説明

バリアフィルムをエッジシーリングする方法

エッジシーリングされ、かつカプセル化された環境感応性素子の生成方法が提供される。一つの方法は、基板上で接触部と共に環境感応性素子を提供する段階;印刷工程を用いて、不連続領域を有し、環境感応性素子をカバーしつつ、接触部をカバーしないデカップリング層を、環境感応性素子に隣接して蒸着する段階;デカップリング層の不連続領域より広い第1領域を有し、デカップリング層をカバーし、接触部をカバーする第2領域を有する第1バリア層を、デカップリング層に隣接して蒸着する段階であって、前記デカップリング層は、第1バリア層と、基板またはオプションとしての第2バリア層の端部との間でシーリングされる段階;接触部から第1バリア層の第2領域を除去する段階;を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に多層薄膜フィルムバリア合成物(composite)に関し、さらに詳細には、側面への水分及びガス拡散を防止するために端部をシーリングした多層薄膜フィルムバリア合成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バリア物質とポリマー物質とが交互に配置された多層の薄膜フィルムバリア合成物が知られている。このような合成物は、通常的にバリア物質とポリマー物質とを気相蒸着法などにより交互に蒸着することで形成される。ポリマー層が基板の全面に蒸着されれば、ポリマー層の端部は酸素、水分、及びその他の汚染源に露出される。図1に示すように、これは、水分、酸素、またはその他の汚染源が合成物の端部から、カプセル化された環境感応性素子内へ側方拡散されることを潜在的に可能にする。多層薄膜フィルムバリア合成物100は、基板105、及びデカップリング物質110とバリア物質115とが交互に配置される層を含む。図1の比率は、垂直方向に大きく延びている。通常、基板105の面積は、数cmから数mまで多様でありうる。バリア層115は通常的に数百Åの厚さであり、デカップリング層110は、一般的に10ミクロン未満の厚さである。水分及び酸素の側方拡散率は限定されているが、これが最終的にカプセル化を損傷させる恐れがある。端部拡散問題を低減させるための一方法は、長い端部拡散パスを提供することである。しかし、これは、有効な環境感応性素子のために使われうる基板の面積を低減させる。またこの方法は、前記問題を低減させるだけであり、完全に除去することはできない。
【0003】
個別成分を生成するために多層薄膜フィルムバリア合成物を含む基板に線が引かれた(scribed)後、基板が分離される時、類似した端部拡散の問題が起きる。
【0004】
したがって、エッジシーリング(端封)型バリアフィルム合成物及びかかる合成物を製造する方法が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、エッジシーリングされ、かつカプセル化された環境感応性素子を生成する方法を提供して、前述した必要性を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態において、本発明の方法は、基板上で接触部と共に環境感応性素子を提供する段階と、印刷工程を用いて、不連続領域を有し、前記環境感応性素子はカバーしつつ、前記接触部はカバーしないデカップリング層を、前記環境感応性素子に隣接して蒸着する段階と、前記デカップリング層の前記不連続領域より広い第1領域を有し、前記デカップリング層をカバーし、前記接触部をカバーする第2領域を有する第1バリア層を、前記デカップリング層に隣接して蒸着する段階であって、前記デカップリング層は、前記第1バリア層と、基板または任意の第2バリア層の端部との間でシーリングされる段階と、前記接触部から前記第1バリア層の第2領域を除去する段階と、を含む。
【0007】
本発明のさらに他の実施形態において、前記方法は、基板上に環境感応性素子を提供する段階と、不連続領域を含めて前記環境感応性素子をカバーするデカップリング層を、熱勾配を用いて前記環境感応性素子に隣接して蒸着する段階と、前記デカップリング層の前記不連続領域より広い領域を有し、前記デカップリング層をカバーする第1バリア層を、前記デカップリング層に隣接して蒸着する段階であって、前記デカップリング層は、前記第1バリア層と、基板または任意の第2バリア層の端部との間でシーリングされる段階と、を含む。
【0008】
隣接するということは、隣にあるということであるが、必ずしもすぐ隣にあるということを意味する必要はない。基板とバリアスタックとの間、及びバリアスタックと環境感応性素子との間に介入される追加層がさらに存在しうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来のバリア合成物の断面図である。
【図2】本発明の、エッジシーリングされ、かつカプセル化された環境感応性素子の一実施形態についての断面図である。
【図3】60℃、相対湿度90%で750時間後の、シーリングなしの、成功したバリア層を示す図面である。
【図4】60℃、相対湿度90%で750時間後の、成功したエッジシーリングを示す図面である。
【図5】60℃、相対湿度90%で750時間後の、失敗したエッジシーリングを示す図面である。
【図6】基板とマスク配置についての一実施形態の断面図、及び得られるシーリングの平面図である。
【図7】基板とマスク配置についての他の一実施形態の断面図、及び得られるシーリングの平面図である。
【図8】本発明による、エッジシーリングされ、かつカプセル化された環境感応性素子の一実施形態についての断面図である。
【図9】基板上の接触部と環境感応性素子を示す概略図である。
【図10】環境感応性素子と接触部とをカバーするバリア層の概略図である。
【図11】環境感応性素子をカバーするデカップリング層の概略図である。
【図12】環境感応性素子はカバーし、接触部はカバーしないハードコート(hard coat)の概略図である。
