バリアーコーティングを備えるプラスチック容器
【課題】本発明の課題は、基材のガス透過性を減少させ、基材に対する良好な付着を有し、かつ、機械的に柔軟であり、このためコーティングの欠陥を生じることなく基材の引き続く成形プロセスを可能にする、ポリマー基材のためのコーティングを提供することである。
【解決手段】本発明は、a)プラスチック材料の少なくとも一部分を前処理する工程、b)この前処理された表面上にポリビニルアルコールのコーティング層少なくとも1つを設ける工程、及びc)このポリビニルアルコール層上にポリビニルアセタールのトップコーティング層少なくとも1つを設ける工程を含む、プラスチック材料上にバリアーコーティングを設けることによりこのプラスチック材料のガス透過性を減少させる方法に関する。
【解決手段】本発明は、a)プラスチック材料の少なくとも一部分を前処理する工程、b)この前処理された表面上にポリビニルアルコールのコーティング層少なくとも1つを設ける工程、及びc)このポリビニルアルコール層上にポリビニルアセタールのトップコーティング層少なくとも1つを設ける工程を含む、プラスチック材料上にバリアーコーティングを設けることによりこのプラスチック材料のガス透過性を減少させる方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引掻及び湿分抵抗性の、酸素又は二酸化炭素に対するバリアーコーティングを備えるプラスチック容器に関し、特にこのような容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品及び飲料のためのプラスチック容器は長く知られており、かつ、延伸ブロー成形プロセスにおいて、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)から大抵製造される。
【0003】
容器中への又は容器外への、ガス、特に酸素又は二酸化炭素の透過性を減少させるために、この種の容器上にバリアーコーティングを設け、これによって、包装された物品の貯蔵寿命を改善させることも知られている。
【0004】
この観点において、US5419976は、PET基材のためのバリアー材料として、ポリビニルアルコール(PVA)とポリメタクリラートのブレンドの使用を開示する。このバリアー材料は、多層複合材料を形成するために、基材のフィルム又はシート上に共押出される。
【0005】
類似のプロセスは、EP0023701(US5258230)から知られており、ここでは、可塑化したPVAからなるフィルムをポリビニルアセタールでコーティングして、酸素についての高い浸透抵抗性を有する水不溶性コーティングを生じる。このコーティングされたPVAフィルムは、食品、化粧物品又は医療装置のための包装材料として意図されている。PVA層の可塑剤は、このポリビニルアセタール層中へと移動する可能性が高く、このことは、機械的に劣ったトップコーティングを生じる。
【0006】
さらに、DE10153210及びDE10207592A1からは、PETボトル上のガスバリアーとしてのポリビニルアルコールの使用が知られており、これは、このバリアーコーティングの耐水性を改善するためのポリビニルブチラールを含む付加的なトップコートを有する。この種の多層コーティングは、酸素及び二酸化炭素に対して良好なバリアー性能、耐引掻性を示し、かつ、このバリアーコーティングの水溶性のために、トップ層の機械的破壊後にリサイクル可能である。
【0007】
大抵のプラスチックボトル、例えば、ソフトドリンクのために使用されるものは、いわゆるプレフォームからの射出延伸ブロー成形により生産される。この種のブロープロセスにおいては、プレフォームはその当初体積の10倍よりも多く膨張させられ、このことは、このプレフォーム表面上に積層された全てのコーティングの著しい薄化(thinning)を生じる。延伸ブロープロセスの間のこのバリアーコーティングの劣化(degradation)又は割れを妨げるために、先行技術は、このトップコーティングのための幾つかのフィルム構築ポリマーを提案する。
【0008】
この観点において、GB2337470A1は、PVAを基礎とするバリアーコーティングを備えたボトルのためのPETプレフォームをコーティングする方法、及び、第2のポリマー状材料を設けることによってこのバリアーコーティングされたプレフォームを保護する方法を開示する。第2のポリマー状材料としては、ポリエステル、例えばPET及びポリカーボナートが提案される。この刊行物はさらに、このバリアーコーティングを設ける前のこの基材表面の化学的又は物理的な前処理を説明する。GB2337470は、化学的な前処理のために、接着剤、例えばメトキシ−メチル−メチロールメラミン(Cymel)又はポリエステルベース接着剤と、加熱したプレフォームの反応を開示する。このバリアーコーティングの接着はさらに、物理的な前処理、例えば火炎又はコロナ放電処理によって高められてよい。
【0009】
GB2337470に開示される、バリアーコーティング上に設けられる保護コーティングは、コーティングされたプレフォームのブロー成形プロセスに耐えるよう特殊にあつらえられている。ポリビニルアルコールはどちらかと言えば親水性のポリマーであり、PETはどちらかと言えば吸湿性であるので、この刊行物により提案されるトップコーティングは、機械的及び化学的に不安定であり、湿った条件下では離層する。トップコーティングが水に対して透過性であると、ポリビニルアルコールからの水溶性バリアーコーティングは溶解し、このようにして、この全体のバリアー特性を取り除く。GB2337470は、PVAのための溶媒として水/イソプロパノール/メタン酸を、そして、PETトップコーティングのために酢酸エチルを提案する。両方の溶媒システムは、環境的制限のために、許容できない。したがって、GB2337470によって開示される方法は、ボトルの工業規模コーティングのためには適用できない。
【0010】
類似の技術は、WO2004/089624により開示され、ここでは、PET又はポリオレフィンからの、食品又は製造された物品のための容器が、まず、PVA、ポリアミン、ポリビニルイミン、ポリアクリル酸その他を含む少なくとも2つのポリマーのブレンドによって、引き続き、ポリウレタン、PVC又はポリアクリラートの保護コーティングによって、コーティングされる。任意に、そして、このバリアーコーティング前に、この基材は、プラズマ、火炎、塩素、フッ素又は化学的エッチングによって前処理されてよい。この刊行物によって提案されるポリマーでの、かなり極性のポリマーとしてのポリビニルアルコールのトップコーティングは、機械的及び化学的に不安定な層を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US5419976
【特許文献2】EP0023701
【特許文献3】US5258230
【特許文献4】DE10153210
【特許文献5】DE10207592A1
【特許文献6】GB2337470A1
【特許文献7】WO2004/089624
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、ポリマー基材のためのコーティングであって、基材のガス透過性を減少させ、基材に対する良好な付着を有し、かつ、機械的に柔軟であり、このためコーティングの欠陥を生じることなく基材の引き続く成形プロセスを可能にするコーティングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
