説明

パターン形成方法及び液滴吐出装置

【課題】厚膜パターンの形成材料や対象物に関する設計の自由度を拡大して、かつ、その生産性を向上させたパターン形成方法及び液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】ドット形成領域Sの外縁に相対するサブセルC2に液滴を吐出し、着弾した液滴の外径がサブセルC2の幅、すなわち固定幅Rpになるタイミングで、同液滴に紫外線を照射して固定ドットDpを形成するようにした。そして、固定ドットDpで囲まれる領域(ドット形成領域S)に複数の液滴を吐出し、合一した前記複数の液滴に紫外線を照射して充填ドットDfを形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法及び液滴吐出装置。
【背景技術】
【0002】
従来、視覚障害者用の点字や各種電子部品の製造番号等の厚膜パターンの形成方法には、対象物に向かって液滴を吐出し、対象物に着弾した液滴を硬化させることによってパターンを形成させる、いわゆるインクジェット法が知られている。
【0003】
インクジェット法は、液滴を硬化させてパターンを形成するために、着弾した液滴の形状に基づいて、自己整合的にパターンを形成させることができる。そのため、パターンの形成工程から、マスク等を形成する製版工程を省略させることができ、パターンの生産性を容易に向上させることができる。
【0004】
しかし、上記インクジェット法を利用してパターンの厚膜化を図る場合には、着弾した液滴の濡れ広がりや、同液滴の対象物への浸透を、液状体の表面張力や対象物の表面状態によって抑制させなければならない。その結果、液状体の種別や対象物の表面状態が制約されて、その適用範囲を著しく狭くさせる問題があった。
【0005】
そこで、こうしたインクジェット法では、従来より、パターンの厚膜化を容易にして、その適用範囲を拡大させた提案がなされている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、液状体を硬化させるインク硬化手段を液滴吐出装置に搭載させて、着弾した液滴を、その着弾直後に硬化させている。そして、液滴の吐出・硬化の繰り返しによって、着弾した液滴の濡れ広がりや同液滴の対象物への浸透を回避させて、その適用範囲の拡大を図っている。
【特許文献1】特開2002−144555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、着弾した液滴を瞬時に硬化させるために、以下の問題を招いていた。すなわち、特許文献1では、1回の吐出・硬化によって形成可能なパターンの膜厚が、1回に吐出可能な液滴の容量(例えば、数十ピコリットル)に制約される。そのため、1回の吐出・硬化によって形成できるパターンの膜厚には限りがあり、厚膜パターン(例えば、厚さが0.2〜0.5mmのパターン)を形成するためには、数十〜数百回の吐出・硬化を繰り返させなければならない。その結果、厚膜パターンの生産性を著しく損なう問題を招いていた。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、厚膜パターンの形成材料や対象物に関する設計の自由度を拡大して、かつ、その生産性を向上させたパターン形成方法及び液滴吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパターン形成方法は、対象物のパターン形成領域に液滴を吐出し、前記パターン形成領域に着弾した前記液滴を硬化することによって前記対象物にパターンを形成するようにしたパターン形成方法において、前記パターン形成領域の外縁に吐出した複数の第1の液滴を硬化して、前記パターン形成領域の外縁に複数の固定パターンを形成し、前記固定パターンで囲まれる領域に複数の第2の液滴を吐出して、合一した前記複数の第2の液滴を硬化することによって前記パターン形成領域を充填する充填パターンを形成するよ
うにした。
【0009】
本発明のパターン形成方法によれば、パターン形成領域の外縁に形成する複数の固定パターンによって、合一した第2の液滴の濡れ広がりを、パターン形成領域内に抑えることができる。従って、対象物に対する第2の液滴の濡れ性や対象物の表面状態に関わらず、固定パターンが第2の液滴の濡れ広がりを抑える分だけ、より多数の第2の液滴を、パターン形成領域内で合一させることができ、合一した第2の液滴を、同じタイミングで硬化させることができる。その結果、厚膜パターンの形成材料や対象物に関する設計の自由度を拡大させることができ、かつ、厚膜パターンの生産性を向上させることができる。
【0010】
また、このパターン形成方法において、前記第2の液滴を吐出する前に、前記固定パターンで囲まれた領域に吐出した複数の第3の液滴を硬化して、前記固定パターンで囲まれた前記対象物の表面に、前記第2の液滴の前記対象物への浸透を抑制する下地パターンを形成するようにしてもよい。
【0011】
このパターン形成方法によれば、下地バターンによって、対象物に対する第2の液滴の浸透を抑制させることができる。従って、厚膜パターンの形成材料や対象物に関する設計の自由度を、さらに拡大させることができる。また、第2の液滴の浸透を抑制させる分だけ、厚膜パターンの生産性を、さらに向上させることができる。
【0012】
また、このパターン形成方法において、吐出した第1の液滴が前記対象物に着弾する際に、第1の液滴に光を照射して前記固定パターンを形成するようにしてもよい。
このパターン形成方法によれば、着弾した第1の液滴を、より短時間で硬化させることができ、第1の液滴の濡れ広がりや位置ズレ等を回避させることができる。従って、固定パターンの位置ズレや、そのサイズのバラツキ等を抑えることができる。その結果、パターン形成領域に対するパターン(固定パターン及び充填パターン)の位置整合性を向上させることができる。ひいては、厚膜パターンの生産性を、さらに向上させることができる。
【0013】
また、このパターン形成方法において、紫外線硬化性インクからなる第1の液滴が前記対象物に着弾する際に、第1の液滴に紫外線を照射して前記固定パターンを形成するようにしてもよい。
【0014】
