パティキュレートフィルター及びその再生方法
【課題】再生効率を向上できるパティキュレートフィルター及びその再生方法を提供する。
【解決手段】セル11が断面多角形状に形成されたハニカム状の多孔体12からなると共に流入側と流出側を目封じしたウォールフロー型のパティキュレートフィルターにおいて、前記セル11の一面の隔壁12fに触媒14をコートし、他の面の隔壁12tで排ガス中のPMを捕集するようにしたものである。
【解決手段】セル11が断面多角形状に形成されたハニカム状の多孔体12からなると共に流入側と流出側を目封じしたウォールフロー型のパティキュレートフィルターにおいて、前記セル11の一面の隔壁12fに触媒14をコートし、他の面の隔壁12tで排ガス中のPMを捕集するようにしたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気通路に配設され、排ガス中のPMを捕集するためのパティキュレートフィルターに係り、特にPM捕集後の再生効率を高めたパティキュレートフィルター及びその再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出されるPM(パティキュレートマター;粒状物質)の浄化装置は、ディーゼルエンジンの排気管にDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)を接続し、そのDPFでPMを捕集して、排気ガスを浄化して大気へ排出するものである。
【0003】
このDPFで、捕集されたPMは、フィルタの目詰まりの原因となるため、捕集堆積したPMを定期的に酸化させ、除去して再生する必要がある。
【0004】
強制的にPMを再生する方法としては、排気管にHC(例えば軽油)を噴霧して酸化触媒(DOC)で燃焼させることで排気温度を上昇させる方法(特許文献1、2)が知られている。
【0005】
しかし、DOCからDPFに排ガスが移動する際に温度が低下したり、HCが完全に燃焼できずにDPFに到達してPM再生の安定性に悪影響を与えるなどの問題点がある。
【0006】
そこでPM再生温度を低減するためにDPFの捕集表面から内部にかけて触媒をコートする方法(特許文献3、4)が提案されている。
【0007】
この方法は、DPFに貴金属やOSC(酸素吸蔵能材など)の触媒をコートしているために、PM再生時に、活性酸素やNO2が生成するため、PMの酸化温度が低下し、PM再生が良好となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−77675号公報
【特許文献2】特開2008−19820号公報
【特許文献3】特開2005−818号公報
【特許文献4】特開2002−276339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、表面に捕集されたケーク状のPMは触媒に一部しか接触しておらず、触媒に接したPMが酸化された後は、触媒の酸化効果は限定的となり、その後は排ガスとHC酸化によるPMの再生のみとなり再生効率がおちる問題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、再生効率を向上できるパティキュレートフィルター及びその再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、セルが断面多角形状に形成されたハニカム状の多孔体からなると共に流入側と流出側を目封じしたウォールフロー型のパティキュレートフィルターにおいて、前記セルの一面の隔壁に触媒をコートし、他の面の隔壁で排ガス中のPMを捕集するようにしたことを特徴とするパティキュレートフィルターである。
【0012】
請求項2の発明は、前記セル断面が四角形状に形成され、前記多孔体の流入側と流出側で、並んだ2セル毎に、互い違いに目封じし、流入側で開口した2セル同士の隔壁内面に、それぞれ触媒をコートした請求項1記載のパティキュレートフィルターである。
【0013】
請求項3の発明は、流出側で開口した2セル同士の隔壁内面に、それぞれ触媒をコートした請求項2記載のパティキュレートフィルターである。
【0014】
