説明

パターン状金属膜の製造方法

【課題】レジスト膜の厚みを比較的小さくしてかつオーバーエッチングするパターン状金属膜の製造方法において、所望パターンの金属膜を安定的に製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】金属膜上にパターン状のレジスト膜を形成する工程(A)、前記金属膜をエッチングする工程(B)を順次有するパターン状金属膜の製造方法であって、前記レジスト膜は厚みが5μm以下でかつ鉛筆硬度がB以下であり、前記工程(B)において前記レジスト膜の線幅100%に対してパターン状金属膜の線幅が80%以下となるようにオーバーエッチングする、パターン状金属膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属膜をエッチングすることによりパターン状金属膜を製造する方法に関する。詳しくは、導電性フィルム、電磁波遮蔽フィルムあるいは回路配線に用いることができるパターン状金属膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性フィルムや電磁波遮蔽フィルムのメッシュ状金属パターン、あるいは回路配線の金属パターンを製造する方法として、金属膜上にフォトリソ法あるいは印刷法によりパターン状のレジスト膜を形成した後、金属膜をエッチングする方法が知られている。
【0003】
また、金属膜のエッチング工程においてオーバーエッチング(パターン状レジスト膜の線幅に対して金属膜の線幅が小さくなるまでエッチングすること)することも知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
金属膜上に形成されるレジスト膜は、エッチング耐性等を考慮して鉛筆硬度は比較的高く設計されている。例えば、特許文献2〜5に記載されているように、レジスト膜の鉛筆硬度はHもしくはHBが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/137229号パンフレット
【特許文献2】特開平8−176886号公報
【特許文献3】特開平8−211602号公報
【特許文献4】特開平10−231326号公報
【特許文献5】特開2009−300533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、金属膜をオーバーエッチングすることは知られているが、従来の一般的なレジスト膜の鉛筆硬度はHもしくはHB以上と比較的硬いものである。このような技術背景にあって、金属膜上に形成されるパターン状のレジスト膜の厚みを比較的小さくし(例えば5μm以下)かつオーバーエッチングする場合、エッチング工程でレジスト膜が部分的に破断して欠けるという問題が発生した。レジスト膜が部分的に破断すると、その部分のエッチングが過度に進行して、所望の金属パターンが得られないと言う問題が起こった。
【0007】
従って、本発明の目的は上記従来技術の問題点に鑑み、レジスト膜の厚みを比較的小さくしかつオーバーエッチングするパターン状金属膜の製造方法において、所望パターンの金属膜を安定的に製造することができる、パターン状金属膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
1)金属膜上にパターン状のレジスト膜を形成する工程(A)、前記金属膜をエッチングする工程(B)を順次有するパターン状金属膜の製造方法であって、
前記レジスト膜は厚みが5μm以下でかつ鉛筆硬度がB以下であり、
前記工程(B)において、前記レジスト膜の線幅100%に対して金属膜の線幅が80%以下となるようにオーバーエッチングする、パターン状金属膜の製造方法。
2)前記工程(A)が、印刷法により金属膜上にパターン状のレジスト膜を形成する、前記1)に記載のパターン状金属膜の製造方法。
3)前記印刷法がグラビア印刷法である、前記2)に記載のパターン状金属膜の製造方法。
4)前記レジスト膜が、活性エネルギー線硬化型レジスト膜形成用組成物を硬化せしめたものである、前記1)〜3)のいずれかに記載のパターン状金属膜の製造方法。
【0009】
5)前記活性エネルギー線硬化型レジスト膜形成用組成物が、下記成分a及び下記成分bを少なくとも含む、前記4)に記載のパターン状金属膜の製造方法。
【0010】
成分a;1分子中に、1個以上のエチレン性不飽和基及び1個以上のエチレンオキシ基とを有する、モノマー及び/またはオリゴマー
成分b;1分子中に、カルボキシル基を1個以上有し、かつ酸価が50以上200未満である樹脂
6)前記工程(B)の後に、更に前記レジスト膜を剥離除去する工程を有する、前記1)〜5)のいずれかに記載のパターン状金属膜の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レジスト膜の薄膜化(厚みが5μm以下)とオーバーエッチングとの組み合わせにより、高精細な金属パターンを低コストで安定的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のパターン状のレジスト膜形成工程(A)により、金属膜上にパターン状レジスト膜が形成された状態の模式正面図。
【図2】図1のY−Y模式断面図。
【図3】本発明のエッチング工程(B)により、オーバーエッチングされた状態を示す模式断面図。
【図4】オーバーエッチング時のレジスト膜と金属膜との関係を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかるパターン状金属膜の製造方法は、金属膜上にパターン状のレジスト膜を形成する工程(A)、前記金属膜をエッチングする工程(B)を順次有する。以下の説明にいて、金属膜上にパターン状のレジスト膜を形成する工程(A)を単にレジスト膜形成工程(A)、金属膜をエッチングする工程(B)を単にエッチング工程(B)と言う。
