説明

パッシブコヒーレント探索アプリケーションのための、広帯域事前検出信号を処理するシステムおよび方法

【課題】PCLアプリケーションのための、広帯域事前検出信号を処理するシステムおよび方法が開示される。
【解決手段】入力信号を受信、上記入力信号のチャネル歪みを補償後復調し、複素数値表現を形成、上記復調した入力信号から基準信号および目標物信号を推定し、上記基準信号の一部を減らすことであって、上記基準信号は、適応的にフィルタリングされ、出力目標物信号が形成され、上記基準信号の一部を減らすこと、上記出力目標物信号、基準信号に対して逆変換オペレーションを実施、上記出力目標物信号について、複数の目標物ビームを形成、ビームのそれぞれについて、間引きした複数のラグ積を形成、上記基準信号について、間引きした複数のラグ積を形成、ビームのそれぞれについてクロスアンビギュイティ関数を推定、上記基準信号についての上記間引きした複数のラグ積を用いて、上記基準信号についてオートアンビギュイティ関数を推定することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の背景]
発明の分野
本発明は、PCL(パッシブコヒーレント探索)アプリケーションに関し、より詳細には、PCLアプリケーション用の広帯域事前検出信号を処理するシステムおよび方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2001年5月4日に出願された「System and Method for Wideband Pre-Detection Signal Processing for PCL Applications」と題する米国仮特許出願第60/288,451号(参照により本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0003】
関連技術の説明
レーダシステムは、対象の目標物の存在を検出し、その目標物についての情報を提供する。従来のレーダシステムはパルスレーダおよび連続波レーダを含む。パルスレーダにおいては、目標物の距離測度は、電磁エネルギーパルスの送信からその反射エネルギーの受信までに経過した時間測定値によって求められる。連続波レーダにおいては連続波が送信される。目標物の距離は、送信した信号と受信し反射した信号の間の周波数シフトの測定値によって求められる。
【0004】
従来のレーダシステムは電磁エネルギーを送信する。送信した電磁エネルギーの一部は、対象の目標物から反射し、空間に散乱する。レーダシステムは、反射したエネルギーを受信し、受信した反射エネルギーを、送信したエネルギーの複製と相関させることによって、対象の目標物についての情報を抽出する。
【0005】
従来のレーダシステムと対比して、パッシブレーダシステムは、商用の放送ラジオFM信号およびテレビジョン放送信号などの、統制されていない放射器から送信された電磁エネルギーを利用する。パッシブレーダシステムは、統制されていない放射器から送信され、対象の目標物から反射した信号である反射した信号、および統制されていない放射器からの直接経路信号を受信する。パッシブレーダシステムは、受信した反射信号を、基準信号として用いられる受信した直接経路信号と相関させることによって、対象の目標物についての情報を抽出する。
【0006】
PCL(パッシブコヒーレント探索)システムは、マルチスタティック広域移動中の目標物監視センサを含む、パッシブ監視システムである。PCL技術は、エネルギーを送信せずに、検出能力を提供する。PCLシステムにおいて、追尾精度および分解能は重要である。
[発明の概要]
【0007】
したがって、本発明は、PCLアプリケーションおよびPCLアプリケーションのための信号処理方法を対象とする。
【0008】
本発明のさらなる特徴および利点は、次に続く説明で述べられ、一部は、その説明から明らかになるであろう。または、さらなる特徴および利点は本発明の実施によって知ることができる。本発明の目的および利点は、本明細書および本明細書の特許請求の範囲ならびに添付図面において特に指摘される構造によって実現され、得られるであろう。
【0009】
これらの利点および他の利点を達成するために、また、組み込まれ概括的に述べた本発明の目的に従って、PCLアプリケーションにおいて広帯域事前検出信号を処理する方法は、第1基準信号および第1目標物信号を受信すること、フィルタを用いて、上記第1目標物信号に関して上記第1基準信号をフィルタリングすることであって、それによって、第1出力基準信号を形成する、第1基準信号をフィルタリングすること、上記第1出力基準信号を上記第1目標物信号に結合することであって、それによって、第1出力目標物信号を形成する、第1目標物信号を第1目標物信号に結合すること、第2基準信号および第2目標物信号を受信すること、上記第1目標物信号と上記第2目標物信号の間の変化に関して上記フィルタを更新すること、上記更新されたフィルタを用いて上記第2基準信号をフィルタリングすることであって、それによって、第2出力基準信号を形成する、第2基準信号をフィルタリングすること、および、上記第2出力基準信号を上記第2目標物信号に結合することであって、それによって、第2出力目標物信号を形成する、第2基準信号を第2目標物信号に結合することを含む。
