説明

パターン形成方法

【課題】ダブルパターニング法によるパターン不良の発生を防止して、良好な形状を有する微細パターンを得られるようにする。
【解決手段】基板101の上にポジ型化学増幅レジストからなるレジスト膜102を形成し、その上にアルカリ可溶で芳香環を有するフッ素ポリマーを含む光吸収膜103を形成する。その後、第1のマスクを介した極紫外線からなる第1の露光光104をレジスト膜に光吸収膜を通して照射することにより第1のパターン露光を行う。続いて、第2のマスクを介した露光光105をレジスト膜に光吸収膜を通して照射することにより第2のパターン露光を行う。基板を加熱した後、レジスト膜を現像して光吸収膜を除去すると共にレジスト膜からレジストパターン102aを形成する。第2のマスクの開口部は、第1のマスクにおける開口部が形成されていない非開口部に相当する領域に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造プロセス等において用いられるパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の大集積化及び半導体素子のダウンサイジングに伴って、リソグラフィ技術の開発の加速が望まれている。現在のところ、露光光としては、水銀ランプ、KrFエキシマレーザ又はArFエキシマレーザ等を用いる光リソグラフィによりパターン形成が行われており、より短波長の波長を持つ極紫外線の使用も検討されている。さらに、露光光源の短波長化以外に、より微細化をすすめるために、ダブルパターニング法と呼ばれる手法が提案されている(例えば、非特許文献1を参照。)。ダブルパターニング法は、所望のマスクパターンを2枚のマスクに分割して露光することにより、パターンコントラストを向上させることができる。リソグラフィの解像度は、k1・λ/NA(但し、k1はプロセス定数、λは露光光の波長、NAは露光装置の開口数を表す。)で定義される。ダブルパターニング法によれば、パターンコントラストの向上がk1の値を大きく低減する効果となることから、同じ露光光によっても解像度を飛躍的に向上させることができる。
【0003】
非特許文献1に記載されたダブルパターンニング法は、1回目の露光及び現像により得られた第1のパターンをエッチングによりハードマスクに転写し、その後、ハードマスクの上にレジスト膜を再度形成して、2回目の露光及び現像により得られた第2のパターンをエッチングによりハードマスクに転写する。さらに、ハードマスクに転写された第1のパターン及び第2のパターンを基板にエッチングして転写するという複雑な工程を経る。
【0004】
ダブルパターンニング法の最も簡便な方法は、ハードマスクを用いずに、レジスト膜を形成した後、2回に分けて露光及び現像を行うことにより微細パターンを形成する方法である。
【0005】
以下、図5(a)〜図5(d)及び図6を参照しながらハードマスクを用いないダブルパターンニング法による従来のパターン形成方法について説明する。
【0006】
まず、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0007】
ポリ(ビニールフェノール(50mol%)−t−ブチルアクリレート(50mol%))・・・・2g
トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸(酸発生剤)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.05g
トリエタノールアミン(クエンチャー)・・・・・・・・・・・・・・・0.002g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)・・・・・・・・20g
次に、図5(a)に示すように、基板1の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布して、0.10μmの厚さを持つレジスト膜2を形成する。
【0008】
次に、図5(b)に示すように、NAが0.25で且つ波長が13.5nmの極紫外線よりなり、第1のマスク(図示せず)を介した第1の露光光3をレジスト膜2に照射して第1のパターン露光を行う。
【0009】
次に、図5(c)に示すように、NAが0.25で且つ波長が13.5nmの極紫外線よりなり、第1のマスクの非開口部に相当する領域に開口部を有する第2のマスク(図示せず)を介した第2の露光光4をレジスト膜2に照射して第2のパターン露光を行う。
【0010】
次に、図5(d)に示すように、2回のパターン露光が行われたレジスト膜2に対して、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間加熱した後、濃度が2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液により現像を行うと、図6に示すように、レジスト膜2の未露光部よりなるレジストパターン2aを得る。
【非特許文献1】M. Maenhoudt, J. Versluijs, H. Struyf, J. Van Olmen, M. Van Hove, “Double Patterning scheme for sub-0.25 k1 single damascene structures at NA=0.75, λ =193nm”, Proc. SPIE, Vol.5754, p.1508 (2005)
【特許文献1】特開平06−148896号公報
【特許文献2】特開2005−264131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ハードマスクを用いない従来のダブルパターンニング法では、微細なレジストパターンが正常に形成できないという問題がある。