このパターン形成方法によれば、紫外線硬化性インクに対する紫外線照射によって固定パターンを形成させることができる。従って、固定パターンの位置ズレやサイズのバラツキを、より効果的に抑えることができる。
【0015】
また、このパターン形成方法において、合一した前記複数の第2の液滴に光を照射して前記充填パターンを形成するようにしてもよい。
このパターン形成方法によれば、合一した第2の液滴を、より短時間で硬化させることができ、合一した第2の液滴の濡れ広がりや位置ズレ等を、より確実に回避させることができる。従って、パターン形成領域に対するパターン(充填パターン)の位置整合性を向上させることができる。ひいては、厚膜パターンの生産性を、さらに向上させることができる。
【0016】
また、このパターン形成方法において、合一した紫外線硬化性インクからなる複数の第2の液滴に紫外線を照射して前記充填パターンを形成するようにしてもよい。
このパターン形成方法によれば、紫外線硬化性インクに対する紫外線照射によって充填パターンを形成させることができる。従って、充填パターンの位置ズレやサイズのバラツキを、より効果的に抑えることができる。
【0017】
本発明の液滴吐出装置は、対象物に液滴を吐出する液滴吐出手段と、前記対象物に着弾した前記液滴を硬化する液滴硬化手段と、前記液滴吐出手段と前記液滴硬化手段を駆動制御して前記対象物に前記液滴を硬化させたパターンを形成する制御手段と、を備えた液滴吐出装置において、前記制御手段は、前記対象物のパターン形成領域の外縁に複数の第1の液滴を吐出して前記パターン形成領域の外縁に複数の固定パターンを形成するための固定パターンデータを生成する固定パターンデータ生成手段と、前記固定パターンで囲まれる領域に複数の第2の液滴を吐出して前記固定パターンで囲まれる領域内に充填パターンを形成するための充填パターンデータを生成する充填パターンデータ生成手段と、を備えた。
【0018】
本発明の液滴吐出装置によれば、第2の液滴を吐出する前に、パターン形成領域の外縁に複数の固定パターンを形成させることができる。従って、合一した第2の液滴の濡れ広がりを、パターン形成領域内に抑えることができる。その結果、対象物に対する第2の液滴の濡れ性や対象物の表面状態に関わらず、固定パターンが第2の液滴の濡れ広がりを抑える分だけ、より多数の第2の液滴を、パターン形成領域内で合一させることができ、合一した第2の液滴を、同じタイミングで硬化させることができる。その結果、厚膜パターンの形成材料や対象物に関する設計の自由度を拡大させることができ、かつ、厚膜パターンの生産性を向上させることができる。
【0019】
また、この液滴吐出装置において、前記制御手段は、前記固定パターンで囲まれる領域に複数の第3の液滴を吐出して前記第2の液滴の前記対象物への浸透を抑制する下地パターンを形成するための下地パターンデータを生成する下地パターンデータ生成手段を備えるようにしてもよい。
【0020】
この液滴吐出装置によれば、下地バターンによって、対象物に対する第2の液滴の浸透を抑制させることができる。従って、厚膜パターンの形成材料や対象物に関する設計の自由度を、さらに拡大させることができる。また、第2の液滴の浸透を抑制させる分だけ、厚膜パターンの生産性を、さらに向上させることができる。
【0021】
また、この液滴吐出装置において、前記液滴吐出手段は、紫外線硬化性インクからなる複数の第1の液滴を吐出し、前記液滴硬化手段は、紫外線を出射する光源を備え、前記制御手段は、前記第1の液滴が前記対象物に着弾する際に、前記液滴硬化手段を駆動制御して、前記第1の液滴の領域に、前記光源からの紫外線を照射するようにしてもよい。
【0022】
この液滴吐出装置によれば、着弾した第1の液滴を、紫外線の照射によって、より短時間で硬化させることができる。従って、第1の液滴の濡れ広がりや位置ズレ等を回避させることができ、固定パターンの位置ズレや、そのサイズのバラツキ等を抑えることができる。その結果、パターン形成領域に対するパターン(固定パターン及び充填パターン)の位置整合性を向上させることができる。ひいては、厚膜パターンの生産性を、さらに向上させることができる。
【0023】
また、この液滴吐出装置において、前記液滴吐出手段は、紫外線硬化性インクからなる複数の第2の液滴を吐出し、前記制御手段は、合一した第2の液滴の領域に、前記光源からの紫外線を照射するようにしてもよい。
【0024】
この液滴吐出装置によれば、合一した第2の液滴を、紫外線の照射によって、より短時間で硬化させることができる。従って、合一した第2の液滴の濡れ広がりや位置ズレ等を、より確実に回避させることができ、パターン形成領域に対するパターン(充填パターン)の位置整合性を向上させることができる。ひいては、厚膜パターンの生産性を、さらに
向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図8に従って説明する。本発明のパターン形成方法を利用して形成した点字案内板10について説明する。
図1において、点字案内板10には、四角板状の樹脂基板11が備えられるとともに、その樹脂基板11の一側面(表面11a)には、3文字の点字12が形成されている。点字12には、それぞれ3行×2列に仮想分割されて互いに離間する6個のセルC1が備えられるとともに、選択された各セルC1には、表面11aから突出するパターンとしてのドットDが形成されている。ドットDは、対応するセルC1の幅に相対する外径を有した略半球状に形成されるパターンであるとともに、その厚さが、触読可能な厚さ(本実施形態では、約0.5mm)で形成される厚膜パターンである。そして、各点字12は、それぞれ対応する各セルC1の領域にドットDが形成される否かによって、触読可能な所定の文字情報を、点字案内板10に付与するようにしている。
【0026】
図2において、各セルC1は、それぞれ一辺が所定の幅(以下単に、充填幅Rfという。)で形成される正方形状の領域である。各セルC1は、それぞれ28行×28列に仮想分割されるとともに、1辺が所定の幅(以下単に、固定幅Rpという。)からなる正方形状の多数のサブセルC2を備えている。尚、本実施形態における充填幅Rfと固定幅Rpは、それぞれ約1mmと約35μmであるが、これに限られるものではない。
【0027】
図2において、セルC1内に形成されるドットDには、それぞれ各ドットDの外縁に沿って形成される固定パターンとしての複数の固定ドットDpと、各固定ドットDpで囲まれる領域に形成された充填パターンとしての充填ドットDfが備えられている。