【0010】
本発明の別の態様において、PCLアプリケーションにおいて広帯域事前検出信号を処理する方法は、目標物信号および基準信号を受信すること、この目標物信号から複数の目標物ビームを形成すること、この複数の目標物ビームのそれぞれについて、複数のラグ積(lag product)を形成すること、上記複数の目標物ビームのそれぞれについて、上記複数のラグ積のそれぞれを間引くこと、上記基準信号について、複数のラグ積を形成すること、および、上記基準信号について、上記複数のラグ積のそれぞれを間引くことを含む。
【0011】
本発明の別の態様において、パッシブコヒーレント探索(PCL)アプリケーションのための、広帯域事前検出信号を処理する方法は、入力信号を受信すること、この入力信号から基準信号および目標物信号を推定すること、この目標物信号内の該基準信号の一部を減らすことであって、上記基準信号は上記目標物信号に関して適応的にフィルタリングされ、上記目標物信号と結合して、出力目標物信号を形成する、上記基準信号の一部を減らすこと、上記出力目標物信号について複数の目標物ビームを形成すること、この複数の目標物ビームのそれぞれについて、間引きした複数のラグ積を形成すること、および、上記基準信号について、間引きした複数のラグ積を形成することを含む。
【0012】
本発明の別の態様において、PCLアプリケーションにおいて広帯域事前検出信号を処理する方法は、入力信号を受信すること、この入力信号から目標物信号および基準信号を抽出すること、上記目標物信号および上記基準信号に対して変換オペレーションを実施すること、上記変換された目標物信号および上記変換された基準信号のチャネル歪みを補償すること、上記補償された目標物信号内の上記補償された基準信号の一部を減らすことであって、上記補償された基準信号は、上記補償された目標物信号に関して適応的にフィルタリングされ、上記補償された目標物信号と結合されて、出力目標物信号を形成するようにする、上記補償された基準信号の一部を減らすこと、上記補償された基準信号および上記出力目標物信号を復調し、上記補償された基準信号および上記出力目標物信号の複素数値表現を形成すること、上記補償された基準信号および上記出力目標物信号に対して逆変換を実施すること、上記出力目標物信号について、複数の目標物ビームを形成すること、上記複数の目標物ビームのそれぞれについて、間引きした複数のラグ積を形成すること、上記補償された基準信号について、間引きした複数のラグ積を形成すること、上記複数の目標物ビームのそれぞれについての上記間引きした複数のラグ積を用いて、上記複数の目標物ビームのそれぞれについてクロスアンビギュイティ関数を推定すること、および、上記基準信号についての上記間引きした複数のラグ積を用いて、上記基準信号についてオートアンビギュイティ関数を推定することを含む。
【0013】
本発明の別の態様において、PCLアプリケーションにおいて、広帯域にわたって事前検出信号を処理するシステムは、第1基準信号および第1目標物信号ならびに第2基準信号および第2目標物信号を直列に(in series)受信する第1サブ要素と、フィルタを用いて、上記第1目標物信号に関して上記第1基準信号をフィルタリングして、第1出力基準信号を形成するようにする第2サブ要素と、上記第1出力基準信号を上記第1目標信号に結合して、第1出力目標物信号を形成するようにする第3サブ要素と、上記第1目標物信号と上記第2目標物信号の間の変化に関して上記第2サブ要素を更新する第4サブ要素とを備える第1機能要素を含む。
【0014】
本発明の別の態様において、PCLアプリケーションにおいて、広帯域にわたって事前検出信号を処理するシステムは、目標物信号および基準信号を受信する第1サブ要素と、上記目標物信号について、複数の目標物ビームを形成する第2サブ要素と、この複数の目標物ビームのそれぞれについて、複数のラグ積を形成する第3サブ要素と、上記複数の目標物ビームのそれぞれについて、前記複数のラグ積のそれぞれを間引く第4サブ要素と、上記基準信号について、複数のラグ積を形成する第5サブ要素と、上記基準信号について、上記複数のラグ積のそれぞれを間引く第6サブ要素とを備える第1機能要素を含む。
【0015】
本発明の別の態様において、PCLアプリケーションにおいて、広帯域にわたって事前検出信号を処理するシステムは、目標物信号および基準信号を含む入力信号を受信する第1機能要素と、上記目標物信号および上記基準信号に対して変換オペレーションを実施する第2機能要素と、上記変換された目標物信号および上記変換された基準信号のチャネル歪みを補償する第3機能要素と、上記補償された目標物信号内の上記補償された基準信号の一部を減らす第4機能要素であって、上記補償された基準信号は、上記補償された目標物信号に関して適応的にフィルタリングされ、上記補償された目標物信号と結合されて、出力目標物信号を形成するようにする第4機能要素と、上記補償された基準信号および上記出力目標物信号を復調し、上記補償された基準信号および上記出力目標物信号の複素数値表現を形成する第5機能要素と、上記出力目標物信号について、複数の目標物ビームを形成する第6機能要素と、上記複数の目標物ビームのそれぞれについて、間引きした複数のラグ積を、上記基準信号について、間引きした複数のラグ積を形成する第7機能要素とを備える。
【0016】