【0012】
従来のダブルパターンニング法においては、得られたレジストパターン2aは、第1のマスク及び第2のマスクの2つのマスクに分割されたパターンを統合したコントラストの高いパターンが得られるはずである。ところが、実際に得られるパターン形状は、レジストパターンの上部が肩だれした不良パターンとなる。
【0013】
本願発明者らは、ハードマスクを用いないダブルパターンニング法により得られるレジストパターンの形状が不良となる原因を種々検討した結果、以下のような結論を得ている。すなわち、第1のマスクによる露光工程及び第2のマスクによる露光工程において、レジスト膜2の各未露光部のそれぞれに漏れ光が生じ、生じた漏れ光により未露光部の感光した領域が現像されるというものである。
【0014】
このように、形状が不良なレジストパターン2aを用いて被処理膜に対してエッチングを行うと、被処理膜から得られるパターンの形状も不良となってしまうため、半導体装置の製造プロセスにおける生産性及び歩留まりが低下してしまうという問題が生じる。
【0015】
前記従来の問題に鑑み、本発明は、ダブルパターニング法によるパターン不良の発生を防止して、良好な形状を有する微細パターンを得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願発明者らは、前述した検討結果から、レジスト膜の上に、アルカリ可溶で且つ芳香環を有するフッ素ポリマーを含む膜を形成することにより、第1のマスク及び第2のマスクを介したパターン露光の際の未露光部における漏れ光を吸収することができるという知見を得ている。
【0017】
本発明は、前記の知見に基づいてなされ、具体的には以下の方法によって実現される。
【0018】
本発明に係る第1のパターン形成方法は、基板の上にポジ型の化学増幅レジストからなるレジスト膜を形成する工程(a)と、レジスト膜の上に、アルカリ可溶で且つ芳香環を有するフッ素ポリマーを含む光吸収膜を形成する工程(b)と、第1のマスクを介した極紫外線からなる露光光を、レジスト膜に光吸収膜を通して選択的に照射することにより、第1のパターン露光を行う工程(c)と、工程(c)よりも後に、第2のマスクを介した極紫外線からなる露光光を、レジスト膜に光吸収膜を通して選択的に照射することにより、第2のパターン露光を行う工程(d)と、工程(d)よりも後に、レジスト膜に対して現像を行って、光吸収膜を除去すると共にレジスト膜からレジストパターンを形成する工程(e)とを備え、第2のマスクの開口部は、第1のマスクにおける開口部が形成されていない非開口部に相当する領域に形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る第2のパターン形成方法は、基板の上にポジ型の化学増幅レジストからなるレジスト膜を形成する工程(a)と、レジスト膜の上に、アルカリ可溶で且つ芳香環を有するフッ素ポリマーを含む光吸収膜を形成する工程(b)と、第1のマスクを介した極紫外線からなる露光光を、レジスト膜に光吸収膜を通して選択的に照射することにより、第1のパターン露光を行う工程(c)と、工程(c)よりも後に、第2のマスクを介した極紫外線からなる露光光を、レジスト膜に光吸収膜を通して選択的に照射することにより、第2のパターン露光を行う工程(d)と、工程(d)よりも後に、光吸収膜を除去する工程(e)と、工程(e)よりも後に、レジスト膜に対して現像を行って、レジスト膜からレジストパターンを形成する工程(f)とを備え、第2のマスクの開口部は、第1のマスクにおける開口部が形成されていない非開口部に相当する領域に形成されていることを特徴とする。
【0020】
第1又は第2のパターン形成方法によると、フッ素原子は極紫外線を吸収する特性を有しているため、芳香環を有するフッ素ポリマーを含む光吸収膜を用いることにより、第1のマスク及び第2のマスクを介した極紫外線からなるそれぞれの露光時の未露光部における漏れ光を吸収することができる。これにより、従来の漏れ光が重なり合うことによるレジストパターンの形状の不良を防止することができる。
【0021】
なお、レジスト膜の上に紫外線を吸収する光吸収膜を形成すると、レジスト膜の露光部においては、露光光はある程度は吸収されるものの、漏れ光と比較してその光強度は格段に大きいため、パターン形成に不具合を生じさせる程の問題は発生しない。
【0022】
また、光吸収膜を構成するポリマーにフッ素ポリマーを用いることにより、ポリマー中のフッ素の割合を高めることができることが本発明の特徴である。従来は、露光光に対する干渉防止膜に、屈折率を制御する目的でフッ素を含む界面活性剤を添加している(例えば、特許文献1を参照。)。これに対し、本発明の芳香環を有するフッ素ポリマーは、ポリマー中のフッ素の割合を格段に高くすることができる。また、フッ素の極紫外線を吸収するという効果も、ポリマー中のフッ素の方が膜中での分布が一様となることから大きくなる。光吸収膜を構成するポリマーに対するフッ素の含有量は、漏れ光を吸収できるだけの量が入っていれば良く、ポリマーに対して、例えば約1wt%以上且つ10wt%以下であることが挙げられる。
【0023】
また、従来、液浸リソグラフィ法により露光を行う際に、レジスト膜の上に配され、疎水性を高める保護膜として脂肪族環式基を含むアルカリ可溶性のフッ素ポリマーを用いる例がある(例えば、特許文献2を参照。)。
【0024】
これに対し、本発明に係る芳香環を有するフッ素ポリマーを用いた光吸収膜は、脂肪族環式基を含むフッ素ポリマーと比べて炭素の割合が高く、極紫外線の吸収をある程度高くすることが可能である。このため、極紫外線に対する吸収特性の制御をフッ素のみに依存することなく行えるという特徴を有する。
