説明

パターン検査装置およびパターン検査方法

【課題】欠陥の高さ(深さ)に依存することなく高いS/Nで欠陥を検出する。
【解決手段】実施の形態のパターン検査装置は、照射手段と照明手段と検出手段と結像手段と画像処理手段とを含む。前記照射手段は、互いに異なる波長を有する光を生成して出射する。前記照明手段は、前記照射手段から前記異なる波長の光を、検査対象のパターンが形成された基体の同一領域に照射する。前記検出手段は、前記基体で反射した、互いに異なる複数の波長の反射光を検出して波長毎の信号を出力する。前記結像手段は、前記反射光を導いて前記検出手段に入射させ、その検出面で像結像させる。前記画像処理手段は、前記波長毎の信号を前記検出面の入射位置に対応付けて加算処理して波長および信号強度の情報を含む加算画像データを生成し、該加算画像データに基づいて検査対象のパターンにおける欠陥の有無を判定し、欠陥が有ると判定した場合に前記基体に垂直な方向における前記欠陥の位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、パターン検査装置およびパターン検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置、フラットパネルディスプレイ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの分野においては、表面に微細なパターンが形成された構造体(以下、「微細構造体」と称する)がリソグラフィ技術などを用いて製造されている。
このような微細構造体の検査に際し、光学式検査装置が使用されている。従来、光学式検査装置では、レーザ光源またはランプ光源などから、ウェーハなどの基体に形成された検査対象のパターンへ光を照射し、該パターンからの反射光を検出器で検出し、例えばダイ・ツー・ダイ比較により検出光の信号強度を比較することで欠陥検査を実施している。
【0003】
近年、微細構造体における微細化や高集積化の進展により、アスペクト比が高いパターンが形成されている。例えば高アスペクト比の溝パターンの場合、深さ方向の様々な位置で欠陥が発生し得る(図4(a)参照)。
【0004】
しかしながら、従来のように、検出光の信号強度だけでは、情報量が少ないために欠陥の見逃しが発生し、また、このような欠陥の高さ(深さ)に依存して欠陥のS/Nが低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−196859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、欠陥の高さ(深さ)に依存することなく高いS/Nで欠陥を検出できるパターン検査装置およびパターン検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態のパターン検査装置は、照射手段と照明手段と検出手段と結像手段と画像処理手段とを含む。前記照射手段は、互いに異なる波長を有する光を生成して出射する。前記照明手段は、前記照射手段から前記異なる波長の光を、検査対象のパターンが形成された基体の同一領域に照射する。前記検出手段は、前記基体で反射した、互いに異なる複数の波長の反射光を検出して波長毎の信号を出力する。前記結像手段は、前記反射光を導いて前記検出手段に入射させ、その検出面で像結像させる。前記画像処理手段は、前記波長毎の信号を前記検出面の入射位置に対応付けて加算処理して波長および信号強度の情報を含む加算画像データを生成し、該加算画像データに基づいて検査対象のパターンにおける欠陥の有無を判定し、欠陥が有ると判定した場合に前記基体に垂直な方向における前記欠陥の位置を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態によるパターン検査装置の概略構成を例示する模式図である。
【図2】図1に例示するパターン検査装置の分光部の具体例を例示する模式図である。
【図3】比較例によるパターン検査方法の一例を例示するフローチャートである。
【図4】(a)は検査対象パターンの一例を例示する断面図であり、(b)は分光波長をパラメータとする欠陥高さ(深さ)と信号強度との関係を例示するグラフである。
【図5】第1の実施の形態によるパターン検査方法の一例を例示するフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態によるパターン検査装置の概略構成を例示する模式図である。