請求項4の発明は、コートする触媒が、貴金属又はOSCを有する酸化物、あるいはHC吸着剤のいずれかからなる請求項1〜3いずれかに記載のパティキュレートフィルターである。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1〜4いずれかに記載のパティキュレートフィルターで捕集したPMを再生する方法において、前記パティキュレートフィルターの上流側にHCを噴射し、前記セル内の一面の隔壁にコートした触媒でHCを酸化して前記セル内の排ガスを昇温させ、この排ガスで前記セル内の他の面の隔壁に捕集されたPMを燃焼させることを特徴とするパティキュレートフィルターの再生方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、セルの一面の隔壁に触媒をコートすることで、再生時に、PM近傍において、そのコートした触媒で、HC吸着、離脱、酸化を行うことが可能となり効率的に熱エネルギーを排ガスに伝えることができ、効率的にPMを再生できるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【図2】図1のD部の側断面図である。
【図3】図1におけるD部の排ガスの流れを説明する断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す図である。
【図5】図4のD部の側断面図である。
【図6】図4におけるD部の排ガスの流れを説明する断面図である。
【図7】本発明のパティキュレートフィルターを用いた再生システムを示す概略図である。
【図8】本発明のパティキュレートフィルターを用いた他の再生システムを示す概略図である。
【図9】本発明と従来例におけるパティキュレートフィルターの再生時の昇温特性を示す図である。
【図10】本発明のパティキュレートフィルターのPM再生を説明する図である。
【図11】従来のパティキュレートフィルターのPM再生を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
図1〜図3は本発明の一実施の形態を示したものである。
【0020】
図において、パティキュレートフィルター(DPF)10は、多孔性セラミックスで、多数の断面多角形状、図では四角形のセル11を有するハニカム多孔体12で形成され、その流入側と流出側が交互に目封じ材13i、13oで目封じされてウォールフロー型とされる。
【0021】
本発明においては、パティキュレートフィルター10の四角形状に形成されたセル11の一面の隔壁12fに触媒14をコートして形成し、他の三面の隔壁12tを、そのまま多孔質として排ガスを通過できるようにしたものである。またセル断面が四角形状以上の場合には少なくともその一面の隔壁に触媒をコートするようにしてもよい。
【0022】
このセル11を目封じする際には、図1、図2に示すように、上下(或いは左右)で並んだ2セル毎に、流入側と流出側で交互に目封じ材13i、13oで目封じして形成し、その流出側で目封じされ、流入側が開口した2つのセル11i、11i同士の隔壁12fの内面にそれぞれ触媒14をコートし、両セル11i、11i内の他の三面の隔壁12tをそのまま多孔質として排ガスを通過できるようにしたものである。
【0023】
また流入側で目封じされ流出側が開口した2つのセル11o,11oは、四面とも多孔質の隔壁12fのままとする。
【0024】
このようパティキュレートフィルター10を形成することで、PM捕集時は、図3に示すように、流入側セル11iの他の三面の隔壁12tから隣接する流出側セル11oに排ガスを流してPMを捕集することができる。また再生時には、パティキュレートフィルター10の上流側で噴射されたHCをセル11iの隔壁12fの内面にコートされた触媒14で酸化して排ガスを高温にすることができ、この高温のガスでPMを燃焼させることができると共に、触媒14に吸着されたNO2の生成やOSCからの活性酸素をPMの表面に供給できるので、効率的にPMの再生(酸化)を行うことができる。
【0025】
図4〜図6は、本発明の他の実施の形態を示したもので、基本的には図1〜図3の実施の形態と同じであるが、流入側で目封じされ流出側が開口した2つの流出側セル11o,11o同士の隔壁12fの内面にもそれぞれ触媒14をコートし、両セル11o,11oの他の三面を、多孔質の隔壁12tとして排ガスを通過できるようにしたものである。
【0026】