以下の工程:
a)プラスチック材料の少なくとも一部分を前処理する工程、
b)この前処理された表面上にポリビニルアルコールのコーティング層少なくとも1つを設ける工程、及び
c)このポリビニルアルコール層上にポリビニルアセタールのトップコーティング層少なくとも1つを設ける工程
を含む、プラスチック材料上にバリアーコーティングを設けることによりこのプラスチック材料のガス透過性を減少させる方法に関する。
【0014】
ポリビニルアルコールは、基材のガス透過性(特にO2及びCO2)を著しく減少させ、これによって、包装された食品、ソフトドリンク又はビールの貯蔵寿命を改善させる。PVAのみからなるコーティングの使用は、その湿分感受性のために制限されている。ポリビニルアセタールはPVA層のためのトップコーティングとして特に適し、というのも、両方のポリマーは類似のポリマー骨格を有し、かつ、混合物の広い範囲において相容性であるからである。
【0015】
プラスチック材料の活性化は、この引き続き付加された、ポリビニルアセタール及びポリビニルアルコール層が、この基材に付着することを確実にし、これによって、割れ又は離層なしに延伸ブローされることができる機械的に安定な複合材料が得られる。
【0016】
このプラスチック材料は好ましくは、この分野においてこのような目的のために知られているプロセスによって前処理又は活性化され、このプラスチック材料表面の少なくとも一部分のコロナ、電子ビーム、プラズマ処理又は火炎処理又はオキシフッ素化(oxyfluorination)を含んでよい。図1は、コロナ、電子ビーム又はプラズマで処理されるボトルのための典型的なプレフォームを示す。
【0017】
好ましくは、このプラスチック材料表面の少なくとも一部分の前処理又は活性化は、処理前の表面エネルギーに基づいて、少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%のこのプラスチック材料部分の表面エネルギーの増加を生じる。
【0018】
処理されていないPETは、30〜45mJ/m2の表面エネルギーを示す。相応して、このプラスチック材料がPETからなる場合には、前処理後の表面エネルギーは少なくとも50mJ/m2、好ましくは少なくとも55mJ/m2、特に少なくとも60mJ/m2であるべきであり、この上方の範囲は150mJ/m2である。
【0019】
処理されていないPPは、25〜35mJ/m2の表面エネルギーを示す。相応して、このプラスチック材料がPPからなる場合には、前処理後の表面エネルギーは少なくとも45mJ/m2、好ましくは少なくとも50mJ/m2、特に少なくとも55mJ/m2であるべきであり、この上方の範囲は150mJ/m2である。この表面エネルギーは、Accu Dyne Test(商標) Marker Pensのマニュアルに応じて測定する。
【0020】
オキシフッ素化は例えばWO2004/089624又はUS5,900,321に詳細に説明されている。オキシフッ素化によるこの前処理は、本発明によれば、このプラスチック材料の表面の少なくとも一部分を、0.01〜5体積%のフッ素及び任意に不活性ガス、例えば窒素又は空気、又は付加的な反応性種、例えば塩素又は酸素を含有する、フッ素含有ガス混合物に曝露することによって実施されてよい。本発明のためのオキシフッ素化は、10〜10000kPa、好ましくは100〜5000kPaの圧力で、10〜90℃の温度で、1〜60分間の曝露時間で行ってよい。図2は、例えばオキシフッ素化後の、ボトルの前処理されたプレフォームを示す。図2中の「f」は、プレフォーム上の前処理した/オキシフッ素化した場所を表す。このプレフォームは内側(すなわち、包装された物品と接触する、容器の側)及び/又は外側で前処理されてよい。好ましくは、プレフォームはその外側でだけ前処理される。
【0021】
前処理後に、バリアーコーティングとしてのポリビニルアルコールでプラスチック材料をコーティングする。好ましくは、このポリビニルアルコールは、少なくとも90%、好ましくは少なくとも98%の鹸化/加水分解度を有する。このPVA層は、このコーティングプロセスに由来する幾ばくかの痕跡量の湿分を除いて、可塑剤を含まない。
【0022】
このコーティング層は、0.01〜5μmの厚さを有してよい。好ましくは、ポリビニルアルコールは水溶液として、例えばディップコーティング、流し又は吹付けによって、設けられる。このコーティング溶液の濃度は好ましくは5〜25質量%である。図3は、ポリビニルアルコールの水溶液中への浸漬による活性化されたプレフォームのコーティングを示す。
【0023】
余剰のコーティング材料は、このプラスチック材料のスピニング(spinning)によって除去されてよい。このコーティングは室温で4〜8時間(一晩)にわたり又は30〜60℃の温度を有する炉中で高められた温度で0.5〜2時間にわたり乾燥される。適した機械、例えばヒーターを有するコンベヤーの助力によって、迅速な乾燥/硬化が15〜30秒間の間に得られる。
【0024】
バリアーコーティングされたプラスチック材料は、10〜90℃、好ましくは10〜50℃の周囲温度で、任意に減圧下で、実質的に全ての水を除去すべく乾燥され、次いで、保護トップコーティングに供される。
【0025】
保護コーティングのためには、ポリビニルアルコールと1以上のアルデヒドとの反応生成物としてのポリビニルアセタールが使用される。適したポリビニルアセタールは、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセチル−コ−ブチラール及び架橋したポリビニルブチラールからなる群から選択される。ポリビニルアセタールのアセタール化度は70〜90mol%であり、ポリビニルアルコール含有量は8〜30mol%であるべきである。
【0026】
ポリビニルアセタールは、このポリビニルアルコール層上に有機溶媒中の溶液として、例えばメチルエチルケトン(MEK)、メタノール、アセトン又はエタノール中の溶液として、例えばディップコーティング又は吹付けによって設けられる。このポリビニルアセタールは0.01〜5μmの厚さを有する。図4は、ポリビニルアセタールの溶液中へのディッピングによる、ポリビニルアルコールのバリアーコーティング(a)を備えるプレフォームのコーティングを示す。
【0027】
このコーティング溶液の濃度は好ましくは5〜25質量%である。
【0028】
余剰のコーティング材料は、このプラスチック材料のスピニングによって除去されてよい。このコーティングは室温で4〜8時間(一晩)にわたり又は30〜60℃の温度を有する炉中で高められた温度で0.5〜2時間にわたり乾燥される。適した機械、例えばヒーターを有するコンベヤーの助力によって、迅速な乾燥/硬化が15〜30秒間の間に得られる。
【0029】
図5は、プレフォームコーティングラインのためのフロー順序を示し、ここでは、2つのコーティング工程を、引き続く乾燥拠点を伴って、この前処理されたプレフォームをポリビニルアルコール及びポリビニルアルコールの溶液中にディッピングすることによって実施する。プレフォームを、コーティング及び乾燥拠点の間に、移送拠点を介して、適した機械を用いて移送する。