【0025】
なお、第1又は第2のパターン形成方法において、芳香環を有するフッ素ポリマーには、一例として、ポリ(ビニール−2−フルオロフェノール)、ポリ(ビニール−2,6−ジフルオロフェノール)又はポリ(ビニール−2,3,5,6−テトラフルオロフェノール)を用いることができる。
【0026】
また、アルカリ可溶性を向上させるために、より好ましくは、芳香環を有するフッ素ポリマーとして、ヘキサフルオロイソプロピル基を含む芳香環を有するポリマーを用いることができる。
【0027】
ここで、ヘキサフルオロイソプロピル基を含む芳香環を有するフッ素ポリマーには、ポリ(ビニールベンゼンオキシヘキサフルオロイソプロピルアルコール)又はポリ(ビニールナフタレンオキシヘキサフルオロイソプロピルアルコール)を用いることができる。
【0028】
なお、本発明においては、アルカリ可溶で且つ芳香環を有するフッ素ポリマーを含む光吸収膜は、その成膜後に加熱することなく用いることができる。これは、本発明に係るフッ素ポリマーを含み且つアルカリ可溶性を有する光吸収膜は、露光時の漏れ光の吸収のみが目的であり、膜の耐性は問われないためである。従来の液浸リソグラフィに係るトップコート膜(保護膜)の場合は、液浸用の液体中へのレジスト膜中の成分の溶出や、液浸用の液体がレジスト膜中に浸透することを防止できるように、トップコート膜自体の緻密性を向上させるための加熱が必要であるが、本発明においては、光吸収膜は加熱を必要としないというプロセス上の簡易性がある。
【0029】
また、本発明に係る芳香環を有するフッ素ポリマーを含む光吸収膜は、第1のパターン形成方法のようにアルカリ現像時に同時に除去してもよく、また、第2のパターン形成方法のように現像を行う前に除去してもよい。第1のパターン形成方法の場合は、光吸収膜を現像時に除去することにより、レジストの溶解特性を制御でき、その結果、レジストの溶解特性が向上するという効果がある。これに対し、第2のパターン形成方法の場合は、現像前に光吸収膜を除去することから、レジストの現像処理が通常通りに進行する。なお、光吸収膜を現像前に除去する場合には、アルカリ性溶液、例えば希釈したアルカリ現像液で除去すればよい。
【0030】
また、露光用の極紫外線には、例えば波長が13.5nmの極紫外線を用いることができる。但し、本発明はこの波長に限られない。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るパターン形成方法によると、ハードマスクを用いないダブルパターニング法によるパターン不良の発生を防止して、良好な形状を有する微細パターンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るダブルパターニング法によるパターン形成方法について図1(a)〜図1(d)、図2(a)及び図2(b)を参照しながら説明する。
【0033】
まず、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0034】
ポリ(ビニールフェノール(50mol%)−t−ブチルアクリレート(50mol%))・・・・2g
トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸(酸発生剤)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.05g
トリエタノールアミン(クエンチャー)・・・・・・・・・・・・・・・0.002g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)・・・・・・・・20g
次に、図1(a)に示すように、基板101の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布して、0.10μmの厚さを持つレジスト膜102を形成する。
【0035】
次に、図1(b)に示すように、例えばスピン塗布法により、レジスト膜102の上に以下の組成の、アルカリ可溶で且つ芳香環を有するフッ素ポリマーを含む光吸収膜形成用材料から、厚さが60nmの光吸収膜103を成膜する。
【0036】
ポリ(ビニールベンゼンオキシヘキサフルオロイソプロピルアルコール)・・・・1g
sec−ブチルアルコール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20g
次に、図1(c)に示すように、NAが0.25で且つ波長が13.5nmの極紫外線であって、第1のマスク(図示せず)を介した第1の露光光104を光吸収膜103を通してレジスト膜102に照射して第1のパターン露光を行う。
【0037】
次に、図1(d)に示すように、NAが0.25で且つ波長が13.5nmの極紫外線であって、第1のマスクの非開口部に相当する領域に開口部を有する第2のマスク(図示せず)を介した第2の露光光105を光吸収膜103を通してレジスト膜102に照射して第2のパターン露光を行う。
【0038】
次に、図2(a)に示すように、2回のパターン露光が行われたレジスト膜102に対して、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間加熱する(露光後べーク)。
【0039】
次に、図2(b)に示すように、濃度が2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液により現像を行うと、レジスト膜102の各未露光部であって、第1のマスク及び第2のマスクの2つのマスクに分割されたパターンを統合した、コントラストが高い微細パターンを持つレジストパターン102aを得ることができる。