【図13】接触部上で蒸着された剥離(release)層の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図2は、エッジシーリングされ、かつカプセル化された環境感応性素子400を示す図面である。所望の場合、素子が設けられた後で除去できる基板405が存在する。環境感応性素子430は、その一側にある初期バリアスタック422と、他の一側にある追加バリアスタック440との間でカプセル化される。基板405と初期バリアスタック422との間に、さらに他の初期バリアスタック420が存在する。
【0011】
環境感応性素子は、水分、ガス、またはその他汚染源からの保護を必要とする任意の素子でありうる。環境感応性素子には、有機発光ダイオード素子、液晶クリスタルディスプレイ、電気泳動インキ、発光ダイオード、発光ポリマー、EL(electroluminescent)素子、燐光性素子、有機光電池素子、無機光電池素子、薄膜フィルムバッテリー、及びビア(via)を有する薄膜フィルム素子、MEMS(microelectromechanicalsystems)、電気−光学的ポリマー変調器及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
選択事項である基板は任意の適切な基板であり、硬い材質または柔軟性のある材質のいずれかでありうる。適当な基板としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリマー、またはポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、またはTransphan(商品名)(ドイツのWeil am Rhein、GMBHのロフォハイテクフィルム(Lofo High Tech Film)から入手できる高ガラス遷移温度の環状オレフィン)のような、(その上にバリアスタックを持つポリマーを含む)高温ポリマー;金属及び金属箔;紙;ファブリック(布);薄くて柔軟なガラスシート(例えば、ガラスコード0211分類下の、コーニング社から入手できる柔軟性のあるガラスシートであって、この特別に薄くて柔軟性のあるガラスシートは、0.6mm未満の厚さを有し、約8インチ半径に折り曲げられうる)を含むガラス;セラミック;半導体;シリコン;及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
バリアスタック420は、デカップリング層410の面積より広い面積を持つバリア層415を含み、これがバリア層415の領域内でデカップリング層410をシーリングする。バリアスタック422は、2つのバリア層415、417と2つのデカップリング層410、412とを備える。バリア層415は、デカップリング層410、412の面積より大きい面積を持ち、それがバリア層415の領域内でデカップリング層410、412をシーリングする。第2バリア層417が存在する。デカップリング層410、412がバリア層415によりカバーされる領域内でシーリングされるため、周囲水分、酸素及びその他の汚染源がこのデカップリング層を通過して環境感応性素子に拡散できない。
【0014】
環境感応性素子430の他の一側には追加のバリアスタック440が存在する。バリアスタック440は、2つのデカップリング層410と2つのバリア層415とを含むが、この層はほぼ同じサイズでありうる。バリアスタック440は、デカップリング層410の面積よりさらに大きい面積を持つバリア層435をさらに含み、この大きい面積によってバリア層435の領域内にデカップリング層510がシーリングされる。
【0015】
バリア層全部があらゆるデカップリング層より大きい面積を持つ必要はないが、バリア層のうち少なくとも一つは、デカップリング層のうち少なくとも一つより大きい面積を持つべきである。バリア層全部がいずれもデカップリング層の面積より大きい面積を持つものではなければ、デカップリング層より大きい面積を持つバリア層がそうでないバリア層の周囲にシールを形成することで、程度の差はあるが、バリア合成物内で露出されるデカップリング層が存在しないようにする。露出されるデカップリング領域の端部面積が少ないほど、端部拡散が低減する。若干の拡散が許容できるならば、完全なバリアは不要である。
【0016】
PETのようなポリマー基板上で、本発明のバリアスタックは、浸透計測に使われる現在業界の計測(Mocon OxTran 2/20L及びPermatran)の検出限度を非常に下回る酸素透過率(OTR、oxygen transmission rate)及び水蒸気透過率(WVTR、water vapor transmission rate)を計測した。表1は、7mil PET上のいくつかのバリアスタックに対して、Mocon(ミネソタ州ミネアポリス)で測定されたOTR及びWVTR値(ASTM F 1927−98及びASTM F 1249−90によってそれぞれ測定される)を、他の物質に対して報告された値と共に示したものである。
【0017】
【表1】

(*)38℃、90% RH、100% O
(+)38℃、100% RH
1−P.F.Carcia、第46回米国真空学会国際シンポジウム、1999年10月
2−Langowski、H.C.,第39回年間技術会議会報、SVC、第398〜401頁(1996年)
3−テクニカルデータシート
【0018】
表1のデータから分かるように、本発明のバリアスタックは、アルミニウム、酸化シリコン、または酸化アルミニウムでコーティングされたPETより数桁も優秀な酸素浸透率及び水蒸気浸透率を提供する。他のバリアコーティングの通常的酸素浸透率は、約1〜約0.1cc/m/日の範囲内にある。本発明のバリアスタックの酸素浸透率は23℃、相対湿度0%で、かつ38℃、相対湿度90%で、0.005cc/m/日未満である。水蒸気浸透率は38℃、相対湿度100%で0.005g/m/日未満である。実際浸透率はさらに低いが、既存の設備では測定できない。
【0019】
理論的に、良好なエッジシーリングは、全般的なバリア層より浸透性がさらに大きくない。これは、他の通常の観測と統計的に同じ割合で発生する端部の失敗をもたらす。実際に、端部から最も近接な領域が最初に失敗を示し、端部失敗が伴われると推定される。
【0020】