この実施の形態においては、流出側セル11oの隔壁12fに触媒14がコートされているため排ガス温度を上げ、パティキュレートフィルター10全体を再生温度以上に保つことができる。
【0027】
以上説明したように、本発明は、ハニカム状の多孔体からなるパティキュレートフィルター10のセル11の隔壁12の三面の隔壁12tを排ガスが通過できるウォールスルー構造にしてPMの捕集を行い、残り一面の隔壁12fは、排ガスが通過できないウォールフローとし、その面の隔壁12fに触媒14をコートするようにしたものである。
【0028】
ここでコートする触媒14は、貴金属(Pt、Pd、Rh等)およびOSCを有する酸化物(CeO2やZr−Ce−O複合材等)、HC吸着剤(ゼオライト等)を含んだものを用いることができる。
【0029】
この触媒14は、パティキュレートフィルター10のセル11の隔壁12fにコートした後、焼成して担持させ、その後セル11の流入側と流出側を目封じしてウォールフロー型とする。
【0030】
このように、本発明は、セル11の一面の隔壁12fに触媒14をコートしたパティキュレートフィルター10を用いることで、パティキュレートフィルター10で捕集したPMの極近傍で、HC吸着→脱離→酸化をすることが可能となり効率的に熱エネルギーおよびHCを効率的に使用できる。
【0031】
またNO2の生成やOSCからの活性酸素を、捕集したPMの表面に供給できるので、効率的にPMの再生(酸化)ができる。
【0032】
上述の実施の形態では、セル断面が四角形状で説明したが、セル断面を三角形状、六角形状に形成し、その一面に触媒をコートするように形成し、残りの面をガスが通過する流路としてもよい。また六角形状にセルを形成した場合には、径方向で対向する二面に触媒をコートし、他の四面でガスが通過するように構成してもよい。
【実施例】
【0033】
以下に本発明の実施例を説明する。
【0034】
実施例1:
図1〜図3で説明したように、流入側セル11iの隔壁12fに酸化触媒14をコートして排ガスの流れない隔壁(ウォールフロー部)とし、他の三面の隔壁12tと、流出側セル11oの四面は、排ガスの流れるウォールスルーとし、ハニカム状の多孔体12を2セル毎に前後互い違いに目封じしたパティキュレートフィルター10とした。
【0035】
コートした触媒14は、Pt−Pd/Al2O3触媒を基本触媒(触媒1)として、その基本触媒にOSCを有するZr−Ce−O複合材を含ませたもの(触媒2)、HC吸着剤としてゼオライトを含ませたもの(触媒3)および触媒2と触媒3を混合したもの(触媒4)の4種類を用いた。
【0036】
実施例2:
図4〜図6で説明したように、流入側セル11iと流出側セル11oの隔壁12fに酸化触媒14をコートして排ガスの流れない隔壁12f(ウォールフロー部)とし、他の三面の隔壁12tは、排ガスの流れるウォールスルーとし、ハニカム状の多孔体12を2セル毎に前後互い違いに目封じしたパティキュレートフィルター10とした。
【0037】
触媒14は、実施例1と同様に触媒1〜4を用いてコートした。
【0038】
従来例:
流入側セルと流出側セルの隔壁の四面をウォールスルーとしながら、その捕集表面から内部にかけて触媒1(酸化触媒)をコートしてパティキュレートフィルターとした。
【0039】
実施例1、2と従来例のパティキュレートフィルターを図7、図8に示す排ガス処理装置に組み込んで2通りでその特性を評価した。
【0040】
図7は、エンジン20の排ガス通路21にDOC22とパティキュレートフィルターからなるDPF装置23を組み込み、DOC(酸化触媒)22の上流側にHC(軽油)を噴射するノズル24を設けた排ガス処理システムAであり、図8は、DOCを組み込まずにDPF装置23のみを組み込んだ排ガス処理システムBである。
【0041】
図9は、本発明と従来例のパティキュレートフィルターの昇温特性を示したものである。
【0042】
図9に示すように、本発明は、HC噴射後、80秒で700℃以上に昇温できたのに対して、従来例は、700℃に達するのに約130秒以上かかることがわかった。
【0043】