【0014】
本発明に用いられる金属膜を構成する材料としては金属や金属化合物が挙げられ、これらの材料はいずれもエッチングできることが必須である。金属あるいは金属化合物としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、インジウム、アンチモン、錫、亜鉛等の金属、上記金属の酸化物、窒化物、硫化物、炭化物等の金属化合物が挙げられる。更に金属膜を構成する材料として、上記金属や上記金属化合物の複合材料(例えばインジウム錫酸化物(ITO)、アンチモン錫酸化物(ATO)等)が挙げられる。
【0015】
金属膜は導電性を有することが好ましく、金属膜の表面抵抗値は500Ω/□以下が好ましく、300Ω/□以下がより好ましく、更に100Ω/□以下が好ましく、特に50Ω/□以下が好ましい。下限は0.005Ω/□程度である。
【0016】
金属膜は単一膜であってもよいし積層膜であってもよい。金属膜の厚みは0.01〜20μmの範囲が適当であるが、本発明は金属膜の厚みが比較的小さい場合に好適であり、具体的には10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましく、特に2μm以下が好ましい。下限は0.01μm以上が好ましい。
【0017】
金属膜の厚みが上記のように比較的小さい場合、エッチング工程(B)におけるエッチング時間が比較的短くなるので、オーバーエッチング時のレジスト膜の部分的破断の抑制に有効となる。
【0018】
金属膜は、ガラス板、プラスチック板、プラスチックフィルム等の適当な基材上に積層された状態で用いることが好ましい。基材上に金属膜を積層する方法としては、基材と金属膜を接着剤等で貼合する方法、基材上に直接にメッキ方法や気相製膜法(スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等)により金属膜を製膜する方法が挙げられる。これらの中でも比較的厚みの小さい金属膜を均一に安定的に積層するという観点から気相製膜法が好ましく用いられる。
【0019】
パターン状のレジスト膜やパターン状金属膜におけるパターン状とは、特に特定の形状に限定されるものではないが、例えば電磁波遮蔽フィルム等に用いられる格子パターン、プリント配線基板等に用いられる回路パターン、タッチパネル等の電極パターンなどを挙げることができる。
【0020】
レジスト膜形成工程(A)において、金属膜上にパターン状のレジスト膜を形成する方法としては、例えばフォトリソ法あるいは印刷法を用いることができる。
【0021】
上記フォトリソ法によって金属膜上にパターン状のレジスト膜を形成する方法とは、金属膜上にレジスト膜を積層し、所望のパターンのフォトマスクを介して露光、あるいはレーザーで直接に走査露光し、現像することで、パターン状のレジスト膜を形成する方法である。金属膜上にレジスト膜を積層する方法としては、例えば、金属膜上にレジストフィルムを貼り付ける方法、あるいは液状レジストを塗布する方法が用いられる。
【0022】
上記印刷法によって金属膜上にパターン状のレジスト膜を形成する方法とは、金属膜上にレジスト膜をパターン状に印刷する方法である。このような印刷方法としては、例えば、凸版式印刷法、平版式印刷法、凹版式印刷法、孔版式印刷法等が挙げられる。これらの中でも凹版式印刷法や孔版式印刷法が好ましく、更に凹版式印刷法が好ましく用いられる。
【0023】
上記のレジスト膜形成方法の中でも生産性の観点から印刷法が好ましく、更に印刷法の中でもロール・ツー・ロール方式で連続的にパターンを形成することができることから凹版式印刷法が好ましい。
【0024】
凹版式印刷法としては、特にグラビア印刷法が好ましい。グラビア印刷法の中には、ダイレクトグラビア印刷法、オフセットグラビア印刷法があり、どちらの印刷法も好ましく用いられるが、特にダイレクトグラビア印刷法がロール・ツー・ロール方式で安定的に連続的にパターン状のレジスト膜を形成することができることから好ましい。
【0025】
上述のレジスト膜形成工程(A)で金属膜上に所定パターンのレジスト膜が形成された後、エッチング工程(B)でレジスト膜が覆われていない部分の金属膜がエッチング(溶解除去)されて、パターン状金属膜が形成される。
【0026】
エッチング工程(B)に用いられるエッチング方法としては、特に限定されないが、ケミカルエッチング法が好ましく用いられる。上記ケミカルエッチング法とは、レジスト膜で保護された金属膜部分以外の不要金属膜部分を、エッチング液で溶解し、除去する方法である。上記ケミカルエッチング法に用いられるエッチング液としては、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、アルカリエッチング液等がある。
【0027】
エッチング工程(B)におけるエッチング液の温度は20〜60℃の範囲が適当であり、25〜50℃の範囲が好ましい。処理時間は、10〜300秒の範囲が適当であり、20〜180秒の範囲が好ましい。
【0028】
本発明は、エッチング工程(B)においてオーバーエッチングされることが重要である。以下、本発明におけるオーバーエッチングについて説明する。
【0029】
図1は、レジスト膜形成工程(A)で金属膜上にパターン状レジスト膜が形成された状態の模式正面図であり、図2は図1のY−Y模式断面図である。図3は、オーバーエッチングされたときの模式断面図である。
【0030】
金属膜上にパターン状レジスト膜が形成されている図1及び図2の状態でエッチングされると、金属膜1中のレジスト膜2で被覆されていない部分がエッチングされて、レジスト膜のパターンと同様のパターンの金属膜が得られる。このエッチング工程(B)で、図3に示すようにレジスト膜2の線幅Lに対して金属膜1の線幅Mが小さくなるまでエッチングすることをオーバーエッチングという。