【0030】
バリアーコーティング及び/又は保護トップコーティング中に染料又は顔料を組み込むことができる。適した顔料は例えばSiO2、Al2O3又はTiO2であり、染料としてはClariantからの「Rhenol」タイプ染料が使用できる。各層中の染料又は顔料の濃度は、ポリマーに基づいて0.01〜5質量%の範囲に及ぶことができる。
【0031】
プラスチック材料は、この工程a)、b)及びc)に応じたコーティング及び乾燥に引き続き、ブロー形成プロセス、ブロープロセス、例えば延伸ブロー成形又は射出延伸ブロー成形によって容器へと最終成形されてよい。
【0032】
本発明の方法でコーティングされるべきプラスチック材料は、PET、PP、PE(ポリエチレン)及びCOC(環式オレフィンコポリマー)の群から選択されるポリマーを含むか又はこれからなってよい。
【0033】
プラスチック材料は、任意の二次元又は三次元の形状、例えばフィルム又は容器又は容器部分を有してよい。コーティングは、容器へと次いで成形される一次成形体(プレフォーム)に適用されてもよい。本願で使用される場合に「プレフォーム」は、いかなる成形体にも限定されず、特にボトルのプレフォームに限定されず、かつ、別の成形プロセスによって最終的な容器を生産するために使用される全ての一次成形体を特徴付けてよい。図1は、ボトルのための典型的なプレフォームを示す。
【0034】
本発明のまた別の主題は、既に説明したコーティング工程a)、b)及びc)を含むプロセスへ容器のプレフォームを供し、引き続き、この容器の最終形状へとこのプレフォームを成形することによって、容器を製造する方法である。好ましくは、プレフォームの成形は、ブロー成形プロセス、例えば延伸ブロー成形又は射出延伸ブロー成形によって実施される。
【0035】
本発明のための延伸ブロープロセスは、図6において例示的に示される。工程aにおいてプレフォームはまず加熱され、次いで型へと移送される(b)。力sによる延伸及び予備ブロー(工程c)の後に、ボトルは工程dにおいて最終的に吹込みされる。図7は、本発明によるコーティングされたプレフォーム(a)を示し、これはコーティングを損傷することなく延伸されることができる(b)。図7の延伸されたプレフォームは、図8aに示されるとおり延伸された予備ブローされたコーティング済みプレフォームへと変換されることができ、これはコーティングされたボトルへと最終的にインフレーション(ブロー)される(図8b)。
【0036】
本発明によるコーティングは、容器の外側又は内側又は両側に適用されてよい。
【0037】
本発明の方法によりコーティングされた容器は、食品又は飲料、薬物、スパイス、コーヒー、紅茶又は化学薬品のために使用されてよい。容器は、カプセル、ブリスター包装、サッシェ、エンベロープ(envelope)、ゼリー缶、ボトル及びジャーからなる群から選択される形状を有してよい。
【0038】
本発明による方法の利点は、このコーティングが、延伸ブロープロセスに耐えるのに十分に柔軟性があるが、包装された物品を保護するのに十分に機械的及び化学的に安定である点にある。図9は、プレフォーム及びボトルプラズマ処理及びコーティングの比較を示す。平滑な、閉塞されていない(non obstracted)プレフォーム形状は、表面処理及び均一なコーティングのために良好なアクセスを可能にする(図9a)。側方のボトル溝、内側に彎曲した底部及び側板(side panel)は、プラズマ表面処理が到達するのに困難な領域であり、溶融しやすく、かつ、この溝及び板の隅における蓄積を伴うコーティングにおける不均一な分布を生じる(図9b)。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、コロナ、電子線又はプラズマで処理されるボトルのための典型的なプレフォームを示す図である。
【図2】図2は、例えばオキシフッ素化後の、ボトルの前処理されたプレフォームを示す図である。
【図3】図3は、ポリビニルアルコールの水溶液中への浸漬による活性化されたプレフォームのコーティングを示す図である。
【図4】図4は、ポリビニルアセタールの溶液中へのディッピングによる、ポリビニルアルコールのバリアーコーティング(a)を備えるプレフォームのコーティングを示す図である。
【図5】図5は、プレフォームコーティングラインのためのフロー順序を示す図である。
【図6】図6は、本発明の延伸プロセスを例示的に示す図である。
【図7】図7は、本発明によるコーティングされたプレフォームを示す図である。
【図8】図8は、図7の延伸されたプレフォームが延伸された予備ブローされたコーティングされたプレフォームへと変換されることができること(a)、これは最終的にコーティングされたボトルへとインフレーション(ブロー)されること(b)を示す図である。
【図9】図9は、プレフォーム及びボトルプラズマ処理及びコーティングの比較を示す図である。
【実施例】
【0040】
ポリプロピレン容器のコーティング
加圧された処理ガスの器をまず、清浄な、乾燥した、鋼の圧力シリンダー(これはフッ素供給(fluorine service)についてパッシベーションされている)に対して強力な真空(<1torr)を引っ張ることによって調整した。これに、1061kPa(154psi)のゲージ圧が達成されるまで、窒素中20%(体積で)のF2を添加した。次いで、乾燥した、油不含の圧縮空気を、ゲージ圧3.4MPa(500psi)をこの器が達成するまで添加した。このシリンダーを、ローラー装置上に水平に配置し、48時間にわたりこのガスを均質に混合するためにローリングさせた。
【0041】
フッ素酸化を、内部体積56l(2ft3)を有する鋼の器中でバッチ式に実施した。ポリプロピレン容器を、ワイヤーラック上で前記処理器中に周囲温度で配置し、この器の扉を閉鎖し、封止した。真空ポンプを用いて、5torrの圧力が達成されるまでこの処理器から空気を排気した。上述のとおり加圧した処理ガスを、絶対圧760torrが達成されるまで流入させた。
【0042】
このポリプロピレン容器を、前記フッ素ガス混合物を有する前記リアクター中に20分間放置した。このリアクター中のガスを次いで、苛性スクラバーを通じて排気した真空ポンプによって除去した。この排気したリアクターに、乾燥した、油不含の空気を765torrまで充填し、次いで5torrに排気した。このパージ工程を10回実施した。このリアクターに再度、乾燥した清浄な空気を充填し、この扉を開放し、この処理されたポリプロピレン容器を取り除いた。
【0043】
フッ素酸化前のポリプロピレン容器の表面エネルギーは30〜34mJ/m2であり、前処理後の表面エネルギーは52〜56mJ/m2(dynes/cm)であることが見出された。表面エネルギーをAccu Dyne Test(商標) Marker Pensを用いて測定した。
【0044】
ポリエチレンテレフタラート(PET)容器のコーティング
加圧された処理ガスの器をまず、清浄な、乾燥した、鋼の圧力シリンダー(これはフッ素供給についてパッシベーションされている)に対して強力な真空(<1torr)を引っ張ることによって調整した。これに、703kPa(103psi)のゲージ圧が達成されるまで、窒素中20%(体積で)のF2を添加した。次いで、乾燥した、油不含の圧縮空気を、ゲージ圧3.4MPa(500psi)を前記器が達成するまで添加した。このシリンダーを次いで、ローラー装置上に水平に配置し、48時間にわたりこのガスを均質に混合するためにローリングさせた。フッ素酸化を、内部体積56l(2ft3)を有する鋼の器中でバッチ式に実施した。