【0028】
詳述すると、各固定ドットDpは、表面11aから突出する半球状のパターンであるとともに、その外径が、前記サブセルC2の幅、すなわち固定幅Rpに相対するサイズで形成されて、その厚みが固定幅Rpの略半分のサイズ(本実施形態では、0.175μm)で形成されている。これら各固定ドットDpは、それぞれ各サブセルC2の中で、前記セルC1の内接円13(図2太線参照)に相対するサブセルC2内に形成されている。
【0029】
各固定ドットDpは、紫外線硬化性インクF(図5(a)参照)の液滴Fb(図5(a)参照)を対応するサブセルC2に吐出する第1液滴吐出工程と、サブセルC2に着弾した液滴Fbに紫外線LAあるいは紫外線LB(図5(a)参照)を照射する第1液滴硬化工程によって形成されている。尚、本実施形態では、表面11a上の位置であって、各固定ドットDpの形成されるサブセルC2の中心位置を、それぞれ目標吐出位置Pという。
【0030】
各充填ドットDfは、表面11aから突出する半球状のパターンであるとともに、その外径が、前記セルC1の幅、すなわち充填幅Rfに相対するサイズで形成されて、その厚さが、前記充填幅Rfの略半分のサイズ(本実施形態では、約0.5mm)で形成されている。各充填ドットDfは、それぞれ対応する各固定ドットDpによって囲まれる領域、すなわち前記内接円13内の領域(以下単に、パターン形成領域としてのドット形成領域Sという。)を充填するように形成されている。
【0031】
各充填ドットDfは、紫外線硬化性インクF(図5(a)参照)の複数の液滴Fb(図5(a)参照)を、前記各固定ドットDpによって囲まれた前記ドット形成領域Sに吐出する第2液滴吐出工程と、ドット形成領域S内で合一させた液滴Fbに紫外線LAあるいは紫外線LB(図5(a)参照)を照射する第2液滴硬化工程によって形成されている。
【0032】
次に、点字案内板10(ドットD)を形成するための液滴吐出装置20について説明す
る。
図3において、液滴吐出装置20には、直方体形状に形成された基台21が備えられるとともに、その基台21の上面には、その長手方向(X矢印方向)に沿って延びる一対の案内溝22が形成されている。その基台21の上方には、前記基台21に設けられたX軸モータMX(図8の左上参照)の出力軸に駆動連結されるステージ23が、前記案内溝22に沿ってX矢印方向及び反X矢印方向に往復動する(X矢印方向に沿って走査される)ようになっている。そのステージ23の上側には、前記樹脂基板11を載置可能にする載置面24が形成されるとともに、載置された樹脂基板11を所定の位置に位置決め固定するようになっている。
【0033】
基台21のY矢印方向両側には、門型に形成されたガイド部材25が配設されるとともに、そのガイド部材25には、Y矢印方向に延びる上下一対のガイドレール26が形成されている。また、ガイド部材25には、同ガイド部材25に設けられたY軸モータMY(図8の左下参照)の出力軸に駆動連結されるキャリッジ27が、前記ガイドレール26に沿って、Y矢印方向及び反Y矢印方向に往復動する(Y矢印方向に沿って走査される)ようになっている。
【0034】
キャリッジ27の内部には、紫外線硬化性インクF(図5(a)参照)を導出可能に収容するインクタンク28が配設されるとともに、キャリッジ27の下側に搭載されるヘッドユニット30に対して、そのインクタンク28の収容する紫外線硬化性インクFを導出させるようになっている。
【0035】
図4は、ヘッドユニット30を下方(ステージ23側)から見た斜視図である。図5(a)は、ヘッドユニット30を反X矢印方向側から見た概略側面図であって、図5(b)は、ヘッドユニット30を下方(樹脂基板11の表面11a)から見た平面図である。
【0036】
図4において、ヘッドユニット30には、そのY矢印方向略中央位置に、X矢印方向に沿って延びる直方体形状に形成された液滴吐出ヘッド(以下単に、吐出ヘッドという。)31が備えられている。吐出ヘッド31の下側(図4において上側)には、ノズルプレート32が備えられるとともに、そのノズルプレート32の下面(ノズル形成面32a)には、X矢印方向に沿って等ピッチに配列形成される複数の貫通孔(ノズルN)が、樹脂基板11の法線方向(Z矢印方向)に沿って貫通形成されている。
【0037】
尚、本実施形態において、各ノズルNの形成ピッチは、前記サブセルC2の幅、すなわち固定幅Rpで形成されている。そして、各ノズルNがY矢印方向に走査されると、各ノズルNの直下には、それぞれ対応するサブセルC2の中心位置(前記目標吐出位置P)が相対するようになっている。
【0038】
図5(a)において、各ノズルNのZ矢印方向には、それぞれ前記インクタンク28に連通するキャビティ33が形成されるとともに、そのキャビティ33はインクタンク28から導出される紫外線硬化性インクFを、対応するノズルN内に供給させるようになっている。各キャビティ33の上側には、Z矢印方向及び反Z矢印方向(上下方向)に振動可能な振動板34が貼り付けられるとともに、その振動板34の上側には、各ノズルNに対応する複数の圧電素子PZが配設されている。各圧電素子PZは、それぞれ圧電素子PZを駆動制御するための信号(圧電素子駆動電圧COM1:図8下側参照)を受けて上下方向に収縮・伸張するとともに、対応する振動板34を上下方向に振動させて、キャビティ33内の容積を拡大・縮小させるようになっている。
【0039】
そして、各目標吐出位置P(あるいは前記ドット形成領域S)が対応するノズルNの直下に位置するタイミングで、選択された圧電素子PZに、前記圧電素子駆動電圧COM1
を供給する。すると、圧電素子PZに対応するキャビティ33の容積が拡大・縮小して、同キャビティ33内の紫外線硬化性インクFが圧力振動し、圧電素子PZに対応するノズルN内の紫外線硬化性インクFが、液滴Fbとして吐出される。吐出された液滴Fbは、反Z矢印方向に飛行して、相対向する目標吐出位置P(あるいは前記ドット形成領域S内)に着弾する。
【0040】
目標吐出位置Pに着弾した液滴Fbは、表面11aに沿って濡れ広がって、吐出動作の開始時から所定の時間(以下単に、待機時間という。)だけ経過した後に、その外径を、サブセルC2の幅、すなわち固定幅Rpにする。尚、本実施形態では、樹脂基板11上の位置であって各ノズルNの直下を、それぞれ着弾位置PFという。