本発明の別の態様において、PCLアプリケーションにおいて、広帯域にわたって事前検出信号を処理するシステムは、入力信号を受信する第1機能要素と、この入力信号に対して変換オペレーションを実施する第2機能要素と、上記変換された入力信号のチャネル歪みを補償する第3機能要素と、上記補償された入力信号を復調し、上記補償された入力信号の複素数値表現を形成する第4機能要素と、上記第4機能要素から受け取られた上記入力信号から目標物信号および基準信号を推定する第5機能要素と、上記目標物信号内の上記基準信号の一部を減らす第6機能要素であって、上記基準信号は、上記目標物信号に関して適応的にフィルタリングされ、上記目標物信号と結合されて、出力目標物信号を形成するようにする第6機能要素と、上記出力目標物信号について、複数の目標物ビームを形成する第7機能要素と、この複数の目標物ビームについて、間引きした複数のラグ積を、上記基準信号について、間引きした複数のラグ積を形成する第8機能要素とを備える。
【0017】
先の概括的な説明および以下の詳細の説明は共に、例示のためであり、かつ説明のためであって、請求される本発明をさらに説明することを意図することを理解されたい。
【0018】
本発明をさらに理解させることを意図し、本明細書の一部に組み込まれ、また一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を示し、その記載とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
[好ましい実施形態の詳細な説明]
【0019】
ここで、本発明の好ましい実施形態に対し詳細にわたって言及がなされ、実施形態の実施例は添付図面に示される。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態によるPCLアプリケーションのブロック図を示す。PCLアプリケーションは、送信機110、112、および114として図1に示す、複数の統制されていない放射器、対象の目標物150、およびPCLシステム100を含む。複数の送信機110、112、および114は、商用のFM放送送信機および/または中継器、ならびに商用のHDTV TV放送送信機および/または中継器などの統制されていない広帯域放射器を含んでよい。対象の目標物150の例は航空機を含む。
【0021】
送信機110、112、および114は、電磁エネルギー信号を全方向に送信する。送信した信号の一部は、対象の目標物150によって反射され、全方向に散乱する。PCLシステム100は、目標物経路信号130と呼ぶ、散乱した信号の一部を受信する。別々に、PCLシステム100は、送信機110、112、および114からの直通の、信号の一部を受信する。これらの信号は、基準経路信号(または、直接経路信号)140と呼ばれる。
【0022】
図2は、本発明によるPCL100の一実施形態を示す。特に図2について考えると、PCL100は、アンテナ200、受信サブシステム202、A/D変換器サブシステム204、処理サブシステム206、およびディスプレイ208を含む。
【0023】
アンテナ200は、送信機110、112、および114を含む統制されていない放射器から基準経路信号140を受信する。アンテナ200は、対象の目標物150から反射した目標物経路信号130も受信する。アンテナ200は、基準経路信号140および目標物経路信号130を受信サブシステム202に伝達する。
【0024】
受信サブシステム202は、アンテナ200から基準経路デジタル信号140および目標物経路信号130を受信し、それに応じて信号を処理する。
【0025】
A/D変換器サブシステム204は、受信サブシステム202の出力を受け取り、所望のサンプリングレートで信号をサンプリングすることによってA/D変換器サブシステム204の入力における信号のデジタルサンプルを出力し、各サンプリング時刻でのアナログ信号の大きさを用いて、デジタル波形を形成する。A/D変換器サブシステム204は受け取った信号を増幅する増幅器を含んでよい。
【0026】
処理サブシステム206は、A/D変換器サブシステム204からの受け取った信号のデジタルサンプルを受け取る。処理サブシステム206は、受け取った基準信号および目標物信号を処理して、対象の目標物150についての情報を抽出するようにする。この情報は、場所、速度、および加速度を含む、対象の目標物150の位置に関するあらゆる情報を含んでよい。
【0027】
処理サブシステム206はサブプロセッサを含んでよい。サブプロセッサは、エラーを除去して最適化された信号を供給する事前検出信号プロセッサ240、および対象の目標物150についての情報を抽出する信号プロセッサ242を含んでよい。事前検出信号プロセッサ240は、図2に示すように、データインタリーブ解除器(de-interleaver)機能要素210、変換機能要素212、等化機能要素214、ZDC(ゼロ−ドプラ消去)機能要素216、直交復調機能要素218、基準ビーム再生機能要素220、逆変換機能要素222、ヌル形成機能要素224、ビーム形成機能要素226、ラグ積の形成および間引き(decimation:デシメーション)機能要素228、アンビギュイティ(ambiguity)関数形成機能要素230、およびRMS計算機能要素232を含んでよい。処理サブシステム206は、各種要素の関数を実行するようにプログラムされる、データストレージ能力を有する高性能コンピュータを含んでよい。別法として、ハードウェア要素は、事前検出処理サブシステムの要素のうちのいくつか、または全てとして用いることができる。