バリア層についてのMoconテストは相当な表面領域を必要とするので、エッジシーリングを直接的にテストするのに使われ得ない。バリア特性を測定するためにカルシウム層を利用するテストが開発された。このようなカルシウムテストは、本発明で参考形態に含まれる2003年SID 03ダイジェスト、550〜553頁、Nisatoらが発表した“Thin Film Encapsulation for OLEDs:Evaluation of Multi−layer Barriers using the Ca Test”に開示されている。カルシウムテストは、酸素透過率及び水蒸気透過率の両方についてのエッジシーリング性能を評価するのに使われうる。カプセル化された素子が作られ、酸素及び水の透過応じた端部の退化が観測される。その決定は、通過/失敗の質的なものである。失敗は、端部で注意深く観察され、失敗工程は経時的に端部から内側に向かって進む。カルシウムテストを通過したエッジシーリングは、23℃、相対湿度0%、及び38℃、相対湿度90%で0.005cc/m/日未満の酸素透過率を持つ。これはまた、38℃、相対湿度100%で0.005g/m/日未満の水蒸気透過率を持つ。
【0021】
図3ないし図5は、60℃、相対湿度90%で750時間経過後のカルシウムテスト結果を示す図面である。図3は、シーリングのない成功したバリア層を示す図面である。バリア層の端部はカルシウム端部から50mm離れている。図4は、成功したエッジシーリングを示す図面である。バリア層の端部はカルシウム端部から3mm離れており、何の退化も観察されていない。図5は、失敗したエッジシーリングを示す図面である。バリア層の端部がカルシウム端部から3mm離れており、深刻な退化を示す。
【0022】
バリアスタックの数は制限されていない。必要なバリアスタックの数は、使われた基板材料及び特定のアプリケーションに必要な浸透抵抗レベルに拠る。一部のアプリケーションにおいて、1つまたは2つのバリアスタックが十分なバリア特性を提供できる。最も厳しいアプリケーションは5個あるいはそれ以上のバリアスタックを必要とする。
【0023】
バリアスタックは、1つ以上のデカップリング層及び1つ以上のバリア層を有することができる。1つのデカップリング層と1つのバリア層とがある場合もあり、1つ以上のバリア層の片側に1つ以上のデカップリング層がある場合もあり、1つ以上のバリア層の両側に1つ以上のデカップリング層がある場合もあり、または、1つ以上のデカップリング層の両側に1つ以上のバリア層がある場合もある。重要な特徴は、バリアスタックが少なくとも一つのデカップリング層と少なくとも一つのバリア層とを含むというところにある。バリアスタック内でバリア層は同じ材料、または他の材料からできていてもよく、デカップリング層も同様である。
【0024】
バリア層は、通常的に約100〜2000Åの厚さを持つ。所望の場合、初期バリア層を後のバリア層よりさらに厚くすることができる。例えば、最初のバリア層が約1000〜1500Åの範囲であり、後のバリア層は約400〜500Åの範囲でありうる。他の状況では、最初のバリア層が後のバリア層より薄くてもよい。例えば、最初のバリア層は約100〜400Åの範囲であり、後のバリア層は約400〜500Åの範囲でありうる。デカップリング層は、普通約0.1〜10μmの厚さである。所望の場合、最初のデカップリング層を後のデカップリング層より厚くすることができる。例えば、最初のデカップリング層が約3〜5μmの範囲であり、後のデカップリング層は約0.1〜約2μmの範囲でありうる。
【0025】
バリアスタックは、同一のまたは相異なる層を備えることができ、この層は同一のまたは相異なるシーケンスになっている。
【0026】
もし、ただ1つのバリアスタックが存在し、そのバリアスタックがただ1つのデカップリング層と1つのバリア層とを有する場合、バリア層がデカップリング層をシーリングするようにデカップリング層が先ずなければならない。デカップリング層は、基板(または以前バリアスタックの上位層)とバリア層との間でシーリングされる。素子が環境感応性素子の各一側に1つのデカップリング層と1つのバリア層とを持つ単一バリアスタックを持つように設けられることもあるが、普通各一側に少なくとも2つのバリアスタックがあることが一般的であり、この時、それぞれのスタックは1つ(またはそれ以上)のデカップリング層と、一つ(またはそれ以上)のバリア層とを備える。この場合、スタック内の最初の層はデカップリング層またはバリア層のうちいずれか一つになり、最後の層も同様である。
【0027】
デカップリング層をシーリングするバリア層が、バリアスタック420で示すように最初のバリア層でありうる。また、バリアスタック440で示すように、それが2番目(あるいはさらに後の)バリア層でもありうる。バリアスタック440をシーリングするバリア層435は、このバリアスタックをシーリングしない2つのバリア層415の後にくる、バリアスタックの3番目のバリア層である。したがって、請求項で使用する第1デカップリング層と第1バリア層という用語は、層の実際のシーケンスを表すものではなく、単に制限条件を満たす層をいう。同様に、第1初期バリアスタック及び第1追加バリアスタックという用語も、初期の及び追加のバリアスタックの実際シーケンスを表すものではない。
【0028】
デカップリング層は、同じまたは相異なるデカップリング物質であってもよい。デカップリング層は、非限定的な例として、有機ポリマー、無機ポリマー、有機金属ポリマー、ハイブリッド有機/無機ポリマーシステム、及びこれらの組み合わせを含む、いずれかの適当なデカップリング物質であることができる。有機ポリマーは、ウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリブチレン、イソブチレン−イソブレン、ポリオレフィン、エポキシ、パリレン、ベンゾシクロブタジエン、ポリノルボルネン、ポリアリールエーテル、ポリカーボネート、アルキド、ポリアニリン、エチレンビニルアセテート、エチレンアクリル酸、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。無機ポリマーとは、シリコン、ポリポリホスファゼン、ポリシラザン、ポリカルボシラン、ポリカルボラン、カルボランシロキサン、ポリシラン、ホスホニトリル、窒化硫黄ポリマー、シロキサン、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。有機金属ポリマーとしては、非限定的に、典型金属(main group metal)、遷移金属、及びランタニド/アクチニド金属及びこれらの組み合わせからなる有機金属ポリマーが含まれる。ハイブリッド有機/無機ポリマーシステムには、非限定的に、有機的に修飾されたケイ酸塩、プレセラミックポリマー、ポリイミド−シリカハイブリッド、(メタ)アクリレート−シリカハイブリッド、ポリジメチルシロキサン−シリカハイブリッド、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0029】
