度と塗布膜厚によるが溶剤が蒸発して珪素化合物を含有する層を形成できれば良く、概ね数秒〜数分である。これより高温で乾燥すると、珪素化合物の珪素酸化物への実質的な転化が起こるおそれがあり、また、使用するプラスチック基材、塗布膜厚等によっては、塗布膜側へのカールが大きくなったり、塗布膜にクラックが生じる場合がある。逆にこれより低温になると密着性が低下することがある。
【0058】
なお、本発明の塗布層は、単層でも、複数の同様な層を積層してもよく、また、後述のプラズマCVDとの組み合わせユニットは1回でも2回以上の複数回でも良く、クラックの発生等の悪影響の出ない範囲で複数回行うことで更にバリア性を向上させることができる。
【0059】
〈プラズマCVDによる珪素酸化物層〉
次に本発明では前述の塗布層に、少なくとも1種の有機珪素化合物と酸素とを含有する反応性ガスを用いたプラズマCVD法によってさらに酸化珪素層を積層する。
【0060】
本発明では、前述のように形成された塗布層(膜)を乾燥後に、実質的にこれをシリカへ転化させる加熱処理を行うことなく、後述のプラズマCVD法により更に酸化珪素の薄膜を積層することによって、プラズマCVD法による酸化珪素の薄膜の形成と共に、前記塗布層のシリカへの転化を同時に起こさせ、所望のバリア性と密着性をもつフレキシビリティ性に優れたバリアフィルムを得ることができる。
【0061】
前述のように、そのメカニズムは定かではないが、プラズマエネルギーによる塗布膜表面近傍のポリシラザンの酸化珪素への転化と、一部シラノール基の形成もおこることで、これとCVDによる酸化珪素の形成が同時に起こり、両層の界面での反応が促進され、緻密でかつ密着性のよい柔軟性のある膜質のバリア層が得られると推定される。
【0062】
(プラズマCVD)
一般に珪素酸化物層を形成する方法には真空蒸着やスパッタ法、後述するプラズマCVD等が知られているが、真空蒸着法やスパッタ法では前述のような十分に優れたバリア性は得られない。
【0063】
一方、プラズマCVD法では、バリア性の高い膜を形成できる反面、製膜工程において、パーティクルと呼ばれる微粒子状の異物が発生しバリア層中あるいは表面に付着した欠陥を生じやすい欠陥がある。
【0064】
本発明のバリアフィルムは、この様な欠陥が生じても、前述の珪素化合物を有する層の存在により、欠陥部からのガス透過を抑制することができ、より高いバリア性を実現できるものである。
【0065】
本発明におけるこれらの珪素化合物を有する薄膜(層)の厚さは、用いられる材料の種類、構成により最適条件が異なり、適宜選択されるが、5〜2000nmの範囲内であることが好ましい。
【0066】
珪素化合物を有する層の厚さが、上記の範囲より薄い場合には、膜欠陥が多く均一な膜が得られず、ガスに対するバリア性の向上を得られにくい。また、珪素化合物を有する層の厚さが上記の範囲より厚い場合には、理論的には防湿性は高いが、内部応力が不必要に大きくなりバリアフィルム成膜時に、あるいは成膜後の折り曲げ、引っ張り等の外的要因で亀裂が生じる等のおそれがあり好ましいバリア性が得られないことがある。
【0067】
また、本発明においては、前記珪素化合物を有する層にプラズマCVDにより珪素酸化物の薄膜を積層したものについては透明であることが好ましい。透明であることにより、バリアフィルムを透明なものとすることが可能となり、EL素子の透明基板等の用途にも使用することが可能となるからである。バリアフィルムの光透過率としては、例えば試験光の波長を550nmとしたとき透過率が80%以上のものが好ましく、90%以上が更に好ましい。
【0068】
プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法は、原材料(原料ともいう)である有機金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力などの条件を選ぶことで、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属硫化物等のセラミック層を、またこれらの金属酸窒化物、金属窒化炭化物などとの混合物も作り分けることができるため好ましい。
【0069】
例えば、珪素素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、珪素酸化物が生成する。また、亜鉛化合物を原料化合物として用い、分解ガスに二硫化炭素を用いれば、硫化亜鉛が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
【0070】
このような無機物の原料としては、典型または遷移金属元素を有していれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。又、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することができる。
【0071】
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガスなどが挙げられる。
【0072】
金属元素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、各種の金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物を得ることができる。
【0073】
本発明においては、金属元素を含む原料ガスとして、珪素化合物が用いられ、珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシラン、テトラエチルシラン等のアルキルシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシジシロキサン(TMDSO)等の珪素アルコキシド等の有機珪素化合物;モノシラン、ジシラン等の珪素水素化合物;ジクロルシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等のハロゲン化珪素化合物;その他オルガノシラン等を挙げることが出来、何れも好ましく用いることが出来る。また、これらは適宜組み合わせて用いることが出来る。上記の珪素化合物は、取り扱い上の観点から珪素アルコキシド、アルキルシラン、珪素水素化合物が好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、特に珪素化合物として珪素アルコキシドが好ましい。
【0074】
これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。
【0075】
このような放電ガスとしては、窒素ガスおよび/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
【0076】
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
【0077】
本発明に係る珪素酸化物の薄膜においては、含有する無機化合物が、SiOxCy(x=1.5〜2.0、y=0〜0.5)または、SiOx、SiNyまたはSiOxNy(x=1〜2、y=0.1〜1)であることが好ましく、光線透過性及び後述する大気圧プラズマCVD適性の観点から、SiOxであることが好ましい。
【0078】
次いで、本発明のバリアフィルムの製造方法において、本発明に係る珪素酸化物の薄膜の形成に好適に用いることのできる大気圧プラズマCVD法について、更に詳細に説明する。
【0079】
CVD法(化学的気相成長法)は、揮発・昇華した有機金属化合物が高温の支持体表面に付着し、熱により分解反応が起き、熱的に安定な無機物の薄膜が生成されるというものであり、このような通常のCVD法(熱CVD法とも称する)では、通常500℃以上の基板温度が必要であるため、プラスチック支持体への製膜には使用することが難しいが一方、プラズマCVD法は、支持体近傍の空間に電界を印加し、プラズマ状態となった気体が存在する空間(プラズマ空間)を発生させ、揮発・昇華した有機金属化合物がこのプラズマ空間に導入されて分解反応が起きた後に支持体上に吹きつけられることにより、無機物の薄膜を形成するというものである。プラズマ空間内では、数%の高い割合の気体がイオンと電子に電離しており、ガスの温度は低く保たれるものの、電子温度は非常な高温のため、この高温の電子、あるいは低温ではあるがイオン・ラジカルなどの励起状態のガスと接するために無機膜の原料である有機金属化合物は低温でも分解することができる。したがって、無機物を製膜する支持体についても低温化することができ、樹脂フィルム支持体上へも十分製膜することが可能な製膜方法である。
【0080】
またこの方法によれば、樹脂フィルム上に前記珪素酸化物の薄膜を形成させたときの膜密度が緻密であり、安定した性能を有する薄膜が得られる。
【0081】
次いで、大気圧或いは大気圧近傍でのプラズマCVD法を用いた前述の珪素酸化物薄膜の積層方法の一例について述べる。
【0082】
プラズマ放電処理装置においては、ガス供給手段から、前記金属を含む原料ガス、分解ガスを適宜選択して、またこれらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合してプラズマ放電発生装置にガスを送りこむことで前記の層を得ることができる。
【0083】
