説明

バリ除去構造を備えた中空体およびそのバリ除去方法

【課題】バリ切断部位に加わる切断刃の荷重による変形歪みが周辺に波及するのを防止し、開口部の寸法精度を大きく向上させることができるバリ除去構造およびそのバリ取り方法を提供する。
【解決手段】ダクト1は、ブロー成形された樹脂製の中空体の不要部分であるバリ2をブロー成形後に切断するバリ除去構造を備えた中空体である。ダクト1のバリ切断部位4には、それに沿って少なくともバリ2側または製品側(本体部分側)に撓み抑制構造5を備えている。ダクト1のバリ切断部位4に沿ってバリ2側に備える撓み抑制構造5は、補強リブを構成する1つまたは2つ以上の凹部6で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形された樹脂製の中空体の不要部分であるバリ(捨て袋と称されることもある)をブロー成形後に切断するためのバリ除去構造を備えた中空体およびそのバリ除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に装備される空調用その他のダクトは、ブロー成形された樹脂製の中空体で構成されることが多いが、ブロー成形された中空体をダクトとするには、ブロー成形時に生じる閉じた不要部分であるバリを除去する必要がある(特開昭57−199627号公報、特公平3−56888号公報、特開昭63−129240号公報参照)。
【特許文献1】特開昭57−199627号公報
【特許文献2】特公平3−56888号公報
【特許文献3】特開昭63−129240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前掲の特開昭57−199627号公報に記載されているように、ブロー成形された中空体のバリを除去するには、中空体のバリ切断部位に切断刃を当てて前進させる工程によりバリ切断部位を剪断するが、中空体のバリ切断部位は中空であるうえその部分には切断刃による荷重が加わるので、中空体のバリ切断部位およびその周辺に変形歪みが生じ、そのままの状態でバリ切断部位が剪断されるので、中空体のバリを除去した開口部が所期の形状に仕上がらないという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、このような問題点を解消しようとするものであって、中空体のバリ切断部位に沿って少なくともバリ側または製品側に撓み抑制構造を備えることにより、中空体のバリ切断部位に切断刃を押し当てて剪断する過程でバリ切断部位に加わる荷重による変形歪みが周辺に波及するのを防止し、開口部の寸法精度を大きく向上させることができるバリ除去構造を備えた中空体およびそのバリ除去方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の請求項1に係るバリ除去構造を備えた中空体は、ブロー成形された樹脂製の中空体の不要部分であるバリをブロー成形後に切断するためのバリ除去構造を備えた中空体であって、中空体のバリ切断部位には、それに沿って少なくともバリ側または製品側に撓み抑制構造を備えていることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項2に係るバリ除去構造を備えた中空体は、請求項1の構成において、中空体のバリ切断部位に沿う撓み抑制構造は、補強リブで構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項3に係るバリ除去構造を備えた中空体は、請求項2の構成において、撓み抑制構造を構成する補強リブは、1つまたは2つ以上の凹部で成ることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の請求項4に係るバリ除去構造を備えた中空体のバリ除去方法は、ブロー成形された樹脂製の中空体の不要部分であるバリをブロー成形後に切断する中空体のバリ除去方法であって、中空体はバリ切断部位に沿って少なくともバリ側または製品側に撓み抑制構造を備えており、中空体のバリ切断部位を固定して切断刃を切断部位に押し当てることによりバリ切断部位を剪断することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、中空体のバリ切断部位に沿って少なくともバリ側または製品側に撓み抑制構造を備えることにより、中空体のバリ切断部位に切断刃を押し当てて剪断する過程でバリ切断部位に加わる荷重による変形歪みが周辺に波及するのを防止し、開口部の寸法精度を大きく向上させることができる効果が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図面は本発明に係る中空体として車両に備える空調用のダクトについて例示している。図1はダクトの要部を示す側面図、図2は同上平面図、図3は図2のA−A断面図、図4はダクトのブロー成形態様を示す断面図、図5はブロー成形後のダクトのバリ除去態様示す要部の断面図、図6はダクトの連結態様を一部破断して示す平面図である。
【0011】
図1ないし図3に示すように、ブロー成形されたダクト1は、ダクトの本体部分に対して一端側が屈曲していて、その一端側はバリ2により閉じられている。このバリ2はダクト1を構成するうえで不要部分であるから、ブロー成形後に切断して除去する。3はパーティングラインであってブロー金型の合わせ面に形成される。図示のダクト1はその一端側が屈曲しているものであるから、ブロー成形の中心軸が屈曲している。このため、バリ2の正確な除去が難しいものである。
【0012】