【0045】
PET容器をワイヤーラック上で前記処理器中に周囲温度で配置した。この器の扉を閉鎖し、封止した。真空ポンプを用いて、5torrの圧力が達成されるまでこの処理器を排気する。上述のとおり加圧した処理ガスを、絶対圧765torrが達成されるまでこの反応器中へと流入させた。
【0046】
このPET容器を、前記フッ素ガス混合物を有する前記リアクター中で15分間放置した。
【0047】
このリアクター中のガスを、苛性スクラバーを通じて排気した真空ポンプによって除去した。この排気したリアクターに、乾燥した、油不含の空気を760torrまで充填し、次いで5torrに排気した。このパージ工程を10回実施した。このリアクターを再度、乾燥した清浄な空気で充填し、この扉を開放し、この処理されたPET容器を取り除いた。
【0048】
フッ素酸化前のPET容器の表面エネルギーは36〜40mJ/m2であり、前処理後の表面エネルギーは56〜60mJ/m2(dynes/cm)であることが見出された。表面エネルギーをAccu Dyne Test(商標) Marker Pensを用いて測定した。
【0049】
コーティング
PP及びPETからの500mlボトルのためのプレフォームを説明したとおりに前処理した。
【0050】
Kuraray Europe GmbHからのMOWIOL 28−99(鹸化度99%を有するPVA)の10質量%水溶液を調整し、この前処理したプレフォームをこの溶液中に浸漬することによってコーティングした。過剰のコーティング液体をスピニングによって取り除き、このコーティングされたプレフォームを一晩室温で乾燥させたままにした。
【0051】
次いで、PVOH含有量18〜21mol%及びポリビニルアセタート含有量1〜4mol%を有するポリビニルブチラール(PVB)としてのMOWITAL SB 30HHの10質量%エタノール性溶液(Kuraray Europe GmbH)を調整し、説明されたとおりにPVAによって既にコーティングされたプレフォームを、この溶液中に浸漬することによってコーティングした。過剰のコーティング液体をスピニングによって取り除き、このコーティングされたプレフォームを一晩室温で乾燥させたままにした。
【0052】
このようにしてコーティングされたプレフォームを通常の延伸ブロー成形機械で吹込み、これはPP又はPETと成形プロセスに関して実質的に同じパラメーターを有するそれぞれの基材材料からのコーティングされていないプレフォームを吹込むために使用された。
【0053】
以下の表は、本発明によるコーティングされたボトルの酸素透過性の結果を、コーティングされていないボトルに比較して示しており、この結果は、MoCon試験設備を用いて測定されている。
【0054】
【表1】
【0055】
「cc/pkg/日」は、包装あたり1日あたりの立方センチメーターのガスの損失を表す。この表から認められるとおり、コーティングされたPPボトルの酸素透過性は5.5%に減少し、コーティングされたPETボトルについて8.6%に減少し、これはコーティングされていないボトルについてのそれぞれの値に対する。
【0056】
ボトル及びコーティングは通常の摩耗(例えば指の爪での引掻)及び湿度(例えば冷蔵庫から水で充填されたボトルの取り出し)に対して機械的に安定であった。プレフォームが、前処理されないで上述のとおりコーティングされた場合には、酸素透過性は、ブロー後のコーティングに発生するピンホール及び/又は割れのためにより低かった。さらに、コーティングは指の爪の引掻により除去されることができ、次いで、湿分に感受性である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、引掻及び湿分抵抗性の、酸素又は二酸化炭素に対するバリアーコーティングを備えるプラスチック容器に関し、特にこのような容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品及び飲料のためのプラスチック容器は長く知られており、かつ、延伸ブロー成形プロセスにおいて、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)から大抵製造される。
【0003】
容器中への又は容器外への、ガス、特に酸素又は二酸化炭素の透過性を減少させるために、この種の容器上にバリアーコーティングを設け、これによって、包装された物品の貯蔵寿命を改善させることも知られている。
【0004】
この観点において、US5419976は、PET基材のためのバリアー材料として、ポリビニルアルコール(PVA)とポリメタクリラートのブレンドの使用を開示する。このバリアー材料は、多層複合材料を形成するために、基材のフィルム又はシート上に共押出される。
【0005】
類似のプロセスは、EP0023701(US5258230)から知られており、ここでは、可塑化したPVAからなるフィルムをポリビニルアセタールでコーティングして、酸素についての高い浸透抵抗性を有する水不溶性コーティングを生じる。このコーティングされたPVAフィルムは、食品、化粧物品又は医療装置のための包装材料として意図されている。PVA層の可塑剤は、このポリビニルアセタール層中へと移動する可能性が高く、このことは、機械的に劣ったトップコーティングを生じる。
【0006】
さらに、DE10153210及びDE10207592A1からは、PETボトル上のガスバリアーとしてのポリビニルアルコールの使用が知られており、これは、このバリアーコーティングの耐水性を改善するためのポリビニルブチラールを含む付加的なトップコートを有する。この種の多層コーティングは、酸素及び二酸化炭素に対して良好なバリアー性能、耐引掻性を示し、かつ、このバリアーコーティングの水溶性のために、トップ層の機械的破壊後にリサイクル可能である。
【0007】
大抵のプラスチックボトル、例えば、ソフトドリンクのために使用されるものは、いわゆるプレフォームからの射出延伸ブロー成形により生産される。この種のブロープロセスにおいては、プレフォームはその当初体積の10倍よりも多く膨張させられ、このことは、このプレフォーム表面上に積層された全てのコーティングの著しい薄化(thinning)を生じる。延伸ブロープロセスの間のこのバリアーコーティングの劣化(degradation)又は割れを妨げるために、先行技術は、このトップコーティングのための幾つかのフィルム構築ポリマーを提案する。
【0008】
この観点において、GB2337470A1は、PVAを基礎とするバリアーコーティングを備えたボトルのためのPETプレフォームをコーティングする方法、及び、第2のポリマー状材料を設けることによってこのバリアーコーティングされたプレフォームを保護する方法を開示する。第2のポリマー状材料としては、ポリエステル、例えばPET及びポリカーボナートが提案される。この刊行物はさらに、このバリアーコーティングを設ける前のこの基材表面の化学的又は物理的な前処理を説明する。GB2337470は、化学的な前処理のために、接着剤、例えばメトキシ−メチル−メチロールメラミン(Cymel)又はポリエステルベース接着剤と、加熱したプレフォームの反応を開示する。このバリアーコーティングの接着はさらに、物理的な前処理、例えば火炎又はコロナ放電処理によって高められてよい。