本発明において、プラズマ放電処理は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で行われるが、大気圧もしくはその近傍の圧力とは20kPa〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。
【0084】
本発明における放電条件は、放電空間に、前記第1の高周波電界と第2の高周波電界とを重畳し、前記第1の高周波電界の周波数ω1より前記第2の高周波電界の周波数ω2が高く、且つ、前記第1の高周波電界の強さV1、前記第2の高周波電界の強さV2および放電開始電界の強さIVとの関係が、
V1≧IV>V2または V1>IV≧V2 を満たし、
前記第2の高周波電界の出力密度が、1W/cm以上である。
【0085】
高周波とは、少なくとも40kHzの周波数を有するものを言う。
【0086】
重畳する高周波電界が、ともにサイン波である場合、第1の高周波電界の周波数ω1と該周波数ω1より高い第2の高周波電界の周波数ω2とを重ね合わせた成分となり、その波形は周波数ω1のサイン波上に、それより高い周波数ω2のサイン波が重なった鋸歯状の波形となる。
【0087】
本発明において、放電開始電界の強さとは、実際の薄膜形成方法に使用される放電空間(電極の構成など)および反応条件(ガス条件など)において放電を起こすことの出来る最低電界強度のことを指す。放電開始電界強度は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種または電極間距離などによって多少変動するが、同じ放電空間においては、放電ガスの放電開始電界強度に支配される。
【0088】
上記でサイン波等の連続波の重畳について説明したが、これに限られるものではなく、両方パルス波であっても、一方が連続波でもう一方がパルス波であってもかまわない。また、更に第3の電界を有していてもよい。
【0089】
上記本発明の高周波電界を、同一放電空間に印加する具体的な方法としては、対向電極を構成する第1電極に周波数ω1であって電界強度V1である第1の高周波電界を印加する第1電源を接続し、第2電極に周波数ω2であって電界強度V2である第2の高周波電界を印加する第2電源を接続した大気圧プラズマ放電処理装置を用いることである。
【0090】
上記の大気圧プラズマ放電処理装置には、対向電極間に、放電ガスと反応性ガスとを供給するガス供給手段を備える。更に、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。
【0091】
また、第1電極、第1電源またはそれらの間の何れかには第1フィルタを、また第2電極、第2電源またはそれらの間の何れかには第2フィルタを接続することが好ましく、第1フィルタは第1電源から第1電極への第1の高周波電界の電流を通過しやすくし、第2の高周波電界の電流をアースして、第2電源から第1電源への第2の高周波電界の電流を通過しにくくする。また、第2フィルタはその逆で、第2電源から第2電極への第2の高周波電界の電流を通過しやすくし、第1の高周波電界の電流をアースして、第1電源から第2電源への第1の高周波電界の電流を通過しにくくする機能が備わっているものを使用する。ここで、通過しにくいとは、好ましくは、電流の20%以下、より好ましくは10%以下しか通さないことをいう。逆に通過しやすいとは、好ましくは電流の80%以上、より好ましくは90%以上を通すことをいう。
【0092】
更に、本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第1電源は、第2電源より高い高周波電界強度を印加出来る能力を有していることが好ましい。
【0093】
ここで、本発明でいう高周波電界強度(印加電界強度)と放電開始電界強度は、下記の方法で測定されたものをいう。
【0094】
高周波電界強度V1及びV2(単位:kV/mm)の測定方法:
各電極部に高周波電圧プローブ(P6015A)を設置し、該高周波電圧プローブの出力信号をオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、電界強度を測定する。
【0095】
放電開始電界強度IV(単位:kV/mm)の測定方法:
電極間に放電ガスを供給し、この電極間の電界強度を増大させていき、放電が始まる電界強度を放電開始電界強度IVと定義する。測定器は上記高周波電界強度測定と同じである。
【0096】
本発明で規定する放電条件をとることにより、例え窒素ガスのように放電開始電界強度が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持出来、高性能な薄膜形成を行うことが出来るのである。
【0097】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電界強度IV(1/2Vp−p)は3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の高周波電界強度を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることが出来る。
【0098】
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることが出来る。またこの電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。下限は40kHz程度が望ましい。
【0099】
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
【0100】
このような2つの電源から高周波電界を印加することは、第1の高周波電界によって高い放電開始電界強度を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の高周波電界の高い周波数および高い出力密度によりプラズマ密度を高くできることが本発明の重要な点である。
【0101】
また、第1の高周波電界の出力密度を高くすることで、放電の均一性を維持したまま、第2の高周波電界の出力密度を向上させることができる。これにより、更なる均一高密度プラズマが生成できる。
【0102】
本発明に用いられる大気圧プラズマ放電処理装置において、前記第1フィルタは、第1電源から第1電極への第1の高周波電界の電流を通過しやすくし、第2の高周波電界の電流をアースして、第2電源から第1電源への第2の高周波電界の電流を通過しにくくする。また、第2フィルタはその逆で、第2電源から第2電極への第2の高周波電界の電流を通過しやすくし、第1の高周波電界の電流をアースして、第1電源から第2電源への第1の高周波電界の電流を通過しにくくする。本発明において、かかる性質のあるフィルタであれば制限無く使用出来る。
【0103】
例えば、第1フィルタとしては、第2電源の周波数に応じて数10pF〜数万pFのコンデンサ、もしくは数μH程度のコイルを用いることが出来る。第2フィルタとしては、第1電源の周波数に応じて10μH以上のコイルを用い、これらのコイルまたはコンデンサを介してアース接地することでフィルタとして使用出来る。
【0104】
供給電力は高いほど良く、第1電源は1W/cm以上が好ましく、2W/cm以上がより好ましく、5W/cm以上が更に好ましい。第2電源は、1W/cm以上が好ましく、5W/cm以上がより好ましく、11W/cm以上が更に好ましい。
【0105】
また、放電ガスとしては、窒素ガスおよび/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。反応性ガスとしては珪素化合物を珪素酸化物にできれば限定はないが、酸素、水が好ましい。
【0106】
本発明に適用できる大気圧プラズマ放電処理装置としては、例えば、特開2004−68143号公報、同2003−49272号公報、国際特許第02/48428号パンフレット等に記載されている大気圧プラズマ放電処理装置を挙げることができる。
【0107】
また、大気圧プラズマ放電処理装置に設置する電源としては、神鋼電機 SPG50−4500(周波数50kHz)、ハイデン研究所 PHF−6k(100kHz)、パール工業 CF−2000−200k(200kHz)、CF−2000−400k(400kHz)、CF−2000−800k(800kHz)、CF−2000−2M(2MHz)、CF−2000−13M(13.56MHz)、CF−2000−27M(27MHz)、CF−2000−150M(150MHz)等の市販のものが挙げられ、いずれも好ましく使用できる。
【0108】
次に、本発明を更に詳しく説明する。
【0109】
次に本発明に係るバリアフィルムで基材として用いられる樹脂フィルム支持体について説明する。
【0110】
基材である樹脂フィルム支持体は、前述のバリア層を保持することができる有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
【0111】
例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられ、また、光学的透明性、耐熱性、無機層、バリア層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムが好ましく用いることができる。支持体の厚みは5〜500μm程度が好ましく、更に好ましくは25〜250μmである。