ブロー成形されたダクト1において、4は周囲を取り巻くバリ切断部位であり、このバリ切断部位4に沿ってバリ2側には撓み抑制構造5を備えている。この撓み抑制構造5は、バリ切断部位4に対してバリ2側に形成した補強リブで構成されており、撓み抑制構造5を構成する補強リブは、2つの正方形状の浅い凹部6から成るものである。補強リブの凹部6は2つに限らず1つであっても、また3つ以上であってもよく、必ずしも正方形状に限らず適宜の形状とすることができる。補強リブを構成する凹部6は、図1に示すようにパーティングライン3と略直交する方向に形成されている。補強リブ5を構成する凹部6は、バリ切断部位4に対してバリ2側にかえて製品側(ダクト本体部分側)に形成してもよく、またバリ2側および製品側の両方に形成してもよい。
【0013】
本発明に係るダクト1は、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン又はそれらの樹脂に低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレンランダム重合体を配合したポリオレフィン樹脂などブロー成形可能な樹脂で構成される。
【0014】
図1ないし図3に示すダクト1は、図5に示すようにブロー成形される。図5において7はブロー成形金型、8は吹き込みノズルである。ブロー成形金型7によりブロー成形されたダクト1は、その一端側がバリ2により閉じられている。このバリ2はダクト1を構成するうえで不要部分であるから、ブロー成形後に切断して除去する。バリ2の切断には図5に示すようにバリ取り治具9を用いるが、バリ取り治具9は、ダクト1のバリ2の部分を固定するバリ固定部10、切断刃11およびその移動案内溝12を備えている。
【0015】
ダクト1の不要分であるバリ2を除去するにあたっては、バリ取り治具のバリ固定部10に、ダクト1のバリ2の部分を、バリ切断部位4が切断刃11の移動案内溝12に対応するように装着して固定状態とする。次いでダクト1のバリ切断部位3およびその周辺部分をバリ取り治具9に固定して、切断刃11をバリ切断部位3に押し当てるべく移動させ、バリ切断部位3を切断刃11により剪断してダクト1からバリ2を除去する。
【0016】
バリ2を除去したダクト1はその一端が開口するので、ダクト1の一端には、例えば図6に示すように延長ダクト13を嵌合接続して一連のダクトを構成する。
【0017】
本発明の一実施の形態によれば、ダクト1のバリ切断部位4に沿ってそのバリ2側に撓み抑制構造5を有しているので、ダクト1のバリ切断部位4に切断刃11を押し当てて剪断する過程でバリ切断部位4に加わる荷重による変形歪みが周辺に波及するのが防止され、バリ切断部位4は切断刃11により整然とした態様で剪断される。特にバリ2の正確な除去が難しいブロー成形の中心軸が屈曲しているダクト1であってもバリ切断部位4を切断刃11により整然と切断することができる。このためダクト1の開口部は所期の形状に仕上がり、その寸法精度が大きく向上することになる。
【0018】
なお、本発明に係るバリ除去構造を備えた中空体は、一端に成形後は不要となる捨て袋などのバリを備えた筒状部を有するものであれば、ダクトのほかタンク、チューブ、トレイ、カバーブーツ、ドレンパン等のブロー成形品に適用できる。そして、本発明に係るバリ除去構造を備えた中空体は、軟質のものから硬質のものまで種々のものがある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ダクトの要部を示す側面図である。
【図2】同上平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】ダクトのブロー成形態様を示す断面図である。
【図5】ブロー成形後のダクトのバリ除去態様示す要部の断面図である。
【図6】ダクトの連結態様を一部破断して示す平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ダクト
2 バリ
3 パーティングライン
4 バリ切断部位
5 撓み抑制構造
6 補強リブを構成する凹部
7 ブロー成形金型
8 吹き込みノズル
9 バリ取り治具
10 バリ固定部
11 切断刃
12 移動案内溝
13 延長ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形された樹脂製の中空体の不要部分であるバリをブロー成形後に切断するためのバリ除去構造を備えた中空体であって、
中空体のバリ切断部位には、それに沿って少なくともバリ側または製品側に撓み抑制構造を備えていること
を特徴とするバリ除去構造を備えた中空体。
【請求項2】
中空体のバリ切断部位に沿う撓み抑制構造は、補強リブで構成されていることを特徴とする請求項1記載のバリ除去構造を備えた中空体。
【請求項3】
撓み抑制構造を構成する補強リブは、1つまたは2つ以上の凹部で成ることを特徴とする請求項2記載のバリ除去構造を備えた中空体。
【請求項4】
ブロー成形された樹脂製の中空体の不要部分であるバリをブロー成形後に切断する中空体のバリ除去方法であって、
中空体はバリ切断部位に沿って少なくともバリ側または製品側に補強構造を備えており、
中空体のバリ切断部位を固定して切断刃を切断部位に押し当てることによりバリ切断部位を剪断すること
を特徴とする中空体のバリ除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−90472(P2009−90472A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260385(P2007−260385)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】