【0009】
GB2337470に開示される、バリアーコーティング上に設けられる保護コーティングは、コーティングされたプレフォームのブロー成形プロセスに耐えるよう特殊にあつらえられている。ポリビニルアルコールはどちらかと言えば親水性のポリマーであり、PETはどちらかと言えば吸湿性であるので、この刊行物により提案されるトップコーティングは、機械的及び化学的に不安定であり、湿った条件下では離層する。トップコーティングが水に対して透過性であると、ポリビニルアルコールからの水溶性バリアーコーティングは溶解し、このようにして、この全体のバリアー特性を取り除く。GB2337470は、PVAのための溶媒として水/イソプロパノール/メタン酸を、そして、PETトップコーティングのために酢酸エチルを提案する。両方の溶媒システムは、環境的制限のために、許容できない。したがって、GB2337470によって開示される方法は、ボトルの工業規模コーティングのためには適用できない。
【0010】
類似の技術は、WO2004/089624により開示され、ここでは、PET又はポリオレフィンからの、食品又は製造された物品のための容器が、まず、PVA、ポリアミン、ポリビニルイミン、ポリアクリル酸その他を含む少なくとも2つのポリマーのブレンドによって、引き続き、ポリウレタン、PVC又はポリアクリラートの保護コーティングによって、コーティングされる。任意に、そして、このバリアーコーティング前に、この基材は、プラズマ、火炎、塩素、フッ素又は化学的エッチングによって前処理されてよい。この刊行物によって提案されるポリマーでの、かなり極性のポリマーとしてのポリビニルアルコールのトップコーティングは、機械的及び化学的に不安定な層を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US5419976
【特許文献2】EP0023701
【特許文献3】US5258230
【特許文献4】DE10153210
【特許文献5】DE10207592A1
【特許文献6】GB2337470A1
【特許文献7】WO2004/089624
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、ポリマー基材のためのコーティングであって、基材のガス透過性を減少させ、基材に対する良好な付着を有し、かつ、機械的に柔軟であり、このためコーティングの欠陥を生じることなく基材の引き続く成形プロセスを可能にするコーティングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
以下の工程:
a)プラスチック材料の少なくとも一部分を前処理する工程、
b)この前処理された表面上にポリビニルアルコールのコーティング層少なくとも1つを設ける工程、及び
c)このポリビニルアルコール層上にポリビニルアセタールのトップコーティング層少なくとも1つを設ける工程
を含む、プラスチック材料上にバリアーコーティングを設けることによりこのプラスチック材料のガス透過性を減少させる方法に関する。
【0014】
ポリビニルアルコールは、基材のガス透過性(特にO2及びCO2)を著しく減少させ、これによって、包装された食品、ソフトドリンク又はビールの貯蔵寿命を改善させる。PVAのみからなるコーティングの使用は、その湿分感受性のために制限されている。ポリビニルアセタールはPVA層のためのトップコーティングとして特に適し、というのも、両方のポリマーは類似のポリマー骨格を有し、かつ、混合物の広い範囲において相容性であるからである。
【0015】
プラスチック材料の活性化は、この引き続き付加された、ポリビニルアセタール及びポリビニルアルコール層が、この基材に付着することを確実にし、これによって、割れ又は離層なしに延伸ブローされることができる機械的に安定な複合材料が得られる。
【0016】
このプラスチック材料は好ましくは、この分野においてこのような目的のために知られているプロセスによって前処理又は活性化され、このプラスチック材料表面の少なくとも一部分のコロナ、電子ビーム、プラズマ処理又は火炎処理又はオキシフッ素化(oxyfluorination)を含んでよい。図1は、コロナ、電子ビーム又はプラズマで処理されるボトルのための典型的なプレフォームを示す。
【0017】
好ましくは、このプラスチック材料表面の少なくとも一部分の前処理又は活性化は、処理前の表面エネルギーに基づいて、少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%のこのプラスチック材料部分の表面エネルギーの増加を生じる。
【0018】
処理されていないPETは、30〜45mJ/m2の表面エネルギーを示す。相応して、このプラスチック材料がPETからなる場合には、前処理後の表面エネルギーは少なくとも50mJ/m2、好ましくは少なくとも55mJ/m2、特に少なくとも60mJ/m2であるべきであり、この上方の範囲は150mJ/m2である。
【0019】
処理されていないPPは、25〜35mJ/m2の表面エネルギーを示す。相応して、このプラスチック材料がPPからなる場合には、前処理後の表面エネルギーは少なくとも45mJ/m2、好ましくは少なくとも50mJ/m2、特に少なくとも55mJ/m2であるべきであり、この上方の範囲は150mJ/m2である。この表面エネルギーは、Accu Dyne Test(商標) Marker Pensのマニュアルに応じて測定する。
【0020】
オキシフッ素化は例えばWO2004/089624又はUS5,900,321に詳細に説明されている。オキシフッ素化によるこの前処理は、本発明によれば、このプラスチック材料の表面の少なくとも一部分を、0.01〜5体積%のフッ素及び任意に不活性ガス、例えば窒素又は空気、又は付加的な反応性種、例えば塩素又は酸素を含有する、フッ素含有ガス混合物に曝露することによって実施されてよい。本発明のためのオキシフッ素化は、10〜10000kPa、好ましくは100〜5000kPaの圧力で、10〜90℃の温度で、1〜60分間の曝露時間で行ってよい。図2は、例えばオキシフッ素化後の、ボトルの前処理されたプレフォームを示す。図2中の「f」は、プレフォーム上の前処理した/オキシフッ素化した場所を表す。このプレフォームは内側(すなわち、包装された物品と接触する、容器の側)及び/又は外側で前処理されてよい。好ましくは、プレフォームはその外側でだけ前処理される。
【0021】
前処理後に、バリアーコーティングとしてのポリビニルアルコールでプラスチック材料をコーティングする。好ましくは、このポリビニルアルコールは、少なくとも90%、好ましくは少なくとも98%の鹸化/加水分解度を有する。このPVA層は、このコーティングプロセスに由来する幾ばくかの痕跡量の湿分を除いて、可塑剤を含まない。
【0022】
このコーティング層は、0.01〜5μmの厚さを有してよい。好ましくは、ポリビニルアルコールは水溶液として、例えばディップコーティング、流し又は吹付けによって、設けられる。このコーティング溶液の濃度は好ましくは5〜25質量%である。図3は、ポリビニルアルコールの水溶液中への浸漬による活性化されたプレフォームのコーティングを示す。
【0023】