【0112】
また、本発明に係る樹脂フィルム支持体は透明であることが好ましい。支持体が透明であり、支持体上に形成する層も透明であることにより、透明なバリアフィルムとすることが可能となるため、有機EL素子等の透明基板とすることも可能となるからである。
【0113】
また、上記に挙げた樹脂等を用いた樹脂フィルム支持体は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0114】
本発明に用いられる樹脂フィルム支持体は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の支持体を製造することができる。また、未延伸の支持体を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、支持体の流れ(縦軸)方向、または支持体の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。この場合の延伸倍率は、支持体の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0115】
また、本発明においては、バリア膜を形成する前に樹脂フィルム支持体をコロナ放電処理してもよい。
【0116】
さらに、本発明に係る支持体表面には、蒸着膜との密着性の向上を目的としてアンカーコート剤層を形成してもよい。このアンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を、1または2種以上併せて使用することができる。これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により支持体上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0117】
(平滑層)
本発明において、基材樹脂フィルム上には平滑層が設けられていることが好ましい。
【0118】
本発明の平滑層は、突起等が存在する透明樹脂フィルム支持体の粗面を平坦化し、あるいは、透明樹脂フィルム支持体に存在する突起により透明無機化合物層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。このような平滑層は、基本的には感光性樹脂を硬化させて形成される。
【0119】
平滑層の感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
【0120】
光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトリキエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、および、上記のアクリレートをメタクリレートに換えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。上記の反応性モノマーは、1種または2種以上の混合物として、あるいは、その他の化合物との混合物として使用することができる。
【0121】
感光性樹脂の組成物は光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられ、これらの光重合開始剤を1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0122】
平滑層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
【0123】
平滑層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、平滑層の積層位置に関係なく、いずれの平滑層においても、成膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
【0124】
感光性樹脂を溶媒に溶解または分散させた塗布液を用いて平滑層を形成する際に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
【0125】
平滑層の平滑性は、JIS B 0601で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。この範囲よりも値が小さい場合には、後述のケイ素化合物を塗布する段階で、ワイヤーバー、ワイヤレスバーなどの塗布方式で、平滑層表面に塗工手段が接触する場合に、塗布性が損なわれる場合がある。また、この範囲よりも大きい場合には、ケイ素化合物を塗布した後の、凹凸を平滑化することが難しくなる場合がある。
【0126】
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
【0127】
(平滑層への添加剤)
好ましい態様のひとつは、前述の感光性樹脂中に表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を含むものである。ここで光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基などを挙げることができる。また感光性樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。また感光性樹脂としては、このような反応性シリカ粒子や重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物に適宜汎用の希釈溶剤を混合することによって固形分を調整したものを用いることができる。
【0128】
ここで反応性シリカ粒子の平均粒子径としては、0.001〜0.1μmの平均粒子径であることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲にすることにより、後述する平均粒子径1〜10μmの無機粒子からなるマット剤と組合せて用いることによって、防眩性と解像性とをバランス良く満たす光学特性と、ハードコート性とを兼ね備えた平滑層を形成し易くなる。尚、このような効果をより得易くする観点からは、更に平均粒子径として0.001〜0.01μmのものを用いることがより好ましい。本発明に用いられる平滑層中には、上述の様な無機粒子を質量比として20%以上60%以下含有することが好ましい。20%以上添加することで、ガスバリア層との密着性が向上する。また60%を超えると、フィルムを湾曲させたり、加熱処理を行った場合にクラックが生じたり、ガスバリアフィルムの透明性や屈折率などの光学的物性に影響を及ぼすことがある。
【0129】
本発明では、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。
【0130】
加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシリル基、アセトキシリル基等のカルボキシリレートシリル基、クロシリル基等のハロゲン化シリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、ヒドリドシリル基等が挙げられる。
【0131】
重合性不飽和基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニイル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
【0132】
本発明における平滑層の厚みとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、平滑層を有するフィルムとしての平滑性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、平滑フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層を透明高分子フィルムの一方の面にのみ設けた場合における平滑フィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
【0133】
(ブリードアウト防止層)
ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、フィルム支持体中から未反応のオリゴマーなどが表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で、平滑層を有する基材の反対面に設けられる。
【0134】
ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。
【0135】
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
【0136】
ここで多価不飽和有機化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0137】
また単価不飽和有機化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0138】
その他の添加剤として、マット剤を含有しても良い。マット剤としては、平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
【0139】
このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種又は2種以上を併せて使用することができる。
【0140】
ここで無機粒子からなるマット剤は、ハードコート剤の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
【0141】
また本発明のブリードアウト防止層には、ハードコート剤及びマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
【0142】
このような熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0143】
また熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0144】
また電離放射線硬化性樹脂としては、光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーなどの1種又は2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に電離放射線(紫外線又は電子線)を照射することで硬化するものを使用することができる。ここで光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等が使用できる。また光重合性モノマーとしては、上記に記載した多価不飽和有機化合物等が使用できる。
【0145】
また光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
【0146】
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、及び必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を支持体フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。尚、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
【0147】
本発明におけるブリードアウト防止層の厚みとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、フィルムとしての耐熱性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、平滑フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層を透明高分子フィルムの一方の面に設けた場合におけるバリアフィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
【0148】
本発明のバリアフィルムは、種々の封止用材料、フィルムとして用いることができる。
【0149】
本発明のガスバリアフィルムは、例えば有機光電変換素子に用いることができる。有機光電変換素子に用いる際に、本発明のガスバリアフィルムは透明であるため、このガスバリアフィルムを支持体として用いてこの側から太陽光の受光を行うように構成できる。即ち、このガスバリアフィルム上に、例えば、ITO等の透明導電性薄膜を透明電極として設け、有機光電変換素子用樹脂支持体を構成することができる。そして、支持体上に設けられたITO透明導電膜を陽極としてこの上に多孔質半導体層を設け、更に金属膜からなる陰極を形成して有機光電変換素子を形成し、この上に別の封止材料を(同じでもよいが)重ねて前記ガスバリアフィルム支持体と周囲を接着、素子を封じ込めることで有機光電変換素子を封止することができ、これにより外気の湿気や酸素等のガスによる素子への影響を封じることが出来る。
【0150】
有機光電変換素子用樹脂支持体はこの様にして形成されたガスバリアフィルムのセラミック層上に、透明導電性膜を形成することによって得られる。
【0151】
透明導電膜の形成は、真空蒸着法やスパッタリング法等を用いることにより、また、インジウム、スズ等の金属アルコキシド等を用いたゾルゲル法等塗布法によっても製造できる。
【0152】
透明導電膜の膜厚としては、0.1nm〜1000nmの範囲の透明導電膜が好ましい。
【0153】
次いでこれらガスバリアフィルム、またこれに透明導電膜が形成された有機光電変換素子用樹脂支持体を用いた有機光電変換素子について説明する。
【0154】
〔封止フィルムとその製造方法〕
本発明は、前記セラミック層を有するバリアフィルムを基板として用いることが特徴の一つである。
【0155】
前記セラミック層を有するガスバリアフィルムにおいてセラミック層上に、更に透明導電膜を形成し、これを陽極としてこの上に、有機光電変換素子を構成する層、陰極となる層とを積層し、この上に更にもう一つのガスバリアフィルム(封止材料)を封止フィルムとして、重ね接着することで封止することができる。
【0156】
用いられるもう一つのガスバリアフィルム(封止材料)としては、本発明に係わる前記緻密な構造を有するセラミック層を有するバリアフィルムを用いることができる。また、例えば、包装材等に使用される公知のバリアフィルム、例えばプラスチックフィルム上に酸化ケイ素や、酸化アルミニウムを蒸着したもの、緻密なセラミック層と、柔軟性を有する衝撃緩和ポリマー層を交互に積層した構成のバリアフィルム等を封止フィルムとして用いることが出来る。また特に、樹脂ラミネート(ポリマー膜)された金属箔は、光取りだし側のバリアフィルムとして用いることはできないが、低コストで更に透湿性の低い封止材料であり光取り出しを意図しない(透明性を要求されない)場合封止フィルムとして好ましい。
【0157】
本発明において金属箔とはスパッタや蒸着等で形成された金属薄膜や、導電性ペースト等の流動性電極材料から形成された導電膜と異なり、圧延等で形成された金属の箔またはフィルムを指す。
【0158】
金属箔としては、金属の種類に特に限定はなく、例えば銅(Cu)箔、アルミニウム(Al)箔、金(Au)箔、黄銅箔、ニッケル(Ni)箔、チタン(Ti)箔、銅合金箔、ステンレス箔、スズ(Sn)箔、高ニッケル合金箔等が挙げられる。これらの各種の金属箔の中で特に好ましい金属箔としてはAl箔が挙げられる。
【0159】
金属箔の厚さは6〜50μmが好ましい。6μm未満の場合は、金属箔に用いる材料によっては使用時にピンホールが空き、必要とするバリア性(透湿度、酸素透過率)が得られなくなる場合がある。50μmを越えた場合は、金属箔に用いる材料によってはコストが高くなったり、有機光電変換素子が厚くなりフィルムのメリットが少なくなる場合がある。
【0160】
樹脂フィルム(ポリマー膜)がラミネートされた金属箔において樹脂フィルムとしては、機能性包装材料の新展開(株式会社 東レリサーチセンター)に記載の各種材料を使用することが可能であり、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体系樹脂、セロハン系樹脂、ビニロン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂、ナイロン系樹脂等の樹脂は、延伸されていてもよく、さらに塩化ビニリデン系樹脂をコートされていてもよい。また、ポリエチレン系樹脂は、低密度あるいは高密度のものも用いることができる。
【0161】
後述するが、2つのフィルムの封止方法としては、例えば、一般に使用されるインパルスシーラー熱融着性の樹脂層をラミネートして、インパルスシーラーで融着させ、封止する方法が好ましく、この場合、バリアフィルム同士の封止は、フィルム膜厚が300μmを超えると封止作業時のフィルムの取り扱い性が悪化するのとインパルスシーラー等による熱融着が困難となるため膜厚としては300μm以下が望ましい。
【0162】
(有機光電変換素子の封止)
本発明では、本発明に係わる前記セラミック層を有する樹脂フィルム(バリアフィルム)上に透明導電膜を形成し、さらに、有機光電変換素子を構成する各層を形成した後、上記封止フィルムを用いて、不活性ガスによりパージされた環境下で、上記封止フィルムで陰極面を覆うようにして、有機光電変換素子を封止することができる。
【0163】
不活性ガスとしては、Nの他、He、Ar等の希ガスが好ましく用いられるが、HeとArを混合した希ガスも好ましく、気体中に占める不活性ガスの割合は、90〜99.9体積%であることが好ましい。不活性ガスによりパージされた環境下で封止することにより、保存性が改良される。
【0164】
また、前記の樹脂フィルム(ポリマー膜)がラミネートされた金属箔を用いて、有機光電変換素子を封止するにあたっては、ラミネートされた樹脂フィルム面ではなく、金属箔上にセラミック層を形成し、このセラミック層面を有機光電変換素子の陰極に貼り合わせることが好ましい。封止フィルムのポリマー膜面を有機光電変換素子の陰極に貼り合わせると、部分的に導通が発生したりすることがある。
【0165】
封止フィルムを有機光電変換素子の陰極に貼り合わせる封止方法としては、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルム、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等の熱融着性フィルムを積層して、インパルスシーラーで融着させ封止する方法がある。