【0041】
図4において、ヘッドユニット30には、吐出ヘッド31のY矢印方向両側に、照射手段としての一対のレーザヘッド35A,35Bが備えられている。一対のレーザヘッド35A,35Bには、それぞれX矢印方向に沿って延びる略直方体形状のケース36が備えられるとともに、各ケース36の反Z矢印方向(樹脂基板11)側の側面には、それぞれケース36の内部までを貫通する照射口36A,36Bが、ケース36のX矢印方向の略全幅にわたって形成されている。
【0042】
図5(a)において、一対のレーザヘッド35A,35Bの内部には、それぞれ半導体レーザ37A,37Bが配設されている。半導体レーザ37A,37Bは、それぞれ半導体レーザ37A,37Bを駆動制御するための信号(レーザ駆動電圧COM2:図8上側参照)を受けて、前記紫外線硬化性インクF(前記液滴Fb)の硬化反応を開始可能にする強度の紫外領域のレーザ光(紫外線LA,LB)を出射するようになっている。各半導体レーザ37A,37Bと対応する照射口36A,36Bとの間には、各半導体レーザ37A,37Bからの紫外線LA,LBを平行光にするコリメータや、YZ面内に曲率を有してX矢印方向に延びるシリンドリカルレンズ等の光学ユニット38A,38Bが配設されている。光学ユニット38A,38Bは、それぞれ対応する半導体レーザ37A,37Bからの紫外線LA,LBを樹脂基板11の表面11aに集束させるようになっている。また、光学ユニット38A,38Bは、樹脂基板11の表面11aに集束する紫外線LA,LBによって、図5(b)の太線に示すように、それぞれ各着弾位置PFに共通してX矢印方向に延びる帯状のビームスポットBa,Bbを形成するようになっている。
【0043】
本実施形態では、樹脂基板11の表面11a上の位置であって、ビームスポットBa及びビームスポットBbの形成される位置を、それぞれ照射位置PTa及び照射位置PTbという。尚、本実施形態の照射位置PTa及び照射位置PTbは、それぞれ前記各着弾位置PFとの間の距離が、前記待機時間の間に走査されるキャリッジ27(ビームスポットBa及びビームスポットBb)の移動距離に設定されている。すなわち、照射位置PTa(あるいは照射位置PTb)のビームスポットBa(あるいはビームスポットBb)は、キャリッジ27のY矢印方向(あるいは反Y矢印方向)に沿う走査によって、着弾位置PFに着弾した液滴Fbの外径が固定幅Rpになるタイミングで、同液滴Fbの領域を通過するようになっている。
【0044】
ここで、図6に示すように、ヘッドユニット30(キャリッジ27)をY矢印方向(反Y矢印方向)に走査させるとともに、各半導体レーザ37A,37Bにレーザ駆動電圧COM2を供給して各半導体レーザ37A,37Bからの紫外線LA,LBを出射させる。すると、各半導体レーザ37A,37Bからの紫外線LA,LBが、それぞれ表面11a上の照射位置PTa,PTbにビームスポットBa,Bbを形成するとともに、形成された各ビームスポットBa,Bbが、樹脂基板11の表面11a上をY矢印方向(反Y矢印方向)に走査される。
【0045】
そして、各ノズルNの直下(着弾位置PF)に目標吐出位置Pが位置するタイミングで、選択された圧電素子PZに、前記圧電素子駆動電圧COM1を供給する。すると、目標吐出位置Pに対応する各ノズルNから液滴Fbが吐出されて、吐出された各液滴Fbが、それぞれ対応する目標吐出位置Pに着弾する。各目標吐出位置Pに着弾した液滴Fbは、それぞれ前記待機時間だけ経過した後に、その外径を固定幅Rpにするとともに、ビームスポットBa(あるいはビームスポットBb)の走査にともなって、レーザヘッド35A(あるいはレーザヘッド35B)からの紫外線LA(あるいは紫外線LB)を受ける。すると、各サブセルC2に着弾した液滴Fbは、それぞれ紫外線硬化性インクFの硬化反応を開始し、やがて、その外径を固定幅Rpにした固定ドットDpとして、対応するサブセルC2に固着する。これによって、各目標吐出位置Pに、それぞれ固定ドットDpを形成することができる。
【0046】
各固定ドットDpを形成すると、図7に示すように、各半導体レーザ37A,37Bからの紫外線LA,LBの出射を停止させて、ヘッドユニット30を反Y矢印方向(Y矢印方向)に走査させる。
【0047】
そして、各ノズルNの直下にドット形成領域Sが位置するタイミングで、選択された圧電素子PZに、前記圧電素子駆動電圧COM1を供給する。すると、ドット形成領域Sに対応する各ノズルNから液滴Fbが吐出されて、吐出された各液滴Fbが、それぞれドット形成領域S内に着弾する。ドット形成領域S内に着弾した各液滴Fbは、それぞれドット形成領域S内で濡れ広がって、隣接する液滴Fbと順次合一する。
【0048】
この際、合一する各液滴Fbは、先行して形成した固定ドットDpによって、その濡れ広がりがドット形成領域S内に抑制される。濡れ広がりの抑制される液滴Fbは、ドット形成領域Sから漏れ出すことなく、その外縁を固定ドットDpに沿う形状、すなわちセルC1の前記内接円13に相対させるようになる。これによって、充填ドットDfに相対する容量の合一した液滴Fbを、各ドット形成領域S内に保持させることができる。
【0049】
合一した液滴Fbを各ドット形成領域S内に形成すると、ヘッドユニット30を再びY矢印方向(反Y矢印方向)に走査させるとともに、各半導体レーザ37A,37Bにレーザ駆動電圧COM2を供給して各半導体レーザ37A,37Bからの紫外線LA,LBを出射させる。すると、各半導体レーザ37A,37Bからの紫外線LA,LBが、それぞれ表面11a上の照射位置PTa,PTbにビームスポットBa,Bbを形成するとともに、形成された各ビームスポットBa,Bbが、各ドット形成領域S、すなわち合一した液滴Fbの領域に走査される。すると、合一した液滴Fbは、それぞれ紫外線硬化性インクFの硬化反応を開始し、やがて、その外径を充填幅Rfにした充填ドットDfとして、対応するセルC1に固着する。これによって、表面11aに対する液滴Fbの濡れ性や表面11aの表面状態に関わらず、固定ドットDpが液滴Fbの濡れ広がりを抑える分だけ、より多数の液滴Fbを、ドット形成領域S内で合一させることができ、合一した液滴Fbを、一度に硬化させることができる。