余剰のコーティング材料は、このプラスチック材料のスピニング(spinning)によって除去されてよい。このコーティングは室温で4〜8時間(一晩)にわたり又は30〜60℃の温度を有する炉中で高められた温度で0.5〜2時間にわたり乾燥される。適した機械、例えばヒーターを有するコンベヤーの助力によって、迅速な乾燥/硬化が15〜30秒間の間に得られる。
【0024】
バリアーコーティングされたプラスチック材料は、10〜90℃、好ましくは10〜50℃の周囲温度で、任意に減圧下で、実質的に全ての水を除去すべく乾燥され、次いで、保護トップコーティングに供される。
【0025】
保護コーティングのためには、ポリビニルアルコールと1以上のアルデヒドとの反応生成物としてのポリビニルアセタールが使用される。適したポリビニルアセタールは、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセチル−コ−ブチラール及び架橋したポリビニルブチラールからなる群から選択される。ポリビニルアセタールのアセタール化度は70〜90mol%であり、ポリビニルアルコール含有量は8〜30mol%であるべきである。
【0026】
ポリビニルアセタールは、このポリビニルアルコール層上に有機溶媒中の溶液として、例えばメチルエチルケトン(MEK)、メタノール、アセトン又はエタノール中の溶液として、例えばディップコーティング又は吹付けによって設けられる。このポリビニルアセタールは0.01〜5μmの厚さを有する。図4は、ポリビニルアセタールの溶液中へのディッピングによる、ポリビニルアルコールのバリアーコーティング(a)を備えるプレフォームのコーティングを示す。
【0027】
このコーティング溶液の濃度は好ましくは5〜25質量%である。
【0028】
余剰のコーティング材料は、このプラスチック材料のスピニングによって除去されてよい。このコーティングは室温で4〜8時間(一晩)にわたり又は30〜60℃の温度を有する炉中で高められた温度で0.5〜2時間にわたり乾燥される。適した機械、例えばヒーターを有するコンベヤーの助力によって、迅速な乾燥/硬化が15〜30秒間の間に得られる。
【0029】
図5は、プレフォームコーティングラインのためのフロー順序を示し、ここでは、2つのコーティング工程を、引き続く乾燥拠点を伴って、この前処理されたプレフォームをポリビニルアルコール及びポリビニルアルコールの溶液中にディッピングすることによって実施する。プレフォームを、コーティング及び乾燥拠点の間に、移送拠点を介して、適した機械を用いて移送する。
【0030】
バリアーコーティング及び/又は保護トップコーティング中に染料又は顔料を組み込むことができる。適した顔料は例えばSiO2、Al2O3又はTiO2であり、染料としてはClariantからの「Rhenol」タイプ染料が使用できる。各層中の染料又は顔料の濃度は、ポリマーに基づいて0.01〜5質量%の範囲に及ぶことができる。
【0031】
プラスチック材料は、この工程a)、b)及びc)に応じたコーティング及び乾燥に引き続き、ブロー形成プロセス、ブロープロセス、例えば延伸ブロー成形又は射出延伸ブロー成形によって容器へと最終成形されてよい。
【0032】
本発明の方法でコーティングされるべきプラスチック材料は、PET、PP、PE(ポリエチレン)及びCOC(環式オレフィンコポリマー)の群から選択されるポリマーを含むか又はこれからなってよい。
【0033】
プラスチック材料は、任意の二次元又は三次元の形状、例えばフィルム又は容器又は容器部分を有してよい。コーティングは、容器へと次いで成形される一次成形体(プレフォーム)に適用されてもよい。本願で使用される場合に「プレフォーム」は、いかなる成形体にも限定されず、特にボトルのプレフォームに限定されず、かつ、別の成形プロセスによって最終的な容器を生産するために使用される全ての一次成形体を特徴付けてよい。図1は、ボトルのための典型的なプレフォームを示す。
【0034】
本発明のまた別の主題は、既に説明したコーティング工程a)、b)及びc)を含むプロセスへ容器のプレフォームを供し、引き続き、この容器の最終形状へとこのプレフォームを成形することによって、容器を製造する方法である。好ましくは、プレフォームの成形は、ブロー成形プロセス、例えば延伸ブロー成形又は射出延伸ブロー成形によって実施される。
【0035】
本発明のための延伸ブロープロセスは、図6において例示的に示される。工程aにおいてプレフォームはまず加熱され、次いで型へと移送される(b)。力sによる延伸及び予備ブロー(工程c)の後に、ボトルは工程dにおいて最終的に吹込みされる。図7は、本発明によるコーティングされたプレフォーム(a)を示し、これはコーティングを損傷することなく延伸されることができる(b)。図7の延伸されたプレフォームは、図8aに示されるとおり延伸された予備ブローされたコーティング済みプレフォームへと変換されることができ、これはコーティングされたボトルへと最終的にインフレーション(ブロー)される(図8b)。
【0036】
本発明によるコーティングは、容器の外側又は内側又は両側に適用されてよい。
【0037】
本発明の方法によりコーティングされた容器は、食品又は飲料、薬物、スパイス、コーヒー、紅茶又は化学薬品のために使用されてよい。容器は、カプセル、ブリスター包装、サッシェ、エンベロープ(envelope)、ゼリー缶、ボトル及びジャーからなる群から選択される形状を有してよい。
【0038】
本発明による方法の利点は、このコーティングが、延伸ブロープロセスに耐えるのに十分に柔軟性があるが、包装された物品を保護するのに十分に機械的及び化学的に安定である点にある。図9は、プレフォーム及びボトルプラズマ処理及びコーティングの比較を示す。平滑な、閉塞されていない(non obstracted)プレフォーム形状は、表面処理及び均一なコーティングのために良好なアクセスを可能にする(図9a)。側方のボトル溝、内側に彎曲した底部及び側板(side panel)は、プラズマ表面処理が到達するのに困難な領域であり、溶融しやすく、かつ、この溝及び板の隅における蓄積を伴うコーティングにおける不均一な分布を生じる(図9b)。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、コロナ、電子線又はプラズマで処理されるボトルのための典型的なプレフォームを示す図である。
【図2】図2は、例えばオキシフッ素化後の、ボトルの前処理されたプレフォームを示す図である。
【図3】図3は、ポリビニルアルコールの水溶液中への浸漬による活性化されたプレフォームのコーティングを示す図である。
【図4】図4は、ポリビニルアセタールの溶液中へのディッピングによる、ポリビニルアルコールのバリアーコーティング(a)を備えるプレフォームのコーティングを示す図である。
【図5】図5は、プレフォームコーティングラインのためのフロー順序を示す図である。
【図6】図6は、本発明の延伸プロセスを例示的に示す図である。
【図7】図7は、本発明によるコーティングされたプレフォームを示す図である。
【図8】図8は、図7の延伸されたプレフォームが延伸された予備ブローされたコーティングされたプレフォームへと変換されることができること(a)、これは最終的にコーティングされたボトルへとインフレーション(ブロー)されること(b)を示す図である。