【0166】
接着方法としてはドライラミネート方式が作業性の面で優れている。この方法は一般には1.0〜2.5μm程度の硬化性の接着剤層を使用する。ただし接着剤の塗設量が多すぎる場合には、トンネル、浸み出し、縮緬皺等が発生することがあるため、好ましくは接着剤量を乾燥膜厚で3〜5μmになるように調節することが好ましい。
【0167】
ホットメルトラミネーションとはホットメルト接着剤を溶融し支持体に接着層を塗設する方法であるが、接着剤層の厚さは一般に1〜50μmと広い範囲で設定可能な方法である。一般に使用されるホットメルト接着剤のベースレジンとしては、EVA、EEA、ポリエチレン、ブチルラバー等が使用され、ロジン、キシレン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂等が粘着付与剤として、ワックス等が可塑剤として添加される。
【0168】
エクストルージョンラミネート法とは高温で溶融した樹脂をダイスにより支持体上に塗設する方法であり、樹脂層の厚さは一般に10〜50μmと広い範囲で設定可能である。
【0169】
エクストルージョンラミネートに使用される樹脂としては一般に、LDPE、EVA、PP等が使用される。
【0170】
次いで、有機光電変換素子を構成する有機光電変換素子材料各層(構成層)について説明する。
【0171】
(有機光電変換素子および太陽電池の構成)
本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を説明するが、これに限定されるものではない。有機光電変換素子としては特に制限がなく、陽極と陰極と、両者に挟まれた発電層(p型半導体とn型半導体が混合された層、バルクヘテロジャンクション層、i層とも言う)が少なくとも1層以上あり、光を照射すると電流を発生する素子であればよい。
【0172】
有機光電変換素子の層構成の好ましい具体例を以下に示す。
(i)陽極/発電層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発電層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発電層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/p型半導体層/発電層/n型半導体層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/正孔輸送層/第1発電層/電子輸送層/中間電極/正孔輸送層/第2発電層/電子輸送層/陰極
ここで、発電層は、正孔を輸送できるp型半導体材料と電子を輸送できるn型半導体材料を含有していることが必要であり、これらは実質2層でヘテロジャンクションを形成していても良いし、1層の内部で混合された状態となっているバルクヘテロジャンクションを形成しても良いが、バルクヘテロジャンクション構成の方が光電変換効率が高いため好ましい。発電層に用いられるp型半導体材料、n型半導体材料については後述する。
【0173】
有機EL素子等と同様、発電層を正孔輸送層、電子輸送層で挟み込むことで、正孔及び電子の陽極・陰極への取り出し効率を高めることができるため、それらを有する構成((ii)、(iii))の方が好ましい。また、発電層自体も正孔と電子の整流性(キャリア取り出しの選択性)を高めるため、(iv)のようにp型半導体材料とn型半導体材料単体からなる層で発電層を挟み込むような構成(p−i−n構成ともいう)であってもよい。また、太陽光の利用効率を高めるため、異なる波長の太陽光をそれぞれの発電層で吸収するような、タンデム構成((v)の構成)であってもよい。
【0174】
本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を下記に説明する。
【0175】
図2は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。図2において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10は、基板11の一方面上に、陽極12、正孔輸送層17、バルクヘテロジャンクション層の発電層14、電子輸送層18及び陰極13が順次積層されている。
【0176】
基板11は、順次積層された陽極12、発電層14及び陰極13を保持する部材である。本実施形態では、基板11側から光電変換される光が入射するので、基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。基板11は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板11は、必須ではなく、例えば、発電層14の両面に陽極12及び陰極13を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。
【0177】
発電層14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。
【0178】
図2において、基板11を介して陽極12から入射された光は、発電層14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、陽極12と陰極13の仕事関数が異なる場合では陽極12と陰極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、陽極12の仕事関数が陰極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、陽極12へ、正孔は、陰極13へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、陽極12と陰極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0179】
なお図2には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
【0180】
太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、図2に示す有機光電変換素子10におけるサンドイッチ構造に替わって、一対の櫛歯状電極上にそれぞれ正孔輸送層14、電子輸送層16を形成し、その上に光電変換部15を配置するといった、バックコンタクト型の有機光電変換素子構成とすることもできる。
【0181】
さらに好ましい構成としては、前記発電層14が、いわゆるp−i−nの三層構成となっている構成(図3)である。通常のバルクヘテロジャンクション層は、p型半導体材料とn型半導体層が混合した、i層単体であるが、p型半導体材料単体からなるp層、およびn型半導体材料単体からなるn層で挟むことにより、正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。図3において、発電層はバルクヘテロジャンクション層14iは、p型半導体層14p、およびn型半導体層14nで挟まれた構造をもっている。
【0182】
さらに、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成としてもよい。図4は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板11上に、順次透明電極12、第1の発電層14′を積層した後、電荷再結合層15を積層した後、第2の発電層16、次いで対電極13を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。第2の発電層16は、第1の発電層14′の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また第1の発電層14′、第2の発電層16がともに前述のp−i−nの三層構成であってもよい。
【0183】
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
【0184】
以下有機光電変換素子を構成する要素について説明する。
【0185】
(p型半導体材料)
本発明の発電層(バルクヘテロジャンクション層)に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー・オリゴマーが挙げられる。
【0186】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0187】
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
【0188】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、WO2008000664に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0189】
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0190】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。
【0191】
