説明

パッキン

【課題】より軽微な押圧でも確実な気密性が得られるパッキンを提供すること。
【解決手段】弾性材料からなる長尺部材であり、中空部分2aを有する筒部2と、該筒部2に形成され取付に寄与する係止部3と、上記筒部2の上記係止部3と反対側に形成されたヒレ部4とからなり、上記筒部2と上記係止部4とが断面略コの字形状をなすように形成されており、略コの字形状開口部分において、上記筒部2には上記係止部3と上記筒部2との間隔が広くなるように傾斜部2bが形成されており、上記ヒレ部4が、上記中空部分2aの内径を2等分する線よりも傾斜部2b側に形成されているパッキン1。上記ヒレ部4が、先端にいくに従って筒部2から離れるように反った形状であるパッキン1。上記係止部3の先端に、かえし部3aと突起部3cが形成されているパッキン1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子レンジ、温蔵庫、蒸し器、乾燥機、クーラーボックス、炊飯器、ジャーポット、食器洗浄器などに好適に使用可能なパッキンに係り、特に、より軽微な押圧でも確実な気密性が得られるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子レンジの扉部分等には、電子レンジ内部の空気が外部に漏れないように、例えば、特許文献1のようなシリコーンゴム等からなるパッキンが取付けられ、このパッキンにより気密が図られていた。
【0003】
ここで、近年における電子レンジには、マイクロ波による加熱のみではなく、スチーム機能を付加したものがある。このようなスチーム機能を付加した電子レンジの場合、電子レンジ内部で大量に発生する水蒸気が外部に漏れないようにするため、パッキンによる気密性を更に高める必要がある。パッキンにより気密を図る際には、押圧の力を強くすることで気密性を高めることが考えられるが、この場合、上記した従来技術に記載されたようなパッキンでは、パッキンを保持している樹脂基材に余計な力が掛かり、樹脂基材が歪んでそこから水蒸気が漏れてしまう恐れがある。また、余計な力が掛からないようにパッキンの硬度を低いものとした場合には、パッキンが樹脂基材から外れ易くなるという別の問題が生じてしまう。
【0004】
このような問題に対し、軽微な押圧でも充分な気密性が得られるパッキンとして、例えば、特許文献2のような、弾性材料からなり、中空部分を有する筒部と、該筒部に形成され取付に寄与する係止部と、上記筒部の上記係止部と反対側に形成されたヒレ部とからなるパッキンにおいて、上記筒部と上記係止部とが断面略コの字形状をなすように形成されているとともに、略コの字形状開口部分において、上記筒部には上記係止部と上記筒部との間隔が広くなるように傾斜部が形成されているパッキンが発明されている。また、関連する技術として、例えば、特許文献3〜5などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−26459号公報:松下電器産業
【特許文献2】特開2007−46657号公報:クラベ
【特許文献3】特開2007−78199公報:松下電器産業
【特許文献4】意匠登録第1275238公報:松下電器産業
【特許文献5】意匠登録第1275400公報:松下電器産業
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなパッキンでも充分な気密性は得られていたが、昨今においては、より高度な要求がなされており、より軽微な押圧でより確実な気密性が得られるパッキンが要求されている。
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、より軽微な押圧でも確実な気密性が得られるパッキンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく、本発明の請求項1によるパッキンは、弾性材料からなる長尺部材であり、中空部分を有する筒部と、該筒部に形成され取付に寄与する係止部と、上記筒部の上記係止部と反対側に形成されたヒレ部とからなり、上記筒部と上記係止部とが断面略コの字形状をなすように形成されているとともに、略コの字形状開口部分において、上記筒部には上記係止部と上記筒部との間隔が広くなるように傾斜部が形成されているパッキンにおいて、上記ヒレ部が、上記中空部分の内径を2等分する線よりも傾斜部側に形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項2記載のパッキンは、上記ヒレ部が、先端にいくに従って筒部から離れるように反った形状であることを特徴とするものである。
又、請求項3記載のパッキンは、上記係止部の先端には、上記断面略コの字形状の内側に向けてかえし部が形成されているとともに、上記係止部には上記かえし部に対向する位置に突起部が形成されていることを特徴とするものである