【0040】
このように、第1の実施形態によると、極紫外線を露光光とし、ハードマスクを用いないダブルパターニング法において、レジスト膜102の上に、アルカリ可溶で且つ芳香環を有するフッ素ポリマーを含む、例えばポリ(ビニールベンゼンオキシヘキサフルオロイソプロピルアルコール)からなる光吸収膜103を形成している。このため、光吸収膜103に含まれるフッ素原子が、図1(c)に示す第1のマスクを用いた第1のパターン露光工程及び図1(d)に示す第2のマスクを用いた第2のパターン露光工程において、レジスト膜102の各未露光部に漏れる漏れ光を吸収する。その結果、得られるレジストパターン102aのパターン形状は、その上部に肩だれが生じない矩形性が高い形状となる。
【0041】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係るダブルパターニング法によるパターン形成方法について図3(a)〜図3(d)及び図4(a)〜図4(c)を参照しながら説明する。
【0042】
まず、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0043】
ポリ(ビニールフェノール(50mol%)−t−ブチルアクリレート(50mol%))・・・・2g
トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸(酸発生剤)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.05g
トリエタノールアミン(クエンチャー)・・・・・・・・・・・・・・・0.002g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)・・・・・・・・20g
次に、図3(a)に示すように、基板201の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布して、0.10μmの厚さを持つレジスト膜202を形成する。
【0044】
次に、図3(b)に示すように、例えばスピン塗布法により、レジスト膜202の上に以下の組成の、アルカリ可溶で且つ芳香環を有するフッ素ポリマーを含む光吸収膜形成用材料から、厚さが60nmの光吸収膜203を成膜する。
【0045】
ポリ(ビニール−2−フルオロフェノール) ・・・・・・・・・・・・・・・・・1g
sec−ブチルアルコール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20g
次に、図3(c)に示すように、NAが0.25で且つ波長が13.5nmの極紫外線であって、第1のマスク(図示せず)を介した第1の露光光204を光吸収膜203を通してレジスト膜202に照射して第1のパターン露光を行う。
【0046】
次に、図3(d)に示すように、NAが0.25で且つ波長が13.5nmの極紫外線であって、第1のマスクの非開口部に相当する領域に開口部を有する第2のマスク(図示せず)を介した第2の露光光205を光吸収膜203を通してレジスト膜202に照射して第2のパターン露光を行う。
【0047】
次に、図4(a)に示すように、2回のパターン露光が行われたレジスト膜202に対して、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間加熱する(露光後べーク)。
【0048】
次に、図4(b)に示すように、濃度が0.05wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を用いて光吸収膜203を除去する。
【0049】
次に、図4(c)に示すように、光吸収膜203が除去されたレジスト膜202に対して、濃度が2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液により現像を行うと、レジスト膜202の各未露光部であって、第1のマスク及び第2のマスクの2つのマスクに分割されたパターンを統合した、コントラストが高い微細パターンを持つレジストパターン202aを得ることができる。
【0050】
このように、第2の実施形態によると、極紫外線を露光光とし、ハードマスクを用いないダブルパターニング法において、レジスト膜202の上に、アルカリ可溶で且つ芳香環を有するフッ素ポリマーを含む、例えばポリ(ビニール−2−フルオロフェノール)からなる光吸収膜203を形成している。このため、光吸収膜203に含まれるフッ素原子が、図3(c)に示す第1のマスクを用いた第1のパターン露光工程及び図3(d)に示す第2のマスクを用いた第2のパターン露光工程において、レジスト膜202の各未露光部に漏れる漏れ光を吸収する。その結果、得られるレジストパターン202aは、矩形性に優れた良好なパターン形状となる。
【0051】
なお、上記の各実施形態においては、アルカリ可溶で且つ芳香環を有するフッ素ポリマーとして、ポリ(ビニールベンゼンオキシヘキサフルオロイソプロピルアルコール)又はポリ(ビニール−2−フルオロフェノール)を用いたが、これらに限られず、ポリ(ビニールナフタレンオキシヘキサフルオロイソプロピルアルコール)、ポリ(ビニール−2,6−ジフルオロフェノール)又はポリ(ビニール−2,3,5,6−テトラフルオロフェノール)を用いた場合にも同様の良好な結果を得ることができる。
【0052】