また、発電層上に電子輸送層を塗布で製膜する場合、電子輸送層溶液が発電層を溶かしてしまうという課題があるため、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料を用いても良い。
【0192】
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号、および特開2008−16834号等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料などを挙げることができる。
【0193】
(n型半導体材料)
本発明のバルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
【0194】
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)かつ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、およびこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
【0195】
中でも[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7329709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0196】
(正孔輸送層・電子ブロック層)
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陽極との中間には正孔輸送層17を、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0197】
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層17としては、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、WO2006019270号公報等に記載のシアン化合物、などを用いることができる。なお、バルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する、電子ブロック機能が付与される。このような正孔輸送層は、電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
【0198】
(電子輸送層・正孔ブロック層)
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陰極との中間には電子輸送層18を形成することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0199】
また電子輸送層18としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様に、バルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与される。このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
【0200】
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層などを挙げることができる。
【0201】
(透明電極(第一電極))
本発明の透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ用いることができる。
【0202】
またポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
【0203】
(対電極(第二電極))
対電極は導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用しても良い。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。対電極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0204】
対電極の導電材として金属材料を用いれば対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
【0205】
また、対電極13は、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤ、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により形成でき好ましい。
【0206】
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
【0207】
(中間電極)
また、前記(v)(または図4)のようなタンデム構成の場合に必要となる電荷再結合層15を構成する中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記透明電極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層または金属ナノ粒子・金属ナノワイヤを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
【0208】
なお前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると1層形成する工程を省くことができ好ましい。
【0209】
(金属ナノワイヤ)
一般に、金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとはnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
【0210】
本発明に係る金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、また、適度な光散乱性を発現するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤの平均直径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
【0211】
本発明に係る金属ナノワイヤの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。また、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。本発明に係る金属ナノワイヤが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤ全体が同一の金属組成を有していてもよい。
【0212】
本発明において金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、Agナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した、Adv.Mater.及びChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤの製造方法として好ましく適用することができる。
【0213】
本発明においては、金属ナノワイヤが互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを形成し、高い導電性を発現するとともに、金属ナノワイヤが存在しない導電ネットワークの窓部を光が透過することが可能となり、さらに、金属ナノワイヤの散乱効果によって、有機発電層部からの発電を効率的に行うことが可能となる。第1電極において金属ナノワイヤを有機発電層部に近い側に設置すれば、この散乱効果がより有効に利用できるのでより好ましい実施形態である。
【0214】
(機能層)
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していて良い。光学機能層としては、たとえば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層などを設けても良い。
【0215】
また、その他の機能性層として、易接着層等を塗設してもよい。
【0216】
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減させることができるので好ましい。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0217】
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
【0218】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0219】
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物などのナノ粒子・ナノワイヤ等を無色透明なポリマーに分散した層などを挙げることができる。
【0220】
(各種の層の形成方法)
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層、および輸送層・電極の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、バルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また塗布法は、製造速度にも優れている。