【0028】
出力デバイス208は、処理サブシステム206から受け取った情報を受け取り、表示する。サブシステム202、204、206、および208は、高速ネットワークにより互いに接続されることができる。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態による、事前検出信号プロセッサ240での信号処理ステップを示す。
【0030】
ステップ300で始まって、事前検出信号プロセッサは、A/D変換器サブシステムから、アンテナ200で受信した目標物経路信号130および基準経路信号140のデジタルサンプルを、多重化されたADC時系列データのブロックとして受け取る。多重化されたADC時系列データのブロックは、データインタリーブ解除器機能要素によって受け取られる。データインタリーブ解除器機能要素は、後続のフィルタリングオペレーションが要求すると、当業者がよく知っている方法で、時系列データの入力ブロックから基準信号データおよび目標物信号データを抽出し、並列処理のために、適当なADCスケールファクタ(scale factor)を適用する。基準信号データは基準チャネル370を通して送られ、目標物信号データは目標物チャネル372を通して送られる。
【0031】
ステップ304にて、データ変換機能要素は、基準チャネル370および目標物チャネル372を通して基準信号データおよび目標物信号データをそれぞれ受け取る。データ変換機能要素は、後続のフィルタリングオペレーションが要求すると、好ましくは、FFT(高速フーリエ変換)オペレーションを用いることによってDFT(離散フーリエ変換)を実施する。FFTは、当業者がよく知っている方法で、入力データを時間関数から周波数関数へ変換する。オーバラップセーブFFTオペレーションは、当業者がよく知っている方法で、全ての範囲に及ぶように実施されることができるのが好ましい。オーバラップセーブFFTオペレーションは、対象のそれぞれの時系列データについて独立的に繰り返され、それによって、目標物信号データのそれぞれおよび基準信号データのそれぞれについて、固有の「セーブ(save)」ブロックおよびDFT(離散フーリエ変換)出力を供給する。好ましくは、DFT長、Nは、小さな整数(たとえば、2、3、4または5)の積に因数分解できるように選択することができ、それによって、効率のよいFFT技法を用いて、2N長のDFTを実施することができる。
【0032】
ステップ308にて、等化機能要素は、基準チャネルおよび目標物チャネルを通してデータ変換機能要素の出力を受け取る。等化機能要素は、基準信号データおよび目標物信号データのそれぞれにフィルタを適用する。フィルタは、対象の搬送波周波数のあたりを中心とする、ほぼ50kHz帯域にわたって振幅リップルを最小にし、目標物信号データと基準信号データの間の周波数に関する位相シフトの割合(rate)の差である、目標物信号と基準差(target signal-to-reference differential)の群遅延(group delay)を最小にし、目標物信号間の信号対雑音比と位相差との比の差である差分利得を最小にする。フィルタは、オフライン較正手順によって得ることができる。等化機能要素はシンボル間干渉(ISI)を補償する。シンボル間干渉(ISI)は、信号を構成する周波数の分散によるチャネル内の連続した送信信号の重なりである。等化機能要素は、チャネル歪みを補償することによって、エラーの確率を最小にする。等化手順は、時系列データのそれぞれについて独立的に繰り返される。
【0033】
ステップ312にて、ゼロ−ドプラ消去機能要素216は、受け取った目標物信号データに対して、適応ゼロ−ドプラ消去、時間領域信号処理オペレーションを実施して、目標物信号データ内に存在する基準信号データの部分を最小にするようにする。
【0034】
図4は、本発明の実施形態による、事前検出信号プロセッサ240での適応ゼロ−ドプラ消去を示す。
【0035】
図4において、ゼロドプラ消去機能要素216は、それぞれ、基準チャネル370Bおよび目標物チャネル372Bを通して、時系列目標物信号データおよび時系列基準信号データを受け取る。受け取った第1基準信号データは、フィルタ410で受け取った第1目標物信号データに関してフィルタリングされる。受け取った、フィルタリングされた第1基準信号データは、420で受け取った第1目標物信号データと結合されて、受け取った第1目標物信号データ内に存在する受け取った第1基準信号データの部分を最小にするようにする。次に、フィルタ更新機能要素412は、フィルタ410を、受け取った第2目標物信号データと比較することによって、受け取った第2目標物信号データに関してフィルタ410を更新する。基準チャネル370Bを通して受け取った第2基準信号データは、受け取った第2目標物信号データに関して更新されたフィルタ410を用いてフィルタリングされる。次に、受け取った、フィルタリングされた第2基準信号データは、420で受け取った第2目標物信号データと結合される。フィルタ410は、時系列の目標物信号データのそれぞれとフィルタを連続して比較することによって、目標物チャネル372Bを通して受け取った時系列の目標物信号データのそれぞれに関して、フィルタ更新機能要素412によって連続して更新される。基準信号データは適応的にフィルタリングされる。フィルタリングされた時系列の基準信号データのそれぞれは、420で、時系列の目標物信号データのそれぞれと結合される。フィルタ410は、たとえば、適応ウィーナフィルタを含んでよい。適応ゼロ−ドプラ消去を適用することによって、移動中の目標物についてのより正確な目標物信号データを生成することができる。