【図9】図9は、プレフォーム及びボトルプラズマ処理及びコーティングの比較を示す図である。
【実施例】
【0040】
ポリプロピレン容器のコーティング
加圧された処理ガスの器をまず、清浄な、乾燥した、鋼の圧力シリンダー(これはフッ素供給(fluorine service)についてパッシベーションされている)に対して強力な真空(<1torr)を引っ張ることによって調整した。これに、1061kPa(154psi)のゲージ圧が達成されるまで、窒素中20%(体積で)のF2を添加した。次いで、乾燥した、油不含の圧縮空気を、ゲージ圧3.4MPa(500psi)をこの器が達成するまで添加した。このシリンダーを、ローラー装置上に水平に配置し、48時間にわたりこのガスを均質に混合するためにローリングさせた。
【0041】
フッ素酸化を、内部体積56l(2ft3)を有する鋼の器中でバッチ式に実施した。ポリプロピレン容器を、ワイヤーラック上で前記処理器中に周囲温度で配置し、この器の扉を閉鎖し、封止した。真空ポンプを用いて、5torrの圧力が達成されるまでこの処理器から空気を排気した。上述のとおり加圧した処理ガスを、絶対圧760torrが達成されるまで流入させた。
【0042】
このポリプロピレン容器を、前記フッ素ガス混合物を有する前記リアクター中に20分間放置した。このリアクター中のガスを次いで、苛性スクラバーを通じて排気した真空ポンプによって除去した。この排気したリアクターに、乾燥した、油不含の空気を765torrまで充填し、次いで5torrに排気した。このパージ工程を10回実施した。このリアクターに再度、乾燥した清浄な空気を充填し、この扉を開放し、この処理されたポリプロピレン容器を取り除いた。
【0043】
フッ素酸化前のポリプロピレン容器の表面エネルギーは30〜34mJ/m2であり、前処理後の表面エネルギーは52〜56mJ/m2(dynes/cm)であることが見出された。表面エネルギーをAccu Dyne Test(商標) Marker Pensを用いて測定した。
【0044】
ポリエチレンテレフタラート(PET)容器のコーティング
加圧された処理ガスの器をまず、清浄な、乾燥した、鋼の圧力シリンダー(これはフッ素供給についてパッシベーションされている)に対して強力な真空(<1torr)を引っ張ることによって調整した。これに、703kPa(103psi)のゲージ圧が達成されるまで、窒素中20%(体積で)のF2を添加した。次いで、乾燥した、油不含の圧縮空気を、ゲージ圧3.4MPa(500psi)を前記器が達成するまで添加した。このシリンダーを次いで、ローラー装置上に水平に配置し、48時間にわたりこのガスを均質に混合するためにローリングさせた。フッ素酸化を、内部体積56l(2ft3)を有する鋼の器中でバッチ式に実施した。
【0045】
PET容器をワイヤーラック上で前記処理器中に周囲温度で配置した。この器の扉を閉鎖し、封止した。真空ポンプを用いて、5torrの圧力が達成されるまでこの処理器を排気する。上述のとおり加圧した処理ガスを、絶対圧765torrが達成されるまでこの反応器中へと流入させた。
【0046】
このPET容器を、前記フッ素ガス混合物を有する前記リアクター中で15分間放置した。
【0047】
このリアクター中のガスを、苛性スクラバーを通じて排気した真空ポンプによって除去した。この排気したリアクターに、乾燥した、油不含の空気を760torrまで充填し、次いで5torrに排気した。このパージ工程を10回実施した。このリアクターを再度、乾燥した清浄な空気で充填し、この扉を開放し、この処理されたPET容器を取り除いた。
【0048】
フッ素酸化前のPET容器の表面エネルギーは36〜40mJ/m2であり、前処理後の表面エネルギーは56〜60mJ/m2(dynes/cm)であることが見出された。表面エネルギーをAccu Dyne Test(商標) Marker Pensを用いて測定した。
【0049】
コーティング
PP及びPETからの500mlボトルのためのプレフォームを説明したとおりに前処理した。
【0050】
Kuraray Europe GmbHからのMOWIOL 28−99(鹸化度99%を有するPVA)の10質量%水溶液を調整し、この前処理したプレフォームをこの溶液中に浸漬することによってコーティングした。過剰のコーティング液体をスピニングによって取り除き、このコーティングされたプレフォームを一晩室温で乾燥させたままにした。
【0051】
次いで、PVOH含有量18〜21mol%及びポリビニルアセタート含有量1〜4mol%を有するポリビニルブチラール(PVB)としてのMOWITAL SB 30HHの10質量%エタノール性溶液(Kuraray Europe GmbH)を調整し、説明されたとおりにPVAによって既にコーティングされたプレフォームを、この溶液中に浸漬することによってコーティングした。過剰のコーティング液体をスピニングによって取り除き、このコーティングされたプレフォームを一晩室温で乾燥させたままにした。
【0052】
このようにしてコーティングされたプレフォームを通常の延伸ブロー成形機械で吹込み、これはPP又はPETと成形プロセスに関して実質的に同じパラメーターを有するそれぞれの基材材料からのコーティングされていないプレフォームを吹込むために使用された。
【0053】
以下の表は、本発明によるコーティングされたボトルの酸素透過性の結果を、コーティングされていないボトルに比較して示しており、この結果は、MoCon試験設備を用いて測定されている。
【0054】
【表1】
【0055】
「cc/pkg/日」は、包装あたり1日あたりの立方センチメーターのガスの損失を表す。この表から認められるとおり、コーティングされたPPボトルの酸素透過性は5.5%に減少し、コーティングされたPETボトルについて8.6%に減少し、これはコーティングされていないボトルについてのそれぞれの値に対する。
【0056】
ボトル及びコーティングは通常の摩耗(例えば指の爪での引掻)及び湿度(例えば冷蔵庫から水で充填されたボトルの取り出し)に対して機械的に安定であった。プレフォームが、前処理されないで上述のとおりコーティングされた場合には、酸素透過性は、ブロー後のコーティングに発生するピンホール及び/又は割れのためにより低かった。さらに、コーティングは指の爪の引掻により除去されることができ、次いで、湿分に感受性である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a)プラスチック材料の少なくとも一部分を前処理する工程、
b)この前処理された表面上にポリビニルアルコールのコーティング層少なくとも1つを設ける工程、及び
c)このポリビニルアルコール層上にポリビニルアセタールのトップコーティング層少なくとも1つを設ける工程
を含む、プラスチック材料上にバリアーコーティングを設けることによりこのプラスチック材料のガス透過性を減少させる方法。
【請求項2】
プラスチック材料を、オキシフッ素化、コロナ、電子線又は火炎処理によって前処理することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
