説明

パターン形成装置およびパターン形成方法、それを用いて作製されたデバイスおよび該デバイスを有する電子機器

【課題】少量多品種生産に柔軟に対応でき、かつ滑らかで欠陥のないパターンを所望位置に形成し易いパターン形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】基板100上に液体材料130を塗布する液体材料塗布機構110と、基板100に塗布された液体材料にレーザ光121を照射して固定化するレーザ処理機構120とをパターン形成装置155に設け、かつ液体材料塗布機構110には液体材料130を介して基板100に接する開口部114が形成された液体材料供給部113を設け、レーザ処理機構にはレーザ光を照射目標点131に照射する照射部を設け、液体材料供給部113の開口部から基板100に液体材料を塗布し、該基板100に塗布された液体材料を照射部から照射されるレーザ光によって逐次処理し、固定化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロニクスデバイスを構成しうる機能性液体材料などを用いて固体表面にパターンを形成するパターン形成装置およびパターン形成方法、ならびに上記のパターン形成装置またはパターン形成方法により形成されたパターンを有するデバイスおよび該デバイスを有する電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェハー上に真空プロセスとフォトリソグラフィーなどの微細加工技術とを用いて集積回路を形成する従来型の機能素子作製方法に対して、有機材料の溶液や無機材料のコロイド溶液などの液体材料と印刷技術とを組み合わせたまったく新しい材料、プロセスに基づくいわゆる印刷エレクトロニクスにより機能素子を作製することが、数多く提案されてきている。
【0003】
印刷エレクトロニクスに用いられる印刷技術としては、紙面への印刷で培われてきた方式が候補となるが、多くの検討はインクジェット方式で行われている。
【0004】
インクジェット方式は家庭用の小型プリンタの印刷方式として発展してきた技術であり、コンピューターやデジタルカメラなどから送られてくる電子データを基に紙面上で微小ノズルを走査させると共に当該微小ノズルからインクを吹き出させて描画を行う。
【0005】
これは書籍や雑誌新聞などを印刷するのに一般的な、原版を用いてそれを基に大量の複製を作成する方式とは大きく異なる。
【0006】
原版を使用する印刷方式は新聞のように同一のものを高速かつ大量に作成するのにはきわめて適した方式であるが、少量の印刷の場合にも大量の印刷と同様の原版を必要とするし、また原版とまったく同じものしか作成することができない。
【0007】
これに対して、インクジェット方式は原版を使用せず、印刷の元情報は簡単に改変可能な単なる電子データである。従って、多種類の印刷物を作成するときには非常に有効な方法である。これには、一般家庭におけるデジタルカメラ撮影の写真の印刷などが該当する。インクジェットによる印刷方式は印刷速度の面で原版を使う方式に劣るものの、原版作製のための手間とコストを省くことができ、多くの異なる印刷物に柔軟に対応できるというメリットがある。
【0008】
エレクトロニクスデバイスの世界においては、顧客ニーズの多様化などによって、従来の同一物の大量生産から少量多品種生産への移行が進んでおり、このような状況を背景として登場してきた印刷エレクトロニクスは、インクジェット方式と組み合わせることで、少量多品種のエレクトロニクスデバイスをニーズに応じてオンデマンドで作製することができる可能性をもった技術として大きな注目を集めている。たとえば読み取り型RFID(Radio Frequency Identification)タグのように一つ一つのデバイスがすべて異なるID情報、すなわちすべて異なる配線パターンをもっているような場合でも、インクジェット方式の印刷ではインクジェットプリンタに送る電子データの内容を適宜変更するだけで柔軟に対応が可能である。
【0009】
このような利点を有するインクジェット方式に関連する技術の提案は、すでに数多くなされている。たとえば(特許文献1)では、複数の材料を用いた複雑なパターニングを必要とする有機ELディスプレイへの応用が提案されている。
【0010】
ところが、インクジェット方式による描画には、その動作原理に起因する課題が複数ある。まず、インクジェット方式により描画される図形は、微小なノズルから微小な液滴を吹き出すという原理上、点の集まりとなり、点と点の境界に不均一を生じる。また、液滴が吹き出されてから目標地点に到達するまでの間に気流や静電気などの外乱要因の影響を受けて、その到達位置が目標からずれてしまう場合がある。また、目標地点に到達したとしても、液滴と到達面との相互作用によって液滴が濡れ広がってしまったり、逆にはじかれて玉になってしまったりして、期待する描画とは異なる結果を招くことがある。さらに極端な場合は、液滴の吐出そのものがうまく行われずに描画ができなくなる。
【0011】
このように、インクジェット方式によるパターン形成では、形成されるパターンの表面が滑らかでなかったり、欠陥を含んでいたり、位置がずれたりするという課題がある。これらの課題は、印刷エレクトロニクスデバイスのためのパターンを形成する場合においても、すなわち材料がインクではなく機能性液体であったり、あるいは基板が紙ではなくガラス基板やプラスチックフィルムであったりする場合においても、同様に起こりうるものである。
【0012】
たとえば(特許文献2)に記載された機能性材料定着方法や機能性材料定着装置では、機能性材料を含んだ液滴を被着面上に吐出した後にレーザ光を照射し、これにより溶媒の一部を気化させることで、被着面上での機能性材料の定着位置の精度を高めている。
【特許文献1】特開2002−015866号公報
【特許文献2】特開2005−095849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、インクジェット方式により図形を描画したときに、気流や静電気などの外乱要因によってインクの液滴の到達位置が目標地点からずれてしまうという課題はインクジェット方式での本質的な課題であり、(特許文献2)に記載された方法や装置によっても十分には解決しえない。
【0014】
本発明は、少量多品種生産に柔軟に対応でき、かつ滑らかで欠陥のないパターンを所望位置に形成し易いパターン形成装置およびパターン形成方法、ならびにこれらの装置または方法により作製されたデバイスおよび電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のパターン形成装置は、基板に液体材料を塗布する液体材料塗布機構と、基板に塗布された液体材料にレーザ光を照射して固定化するレーザ処理機構とを備え、液体材料塗布機構は、液体材料を介して基板に接する開口部が形成された液体材料供給部と、液体材料供給部に液体材料を搬送する搬送部とを有し、レーザ処理機構は、レーザ光を照射目標点に照射する照射部を有し、開口部から基板に液体材料を塗布し、基板に塗布された液体材料を照射部から照射されるレーザ光によって逐次処理し、固定化することを特徴とする。
【0016】
本発明のパターン形成方法は、基板に塗布した液体材料をレーザ光によって逐次処理し、固定化してパターンを形成するパターン形成方法であって、液体材料が吐出する開口部を液体材料を介して基板に接触させ、開口部から基板に塗布した液体材料をレーザ光によって逐次処理し、固定化してパターンを形成することを特徴とする。
【0017】
本発明のデバイスは、上述した本発明のパターン形成装置を用いて形成されたパターンを有するものである。また、本発明の他のデバイスは、上述した本発明のパターン形成方法により形成されたパターンを有するものである。そして、本発明の電子機器は、上述した本発明のデバイスを有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のパターン形成装置およびパターン形成方法では、液体材料を介して基板に接する開口部から基板に液体材料を塗布し、基板に塗布された液体材料をレーザ光によって逐次処理し、固定化してパターンを形成するので、インクジェット方式によりパターンを形成する場合に比べて、液体材料を基板の所望位置に正確に塗布することが容易である。また、滑らかで欠陥のないパターンを形成することも容易である。
【0019】
その一方で、インクジェット方式によりパターンを形成する場合と同様に、形成しようとするパターンに対応した電子データに基づいて上記の開口部と基板との相対的な位置関係を制御する構成とすることが可能であるので、少量多品種生産に柔軟に対応することも容易である。
【0020】
従って、本発明のパターン形成装置やパターン形成方法によれば、少量多品種生産に柔軟に対応でき、かつ滑らかで欠陥のないパターンを基板の所望位置に形成することが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
第1の発明のパターン形成装置は、基板に液体材料を塗布する液体材料塗布機構と、基板に塗布された液体材料にレーザ光を照射して固定化するレーザ処理機構とを備え、液体材料塗布機構は、液体材料を介して基板に接する開口部が形成された液体材料供給部と、液体材料供給部に液体材料を搬送する搬送部とを有し、レーザ処理機構は、レーザ光を照射目標点に照射する照射部を有し、開口部から基板に液体材料を塗布し、基板に塗布された液体材料を照射部から照射されるレーザ光によって逐次処理し、固定化することを特徴とする。
【0022】
このパターン形成装置では、液体材料を介して基板に接する開口部から基板に液体材料を塗布し、基板に塗布された液体材料をレーザ光によって逐次処理し、固定化してパターンを形成するので、インクジェット方式によりパターンを形成する場合に比べて、液体材料を基板の所望位置に正確に塗布することが容易である。また、滑らかで欠陥のないパターンを形成することも容易である。その一方で、インクジェット方式によりパターンを形成する場合と同様に、形成しようとするパターンに対応した電子データに基づいて上記の開口部と基板との相対的な位置関係を制御する構成とすることが可能であるので、少量多品種生産に柔軟に対応することも容易である。従って、当該パターン形成装置によれば、少量多品種生産に柔軟に対応でき、かつ滑らかで欠陥のないパターンを基板の所望位置に形成することが容易になる。
【0023】
第2の発明のパターン形成装置は、第1の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、基板と開口部との相対位置を変位させる移動機構をさらに備えていることを特徴とする。このパターン形成装置では、上記の移動機構を備えていることから、基板上の任意の位置に高い自由度の下にパターンを形成することができる。
【0024】
第3の発明のパターン形成装置は、第1または第2の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、開口部の最小の代表寸法は500μm以下であることを特徴とする。このパターン形成装置では、開口部の最小の代表寸法が500μm以下であるので、回路素子の集積密度が高い高集積デバイスを形成するために必要となる微細なパターンを形成しやすい。
【0025】
第4の発明のパターン形成装置は、第3の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、レーザ光のビームプロファイルをとったときに、液体材料を実質的に固定化することができるエネルギーレベルを有する領域の径が開口部での最小の代表寸法よりも大きいことを特徴とする。このパターン形成装置では、開口部とレーザ光とが上述の大小関係を有するので、開口部の形状に規定される均一形状の滑らかで欠陥のないパターンを形成しやすく、また余剰材料のない効率的なパターン形成を行うことができる。
【0026】
第5の発明のパターン形成装置は、第3の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、レーザ光のビームプロファイルをとったときに、液体材料を実質的に固定化することができるエネルギーレベルを有する領域の径が開口部での最小の代表寸法よりも小さいことを特徴とする。このパターン形成装置では、開口部とレーザ光とが上述の大小関係を有するので、レーザ光の良好な集光性を活かして数μm程度以下の非常に微細でありながら滑らかで欠陥のないパターンを形成することができる。
【0027】
第6の発明のパターン形成装置は、第1〜5の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、基板と開口部とのギャップを計測する開口部位置計測機構をさらに備えていることを特徴とする。このパターン形成装置では、上記の開口部位置計測機構を備えているので、凹凸や反りがあるような基板を用いたときでも開口部と基板との相対位置関係がどのようになっているのかを定量的に把握することができ、滑らかで欠陥のないパターンを得るために必要となる制御を行うための情報を得ることができる。
【0028】
第7の発明のパターン形成装置は、第6の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、開口部位置計測機構の計測結果を基に、基板と開口部とのギャップを一定に保つか、または予め定められた所定の手順に従ってギャップを変化させる開口部位置制御機構をさらに備えていることを特徴とする。このパターン形成装置では、上記の開口部位置制御機構を備えているので、たとえば基板が反っていたり立体形状をしていたりしても開口部と基板との距離を常に最適値に保つことができるとか、またたとえば開口部を基板に次第に近づけたり離したりといった制御を行うことで、より高い自由度の下に滑らかで欠陥のないパターンを形成することができる。
【0029】
第8の発明のパターン形成装置は、第1〜7の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、開口部と少なくとも照射部とが一体化されてなることを特徴とする。このパターン形成装置では、開口部と少なくとも照射部とが一体化されているので、開口部と照射部の相対的な位置関係が固定化される結果として、レーザ光の位置制御を行う照射部の構成を簡略化することができる。
【0030】
第9の発明のパターン形成装置は、第1〜8の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、開口部から液体材料の吐出と吸引とが行われることを特徴とする。このパターン形成装置では、開口部から液体材料の吐出と吸引とが行われるので、液体材料の吐出終了地点において余剰材料が基板上に供給され続けることを避けることができ、塗布の終了地点まで安定した寸法精度で塗布を滑らかに行うことができる。また、パターン形成を終了した後に基板上に残留する余剰液体材料を吸引除去することもできる。
【0031】
第10の発明のパターン形成装置は、第1〜9の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、液体材料塗布機構は、複数種類の液体材料を基板に別々に、または混合して塗布することを特徴とする。このパターン形成装置では、複数種類の液体材料を基板に別々に、または混合して塗布することができるので、事前に混合を行うと化学反応を起こしたり凝集沈殿を起こしたりするなど安定性を損ねる組み合わせの材料を用いても、滑らかで欠陥のないパターンを形成することができる。
【0032】
第11の発明のパターン形成装置は、第10の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、液体材料塗布機構は、複数種類の液体材料それぞれの比率を経時的に変化させて基板に塗布することを特徴とする。このパターン形成装置では、複数種類の液体材料それぞれの比率を経時的に変化させて基板に塗布することができるので、パターンの中で連続的かつ滑らかに合金組成や有機/無機材料比率を変更することができ、組成が変化しながらも滑らかで欠陥のないパターンを形成することができる。
【0033】
第12の発明のパターン形成装置は、第1〜11の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、少なくとも開口部と照射部とが一体化された形成体を複数備え、それぞれの形成体が互いに異なる液体材料または同一の液体材料を用いて同時または逐次、パターン形成を行うことを特徴とする。このパターン形成装置では、複数の成形体を備えているので、それぞれの形成体が複数の異なる材料または同一の材料を用いて同時または逐次パターン形成を行う構成をとることができ、同一基板上の異なる位置に同時に別々の材料でパターン形成を行ったり、同一の場所に逐次異なる材料を用いたパターン形成を行ったりすることができる。