【0031】
本発明は、パターン状レジスト膜の線幅100%に対して、パターン状金属膜の線幅が80%以下になるまでオーバーエッチングすることを特徴とする。即ち、図3においてパターン状レジスト膜2の線幅Lを100%とすると、パターン状金属膜1の線幅Mが80%以下になるまでオーバーエッチングすることを特徴とする。
【0032】
以下、パターン状レジスト膜の線幅100%に対するパターン状金属膜の線幅の比率(%)をオーバーエッチング率と言う。つまり、本発明におけるオーバーエッチング率は80%以下である。
【0033】
オーバーエッチングされたパターン状金属膜の線の断面形状は、台形や湾曲した形状となることがあり、パターン状金属膜1の厚み方向で幅が異なることがある。従って、本発明では、パターン状金属膜の線幅は、例えばデジタルマイクロスコープ等を用いて拡大して表面観察を行い、その測長機能を用いて線幅を測定することによって求めることができる。
【0034】
同様に、パターン状レジスト膜の線幅についてもデジタルマイクロスコープ等を用いて拡大して表面観察を行い、その測長機能を用いて線幅を測定することによって求めることができる。
【0035】
また、オーバーエッチング率の測定は、線幅が同一の領域内においてパターン状レジスト膜の線幅を測定して(設計上同一線幅としている領域内で、パターン状レジスト膜の線幅を測定して)、さらに、線幅測定されたパターン状レジスト膜の領域に対応する、パターン状金属膜の領域内において線幅を測定して(線幅測定されたパターン状レジスト膜の領域に対応する、設計上同一線幅としている領域内のパターン状金属膜の線幅を測定して)、算出する。
【0036】
例えば、電磁波遮蔽フィルム等に用いられる格子パターンは、通常、電磁波遮蔽フィルムの全域が同一の格子パターン(線幅及びピッチが同一となるように設計された格子パターン)で構成されているので、パターン状レジスト膜の線幅とパターン状金属膜の線幅は、それぞれ任意の位置で測定して、オーバーエッチング率を算出することができる。
【0037】
一方、回路パターンや電極パターンのように、線幅が異なる領域が複数混在するパターンの場合(設計上、複数の線幅が存在するパターンの場合)には、線幅が同一の領域内においてパターン状レジスト膜の線幅を測定して(設計上同一線幅としている領域においてパターン状レジスト膜の線幅を測定して)、続いて、線幅測定されたパターン状レジスト膜の領域に対応する、パターン状金属膜の領域内において線幅を測定して、オーバーエッチング率を算出する。
【0038】
レジスト膜形成工程(A)で金属膜上に形成されたパターン状レジスト膜の線幅を小さくすることには限界があり、そのためパターン状レジスト膜の線幅と同程度までエッチングするという方法では、線幅がより小さい高精細のパターン状金属膜を形成することは難しい。従って線幅の小さいパターン状金属膜を得るためには、オーバーエッチングすることによって線幅がより小さい高精細なパターン状金属膜を得る方法が重要となる。
【0039】
特に、レジスト膜形成工程(A)で印刷法によりパターン状レジスト膜を形成する場合は、フォトリソ法に比べて線幅の小さいパターン状レジスト膜を得ることは難しく、上記したようにオーバーエッチングの必要性が更に大きくなる。
【0040】
また、印刷法でパターン状レジスト膜を形成する場合、線幅のより小さいパターンを形成するには、パターン状レジスト膜の厚みを小さくする方が好ましい。この観点からレジスト膜の厚みは小さくいことが好ましい。またレジスト膜の厚みを小さくすることは、原料コストの低減が図られること、後述するレジスト膜の硬化工程やレジスト膜の剥離工程の短縮化が図られること、及びレジスト膜の剥離工程に用いられる剥離液(アルカリ水溶液)の劣化を抑制できること等の利点がある。
【0041】
従って本発明において、レジスト膜形成工程(A)で金属膜上に形成されるパターン状レジスト膜の厚みは5μm以下とすることが重要である。
【0042】
しかしながら、パターン状レジスト膜の厚みを5μm以下とし、かつオーバーエッチング率が80%以下になるまでオーバーエッチングすると、図4に示すようにエッチング工程(B)でパターン状レジスト膜2が部分的に破断して欠けるという問題が新たに発生した。
【0043】
図4は、オーバーエッチング時のパターン状レジスト膜と金属膜の関係を示す模式平面図である。オーバーエッチングが進むと、パターン状レジスト膜2の線幅に対して金属膜1の線幅(点線表示)が小さくなっていくが、この過程でパターン状レジスト膜2が部分的に破断して欠けるという問題が起こる。パターン状レジスト膜2が部分的に欠けると、その欠けた部分からエッチングが進行して、金属膜1の線幅が小さくなりすぎたり、あるいは断線して、所望パターンの金属膜を製造することができなくなる。
【0044】
上記課題は、鉛筆硬度がB以下のパターン状レジスト膜を用いることにより解決する。本発明に用いられるパターン状レジスト膜の鉛筆硬度は2B以下であることが好ましく、3B以下であることがより好ましい。下限は6B程度である。
【0045】
本発明において、オーバーエッチング率(パターン状レジスト膜の線幅100%に対するパターン状金属膜の線幅の比率(%))は、75%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、特に65%以下が好ましい。下限は30%以上が好ましい。
【0046】
なお、パターン状レジスト膜の線幅100%に対してパターン状金属膜の線幅を80%以下とするためには、エッチングの条件(エッチング液の温度やエッチング液による処理時間など)を調整することで可能である。
【0047】