又、請求項4記載のパッキは、上記筒部と上記係止部の境界部分近傍において、上記略コの字形状開口部と反対側に突出部が形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項5記載のパッキンは、上記弾性材料がシリコーンゴムからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のパッキンによれば、中空部分、ヒレ部、傾斜部の3つのクッション要素により、軽微な押圧であっても充分な気密性を得ることができる。更に、ヒレ部が、上記中空部分の内径を2等分する線よりも傾斜部側に形成されているため、押圧を受けた際にヒレ部が確実に傾斜部側に倒れこむことになる。そのため、ヒレ部が逆側に倒れてしまうことを防止でき、傾斜部によるクッションを確実に得ることができる。勿論、パッキンを取付けた基材に余計な力が掛かり、基材が歪んでしまうようなことはない。
また、ヒレ部が、先端にいくに従って筒部から離れるように反った形状であれば、より気密性を高めることができる。
また、係止部の先端にかえし部を形成し、このかえし部に対向する位置に突起が形成されていれば、パッキンを基材等に取付けた際に引っ掛かりとなって固定することができ、また、外力が加わったとしても係止部が変形し難くなるため、パッキンが基材等から外れ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における実施の形態を示す図で、パッキンの端面図である。
【図2】本発明における他の実施の形態を示す図で、パッキンの端面図である。
【図3】本発明のパッキンの実使用例を示す図で、(a)は電子レンジの斜視図、(b)は(a)におけるB−B´断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明による実施の形態の一例を説明する。図1に示すように、横幅が5.4mm、高さが7.1mm、長さが1200mmのパッキン1がある。中空部2aを有する筒部2には、断面略コの字形状となるように係止部3が形成され、また、係止部3の反対側には、ヒレ部4が形成されている。
【0012】
パッキン1を構成する材料としては、弾性材料であれば何でも良く、特に制限はない。例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ウレタンゴムなどのゴム材料が挙げられる。この中でもシリコーンゴムは、低温から高温までの耐久性に優れ、柔軟であり、耐候性にも優れるとともに、無臭且つ食品衛生上問題が生じることがないことから、種々の用途に展開できるため好ましい。特に、JIS−A硬度計で測定した硬度が40〜80(JIS−C2123に準拠)であれば、軽微な力でも確実な気密性が得られるとともに、パッキンが基材から容易に外れてしまうことを防止できるため好ましい。また、上記したパッキンを構成する材料には、充填剤、顔料、耐熱向上剤、難燃剤等の各種添加剤を必要に応じて適宜配合しても良い。このようなものとして、例えば、シリカ、珪藻土、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、マイカ、クレイ、炭酸亜鉛、炭酸マンガン、水酸化セリウム、ガラスビーズ、ポリジメチルシロキサン、アルケニル基含有ポリシロキサン、ポリオルガノシルセスキオキサンなどが挙げられる。又、複数種類の材料を配合しても良い。又、上記したゴム材料等を発泡させて使用しても良い。
【0013】
又、上記したようなゴム材料を成形品として使用する際には、架橋する必要があるため、架橋剤が配合されることになるが、この架橋剤としては、一般的に用いられているものであればなんでも良く、特に限定されない。例えば、シリコーンゴムの場合、2,5ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらは、使用するゴム材料を考慮して適宜に選択する。
【0014】
パッキン1の成形に際しては、従来公知の種々の成形法を用いれば良く、例えば、射出成形、プレス成形、押出成形など特に制限はないが、生産性に優れるという点から押出成形により成形することが好ましい。このようにして所定形状に成形した後、加熱することで架橋をし、パッキン1とする。
【0015】
本発明においては、上記したように、ヒレ部4、筒部2に形成された中空部分2a、筒部2に形成された傾斜部2b、を有している。そのため、「ヒレ部4が筒部2側に倒れることによるクッション」「中空部分2aが潰れることによるクッション」「傾斜部2bにより筒部2全体が倒れることによるクッション」の3つのクッション要素を得ることができる。そのため、軽微な力であっても、充分な気密性を得ることが可能となる。この際、ヒレ部4が、中空部分2aの内径を2等分する線Cよりも傾斜部2b側に形成されているため、押圧を受けた際にヒレ部4が確実に傾斜部2b側に倒れこむことになる。そのため、ヒレ部4が逆側に倒れてしまうことを防止でき、傾斜部2bによるクッションを確実に得ることができる。また、ヒレ部4が先端にいくに従って筒部2から離れるように反った形状であれば、相手部材に向かっていく形状となるため、より気密性を高めることができる。
【0016】
尚、図1に示すように、筒部2と係止部3の境界部分近傍において、略コの字形状開口部と反対側に突出部5を形成しても良い。こうすることで、パッキン1の略コの字形状開口部と反対側に隙間が生じた場合でも、突出部5によりこの隙間を塞ぐことができる。
【0017】