【0034】
第13の発明のパターン形成装置は、第12の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、複数の形成体の各々は、互いに異なる形状および/または互いに異なる代表寸法をもった開口部を有することを特徴とする。このパターン形成装置では、複数の形成体の各々が互いに異なる形状および/または互いに異なる代表寸法をもった開口部を有するので、大面積と超微細のパターンを同時に形成したり、一つのパターンとそれを覆うことができるより大きなパターンとを形成したり、ある程度広い範囲を下地剤で処理した後にその上に微細パターンを形成するなど、滑らかさと欠陥のなさを保ったままでより自由度の高いパターン形成を行うことができる。
【0035】
第14の発明のパターン形成装置は、第1〜13の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、レーザ光は連続光であることを特徴とする。このパターン形成装置では、レーザ光が連続光であることから、滑らかで不均一部分のない連続的なパターンを形成することができる。
【0036】
第15の発明のパターン形成装置は、第1〜13の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、レーザ光は断続光であることを特徴とする。このパターン形成装置では、レーザ光が断続光であることから、たとえば開口部から基板に液体材料が連続線状に塗布されても点線状のパターンを形成できるなど、自由度の高いパターン形成が可能となる。
【0037】
第16の発明のパターン形成装置は、第1〜15の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、照射部は、レーザ光の走査を行うことを特徴とする。このパターン形成装置では、照射部がレーザ光の走査を行うので、たとえば基板に塗布された液体材料の内側に微細なパターンを形成したり、またレーザ光のビームスポットに比べて極端に大きな幅でありながら滑らかな形状のパターンを形成したりすることができるようになるなど、さらに自由度の高いパターン形成が可能となる。
【0038】
第17の発明のパターン形成装置は、第1〜15の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、照射部は、レーザ光が伝搬する光ファイバを含むことを特徴とする。このパターン形成装置では、照射部が光ファイバを含むので、照射部の構成を簡略化できる。
【0039】
第18の発明のパターン形成装置は、第17の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、光ファイバから出射したレーザ光は、基板に塗布された液体材料に光学素子を介することなく照射されることを特徴とする。このパターン形成装置では、光ファイバから出射したレーザ光が光学素子を介することなく液体材料に照射されるので、効率的なレーザ照射が可能となる。
【0040】
第19の発明のパターン形成装置は、第1〜18の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、レーザ光のビームプロファイルをとったときに、液体材料を実質的に固定化することができるエネルギーレベルを有する領域内ではエネルギー分布が実質的に均一であることを特徴とする。このパターン形成装置では、レーザ光が上述のビームプロファイルを有するので、形成されたパターンでの厚さ方向の特性分布も均一となり、滑らかで欠陥のないパターンを形成することができる。
【0041】
第20の発明のパターン形成装置は、第1〜19の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、開口部および照射部の各々と一体化された雰囲気制御室をさらに備え、開口部から基板に塗布される液体材料を照射部から照射されるレーザ光によって雰囲気制御室内で逐次処理し、固定化することを特徴とする。このパターン形成装置では、該パターン形成装置が備える雰囲気処理室内で液体材料を処理し、固定化するので、酸素や水蒸気が存在する大気下では不安定な液体材料や、通常の大気下で安定であっても加熱することで酸素や水蒸気に対して不安定になるような液体材料を使っても、滑らかで欠陥のないパターンを形成することが可能になる。
【0042】
第21の発明のパターン形成装置は、第20の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、雰囲気制御室内は、外部に比較して相対的に陽圧に保たれることを特徴とする。このパターン形成装置では、雰囲気制御室内が外部に比較して相対的に陽圧に保たれるので、雰囲気制御室から外部に常に気体が排出されている状態が維持される結果として、望ましくない外気の進入を防ぐことで雰囲気制御室内を一定の好ましい状態に保つことができる。
【0043】
第22の発明のパターン形成装置は、第20または第21の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、雰囲気制御室内は、液体材料に酸化を生じさせない低酸素濃度雰囲気に保たれることを特徴とする。このパターン形成装置では、雰囲気制御室内が低酸素濃度雰囲気に保たれるので、酸素の存在下では酸化によって変質してしまうような液体材料を使っても滑らかで欠陥のないパターン形成が可能である。
【0044】
第23の発明のパターン形成装置は、第20または第21の発明のパターン形成装置に含まれるものであり、液体材料に還元を生じさせない高酸素濃度雰囲気に保たれることを特徴とする。このパターン形成装置では、雰囲気制御室内が高酸素濃度雰囲気に保たれるので、たとえば加熱によって容易に還元されてしまうような不安定な酸化物を含んだ液体材料を用いても滑らかで欠陥のないパターンを形成することができる。
【0045】
第24の発明のパターン形成方法は、基板に塗布した液体材料をレーザ光によって逐次処理し、固定化してパターンを形成するパターン形成方法であって、液体材料が吐出する開口部を液体材料を介して基板に接触させ、開口部から基板に塗布した液体材料をレーザ光によって逐次処理し、固定化してパターンを形成することを特徴とする。
【0046】
このパターン形成方法では、液体材料を介して基板に接する開口部から基板に液体材料を塗布し、基板に塗布された液体材料をレーザ光によって逐次処理し、固定化してパターンを形成するので、インクジェット方式によりパターンを形成する場合に比べて、液体材料を基板の所望位置に正確に塗布することが容易である。また、滑らかで欠陥のないパターンを形成することも容易である。その一方で、インクジェット方式によりパターンを形成する場合と同様に、形成しようとするパターンに対応した電子データに基づいて上記の開口部と基板との相対的な位置関係を制御することが可能であるので、少量多品種生産に柔軟に対応することも容易である。従って、当該パターン形成方法によれば、少量多品種生産に柔軟に対応でき、かつ滑らかで欠陥のないパターンを基板の所望位置に形成することが容易になる。
【0047】
第25の発明のパターン形成方法は、第24の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、レーザ光による処理は、液体材料に化学的変化を誘起するものであることを特徴とする。このパターン形成方法では、レーザ光によって液体材料に化学的変化を誘起するので、簡素な装置によっても架橋反応や重合反応などを利用して欠陥のないパターンを形成することが可能である。
【0048】
第26の発明のパターン形成方法は、第24の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、レーザ光による処理は、液体材料に物理的変化を誘起するものであることを特徴とする。このパターン形成方法では、レーザ光によって液体材料に物理的変化を誘起するので、たとえば無機酸化物コロイドのような化学反応性に乏しい液体材料であっても焼結により滑らかなパターンを形成することができる。
【0049】
第27の発明のパターン形成方法は、第24〜26の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、液体材料にレーザ光を照射するときの照射目標点およびその近傍で、雰囲気制御を行うことを特徴とする。このパターン形成方法では、レーザ光の照射目標点およびその近傍で雰囲気制御を行うので、大気にさらされることで変質してしまうような材料を用いても欠陥のないパターンを安定に形成することができる。
【0050】
第28の発明のパターン形成方法は、第27の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、雰囲気制御は、雰囲気中の酸素濃度の制御であることを特徴とする。このパターン形成方法では、レーザ光の照射目標点およびその近傍で雰囲気中の酸素濃度を制御するので、酸化しやすい成分を含んだ液体材料には雰囲気の酸素濃度を下げ、還元しやすい成分を含んだ材料には雰囲気の酸素濃度を上げることで、それぞれ欠陥のないパターンを安定に形成することができる。
【0051】
第29の発明のパターン形成方法は、第27または第28の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、雰囲気制御は、雰囲気中の水蒸気濃度の制御であることを特徴とする。このパターン形成方法では、レーザ光の照射目標点およびその近傍で雰囲気中の水蒸気濃度を制御するので、水蒸気の存在によって容易に分解や劣化が生じる有機系の電子機能材料などを用いても欠陥のないパターンを形成することが可能となる。
【0052】
第30の発明のパターン形成方法は、第27〜29の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、雰囲気制御は、気圧の制御であることを特徴とする。このパターン形成方法では、レーザ光の照射目標点およびその近傍で気圧を制御するので、照射目標点近傍への外気の流入を防ぐほか、液体材料の固定化の際に生じるガスなどを排出することもでき、望ましい雰囲気を維持したままで阻害物質による欠陥のないパターンを形成することができる。
【0053】
第31の発明のパターン形成方法は、第24〜30の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、基板に塗布された液体材料を第1のレーザ光によって処理した後に第2のレーザ光によって処理することを特徴とする。このパターン形成方法では、液体材料を第1のレーザ光によって処理した後に第2のレーザ光によって処理するので、化学反応による固定化を行った後にさらに物理反応による固定化を行う、あるいは互いに異なる複数の化学反応による固定化を逐次行うなど高い自由度の下に滑らかで欠陥のないパターンを形成することができる。
【0054】
第32の発明のパターン形成方法は、第31の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、第1のレーザ光の波長と第2のレーザ光の波長とは互いに異なることを特徴とする。このパターン形成方法では、第1のレーザ光の波長と第2のレーザ光の波長とが互いに異なるので、たとえば特定の波長の光に対して反応する化学反応開始剤を複数種類液体材料に混合するなどすることで、液体材料の固定化の状態を高い自由度の下に制御しながら欠陥のないパターンを形成することができる。
【0055】
第33の発明のパターン形成方法は、第31または第32の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、第1のレーザ光のビームプロファイルと第2のレーザ光のビームプロファイルとは互いに異なることを特徴とする。このパターン形成方法では、第1のレーザ光のビームプロファイルと第2のレーザ光のビームプロファイルとが互いに異なるので、液体材料の固定化の状態を高い自由度の下に制御しながら欠陥のないパターンを形成することができる。
【0056】
第34の発明のパターン形成方法は、第24〜第32の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、基板に塗布された液体材料での互いに異なる領域それぞれに同時にレーザ光を照射し、これらのレーザ光によって液体材料を逐次処理することを特徴とする。このパターン形成方法では、基板に塗布された液体材料での互いに異なる領域それぞれに同時にレーザ光を照射するので、欠陥のないパターンを迅速に、かつ効率よく形成することができる。
【0057】
第35の発明のパターン形成方法は、第34の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、互いに異なる領域それぞれに照射されるレーザ光の各々は、互いに異なる波長を有することを特徴とする。このパターン形成方法では、基板に塗布された液体材料での互いに異なる領域に互いに異なる波長を有するレーザ光を照射するので、特定の波長の光に反応する化学反応開始剤を液体材料に複数種類混合するなどすることで、液体材料の固定化の状態を高い自由度の下に制御しながら欠陥のないパターンを形成することができる。
【0058】
第36の発明のパターン形成方法は、第34または第35の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、互いに異なる領域それぞれに照射されるレーザ光の各々は、互いに異なるビームプロファイルを有することを特徴とする。このパターン形成方法では、基板に塗布された液体材料での互いに異なる領域に互いに異なるビームプロファイルを有するレーザ光を照射するので、液体材料の固定化の状態を高い自由度の下に制御しながら欠陥のないパターンを形成することができる。
【0059】
第37の発明のパターン形成方法は、第24〜36の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、第1の液体材料を用いて第1のパターンを形成した後に、第2の液体材料を用いて第2のパターンを形成することを特徴とする。このパターン形成方法では、第1の液体材料を用いて第1のパターンを形成した後に第2の液体材料を用いて第2のパターンを形成するので、複雑なパターンを高い自由度の下に形成することが可能となる。
【0060】
第38の発明のパターン形成方法は、第37の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、第1のパターンを形成する際に用いるレーザ光の波長と、第2のパターンを形成する際に用いるレーザ光の波長とが互いに異なることを特徴とする。このパターン形成方法では、第1のパターンを形成する際に用いるレーザ光の波長と第2のパターンを形成する際に用いるレーザ光の波長とが互いに異なるので、複雑なパターンをさらに高い自由度の下に形成することが可能となる。
【0061】
第39の発明のパターン形成方法は、第24〜38の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、パターンを形成した後、基板に塗布された液体材料のうちで固定化されなかった液体材料を除去することを特徴とする。このパターン形成方法では、基板に塗布された液体材料のうちで固定化されなかった液体材料を除去するので、液体材料の塗布範囲と固定化される部位の形状が異なる場合でも滑らかで欠陥のないパターンを形成することができる。
【0062】
第40の発明のパターン形成方法は、第39の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、固定化されなかった液体材料を除去した後に基板全体を後処理すること特徴とする。このパターン形成方法では、基板に塗布された液体材料のうちで固定化されなかった液体材料を除去した後に基板全体を後処理するので、たとえばパターンを形成した基板の全面に保護層を付与するとか、ポストキュアによってパターンの完全固定化を促すとかといった処理が可能になり、より信頼性の高いパターンを形成することが可能となる。
【0063】