オーバーエッチング率とパターン状レジスト膜の鉛筆硬度との関係は、オーバーエッチング率が小さくなるほど(パターン状レジスト膜の線幅100%に対するパターン状金属膜の線幅の比率(%)が小さくなるほど)、パターン状レジスト膜の鉛筆硬度を低くする方が好ましい。具体的には、オーバーエッチング率が70%以下の場合はパターン状レジスト膜の鉛筆硬度が2B以下であることが好ましく、オーバーエッチング率が60%以下の場合はパターン状レジスト膜の鉛筆硬度が3B以下であることが好ましい。
【0048】
なお、通常パターン状レジスト膜は鉛筆硬度の測定に必要な面積を有していないので、パターン状レジスト膜の鉛筆硬度を測定することは困難である。そこで本発明では、パターン状レジスト膜の鉛筆硬度の測定は、別途鉛筆硬度測定用サンプルを作製して、該サンプルで得られる鉛筆硬度の値により代用することとする。なお鉛筆硬度測定用サンプルは、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上にレジスト膜の連続膜(例えば幅5cm以上、長さ5cm以上)を所定の厚みに形成し、所定の硬化条件で硬化して作製する。
【0049】
ここで、所定の厚みとは、実際のパターン状レジスト膜の厚みと同じ厚みを意味する。同様に所定の硬化条件とは、パターン状レジスト膜の実際の製造に用いられる硬化条件と同じ条件を意味する。上記硬化条件は、具体的には、熱硬化型レジスト組成物の場合は加熱温度と加熱時間であり、活性エネルギー線硬化型レジスト組成物の場合は活性エネルギー線の照射量(例えば紫外線硬化型の場合は紫外線の積算光量)である。
【0050】
本発明にかかるレジスト膜は、熱硬化型あるいは活性エネルギー線硬化型のレジスト膜形成用組成物(以下、単にレジスト組成物と言う)を硬化せしめた膜であることが好ましく、特に活性エネルギー線硬化型レジスト組成物を硬化せしめた膜であることが好ましい。
以下、本発明に好ましく用いられる活性エネルギー線硬化型レジスト組成物について説明する。
【0051】
活性エネルギー線硬化型レジスト組成物は、1分子中に、1個以上のエチレン性不飽和基及び1個以上のエチレンオキシ基とを有するモノマー及び/またはオリゴマー(以下、成分aと言う)、並びに、1分子中に、カルボキシル基を1個以上有し、かつ酸価が50以上200未満である樹脂(以下、成分bと言う)とを少なくとも含むことが好ましい。
【0052】
レジスト膜の鉛筆硬度の調整は、上記活性エネルギー線硬化型レジスト組成物において、例えば成分aと成分bの混合比率を調整することによって、あるいは成分aの種類(エチレン性不飽和基の数等)を調整することによって可能である。
【0053】
成分aに含まれるエチレン性不飽和基の数は2〜10個であること好ましく、2〜6個がより好ましく、特に2〜4個が好ましい。また、成分aに含まれるエチレンオキシ基の数は2〜12個が好ましく、3〜10個がより好ましく、特に4〜8個が好ましい。
【0054】
つまり、成分aとして好ましい化合物は、1分子中にエチレン性不飽和基を2〜10個有しかつエチレンオキシ基を2〜12個有する化合物であり、成分aとして更に好ましい化合物は、1分子中にエチレン性不飽和基の数は2〜6個有しかつエチレンオキシ基を3〜10個有する化合物であり、成分aとして特に好ましい化合物は、1分子中にエチレン性不飽和基の数は2〜4個有しかつエチレンオキシ基を4〜8個有する化合物である。
【0055】
上記エチレン性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0056】
また、成分aの数平均分子量は2000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、特に1000以下が好ましい。
【0057】
成分aの好ましい化合物(モノマー、オリゴマー)としては、例えばポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO−PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO−PO変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO−PO変性ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、EO−PO変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO−PO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO−PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
上記の例示化合物において、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を表す。
【0059】
レジスト組成物が成分aを含むことによって、従来のレジスト膜に比べて鉛筆硬度を低くすることが可能であり、鉛筆硬度がB以下のレジスト膜を形成することができる。
【0060】
また、レジスト組成物が成分aを含むことによって、後述するアルカリ水溶液によるレジスト膜の剥離工程においてレジスト膜の膨潤による剥離が容易となり、その結果、アルカリ水溶液中へのレジスト膜成分の溶出濃度の上昇が抑制され、アルカリ水溶液の劣化やレジスト膜成分の再析出を抑制することができる。
【0061】
上記したようにレジスト組成物は成分bを含むことが好ましく、かかる成分bは、1分子中にカルボキシル基を1個以上有しかつ酸価が50以上200未満の樹脂である。更に成分bとしては、酸価が70以上150未満の樹脂が好ましい。上記酸価は、JISK2501(2003年)に定められた測定方法により測定することができる。
【0062】