【0050】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置20の電気的構成を図8に従って説明する。
図8において、制御手段を構成する制御装置41には、CPU、RAM、ROM等が備えられて、ROM等に格納された各種データ及び各種プログラムに従って、ステージ23及びキャリッジ27を走査させて、吐出ヘッド31及び各レーザヘッド35A,35Bを駆動制御させる。
【0051】
詳述すると、制御装置41のROMには、固定ドットDpを形成するための固定パターンデータとしての固定ドットデータPDと、充填ドットDfを形成するための充填パターンデータとしての充填ドットデータFDが格納されている。
【0052】
固定ドットデータPDは、セルC1の領域を所定の吐出ピッチに基づいて分割した各格子点に、それぞれ各ビットの値(0あるいは1)を対応させたビットマップデータであって、各ビットの値に応じて、圧電素子PZのオンあるいはオフを規定したデータである。すなわち、固定ドットデータPDは、各ノズルNがセルC1(前記格子点)の直上に位置するときに、各ノズルNから液滴Fbを吐出するか否かを規定したデータであって、各ノズルNが目標吐出位置Pの直上に位置するときに、対応するノズルNから液滴Fbを吐出するように規定されている。
【0053】
充填ドットデータFDは、セルC1の領域を所定の吐出ピッチに基づいて分割した各格子点に、それぞれ各ビットの値(0あるいは1)を対応させたビットマップデータであって、各ビットの値に応じて、圧電素子PZのオンあるいはオフを規定したデータである。すなわち、充填ドットデータFDは、各ノズルNがセルC1(前記格子点)の直上に位置するときに、各ノズルNから液滴Fbを吐出するか否かを規定したデータであって、各ノズルNがドット形成領域Sの直上に位置するときに、対応するノズルNから液滴Fbを吐出するように規定されている。
【0054】
制御装置41には、入力装置42、X軸モータ駆動回路43、Y軸モータ駆動回路44、吐出ヘッド駆動回路45及びレーザ駆動回路46が接続されている。
入力装置42は、起動スイッチ、停止スイッチ等の操作スイッチを有して各種操作信号を制御装置41に入力するとともに、樹脂基板11に形成する各点字12(各固定ドットDp及び各充填ドットDf)に関する情報を、既定形式の点字データIaとして制御装置41に入力するようになっている。そして、制御装置41は、入力装置42からの点字データIaを受けて、前記固定ドットデータPDと、前記充填ドットデータFDと、前記圧電素子駆動電圧COM1と、前記レーザ駆動電圧COM2を生成するようになっている。尚、本実施形態では、この制御装置41によって、固定パターンデータ生成手段及び充填パターンデータ生成手段が構成されている。
【0055】
X軸モータ駆動回路43は、制御装置41からのX軸モータ駆動回路43に対応する駆動制御信号に応答して、ステージ23を往復移動させるX軸モータMXを正転又は逆転させるようになっている。そのX軸モータ駆動回路43には、X軸モータ回転検出器MEXが接続されて、X軸モータ回転検出器MEXからの検出信号が入力されるようになっている。X軸モータ駆動回路43は、X軸モータ回転検出器MEXからの検出信号に基づいて、ステージ23(樹脂基板11)の移動方向及び移動量を演算するとともに、ステージ23の現在位置に関する情報をステージ位置情報SPIとして生成するようになっている。そして、制御装置41は、X軸モータ駆動回路43からのステージ位置情報SPIを受けて、各種信号を出力するようになっている。
【0056】
Y軸モータ駆動回路44は、制御装置41からのY軸モータ駆動回路44に対応する駆動制御信号に応答して、キャリッジ27を往復移動させるY軸モータMYを正転又は逆転させるようになっている。そのY軸モータ駆動回路44には、位置検出手段を構成するY軸モータ回転検出器MEYが接続されて、Y軸モータ回転検出器MEYからの検出信号が入力されるようになっている。Y軸モータ駆動回路44は、Y軸モータ回転検出器MEYからの検出信号に基づいて、キャリッジ27(ヘッドユニット30)の移動方向及び移動量を演算するとともに、キャリッジ27の現在位置に関する情報をキャリッジ位置情報CPIとして生成するようになっている。そして、制御装置41は、Y軸モータ駆動回路44からのキャリッジ位置情報CPIを受けて、各種駆動信号を出力するようになっている。
【0057】
詳述すると、制御装置41は、前記固定ドットデータPDを所定のクロック信号に同期
させて固定ドット制御信号SIpを生成するようになっている。そして、制御装置41は、キャリッジ27をY矢印方向あるいは反Y矢印方向に走査する前に、生成した固定ドット制御信号SIpを、吐出ヘッド駆動回路45に順次シリアル転送するようになっている。
【0058】
また、制御装置41は、前記充填ドットデータFDを所定のクロック信号に同期させて充填ドット制御信号SIfとして生成するようになっている。そして、制御装置41は、キャリッジ27をY矢印方向あるいは反Y矢印方向に走査する前に、生成した充填ドット制御信号SIfを、吐出ヘッド駆動回路45に順次シリアル転送するようになっている。
【0059】
制御装置41は、走査される各ノズルNが、セルC1の直上を通過するときに、前記吐出ピッチに対応する(各ノズルNが前記格子点に相対する)タイミングで、吐出タイミング信号LPを順次生成するようになっている。そして、制御装置41は、生成した吐出タイミング信号LPを、吐出ヘッド駆動回路45に順次出力するようになっている。
【0060】
制御装置41は、各半導体レーザ37A,37Bを駆動制御して紫外線LA,LBを出射させるためのレーザ出射開始信号SPと、各半導体レーザ37A,37Bを駆動制御して紫外線LA,LBの出射を停止させるためのレーザ出射停止信号EPを生成するようになっている。そして、制御装置41は、固定ドット制御信号SIpを出力するときに、レーザ出射開始信号SPを、レーザ駆動回路46に出力するようになっている。また、制御装置41は、固定ドット制御信号SIpに基づく液滴Fbの吐出動作を終了した後に、レーザ出射停止信号EPを出力するようになっている。
【0061】