第41の発明のパターン形成方法は、第24〜40の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、基板が可とう性をもつことを特徴とする。このパターン形成方法では、基板が可とう性をもっているので、いわゆるフレキシブルデバイスのためのパターンを形成してもその表面は滑らかで欠陥のないものにすることが可能となる。
【0064】
第42の発明のパターン形成方法は、第24〜41の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、基板が曲面をもつことを特徴とする。このパターン形成方法では、基板が曲面をもっているので、たとえばデバイスの筐体の表面や内側の立体形状部分に滑らかで欠陥のないパターンを形成するといった従来にはない新しい構成を実現することが可能となる。
【0065】
第43の発明のパターン形成方法は、第24〜42の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、基板は、液体材料を吸収する多孔質材料で構成されていることを特徴とする。このパターン形成方法では、液体材料からのパターン形成が困難とされていた多孔質基板を用いても欠陥のないパターンを形成することが可能となる。
【0066】
第44の発明のパターン形成方法は、第24〜43の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、液体材料が金属イオンまたは金属コロイドを含むことを特徴とする。このパターン形成方法では、液体材料が金属イオンまたは金属コロイドを含むので、低エネルギーのレーザ光を用いて欠陥のないパターンを効率的に形成することが可能となる。
【0067】
第45の発明のパターン形成方法は、第24〜44の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、液体材料が酸化物微粒子を含むことを特徴とする。このパターン形成方法では、液体材料が酸化物微粒子を含むので、低エネルギーのレーザ光で効率的に滑らかで欠陥のないパターン形成を行うことが可能となる。
【0068】
第46の発明のパターン形成方法は、第24〜45の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、液体材料が有機材料を含むことを特徴とする。このパターン形成方法では、液体材料が有機材料を含むので、低エネルギーのレーザ光によって重合反応や分解反応などの化学反応を誘起して欠陥のないパターンを形成することができる。
【0069】
第47の発明のパターン形成方法は、第24〜46の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、液体材料が表面改質材料を含むことを特徴とする。このパターン形成方法では、液体材料が表面改質材料を含むので、基板の表面改質を施して基板へのパターンの付着強度を向上させるなどの特性改善を行うことができ、結果として滑らかで欠陥がなくかつ信頼性が高いパターンを形成することができる。
【0070】
第48の発明のパターン形成方法は、第24〜47の発明のパターン形成方法に含まれるものであり、液体材料が、熱的または光化学的に誘起されて反応する前駆体物質または反応開始剤として機能する物質を含んでいることを特徴とする。このパターン形成方法では、液体材料が上記の前駆体物質や反応開始剤として機能する物質を含んでいるので、低エネルギーのレーザ光を用いても液体材料を効率的に固定化して欠陥のないパターンを形成することができる。
【0071】
第49の発明のデバイスは、第1〜23の発明のパターン形成装置を用いて形成されたパターンを有するものである。このデバイスでは、第1〜23の発明のパターン形成装置を用いて形成されたパターンを有し、該パターンは滑らかで欠陥がないものであるので、優れた特性をもつことができる。
【0072】
第50の発明のデバイスは、第24〜48の発明のパターン形成方法により形成されたパターンを有するものである。このデバイスでは、第24〜48の発明のパターン形成方法により形成されたパターンを有し、該パターンは滑らかで欠陥がないものであるので、優れた特性をもつことができる。
【0073】
第51の発明の電子機器は、第49または第50の発明のデバイスを有する。この電子機器では、第49または第50の発明のデバイスを有するので、信頼性の高いものを得やすい。
【0074】
以下、本発明についての実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0075】
(実施の形態1)
図1〜図4は本発明の実施の形態1を説明するための図であり、図1は本発明の実施の形態1に係るパターン形成装置を概略的に示す斜視図である。図1において100は基板、110は液体材料塗布機構、111は液体材料塗布機構110に液体材料を送る搬送管、112は液体材料の貯蔵と供給を行うタンクおよびポンプを備えた液体材料供給源、113は液体材料塗布機構110における液体材料供給部、114は液体材料供給部113内の液体材料が吐出する開口部、120はレーザ処理機構、121はレーザ光、130は液体材料、131はレーザ光121の照射目標点、132はレーザ光121によって固定化された液体材料、133はレーザ光121のビームスポット、140は開口部位置計測機構、141は開口部位置計測のためのレーザ光、155はパターン形成装置である。
【0076】
また、図2(a)〜図2(c)の各々は、開口部114の代表寸法を説明するための図である。図2(a)は楕円形状をもった開口部114の代表寸法を説明する図であり、同図に示す開口部114での最小の代表寸法はa−1、最大の代表寸法はa−2である。また、図2(b)は円形の開口部114の代表寸法を説明する図であり、同図に示す開口部114での最小の代表寸法および最大の代表寸法は共にb−1である。図2(c)は正方形の開口部114の代表寸法を説明する図であり、同図に示す開口部114での最小の代表寸法はc−1、最大の代表寸法はc−2である。
【0077】
図3はパターン形成装置による液体材料の塗布終了端での処理を説明するための図であり、図3(a)は液体材料130を塗布している最中の定常状態を、図3(b)は塗布終了端において液体材料130の吐出を行ったまま、または吐出を停止して開口部114を基板100の上方へ移動させた状態を説明する図、図3(c)は塗布終了端において液体材料130の吸引処理を行った後、または吸引処理を行いながら開口部114を基板100の上方に移動させた状態を説明するための図である。図3(a)におけるGは、開口部114と基板100とのギャップを示している。
【0078】
図4(a)〜図4(d)の各々はレーザ光121(図1参照)の照射パターン、すなわちビームスポット133の移動軌跡を説明するための図である。図4(a)はレーザ処理機構120(図1参照)を直線的に移動させながらレーザ光121を連続照射をした場合、図4(b)はレーザ処理機構120を直線的に移動させながらレーザ光121を断続的に照射した場合、図4(c)および図4(d)はレーザ処理機構120を直線的に移動させながらレーザ光121を走査させた場合のビームスポット133の移動軌跡を示している。図4(c)に示す例では、レーザ処理機構120の直線的な移動方向と交差する方向dにレーザ光121を走査させており、図4(d)に示す例では、レーザ処理機構120の直線的な移動方向に沿ってレーザ光121をジグザグに走査させている。
【0079】
本実施の形態に係るパターン形成装置155(図1参照)は、図1に示した各機構などのほかに、筐体、可動ステージ、およびすべての機構類を協調動作させるための制御部(いずれも図示せず。)を備えており、制御部は、たとえばプログラム動作可能なコンピュータシステムにより構成される。
【0080】
ここで、図1に示した基板100およびパターン形成装置155の各々について、詳細を説明する。基板100は、たとえばホウ硅酸ガラスなどのガラスからなる透明な平板であり、その表面は鏡面に研磨されている。もちろん、基板100はガラス基板に限られるものではなく、セラミックス基板やプラスチック基板のようなものであってもよいし、また表面が平坦である必要もない。つまり、液体材料130を固定化するためのレーザ光121の照射によって溶けてしまったり、あるいは何らかの著しい劣化をしてしまったりするということが起きなければ、どのような基板でも使用することが可能である。また、機械的な性状の面からは、剛直であってもよいし、可とう性があってもよい。本実施の形態では、基板100の平面形状は一辺が100mmの正方形であり、その厚さは0.7mmである。この基板100は、図示しない可動ステージの上に固定されており、可動ステージを動かすことで開口部114との相対位置を変化させることができるようになっている。可動ステージは、基板100と開口部114との相対位置を変位させる移動機構として機能する。なお、可動ステージの動作は上述の制御部により制御される。
【0081】
一方、パターン形成装置155は、前述した液体材料塗布機構110、搬送管111、液体材料供給源112、レーザ処理機構120、および開口部位置計測機構140を備えている。図示しない筐体に液体材料塗布機構110が固定されているものの、上述のように基板100の位置は可動ステージを動かすことで変位するので、液体材料塗布機構110が固定されていても開口部114と基板100との相対位置を変化させることができる。この液体材料塗布機構110は搬送管111により液体材料供給源112と接続されており、液体材料130は液体材料供給源112から搬送管111を介して液体材料塗布機構110に供給された後、液体材料供給部113を通って開口部114から基板100上に塗布される。
【0082】
上記の液体材料供給源112は、たとえば、液体材料130を貯留するタンクと、タンク内の液体材料130を外部に搬送するためのスクイズポンプとを用いて構成される。これらタンクおよびポンプは一体化されていてもよい。たとえば、シリンジポンプのように液体が貯留されるタンクの容積そのものを変化させることで外部に液体を搬送するようなものであってもよいということである。また、ポンプに相当する機構をもたずに、単にタンクと液体材料塗布機構110との高さ関係を調整することで重力により液体材料を搬送するように液体材料供給源112を構成することもできる。ポンプを用いて液体材料供給源112を構成する場合、当該ポンプは、液体材料塗布機構110に向けて液体材料130を送り出すこともできるし、また逆方向に吸い戻すこともできるものであることが好ましい。液体材料の吐出/吸引は、ポンプの形式を適切に選択することによって容易に実現できる。たとえばスクイズポンプを用いれば、ポンプを正転/逆転させることで吐出/吸引の両方を行うことができる。ポンプの動作は、たとえば、図示しない前述の制御部によって制御される。
【0083】
図1に示すパターン形成装置155では、液体材料塗布機構110の開口部114が基板100の上方に配置されているが、この位置関係はこれに制限されるものではない。たとえば、基板100が上方に位置し、基板100の下方から当該基板100に開口部114から液体材料130を塗布するような形態、また基板100が垂直に保持され、基板100の側方から当該基板100に開口部114から液体材料130を塗布する形態などであってもよい。
【0084】
本実施の形態における開口部114の最小の代表寸法は500μmである。最小の代表寸法とは、開口部114を基板100の面方向に動かす際に、その軌跡が作る最小の線幅のことである。また、本実施の形態における開口部114の最大の代表寸法は2mmである。これは、最小の代表寸法と同様に開口部114を基板100の面方向に対して動かす際に、その軌跡が作る最大の線幅のことである。
【0085】
ここで、最小および最大の代表寸法について、図2(a)〜図2(c)を用いてさらに詳しく説明を行う。図2(a)は楕円形の断面形状をもつ開口部114の例であり、本実施の形態ではこの形状の開口部114を採用している。同様に、図2(b)は円形の、そして図2(c)は正方形の断面形状をもつ開口部114の例である。
【0086】
図2(a)において、最小の代表寸法はa−1で示され、最大の代表寸法はa−2で示されている。同様に、図2(b)中のb−1および図2(c)中のc−1はそれぞれ最小の代表寸法を、そして図2(b)中のb−2および図2(c)中のc−2は最大の代表寸法を示している。もちろん、開口部114の断面形状はこれらに制限されるものではなく、どのような形状をとってもよい。たとえば断面の一部が欠損している、すなわち二枚の板によるスリットのように開口部の外周が一つに繋がっていないようなものであってもよい。
【0087】
このように、実質的に液体材料130を基板100に塗布できるような形状であれば、どのようなものでも開口部114として使用することが可能である。自由度の高い開口部114の断面形状について、最小および最大の代表寸法は以下のように定義することが可能である。すなわち、開口部114の断面図形をその断面を含む平面内であらゆる方向から二本の平行線で挟むとき、これらの平行線がなす間隔のうちで最も小さな値が最小の代表寸法である。また、開口部114の断面図形を内包する最小の円を描いたとき、その直径が最大の代表寸法である。
【0088】
ここで、開口部114の最小の代表寸法はたとえば500μm以下である。これは、様々な粘度の液体材料130に対して吐出量を十分に制御することが可能な開口部114を構成するために要請される好ましい値である。この値が500μm以上であると、多くの水溶液で一般的な数cps(数mPa・s)の粘度の液体材料を用いる場合に吐出量の制御が困難になる。すなわち、図1に示すように基板100の上部から低粘度の液体材料130の塗布が行われる場合、開口部114があまりに大きいと、液体材料供給源112を停止させたとしても液体材料供給部113内の液体材料130が自重で開口部114から基板100上に落下したり、意図しない量の吐出が行われてしまったりという事態が生じる可能性があるということである。
【0089】
これは、たとえば極端な例として直径が数cmあるような開口部を想定してみるとよい。このような開口部では、たとえ液体材料供給源112を停止していても表面張力のみで液体材料130を液体材料供給部113内にとどめることはできないであろう。数cmは極端であるにしても、開口部114の最小の代表寸法が大きくなるに従い、特に低粘度の液体材料130を扱う際の制御性が次第に悪化することは自然なことである。本発明は、鋭意検討を重ねた結果、開口部114の最小の代表寸法が500μm以下であればおおむね良好な液体材料制御性を保つことができることを見出したものである。
【0090】
開口部114の最大の代表寸法については、特別な制限は不要である。なぜなら、最大の代表寸法がいくら大きくても、最小の代表寸法はたとえば500μm以下であるから、その形状はスリット状か、スリットを折り曲げたような形状となるからである。開口部114の形状をスリット状にすることで、低粘度の液体材料130に対しても十分な表面張力による自己保持を期待することができ、結果的に制御性を維持することが可能である。
【0091】
再び図1を用いて、実施の形態1のパターン形成装置155の構成の詳細説明を続ける。
【0092】
120はレーザ処理機構であって、図示しないレーザ光源と、プリズム、レンズ、ミラー、光ファイバなどからなる導光部と、基板100上の照射目標点131にビームスポット133を形成するためのレンズなどの光学素子から構成される照射部とを有する。
【0093】
本実施の形態におけるレーザ光源には発光のピーク波長が670nmの半導体レーザを用いているが、一般的なレーザ光源であれば様々なものが使用可能である。後述するように、液体材料130にはレーザ処理を行うのに好適な波長領域をもっているものがある。そのような液体材料130を用いる場合には、発振波長が上記好適な波長領域にあるレーザ光121を発振するレーザ光源を選択することによって、処理の効率を上げたり、また場合によっては液体材料130に含まれる成分のうちの特定の物質のみを処理したりするといったことが可能になる。また、前述した好適な波長領域が特に存在しないような液体材料130を用いるときであっても、レーザ光121の性質として、一般に波長が短い方が小さな面積に集光をすることができ、結果的にビームスポット133をより小さなものにすることができるので、発振波長が短いレーザ光源を用いることによって微細なパターンの描画が可能になることは言うまでもない。
【0094】