また、アルカリ可溶で且つ芳香環を有するフッ素ポリマーを含む光吸収膜の膜厚を60nmとしたが、これに限られない。すなわち、光吸収膜の膜厚の下限値は、露光時の漏れ光を十分に吸収できる程度の膜厚であり、また、その上限値は露光光の透過を妨げず且つ容易に除去できる程度の膜厚である。例えば、20nm以上且つ80nm以下程度が好ましく、さらには30nm以上且つ70nm以下程度が好ましい。但し、必ずしもこの数値範囲には限られない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係るパターン形成方法は、ハードマスクを用いないダブルパターニング法によるパターン不良の発生を防止して、良好な形状を有する微細パターンを得ることができ、半導体装置の製造プロセス等において用いられるパターン形成方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)〜(d)は本発明の第1の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図2】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)は本発明の第2の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図4】(a)〜(c)は本発明の第2の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図5】(a)〜(d)は従来のハードマスクを用いないダブルパターニング法によるパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図6】従来のハードマスクを用いないダブルパターニング法によるパターン形成方法の一工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
101 基板
102 レジスト膜
102a レジストパターン
103 光吸収膜
104 第1の露光光
105 第2の露光光
201 基板
202 レジスト膜
202a レジストパターン
203 光吸収膜
204 第1の露光光
205 第2の露光光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上にポジ型の化学増幅レジストからなるレジスト膜を形成する工程(a)と、
前記レジスト膜の上に、アルカリ可溶で且つ芳香環を有するフッ素ポリマーを含む光吸収膜を形成する工程(b)と、
第1のマスクを介した極紫外線からなる露光光を、前記レジスト膜に前記光吸収膜を通して選択的に照射することにより、第1のパターン露光を行う工程(c)と、
前記工程(c)よりも後に、第2のマスクを介した極紫外線からなる露光光を、前記レジスト膜に前記光吸収膜を通して選択的に照射することにより、第2のパターン露光を行う工程(d)と、
前記工程(d)よりも後に、前記レジスト膜に対して現像を行って、前記光吸収膜を除去すると共に前記レジスト膜からレジストパターンを形成する工程(e)とを備え、
前記第2のマスクの開口部は、前記第1のマスクにおける開口部が形成されていない非開口部に相当する領域に形成されていることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
基板の上にポジ型の化学増幅レジストからなるレジスト膜を形成する工程(a)と、
前記レジスト膜の上に、アルカリ可溶で且つ芳香環を有するフッ素ポリマーを含む光吸収膜を形成する工程(b)と、
第1のマスクを介した極紫外線からなる露光光を、前記レジスト膜に前記光吸収膜を通して選択的に照射することにより、第1のパターン露光を行う工程(c)と、
前記工程(c)よりも後に、第2のマスクを介した極紫外線からなる露光光を、前記レジスト膜に前記光吸収膜を通して選択的に照射することにより、第2のパターン露光を行う工程(d)と、
前記工程(d)よりも後に、前記光吸収膜を除去する工程(e)と、
前記工程(e)よりも後に、前記レジスト膜に対して現像を行って、前記レジスト膜からレジストパターンを形成する工程(f)とを備え、
前記第2のマスクの開口部は、前記第1のマスクにおける開口部が形成されていない非開口部に相当する領域に形成されていることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
前記芳香環を有するフッ素ポリマーは、ポリ(ビニール−2−フルオロフェノール)、ポリ(ビニール−2,6−ジフルオロフェノール)又はポリ(ビニール−2,3,5,6−テトラフルオロフェノール)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記芳香環を有するフッ素ポリマーは、ヘキサフルオロイソプロピル基を含む芳香環を有するポリマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記ヘキサフルオロイソプロピル基を含む芳香環を有するフッ素ポリマーは、ポリ(ビニールベンゼンオキシヘキサフルオロイソプロピルアルコール)又はポリ(ビニールナフタレンオキシヘキサフルオロイソプロピルアルコール)であることを特徴とする請求項4に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
極紫外線からなる前記露光光の波長は、13.5nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−164441(P2009−164441A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1860(P2008−1860)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】