さらに、制御装置41は、充填ドット制御信号SIfに基づく液滴Fbの吐出動作を終了した後に、レーザ出射開始信号SPを、レーザ駆動回路46に出力するようになっている。また、制御装置41は、充填ドット制御信号SIfに基づいて吐出した液滴Fbに紫外線LA,LBを照射した後に、レーザ出射停止信号EPを出力するようになっている。
【0062】
吐出ヘッド駆動回路45には、前記吐出ヘッド31が接続されるとともに、制御装置41から、所定のクロック信号に同期させた圧電素子駆動電圧COM1が供給されるようになっている。また、吐出ヘッド駆動回路45は、制御装置41からの固定ドット制御信号SIp及び充填ドット制御信号SIfを受けて、これら固定ドット制御信号SIp及び充填ドット制御信号SIfを、それぞれ各圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換するようになっている。
【0063】
そして、吐出ヘッド駆動回路45は、制御装置41からの吐出タイミング信号LPを受ける毎に、固定ドット制御信号SIp(あるいは充填ドット制御信号SIf)に基づいて、選択した圧電素子PZに、圧電素子駆動電圧COM1を供給するようになっている。
【0064】
レーザ駆動回路46には、前記各レーザヘッド35A,35Bが接続されるとともに、制御装置41からのレーザ出射開始信号SPを受けて、各半導体レーザ37A,37Bに、それぞれレーザ駆動電圧COM2を供給するようになっている。また、レーザ駆動回路46は、制御装置41からのレーザ出射停止信号EPを受けて、各半導体レーザ37A,37Bに対するレーザ駆動電圧COM2の供給を停止するようになっている。
【0065】
次に、上記する液滴吐出装置20を使用して、点字案内板10(ドットD)を形成する方法について説明する。
まず、図3に示すように、ステージ23上に、樹脂基板11を配置固定する。このとき、ステージ23は、キャリッジ27よりも反X矢印方向側に配置されて、キャリッジ27は、ガイド部材25の最も反Y矢印方向に配置されている。
【0066】
この状態から、入力装置42を操作して点字データIaを制御装置41に入力する。すると、制御装置41は、点字データIaに基づく固定ドットデータPD及び充填ドットデータFDを生成して格納するとともに、点字データIaに基づく圧電素子駆動電圧COM1及びレーザ駆動電圧COM2を生成する。
【0067】
圧電素子駆動電圧COM1及びレーザ駆動電圧COM2を生成すると、制御装置41は、X軸モータMX及びY軸モータMYを駆動制御して、固定ドットDpを形成するための第1液滴吐出工程と第1液滴硬化工程を開始する。
【0068】
すなわち、制御装置41は、X軸モータ駆動回路43を介してX軸モータMXを駆動制御し、図6に示すように、各ノズルNの走査経路上(Y矢印方向)に、樹脂基板11の各目標吐出位置Pが位置するように、ステージ23(樹脂基板11)をセットする。続いて、制御装置41は、Y軸モータ駆動回路44を介してY軸モータMYを駆動制御し、キャリッジ27(ヘッドユニット30)をY矢印方向に沿って走査させる。
【0069】
この際、制御装置41は、圧電素子駆動電圧COM1を所定のクロック信号に同期させて、吐出ヘッド駆動回路45に出力するとともに、レーザ駆動電圧COM2を、レーザ駆動回路46に出力する。
【0070】
また、制御装置41は、レーザ出射開始信号SPを生成するとともに、生成したレーザ出射開始信号SPをレーザ駆動回路46に出力する。レーザ駆動回路46は、制御装置41からのレーザ出射開始信号SPを受けると、各レーザヘッド35A,35Bにレーザ駆動電圧COM2を供給して、レーザヘッド35A,35Bの双方から、紫外線LA,LBを出射させる。
【0071】
また、制御装置41は、固定ドット制御信号SIpを生成するとともに、生成した固定ドット制御信号SIpを、吐出ヘッド駆動回路45にシリアル転送する。そして、制御装置41は、吐出タイミング信号LPを出力するタイミングを待つ。
【0072】
やがて、Y矢印方向に走査される各ノズルNがセルC1の直上に侵入すると、制御装置41は、ステージ位置情報SPI及びキャリッジ位置情報CPIに基づいて、吐出ヘッド駆動回路45に、吐出ピッチに対応する吐出タイミング信号LPを順次出力する。
【0073】
すると、吐出ヘッド駆動回路45は、固定ドット制御信号SIpに基づいて、各ノズルNが目標吐出位置Pの直上に位置するタイミングで、選択された圧電素子PZに、圧電素子駆動電圧COM1を供給し、対応するノズルNから、一斉に紫外線硬化性インクFの液滴Fbを吐出させる。吐出された各液滴Fbは、それぞれ対応する目標吐出位置Pに着弾し、それぞれ前記待機時間だけ経過した後に、その外径を固定幅Rpにする。外径を固定幅Rpにする各液滴Fbは、ビームスポットBaの走査によって、レーザヘッド35Aからの紫外線LA(あるいは紫外線LB)を受ける。
【0074】
これによって、各目標吐出位置Pに着弾した液滴Fbは、それぞれ外径を固定幅Rpにするタイミングで順次硬化反応を開始し、やがて、その外径を固定幅Rpにした固定ドットDpとして対応するサブセルC2に固着する。すなわち、ドット形成領域Sの外縁に、同ドット形成領域Sを囲う複数の固定ドットDpを形成することができる。
【0075】
固定ドットDpを形成して、ヘッドユニット30が樹脂基板11の直上から離間すると、制御装置41は、レーザ出射停止信号EPを生成するとともに、生成したレーザ出射停止信号EPをレーザ駆動回路46に出力する。レーザ駆動回路46は、制御装置41から
のレーザ出射停止信号EPを受けて、各レーザヘッド35A,35Bに対するレーザ駆動電圧COM2の供給を停止し、レーザヘッド35A,35Bの双方に、紫外線LA,LBの出射を停止させる。
【0076】
紫外線LA,LBの出射を停止させると、制御装置41は、充填ドットDfを形成するための第2液滴吐出工程を開始する。
すなわち、制御装置41は、Y軸モータ駆動回路44を介してY軸モータMYを駆動制御し、図8に示すように、キャリッジ27を反Y矢印方向に沿って走査させる。この際、制御装置41は、圧電素子駆動電圧COM1を所定のクロック信号に同期させて、吐出ヘッド駆動回路45に出力する。また、制御装置41は、充填ドット制御信号SIfを生成するとともに、生成した充填ドット制御信号SIfを、吐出ヘッド駆動回路45にシリアル転送する。そして、制御装置41は、吐出タイミング信号LPを出力するタイミングを待つ。