レーザ光121の出力強度も、波長と同様、用いる液体材料130の特性に合わせて適宜選択されるべきものである。本実施の形態では光出力800mWのレーザ光源を使用している。ここで、光源についてさらに言えば、実質的に固定化のための処理が行われるような波長と光強度を有する光を出射するものであれば、光源はレーザ光源に制限されるものでもない。たとえば高輝度発光ダイオードは、レーザ光源の代替光源として使用できる可能性をもっている。また、レーザ光源では装置規模が大きくなりすぎる極短波長域の光については、重水素ランプなども代替光源として使用できる可能性をもっている。
【0095】
本実施の形態で使用した半導体レーザは、レーザ光源であるものの発光点からの光束の広がりが大きいため、図示しない導光部はプリズムとレンズとを複数用いたコリメート光学系を構成して光束を平行光としている。さらには、ビーム断面での光強度分布(ビームプロファイル)が同心円状の光、すなわちガウシアンビームになっている。また、本実施の形態の照射部は凸レンズからなり、導光部を伝搬したレーザ光を照射目標点131に集光させている。
【0096】
照射目標点131は、前述したガウシアンビームに整形されたレーザ光121の照射中心点を示す位置である。レーザ光121の照射範囲内でのエネルギー分布は、照射目標点131を中心とした同心円状になっている。
【0097】
なお、前述したビームスポット133は、液体材料130に対して実質的に固定化が行われる範囲をあらわしている。上述したようにレーザ光121はガウシアンビームであるので、ビーム断面での光強度は中心点から離れるに従って低下してゆく。従って、中心点からある程度以上離れると、液体材料130を固定化させることができる限界値未満のエネルギー領域が生じる。レーザ光121が照射される範囲と液体材料130の固定化が行われる範囲とは異なる。このため本発明では、実質的にレーザ処理が行われる範囲、すなわち液体材料の固定化が実質的に行われる範囲をビームスポット133としている。レーザ処理機構120もまた他の機構と同じように、図示しない制御部によって動作を制御されている。
【0098】
次に、140は開口部位置計測機構である。開口部位置計測機構140は、基板100と開口部114とのギャップを測定するもので、本実施の形態においては図示しないレーザ光源と光学系、受光素子などからなり、レーザ干渉法によって基板100と開口部114とのギャップG(図3(a)参照)を測定する。141は開口部位置計測のためのレーザ光である。もちろん、開口部位置計測機構140の本質は上記のギャップGの測定であるので、測定の方法はレーザ光を用いた手法に制限されるものではない。たとえば、超音波を用いた計測、または機械的に検出アームを基板100に接触させる、開口部114の近傍の画像を取り込み解析を行うなどの方法を用いることもできる。
【0099】
開口部位置計測機構140によるギャップGの測定は、パターン形成装置155が動作している期間を通じて常に行われ、その結果は図示しない制御部に送られている。制御部は、これらの測定データと予め設定されたプログラムとを参照しながら、図示しない可動ステージを上下させるなどの制御を行って、ギャップGを所定の値に保つ。可動ステージは、ギャップGの値を制御する開口部位置制御機構として機能する。
【0100】
ここで、開口部位置計測機構140は、必要に応じて測定位置を移動することが可能に構成される。また、一つのパターン形成装置155に開口部位置計測機構140を複数個搭載させることで、複雑な基板形状に対応することも可能である。
【0101】
ここで、ギャップGを計測する必要性について図3(a)〜図3(c)を用いて説明する。
【0102】
まず、基板100が実質的に平面である場合、この基板100に液体材料130を均一に塗布するためには、ギャップGが一定に保たれることが重要である。ギャップGが拡大されると、液体材料130は表面張力によって開口部114に引っ張り上げられる形となり、基板100との接触面積が減少する。極端な場合には、液体材料130が基板100から離れてしまい塗布状態が不連続になってしまうことがある。逆にギャップGが狭められると、今度は液体材料130が基板100に押し付けられる形となり、基板100との接触面積が増大側に変化する。極端な場合には、開口部114が基板100と接触して液体材料130の吐出がもはや不可能になったり、基板100に傷を入れてしまったりする可能性もある。このようなことから、図3(a)で示される液体材料130の塗布の定常状態では、基板100と開口部114とのギャップGは一定に保たれることが望ましく、そのためにギャップGを計測する必要がある。
【0103】
基板100が凹凸面をもつ場合も、液体材料130の均一な塗布を行うためには前述した理由によりギャップGを一定に保つことが重要であり、そのためにギャップGを計測して、開口部114が基板100の凹凸に追従するように可動ステージをコントロールする必要がある。
【0104】
これらは基板100に定常的に液体材料130を塗布する場合の説明であるが、反対に意図的にギャップGを変化させるような場合、たとえば図3(c)に示された終端処理を行う場合や、周期的にギャップGを変化させることによってたとえば周期的な膜厚変化のパターンをもった塗布を行うような場合もありうる。
【0105】
本実施の形態のパターン形成装置155では、基板100と開口部114との相対位置を変化させるために図示しない可動ステージを用いて基板を動かす構成としたが、相対位置を変位させるための移動手段はこれに限定されるものではない。たとえば、基板100が固定され、その代わりに液体材料塗布機構110、レーザ処理機構120などが可動の機構に固定されていてもよい。上記可動の機構は、たとえば3軸のアクチュエータや、複数の関節をもったロボットアームなどを含むことができる。
【0106】
以上が本実施の形態におけるパターン形成装置155の構成の詳細である。引き続き、このパターン形成装置155を動作させてパターン形成を行う過程を詳細に説明するが、説明に先立ち、本発明で言うところの液体材料や固定化などの意味するところについて説明を行う。
【0107】
本発明で言うところの液体材料とは、実質的に流動性をもち、開口部から基板に塗布可能な粘度範囲の流体であって、その材料構成に制限はない。しかしながら、実施の形態においては、形成されるパターンは何らかの電子機能をもっていることが想定されており、従って、本発明で言うところの液体材料は、少なくとも固定化された後に電気的に導体であるか、半導体であるか、絶縁体であるかのいずれかである。
【0108】
実施の形態1においては、液体材料として銀(Ag)の微粒子を有機溶媒に分散させた分散溶液を用いている。これは、たとえばハリマ化成株式会社より上市されている製品型番NPS−Jなどとして入手可能なものである。同様の液体材料として、金属コロイド分散液や金属イオンを含む溶液なども使用可能である。そのほか、酸化物や窒化物などのセラミックスを含む液体材料や、様々に提案がなされている有機電子機能性材料またはその前駆体などを含む液体材料を用いても本発明を実施することが可能である。
【0109】
次に、本発明で言うところの固定化について説明を行う。本発明で言うところの固定化とは、液体材料130が基板100に塗布された状態でレーザ処理機構120によってレーザ光121が照射された際に、液体材料130そのものあるいは液体材料130に含まれる少なくとも一つの成分に生じる物理的、化学的変化により、もはや元の液体材料130ではなくなること、あるいは元の液体材料130を構成していた溶媒に対して再溶解しないような状態に変化することを言う。つまり、これは溶液に対する単純な乾燥とは区別されるべき概念である。レーザ光121の照射、あるいは何らかの加熱手段によって溶液からなる液体材料130を加熱し、溶媒を蒸発除去することによって溶質の固定化を行うと、固定化された溶質は少なくとも溶液を構成していた溶媒に対しては再溶解するが、これとは区別されるべき概念であるということである。
【0110】
なお、上述の物理的変化の例として溶着、融着、浸透、焼結などを、また化学的変化の例としては架橋、重合、分解、酸化、還元などを挙げることができる。
【0111】
実施の形態1においては、銀の超微粒子を含んだ液体材料130がレーザ光121の照射によって瞬間的に加熱され、溶媒が蒸発すると共に銀の超微粒子が相互に溶着して不動態化しており、物理的変化による固定化が行われている。
【0112】
もちろん、溶着による固定化ではなく、たとえば銀の超微粒子を含む液体材料130にスチレンモノマーと反応開始剤としての過酸化物系重合開始剤、架橋剤などを適切な割合で混合する、またはエポキシモノマーと酸系の重合開始剤を適切な割合で混合するなどし、これにレーザ光121を照射して固定化するなどといった方法もある。この場合、レーザ光121の照射により液体材料130が加熱されて当該液体材料130に配合された重合開始剤が分解され、これにより発生したラジカルによって重合反応が開始されてモノマーがポリマー化することで液体材料130が固定化するという過程をたどる。このときのレーザ光121の照射は、液体材料130を加熱して重合開始剤を分解し、重合反応を開始させるためのものであるので、溶着による固定化のときのような大きなレーザ出力を必要としないという利点がある。
【0113】
また、詳細には説明しないが、特定の波長の光に感応して化学反応が開始されるような反応系はいくつも知られており、これらを応用することで特定の波長のレーザ光121を照射したときにのみ固定化が行われるといった選択的な方法を実現することも容易である。さらには、特定波長の光に感応する複数の反応系を同時に用いることで、より複雑かつ自由度の高い固定化プロセスを実現することも可能である。銀の超微粒子を含む液体材料に樹脂系材料を混合するような例では、本発明で言うところの固定化が完了しても、銀の超微粒子は溶着していないので、銀の超微粒子を導電体のパターンとして利用するには別のプロセスで溶着処理を行う必要がある。
【0114】
モノマー材料がレーザ光121の照射によって重合し、高分子化したものそのものが機能性のパターンとして利用される場合もある。これは一般的に知られているプラスチックの絶縁性を利用した絶縁膜を形成する場合や、電子機能性をもった高分子材料のパターンを形成するような場合である。一例を挙げると、発光性の高分子材料としてよく知られているPPV(ポリフェニレンビニレン)がある。PPVそのものは高分子状態では不動態であり溶媒に容易には溶解しない。しかし、フェニレンビニレンのモノマーに特定の官能基を付与したものが研究報告として数多く提案されており、その一部は市販品として入手も可能である。これらは単体では液状の物質であり、本実施の形態のパターン形成装置155で基板100への塗布を行うことができる。これらのモノマーはレーザ光121の照射による加熱で分解、重合し、PPVを形成する。前述したようにPPVは不動態であるので、一連の過程は本発明で言うところの固定化に含まれる。PPVを利用することにより発光素子やトランジスタを構成することができる。
【0115】
このように、本発明で言うところの固定化は、使用される液体材料130の構成を適切に選択することにより、たとえば銀の超微粒子を含む液体材料130を用いたときのように溶着という物理的変化を誘起することによって行うこともできるし、銀の超微粒子を含む液体材料130にスチレンモノマーと過酸化物系重合開始剤、架橋剤などを適切な割合で混合したときや、PPVのモノマーを用いたときのように、化学反応(化学的変化)を誘起することによって行うこともできる。
【0116】
次に、本発明では基板に塗布された液体材料をレーザ光によって逐次処理して固定化するが、この処理について説明を行う。
【0117】
本発明で言うところのレーザ光による処理とは、想定される液体材料のうち、特に溶媒のように最終的にパターンを構成しない成分を含む液体材料について、溶媒がすべて蒸発して乾燥が完了してしまう前にレーザ光を照射して固定化を行うということを意味している。それ以外の液体材料、たとえば前述したPPVモノマーのように最終パターンを構成する材料そのものが溶媒を含まない液体であるような場合は、液体材料の塗布後ある程度時間が経過してもなお当該液体材料は流動性を保っているが、これらについても、塗布後になんら他のプロセスを行うことなくレーザ光を照射して固定化を行うことを意味する。さらには、基板と液体材料との親和性の違いによって液体材料がはじかれて広がり、塗布直後の状態から意図しない移動をする場合にも、液体材料が移動を行う前にレーザ光を照射して固定化を完了させることを本発明ではレーザ光による処理と呼ぶ。
【0118】
それでは、本発明の実施の形態1のパターン形成装置155の動作の詳細を説明する。まず、基板100の洗浄を行ってから、当該基板100を図示しない可動ステージに固定する。本実施の形態での基板100はホウ硅酸ガラス基板であるので、洗浄は薄膜プロセスで一般的に行われる油脂分の除去、粒子状付着物の除去であり、界面活性剤、アルカリ洗浄剤などと超音波洗浄装置とを併用するなどして行う。また、プラズマ処理装置で表面清浄化をすることも好ましい。もちろん、洗浄方法は使用する基板100の材質などに応じて適切な方法が選択されるべきものであることは言うまでもない。
【0119】
さらには、基板100の洗浄後に基板100全体を一括して前処理工程に供することもありうる。これは、たとえば平滑化や、付着力などの特性を改善するための下地剤の塗布、あるいは表面を荒らして意図的に表面粗度を上げるなどの工程である。
【0120】
可動ステージに基板100がセットされると、基板100に開口部114が近づけられる。このとき、開口部位置計測機構140は開口部114と基板100のギャップG(図3(a)参照)を連続して測定し、当該ギャップGが適当であることを知るためのデータを提供する。可動ステージを動かす作業は手動でもかまわないが、本実施の形態では図示しない制御部が可動ステージの動作制御を行っている。以下、特に断らないが、制御部は予め設定された動作プログラムに従って本実施の形態のパターン形成装置155での各機構の動作を円滑に制御する。
【0121】
ギャップGの最適値は、基板100の材質および表面状態と液体材料130の種類、さらには塗布直後の液体材料130の膜厚、塗布速度、環境温度、基板温度等々、非常に多くの要因によって変化する。一例を挙げると、ギャップGの値は0.2ミリであって、本実施の形態ではその値を用いている。
【0122】
ギャップGが最適値になった後、液体材料供給源112が動作して液体材料130を液体材料塗布機構110に送り、該液体材料塗布機構110に送られた液体材料130が開口部114から基板100上に吐出される。それと同時に、可動ステージが予めプログラムされた情報に従って基板100と開口部114との相対位置を変化させ、基板100への液体材料130の塗布が開始される。
【0123】
塗布された液体材料130に対してレーザ処理機構120がレーザ光121を照射し、該レーザ光121によって液体材料130が逐次処理され、固定化される。
【0124】
前述したように、本実施の形態における開口部114は楕円形をしており、その最小の代表寸法は500μm、最大の代表寸法は2mmである。ここでは、開口部114の描く軌跡である塗布面が幅2mmの帯状になるようにパターン形成装置155を制御したとき、すなわち最大の代表寸法で塗布を行ったときのパターン形成について説明する。また、説明を簡潔なものにするために、基板100上に直線状に液体材料130を塗布するものとして説明を加える。言うまでもないが、可動ステージの動作を適宜制御することにより、屈曲した線をもつ複雑なパターンの形成や全面塗布を行うことも可能である。
【0125】
基板100上に液体材料130が塗布されると、レーザ処理機構120は液体材料130上の照射目標点131に向けてレーザ光121を照射する。本実施の形態においては照射目標点131と開口部114の相対位置は固定されている。レーザ光121の照射により、ビームスポット133内の液体材料130が加熱されて溶媒が揮散すると共に分散されている銀の超微粒子が相互に溶着し不動態化し、本発明で言うところの固定化が進行してゆく。
【0126】
このときのビームスポット133の広さや形状は、レーザ光121の強度やエネルギー分布(光強度分布;ビームプロファイル)、レーザ光121の集光の度合い、液体材料130の種類、液体材料130の塗膜の厚さ、液体材料130の塗布速度、基板100の材質等々、多くの要因によって変化するものであり、パターン形成の都度、最適値が設定されるべきものである。本実施の形態においてビームスポット133は照射目標点131を中心とした円形であり、その直径は0.1mmである。従って、固定化が行われる範囲は塗布が行われる範囲より狭いものになる。これは図1に説明されている状態に近い。