【0036】
個別に、ステップ310にて、RMS(二乗平均平方根)帯域幅計算機能要素は、基準チャネル370Cを通して基準信号データを受け取り、基準信号データの帯域幅のRMS値を推定する。この値は、検出および特徴抽出処理において行われる遅延測定値の分散の計算において必要とされる。
【0037】
ステップ316にて、直交復調機能要素は、311の遅延要素を通した等化機能要素からの基準信号データおよびゼロ−ドプラ消去機能要素の出力を受け取る。直交復調機能要素は、本発明の一実施形態による、図5に概略的に示す時間領域信号処理オペレーションを実施する。
【0038】
図5にて、実数値信号データの位相は、exp(−j(π/2)m)を掛けることによってシフトする。次に、位相シフトした実数値信号データは、FIR LPF(有限インパルス応答ローパスフィルタ)などのローパスフィルタ512を用いてフィルタリングされ、複素数値信号データを生成するように間引きされる。実数値入力時系列データを復調し、間引して、ゼロラジアン/サンプルを中心とする、サンプリングレートを落とした時系列の複素(直交)表現を生成するようにする。複素包絡線(直交表現における同相成分と直交成分を有するローパス関数である)を見つけることによって、乗算係数exp(−j(π/2)m)の存在によって複雑になるローパス系の解析は、フィルタリング処理の本質を完全に保つ、等価であるがいっそう単純なローパス解析と置換される。直交復調機能要素は、受け取った目標物信号データおよび受け取った基準信号データに対して、図5の信号処理オペレーションを個別に実施する。
【0039】
ステップ320にて、逆変換機能要素は、直交復調機能要素によって生成された目標物信号データおよび基準信号データを受け入れ、当業者がよく知っている方法で逆変換を実施する。対象の信号について、複素数値時系列のB/2=N−(MEFF−1)/2の長さのブロックを生成することができるのが好ましい。
【0040】
ステップ324にて、ヌル形成が行なわれる。
【0041】
ステップ328にて、ビーム形成機能要素は、先行の機能要素によって生成される目標物信号データを受け入れ、それらを結合して、特定の方位線および仰角線に沿って選択性を有する目標物ビームを形成するようにする。
【0042】
ステップ332にて、ラグ積の形成および間引き機能要素は、先行の機能要素によって生成された目標物ビームおよび基準信号を受け取り、図6および7に概略的に示す信号処理関数を実施する。このオペレーションはもっぱら時間領域で実施される。
【0043】
図6にて、ラグ積の形成は、基準信号データを有する目標物ビームのそれぞれに対して実施されて、目標物ビームのそれぞれについて、複数のラグ積が形成される。目標物ビームのそれぞれについての複数のラグ積は間引きされて、目標物ビームのそれぞれについて、間引きした複数のラグ積が形成される。
【0044】
図7において、ラグ積の形成は基準信号に対して実施される。複数のラグ積が基準信号について形成される。基準信号についての複数のラグ積は間引きされて、基準信号について、間引きした複数のラグ積が形成される。
【0045】
間引きレートは、16または32の値を有してよい。間引きオペレーションは、効率の高いマルチステージ有限インパルス応答(FIR)フィルタ/デシメータを用いて実施され得る。目標物信号のそれぞれは個別に処理されて、K間引きラグ積時系列を生成し、目標物信号についてクロスアンビギュイティ表面が推定される。目標物ビームのそれぞれについて複数のラグ積を生成することによって目標物ビームのそれぞれについてのクロスアンビギュイティ表面がより正確に推定されることができる。一実施形態において、間引きオペレーションは、62,500複素サンプル/秒から3906.25または1953.125(それぞれ)複素サンプル/秒へ時間ラグのサンプリングレートを減らすが、±1562.5Hzまたは781.25Hz(それぞれ)での情報(すなわち、最終出力帯域幅の80%)を保持する。単一命令乗算/累積オペレーションを実施しないプロセッサの場合、310で計算したRMS帯域幅の畳み込み和は、FIRフィルタタップの対称性を利用して、計算複雑度を軽減するように、図3の点線で示されるように実施されることができる。また、間引きレートによる畳み込み和のスケーリングは、FIRフィルタタップ内に取り込まれることができる。
【0046】