【0221】
この際に使用する塗布方法に制限は無いが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。さらには、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
【0222】
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
【0223】
発電層(バルクヘテロジャンクション層)14は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで形成することが可能となる。
【0224】
(パターニング)
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
【0225】
バルクヘテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取っても良いし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしても良い。
【0226】
電極材料などの不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチング又はリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成しても良い。
【実施例】
【0227】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0228】
実施例1
(支持体)
熱可塑性樹脂支持体として、両面に易接着加工された厚み125μmのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンO3)の基板を、170℃で30分アニール加熱処理したものを用いた。
【0229】
バリアフィルムの作製は、上記支持体を20m/分の速度で搬送しながら、以下の形成方法により、片面にブリードアウト防止層、反対面に平滑層を形成後に、粘着性保護フィルムを貼合した、ロール状のバリアフィルムを得た。
【0230】
〈平滑層およびブリードアウト防止層を有するフィルムの作製〉
(ブリードアウト防止層の形成)
上記支持体の片面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7535を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、硬化条件;500mJ/cm空気下、高圧水銀ランプ使用、乾燥条件;80℃、3分で硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。
【0231】
(平滑層の形成)
続けて上記支持体の反対面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;500mJ/cm硬化を行い、平滑層を形成した。
【0232】
このときの最大断面高さRt(p)は21nmであった。
【0233】
最大断面高さRt(p)は、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さである。
【0234】
〈バリアフィルムの作製〉
(バリア層の形成)
(珪素化合物塗布層の形成)
次に、上記平滑層、ブリードアウト防止層を設けた試料の上記平滑層の上に本発明の珪素化合物塗布層を以下に示す条件で形成した。
【0235】
珪素化合物層塗布液
パーヒドロキシポリシラザン(PHPS)の20質量%ジブチルエーテル溶液
(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20)
乾燥後の膜厚が、表1のようになるようにワイヤレスバーの番手とパーヒドロキシポリシラザン溶液を脱水ジブチルエーテルで希釈し調整して、23℃50%RH環境下で塗布後に80℃、1分乾燥した試料を得た(試料A)。
【0236】
(珪素酸化物の薄膜の大気圧プラズマCVDによる形成)
上記試料Aの上に有機珪素化合物と酸素を原料した大気圧プラズマCVDにより以下に示す条件で薄膜形成した。膜厚は30nmである。ロール電極型放電処理装置を用いて処理を実施。ロール電極に対向する棒状電極を複数個フィルムの搬送方向に対し平行に設置し、各電極部に原料及び電力を投入し以下のように薄膜を形成した。
【0237】
ここで誘電体は対向する電極共に、セラミック溶射加工のものに片肉で1mm被覆した。また、被覆後の電極間隙は、1mmに設定した。また誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(100kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。下記条件で試料1を作製した。
【0238】
〈プラズマCVD層〉
放電ガス:Nガス
反応ガス1:酸素ガスを全ガスに対し8%
反応ガス2:TEOSを全ガスに対し0.1%
低周波側電源電力:100kHzを8W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを10W/cm
同様にして試料2〜19を作製した。
【0239】
なお、試料2〜6については、珪素化合物層の膜厚、塗布乾燥温度を表1のように変化させ、また、珪素化合物塗布層の形成後の加熱処理なしの条件で、大気圧プラズマCVDについては試料1と同様の条件で行った。
【0240】
試料7〜19についても、珪素化合物層の膜厚、塗布乾燥温度、また、珪素化合物塗布層の形成後の加熱処理、また、大気圧プラズマCVDおいて用いた珪素化合物はそれぞれ表1に記載のように行った。
【0241】
但し、試料11、12はアクアミカ NAX120−20(パーヒドロキシポリシラザン(PHPS))の代わりにそれぞれオクタ(ヒドロキシメチル)シルセスキオキサン、ヘキサメチルジシラザンの20質量%ジブチルエーテル溶液を使用した以外は試料1と同様にして作製した。
【0242】
試料13は、大気圧プラズマCVDによる珪素酸化物の薄膜形成を、真空プラズマCVDを用いて、TEOSの代わりに、特開平8−281861号の実施例1〜3と同様にして、40℃で気化させたTMDSO(テトラメトキシジシロキサン)を用い、TMDSOを酸素に対し0.5%の流量比で真空チャンバーに導入し、13.3Paの真空度を維持しながら13.56MHzの高周波平行平板電極に導入してプラズマを放電し、膜厚が30nmになるように一定時間成膜した以外は試料1と同様にして作製した。
【0243】
試料14は試料11と同様にしてアクアミカ NAX120−20(PHPS)の代わりにそれぞれオクタ(ヒドロキシメチル)シルセスキオキサンを塗布乾燥した後、試料13と同様にして真空プラズマCVDを行った以外は試料1と同様にして作製した。
【0244】
さらに、試料19は試料1の条件で塗布、プラズマCVDのプロセスをそれぞれ2回繰り返して作製した。
【0245】
なお、比較例として試料7(比較例1)は前記塗布乾燥温度を140℃にしたもの、試料8、9(比較例2、3)は有機珪素化合物のプラズマCVDの前に、表1の条件で熱処理を施した。試料10(比較例4)は前記塗布乾燥温度を15℃にした。試料15(比較例5)は反応ガス1を酸素ガス8%の代わりに水素ガス1%、試料16(比較例6)は反応ガス1のみ、試料17(比較例7)はプラズマCVDによる珪素酸化物層の形成を行わず、試料18(比較例8)は珪素化合物層を塗布することなく、平滑層の上に直接プラズマCVDを行った。
【0246】
またいずれの試料についても、大気圧プラズマCVD実施前、珪素化合物層の乾燥後の塗膜のIR吸収によるピーク強度比a/bについて測定した結果を表1に示した。
【0247】
以上の様にバリアフィルム試料No.1〜19を作成した。
【0248】
(有機光電変換素子の作成)
あらかじめ、半径10mmの曲率になるように、180度の角度で100回屈曲を繰り返したバリアフィルム試料No.1〜19と屈曲を行わなかったバリアフィルム試料No.1〜19にそれぞれ、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし第1の電極を形成した。パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0249】
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を膜厚が30nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を製膜した。
【0250】
これ以降は、基板を窒素チャンバー中に持ち込み、窒素雰囲気下で作成した。
【0251】
まず、窒素雰囲気下で上記基板を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルタでろ過しながら膜厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、光電変換層を製膜した。
【0252】