【0127】
可動ステージの動作により基板100と開口部114との相対位置が直線的に変化している間、開口部位置計測機構140は連続的に開口部114と基板100とギャップG(図3(a)参照)を計測する。この計測結果を基に可動ステージの動作が制御されて、ギャップGが一定に保たれた状態で塗布が進行してゆくため、たとえば基板100に予期せぬ反りが生じていたとしても、それをなぞるように可動ステージが動き、塗布される液体材料130の膜厚は連続的かつ安定したものとなる。そして、逐次行われる固定化によって形成されるパターンも滑らかで欠陥のないものとなる。
【0128】
さて、このようにして連続的に滑らかで欠陥のない直線状のパターンを形成し、基板100と開口部114との位置関係が予めプログラムされた塗布終端点に到達したときの動作について、図3(a)〜図3(c)を用いて説明する。
【0129】
本実施の形態の例では、単純な直線パターンを形成するのみであるので、塗布終端点では塗布を終了した開口部114が基板100から離れ、パターン形成を終了する。
【0130】
図3(a)は、前述したように塗布途中の状態であって、安定した塗布と固定化が行われているところである。図3(a)に示す状態では、液体材料供給源112から一定量の液体材料130が搬送管111を介して液体材料塗布機構110(図1参照)に送られ、該液体材料塗布機構110に送られた液体材料130は液体材料供給部113を介して開口部114から基板100上に連続的に吐出される。塗布の終端点においてこの吐出動作を継続したまま開口部114が基板100から離れるように可動ステージを動かすと、図3(b)に示すように終端点に過剰の液体材料130が吐出されて、終端点近傍での液体材料130の塗膜の厚さが厚くなる。このとき、液体材料供給源112が停止した後に開口部114が基板100から離れるように可動ステージを動かすこともできるが、この場合も液体材料130の種類によっては表面張力によって過剰な液体材料130が開口部114から引き出される場合があり、結果的に終端点近傍での液体材料130の塗膜の厚さが厚くなることがある。
【0131】
このような終端点近傍の膜厚不均一を避けるためには、液体材料供給源112を吸引側に動かし、液体材料130を開口部114から引き出そうとする力(表面張力)を相殺するとよい。もちろん、このときの吸引力およびタイミングについては、液体材料130および基板100それぞれの種類を始めとして多くの要因が関係してくるので、その都度、最適値を設定する必要があるのは言うまでもない。液体材料130の塗布終端点において適切な吸引動作を行うことにより、図3(c)に示すように、塗布終端点での液体材料130の塗膜の厚さを他と同程度にすることができ、結果として、液体材料130を固定化することで得られるパターンも滑らかで均一なものとなる。
【0132】
さて、ここまでのパターン形成の詳細説明では、固定化のためのレーザ処理において照射されるレーザ光が時間的に連続である連続光の場合を例としたが、断続光を用いてもパターン形成を行うことができる。
【0133】
断続光を用いてパターン形成を行う例を図4(a)〜図4(d)を用いて詳細に説明する。図4(a)は照射されるレーザ光が連続光の場合であって、かつそのビームスポット133が液体材料130の塗布幅よりも狭いときに形成されるパターン132aを示している。
【0134】
このとき照射するレーザ光を断続光にすると、図4(b)のように、液体材料130の塗布は連続的に行われていながら不連続のパターン132を形成することが可能となる。断続光のレーザ光の照射は、単にレーザ光源をオンオフしたり、また光路の途中にシャッターを付加しそれを開閉制御したりすることなどによって簡易に実現できる。
【0135】
また、レーザ光を断続的に照射する別の例として、基板100に塗布された液体材料130上でレーザ光を走査させる場合がある。レーザ光を走査させることで、断続光を用いた連続的なパターンの形成や、液体材料130の塗布範囲での複雑なパターンの描画が可能となる。これを説明するのが図4(c)および図4(d)である。図4(c)においてレーザ光は、矢印dで示されている方向に短く、しかし一定の周期的な断続光として走査されながら液体材料130に照射される。このとき、個々の断続光の照射パターンが互いに重なり合っていることから、最終的に形成されるパターン132は図4(c)に実線で示すように連続的なものとなる。さらには、図4(d)に示すような複雑なパターン132を形成することも可能であって、この場合は、図4(d)に示されるような走査を行いながら、レーザ光源を周期的ではなく、結果的にある一定のパターンを描くように意図的にオンオフすればよい。
【0136】
レーザ光を走査させるためには、レーザ処理機構120の照射部内に、回転する反射鏡(ポリゴンミラーなど)と、基板100上の照射目標点131(図1参照)にビームスポット133を形成するためのシータレンズ(fθレンズ)と呼ばれるレンズとを設ければよい。これらいわゆる走査光学系についてはその詳細説明を割愛するが、これらの技術はたとえばレーザプリンターなどの民生品においても利用されているほど一般的なものであり、容易に導入することが可能である。
【0137】
また、断続光を用いるもう一つの例としての、いわゆるピコセカンドレーザやフェムトセカンドレーザと呼ばれる極端に短いパルス光を発振するレーザ光源を用いた固定化も本発明の一部である。このような極短パルス光は非常に短い周期で発振されるため、開口部114と基板100との相対位置が変化するといった相対的に緩慢な動作と比較すると、事実上連続光を照射しているのと同じように扱うことが可能である。
【0138】
それでは、これら極短パルス光と連続光の違いは何かというと、エネルギー密度の違いである。本発明において、極短パルス光を用いてパターン形成を行う際には、エネルギー密度が非常に高いレーザ光を短時間照射することで液体材料130の固定化を行うことになるのに対して、連続光を用いてパターン形成を行う際には、相対的にエネルギー密度が低いレーザ光を用いて液体材料130の固定化を行うことになるという違いがある。
【0139】
エネルギー密度の低いレーザ光で液体材料130の固定化を行うと、エネルギー密度の高いレーザ光で液体材料130の固定化を行う場合に比べて固定化を完了させるために必要となる時間が長くなるため、液体材料130を介して散逸するエネルギーによって基板100が加熱されるという望ましくない無駄が生じることがある。たとえば熱に弱い基板100を用いた場合には、加熱により基板100がダメージを受けることもありうる。これに対して、エネルギー密度が非常に高い極短パルス光で液体材料130の固定化を行うと、照射されるレーザ光によって一瞬のうちに液体材料130の固定化が完了する。このとき、ほとんどの照射エネルギーが液体材料130の固定化に消費されて基板100側に散逸する熱が事実上なくなるような条件を選ぶことが可能であり、その場合はたとえ基板100が熱に弱い材料で構成されていても、問題なくパターン形成が可能になるという利点がある。これが極短パルス光を利用する際の優位性である。
【0140】
このように、レーザ光121として連続光を用いたときはもとより、断続光を用いて不連続なパターンを構成する場合であっても、また、レーザ光121を走査させて複雑なパターン形成を行う場合であっても、さらには、極短光パルスを用いるような場合であっても、ビームスポット133内にある液体材料130が固定化されるという過程に関しては本質的な違いはなく、個々のパターンは滑らかで欠陥のないものになる。
【0141】
また、パターン形成装置が一つの液体材料塗布機構に対して複数のレーザ処理機構を備えることも好ましい。本実施の形態における液体材料130の塗布幅は2mmであり、ビームスポット133の直径は0.1mmであるので、同一構成の複数のレーザ処理機構120、たとえば二つのレーザ処理機構120を同時に用いることで液体材料130の塗布幅2mmに対して0.1mm幅の二つの固定化パターンを同時に形成することが可能となる。これは、レーザ光121の照射方向が固定化されている単純な構成のレーザ処理機構120によっても、レーザ光を走査することなく2本の平行なパターンを同時に形成できることを意味する。
【0142】
もちろん、各レーザ処理機構120でのレーザ光121のビームスポット133の形状を互いに異ならせたり、個々のレーザ処理機構120での照射部を走査光学系にしたりすることで、より複雑なパターンを形成してもよいことは言うまでもないし、それぞれのレーザ処理機構120でのレーザ光源の発振波長を互いに異ならせたり、各レーザ光源の出力を異ならせたりしてもよい。
【0143】
さらには、たとえば発振波長が互いに異なる二つのレーザ光源をもった二つのレーザ処理機構120が、これらのレーザ光源からのレーザ光によって逐次レーザ処理を行うことで、一つのパターンを形成することも好ましい。これはたとえば、第1の発振波長のレーザ光源を備えたレーザ処理機構120が液体材料130の成分の一部を固定化し、第1のレーザ処理機構120が固定化を行った部分を少なくとも含むようにしながら、第2の発振波長のレーザ光源を備えたレーザ処理機構120が引き続き液体材料130の別の一部を固定化するような場合である。いずれの場合においても、形成されるパターンは滑らかで欠陥のないものになる。
【0144】
また、本実施の形態においてはレーザ光121がガウシアンビームである場合を例として説明したが、レーザ光121は、図12(a)および図12(b)を用いて以下に説明するようなエネルギー分布(ビームプロファイル)をもつものであってもよい。
【0145】
図12(a)はガウシアン形状のエネルギー分布をもつレーザ光の例、図12(b)は整形されたエネルギー分布を有するレーザ光の例である。これらの図において、グラフの横軸は基板100上の位置、縦軸はレーザ光のエネルギーの相対値、170は照射目標点131(図1参照)の位置をあらわす線である。また、171はガウシアン形状のレーザ光でのエネルギー分布を表す線(図12(a)参照)、172はエネルギー分布が整形されたレーザ光でのエネルギー分布を示す線(図12(b)参照)、173は液体材料130(図1参照)を十分に固定化することができるエネルギーレベルをあらわす線、174は液体材料130の固定化が行われる下限のエネルギーレベルを表す線、175は形成されるパターンの端部を表す線、176は形成されるパターンのうちの平坦な領域の端部を表す線、177,178の各々は形成されたパターンの断面、そして180はレーザ光のビームプロファイルを整形するために付加された光学フィルタの光吸収特性をあらわす線である。
【0146】
さて、レーザ光による液体材料の固定化は、照射されるレーザ光のエネルギーにより生じ、実質的に固定化が行われる範囲を本発明ではビームスポットとすることはすでに説明したとおりである。本実施の形態のようにガウシアン形状のエネルギー分布をもつレーザ光を用いてパターン形成を行う場合、図12(a)に示すように、形成されるパターンの断面177の形状は矩形から崩れて台形状になる。これは、液体材料の固定化がなされる際に、ある閾値エネルギーから急に固定化が起こるわけではなく、固定化に必要となるエネルギーの下限値を超えた部位から徐々に固定化が始まるからである。固定化に必要なエネルギーの下限を超えてはいるが、十分ではない領域にある液体材料、すなわち図12(a)に示すパターンの端部175と平坦な領域の端部176との間にある領域では、塗布された液体材料がその膜厚方向全体に亘って固定化されるわけではないため、なだらかな膜厚変化を示す。それに対して、平坦な領域の端部176よりも中央寄り、すなわち照射目標点131の位置を示す線170側の領域は、十分に固定化が行われるだけのエネルギーをもったレーザ光が照射されるために、塗布された液体材料がその膜厚方向全体に亘って固定化され、結果として、塗布された液体材料の膜厚に応じた一定の膜厚を示すことになる。
【0147】
図12(a)に示されたようなパターンの崩れを避けるためには、レーザ光でのエネルギー分布(ビームプロファイル)を図12(b)中の線172で示されるようなのエネルギー分布に整形すればよい。そのためには図12(b)中に線180で示すような光吸収特性をもった光学フィルタをレーザ光の光路のどこかに挿入し、中途半端なエネルギー領域の光束を遮断し、さらにビームスポット内のエネルギー分布を均一化するのが適当である。ここで、線180で示すような光吸収特性をもった光学フィルタでは、グラフの上方ほど光吸収率が高い。この光学フィルタは、液体材料の固定化が十分に行えるエネルギーをもった領域の光束を通過させる単純な穴あき板のようなもので代用することも可能である。しかし、この場合、照射目標点131の近傍、すなわちエネルギーのピーク値近傍のエネルギー密度が過大にならないように注意する必要がある。必要以上に過大なエネルギー密度をもったレーザ光の照射は、基板へのダメージや、極端な場合には塗布された液体材料の蒸発、いわゆるアブレーションを引き起こす場合がある。
【0148】
上述のような光吸収特性をもった光学フィルタを用いることによって、レーザ光でのエネルギー分布(ビームプロファイル)は図12(b)中に線172で示すような矩形となる。すなわち、液体材料に照射されるレーザ光は、エネルギー分布が均一で、液体材料を固定化するのに必要かつ十分なエネルギーをもったものになる。その結果として、形成されるパターンは、図12(b)中に示す断面178のように整った矩形になる。このような断面は、隣り合ったパターンの間隔が非常に狭い微細なパターン形成を行うときにきわめて有効である。また、形成されるパターンは滑らかで欠陥のないものになる。
【0149】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2について図1、図2および図5を用いて詳細な説明を行う。実施の形態2におけるパターン形成装置の構成は実施の形態1における構成と同様であるので全体の詳細説明は割愛し、実施の形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0150】
実施の形態2のパターン形成装置が実施の形態1と異なる部分は、開口部114の代表寸法とビームスポット133の大きさとの関係である。
【0151】
実施の形態1においては、基板100上に塗布される液体材料130の幅がビームスポット133よりも大きい場合を例に挙げて説明を行った。実施の形態2においては、開口部114の形状は図2(b)に示されているような円形であり、その代表寸法は0.2mmである。もちろん、開口部114の形状が円形であるということは、最大および最小の代表寸法は同一であって、実施の形態2の場合はいずれも0.2mmであるということになる。
【0152】
そして、実施の形態2におけるビームスポット133の形状は実施の形態1と同じく円形であって、その直径は0.7mmである。つまり、照射されるレーザ光121のうちで実質的に液体材料130を固定化させることができるエネルギー範囲を示すビームスポット133は、実施の形態2においては液体材料130の塗布範囲よりも十分に大きいことになる。
【0153】
本実施の形態においては、円形である開口部114から塗布される液体材料130の帯の中心とビームスポット133の中心点である照射目標点131(図1参照)が一致するように、図示しない可動ステージが制御される。従って、ビームスポット133は塗布される液体材料130の塗布範囲を常に完全に内包していることになる。
【0154】
以上説明したような関係を図示すると、図5のようになる。すなわち開口部114から塗布される液体材料130はその塗布幅がビームスポット133に完全に内包されているため、塗布された全量が逐次処理され、固定化された液体材料132となる。このとき、固定化された液体材料132の幅と液体材料130の塗布幅と開口部114の代表寸法とは一致する。すなわち本実施の形態では0.2mm幅の固定化された液体材料132が得られる。このような構成をとることによって、滑らかで欠陥なくパターン形成を行うことができる基板100と液体材料130との組み合わせの選択範囲が大きく広がるという優れた利便性を得ることができる。
【0155】
一般に、基板100および液体材料130の組み合わせは、形成されるパターンがどのような用途に用いられるかによって互いの親和性は様々であって、場合によっては撥水性の表面をもったプラスチックフィルム上に水系の材料を用いたパターンを形成する必要があったり、また油性の材料によるパターン形成が必要であったりする。