【図7】第2の実施の形態によるパターン検査方法の一例を例示するフローチャートである。
【図8】図1に例示するパターン検査装置において、ある欠陥からの反射率の波長依存性の一例を例示するグラフである。
【図9】深紫外光を生成するための基本光源ユニットを例示するための模式図である。
【図10】図9に例示する基本光源ユニットを用いた広帯域光源を例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、第1の実施の形態によるパターン検査装置の概略構成を例示する模式図である。
図2は、図1に例示するパターン検査装置の分光部の具体例を例示する模式図である。
また、図3は、比較例によるパターン検査方法の一例を例示するフローチャートである。
【0010】
(1)比較例
まず、本発明者が発明をするに至った過程で検討を加えた比較例について例示をする。
図3のフローチャートに例示するように、比較例によるパターン検査方法では、レーザ光源やランプ光源などからの照明光を検査対象のパターンが形成されたウェーハ上に照射し(ステップS100)、ウェーハからの反射光を導いて検出器の検出面に結像させ(ステップS200)、検出器にて光電変換を行うことにより検出信号を取得し、例えばダイ・ツー・ダイ比較により画素毎に検出信号の強度を比較することにより欠陥を検出していた(ステップS300)。
【0011】
近年、微細構造体の微細化や高集積化のより一層の進展により、検査対象であるパターンのアスペクト比が高くなってきており、例えば溝パターンなどでは40を上回るアスペクト比も現れている。このような高アスペクト比のパターンについては、様々な深さの欠陥が形成される可能性がある(図4(a)の符号DF1,DF2参照)。図3に例示するパターン検査方法では、溝パターンの底部付近に発生した欠陥については充分な強度の反射光が戻ってこないため、欠陥を見落とする可能性があり、また、欠陥の判定を単一の波長光を検出して得られた信号の強度に依存しているため、欠陥がどの程度の高さ(ウェーハ基準面に対しての垂直方向の欠陥の位置)を有するものなのか、検知することは困難であり、欠陥のS/Nが低下するという問題があった。
【0012】
(2)第1の実施の形態
次に、第1の実施の形態によるパターン検査装置について説明する。
まず、本実施の形態が依拠するパターン検査の原理について概略的に説明する。
図4(a)は検査対象パターンの一例を例示する断面図である。同図では、ウェーハW上面に形成された絶縁膜200をエッチング等により選択的に除去することにより設けられた溝パターンTR1〜TR3が形成された試料300が例示されている。溝パターンTR1は絶縁膜200の底面に至るまで形成された良好なパターンである。一方、本来溝パターンTR2が形成されるはずの領域には、何らかの原因によって溝パターンが全く形成されず、欠陥DF1となっている。また、溝パターンTR3には、不純物等の影響により、絶縁膜200の底面近傍でエッチングが停止し、深さD1に頂面が位置する欠陥DF2が形成されている。
【0013】
図4(b)は、このような試料に対して互いに異なる複数の波長の光を照射し、その反射光を検出した結果の一例を例示する。同図には、ウェーハWかRの4つの波長λ1〜λ4の反射光を検出し、欠陥の高さ(深さ)をX軸とし、検出信号の強度をY軸とするグラフにプロットしたものである。
図4(a)および(b)から分かるように、高さ(深さ)D0の最も浅い欠陥DF1については、波長λ2の反射光が最も信号強度(絶対値)が大きい。この一方、絶縁膜200の底面近傍の深さD1の欠陥DF2については、波長λ1の反射光が最も信号強度(絶対値)が大きい。
【0014】
このような欠陥の高さ(深さ)および波長との関係をデータテーブルとして予め準備し、複数の波長光を用いたパターン検査を行い、検出された欠陥候補について波長および信号強度の情報を、画素毎、すなわち、検出面の入射位置に対応付けて上記データテーブルと対比すれば、欠陥の二次元平面内の位置のみならず、その高さ(深さ)をも検出することが可能になる。
【0015】
図1に例示するパターン検査装置1は、このような検査原理に依拠して構成されたものである。以下、その概略構成と動作について例示する。
【0016】
図1に例示するパターン検査装置1には、照明光学系10と、結像光学系30と、ステージSと、ステージコントローラ90と、制御部40と、画像処理部60と、モニタ80とが設けられている。
【0017】
照明光学系10は、白色光源12と、分光部18とを含む。白色光源12はブロード光を発し、分光部18は、該ブロード光を互いに異なる所望の複数の波長の光に分光する。