【0077】
やがて、反Y矢印方向に走査される各ノズルNがセルC1の直上に侵入すると、制御装置41は、ステージ位置情報SPI及びキャリッジ位置情報CPIに基づいて、吐出ヘッド駆動回路45に、吐出ピッチに対応する吐出タイミング信号LPを順次出力する。
【0078】
すると、吐出ヘッド駆動回路45は、充填ドット制御信号SIfに基づいて、各ノズルNがドット形成領域S内の各格子点の直上に位置するタイミングで、選択された圧電素子PZに、圧電素子駆動電圧COM1を供給し、対応するノズルNから、一斉に紫外線硬化性インクFの液滴Fbを吐出させる。吐出された各液滴Fbは、それぞれドット形成領域S内に着弾して濡れ広がり、隣接する液滴Fbと合一する。合一する各液滴Fbは、先行して形成した固定ドットDpによって、その濡れ広がりが抑制されて、ドット形成領域Sから漏れ出すことなく、その外縁を固定ドットDpに沿う形状、すなわちセルC1の内接円13に相対させる。
【0079】
合一した液滴Fbを各ドット形成領域S内に形成して、ヘッドユニット30が樹脂基板11の直上から離間すると、制御装置41は、充填ドットDfを形成するための第2液滴硬化工程を開始する。
【0080】
すなわち、制御装置41は、Y軸モータ駆動回路44を介してY軸モータMYを駆動制御し、キャリッジ27を再びY矢印方向に沿って走査させる。この際、制御装置41は、各半導体レーザ37A,37Bにレーザ駆動電圧COM2を供給して各半導体レーザ37A,37Bからの紫外線LA,LBを出射させて、照射位置PTa,PTbにビームスポットBa,Bbを形成する。
【0081】
そして、制御装置41は、各ビームスポットBa,BbをY矢印方向に走査して、各ドット形成領域S、すなわち合一した液滴Fbの領域に紫外線LA,LBを照射する。すると、合一した液滴Fbは、それぞれ紫外線硬化性インクFの硬化反応を開始し、やがて、その外径を充填幅Rfにした充填ドットDfとして、対応するセルC1に固着する。すなわち、ドット形成領域Sに、同ドット形成領域Sを充填する充填ドットDfを形成することができる。
【0082】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、ドット形成領域Sの外縁に相対するサブセルC2に液滴Fbを吐出し、着弾した液滴Fbに紫外線LA(あるいは紫外線LB)を照射して固定ドットDpを形成するようにした。そして、固定ドットDpで囲まれる領域(ドット形成領域S)に複数の液滴Fbを吐出し、合一した前記複数の液滴Fbに紫外線LA,LBを照射して充填ドットDfを形成するようにした。
【0083】
従って、ドット形成領域Sの外縁に形成する複数の固定ドットDpによって、合一した液滴Fbの濡れ広がりを、ドット形成領域S内に抑えることができる。その結果、表面11aに対する液滴Fbの濡れ性や表面11aの表面状態に関わらず、固定ドットDpが液滴Fbの濡れ広がりを抑える分だけ、より多数の液滴Fbを、ドット形成領域S内で合一させることができ、合一した液滴Fbを、同じタイミングで硬化させることができる。そのため、ドットDの形成材料や表面11aに関する設計の自由度を拡大させることができ、かつ、ドットD(点字案内板10)の生産性を向上させることができる。
(2)上記実施形態では、目標吐出位置Pに着弾した液滴Fbの外径が固定幅Rpになるタイミングで、同液滴Fbに紫外線LA,LBを照射して、固定ドットDpを形成するようにした。
【0084】
従って、目標吐出位置Pに着弾した液滴Fbを、より短時間で硬化させることができ、その濡れ広がりや位置ズレ等を回避させることができる。その結果、固定ドットDpの位置ズレや、そのサイズのバラツキ等を抑えることができる。そのため、ドット形成領域Sに対するドットD(固定ドットDp及び充填ドットDf)の位置整合性を向上させることができる。ひいては、ドットD(点字案内板10)の生産性を、さらに向上させることができる。
(3)上記実施形態によれば、合一した複数の液滴Fbに紫外線LA,LBを照射して充填ドットDfを形成するようにした。
【0085】
従って、合一した液滴Fbを、より短時間で硬化させることができ、合一した液滴Fbの濡れ広がりや位置ズレ等を、より確実に回避させることができる。その結果、ドット形成領域Sに対するドットD(充填ドットDf)の位置整合性を向上させることができる。ひいては、ドットD(点字案内板10)の生産性を、さらに向上させることができる。
【0086】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、樹脂基板11の表面11aに、直接、合一した液滴Fbを形成する構成にした。これに限らず、例えば、図9に示すように、固定ドットDpで囲まれる領域(ドット形成領域S)の略全体に、隣接する複数の液滴Fbを吐出させて、固定ドットDpの厚さよりも薄い膜厚の層(下地パターンとしての下地層Du)を形成し、同下地層Duの上側に、合一した液滴Fbを形成する構成にしてもよい。これによれば、合一した液滴Fbが樹脂基板11内に浸透する場合であっても、下地層Duを形成する分だけ、合一した液滴Fbの浸透を抑制させることができる。その結果、充填ドットDfの生産性を、さらに向上させることができる。
・上記実施形態では、点字データIaに基づいて、固定ドットデータPDと充填ドットデータFDを生成させる構成にした。これに限らず、例えば、点字データIaに基づいて、下地パターンデータ生成手段を構成する制御装置41に、前記下地層Duを形成するための液滴Fbを吐出させる下地パターンデータとしての下地ドットデータを生成させる構成にしてもよい。
・上記実施形態では、固定ドットDpを、ドット形成領域Sの外縁全体に形成する構成にした。これに限らず、ドット形成領域Sの外縁に2個だけ形成する構成にしてもよく、合一した液滴Fbの濡れ広がりを抑制する数量であればよい。
・上記実施形態では、光源を、半導体レーザ37A,37Bに具体化した。これに限らず、例えば、光源を、紫外線LA,LBを出射する紫外線ランプや発光ダイオードに具体化してもよい。すなわち、着弾した液滴Fbを硬化可能な光を出射する光源であればよい。・上記実施形態では、液滴Fbを紫外線硬化性インクFからなる液滴に具体化し、光を、紫外線LA,LBに具体化した。これに限らず、例えば、液滴Fbを熱硬化性樹脂からなる液滴に具体化し、光を、赤外線に具体化してもよい。つまり、着弾した液滴に対して、液滴を硬化可能な光を照射する構成であればよい。