【0156】
ここで、実施の形態2における基板100は可とう性のフッ素系プラスチックフィルムであって、これを支持基板に密着させたものを図示しない可動ステージ上に固定している。また、本実施の形態における液体材料130は金(Au)コロイド分散液であって、分散媒は水である。また、金コロイド分散液の固定化は、分散された金の微粒子が溶着によって互いに接合し、不動態化する物理的変化を伴うものである。
【0157】
さて、通常フッ素系プラスチックフィルムの表面は撥水性であって、その上に水系の液体を均一に塗布することは困難である。よって、実施の形態2のような基板と液体材料との組み合わせの場合、スピンコート法などを用いて基板の全面に塗布を行ってその後にレーザ処理を行おうとしても、フッ素系プラスチックフィルムが水系の液体材料をはじいてしまい、塗布そのものがうまくゆかないものである。水系の材料は表面張力のためにフッ素系プラスチックフィルム上で盛り上がるように集まってしまい、均一に塗り広げられた状態を維持することができない。しかし、本発明によるパターン形成装置を用いれば、このような一般的な方法では塗布が困難で、その結果パターン形成が困難であるような基板100と液体材料130との組み合わせであったとしても、自由度高くパターン形成が可能である。
【0158】
本実施の形態における液体材料(金コロイド分散液)130を基板(フッ素系プラスチックフィルム)100に塗布するまでの手順は実施の形態1と同じであるので詳細は割愛し、塗布開始付近からの詳細説明を行う。
【0159】
塗布の直前、すなわち金コロイド分散液が開口部114と基板100との間に保持されている間は液体材料供給源112の作用によって吐出側の圧力が働いているため、金コロイド分散液は基板100に押し付けられ、開口部114の断面形状と同じ面積まで広がっている。そして、塗布が開始され金コロイド溶液が基板100上に塗布されると、その直後から金コロイド分散液は表面張力によって球状になり、基板100との接触面積を最小にしようとする方向に移動を開始する。しかし、本発明におけるパターン形成装置では、金コロイド分散液を塗布した後にレーザ光121の照射を逐次行ってゆき、かつそのビームスポット133は塗布された金コロイド分散液の幅を完全に内包しているため、金コロイド分散液は実質的に移動のための時間を得ることができず、結果的に塗布直後の塗布幅、すなわち開口部114の代表寸法である0.2mmを保ったまま固定化される。
【0160】
金コロイド分散液が移動のための時間を実質的に得ることができないというのは定性的な表現であって、これを実現するための条件は適宜検討されるべきものであることは言うまでもないが、本発明におけるパターン形成装置では、照射目標点131と開口部114との相対的な位置関係に対する制限は本質的にないと言ってよく、望まれればその間隔をゼロとすることも容易である。いずれにしろ、これらの条件は実施の形態1で説明したその他の要因も含めて適宜最適化されるべきものである。
【0161】
ここまでは、基板100と液体材料130との親和性が低いために互いに濡れず、はじき合う場合を例としたが、まったく逆の場合においても本発明がなお有効であることを次に説明する。
【0162】
たとえば、前述の組み合わせのフッ素系プラスチックフィルム基板に代えて、酸化チタンで表面処理されたガラス基板を用いる場合を例として取り上げる。
【0163】
詳細は割愛するが、酸化チタンはその製膜法によって非常に親水性の高い、いわゆる超親水面を形成することが知られている。このような表面に水系の液体を滴下すると、その接触角は事実上0度となる。つまり、滴下された水系の液体は基板表面をどこまでも濡れ広がってゆく。
【0164】
このような基板100と液体材料(金コロイド分散液)130との組み合わせを用いる場合は、もちろんスピンコートなどの従来法を用いても製膜は容易であるが、本発明のパターン形成装置でもパターン形成可能である。この場合、液体材料130は塗布直後から前の場合とは逆に濡れ広がろうとする方向に力が働く。しかし、今回もやはり液体材料130は移動のための時間を実質的に与えられるまもなく固定化されるため、結果的に開口部114の代表寸法と同じ0.2mm幅のパターンを形成することになる。
【0165】
さらに別の場合、たとえば基板100が多孔質の材料から構成されているような場合であっても、本発明は有効である。すなわち、基板100が多孔質である場合、その表面に液体材料130を塗布すると、ここまでに説明したように、液体材料130と基板100との組み合わせに応じて液体材料130がはじかれてしまう場合と濡れ広がる場合とがある。ここで、特に濡れ広がるような液体材料130と基板100との組み合わせの場合、液体材料130は多孔質基板の内部にしみこむように広がってしまうため、一般的な方法でパターンを形成することは困難である。しかし本実施の形態のパターン形成装置を用いれば、塗布された液体材料130は、多孔質基板の内部に濡れ広がる前、すなわちしみ込んでゆく前にレーザ光121により逐次処理され、固定化されるため、問題なくパターンを形成することが可能である。
【0166】
以上述べてきたように、本発明の実施の形態2においては、ビームスポット133が開口部114から塗布される液体材料130の塗布幅を完全に内包しているために、様々な性状の基板100と液体材料130との組み合わせにおいて、開口部114の代表寸法に規定される幅をもったパターンの形成が可能である。本実施の形態では、開口部114の代表寸法、すなわち液体材料130の実質的な塗布幅を0.2mmとしたが、これは形成されるパターンの形状によって適宜変更されるべきものである。このとき必要となるのは開口部114の代表寸法およびビームスポット133それぞれのサイズ変更だけであり、その実施はきわめて容易である。もちろん、産業への応用を考えた場合、開口部114の代表寸法の範囲には制限があるが、それでもなお数cmから数μmまでの広い範囲で実施することは十分に現実的である。
【0167】
本実施の形態で述べたようなパターン形成装置とすることで、様々な基板100と液体材料130との組み合わせにおいて寸法精度よく、自由度高く、かつ滑らかで欠陥のないパターンを得ることができる。
【0168】
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3について図1、図2および図6を用いて詳細な説明を行う。実施の形態3におけるパターン形成装置の構成は実施の形態1における構成と同様であるので全体の詳細説明は割愛し、実施の形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。また、用いられる液体材料が水系の金コロイド分散液であること、および基板が支持基板に密着させられたフッ素系プラスチックフィルムであることは、実施の形態2と同じであって、液体材料としての金コロイド分散液を塗布し、固定化を行う一連の過程は第1または実施の形態2で詳細に説明した内容と重複する部分が多いため、これも異なる部分のみについて説明を加える。
【0169】
実施の形態3のパターン形成装置が実施の形態1のパターン形成装置と異なる部分は、開口部114の代表寸法およびビームスポット133の大きさのである。
【0170】
実施の形態1においては、基板100上に塗布される液体材料130の幅がビームスポット133よりも大きい場合を例に挙げて説明を行った。実施の形態3においても、その相対的な関係、すなわち基板100上に塗布される液体材料130の幅がビームスポット133よりも大きいという関係は変わらない。しかし、実施の形態1における開口部114の形状が図2(a)に示される楕円形であったのに対し、本実施の形態における開口部114の形状は、実施の形態2におけるのと同様に図2(b)に示されているような円形であり、その代表寸法も実施の形態2におけるのと同様に0.2mmである。従って、開口部114の最大および最小の代表寸法が0.2mmで同一であることも実施の形態2におけるのと同じということになる。
【0171】
ここで、実施の形態3におけるビームスポット133の形状は実施の形態1におけるのと同じく円形であって、その直径は0.01mmである。つまり、照射されるレーザ光121のうちで実質的に液体材料130を固定化させることができるエネルギー範囲を示すビームスポット133は、本実施の形態においては液体材料130の塗布範囲よりも小さいことになる。
【0172】
本実施の形態においても、円形である開口部114から塗布される液体材料130の帯の中心とビームスポット133の中心点である照射目標点131が一致するように、図示しない可動ステージが制御される。もちろん、液体材料130が塗布される範囲内での照射目標点131の位置が液体材料130の帯の中心から多少ずれていたとしても十分にパターン形成は可能であるので、互いの中心があっていることを必要条件としているわけではないが、説明をより簡単にするために、本実施の形態では実施の形態2におけるのと同じ条件を採用する。
【0173】
以上説明したような関係を図示すると、図6のようになる。すなわち、ビームスポット133は開口部114が塗布する液体材料130の塗布幅のほぼ中央部に形成され、これにより液体材料130が逐次処理され、固定化された液体材料132が形成される。このとき、固定化された液体材料132の幅は、液体材料130の塗布幅や開口部114の代表寸法とは無関係にビームスポット133の大きさに一致する。すなわち本実施の形態では0.01mm幅の固定化された液体材料132が得られる。このような構成をとることによって、レーザ光の優れた集光性を利用して、非常に微細でありながらも滑らかで欠陥のないパターン形成を行うことができる。
【0174】
さらには、本実施の形態で説明するパターン形成装置を用いても、実施の形態2で説明したような一般的な方法では塗布が困難で、その結果パターン形成が困難であるような基板100と液体材料130との組み合わせであったとしても、自由度の高いパターン形成が可能である。塗布された液体材料130をレーザ光121により逐次処理するという動作の基本は、本発明全般を通じて共通である。従って、液体材料130が基板100上ではじかれて集まるような組み合わせであっても、また逆に液体材料130が基板100上をどこまでも濡れ広がってゆくような組み合わせであっても、結果的に形成されるパターンは、ビームスポット133の大きさによって幅が規定された滑らかで欠陥のないものになる。
【0175】
このように、実施の形態3と実施の形態2とで行われるパターン形成において実質的に異なる部分は、塗布される液体材料130の幅とビームスポット133の大きさとの相対関係、そして、結果的に形成されるパターンの幅が開口部114の代表寸法によってではなく、ビームスポット133の大きさによって規定されるという点である。本実施の形態におけるビームスポット133のサイズは0.01mmであったが、これはもちろんこの値にとらわれるものではない。たとえばレーザ光はその位相がそろった光であるという特性上、小さなビームスポットを形成することが容易で、可視光線領域のレーザ光を用いても直径数μm程度、より短波長の紫外域レーザ光を用いればサブミクロンオーダーまでの極小スポットサイズを実現できる。より微細なパターン形成はより高密度な機能集積を可能にし、より高機能なデバイスを形成することを可能にする。
【0176】
さて、レーザ光による処理を終えて固定化がなされた後、本実施の形態では引き続く処理によって余剰液体材料の除去を行う。これは実施の形態1および実施の形態2には含まれていなかった工程である。
【0177】
ここまでの説明で明らかなように、実施の形態3において固定化された液体材料132は塗布された液体材料130の一部であり、固定化された液体材料132の両側には固定化に供されなかった余剰の液体材料130が残されることになる。余剰の液体材料130がどのような形態で基板100上に残留するかは基板100と液体材料130との親和性、塗布時の雰囲気や温度などの条件によって異なるが、いずれにしろ液体のままとどまっているか、乾燥して固化してしまっているかである。また基板100上での液体材料130の分布は塗布時の状態のままか、はじかれて方々に集まって塊をなしているか、あるいは濡れ広がっているかのいずれかである。このような状態の基板100をここでは固定化処理後の基板と呼ぶ。
【0178】
固定化処理後の基板は可動ステージおよび支持基板から取り外され、余剰の液体材料130の除去工程に供される。本実施の形態では基板100として一辺が100mmの正方形のフッ素系プラスチックフィルムが、そして液体材料130として水系の金コロイド分散液が用いられたため、余剰の金コロイド分散液ははじかれて集まった後に乾燥している。その結果、余剰の液体材料(金コロイド分散液)130は、固定化された液体材料132の両側に点状に固着している状態となっている。
【0179】
この固定化処理後の基板を2リットルの純水中に浸漬し、5分間の超音波処理を行う。これによって、点状に固着していた余剰の液体材料130の乾燥物は水に再溶解して基板100上から除去される。しかし、固定化された液体材料132は実施の形態1で説明したように、もはや元の液体材料および液体材料を構成していた溶媒に対して再溶解しないような状態に変化しているため、基板100上に強固にとどまる。余剰の液体材料130がすべて除去されるまで目視で確認しながら、必要に応じて数回の超音波処理を行い、最後に風乾処理をすることでフッ素系プラスチックフィルム上に金による微細なパターンのみが形成される。
【0180】
余剰の液体材料130の除去を行った後の基板100は、更なる別工程で新たな固定化処理を行ってもよいし、パターンに対する表面処理やその他の修飾的な工程を加えてもよい。本実施の形態では風乾後の基板100を加熱炉に投入し、200度で1時間保持することで、固定化された金の基板100への付着力の更なる向上を図っている。
【0181】
実施の形態3で実施されるパターン形成の過程は以上であるが、固定化処理後の基板100に対する洗浄の工程でどのような手順を用いるかは、使用される液体材料130その他の条件に従って適宜選択されるべきことは言うまでもない。簡易には液体材料130の一部を構成していた溶媒を用いるのが最もよい方法であるが、実施の形態1で説明したようなPPVモノマーのような場合は別途溶剤の選定を行うのも好ましいことである。超音波洗浄や攪拌、洗浄液の加熱等々、多くのパラメータを適宜最適化する必要がある。
【0182】
(実施の形態4)
次に本発明の実施の形態4について図1、図7および図8を用いて詳細な説明を行う。実施の形態4に係るパターン形成装置の構成は、液体材料塗布機構に付加部分があることを除き実施の形態1における構成と同じであるので全体の詳細説明は割愛し、実施の形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0183】
図7は実施の形態4に係るパターン形成装置を概略的に示す斜視図である。実施の形態1で説明した構成要素は、本実施の形態のパターン形成装置160においても過不足なく備えられている。本実施の形態ではそれらに加えて、搬送管115および液体材料供給源116、さらには、詳細は図示しないが搬送管111から送られてくる液体材料と搬送管115から送られてくる液体材料との比率を制御する調整弁、およびそれぞれの液体材料を混合するための混合機構などが付加されている。そして、前述の調整弁は、やはり図示しない制御部によって制御されており、予め定められたプログラムに従って混合比率を変更できるようになっている。本実施の形態に係るパターン形成装置160が実施の形態1のパターン形成装置と機構的に異なる部分は以上である。
【0184】
また、固定化を行う手順についても、液体材料の塗布から固定化までの一連の流れは、すでに実施の形態1で説明したものに同じである。ただし、本実施の形態では、塗布される液体材料が塗布直前に液体材料塗布機構110内で混合された複数の材料からなるものであることが異なる。
【0185】
このようなパターン形成装置160を用いて実現できるパターンについて、以下に一例を述べる。実施の形態4において、液体材料供給源112内には銀の微粒子が分散した液体材料が、そして液体材料供給源116内には金の微粒子が分散した液体材料が入っている。実施の形態1で説明した手順に従って基板上に単純な直線状のパターンを形成するとき、まず塗布開始から一定時間は前述した調整弁を一方向に制御し、銀の微粒子を含む液体材料のみを塗布する。そして一定時間経過後から時間経過に従って少しずつ調整弁を動かし金の微粒子を含む液体材料を送り始める。液体材料塗布機構110内で十分に混合された銀と金の微粒子を含む液体材料は基板に塗布され、レーザ光により逐次処理されて固定化される。