成分bとしては、アルカリ可溶性樹脂として知られている樹脂の中から、上記条件を満足する樹脂を用いることができる。成分bとしては例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂などが挙げられる。
【0063】
レジスト組成物に成分bを含ませることによって、後述するアルカリ水溶液によるレジスト膜の剥離工程においてレジスト膜の剥離性が向上し、更にアルカリ水溶液中へのレジスト膜成分の溶出濃度の上昇が抑制される。
【0064】
レジスト組成物における上記成分aの含有量は、レジスト膜の鉛筆硬度をB以下に調整しながら耐エッチング性を確保するという観点から、レジスト組成物の固形分総量100質量%に対して20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、特に30質量%以上が好ましい。また、レジスト膜の剥離工程における良好な剥離性を確保するという観点から、成分aの含有量の上限は70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、特に50質量%以下が好ましい。
【0065】
レジスト組成物における上記成分bの含有量は、レジスト膜の剥離工程における良好な剥離性を確保するという観点から、レジスト組成物の固形分総量100質量%に対して30質量%以上が好ましく、35質量%以上が好ましく、特に40質量%以上が好ましい。また、耐エッチング性を確保するという観点から、成分bの含有量の上限は、75質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、特に55質量%以下が好ましい。
【0066】
上記の耐エッチング性とは、エッチング工程(B)でのエッチング液によるレジスト膜の浸食耐性のことであり、レジスト膜の耐エッチング性が悪化すると、レジスト膜にピンホール等が発生し、そのピンホールから金属膜の溶解が広がり、本来のエッチング部分でない部分が溶解するという不都合が生じる。
【0067】
レジスト組成物は、皮膜強度(レジスト膜の強度)を調整するために成分a以外のモノマー及び/またはオリゴマーを含むことができる。かかる成分a以外の好適に使用されるモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレートなどが挙げられ、また、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類などの多官能性モノマー、あるいは多官能性オリゴマーも用いることができる。
【0068】
上記した成分a以外のモノマー及び/またはオリゴマーの含有量は、成分a100質量部に対して50質量部以下の範囲で調整することが好ましく、40質量部以下の範囲で調整することがより好ましく、更に30質量部以下の範囲で調整することが好ましく、特に20質量部以下の範囲で調整することが好ましい。
【0069】
レジスト組成物は、更にチキソトロピック付与剤を含有することが好ましい。ここで、チキソトロピック付与剤とは、レジスト組成物にチキソトロピック性を発現させるための物質である。チキソトロピック性とは、撹拌、振動、ズリ速度などの増加により、流体粘度が低下する現象を指す。詳しくは、成書「レオロジーの世界」(尾崎邦宏著、工業調査会(2004年発行)、p114)に記載されている。
【0070】
本発明のレジスト組成物に適度なチキソトロピー性を付与することによって流動性や曳糸性が改善され、その結果高精細なパターンを印刷することができる。
【0071】
かかるチキソトロピック付与剤としては、脂肪酸アミド系ワックス、酸化ポリオレフィン系ワックス、アクリル系ワックス等の有機系チキソトロピック付与剤、シリカ微粒子、カーボンブラック、ベントナイト、タルク、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機系チキソトロピック付与剤が挙げられる。
【0072】
チキソトロピック付与剤の含有量は、レジスト組成物の固形分総量100質量%に対して、1〜20質量%の範囲が適当であり、2〜15質量%の範囲が好ましい。
【0073】
レジスト組成物は、更に着色剤を含むことができる。着色剤としてはカーボンブラック、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ビクトリアブルー、メチルバイオレット等の顔料及び染料が挙げられる。これらは単独あるいは混合して用いてもよい。
【0074】
レジスト組成物は、更に光重合開始剤を含有することが好ましい。かかる光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などが挙げられ、これらの光重合開始剤を単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて使用してもよい。
【0075】
光重合開始剤の含有量は、成分a100質量部に対して、1〜30質量部の範囲が適当である。
【0076】
レジスト組成物は、印刷に適した粘度に調整するため、有機溶媒を含有することが好ましい。かかる有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のアセテート類、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等のケトン類、ブタノール、イソブチルアルコール、ペンタノ−ル、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられ、これらの有機溶媒は単独あるいは混合して使用することができる。
【0077】
上記の有機溶媒の含有量は、レジスト組成物100質量%に対して、5〜50質量%の範囲が適当であり、10〜40質量%の範囲が好ましく、15〜35質量%の範囲がより好ましい。