バリア層は同じバリア物質、または相異なるバリア物質であってもよい。バリア層は、任意の適当なバリア物質でありうる。金属ベースの適切な無機物質には、非限定的に、個別金属、混合物としての2つ以上の金属、金属間化合物または合金、金属及び混合金属酸化物、金属及び混合金属フッ化物、金属及び混合金属窒化物、金属及び混合金属炭化物、金属及び混合金属炭窒化物、金属及び混合金属オキシ窒化物、金属及び混合金属ホウ化物、金属及び混合金属オキシホウ化物、金属及び混合金属ケイ化物、あるいはこれらの組み合わせが含まれる。金属は、非限定的に、転移(“d”族)金属、ランタン(“f”族)金属、アルミニウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、ビスマス、及びこれらの組み合わせを含む。その結果で形成された金属基盤の材料のうち、多くは伝導体または半導体になる。フッ化物及び酸化物としては、誘電体(絶縁体)、半導体及び金属伝導体が含まれる。伝導性酸化物の非限定的な例としては、アルミニウムドーピングされた酸化亜鉛、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンスズ、酸化チタン(TiOx、ここで0.8≦x≦1)、及び酸化タングステン(WOx、ここで2.7≦x≦3.0)が含まれる。p型半導体及び非金属基盤の適当な無機材料には、非限定的には、シリコン、シリコン化合物、ホウ素、ホウ素化合物、非結晶炭素及びダイアモンド型炭素を含む炭素化合物、及びこれらの組み合わせが含まれる。シリコン化合物には、非限定的には、酸化ケイ素(SiO、ここで1≦x≦2)、ポリケイ酸、アルカリ土類ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩(AlSio)、シリコン窒化物(SN、ここで)、シリコンオキシ窒化物(SiNOyH、ここで0≦z≦1)、シリコン炭化物(SiC、ここで0≦y≦1)、及びシリコンアルミニウムオキシ窒化物(SIALONs)が含まれる。ホウ素化合物は、非限定的に、ホウ素炭化物、ホウ素窒化物、ホウ素オキシ窒化物、ホウ素炭窒化物、及びシリコンとこれらの組み合わせとを含む。
【0030】
バリア層は、非限定的に、スパッタリング、蒸発、昇華、化学的気相成長法(VCD)、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、電子サイクロトロン共振−プラズマ化学気相成長法(ECR−PECVD)、及びこれらの組み合わせを含む任意の適切なプロセスを通じて蒸着できる。
【0031】
デカップリング層は、雰囲気プロセス及び真空プロセスの両方を含む、改善された表面平坦性を提供する既存の様々なプロセスを通じて生成できる。デカップリング層は、液体の層を蒸着させ、次いでその液体層を固体フィルムに処理することで形成することができる。デカップリング層を液体として蒸着させることは、その液体が基板や以前の層内の欠陥(defects)に流れて、低い領域を充填し、高い地点を覆うことで、平坦性が大きく向上した表面を提供できる。デカップリング層が固体フィルムに処理される時、向上した表面平坦性がそのまま維持される。液体物質からなる層を蒸着させ、それを固体フィルムに処理するのに適したプロセスとしては、非限定的に、真空プロセスと雰囲気プロセスとが含まれる。適切な真空プロセスは、非限定的に、米国特許第5,260,095号、第5,395,644号、第5,547,508号、第5,691,615号、第5,902,641号、第5,440,446号、及び第5,725,909号に開示された内容を含み、これらの内容は参照として本明細書中に包含される。第5,260,095号、第5,395,644号、及び第5,547,508号に開示された液体拡散装置は、受け取り基板の、別々に、かつ精密に位置する領域内に、液体モノマーをプリントするように追加設定できる。
【0032】
適当な雰囲気プロセスには、非限定的には、スピンコーティング、印刷、インクジェット印刷、及び/または噴霧(spraying)が含まれる。雰囲気プロセスとは、周辺空気を利用できる、約1大気圧で行われるプロセスを意味する。雰囲気プロセスの使用は、バリア層を蒸着するための真空環境と、デカップリング層のための大気条件間を循環する必要性及び、環境感応性素子の酸素及び水分などの環境汚染源への露出を含む数多くの難しさを示す。かかる問題を低減させるための一つの方法が、雰囲気プロセス中に特定ガス(パージガス)を使用して、受け取り基板が環境汚染源に露出されることを統制することである。例えば、このプロセスは、バリア層蒸着のための真空環境と、雰囲気プロセスのための大気圧窒素環境との間での循環を含むことができる。インクジェット印刷を含む印刷プロセスが、マスク使用なしに精密領域にデカップリング層を蒸着することを可能にする。
【0033】
デカップリング層を作る一つの方法は、(メタ)アクリレートを含むポリマー前駆体のようなポリマー前駆体を蒸着し、次いで、それを元の場所で重合させてデカップリング層を生成する段階を含む。ここで使われるポリマー前駆体という用語は、非限定的に、モノマー、オリゴマー、及びレジンを含む、ためにポリマー化してポリマーを形成することができる材料を意味する。デカップリング層を作る方法のさらに他の例として、プレセラミック前駆体がスピンコーティングにより液体として蒸着され、次いで、固体層に転換することができる。ガラスや酸化コーティングされた基板で直接、かかる種類のフィルムに対する十分な熱変換が可能である。一部の柔軟性のある材料の基板と両立できる温度でセラミックに完全に変換されることはできないが、クロスライン網構造への部分変換で十分に満足できる。電子ビーム技法は、かかる種類のポリマーの一部を架橋及び/または緻密化に用いることができ、かつ基板が電子ビーム露出を処理できるならば、熱的技法と結合して基板の熱的制限条件のうち一部を克服できる。デカップリング層を作るさらに他の例は、ポリマー前駆体などの物質をその溶融点より高い温度で液体として蒸着させ、次いで、それをその場所で冷却させる段階を含む。