図2は、分光部18の具体的構成の一例を例示する模式図である。図2に例示する構成では、分光部18は、フィルタ板FBの周辺領域に所定間隔で波長順に配置された波長フィルタF1〜F8と、該フィルタ板FBを回動させるアクチュエータATとを含む。波長フィルタF1〜F8は互いに異なる波長の光を通過させ、アクチュエータATは制御部40からの制御信号に従い、所望の波長の波長フィルタが光路上に位置して所望の波長の光がウェーハWに照射されるようにフィルタ板FBを回動させる。本実施形態において、アクチュエータATおよび制御部40は、例えば切り替え手段に対応する。このような切り替え手段を照明光学系10内に設けることにより、ウェーハWへの照射光の光量を抑えてウェーハダメージを低減することができる。
【0018】
互いに異なる複数波長の光をウェーハWに照射する手段としては、上述の白色光源12および分光部18に限ることなく、例えば互いに異なる波長の光を発する複数のLED光源またはレーザ光源を使用し、光源切り替え手段で波長順に切り替えて照射してもよい。光源切り替え手段としては、例えば図2に例示したフィルタ板に類似の基板を用いてその周辺に所定間隔でLEDを配置し、アクチュエータを用いて基板を回動させればよい。なお、LED光源の場合は、光源の寿命が長いというメリットがある。互いに異なる複数波長の光をウェーハWに照射する他の手段として、互いに異なる波長の光を出射する単一のレーザ光源を用いてもよい。
【0019】
図1に戻り、分光部18により分光された光は、ウェーハW上に形成された検査対象のパターンP1へ照射される。照射光はウェーハWの表面で反射し、この反射光が結像光学系30に入射する。ウェーハWおよびパターンP1は、本実施の形態において例えば基体および第1のパターンにそれぞれ対応する。
結像光学系30は、対物レンズ32と結像レンズ34とを含み、反射光の光路を制御して検出器50の検出面にパターンP1およびその周辺の光学像を結像させる。
検出器50は、その検出面で結像した反射光を光電変換し、画像処理部60へ検出信号を出力する。検出器60は、例えば赤外CCD(Charge Coupled Device)または光電子増倍管などにより構成される。ただし、これらに限定されるわけではなく、結像された光を光電変換できるものを適宜選択することができる。
【0020】
画像処理部60は、信号処理部62と、演算部64と、欠陥候補判定部66と、高さ(深さ)出力部68とを含む。信号処理部62は検出器50から検出信号が与えられて、検出器50の各画素に対応付けて波長および信号強度の画像データを作成する。演算部64は、信号処理部62からデータを与えられて該データを画素毎に加算し、各画素位置に対応付けられた波長および信号強度の加算画像データを作成する。この加算画像データは、例えば画素の座標位置を表す(x,y)に加えて信号強度の情報が記述されたものに、波長の情報をz方向にさらに加えた三次元データになる。この場合、z方向が分光の波長になる。
【0021】
このように作成された三次元データはメモリMR1に格納される。メモリMR1にはまた、参照パターンについて得られた三次元データが格納されている。
【0022】
欠陥候補判定部66は、検査対象のパターンP1について演算部64により作成された三次元データとメモリMR1から引き出された参照パターンの三次元データとを比較することにより、パターンP1の欠陥の有無を判定する。より具体的には、参照パターンの三次元データと異なるデータがある場合に、その画素位置、すなわち検出器50の検出面への反射光の入射位置に対応するウェーハW上の位置に欠陥の候補があるものと判定する。参照パターンとしては欠陥が無いことが確認されたパターンを使用してもよいが、本実施の形態ではパターンP1と同一の形状および寸法を有するように隣接するセルまたはダイに形成されたパターンP2を使用し、ダイ・ツー・ダイ比較により欠陥判定を行う。本実施の形態においてパターンP2は例えば第2のパターンに対応する。
【0023】
高さ(深さ)出力部68は、欠陥候補判定部66から欠陥候補の三次元データが与えられ、図4(a)を参照して前述した、波長、信号強度および欠陥の高さ(深さ)の関係を表すデータテーブルを参照して欠陥候補の高さまたは深さを判定する。
【0024】
モニタ80は、画像処理部60により判定された欠陥候補の位置と高さ(深さ)とを、例えば液晶ディスプレイなどにより表示する。
【0025】