次に、実施例1、2の各触媒1〜4を用いたパティキュレートフィルターと従来例のパティキュレートフィルターを、それぞれ、図7の排ガス処理システムAと、図8の排ガス処理システムBに組み込んだときの、昇温時間、HC噴射時の昇温時間、PM再生率、再生時のHC・COスリップを、従来例を1として比較した結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1において実施例1、2はいずれの触媒1〜4を用いても、従来例の特性を上回った。
【0046】
表1において、流入側にのみ触媒をコートした実施例1は、流入側と流出側に触媒をコートした実施例2に対して、再生率は若干劣るものの、その他特性は実施例2と同等であった。
【0047】
図10は、本発明のパティキュレートフィルター10の隔壁12tに堆積したPMを再生する際のPM再生を説明する図で、図11は従来のパティキュレートフィルター30の隔壁32tに堆積したPMを再生する際のPM再生を説明する図である。
【0048】
図11の従来例においては、図11(a)のようにPMが堆積し、そのPMを再生すべくHCと排ガスを流すと、PM堆積層の表面から酸化されると同時に隔壁32tのセラミック粒子32Sに担持された触媒34の表面で、NO2や活性酸素が発生し、図11(b)に示すように表面側と触媒34側から酸化が起こる。この際、触媒34による酸化速度の方が、排ガスによる表面側からの酸化速度より高くなるが、図11(b)に示したように触媒34に接しているPMが酸化されてしまうと急激に酸化速度が低下してしまい、図11(c)に示すように、触媒34に接していないPMが部分的に燃え残りとなってしまい、これが島状に点在していまい、単位時間あたりの再生効率が悪くなってしまう。
【0049】
これに対して、本発明では、図10(a)のようにPMが堆積し、そのPMを再生すべくHCと排ガスを流すと、その隔壁12tのセラミック粒子12Sには触媒は担持されておらず、セル内のウォールフローとなる一面の隔壁に設けた触媒とHCと排ガスが接触し、その面でNO2の生成と活性酸素が生成し、図10(b)に示すようにNO2と活性酸素で温度の高くなった排ガスで、PMを表面から酸化することとなり、再生方向は一方向でも酸化速度の変化もなく、結果として図10(c)に示したように短時間で均一に再生することが可能となる。
【0050】
このように、本発明は、以下の効果を奏する。
【0051】
(1)PMの堆積するウォールスルー表面に近いウォールフロー部に酸化触媒を配置することで、HC噴射時の昇温速度の向上が図れる。
【0052】
(2)ウォールスルーしたガスが流出したセルのウォールフロー部に酸化触媒を配置することでPM再生時に発生したHC・COのスリップを抑制できる。
【0053】
(3)隔壁に捕集されたPMが、ウォールフロー部の隔壁にコートした触媒で生成したNO2や活性O2による酸化と熱による酸化が同方向から進行するため、酸化速度も一定で短時間にかつ均一にPM再生が進行する。従って、再生率は従来例に比べて高くすることができる。
【符号の説明】
【0054】
10 パティキュレートフィルター
11 セル
11i 流入側セル
11o 流出側セル
12 多孔体
12f 隔壁(ウォールフロー)
12t 隔壁(ウォールスルー)
13i、13o 目封じ材
14 触媒
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気通路に配設され、排ガス中のPMを捕集するためのパティキュレートフィルターに係り、特にPM捕集後の再生効率を高めたパティキュレートフィルター及びその再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出されるPM(パティキュレートマター;粒状物質)の浄化装置は、ディーゼルエンジンの排気管にDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)を接続し、そのDPFでPMを捕集して、排気ガスを浄化して大気へ排出するものである。
【0003】
このDPFで、捕集されたPMは、フィルタの目詰まりの原因となるため、捕集堆積したPMを定期的に酸化させ、除去して再生する必要がある。
【0004】
強制的にPMを再生する方法としては、排気管にHC(例えば軽油)を噴霧して酸化触媒(DOC)で燃焼させることで排気温度を上昇させる方法(特許文献1、2)が知られている。
【0005】
しかし、DOCからDPFに排ガスが移動する際に温度が低下したり、HCが完全に燃焼できずにDPFに到達してPM再生の安定性に悪影響を与えるなどの問題点がある。