【0186】
更なる時間経過に伴い、調整弁は液体材料内の銀の微粒子に対する金の微粒子の比率を上げてゆき、一定時間経過後には銀の微粒子の供給を完全に停止し、液体材料を金の微粒子のみを含むものとする。そして、予めプログラムされた時間経過後に塗布を終了する。
【0187】
このようにしてパターンを形成することにより、滑らかに連続した欠陥のない状態でありながら、始点と終点との間で材料が異なっているというきわめて特異なパターンを形成することが可能となる。この様子をより詳しく説明するのが図8である。
【0188】
図8においてグラフの横軸は基板100上に形成されたパターン(固定化された液体材料)での位置を、グラフの縦軸は金を含む液体材料と銀を含む液体材料それぞれの吐出量の相対比率を示している。従って、同図に示すグラフは、前述した固定化手順を行ったときの両材料の時間経過に伴う吐出量変化、すなわち基板100上の位置に対する両材料の混合割合を示している。図8において、材料Xを銀の微粒子を含む液体材料、材料Yを金を含む液体材料として、参照符号8−Aで示す端から塗布を開始し、参照符号8−Bで示す端まで塗布を行うと、前述したパターンとなる。
【0189】
以上説明したようなパターン形成装置160とすることにより、異なる二つの液体材料をその比率を自由に変更しながら固定化することができ、たとえば互いに異なる金属粒子を含む二つの液体材料を用いれば合金の構成比率を任意に変更しながらパターン形成を行うことができる。また有機材料と無機材料とを用いれば、有機/無機傾斜機能膜を形成することも可能である。さらには、事前に混合すると不安定な反応開始剤を液体材料の塗布直前に混合するなどという方法にも応用することができる。
【0190】
ここで、本実施の形態では2種類の異なる液体材料を混合する場合を例示したが、1種類の液体材料と反応開始剤との混合や、3種類以上の材料(反応開始剤などを含む)の混合を否定するものではない。3種類あるいはそれ以上の材料の混合を行うことは、パターン形成装置の機構や制御を複雑化さることとなるが、2種類の材料を混合する場合と本質的な違いはない。
【0191】
このように、実施の形態4に係るパターン形成装置160では、複数の材料の混合比率を任意に変化させながら特異な組成をもったパターンを自由度高く形成することが可能である。このとき形成されるパターンは、たとえ複雑な組成やその分布をもっていたとしても、滑らかで欠陥のないものであることは言うまでもない。
【0192】
(実施の形態5)
次に本発明の実施の形態5について図1および図9を用いて詳細な説明を行う。本発明の実施の形態5に係るパターン形成装置165も基本的な構成要素は実施の形態1ですでに説明されているものと基本的な違いはない。ただし、本実施の形態のパターン形成装置165では、図1で説明されるところの液体材料塗布機構110、レーザ処理機構120、および開口部位置計測機構140を含む機構(以下形成体と呼ぶ)が2組備えられている。以下の説明では煩雑さを避けるため、これらをそれぞれ形成体という。図9における150A、150Bがそれぞれ形成体である。形成体150Aおよび150Bの各々は、液体材料130の塗布と固定化を互いに独立して行うことができる。
【0193】
パターン形成装置165をこのような構成とすることによって、一つの基板100上に二つのパターンを同時に形成することができる。また、一度に2枚の基板に対してパターンの形成を行うことができる。いずれにしても、滑らかで欠陥のないパターンを効率よく形成することが可能となる。
【0194】
形成体を複数化することの利便性は、上述のものにとどまるものではない。たとえば、形成体150Aと形成体150Bとで、別々の液体材料を用いて別々または同一の基板上に材料の異なる同一のパターンを形成することは容易である。このような場合は、使用される液体材料の種類に応じてレーザ光121の波長も適宜変更し最適化されるべきものであることは言うまでもない。このとき、形成体150A,150Bはそれぞれ独立したレーザ処理機構120を備えているので、波長の変更はきわめて容易である。
【0195】
また、二つの形成体を一体化してパターン形成を行うことも好適である。この場合、第1の形成体が第1の液体材料を固定化して第1のパターンを形成し、その直後に第2の形成体が第2の液体材料を固定化して第1のパターン上に第2のパターンを形成するといった複雑なパターン形成が可能となる。たとえば、金を固定化して形成した第1のパターン上での銀の固定化による第2のパターンの形成、また金属を固定化して形成した第1のパターン上での有機物の固定化による第2のパターンの形成、さらにまた、基板表面改質材として付着力向上のためのカップリング剤などを下地材として固定化して形成した第1のパターン上での機能性材料の固定化による第2のパターンの形成といった構成の自由度を与える。
【0196】
さらには、一体化される形成体がそれぞれ備える開口部114が互いに異なる代表寸法をもっていることも好ましいものである。このような構成を用いれば、たとえば透明導電体を固定化した後にその導電性確保のための補助として金属材料を透明導電体の幅よりも細い幅で透明導電体の上部に固定化したり、環境によって変質させられてしまうような材料を固定化した直後にそれを完全に覆うように保護材料を固定化したりするなどといった応用が可能になる。
【0197】
以上述べたようないずれの場合であっても、液体材料を介して基板と接した状態で基板への液体材料の塗布を行い、それをレーザ光により逐次処理するという本発明の基本は変わらないため、形成されるパターンは滑らかで欠陥のないものとなる。
【0198】
(実施の形態6)
次に本発明の実施の形態6について図1および図10を用いて詳細な説明を行う。図10において、170は光ファイバ、171は光ファイバから出射されたレーザ光、172は光ファイバ170から出射されたレーザ光のビームスポット、175はパターン形成装置である。本発明の実施の形態6に係るパターン形成装置175の構成は実施の形態1におけるパターン形成装置と似ているため、異なる部分のみを詳細説明する。
【0199】
本実施の形態のパターン形成装置175が実施の形態1のパターン形成装置と異なるところは、レーザ処理機構120(図1参照)に含まれる照射部が光ファイバ170を含むという点である。
【0200】
光ファイバについてはすでによく知られているので、ここでの詳細説明は割愛する。本実施の形態で使用されている光ファイバ170は、発光のピーク波長が670nmの半導体レーザに用いられるシングルモード光ファイバである。もちろん、マルチモードの光ファイバを使用することも可能であるが、マルチモード光ファイバでは光ファイバの端部から出射するレーザ光171の広がり角度がシングルモード光ファイバでのそれよりも大きくなりがちであり、より微細なパターン形成を望む場合にはビームスポット172が大きくなりすぎる傾向がある。
【0201】
さて、本実施の形態では、実施の形態1におけるのと同様の開口部114をもった液体材料塗布機構110、そして液体材料130も銀の微粒子を有機溶媒に分散させたもの用い、液体材料130の塗布の工程も類似である。
【0202】
固定化に際しては、光ファイバ170の先端を開口部114の先端近傍に配置する。光ファイバ170から出射されるレーザ光171は、光ファイバ170の出射端から離れるに従って円錐形に広がってゆき、液体材料130の塗布面でビームスポット172を形成する。従って、光ファイバ170の端面を液体材料130の塗布面からどの程度の距離に配置するかによって、本実施の形態におけるビームスポット172のサイズが決定する。発光のピーク波長が670nmの半導体レーザとシングルモード光ファイバとを組み合わせた場合、塗布面とシングルモード光ファイバの端部とのギャップを0.5mm程度とすることにより、ビームスポット172の直径を0.2mm以下にできる。
【0203】
このような構成のパターン形成装置175とすることで照射部を簡略化でき、装置構成全体を簡易なものにすることができる。照射部である光ファイバに導光部を兼ねさせることも可能である。たとえば高出力半導体レーザと光ファイバとを組み合わせてモジュール化したものは多数市販されており、これらを用いることでレーザ処理機構を画期的に簡易化することも可能である。さらには、光ファイバを用いると光源を自由に離して配置することが可能となるため、高出力光源を用いる場合の光源の冷却といった点でも有利である。
【0204】
本実施の形態においても、液体材料130を介して開口部114が基板100と接した状態で基板100上に液体材料130を塗布し、それをレーザ光171により逐次処理するという本発明の基本は変わらないため、形成されるパターンは滑らかで欠陥のないものとなる。
【0205】
(実施の形態7)
次に本発明の実施の形態7について図1〜8および図11を用いて説明を行う。実施の形態7におけるパターン形成装置は図1を用いて説明されている実施の形態1のものと基本構造は同じであるので、重複部分の説明は実施の形態1に譲って割愛し、実施の形態1のものに対して付加された部分を詳細に説明する。
【0206】
図11に示すパターン形成装置190においては、図1のパターン形成装置155に対して雰囲気調整機構185が付加されている。雰囲気調整機構185は、液体材料130の固定化が行われるビームスポット133近傍の雰囲気を制御するためのものであって、雰囲気調整を行うための小室(雰囲気制御室)を構成するフード180、雰囲気制御室内の雰囲気を調整するために特定のガスや温度調整をされた空気、あるいは塵埃を除去した空気などを送り込むための供給路181、および供給路181を介して雰囲気制御室内の雰囲気をコントロールする調整部182を備えている。
【0207】
調整部182による雰囲気制御室内の雰囲気の制御は、たとえば酸素濃度、水蒸気濃度、気圧の制御であり、液体材料に酸化を生じさせない低酸素濃度雰囲気に雰囲気制御室内を保ったり、液体材料に還元を生じさせない高酸素濃度雰囲気に雰囲気制御室内を保ったり、雰囲気制御室の雰囲気を低水蒸気濃度に保ったり、雰囲気制御室内を外部に比較して相対的に陽圧または陰圧に保ったりする。
【0208】
この調整部182は、調整する雰囲気によってその詳細構成は適宜変更されるもので、たとえば特定のガスで雰囲気制御室内を満たすような目的の場合には当該ガスのボンベや流量を調整するバルブなどから構成され、温度を調整する場合はヒーターや冷却媒とポンプなどから構成され、塵埃を除去する場合には適切なフィルタとファンやポンプなどから構成される。また、反対にたとえば液体材料130の固定化によって発生する有害なガスなどが散逸することなく回収、廃棄されるように、調整部182が雰囲気制御室内の気体を吸引する作用をもった構成にすることも好ましい。
【0209】
実施の形態7において、パターン形成装置190がパターンを形成する手順は、実施の形態1のパターン形成装置を始めとしてここまでに説明してきたパターン形成装置におけるのと同様である。すなわちパターン形成装置190での開口部114も基板100との相対位置が変化し、開口部114の最小の代表寸法はたとえば500μm以下であって、液体材料130の固定化を実現するためのビームスポット133のサイズは開口部114の最小の代表寸法より大きくても小さくてもよく、開口部位置計測機構140はパターンを形成する過程を通じて開口部114と基板100とのギャップGの測定を行い、図示しない可動ステージは、ギャップGが一定かまたは予め設定された値になるように制御部により制御される。
【0210】
さらには、パターン形成装置190の液体材料塗布機構110も実施の形態1でのそれと同様に液体材料130の吐出と吸引とを行うことができる。また複数の互いに異なる材料を用いて連続的にその組成が変化するようなパターンを形成することも可能である。また、本実施の形態のパターン形成装置190でのレーザ処理機構120も実施の形態1でのそれのように連続光、断続光、走査光を出射することができ、その効果も実施の形態1におけるのと同様である。レーザ処理機構120中の照射部が光ファイバを含む構成となっていることも好ましい。
【0211】
このように、本発明の実施の形態7のパターン形成装置190によるパターン形成の基本動作は、すでに説明した実施の形態1のパターン形成装置におけるのと類似している。それでは本実施の形態と実施の形態1とでは何が異なるのかというと、以上説明したようなパターン形成のすべてを、調整された一定の雰囲気下で実施することが可能であるということである。
【0212】
実施の形態7が有効なのは、雰囲気に敏感な材料を用いてパターン形成を行う場合である。本実施の形態では液体材料130として銅(Cu)の微粒子を分散させた液体を用いている。このような銅微粒子分散液体は、たとえば株式会社アルバックなどから購入可能なものである。以下この材料を用いたパターン形成を詳細に説明する。
【0213】
銅の微粒子は、実施の形態1で述べた銀の微粒子と基本的には同じようにしてパターン形成が可能である。すなわち、レーザ光の照射によって微粒子同士が溶着して不動態化するという過程をたどる。ただし、これを酸素を含む通常の大気下で行うと、粒子同士の溶着という物理的な過程と銅微粒子の空気中の酸素による酸化反応とが競争的に生じ、結果的に銅微粒子の一部あるいは大部分が酸化銅となってしまい、目的とする銅によるパターンが得られなくなるという問題が生じる。
【0214】
これを避けるために、実施の形態7のパターン形成装置190では、調整部182が図示しない純窒素のボンベと流量調整弁とを備えている。流量調整弁は、そのほかの各機構と同様、図示しない制御部によって制御され、予め設定されたプログラムに従って各部と協調的に動作するようになっている。このパターン形成装置190は、パターン形成に先立ち、流量調整弁を制御して供給路181を介して雰囲気制御室内に純窒素を満たすという動作を行う。フード180の下端は基板100に近接しており、基板100との間隔は十分に小さい。従って、雰囲気制御室内に供給された純窒素は、それまで雰囲気制御室内に滞留していた酸素を含む大気を追い出しながら次第に雰囲気制御室内を純窒素で満たしてゆく。図示しない流量調整弁を制御することで、雰囲気制御室内は外部の大気に対して僅かに陽圧に保たれている。
【0215】
従って、酸素を含む外気は雰囲気制御室内に進入することができず、結果的に時間の経過と共に雰囲気制御室内の雰囲気は純窒素で置換されてゆくことになる。さて、純窒素の供給が開始された後、予め定められた一定時間が経過すると、パターン形成装置190はパターン形成を開始する。雰囲気制御室内は純窒素で満たされていて酸素はほとんど含まれていない状態となっているため、たとえレーザ処理機構120が銅微粒子を含む液体材料130の固定化を行ったとしても、もはや銅微粒子の溶着に際して酸化の競争反応は生じないか、あるいはほとんど無視できるレベルにとどまり、実質的に目的の銅からなるパターンを得ることができる。
【0216】
このとき、図示しない可動ステージが基板100と開口部114との相対位置を変化させてパターン(固定化された液体材料)132がフード180の外に出、酸素を含む外気にさらされたとしても、このときにはすでに銅微粒子の溶着は完了し、連続した金属面を形成しているため、たとえ表面の一部が酸化されたとしても酸化が内部まで進行することはなく、実質的な意味での銅のパターンを得ることができるものである。もちろん、パターン形成装置190が前述したような形成体を複数備え、銅のパターンをすっかり覆うような保護層のパターンを逐次形成すれば、銅パターンの酸化を完全に防ぐことができるので、そのような構成をとることはより好ましいものである。
【0217】
このように、液体材料の固定化を行う際にその雰囲気を調整することは、パターン形成を行うための材料の選択の幅を広げるために大変有効である。もちろん、装置全体を特定の調整された雰囲気の中、たとえば、窒素で満たされた部屋の中に設置することで前述した銅パターンの形成は可能であるが、そのような大規模な雰囲気調整を行った部屋を準備するのは煩雑であるし、工業的な観点からは、費用の面でもまた作業者が内部で作業ができないという意味でも問題が多い。本実施の形態のように、雰囲気調整を行う部分を必要にして十分な局所に限定することで、効率がよく作業性の高い装置を構成することが可能となる。もちろん、このときのパターン形成は、液体材料を介して開口部が基板に接した状態で基板への液体材料の塗布を行い、それをレーザ光により逐次処理するという本発明の基本に忠実に実施されるため、形成されるパターンは滑らかで欠陥のないものとなる。