【0078】
レジスト組成物の製造方法としては、特に限定されず、具体的には、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ディスパー、ニーダー、ミキサー等を組み合わせて、前述の成分aや成分bなどを混合することで製造することができる。
【0079】
レジスト組成物の粘度(25℃の粘度)は、レジスト膜形成工程(A)で印刷法を用いる場合は、剪断速度100(1/s)において、0.03〜30Pa・sの範囲が好ましく、0.1〜10Pa・sの範囲がより好ましく、特に1〜10Pa・sの範囲が好ましい。
【0080】
レジスト膜形成工程(A)において印刷法を用いる場合は、レジスト組成物が金属膜上に所定パターンに印刷された後、活性エネルギー線が照射され硬化してパターン状レジスト膜が形成される。
【0081】
また、前述したように、レジスト組成物が有機溶媒を含有する場合は、レジスト組成物を金属膜上に印刷した後、活性エネルギー線を照射する前に、加熱、乾燥することが好ましい。
【0082】
金属膜上に印刷されたレジスト組成物を硬化させるために照射される活性エネルギー線としては、紫外線、電子線および放射線(α線、β線、γ線など)等が挙げられ、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性エネルギー線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行うと、効率よく硬化させることができる。またさらに、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、印刷されたレジスト組成物中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
【0083】
本発明において、レジスト組成物を硬化させる方法としては、紫外線を照射して硬化させる方法が、比較的簡単な装置で高い生産性が得られるので好ましい。
【0084】
レジスト膜形成工程(A)で金属膜上に形成されるパターン状レジスト膜の厚みは、前述したように5μm以下であることが重要であるが、好ましくは4μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、特に2μm以下が好ましい。パターン状レジスト膜の厚みの下限は0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。ここで、パターン状レジスト膜の厚みは、パターンを構成する線の幅方向における最大厚みである。
【0085】
パターン状レジスト膜の厚みが0.5μmより小さくなると、オーバーエッチング時のパターン状レジスト膜の部分的破断の課題を十分に解決することができないことがある。
【0086】
パターン状レジスト膜の厚みが5μmを越えると、前述した問題に加えて、後述するアルカリ水溶液によるパターン状レジスト膜の剥離工程の処理負荷が大きくなるという問題がある。
【0087】
エッチング工程(B)で金属膜がエッチングされてパターン状金属膜が形成された後、パターン状レジスト膜を剥離除去することが好ましい。かかるレジスト膜の剥離除去工程では、通常アルカリ水溶液を用いてレジスト膜が剥離除去される。
【0088】
パターン状レジスト膜剥離除去工程に用いられるアルカリ水溶液としては、1〜5質量%の水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等が挙げられる。アルカリ水溶液の温度は20〜60℃の範囲が適当であり、30〜55℃の範囲が好ましい。アルカリ水溶液での処理時間は、5〜100秒の範囲が適当であり、20〜80秒の範囲が好ましい。
【0089】
前述したようにパターン状金属膜は、ガラス板、プラスチック板、プラスチックフィルム等の適当な基材上に積層された状態で用いることが好ましい。上記基材の中でも、レジスト膜形成工程(A)においてロール・ツー・ロール方式で連続的にパターンを形成するという観点から、プラスチックフィルムが好ましく用いられる。
【0090】
上記プラスチックフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等が挙げられる。
【0091】
プラスチックフィルムの厚みとしては、20〜300μmの範囲が適当であるが、コストの取り扱い性の観点から50〜250μmの範囲が特に好ましい。
【0092】
上記プラスチックフィルムは、金属膜あるいはパターン状金属膜との密着性(接着強度)を強化するための易接着層が予め積層されたプラスチックフィルムであることが好ましい。つまり基材としては、易接着層を有するプラスチックフィルムを用いることが好ましい。
【0093】
かかる易接着層は、水溶性樹脂もしくは水分散性樹脂を用いたものが一般的に知られており、本発明においても好ましく用いられる。水溶性樹脂もしくは水分散性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が用いられる。易接着層には、更に架橋剤を含有させるのが好ましく、架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物等が挙げられる。また、易接着層には、更に無機微粒子(例えばシリカ微粒子)を含有させるのが好ましい。
【0094】
易接着層の厚みは、5〜500nmの範囲が適当であり、10〜300nmの範囲が好ましく、20〜200nmの範囲がより好ましい。易接着層は、プラスチックフィルムを製造した後、製膜してもよいし、プラスチックフィルムの製造時にインラインで製膜してもよい。
【実施例】
【0095】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、本実施例における測定方法及び評価方法は下記の通りである。