図3のステップ336にて、アンビギュイティ関数形成機能要素は、間引きした複数のラグ積を受け入れ、目標物信号のそれぞれについて、Tサンプルのコヒーレント処理区間(CPI)にわたってクロスアンビギュイティを計算する。アンビギュイティ関数形成機能要素はまた、図8に示すように、基準信号について、間引きした複数のラグ積を受け入れ、Tサンプルのコヒーレント処理区間にわたってオートアンビギュイティを計算する。クロスアンビギュイティ関数は、2つの信号またはシステム間の共用性を抽出して、これらの共用性の存在または構造を確定する。コヒーレント処理区間は、ある率、1−1/ρ(ρ=2、4、など)だけ重なる可能性がある。
【0047】
図9は、本発明の別の実施形態による、事前検出信号プロセッサ240での信号処理ステップを示す。事前検出プロセッサは、基準チャネルがない場合、米国特許第5,604,503号(参照により本明細書に援用される)に開示される、一定モジュラス基準再生という別の手法を用いることができる。
【0048】
ステップ900で始まり、事前検出信号プロセッサは、多重化されたADC時系列データのブロックとして、A/D変換器サブシステムから、アンテナ200で受信された目標物経路信号130および基準経路信号140のデジタルサンプルを受け取る。多重化されたADC時系列データのブロックは、データインタリーブ解除器機能要素によって受け取られる。この実施形態において、データインタリーブ解除器機能要素は、時系列データの入力信号データブロックから、基準信号データおよび目標物信号データを抽出しない。目標物信号データおよび基準信号データを含む入力信号データはチャネル950を通過する。
【0049】
ステップ904にて、データ変換機能要素は、チャネル950を通して、目標物信号データおよび基準信号データを含む入力信号データを受け取る。データ変換機能要素は、後続のフィルタリングオペレーションが要求すると、好ましくはFFT(高速フーリエ変換)オペレーションを用いることによって、DFT(離散フーリエ変換)を実施する。FFTは、当業者がよく知っている方法で、入力データを、時間関数から周波数関数に変換する。オーバラップセーブFFTオペレーションは、全ての範囲に及ぶように実施されることができるのが好ましい。オーバラップセーブFFTオペレーションは、対象のそれぞれの時系列データについて独立的に繰り返され、したがって、入力信号データのそれぞれについて、固有の「セーブ」ブロックおよびDFT(離散フーリエ変換)出力を供給する。好ましくは、DFT長、Nは、小さな整数(たとえば、2、3、4または5)の積に因数分解できるように選択することができ、それによって、効率のよいFFT技法を用いて、2N長のDFTを実施することができる。
【0050】
ステップ908にて、等化機能要素は、データ変換機能要素の出力を受け取り、固有のフィルタを適用する。
【0051】
ステップ912にて、直交復調機能要素は、等化機能要素の出力を受け取り、図5に概略的に示す時間領域信号処理オペレーションを実施して、ゼロラジアン/サンプルを中心とする時系列の複素表現を生成する。
【0052】
ステップ916にて、基準ビーム再生機能要素は、直交復調機能要素の出力を受け取り、米国特許第5,604,503号(参照により本明細書に援用される)に開示されるように、基準信号(すなわち、D−P信号)および目標物信号(すなわち、T−P信号)を推定する。
【0053】
ステップ920にて、ゼロ−ドプラ消去機能要素は、目標物チャネル972および基準チャネル970Bを通して、916で基準ビーム再生機能要素によって推定された目標物信号および基準信号をそれぞれ受け取り、図4に概略的に示しかつ上述した、時間領域信号処理オペレーションを実施する。
【0054】
その後、信号処理は、上述したように、ヌル形成、ビーム形成、ラグ積の形成および間引き、ならびにアンビギュイティ関数形成を通して続く。
【0055】
ビーム形成の前に実施されるフィルタリングオペレーション(すなわち、等化、ゼロ−ドプラ消去、直交復調、および逆変換)は、オーバラップセーブ高速畳み込みオペレーションを用いて実施され、それによって、入力時系列データの隣接ブロックは、推定オートアンビギュイティおよびクロスアンビギュイティ関数を形成する直前に出力時系列データの隣接ブロックを生成する。オーバラップセーブフィルタリングオペレーションは、目標物信号を等化し、各目標物信号内の基準信号の量を最小にするであろう。さらに、オーバラップセーブフィルタリングオペレーションは、ゼロラジアン/サンプルを中心とする目標物要素信号データの複素表現を生成する。
【0056】
構成されると、本発明の事前検出信号処理は、目標物信号からの干渉信号エネルギーを消去するであろう。さらに、適切な構成によって、目標物信号は、指定された方位角に沿う指向性ビームに変換されるであろう。
【0057】
本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明のPCLシステムにおいて種々の変更および変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求項およびその等価物の範囲に入る限りにおいて、本発明は、本発明の変更および変形を包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による、複数の送信機、目標物、およびPCLシステムのブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による、パッシブコヒーレント探索システムのブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による、パッシブコヒーレント探索システムの事前信号処理のフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態による、ゼロ−ドプラ消去プロセスの略図である。