ここで、欠陥候補判定部66により判定された欠陥候補によっては、その波長に依存して信号強度が他の波長の信号強度よりも低い場合がある。このような場合、欠陥候補判定部66は、所望の波長の信号強度に所定のオフセットを加える。これにより、欠陥候補がモニタ80にて強調して表示される。
【0026】
ステージSは、ウェーハWを載置するとともに、ステージコントローラ90から与えられる制御信号に従い、ウェーハWをウェーハ面に水平な方向で移動させる。これにより、ウェーハWはウェーハ面に水平な方向で照明光により走査される。ステージコントローラ90は、制御部30からの指令信号に従い、ステージ40を駆動するための制御信号を生成する。
【0027】
制御部40は、各種の制御信号を生成して照明光学系10、ステージコントローラ90、検出器50および画像処理部60に送る。制御部40はまた、画像処理部60から画像データが送られて、波長毎に検出器50の感度を検知し、感度が不足していると判定した場合に、これを補正するための制御信号を生成して検出器50に送る。これにより、例えば図4(a)に例示した波長λ1の反射信号に対する感度を向上させることができる。
【0028】
次に、第1の実施の形態によるパターン検査方法について説明する。
図5は、本実施の形態によるパターン検査方法の一例を例示するフローチャートである。
【0029】
まず、互いに異なる複数の波長の光を生成し、ウェーハの同一領域、例えば検査対象のパターンP1が形成された領域に照射する(ステップS1)。互いに異なる複数の波長の光は、単一の光源から白色光を発し、該白色光の光路に所望の複数の波長に分光する複数の波長フィルタを設置し、適宜選択的に切り替えることにより白色光を分光して生成することもできるし、互いに異なる波長の光を発する複数のLED光源またはレーザ光源を使用し、各光源を例えば波長順に切り替えて照射することにより生成することもできる。互いに異なる複数の波長の光は、また、互いに異なる波長の光を出射する単一のレーザ光源を発光させることによっても生成できる。
【0030】
次に、ウェーハからの反射光を検出器の検出面に結像させ、各波長の信号を取得する(ステップS2)。
【0031】
続いて、取得した信号を加算し、画素の座標位置(x,y)、信号強度および波長の情報を含む三次元データを作成する(ステップS3)。
【0032】
次いで、パターンP1が形成された領域と異なる領域であってパターンP1と設計上同一のパターンで形成されたパターンP2の領域が視野内に来るようにウェーハを移動させ、上述した手順と同様の手順により、パターンP2について画素の座標位置(x,y)、信号強度および波長の情報を含む三次元データを作成し、この三次元データとの比較により、すなわち、ダイ・ツー・ダイ比較によりパターンP1の欠陥の有無を検出する(ステップS4)。なお、三次元データの相互比較はダイ・ツー・ダイ比較に限ることなく、例えば欠陥が無いことが予め確認された参照パターンを使用し、これについて得られた三次元データと比較してもよい。
【0033】
最後に、パターンP1が欠陥の候補であると判定された場合に、予め準備した波長、信号強度および欠陥の高さ(深さ)の関係を表すデータテーブルを参照して欠陥候補の高さまたは深さの情報を出力する(ステップS5)。
【0034】
このように、本実施の形態によれば、画素の座標位置(x,y)、信号強度および波長の情報を含む三次元データを作成するため、比較例よりも情報量がずっと多いので、欠陥見逃しの発生を抑制することができる。また、波長および信号強度と欠陥の高さ(深さ)との関係を表すデータテーブルを参照するので、欠陥の有無の情報に加えてその高さまたは深さの情報をも取得することができ、欠陥の高さ(深さ)に依存することなく欠陥のS/Nが向上するという効果が奏せられる。
【0035】
(3)第2の実施の形態
次に、図6を参照しながら第2の実施の形態によるパターン検査装置について例示する。
図6は、本実施の形態によるパターン検査装置の概略構成を例示する模式図である。
図1との対比により明らかなように、図6に例示するパターン検査装置3には、分光部18が設けられていない点に加え、検出器としてカラーCCDカメラ70が設けられている。
このような構成によっても、ウェーハWからの反射光をカラーCCDカメラ70の検出面に結像させることにより、互いに異なる複数の波長の検出信号を取得することができる。
【0036】
図6に例示するパターン検査装置3のその他の構成は、図1に例示したパターン検査装置1と実質的に同一であり、従って、その動作も分光プロセスを除いてパターン検査装置1と実質的に同一である。よって、詳細な説明は省略する。