【0034】
本発明の合成物を生成する一つの方法は、基板を提供し、バリア蒸着ステーション(station)で基板に隣接してバリア層を蒸着することを含む。バリア層と共に基板がデカップリング物質蒸着ステーションに移される。マスクが付与されるが、そのマスクは、デカップリング層の蒸着を、バリア層によりカバーされる領域より小さく、かつその領域内に含まれる領域に制限する開口部を備える。蒸着された最初の層は、合成物の設計によってバリア層になるか、またはデカップリング層になりうる。
【0035】
一つの大きいマザーガラス上に含まれたさまざまな小さな環境感応性素子をカプセル化するために、単一シャドーマスク内の複数の開口部を通じるか、または複数のシャドーマスクを通じてデカップリング物質が蒸着される。あるいは、デカップリング層が、インクジェット印刷などの印刷プロセスを通じて複数の不連続(個別)領域内に蒸着されることもある。バリア層もそれと同様に単一シャドーマスク内の複数の開口部を通じるか、またはさまざまなシャドーマスクを通じて蒸着されうる。バリア層がマスク使用せずに全体層として蒸着されることもある。環境感応性素子の構築方式によって、全体層としてのバリア層の蒸着は、以下で議論されるように、カプセル化なしに電気接触部を提供する方法を含むこともある。これはマザーガラスが順次に個別環境感応性素子にダイス(dice)されるようにし、これらはそれぞれエッジシーリングされる。
【0036】
例えば、マスクは、(ピクチャーフレームように)センターが除去された長方形でありうる。次いで、マスク内の開口部を通じてデカップリング物質が蒸着される。このように形成されたデカップリング物質の層は、バリア物質からなる層によりカバーされる領域より小さな領域をカバーする。該種類のマスクは、バッチプロセスや、ステップ&リピートモードで動作するロールコーティングプロセスで使われうる。かかるプロセスを通じて、デカップリング層の面積より大きい面積を持つ2番目のバリア層がデカップリング層上に蒸着される時、そのデカップリング層の4つの端部がいずれもバリア物質でシーリングされる。
【0037】
この方法は、基板上から内側に拡張する両端部を持つマスクを使用する連続的ロール・ツー・ロール(roll to roll)プロセスに使われることもある。マスクの両端部の間に開口部が形成され、その開口部がデカップリング物質の連続蒸着を可能にする。マスクは、横接触部がデカップリング層のための蒸着領域内にさえなければ、両端部の間に該横接触部を含めることができる。マスクは、基板から一定距離で平行に位置して、デカップリング物質がバリア層の面積より小さな領域に蒸着されるようにする。この構成では、デカップリング層の側面端部がバリア層によりシーリングされる。
【0038】
次いで、基板がバリア蒸着ステーション(最初のバリア蒸着ステーションや2番目のバリア蒸着ステーション)に移され、バリア物質からなる2番目の層がデカップリング層上に蒸着される。最初のバリア層によりカバーされる領域がデカップリング層の面積より大きいため、デカップリング層は2つのバリア層の間でシーリングされる。特定のアプリケーションにおいて、十分なバリア物質が蒸着されるまで、必要ならば、該蒸着段階が反復できる。
【0039】
あるいは、バリア層によりカバーされることより小さな幅に適用される連続コーティングや、複数の不連続領域に対するコーティングとして印刷工程を用いて、デカップリング層を蒸着してもよい。複数の不連続領域でのデカップリング層の蒸着は、ロール・ツー・ロール工程により、複数の環境感応性素子が(前記で蒸着されたデカップリング層の制限事項内で)形成されうる基板を提供可能にする。このような工程の段階を繰り返すことが、環境感応性素子周辺のエッジシーリングを提供して、バリアを危険に露出させないままその素子の分離を可能にする方式で、環境感応性素子のカプセル化を可能にする。
【0040】
バリアスタックのうち一つが2つ以上のデカップリング層を備える時、基板はバリア蒸着ステーションに移される前に、1つ以上のデカップリング物質蒸着ステーションを1回以上通過できる。このデカップリング層は、同じデカップリング物質、または相異なるデカップリング物質からなりうる。デカップリング層は同じ工程または相異なる工程を用いて蒸着されうる。
【0041】
同様に、1つ以上のバリアスタックは、2つ以上のバリア層を備えることができる。デカップリング層が蒸着される前または後に、基板を1個以上のバリア蒸着ステーションに1回以上通過させて所望の数の層を生成することでバリア層が形成されうる。この層は同一または相異なるバリア物質からなり、同一または相異なる工程を用いて蒸着されうる。
【0042】
さらに他の実施形態で、本発明の方法は、基板を提供する段階と、バリア蒸着ステーションで基板表面にバリア物質の層を蒸着する段階を含む。バリア層が含まれた基板は、デカップリング物質蒸着ステーションに移され、そこでデカップリング物質の層がバリア層のほぼ全面上に蒸着される。次いで、固体マスクが、バリア層及びデカップリング層のある基板に設置される。マスクは、有効な環境感応性素子によりカバーされる領域を含む、表面の中心部領域を保護する。反応性プラズマを用いて、マスク外にあるデカップリング物質層の端部をエッチングすることができ、これにより、バリア物質層によりカバーされる領域より小さい領域をカバーする、エッチングされたデカップリング物質の層が形成される。好適な反応性プラズマは、非限定的に、O、CF、H、及びこれらの組み合わせが含まれる。エッチングされたデカップリング層によりカバーされる領域より大きい領域をカバーするバリア物質の層がその後に蒸着されることで、バリア物質の層間でエッチングされたデカップリング層がシーリングされうる。