【0006】
そこでPM再生温度を低減するためにDPFの捕集表面から内部にかけて触媒をコートする方法(特許文献3、4)が提案されている。
【0007】
この方法は、DPFに貴金属やOSC(酸素吸蔵能材など)の触媒をコートしているために、PM再生時に、活性酸素やNO2が生成するため、PMの酸化温度が低下し、PM再生が良好となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−77675号公報
【特許文献2】特開2008−19820号公報
【特許文献3】特開2005−818号公報
【特許文献4】特開2002−276339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、表面に捕集されたケーク状のPMは触媒に一部しか接触しておらず、触媒に接したPMが酸化された後は、触媒の酸化効果は限定的となり、その後は排ガスとHC酸化によるPMの再生のみとなり再生効率がおちる問題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、再生効率を向上できるパティキュレートフィルター及びその再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、セルが断面多角形状に形成されたハニカム状の多孔体からなると共に流入側と流出側を目封じしたウォールフロー型のパティキュレートフィルターにおいて、前記セルの一面の隔壁に触媒をコートし、他の面の隔壁で排ガス中のPMを捕集するようにしたことを特徴とするパティキュレートフィルターである。
【0012】
請求項2の発明は、前記セル断面が四角形状に形成され、前記多孔体の流入側と流出側で、並んだ2セル毎に、互い違いに目封じし、流入側で開口した2セル同士の隔壁内面に、それぞれ触媒をコートした請求項1記載のパティキュレートフィルターである。
【0013】
請求項3の発明は、流出側で開口した2セル同士の隔壁内面に、それぞれ触媒をコートした請求項2記載のパティキュレートフィルターである。
【0014】
請求項4の発明は、コートする触媒が、貴金属又はOSCを有する酸化物、あるいはHC吸着剤のいずれかからなる請求項1〜3いずれかに記載のパティキュレートフィルターである。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1〜4いずれかに記載のパティキュレートフィルターで捕集したPMを再生する方法において、前記パティキュレートフィルターの上流側にHCを噴射し、前記セル内の一面の隔壁にコートした触媒でHCを酸化して前記セル内の排ガスを昇温させ、この排ガスで前記セル内の他の面の隔壁に捕集されたPMを燃焼させることを特徴とするパティキュレートフィルターの再生方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、セルの一面の隔壁に触媒をコートすることで、再生時に、PM近傍において、そのコートした触媒で、HC吸着、離脱、酸化を行うことが可能となり効率的に熱エネルギーを排ガスに伝えることができ、効率的にPMを再生できるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【図2】図1のD部の側断面図である。
【図3】図1におけるD部の排ガスの流れを説明する断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す図である。
【図5】図4のD部の側断面図である。
【図6】図4におけるD部の排ガスの流れを説明する断面図である。
【図7】本発明のパティキュレートフィルターを用いた再生システムを示す概略図である。
【図8】本発明のパティキュレートフィルターを用いた他の再生システムを示す概略図である。
【図9】本発明と従来例におけるパティキュレートフィルターの再生時の昇温特性を示す図である。
【図10】本発明のパティキュレートフィルターのPM再生を説明する図である。
【図11】従来のパティキュレートフィルターのPM再生を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
図1〜図3は本発明の一実施の形態を示したものである。
【0020】