又、図1に示すように、係止部3には、かえし部3aを形成しても良い。こうすることにより、パッキン1を基板等に取付けた際に外れ難くすることができる。また、係止部3にも傾斜部3bを形成しても良い。こうすることで、基板等にパッキン1を取付け易くすることができる。この際、係止部におけるかえし部3aに対向する位置に突起部3cが形成されていれば、外力が加わったとしてもかえし部3aが変形し難くなるため、パッキン1が基材等から外れ難くなる。突起部3cは、複数形成しても良い。例えば、係止部3の先端に突起部3cを形成するだけでなく、図1における略コの字開口部に向かう部分の根元に突起部3dを形成することも考えられる。パッキン1が図3(b)における上方向に外れる際には、係止部3の根元部分を支点にして回転するように外れることになるが、このような突起部3dを形成すれば、この突起部3dが扉11に当たってパッキン1が外れ難くなる。
【0018】
本発明によるパッキン1の使用態様として、端面ともう一方の端面とを接着剤等で接合し、リング状にして使用することも考えられる。
【0019】
図3は、図1に示すパッキン1を上記のようにリング状とし、電子レンジ10に使用されるパッキンとして適用した例である。電子レンジ10の扉11の内側は、樹脂製の基板12が扉11に嵌め込まれる構造となっており、この基板12にパッキン1が取付けられる。基板12へのパッキン1の取付けは、図3(B)に示すように、筒部2と係止部3とによる断面略コの字形状部分に基板12を嵌入することによりなされる。このようにパッキン1が取付けられた状態で扉11を閉めると、パッキン1は押圧を受けることになるが、この押圧は基材12が歪まないように、触れる程度の軽微な押圧となる。本発明によるパッキン1であれば、上記したように、ヒレ部4が確実に傾斜部2b側に倒れこむことになり、中空部分2a、ヒレ部4、傾斜部2bの3つのクッション要素を有していることから、このような軽微な押圧であっても充分な気密性を得ることができる。そのため、電子レンジ10のスチーム機能を実際に使用してみたが、水蒸気が漏れるようなことは全くなかった。
【0020】
尚、本発明は、上記した図1に示すようなパッキンに限定されるものではない。例えば、図2に示すように、中空部分2aの内径を2等分する線Cよりも傾斜部2b側に形成されていれば、ヒレ部4を垂直に形成しても良い。
【0021】
又、係止部3についても、図1に示す形状に限定されることはなく、図2に示すように、傾斜部3bを形成しない形状でも良いし、かえし部3aを形成しない形状でも良い。又、突起部3cや突起部3dについても形成しない形状でも良い。要は、筒部2と係止部3とが断面略コの字形状をなすように形成されていれば良く、詳細については取付ける基板の形状等に応じて適宜に設計すれば良い。
【0022】
又、突出部5は、必要に応じて適宜に形成すれば良く、突出部5の形状についても目的に応じて適宜設計すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上、詳述したように本発明によれば、より軽微な押圧でも確実な気密性を得ることができるパッキンを提供することができる。従って本発明によるパッキンは、例えば、電子レンジ、温蔵庫、蒸し器、乾燥機、クーラーボックス、炊飯器、ジャーポット、食器洗浄器などなどをはじめとして、各種密封手段に好適に使用が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 パッキン
2 筒部
2a 中空部
2b 傾斜部
3 係止部
3a かえし部
3b 傾斜部
3c 突起部
4 ヒレ部
5 突出部
10 電子レンジ
11 扉
12 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料からなる長尺部材であり、中空部分を有する筒部と、該筒部に形成され取付に寄与する係止部と、上記筒部の上記係止部と反対側に形成されたヒレ部とからなり、
上記筒部と上記係止部とが断面略コの字形状をなすように形成されているとともに、略コの字形状開口部分において、上記筒部には上記係止部と上記筒部との間隔が広くなるように傾斜部が形成されているパッキンにおいて、
上記ヒレ部が、上記中空部分の内径を2等分する線よりも傾斜部側に形成されていることを特徴とするパッキン。
【請求項2】
上記ヒレ部が、先端にいくに従って筒部から離れるように反った形状であることを特徴とする請求項1記載のパッキン。
【請求項3】
上記係止部の先端には、上記断面略コの字形状の内側に向けてかえし部が形成されているとともに、上記係止部には上記かえし部に対向する位置に突起部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のパッキン
【請求項4】
上記筒部と上記係止部の境界部分近傍において、上記略コの字形状開口部と反対側に突出部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3記載のパッキン。
【請求項5】
上記弾性材料がシリコーンゴムからなることを特徴とする請求項1〜請求項4記載のパッキン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−174535(P2011−174535A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38964(P2010−38964)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000129529)株式会社クラベ (125)
【Fターム(参考)】