【0043】
バリア層によりデカップリング層端部をよくカバーするために、そぎ端(feathered edge)、すなわち、急進的なステップの代わりに漸進的なスロープを作り出すようにデカップリング層をマスキング及びエッチングする技法が活用できる。かかる技法のいくつかがこの分野で知られており、かかるものには、非限定的に、エッチングされるポリマー表面上でマスクをわずかな距離で離間させる技法が含まれる。
【0044】
蒸着及びエッチング段階は、十分なバリア物質が蒸着されるまで反復することができる。この方法は、バッチプロセス、またはステップ&リピートモードで動作するロールコーティングプロセスで使われうる。これらの工程では、デカップリング層の4つの端部がいずれもエッチングされる。この方法は、連続的なロール・ツー・ロール工程でも使われうる。この場合、工程の方向上でデカップリング物質の端部のみエッチングされる。
【0045】
あるいは、2つのマスクが使われ、1つのマスクはデカップリング物質に対して使われ、他のマスクはバリア物質に対して使われる。これは、電気接触部を備える素子のエッジシーリングが行われるカプセル化を可能にするが、ここで該電気接触部はカプセル外に拡張(extend)する。電気接触部はコーティングされないままであることができる(または、最小限のポストカプセル化クリーニングのみを必要とする)。該電気接触部は、普通ポストカプセル化クリーニングに感受性であるか、またはカプセル化の選択的エッチングにより露出され難い薄層構造物である。また、デカップリング物質のみに対してマスクが適用される場合、厚いバリア層が素子間の領域上に拡張して電気接触部をカバーすることができる。さらに、厚いバリア層を切断することは難しくなる。
【0046】
図6及び7に示すように、デカップリング物質のためのマスク500は、バリア物質のためのマスク505より小さな開口部を有する。これが、バリア層510がデカップリング層515をカプセル化することを可能にする。
【0047】
マスク500、505は、蒸着されたデカップリング物質及び/またはバリア物質が、マスクが基板530に接触する地点でマスクに接触することを防止するアンダーカット520、525を任意的に含むことができる。図7に図示されたように、デカップリングマスク500のアンダーカット520は、デカップリングマスク接触地点535をバリア層510の端部外側に設置するのに十分なものでありうる。
【0048】
合成物が連続工程を用いて製造され、エッジシーリングされた合成物が横方向にカットされた場合、カットされた端部はデカップリング層の端部を露出させる。露出がバリア性能を低下させれば、このようにカットされた端部に追加シーリングが必要となる。
【0049】
カットされる端部をシーリングする一つの方法は、バリアスタックを蒸着させる前に、基板上にリッジ(ridge)を蒸着する方法を含む。リッジがデカップリング層の蒸着を妨害し、バリア物質の面積がデカップリング物質の面積より大きく、かつデカップリング層がバリア物質の領域内でバリア層によりシーリングされるようにする。リッジはかなり尖っている形態、例えば、三角形でなければならないが、これは蒸着を妨害して、バリア物質層がデカップリング物質層を超えて拡張するようにするためである。このようなリッジは、環境感応性素子の周辺のように、カットが必要とされるところに蒸着されうる。リッジは、非限定的に、前述したような感光物質及びバリア物質を含む任意の好適な物質であることができる。
【0050】
図8ないし図13は、マスクの使用を低減またはなくした別の工程を示す。このようなことが望ましい理由は、プロセスのコスト及び複雑度に加えて、マスクが正確に整列及び頻繁に除去されなけねばならないからである。印刷工程を用いてデカップリング層が不連続領域に蒸着でき、バリア層は、マスクの有無に関わらず、さらに大きい領域上に蒸着できる。かかる方法は、端部がシーリングされるバリアスタックの生成に当ってコスト面でより効率的である。これらの方法を使用して、収率も高くなる。この方法は、装置設計の融通性も改善する。
【0051】
図8は、カプセル化されたOLEDの一実施形態を図示したものである。基板805があり、その上に環境感応性素子810がある。環境感応性素子をカバーするバリア層815が存在する。デカップリング層820がバリア層815の一部をカバーし、そのデカップリング層によりカバーされた領域以上に拡張する第2バリア層815が続いて、2つのバリア層815の間でデカップリング層820をシーリングする。第2バリア層815の一部をカバーし、その第2デカップリング層820以上に拡張する第3バリア層815が続いて、第2及び第3バリア層815の間で第2デカップリング層820をシーリングする、別のデカップリング層820が存在する。バリア層815の最上部に機能性層825が存在する。接触部830も存在する。
【0052】
バリア層はデカップリング層の不連続領域より広い領域を持ち、デカップリング層によりカバーされるその不連続領域外で互いに接触し、デカップリング層の周囲にシールを形成する。スタックの最初の層がデカップリング層ならば、バリア層と基板との間に該シールが形成される。
【0053】
図9ないし図13は、図8の素子が作られる方法を例示する。図9に示すように、4個の環境感応性素子810が基板805上に設置され、かつ接触部830と連結される。次いで、バリア層815が全体基板上に蒸着される(図10)。図11に示すように、デカップリング層820が接触部830を除外した素子上の不連続(個別)領域内に蒸着される。このデカップリング層は、印刷工程により個別領域内に蒸着することができる。好適な印刷工程は、非限定的に、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷を含む。デカップリング領域の蒸着後に第2バリア層、第2デカップリング層、及び第3バリア層の蒸着が後続することで、図8に示す素子が作られる。次いで、図12に示すように、機能性層825が、接触部(バリア物質の3層でカバーされる)をカバーしない不連続領域内で蒸着されうる。
【0054】