【0037】
このように、入射光の分光によらずに互いに異なる複数の波長の検出信号を取得する手段として、結像光学系30中で、例えば対物レンズ32と結像レンズ34との間にプリズムを設けて複数の光路に分割し、分割された光路毎に所望の波長フィルタを配置することによっても、図1の検出器50と同様の検出器によって、互いに異なる複数の波長の検出信号を取得することができる。この場合、プリズムは例えば光路分割手段に対応する。
【0038】
また、互いに異なる複数の波長の検出信号を取得する他の手段として、図2に例示した分光部18と同様に所望の波長の波長フィルタが周辺に配置されたフィルタ板とアクチュエータで分光部を構成して例えば対物レンズ32と結像レンズ34との間に配置し、所望の波長の波長フィルタが反射光の光路上に位置して所望の波長の光が検出器50の検出面に入射するようにアクチュエータATによりフィルタ板FBを回動させてもよい。アクチュエータATは、第1の実施の形態と同様に、制御部40からの制御信号に従って作動させればよい。この場合、対物レンズ32と結像レンズ34との間に配置された分光部は例えば切り替え手段に対応する。
【0039】
続いて、第2の実施の形態によるパターン検査方法について説明する。
図7は、第2の実施の形態によるパターン検査方法の一例を例示するフローチャートである。
まず、光源から白色光を発してウェーハの同一領域、例えば検査対象のパターンP1が形成された領域に照射する(ステップS11)。
【0040】
次に、ウェーハからの反射光を検出器の検出面に結像させ、各波長の信号を取得する(ステップS12)。
【0041】
互いに異なる複数の波長の信号を取得するためには、検出器としてカラーCCDカメラを使用してもよいし、結像光学系30内に反射光を分光するプリズムを設けて各分光の光路に所望の複数の波長フィルタをそれぞれ設置してもよい。また、互いに異なる複数の波長の信号を取得するために、所望の波長の波長フィルタが配置されたフィルタ板を例えば対物レンズ32と結像レンズ34との間に配置し、所望の波長の波長フィルタが反射光の光路上に位置して所望の波長の光が検出器の検出面に入射するようにフィルタ板FBを回動させてもよい。
【0042】
続いて、取得した信号を加算し、画素の座標位置(x,y)、信号強度および波長の情報を含む三次元データを作成する(ステップS13)。
【0043】
次いで、パターンP1が形成された領域と異なる領域であってパターンP1と設計上同一のパターンで形成されたパターンP2の領域が視野内に来るようにウェーハを移動させ、上述した手順と同様の手順により、画素の座標位置(x,y)、信号強度および波長の情報を含むパターンP2の三次元データを作成し、作成したパターンP2の三次元データとの比較により、すなわち、ダイ・ツー・ダイ比較によりパターンP1の欠陥の有無を検出する(ステップS14)。なお、三次元データの相互比較はダイ・ツー・ダイ比較に限ることなく、例えば欠陥が無いことが予め確認された参照パターンを使用し、これについて得られた三次元データと比較してもよい。
【0044】
最後に、パターンP1が欠陥の候補であると判定された場合に、予め準備した、波長、信号強度および欠陥の高さ(深さ)の関係を表すデータテーブルを参照して欠陥候補の高さまたは深さの情報を出力する(ステップS15)。
【0045】
このように、本実施の形態によっても、画素の座標位置(x,y)、信号強度および波長の情報を含む三次元データを作成するため、比較例よりも情報量がずっと多いので、欠陥見逃しの発生を抑制することができる。また、波長および信号強度と欠陥の高さ(深さ)との関係を表すデータテーブルを参照するので、欠陥の有無の情報に加えてその高さまたは深さの情報をも取得することができ、欠陥の高さ(深さ)に依存することなく欠陥のS/Nが向上するという効果が奏せられる。
【0046】
(4)薄膜の膜厚ばらつきに起因するノイズの回避
薄膜で形成されたパターンを検査対象とするパターン検査においては、薄膜の膜厚ばらつきによる光の干渉がノイズとなる。それを回避するため、パターン検査装置の光源は、膜厚ばらつきをキャンセルできる波長幅を有することが望ましい。より具体的には、±数nm以上の波長幅を有する光源が望ましく、それを実現するためには、例えばTi:sapphireの3倍高調波でフェムト(10−15)秒オーダーのパルスレーザで波長260nm±数十nmのものを用いればよい。
【0047】