(1)パターン状レジスト膜の鉛筆硬度の測定
厚み100μmのPETフィルム上に、レジスト組成物を乾燥・硬化後の厚み(レジスト膜の厚み)が1.5μmとなるように塗布し、60℃の熱風により乾燥させ、高圧水銀UVランプの紫外線を積算光量200mJ/cmにて照射して硬化させてレジスト膜を形成する。このレジスト膜の鉛筆硬度を、基材として厚み100μmのPETフィルムを用いる以外は、JIS K 5600−5−4(1999)に従って測定する。このようにして得られた鉛筆硬度の値を、パターン状レジスト膜の鉛筆硬度の値とした。
(2)パターン状レジスト膜の厚みの測定
ミクロトームにてサンプル断面を切り出し、その断面を電解放射型走査電子顕微鏡((株)日立製S―800、加速電圧26kV、観察倍率3000倍)にて観察し、パターン状レジスト膜の最大部の厚みを計測した。つまり、サンプルサイズは20cm×20cmサイズとして、任意の5箇所について、それぞれの幅方向における最大厚みを測定し、その平均値をパターン状レジスト膜の厚みとする。
(3)パターン状レジスト膜の線幅の測定
レジスト形成工程(A)で金属膜上にパターン状のレジスト膜を形成したサンプルを、デジタルマイクロスコープ(例えば、キーエンス製のVHX−200)を用いて倍率450倍で表面観察を行い、その測長機能を用いて線幅を測長する。サンプルサイズは、20cm×20cmで任意の5箇所について測定し、その平均値をレジスト膜の線幅とする。
(4)パターン状金属膜の線幅の測定
エッチング工程(B)及びレジスト膜剥離工程を経て得られたパターン状金属膜を、デジタルマイクロスコープ(例えば、キーエンス製のVHX−200)を用いて倍率450倍で表面観察を行い、その測長機能を用いて線幅を測長する。サンプルサイズは、20cm×20cmで任意の5箇所について測定し、その平均値を金属膜の線幅とする。
(5)オーバーエッチング率
上記(3)及び(4)で求められたパターン状レジスト膜とパターン状金属膜の線幅からオーバーエッチング率(パターン状レジスト膜の線幅100%に対するパターン状金属膜の線幅の比率(%))を算出した。
(6)パターン状金属膜の評価
得られたパターン状金属膜を観察して以下の基準で評価した。
【0096】
◎;細線に部分的な欠けや断線が全く認められない。
【0097】
○;細線に僅かに欠けがあるが実用的に問題ない。
【0098】
×;細線が部分的に大きく欠けているか、あるいは細線が断線している。
(実施例1、実施例2)
以下の要領でパターン状金属膜を製造した。
【0099】
<金属膜の製造>
両面に易接着層を有する厚み100μmのPETフィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)U426)の片面に、金属膜としてニッケルのスパッタ膜(厚み0.02μm)と銅の真空蒸着膜(厚み1.5μm)をこの順に積層した。
【0100】
<レジスト膜形成工程(A)>
上記で製造された金属膜の表面に、下記のレジスト組成物を格子パターン状にダイレクトグラビア印刷法により印刷した。次に60℃の熱風により乾燥させ、高圧水銀UVランプの紫外線を積算光量200mJ/cmにて照射して硬化させることで、パターン状のレジスト膜を形成した。格子パターン状レジスト膜の厚みは1.5μmで線幅は50μmであった。
【0101】
<レジスト組成物>
成分bとして東亞合成(株)製ARUFON−UC−3000(アクリル樹脂、酸価74)を34.4質量部量り取り、トリエチレングリコールジメチルエーテル21質量部に溶解させた。そこに、着色剤として三菱化学(株)製カーボンブラック#40を5質量部加えて三本ロールミルにて混合した。次に成分aとして新中村化学工業(株)製A−BPE−4(EO変性アクリルモノマー;EO数が4個の2官能性モノマー)13.8質量部と共栄社化学(株)製ライトアクリレートTMP−6EO−3A(EO変性アクリルモノマー;EO数が6個の3官能性モノマー)13.8質量部を加え混合撹拌した。更にチキソトロピック付与剤として楠本化成(株)製ディスパロンDFA−220を7質量部と、光重合開始剤としてチバスペシャリティケミカル(株)製イルガキュア184を5質量部加えて混合撹拌した。
【0102】
<エッチング工程(B)>
レジスト膜で覆われていない部分の金属膜を、30〜33℃の温度範囲に調節したエッチング液(塩化第2鉄水溶液(42° Be))でエッチングしてパターン状金属膜を形成した。
【0103】
上記エッチング工程(B)でエッチング時間を調整して、オーバーエッチング率(パターン状レジスト膜の線幅100%に対するパターン状金属膜の線幅の比率(%))が、50%となるサンプル(実施例1)、及び70%となるサンプル(実施例2)を作製した。
【0104】
<レジスト膜剥離工程>
パターン状金属膜の上のレジスト膜を、50℃の温度範囲に調節した2質量%の水酸化ナトリウム水溶液で30秒間剥離した。
(実施例3、実施例4)
実施例1のレジスト組成物を下記のレジスト組成物に変更する以外は、実施例1、2と同様にして、オーバーエッチング率が50%となるサンプル(実施例3)、及び70%となるサンプル(実施例4)を作製した。
【0105】
<レジスト組成物>
成分bとして東亞合成(株)製ARUFON−UC−3000(アクリル樹脂、酸価74)を32質量部量り取り、トリエチレングリコールジメチルエーテル21質量部に溶解させた。そこに、着色剤として三菱化学(株)製カーボンブラック#40を5質量部加えて三本ロールミルにて混合した。次に成分aとして新中村化学工業(株)製A−BPE−4(EO変性アクリルモノマー;EO数が4個の2官能性モノマー)15質量部と共栄社化学(株)製ライトアクリレートTMP−6EO−3A(EO変性アクリルモノマー;EO数が6個の3官能性モノマー)15質量部を加え混合撹拌した。更にチキソトロピック付与剤として楠本化成(株)製ディスパロンDFA−220を7質量部と、光重合開始剤としてチバスペシャリティケミカル(株)製イルガキュア184を5質量部加えて混合撹拌した。