【図5】本発明の一実施形態による、直交復調プロセスの略図である。
【図6】本発明の一実施形態による、目標物ビームラグ積の形成および間引きプロセスの略図である。
【図7】本発明の一実施形態による、基準ラグ積の形成および間引きプロセスの略図である。
【図8】本発明の一実施形態による、アンビギュイティ関数形成プロセスの略図である。
【図9】本発明の別の実施形態による、パッシブコヒーレント探索システムの事前信号処理のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCLアプリケーションにおいて広帯域事前検出信号を処理する方法であって、
第1基準信号および第1目標物信号を受信すること、
フィルタを用いて、前記第1目標物信号に関して前記第1基準信号をフィルタリングすることであって、それによって、第1出力基準信号を形成する、前記第1基準信号をフィルタリングすること、
前記第1出力基準信号を前記第1目標信号に結合することであって、それによって、第1出力目標物信号を形成する、前記第1出力基準信号を前記第1目標信号に結合すること、
第2基準信号および第2目標物信号を受信すること、
前記第1目標物信号と前記第2目標物信号の間の変化に関して前記フィルタを更新すること、
前記更新されたフィルタを用いて前記第2基準信号をフィルタリングすることであって、それによって、第2出力基準信号を形成する、前記第2基準信号をフィルタリングすること、および、
前記第2出力基準信号を前記第2目標物信号に結合することであって、それによって、第2出力目標物信号を形成する、前記第2出力基準信号を前記第2目標物信号に結合すること
を含む方法。
【請求項2】
前記第1目標物信号および第2目標物信号は、移動中の目標物から反射される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルタは適応ウィーナフィルタを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタリングステップは、前記第1および第2目標物信号から前記第1および第2基準信号の部分をそれぞれ減らす請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1入力信号から前記第1基準信号および前記第1目標物信号を、第2入力信号から前記第2基準信号および前記第2目標物信号を抽出することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1および第2目標物信号ならびに前記第1および第2基準信号をフィルタリングすることであって、それによって、チャネル歪みを補償する、フィルタリングすることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1基準信号の二乗平均平方根(RMS)帯域幅を計算することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1および第2基準信号ならびに前記第1および第2出力目標物信号を復調し、前記第1および第2基準信号ならびに前記第1および第2出力目標物信号の複素数値表現を生成することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2基準信号ならびに前記第1および第2出力目標物信号の前記複素数値表現を間引くことをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1出力目標物信号について複数の目標物ビームを形成すること、および、
前記複数の目標物ビームのそれぞれについて間引きした複数のラグ積を形成することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のラグ積を用いて、前記複数の目標物ビームのそれぞれについてクロスアンビギュイティ関数を推定することをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1基準信号について、間引きした複数のラグ積を形成することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記複数のラグ積を用いて、前記第1基準信号についてオートアンビギュイティ関数を推定することをさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1入力信号から前記第1基準信号および前記第1目標物信号を推定すること、および、第2入力信号から前記第2基準信号および前記第2目標物信号を推定することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1基準信号を推定することは、前記第1入力信号から前記基準信号の大きさを推定することを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1基準信号および前記第1目標物信号を推定する前に、前記第1入力信号を復調し、前記第1入力信号の複素数値表現を生成することをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1入力信号の前記複素数値表現を間引くことをさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