プラスチック材料の表面エネルギーが、前処理後に少なくとも10%増加することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ポリビニルアルコールを水溶液として設けることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ポリビニルアルコールのコーティング層を水溶液として設け、かつ、10〜90℃で乾燥させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ポリビニルアルコールが、少なくとも90%の鹸化度を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ポリビニルアセタールが、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセチル−コ−ブチラール及び架橋したポリビニルブチラールからなる群から選択されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ポリビニルアセタールを、有機溶媒中の溶液としてポリビニルアルコール層上に設けることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程a)、b)及びc)に引き続き、このコーティングされたプラスチック材料をブロー成形プロセスにおいて成形することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
プラスチック材料が、PET、PP、PE又はCOCを含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
容器のプレフォームを請求項1から10のいずれか1項記載の方法に供し、引き続き、このプレフォームを容器の最終形状へと成形することによって、容器又はその部分を製造する方法。
【請求項12】
プレフォームの成形を、ブロー成形プロセス、例えば延伸ブロー成形又は射出延伸ブロー成形によって実施することを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
容器の外側にコーティングを設けることを特徴とする請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
容器の内側にコーティングを設けることを特徴とする請求項11又は12記載の方法。
【請求項1】
以下の工程:
a)プラスチック材料の少なくとも一部分を前処理する工程、
b)この前処理された表面上にポリビニルアルコールのコーティング層少なくとも1つを設ける工程、及び
c)このポリビニルアルコール層上にポリビニルアセタールのトップコーティング層少なくとも1つを設ける工程
を含む、プラスチック材料上にバリアーコーティングを設けることによりこのプラスチック材料のガス透過性を減少させる方法。
【請求項2】
プラスチック材料を、オキシフッ素化、コロナ、電子線又は火炎処理によって前処理することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
プラスチック材料の表面エネルギーが、前処理後に少なくとも10%増加することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ポリビニルアルコールを水溶液として設けることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ポリビニルアルコールのコーティング層を水溶液として設け、かつ、10〜90℃で乾燥させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ポリビニルアルコールが、少なくとも90%の鹸化度を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ポリビニルアセタールが、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセチル−コ−ブチラール及び架橋したポリビニルブチラールからなる群から選択されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ポリビニルアセタールを、有機溶媒中の溶液としてポリビニルアルコール層上に設けることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程a)、b)及びc)に引き続き、このコーティングされたプラスチック材料をブロー成形プロセスにおいて成形することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
プラスチック材料が、PET、PP、PE又はCOCを含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
容器のプレフォームを請求項1から10のいずれか1項記載の方法に供し、引き続き、このプレフォームを容器の最終形状へと成形することによって、容器又はその部分を製造する方法。
【請求項12】
プレフォームの成形を、ブロー成形プロセス、例えば延伸ブロー成形又は射出延伸ブロー成形によって実施することを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
容器の外側にコーティングを設けることを特徴とする請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
容器の内側にコーティングを設けることを特徴とする請求項11又は12記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−61463(P2012−61463A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200359(P2011−200359)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(507052393)クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Brueningstrasse 50, D−65926 Frankfurt , Germany
【出願人】(511224151)コンテナー コーポレイション オブ カナダ (2)
【氏名又は名称原語表記】Container Corporation of Canada
【住所又は居所原語表記】68 Leek Crescent, L4B 1H1 Richmond Hill, Ontario, Canada
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(507052393)クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Brueningstrasse 50, D−65926 Frankfurt , Germany
【出願人】(511224151)コンテナー コーポレイション オブ カナダ (2)
【氏名又は名称原語表記】Container Corporation of Canada
【住所又は居所原語表記】68 Leek Crescent, L4B 1H1 Richmond Hill, Ontario, Canada
【Fターム(参考)】
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