(実施例5、実施例6)
実施例1のレジスト組成物を下記のレジスト組成物に変更する以外は、実施例1、2と同様にして、オーバーエッチング率が50%となるサンプル(実施例5)、及び70%となるサンプル(実施例6)を作製した。
【0106】
<レジスト組成物>
成分bとして東亞合成(株)製ARUFON−UC−3000(アクリル樹脂、酸価74)を34.4質量部量り取り、トリエチレングリコールジメチルエーテル21質量部に溶解させた。そこに、着色剤として三菱化学(株)製カーボンブラック#40を5質量部加えて三本ロールミルにて混合した。次に成分aとして新中村化学工業(株)製A−BPE−4(EO変性アクリルモノマー;EO数が4個の2官能性モノマー)17.6質量部、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10質量部を加え混合撹拌した。更にチキソトロピック付与剤として楠本化成(株)製ディスパロンDFA−220を7質量部と、光重合開始剤としてチバスペシャリティケミカル(株)製イルガキュア184を5質量部加えて混合撹拌した。
(比較例1)
実施例1のレジスト組成物を下記のレジスト組成物に変更する以外は、実施例1、2と同様にしてパターン状金属膜を製造した。
但し、エッチング工程(B)において、エッチング時間を調整してオーバーエッチング率(レジスト膜の線幅100%に対する金属膜の線幅の比率(%))が、70%となるサンプル(比較例1)、及び90%となるサンプル(比較例2)を作製した。
【0107】
<レジスト組成物>
成分bとして東亞合成(株)製ARUFON−UC−3000(アクリル樹脂、酸価74)を34.4質量部量り取り、トリエチレングリコールジメチルエーテル21質量部に溶解させた。そこに、着色剤として三菱化学(株)製カーボンブラック#40を5質量部加えて三本ロールミルにて混合した。次に成分aとして新中村化学工業(株)製A−BPE−4(EO変性アクリルモノマー;EO数が4個の2官能性モノマー)13.8質量部、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート13.8質量部を加え混合撹拌した。更にチキソトロピック付与剤として楠本化成(株)製ディスパロンPFA−220を7質量部と、光重合開始剤としてチバスペシャリティケミカル(株)製イルガキュア184を5質量部加えて混合撹拌した。
(比較例2〜4)
実施例1のレジスト組成物を東洋紡績(株)製の「エッチング・レジストER−112N」に変更する以外は、実施例1、2と同様にしてパターン状金属膜を製造した。
但し、エッチング工程(B)において、エッチング時間を調整してオーバーエッチング率(レジスト膜の線幅100%に対する金属膜の線幅の比率(%))が、70%となるサンプル(比較例3)、及び90%となるサンプル(比較例4)を作製した。
<評価>
上記の実施例及び比較例について測定及び評価した結果を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
表1の結果から、本発明の実施例はレジスト膜の厚みが5μm以下でかつオーバーエッチング率が80%以下であってもレジスト膜の部分的な破断がなく、所望パターンの金属膜が得られていることが分かる。
【0110】
一方、比較例はレジスト膜の厚みが5μm以下でかつオーバーエッチング率が80%以下になると、レジスト膜が部分的に破断して欠けており、その結果パターン状金属膜の細線が部分的に大きく欠けているか、あるいは細線が断線していた。
【符号の説明】
【0111】

1 金属膜
2 レジスト膜
3 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属膜上にパターン状のレジスト膜を形成する工程(A)、前記金属膜をエッチングする工程(B)を順次有するパターン状金属膜の製造方法であって、
前記レジスト膜は厚みが5μm以下でかつ鉛筆硬度がB以下であり、
前記工程(B)において、前記レジスト膜の線幅100%に対してパターン状金属膜の線幅が80%以下となるようにオーバーエッチングする、パターン状金属膜の製造方法。
【請求項2】
前記工程(A)が、印刷法により金属膜上にパターン状のレジスト膜を形成する、請求項1に記載のパターン状金属膜の製造方法。
【請求項3】
前記印刷法がグラビア印刷法である、請求項2に記載のパターン状金属膜の製造方法。
【請求項4】
前記レジスト膜が、活性エネルギー線硬化型レジスト膜形成用組成物を硬化せしめたものである、請求項1〜3のいずれかに記載のパターン状金属膜の製造方法。
【請求項5】
前記活性エネルギー線硬化型レジスト膜形成用組成物が、下記成分a及び下記成分bを少なくとも含む、請求項4に記載のパターン状金属膜の製造方法。
成分a;1分子中に、1個以上のエチレン性不飽和基及び1個以上のエチレンオキシ基とを有する、モノマー及び/またはオリゴマー
成分b;1分子中に、カルボキシル基を1個以上有し、かつ酸価が50以上200未満である樹脂
【請求項6】
前記工程(B)の後に、更に前記レジスト膜を剥離除去する工程を有する、請求項1〜5のいずれかに記載のパターン状金属膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−243833(P2012−243833A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110033(P2011−110033)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】