次に、上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下にまでに真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、更に続けて、2mm幅のシャドウマスクを通して、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極を形成した(受光部が2×2mmに成るように第1の電極パターンと直交させて蒸着)。有機光電変換素子SC−101〜119を作成した。
【0253】
得られた各有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動し、封止用キャップとUV硬化樹脂を用いて封止を行って、受光部が2×2mmサイズの有機光電変換素子を作製した。
【0254】
(有機光電変換素子の封止)
窒素ガス(不活性ガス)によりパージされた環境下で、基板に用いたものと同じ2枚のガスバリアフィルムのガスバリア層を設けた面を内側にして、シール材としてエポキシ系光硬化型接着剤をガスバリア層に塗布し、上記有機光電変換素子をガスバリアフィルム間に挟み込んで密着させた後、片側の基板側からUV光を照射して硬化させた。こうして両面封止済みの有機光電変換素子試料No.1〜19が得られた。
【0255】
(評価)
〈水蒸気透過率(WVTR)の評価〉
以下の測定方法により評価した。
【0256】
装置
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
レーザー顕微鏡:KEYENCE VK−8500
原子間力顕微鏡(AFM):Digital Instrments社製DI3100。
【0257】
原材料
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(水蒸気バリア性評価用セルの作製)
あらかじめ、半径10mmの曲率になるように、180度の角度で100回屈曲を繰り返したバリアフィルム試料No.1〜19のセラミック層面に、真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のバリアフィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。また、屈曲前後のバリア性の変化を確認するために、上記屈曲の処理を行わなかったバリアフィルムについても同様に、水蒸気バリア性評価用セルを作製した。
【0258】
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐蝕量からセル内に透過した水分量を計算した。
【0259】
なお、バリアフィルム面から以外の水蒸気の透過が無いことを確認するために、比較試料としてバリアフィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐蝕が発生しないことを確認した。
【0260】
以下の評価ランクに従った。
【0261】
5:1×10−5g/(m・24h)未満
4:1×10−5g/(m・24h)以上、1×10−4g/(m・24h)未満
3:1×10−4g/(m・24h)以上、1×10−3g/(m・24h)未満
2:1×10−3g/(m・24h)以上、1×10−2g/(m・24h)未満
1:1×10−2g/(m・24h)以上。
【0262】
〈有機光電変換素子耐久性の評価〉
《エネルギー変換効率の評価》
上記作製した光電変換素子について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、I−V特性を評価することで、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)及びフィルファクターFF(%)を、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、下記式1に従って求めたエネルギー変換効率PCE(%)の4点平均値を見積もった。
【0263】
(式1)PCE(%)=〔Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF(%)〕/100mW/cm
初期電池特性としての変換効率を測定し、性能の経時的低下の度合いを温度60℃、湿度90%RH環境で1000時間保存した加速試験後の変換効率残存率により評価した。
【0264】
加速試験後の変換効率/初期変換効率 の比は、
5:90%以上
4:70%以上、90%未満
3:40%以上、70%未満
2:20%以上、40%未満
1:20%未満
として評価した。なお、屈曲を繰り返したバリアフィルム試料1〜19を用いた有機光電変換素子について評価した。
【0265】
〈剥離試験〉
ガスバリアフィルム試料No.1〜19を用いて、JIS K5400に準拠した碁盤目試験を行った。形成された薄膜の表面に片刃のカミソリ刃を面に対して90°の角度で切り込みを1mm間隔で縦横11本入れ、1mm角の碁盤目を100個作製した。この上に市販のセロハンテープを貼り付け、その一端を手で持って垂直に力強く引張って剥がし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対する薄膜が剥がされた面積の割合を
A:全く剥離されない
B:剥離された面積割合が10%未満
C:剥離された面積割合が10%以上
の3ランクでランク評価し、その結果を表1に示す。
【0266】
それぞれの評価結果を表1に示す。
【0267】
【表1】

【0268】
表1から明らかなように、本発明のバリアフィルムは、折り曲げ耐性に優れ、水蒸気透過率も低く、更に、本発明のバリアフィルムを用いて作製した有機光電変換素子は、過酷な環境下での性能劣化が発生し難い。塗布、プラズマ成膜を2回繰り返した試料No.19はさらに性能劣化が発生し難い。
【0269】
実施例2
珪素酸化物層の大気圧プラズマCVDによる形成について、第1電界と第2電界の周波数、出力密度、また膜厚を、表2に示すような条件で大気圧プラズマCVDを行った以外は実施例1の試料1と同様に作製し評価した。その結果を表2に示す。
【0270】
但し、試料24、25は、珪素酸化物層の大気圧プラズマCVDによる形成について、放電ガスを窒素に代えアルゴン(Ar)を用いて高周波電源のみで膜形成した。
【0271】
また、試料25は珪素化合物塗布層の形成について実施例1の試料11と同様にオクタ(ヒドロキシメチル)シルセスキオキサンを塗布乾燥し形成した上に大気圧プラズマCVDを行った。
【0272】
実施例1と同様に評価を行った。
【0273】
【表2】

【0274】
表2から明らかなように、本発明のバリアフィルムは、折り曲げ耐性に優れ、水蒸気透過率(WVTR)も低く、更に、本発明のバリアフィルムを用いて作製した有機光電変換素子は、過酷な環境下での性能劣化が発生し難い。
【符号の説明】
【0275】
10 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子
11 基板
12 陽極
13 陰極
14 発電層(バルクヘテロジャンクション層)
14p p型半導体層
14i バルクヘテロジャンクション層
14n n型半導体層
14′ 第1の発電層
15 電荷再結合層
16 第2の発電層
17 正孔輸送層
18 電子輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一方の面に、少なくとも1種の珪素化合物を含有する液体を20℃〜120℃で塗布乾燥させ薄膜を形成した後に、前記薄膜に対し140℃以上の加熱処理を行うことなく、前記薄膜が塗布形成された基材上に、少なくとも1種の有機珪素化合物と酸素を含有する反応性ガスを用いるプラズマCVD法により、珪素酸化物の薄膜を積層することを特徴とするバリアフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記珪素化合物を含有する液体が少なくともポリシラザンを含む液体であることを特徴とする請求項1記載のバリアフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記珪素酸化物の薄膜が、大気圧または大気圧近傍の圧力下におけるプラズマCVD法により形成されることを特徴とする請求項1または2記載のバリアフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記プラズマCVD法が二種以上の高周波電界の下で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリアフィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のバリアフィルムの製造方法により製造されることを特徴とするバリアフィルム。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のバリアフィルムの製造方法を用いることを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−26645(P2011−26645A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172036(P2009−172036)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】