・上記実施形態では、対象物を、樹脂基板11に具体化した。これに限らず、例えば、対象物を、記録紙、ラスター紙、金属基板等に具体化してもよい。つまり、対象物は、液滴Fbによってパターンを形成する対象物であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本実施形態を具体化した点字案内板を示す平面図。
【図2】同じく、ドットを説明する説明図。
【図3】同じく、液滴吐出装置を示す概略斜視図。
【図4】同じく、ヘッドユニットを示す概略斜視図。
【図5】同じく、ヘッドユニットを説明する説明図であって、(a)及び(b)は、それぞれヘッドユニットを示す側面図及び平面図である。
【図6】同じく、液滴吐出工程を説明する説明図。
【図7】同じく、液滴吐出工程を説明する説明図。
【図8】同じく、液滴吐出装置の電気的構成を示す電気ブロック回路図。
【図9】変更例のドットを示す側断面図。
【符号の説明】
【0088】
11…対象物としての樹脂基板、11a…表面、20…液滴吐出装置、31…液滴吐出手段としての液滴吐出ヘッド、35A,35B…液滴硬化手段としてのレーザヘッド、37A,37B…光源としての半導体レーザ、41…制御手段を構成する制御装置、D…パターンとしてのドット、Dp…固定パターンとしての固定ドット、Df…充填パターンとしての充填ドット、Du…下地パターンとしての下地層、F…紫外線硬化性インク、Fb…液滴、LA,LB…光としての紫外線、S…パターン形成領域としてのドット形成領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物のパターン形成領域に液滴を吐出し、前記パターン形成領域に着弾した前記液滴を硬化することによって前記対象物にパターンを形成するようにしたパターン形成方法において、
前記パターン形成領域の外縁に吐出した複数の第1の液滴を硬化して、前記パターン形成領域の外縁に複数の固定パターンを形成し、前記固定パターンで囲まれる領域に複数の第2の液滴を吐出して、合一した前記複数の第2の液滴を硬化することによって前記パターン形成領域を充填する充填パターンを形成するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法において、
前記第2の液滴を吐出する前に、前記固定パターンで囲まれた領域に吐出した複数の第3の液滴を硬化して、前記固定パターンで囲まれた前記対象物の表面に、前記第2の液滴の前記対象物への浸透を抑制する下地パターンを形成するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパターン形成方法において、
吐出した第1の液滴が前記対象物に着弾する際に、第1の液滴に光を照射して前記固定パターンを形成するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載のパターン形成方法において、
紫外線硬化性インクからなる第1の液滴が前記対象物に着弾する際に、第1の液滴に紫外線を照射して前記固定パターンを形成するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のパターン形成方法において、
合一した前記複数の第2の液滴に光を照射して前記充填パターンを形成するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載のパターン形成方法において、
合一した紫外線硬化性インクからなる複数の第2の液滴に紫外線を照射して前記充填パターンを形成するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
対象物に液滴を吐出する液滴吐出手段と、前記対象物に着弾した前記液滴を硬化する液滴硬化手段と、前記液滴吐出手段と前記液滴硬化手段を駆動制御して前記対象物に前記液滴を硬化させたパターンを形成する制御手段と、を備えた液滴吐出装置において、
前記制御手段は、
前記対象物のパターン形成領域の外縁に複数の第1の液滴を吐出して前記パターン形成領域の外縁に複数の固定パターンを形成するための固定パターンデータを生成する固定パターンデータ生成手段と、
前記固定パターンで囲まれる領域に複数の第2の液滴を吐出して前記固定パターンで囲まれる領域内に充填パターンを形成するための充填パターンデータを生成する充填パターンデータ生成手段と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液滴吐出装置において、
前記制御手段は、
前記固定パターンで囲まれる領域に複数の第3の液滴を吐出して前記第2の液滴の前記対象物への浸透を抑制する下地パターンを形成するための下地パターンデータを生成する
下地パターンデータ生成手段を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の液滴吐出装置において、
前記液滴吐出手段は、紫外線硬化性インクからなる複数の第1の液滴を吐出し、
前記液滴硬化手段は、紫外線を出射する光源を備え、
前記制御手段は、前記第1の液滴が前記対象物に着弾する際に、前記液滴硬化手段を駆動制御して、前記第1の液滴の領域に、前記光源からの紫外線を照射することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項10】
請求項9に記載の液滴吐出装置において、
前記液滴吐出手段は、紫外線硬化性インクからなる複数の第2の液滴を吐出し、
前記制御手段は、合一した第2の液滴の領域に、前記光源からの紫外線を照射することを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−181765(P2007−181765A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1135(P2006−1135)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】