PCLアプリケーションにおいて、広帯域にわたって事前検出信号を処理するシステムであって、
第1基準信号および第1目標物信号ならびに第2基準信号および第2目標物信号を直列に受信する第1サブ要素と、
フィルタを用いて、前記第1目標物信号に関して前記第1基準信号をフィルタリングして、第1出力基準信号を形成するようにする第2サブ要素と、
前記第1出力基準信号を前記第1目標信号に結合して、第1出力目標物信号を形成するようにする第3サブ要素と、
前記第1目標物信号と前記第2目標物信号の間の変化に関して前記第2サブ要素を更新する第4サブ要素と
を備えるシステム。
【請求項19】
前記フィルタは適応ウィーナフィルタを含む請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第1目標物信号は移動中の目標物から反射された信号である請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記第2サブ要素は、前記第1および第2目標物信号から前記第1および第2基準信号の部分をそれぞれ減らす請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
第1入力信号から前記第1基準信号および前記第1目標物信号を、第2入力信号から前記第2基準信号および前記第2目標物信号を抽出する第2機能要素をさらに含む請求項18に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1目標物信号および前記第1基準信号をフィルタリングして、チャネル歪みを補償するようにする第2機能要素をさらに含む請求項18に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1基準信号の二乗平均平方根(RMS)帯域幅を計算する第2機能要素をさらに含む請求項18に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1基準信号、前記第2基準信号、前記第1出力目標物信号、および第2出力目標物信号を復調し、前記第1基準信号、前記第2基準信号、前記第1出力目標物信号、および第2出力目標物信号の複素数値表現を生成する第2機能要素をさらに含む請求項18に記載のシステム。
【請求項26】
前記第2機能要素は、前記第1基準信号、前記第2基準信号、前記第1出力目標物信号、および前記第2出力目標物信号の前記複素数値表現を間引くサブ要素を含む請求項18に記載のシステム。
【請求項27】
前記第1出力目標物信号について、複数の目標物ビームを形成する第1サブ要素と、
前記複数の目標物ビームのそれぞれについて、複数のラグ積を形成する第2サブ要素と、
前記複数のラグ積を間引く第3サブ要素と
を備える第2機能要素をさらに含む請求項18に記載のシステム。
【請求項28】
前記第3サブ要素は、FIR(有限インパルス応答)フィルタ/デシメータを含む請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記複数のラグ積を用いて、前記複数の目標物ビームのそれぞれについてクロスアンビギュイティ関数を推定する第3機能要素をさらに含む請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記第1基準信号について、間引きした複数のラグ積を形成する第2機能要素をさらに含む請求項18に記載のシステム。
【請求項31】
前記複数のラグ積を用いて、前記第1基準信号についてオートアンビギュイティ関数を推定する第3機能要素をさらに含む請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
第1入力信号から前記第1基準信号および前記第1目標物信号を推定する第2機能要素をさらに含む請求項18に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−122408(P2008−122408A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337687(P2007−337687)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【分割の表示】特願2002−588215(P2002−588215)の分割
【原出願日】平成14年5月6日(2002.5.6)
【出願人】(503148122)ロッキード・マーティン・コーポレイション (6)
【氏名又は名称原語表記】LOCKHEED MARTIN CORPORATION
【住所又は居所原語表記】700 N. Frederick Avenue, Gaithersburg, MD 20879, U.S.A.
【Fターム(参考)】