図において、パティキュレートフィルター(DPF)10は、多孔性セラミックスで、多数の断面多角形状、図では四角形のセル11を有するハニカム多孔体12で形成され、その流入側と流出側が交互に目封じ材13i、13oで目封じされてウォールフロー型とされる。
【0021】
本発明においては、パティキュレートフィルター10の四角形状に形成されたセル11の一面の隔壁12fに触媒14をコートして形成し、他の三面の隔壁12tを、そのまま多孔質として排ガスを通過できるようにしたものである。またセル断面が四角形状以上の場合には少なくともその一面の隔壁に触媒をコートするようにしてもよい。
【0022】
このセル11を目封じする際には、図1、図2に示すように、上下(或いは左右)で並んだ2セル毎に、流入側と流出側で交互に目封じ材13i、13oで目封じして形成し、その流出側で目封じされ、流入側が開口した2つのセル11i、11i同士の隔壁12fの内面にそれぞれ触媒14をコートし、両セル11i、11i内の他の三面の隔壁12tをそのまま多孔質として排ガスを通過できるようにしたものである。
【0023】
また流入側で目封じされ流出側が開口した2つのセル11o,11oは、四面とも多孔質の隔壁12fのままとする。
【0024】
このようパティキュレートフィルター10を形成することで、PM捕集時は、図3に示すように、流入側セル11iの他の三面の隔壁12tから隣接する流出側セル11oに排ガスを流してPMを捕集することができる。また再生時には、パティキュレートフィルター10の上流側で噴射されたHCをセル11iの隔壁12fの内面にコートされた触媒14で酸化して排ガスを高温にすることができ、この高温のガスでPMを燃焼させることができると共に、触媒14に吸着されたNO2の生成やOSCからの活性酸素をPMの表面に供給できるので、効率的にPMの再生(酸化)を行うことができる。
【0025】
図4〜図6は、本発明の他の実施の形態を示したもので、基本的には図1〜図3の実施の形態と同じであるが、流入側で目封じされ流出側が開口した2つの流出側セル11o,11o同士の隔壁12fの内面にもそれぞれ触媒14をコートし、両セル11o,11oの他の三面を、多孔質の隔壁12tとして排ガスを通過できるようにしたものである。
【0026】
この実施の形態においては、流出側セル11oの隔壁12fに触媒14がコートされているため排ガス温度を上げ、パティキュレートフィルター10全体を再生温度以上に保つことができる。
【0027】
以上説明したように、本発明は、ハニカム状の多孔体からなるパティキュレートフィルター10のセル11の隔壁12の三面の隔壁12tを排ガスが通過できるウォールスルー構造にしてPMの捕集を行い、残り一面の隔壁12fは、排ガスが通過できないウォールフローとし、その面の隔壁12fに触媒14をコートするようにしたものである。
【0028】
ここでコートする触媒14は、貴金属(Pt、Pd、Rh等)およびOSCを有する酸化物(CeO2やZr−Ce−O複合材等)、HC吸着剤(ゼオライト等)を含んだものを用いることができる。
【0029】
この触媒14は、パティキュレートフィルター10のセル11の隔壁12fにコートした後、焼成して担持させ、その後セル11の流入側と流出側を目封じしてウォールフロー型とする。
【0030】
このように、本発明は、セル11の一面の隔壁12fに触媒14をコートしたパティキュレートフィルター10を用いることで、パティキュレートフィルター10で捕集したPMの極近傍で、HC吸着→脱離→酸化をすることが可能となり効率的に熱エネルギーおよびHCを効率的に使用できる。
【0031】
またNO2の生成やOSCからの活性酸素を、捕集したPMの表面に供給できるので、効率的にPMの再生(酸化)ができる。
【0032】
上述の実施の形態では、セル断面が四角形状で説明したが、セル断面を三角形状、六角形状に形成し、その一面に触媒をコートするように形成し、残りの面をガスが通過する流路としてもよい。また六角形状にセルを形成した場合には、径方向で対向する二面に触媒をコートし、他の四面でガスが通過するように構成してもよい。
【実施例】
【0033】
以下に本発明の実施例を説明する。
【0034】
実施例1:
図1〜図3で説明したように、流入側セル11iの隔壁12fに酸化触媒14をコートして排ガスの流れない隔壁(ウォールフロー部)とし、他の三面の隔壁12tと、流出側セル11oの四面は、排ガスの流れるウォールスルーとし、ハニカム状の多孔体12を2セル毎に前後互い違いに目封じしたパティキュレートフィルター10とした。
【0035】
コートした触媒14は、Pt−Pd/Al2O3触媒を基本触媒(触媒1)として、その基本触媒にOSCを有するZr−Ce−O複合材を含ませたもの(触媒2)、HC吸着剤としてゼオライトを含ませたもの(触媒3)および触媒2と触媒3を混合したもの(触媒4)の4種類を用いた。
【0036】
実施例2:
図4〜図6で説明したように、流入側セル11iと流出側セル11oの隔壁12fに酸化触媒14をコートして排ガスの流れない隔壁12f(ウォールフロー部)とし、他の三面の隔壁12tは、排ガスの流れるウォールスルーとし、ハニカム状の多孔体12を2セル毎に前後互い違いに目封じしたパティキュレートフィルター10とした。
【0037】
触媒14は、実施例1と同様に触媒1〜4を用いてコートした。
【0038】
従来例:
流入側セルと流出側セルの隔壁の四面をウォールスルーとしながら、その捕集表面から内部にかけて触媒1(酸化触媒)をコートしてパティキュレートフィルターとした。
【0039】
実施例1、2と従来例のパティキュレートフィルターを図7、図8に示す排ガス処理装置に組み込んで2通りでその特性を評価した。
【0040】
図7は、エンジン20の排ガス通路21にDOC22とパティキュレートフィルターからなるDPF装置23を組み込み、DOC(酸化触媒)22の上流側にHC(軽油)を噴射するノズル24を設けた排ガス処理システムAであり、図8は、DOCを組み込まずにDPF装置23のみを組み込んだ排ガス処理システムBである。
【0041】
図9は、本発明と従来例のパティキュレートフィルターの昇温特性を示したものである。
【0042】
図9に示すように、本発明は、HC噴射後、80秒で700℃以上に昇温できたのに対して、従来例は、700℃に達するのに約130秒以上かかることがわかった。
【0043】
次に、実施例1、2の各触媒1〜4を用いたパティキュレートフィルターと従来例のパティキュレートフィルターを、それぞれ、図7の排ガス処理システムAと、図8の排ガス処理システムBに組み込んだときの、昇温時間、HC噴射時の昇温時間、PM再生率、再生時のHC・COスリップを、従来例を1として比較した結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1において実施例1、2はいずれの触媒1〜4を用いても、従来例の特性を上回った。
【0046】
表1において、流入側にのみ触媒をコートした実施例1は、流入側と流出側に触媒をコートした実施例2に対して、再生率は若干劣るものの、その他特性は実施例2と同等であった。
【0047】
図10は、本発明のパティキュレートフィルター10の隔壁12tに堆積したPMを再生する際のPM再生を説明する図で、図11は従来のパティキュレートフィルター30の隔壁32tに堆積したPMを再生する際のPM再生を説明する図である。
【0048】
図11の従来例においては、図11(a)のようにPMが堆積し、そのPMを再生すべくHCと排ガスを流すと、PM堆積層の表面から酸化されると同時に隔壁32tのセラミック粒子32Sに担持された触媒34の表面で、NO2や活性酸素が発生し、図11(b)に示すように表面側と触媒34側から酸化が起こる。この際、触媒34による酸化速度の方が、排ガスによる表面側からの酸化速度より高くなるが、図11(b)に示したように触媒34に接しているPMが酸化されてしまうと急激に酸化速度が低下してしまい、図11(c)に示すように、触媒34に接していないPMが部分的に燃え残りとなってしまい、これが島状に点在していまい、単位時間あたりの再生効率が悪くなってしまう。
【0049】
これに対して、本発明では、図10(a)のようにPMが堆積し、そのPMを再生すべくHCと排ガスを流すと、その隔壁12tのセラミック粒子12Sには触媒は担持されておらず、セル内のウォールフローとなる一面の隔壁に設けた触媒とHCと排ガスが接触し、その面でNO2の生成と活性酸素が生成し、図10(b)に示すようにNO2と活性酸素で温度の高くなった排ガスで、PMを表面から酸化することとなり、再生方向は一方向でも酸化速度の変化もなく、結果として図10(c)に示したように短時間で均一に再生することが可能となる。