【0218】
なお、ここでは酸素に対して敏感な材料として銅の微粒子を含む液体材料を例にして説明を行ったが、もちろん他の材料、他の条件に対しても本実施の形態のパターン形成装置は有効である。たとえば、酸素に敏感なほかの材料としてはシリコンの微粒子を含む液体材料がある。これは通常の環境下で酸素と触れさせると発火するため大変危険であるが、本実施の形態のパターン形成装置を用いればパターン形成が可能である。反対に、高酸素濃度の雰囲気を要求する材料としてはバナジウム酸化物微粒子を含む液体材料がある。バナジウム酸化物は、レーザ処理を含む加熱の際に酸素欠損を生じてその組成が変化してしまいやすいが、雰囲気制御室内を酸素で満たせば酸素欠陥の発生を抑えるとことが可能となる。また、多くの電子機能性有機材料のように雰囲気中の水蒸気によってその特性が大きく悪化してしまうような材料を用いる際にも、雰囲気制御室内から水蒸気を除去することで当該材料を用いたパターン形成が可能となる。そのほか詳細な説明は割愛するが、本実施の形態のパターン形成装置190は、雰囲気制御室内に塵埃を除去した空気を送ることで微細なパターン形成に障害となる細かな埃を排除したり、また、固定化の際に発生する液体材料に含まれていた溶媒の蒸気などを散逸させることなく回収、廃棄したりするために、雰囲気制御室を陰圧、すなわち雰囲気を吸引する側に調整することも構成変更をすることなく対応可能である。
【0219】
以上のように、実施の形態7のパターン形成装置を用いることにより、通常の環境ではパターン形成が難しい、安定しない、できないといった課題のある材料を用いても滑らかで欠陥のないパターン形成が可能である。さらには、本装置は固定化を行うためのレーザ光121のビームスポット133近傍のみの雰囲気を調整するため、小型で簡易な構成でも十分な効果を得ることができる。
【0220】
以上詳細な説明を行ったパターン形成装置およびパターン形成方法を用いることで優れた特性をもったデバイス、たとえばプリント基板、フレキシブルプリント基板、集積回路、ディスプレイ、センサ、アンテナ、光学素子、磁気ヘッド、発光素子、配線、電磁波シールド部材、太陽電池、燃料電池、インダクタ、トランスなどや、それを組み込んだ電子機器を製造することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0221】
本発明は、種々のデバイスの製造に適用することができ、結果として、電子機器の製造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】実施の形態1に係るパターン形成装置を概略的に示す斜視図
【図2】パターン形成装置における開口部の代表寸法を説明するための図
【図3】パターン形成装置による液体材料の塗布終了端での処理を説明するための図
【図4】パターン形成装置でのレーザ光の照射パターンを説明するための図
【図5】実施の形態2に係るパターン形成装置での液体材料の塗布幅とビームスポットとの関係を説明する図
【図6】実施の形態3に係るパターン形成装置での液体材料の塗布幅とビームスポットとの関係を説明する図
【図7】実施の形態4に係るパターン形成装置を概略的に示す斜視図
【図8】材料組成が連続的に変化するパターンを説明するための図
【図9】実施の形態5に係るパターン形成装置を概略的に示す斜視図
【図10】実施の形態6に係るパターン形成装置を概略的に示す斜視図
【図11】実施の形態7に係るパターン形成装置を概略的に示す斜視図
【図12】ビームスポット内が均一なエネルギー分布をもつレーザ光を説明するための図
【符号の説明】
【0223】
100 基板
110 液体材料塗布機構
111,115 搬送管
112,116 液体材料供給源
113 液体材料供給部
114 開口部
120 レーザ処理機構
121,171 レーザ光
130 液体材料
131 照射目標点
132 固定化された液体材料(パターン)
133,172 ビームスポット
140 開口部位置計測機構
141 レーザ光
150A,150B 形成体
155,160,165,175,190 パターン形成装置
170 光ファイバ
171 開口部
180 雰囲気制御室を構成するフード
185 雰囲気調整機構
a−1,b−1,c−1 最小の代表寸法
a−2,b−2,c−2 最大の代表寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に液体材料を塗布する液体材料塗布機構と、前記基板に塗布された液体材料にレーザ光を照射して固定化するレーザ処理機構とを備え、
前記液体材料塗布機構は、前記液体材料を介して前記基板に接する開口部が形成された液体材料供給部と、前記液体材料供給部に前記液体材料を搬送する搬送部とを有し、
前記レーザ処理機構は、前記レーザ光を照射目標点に照射する照射部を有し、
前記開口部から前記基板に前記液体材料を塗布し、該基板に塗布された液体材料を前記照射部から照射されるレーザ光によって逐次処理し、固定化することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項2】
前記基板と前記開口部との相対位置を変位させる移動機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項3】
前記開口部の最小の代表寸法は500μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のパターン形成装置。
【請求項4】
前記レーザ光のビームプロファイルをとったときに、前記液体材料を実質的に固定化することができるエネルギーレベルを有する領域の径が前記開口部での最小の代表寸法よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のパターン形成装置。
【請求項5】
前記レーザ光のビームプロファイルをとったときに、前記液体材料を実質的に固定化することができるエネルギーレベルを有する領域の径が前記開口部での最小の代表寸法よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載のパターン形成装置。
【請求項6】
前記基板と前記開口部とのギャップを計測する開口部位置計測機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項7】
前記開口部位置計測機構の計測結果を基に、前記基板と前記開口部とのギャップを一定に保つか、または予め定められた所定の手順に従って前記ギャップを変化させる開口部位置制御機構をさらに備えていることを特徴とする請求項6に記載のパターン形成装置。
【請求項8】
前記開口部と少なくとも前記照射部とが一体化されてなることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項9】
前記開口部から前記液体材料の吐出と吸引とが行われることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項10】
前記液体材料塗布機構は、複数種類の液体材料を前記基板に別々に、または混合して塗布することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項11】
前記液体材料塗布機構は、前記複数種類の液体材料それぞれの比率を経時的に変化させて前記基板に塗布することを特徴とする請求項10に記載のパターン形成装置。
【請求項12】
少なくとも前記開口部と前記照射部とが一体化された形成体を複数備え、それぞれの形成体が互いに異なる液体材料または同一の液体材料を用いて同時または逐次、パターン形成を行うことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項13】
前記複数の形成体の各々は、互いに異なる形状および/または互いに異なる代表寸法をもった開口部を有することを特徴とする請求項12に記載のパターン形成装置。
【請求項14】
前記レーザ光は連続光であることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項15】
前記レーザ光は断続光であることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項16】
前記照射部は、前記レーザ光の走査を行うことを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項17】
前記照射部は、前記レーザ光が伝搬する光ファイバを含むことを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載されたパターン形成装置。
【請求項18】
前記光ファイバから出射した前記レーザ光は、前記基板に塗布された前記液体材料に光学素子を介することなく照射されることを特徴とする請求項17に記載のパターン形成装置。
【請求項19】
前記レーザ光のビームプロファイルをとったときに、前記液体材料を実質的に固定化することができるエネルギーレベルを有する領域内ではエネルギー分布が実質的に均一であることを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項20】
前記開口部および前記照射部の各々と一体化された雰囲気制御室をさらに備え、
前記開口部から前記基板に塗布される前記液体材料を前記照射部から照射されるレーザ光によって前記雰囲気制御室内で逐次処理し、固定化することを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項21】
前記雰囲気制御室内は、外部に比較して相対的に陽圧に保たれることを特徴とする請求項20に記載のパターン形成装置。
【請求項22】
前記雰囲気制御室内は、前記液体材料に酸化を生じさせない低酸素濃度雰囲気に保たれることを特徴とする請求項20または21に記載のパターン形成装置。
【請求項23】
前記雰囲気制御室内は、前記液体材料に還元を生じさせない高酸素濃度雰囲気に保たれることを特徴とする請求項20または21に記載のパターン形成装置。
【請求項24】
基板に塗布した液体材料をレーザ光によって逐次処理し、固定化してパターンを形成するパターン形成方法であって、
前記液体材料が吐出する開口部を前記液体材料を介して前記基板に接触させ、前記開口部から前記基板に塗布した前記液体材料を前記レーザ光によって逐次処理し、固定化してパターンを形成する、
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項25】
前記レーザ光による前記処理は、前記液体材料に化学的変化を誘起するものであることを特徴とする請求項24に記載のパターン形成方法。
【請求項26】
前記レーザ光による前記処理は、前記液体材料に物理的変化を誘起するものであることを特徴とする請求項24に記載のパターン形成方法。
【請求項27】
前記液体材料に前記レーザ光を照射するときの照射目標点およびその近傍で、雰囲気制御を行うことを特徴とする請求項24から26のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項28】
前記雰囲気制御は、雰囲気中の酸素濃度の制御であることを特徴とする請求項27に記載のパターン形成方法。
【請求項29】
前記雰囲気制御は、雰囲気中の水蒸気濃度の制御であることを特徴とする請求項27または28に記載のパターン形成方法。
【請求項30】
前記雰囲気制御は、気圧の制御であることを特徴とする請求項27〜29のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項31】
前記基板に塗布された前記液体材料を第1のレーザ光によって処理した後に第2のレーザ光によって処理することを特徴とする請求項24から30のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項32】
前記第1のレーザ光の波長と前記第2のレーザ光の波長とは互いに異なることを特徴とする請求項31に記載のパターン形成方法。
【請求項33】
前記第1のレーザ光のビームプロファイルと前記第2のレーザ光のビームプロファイルとは互いに異なることを特徴とする請求項31または32に記載のパターン形成方法。
【請求項34】
前記基板に塗布された前記液体材料での互いに異なる領域それぞれに同時にレーザ光を照射し、該レーザ光によって前記液体材料を逐次処理することを特徴とする請求項24から30のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項35】
前記互いに異なる領域それぞれに照射されるレーザ光の各々は、互いに異なる波長を有することを特徴とする請求項34に記載のパターン形成方法。
【請求項36】
前記互いに異なる領域それぞれに照射されるレーザ光の各々は、互いに異なるビームプロファイルを有することを特徴とする請求項34または35に記載のパターン形成方法。
【請求項37】
第1の液体材料を用いて第1のパターンを形成した後に、第2の液体材料を用いて第2のパターンを形成することを特徴とする請求項24から36のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項38】
前記第1のパターンを形成する際に用いるレーザ光の波長と、前記第2のパターンを形成する際に用いるレーザ光の波長とが互いに異なることを特徴とする請求項37に記載のパターン形成方法。
【請求項39】
前記パターンを形成した後、前記基板に塗布された前記液体材料のうちで固定化されなかった液体材料を除去することを特徴とする請求項24から38のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項40】
前記固定化されなかった液体材料を除去した後に前記基板全体を後処理することを特徴とする請求項39に記載のパターン形成方法。
【請求項41】
前記基板が可とう性をもつことを特徴とする請求項24から40のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項42】
前記基板が曲面をもつことを特徴とする請求項24から41のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項43】
前記基板は、前記液体材料を吸収する多孔質材料で構成されていることを特徴とする請求項24から42のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項44】
前記液体材料が金属イオンまたは金属コロイドを含むことを特徴とする請求項24から43のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項45】
前記液体材料が酸化物微粒子を含むことを特徴とする請求項24から44のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項46】
前記液体材料が有機材料を含むことを特徴とする請求項24から45のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項47】
前記液体材料が表面改質材料を含むことを特徴とする請求項24から46のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項48】
前記液体材料が、熱的または光化学的に誘起されて反応する前駆体物質または反応開始剤として機能する物質を含んでいることを特徴とする請求項24から47のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項49】
請求項1から23までのいずれかに記載されたパターン形成装置を用いて形成されたパターンを有するデバイス。
【請求項50】
請求項24から48までのいずれかに記載されたパターン形成方法により形成されたパターンを有するデバイス。
【請求項51】
請求項49または50に記載されたデバイスを有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−636(P2009−636A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164619(P2007−164619)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】