図8は、図1に例示のパターン検査装置について、ある欠陥からの反射率の波長依存性をシミュレーションにより求めたグラフ図である。薄膜干渉の影響から波長に依存して反射率は大きく変化する。そのため、図8に示す例では、波長260nm付近において反射率が低下してしまっている。そのため、通常の単一波長のレーザでは充分な感度が得られないことが分かる。そこで、例えば図1に例示のパターン検査装置において、白色光源12に替えて波長260nm±数十nmのパルスレーザ光源を用いれば、図8の反射率変動の積分強度の平均が信号強度となる。これにより、膜厚変動に対してロバストなパターン検査が可能になる。
【0048】
さらに、パルスレーザ光源に替えて、波長が互いに異なる複数のレーザが結合された広帯域光源を用いることもできる。
【0049】
図9は、深紫外光を生成するための基本光源ユニットを例示するための模式図である。図9に示す基本光源ユニット620は、赤外レーザーダイオード622と、直列に接続されたSHG(Second Harmonic Generation)素子624a,624bとを含む。赤外レーザーダイオード622とSHG素子624a、SHG素子624aとSHG素子624b間は光ファイバOFで光学的に接続される。赤外レーザーダイオード622は、波長1064nm±0.25nmの赤外レーザを出射する。この赤外レーザが2つのSHG素子624a,624bにより4倍高調波が発生し、SHG素子624bから深紫外光が出力される。
【0050】
波長と波長幅との関係は、
Δλ=Δλ266nm ×(λ266nm×/λ1064nm)
となるため、SHG素子624bから出力される深紫外光は、約266nm±1.5pmの波長幅を有する。
図10(a)および(b)は、図9に例示する基本光源ユニット620を複数用いて構成された広帯域光源を例示するための模式図である。
【0051】
図10(a)に例示する広帯域光源600は、100個の基本光源ユニット620とコンバイナ630とを備える。各基本光源ユニット620の中心波長は温度制御により互いに異なるものとなっている。そして、中心波長が互いに異なる深紫外をコンバイナ630で結合することにより、所望の波長幅の光源を得ることができる。本例の広帯域光源600では、波長幅±1.5nmの光源が実現される。勿論、この波長幅に限られることなく、元の赤外レーザーダイオード622の出射光の中心波長と基本光源ユニット620の数とを制御することにより、所望の波長幅の光源を得ることが可能になる。
【0052】
また、図10(b)に例示する広帯域光源700は、100個の基本光源ユニット620とホモジナイザ640とを備える。ホモジナイザ640は、100個の基本光源ユニット620から出力される中心波長が互いに異なる複数の深紫外光の不均一な光強度分布を均一化する。ホモジナイザ640として、具体的には、屈折で光を曲げるアレイレンズを用いるものの他、DOE(回折光学素子:Diffractive Optical Element)を用いて回折光で波面を制御するもの等を用いることができる。本実施形態において、ホモジナイザ640は例えば波面均一化光学系に対応する。
【0053】
なお、前述した各実施の形態においては、単一の光源のみならず、複数の光源が用いられる場合があるが、その場合でも、上述のパルスレーザ光源または広帯域光源は、これらの光源のそれぞれについて適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1,3:パターン検査装置、10:照明光学系、12,:光源、18:分光部、30:結像光学系、32:対物レンズ、34:結像レンズ、40:制御部、50,70:検出器、60:画像処理部、62:信号処理部、64:演算部、66:欠陥候補判定部、68:高さ(深さ)出力部、80:モニタ、90:ステージコントローラ、600,700:広帯域光源、620:基本光源ユニット、622:赤外レーザダイオード、630:コンバイナ、640:ホモジナイザ、FB:フィルタ板、MR:メモリ、P1,P2:検査対象のパターン、S:ステージ、W:ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる波長を有する光を生成して出射する照射手段と、
前記照射手段から前記異なる波長の光を、検査対象のパターンが形成された基体の同一領域に照射する照明手段と、
前記基体で反射した、互いに異なる複数の波長の反射光を検出して波長毎の信号を出力する検出手段と、
前記反射光を導いて前記検出手段に入射させ、その検出面で像結像させる結像手段と、