【0050】
このように、本発明は、以下の効果を奏する。
【0051】
(1)PMの堆積するウォールスルー表面に近いウォールフロー部に酸化触媒を配置することで、HC噴射時の昇温速度の向上が図れる。
【0052】
(2)ウォールスルーしたガスが流出したセルのウォールフロー部に酸化触媒を配置することでPM再生時に発生したHC・COのスリップを抑制できる。
【0053】
(3)隔壁に捕集されたPMが、ウォールフロー部の隔壁にコートした触媒で生成したNO2や活性O2による酸化と熱による酸化が同方向から進行するため、酸化速度も一定で短時間にかつ均一にPM再生が進行する。従って、再生率は従来例に比べて高くすることができる。
【符号の説明】
【0054】
10 パティキュレートフィルター
11 セル
11i 流入側セル
11o 流出側セル
12 多孔体
12f 隔壁(ウォールフロー)
12t 隔壁(ウォールスルー)
13i、13o 目封じ材
14 触媒
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルが断面多角形状に形成されたハニカム状の多孔体からなると共に流入側と流出側を目封じしたウォールフロー型のパティキュレートフィルターにおいて、前記セルの一面の隔壁に触媒をコートし、他の面の隔壁で排ガス中のPMを捕集するようにしたことを特徴とするパティキュレートフィルター。
【請求項2】
前記セル断面が四角形状に形成され、前記多孔体の流入側と流出側で、並んだ2セル毎に、互い違いに目封じし、流入側で開口した2セル同士の隔壁内面に、それぞれ触媒をコートした請求項1記載のパティキュレートフィルター。
【請求項3】
流出側で開口した2セル同士の隔壁内面に、それぞれ触媒をコートした請求項2記載のパティキュレートフィルター。
【請求項4】
コートする触媒が、貴金属又はOSCを有する酸化物、あるいはHC吸着剤のいずれかからなる請求項1〜3いずれかに記載のパティキュレートフィルター。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載のパティキュレートフィルターで捕集したPMを再生する方法において、前記パティキュレートフィルターの上流側にHCを噴射し、前記セル内の一面の隔壁にコートした触媒でHCを酸化して前記セル内の排ガスを昇温させ、この排ガスで前記セル内の他の面の隔壁に捕集されたPMを燃焼させることを特徴とするパティキュレートフィルターの再生方法。
【請求項1】
セルが断面多角形状に形成されたハニカム状の多孔体からなると共に流入側と流出側を目封じしたウォールフロー型のパティキュレートフィルターにおいて、前記セルの一面の隔壁に触媒をコートし、他の面の隔壁で排ガス中のPMを捕集するようにしたことを特徴とするパティキュレートフィルター。
【請求項2】
前記セル断面が四角形状に形成され、前記多孔体の流入側と流出側で、並んだ2セル毎に、互い違いに目封じし、流入側で開口した2セル同士の隔壁内面に、それぞれ触媒をコートした請求項1記載のパティキュレートフィルター。
【請求項3】
流出側で開口した2セル同士の隔壁内面に、それぞれ触媒をコートした請求項2記載のパティキュレートフィルター。
【請求項4】
コートする触媒が、貴金属又はOSCを有する酸化物、あるいはHC吸着剤のいずれかからなる請求項1〜3いずれかに記載のパティキュレートフィルター。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載のパティキュレートフィルターで捕集したPMを再生する方法において、前記パティキュレートフィルターの上流側にHCを噴射し、前記セル内の一面の隔壁にコートした触媒でHCを酸化して前記セル内の排ガスを昇温させ、この排ガスで前記セル内の他の面の隔壁に捕集されたPMを燃焼させることを特徴とするパティキュレートフィルターの再生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−226436(P2011−226436A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98881(P2010−98881)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]