望ましい場合、1つ以上の機能性層が含まれうる。望ましい場合、多様な種類の機能性層が使われ、かかる機能性層は、非限定的に、ハードコート層、感光層、防眩層、無反射層、衝撃防止コーティング、及びアンチスミア/指紋コーティングなどが含まれる。機能性層は、上記の印刷工程などを使用して、不連続領域内に蒸着されうる。あるいは、機能性層は、マスクの使用の有無に関わらず、全体領域をカバーする工程を用いて蒸着されうる。機能性層が不連続領域内に蒸着される場合、接触部を露出させるためにその機能性層が除去される必要はない。例えば、機能性層は、エッチング耐性物質であるハードコード層でありうる。その後、これはエッチングマスクとして作用する。好適なエッチング耐性ハードコード物質は、非限定的に、シランまたはシロキサン、ヘキサフルオロベンゼン、ペンタフルオロスチレン、パーフルオロ−1、3−ブタジエンまたはクロロカルボン化合物、及び熱可塑性プラスチックポリマー(たとえば、micro resist technology GmbH社製のmr−I 8000)が含まれる。次に、バリア物質の3層が除去して、接触部830を露出させるようにする。次いで、環境感応性素子が互いに分離され、それぞれの素子は端部が密封されたバリア層により保護される。
【0055】
かかる工程は、3つのバリア層と2つのデカップリング層で示されるが、これらに限定されるものではない。前述したように、バリア層とデカップリング層との数は必要に応じて変化する。
【0056】
バリア物質は、多様な工程を使用して除去することができる。好適な工程には、非限定的に、剥離層;局所印刷されたエッチング物質;保護層の印刷及びウェットエッチング、ドライエッチング、またはサンドブラストのうちのいずれか;リソグラフィー、及びウェットエッチング、ドライエッチング、サンドブラストのいずれか;レーザーアブレーション;レーザーアブレーションと剥離層との組み合わせ;基板の破壊及びバリア物質のポリッシング;及び局所的な機械的グラインディングが含まれる。
【0057】
例えば、図13に示すように、バリア層が蒸着する前に剥離層835を接触部上に蒸着することができる。この場合、全ての層が蒸着された後、剥離層及びその上に蒸着されたバリア層が除去されて、接触部を露出することができる。好適な剥離層には、非限定的に、ポリテトラフルオロエチレン、その他のフッ素化系列ポリマー、ポリメチルシロキサン、グラファイト、MoS、光分解性アリールトリアゼンポリマー、及びポリイミド(たとえば、エキシマーレーザー用デュポン5878(PMDA−ODA)ポリイミド)を含む。
【0058】
あるいは、デカップリング層の蒸着は、基板上(環境感応性素子の有無に関わらず)の熱勾配を用いて制御することができる。デカップリング層が蒸着される領域は冷却され、その周辺領域は冷却されないことで、冷却された領域の周辺領域に温度勾配が生じる。モノマーは、冷却された部分上でより急速に凝結し、冷却されていない周辺領域では徐々に凝結する(または全く凝結しない)。冷却されていない領域は、望ましい場合、加熱することもできる。次いで、モノマーが、上記のポリマーに加工することができる。これにより、ポリマーのデカップリング層は冷却された領域ではさらに厚くなり、その周辺領域ではさらに薄くなり、冷却された部分からその周辺部分へ行くほど薄くなる。これがパターン化されたポリマーデカップリング層の形成を可能にする。次いで、バリア層を、デカップリング層によりカバーされた領域だけでなく、少なくとも一部分がデカップリング層によりカバーされていない周辺領域上に蒸着することができる。デカップリング層を取り囲むバリア層は、既に蒸着されたバリア層や基板と接触して、そのバリア層及び以前バリア層や基板との間でデカップリング層をシーリングする。この工程がいくつかの素子に必要な、精密性を持つ端部シールを提供できないこともあるが、その他の素子には満足すべきレベルであり得る。
【0059】
あるいは、モノマーが蒸着されてはならない領域を加熱することができる一方で、モノマーが蒸着される残りの領域は加熱されないこともある。望ましい場合、モノマーが蒸着される領域を冷却することもできる。
【0060】
所定の代表的実施形態及び細部内容が本発明の例示を目的として示されたが、当業者ならば、請求項に規定された本発明の範囲を逸脱せずに、明細書に開示された構成と方法についての多様な変更がなされうるということがよく分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッジシーリングされ、カプセル化された環境感応性素子の製造方法であって、
基板上で接触部と共に環境感応性素子を提供する段階と、
印刷工程を用いて、不連続領域を有し、前記環境感応性素子をカバーしつつ、前記接触部をカバーしないデカップリング層を、前記環境感応性素子に隣接して蒸着する段階と、
前記デカップリング層の前記不連続領域より広い第1領域を有し、前記デカップリング層をカバーし、前記接触部をカバーする第2領域を有する第1バリア層を、前記デカップリング層に隣接して蒸着する段階であって、前記デカップリング層は、前記第1バリア層と、基板または任意の第2バリア層の端部との間でシーリングされる段階と、
前記接触部から前記第1バリア層の第2領域を除去する段階
とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1バリア層の第2領域は、ウェットエッチング、ドライエッチング、レーザーアブレーション、ポリッシング、グラインディング、またはこれらの組み合わせから選択される工程により、前記接触部から除去されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デカップリング層を蒸着する前に、前記接触部上に剥離層を蒸着する段階をさらに含み、
前記剥離層を除去することで、前記バリア層の第2領域が前記接触部から除去されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記剥離層は、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリマー、ポリジメチルシロキサン、グラファイト、MoS、光分解性アリールトリアゼンポリマー、及びポリイミドから選択される物質であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記デカップリング層を蒸着する前に、前記デカップリング領域の不連続領域より広い第1領域を有し、前記デカップリング層をカバーし、前記接触部をカバーする第2領域を有する第2バリア層を、前記環境感応性素子に隣接して蒸着する段階であって、前記デカップリング層は前記第1バリア層及び第2バリア層の端部の間でシーリングされる段階と、