前記波長毎の信号を前記検出面の入射位置に対応付けて加算処理して波長および信号強度の情報を含む加算画像データを生成し、該加算画像データに基づいて検査対象のパターンにおける欠陥の有無を判定し、欠陥が有ると判定した場合に前記基体に垂直な方向における前記欠陥の位置を検出する画像処理手段と、
を備えるパターン検査装置。
【請求項2】
前記照射手段は、
単一の光源と、
前記光源からの光を所望の複数の波長に分光する複数の波長フィルタと、
前記複数の波長フィルタを選択的に切り替えて前記光源から出射した光の光路に配置する切り替え手段と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のパターン検査装置。
【請求項3】
光源と、
前記光源から発せられた光を、検査対象のパターンが形成された基体に照射する照明手段と、
前記基体から反射し、互いに異なる複数の波長の光を検出して互いに異なる複数の波長の検出信号を出力する検出手段と、
前記反射光を導いて前記検出手段に入射させ、その検出面で像結像させる結像手段と、
前記複数の波長の検出信号を前記検出面の入射位置に対応付けて加算処理して波長および信号強度の情報を含む加算画像データを生成し、該加算画像データに基づいて検査対象のパターンにおける欠陥の有無を判定し、欠陥が有ると判定した場合に前記基体に垂直な方向における前記欠陥の位置を検出する画像処理手段と、
を備えるパターン検査装置。
【請求項4】
各光源は、波長幅が±数nm~数十nmのパルスレーザを出射することを特徴とする請求項2または3に記載のパターン検査装置。
【請求項5】
各光源は、中心波長幅が±数pm以下で、中心波長が互いに異なる複数のレーザを組み合わせて出射する広帯域光源であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のパターン検査装置。
【請求項6】
前記検査対象のパターンは、第1のパターンと、該第1のパターンと設計上同一のパターンについて前記第1のパターンが形成された領域と異なる領域に形成された第2のパターンとを含み、
前記画像処理手段は、前記第1および第2のパターンについて第1および第2の加算画像データをそれぞれ生成し、
前記検出面の入射位置に対応付けて前記第1および第2の加算画像データを比較することにより前記欠陥の有無を判定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のパターン検査装置。
【請求項7】
前記画像処理手段は、欠陥が検出された場合に、波長、検出信号の強度および前記基体に垂直な方向における欠陥の位置の関係を表すデータテーブルを参照して前記欠陥の前記基体に垂直な方向における位置を判定することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のパターン検査装置。
【請求項8】
光源から発せられた光を、互いに異なる波長の光に分光し、
分光された前記異なる波長の光を、検査対象のパターンが形成された基体の同一領域に照射し、
前記基体で反射した、互いに異なる複数の波長の反射光を導いて像結像させて検出し、波長毎の信号を取得し、
前記複数の波長の検出信号を像結像面の入射位置に対応付けて加算処理して波長および信号強度の情報を含む加算画像データを生成し、該加算画像データに基づいて検査対象のパターンにおける欠陥の有無を判定し、欠陥が有ると判定した場合に前記基体に垂直な方向における前記欠陥の位置を検出する、
パターン検査方法。
【請求項9】
光源から発せられた光を、検査対象のパターンが形成された基体に照射し、
前記基体からの反射光を導いて像結像させて検出し、互いに異なる複数の波長の信号を取得し、
前記複数の波長の検出信号を像結像面の入射位置に対応付けて加算処理して波長および信号強度の情報を含む加算画像データを生成し、該加算画像データに基づいて検査対象のパターンにおける欠陥の有無を判定し、欠陥が有ると判定した場合に前記基体に垂直な方向における前記欠陥の位置を検出する、
パターン検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−202862(P2012−202862A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68485(P2011−68485)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】