前記接触部から前記第2バリア層の第2領域を除去する段階
とをさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2バリア層を蒸着する前に前記接触部上に剥離層を蒸着する段階をさらに含み、
前記剥離層を除去することによって、前記第2バリア層の第2領域が前記接触部から除去されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1バリア層に隣接する機能性層を蒸着する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記機能性層は、ハードコート層、感光層、防眩層、無反射層、衝撃防止コーティング、及びアンチスミア/指紋防止コーティングから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記機能性層は、エッチング耐性物質で作られたハードコート層であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記エッチング耐性物質は、シラン、シロキサン、ヘキサフルオロベンゼン、ペンタフルオロスチレン、パーフルオロ−1、3−ブタジエン、クロロカルボン化合物、及び熱可塑性プラスチックポリマーから選択されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記機能性層は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、及びこれらの組み合わせから選択される印刷工程により蒸着されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記ハードコート層は、前記接触部をカバーしないことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
印刷工程を用いて、不連続領域を有し、前記環境感応性素子をカバーしつつ、前記接触部をカバーしない第2デカップリング層を、前記第1バリア層に隣接して蒸着する段階と、
前記第2デカップリング層の前記不連続領域より広い第1領域を有し、前記第2デカップリング層をカバーし、前記接触部をカバーする前記第2領域を有する第3バリア層を、前記第2デカップリング層に隣接して蒸着する段階であって、前記第2デカップリング層は、前記第1バリア層及び前記第3バリア層の端部の間でシーリングされる段階と、
前記第3バリア層の第2領域を除去する段階
とをさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記デカップリング層を蒸着する段階及び前記第1バリア層を蒸着する段階は、マスクなしに行われることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記基板上に少なくとも2つの環境感応性素子が存在し、
前記方法は、エッジシーリングされた前記環境感応性素子を分離する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記印刷工程は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、またはこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
エッジシーリングされ、かつカプセル化された環境感応性素子の製造方法であって、
基板上に環境感応性素子を提供する段階と、
不連続領域を有し、前記環境感応性素子をカバーするポリマーデカップリング層を、熱勾配を用いて前記環境感応性素子に隣接し蒸着する段階と、
前記ポリマーデカップリング層の前記不連続領域より広い領域を有し、前記ポリマーデカップリング層をカバーする第1バリア層を、前記ポリマーデカップリング層に隣接して蒸着する段階であって、前記ポリマーデカップリング層は、前記第1バリア層と、基板または任意の第2バリア層の端部との間でシーリングされる段階
とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項18】
前記ポリマーデカップリング層を前記熱勾配を用いて蒸着する段階は、
前記基板の第1部分を冷却し、前記基板の第2部分を冷却しない段階と、
前記基板の第1部分、及び前記基板の第2部分の少なくとも一部を除いた部分上でモノマーを蒸着する段階と、
前記モノマーを前記ポリマーデカップリング層に処理する段階
とを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーデカップリング層を前記熱勾配を用いて蒸着する段階は、
前記基板の第1部分を加熱し、前記基板の第2部分を加熱しない段階と、
前記基板の第2部分、及び前記基板の第1部分の少なくとも一部を除いた部分上でモノマーを蒸着する段階と、
前記モノマーを前記ポリマーデカップリング層に処理する段階
とを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法によって製造された、製品。
【請求項21】
請求項17に記載の方法によって製造された、製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2012−512527(P2012−512527A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540785(P2011−540785)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/066518
【国際公開番号】WO2010/077544
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】